○小林篤一君 私は、ただいま
議題となっております
甘味資源特別措置法案について・
政府側に質問をいたしたいと思います。
まず総理大臣に、
北海道におけるビートのことについてお尋ねいたしますが、
北海道におけるビートは、さきに
政府が長期の増産
計画を立てられまして、耕作奨励に声を大にしてかけ声をかけておられますが、この奨励に対しての
基本の
法律が本年三月で期限切れになって、ただいま、先ほどもお話がありましたように、空白状態であります。本年のビートの
生産者価格は、今もって決定しないままになっておるのであります。
政府は、
法律が空白になることは、あらかじめ予想ができたはずであります。にもかかわらず、行政指導も行なわないで、いたずらにこれを遷延して、
生産者は不安動揺を来たし、ひっきりなしに農林省に押しかけて
対策を要望しておるのであります。こういう
状況にしておいて、
政府がビート耕作を奨励しても、安心して耕作できないではありませんか。
北海道におけるビート耕作者の間には、
政府は信頼するに足らないという不信の念が浸透しつつある
状況であります。ビートは耕作者も喜んで耕作をする、
工場も採算がとれる
経営をするというには、
政府の保護助成がなければ成り立たないことは、ヨーロッパ各国の例を見ても明らかであります。この点、総理大臣もよく御存じのはずであると思うのであります。しかるに、これに対する
対策も確立せず、
法律も空白のありざま。
政府はいかにこれを弁解しても、怠慢のそしりは免れ得ないのではありませんか。
砂糖の貿易
自由化の必要は今始まったことではなくて、五、六年前から
政府部内から放送されておったのであります。
砂糖の貿易
自由化のいかにむずかしいかということを物語っているのであります。ヨーロッパの
実情に照らしましても、
砂糖の貿易
自由化は、耕作者にも
工場側にも無理がかかるということは、これはもう明らかなんであります。総理は、貿易の
自由化九〇%にするため、
砂糖の貿易
自由化をするように指示しておられるが、これを乗っけるための基礎工事ができていないではありませんか。いまだ基礎工事の設計すらもできておらぬではありませんか。地盤が弱くて貿易の
自由化を建設するだけの基礎工事はできないではありませんか。ただいま
砂糖は世界的減産により国際相場が高騰を来たしておりますが、貿易の
自由化には絶好の
機会であると称している者が
政府部内にあります。もしそういう考えで
自由化した場合、
砂糖価格が下落した場合は、混乱を招くことは明らかではありませんか。そうなってから
対策を立てるにしても、従来の例から見まして、相当の期間を要しまして、耕作者も
工場も多大の迷惑をこうむるのであります。
砂糖政策は、
砂糖の相場が変動してもこれに対応するだけの政策の確立が肝要であります。何はともあれ、貿易の
自由化は突然起こった問題でもなく、
北海道のビート長期八カ年
計画を樹立してからも、すでに数年を経て、しかもなお今日のありさまでは、
生産者としては心外千万であります。ビート耕作面積は、伸びるべきものが伸びないのは、よって来たる原因がここにあることを自覚しなければならぬと思うのであります。この際、すみやかに
砂糖政策を確立して、農家が安んじてビートの
生産に従事でき得るようにし、しかる後に、必要があれば貿易
自由化に踏み切ってもよろしいのではないかと思うが、いかがお考えでありましょうか。政策の確立については、ビートの耕作者も、
工場も、
消費者も一貫したものでなければならないが、その
基本的な考えについて確固たる所信をお伺いいたしたいのであります。
次は、
農林大臣にお尋ねいたしますが、質問の第一は、
農林大臣は、ビートでは引き合わなくとも、酪農を兼営すれば引き合うとのお考えでありますが、この考え方は、農家は戦前からもち聞き飽きているはずであります。手一ぱいの耕作をしている者に酪農をやれと言っても、一升ますには一升五合は入らないのであります。土地を貸したり、売ったりして、そうして余力をこしらえて酪農をやろうとしても、土地を売ったり、貸したりしたら、今の
制度では再び手に入らないで、二、三男の分家に事欠くことになるのであります。また、土地を売って余力を作り、酪農をやることは、かえって損であるというデータもあるのであります。酪農をやるには、ビートを作るより牧草を作るほうがよいということも考えられておるのであります。また、酪農をやらなければ、堆肥ができないなんというお考えもあるかもしれませんが、無畜農家が堆肥増産の品評会で一等をとった例すらもあるのであります。家畜がおらなくては堆肥ができないなんという考え方は、これは、しろうとの考え方であります。あくまでビートはビートそのもので採算がとれるのでなければならないのでありますが、今なお
農林大臣は、酪農をやることによってビートは引き合わなくてもよいとお考えでありますか、どうでありますか。
質問の第二は、現在の
工場で足らない
原料ビートは急速に増産させると申しておられるようでありますが、そんな手品師のようなことがどうしておやりになれるのでありますか。
工場を建てれば直ちにでも増産できるようなことを言う人もありましたが、
工場を建てても、一向に増産されないではありませんか。トラクターのような大農機具を入れれば増産されると思って、ある
会社は、一億数千万円を投じて集荷
区域内各町村にそういう大農機具を投入しましたが、即効薬には何の役にも立っておりません。また、土地改良をいたしましても、五年輪作、七年輪作というようなことを考えますれば、二年や三年で急に増産されないのであります。もし凶作でもあってほかの
作物が大減収にでもならない限り、急激なる増産はできないと思います。ビートを増産しようとするには、一定の
計画を立てて、それに基づいて、しんぼう強くやらなければならないと考えるのでありますが、
農林大臣は・何か手っとり早く増産できるような即効薬でも持っておられるのであるか、これをひとつ伺ってみたい。
質問の第三は、
工場の規模であります。これについては、無定見と申しては失礼かもしれませんが、何か十分なる御
計画がないように思われるのであります。私は、去る三十五年四月、衆議院の農林水産
委員会に参考人として出席を求められた際に、こういうことを申しておきました。もし
砂糖が貿易
自由化がなされた場合を予想すれば、
原料一日二千トンの能力を持って、操業百二十日、一操業期二十四万トンを必要とする旨を申し上げたのであります。今日では、これでは不足であるかもしれません。現在の
工場が私の考えと同じであったかどうか知りませんが、どの
工場も、少し手を加えれば、一日二千トンの能力にはなるように、ちゃんとできているのであります。何もそれは言うてはおりませんけれども、そのくらいのことは、言わなくとも皆考えておられる結果であろうと私は思うのであります。私がドイツに参りました三十二年ごろは、一日二千トン以下の
工場は二千トン以上に整理統合していると言っておりましたが、このごろドイツから見えた方の話では、三千トン以上に拡張しているとのことでありますが、
農林大臣は、
北海道のビート
工場はどのくらいの規模が適当であるとお考えでありましょうか、それをお伺いいたしたい。
質問の第四は、ビートの
生産者は、ビートの告示
価格は、先ほどもこれは渡辺
議員からも申されましたが、
生産費
所得補償方式によって算定をしてくれということを希望していることは、
農林大臣も御承知のとおりなんでありますが、
法案によれば、農業パリティを採用されることになっているが、何ゆえ
生産者の希望を採用されないのであるか、その
理由を明らかにしていただきたいのであります。
質問の第五は、農家の作付
計画というものは、
北海道農家においては、秋の収穫が終わったときに種の準備をするのであります。そのときにあらかじめ翌年の
計画を立ててあります。でありますから、ビート
価格の告示は、その時期、すなわち秋には翌年の分を告示してもらいたいというのがほんとうの気持なんでありますが、これに対してどうお考えになっておるのでありましょうか。
質問の第六は、
工場はビート糖の販売については、それぞれ販売系列を持って販路の拡張をやって、メーカーなどはみなその系列によって使いなれた
砂糖を買ってそれを使っておるのであります。
政府の買い上げた
砂糖を売る際、この系列を混乱させることになりますというと、せっかく販路拡張に当たった系列の商社もメーカーも迷惑するばかりでなく、さらに今度は新たに販売の費用をかけてその費用がかさんでいくのであります。
政府は安く売らなければならぬような結果になるのではありませんか。
農林大臣はどういう売り方をしてこの弊害をきたさないようにされるおつもりでありますか、その考えをお伺いいたしたいのであります。
質問の第七は、従来、ビートの告示
価格をきめる際、足らない分は
工場に補給させるつもりで安い
価格で告示しておられたように私は見受けるのであります。告示
価格は再
生産の可能な
価格として決定すべきである。ことに
法律案では、
砂糖の
価格が著しく
低落した場合に
政府が買い上げることになっておりますが、その買い上げ
価格算定にあたって、告示
価格を上回って
原料を買った分については、上回った分はコストの算定から除外することになっております。それに、告示
価格に上回って
会社が買うというようなことはできないのであります。そこに大きな矛盾ができます。あくまで
工場負担に期待しないで告示
価格というものを作るべきであると思うのでありますが、これはいかがでございますか。
質問の第八は、従来、
政府は増産奨励については
工場側にもその一翼をになわせることにしているのであります。これは、
北海道のビートの増産
長期計画の
内容には、土地改良の費用を
政府において負担するもののほかに、
会社側の負担すべき金額をちゃんと計上しているのでありますが、
工場の
経営不振の場合は負担できないではありませんか。こういう不確定財源を当てにすることは、いたずらに
生産者の不満の原因になるのであります。私は、
工場が増産奨励をやることに反対するものではありませんが、
政府の責任においてやるべきであると思いますが、いかがでありましょうか。
質問の第九は、
砂糖価格が著しく
低落した場合は、
政府において買い入れる道を開いております。たいへんけっこうでありますが、その買い入れの告示
価格で売りたいというものがあればいつでも買い入れるというふうにお考えでありましょうか、どうか。著しく
価格低落した場合とは、何を標準にするのであるか、これも明示していただきたいのであります。
以上で
農林大臣に対する質問を終わります。
次は、大蔵大臣に一点だけ簡単に質問いたします。
ビート
工場の設備には普通三十億円かかります。
澱粉工場もほんとうに
合理化すれば四億円ぐらいかかるのであります。それを何百万円ぐらいよりかからない設備も一緒くたにして、共同利用設備資金は農業近代化資金で融通することにしておられるようであります。農業近代化資金を融通するにつきましては、地方庁としては、利子補給の負担の
関係もあり、割当を受けたワクの
関係もあり、貸付をする団体間の均衡の
関係もありまして、スムーズにいかないのであります。そこで、大口のものは農林漁業金融公庫の資金を融通すべきであると思いますが、大蔵大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
ちょっと時間が過ぎまして申しわけありません。これをもって私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕