○仲原善一君 私は、自由民主党を代表して、ただいま
議題となっております
農業災害補償法の一部を
改正する
法律案に対し、
賛成の
討論をいたします。
御
承知のとおり、
わが国の
経済は、国民の優秀な能力とたゆまざる努力によりまして、世界にもまれな高度成長を遂げつつあります。この発展の基礎には、幾多の困難な条件を克服しながら農業
生産に精進し、民族の苗代としての使命を果たしてきた農業及び農民があったことを、忘れてはなりません。同時にまた、
現行の農業災害補償
制度が
昭和二十二年に発足して以来、幾多の
改正を伴いながら、重要な災害
対策の柱として
農業経営の安定発展に寄与し、ひいては
わが国経済発展の大きなささえであったことも忘れてなりません。現に、このたびの長雨による被害について、
共済掛金の早期支払いが強く要請されている事情を見ましても、本
制度に寄せられる農民の期待がいかに大きいかが、うかがわれるのであります。
しかしながら、最近、農業
生産の基盤が
整備され、また、耕種技術が
改善されるなどによりまして、
昭和三十年以後の連続豊作が物語っておりますように、作柄が安定し、被害地域が少なくなって参っております。かように本
制度の基礎条件が大きく
変化するに従いまして、農家のこの
制度に対する不満が起こって参りましたことも事実でございます。そのおもなものを拾ってみますと、農家の
負担に比べていわゆる掛け捨てが多いこと、無事戻し
制度が実効をおさめていないこと、実際の損害額に比べて
共済金の支払い額が少ないこと、
共済掛金率が被害の実態に即応していないこと、防除技術の発展している
水稲について病虫害を
共済事故とすることは不
合理であることなどでございます。
今回の
改正案は、以上のような農家の不満に対処するため提案されたものでありまして、その
内容は、
農作物共済を中心とした次の五点に要約できるのであります。
まず第一は、
共済組合または
共済事業を行なう市町村の
共済責任を拡充し、掛け捨ての不満を緩和するとともに、無事戻しの
制度を拡充したことであります。
第二は、画一的な強制方式を緩和いたしまして、零細規模のものに
適用する
任意加入の
範囲を
拡大し、また、
事業量が僅少である等の場合には、
組合は
共済事業の一部を廃止することができることとした点でございます。
第三は、損害てん補率の引き上げでありまして、単位当たり
共済金額の最高限度を引き上げることによりまして、損害に対する実質てん補割合を
現行約四九%から約六三%に引き上げたことであります。
第四は、
共済掛金率をきめる方式を改めまして、
組合等ごとに被害の実態に適合するよう新しく工夫をこらされると同時に、
国庫負担の方式を
合理化いたしましてその公平を期したことでございます。
第五は、
水稲の病虫害について防除体制の
整備されている
組合などにおきましては、これを
共済事故から除くことができることとし、これに対応する
共済掛金の部分を割引し、これに伴って不要となる
国庫負担分を財源として病虫害防除
事業に
補助することとしたことであります。
以上のように、
政府案は、問題の解消をはかり、農家の不満にこたえたものでありまして、
制度の
運営を適正にすることにより、農家の期待に沿うものと確信するものであります。
しかし、この
政府案に対して、主として次のような批判が行なわれておりますので、以下これらの批判に対しまして私の見解を申し述べたいと思います。
その第一は、本
改正案は
制度の抜本的
改正に触れていないではないかという批判であります。この問題については、その意味する
内容がいまだ明確にされていないうらみがございますが、批判者の質問を通じて受け取られる重要な考えの中に、
共済あるいは保険の
制度ではなくて、これは国家補償の
制度にすべきではないかという点でございます。しかし、国家補償の考えの根底には、
農地を国有あるいは共有にし、労働を強制する、いわゆる社会主義
経済の思想につながるものがあると考えられるのでありまして、この点は、
土地所有権をもとにして自由
経済を建前とする私どもの容認できないところでございます。私どもは、農業もまたりっぱな企業として育成すべきものであるという所信のもとに、自然的災害に弱い農業に対し、農業基
本法の
趣旨にのっとり、手厚い
補助助成政策を
実施すべきものと考えます。したがって、本
制度もまた、農家の相互扶助、隣保共助の精神の上に立って自主的に築き上げられるべきものであって、
共済あるいは保険的性格のものでなければなりません。
かくしてでき上がったこの
制度に対し、国は惜しみなく国費を投じて
補助育成すべきものと信ずるものであります。たとえ国庫の
負担が全額であっても、これは国家補償の観念からではなくて、
補助の建前でなければならぬと信じております。
その二は、協議会の答申が十分取り入れられていないという批判でございますが、前に述べましたように、
画一的強制方式の緩和、
組合等の
共済責任の拡充、補てん
内容の充実、
共済掛金率及び
国庫負担方式の
合理化、
水稲の病虫害の
共済事故からの除外など、いずれも協議会の答申事項が取り入れられた結果でありまして、わずかに
事業団の設立と農家単位制を見送っただけにとどまっております。
その三は、農家単位制が採用されなかったことについての批判でございますが、これは
現行の一筆単位制と比較して現時点においては一長一短があるので、さらに
検討を加えることが適当であると思われるためであります。将来、
土地基盤が
整備された暁には、農家単位制の特徴が十分発揮されるので、この
制度も実現されるものと期待しております。現に、
昭和三十五年に行なわれました総理府の世論調査によって見ましても、一筆単位制がよいとするものが五八%、農家単位制がよいとするものはわずかに一五%でございます。
その四は、この
制度の
機構が、
組合、県連、国の三段階制であって、
事業団の新設による二段階制が
実施されないことに対する不満でございます。しかしながら、本来、農家の自主性を尊重しつつ、
共済あるいは保険方式によって損害を
合理的に補てんしようとするこの
制度にありましては、今回の
改正によって
制度に対する農家の理解が深まり、三段階制の妙味が十分発揮されるものと思うのであります。
その五は、選択的
拡大農産物、特に果樹の必須
共済が
改正案に盛られていないということに対する不満でございますが、
政府はこの問題について、
昭和三十五年以来、
調査研究を継続し、また、三十八年度からは主要果実
生産地域について
試験調査を予定するなど、前向きの姿勢にあるのでありまして、近い将来、この実現が期待されると信じております。
以上述べましたように、これらの批判の多くは、あるいは客観的情勢に対する見解の相違に基づくもの、
制度に対する十分な理解を欠いているもの、または一方的立場にとらわれて故意に異説を唱えるものと断ぜざるを得ないのであります。
最後に、
日本社会党が農林水産
委員会に提案しました修正案について若干触れてみたいと思います。この案の骨子は、
制度協議会の答申を中心としたものでありますが、
政府案において時期尚早として見送られた三段階制
機構の改革及び農家単位制の採用は取り入れられておりません。また、必ずしも
法律の規定あるいは
改正を必要としない事項もあります。さらに、財政的な
負担についても問題があるのでありまして、いわゆる抜本的
改正とはおよそ縁遠く、技術的な部分を主としたものと認めざるを得ないのであります。したがいまして、
政府原案に比べて基本的にはさほどの差がなく、むしろ
政府案のほうにより多くの妥当性を認めざるを得ないのであります。にもかかわらず、すべてか、しからざれば無といった態度で、
政府案にあえて反対する社会党の態度は、まことに遺憾であります。
以上、今回の
改正案は、現段階においてきわめて適切妥当なものと考えまして、原案に
賛成を表するものであります。