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政府委員(
福田繁君)
義務教育諸
学校の
教科用図書の
無償措置に関する
法律案についての
文部大臣の
趣旨説明を補足して、その
内容の概要を御
説明申し上げます。
まず、この
法律案全体の構成について申し上げます。この
法律案は、総則、
無償給付及び
給与、採択、発行及び罰則の五章二十四条と附則から構成されております。
以下章ごとに、順を追ってその要点を御
説明申し上げます。第一章総則は、この
法律の目的及び用語の定義について
規定しております。この
法律の目的とするところは、
教科用図書の
無償給付その他
義務教育諸
学校の
教科用図書を
無償とする
措置について必要な事項を定めるとともに、その円滑な
実施に資するため、
義務教育諸
学校の
教科用図書の採択及び発行の
制度を整備して、
義務教育の充実をはかることにある旨を明らかにし、この
法律案の
規定事項の
範囲とその目標を定めております。用語の定義のうち、
義務教育諸
学校とは、
学校教育法に
規定する小
学校、中
学校並びに盲
学校、聾
学校及び養護
学校の小学部及び中学部とし、国立、公立及び私立のこれらの
学校の全児童及び生徒が
無償措置の対象となることを明らかにしました。
次に、
教科用図書には、
文部大臣の検定を経た
教科用図書及び
文部大臣において著作権を有する
教科用図書のほか盲
学校、聾
学校、養護
学校等において使用することが認められているこれらの
教科用図書以外の
教科用図書も含めることとし、
無償措置の対象となる
教科用図書の
範囲を示しました。
第二章は、
無償給付及び
給与に関する
規定であります。その要旨とするところは、国は、毎年度、
義務教育諸
学校の児童及び生徒が各学年の課程において使用する
教科用図書として、第三章の採択に関する
規定に基づき採択されたものを購入して、市町村、
学校法人等
義務教育諸
学校の設置者に
無償で給付し、給付を受けた設置者は、その
教科用図書を、それぞれの
学校の校長を通じて、児童生徒に
給与することとし、国と地方公共団体等の
義務教育諸
学校の設置者が協力して
無償措置の円滑な
実施をはかろうとすることにあります。なお、
教科用図書の購入にあたっては、
文部大臣は、直接発行者と購入契約を締結することとなっております。その他、この章においては、
無償措置を
実施するにあたっての都道府県の
教育委員会の責務、契約にかかる給付の完了の確認の時期の特例等について
規定し、また、この章に
規定するもののほか、
無償措置に関し必要な事項は政令で定めることといたしております。なお、
無償措置の対象となる
教科用図書の製造供給は、第四章に
規定しましたように、従来どおり教科書の発行に関する臨時
措置法に基づくこととなりますので、発行の届出、目録の作成、展示会の開催、需要数の報告、発行の指示等の手続を経て発行者が
学校まで供給した
教科用図書を国が購入することとなっております。
第三章は、採択に関する
規定であります。
教科用図書の採択は、公立
学校にあっては所管の
教育委員会、その他の
学校にあっては校長が行なうこととなっておりますが、市町村立の小中
学校の
教科用図書については、一定地区においては、同一の
教科用図書を使用することが教師の学習
指導に関する共同研究等に便宜であり、さらにまた、地域内の児童生徒の転学に際しても便利である等の利点にかんがみ、これまでも郡または郡市をあわせた地域の
教育委員会が、共同して同一の
教科用図書を採択することが広く行なわれております。このような広地域の共同採択は、一面においてまた
教科用図書の価格の合理化に寄与し、供給の円滑化にも資するものでありますから、
無償措置の
実施にあたっても、これをさらに継続して
実施する必要があります。この章においては、まず、都道府県の
教育委員会は、都道府県内の
教育水準の維持向上をはかる見地から、
教科用図書の選定及び採択が適正に行なわれるよう
教科用図書の研究事業を計画し、または
実施する責務を有することとするとともに、市町村
教育委員会の行なう採択に関する
事務について適切な
指導、助言または援助を行なうべきことを明らかにしております。
次に、市町村
教育委員会等が行なう採択に先だって、都道府県の
教育委員会は、その都道府県内で使用すべき
教科用図書をあらかじめ選定すること及び採択地区を設定することの二つの
事務について
規定しております。すなわち、都道府県の
教育委員会は、その都道府県の
教育水準等を考慮して、都道府県内の
義務教育諸
学校において使用すべき
教科用図書として、種目ごとにあらかじめ数種を選定することといたしました。この選定は、教科書目録に登載された
教科用図書のうちから行なわなければならないこととし、また、選定にあたっては、広く
教育関係者及び有識者の
意見を反映させるため、あらかじめ、
教科用図書選定
審議会の
意見を聞かなければならないこととなっております。選定
審議会は、採択の時期に限って都道府県に置かれることとなっております。一方、都道府県の
教育委員会は、その都道府県の区域について、市、郡またはこれらの区域をあわせた地域に、
関係市町村の
教育委員会の
意見を聞いて、
教科用図書採択地区を設定しなければならないこととなっております。市町村立の小
学校及び中
学校の
教科用図書は、この採択地区ごとに、市町村
教育委員会が協議して都道府県の
教育委員会が選定した
教科用図書のうちから、種目ごとに一種を採択することとし、私立
学校、国立
学校等の
教科用図書は、都道府県の
教育委員会の選定した数種のうちから、
学校ごとに各種目につき一種を採択することとなっております。
次に、同一の
教科用図書を一定
期間継続して採択することについて申し上げます。一度採択した
教科用図書は、一定
期間これを継続して採択し使用させることが
教育上も適切なことであります。また、採択及び発行を合理的にする見地からも、このことは望ましいことでありますので、政令で定める
期間は同一教科書を継続して採択することになっております。
次に、採択地区に関する特例として、東京都の特別区の存する区域及び指定都市については、特別区、指定都市の区またはそれぞれの区域をあわせた地域を
一つの採択地区として設定し、この採択地区ごとに、同一の
教科用図書を採択することになっております。以上のほか、採択に関し必要な事項は別途政令で定めることとなっております。
第四章は、発行に関する
規定であります。従来、
教科用図書の発行は、だれでも自由にこれを行ないうることとなっており、今日では、
義務教育諸
学校の
教科用図書を発行する者は四十六を数えております。本来、
教科用図書発行企業は、
教科用図書の持つ重要な使命と性格にかんがみ、きわめて公益的色彩の強いものと
考えられますが、特に
無償措置の
実施にあたっては、
教科用図書の発行企業は、その基礎が堅実であり、製造及び供給が合理的に行なわれる必要があります。この見地から、今後は発行企業について一定の基準を設け、この基準に該当する者を、その者の申請に基づき
教科用図書発行者として持定し、この指定を受けた者の発行しようとする
教科用図書のみが、教科書の発行に関する臨時
措置法に
規定する教科書目録に登載されることができることとなっております。指定の基準としては、破産者であること、一定の刑罰に処せられ三年以上を経過しない者であること等、一定の欠格事由に該当しないこと並びにその事業能力及び信用状態について政令で定める要件を備えたものであることと
規定しております。
文部大臣は、指定を受けた発行者が、これらの基準に適合しなくなったとき、または虚偽もしくは不正の事実に基づいて指定を受けたことが判明したときは、指定を取り消さなければならないのであります。また、
文部大臣は、基準に適合しているかどうかを
調査する必要があると認めるときは、
関係者から報告をとり、またはその
職員をして検査させることができることとなっております。
第五章は、罰則
規定でありますが、これは、ただいま申し上げました報告または検査を拒んだ者等に対する制裁
規定であります。
最後に、附則におきましては、この
法律の施行日、この
法律の施行に伴う経過
措置及び
関係法律の整備
規定を設けております。まず、第三章の採択に関する
規定は、
教科用図書の検定の
実施計画を考慮し、小
学校については昭和三十九年度から、中
学校については昭和四十年度から適用することとなっております。
次に、
無償措置については、昭和三十八年度の
無償給付及び
給与は別途定める政令により行なうこととなりますので、第二章の
規定は、昭和三十九年度以降使用される
教科用図書について適用することとし、その
給与を受ける児童及び生徒の
範囲は、当分の間、政令で定めることとなっております。
関係法律の整備としては、教科書の発行に関する臨時
措置法の一部を改正し、
文部大臣が発行者からの届出に基づき作成する教科書目録に登載する
教科用図書は、指定を受けた発行者の発行しようとするものに限ることとし、この
法律による発行者の指定と臨時
措置法による発行との関連を明らかにいたしましたが、昭和三十九年度に使用される
教科用図書にかかる目録の作成に限り従来どおりとなっております。その他、
文部省設置法等
関係法律の整備をはかっております。
以上がこの
法律案の
内容の概要であります。