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国務大臣(田中角榮君)
わが国は、今や、国際
経済社会の有力な
一員として、
貿易立国の
精神に徹しつつ、強力に
自由化を
推進するとともに、健全にして
均衡のとれた
成長のための
基盤を一段と強化すべき新たな年を迎えたのであります。
私は、この年の
課題にこたえるための
努力の焦点を
一つにしぼれば、それは、
輸出力の
増大であると信じております。すなわち、
貿易・為替の
自由化は、
諸国間の
輸出入の
拡大を通じて国際分業の利益をもたらすものであり、さらに、
わが国にとりましては、諸
外国の差別的な対
日輸入制限の撤廃を
促進し、
輸出市場を
拡大するために不可欠な
手段となるものでありますが、反面、
輸出力の
増大を伴わずして
自由化を進める場合におきましては、輸入の一方的な増加から
国際収支の
均衡を失することとなるのでありまして、
輸出力の
増大こそ
自由化の実現に欠くことができない前提であります。
また、
わが国経済の健全にして
均衡ある
成長を
達成するためには、
輸出力を
増大して、
経済規模の
拡大に伴い必要な資源の輸入余力を増強することが、絶対に必要であることは、特に論を待たないところであります。
今回提出いたしました
昭和三十八年度
予算も、このような心がまえをもって編成されたものでありますが、その際、私が最も意を用いた諸点は、次のとおりであります。
第一に、
社会資本の
充実、
産業基盤の強化であります。
わが国経済が、対外競争力を強化し、
輸出力を
増大し、
自由化に邁進するためにも、また、
日本経済の安定
成長を実現するためにも、
民間資本の
拡充に即応して、
社会資本を格段に
充実し、
産業基盤を一そう強化し、
国民経済全体として、
近代化、合理的な
国づくりを行なわねばならないことを痛感いたしております。
第二に、国内
産業の
体制整備であります。
わが国産業の
輸出力は、近年における飛躍的な
経済発展を経て、大幅に強化せられたとはいえ、
貿易の
自由化を
一段と
推進して参るにあたりましては、
世界的な
視野に立って、
産業構造の
高度化、企業体質の
改善等を急速に進めるとともに、必要に応じては、
雇用と
資本の転換を
促進し、さらに過当競争を排除する等、
産業体制を
整備することがきわめて緊要であります。また、このことは、全体として、
生産性を高め、資源の合理的な利用を進め、もって
日本経済の健全な
成長を
促進することとなるのであります。
第三に、文教、
社会保障等の重要
施策であります。
文教には文教としての、
社会保障には
社会保障としての本来の使命があり、
意義があることは、もとよりでありますが、同時に、
人つくりの持つ
経済的な
役割が急速に
増大しつつあることも事実であります。
経済の健全にして
均衡のとれた
成長のためには、そのにない手たる
国民の
能力の
開発活用に努めるとともに、
成長の
成果を広く各階層に及ぼすことが必要であると固く信ずるものであります。
このことは、国際的な
経済交流の一そうの活発化にあたり、
国際競争力を
充実し、
輸出力を
増大するためにも、また同様に必要な事柄であります。
次に、今回提出いたしました
昭和三十八年度
予算について、項目別にその概略を申し述べます。
まず、
社会資本の
充実のための公共投資の
拡大であります。
道路整備につきましては、最近における
道路交通の実情にかんがみ、一般財源の投入を大幅に増額したほか、
財政投融資計画におきましても、前年度に対し七割近い増額を行ない、中央、地方を通ずる
道路網の
整備を
促進することとし、特に、大都市及びその周辺の
道路に重点を置くことといたしました。また、
港湾についても、
輸出の
振興と地方
開発に重点を置いて五カ年計画を
促進するとともに、国有鉄道、電信電話
施設の計画的
拡充のため、必要な資金
措置を講ずることとしました。
さらに、
農業基盤の
整備についても、一そうの
充実に努め、また、用地、用水の確保をはかるため、一般会計及び
財政投融資を通じ、所要の
措置を講じております。治山治水
対策につきましては、既定の五カ年計画を特に
推進するため必要な
予算を計上し、
災害復旧の進捗と相待って、
国土の保全に万全を期することといたしたわけであります。
以上、公共事業
関係費の総額は、
災害復旧
関係費を除き四千五百六十四億円に達し、
昭和三十七年度当初
予算に対し七百七十八億円の増加となります。なお、公共事業の円滑な遂行をはかるため、特定公共事業に関する譲渡
所得に対する課税を大幅に減免する
措置を講ずることといたしております。
文教
施策の飛躍的な
拡充をはかり、
科学技術を
振興して、
現下の要請にこたえることは、
政府として最も意を用いているところであります。
これがため、
道徳教育の
充実、
教育水準の質量両面における
向上と
教育環境の
改善、小・中
学校の学級編成及び教職員定数の適正化と
施設の
整備をさらに
推進するとともに、高等
学校生徒の急増に備えての校舎の一そうの
整備につき、所要の資金
措置を講ずることといたしました。
また、前年度に引き続き、国立高等専門
学校を創設
整備するとともに、大学、高校における理工系の学生、生徒の増募、
施設等の
充実をはかり、
産業の
発展に伴う技術者の確保に遺憾なきを期しております。さらに、
現下の
科学技術の動向にかんがみ、各省研究機関の研究
体制の強化、国産新技術の
開発、原子力、防災科学等の重要研究を
推進して、
科学技術の一段の
向上を期することといたしております。育英奨学、低
所得者子弟の就学
援助等、
教育の機会均等を確保するための
施策、勤労
青少年教育のための方策につきましても、特段の
配慮を加えましたほか、
義務教育教科書の無償
措置を
拡大するとともに、新たに、小・中
学校の全学童を対象とするミルク給食について、
財政負担の
措置を講ずることといたしました。
以上、文教及び科学
振興費の総領は三千七百十七億円となり、
昭和三十七年度当初
予算に対し六百三十四億円の増加となっております。
次に、
社会保障及び
社会福祉関係であります。
わが国の
社会保障制度は、戦後、目ざましい
発展を遂げたのでありますが、
昭和三十八年度
予算におきましては、
社会保障関係諸
施策の画期的な
拡充改善をはかることといたしました。
すなわち、重ねて、
生活保護基準の大幅な引き上げを行ない、児童保護及び老人福祉を中心に、
社会福祉費を増額するとともに、
国民健康保険の世帯主七割給付、低
所得者の保険料の軽減を新たに実施するほか、医療費の
地域差を撤廃する等、医療保障の
改善をはかることといたしております。また、
国民年金におきましては、
福祉年金につき所要の
改善措置を講ずることといたしております。
さらに、
雇用対策の面におきましては、
産業構造の変革に即応して、労働力移動の円滑化をはかるための諸
措置を一図
拡充強化し、
失業対策事業の刷新
改善をはかるとともに、失業保険につきましても、給付日額の引き上げ等、給付
内容の
改善措置を講ずることといたしました。
以上、
社会保障関係費の総額は、三千六百七十九億円となり、
昭和三十七年度当初
予算に対し六百七十六億円の増加を示しております。
このほか、なお、
環境衛生施設の
整備につき、新たに五カ年計画を策定して、その計画的
促進をはかるほか、
住宅対策につきましても所要の
改善措置を講ずることといたしました。
輸出力の
増大は、申すまでもなく、国の総力をあげての
経済の
合理化、
近代化によって
達成されるべきものでありますが、
貿易振興及び
経済協力推進のための直接の
措置といたしましては、引き続き、海外市場調査、国際見本市、技術
協力等の事業を
拡充強化するとともに、
日本輸出入銀行に対し多額の
財政資金を投入し、もって
輸出の増進に資することといたしました。
農林漁業の
振興につきましては、
成長農産物の選択的
拡大、
農林漁業の
近代化、
合理化と、生産
基盤の強化をさらに
促進し、経営の
安定向上を期するほか、農林水産物の価格安定
対策についても特に意を用いております。また、農林金融につきましては、
農業近代化資金の融資ワクを
拡大するとともに、
農林漁業経営構造
改善資金融通
制度を設けて、
農林漁業金融公庫の資金の飛躍的な
充実をはかり、特に、長期低利の資金を確保する方途を講ずることといたしました。
中小企業につきましては、その基本的
対策を
確立するとともに、経営の安定強化に資するよう、従来からの諸
施策の
拡充強化に加え、新たに、団地化、協業化を
推進するための
中小企業高度化資金融通特別会計を設置するほか、
中小企業投資育成株式会社を新設して、自己
資本の
充実に資するとともに、税制面においても、これらの
施策に即応して、
中小企業者の設備等に関する割増し償却
制度の新設等を行なうことといたしております。また、
中小企業金融
対策といたしましては、
中小企業信用保険公庫において、設備の
近代化をはかるための新種保険を創設するほか、融資基金に充てるため、出資を増額するとともに、
財政投融資において、
国民金融公庫、
中小企業金融公庫、商工組合中央金庫等の貸付ワクの
拡大に必要な資金
措置を講じ、
民間資金の
協力と相待って、
中小企業金融の
拡充、円滑化に資することといたしております。
特定の
産業に対する
対策といたしましては、まず、
石炭鉱業の安定強化が、エネルギー及び
雇用対策の両面から見て、今日、きわめて重要であります。
昭和三十八年度におきましては、原油及び重油の関税率を引き上げることとし、これによる関税収入の増加額を勘案しつつ、
石炭鉱業の
近代化、
合理化、産炭
地域の
振興、炭鉱
離職者対策等を一そう強力に
推進するほか、新たに、鉱害処理の
促進をはかるための鉱害賠償基金、電力用炭の引き取り確保のための電力用炭代金精算株式会社を創設することとし、百八十億円を計上いたしております。また、
財政投融資計画におきましても、
日本開発銀行、
石炭鉱業
合理化事業団、産炭
地域振興事業団の事業遂行に支障を生ずることのないよう、所要の資金
措置を講ずることといたしました。
また、海運業につきましては、合併等の集約化を行ない、自立態勢を整える企業に対し、既往の借入金の利払いを猶予することとし、業界の再編
合理化を
推進するとともに、新造船に対する利子補給率の引き上げ等を行ない、
国際競争力の強化をはかることといたしております。
さらに、新たに、
自由化に備える
対策として、
非鉄金属鉱業について金属鉱物探鉱融資事業団を設置し、また、
日本開発銀行の融資対象においても特別の考慮を払うほか、重電機器や工作機械についても、
外国製品の有利な延べ払い
条件を利用した進出に対処するための
措置を講ずる等、格段の意を用いております。
地方
財政の
内容は、幸いにして、近年著しく
改善されつつありますが、
昭和三十八年度においては、電気ガス税の負担の軽減をはかり、他方、市町村たばこ消費税の税率を引き上げ、地方財源の
充実をはかることといたしました。そのほか、地方交付税及び地方税の大幅な増収、地方団体の起債ワク
拡大等により、地方の行政
内容、住民福祉は、引き続き
向上するものと期待される次第であります。なお、地方団体におきましても、経費使用の
合理化をはかり、
財政の健全化の
努力を続けられるよう希望するものであります。
わが国の税負担は、相次いで行なわれた税制改正の結果、
相当合理化されて参りましたが、
わが国の
社会経済の著しい進展に即応するため、現在、税制調査会において、租税
制度の基本的検討を行なっているところであります。
しかし、来年度におきましても、
国民生活の安定に資するため、一般的な負担の軽減をはかること、及び
現下の
経済情勢に顧み、当面の
産業及び金融政策上の要請に対応する税制上の
措置を講ずることの二点を主眼として、平年度五百四十億円程度の減税を行なうことといたしました。すなわち、中小
所得者の負担の軽減をはかるため、
所得税の課税最低限を引き上げ、中小法人の留保
所得課税を軽減するとともに、
資本蓄積の
促進、
社会資本の
充実、
産業体制の
整備、
中小企業設備の
近代化等のための税制上の
措置を講ずることといたしたのであります。
財政投融資につきましては、以上、それぞれの項目においても触れたところでありますが、計画の策定にあたりましては、
住宅、上下水道を初めとする
生活環境施設の
整備、及び
道路、国鉄等の公共投資の
拡充強化に重点を置くほか、
輸出の
振興と国内
産業の
整備合理化に努めるとともに、引き続き、
中小企業金融の円滑化、
農林漁業の
振興に特に
配慮いたしております。
以上、
昭和三十八年度における
財政の重点項目についてその概要を御説明いたしましたが、一般会計
予算の総額は、歳入歳出とも二兆八千五百億円でありまして、
昭和三十七年度当初
予算に対し四千二百三十二億円、すでに成立いたしました補正
予算を加えた
予算額に対しましては三千六百九十億円の増加となっております。
また、
財政投融資計画の総額は、外貨債等を含み一兆一千九十七億円でありまして、
昭和三十七年度当初計画に対し二千四十五億円、改定計画に対しては一千四百三十九億円の増加となっております。
このように、
昭和三十八年度
予算及び
財政投融資計画は、
時代の要請と
現下の
経済情勢に即応して、
昭和三十七年度に比し一段とその
規模を
拡大しておりますが、通貨価値の安定と
国際収支の
均衡維持の
配慮のもとに、健全
均衡財政の
方針は引き続き堅持されているのでありまして、
財政投融資における
政府資金、
民間資金を通ずる積極的な活用とも相待って、デフレの脅威もインフレの不安もない正常な
経済の
発展に大きく貢献すると信ずるものであります。
なお、この際、
昭和三十七年度補正
予算第二号について、一言申し述べます。
公務員の給与
改善、
石炭対策、過年
災害の復旧等につきましては、さきに、補正
予算第一号をもって対処したのでありますが、さらに、
産業投資特別会計の資金の
充実、義務的経費の
不足補てん、地方交付税交付金の
増額等を
内容として、八百二十一億円の補正
予算第二号を提出いたしました。
産業投資特別会計の資金への繰り入れは、
経済基盤の強化、企業の体質
改善を強力に
推進すること等のため、同会計よりの出資需要がますます
増大しておりますので、この際、その資金を
充実することが急務と
考えられるところから行なうものであります。
この結果、
昭和三十七年度一般会計
予算の総額は、歳入歳出とも、それぞれ二兆五千六百三十一億円と相なることになります。
次に、金融政策について申し述べます。
過去一年余にわたり、
国際収支の
改善を目途として、
一連の金融引き締め策を講じて参りましたが、これら景気調整のための
施策も所期の効果をおさめましたため、
日本銀行においては、昨年十月及び十一月の二度にわたり、公定歩合の引き下げ等を行ない、これとともに、金融政策も新たな局面を迎えるに至ったのであります。
金融政策の新しい局面におきましては、金融正常化の必要が一段と痛感されております。御承知のように、
日本銀行においては、昨年十月の公定歩合の引き下げに際し、高率適用
制度の改正を行なうとともに、今後の金融調節の
手段としては、債券の売買を一そう弾力的に行ない、これにより、市中金融機関が
日本銀行借り入れに過度に依存する姿を
是正する
方針を決定いたしました。これは、金融の正常化のための
環境を醸成する上からもきわめて好ましい
施策であると
考えるのでありますが、私は、このような
日本銀行の新しい
方針と相待って、金融の正常化については、さらにその
推進をはかる
考えであります。この点に関し、ことに、長期の安定した
産業資金調達のために、株式市場や公社債市場の育成強化をはかることは、きわめて肝要でありまして、その健全な発達のため一そうの工夫と
配慮を重ねて参りたいと存じます。なお、両市場の安定した
運営は、言うまでもなく、健全な大衆投資家の支持と
信頼を
基盤とするものでありますが、今後とも、この点を特に重視して、所要の
施策を講じて参る
所存であります。
次に、金利につきましては、
わが国の金利
水準は、諸
外国の金利
水準に比較して割高であり、その引き下げはかねてより要請されているのでありますが、特に、今後、
わが国経済の
国際競争力を強化するためにも、国際金利
水準に、可能な限り
さや寄せしていく必要があります。もとより、金利の問題は、資金需給の実態に即して
考えらるべき問題でありまして、まず、このためには、貯蓄増強に努める等、資金供給の増加をはかるとともに、資金需要の調整にも留意し、金利引き下げのための
環境を
整備することが肝要であります。このような見地から、私は、
国民貯蓄の増強を一段と
推進して参る必要のあることを強調するものであります。
政府といたしましては、来年度より、従来の預貯金等の利子
所得に対する課税について、一そうの優遇
措置を講ずるとともに、
国民貯蓄組合にかえて、新たに少額貯蓄優遇
制度を設けることにより、免税
制度の適正な
運営をはかるなど、貯蓄増強のための
一連の
施策を行なうことといたしておるわけであります。
以上、金融政策の新局面について申し述べましたが、なお、この際、ここに付言いたしますと、さきの景気調整の過程において、
政府は
経済界に対し、いたずらに摩擦や困難が生ずることのないよう、特に、その影響が不当に
中小企業等に対し、しわ寄せされることのないよう、適時適切な
施策を講じて参ったのでありますが、なお、ここしばらくは、その円滑な収束のために、
財政金融面を通じて、きめのこまかい
配慮をいたして参る
考えであります。
次に、
国際収支の状況並びにこれに関連する当面の国際金融政策について申し述べたいと存じます。
国際収支は、当初期待されました
昭和三十七年度下期を待たずして、すでに、上期には
均衡を回復し、その後も
改善を続けております。
外貨準備高も、昨年末をもって十八億ドルをこえるに至っており、
米国市中銀行からの特別借款の今後の返済については、外貨の資金繰り上何らの支障もなく、また、昨年一月国際通貨基金との間に締結いたしましたスタンド・バイ取りきめも、これを実際に使用することなく、最近、終了させることができた次第であります。しかしながら、
国際収支は、国内
経済活動の動向等により、変動しやすいものであります。また、
貿易・為替の
自由化の影響は、これから本格的に現われてくるものと
考えなければなりません。
世界経済の今後の動向も必ずしも楽観を許さないものがあります。
他方、主要な先進工業
諸国は、つとに通貨の交換性を回復し、その
相互間の
経済交流はますます活発化しておりますが、最近は、欧州
経済共同体の進展、
米国における
通商拡大法の成立を契機として、関税の
一括引き下げを行なおうとする
機運がとみに高まっております。
以上のような
情勢に即応し、
わが国としては、
国際収支の基礎を一そう強固なものにするとともに、これまでに
達成した
自由化の
成果の上に立って、さらにこれを着実に
推進し、円の交換性の実現という大きな目標に向かってその
体制の
整備に一段の
努力を傾けるべきであります。
この際、
国民各位におかれましても、一そう広い
視野に立って、
わが国経済の当面するこの大きな転換の時期に対処していかれることを切望いたします。
また、低
開発国に対する
経済協力は、今後の
世界貿易並びに
経済の
発展のために必要であるのみならず、
わが国の
貿易拡大のためにも大きな
意義を有するものであります。
わが国は、これまでも、国際機関への出資や二国間の取りきめ等を通じて、できる限りの
経済協力をして参ったのでありますが、今後におきましても、国力の許す範囲内で積極的に
努力いたしたいと
考えております。
以上、
財政金融政策の基本的な
考え方と
予算の大綱について御説明をいたしました。
もとより、躍動する国際
経済社会の中にあって、
日本経済が、その大きな歩みと完全に一体化しつつ着実な
発展を続け、
所得と福祉の一そうの
増大を
達成し、自由
世界をささえる
一つの大きな柱としての地位を
確立することは、容易ならざることであります。
しかしながら、戦後わずか十八年、幾たびかの
危機を乗り越えて今日のごとき
日本を作り上げた
国民の不撓不屈の
努力と旺盛な
創造力をもってすれば、必ずやその目標を
達成し得るものとかたくこれを信ずるのであります。
中国の古典に、「財は国の命なり」とあります。私は、
わが国経済の目標
達成の上において、
財政金融政策がそのかなめであることを思うとき、職責の重大さを身にしみて感ずるとともに、力の限りを尽くして
努力する覚悟をかたくするものであります。
国民各位におかれましても、
政府の意のあるところを了とせられ、あらゆる
理解と
協力を寄せられんことを切望してやみません。(
拍手)