○松澤兼人君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となっております
政府、社会党、民社党提出にかかる
中小企業基本法案について、若干の
質問をいたしたいと存じます。
まず、
法案の
質問に入る前に、前提として
政府にお尋ねいたしたいことがあります。それは、御
承知のように、第四十回
国会において自民党は、議員立法として、ほとんど今回の
政府案と同工異曲の基本法を出したのであります。当時社会党が完璧に近い基本法を出したために、参議院選挙を控えて自民党も、
政府提案ができなければ党案でも出して選挙を有利にしようと、場当たりの政策から、拙速主義、間に合わせ主義の
法案提出となったのであります。そのとき
政府は、
中小企業庁に
中小企業基本政策
審議室を設置し、中小余業
振興審議会の中に総合部会を設け、廃業構造
調査会に
中小企業部会を設けて検討しているので、
政府提案はできなかったと言っておったのであります。しかし、今回の
政府提案を見ましても、その
内容は、当時の党案と比較してたいして変化も進歩も見られないのでありますが、
〔
議長退席、副
議長着席〕
各種
調査会等で検討された結果はどのような結論を得られたのであるか、その結論をどのように
法案に採用したのであるか、党案を
政府案とすりかえた経緯並びに党案と
政府案の異同、進歩した点等を、詳細に御
説明願いたいのであります。
質問の策一点は、総括的な問題として、
政府の
中小企業政策の根本的理念について
総理にお伺いいたしたいのであります。
今日、
中小企業の
振興育成について異論のあるものはないのでありまして、
総理の
施政方針演説の中でも、
中小企業の近代化の必要性と可能性が取り上げられているのでありますが、われわれの知らんとしていることはその理念であります。すなわち、
総理の力説されている所得較差の解消と関連して、
中小企業、特に零細企業が、独占資本、大資本に伍して対等の
立場から伸長
発展するためには、
政府の大資本尊重の
考え方を是正して、真に
中小企業の
立場を守り、その生産性の向上をはかることが何より肝要のことと
考えるのでありますが、この基本
法案によっては
経済の二軍構造は是正されず、その較差は解消できないばかりでなく、いよいよ増大していくのであります。したがって、
中小企業は旧態依然たる状態に放置されるのではないかと憂慮されるのであります。二布構造の是正と較差の解消についての
総理の所信を伺いたい。
次は、この
法案は訓示的、宣言的条項の羅列でありまして、何らの新味と深みがないことであります。したがって、この
法案は全くの抽象的条文の集成でありまして、具体性を欠き、いわゆる画にかいた餅にすぎないのであります。
中小企業者が血の出る思いをもってパンを求めているのに、
政府はこれに対して石を与えてその場を糊塗しているのでありまして、
中小企業者の死活の問題を打開するには何ら実効をあげ得ないことは今日より明らかであります。
総理は、この空文にひとしい宣言的
法案を、行政の面で、
中小企業者に対していかに対処される所存であるか、明確に抱負を示していただきたいのであります。
次に、この
法案に一貫して流れている精神は、
自由化に備えて、国際競争力強化のためには、設備経営の近代化、高度化が至上の命令であって、非能率、非近代、非合理、非適正な
中小企業は、自由競争の結果、倒産整理されることもやむを得ないというものであります。
中小企業の中でも比較的資本規模も大きく、従業員も多い、大企業に近いもののみが
政府の手厚い保護を受け、新設の
中小企業投資育成株式会社の資金的援助を受けてさらに大きくなることを期待し、他の小規模零細企業を、近代化、生産性の
立場から整理を促進しようという池田精神がにじみ出ているものでありまして、いわゆる貧農切り捨て論の
中小企業版というべきものであります。もしこの
法案が、今いう零細、非能率、
中小企業の切り捨てをその
内容に包蔵していることを知るならば、おそらくはどのような
事態が発生するか想像に余りのあるところであります。
中小企業のすべての人々が所を得て、
わが国経済のにない手として
発展するために、
総理としてはいかなる対策をお持ちになっているか、この
法案が、
中小企業、零細企業の切り捨てになるおそれはないか、御
所見を伺いたいのであります。
内容について、
通産大臣にお伺いいたします。
第一点は、
中小企業者の範囲の点であります。
法案では、商業、サービス業以外の業種にあっては、資本または出資の額が五千万円以下のもの及び従業員数三百人以下の企業となっているのでありますが、これによって見ると、従業員が三百人以下であれば、資本額は一億円でも五億円でも差しつかえないというふうに
考えられるのでありますか。最近オートメーション化が進み、従業員数が減少する傾向があるのでありますが、この条文によれば、どのような巨大な企業でも、従業員を三百人以下に押えれば、この
法案の対象となるのでありまして、まことに了解に苦しむ問題が生ずるのであります。
通産大臣としては、この点をいかにお
考えになっているか。従来の法律の建前としては、資本額は一千万円以下ということであったものが、過般四十回
国会に提出の際には、五千万円に引き上げられているのであります。五千万円という基準をとった理由をお示し願いたいのであります。
第二点は、大企業に対する
中小企業の
立場が明確化されていない点であります。今日、
中小企業は、好むと好まざるとにかかわらず、大企業、独占へ系列化され、下請化されているのでありまして、
中小企業の弱い
立場は、大企業の横暴によって、いよいよその
事態が窮迫しているのであります。代金支払期間の長期化、コスト・ダウン、事業、の縮小等、不況のしわ寄せは一切
中小企業が負わなければならない状態でありまして、これら大企業から
中小企業を守る道は、
中小企業者が団結して大企業と対等の
立場で
交渉できる道を開くことが喫緊の要事であると思うのでありますが、
政府案によりますと、単に抽象的な
規定があるだけでありまして、これでは
中小企業者が大企業に対して自己を守ることは不可能でありまして、いよいよ増大する独占、大企業の圧力は、
中小企業をブルドーザーにかけて押しつぶし、切り捨てていくことは必至であります。
通産大臣は、大企業と
中小企業の
立場について、この
法案がいかなるきめ手を持っているか、お示し願いたいのであります。
第三点でありますが、最近、流通革命といわれているように、
中小企業と百貨店、百貨店とスーパー・マーケット、スーパー・マーケットと小売
業者、さらにはスーパー・マーケット
相互間の競争、外国スーパー・マーケットの
日本進出等、非常な急激な変革を見せているのでありまして、特にスーパー・マーケットの問題は、ここ数年来の新しい要素として、
中小企業問題に関して重大な
意味を持ってきているのであります。
調査によりますと、現在
わが国のスーパー・マーケットは約四百店前後といわれ、セルフ・サービス店は二千店以上ということであります。最近、
アメリカ第二のスーパー・マーケットといわれているセーフ・ウェーと住友商事の提携による
日本進出は、小売商に異常な衝撃を与え、これが阻止のために全国大会まで開催されているのであります。特にセーフ・ウエーの
日本進出について、
通産大臣はいかに対処されていくお
考えであるか。先ほ
ども川上君の
質問に
お答えがありましたが、特に今後増大するところのスーパー・マーケットの動向に対してわれわれは何らかの調整
措置を必要とするのではないかと
考えておりますが、
中小企業擁護の
立場から、いかなるお
考えをお持ちでありますか、お尋ねいたしたいのであります。
政府案に対する
最後の
質問は、この
法案は単なる訓示的条文の羅列であって、従来の法律に屋上屋を重ねる程度にすぎません。
中小企業者が真に
政府に向かって強力な
措置を要望するのは、このような宣言的条文ではなく、現在の不況と過当競争を脱却して、明日からは、
中小企業が
日本経済において正当に占めている分野において自己の職責を果たし、これに寄与することの条件であります。
三十八年度
予算を検討してみますと、
予算総額二兆八千五百億円のうち、
中小企業対策
予算は百十八億四千万円、前年度に比較すれば二十六億円の増額でありますが、
中小企業対策費が全体の
予算の中で占めている割合は実に〇・四%にすぎないのであります。防衛関係費の額に比べてみるならば、二十分の一にも足りない状態であります。新たに
中小企業投資育成株式会社への出資六億円が計上されておりますが、
中小企業向け財政投融資は、総額一兆一千九十七億円のうち千三百十四億円で、全体の一一・五%でありまして、財政投融資の中で
中小企業分だけ取り出して伸び率を調べてみますと、三十六年−二十七年は三〇・八%、三十七年−三十八年は一五%と、前年伸び率に比較すれば約半分になっているのであります。これでは
法案に財政上の裏づけがあると申されないのでありまして、
中小企業者に対しては全く期待を裏切るものであります。この程度の裏づけ
措置では、旱天に慈雨を待ち望んでいる
中小企業者の切なる願いを無視したものでありまして、羊頭狗肉のそしりを免れるわけにいきません。大蔵
大臣、
通産大臣にお伺いしたいことは、
中小企業者に対する財政上、税制上の
措置について、具体的にその
所見を伺いたいのであります。
次に、社会党案について提案者にお尋ねいたします。
社会党は基本
法案のほかに、
中小企業組織法案、
中小企業省設置法案を提出されておりまして、この御苦労はまことにわれわれの敬意を表するところであります。先ほど川上君からおほめをいただいたように、非常に膨大な三
法案を提出しているのでありますが、私は、主として基本
法案についてお尋ねをいたします。
第一点は、党案では、二重構造の解消の点に重点を置いているといわれるのでありますが、党案によって、現在問題となっている
わが国経済の二重構造の解消と較差の是正はいかように対処されることになりますか、御
所見を伺いたいと存じます。
第二点は、先ほ
ども触れました点でありますが、
政府案と社会党案の大きな相違の
一つは、
中小企業の定義であります。すなわち、社会党案によれば、商業、サービス業を除く企業にあっては、資本金三千万円以下で、かつ従業員三百名以下となっており、両建の方式をとり、
政府案は、御
承知のように、資本額では五千万円以下、従業員数では三百名以下と、いずれか一方の基準によることになっており、大きな相違があるのでありまして、党案の骨子とする理念についてお伺いをいたしたいのであります。
第三点は、零細企業は常に国家の恩恵から見放され、
政府案でも、
中小企業の範疇が漸次引き上げられて、小企業、零細企業は滅びゆくにまかせる
方針でありますが、党案は、これらの零細な企業に対して、はたしていかなる対策によってその所を得させ、
日本経済の進展に寄与させようとしているのでありますか、御
説明をいただきたいのであります。
第四点は、大企業と
中小企業の企業分野の問題であります。
中小企業に適当と
考えられる企業分野はどこまでも守っていくべきであり、巨大な繊維会社がシャツやエプロンのようなものまで加工販売するようなことは、明らかに
中小企業の分野に対する不当な進出でありまして、
中小企業の生命を圧殺するものと
考えるのでありますが、社会党はこれに対していかなる対策をお持ちでありますか、お伺いいたしたいのであります。
第五点は、
さきにも申しました大企業と
中小企業の間における紛争の処理に関する点であります。社会党案のごとくであるとして、それで代金支払いの問題、コスト・ダウンの問題、近代化要請等の諸問題がはたして解決できるかどうか、その見通しについてお伺いをいたしたいのであります。
なお、これに関連して特に提案者に確かめておきたいことがあります。それは、党案第八章の「
中小企業者と大規模事
業者等との間の紛争の調整」中にあります第六十三条第四号の「小売業を営む
中小企業者以外の者が行なう一般消費者に対する販売事業に関しその者と小売業を営む
中小企業者との間に生じた紛争」とは、いわゆる農協、漁協、生協等の事業活動に関するものではないかと思われるのでありますが、この条文の趣旨は、農協、漁協、生協が行なう事業活動が、正常なものであり、組合員の
経済的な利益のために行なうものには適用がないと
考えるのでありますが、この点を明確にしていただきたいのであります。
民社党案について、提案者に
質問いたします。
民社党案前文の中に、中産階級化を目標として
中小企業政策の基本原則とすると言っておりますが、中産階級とは、階級論的にいかなる国民の階層を
考えているのでありましょうか。
中小企業の場合、一定の資産を有し、一定規模の
経済活動を営み、一定の所得を得ている国民の階層を
意味するのであるとするならば、この言葉の
意味はきわめてあいまいであって、法律の用語としては未熟であり、適当ではないと思われるのでありますが、これを明確にいたしていただきたいのであります。
第二は、事業分野の問題について、特定の業種については大企業が事業を経営することができないようにすることになっておりますが、これらの指定業種については国が大企
業者について損失補償をすることになっておりますが、損失補償とはどういう法律的な
意味を持っているのか、これを伺いたい。さらに、指定後には現在大企
業者が行なっている指定業種に属する事業を絶対的に廃止するということは、既得権の侵害とも見られ、いろいろそこに問題があると思うのでありますが、御
説明を願いたいのであります。
以上をもちまして私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕