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大和与一君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、去る五月二十二日関東
地方に発生いたしました
突風及び降ひょう、豪雨による被害につきまして、
政府の所信を
ただし、すみやかに万全の
対策を確立するため、
政府の善処を促したいのであります。
五月二十二日は、
東京で三十度七分という本年最高の気温であったのでありますが、
〔
議長退席、副
議長着席〕
梅雨前線が夕方になって南下し、冷たい空気を関東平野に送り込んだため、夕刻から夜半にかけて、北部、西部の山沿いを中心に雷鳴がとどろき、一部の
地方に
突風、降ひょう、豪雨が襲来して、激甚な被害を与えたのであります。特に、
群馬県南東部と
埼玉県北部
地方、栃木県西南部
地方におきましては、午後四時三十分ごろから三、四十分にわたりまして、瞬間最大風速五十メートルに達する
突風と、鶏卵大ないし、こぶし大のひょうが襲ったのでありまして、このため尊い人命を初め、家屋、農作物等に甚大な被害を与え、国鉄においても、落雷によって高崎線が一時不通となり、一時間から四時間に及ぶ列車ダイヤの乱れがあったのであります。
警察庁の
報告によりますと、この
突風及び隆ひょうの被害は、
群馬、
埼玉、栃木の三県におきまして、人的被害で現在までに判明したものは、死者八、重傷者十三、軽傷者二百二十七、計二百四十八名、家屋関係では、住宅が全壊七十八戸半壊五百十戸、一部破損五千五百六十戸、非住宅が全部で千二百五十五戸に達し、鉄道不通個所は五カ所発生したのであります。また、農作物の被害は総計約三十億円に及んでいるということであります。これらの被害額は、いずれも現地のなまの
報告だということでありますが、風水雷等と異なり、この種の被害が比較的限られた地域に免じますだけに、被災地における被害の深刻さがしのばれるのであります。
新聞の伝えるところによりますと、
埼玉、
群馬、栃木、三県下の被災地は、一夜明けた二十三日、こわれた家々や田畑が、低くたれこめた雨雲の下に無残な姿をさらしていた。人々はぼう然として、荒れ果てたわが家の前にたたずむばかり。被害の最も大きかった
埼玉県深谷市や
群馬県尾島町では、早朝から各自治会長を動員、実態
調査を進めるとともに、緊急町市議会を開くなど、懸命な救援活動に立ち上がったが、人々は、「ガラスが足りない、」「稲の苗がほしい」と、悲痛な声で救いを求めていた」と
報告されるほど、激甚な被害を受けたのであります。ちょっと
群馬県の写真をお見せしますと、ビニール・ハウスは全くこわれてしまい、桑の葉はほとんど一枚もない、家はこわれた、こういうふうに、たいへん写真でもその惨状がなまなましく現わされておるのであります。
かような激甚な被害に対し、地元の関係市町村並びに県
当局におきましては、直ちに被害
調査に着手する一方、必要な
対策を実施に移しつつあるのであります。たとえば、
群馬県におきましては、いち早く五月二十四日に緊急臨時県議会を開き、災害救助に関して各般の
措置を全会一致で
決定いたしたのであります。
埼玉県におきましても、来たる六月一日から県議会を開くことに相なっておるのであります。栃木県におきましても、全力をあげて当面の救済策に当たっておるのであります。
しかしながら、今回の災害は、この種のものとしてはその範囲が広く、しかも、被災地の被害かきわめて深刻でありまして、関係
地方公共団体の貧弱な財政力をもってしては実施しがたい多くの重要な問題が存在するのでありますから、国の強力な援助指導がぜひとも必要なのであります。私は、かような見地から、以下数項目にわたって
政府の御所見を伺いたいのであります。
まず第一に、瞬間的に地域的に全滅の災害を受けた場合に、
政府は、常にすべてを救済するのではなくて、三分の一であるとか、百分の五であるとか、初めから値切って、かけ値をして、
法律、政令をお作りになっておられると思われるふしがありますが、これは、実情に即して、全額補償という親心をお考えになれないのか、関係各
大臣に
お尋ねをいたす次第であります。
次に、農業関係につきまして農林
大臣に伺います。
今回の災害により、農作物が壊滅的な打撃を受けたことは申すまでもありませんが、これにより、収穫期を前にした麦、都市近郊という立地条件によって栽培されていたトマト、イチゴ、キャベツ、キュウリ等の蔬菜、田植え期を控えた苗代、春蚕の上簇期を前にした桑等が、いずれも一瞬にして甚大な被害を受け、さらに最近急速に普及しておりますビニール・ハウス、鶏舎の農業用施設の被害も大きいのであります。そこで
政府におかれましては、すみやかに被害の実情を
調査され、一日も早く天災融資法による災害融資の
措置を実行されたいのであります。また、この天災融資法の発動による
措置を補完するために、これに並行して自作農維持
資金による災害融資を実施するとともに、農業近代化
資金、農林漁業金融公庫
資金についても、実情に応じ活用できるよう迅速な処理を必要と考えるのであります。被災地におきましては、被害のあまりの大きさに、物心両面にわたって大きな打撃を受けているのでありますから、一刻を争う問題として、これらに対する
政府の方針を明らかにされたいのであります。また麦、桑等につきましては、農業災害補償
制度による農業共済金の早期支払いをすみやかに実施して、関係農家の再建活動に資してい
ただきたいのであります。
次に養蚕関係でありますが、御
承知のように、桑は、果樹等と同様、この種の被害を受けますと、病虫害を防除し、樹勢を回復するため、
肥料、農薬等をなるべく早く施さねばなりません。したがいまして、
昭和三十三年ころまでは樹勢回復用
肥料や病虫害防除薬剤等に対し、
予備費などから
補助金が支出されていたのでありますが、最近におきましてはこの種の問題は、ほとんど金融による方針がとられているのであります。しかし今回の災害は、一戸々々の被災農家にとりましてはまことに大きい被害なのであります。この際、かつてのように補助の道を開くよう強く要求したいのであります。この点は、桑の輸送費や夏秋蚕用蚕種購入費等についても同様であります。
また、被災後の営農については、濃密かつ適切な指導がきわめて重要であります。
政府は、その
指導監督に万全を期するとともに、
地方公共団体に対し、指導費の助成をはかるべきであると存ずるのであります。
以上、災害融資、共済金早期支払い、補助及び指導について、農林
大臣から
政府の方針を具体的に伺いたいのであります。
次に、厚生
大臣にお伺いいたします。今回の災害がきわめて激甚であったことは、るる申し上げたとおりであります。保護世帯の更正あるいは保健衛生等について万全の
措置を講ぜられたいのであります。この際、災害救助法について申し上げたいのであります。
現行制度によりますと、たとえば人口五千人以下の市町村については、住家が滅失した世帯が三十世帯以上の災害であれば、この
制度を発動できるという仕組みになっておりまして、その基準は住家を滅失した世帯数だけであります。ところが、災害の態様は千差万別でありまして、今回のように全壊に比べ、半壊、一部破損が著しく多い上、救助法を適用すべき状況にある場合には、この非弾力的な基準のため、救助法の発動が制約されるのであります。また、救助法第二十三条による救助の程度についてもはなはだ不十分であって、たとえば応急仮設住宅の問題にいたしましても、
法律では特別基準の協議をすればよいとありますけれども、とにかく今までの各地の実情を伺いますと、役所的ルーズさも手伝って、結論の出るのがおそいために、いつも間に合わぬのであります。したがいまして、救助法の適用基準及び救助の程度についてすみやかにこれを改善し、今回の災害に適用すべきだと考えるのであります。また、低所得者のための世帯更生
資金につきましては、今回の災害にかんがみ、住宅の新設及び補修
資金並びに生業
資金のワクの拡大をはかるべきであります。これらの点について、厚生
大臣から
政府の御所見を伺いたいのであります。
次に、通産
大臣にお伺いします。
今回の
突風及びひょう害は、従来この種の災害が、ほとんど農作物被害に集中していたのに比べまして、被災地における地元商工業者に与えた損害の大きかったことが、
一つの特色であろうと存ずるのであります。ところが、中小商工業者に対する災害金融につきましては、農業における天災融資法のような充実した
制度がないのであります。この点は、たとえば昨年の北九州における梅雨前線による豪雨の被害に際しましても、関係の県
当局から強い要望があったのであります。中小企業基本法案が、大きな問題となっております今日、体系的な、低利の災害金融
制度がないのは、
政府怠慢といっても過去ではないと存ずるのであります。
群馬県
当局におきましては、今回の災害に対し、商工業者に対する災害復旧特別融として、県費四千万円を地元金融機関に預託し、総額二億円の融資を実施する
措置をとったのであります。
政府におかれても、この問題の
制度化に真剣に取り組むとともに、今回の被災商工業者
対策に遺憾なきを期してい
ただきたいのであります。この問題について、通産
大臣の御所見を伺いたいのであります。
次に、
自治大臣にお伺いします。
災害の復旧にあたりましては、関係
地方公共団体といたしましては、国の補助の有無にかかわらず、できるだけ実情に即して、諸般の
具体的措置を進めなければならないことはもちろんであります。したがいまして、その財政を援助するため、特別
交付税あるいは必要に応じ起債のワクを確保する等の手段に遺憾があってはならないのであります。
群馬県議会でも、県の施策を国が助成するよう意見書を
決定しておるのでありますが、災害に伴う
地方財政の財源
対策については、万全を期すべきであります。これについて、
自治大臣の明快な、しかもまじめな御方針を伺いたいのであります。
次に、大蔵
大臣にお伺いします。
ただいま各
大臣に
質問いたしました事項は、いずれも、これに相応した予算的あるいは
資金的裏づけを要する問題であります。この裏づけなくしては、まさしく「仏作って魂入れず」のたとえ同然であります。従来の
政府の行き方を見ますと、災害
対策につきましては、ややもすると、財政的にまことに渋い線が出される傾向があると存ずるのでありまして、たとえば長期預金利子の大幅な優遇
措置のごとき、資本家のための施策が、いとも簡単に実現するのを見るにつけ、まことに遺憾にたえないのであります。田中大蔵
大臣は人情
大臣として有名でありますが、この際、以上申し上げました
措置に対し、十分な財政的裏づけを行ない、被災者が希望を持って再建に向かえるよう心がけてい
ただきたいのであります。
以上、重要な問題について
質問をいたしましたが、
最後に、被災者に心から御同情、お見舞、激励申し上げますとともに、
政府は大勇猛心を起こして、即断即決、全努力を傾けて、全
国民の期待を裏切らないようにお願いしたいのであります。
以上、これを要するに、災害時における被災者の完全な救済
措置は、その当時の糊塗的援護にとどまってはならないのであります。
池田総理は、経済の成長を謳歌し、大国意識に胸を張っておられるようでありますが、実力のある大国とは、第一に
国民生活の格差が非常に少ないことであります、第二に、社会保障
制度が完全に近く実施されていることであります。このいずれも、わが国の池田
内閣においては、
国民化活の実態とはほど遠いものがあります。一日も早く政治を
国民の翹望にこたえる立場に立って、正しい軌道に乗せてこそ、初めて災害時においてだけでなく、恒久的安定救済策が成り立つものであると確信いたすものであります。
以上をもって、私の
緊急質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣重政誠之君
登壇、
拍手〕