○吉田忠三郎君 ただいま運輸大臣から御
説明のございました
日本鉄道建設公団法案について、私は、
日本社会党を代表いたしまして、その
中心的な問題について
質問するものであります。
まず、その第一は、
日本鉄道建設公団の設立に対する
政府の
基本的な
考え方であります。御
説明によりますと、その
理由の
中心は、経済基盤の強化と地域格差の是正に寄与するために鉄道交通網の
整備をはかるにあるとのことでございますけれども、元来、鉄道網
整備は、申し上げるまでもなく、
日本の産業、経済、文化の基盤であり、これがため、今日まで
政府は、国鉄をして細々ながらその建設に当たってこられたものと信じます。そうであるとするならば、ただいまの運輸大臣の御
説明では、いささかその
基本に欠ける点がありはしないか。すなわち、
基本的には、現
内閣のあらゆる
施策の
中心は、
所得倍増計画の中にある限り、産業基盤の強化も、そうした観点で、鉄道のみならず、陸上
輸送、海運、航空
輸送などなど、いわゆる総合的な
政府の運輸交通
政策が示される中から、しからば鉄道
輸送の受け持つ分野をどのように見きわめ、それを現状からどのように発展させるかということこそ、
提案の
説明の
基本として示さなければならないと私は
考えるのであります。したがって、これらの
説明がきわめて不十分でありますので、この機会に、
池田総理大臣から、現
内閣としての
考え方を明らかにしていただきたいのであります。
次に、国鉄の新線建設が今日まで遅々として進まなかった、その根本的な原因についてであります。私は、その原因は、大よそ二つあげることができると思います。その第一は、
資金の問題でございます。国鉄に対する従来の一般会計からの支出は、きわめて僅少でありました。一方、独立採算制を今日まで強く推し進められている現状、数多い政治路線により赤字線をかかえている国鉄は、新線建設に
資金を投ずることは不可能な状態で、しかも、東海道新幹線、第二次五カ年
計画を
中心とする既設線の改良あるいは複線化のために二千五百億余の投資を余儀なくされ、これがために、勢い、
政府が意図せられる新線建設
促進とならなかったものと推察、今後この点は
一つの課題であろうと思うのであります。
さらに二つ目の問題は、いわゆる政治路線があまりにも多く、今日、鉄道
審議会資料別表にもございまするように、優に二百三十一線という多数に上り、いずれも赤字線区であります。したがって、国鉄は従来の経営方針として、極力新線建設を抑制いたし、赤字線区は徹底的に
合理化することにあったのであります。また、従来国鉄の負担となっていた新線建設の
資金は、第一次五カ年
計画の発足をした
昭和三十二年以降について見ますると、五百七十五億円という巨額に達し、開業新線の営業赤字を含めましたその合計額はかなりなものになり、これが今日の国鉄の経営面に大なる圧迫となり、なお建設
資金の半ばを外部
資金に依存していること等を考慮に入れますれば、今後においても、国鉄のこの種負担は、まだ継続されるものと見なければなりません。この点などは、公団設立に伴う
基本的な課題としてぜひ解明されるべき性格のものだと存じます。しかるに、同
法案各
条文のいずれの項にも明確化されておりません。私は、かかる問題こそ、公共的かつ国家
企業の見地から、
政府資金による恒久的
施策として補償制度の
確立、たとえば公共負担法の制定などをはかることこそが、より重要であり、また急務であると確信をいたすものであります。この際、
政府は、国民にその
見解を明らかにするために、
総理の御
所見を御披瀝願いたいと思うのであります。
第二の問題として、
日本鉄道建設公団に対する
資金面、営業面、経営面における国鉄との
関連においてお伺いをいたします。
まず、資本金についてであります。公団の資本金は、主として
政府と
日本国有鉄道との共同出資となり、当初
政府出資五億と、国鉄は三十八年度予算案に計上された七十五億及び着工中の新線で未完工のまま公団に引き継がれるもの、いわゆる現物出資概算約三百億円内外で発足することは、同
法案第四条で明らかにされているところであります。問題は、
政府出資が、国鉄出資の分に比較をいたしまして、あまりにも低額であること、したがって、今後増資が必要となったとき、当初の例が慣例になりかねないと
考えられるが、この点、
大蔵大臣はどのようにお
考えになっておられるか。
さらに、今後国鉄はなお新線建設
資金の大半を負担するおそれ、もしありとするならば、公団を設立した意義は全く失われ、依然として建設は進まず、加えてその負担は国鉄がしょい込むことになると思うが、この点、公団
法案なり国有鉄道法に明記する必要があるのではないか。合わせて
お答えを願いたいのであります。
次に、業務の範囲についてであります。公団の設立は、鉄道建設
審議会の建議によるもので、同
審議会の意向は、
昭和三十六年以降十カ年に、今日着工中の四十七線、調査中の路線十六線を建設するのほか、低開発地域の開発、臨海工業地帯の
整備、新産業都市建設に必要な新線約二千四百五十キロに、さらに津軽海底すなわち青函トンネル、本州−四国連絡鉄道の建設なども、公団の
事業として施行させようとの
目的は、ただいま運輸大臣の御
説明でもうかがえるところであります。しかも、これらの新線は、完工と同時に国鉄に有償貸付または譲渡され、その営業は国鉄が行ない、運輸大臣の特別の認可制がとられている
法案第二十三条と、逆に、国鉄が公団の業務
運営に必要な範囲内で、公団に対して自己の建物その他施設を貸し付ける場合はすべて無償という
法案第三十七条、さらに建設完工、営業の開始の暁には、年間約百億円の赤字が出るものとさえいわれている現状、公団に有利、これほど利害あまりにも明らかな
法案は、他に類を見ないものと思います。いかに
政府といえども、一方的に押しつけの
法律、片手落ちの
法律と申してもあえて過言でないと存ずるのであります。また、公団と国鉄の業務範囲、たとえば線路分界、災害復旧工事などなど、いずれも明確な基準が示されておりません。これがために、実際運用面で、前に申し述べた
法案適用、つまり公団からは有償、国鉄側からは無償と、結果的に争点となる可能性が多分にあると
考えられるが、この点どのように解釈されておられるのか、運輸大臣の御
所見をお聞かせ願いたいのであります。
次に、
運営面における
資金の内容であります。鉄道
審議会の資料では、十カ年
計画で五千億の
資金が必要とされています。しかも、これが
資金調達をそれぞれ予定しているとのこと、すなわち国鉄負担八百億円、地方公共団体負担三百億円、一般会計負担(通行税充当)二百億円、鉄道
整備税(新設)三百億ないし百五十億、その他公共
事業費二千六百億ないし千四百億と試算されておるのであります。かかる内容は、私は、端的に言って公共投資の増大であり、したがって、他の公共
事業にも重大な
影響を与えることはもとより、市町村など、自治体としては、受益者負担金と固定資産税を取り上げられる結果によって、より財政圧迫を招来をいたし、鉄道
整備税のごときは、事実上、受益者負担というほかなく、明らかに運賃値上げとなり、国民大衆に直ちにはね返ってくると思うが、これに対する
大蔵大臣の
お答えをいただきたいのであります。
次に、第三の問題として、新線建設のあり方についてであります。私は、従前から、国鉄は新線建設について消極的であったことを承知をいたしております。幾多の
理由がありましょうが、その第一は、建設線の大半は、一部権力筋の強要によるものであるといわれていることと、第二には、
企業性を強調する国鉄にとっては、全く相反する赤字線の乱造となっていたからであります。そこで、私は、公団発足を仮定した場合、
法案第二十三条適用にあたり、従前の国鉄経営方策との
関連をどのように扱っていくのか。この際、運輸大臣の
考え方をお尋ねをいたしておきたいと思うのであります。
さらに、私は、鉄道新線の建設は、真に公共的なものに限るべきで、いやしくも、政治や、ただ単に一部権力の強要など、他動的企図によって押しつけられるべきものではないと
考えます。しかるに、今日、青函海底トンネル建設をめぐり、今次統一地方
選挙などに利用されていることなど、まことに遺憾にたえないところでございます。この点、
総理の
見解をただしておきたいと思うのであります。
なお、新線建設のごときは、真に
公共性に立脚する
事業で、当初から採算を度外視して、当然国策として
政府出資による補償制度の
確立をもって、国鉄
事業の一環として施行すべきであり、また、今日、自動車の進出により、現在の
日本では交通産業全体に過当競争が激化をいたし、はなはだしい混乱が生じつつあることは御承知のとおりであります。私は、この際、
政府は、それぞれその機能に応じて、所を得しめて、真の運輸交通
政策を樹立することこそが絶対に必要であり、急務だと
考えるが、運輸大臣の御
所見をお聞かせ願いたいのであります。
最後に、労働条件について伺います。御承知のとおり、公団設立に伴い、大幅な要員の移動が生じて参ります。そこで、第一に、これら
労働者に対する
基本的な労働条件
確保について具体的な
考え方をお示し願いたいのであります。
第二は、技術者の問題であります。国鉄は、今日二千億にも及ぶ工事
資金の消化をしているが、最近とみに技術者の不足をいたしております。これがために、取りかえ、諸改良工事など、施行体制必ずしも完璧とは言いがたく、現に
基本調査作業の省略をいたし、都市構造の変化に即応した体制がとられていないなど、たびたび会計検査院から指摘をされているところであります。かかる状態の中で新線建設担当技術者を公団に移行した場合、今後国鉄における各種工事の遂行はもとより、国民の生命を預かる国鉄の安全性にも重大なる
影響があると
考えられるが、これが技術者の相互運用をいかがお
考えになられているか、運輸大臣の
お答えを願いたいのであります。
なお、
答弁いかんによっては再
質問をいたしますことを申し上げて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕