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1963-06-06 第43回国会 参議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月六日(木曜日)    午前十時二十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     鳥畠徳次郎君    理事            後藤 義隆君            松野 孝一君            稲葉 誠一君            和泉  覚君    委員            大谷 贇雄君            坪山 徳弥君            中山 福藏君            小宮市太郎君            岩間 正男君   国務大臣    法 務 大 臣 中垣 國男君   政府委員    警察庁長官   江口 俊男君    警察庁警備局長 三輪 良雄君    法務政務次官  野本 品吉君    法務省刑事局長 竹内 壽平君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (検察行政に関する件)  (警備警察運営等に関する件)   —————————————
  2. 鳥畠徳次郎

    委員長鳥畠徳次郎君) ただいまから法務委員会開会いたします。  本日は、検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  稲葉君から発言を求めておられますので、これを許します。
  3. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 検察行政運営に関する件ということでちょっとお聞きしたいと思うわけです。  最初に、ただいま、法務省役人あるいは検事、こういうふうな人が書物を書く、あるいは論文外部雑誌等に発表する、こういうふうな場合には、法務大臣承諾がいるのですか。
  4. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) お答えいたします。  検事なりあるいは法務省職員自分意見を書きまして書籍にして発行するような場合に、特別大臣許可を得るというようなそういう制度なり前例なりにはなっておりません。
  5. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その書物論文、こういうふうなものの中で、検察あり方、これを批判してはいけないのでしょうか。
  6. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) 検察内部検事批判するということは、これは一向に差しつかえはないということで、従来たくさんの検事がいろんな雑誌あるいは本等にいたしまして外部意見を発表しておるようであります。
  7. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いろんな雑誌だとか本とかで外部意見を発表しておられる、私はあまりそういうのを見たことがないのですが、それは随筆みたいなものはあると思います。たとえば出射さんの「検事物語」だとかその他のものはありますけれども検察あり方、これをこういうふうに直さなくちゃいけないとか、こういう点に欠陥があるとか、それをきわめて善意な形で批判する文章というのを検察官の中から書いたのを私は見たことがないのですが、何かそういうものがありますか。
  8. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) それは実はほかにもあるようでありまして、「法律時報」その他の本にも検事検察行政あり方検察官あり方等について今まで意見を公表した人はあるようであります。
  9. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法律雑誌なんかに書いているのは、法務省意見というものをそのまま書くとか、法案の内容を解説している程度のものが多いのじゃないですか。批判したというようなものはないのじゃないですか。
  10. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) それはたくさんございまして、もちろん安倍君のお書きになったようなお目にとまるような表現で書いたものはあるいは少ないかもしれませんが、ごく最近にも、わが局の伊藤参事官が、今ここへ持ってきておりませんが、最近の「ジュリスト」でございますか、「法律時報」でございましたかに、新検察論といった式のものをいろいろな角度から検討して意見を述べておりますし、私ども部内でこういう問題は取り上げて検討しておりますが、参考文献などをかき集めてみますと、戦前戦後を通じまして検察論といったような学問的なものから、やや批判にわたったものから、こうありたいといったようなもの、そういうものはかなりの論文があって、三十編か四十編くらいの論文があるように承知いたしております。
  11. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 きょうでなくてけっこうですから、そういうふうな論文やなんかの一覧表をひとつ出していただきたい、こう思うのです。これはすぐというわけにはいかぬでしょうけれども、これはあとで出していただきたいと思います。  それから今の伊藤参事官が書いたというのは、「ジュリスト」か「法律時報」か、私読んでおりませんけれども、そういうときには、刑事局長許可を必要とするのですか。その内容刑事局長検討しているわけですか。
  12. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 検討いたしておりません。
  13. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは大臣御存じかと思うのですけれども検事一体原則というのがあるのですが、これはどういうようなものと大臣は御理解されているわけでしょうか。
  14. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) 刑事局長から答弁をいたさせます。
  15. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっと待って下さい。大臣がどういうふうに御理解されているかということを私はお聞きしているので、刑事局長の見解をお聞きしているわけじゃないのです。僕はこれは決して専門的な問題じゃない、こう思うのですが。
  16. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) ただいまの稲葉さんのお尋ねでありますが、これは制度機構上の問題で、相当専門的な問題だと思いますので、一応刑事局長から答弁をさせまして、あとでもし私の意見があれば言わしていただきます。
  17. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 大臣がどういうふうにお考えになっておるかということの御質問でございまして、刑事局長の私が申し上げることは御質問の御趣旨に反するかもしれませんが、やはり非常に法律的な概念でございますので、事務当局からまず意見を述べさしていただきまして、大臣仰せのとおり、また大臣から大臣御自身の御意見をお聞き取り願いたいと思います。  私の理解いたしております検察一体原則というのは、行政機関としての一体性というものは何もことさら検察官について言う必要はないのでありまして、検察官行政官でございますから、事柄性質行政官としての一体性は常に持っておるわけであります。ところが、特にこの検察一体ということをなぜ言うのかということを理解していただくことが第一ではないかと思います。その意味は、検察官個々独立単独官庁と言われておるのでございまして、これは検察事務に関しまして検察権を行使していく上において一人一人の検事独立官庁としての法律上の職務を負わされておる、こういうふうに前提が立っておるのであります。そこで、もしそういうことになりますると、一国の検察を行使する場合に、あるいは一貫性を失い、あるいは恣意に流れるということがございますので、検察事柄性質上、検察官検事総長を頂点といたしましてそれぞれ部下職員を指揮監督することができる、こういう建前でございます。したがって、ある検察事務につきまして、監督官がある検事の持っております職務遂行を取り上げて他の検事に配転することもできるわけでございます。これはあくまで検察事務につきましての検察の統一ある運用をはかるために特に検察庁法規定しておりますのでございます。で、ほかのものは自由であるが検察だけが指揮命令のもとに動くというのではなくして、行政官であります以上はピラミッドの形で大臣のもとに一切の部下職員が統制ある行動をとらなければならないことは論を待たないのでございますが、検察官には逆に個々検察官が一人一人が独立官庁たる性格を持っておるというところから来る検察庁法規定でございまして、この検察庁法規定をさして検察一体原則、かように私ども理解をいたしておる次第でございます。
  18. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この検事一体原則検察官一体原則、これは旧憲法のもとにもあったわけですが、旧憲法のもとにおけるそれと、新憲法というか現憲法のもとにおけるそれと、一体違いがあると考えてよろしいでしょうか。
  19. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 検察事務に関しましては、大臣検事総長との関係大臣との個々検察官との関係において、法制上異なるものがございます。その他の点につきましては、今の検察一体原則等につきましては、前裁判所構成法時代と今日の検察庁法時代において何らの差異はないものと考えております。
  20. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは、検察行政あり方運営について、旧憲法のもとと新憲法のもととでは、一体違いがあると考えてよろしいんですか。これは、大臣、どうでしょうか。
  21. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) お答えいたします。  違いはないと考えております。
  22. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務省役人——役人というか公務員、あるいは検事が、国会国政調査権発動として正式に参考人として呼ばれた場合、出席するのについて、それを大臣として許可しないというふうなことができるんですか。
  23. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) お答え申し上げたいと思いますが、これは法務省所属しております検事、それから検察庁に勤務しております検事とによりましてやや異なる面があろうかと思いますが、これを拒否することができるかどうかという問題につきましては、非常にデリケートな問題もございますし、法律上もむずかしい問題が存在しますが、私ども理解しておりますところでは、国会のお呼び出しに対しまして出席することの可否につきましては、もっぱら本属長官が差しつかえあるかないかということできめるわけでございまして、現に公務に従事しております者でございますので、その公務とのかね合いにおいて許可するかどうかをきめるべきものであろうと思います。で、もし公務に差しつかえないから出席してもよろしいという許可が出た場合におきまして、出席することは当然でございますが、その発言内容につきましては、今度は職務との関係において、場合によってはお答えできないという場面が出てくるのでございます。それに対して上司の許可があれば答えてもいいという場合もあるわけですし、第二段に今度は供述内容につきまして許可を要するものがある。まず第一段に、出席については公務に差しつかえがあるかどうかということで決せられる。これは差しつかえないといたしましても、供述内容につきましてまたあらためて許可を要する問題がある。かように二段がまえになるというふうに理解いたしております。
  24. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国会で正式に国政調査権発動として参考人として呼ぶことをきめた場合のことを聞いているわけですが、こういう場合に、公務に差しつかえがあるからということで出席所属長官拒否をできる場合があるということ、これはちょっと穏やかでないと思うのですが、これは一体どういう場合のことを言っているわけですか。
  25. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 国会最高機関でございますので、正式のお呼び出しに対しましては、可能なる限りそれに応ずるという態度が望ましいわけでございますけれども公務遂行上真にやむを得ない事情にあります場合には、それを明らかにいたしましてお話し合いをするというのが、つまり形の上では拒否ということになりますが、そういうお話し合いをするのが行政権立法権との両者の権限の調整、調和点というふうに私は解しておるのでございます。裁判所呼び出し等におきましても、真にやむを得ない事情がありますれば、正当の理由がありますならば、これは出席拒否される場合があるのと同様でございます。
  26. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうふうに真にやむを得ない事情があるという場合に、国権の最高機関である国会、その発動国政調査権、それとの関連を当然考える場合には、自分だけでそういうふうな判断をすべきじゃなくて、そういうふうなことだからといって国会に対して了解を求める、承諾を求めるのが私は筋ではないかと、こう考えるわけです。  そこで、ことしの三月十五日、衆議院法務委員会再審制度調査小委員会、このときに安倍治夫という人が呼ばれた。どういうわけで参考人として安倍という人が呼ばれるようになったか、その経過はこれは私よく知らないわけです。知らないわけですけれども、ともかくそういうふうに正式に呼ばれるようになったときに、本人が知らない間に、国会に対して法務省から本人出席ができないという通知をした、こういうことが言われておるわけですね。これはどういうふうな事情なんですか、その間の経緯を明らかにしていただきたいと、こう思います。
  27. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) 衆議院法務委員会におきまして、再審制度につきまして参考人意見を聴取する、その参考人の一人として安倍検事出席を求められたということは、これは事実であります。そこで、そのときに再審制度調査小委員会委員長から私のほうにそういう照会がありましたので、実は、再審制度については、法務省自体も今検討をしておる、したがって、あまり急な話であるから、法務省再審制度に対する考え方というものを安倍君はまだ知っていないはずである、できるだけ今度の小委員会参考人としての安倍君の出頭については延ばしてもらえないだろうかという申し入れをいたしまして、それを小委員長委員会に諮りまして、それならそのほうがよかろうと、次回に延ばしたほうがよかろうということになって話し合いがつきまして、そうして安倍君には、こういうことになったからという連絡をとらせることになったわけです。そのときは参考人として再審制度の小委員会出頭拒否したわけでなくて、次回に延ばしてもらいたい、こういうことで実は話がきまったのです。その通知がおくれまして、本人がその通知に接する前に当日になりまして、彼は委員会出席して参りまして、その席で再審制度調査小委員長林委員長から、こういうことになっておるということを申し上げたのでありますが、まあ連絡ができなかった、事前にそういう連絡が十分行なえなかったということで、結局当日出席したわけであります。しかし、それは本人が自発的に意見を述べることをば差し控えまして、その次の小委員会のときに安倍君は出席をして、そうして参考人としての意見を陳述した、こういうことがその経過のすべてであります。
  28. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、一体法務省を代表して安倍という人が再審制度意見を述べるために国会に呼ばれたとあなたのほうはお考えになったわけですか。
  29. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) 決してそうではないのでありまして、安倍君といえども法務総合研究所職員としてこれは法務省職員でありますが、出席を要求されたのは、検事安倍何々ということであったようであります。そこで、法務省意見を代表して公述をしてもらうというそういう考え方は全然なかったのでありますけれども安倍検事参考人として意見を述べるということは、専門家の間であれば別でありますが、一般的には法務省意見を代表したように受け取られるおそれがありますので、述べる前に、法務省において再審制度がどういうふうに今検討が続けられておるかという経過を知っていただいてその上で自分意見をまぜて述べていただくほうが望ましい、好ましい、こういう考え方に立ちまして、できるだけ延ばしてもらって、安倍君に勉強していただきまして、法務省においての再審制度に対する考え方等を知っていただき、その上で参考人として出られるほうが一番望ましい形である、こういうことを私が考えまして、私の考えによりまして、衆議院再審制度調査小委員長の林君にその連絡をとって、そうして先ほど述べたような経過になってきた次第であります。
  30. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まああまりこの問題は蒸し返しみたいになってもいけませんから、簡単にしますけれども、それでは、本人が全然知らない間にその委員会には出席しないのだということを通知したことになるわけですか。これはまあ大臣だからそういう権限があるかもしれませんけれども、これは検事として呼ばれておるかもしらぬけれども法務省意見を代表して述べろということじゃなくて、安倍個人再審に関する意見、ことに吉田石松の事件に関連をしていろいろ彼が論文を書いておる、「刑事訴訟法における均衡と調和」という論文ですが、これのことをいうわけですが、いわば一学究として呼ばれた、そういうふうに普通考えていいことで、それを、大臣が言うように、国会がそういうふうに呼んでおるのに、本人に何も連絡しないで一方的にその前に取り消してしまうというのは、これは少しくおかしいのじゃないでしょうかね。
  31. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) お答えいたします。  ちょっと稲葉さんの御理解と実は少し違うところがありまして、一方的に取り消したのではないのです。私のほうから、私が直接電話をもちまして、衆議院再審制度調査小委員会林委員長に、僕としてはこういうふうな考え方を持っておる、法務省で今せっかく再審制度について検討しておるから、そういう内容等安倍検事に知ってもらって、そうして自分責任自分意見を述べられることはけっこうだと思うけれども、そのことについて安倍君はまだ何も知らないはずであるから、どういうものだろうかと私のほうから林委員長に相談をいたしまして、林委員長が、そういうことならば、参考人としての出席を要求しておるけれども、次回にひとつ延ばしましょう、そういう小委員長のお気持でそうなったのでありまして、私のほうから出席してはならぬとか、そういうことは断じて言っておりません。私が申し上げておることがこれが事実でありまして、そこで、その通知は私のほうでやったのではないのでありまして、衆議院の小委員会のほうから安倍君にその旨の通知をするということになっておったようでありますが、ただいまの話は委員会開会日の前の日に私が委員長にそういう電話連絡をいたしましたら、本人にそれが届かないうちに当日になってしまいまして、そして当日の朝安倍君は委員会出席をしたんです。安倍君が出席をしたので、林委員長から当日の朝また電話がかかってきまして、きのうああいうことであったが、連絡不十分のために本人出席をしてきておる、こういうことでありましたので、それなら本人責任においてやっていただいても私のほうは差しつかえないと、私がこういうことを申し上げた。委員長がその席で、ただいま大臣から電話がかかってきて、きのうのいきさつはこういうふうになっておった、君の出席は次回に延ばしてもらうということであったけれども連絡がとれないまま君が出席をしたので、今大臣に聞いたら、大臣は、それは拒否することは適当でないと思うから、本人責任参考人としての意見を述べていただくということについて法務大臣としては別に差しつかえない、こういうことを申し上げたんでありますが、それを安倍君が理解をしまして、安倍君は意見を述べずに、では次回に自分はさしていただきますと、こういうことで退席をした、これがすべてのほんとうの真実であります。
  32. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 再審を取り扱うのは、これは法務省というと刑事局なわけですね。
  33. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) そうであります。
  34. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ですから、刑事局所属の人が国会再審の問題で参考人として呼ばれるならまあ話はわかるけれども、そうでないんだ、刑事局所属でない安倍君が呼ばれたということで、刑事局のほうでは、俗な言葉で言うと、まああまり気分的におもしろくなかったということがあった。そのために大臣がそういうふうな形の行動をとった、こういうことじゃないんですか。
  35. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) お答えいたします。  それはそういうこととは全く違うのでありまして、私も専門家じゃございませんけれども再審制度について検討をするようにというのは、私が実は刑事局長命令をいたしまして、それから実は始まっておるんです。そこで、そういうやさきでもあるのに、安倍検事法務省法務総合研究所職員としてでなくて出席を要求されたのは、検事安倍安倍検事に対して行なわれておると、私もそういうことを知りましたので、それなら安倍君は法務省内部で行なわれておる再審制度検討の方向なり考え方なりを知ってもらったほうがもっといい意見が出るのではないか、そういうふうに善意考えて彼にそのことを私の意見として申し上げたわけで、彼が出ることについて法務部内で反対意見があったというようなことはないんです。ですから、全部私と衆議院の林小委員長との間に電話におきましてたびたびやりとりをいたしましてそうして処理したことでありまして、私は非常に良心的にやったつもりでおります。
  36. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、検事という肩書で呼ばれたというのと、法務総合研究所の教官という肩書で呼ばれたというのと、形式の問題であって、同じ人を呼んでいるんで、それをいかにも検事という肩書で呼んだんだから法務省のいろんな指揮命令を受けなければならないんだ、これは少しく何か形式論理にはまっている印象を与えるわけです。  それはまあそれとして、その後「中央公論」の五月号に、「新検察官論」という、これは何ですか、論文というのか、読み物というのか、これは人によって理解が違いますが、出ましたね。これは大臣お読みになりましたか。読んだとすれば、これについてひとつ御感想があれば述べていただきたいと思います。
  37. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) お答えいたします。  「中央公論」に安倍検事が「新検察官論」を出しましたことはよく承知をいたしております。私もそれをよく読んでみたのでありますが、非常に興味深くおもしろく書かれておりまして、それに対する私の感想を述べよということでありますが、私は、率直に言いますと、非常にいいことを書いておると、こういうふうに理解をして読んだ部分もたくさんあります。が、まあ実は私が法務大臣になりましてからでも、あのような考え方法務省の中で、あの全部ではございませんけれども、「新検察官論」に盛られている内容の一部というものは、法務省の中でもああいうことの意見を私は聞いたことがあります。それで、非常にこういう考え方ももっともであるなというふうに読んだところもあります。また、ごく一部ではありますが、こういうことはどうも公表することはどうだろうか、「新検察官論」の内容というよりも、特定な立場にある人の名前等をあげまして多少揶揄した点等がありましたので、こういうことを書かなかったらこれはりっぱな論文であったろうなという気持もしております。
  38. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今ここで、この論文そのものよりも、論文の中に盛られている検察行政あり方、それに対する批判、改善、こういうことが私は重要だと思うのです。私も実はこの論文というか読み物というか読んだときに、これは少し筆が走り過ぎているなという感じを率直に受けた点もあります。私が検察庁内部のいろいろなところを回って聞いた範囲では、おおむね戦前検事の方々からは、これに対する反対の声が非常に強かったわけです。私はこの問題は国会で取り上げようということを雑談に話したことがあります。そうしたら、ある戦前の古い検事がこういうことを言った。稲葉さん、こういうようなことを一体取り上げるのは少しおとなげないではないですか、おやめなさいよということを言った。中には、この論文に対して憤慨していた人もありました。若い検事は、大半がこの論文にあるものの考え方について賛成の意見を述べた人も相当いたわけです。  そこで、あなたが考えられてもっともだと、こう思われたという点は、一体どこなんでしょうか。私は特に望みたいのは、法務大臣が民間から来られて法務省あるいは検察機構という中に入ってくると、その組織機構の中に巻き込まれて、いろいろふだん考えていることでも実際には麻痺してしまうようなことが、組織の力、機構の力として検察行政の中にはあるわけです。これは私は自分で体験したことですからよくわかりますが、そういう点がありますから、そういう点は私は大臣としては遠慮しなくてもよいと思う。この際、検察行政あり方、封建的なあり方を変えていかなければ、検察に対する信頼は起きてこないと思いますが、もっともだとあなたがお考えになった点はどういう点なのか、ちょっとお話し願いたいと、こう思うのです。
  39. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) 私は、去る二月の検察庁長官会同におきまして、訓示と申しますか、あいさつと申しますか、その中に、検察官あり方につきまして、行政官としての検察官あり方、それから職務内容におきましては人権擁護第一主義に徹してもらいたいということも述べ、また、検察官は犯人を製造するためでなくて、真実を追究するという問題について、個々検事考え方、そういうものを徹底してもらいたいということを言ったことがあります。そういう検察庁長官会同におきまして私の意見で申し上げたことがありますが、そういう考え方安倍君の論文が非常によく似たところがありまして、彼が絶えず言っております人権尊重、これを基盤とした検察行政あり方検察官あり方、こういうことは非常に共感を覚えたのでありまして、先ほど申しましたように、論文全体は、別に賛成しているわけじゃありませんが、そういう考え方から彼が述べておる点は、およそほとんどこれは全く同感だというふうに実は考えて読んだわけであります。「中央公論」に限らず、まだほかにも安倍君は書いておられますが、そういうことも読みまして、一貫して安倍君の言わんとしておることは、むしろ今後の検察官あり方としては、ああいう考え方を取り入れなきゃならないと、こういうことを彼は絶えず一つのアイデアと申しますか、一つの方向と申しますか、そういう上に立って書いておるのでありますから、そういう点については、非常に私も好意以上のものをもちまして読ましていただいておると、こういうわけであります。
  40. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、刑事局長答弁を求めるんじゃなくて、今大臣の言われたそのことですね、これを今後の検察行政の中にしっかり刑事局長あたりが中心となって生かして、これはもう現実にしてもらいたい、こういうことを要望しておきます。  そこで、ちょっとお聞きしたいのは、吉田石松氏の事件のときに、安倍君があの人のためにいろいろ骨を折ったわけですね。そのことがどうも検事としてのやり方として行き過ぎじゃないかというような声が相当部内の中にあるようですね。私が聞いた範囲でもあるのですが、あれは一体大臣はどういうふうにお考えなんですか。たとえば、あのときの最初の抗議を日弁連の人権擁護委員会へ橋渡しをしたということ。私が理解している範囲でも、鑑定のときの手助けをしたということですか、いろいろありますが、そういうようなことで、安倍君のやった行動一体検事として正しかったかどうか、これは大臣はどうお考えでしょうか。
  41. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) 吉田事件につきまして、安倍君が吉田翁の冤罪を信じまして、この冤罪を晴らすことにつきまして非常な努力をして協力をしていった、しかもそういうことが一つの大きな原動力となりまして吉田老人が無罪の判決を言い渡され、検察庁といたしましても、法務大臣といたしましても、上告等をしないほうがいいという考え方に立ちまして、あれが決定的なものになったことは、御承知のとおりであります。  そこで、安倍検事がああいう事件につきまして良心の命ずるところに従って行動をとられたということは、私は人間的に見て非常にりっぱな心がけの持ち主であると、こういうふうに一応私は思います。しかし、稲葉さんはほんとうに専門家であられまして、あの際に、もし名古屋の検事正なり検事長なりが、この問題に対する担当の検事がおるから、これに安倍君は協力をすべきであると、こういう意見を強く要望した場合に、安倍君の活動はあのとおりできたかどうかという、こういう問題になってきますと、あなたのほうがよく私よりも知っておられるわけでありますが、非常に問題があったろうかと思うのです。  そこで、今後でもそうでありますが、あの種の問題について、現職の検事検察当局の考え反対の立場から、ああいう問題についての協力もしくは行動を起こそうという場合には、やはり個人という立場よりも、検事という立場に立って行動されることのほうが私は望ましいと思います。そういう点について、人間論的に安倍君のやったことは全面的に肯定しますけれども、やにり検察庁機構という点から見ますと、名古屋の検事正も安倍検事が列席しておったことも知らなかったというようなことでありますと、むしろ私は安倍君としては今後の問題としては十分慎重な行動をとられることが正しいと、こういうふうに考えております。
  42. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、大臣が新しい検察あり方を述べたところから見ると、ちょっと話が矛盾するのじゃないかと考えるのですが、検察当局と反対の立場から安倍君が行動をしたように聞いたわけですけれども大臣の言われることは、人権を尊重し、犯人を製造するためではなくて真実を追究するのが検察あり方だということを今言われているわけです。そうなれば、この場合の安倍君の行動というのは、真実を追究するために行なわれた行動であり、結果としてそれが正しかったということを証明しているわけじゃないでしょうか。まあそれはここで議論をしても私は始まらぬことだと思う。かえってあまり深く論議することは安倍君個人のためにもいろいろな面で差しさわりがあると思いますから、私はそれ以上言いませんけれども、しかし、名古屋の検事正なり検事長なりに相談すれば、そんなことをやっちゃいけないと押えつけられるのはあたりまえのことで、大臣としては機構の上に立っておられるからそういう答弁をせざるを得ないでしょうけれども、これは私は大臣の立場にとらわれ過ぎた中垣さんらしくない答弁だと思う。また、そういう答弁をせざるを得ないところに一つの機構上の問題があると思うのです。  それはそれとして、今度、検事のほうの転勤の問題を一般論でちょっとお聞きをしたいわけです。検事の転勤というのは、具体的にはどういうふうな形でふだん行なわれているわけですか。
  43. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) 私が大臣に就任してからの検事の配置換につきましては、あまり同一勤務地に長きに失するような状態にあるような人、あるいは定年退職もしくはその他の理由による退職等による欠員、そういうものを埋めるために行なっているのでありまして、定期的にそういう人事を、各検事長間におきまして、出す人、受け入れる人、そういうのを法務省に持ち寄りまして検討して、そうして人事を行なっている、こういうことが大体通常のやり方であります。
  44. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 普通は定期異動という形で行なわれるわけでしょう。そうして子供の教育の関係もあって、学期の変更のときに行なわれるのが多いわけですね、今までの例は。そこはどういうふうになっていますか。
  45. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) ただいま稲葉さんの御指摘のとおりに、大体はそういう形で行なわれております。
  46. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、従来の例ですね。人事関係の人はきょう呼んでなかったのですけれども、北海道へ行く場合には、これは相当前もって本人に話をして承諾を得る、あるいは号俸を上げる、こういう形で北海道へ行くのが普通の状態だと私は聞いているわけですが、北海道に転勤する場合は、今までどういうふうにやっていたわけですか。
  47. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) ちょっと刑事局長から答弁させます。
  48. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私は検察官の異動につきまして職務権限を持っておりませんので、責任においてお答えを申し上げることは困難でございますが、私が承知しておりますことで申し上げますと、北海道の人事というのは非常にむずかしゅうございまして、できるだけりっぱな人に向こうへ行って勤務してもらわなきゃなりません。そういう関係から、いろいろなことを過去においてやってきたように思うのでございまして、級にもよりますけれども、若い諸君に最初に北海道で勤務してもらって、そうしてできるだけ早い機会に中央に呼ぶというような人事もありますし、それからまた、各地から選んでいただいて、北海道へ向けるかわりには、今度は帰ってくるときには六大都市等に採ってやるといったような約束で行ってもらう方もありますし、それからまた、高級の検事になりますと、それはそういうようなことではなくて、それぞれの任務を帯びて行くということで、まあ一概に北海道人事はこうだというのではないと思います。  それからまた、やります場合に一級上げてやるということは、昔のように検察官の俸給表が小きざみになっておりますときはそういったようなこともある程度とられたやに承知しておるのでございますが、最近の俸給表からいきますと、まあ一級を上げてやるということのできるような地位の検事もありますし、もう上のほうへ参りますと四年に一ぺんしか昇給しないというようなふうになっておりますので、一級上げて行くというようなことになりますとたいへんなことになりますので、その辺は必ずしも一級上げて北海道にやるというような建前にはなっていないというふうに思うわけでございます。
  49. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国連アジア極東犯罪防止研修所というのですか、これは何をするので、どういう機構ですか。
  50. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) アジア研修所というのは、国連の機関でございまして、国連から犯罪防止に関する専門家の養成機関として地域ごとに研修所を設けたいという御要望がありまして、南米のブラジルにもそういう機構ができつつあります。アジア地域におきましてもそういうものを設けたいということで、初めパキスタンが国連の要請を受けてそういう研修所を設ける予定になっておりましたところが、予算その他の国内事情もありましてできにくい。ついては日本政府で引き受けてもらえぬかという御要望が関係官のロベツレー博士からございまして、外務省も国連に協力する意味において設けてはどうだろうかというようなことでお話もあり、設けるということになりますと法務省において担当しなければなりませんので、関係機関とも協議をいたしましてお引き受けをすることにしてただいま設けたわけでございます。  これは検察事務だけじゃむろんないので、犯罪防止のため特に犯罪者の処遇に関する専門家の研修ということでございますので、矯正、保護等の仕事を担当する者も関与してアジア地域においてその方面の専門家を集めまして国連主宰のもとにわがほうもこれに協力して研修事業を行なっておるわけでございます。法務省としましては、法務総合研究所の中に国連アジア研修部門の一部を設けまして、その担当官がアジア研修所のほうへ出向して職務を行なっておるわけでございます。
  51. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そのアジア極東犯罪防止研究所、ここから安倍君が抜けて、そうしてその教官を補充したのですか。
  52. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) まだ補充しておりませんが、近く補充をする予定であります。
  53. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは函館の検事というのだけれども検事正、次席、全部で何人いるか知りませんが、ここの検事は欠員だったのですか、函館は。あるいは、その函館の検事はどこかへ動いたのですか。その点はどうなっているのですか。
  54. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) 函館の地方検察庁におきましては、前々から増員の要求をしてきておったのでございまして、非常に検察業務がふえているということと、そういうことから、前々から一人検事を差し向けよう、こういう考え方があったのでありますが、今回安倍君をもっとそれに充てた、こういうことでございます。
  55. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 増員要求はどこの検察庁でもほとんどあると思うのですよ、たいへんどこだって忙しいわけですから。ここに欠員があったのですかと私は聞いているのですよ。
  56. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) 欠員があったとは聞いておりません。欠員ではなくて、仕事量が個々検事に非常にオーバーになっていたということは、この前の異動のときにもそういうことを強く言われ、そのときから懸案になっておった問題の一つであったのであります。
  57. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃ、非常に人員が足りなくて仕事がオーバーになっている、だから増員を要求して来る、こういうような要求があるのは、どういう検察庁が今どの程度やっておるわけですか。それが法務省へすぐ来るわけじゃないでしょう。各高検の管内でまとめて、大体、人事は各高検管内でやっているのじゃないですか。高検管内をこえるときには、それは法務省へ来るのかもわかりませんけれども、その点の関係はどうなっておりますか。
  58. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) もちろんそのとおりでございまして、これは検察庁連絡なしでこういうことができるわけじゃございません。もちろん各検事長、検事正等の話し合いが行なわれまして、その上で人事異動が行なわれているわけであります。どこにだれを出すかということは、法務大臣の一存でやる性質のものじゃございません。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあ今ここでわからないでしょうけれども、各地の検察庁から高検を通じてなり——直接高検を通じないで来るというのはないだろうと思いますが、ともかく増員の要求は相当来ておると思うわけですね。これはあと一覧表にして出して下さいませんか。  そうすると、そういうふうな中で、定期の異動でもないのに、これは安倍君だけが動いたわけじゃないですか。福岡のほうは、福岡の検事が一人やめたのか何かで宮崎の都城の支部長か何かが福岡に行った。まだそういう例がありますか。そのほかには安倍君だけでしょう。定期異動でもないのに、しかも国連のアジア何とか研修所、この教官の補充もまだやっておらない。そういう形で、たくさんの増員要求もあるところからぽかんと北海道へ行かしたというのは、これはどうもだれが見ても少し不自然に感じるわけです。  それから、なんか転勤させるということを、六月一日付の辞令ですが、その前の日の夕方か何かに大臣安倍君を呼んで言い渡したのですが、普通は、北海道へ行く場合には、相当準備期間が要るので、前から話をするのじゃないですか。そこはどういう関係になっておりますか。
  60. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) 人事管理の都合がありますので、相当事前に本人に対する承諾を求めるという場合もありますが、今回のように、非常に短期間のうちに承諾をしていただいてそうして辞令を出すという場合もあり得ると思います。今度の場合は、人事管理の面から見まして私は最も適当であるというふうに考えてあのような措置をとったわけであります。
  61. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは法務省内部の人事の問題ですから、国会であまり強く取り上げることが妥当であるかどうか疑問があると思いますが、これはこういうことだったのじゃないですか。前もって安倍君の転勤を大臣が言うと、そのことが外部に漏れる。外部に漏れてくれば、いろいろな形でこれに対する反対が起きてくる。こうなってくると、支障を来たす。それで、前の日の夕方急にやって、あした転勤だ、こういう形にした、これが今あなたが言われる人事管理という意味じゃないですか。
  62. 中垣國男

    国務大臣中垣國男君) 安倍君の配置換につきまして不当な人事ということであれば、私もことさらに国会開会中にこういうことをするはずはないわけでありまして、稲葉さんもよく御承知のとおりに、安倍君と同期の研修所を出られた方々と比べまして、決して低い地位ではない。函館地検の三席という地位は御承知のとおり相当な地位でありますし、おそらく稲葉さんもこれが左遷だとはお考えにならないだろうと思います。私にはいろいろ考えがございまして、ここではちょっと申し上げかねるのでありますが、そういう何ぴとが見ても不当なる人事でないという確信を持ちまして、そうしていろいろ意見を私も聞いてみて、司法研修所を出られて検事に同時に就任された方々の動向等も見まして、これは適当な人事である、こういう判断をいたしまして、特に安倍君の場合には実際の第一線で検事に携わられた期間が非常に短いのでありまして、彼は非常に優秀な人でありますから、外国等にも留学をせられ、帰ってきてからもほとんど法務省の中に充て検としての仕事に長く勤務をされまして、実際の検事としての経歴というものは御承知のとおり非常に短いのであります。この際、いろいろ考えました結果、検事としての職務を実際に学んでいただく、ほんとうにやってもらう、そういうことが彼を大成せしめるためにも必要である。非常に優秀な人が法務省の中にずっと閉じ込められまして、検事が本来の検事としての職務に携わる機会がないということは、いろいろな面で、本人のためにも検察庁のためにも法務省のためにもどうかという点もありますので、それらの諸般の情勢を考えましてこのたびの安倍君の人事を急に行なった、これが私の真意であります。
  63. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今大臣答弁は、それは言外にいろいろな意味、含みを持っておられる答弁ですから、私はこれ以上聞くとかえってまずい点もありますから、あまり聞かないつもりですけれども、しかし、法務省へ入るということは、率直に言うと、検事にしても、判事が充て検になって来る場合でも、これはいわゆる出世街道で、あこがれの的なんですよ。法務省の中に長い間いて実務に携わっていない人もずいぶんいるのじゃないですか。そういうことを言うと、現在法務省の中にいる人で長い間実務に携わっていない人はびくびくしますよ。ずいぶんいるわけです、僕も知っていますけれども。  これは別として、あなたのお考えもあるから、これ以上追及しないですが、しかし、どうも異動というのがあまり急過ぎるということ。特に法務省内部におけるいわゆる古い検事戦前派の検事の中に、安倍君の国会に出る出ないの問題、あるいは吉田石松事件、あるいは「新検察官論」、あるいは今度の「文芸春秋」の、これはペン・ネームで出ていますが、読み物、こういうようなものを通じて、彼の検察行政の一つのやり方、これに対する反論が非常に強い。反対が強い。しかも、これが感情的な面にまでなっているわけですね。たとえば私が「中央公論」のこの論文について聞きたいのだと話をしたことがあったときに、これは一体論文なんですか、これを先生は論文とお考えなんですかと言って僕のことをひやかしているある検事もいるわけです。こういうようなことを一体国会で取り上げる価値があるんですかというようなことをいろいろ言う戦前派の検事もいるわけですよ。いわゆる戦前派の検事と、新しい司法研修所を出た検事、全期生ですね、これとの間の思想的な懸隔が非常にあります。しかも、新しい検事の間では、人権を尊重するという感覚、そうして犯人を製造するのじゃなくて真理を探究していこうという行き方をとろうとしている人が非常にいます。これらの人たちの声、同時に検察陣営の中でも、自由に自分の主張、主義を述べようとする動き、これをとめられるのじゃないかという動き、心配が非常にあるわけです。これは大臣がやはり全力をふるって今あなたの言われた新しい検察行政のために努力をしてもらいたいと、こう思う。この事件を契機として、検察庁内部で、結局、何か言えば吹っ飛ばされるのだ、検察庁のいわゆる主流を占めておる刑事局なりあるいは高検の検事長とか次席とか、検事正だとか、そういう人たちの言うことにそむけば吹っ飛ばされるのだ、これじゃたいへんだから、結局おとなしくしていたほうが得だ、こういう空気が検察庁の中に出てきたらたいへんなことだと思うのです。そういうことのないように、十分御注意を願いたいと私は思います。大臣のいろんな人事に関する答弁、これは私はいろいろなお考えもあることでしょうから、それに対してはこれ以上のことを言わないできようはこの問題に対する質問を終わりたいと思うのですが、私の今考えており要望をした点については、これは大臣も、刑事局長も、十分今後の検察行政の中に生かしていただきたい、これを要望して、質問を終わります。   —————————————
  64. 鳥畠徳次郎

    委員長鳥畠徳次郎君) それでは、次に、警備警察に関する件について発言を求められておりますので、これを許します。稲葉君。   速記をとめて。   〔速記中止〕
  65. 鳥畠徳次郎

    委員長鳥畠徳次郎君) では速記つけて。
  66. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 警備警察関係について、きょうは簡単にお尋ねをしておきます。  「昭和三十八年度警察庁予算の大要」、昭和三十八年二月一日警察庁から出たやつがあるのですが、これは地方行政委員会に出した資料のようですが、この中の五ページ「第7は、警備警察に必要な経費二十二億一千二十八万二千円」ということですが、これは三十八年度の予算ですが、今数字はあれですが、三十六年度、三十七年度は一体これらの総額の予算がいかに使われたか、ひとつ調べたやつを資料にぜひ出していただきたいと、こう思います。これは決算委員会などで取り上げることかもわかりませんが、いずれにいたしましても、私も場合によっては決算委員会に行ってやるかもわかりませんが、それと、ここに「集団不法行為事件の取締」に使われると書いてあるわけですが、この集団不法行為事件というのは従来はどういうふうなものを言っているわけですか。
  67. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) これは法文を読んで御説明いたしますが、警備関係で扱います犯罪は、刑法の内乱、外患に関する罪、破壊活動防止法に規定する罪、それから日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法の第六条及び第七条に規定する犯罪、これは刑事特別法と言っておりますけれども、それから日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法に関する犯罪というようなもののほかに、警備実施を伴います犯罪、つまり、多衆が行動をいたしますこれに伴ってしばしば違法行為が起こるわけでございますが、そういう意味の警備実施を伴います場合の犯罪の捜査をやるのでございます。これを略称いたしまして集団不法行為と言っているのでございます。
  68. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうしたら、一番あとのやつだけが集団不法行為事件と言うのですか。今最初から読まれた全部を集団不法行為事件と言うのですか。
  69. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 全部を言うのでございます。
  70. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 すると、今年のこの予算ですね、機動隊やなんかも入っておりますが、十六億幾ら、これは今のあなたの言われた条項別に分けるとどういうふうに分けられておるわけですか。
  71. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) これは犯罪別に分けるというわけに参りませんので、御承知のように、警備関係の犯罪に関しましては、事前の情報を収集いたしますこと、並びに大衆行動、多衆行動に伴います犯罪が現に行なわれる場合にはこれを警察力で制止鎮圧いたしますこと、並びにこれに伴って起こりました犯罪を捜査検挙いたしますわけでございます。  したがいまして、罪種別にこれが幾らになっておるかということにつきましては、予算的にも分けてはいないわけでございます。
  72. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 予算的にも分けていなくても、従来の過去の実績は罪種別に分けてはいないのですか。
  73. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 従来とも、今申し上げましたような罪種別に分けてございませんわけであります。多衆の場合におきましても、これが刑法的に申し上げますと、各条文に該当することになっておりまして、そういう意味の統計はもちろんございますけれども、予算がその各種の犯罪にどういうふうに使われたかというふうなことはとっていないわけでございます。
  74. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、刑法の条項別にこの予算が使われた過去の実績、これは何か統計があるのですか。警察庁として発表しているものがあるのでしょうか。
  75. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) ただいま申し上げましたように、罪種別の検挙の統計はございますけれども、その罪種別に幾ら費用をかけたという経費の区分はないとお答えしているのでございます。
  76. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは、罪種別の統計を、ここ四、五年の分を、これはきょうでなくてもいいが、あとで整理して出してくれませんか。  それから集団不法行為事件の最後に言われたのは、いわゆる多衆の犯罪だと思いますが、多衆犯罪が具体的に過去に起きたのを、それがいわゆる左翼と右翼とこう区別した犯罪数というもの、これはわかっていると思うんですが、それをここ四、五年分のものをあとでいいですから出していただきたい、こう思うわけです。この前あなたが言われたのは、去年ですか、事件としては九百何件で、二千三百三十九人というふうなことを言われましたね。その内訳はどういうふうになっていのでしょうか。
  77. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) せんだって申し上げました事件でございますが、一応罪種別におもなものをとってございます。しかし、その他というのがございまして全部に触れておりませんが、罪種別にせんだって申し上げました検挙件数九百二十七件、二千三百三十九人について申しまと、傷害罪、これが百十八件、五百二十一人、暴力行為処罰法、これが百二十七件、二百九十名、公務執行妨害百三件、百五十九名、威力業務妨害罪六十三件、四百名、暴行罪六十二件、六十五名、公安条例違反四十三件、七十六名、住居侵入罪三十件、三百三十八名、器物投棄二十五件、二十八名、その他三百五十六件、四百六十二人でございます。  なお、せんだって実は私警備関係で扱っております事件の数をお答えいたしたわけでございますが、外事関係が警備の中に入っておりますので、それで扱いました件数をせんだって申し忘れたのでございます。外事事件は主として外登法、出管令でございますけれども、昨年外登法事件につきましては一万四千七百四十四件、一万三千九百五十五人、出管令につきましては四百八十三件、七百五十六名でございます。なお、そのほかに実は統計的に、外事に入っておりませんが、他の保安その他と一緒にやりました事件がございますわけですが、これが統計に上がっておりませんけれども、内訳してみますと、百二件、百九十二名というのがございます。
  78. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ここでは十六億一千二百一万一千円とあるわけですね。それが「集団不法行為事件の取締」には幾ら使われる予定になっているんですか。これはよくわからないんですがね。予算書を見ても。  それから「機動隊隊員の日額旅費、および警備訓練等に要する経費」と大きく三つに分かれていますね、十六億幾らが。三つに分けるとどうなるんですか。
  79. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) たいへん申しわけございませんが、機動隊の日額旅費につきましては、総額約八千万余りと思います。それから訓練の経費につきましては、ちょっと内訳を今持って参りませんでしたが、そう大きな金額ではございません。そのほかにつきましては、事件でございますが、先ほど申しましたように具体の事件が起こりました際の捜査ということに限って申し上げたわけではございませんで、御了承いただきたいと思います。
  80. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今の十六億一千二百一万一千円のここに書いてある項目別の内訳を、これは今でなくていいですよ、あとで出してくれませんか。それと、今の「集団不法行為事件の取締」というのも、項目は大きく一本でなくて、その中にいろんなこまかい内訳があると思うんですが、そのこまかい内訳が別に予算がわかっていれば出してもらいたい。こういうようなのはちっとも警察じゃ国会に出さないんじゃないですか。今までどうなっているんです。
  81. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 科目明細等にお分けした以外には今までお出しをしていないと思います。
  82. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 お出しをしていないんだけれども、今までそういう点は聞かれないんですか。
  83. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 私の存ずる限り、詳細のお尋ねはございません。
  84. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その機動隊隊員というのは、これは何をやるものなんですか。僕はよくわからないんで、これをひとつ教えていただきたいのと、それから機動隊というのは一体何人ぐらいいるんです。で、どこにどういうふうにいるんですか。
  85. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 機動隊員の数は五千七百でございます。これは各県にございまして、各県の運用は必ずしも一定をいたしておりませんけれども、これは、御承知のように、警察業務のうちで、個々の警察官があるいは駐在としてあるいは交番の外勤としてあるいはまた刑事といたしまして勤務する場合以外に、警察が部隊として出て警備実施をしなければならない機会というのは相当にあるわけでございます。個々に駐在所、派出所等に分かれておりますものをその必要のつど集めるということは、結局そういう仕事を阻害することでもございますし、また、時間的にもおくれますし、また、訓練の上から申しましてもそういうものでは十分の効果を上げ得ないということで、これは全国的にできましたのはそう古いことではございませんけれども、主として大都市につきましては相当以前からこれを持っているのでございます。大体これは警察学校を出まして第一線に勤務いたしましたあと二、三年を経た若い主として独身の者が多うございますけれども、そういう者を任命をいたしまして、これは県によって違いますが、隊舎を持ち、少なくともある部分の者はそこで宿直勤務をして、いつでも出られる勤務についておるのでございます。  そこで、先ほど申しましたように、集団部隊として働く場に使うわけでございますから、その意味の訓練ももちろんやります。しかしながら、これは部隊として出る必要があるというのは、大都市こそ相当ございますけれども、普通の県ではそう多くはございません。そこで、各県——これは私どもがアドバスイするのでございますけれども、これは人格識見ともにりっぱな隊長のもとに、そういった集団的な訓練の場としてそこでりっぱな警察官を鍛える。同時に、それは部隊として出ると申しましても、いわゆる警備実施、災害等だけに出るのでございませんで、集団で部隊で交通の取締をやることもございますし、また、盛り場などでいわゆる暴力団が横行するため一般の良民の方が困るというようなところに機動隊として出動してそういうものの影が見えなくなるまでやるという措置をいたしますとか、一番むしろそういう意味ではむずかしいところに当てましてやるわけでございます。ただ、私どもとしては、そこにある人数が手がすいているから何かに使ってやれということでなしに、そういういわば力として、そこで訓練をしたりっぱな隊員がおるわけで、その隊の力を使って警察力の一番そのときに困難とし、またしなければならないほうに使うという趣旨で運用をいたしておるのでございます。
  86. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その今の五千七百名、これは各県別にどういうふうな割り振りになっているか、これはあとで資料を出していただきたいと思うのですが、これは第何とか方面とか書いてありますね、警視庁には何名がどういうふうに置かれているのですか。
  87. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 実員は若干そのときによって違いますが、私どもが承知いたしますのは二千五百名でございます。第五機動隊までと承知しております。
  88. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 第七方面とか第八とか……。
  89. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) お話は方面のことをお考えかと思いますが、第八方面までございますけれども、私の承知するところは、第五機動隊までと承知しております。
  90. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ここに書いてあるのは、日額の旅費だけですか。これはその人たちの給料やなんかはどこに入っているのですか。
  91. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 警察官の給与は、これは府県費でございまして、純粋に府県費でまかなうのでございます。
  92. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 機動隊というものを置く法律的な制度上の根拠はどこにあるのですか。何か根拠がありますか。
  93. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 法律的な根拠というものは特にございません。ただ、警察力を運営いたしますのにそういう必要にしばしば遭遇いたしますので、教育的見地も加味をいたしましてそういうのを置いているのでございます。ただ、一応調整をいたします意味で、警察庁次長通牒というのがございまして、それでごくワクをきめておるのでございます。
  94. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その機動隊というのは、ちょっと聞き漏らしたのですが、何か持っていると言われましたね。何かを持っているというような話をちょっとされたのではありませんか。タイシャ——よくわからなかったのですが、何か持っているという意味ですか。
  95. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 機動隊の宿舎という意味で隊舎と申し上げたわけであります。
  96. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 宿舎を持っているのはわかりますが、そのほかに何か持っているのですか。いわゆる自衛隊とは違うでしょうけれども、まさか武器を持っているわけじゃないでしょうけれども、何か普通の警察官と違ったものを持っているのですか。装備関係はどうなっているのですか。
  97. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 個人装備は全然区別がございません。ただ部隊の装備で、しばしば街頭でごらんいただくと思いますが、警備車とか指揮官車とかいう、普通の署にはございませんような特殊の車両、それからこれは各署にもあるわけですけれども、ヘルメット・ライナーでございますとか、個人装備は格別——ただ機動隊が数として整っているわけでございまして、特別なものを持っているわけじゃありません。
  98. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その機動隊が装備しておるもの、これはあなたのほうでひとつ一覧表を出していただきたいと、こう思うわけです。  それから、これは毎日出かけているときもあるでしょうけれども、出かけないときには、何をしているのですか。
  99. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 先ほど申し上げましたように、各隊の運用必ずしも一定でございませんで、たとえば白バイ隊というような形で国道の交通整理をやる、あるいはパトカーに臨時乗務をするというようなこともございます。そこで、先ほど申しましたように、訓練、教養はいたすわけですけれども、そのほかに、集団部隊として、ここの場所の交通取締をやる、ここの盛り場の暴力団の取締をやるというふうな、計画的に隊として使うというふうにやられておるのでございます。
  100. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 柔道とか剣道などを盛んにやっているということがよく新聞に出ていますね。そうすると、ふだん出てないときは、機動隊にいて柔道の練習を盛んにやっているのですか。柔道と機動隊とはどういう関係があるのですか。
  101. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) もちろん警察官はこれは実力で法を執行するものでございますから、犯人より強くなければなりません。そこで、柔道、剣道は、これはいわば昔風に申すと表芸でございます。これは各署におります者も十分の訓練をやらなければならぬ。県によって若干違いますが、有段者でなければ昇級試験の受験資格がないというようなこともいたしておるのであります。したがいまして、機動隊の訓練の中にも柔剣道というような体技が相当含まれておることは申すまでもございません。   〔委員長退席、理事松野孝一君着   席〕
  102. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは普通の警察官よりも多いんでしょう、時間などが。そうじゃないのですか。
  103. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) そこにしょっちゅういるわけでございますから、隊としての訓練の時間もございますし、また、たとえば夕食後の自由時間というようなときにいわゆる選手になるような志願者がやるということはもちろんございます。一般の警察官と申しましても、この機動隊の者は、そこへ二年なり場合によっては三年なり勤務いたしますと交代をいたすわけでございますから、そういう意味では、格別のキャリアが違うわけじゃございませんが、機動隊におりますときと署におりますときと、そういう訓練の時間がどうかというお尋ねでございますれば、これは機動隊におりますときの訓練が非常に多かろうと思います。
  104. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、きょう現在、警視庁における二千五百名の機動隊員が一体どういう行動をとっているのか、どこに何人いて、どこの労働組合のストライキに何人行っているというのを、きょう現在でいいです、わかりますね、これはあと調査したやつを出してくれませんか。一年間の行動を出せと言っても無理だから、きょう現在でいいです。たいてい労働組合のストライキのところに行っているのが多いのじゃありませんか。
  105. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 行っているのが多いということは必ずしもございませんが、稲葉委員も御承知の、たとえば東京でやっておりますある中小企業のストライキなどは、今でも会社側の警備員と組合員との間にトラブルが起こる可能性が常にありますので、そういうところには、ある数の者がくぎづけにされているという状態は、御承知のとおりでございます。
  106. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「外事関係事犯の捜査取締に要する活動経費」とそれから「密航監視に要する経費」両方で五億九千八百二十七万一千円とありますが、これを外事関係と密航監視というふうに分けるとどういうふうになりますか。
  107. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 密航監視というものを非常に狭く考えますと、それに充てますいわば手当式なものでございますから、これはわかります。——今ちょっと調べてわからないのですけれども、密航監視の手当は、私の記憶に関する限り、六千万円見当かと思います。しかし、これは単に手当だけでございまして、あと活動いたしますようなものは入っていないわけでございます。
  108. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「外事関係事犯の捜査取締に要する活動経費」は五億円以上あると見ていいと思うのですが、これは在日朝鮮人がほとんどでしょう。実際問題としては。まあそうでないのもあるかもしれませんが、一体外事関係というのは、どうして警備警察の対象になるのですか。これは法律的な根拠もひとつお伺いしたいのと、それから法律的な根拠は別にして、何で外国人、ことに在日外国人が、一般刑事警察の対象でなくて、警備警察の対象になるのか。これはちょっとどうもその理由がはっきりしないのですが、どういうわけでしょうか。
  109. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) これは、外事関係は、お話のように国内におります外国人が主として対象になり、また、その数から申して朝鮮人が多いということは申すまでもございません。  この出入国管理あるいは外人登録というような問題を警察のどこで扱うかということは、かってこの委員会でございましたか、稲葉委員からお尋ねがございましたわけでございます。必ずしも在日外国人に関するすべてのことを警備がやっているわけでもございませんし、また、警備がやらなければならぬということでもないと思います。現に、在日外国人が殺人を犯すとか、通常の窃盗をやりますとか、そういうものについては、これは警備で扱うわけではございません。ただ、わが国に今格別のそういう法律が、先ほど読み上げましたアメリカとの関係でございますもの以外はありませんけれども、先般来も、外国からひそかに入って参りまして国内における各種の工作をやるという種類のものもあるわけでございます。そういうものにつきましては、これは警察といたしまして警備が扱うのが適当かと思うのでございます。警察のどこが扱うかという法的根拠は、これは部内の業務分担の法律や施行令によるほかございません。これはまたどの分野でやるということをきめることが本質的に必要であるかどうかというようなことではなかろうかと思っております。
  110. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この警察の予算を見ると、活動旅費というのが、ことに警備関係でも、活動旅費と捜査費とあるわけですが、これはどういうふうに違うのですか。活動旅費というのは何ですか。
  111. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 活動旅費と申しますのは、旅費の中で、たとえば通常の役所でもあるわけですけれども、会議に出る旅費というようなものでなくて、警察活動に使う、つまり、捜査、鎮圧、検挙等に出ますそういう旅費について活動旅費と言うのでございます。したがって、そのほかの職員旅費という他の役所にありますような項目で、通常の会議等の旅費は別にあるわけでございます。捜査費は、そういう活動に伴いまして、捜査に必要な各種の費用、旅費以外の費用を言うのでございます。
  112. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、警備警察では、職員旅費というのはわずかに千二百万ですね。それで活動旅費というのは十二億二千四百万円、捜査費というのは八億三千万か。活動旅費が職員旅費よりもずっと多いというのは、どういうわけですか。
  113. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) これは警察活動の本質から、来ることでございまして、いわゆる通常のどこでもやります年に一ぺんあるいは方針をきめるというふうな、ことに予算を配賦するというような事務的な会合もあるわけでございます。そういう種類の会議に要します経費、そういうものが職員旅費でございます。活動旅費が非常に多いのは、警察官が先ほど来御説明いたしております情報、捜査、鎮圧、検挙というふうなことに当たります実際活動に要する旅費でございますので、これが多いことは当然かと思うわけでございます。   〔理事松野孝一君退席、委員長着   席〕
  114. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、ちょっとはっきりしなかったのですが、捜査費と活動旅費の違いを聞いているのですが、捜査費というのは、現実に事件になってからの費用という意味ですか。事件になってからの費用というのは、どの時点から捜査費になるのですか。僕の聞くのは、活動旅費というのは十二億ある、これは主として情報収集を中心とした費用なんだ、現実の犯罪事件になってきた場合の捜査の費用というのは捜査費の中に入ってくるのだ、こういうふうに分けて考えていいのかということですね。
  115. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 言葉が足りなかったかと思いますが、活動旅費は警察官の旅費でございます。したがいまして、捜査をいたしますために、かりに被疑者を東京の者が神奈川に逮捕に行くと仮定をいたしますと、その警察官が神奈川までの汽車に乗る日当、泊まれば宿泊料をもらうというのが活動旅費でございます。そこで、捜査をいたします場合に、いわゆる聞き込みをやりますとか、あるいは何といいますか、そういう活動をしている途中でも、たとえば被疑者がどこかに入った、一緒に入ってこっちもお茶を飲みながら見ていなければならないという場合もあるわけでございましょう。そこで聞き込み等をいたしまして相手にお礼をする場合もございますし、また、そういった捜査の途中で——いわゆる旅費というのは、これは規則で日当、宿泊料、車馬賃としてきまっておるわけでございます。それでまかなえない雑費というのが捜査費でございます。したがって、活動旅費と捜査費とが時点で分けられるというわけではございませんので、これが一緒に使われて性格が違うというふうになって参るわけでございます。
  116. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうも説明を聞いていて私の聞き方が悪かったのかもわかりませんが、ちょっと私も理解できないところがあるわけです。これは私のほうでももう少し内容を分析して研究してみますが、結局、活動旅費というのは、ほとんどが捜査の前段階の費用が大半であって、いわゆる情報収集的な費用が大半を占めているのじゃないですか、現実問題として。
  117. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) お話のとおり、前段階に活動をいたします旅費が多いと思います。
  118. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 多いと思いますでなくて、活動旅費は、こういうふうに大ざっぱに分けるのでなくて、もっとこまかく分けてあるんじゃないですか。そのこまかく分けてあるのは、それはどういうふうにこの十二億の金額を分けてあるのか、予算の中で。きょうでなくてもいいですよ。ひとつあとで出してくれませんか。
  119. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) どうも私の説明もまずいのでしょうけれども、お話のようでございますと、他に活動旅費というのがないようにも思えるでしょうけれども、これは捜査部門、防犯部門、どこの部門でも警察官が−かりに刑事がある殺人なら殺人を捜査いたしますために活動をいたすわけでございます。その刑事自身が動きますことに必要とする旅費は、これは活動旅費でございます。ですから、これは前段階と後段階と分けるというようなことでなくて、警察官がそれぞれその特殊な任務を遂行いたしますために動き回りますその径費が、これが活動旅費でございます。ですから、これをどういうふうにさらに分けるということをおっしゃいますけれども、これは他の部門、防犯なり刑事なりごらんになっていただきましても、それはいずれも活動旅費というふうに包括せられておるのでございます。
  120. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあいずれあとで別な機会にゆっくりお尋ねいたしますが、結局、十二億幾らの活動旅費を使う、あるいは使って、実際の事件として出てくるのは、これは外事関係は別として、一千件にも当たらないわけですね。そうなってくるというと、事件の前の段階でほとんどの警備警察の金が使われているということ、結局、日本の警備警察というのは、昔の特高と同じような情報収集を中心とし、これを主たる径費としておる、こういう結論が出てくるんじゃないかと、こういうのが私の一つの今の段階の考え方です。これはもう少し私も内容をいろいろな形で分析してみます。  それから、あまりここで聞くのもあれですけれども警備警察における報償費というのは何なんですか。たいした金額じゃないんですけれども、二千七百万くらいあるんじゃないですか。——あとでいいですわ、私もきょうは予算書を持ってこなかったですから。
  121. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) これは間違ってお答えするとあとでおわびしなければなりませんけれども、報償費というのが、警備警察に二千七百万というのは間違いじゃなかろうかと私は思いますですが、違いましたらおわびして訂正いたします。
  122. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私も出典をきょう持って来なかったので間違えるといけませんが、二千七百九万八千円という数字が出ておるんです。これはあるいは私の記憶違いかもしれません。別の出典と間違えたのかもわかりませんが、聞きたいところは、たとえば活動旅費なりあるいは捜査費、こういうようなものの中に、第三者から警備警察としては情報をとるわけです、その場合に、情報提供者に対する謝礼が払われると思うんですが、それは一体どのくらいあって、どこに出ているのかということを聞きたいわけです。
  123. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) それは捜査費の中に入っておるのでございます。ごく大略申しますと三億見当かと思います。
  124. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっと聞き漏らしたのですが、捜査費の中に三億……。
  125. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) これは、何といいますか、見込みの予算でございますし、大体三億見当かと記憶をいたしております。
  126. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その予算は三億ですが、これは予算だからまだあれですが、そうすると、今までは、そういう謝礼金みたいなやつは現実にはどういうふうな基準で使われていたんですか。これはきょう私はちょっと用があるものですから、別な機会にゆっくりお尋ねしたいと思いますが、その内容などは決算委員会に出していますか、どの程度出しているんです。
  127. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) これは簡易証明の手続でございまして、会計検査につきましてはそれぞれ内訳は実地検査によってお調べをいただくということになっております。
  128. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、会計検査院でなくて、国会の決算委員会へ資料として出しているかということですよ。国会の決算委員会では警察庁のこの警備警察の予算などは審議の対象にならないのかな。そんなことはないでしょう。
  129. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) これはちょっと私もどの程度のものが出されているのか、はっきり記憶いたしませんが、私の申し上げましたのは、捜査費というものが会計検査上は簡易証明手続だということを申し上げたのでございまして、もちろん決算の対象でございます。
  130. 鳥畠徳次郎

    委員長鳥畠徳次郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  131. 鳥畠徳次郎

    委員長鳥畠徳次郎君) 速記をつけて。
  132. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、最初に江口長官にお尋ねします。  警察官が副業としていろいろな商売をやること、まあいろいろあります。これは、八百屋とか、魚屋、洋服屋、セールスマンその他の商売をさすわけでありますが、こういうことは警察法上許されているのかどうか。非常にこれは単純な質問のようでありますが、これはいかがですか。
  133. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 警察法には別にそのことについて特別の規定はございません。公務員として他に営業を営むという場合には制限がございます。その制限にはもちろんかかります。
  134. 岩間正男

    ○岩間正男君 警察としてはむろんそういうことはできないんでしょうね。これは警察について聞いている。
  135. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 警察官自身に警察の目的以外の営業はさしていないつもりでございます。
  136. 岩間正男

    ○岩間正男君 それなら、警察官個人ですね。現職の警察官が商売をやることについては、これは許していますか。
  137. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) まあ商売という通俗的な言葉においてはもちろん許しておりません。
  138. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、通俗的な言葉でない場合は許す場合もあるということですか。
  139. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) まあどういうことの意味のことをおっしゃっておるのか知りませんけれども、警察官が警察官として職務遂行する以外に自分の利益を追求するための商売を許すというような意味においては許していないと、こういうことでございます。
  140. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、職務遂行の場合には、商売をやっても差しつかえないと、こういうことですか。ただいまの御答弁の裏を言えばそういうことになるように思いますが、そういうことですか。
  141. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 商売というのは、実質的に要するに営利を目的として物品の販売なり何なりをやるということだと思いまするが、そういうものは許していないということでございます。
  142. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、営利を目的としない場合には差しつかえないと、そしてこれは職務遂行の場合には仕方がないと、こういう見解ですか。
  143. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 私は、商売というものの売り買いの形、形式というものは、警察目的に従った場合であるならば、別に許すとか許さぬとかいう問題じゃないと思います。
  144. 岩間正男

    ○岩間正男君 もちろん長官は地方公務員法の三十八条(営利企業等の従事制限)、これについて御存じだと思うのでありますが、しかし、そういう反面、むろんそういう制限は受けている。警察官の場合は、そうすると、職務遂行で営利を目的としない場合にはやむを得ないのだと、こういうふうにまあお考えになっていらっしゃるのですか。ただいまの御答弁を総合すると、そういうふうに聞こえますが。
  145. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) その形が物を売ったり買ったりというような形になることは、これは場合によってはやむを得ない。やむを得ないというよりも、必要な場合もあろうと考えます。
  146. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、営利に関係があった場合には、明らかに警察庁の方針には違反ですね。
  147. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 個人的な営利を目的とする行為であれば、われわれの方針には反しております。
  148. 岩間正男

    ○岩間正男君 今のはよくわからなかったのですが、個人的な何ですか、もう一度……。
  149. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) その警察官個人が自己の利益を得るためにやるということについては、方針としてはもちろん許しておりません。ただ、公務員法にもありまするように、所属長の許可を得てやっているというような場合は別でございます。
  150. 岩間正男

    ○岩間正男君 法務次官にお聞きしたいのですが、五月二十三日に、日本共産党本部勤務員福山修吉郎氏が、東京警視庁公安一課一係巡査千川原金平を、詐欺、有印私文書偽造同行使の問題で告訴、告発しました。検察庁はこれをどう取り扱っているのか、それからこの事件の担任の担当検事はだれか、このことをまずお聞きしたい。
  151. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 東京地方検察庁からの報告によりますると、お尋ねの事件につきましては、先月二十三日に告訴、告発を受理をいたしております。ただいまその捜査に着手するために準備を進めている状況でございまして、本件につきましては早急に捜査が行なわれるものと期待いたしております。  担当の検察官は、まだ未定になっておるようでございますが、おそらくは副部長検事がそれに当たるのではないかと思います。
  152. 岩間正男

    ○岩間正男君 副部長はどなたですか。
  153. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 山室検事でございましょうか、正式にはまだきまっていないようであります。
  154. 岩間正男

    ○岩間正男君 この告発の内容ですね、これは御存じでしょうか。
  155. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 東京地検の報告によって承知いたしております。
  156. 岩間正男

    ○岩間正男君 その内容を私は伺いたいのですが、これは私のほうにも書類がございますけれども、この概要をちょっと報告願います。
  157. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 要旨を申し上げますと、被告訴・告発人は、警視庁の巡査でありまして千川原金平という方でございます。この方が、日本共産党に関する情報収集の目的で、同党の勤務員である告訴人、告発人に接近をする手段として、各種家庭電化製品販売取扱有限会社小林商会栗田隆というふうにいって、松下電器の製品である各製品の取扱特約店ではなくて、したがって、品質保証が得られないものであるのに、昭和三十六年一月告訴・告発人に正規の販売経路による品質保証のあるテレビであるというふうに偽ってその買い受けを承諾させ、数回にわたって現金四万八千円の交付を受けてこれを騙取したという事実が一つ。右のテレビの保証書が交付されないときは告訴・告発人が不審を抱かれるであろうということをおそれて、松下電器産業株式会社から保証書を騙取しようと企てて、昭和三十七年六月、右のテレビに添付されている保証登録はがきの保証登録通知欄に松下電器の正規の取扱店である三平商会のゴム印をほしいままに押捺し、三平商会作成名儀の保証登録通知はがき一枚を偽造し、これを松下電器産業株式会社に郵送して行使し、同社の係員をして真正に作成されたものであると誤信させて、テレビの保証書一通を告訴・告発人に送付させてこれを騙取した、こういう内容のもののようでございます。
  158. 岩間正男

    ○岩間正男君 この告訴の法的な関係はどうなっておりますか。刑法の何条ですか。
  159. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 告訴・告発状に表示してあります罪名は、詐欺有印私文書偽造同行使、こういうふうになっております。
  160. 岩間正男

    ○岩間正男君 すでに二週間たっておるわけですね。で、普通の場合でしたら、こういう告訴、告発がなされた場合には、早急にやはり証拠を押収する、あるいはこれは捜索を敏速にやらなきゃいかぬ。すでに御承知のように新聞なんかでも報道しておるんです。したがって、二週間も放置されるということでは、証拠隠滅のおそれだってこれはなしとしないのでありますが、第一にお聞きしたいのは、これは本人を呼んで調査したでしょうか。あるいは、そのような手続を、これは警視庁に対して、警察庁を通じてなり、ちゃんとその調査の手続をやり、そしてその捜査をしたかどうか、この点はいかがです。
  161. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 先ほどお答え申し上げましたとおり、捜査に着手するために準備を進めている状況でございまして、具体的にどのようなことをしておるかということについては、私ども何ら報告を受けておりません。
  162. 岩間正男

    ○岩間正男君 今言いましたように、これは時間をあんまり置いちゃまずいんじゃないかと私は思うわけですね。二週間たっているんです。本人はまだ調査はしていない、現在捜査を進めるそういう準備態勢をとっているというにすぎないのですか。これはどうも普通の世上一般の事件に比べて非常におくれておる。これは、なんですか、事が警察官に関する問題だから、したがって、これに対して手心が加えられている、こういうふうに考えられるんですが、そんなことがあっては、私は、これは検察の執行の面から公平の概念を欠くんじゃないか、こういうふうに思うんですが、なぜこんなにおくれているんですか。
  163. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 告訴、告発につきましては、すみやかに着手するのが原則でございまするので、事情の許します限りすみやかに着手を現実にもいたしておるわけでございます。しかし、事件によりましては相当準備してから着手するほうがいいものもありますし、それは事件事件の性質によってきまることでございます。一般的に申しまして、受理をいたしましてから二週間という日が長いか短いかという点につきましては、事件によりまして、もうすぐにやらなきゃならん事件もありますし、あるいは、もっとおくれておるものもたくさんあるわけでございます。まあ本件につきましては、告訴、告発の内容等を十分検討して、どういうふうな進め方をするのがいいかというようなことを検討しておると思うのでございます。一般的に見まして特段にこの事件がおくれておるというふうにきめるわけにはいかないと思います。  なお、ただいま最後にお言葉がございました、警察官の事件であるからことさら配慮して事件をおくらしておるというような、そういう考え方検察庁では一切持っておりませんことを、申し上げておきます。
  164. 岩間正男

    ○岩間正男君 しかし、まあ事は事なんですね。そして、相当急がないというと、証拠が隠滅されてしまうおそれもこれはないではないわけですから、当然この告発を受けましたら緊急に処理すべきじゃないか。ことに、事は人民の公僕だと言われる警官の問題です。普通の一般の人権を尊重する、むろんこれは当然でありますが、この問題と比べましても、みずからもとを正すという意味からおいても、警官の問題を等閑に付しておるというような形は、これは許されないのじゃないか、こういうふうに思うのです。  で、今伺いますと、そういう準備態勢だ、本人を呼んで調査はまだしていない、むろん関係書類その他というものの押収は全然されていないのですか。特に、松下電器産業株式会社のテレビ事業部に保存してあるはずの偽造の保証登録通知はがきというのは、この有印私文書偽造の問題のきめ手になるわけです。こういうものは押収されたのですか。これはそのままになっているのですか。重大問題じゃないですか。
  165. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) そのような今お尋ねのような点につきましては、専門家であります検察官のほうで、順序、手順等は十分考えて処置をされるものと思います。私どものほうへ報告のありますものは、先ほど申したとおりでございまして、具体的には伺っておりませんが、その点はぬかりなく準備をしておるものと思います。
  166. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ世の中の疑惑を招かないように、私はあくまで公平な立場から検察はこの問題を処理していただきたいと思うのです。  小林商会、あるいは三平商会、ナショナル松下電器産業株式会社、こういうところについて、これは当然下調べを敏速にやらなきゃならん、そういう事情のもとにあると思います。ところが、今お聞きしたように、二週間になって今準備態勢だと、こういうことでありますから、これはどうもこの辺まずいのじゃないかというふうに思うのです。大体いつごろにこれは着手をする、そういう見通しなんですか。これはまあここで言えるかどうかわかりませんけれども、少なくともこれを急いでやる、そしてはっきりこの告発、告訴の趣旨というものを明確にするという点が必要だと思うのですが、いかがですか。
  167. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 着手の時期等は検察庁にお任せをしておるわけでございまして、明らかに申し上げるわけには参りませんが、岩間先生の強い御要望があったことを伝えまして、すみやかに着手していただくように、私のほうから伝達をいたしたいと思います。
  168. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは政務次官にお願いしますが、ここに法務大臣はおいでにならないのです。そして、お聞きのように、この問題は、事警察官に関する問題なんです。人民の公僕と言われる警察官に関する問題です。最近、刑法違反の問題というものがたくさん出ています。しかし、こういうことはもとを正さなければならぬ。したがって、何よりも私はこれを迅速にして、そうして世の疑惑というものを、はたしてあったのかないのか、それを明確にすることが当然法務省の立場だと思います。おそらく中垣法務大臣がいられればそういうふうに答弁されると思うのでありますが、次官からも、私はそういう点での促進方をお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  169. 野本品吉

    政府委員(野本品吉君) 岩間さんの御意見のように、できるだけ迅速に、それから正確に、公正に調査を進めるようにすべきであると私ども考えております。大臣にもその旨を伝えて、ただいま刑事局長から答弁のありましたように善処したいと思います。
  170. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは江口長官にもお聞きしたいのでありますが、警察官のこのような問題について疑惑が起こっておる。しかも、告訴、告発されておるという問題です。当然あなたたちももとを正すという立場だ。ことに長官は最近就任されたのでありますが、その就任にあたって、警察官といえどもやはりあくまでも法のもとにみずからを正す、こういう態度の上に立たなければ警察行政というものは行なえない、私はこういうふうに思います。ところが、今のような事実が起こって、告訴までされておるわけです。これに対してあなたはどういうふうに対処されるか、心がまえをお聞きしたいと思います。これはちょうど就任後当委員会においでになったのも初めてですから、あわせてあなたの意思表示と考えてもいいと思いますが、いかにこれに対処されますか、お伺いをいたしたいと思います。
  171. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) ただいまは告訴・告発状の内容についてそのまま御議論があったわけでありますから、はたしてそのとおりであるかどうか、これは司直の手において明らかになる問題だと思いまするが、私たちとしても、もちろん法によって国民の中の不正を正すという立場におります以上、われわれ警察官自身の中に違法な行為があるというような疑いを持たれておりまするとすれば、これは一日もすみやかにはっきりとお裁きを願いたい、こういう立場でございます。
  172. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは告訴されて当然問題になったと思うのでありますが、あなたがちょうど就任された前後の問題だと思いますが、これはさっそくこの当人を警察のほうでは調べたかどうか、こういう事実があるのかどうか、これは重要だと思います。これはいかがですか。
  173. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 告訴が出ましたことは承知をいたしまして、その問題につきまして、警視庁において調査をいたしたのでございます。内容につきましては、告訴、告発が出てこれからお調べでございますから、私どもここでとかく言うことを控えたいと思いますが、私どもの聞きました範囲のことを別に告訴、告発のお調べの予断を持っていただくという趣旨で申すわけではございませんけれども、情報収集のためにお近づきになる手順といたしまして、電機器具の商売人であるということで接触をしたことは事実のようでございます。そこで、だんだんございまして、テレビがほしいということになり、問屋の人だということで、先ほどお名前をおあげになりました三平商会の技術の関係職員と一緒に三平商会の倉庫からメーカー品であるテレビを持っていってお届けをした。そして、その関係の人がその器械に付いております保証書を正規の手続で三平商会から松下に送り、それが不日買われた本人の手元に届いたと聞いておるのでございます。三平商会としては、そこの係の人に社内販売と申しますか、これは各社でもあるようでございますけれども、社内の者に対しましては卸売原価といいますか、原価で渡す。それが親類、知人に渡るということも間々あるようでございまして、そういうルートをこの警察官が活用といいますか利用いたしましてこれを届けたということでございます。したがって、本人が商売をするという意思はもちろんございません。正規のものを正規の店からお取り次ぎする、ただそれに対して三平商会というがごときその名前を使った、こう聞いておるのであります。これが犯罪になるかならないかということは先ほど申し上げました告訴、告発のお調べを待つわけでありますけれども、私ども内部といたしましては、そういうことがなかったようにただいま承知をいたしておるのでございます。
  174. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは詳細にお聞きしますし、あなたの今ここで述べられた、今まであなたたちの調査されたことについてお話があったと思うのですが、まるで違うような事実がたくさんあるのです。証拠があるのですから、そういうことをやはり明確に事実をただすという立場に立ってほしいと思うのです。いやしくも、さっきから申しましたように、これはあなたたちの部下だからかばうと、こういうような格好じゃまずいのですけれども、日本の警察の性格を明確にするということから、単にこれは共産党だけの問題じゃない、日本の民主主義を守る重大な問題ですから、これについて聞いておる。  第一に栗田というのがそういう偽名を使って、そうしてあなたたちは取り次ぎをしたというようなことを言っていますけれども、この千川原金平なる者が、「東京都新宿区百人町一ノ二〇」という住所で「各種家庭電化製品販売取扱有限会社小林商会、栗田隆」、こういうような名刺を使っておって、このような変名でやっておった、こういう事実については、これははっきり確認されますね。
  175. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 今のお話のような名刺で当人に接触したということを聞いております。
  176. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、電機器具のセールスをやったというこの実体は、すでにいろいろこれは承認されているのですが、はっきりしている問題だと思います。これはまぎれもない商行為だと思います。商行為でないというふうにあなたは言っておられますけれども、これは売ったものを見ますというと、福山氏をはじめ関口とか杉本とか、同じアパートに住んでいる人たちに六軒に対して売っている。その中身を見ますというと、テレビは二台、冷蔵庫が一台、電気掃除機が五台、スタンド一台、アイロン四台、電気炊飯器が一台などを売り込んでいます。そのほかに、福山氏には扇風器一台を持ち込んで、使ってみてもしよかったら安くしておくからというので置いていっています。これらの総額を全部合わせますと二十数万円に上っています。この中には共産党員でない人もいるわけです。一般の市民がいるわけです。こういう人にも売っているわけです。しかも、これは商行為でないとかなんとか言っていますけれども、これを見て下さい。ここに月賦の支払いの受取証、受領証があるのですね。毎月四千円ずつちゃんと領収をして月賦で支払いを受けている。これは商行為でないのですか。こういうのが商行為じゃなくて、何行為というのですか。何行為になる。警察庁長官、どうですか、これは商行為じゃないですか。これはまぎれもない商行為であって、そのほかの何ものでもないというふうに考えるのですがね。
  177. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) お話しのように、これは接近いたします手段としてセールスになったわけでございますから、事がうまく運べば、その方にだけそういう話のきっかけができればいいわけですけれども、しかし、先ほど申しましたように問屋から原価でそのままお渡しするわけですから、おそらく市販よりも安いのでございましょうけれども、そういう意味でその付近の人が買いたいという希望があれば、これにやはりお取り次ぎするということにならざるを得ないかと思うのでございます。そこで、品物は、今申したように、係の人と一緒に行ってお取り次ぎをし、入りました金は一応自分が受け取るわけですから、受取証を出しますけれども、その金はすぐに三平商会に入るわけでございまして、なるほど形はお取り次ぎでございまして、形から見ますと商行為のようでございますけれども、何ら営利行為ではないのでございます。ただ、商売のような形にしなければいけないという格好だものですから、そうしておったように承知をいたしております。
  178. 岩間正男

    ○岩間正男君 まるであなたはそれに関係しておられるような御答弁ですね、今の御答弁を聞きますというと。接近する手段として問屋から原価で仕入れて、その金は全部三平商会に入っておるのだ、さしつかえないと。何かもう大もとがそっちのほうのような御答弁をなさってはまずいと思う。調査はまだ済んでいない。第一、接近する手段だからといって商人に化けて、そうしてどんな市民の中にでもどんどん近づいている。共産党員なるがゆえにそんなことを現職の警察官がしていいというそういった根拠はどこにあるのですか、一体。そうして、しかも、このやっている内容というのは、まさにこれは商行為です。商行為以外の何と考えればいいのです、一体。それから三平商会云々という話がありましたけれども、三平商会へこちらはもう当っているのです。三平商会はそういうことは知らぬといっている。三平商会はこの事実を否定している。そういうようなこともないし、それから保証書の問題も、これは一つの非常に大きなきめての問題になってくるのでありますけれども、保証書についてそれを要求するはがきの問題なんというのは全然知らぬ、こういうことを言っているのです。そうすると、これはどういうふうに調査されたか。あなたたちこの報告を聴取されたのか、あるいは、これは調べたものをさらに又聞きになっているのかしりませんけれども、今、三輪さんが言われたことは非常に違います、事実と。あくまでやっぱり事実を明らかにするということが私は重要だと思うので、その点は注意してほしいと、こういうふうに考えます。  そうすると、千川原は三平商会を通じて電機製品を仕入れてきたんだ、これは今三輪さんの答弁で明らかになったと思いますが、その点は確認してようございますね。仕入れ先は三平商会だった、これでいいのでございますか。
  179. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 私はそのことに関係しているわけではございませんが、報告を受けたとおりお答えをいたしておるのであります。三平商会からその品物を持って行ったと聞いております。
  180. 岩間正男

    ○岩間正男君 この報告はだれから受けておりますか。
  181. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 警視庁の公安部の調べによりまして私ども関係の係の者から聞いておるのであります。私は直接その本人に会って聞いたわけではございません。
  182. 岩間正男

    ○岩間正男君 おそらく、この問題では関係しているのは、警視庁公安一課の鈴木定敏課長ですか。これは新聞にも発表しておりますからおそらくそうだと思うのですが、この人の新聞に出しているのは、これもだいぶ違うのですね。第一に商行為をやった、そういう偽名を使ったりしてセールスマンになりすました点は認める、これは言っているわけです。しかし、詐欺や私文書偽造などの法律違反を犯していないという、そういうことを述べております。それからそのうちの一番重要な保証書については、渡していないということを言っています。この事実が、もう渡していないも何もないのですから、これはあとでお目にかけますが、ちゃんと保証書があるのですから、渡したとか渡さないとかの問題じゃない。そうすると、そういう非常にあいまいな、自分をかばうような立場に立っての報告を受けている。その報告を聞いてあなたはこの国会答弁をされるというやり方をやったのでは、これは事件の真相というのは明らかにならぬのですよ。実に私は今の御答弁を聞いていて、こういうことじゃだめだと思うのです。こういういわば人権に非常に深い関係がある、日本の民主主義とは重大な関係を持つ重要な問題について、もっと真剣にやはりこの問題を追及すべきじゃないか。自己追及をすべきじゃないか。そうでなければ、現在の警察自身がどんなにあなた方が戦前の姿と変わっておるとか、民主警察だと、そういうことを言っても、一片の空論にすぎない。その点について、私は今はっきりそういう点を指摘して、もっと厳重に慎重に処して真実を明らかにするために、これは三輪さんにも御努力をいただきたい、こういうことを要望しておきます。この点をはっきりさしておいていただきたい。  それから、その際の資金は、これはどこから一体そういう資金が出たのですか。今あげただけでも二十数万円。それからそのほかに相当あるらしいのです。これは百万あるいは数百万に上るという商売をやっていたのかもしれません。そうすると、この資金関係というのは非常に重要な問題になるのですが、この資金については、長官、お調べになっていらっしゃいますか。
  183. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 総額が幾らになるか私も承知をいたしませんが、お話のように、品物が三平商会から入りまして、入金のつど向こうに行っておるわけでございます。したがって、ある時期に入ります資金というのはそう多くはございません。聞きますと、まだ二万数千円未収があるそうでございますが、これにつきまして千川原本人が上司から捜査費を受けておるようでございますが、これはもちろん本人に品物が行っておるわけでございますから、至急にお返しを願って本来のところに帰るべきものと承知をいたします。
  184. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、この問題は、なんですか、警視庁では相当この問題に関係しておる、そうして、そのために千川原の報告を受け、そしてあるいはこれを指導し、あるいは資金のそういうような問題についても関係を持っておる、つまり、警察そのものが関係のある問題だというふうに把握されておるんですか、それとも、千川原のあくまで個人的な問題で、警察は関知しない、こういうふうにお考えになっておるんですか。この点が今後の審議の上に私たちは非常に重要だと考えておりますが、この点はいかがでございますか。
  185. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) どの辺までどの程度話があらかじめ通じていたかということはつまびらかでありませんけれども、しかし、毎々これもよく問題になりますが、真正面から警察官だということで情報を伺うわけにいかない。まあ名前を変えたりすることがあるわけでございまして、こういう形でやるという話は、千川原個人が個人の責任においてだれにも言わずにやったとは考えられないのでございます。干川原の属しておりますその上の者はそういうことも承知をし、必要な金を渡したと心得ております。
  186. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、警視庁としてやらせた、こういうふうに見ていいわけですね。全然個人の問題じゃない、警視庁は知っているのだ、むしろちゃんといろいろ相談を受け、あるいはこれについて指導をしてそうしてこれをやらしたんだ、こういうふうに了解してようございますか。
  187. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 本人が一個人で勝手にやったとは考えられませんので、ただ、警視庁としてと申しますか、どこまでの範囲が知っておったか存じませんけれども本人が勝手に上司の意思に反してやったとは考えられないと思います。
  188. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、これは上司が関係しておるのだという点は確認したいと思うのですが、そうすると、それらのいろいろな指導面で商行為に関する収支計算、こういうものもはっきりしてなくちゃならないと思うのですが、こういうものは一切当人に任しておくという形でなしに、三平商会との関係なんかについてもあるいは上司のほうで紹介するとかなんとか、そういうことをこれはやったんですか。その点はどうでしょうか。
  189. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 三平商会は、本人がその三平商会のある係の人と承知をして、その人に頼んだように承知をいたしております。
  190. 岩間正男

    ○岩間正男君 この場合の収支計算というのは、これは一応なくちゃならないと思うのですが、そういう分はどうなっておりますか。
  191. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) これは間に入ってマージンをとるとかなんとかいうことじゃございませんで、持って参りました代価を受け取ってすぐ向こうに払うわけでございます。まだ二万円ほどの未収があるという話は聞きましたので、その分だけは千川原が受け取って返すべき筋合いのものと考えます。
  192. 岩間正男

    ○岩間正男君 三平商会についてわれわれの調査したところでは、そういうことはあずかり知らぬと、こう言っておるのですが、どうなんです。あなたの今の答弁とはだいぶん食い違いがあるのですね。三平商会は了解してその中に相当足を突っ込んでいた、こういうことになるのですか。
  193. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 本人自分の名前でない名前でやっておりましたから、栗田隆という名前について三平商会が承知をしておったとは思いませんが、しかし、三平商会にいたしてみますと、先ほど申しました自分の店員に社内販売ということで物が渡り、その代金が入ってくるということについては、通常の行なわれる三平商会にしてみれば商行為でございますので、この栗田という人物を知らないということは、あるいは他の人は知らないかもしれませんけれども、三平商会の品物が出て金が入ったということは、これは間違いないことだと考えます。
  194. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、なんですか、栗田というのは偽名で、それは三平商会では栗田——しかもこの小林商会と三平商会の関係はどうなのか。小林商会は、有限会社ということをはっきり肩書にうたっている。ところが、これはどうですか、有限会社の登記があるのですか。これは有限会社法で成立している会社ですか。そうじゃない。こんなもの架空なんだ。ないのだ。しかも、これは名刺にちゃんと有限会社と書いてある。有限会社ということを名刺に記載することは、これは有限会社法違反ですよ、明らかに。法違反です。こういうことをやっている、平気で。こういうことを警察は平気でやらしておいて、そうしてしかも指導したと思われるふしがあるわけだから、そうしてそれについての三平との関係についても相当なこれはあっせんをやったのかもしれぬ。それから資金の面についても全然関知なし、個人のやったことだ、警察では関知なし、こういうことじゃないのですね、今の御答弁では。相当な指導をしている。そうすると、経費の面についてもこれは相当な関係を持っていると、こう考えざるを得ないのでありますが、こういうことを公然と捜査の必要性、調査の必要性ということで現職の警官にやらした、こういう事実を確認してようございますか。これは私は重大問題だと思う。日本の警察行政の正体というものを今さらながら驚くべき姿で世の中に明らかにするような事態じゃないですか。黙っていられない問題だと思うのですが。
  195. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) これは、先ほど来申すとおり、本人が勝手にやったとは考えられませんので、その上の者も話を聞いておったと思います。  なお、今、重大な法律違反であるというお話でございますが、これは、告訴、告発でお調べをいただくわけでございますから、これ以上私がここで別の意見を述べることは控えたいと思います。
  196. 岩間正男

    ○岩間正男君 警察も無関係でない、上司が明らかにこれに関係しているということは確認されたわけですから、それも当然対象になってくるわけですね。重大問題だね。これは総理大臣でもここに呼び出して聞かなければならぬような、日本の民主主義の根本にかかわる、そうして戦後における民主警察のというようなことが言われておりますが、そして戦前の特高警察はもうなくなったのだ、こういうふうなことが言われておりますけれども、もう事実は全くこれをくつがえすような重大な問題だと思うのです。私は、そういう意味から、今の三輪警備局長の答弁は重大なものを含んでいると思うのですが、これは三輪さんの御答弁がどうのこうのということではなくて、そういう報告をして、そしてそういう報告を平気でやっている警察の態度にあると思うのですが、そういう指導を、これは警察庁長官、今後かまわない、差しつかえないとしておやりになるお考えですか。
  197. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) ただいま三輪警備局長がお答えいたしましたとおり、この事件は、干川原でございますか、その警察官個人の問題でないということは私も昨日報告を聞きまして、そういうふうに考えております。ただ、やり方についてこれが違法であったかどうかというようなことは、いろいろまあ告訴、告発をした側とそれから警察の側とで言い分ももちろん違うわけでございまして、その結果は、検察庁のほう、あるいは裁判所のほうで判断されるということになるわけでございまして、その点、私も、将来も同じことをやるかと言われれば、同じことという内容が違法なことであるという結果が出ますならば、やはりそういう違法なことをやってよろしいというわけのものじゃございませんので、それはもちろんやめなきゃならぬ。しかし、違法でない方法で党の動きというものを見ていくというのは前々からの警察の態度でございまするから、見ていくこと自身が民主的でないあるいは民主的であるという点は意見が違うと思いまするけれども、その方法はやはり民主的にやっていかなきゃならぬ、こういう考え方を持っております。
  198. 岩間正男

    ○岩間正男君 その点については、あとでわれわれの見解を明確にしたいと思うのであります。  現職の警官が商人に化けて、名前を偽ってそして何だかんだと近寄ってきて、それから共産党員であるがゆえにつきまとって、そしてだんだんだんだんなれっこになるというと、さてとなって党の情報を聞き出そう、こういうことを現職の警官がやっている。この前、公安調査庁の調査官がそういうことをやったので、当委員会で問題になりました。これは警察官にそういう権限があるかどうかという問題はまた一つ大きな問題になるわけですが、これは別にして、そういう中でちょっとお聞きしたいのですが、困っているのだ、われわれ。これは当人が一体どうしたらいいのかと。あなた方に全然関係ないのだというお話ではないのですけれども、こういうものを置いていった。これは去年の十月から取りにも何にも来ないわけですな、この扇風機を。これはどうなんです。私はなぜこういうことを問題にしているかというと、警察はこれに関係しているというのですが、かって新潟県で警察が共産党員の家に盗聴機をしかけたことがある。それを党員が摘発しましてそれを押収した。ところが、盗人たけだけしいという言葉がありますけれども反対に今度は窃盗罪で逆に党員を逮捕した事実がある。そうすると、こういうような商品だというので置いていったが、さてこれを使ったら、逆に今度はこれについて今のような事例が起こらないという保証はないのでありますから、そういう点ではまことにこれは問題がひっくり返ってくるような事態になっているのでありますが、こういうものについて警察は全然関係がないのじゃない、相当な深い関係を持っているのだという立場から、これについてこれはどういうふうに処理したらいいか。私は、あなたたち受け取るのならこれは返してよい。ただし、返すには条件があります。受領書をはっきり書いてもらいたい。これはどうです。
  199. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 扇風機を一台使ってもらうようにお預けをして、受け取っていないという報告は受けております。したがって、その品物がそれであろうとは思いますけれども、しかし、そのものが当該のものであるかどうか私は確かめたことはございませんので、それはごめんどうでももう一度お持ち帰り願って、千川原巡査がそのものを確認して受け取るようにしたいと思います。
  200. 岩間正男

    ○岩間正男君 その千川原巡査というのはさっぱり来ない。なぜ来ないのですか。恥ずべき行為でなければ堂々と来たらいいじゃないですか。これについて未収金の問題もさっきありましたけれども、これははっきりしています。私どものほうでは、こういう問題にひっかけてこの問題をうやむやにするという考えは毛頭ありません。これは二万二千円です。福山氏が一万六千円残っている。関口氏が四千円残っている、杉本という人——関口、杉本、これは近所の人でありますが、杉本氏が二千円。計二万二千円残っておる。月賦の残金です。ところが、十月以来、ちょうど当委員会で公安調査庁の問題が取り上げられた直後だと思いますが、この前松岡の問題がありました。それと関連して神奈川県警の鈴木英夫この問題が当委員会でも問題になりました。そのあと行方をくらました。あなたは天地に恥じない当然の警察官の行動だ、こういうことを言われるなら、なぜ一体常々と取りに来ないのか。こういう卑劣なこういうことさえできない警官をあなたたちは一体養成をしているのですか。みっともないじゃないですか。恥ずかしくて取りに来れない。自分でやましいことをやった証拠じゃないですか。なんで取りに来ないのですか。  長官にお聞きします。こういう事態をこのままに置いて、まことに昔のおかっぴきどころじゃありません、もっと近代的に巧妙になっている。こういうきたないやり方をやっておって、一体、どうして人権を守るのですか、民主主義を擁護するのですか。この点についてお聞きします。  それから法務次官も、この問題についてあなたは法を守る立場において見解を披瀝していただきたい。
  201. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) その扇風機は、先ほど三輪君から申し上げたとおり、確認ができればお預かりしてもかまいませんけれども、確認ができませんので、本人から取りによこすということを言っているのでございますから、そう急いで取りに行かないから恥ずかしいとかどうとかという問題じゃなく、いずれやはりお返しをお願いに行くのだろうと私は考えております。
  202. 岩間正男

    ○岩間正男君 去年の十月といいますと、もう半年以上なんです。商売でないからこういうことを言っていますけれども、このような商行為をやっておってこれを放置するというやり方は非常におかしいのです。  それから私はここで保証書の問題に入りたいと思うのですが、松下電器のテレビ保証書がここにあります。これは、明らかに有印私文書偽造同行使、この問題に関係がある問題です。これを見ますというと、「昭和三十七年七月三日、松下電器産業株式会社」の名義で発行されています。これには、取扱特約店として「中央区宝町二の七、三平商会」の名が記されております。元来、製造元からその保証書を取り寄せるためには、セールスマンがその特約店を通じて保証登録通知はがきを本社あてに送らねばならぬことになっております。したがって、千川原は三平商会の名を使って保証登録通知はがきを出したことになるわけです。そのために私たちも調べたのでありますが、特約店には本店のほうから全部そのとき使うゴム印を渡しておるそうです。そのゴム印を押さなければこういう保証書を送って来ない、こういうことになるわけです。そうすると、そのゴム印を明らかに盗用したのか、あるいはごまかしてやったのか。三平商会についてわれわれの調べたところによりますと、そういう事実は一切知りません、こういう答弁なんです。そうすると、このようなことを現職の警官が有印私文書偽造をやる、こういうことが一体許されていいのかどうか。それからまた、この保証書そのものがこれは登録されていないですね。原簿には登録されていない。松下電器の東京支社、それには当然登録されていなくちゃならぬ。ところが、ここに書いてあります「F14−ソフ」、「製造番号九一六七九九」、そうして「保証期限三十九年十二月三十一日まで」ということで、昨年七月三日に福山修吉郎あてに松下電器産業株式会社からこのような保証書を出しておる。そうすると、この保証書そのものが、正しいのかどうか。まず第一にこれは偽造したのかどうか、この問題が一つ。それからこれを発行させるために通知のはがきを出して、そのはがきのゴム印をこれは盗用したのかどうか。全くこれは三平商会のあずかり知らないそういう間にそういうものがなされておるのであります。そうすると、私はこれは非常に重大な問題になってくると思うのですけれども、こういう問題があるから私は先ほどこの告訴の問題というのは急がなければならない、こう言っております。これはどうですか。竹内さん、どうです。こういう問題について実はほんとうに検討されて、法務省もやはりあなたたちの見解を明らかにしておいてほしいと思うのだすね。これはもう二週間も放置されておるということでは、一般の国民の場合に告訴、告発が行なわれた場合とは非常に趣が違うのじゃないか。警察は特別に何か法務省の庇護下にある、検察庁の庇護下にあるという印象を与えるようなことがあったとしたら、これは検察行政の建前から私は重大な問題だと思うのですが、これはどうですか。
  203. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) ただいまお話しのような点を含めまして早急に調べを進めてもらいたいというふうに伝達をいたしたいと思います。お話を伺っておりましただけでも事実関係がはっきりいたしませんようでございますし、何といたしましてもすべて事実を確実にまず明らかにしてその事実の上について法律問題を考えなければなりませんので、ただいまこの段階で法務省側がその法律解釈をどう考えるかという点につきましては、意見を申し述べるのは適当でない、こう考えておる次第でございます。
  204. 岩間正男

    ○岩間正男君 これを見てもらえばいいのですがね。とにかくこういうようなのが、ちゃんと表紙まで張って、印鑑を押し、それから会社の印まで押して、こういう保証書があなたそんなに簡単に作れるのかどうか。そうしてこういうような事実が明らかにならないからなどということで延ばされておる筋合いのものじゃないというふうに私は考えるのですが、これは参考までにごらん下さい。非常に重要ななにですから、お返しいただきたいのですが、ここにはテレビの月賦の受領書がございます。それから名刺がございます。それから保証書がございます。これについてはだれも知らぬ。よく見て下さい。こういうものがはっきりしておるのに、なおかつこの事実関係を明らかにしなければならないということでは、非常に遅延すると思うのですね。  それからついでに、この二万二千円の未収金はどうするのですか。
  205. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) いずれその品物と一緒にちょうだいにあがるかと思います。
  206. 鳥畠徳次郎

    委員長鳥畠徳次郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  207. 鳥畠徳次郎

    委員長鳥畠徳次郎君) 速記をつけて下さい。
  208. 岩間正男

    ○岩間正男君 このように、先ほども申しましたように、三平商会でわれわれが調べると、千川原の偽名である栗田隆という人物も、その経営する有限会社の小林商会というものの存在も全然知らない、今まで取引もないということを言っいるんです。それは明らかに詐欺行為です。  それから松下電器産業株式会社ですね、この保証書については、原簿に登録されてないということは先ほど申しました。全くこれは奇々径々な事実と言わなければならないですね。そうするというと、千川原はどのようにして三平商会の名をかたったのか。そして、保証書をどのようにして手に入れて、福山氏に送付をしたのか。こういう点を見ますと千川原の行為というのは、まさに有印私文書偽造並びに同行使罪であります。これは刑法百五十九条、百六十一条、さらに詐欺行為の条項に該当する。現職の警視庁の警官がこのような歴然たる詐欺行為並びに有印私文書偽造同行使を行なった事実を検察庁はこのまま見のがすことは私はできないと思う。警察なるがゆえになお厳正を期すべきだと、こういうふうに考えるのでありますが、この点、先ほどからも意思の表明がございましたが、なお、念のためもう一度この点を明らかにしていただきたいと思います。
  209. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 先ほどお答え申しましたとおり、厳正公平に処置をするようにはっきりと伝達をいたしたいと思います。
  210. 岩間正男

    ○岩間正男君 先ほどの名刺、今もお回しておりますけれども一体このように偽名を使うということは、これは警察では一般に認めているのですか、警官に。千川原は、あなたはだれですかとその氏名を聞かれた場合、たいていこの名刺を出しているんですね。それは、今そこにありますように、「栗田隆」、そうして「東京都新宿区百人町一ノ二〇」、電話まで書いてあります。明らかにこれは偽名です。これはあなたでも認められているとおりです。現職の警察の警官がこのようなことをやることについて、一体、これはどういうふうに考えておられるか、長官の御意見を伺いたい。
  211. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 警察官といいましても、特殊な任務を持っている者が必要上身分、氏名等を秘匿するというようなことは、これはやむを得ないことだと考えます。しかし、原則として偽名をいつでも使ってもよろしいという考えではもちろんございません。これは、言うまでもなく警察比例の原則から来る問題でございまして、偽名を使ってまでもやらなければならないというような目的と条件において使うことは、必ずしもこれを禁止するわけにはいかないと思います。
  212. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは、なんですか、何か事件があってその事件を捜査する、そういうような場合に必要だというのですか。今の言動はどうですか。
  213. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) もちろん具体の事件がありまして、それを捜査するために警察官という形で捜査をすることが適当でないという場合もございましょうし、また、今度の場合のごとく警察官ということがわかっては情報がとれないというような場合に偽名をするということもそれはあると思います。
  214. 岩間正男

    ○岩間正男君 具体的に聞きますが、福山氏の場合は一体どういう必要があったんです。何か犯罪でも犯したんですか。ですから、したがって、これについて福山を調べる、そのためにやむを得ず偽名を使った、こういうことならあなたたちの答弁としては筋が通るのです。これはどういうことなんです。
  215. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 福山氏は、こちらから申すまでもなく、党の財政の仕事をしておられるようです。そういう意味で、ほんとうのことにつきましては治安機関が関心を持って見ておるということは前々からお答えをいたしておるとおりでございまして、財政というのは一番活動の裏づけでございますので、そういう意味で、そういう方面のことがわかるということは警視庁といたしましても非常に警備対策その他から望ましいということで、その方面のお話を聞くという希望があったように聞いております。
  216. 岩間正男

    ○岩間正男君 重大な問題じゃないですか。それじゃ、民社党も社会党も自民党もみなやっておるんでしょうね。財政部員に今のような偽名、変名で調べておる。共産党は天下の公党ですよ。この公党について、何が必要があって今のような偽名まで使うか。そして詐欺行為までやり、私文書偽造までやって一体これを取り調べなければならないのですか。こういうことで民主主義などということは保障できますか。
  217. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) お言葉でございまするけれども、共産党が公党であることは申すまでもございません。しかしながら、これは前々からこの国会でも御議論がありましたわけですけれども、共産党が暴力革命を企図されるという意味で、これは幾つかの判例でございますけれども、昭和二十六年七年にいわば軍事活動から革命に持っていくという活動をされたわけでございます。そのときから綱領は変わっておりまするけれども、要するに、暴力革命になるのか平和的に移行するのかは、やはり敵の出方による、いわば警察側の出方によると申しますか、もっと広いのかもしれませんが、そういうお考えは終始一貫持っていらっしゃるわけでございます。そういう意味で、私どもといたしましては、これはいかなる政治体制を目指しましても、今の憲法法律の順序手続を経ましてやるということについてとやかく申す筋はございませんけれども、しかしながら、今の秩序を暴力によってくつがえすというお考えがかりにあるならば、そういうことについて警察として関心を持って見るということは、これは私は警察の任務として当然のことであると思うのでございます。
  218. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたたちそういう解釈をやって、まるで公安調査庁と同じようなことを言っておるんですがね。警察と公安調査庁の違いというものを明らかにしなければならない。警察というものが一体そういうことをやる調査権などというものがあるわけがないですよ。それをあなた方拡大解釈して、公安調査庁の役人みたいなことを言っている。これはあとでやりますけれども、さらにまた、党の綱領は変わっているけれどもまだ暴力革命のなにを持っているんだとか、そういう疑いがあるとかなんとか、ここではまあ時間の関係があるから、私はこの論争をやれば非常に時間がかかるから、あなたとここでやろうとは思っておりませんけれども、そんなまことにあなたたちが勝手に解釈し、そして勝手にそういうこじつけをやった上に立ってそうして合理化しようとしても、これは通らないことですよ。  で、どうなんです。あなたはだれですかと聞かれたときに、警察官として当然警察手帳を示して当人の身分を明らかにしなければいけない。これは公安調査庁の職員だってやっているわけですね、これは調査官。ところが、どうですか。そういう偽名を使ってこういう名刺を出しているのは、これはかまわないのですか。そんなことはかまわないというのですか。これは明らかに昭和二十九年七月一日、国家公安委員会規則第四号、そしてその五条にある「職務の執行に当り、警察官であることを示す必要があるときは、恒久用紙第一葉の表面を呈示しなければならない。」、警察手帳規則のこの規定、こういうものについて全くこれは違反している、そういうふうに思うのですね。身分を明らかにし、これを呈示するという原則は、これは私は当然警察官に要求されていると思うのですが、例外は確かにあるのだと、必要があるときは全くこういうような規定を無視してもいいんだと、こういうことになるのですか、どうです。
  219. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) お読み上げになりました規定は、警察官として職務を執行する際に必要があれば出すものでございまして、繰り返して長官からもお答えいたしておりますように、警察官であることを名乗って情報をとることができれば、これは一番いいわけでございますが、それができないために他の名を名乗ってお近づきをしたということでございますので、警察手帳を出すということはその場合あり得ない、非常に限られた場合でございまするけれども、そういうこともやむを得ないということを先ほど来お答えいたしておるのでございます。
  220. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは、商行為をやったり、電機器具の販売、セールスマンをやったり、大部分そこで時間を使っておりますが、これは警察官の行為ではないですか。警察官の職務専念の、地公法の何条でしたか、三十五条ですか、これから考えて、これはどうなんです。こんな警察官とまるで違うような電機器具の、テレビの月賦販売員に化けてやっている。大部分ここでやっているわけでしょう。こんなことは、これは差しつかえないのですか。
  221. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) これは、そのほかに行ってこういう仕事を広くやったわけじゃございませんので、当該の方の近くで手段としてやったわけでございまして、したがって、電機器具の話をしておりますのも、これは情報をとるという手段としてやったわけでございまして、警察官の仕事のうちであろうかと思うのでございます。
  222. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 関連して。さっきから今の商行為についてどうも納得しない点があるのですが、それは利益を得なければ商行為じゃないというように聞こえたのですが、商行為というのは一体どういう解釈を持っておられるか、後々のための参考にひとつ聞いておきたいと思うのですが。
  223. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 商行為というのは、商法の問題についてここで議論するのは私は必ずしも得意なことじゃございませんけれども、これはやはり業として営利の目的をもって同種の仕事を繰り返し行なうということであろうかと考えるのでございます。したがいまして、現実に利益を得なかったということは必ずしも商行為の概念から排除されないとは思いますけれども、しかし、もともと営利を目的としないことが、かりに形の上で売り買いというような格好になりましても、これは商行為ではないのではないかというふうに私は考えるのでございます。
  224. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 まあこれについて論争しようとは思いませんけれども、そうしますと、そういう解釈でいくならば、さっきからいろいろ御答弁があったのですが、警察ではそういう今のような考え方で警察に許可をする、そういうことをやってよろしいという許可を与えることがあるのですか。
  225. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) これは、たとえば警察官が家で下宿を営むとか、家族が営むとかいうことで許可を求めるという例は絶無ではないと思いますけれども、しかし、このような事態は、先ほど来申しておりますように、営利の事業を営むわけではありませんのでございますから、こういうことについて他の営業を営むという場合に許可を受ける、その許可を受けるべき筋合いだというふうには考えておりません。
  226. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、私は今までの御答弁を聞いていて感ずるのですが、警備警察というのは非常におかしいものということになるのですね。これははっきりスパイですよ。福山というのは財政部に所属していると、そうしてこれは党の財政の問題は非常に重大な問題だからというので、今のような全く現職警官としてはあるまじきところの詐欺、有印私文書偽造行使というような刑法に抵触するよりなことをやってまで情報を集めなければならぬこれだけの一体理由がでこにあるのか、公然たる理由が。ここに言えますか。何もそういうことを合理化できないでしょう。それなのに、そういうことをあくまで進めている。しかも、それは単に個人の見解でやったということでなくて、あくまでそれについては許可あるいは指導、これはちゃんと警察の承認のもとに行なわれておる。これは重大問題です。こういうやり方についてあなたたちここで答弁して、もっともらしいことで言い抜けされようとしても、日本の国民はこういう事態に対して了承しないと思うのですよ。いかにも、民主警察なんということをうたっています。しかし、ほんとうの努力の重点がそっちに行っている。先ほどの予算の質問稲葉委員もされたが、公安のほうは莫大な金を使っている。人員も非常に増加されている。しかし、最近問題になったところの吉展ちゃんの問題あるいは狭山の高校生殺しの問題、こういうような方面は非常に手薄になっている。この問題と非常に深い関係があるのです。どうですか、私服刑事でさえ、今の状態で求められれば必ず警察手帳を示しているのが現状じゃないですか。しかも、重大なことは、あなたたちの言葉に従えば、共産党だから仕方ないのだなんて言っていますが、これはわれわれ了承するわけではありませんけれども、しかし、一般の市民に対しても偽名を使っている。共産党でない人があなたはだれですかと聞けば、やはり同じ名刺を出している。これはどういうのです。これはどういうあなたたちの解釈ですか。
  227. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 一般の人たちとおっしゃいますけれども、これはそのお話を聞こうとした方のお隣の人というようなところがらお近づきになったわけでございますから、そういう方に同じ名前を使って接触するのは、これは当然であろうと思うのであります。広い意味でお話を伺う一手段として使ったわけでございまして、広く一般の国民に偽名を使うというようなことをやった趣旨とは考えていません。
  228. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは、今のあなたの御答弁を見ていれば、拡大解釈は無限にいくと思います。そうしてこれは戦前の特高警察と全く変わりはないじゃないですか。今のようなどんどん無制限に拡大してごらんなさい。共産党の情報を聞くためには差しつかえない、あなたはだれですか、私はこういうもんですと偽名を使う、そしてどんどんやっている、これはやっても合理化される。そんなばかなことをしたら限界がありませんよ。あなたたちの解釈でいつでも勝手にどんどん拡大解釈されて、そして社会党でも民社党でも、労働組合員、それから平和団体、戦前においては吉田茂氏まで自由主義者だということで逮捕されたという、ああいう時代にはっきりこれはつながっているというふうに解釈されても仕方がないのじゃないですか。これは全くあなたたち弁解のための弁解ですよ。そういうことでは全く話にならないと思うんです。今まで、私たち二、三の例でここで質問して参りましたが、共産党本部勤務員に対して特にこのごろ公安警察、警備警察などのこうしたスパイ活動が系統的に偽名や身分詐称のもとに行なわれています。宇田真一郎氏の場合、これはまあ昨年の秋当委員会で明らかにしたのですが、神奈川県警察警備部公安課第四係鈴木英夫警部補が渡辺道夫という偽名でもってやっております。それから戸沢義元氏に対しては、同じ鈴木英夫が雑誌記者高橋と称してやっております。党中央委員の竹中恒三郎氏に対しては、警視庁公安一課一係高橋久助巡査部長が金融業者佐々木三郎という偽名で同じようなスパイ活動を続けております。こういうことが一体憲法の建前上許されていいですか。これは許すことできませんよ。こんな拡大解釈をどんどんやっていったら、どこに戦前の特高警察と違うところあるのですか。どこが民主警察です。
  229. 三輪良雄

    政府委員(三輪良雄君) 先ほどのお言葉の中に、戦前は吉田茂まで自由主義者だといって逮捕されたということございましたが、そこが非常に今と違うと思うのでございます。つまり、私どもは、共産党の方だといって、あるいは共産主義を持っている、あるいは極右思想を持っている、その思想を持っていることをもって警察が警備の対象にするというようなことを考えているわけでは少しもございません。ただ、先ほど来申しますように、これはもうかえって私が申すのはおかしいのでございますけれども、とにかくわが国に暴力をもって革命をもたらそうという考えでやっておられるそういう方々、あるいはまた極端な超国家主義的な考え自分考えを非合法の手段で押し通そうとする方々、そういう方々につきましては平素から動きを私どもは見ておりまして、そういう事態が起こらないようにするのが警察の職務と心得るのでございます。その意味におきまして戦前のやり方と非常に違うというふうに考えていいのじゃないかと私は考えております。
  230. 岩間正男

    ○岩間正男君 どこに限界がありますか。今の拡張解釈をどんどんどんどんやってごらんなさい、合理化されてですね。民主警察ということをあなたたち建前にするなら、まるでこれと違反したようなやり方を許すことはできないと思うのです。現職の警官ですよ。こういう犯罪行為までやって、ほんとうに国民の公僕であるところの警官がこのような犯罪行為までやって、そうして今のような活動を続けなければならない理由はどこにありますか。もし一般の市民が同じようなことをすれば、たちまち犯罪者として逮捕されるということは明白です。警官だけこれは許されるのですか。こういうことでは話になりません。で、情報収集の名のもとに警察官のこのような常識と道徳を無視した反社会的行為がこのままに見過ごされ、かつ正当化され、認められるならば、憲法法律も全くその権威を失ってしまうだろう。権力者みずからが法を犯し、人民を弾圧し、思想、言論を抑圧監視する特高警察、政治的秘密警察は、即刻解体すべきだ。こういうような伏魔殿みたいのものを置いて民主警察も何もないものだと思う。私は篠田国家公安委員長に実は出席を求めておったのですが、いまだ見えないのですが、これはどうなりました。見えませんか。この問題は保留しておきますけれども、どうしてもこれは国家公安委員長に明らかにしてもらいたいと思います。  とにかく、そういう態勢の中で戦前の特高警察は一応廃止された。しかし、名目上じゃないの。警察は戦前と違って口々にまあ民主化されたということを強調しておりますけれども、今度の問題が起こりましたときに警視庁の鈴木公安一課長にわが党の代表が会いました。そうしたら、共産党の財政を調査する、それが必要があるのだ、こういうことを極言したのですが、全くこれは今の三輪さんの答弁と私は同じだと思うのです。これは全く特定の政治目的のためにする情報収集だと言うことができます。戦前の特高警察の復活ですよ。だから、今度の千川原の事件について見ても明らかなように、特高情報の収集は、警察の言う必要かつ相当な範囲、そういうような範疇からはるかにこれは逸脱しておりますよ。単に共産党本部員福山氏だけでなくて、一般市民に対してまでその身分、姓名を偽り、一般市民のすみずみまでスパイの手口を伸ばそうとしている、こういうところに問題がある。さきの衆議院法務委員会でわが党の代議士が追及したように、島根県警文書で見ますと、その情報収集活動は、共産党、社会党、民社党、総評、学術団体、婦人団体、青年団体等、あらゆる民主的な団体にまで及んでおります。東大ポポロ劇団事件にまつわるあの警察官の手帳を見ましても、明らかにこのような事実が出てきているのです。しかも、その手口は何かというと、まず始まりは共産党の情報、これを得なければいけないということを口実にしております。で、かって戦前、戦時中の特高警察が、思想を取り締まらないと称しながら、実際には思想、信仰、言論、出版の自由を奪い、そうして弾圧し、共産党や労働者の弾圧から始まって、ついに自由主義者まで投獄した苦々しいあの民族的体験というものを国民は忘れておりません。だからわれわれ共産党は破防法に反対しております。しかし、その破防法においてさえ、この審議のときに、緑風会の宮城タマヨさんとか、まあ今の荒木文部大臣も当時は民主党という政党があってそれに属しておりましたが、それから前公安調査庁の関次長さんも、特高警察の復活にならぬよう警察には調査権限を与えず、警官と別個に独立した公安調査官がその身分を明らかにした上で強制権を持たぬ、こういうような制限をつけて調査権を認めるという方法がとられているだけであります。あなたは、まるで調査権が公然と警官に認められておるような言辞を先ほどから弄しておる。これは重大な問題です。現行法のもとで、警察法、警職法、いずれを見ても、警察には情報収集をやっていいという条項は一かけらも見出すことができない。これが現在の法のあり方じゃないですか。それをさえ無視して、目的のためには手段を選ばないという卑劣な手段を弄して、警官が千川原や鈴木のようなスパイ活動を行なっているということ、そうしてそれを警察当局が認めるならば、そうしてあるいはこれを承認し指導しておる、こういうやり方をしたならば、これはたいへんなことだと思うのです。これこそは全く権力意識の許しがたい越権ですよ。民主主義へのふらち千万な挑戦だと言わなければならないのです。こういう点についてほんとうに考えてほしい。  近ごろ近藤勇のことがはやっておりますが、この時代の傾向の中で世界の大きな変化と歴史の発展に目をふさぐような愚かな道を日本の警察が選ぶ、そういうような方向をとるべきじゃないと私は考えます。このことは非常に重大です。一方で吉展ちゃん事件、あるいは高校生殺し、こういう問題と同時に、刑事警察と対比した形で公安・警備警察の問題が大きく問題になっています。先ほども指摘しましたように、予算の面から、あるいはその体制の面から、人員の面から、そうしてしかもその扱った件数、内容、そういうものを具体的に調査しますときに、一体今の警察の性格がどっちにいっているか明らかだと思う。そういう愚は繰り返すものじゃない。そしてこのことをはっきりこの干川原の問題は教えている。現にここにこういう扇風機が残されておる、こんな醜い形で。そして国民の平和を破壊するようなやり方というものが警察の承認のもとに行なわれるなどということは、絶対に了承することはできないです。これについて一体答弁がありましたら……。長官から言って下さい。
  231. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 公安委員長が差しつかえで、公安委員長からお答えになればいいのでありますが、私が一応警察事務当局責任者としてお答えいたします。  まず第一に、警察は目的のためには手段を選ばず、犯罪行為まで犯してやっているということでございますが、先ほど来問題になっておりますのは、私たち決して手段のためには犯罪行為まで容認してやらしているという意味じゃございません。ただ、差し控えておりますのは、あなた方のほうで告訴され、あるいは告発されておりまするから、その犯罪行為になるかならぬかというのは一応第三者の公平な判断に待ちましょうという立場をとっているわけでございまして、警察には警察として、いやそれは犯罪じゃないという一つの確信というか、研究はございます。  それからもう一つは、今のようなことは公安調査庁ならできるかも知らぬが警察はそういうことは権限としてできないのだというお考えについては、私たちは全くそう考えてないのであります。警察法第二条によってできるだけじゃなしに、やらなきゃならぬという性質のものだと考えております。  それから第三番目には、これを拡大解釈することによって昔の特高警察——これは私残念ながら昔の特高警察を知りません。知りませんから、非常に悪かったというふうなことをいろいろ言われますけれども、それと比較はいたしませんが、とにかく警察——これは何事に限らずあるのでしょうが、特に警察におきましては、目的と手段についてはよく比例がとれておらなきゃならぬという立場、限界というものは常にとっておるのでありまするから、どこまででも私たちの解釈で拡大されてどんなことでもできるのだというような考え方は毛頭とっていないのであります。
  232. 鳥畠徳次郎

    委員長鳥畠徳次郎君) 岩間君に申し上げます。相当時間もおくれましたので、重複を避けて結論に入って下さい。この程度で打ち切りたいと思います。
  233. 岩間正男

    ○岩間正男君 今御答弁がありましたが、非常にやはり重要な問題は、第二の警察法の二条では公安調査庁の職員と同じような調査権があるのだというような問題、これは時間がありませんからこの次にしたいと思いますが、非常に見解を異にし、警察のあり方そのものを根本的に考えなければならぬ重大問題だろうと思います。  私はともかく警察庁長官に明らかにしてもらいたいのは、自分の子供はかわいいかもしれない。しかし、盗人を捕えてみればわが子なりという言葉がある。そうしてこういう逸脱したことを平気でやって、それを擁護するという立場に立ったのでは、これは全く自己粛正も何もできない。私はこの前、警官が酔っぱらって、そうして無免許運転をやって、そうして傷害を与えた、自動車を破壊した問題を当時運輸委員会で取り上げたことがあります。そのとき、その警官について警察では調べたのか。調べない。第一にゴム風船を吹かしたのかと聞いたら、ゴム風船を吹かしていない。ところが、一般で酔っぱらい運転をやったら、運転手にゴム風船を吹かせるでしょう。警官は用いない。用いないばかりでなく、全然これは放任だったのです。そういうことでは、もとをたださないで何を一体ただすのです。人民の権利を守り、そうして人民の公僕だといわれている警官が、全く人民の平和を乱し、民主的権利を破るような行為をやつて、その者が放置されて、そうしてそれが何かの口実、それは全く通らないような常識はずれの口実によって擁護されて、そうしてそれが既成事実化されていくというような形であってはならぬと思います。それで、江口長官は、就任したばかりですが、警察行政については今まで長い問タッチされた方だと思いますが、こういう点から、この問題について、この問題を契機にして、あなた自身の足元、これを明確にしてもらいたい。ともかくこの千川原金平そのもののやった行為、この行為について厳正にあなたたちこれを調べて、そうしてこれを明かにするということが、非常に重要だと思います。擁護するとか警察の面子というものは、日本の民主主義、国民の権利から見ればまことに微々たるものです。こんなことにとらわれるのでは話になりません。私はこのことをあなたが特にやっていただきたい。新任早々非常にこういう重要な問題を断固として自分自身の問題については仮借しないのだという態度をとってはじめて警官が国民に信頼される、そういうものを作り出すことができると思うのですからこれを要望して終わります。
  234. 鳥畠徳次郎

    委員長鳥畠徳次郎君) ほかに御発言もないようでありますから、この程度で閉じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十七分散会