○
森元治郎君 私は
日本社会党を代表して、
韓国の
軍政延長と
日韓会談について、
政府の所信をただしたいと存じます。
今の
韓国の
情勢は非常に目まぐるしく動いておりまして、一々これを取り上げることが困難でありまするが、この激動する
韓国の
情勢は
一体何に原因しておると思われまするか。まず
政府の認識を
伺いたいと存じます。
政府はこれまで
民政移管へのこれが
陣痛であるとしておりまするが、昔、
神功皇后だと思いまするが、あの方はたいへん、おなかの中に長く子供をかかえておったという神話はありまするけれども、四年の
陣痛などということは聞いたことがありません。こういう皮相な見方というものが
池田内閣の
外交失敗のもとであります。
韓国は
独立以来、真に
独立と自由、そして平和な生産と再建に打ち込むいとまもなく、引き続き
反共軍事体制にすべてのエネルギーを消耗させられていることが、この
韓国政情不安定の原因であると存じます。
韓国の
軍事体制について一言申し上げますれば、あの二千五百万の小さい
韓国、そこに六十万の軍隊をかかえております。このことは、世界の第四位に位する大
軍事国であり、財政においても
歳出予算の四分の一、これが
軍事費であります。とても
民政安定などということは望めないのであります。そこには
民主主義の育つような環境もありませんし、
経済自立の基盤も確立されません。
韓国民はちょうど兵営の中に暮らしていると言っても過言ではないのであります。この間には、
アメリカが
韓国を
自己防衛のとりでと見るのに急でありまして、真に
韓国のためにはかるということが二の次にされていることが指摘されねばなりません。換言すれば、
韓国の現状は、
アメリカの
中共封じ込め、力の
政策の最前線における犠牲であると思うが、いかがでありますか。
なるほど、
アメリカは過去十七年間に五十四億ドルに上る対
韓援助をやっております。
経済自立には、さらに五年、十年、それ以上の
援助が必要だと、
アメリカ当局もこれを認めております。この
援助というもの、その
内容というものが、実は
韓国民の
自主自立の精神をゆがめ、幾多の腐敗と混乱を生じさせております。一方、これがため、
国内体制の脆弱によって、これら
援助が消化できないであろうと思います。
朴議長の言葉をかりるまでもなく、
韓国の
悲劇的姿は胸を打つものがあります。このようなことが重なり合って
韓国の大いなる政情不安をかもし出したもので、
民政移管の手続上の問題ではないことを、
政府はこの際はっきり認めるべきであります。ソウルからの
新聞報道を見ますと、
アメリカの動きに関するものが非常に多いのが注目されます。私は、
第三国が干渉したり、介入することには断じて
反対であります。このことが決してよい結果をもたらさないことは、南ベトナムに対する経験で
アメリカも思い知ったはずであります。このような、いかなる人間も、国家も、
民族も、
自分の運命を
自分の手に握ったときに、おそるべき知恵を働かして生きる道を発見するものだと信じておりまするが、いかがでありまするか。
ところで、
アメリカ国務省は、去る二十五日に声明を出して、「
軍政の
延長は安定した有効な
政府に対する脅威を作るものである」と言っております。
一体、
アメリカは、
ほんとうに
民政を望んでいるのか。当面の安定のためならば
軍政もやむなしとしているのか。その真意を
政府はどう考えておられるか。いずれにせよ、
政府は、干渉めいたことはやめるべきであると信ずるならば、これを
アメリカに申し入れる用意があるかどうか、あわせてお
伺いをいたします。
ところで、
政府の対
韓国、対
朝鮮政策のヴィジョンについて明らかにしてもらいたいと思います。
政府は、
外交交渉は時の
合法政権を
相手にやるもので、
軍政と
民政を問わないとの
態度を示しております。
一体、
合法政権とはどんなものでありますか。
合法とか非
合法とかいっても、これは結局は認定の問題であると思います。犬をネコと言い張っても通るあやふやなしろものであります。
総理は、隣の国と仲よくするのはあたりまえだと、よく言われます。しからば、民意に立脚した
民政が最も好ましいはずであります。なぜ
軍事政権でもいいとするのか。
選挙と国会がないだけで、
軍政も
民政も変わりがないからよいというのでありますか。あるいは、
民政移管するとの
見通しの狂いを責められるのをおそれて、表面強気の反発とも見られるのでありますが、どうでありますか。それとも、
政府は、早くから
軍政に戻る
可能性を予期してこのような
態度をとっておられるのか。われわれは、
総理が御心配になるような一喜一憂はいたしませんが、いやしくも
交渉の当の
相手国の
政権には深い関心があるべきであります。少なくとも、かくあれかしとの念願があるはずであります。
韓国政府が
合法と名を名乗って出てくればそれを
相手——では、あまりにも無
責任であります。
外交担当の能力なしと言わなければなりません。力の政治も時によしというのでは、われわれは安心ができません。
政府の存念のほどを、しかと承りたいと存じます。
以上、当面
現実の
韓国政局についてお
伺いいたしましたが、
韓国政局の安定の方策についてはいかがに考えられるか。私は、
韓国及び
韓国国民の平和と安定と幸福は、全
朝鮮的視野においてのみ解決されると思います。戦後
独立したのは
朝鮮であります。
一つの
朝鮮であります。
二つの
独立国ができたのではありません。ただ、
米ソの
対立のあおりを食って、不幸にも
二つの
政権が生まれたのであります。この
二つが
一つになったとき、
朝鮮が
ほんとうの平和を謳歌し得ることになるのであります。しかし、これは、
理想論であるとか
現実論であるとかという御批判もありましょうが、
核戦争で
民族壊滅を覚悟しない限り、これ以外に
方法はありません。時間がかかるようでありまするが、これが最も近道なのであります。これがためには、いやがおうでも、
南北朝鮮の
対立の
解消融和、
統一政府樹立への道を開いてやらなければなりません。その方向へ
促進のために尽力をするのが
日本の
責任であると思いますが、いかがでありますか。
政府の言動から見れば、
朝鮮に
二つの
独立国もやむなしといったような印象があります。それを
希望しておられるのかどうか。もし、
独立したのは
一つの
朝鮮であるとするならば、いかなる
方法をもって
名実ともに唯一の
政権の誕生を期待しようとするのか、お
伺いをいたします。
南北統一の
促進には、両鮮の
接触が大事であります。幸い、
国連では、ややお
ざなりの感がありまするが、このところ
総会ごとに、
朝鮮統一問題の
審議に両鮮代表の招請が問題となっておりますが、まだ
実現しておりません。はなはだ遺憾であります。
北鮮に言わせれば、
国連は
朝鮮の国内問題に口を出す権限はないと言い、
国連はまた、
朝鮮は
国連憲章を尊重せないとか、
国連の権威ある意向を受諾しないとか主張しております。真に
大局的見地から
妥協点を見つけようとするならば、望みがないわけではありません。もし
朝鮮半島に万一のことがあったならば、
日本は直ちに影響をかぶるのであります。筋違いの
交渉に血道をあげるよりも、
日本は、
国連でまず両
鮮顔合わせの場を作るために努力するのが当然の責務であろうと思います。
政府はこの貴重な平和への努力をすべきだと思うが、御
答弁を願います。
日韓関係正常化の
交渉について
伺います。かつて、
韓国首脳は、たとえ
国民の中に
反対があっても
交渉はまとめると言ったのに対し、
池田総理は、
国民の
納得のいかないものはやらないと繰り返しております。かりに、問題の
韓国の対
日財産請求権処理を
一つとってみても、
独立の祝い金五億ドルの供与は何の根拠がないばかりか、
大平さんの
方式——いわゆる
有償無償の五億ドルの
経済協力をやりますと、
平和条約にある
請求権は解消してしまう、もう何もなくなるのだといった、
大平さんの
方式では、
韓国人個人々々の
私的財産請求権はやっぱり消せないのであります。あとに残されるのであります。さすがの
内閣法制局の
知恵者たちも、
大平さんはどうするつもりなんだろうと、目下、法的
理由づけに頭を痛めているということであります。あくまで
納得ずくで行くというなら、
交渉中止のほかはないのであります。
外交交渉というものは、それによって理解が増し、長く双方の親善に寄与するものでなければならないのが原則であります。しかるに、今の
会談は、
お互いに雲の上のひとり呑み込みの話し合いであるから、必ず将来の紛議の種になることは明らかであります。また、
池田さんのように
外交交渉にむきになることは
失敗します。
政府は、先方から
合理的提案があればいつでも
交渉に応ずるという一方では、
韓国が今これをやれる段階にあるかどうかは問題のあるところというような
答弁をしております。
政府は、
交渉相手への義理と、
交渉中絶の
責任追及と、
面子を傷つけることをおそれて、ずるずる
事態に引きずられているようでありまするが、
外交は、一政党とか
一つの
池田内閣の
面子の問題ではありません。皆さん御承知の、かつては複雑怪奇といって引き下がった
内閣もあったことを、この際想起すべきであります。
しからば、われわれは何をなすべきかといえば、三十八度線の堀をこれ以上深くしないことであります。まず、
南北両鮮の
接触、そして、文化、
経済などの
交流が行なわれるよう
——両鮮が相会すれば激論にもなりましょう。ある場合にはけんかにもなりましょう。しかし、議論あるいは協議をしていることが、実は平和に役立つのであります。
お互いに口数が少なくなった、一見、平静になったと思うときが、非常に危険であることは、歴史の示すところであります。もし、
南北朝鮮が何かの形で
交流往来が行なわれるならば、イデオロギーを越えて、同一
民族の
連帯感はおのずから
融和への糸口をつかむことは当然であろうと思います。
アメリカは
韓国を
民主主義のショー・ルームにしようとしましたが、
失敗をしました。昨年八月末の
日本に在留する
朝鮮人の
外人登録数を見ますと、総数五十六万九千、
韓国人として
登録している者は十九万四千、残る三十七万数十余人は
韓国籍をとらない
朝鮮人として
登録をしております。自由の
国韓国をよしとする者がわずかに三分の一という事実、これは
池田内閣の深い反省を促しているものと思われます。また、
韓国と最も因縁の深い
北九州市長選挙におきまして、わが党の
吉田法晴君が勝利をおさめましたのは、
池田内閣の
日韓交渉に対する強い不信の表われであると解釈する。
総理も
日韓交渉が
国民の
納得を得ていなかったことがよくおわかりになると思います。
これを要するに、
日韓交渉はあらゆる角度から見て
失敗であることを認めて、直ちにこれを中止すること、
日韓の
国交正常化は
統一政府が
実現した後に行なうことに決心されることであります。次に、
韓国から
軍事ムードを取り払い、
第三国の干渉を排し、
南北朝鮮の
融和のチャンスを作って、
統一政府の
実現に
協力をすることであります。
日本の平和と安全は、
日本みずからが決定することで、
アメリカに追従するような力の
政策には
反対して、そして、
日中国交の回復、最近著しい改善の跡を示して参りました日ソ間の
平和条約の
締結、さらには
核実験停止協定、
軍縮実現のために、総力をあげて努力することが急務であることを重ねて申し上げて、
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕