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1963-07-06 第43回国会 参議院 農林水産委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年七月六日(土曜日)    午後零時五分開会   —————————————   委員の異動  六月二十八日   辞任      補欠選任    青木 一男君  井川 伊平君    山口 重彦君  亀田 得治君  七月五日   辞任      補欠選任    亀田 得治君  秋山 長造君  七月六日   辞任      補欠選任    秋山 長造君  亀田 得治君   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     櫻井 志郎君    理事            仲原 善一君            堀本 宜実君            渡辺 勘吉君            北條 雋八君            森 八三一君    委員            井川 伊平君            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            梶原 茂嘉君            木島 義夫君            中野 文門君            温水 三郎君            野知 浩之君            藤野 繁雄君            山崎  斉君            大河原一次君            大森 創造君            亀田 得治君            小宮市太郎君            矢山 有作君            安田 敏雄君            牛田  寛君            天田 勝正君   国務大臣    農 林 大 臣 重政 誠之君   政府委員    農林政務次官  大谷 贇雄君    農林大臣官房長 桧垣徳太郎君    水産庁長官代理 和田 正明君    科学技術庁研究    調整局長    芥川 輝孝君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    水産庁調査研究    部長      花岡  資君    海上保安庁水路    部海象課長   庄司大太郎君    気象庁海洋気象    部長      柴田 淑次君   —————————————    本日の会議に付した案件 ○沿岸漁業等振興法案内閣提出、衆  議院送付継続調査要求に関する件 ○福島県母畑ダム建設促進に関する請  願(第二八号) ○農業共済制度改正に関する請願(第  五五号) ○福岡県宮田町笠城国有林払下げに関  する請願(第五六号) ○米麦集荷手数料及び保管料引上げに  関する請願(第五七号)(第一〇六  号)(第一七七号)(第一七九号)  (第二二〇号) ○果樹農業育成に関する請願(第七二  号)(第九一四号) ○生産者乳価値下げ反対に関する請願  (第一五二号) ○農林年金制度改正に関する請願(第  一五五号)(第三八九号)(第八五  五号)(第一五五九号)(第二〇七  八号)(第二〇七九号)(第二一五  七号)(第二五八〇号)(第二五八  一号)(第二六七六号)(第二七八  三号)(第二八五四号)(第二九三  三号)(第二九四五号)(第二九五  〇号)(第二九五三号)(第二九五  四号)(第二九五五号)(第二九五  六号)(第二九六六号)(第二九六  七号)(第二九六八号)(第二九九  三号)(第二九九四号)(第二九九  五号)(第二九九六号)(第二九九  七号)(第三〇〇一号)(第三〇〇  七号)(第三〇〇八号)(第三〇〇  九号)(第三〇一〇号)(第三〇一  一号)(第三〇二二号)(第三〇一  三号)(第三〇一四号)(第三〇一  五号)(第三〇一六号)(第三〇一  七号)(第三〇二八号)(第三〇二  九号)(第三〇三〇号)(第三〇三  一号)(第三〇三二号)(第三〇三  七号)(第三〇四〇号)(第三〇四  一号)(第三〇四二号)(第三〇四  三号)(第三〇四四号)(第三〇四  五号)(第三〇四六号)(第三〇四  七号)(第三〇四八号)(第三〇四  九号)(第三〇五〇号)(第三〇五  一号)(第三〇五二号)(第三〇五  三号)(第三〇五四号)(第三〇五  五号)(第三〇五六号)(第三〇五  七号)(第三〇五八号)(第三〇五  九号)(第三〇六〇号)(第三〇六  一号)(第三〇六七号)(第三〇六  八号)(第三〇六九号)(第三〇七  〇号)(第三〇七一号)(第三〇七  二号)(第三〇七三号)(第三〇七  四号)(第三〇七五号)(第三〇七  六号)(第三〇七七号)(第三〇七  八号)(第三〇七九号)(第三〇八  〇号)(第三〇八一号)(第三〇八  三号)(第三〇八四号)(第三〇八  五号)(第三〇八六号)(第三〇八  七号)(第三〇八八号)(第三〇八  九号)(第三〇九〇号)(第三〇九  一号)(第三〇九二号)(第三一〇  三号)(第三一〇四号)(第三一〇  五号)(第三一一四号)(第三一一  五号)(第三一一六号)(第三一一  七号)(第三一一八号)(第三一一  九号)(第三一二〇号)(第三一二  一号)(第三一二二号)(第三一二  三号)(第三一二六号)(第三一二  七号)(第三一二八号)(第三一二  九号)(第三一三八号)(第三一三  九号)(第三一四〇号)(第三一四  一号)(第三一四二号)(第三一四  三号)(第三一四四号)(第三一四  五号)(第三一四六号)(第三一四  七号)(第三一四八号)(第三一四  九号)(第三一五〇号)(第三一五  一号)(第三一五二号)(第三一五  三号)(第三一五四号)(第三一五  五号)(第三一五六号)(第三一七  四号)(第三一七五号)(第三一七  六号)(第三一七七号)(第三一七  八号)(第三一七九号)(第三一八  〇号)(第三一八一号)(第三一九  〇号)(第三一九一号)(第三一九  二号)(第三一九三号)(第三一九  五号)(第三一九六号)(第三一九  七号)(第三一九八号)(第三一九  九号)(第三二〇〇号)(第三二〇  一号)(第三二〇二号)(第三二〇  三号)(第三二〇四号)(第三二〇  五号)(第三二〇六号)(第三二〇  七号)(第三二〇八号)(第三二〇  九号)(第三二一二号)(第三二一  三号)(第三二一四号)(第三二四  七号)(第三二四八号)(第三二四  九号)(第三二五〇号)(第三二五  一号)(第三二五二号)(第三二五  三号)(第三二五四号)(第三二六  一号)(第三二六二号)(第三二六  三号)(第三二六四号)(第三二六  五号)(第三二六六号)(第三二六  七号)(第三三〇一号)(第三三〇  二号)(第三三〇三号)(第三三一  五号)(第三三一九号)(第三三二  〇号)(第三三九〇号)(第三三九  一号)(第三三九二号)(第三三九  三号)(第三三九四号)(第三三九  五号)(第三三九六号)(第三四〇  一号)(第三四〇五号)(第三四〇  六号)(第三四〇七号)(第三四三  七号)(第三四三八号)(第三四三  九号)(第三四六〇号)(第三四六  七号)(第三四六八号)(第三四六  九号)(第三四七〇号)(第三四七  一号)(第三四七二号)(第三四七  三号)(第三四七四号)(第三五八  二号)(第三五八三号)(第三五八  四号)(第三五八五号)(第三五九  八号)(第三五九九号)(第三六三  五号)(第三六三六号)(第三六三  七号)(第三六三八号)(第三六三  九号)(第三六六四号)(第三六六  五号)(第三六六六号)(第三六六  七号)(第三六六八号)(第三七二  三号) ○農業構造改善事業推進に関する請願  (第二二七号) ○農業改良普及事業拡充強化に関す  る請願(第二二八号)  三十九トン型かつおまぐろ漁船の  居住区改善に伴う増トン許可に関す  る請願(第二二九号) ○農業共済組合等事務費国庫負担増  額に関する請願(第三一六号)(第  七六五号)(第八七五号) ○多頭飼育加入奨励金全面交付実現  に関する請願(第三八三号)(第六  三八号)(第八五二号) ○家畜共済病傷部分掛金二分の一国庫  負担実現に関する請願(第三九〇  号)(第五八九号)(第七六四号)  (第八五三号) ○農業災害補償制度改正早期実現に  関する請願(第四三四号)(第五六  六号) ○農業災害補償法の一部を改正する法  律案成立に関する請願(第六九七  号)(第七九七号)(第八三七号) ○農業災害補償制度改正早期実現に  関する請願(第八五四号) ○農業災害補償法の一部を改正する法  律案成立に関する請願(第一〇三七  号)(第一〇五〇号)(第一〇六五  号)(第一〇八六号)(第一〇八八  号)(第一一三八号)(第一一七四  号)(第一一七五号)(第一一七六  号)(第一一七七号)(第一二〇八  号)(第一二〇九号)(第一二一〇  号)(第一二一一号)(第一二一二  号)(第一二四五号)(第一二四六  号)(第一三三一号)(第一三三二  号)(第一三四三号)(第一三五四  号)(第一四〇九号)(第一四一〇  号)(第一四一一号)(第一四一四  号)(第一四七七号)(第一四七八  号)(第一五九九号)(第一七〇八  号)(第二二六四号)(第二二六九  号)(第二二八八号)(第二三二二  号)(第二三三二号)(第二三六四  号)(第二四二三号)(第二四六四  号)(第二六〇三号) ○千葉県富津町等ののり養殖場被害補  償等に関する請願(第六五一号) ○農業構造改善事業に係る国有林野開  放促進に関する請願(第七四九号) ○食糧管理制度撤廃反対等に関する請  願(第七八九号)(第七九〇号)  (第二二四五号) ○乳価値下げ阻止並びに酪農政策確立  に関する請願(第八二三号)  国有林野開放に関する請願(第八二  八号)(第一四七九号) ○国有林野解放立法化に関する請願  (第一二三四号) ○でん粉の価格と供給の適正安定のた  めの緊急施策実施に関する請願(第  八五六号) ○利根川水資源確保及び流域開発促進  に関する請願(第九一八号) ○鹿児島県川内市内開発地域工業開  発指定地区内の国有林払下げに関す  る請願(第九八六号) ○内水面漁業振興に関する請願(第一  〇八七号)(第一一三一号)(第一  八四二号) ○バナナの輸入自由化延期に関する請  願(第一四一三号)(第一四四二  号)(第一八四一号)(第一九六〇  号) ○国有林国民的民主的利用及び林業  労働者の雇用安定に関する請願(第  二二八九号) ○酪農政策及び飼料政策に関する請願  (第二二九八号) ○乳価安定等に関する請願(第二四六  五号) ○菓子の輸入自由化延期等に関する請  願(第二四六六号 ○酪農振興抜本的施策推進に関する  請願(第二四八〇号) ○乳価安定対策に関する請願(第二六  〇一号) ○乳価安定対策措置に関する請願(第  二六三一号) ○乳価値下げ反対等に関する請願(第  二六五二号 ○畜産物価格安定に関する請願(第二  七〇二号)(第二七〇五号) ○農林水産物加工業者補助金融資  等に関する請願(第二九四四号) ○乳価安定等に関する請願(第二九五  七号) ○放魚祭並びに水資源保護全国運動に  関する請願(第二九九一号) ○長雨による農作物の被害対策に関す  る請願(第二九九二号)(第三五五  一号)(第三六四五号) ○昭和三十八年産米価に関する請願  (第三一九四号)(第三二一〇号)  (第三二一一号)(第三二五五号)  (第三二五六号)(第三二六八号)  (第三二六九号)(第三二七〇号)  (第三二七一号)(第三二七二号)  (第三三〇〇号)(第三三二一号)  (第三三九七号)(第三三九八号)  (第三三九九号)(第三四〇〇号)  (第三四〇三号)(第三四〇四号)  (第三四〇八号)(第三四〇九号)  (第三四四〇号)(第三四四一号)  (第三四六一号)(第三四七五号)  (第三四七六号)(第三四七七号)  (第三四七八号)(第三四七九号)  (第三五八六号)(第三五八七号)  (第三五八八号)(第三五八九号)  (第三五九〇号)(第三六〇〇号)  (第三六三二号)(第三六三三号)  (第三六三四号)(第三六四〇号)  (第三六四一号)(第三六四二号)  (第三六四三号)(第三六四四号)  (第三六六九号)(第三六七〇号)  (第三六七一号)(第三六七二号)  (第三六七三号)(第三六七四号)  (第三七二四号)(第三七五三号)  (第三七五四号) ○農業構造改善事業推進に関する請願  (第三三〇四号) ○輸入生鮮果実類くん蒸庫設置に関  する請願(第三六六三号) ○農業委員会費補助金の増額及び同補  助率定率化に関する請願(第三三  〇五号) ○除虫菊生産振興に関する請願(第三  三八九号)   —————————————
  2. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) ただいまから委員会を開きます。  沿岸漁業等振興法案を議題といたします。  質疑のおありの方は、御発言願います。
  3. 安田敏雄

    安田敏雄君 法案の内容について一、二点お伺いいたしますが、実は水産加工振興というような問題でございますが、これについて、実は大企業中小水産業との関係において私が質問したいことは、これらの間における水産加工調整といいますか、そういう分野における秩序というようなものの問題が、今後沿岸漁業にとっては重大な問題になると思うわけです。そこで、昨年私が与党側の議員さんと一緒に公明会を含めて東北のほうへ参りましたときに、たまたま女川の港を視察いたしました。その際、その前の年には建設委員といたしましてやはり同所へ行って参りましたが、その漁港の情勢というものがすっかり一変しております。というのは、あそこの漁港は、大企業である日本水産進出いたしまして、あそこでもって水産加工をやっておる。そのおもな製品というものは、豚の油を入れて魚の肉を使ってハムソーセージを作っておる、こういう問題であります。ああいうような沿岸女川は、少なくとも漁業についての、あそこは避難港でもありますけれども、一面は漁業生産集散地であるというところでございますが、ああいうような場所に大企業がどんどん進出して、そして水揚げいたしまして、魚族買い上げ、そうして同時にそういうような加工をした場合に、これは明らかに独占支配の体制が出まして、漁場全体の、魚価を初め、大体そういうような形のものが全部日本水産支配下になってしまう、こういう場合が出てくるわけです。こういうようなことが国内の消費とも結びついて、消費関係が旺盛になりますというと、どしどし大企業がそういうような地域に対しまして進出してくるということになりますというと、これは非常に漁業家にとっては重大な脅威とならざるを得ないというような感じを受けるわけです。これらに対するところの今後の漁業生産の適正な、いわば生産秩序確立する必要があるのではないか、こういうように考えているわけですが、こういうものについてどういうふうにお考えになっておりますか。お答えを願いたいと思います。
  4. 和田正明

    政府委員和田正明君) 漁獲物価格関係で一番問題になりますことは、いろいろあると思いますが、それを冷凍にいたしましたり、あるいは加工いたしましたりする需要関係確立をするということが、やはり価格維持の上に非常に重要でございますので、政府といたしましては、全体としての価格対策を考えます場合に、産地に冷蔵施設を設けまするとか、あるいは加工施設を設けまするとかいうことを、協同組合系統実施をいたします場合に、補助金を出しましたり、あるいは低利融資をいたしましたりして、いろいろと需要の喚起と申しますか、水産物の処理の方法については、それが間接的に価格維持になるというものは、いろいろ実施をいたしておるわけです。御指摘女川のような場合につきましても、ある意味では、一面大会社進出をいたしましたとしましても、そこで加工原料として、その地区漁獲物利用ができるということは、その港にあがります水産物の一つの需要を確定をいたします意味では、価格維持にいろいろ役立っておると思いますが、もちろん、それがそこへだけ集中して独占的になるということについては、御指摘のような問題も生ずると思いまして、系統団体等共同出荷とか、そういう方向については、現在いろいろ指導をいたしましたり、前段申し上げましたような方向で、系統団体による集荷、あるいはそれの加工利用という方向については、積極的に補助助成措置を講じておる次第でございます。
  5. 安田敏雄

    安田敏雄君 それから、先日私が質問の際に要求しておきました資料関係でございますがありますね、この際お伺いいたしたいのは、これは陸地における中小企業と、大企業との関係を見ましても、なかなか政府が、漁業についても同様でございますが、融資をいたしましても、それがたとえ低利であっても、あるいは補助をいたしましても、大企業進出というものは、そういう国の補助政策をはるかに上回って激しいわけです。特にそういう大企業進出をするということは、これはきわめて近代装備されたオートメーション化によるところの加工施設設置するために、とてもわずかな低利融資や、特に財政投融資等による政府資金融資などはいいですが、そうでない地方銀行、あるいは相互銀行信用金庫等をあてに融資を受けるものは、おおむねこれはなかなか容易じゃないです。多少低利であっても、いろいろ融資交渉からして、あるいはその信用度合いからいたしまして、なかなか高利につく場合があるわけです。そういうようなことによって、たとえ施設ができたにいたしましても、とても大企業設備投資には匹敵すべくもないし、さらにまたその生産を行なっていく場合におきましても、これは非常にその立ちおくれが出てくるということは明らかです。したがって、これらの問題については、それは単に融資だとか、あるいは補助とかいうことでなくて、もっとはっきりとした何か適正な行政的な措置あるいはその他の大企業進出する分野の問題の規制、こういうようなものをはっきりきめないと、幾ら自主的な生産をやっていこうといたしましても、適正な価格の保証がない限りにおいて、従前のような答弁の、サンマが、ああいうような価格政府買い上げ冷凍しておいてというような形の、わずか二億円くらいの予算だったでしょうか、そういうようなことでは、とてもそれは漁家生産を維持できるというようには私は考えられないと思うのです。こういう点の調整を、どういうように考えておるのか、こういうことです。
  6. 和田正明

    政府委員和田正明君) 先ほど申し上げましたように、補助金なりあるいは財政金融措置で、系統団体冷凍なりあるいは加工施設なりを設置をいたします場合は、そういう民間金融ということではなしに、処置をいたしておるわけでございますが、現在水産物関係でやはり価格が問題になります場合には、安田委員指摘のように、サンマでございますとか、アジサバでございますとかいういわゆるおそうざい物で、ある一定の時期に急激にとれますものに多いわけです。したがって、それらが実際の需要にマッチをいたしますように、一方的にある程度自主的な生産調整を行ないます半面、それらの新規の需要を開拓いたしまするとか、加工対策をとりますとかいうことが、主たる価格対策となるわけでございまして、御趣旨のように、必ずしもこのような価格対策を特に必要といたします水産物について、大企業との間に集荷競合関係というようなものは、現実にはないのではないかというふうに考えるわけであります。したがって、そういう価格対策を特に重点的に指向することが必要なサンマアジサバ等のいわゆるおそうざい物大衆魚につきましては、今後さらに冷蔵庫でありまするとか、あるいはそれをひらき、生干し等にいたします加工施設でありますとか、あるいは魚粉を作ります施設でございますとか、そういうことを沿岸の漁協を中心補助あるいは財政投融資等をいたしまして、新しい需要を開拓していくということの努力をして参りたいというふうに考えております。
  7. 安田敏雄

    安田敏雄君 そのことはわかるのですが、ただそういう生産物の集中させられる漁港に対して、あるいはその付近に対して、大企業国民消費関係と見合って大幅に投資をするわけです。そうして加工いたします。加工するとなると、これは大企業のことでございますから、そろばん勘定に合うというものは、中小漁業家がやっておる分野にまでも進出して、そうして高度な設備をもって加工生産を開始するわけですよ。そうしましたときに、しかもこのごろわれわれは消費者でよく食べるわけでございますが、豚肉等のきわめてあぶらみたいなところを入れて、おもに魚類を入れたところのハムソーセージというようなものが出ているわけなんです。  そういうようなものをどんどんやっていきますと、そうなると勢い、それは一例でございますけれども、結局さらにまた何といいますか、その他の加工の問題におきましても、これはそろばんが合うということになると、大企業は膨大な資本でもってどんどん進出してくる、急激に進出してくるということになりますと、勢い中小漁業家生産を圧迫する。そういうときの調整を、単に低利融資であるとか、補助金だとかいう、あるいは指導だということだけでは競争できない、これの規制をどういうように考えているかということです。
  8. 和田正明

    政府委員和田正明君) ただいま例にお出しになりました、たとえば魚肉ソーセージといいます場合には、マグロの輸出用カン詰生産いたします場合に残ります肉とか、あるいは鯨の肉とかというものを中心に作っているわけでございまして、先ほども申し上げましたように、主として価格対策がわれとして重点的に考えなければいけませんのは、沿岸漁業者がとっており、しかもその時期がある一定時期に集中をしている割り合い単価の低いサンマとか、アジサバとか、おそうざい物に限られると思います。ですからそれについての対策については、先ほど来申し上げておりますように、系統団体による集荷なり、加工なりの方向について、積極的に助成をして、需要関係を開拓をして参りたい、こういうふうに申し上げたわけです。
  9. 安田敏雄

    安田敏雄君 わかりました。  それから次にお伺いをいたしますが、やはり私どもはこう考えるのですが、実は東北の塩釜その他のあの付近において生産された大衆魚その他のものが、非常に輸送関係が悪いということがあるわけです。輸送関係が悪い。それでこれは道路の問題もあるわけなんだが、私どもみたいに消費県にいる者は、もう少し道路がよくなれば、もっとはしりのサンマ等が一尾四十円くらい出さなくても、一尾二十円くらいで食えるのじゃないかということを考えるわけです。したがって、その沿岸漁業振興というものは、同時に合わせて陸路の整備ということが重大な問題になってくるわけです。こういうものについての建設省あたりと、やはり何かそういう農林省との間で話し合いというようなものが行なわれているわけですか。
  10. 和田正明

    政委府員(和田正明君) お話しのように、いわゆるおそうざい物のそういう魚類は、もっと、先生今おっしゃいましたような山間部等需要を拡大する、さらに需要の伸びる余地が相当あるのではないかというようなことも考えられますので、農林省独自としては冷凍の自動車、あるいは冷凍船等運搬用設備に対しては、数年前から助成をいたしております。さらに、昨年来運輸省等とも折衝をいたしまして、冷蔵貨車をさらに国鉄のほうで整備をしてもらうというようなことについても折衝を続け、本年度でもある程度そういう貨車増設等運輸省でも見当つけてくれておりますが、今後もやはり必要な冷凍貨車等確保等については、国鉄運輸省とも打ち合わせをいたしまして、一そう円滑な輸送ができますように、なお一そう努力をしたいというふうに考えております。
  11. 安田敏雄

    安田敏雄君 この配車の問題はあとで申し上げますが、今非常にトラック輸送ということが国鉄との関係において輸送が非常に困難で、トラック輸送が行なわれているわけです。したがってそういうような国民食料の一環としての、実際のことを言いますと、山間僻地の農家というものは、蛋白質をとる場合においては、この資料にもありますように、非常に低いんですね。一日海草類を含めて、これは匁で言いますと二十匁くらいしか食べてないんですね。ですからしかもその山間僻地の人たちはきわめて収入が低いので、また昔からの慣習からいって、獣肉類よりも、魚類のほうをよけいとるのですよ。そういうようなことからいって、全体的なそういう国民の副食物としての重要な蛋白資源をとる場合において、やはり農林省あたりも、私は、もっとトラック輸送という問題を考えたときには、今日、鉄道の貨車が非常になかなか配車できないというような現状の中においては、やはり道路問題についても、考えていかなければ、沿岸漁業に重大な影響が出るのではないか、こういうふうに思っておるわけなんです。こういう点の考え方は、従来からお持ち合わせであるかどうかをひとつお聞きしたいと思います。
  12. 和田正明

    政府委員和田正明君) 御指摘のように、輸送問題が、価格対策と申しますか、あるいは消費対策と申しますか、そういう面で重要な意味を持ちますので、これは漁業には限らないと思いますが、現在いろいろ価格対策等の検討を別途いたしておりますが、農林省としては、その中にはやはり輸送対策というようなことを取り上げまして、先ほどちょっと触れましたように、水産関係では、冷凍運搬用の自動車の補助等もいたしております。ほかにそういう道路整備等につきましても、極力政府の全体のベースの中で一そう輸送が円滑にいくように、事務的にはいろいろ折衝を続けております。
  13. 安田敏雄

    安田敏雄君 特に従前の、まあ私どもが歩いたところにおける漁港とその付近というものは、おおむね非常に道路が悪いのですよ。したがって整備された第一級国道、あるいはその他の、非常にいい道路へ出るまでの間に非常に時間が空費せられる、そういうことのために鮮度が落ちるというようなことでもってたいへん不便を感じている。ですから、やはりそういう地域における道路整備の問題については、やはり農林省あたりも建設省だけにまかせないで、積極的にそれらの問題についての連絡強化をはかっていくべきであるということを申し上げてみたいと思うのでございます。これは希望ですからよろしゅうございます。  それから、実はこれもやはりその視察のときにわかった問題ですが、これは一例ですが、実は塩釜付近における国鉄貨車の配車はきわめて円滑にいっておる、ところがそのほうへとられてしまって、それから奥のほうの牡鹿半島のほうですね、そちらの群小の小さい、何といいますか、集散地には非常に貨車の配車が悪いということを、実は地方の人から聞いたわけなんです。ところがこういうような問題も、やはり重要な一つの問題として考えていかなきゃならぬだろうと思うわけでございますが、それらについての対策をどういうふうにひとつお考えになっていますか。
  14. 和田正明

    政府委員和田正明君) 御指摘のように、三陸の沿岸には、相当大小たくさん漁港もございまして、わが国としては相当程度漁獲高が上がっておるわけでございますが、御承知のように東北線が今なお単線でございますことと、三陸の海岸にある程度の鉄道はございますけれども、重要な輸送網が、としてもまだできておりません関係で、御指摘のように貨車が足りないという事実がございます。そこで先ほども申し上げましたように、大体あの地区に当面百両程度の冷凍貨車の増設をしてほしいということで、国鉄と春以来折衝を続けております。ほかに運輸省等でも東北線複線化というようなことも、ある程度計画があるとは聞いておりますけれども、基本的にはそういう他省の、よその省の措置等の推進と相待ちまして、そういう問題を逐次解決していくということ以外に、私どもとして直ちに水産庁だけで手を打てる問題でもございませんので、政府部内でよくそういう方向について努力をして参りたいと思います。
  15. 安田敏雄

    安田敏雄君 何かそういう場合においての輸送を専門に業を営むものについても、たとえば地方の輸送会社、そういうようなところの機構あるいは運営上に対しまして、非常に理解に苦しむところがあるようです。疑問点があるようでございます。そういうようなことが私は影響をしているのではないかと思うわけだ。そこで、やはりそういう漁港付近については、特に集産地における漁港ですが、それらの問題につきましては、やはり海産物の輸送という問題につきましては、運輸省と、運輸省の出先と、それから輸送を営む業者と、やはり漁業協同組合といいますか、そういうような生産者を代表するものと、それから農林省とが積極的に出て、それらのいわば十分な協議によって問題を解決していくというような積極的な取り組みがどうも今まで欠けておったのではないか。輸送のことだから、全部運輸省にまかせっきりでいいのだ、業者にまかせっきりでいいのだということでは、これでは漁場においてはおそらく自分の品物だけを輸送するために相当貨車が減両されておりますというと、問題が出てくるわけですよ。これらの問題を解消するためにはやはりそこまで、輸送関係まで農林省が積極的に指導していく、水産庁が指導していくという、そういうかまえがほしいように私はその際感じたわけですよ。この点については、その取り組みを今までしていないだろうと思いますけれども、今後はどういうようにお考えになっておるでしょうか。
  16. 和田正明

    政府委員和田正明君) 漁期になりました場合には、やはり配車計画等につきましては、私どものほうから積極的に国鉄なり、運輸省に、従前からも配車について依頼をいたしまして、いろいろ打ち合わせの会合等は今日までもいたしておりますが、ただ先ほども申し上げましたように、基本的には冷凍貨車の絶対数量がなお不足をするという面もございますので、先ほどもお答えを申し上げましたように、運輸省あるいは国鉄と現在折衝をして冷凍貨車の数量の確保については、引き続き努力をいたしておりますわけでございます。なお、御指摘の点はまことにごもっともでございます。今後ともなお国鉄なり、輸送関係の会社等との配車計画の作成等につきましても、一そうの努力をいたしたいというふうに思います。
  17. 安田敏雄

    安田敏雄君 まあこのくらいにしておきましょう。  それから、その次に、実は漁港付近における漁業従事者の生活関係あるいは衛生関係改善の問題でございます。この点について、従来の漁港整備のほうへは非常に力を入れておるが、この方面はほとんどそこへ進出しておるところの企業家にいたしましても、あるいは土着の従来からの漁業者にいたしましても、その従事者についての生活環境を向上さしていくという問題については、きわめて取り組みが非常に低かったように感じられるわけです。まあ今度の法案におきましては、それらの問題について、住宅等につきましても相当強化していくと、こういうことになっておりますが、たとえば住宅問題をひとつ取り上げて、そのうちで見ますというと、この法案の精神によって、住宅問題等につきましては、住宅公団あるいはその他のその関係においてどの程度強化していくのか、何か計画がおありですか。
  18. 和田正明

    政府委員和田正明君) 住宅関係につきましては、三十八年度につきましては、これは漁村ということではございませんが、農山、漁村全体につきまして、約八千戸を対象にして、住宅金融公庫の金融の処理をしてもらうというようなことは、一応建設省等とも打ち合わせはいたしております。
  19. 安田敏雄

    安田敏雄君 漁村方面はどのくらいですか。
  20. 和田正明

    政府委員和田正明君) この中で特に漁村部分というふうなワクづけまではきめておりませんが、全体に農村及び漁村におきます住宅関係は、御指摘のような点もございますので一応三十八年度としては農村漁村を含めて八千戸程度ということで金融措置をしていきたいという決定でございます。
  21. 安田敏雄

    安田敏雄君 その三十八年度の計画を実施化するということであれば、八千戸ならば、たとえばこのうちどのくらい当然漁村方面にいくのだ、あるいはその中でもって、特に悪い地方が多いので、この地方へはどの程度に振り向けていくのだという、そういうものはまだないわけですか。
  22. 和田正明

    政府委員和田正明君) そこまで細部に分けましたものはございませんです。
  23. 安田敏雄

    安田敏雄君 そうしますと、この法案が通りますと、積極的にその細部についての配分を決定する、こういうことに了承してよろしゅうございますか。
  24. 和田正明

    政府委員和田正明君) この法案に基づきましての今後構造改善計画等の作成の中で、現地の希望等を参酌しながら、住宅金融公庫との間に積極的に私のほうからもあっせんいたしまして、おっしゃるような緊急度とか、あるいは地元の要望とか、そういうことをしんしゃくしないから、積極的な融資のあっせんをして参りたいというふうに考えております。
  25. 安田敏雄

    安田敏雄君 そこで、この法案は環境の整催につきまして非常に増進をはかる、こういうように結論づけているわけでございますが、環境の整備ということになりますと、漁場の環境、生活環境、衛生環境というものはかなり悪いですね、だれが見ても。これをよくしていかないと、そこの生産が上がっても、漁場全体というものは近代化されない、漁港全体というものは、近代化されない、こういう結果になるわけですたとえば、衛生関係についての診療所のような問題の解決、同時にそれの充実、あるいはその他の文化的ないわば娯楽施設の強化の問題、こういうようなことについてのやはり具体案というものはまだ出ておらないのですか。それとも、計画的にそれらの問題を地域的に重点と思われるところから実施していくのだという、そういう計画書でもおありになるのですか。
  26. 和田正明

    政府委員和田正明君) 今、政府自身として本年度の予算に考えておりますことは、農業のほうにもございますが、漁村につきましても、生活改善の普及員制度というものを三十五年から設置をいたしまして、三十八年度には一応百十名という生活改善普及員の設置をいたす予定になっておりますが、これは今後技術指導をいたします。沿岸漁業改良普及員、それとは別に三百四十六名ほど三十八年度の予算で設置をいたす予定でございますが、その両方相待ちまして、今後とも生活担当の改善普及員の充実を一そうはかっていきたいというふうに考えております。御指摘のようなその他の娯楽施設とかいうことになりますと、水産庁で直にということには参りませんので、構造改善計画を立てます場合には、それぞれの地元に青少年クラブの代表でございますとか、婦人部の代表でございますとか、そういう人たちを加えた協議会を設けて、構造改善計画を下から積み上げるように指導いたしておりますが、まあそういう段階での計画、もちろんそれには市町村長その他そういう関係者も加えてございますので、そういう計画の中で、主として県等に指導させながら、その計画に対応した施設整備されますように努力をいたしたいというふうに思っております。
  27. 安田敏雄

    安田敏雄君 こういう法案を出す場合において、当然その公衆衛生の問題、その他の厚生施設の問題を取り上げるからには、相当厚生省との間においての話し合いは、われわれとしてはなさっているものと思うわけですよ。そういうような点についての、計画的に遂行していこうというその点についての厚生省との間においての話し合い、あるいは事業遂行におけるところの、計画遂行におけるところの調整といいますか、そういうようなものは逐次やっておるのですかどうか、その点をお伺いしたい。
  28. 和田正明

    政府委員和田正明君) それらの点につきましては、法案の作成を政府としていたします場合に、各省とも段階的にいろいろ打ち合わせをいたしまして、それぞれの所管省の所管に属します部分につきましては、それぞれ所管省の行政の中で処理をしてもらうということでもちろん話し合いは進んでおります。今後、具体的に計画ができますれば、それの具体的な実施について引き続き関係各省と私どもとの間で打ち合わせをしながら、その計画の実施措置をとっていきたいということになっております。
  29. 安田敏雄

    安田敏雄君 そこでお伺いしたいのは、その計画を立てる場合に、その計画を立ててこれをどういうように消化していくか、何年ぐらいでこれを完成していくかという、そういうことが私は計画だろうと思うわけですね。ただ、漸次その関係した各省と話し合いながらやっていこうということでは、これではどうも納得ができない面があるわけですね。少なくともこれだけの法案を出す以上は、それは一つの机上のプランでもいいですよ。これを実質的に将来予算の中において、三十九年度なら九年度から、四十年度なら四十年度から、漸次その地域を選択して、そうしてその中でモデル・ケース式に遂行していくのだ、で、これがしまいには、ついには国民もそういうような計画に協力していくということでなければいけないと思うのです。もちろんその政府の計画が、全地域を全部網羅してやるなんということは、それは非常に長い間かかるし、特に日本の経済動向の中では、大企業偏重といわれているくらいですから、なかなか中小産業や一般の国民のほうには、計画は立っても予算は回ってこないでしょう。したがって、どうしても政府のやる事業というものは、みんなモデル・ケース式にならざるを得ない。ただ、そのモデル・ケースを作る場合に、一般の人たちも、地方の公共団体もあわせてそれが協力できるというような計画でなければならないと思う。ところが、これだけの法案を出すについて、それがまだ関係各省とただ話し合いをしただけで、逐次やっていくのだということになりますと、これはまあ来年から、ほんとうにこの法案は、なんですよ、基本法だともいえるし、沿岸漁業の基本法だともいえるし、または具体的な法案だともいえるわけですよ。そういうような意味合いから言って、もう少し私としては法案の条文にあるところの精神をくみ入れて、実質的な計画を樹立すべきである、こういうように考えているわけでございますが、そういう点について、もう少しく具体的に御説明を願いたいと思います。
  30. 和田正明

    政府委員和田正明君) 沿岸漁業の構造改善事業は、一応地区の指定をいたしまして、二年間調査をした上で、その調査に基づいてできました計画を、漁業の近代化あるいは漁場の造成等、特に水産プロパーの問題につきましては、調査が終わりました三年目から四年間で仕事を進めていくということを考えておるわけでございますが、もちろんその漁業プロパーでない部分につきましても、その浴岸漁業構造改善事業計画の中におきます環境整備でございますとか、そういう点につきまして同じ四年間というペースでそれぞれの地元の計画に対応しつつ、各省の所管行政の中で処理をしてもらうというふうに考えておるわけでございます。
  31. 安田敏雄

    安田敏雄君 まあ不満足ですけれどもむずかしい問題ですから、その点で打ち切っておきます。  それから次にお伺いしたいのは、この修正案に出ておるところでは、第九条の四項の「賃金等の労働条件その他の労働関係及び労働環境に関する事項」こういうようなものがあるわけです。今情勢が違うかもしれませんが、私どもが聞くところによりますというと、大体沿岸漁業従事者というものは、年間最大雇用日数、働く日数というものは二百日ぐらいだということを聞いておるわけですよ。それで三百六十五日、一年間生活しなきゃならぬわけです。二百日働いて三百六十五日生活しなきゃならぬ、そういう面においてその賃金等につきましては相当優遇しないと、これは働く日数が制約せられておりますから、ですから生活できないということになるわけです。こういうような問題について、賃金等についてのこの修正案を受け入れる以上は、水産庁としても具体的にこれらの問題についての取り組みの姿勢というものがおありになるかと思うのですが、もしおありになったらお示し願いたいと思います。
  32. 和田正明

    政府委員和田正明君) 漁業の賃金の実態につきましては、実は残念ながらそれについて系統的に対策を立てるまでの資料がまだ整備がございませんので、実は本年度の予算で賃金の実態調査をいたしますための経費を別途計上いたしたわけでございます。そういう調査を通し、また昨年から経営者と漁業従事者側の双方の代表者を呼びまして、懇談会のような形で、そういう労働関係の問題を詰めていくような会合等もときどき設けまして、労働関係全体の改善をはかっているわけでございます。そういう調査なり、会合なり、その他の機会を通しまして、今後、御趣旨のような方向で進めていきたいというふうに考えております。
  33. 安田敏雄

    安田敏雄君 そうしますと、漁業全体についての賃金関係の調査というものは、これはなかなか従来の経過からいって容易ではないと思うわけですが、しかし政府の構造改善事業を見ますというと、昭和三十三年を基準年次として十カ年で大体二・一倍、基準年次で約十三万円のものを二・一倍の二十七万円にまで引き上げると、はっきり数字として出ている。そうしたならば、こういう結論的なものから言えば、賃金調査はできてないにいたしましても、もう少し何とか詳細な把握ができてもいいように感じとして受け取るわけですが、どういうふうになっておりますか。
  34. 和田正明

    政府委員和田正明君) 先ほどちょっと申し上げましたが、本年度予算で組みました賃金調査も、全漁業について全部やるということもむずかしいわけでございます。第九条の趣旨に沿いまして、漁業の種類ごとに処置していきたいというふうに考えております。ただいま御指摘の点につきましては、これは賃金と申しますよりか、構造改善事業で設備の近代化をいたしますとか、たとえば船を大きくいたしますとか、そういうようなことで全体として総生産額を上げていく、一方では他産業への移動傾向もございますので、就業人口もある程度減るであろうという見通しのもとに一人頭の平均を出しましたわけで、これは必ずしも賃金関係と申しますよりは、生産性の向上、あるいは就業人口の減少等にからんで一人頭の所得の増大をはかっていきたい、こういう趣旨のものでございます。
  35. 安田敏雄

    安田敏雄君 わかりました。そこで、賃金関係については今後、前向きの姿勢をとっていく、あるいは生活環境につきましても同じような措置をとっていくことはわかったわけでございますが、しかし、まだ具体的に何の答えもないわけですね。したがって、関係各省と連絡のあるものは、できるだけ早く計画を立てて、それは具体的なものが立たないと、これは論議にならないわけです。また、漁場といたしましても、安心しないですよ、全体として。そういうような希望をしておきます。それから、構造改善事業についてちょっとお伺いいたしますが、今度のこの修正案は、おおむね、三党共同修正ということになっております。私どもの社会党で要求したものも相当くみ入れられておりますが、特に第八条のこれは自民党さん、与党側の御意向によって修正されたものだというふうに聞いておりますが、沿岸漁業振興計画の一環としての構造改善事業、これは従来、国が立てるということになっておりましたのを、今度は国ではなくて都道府県が主体になってやるのか、あるいは関係漁業組合が中心になってやるのか、その他の市町村が行なうのかというような点がちょっとわかりにくい点があるわけです。国は全然責任なしに、これで見ますと、構造改善事業について一応助言、助成、援助ということになるわけですが、こういうような点について、ひとつ御説明をお願いしたいと思います。
  36. 和田正明

    政府委員和田正明君) 第八条の政府の原案は、御承知のように構造改善計画は都道府県が立てるのについて国が必要な助言、あるいは立てたものを実施するについて必要な助成という措置をとるということで、国自身が、むしろ第二義的と申しますか、構造改善計画を立てたり、あるいはそれを実行したりすることが、原案では都道府県の主たる責任のような文章になっておったわけでございます。衆議院の御審議の際に、社会党からも、また自民党からも、国が沿岸漁業構造改善事業をやるのだという国の責任を明確にすべきであって、都道府県が立てるものについて、単に指導したり、助成をしたりするのだという考え方、かまえ方は適当でないという御趣旨で、都道府県が立てるということでなくて、構造改善事業の推進について必要な予算措置なり指導措置なり、そういうことをやるということで、国の責任を明確にするという御趣旨でこういう修正になったというふうに承知をいたしております。
  37. 安田敏雄

    安田敏雄君 そうしますと、この構造改善事業は、国の責任においてやるということが明確になったと、こういうことなんですね。
  38. 和田正明

    政府委員和田正明君) はい。
  39. 安田敏雄

    安田敏雄君 現在まで三十六年に十三、三十七年に八つ、三十八年の予定が七つですね。これらの計画というものは、従前はほとんど国の責任ではなくて、都道府県あるいは地方公共団体等によって計画されてきたものであったわけですね、国が指導しながら。そういうことなんですね、今まで。そういうことですか。
  40. 和田正明

    政府委員和田正明君) 指定を受けました地区は、都道府県が中心になりまして、それぞれの沿岸の漁村と申しますか、漁場と申しますか、それについての漁業の実態、あるいは諸般の経済環境あるいは社会環境の調査を県がいたしまして、それから末端のほうから市町村長なり、あるいは漁協の代表者なり、あるいは青少年クラブなり、あるいは婦人部の代表なり、そういう方々で構成をいたします協議会を作ってもらいまして、そういう人方の希望なり意見を十分反映しながら、県がそれらを取りまとめて農林省へ持っていく、農林省のほうでは、それを聞き取りをいたしまして、関係各課で十分検討をして、そして最終的な当該地区の計画をしていく、こういう手続をとっておるわけであります。
  41. 安田敏雄

    安田敏雄君 そうしますと、これら三カ年間にわたって指定を、ただいま部長のおっしゃるような説明の仕方で計画を立てた構造改善事業の指定地区、これらにつきましては、従前は一応半面には地方公共団体その他の責任もあったわけです。ところが今度は、この法改正によって全面的に国が今度は責任を持っていくんだと、こういうまあ非常にウエートがかかってきたわけです。これからの指定については、もちろんそうなんだが、過去の指定について、やはりそういうような方向で、今後の国の主体性において予算措置なり、事業計画実施の遂行をしていくのかどうか、そういう点を御説明願いたい。
  42. 和田正明

    政府委員和田正明君) 先ほども申し上げましたように、やはり現地の事情なり、地元の希望なりというものを十分反映しながら計画を立てていくということが大事でございますので…。
  43. 安田敏雄

    安田敏雄君 計画はそれでいい。
  44. 和田正明

    政府委員和田正明君) そういう形で地元から希望なり、意見なりを十分聞きましてから、それを実施をいたします場合のそれの予算措置、あるいは金融措置、それの実施の細部計画等につきましては、地元の希望を参酌しつつ国の責任において処理をしていくというふうに考えております。
  45. 安田敏雄

    安田敏雄君 その地元の希望をいれて国の責任においてやっていくということは、これはどこにでも出てくる問題です。しかし取り組み方なんです。特に非常に沿岸漁業が他産業に比しておくれているということが言われておるわけです。ですから、この法案の第一条に、「沿岸漁業等の従事者が他産業従事者と均衡する生活を営むことを期する」とこうなりますと、これは構造改善事業というものは、非常に重要な要素を帯びてくる。しかもこの第八条が、従前、一面には都道府県以下の責任であったというものが、今度はっきり国が責任を持って「助言、助成」をやっていくんだということになれば、国の比重が大きくなるわけです。そうしますと、従来よりも困難性がある構造改善事業を遂行する場合においては、より予算措置の強化をしていくとか、あるいは指導の積極化をしていくとかいう取り組みがなされていかなければならぬと思うのです。そういうふうな問題についての心持ちといいますか、態度をひとつ伺いたいと思います。
  46. 和田正明

    政府委員和田正明君) まだ具体的な数字として申し上げます段階までにはなっておりませんけれども、来年度の予算等につきまして、今申し上げましたような形で、国が今後実施をして参りますための人なり、事務的な経費なり、そういうものにつきましては、来年度予算で要求をしたいということで検討をいたしております。
  47. 安田敏雄

    安田敏雄君 その修正されました法案の趣旨に従って、積極的なひとつ水産庁といたしましても予算措置を講じてそれを実行していくと、こういう気持だけですか、具体的にはまだないわけですね。
  48. 和田正明

    政府委員和田正明君) まだ予算がこれから編成作業を始めます段階でございますので、具体的にどうというふうにと、ここで申し上げるまでには至っておりませんが、水産庁内部としては、修正をされました趣旨に沿って処置をしていくようにいろいろ準備をいたしております。
  49. 安田敏雄

    安田敏雄君 そこで、特にこういう国の責件が明確になったわけですから、そこで三十九年以降の指定のこれありましたな、資料にあったですか、指定地域、ないですか、これはおわかりですか。
  50. 和田正明

    政府委員和田正明君) この指定につきましては、大体全国で四十二地区、特に北海道とそれから長崎のように離島の多い地帯は、一県を数地区に分けておりますが、その他の地区については、当該県を一応一つの地区というふうに考えて指定をするつもりでございます。県が調査をしたり、先ほど申し上げましたような地元の意見なり、希望なりをくみ取ってくる機構としては、それを大体、県によって事情が違いますが、平均五地区くらいにさらに中を小分けをいたしまして、計画を立てるという考え方でおるわけでございます。三十九年度以降の指定につきましては三十九、四十、四十一と、三年間で指定を終わる予定でございますが、県のまだ三十九年度予算の編成も終わっておりませんので、具体的に三十九年度には何県の地区を、四十年度には何県の地区をというところまで最終的にはきめておりません。今後予算がきまりました上で、三年間の間に全地区の指定が終わるという方向で処理をしたいというふうに考えております。
  51. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  52. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 速記を起こして。
  53. 安田敏雄

    安田敏雄君 そうしますと、三カ年間で二十八地区を指定して、四十二地区ですからあと十三地区ですね。十三地区を三十九年、四十年、四十一年で指定することになる。ところが、今度は先ほどのように国の責任が明確になったわけです。ですから勢い今度は従前のような構造改善の指定と趣きが多少変わってくるのではないか。国がこれだけ責任を持ってくれるというのなら、おれのほうでも今度は少しくしなければならぬだろうと逡巡しておったところがあるわけですね、と思いますね。農業構造改善事業の問題にしてもそうだ。したがってこれは四十二で、あと十三指定すればそれはもう全部打ち切るか、それとも情勢の推移によっては、将来これがさらにもっと指定地区をふやしていく。そういう点の見通しについてはいかがでございましょうか。
  54. 和田正明

    政府委員和田正明君) 先ほどもちょっと御説明を申し上げましたように、全海岸線を四十二の地区に分けておりますので、四十二の地区指定が終わりますと、一応全沿岸をおおうという考え方で、農業構造改善事業のような場合とちょっと違う考え方をとっております。したがって地区数をふやすということは考えられないと思います。
  55. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) ここでしばらく休憩し、午後二時再開いたします。  午後一時四分休憩    ————・————  午後三時五十一分開会
  56. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) ただいまから委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、沿岸漁業等振興法案を議題といたします。  質疑のおありの方は御発言願います。
  57. 天田勝正

    ○天田勝正君 何分、国会もきょう一日でありまして、時間もありませんから、質疑の点は多々ありますけれども、それら時間の制約も考え、私は他の委員諸君の質疑とも重複しないように注意して、質問の順序を全く従来とかえて、これから逐次質問いたしたいと思います。  まことにこまかいところから入りますが、まず、衆議院の修正は、これから質疑するのでありますが、本来ならば衆議院の提案者代表に来ていただきたいのでありますけれども、これもまた、時間の制約がありますから、これらをつぶさに知っておる政府当局から、ひとつ答弁を願いたいと思います。  今回の衆議院修正のうち、国の施策の部分以下でありますけれども、これの中には、三条の一号、「水産資源の適正な利用、水産動植物」云々から、「漁場の効用の低下及び喪失の防止、水産資源の維持増大」というのがありますし、さらに七には、「漁業資材の生産及び流通の合理化並びに価格の安定」、さらに八には、「再生産の阻害の防止及び経営の安定を図る」ここまで一括聞くのでございますが、一体これらのことをするには、政府側は衆議院の修正を受けて、具体的にはどういうことをやられるということでありましょうか、伺います。
  58. 和田正明

    政府委員和田正明君) 最初に、三条の一号の「漁場の効用の低下及び喪失の防止」という修正についてでございますが、これは御承知のように、すでに、いわゆる水質二法と言われております法律が成立をいたしておりまして、それに基づきまして、指定水域について適正な水質基準を定める作業が現在進行をいたしておりますが、政府提出の原案におきましても、水産資源の維持増大ということの、うらはらとして、修正されましたような趣旨のことは含めて考えておりましたわけでございますが、今後は、さらに水質二法の適用範囲を拡大をいたしますとか、この二法によります水質基準の設定の作業を急いで処理をしてもらうとか、そういうことについて、各省に申し入れ等をいたしまして、私のほうも一緒にそういうスピード・アップと申しますか、そういう措置をとっている、そのほかに、すでに水産資源保護法等の法律もございますので、それらの規定をできるだけ活用をいたしまして、全体として水質の維持による効用の低下等を防止をいたしまして、水産資源の維持をはかって参りたいというふうに考えております。  それから五号の「輸出の振興」、この規定につきましては、主として輸出の問題は、通産省が役所の権限としては所管をいたし、またジェトロというような機構を持っておりますので、これらの機構を通産省とも協議をしながら活動を強化していく、そういうことになろうかと思います。  それから六号の、「輸入の調整」に関しまする規定につきましては、御承知のように、現在沿岸漁業に特に関係の深いもの、たとえばサンマでございますとか、アジサバとか、コンブとかいいましたような沿岸の零細な業者の生産にかかります水産物だけは、引き続き自由化をいたしませんで、割当物資として現在も残しておるわけでございますが、この改正の御趣旨に沿って、今後自由化の傾向が進んで参りまする場合にも、現在割当物資として残してありますものについては、この規定の趣旨を生かして自由化に対処をしていきたいというふうに考えております。  それから七号の「漁業資材の生産及び流通の合理化並びに価格の安定」ということは、主として生産資材でございます漁網等及び養殖用の餌料——えさ等が、ここの漁業資材ということの問題になろうかと思いますが、特に漁網につきましては、現在流通上特別の問題があるというふうには考えておりませんけれども、養殖用の餌料につきましては、今後養殖が、さらにこの法案の趣旨に沿って振興していきますにつれて、えさの問題が相当大きくなって参ると思いますので、試験研究機関を通して人工餌料等の研究を進めますほか、それぞれ餌料用の魚の保管施設としての冷蔵庫、そういうものの設置助成等をしまして、流通の安定、あるいは価格の安定をはかっていきたいというふうに考えております。  それから第八の点は、「再生産の阻害の防止」という規定は、農業基本法におきます同種規定とのバランスということで、御修正があったというふうに理解をいたしておりますが、現在実施をしております漁船保険法によりまして、漁船の損失等につきましては、特別会計等を設置して保険制度で損失の補てんをいたしておるわけでございますが、これらにつきましても、さらにいろいろ問題点もあると思いますから、そういうものを検討して改善を進めて参りたいと思います。  なお、漁獲共済という制度が現在試験実施がなされておりますが、これについては、先般どなたかの御質問にお答えいたしましたように、今までの試験実施の資料をもとにして、現在学識経験者にお寄りをいただいて、今後、より一そう発展的に進めていきますための基礎的な研究会を開催をいたしておりますが、できるだけ早く結論を出していただいて、漁況の異変による再生産の阻害防止をする措置を講じて参りたいということで、せっかく検討中でございます。
  59. 天田勝正

    ○天田勝正君 この第三条関係の衆議院の修正は、かなり具体的な問題を持っておるのでありまして、これを施行実施する側の政府といたしましては、もっと今の説明以上に具体的な案が私としてはほしいと思います。そこで、この点については「価格の安定を図ること。」という部分を除きまして、時間もありませんから先に進みます。しかし、なおこのことは、実施段階における熱意、方法等によりまして、ずいぶん内容が変わってくると思いますので、今も検討するという言葉がありましたから、一そう検討して、内容の充実をはかっていただきたいことを希望しておきます。  次には、本委員会においても幾度か指摘されました中小漁業振興、この第九条関係であります。「水産資源の利用に関する事項」、この「漁船及び漁具、漁ろう装置その他の設備並びに水産物の保蔵及び輸送施設」この最後の保蔵、輸送ということについては、他の委員の質疑にお答えがありましたが、ここに修正をされたという、このことにつきまして、特に従来の説明以上のものが政府側に用意されておるのかどうか。  それから、特に第四号の「賃金等の労働条件その他の労働関係及び労働環境に関する事項」、このことは、一般の労働政策以上のものを目途とされて、ここにこういう項目を衆議院においては、うたわれたと受け取るのであります。そこで、これを審議された際、政府はどう受け取られて一般の労働条件、賃金体系以外に、何かこうした沿岸漁業者に対する改革の方法等をお持ちであるのかどうか。その点を説明願います。
  60. 和田正明

    政府委員和田正明君) 〇第九条につきます修正につきましては、政府の原案が棒書きで書き流してありますことが主として御不満でありまして、たとえば「漁ろう装置その他の設備」ということで包括してあることは適当でないということで、もう少し中身を具体的に書くとか、「労働環境」という場合も、ただ「労働環境」でなしに、それに「賃金等の」というような言葉をつけ加えるというようなことで、全体としての九条の体裁と申しますか、趣旨と申しますか、あまり包括的で明確でない点を、それぞれ特記をして明確にするという御趣旨で御修正になったように了解をいたしておるわけであります。特に四号の「賃金等の労働条件その他の労働関係」という点につきましては、先ほども安田委員でございましたかの御質問の際、お答えを申し上げましたけれども漁業関係には古くから歩合判度という制度がございまして、固定給の部分よりは、漁獲の量に応じて漁業従事者と経営者との間で漁獲物を七・三とか六・四とかいうようなことで配分をするという習慣がございまして、そのことが最近のような労働不足の環境等との関連において漁業従事者の、質のよい漁業従事者の獲得を特に中小漁業において困難にしておるというような実情がございますので、そういう点について、なるべく固定給部分を多くするように、労働省等と現実に、それぞれ実態に合わせて共同で指導をいたしておりますほか、艦船の乗り組みの職員の居住区の問題につきまして、割合従前、他の船舶に比べると基準があまく、そのために非常に劣悪な居住区になっておりましたのを、先般運輸省等と打ち合わせをいたしまして、基準を改めまして、一定の基準以上の居住区でなければならないというふうに基準を改める等、今日まで一、二具体的なことについて手をつけてきておるわけでございますが、今後も、全体として質のいい労働者をなるべくよい環境、条件で、中小漁業者が獲得し得ますように、それぞれの関係者とも打ち合わせながら、強力に一つ一つ手を打っていきたいというふうに考えております。
  61. 天田勝正

    ○天田勝正君 次に沿岸漁業振興審議会、この設置が衆議院で修正して加えられました。これは沿岸漁業の問題は、中央漁業調整審議会で農林大臣が諮って、いろいろきめるということになっておりましたものを、同種ではありましょうけれども、全く別の機関をここに設けるということでございます。そこで私はこのことのよしあしではない。そうしたものを設けることに賛成でありますが、本院の議運等で、しょっちゅう政府の各種委員の任命にあたって、政府側から承認を求められた場合に議論になることは、あまりにこうした各種の委員の待遇に格差があり過ぎるということ、その格差も特に技術的な知識を提供する人がたの処遇というものが至って冷遇されておる。そのことが常に指摘されるのであります。したがいまして、とかく農林関係の審議会の委員などは、およそ大蔵関係の各種委員から比べたならば驚くべき差がある。かって私は、本委員会でも指摘しましたが、たしか漁港審議会の委員でありましたが、これはいささか改善はされたというものの、日に、出てきた日だけが千二百円になる、まことに泊ることもできない。こういうような冷遇で、片方においては非常勤であっても月額三十万円の処遇を受ける、こういうくらいの差がある。これは一々私は、全部例をあげてみたいくらいでありますが、時間を節約する意味で、あまり言いませんが、そこで今度のこの沿岸漁業振興審議会、これもこの道については卓越せる人材に委嘱しなければならないと思います。そこで今のところ考えております政府側の処遇はどういうことになっておりますか。
  62. 和田正明

    政府委員和田正明君) 各種の委員会委員の皆さま方の手当の点につきましては、ただいま天田委員の御指摘のように、非常にアンバランスであるということが先般来問題がございまして、昨年来内閣の事務当局等が中心になりまして、政府部内の各省の委員会の手当の額を統一的に処理するということで、今年の一月に各省全体を通して委員会の開催回数でありますとか、あるいは権限等でバランスをとりまして、そのアンバランスをなくするように政府として統一をいたしたわけでございます。今回この修正で設置されます中央漁業調整審議会におきましても、その全体の各省を通しての均衡の中で考えまして、農政審議会とか、あるいは現在ございます中央漁業調整審議会とか、そういうものとバランスをとった給与になりますように、来年度の予算で処理をしたいというふうに考えております。
  63. 天田勝正

    ○天田勝正君 具体的には、どういうことですか。
  64. 和田正明

    政府委員和田正明君) 会長が三千円で、ほかの委員の方が二千五百円という基準でございます。一日当たり。
  65. 天田勝正

    ○天田勝正君 常に議運で指摘されるのは、その程度の改善ではないのですよ。現に非常勤であっても、日銀政策委員の方は三十万円になる、片方は千二百円、あまりひど過ぎるというので、二千五百円になったわけです。そこで議運で注文をし、調整をせよと言っていることについては、今おっしゃるような話は、官房長官からすでに答弁済みなんです。しかし、それでは足らずとしておるのです、本院の議運においては。千二百円はあまりにひど過ぎるのですが、二千五百円になっても、ある種の委員をすれば、私はそういう、これは少し処遇のいいほうの例でありますけれども、知っております、親しい友人に。ところがやはり審議をし、いろいろ定時間以上にも事務局を自分で使うということもあります。それは私用に使うのではなくて、審議上必要なるがゆえに御苦労をかけるということになって、やはりみみっちいことを言うようでありますけれども、まあ帰りに食事を共にするくらいのことは特段のぜいたくをしているというのではなくて、普通の世間の慣行なんです。その程度のこともできないのです。あるいはおそくなってしまって泊まるというようなこともできないのです。そういう処遇を斯界の最高権威者に依頼するという、ことにこういう沿岸漁業振興あるいは漁港審議会の委員、こういうような人方はただであろうとも必ず来てくれる。来てくれるであろうけれども、そのことは人を遇する道ではないというのが、どだい基本的な本院の各種委員承認のときに出る意見なんです。今聞けばようやく千二百円じゃなくて二千五百円になったというお話ですけれども、その程度でも、まことに困るのですね。ことに日本のこの種の人事行政全般ですけれども、法律屋というか、そういう法律あるいは金融関係、こういうものはおそろしく処遇がよくて、何か技術的なことになるというと、おそろしく処遇が悪い、こういうことなんです。それを全体として是正したいけれども、ことに民間有識者をお願いするような委員の場合は、金融であろうと漁港の問題であろうと建築の関係であろうとも、少なくも斯界の最高権威者をお願いするのですから、本来頭がそろっていいはずだ、ところが今聞けばはなはだ不満足で、実際それらの人たちは、かりに御承認を賜わるかもしれないけれども、どうも人を遇する道としては、あまりひどいのじゃないかと思います。そこで国会側で、これは衆議院でも参議院でも指摘しているところなんですから、時期としては、はなはだいいときなんです。ですから、もう少しく処遇改善について、ひとつこれも考えおき願いたい、こう存じます。この点については答弁要りません。  次に、先ほど水産物価格の問題について他の委員からも質疑がありまして、それに対して冷蔵自動車等の答弁がありましたけれども、私はその点に触れるつもりはありませんが、これと効果的には同種のもの、つまり漁港がはなはだしく機能を失いつつある。この漁港の失いつつある機能については、別途漁港整備を行なっておるわけでありますが、それが機動的に行なわれませんと、なかなか大消費地に対する価格が、まことに不当につり上げられてみたり、そのはね返りが漁民に来る、こういうようなことで、工合の悪い点がある。たとえば最近、水産庁でも御承知でありましょうが、もとの銚子港のような機能は、もうすでに失っておりますね。それであそこには、小型の漁船しか集まりません。銚子に魚が集まらないのじゃなくて、船が集まらないのだ、あそこの漁民はみな異口同音に言っている。それは漁港としての機能を失ったものですから、大きな船はとてもつかない。小さい船ばかり来る。そこで、どこへ行くかというと、みな焼津やら、三崎やらへ行ってしまう。そうすると、そこに銚子に上がるより、三崎もしくは焼津——焼津なら明瞭にまる一日違いますね。大消費地東京に輸送するために。三崎であっても、実は半日はかかる。このことが消費者のほうにも不利になるし、現にそこへ上げるなら、時間的に漁民のほうにも、はっきり不利になる。消費者のほうはみすみす銚子から送られれば安いものが食べられるのに食べられない、こういう事態になる。あのすぐ半島の反対側へ避難港みたいなものを作って、これから東京に対する産業道路を作って、そうしてやろうという計画が県なんかで進んでおりますね、御存じでしょう。そういうことで、現実に漁港整備が、けっこうであるけれども、焦点が少しくズレると、もう生産者は、まことにそれで困るのみならず、消費者も、価格の画において、あるいは量の面において不利をこうむる、こういうことを一体水産庁、どうされるつもりですか。
  66. 和田正明

    政府委員和田正明君) ただいま御指摘の場合等は、いわゆる利根川の河口港でございます関係で、同じようなことが那珂川の河口にございます那珂湊にもあるわけでございます。そういうそれぞれの漁港につきましては、先般御審議いただきました第三次漁港整備計画の中で取り入れて、御指摘のように外港を作りまして、大型の船舶が入れるような計画を、それぞれ実施をいたしているわけでございますが、この法案で書かれております沿岸漁業振興事業というものを実施をいたします場合にも、一方できております漁港整備計画と関連を持たせまして、この振興事業の中での中心になりますような漁港、中核漁港は、その整備計画あるいは漁港の改良事業なりというようなことで、この振興事業と関連を持たせながら実行をして参りまして、御指摘のような点について、極力価格に直接影響がないように、そういう漁港が、この振興事業と関連を持たせ得るように処理をしようというふうに考えて、両方に関連性を計画の段階から詰めつつ処理をいたしている次第でございます。
  67. 天田勝正

    ○天田勝正君 これはちょっと焦点を合わして下さるならば、だれも不利になる者は一つもない。もとのとおり銚子に上がったものは、そのまま銚子に置いても、そのことのために焼津や三崎の漁民が不利になることは何にもない。ただ遠くからとってきたものを、どこへ上げるかということだけなんですから、ほかへ回航されて、その回航地の漁港の漁民は、何ももとどおり銚子に戻ったからといって問題は起こらない。問題は、今までこの近辺どこを比べても、隻数においては依然として銚子は優位で、ただ内容が片っ端から二十トンということで、それより大きいものはさっぱりない、こういうことで、それを仕方がないから、反対側の避難港に、指定はしていないようですが、地元で自然に作ってやろう、こういうものにむしろ整備を向ければ、今度は、現在の港に揚げたものは、そっちに回るだけですから、地元にも何ら不利はない。そのことによって生産者の魚価も保たれるし、それで消費者はもちろんいい、明瞭なんですね。その間によけいな費用のかかる損失部分というのは、かかって輸送だけなんです。そういうことでありますから、私は具体的なものをひとつ、はっきり聞いておきたいと思って、今質問しているわけなんですけれども、それならば、一方の漁港整備計画のうちに、今私が指摘したように修正しますか。
  68. 和田正明

    政府委員和田正明君) 今、私手元に漁港整備計画を持ちませんで、あるいはちょっと不正確な点がございますが、本年度から、たとえば御指摘の銚子のような特定第三種漁港につきましては、補助率等の引き上げ等もいたしましたし、今後もその方向努力をいたすわけでございますが、漁港整備計画に載っておりません漁港につきましては、これは漁港の修築あるいは改良の事業を実施をしないというわけではございませんで、一定の事業量をこえますものについてだけが、漁港整備計画の中に載せられておりまして、それよりもやや事業量の少ないもの等は、改良事業あるいは修築事業として、——改良事業として処理をいたすことになっております。ただ、今ちょっと具体的に銚子がどうなっておるかということは、はっきりいたしませんので、すぐ担当者に調べて、後刻お答え申し上げます。
  69. 天田勝正

    ○天田勝正君 後刻というのですから、それ以上追及してもむだだと思いますが、こういう具体的なことこそ、行政庁ではっきり事態を掌握してもらわなければ、実際困ることなんですね。今のあれだけ利根川の土砂というものが、いやが応でも堆積するところを補助を幾ら増してやってみたところで、まあ賽の河原ではございませんけれども、効果がないというものじゃないけれども、効果を上げるためには、おそろしく予算を食う、ところが半島反対側にさえ、今避難港になっているところを整備すれば、それは予算など、おそらく、私は技術者じゃありませんから、毎年々々これを修築しなければならないということじゃなくて、一ぺんやれば、おそらく何十年もそのままで使えるということになると思う。利根川の河口であれだけ土砂が流れてきて、栗橋あたりでも、年に一寸ぐらいずつ土砂がたまるそうですが、そういうようなものをさらっておったら、それは果てもない予算の空費だと思う。ただし、その土地の漁民というものが、反対側に移ったというだけで、おそろしく不利をこうむる、こういうのだったら、これはまた考えなければならぬ。しかしすぐ近くなんですから、別のところに移っても、元のところに来たい人は来たってもいいし、そっちへ移る人は移ってもいい、こういうふうにすれば、予算が少なくても済むのでありますから、これを失礼だが和田部長に、そういう計画に同調せい、こう言っては無理でもありましょうから、そういうひとつ機動的なことをやってもらえるように、前向きで検討してもらいたい、これを注文いたしておきます。  それから次に、海外漁業の提携についてであります。先般資料をいただきまして、漁業会社が二十七、関連産業会社十九云々と、こういうものを皆いただいておるわけですが、中南米十一、アジア太平洋地域が八、北米二、アフリカ二その他三、こういう数は二十六件あるとしても、その提携の形態というのは、その資料には全然書いてないのでありますけれども、その提携の形は、どうしておりますか、たとえば合弁でやっておるのか、あるいはその生産物をどう分けて協定をいたしておるのか、いろいろな形態があると思うのです。それをおわかりでしたらひとつ答弁願いたい。
  70. 和田正明

    政府委員和田正明君) 先回提出いたしました資料のうち、真珠に関しますものだけは役務の提供という形で、できましたものを全部日本へそのまま、まるまる入れて、日本で価格形成をして再輸出をするという形をとっておりますが、その他のものは、全部合弁会社でございまして、こちらから最高四九%までの範囲で出資——現物出資もございますが、そういうことをした。現地法人として成り立っておるわけでございます。ですから、その生産物を分けるということではなくて、それが販売をされました結果の利益について配当を受ける、そういう形になると思います。それからなお、先ほどの銚子の漁港の問題につきましては、先般御承認をいただきました漁港整備計画の中に銚子港も含まれておりますが、細部の設計の内容等については、私今承知をいたしておりませんので、先生の御趣旨のような方向で、担当部長とよく打ち合わせをしてみたいと思います。
  71. 天田勝正

    ○天田勝正君 そうすると、さらに伺いますが、過日のこのいただいた資料の「経済提携」という部分は、役務提供だけの提携である、こういうふうに了承し、その次の「技術提携」は、こちらの技術者が行って向こうの法人あるいは業者を指導する、こういう形のものであり、その2の「海外漁業協力会の概要」という以下のあれは、全部現地法人として合弁でやっておる、こういう理解でよろしゅうございますか。
  72. 和田正明

    政府委員和田正明君) 海外協力会以下の数字は、それは今、日本にあります協力会が、そういう合弁事業等をやります申し込みを現地から受けました場合に、そこにありますような事業であっせん等をされておる、こういうことで別途のものでございます。それ自身が事業をしておるのではない、事業をいたします場合のあっせんとか、コンサルタントとかをするための法人でございます。それから(1)のほうにあります前段の「経済提携」のほうが、先ほど申しましたように、現物出資または現金で出資をいたしましたものであり、(2)の「技術提携」と申しますものが、真珠のこれは核を真珠貝の中へ施術をいたすわけであります。これが現地人にできない、非常に詳細な、こまかい技術でございますので、その技術者が現地の法人に日本から行って、当該会社の事業として、その部分の技術は、こちら側の役務提供という形で処理をしておる、そういう意味でございます。
  73. 天田勝正

    ○天田勝正君 それじゃ、このほかのことはいいとして、2の海外漁業協力会、これは日本側の関係会社やら団体やらを書いたのであってというのじゃ、海外協力の実情についての資料としては、まことに不十分なわけで、そこでむしろ海外における経済提携の形、数、それから業務内容、こういうようなものを、しょせんはきょうは間に合わないでありましょうが、後ほど提出されることはよろしゅうございますか。
  74. 和田正明

    政府委員和田正明君) 実は、社団法人海外漁業協力会につきましては、矢山委員から、その会員はどういう者で、実態はどういうことをしているかという御質問と資料要求がございましたので、提出をいたしましたわけでございます。上のほうの1は、海外におきます各地の漁業についての資料の御要求がございまして、(1)に書いてございます「経済提携」が合併の形、(2)に書いてございますのが、役務提供という形のものでございますが、これを詳細にと言われますと、それぞれ一件ごとに出資、額とか、そういう資料を御連絡すればよろしいわけでございますか。
  75. 天田勝正

    ○天田勝正君 わかりましたね。
  76. 和田正明

    政府委員和田正明君) はい。
  77. 天田勝正

    ○天田勝正君 その点は、それでよろしゅうございます。  それでは流通関係をひとつ、一点だけ伺っておきます。これも実例をあげて申し上げますから、答弁はひとつ、要を得たものを受けたいと思います。現在消費者物価について、各種の新聞で取り上げておりますが、まとまったものは、今読売で、「物価は駆ける」とか何とかいうものを連載いたしております。その中の一つに、岩国市の実例があがっておりますから、これはごらんになっておると思います。ここで簡単に言いますと、あそこは駐留軍の基地でありますから、そのことのために、おそろしい物価値上がりをきたして、地元においても、多くの人方はむしろ物価高に苦しんでおるということが摘記されておるわけです。ところが輸送事業や何か他の理由によって物価が上がるならば別として、同じその町の中で、帝人の会社のある付近の商店は、一般の町よりか、食料品すべて含めて衣類に至るまで、数段安い値段で売られている。その影響がどこからきておるかというと、帝人の職員の消費組合で、一般よりも二、三割安く売っているから、その付近の商店は、すべてその消費組合の値段に歩調を合わせた値段にする、このことは一体何を示すのかというと、輸送費がかかるとか、物がないとかということを示しておるのではないのです。輸送費はどこへ来るのも同じなんです。ただ刺激的に、一会社の中にある消費組合の刺激が、その付近の商店を全部低価額——低価額といっても、よそと同じことです。ところが、ただ駐留軍がいるという名目で、他の地域では、同じ市内でありながら、不当な高い価格をもってすべてが売られている、そのすべて売られるものの中に、一般庶民の一番影響を受けるのは、何といっても食料なんです。魚介あるいは畜肉あるいは蔬菜、果実、こういうものです。ですから、これは何も私は今の問題である大衆魚だけを問題にしているわけではありませんが、大衆魚も、その中へ含まれる、しかし、このことは蛋白資源として非常に重要でありますから、そういう事態が現に起きている、これもどうも、あなたに政府の流通対策に対して全般を聞くということは無理なことは承知しておりますけれども、さればといって、食料のごとく庶民の生活と非常に深い関係のあるものは、どうも放っておけない、いわゆる一言でいえば、便乗値上げ式なものが行なわれる、こういうものについて特に、どうです、水産物に対して、水産庁として何か対策がありますか。いかがでしょう。
  78. 和田正明

    政府委員和田正明君) 失礼でございますが、最後のところだけ恐縮でございますが、よくわかりませんでした。
  79. 天田勝正

    ○天田勝正君 私が例をあげたのは、一般物価について例をあげました。ただし、一般の庶民の生活に一番密接なのは、何といっても口へ入るものである、簡単にいって、これは省略したりなんかできないことなんですから、そういうわけで、政府でも物価対策をいろいろやっておられるけれども、流通の面ではやっておる、やっておるというけれども、どこでも、これが効果を上げたということは私ども聞かないのですよ。本委員会ばかりじゃない。ですから、その中では水産動植物を人が摂取する。こういうものは、これは他の一般物価の流通と切り離せというのじゃない。関連してのほうがいいのだけれども、しかし、優先してこれを扱わなければ庶民は困る。こういうことを指摘している。それで現実に、そういう全くの理由もなき便乗値上げというか、そういうものに対しては、他の物資以上に早く手を打ってもらわなければならないけれども、これに対して、何かお考えがあるかということを聞いているのです。これは政務次官から答弁願うのがしかるべきですが。
  80. 大谷贇雄

    政府委員(大谷贇雄君) 天田先生の御意見ごもっともでございまして、私どもも全く御同様に感じておるのでございまして、したがって、政府も非常にその点には頭を悩まして、この対策を練っておるわけでございますが、生鮮食料品に関しましては、これはほんとうに省略するわけに参りませんので、したがって、農林省部内でも、このごろ中、しきりと検討をいたしておりまして、総理からも、それを非常にやかましく言われております。今日も経済閣僚懇談会でも、その対策の話が出たそうでございまして、さらに八日の日には、その大綱について協議をして対策を急速に練る、こういうように聞き及んでおるような次第でございます。
  81. 天田勝正

    ○天田勝正君 もう時間がありませんから、まあ他のことは、各委員がそれぞれ指摘もされましたし、これからも指摘されるであろうから、私は他の委員が触れないようなことを申し上げたのですが、一群最後のことは、どうも私は目に見えた手の打ち方を政府がなされないというのは、経済閣僚懇談会があろうとなかろうと、どうも買いものかごをさげていくお母さん方の言うことは、とかく軽視するのじゃなかろうかと、国会においても、どうもそういうことはあまり上等の議論じゃないような風潮もなきにしもあらず、私はそう感ずるから指摘したのであって、一般物価対策、物価対策と言ったって、今申し上げたような省略のできない、どんな庶民だって、最低これは摂取しなければならないというのは、衣服やなんかじゃなくて、何と言ったって食料なんですから、その食料のうち、蛋白資源といえば、日本の食生活の習慣からしたって、何といっても魚介、こうなることは明瞭なんです。ですから、指摘だけ申し上げたわけでありまして、これは政府全体の考えとして考えてもらわなければならないけれども、優先的に他の物資よりも考えなければならない。こういう意味で申し上げたのです。  したがいまして、ひとつこの場で聞いて答弁をうまくしたというのじゃなくて、ほんとうにそうした政策を打ち出していただきたいと、要望しておきます。以上で私の質問は終わります。
  82. 大森創造

    ○大森創造君 沿振法でございますが、これを一読してみますというと、どうも私の感じからするというと、全体的に意欲がないような感じがする。そこで抽象的な議論に最初はなりますが、一体今まで委員会で議論されたことなどを聞いてみまするというと、この水産庁関係の法律はいろいろございますが、農業の関係やその他の関係と比べてみるというと、まだまだ不備の点が多いと思う。そこで大企業規制しないというと、ほんとうに沿岸漁業振興対策は生まれないのじゃないかという議論もあるし、それから、おくれている沿岸漁業についても、この法案一読しただけでも、しろうとの私でも、もっとどうにかならないかという問題が、各方面にございます。  そこでお伺いしますが、一体水産庁は、今度の法案を出したのは大蔵省との折衝もあるし、あるいは漁業団体との関係もございましょうし、政党政派の関係もございますから、水産庁の皆さん方の頭の中では、こうもやりたい、ああもやりたいと思うのでございましょうが、そうもいかないから、一応この法律を出しておこうというような感じにしか私は受けとらない。ほんとうに沿岸漁業振興をやるのなら、私も考えがある。何だか、いたずらに漁民に夢をいだかせておいて、中途半端でしぼんでしまうような感じがするのです。というのは、この法案十二条をずっと見てみると、那珂湊や、大洗や、茨城の九十九里浜や、あっちこっちながめて見ると、 こういう施策は、ちょびちょびやっております。ある点は重点を置いてやっておるわけでございますが、それぞれ助成措置とか、あるいは指導的な行政措置というものは、県を通じ、漁協を通じてやっておりますが、そういうやっておったものを寄せ集めたような感じにしか私は受けとれない。情熱が持てない。そこでいろいろ法案を国会に出すということについては、御事情もございましょうが、ほんとうはもっと抜本的な漁業基本法とか、あるいは現在出しておる沿振法に補足するなり、さらに完備させるような法律を出すようなお心がまえがあるだろうと、そうでなければならないと思いますが、これは政務次官にお伺いしますが、いかがお考えでございますか。
  83. 大谷贇雄

    政府委員(大谷贇雄君) ただいま、大森先生からの御質疑でございますが、このことに関しましては、過日大臣からも、この法律のみをもって基本法としての全部が貫かれておるというようなことは考えておらぬので、漁業法並びに組合法、三本の法をもって総合的に考えていきたい、こういうことを御答弁を申し上げたような次第でございまするので、ただいま別に漁業基本法を御提出申し上げるということにつきましては、当局としては考えておらないような状況でございますので、御了承願います。
  84. 大森創造

    ○大森創造君 どうも私は、この法案を見てみますというと、向かっている方向は一々ごもっともだと思うのです。間違いはないと思うのです。もの足りないのです。すべてもの足りない。しかしおっしゃっていることは、一々ごもっともなんですが、どうもくつの上からかゆいところをかいている感じがして、これで一体、沿岸漁業振興に実質的になり得るかどうか非常に私は疑問に思っておるので、国会最終日で時間がないということもわかっておりますが、私は私なりに肝心なところは、ちょっとただしておかなければならぬ。そこで漁政部長に伺いますが、一本法律というものはどういうものか、私はお教え願いたいと思うのです。一体沿振法というものをいうところの沿岸漁業振興をはかるということなら、それはとても大したものですよ。魚価の問題もあるし、流通加工の問題、そういう当為の、こうあるべき姿の漁業をえがいてやるというのが法律の姿勢なのか。それとも、そういっても、とてもできやせんから、この程度のものを出しておいて、社会党などの了解を得てひとつ、何とか何とかと、そういうところにいくのかどうか。一体法律というものは、この法律のねらいは、どういうところにあるのか。
  85. 和田正明

    政府委員和田正明君) 先般もどなたでございましたか委員の御質問にお答え申し上げましたように、わが国の沿岸漁業につきましては、非常に経営体数が膨大でございまするほかに、たとえば同じ魚をとりまする場合にも、船型も違えば漁法も違うとか、そういうことで地帯別に非常な幅と複雑さがございます。したがって、沿岸漁業振興方向というものを考えました場合にも、たとえば家族を中心で何トンの船ならよろしいのだというふうに、地帯別の実態、あるいはその漁業の種類、漁法の違いということを無視して、全国一律の方向を考えるということは、なかなか困難でございます。  で、したがいまして、この法案、あるいはこの法律とは何ぞやというお話がございましたが、この法案で私どもが企図いたしましたことは、全体として今申しましたような事情の中にありながら、共通に、基本に流れまするものは、非常に生産性が低いと申しますか、過剰就業の状態で、装備も必ずしも適切でないし、したがって、従業者一人当たりの所得もよくないので、それをできるだけ資本、装備をよりよくし、さらに漁場の条件その他いろいろな条件を回りからも改善をしつつ、従業者一人当たりの所得を引き上げていくために国のかまえとして、あるいは姿勢として、少なくとも三条を中心として掲げてございますような施策を共通的にしなければならないだろうという意味において、沿岸漁業振興、あるいは中小漁業振興のための基本的な政府の態度を明確にいたしたわけでございます。さらに地帯別な違い、あるいは養殖漁業と漁船漁業との差等のことにつきましては、したがって、今後構造改善政策を進めます中での、その中の一つとして考えられる構造改善事業において、午前中でございましたか、も申し上げましたように、地区の指定のあと、それぞれの地元の漁協なり、市町村長なり、あるいは青少年クラブなり、漁協の婦人部の代表者に、そういう人たちの意見を十分加味しながら、地帯ごとに一つの方向づけを明確に浮き彫りをして、全体として共通な姿勢なり、政府方向なりを、この法案でも示したいということに全体の意図があったわけでございます。  したがって、一時いろいろ言われました農業における何町歩単位の家族の農作経営という形での一律の目標というものを、この法案の中に夢として示す方向は、漁業の特殊事情から困難でございますので、そういう考え方はとっておりませんけれども、全体の方向としては、ただいまも申しましたような姿勢で、地帯の特色、漁業種類の差の特色を生かしながら、全体として一人当たりの従業者の所得を向上させていきたいというところに一つの夢を置いている、こう御理解いただければ幸いだと思います。
  86. 大森創造

    ○大森創造君 よくわかるのですけれども、どうもこの沿振法に盛られた、ことに第三条などに羅列された一連の施策というものは、今まででも個々の法律について、こうやってきたのですね。そこで、この法律を出したということになると、それが量的に拡大するということを期待する、そういうことは、私としてはいえると思うのです、期待できると思うのです。だけれども、今までのやり方がやり方だから、私は、沿振法が通ったって、どうもいたずらにばら色の夢を沿岸漁家に与えるだけじゃないかという感じが、率直のところいたします。  そこで、農業の場合と比べてみると、農業だって、今お話がありましたように、対象はこれは非常にむずかしいのですよ。だけれども、池田総理以下政府首脳が、今度は農業をやるのだということで、断然力点を置きましたから、零細農民がいわゆる自立経営農家と称して、二町五反歩あたりを目標にしてやろう、そのためには、法律改正などをいたしているのですよ。農地法や、農業法の一部改正などをやった。私は、今漁政部長のお話のように、対象が複雑多岐であって、それから漁場によって、いろいろな条件が違うという複雑な様相をふまえてのこの法案の提出ということなんで、その御苦心のほどはわかりますが、私は、農業と比べてみた場合に、漁業のほうがおくれておりますからね。これは大資本的漁業は別でございますよ。これは別ですけれども、いわゆる沿岸漁業振興ということになりますと、これは農業基本法の目ざす農家よりも対象が複雑であり、零細であって、それから、はっきりいうと、文化水準も低いということになるのだから、そこに意欲をこめて、この沿振法ということを出すのだから、漁業基本法ではなくて——大企業的な漁業中小企業的な漁業もあるけれども、いわゆる沿振法というものは、とりあえずここのところに重点を置くという政治のかまえが水産庁にあるならば、もっと私は意欲のあるところを示してもよかったのじゃないか、農業と比べてみた場合。それは法案を出しちゃったから、私が質問をすると、現状維持的の——法案を通過させる建前から、そういうような説明をされますが、秋はもっと意欲的なものがあっていいと思う、沿振法という内容は。それで、外部のそれぞれの水産団体なりが、通してくれ、通してくれということを言いますが、内容をよく見ると、それほど期待できる内容かと私は考える。これは私の感じですから、御答弁の要はございません。  そこで具体的に伺いますが、私は、今あなたがお話ししたように、農業と比べてみた場合に、一体どこに力点を置くのか、どこに主体を置くのか、沿岸漁業ということなんだから……。そこで、いろいろと御質問をして説明を聞いてみますと、いわゆる沿岸漁業の中で有望であって、そうしてややその効果をあげておるものは養殖、増殖であるということですな。しかし、数字的に見ても、金額的に見ても、依然として主体は漁船漁業だと思う。それで、漁船漁業の面が、どうも抜けているような感じがいたします。  お伺いしますが、漁船漁業のうちで、最近はほとんど無動力というのはないと思うのです。漁船の場合は、沿岸漁業は、昔は——十年、二十年前はともかく、一般的な経済事情が進歩したから、そういうことでは、とてもやっていけない。機動力を使うということになる。十トンくらい——十トンでしょう。大体、これは十トンということでやっているのでしょう。十トンぐらいのものについて——十トンということになるというと、これは人は何人いるのですか、私は専門家でないからわからないからお伺いしますが、どのくらいの労力を要するのですか。それから沿岸漁業の無動力、機動力——私は機動力が多いと思うのだけれども、機動力のうちで、どのくらいのトン数、どのくらいの稼働力でやっておるのが、主体的な一番多い層に属するのか。
  87. 和田正明

    政府委員和田正明君) 先般お配りをいたしました沿岸漁業振興関係資料のその二というのをごらんをいただきたいと思いますが、その五ページのところに、経営の形態別の経常体数を表示をしてございますが、大体、ただいま先生のお話がございましたように、私どもとしては、一応沿岸漁業というふうに考え、特に振興の対象として必要であると考えておりますのは、漁船漁業につきましては十トン未満の漁船を使用しておる漁業であり、そのほかに大型、小型の定置、それから各種の養殖業等を考えておりますが、その表にもございますように、経営体数として一番多いのは、無動力漁船で過去においてはあったわけでございますが、最近は主として三トン前後の形のところが経営体数としては一番多くなっておるわけであります。  それで、それを漁獲量で見ました場合には、一戸当たりにいたしました場合の所得につきましては、同じ資料の十ページのところに、その形態ごとの一戸当たりの所得の推移を載せてございますが、やはり三トン未満と三トンから十トンというのを見ますと、当然のことでございますが、機動力の強い三トン以上の階層のほうが、一経営体当たりとしては、高いことになっております。御指摘の労力といいますのは、内部の川等の内水面でございますが、第二種の兼業漁業といいますか、ほとんど所得の大部分を農業等で得まして、若干農閑期等に漁業をやっているというようなものが無動力階層の大部分でございます。しかし、それらの中でも、やはり農業だけでは所得として十分でないような階層につきましては、今度の構造改善計画の中では、その船の外に、ごらんになったことあると思いますが、ちょっとしたエンジンをつけて動力化をするということによって、無動力から動力化にいたしまするとか、あるいは三トン層を三トン以上の階層に、逐次大きくしていくというようなことも計画の中へ取り込んで考えておるわけでございますが、主として漁船漁業につきましては、別途漁業法で大臣許可なり、あるいは知事の許可漁業なり、あるいはそれぞれの操業区域ごとの隻数なり、操業区域というようなものを考えておりますので、漁船漁業を現状よりさらに大きくするということは、計画の中には当然盛られて参るわけでございますが、それを具体的に実施をしていきます場合には、漁業法が生きて動いてくる、こういうことになろうかと思います。
  88. 大森創造

    ○大森創造君 そうすると、その無動力というものは、昔と違って、無動力では、とても競争に追いついていけませんから、動力化するということで、それはそのとおりの実態だろうと思うのです。それで三トンから十トン——で、どの辺が一番多いのですか、実際は。それからその稼動労働力は、何人ぐらいでやっているのか。三トンが多いのか、十トンが多いのか。どの辺の層が一番多いのですか。そしてその労働力は、どの程度になっておりますか。
  89. 和田正明

    政府委員和田正明君) 漁船漁業における経営体の総数の中では、やはり三トン未満の数のほうが多うございます。  それから漁業労働力の問題になりますと、漁業法なり取ります魚などによって、いろいろ違いまするけれども、二、三人から十人ぐらいということになると、相当大きくなりまして、そういう程度の人が、家族または従業者として雇用されて経営体として従事しているということになると思いますが、平均が、たしか十トン前後で六人弱、それから三トン未満で三人弱というぐらいが、今までの統計での実数であろうかと思います。
  90. 大森創造

    ○大森創造君 そこで、さっき申し上げたように、沿岸漁業振興なんだから、そうするというと、養殖、増殖のほうを抜いて、今話題になったようなところに力点を置かなければならんと思うのですが、そこのどういう部分に力点を置くのですか。というのは、さらに説明しますというと、三トンということになると三人ですか、それから六人とか言いましたね。そうすると、六人ということになると、これは当然人を雇用しなければなりませんね。一軒の家でおやじとせがれということになっても二人だ。そうすると、あとの四人は雇用するということになる。そういう点、どういう層に重点をおいてやろうとしているのか。ただ、ばく然と三トンは六トンにすればいい。六トンは十トンにすればいいということなのか。農業の場合ははっきりしているのですが。というのは、あとから申し上げますが、私は、どうも三トン未満なんていうのは、しかも無動力の三トン未満なんていうのは、これからやっていけないと思うのです。幾ら沿振法をやったって、これははっきりしていると思うのです。私は年中浜を歩いておりますが、これは、とてもやっていけやしませんよ。そうすると、切り捨て御免じゃないけれども、そっちのほうは、自然に切り捨てられていくだろうと思うのです、三トン以下というのは。そこらがもやっとして、何でも助成をするとか、補助をするとか、指導するとか、育成するとか言っているけれども沿岸漁業振興法というから、まじめに読んでみると、私はどうも一歩進んで見ると、いたずらに実現の可能性のないばら色の夢を、そこはかとなく与えているという気がするのです。  それで、どういうほうに力点を置くのですか。沿振法の、三トンだけというのですから、そのうちのどこに力点を置くのか。
  91. 和田正明

    政府委員和田正明君) その三トンなら三トン、五トンなら五トンの、どこに重点を置くのかというお話でございますけれども、これはやはり地帯ごとに、三トン前後が中心のところもございますし、さらに大きなものを一部まじえておるところもあるということで、漁法なり魚種なり、あるいはその他の漁場なりで地帯別にそれぞれ違っております。しかしながら、全体を貫きます共通の考え方を申し上げますれば、無動力階層につきましては、現実にも毎年着実に経営体数としては減っておるわけでございますが、その実態は、ほとんどが所得が他産業、主として農業の場合が多いのでございますが、漁業は、そのうち農閑期にちょっとやるという階層のものが、大部分が無動力、もちろんそういうものばかりとは限りませんけれども——でありますから、一方で農業のほうの構造改善が進んで、そのほうの所得が上がりますれば、農閑期における漁業というものが消えて参るわけでありますが、やはり漁業を継続をして参らなければいけません地帯につきましては、無動力階層につきましても、その船に、船外の発動機をつけて、そのまま動力化できるというようなことも考えてやらなければいけないと思います。もちろんその場合に、そういう階層の数が、計画目標年度において、ある程度減るというようなことも予想しつつ、そういう措置をいたしました。  それから、動力漁船につきましては、やはり〇−三トンという階層の場合よりも三トン、五トン、あるいは、さらには五トン、十トンというふうに船が大きくなりまするほうが機動力も大きくなる。また、それに伴って漁獲も増加し、所得も上がって参るわけでございますけれども、やはり大型化いたしますについても、段階を踏まなければならないわけでございますし、また、漁場等の関係で、単に大きくすることがだめな場所もございます。ですから、そういう場所につきましては、今の船のままで協業という形で、先達船をこしらえまして、それには優秀な電探なり魚群探知器なりを設置して、小型の船をみな引き連れて一定の漁場に連れて行って、そして漁獲をやらして、今までよりも漁獲を多くするという方法もございまするし、それから数人が相寄りまして、今までの三トンの船をやめて十トンという形の船を一本にしめて協業化をするというような形も考えられますし、そういう、できるだけ先達船なり協業化というようなことに重点を置きながらそれぞれ大型化をはかっていきたいというふうに考えておるわけであります。
  92. 大森創造

    ○大森創造君 私の考えでは、いわゆる十トンということになると十人くらい人が、労働力が要るということになれば、当然人を雇用しなければならぬ。これは、少なくとも小資本家的経営というものである、そういう一つの限界があります。農業で言えば、二町五反歩か一町八反歩か、漁業も同じように漁場によって、条件によって違うだろうと思います。地区によって違うけれども、そういう一つの限界点というものがあって、その限界点より上のものというものについて、施策の重点を置かなければならぬというふうに私は考えておる。そこのところがどうもぼけていて、おしなべて、いわゆる無動力であろうと半農半漁であろうと、それからやや有望な十トン、労働力が六人、七人あるようなところ、そういうところが焦点がぼけているような感じがするのですが、これはもう少し煮詰める必要があると思うのです。今お話のような無動力とか、あるいは三トン未満なんというところは、今お話がありましたように、協業とか、あるいは協業組織、あるいは集団経営というものを大胆に打ち出す必要があるし、そういう段階じゃないかと思うのです、沿振法を出すからには、そういうものを行政指導をやっているということを言っておりますが、そういうところにこそ、私は重点を置いて法律の中に明文化したらどうかというのですよ、いかがですか。
  93. 和田正明

    政府委員和田正明君) そのことは、第八条の各号の中に、「集団操業に係る先達漁船の建造」とかというような形で共同化を推進することは明文で一つの方向づけをいたしておるつもりでございます。計画の中には、そういうものを書かなければいけないということで。……
  94. 大森創造

    ○大森創造君 それはそれとしていいことにいたしまして、まあそういう方向でいかなければいかんと思うのです。  それで、ざっくばらんのところを申し上げますというと、私は時間がないから、よくよくざっくばらんに申し上げますと、私が感じていることは、三トン未満あるいは三トン未満の半農半漁というような漁家の漁業経営というものは、これからの激しい争競場裏で冷蔵施設を作ろうと、加工施設がどうあうと、流通がどう変化しようと、私はだんだん脱落していくだろうというふうに考えている。冷厳な事実だけれども、そういうふうになっていくだろうと思う。まあ、しかし脱落するとばかりは限らないので、施策でもって、これをアップせにゃなりませんけれども、たとえばそこに零細な漁家が百戸あるとしますというと、五十戸にすれば、やっていきますね。農業と同じに。百戸のところを五十戸なら、漁獲物だって、だんだん多くなるし、これははっきりした話、やっていくだろうと思う。  それで角度を変えてお伺いをしますが、私は九十九里浜、銚子あたりの状態を見てみますというと、あそこはイワシですか、今イワシがとれなくなりましたね。あれ、なぜとれなくなったのですか、九十九里というのは。これはお伺いしないとわからない。
  95. 和田正明

    政府委員和田正明君) 私、技術者でございませんので、必ずしも詳細なことはわかりませんが、イワシの資源の変化によるものだと思いますが、ごく最近は、北のほうから資源が回復しつつあるという徴候が見えつつございます。
  96. 大森創造

    ○大森創造君 それで、だめになる漁村というのと、やや伸びる漁村というやつが、周遊性と回遊性の魚の性質というか、動向によって、私はある程度試験研究機関によってわかるのじゃないかと思うのですよ、実際は。そうすると伸びるところもあるし、幾ら手を入れてもだめなようなところが出てくるんじゃないか。そういう点は、これは何も政治的な配慮でなしに、科学的にいわゆるそういうことは言えるんじゃありませんか、いかがですか。
  97. 和田正明

    政府委員和田正明君) どうも今の漁況予測なり、資源に関します技術的な調査の結果では、もうすべて明白に割り切って結論を出せるほどの技術はないかと思います。ただ、ときに応じ、たとえば今御指摘がございましたように、非常にとれておったイワシが資源的に長期間にわたってとれなくなったというような傾向が魚によって起こりますことは、たとえば北海道のニシンというもの一つの例だと思いますが、先生おっしゃいますように、ぱっと割り切って考えるほど割り切れる技術があるとは考えておりません。
  98. 大森創造

    ○大森創造君 私も、そういう魚の気持はよくわかりませんので、それほど割り切ったあれではありませんがね。どうもおしなべてみるというと、そういう傾向があるような気がするのです。農業の場合には、畜産の多頭飼育とかいろいろございまして、土地改良をやるとか、それに相応して漁業の場合にも魚礁を作るとか、あるいは投石するとかいろんなことをやりまするけれども、手を加えてもだめなところが必ず出てくるであろう、これはきっと、そういうことがあり得ると思うのです。割り切ってはとても言えません、私も、そこで私はお伺いしたいのは、農家がどんどん二次、三次産業のほうにいく、移動するということは当然なことです。これは漁業の場合、沿岸漁業の場合、ことにひどい、東京近郊については。茨城の海岸になると非常にそれが多い。だから、この法案にもどこかにうたってありますね。第三条に職業転換の問題が何だとかかんだとかありますが、これは今までほんとうにやったのですか。水産庁が職業転換の指導訓練をやった実績が幾らかあるのですか、ないでしょう。
  99. 和田正明

    政府委員和田正明君) 構造改善事業計画に伴います各種の補助金の中に、地元で職業訓練をして他産業へあっせんをいたしますための地元の協議会の設置等の補助金も含めて補助をいたしておりまして、そういう段階で職業紹介所あるいは市町村長なりというものの参加を得まして、転業希望者に就職のあっせんをいたしますための協議会の補助金も、この中に組んで補助をいたしております。
  100. 大森創造

    ○大森創造君 そういう御答弁はあると思う。沿振法で職業転換の指導とか職業あっせんということはやれるはずはないと思う。一般職業紹介所に行って、東京に土工となって就職するということはあるけれども、わざわざこの法律にうたってあるように、今度この面でがっちりやる、そんな成算のある施策が水産庁だけで生まれるはずはないと思う。県の水産課のあたりが入るなり、一体どうするのか。私は、これはほかの諸官庁とも密接な連関があるし、とても沿振法で、そういうことをうたっても実効は期しがたいと思う。今までだって、実績はあまりないと思う。これは御本人が努力して職業紹介所に行って就職する場合はあるでしょうが、いわゆる言うところの、そういう行政措置によって新たな職業に転換できたとか、この法律を施行すればどうだとか、何かこの法律を施行する裏づけになるような予算的措置や機構や、実際の運営というものに、具体的なものがありますか。
  101. 和田正明

    政府委員和田正明君) 先ほども御答弁申し上げましたように、地元で漁業をやめて他に転職したいという者は、当然、現在の事情等から出てくると思います。割り切って申し上げますれば、先ほど先生がおっしゃいましたが、人数を減せば、一人頭の漁獲物がふえるということは、あるいはあるかもしれません。そういう意味で、地元関係者等が、そういう希望を持つ零細沿岸漁民が他産業に転換することを、できるだけ円滑に進めてやる必要が当然あるわけでございます、そういう希望者がございますれば。したがって、労働省等とも、この打ち合わせをいたしまして、職業訓練等も現実に実施いたしておりますし、先ほど申し上げましたように、そういうあっせんをいたしますための関係機関の協議会の運営費を、十分とは申せませんが、この計画で助成をいたしておるわけであります。  具体的な数字はどうかとおっしゃいますと、必ずしも、まだそれに伴う数字は明確には把握いたしておりませんけれども、消極面でたとえば埋め立てというようなことが一部にございますから、そういう場合等につきましても、過去においても幾つかの実際の職業のあっせんの処理をした例はあるわけであります。そういう例を生かしながら、ただいま申しましたような協議会の設置及びそれの運営の助成をいたしまして、切実な希望者には、その希望がかなえられて適当な職業につけまするような、そういう措置を積極的に関係者と相談しておるわけでございます。
  102. 大森創造

    ○大森創造君 これはいいことなんですし、非常に重大なことですから、そういう努力をしてもらわなければいかぬと思う。しかし私は、非常にむずかしいことだと思う。  そこで次にお伺いしたいのは、構造改善の事業や、この法案が通過した場合における、いわゆる、新たなる施策というもの、従来あった施策というものがさらに幅が拡大され、量的に拡大されていく、そうして個々の漁家の所得が向上し、他産業に匹敵するような状態に持っていくということが、この法案のねらいでございますから、お伺いしますが、そういう一連の施策を進めていく上において、他方自治体というものが相当の比重を占めると思う。また、漁協の存在というものが、私は非常に大きな比重を占めると思う。この点、どうお考えになりますか。
  103. 和田正明

    政府委員和田正明君) 御指摘のとおりであろうと思います。したがって、構造改善事業を実施いたします過程では、県庁に今までございませんでした補助職員の設置等の予算措置をとりましたし、また、事業主体として、実際のいろいろの施設をいたします場合には、漁協が中心になるというケースが相当多数あろうかと、思います。そういう考え方で、漁協が中心に事業主体になると申しますか、そういう方向で計画の立案とか指導ということはやっておるわけであります。
  104. 大森創造

    ○大森創造君 それで、そこが私は問題だと思うのです。いろいろないい施策を実施する上において、地方自治体というものは、貧弱な県もあるし、そうでない県もあるし、町もある、村もある、これはいいと思うが、漁協というものは、千差万別だと思うのです。それで漁協の実態は非常に規模が小さくて、経済力がなくて、そうして漁業権の管理団体みたいなもので、それで漁業権の問題で紛争を長年ごたごたやっているだけである。そういうものが受け入れの主体的な側面を受け持つということになるというと、私は実効を期しがたいと思うので、今お答えになったようですが、私よく聞こえなかったのだけれども、たとえば優秀な参事が一人いますと、これは、いろいろな施策の推進ができるし、それから午前中お話ありましたように、青年会の人とか婦人会の人とか、あるいは漁協の人、町長、村長などという人を入れて計画立案をして、それで水産庁が指導するというようなことが、やっぱり地元の自主的な盛り上がる意欲というか、そういうものに一つの運動として出てくるところに、わずかの助成でも補助でもやるというところに生きてくると思うのですよ。ところが肝心のそういう優秀なものは、これは漁協におるだろうと思うのです。そこの漁家について、町全体、浜全体の将来のことの展望に立って、どうしよう、政府が構造改善という計画を始めたから、これを受けとめて、どうしようという意欲のある者、あるいはそういう頭脳のある者は、私は個々の漁家になくして、公共的な漁協みたいなものの中にあるのではないか。実際中に参事が一人優秀なのが入るというと、いろいろな点でよくなってきているんですね。ところが、あとから申し上げますが、漁村の人というのは非常に考え方が古くて、そうして自分たちの収入がないから、給与でも何でも少しよけいやってみたら、やっかみやひがみがあって、そういう状態を許さないので、その優秀な参事も、いつの間にか逃げてしまうという状態が実際には多い。それで、この際、一部の手直しは、漁協法なんかやったようでございますが、これは便宜的な一部の改正に過ぎませんので、漁業協同組合というものの本質を、もっと深めて、そうしてがっちりと制度化し、法律化するということが私は必要だと思うのです。実際に仕事を受け持つ漁協、その中の職員の待遇をよくするとか、あるいは指導するとか、それから非常に経済力の弱い、何も経済行為が自立できないような漁協をたくさんかかえていて、そうして政府が、こういう法律を幾ら出してみようと構造改善を幾ら叫びかけようと、なかなか人は動いてこないと思う。これは農業の場合でもそうだが、漁協をもっと、この際、沿振法を出すからには、もっと本質をきわめて、制度化し法律化するように研究をされたらどうかと思うのですが、いかがでしょう。
  105. 和田正明

    政府委員和田正明君) 漁協の強化の点につきましては、数年前に漁協再建整備促進法という法律の御制定をいただき、また、再建整備基金というのを設置をいたしまして、赤字組合等につきましては、その赤字のたな上げをはかりますとともに、一方その赤字を解消いたしまして、一そう事業活動が促進できますように計画を作成して、その指導をはかっておるわけでございます。そのためには、駐在員をその漁協に派遣をいたしまして、指導をいたしまして、あるいは巡回的に指導いたしますための助成等の措置をとっております。  そのほかに、御指摘のように漁業権管理組合的な非常に弱小な組合も幾つかございますので、同様、この整備促進の制度の中で、合併の促進を一方の計画的にはかりまして、合併の促進のために補助金を出してその合併の促進をはかるというようなことで、また、さらに一般の組合と同じように常例検査とか指導とか、そういうことをいたしております。ですから、そういう形で不振組合あるいは弱小組合の強化ということについては、すでにいろいろ万全を尽くしておるわけでございますが、今、先生おっしゃる、何かもう少し深く掘り下げて、別個の組合制度に関連する法律を作ったらどうかということの具体的な御趣旨、必ずしも理解はできませんでしたのでございますけれども、ただいま申しましたような措置もとったり、あるいは役職員の研修であるというようなものに補助を出したり、あるいは役所で実際に執行したりいたしまして、いろいろな面で漁協の強化ということについては意を用いておるつもりでございますが、今後とも、そういう面で——そうこの事業の中核になります漁協の強化には努力をいたして参りたいと存じております。
  106. 大森創造

    ○大森創造君 お話のとおり、私は一時の施策の方向は、それでよろしいと思うのです。的はずれな施策ではないと思うのですが、いかにも中途半端であって、もっと、補助するなら補助する、指導するなら指導するという強力な措置が必要ではないかと思うのです、量的に大きく、もう少し心臓強く。そうでないというとだめだと思うのですよ、実際。ほとんど経済事業が営めないような漁協ばかりかかえていて、そうしてすべての施策が素通りしてしまうような状態が生まれてくると思いますので、ここはひとつ、よくお考え願いたいと思うのです。将来のことでございますが。  そこで、さっきもちょっと話が出ましたが、私の考えからするというと、漁協が貧弱だから、第三条によるところのいろんな「漁港整備、漁場の整備及び開発、漁業技術の向上等によって、生産性の向上を図ること。」とか、ずっといろいろ書いてございますが。というのは、漁協の負担があるのです、漁協の負担が。こういうものが法律にありましても、漁協が受けとめる能力がないというと、これはだめだと思うのです。それでお願いだけれども、今ここで言ったって始まらないが、ひとつ、たとえば漁港整備などということをうたっておりますが、これを第一種漁港についても、小型の漁港についても、将来はひとつ、第三   第四種漁港程度の補助をやるとかあるいは大型漁礁というものが公共事業ということになったそう、だけれども、そういう幅をもっと拡大してほしいと思うのです。そういう方向努力してもらわないと困る。やっておりますといったって、これだけやるのとこれだけやるのとが同じ表現になるのですから。今一番望んでいることは、そういうことだと思う。何も大型魚礁を公共事業にしたというのなら、小型魚をやってまずいということはない。そういうことが、一番おくれておる漁業にとって必要だと思う。魚礁、投石、それから、何だかんだといういろんな施策について、もっと補助の幅を大きくする施策を格別にしてもらいたいと思うが、いかがでしょう。
  107. 和田正明

    政府委員和田正明君) 先ほどちょっと御説明申し上げました資料中のにも、過去から今日までの国の補助率の割合を十七ページのところに参考に載せてございますけれども、御趣旨のような方向地域補助率を少しずつでも上げます努力は今日も続けております。もちろん御趣旨ごもっともでございますので、今後ともさらに補助率を上げまして、地元負担が一そう軽減できますような方向で、努力を続けるつもりでございます。
  108. 大森創造

    ○大森創造君 私は、法案の内容について、先ほどから申し上げておるように、一々けちをつけるつもりはない、方向はよろしい、きちんとやってもらえばいいと思う。きちんとやらなければ、とても実効は上がらないと思うのです。  そこで私は、経営の問題や技術の問題や、いろいろなこまかい問題についての指導をしないというと、漁家は浮かばれないのであるから、ここで多少の補助を増額するなどということよりも、さっきちょっと話が出たようでございますが、この構造改善事業にしても、その他の施策の推進体になるもの、そういうものを指導教育することが必要だと思う。そこで、何というのですか、正式の名前は改善普及員——改良普及員なんというのは、今どういうことになっているんですか。何人ぐらいいて、どういう仕事を——仕事がオーバーワークになっているのかどうか、漁業協同組合幾つぐらいを担当しているのか、漁家をどのくらい担当しているのか、それをお伺いします。漁業改良普及員というのですか、それは現在何人いて、そして一人当たりの担当の事業量は、どの程度になっているのか。
  109. 和田正明

    政府委員和田正明君) 改良普及員の関係は、御承知のように、辞業と同様に三つに分かれておりまして、第一の専門技術員というのを都道府県に設置をいたしておりますが、これは主として養殖の関係と、それから機械の分野について専門に技術員として百五名を設置をいたしております。それから沿岸漁業者に対する一般的な技術指導といたしましては、沿岸漁業改良普及員を昭和三十四年度から設置をいたしまして、昭和三十八年度までに逐年増加をいたしまして、三十八年度の予算で三百四十六名になります。もう一つの漁家の生活改良普及員は、これより一年おくれまして昭和三十五年度から設置を開始いたしまして、昭和三十八年度の予算では百十名ということになります。今後さらに逐年、計画的にこれを増加をいたしまして、おおむね、新しい合併をいたしました一市町村単位、つまり組合の数で五ないし十、場所によって違いますけれども、そういう単位に一名ずつ置けるというようなことを目途に、今後増員をして参りたいというふうに考えております。
  110. 大森創造

    ○大森創造君 こういう沿振法のねらっているようなものを効果あらしめるようなものは、やはり漁村における人だと思うのです。あるいは漁協における職員、そういうものに力点を置くということの論理からしますというと、やはり今お話のありました専門員とか、あるいは改良普及員という方面に、これは金が少なくていいのだから、そのほうが、こっちへ力を入れたほうが、実際小幅な補助を与えるよりも効果があるのじゃないかと思うのです。  そこで、もう一つだけお伺いしますが、まあ五つの漁協、十の漁協を担当する人もある、それはその地区々々によって違うでございましょうが、これはやはりオーバーワークになっているんでしょうね、こういうのは。そしてそこらの人数は今のお話だと三百四十六人ということでございますが、どのくらいの人数であればいいのか、今まではちょっとオーバーワークになってやしないか、いかがですか。
  111. 和田正明

    政府委員和田正明君) 先ほどお答え申し上げましたように、昭和三十四年からこの改良普及員の設置という事業を水産庁といたしましては開始をいたしまして、現在毎年計画的に増員をいたしておる段階でございます。先ほど申しました五ないし十の漁協、つまり一市町村当たり一名程度置きたいということで、最終目標として、そこまで逐次ふやしていきたいということで、現在まだ置いてない町村が相当あるわけでございますので、毎年予算措置で今後とも増員をして参りたい、こういうことを申し上げたわけでございます。
  112. 大森創造

    ○大森創造君 その次にお伺いしますが、魚価対策ですね、いろいろ資料を見るというと、ヨーロッパ等では、相当思い切った方法で、非常にむずかしいけれども、魚価対策についての施策がなされているようでございますが、生産地に冷蔵庫を作るとか、あるいは輸送の問題とか、あるいは消費地における冷蔵庫、冷凍施設を作るとかいう問題よりも、この一昨年やったサンマですか、サンマだけにやった施策、一億五、六千万円で、それでもってどうのこう。いうこと——これは、実効が上がっておりますか、どの程度実効が上がっているとお考えですか、生産調整の資金ですね。
  113. 和田正明

    政府委員和田正明君) 生産調整事業は昨年と一昨年の二年実施をいたしまして、本年三年目になりますわけでございます。サンマは御存じのように、八月の終わり、あるいは九月ごろに北のほうからだんだん下がって参りまして、十一月ごろには房総の沖へいって、そのままもうあとは漁業の対象にならないような状態で試算をするわけで、そういう限られた場所における漁業であります関係と、それから一般にやはり漁業者が、価格が下がるからといって、とることをある程度調整をして価格を維持しようという考え方が従前ありませんでしたので、必ずしも今日まで、前二回の経験で、完全に所期の目的を百パーセント達しておるということを申し上げる段階にはないと思います。今年も先般来、生産調整組合の理事会がたびたび開かれまして、真剣な討論をいたしまして、本年も一応基準価格としては、キロ当たり十一円を下がらないという方向できめておるのでございますが、それに対応いたしますために、定時休漁でありますとか、価格が一時的に下がりましたとき、一斉休漁措置とかいうことを、漁業者自身も生産調整という形でいたしますほかに、主として北海道その他の地区中心に、サンマかすの製造、それを系統で集荷をいたしまして、調整保管をするということが、昨年もある程度成功をいたしましたので、来年度以降、さらに安定基金の政府出資も増加をはかりまして、今のような方向で、さらに進めていきたいというふうに今検討をいたしております。
  114. 大森創造

    ○大森創造君 相当の効果を上げているということであれば、今のお話のように、さらに拡充強化をする方向に向かったほうがいいと思うのです。二十億の元金で一億六千万円ということではなしに、もっと拡充したほうがいいだろうと思うのです。  そこで、これはサンマですが、ほかの多獲性大衆魚については、ほかにできるものはございませんか。
  115. 和田正明

    政府委員和田正明君) 現在魚価安定基金とは別に、スルメイカについては調整保管の補助金を別途組んで補助をいたしております。なお、アジ及びサバにつきましては、生産調整組合ができまして、網の長さを制限いたしますとか、あるいは灯船——つまり夜とりますので、火力の制限をお互いにいたしますとかいうような自主的な調整は、現在逐次講じつつございます。今後、さらにそれを進めて、調整保管という方向をとるかどうか、これは先般も申し上げましたけれどもアジサバ冷凍保管するという習慣が今まで必ずしも十分ございませんし、味が落ちるということがございますので、サンマやイカのようにうまくはいかないわけでございます。いろいろ検討をしておる段階でございます。
  116. 大森創造

    ○大森創造君 非常にむずかしい作業だとは思いますけれども、英国ではニシン企業法というのがあって、最低価格を設けている。その価格を割った場合には、生ニシンを買い上げて、さらにフィッシュ・ミート工場に回すという措置がとられている。オランダでも、多くの魚種について最低価格措置を設けている。これが事実だとすると、日本は世界一の水産国だということであるのだから、何かこういうところまで、一歩二歩進めるようなものをはばむ要因というのが、日本の漁業について、特殊な要因があるのではないですか。
  117. 和田正明

    政府委員和田正明君) 私も不勉強でございまして、必ずしもよくわかりませんけれども、今例にあげられましたような国では、とります魚がニシンとタラがほとんどで、ほかのものは全くない。漁法もトロール一本であるというふうに、きわめて単純な形態であるところだと思います。日本の場合には、同じサンマをとるのにも、いろいろな漁法をいたすとか、それに従事いたします船の間にも大小があるとか、いろいろな複雑な事もありますわけでございますので、先般大臣が矢山委員の御質問にもお答えいたしましたように、そういう諸外国の例等も参照にして、そういう方法も含めて、今後価格対策を前向きに処理していきたいということを大臣もお答えになりましたが、私ども事務当局としても、そういう方向で前向きに処理していきたいということで、もっぱら検討しております。
  118. 大森創造

    ○大森創造君 それから、この共済の問題について、今までも質問がありましたが、ことに不備な点は漁獲物その他、それから漁具等だと思うのです。こういう点について、今までの質問者にもおっしゃったかもしれませんけれども、ごく簡単におっしゃって下さい。これは研究しておられますか。
  119. 和田正明

    政府委員和田正明君) これはたしか三十三年からだと思いますが、試験実施という形で漁獲共済を実施いたしまして、その前に任意共済の形で漁具の共済を始めて参りましたわけです。漁具のほうには、そう現在問題はないわけでございますが、漁獲共済の今日までの試験実施の経過から見ますと、逆選択と申しますか、非常に下がる傾向の漁業だけが契約をして上昇傾向にある、あるいは安定傾向にある漁業種類については契約をしないというような事情がございますために相当事故率が高くなりまして、毎年掛金収入の二倍以上の支払いというような実態になっております。それらのデータを現在取り寄せまして、先ほども申し上げたわけでございますが、学識経験者に四月下旬から寄っていただきまして、そのデータを基礎に、どのように仕組みを手直ししたらよろしいかということについて、現在御検討をいただいておる段階でございます。できるだけ早く答申をいただきましてよりよきものにいたしたいということで、せっかく検討を続けております。
  120. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 関連して。今の漁業共済制度ですが、どうも非常に答弁が抽象的で、しかも的確ではない。たとえばこのことは全国水産業協同組合の共済会に三十二年から試験委託をしている。そうして、それぞれの具体的なデータが出ておる。そういうことに対して、三十三年ごろからやり出しているなんという、そんなあやふやな答弁では、これはわれわれ以上に非常にあなたは、問題を的確に把握した誠意ある答弁をしなければならぬ当局者として、もう上っつらのその場限りの答弁では納得できませんから、私はこれは共済組合でも数ある質問の一つに質問をいたしますから、のちほどまでに具体的な資料を整備して準備しておいていただきたい。
  121. 和田正明

    政府委員和田正明君) 私、今三十三年と申し上げましたのは間違いでございます。失礼いたしました。三十二年から委託をして試験的に実施をしております。
  122. 大森創造

    ○大森創造君 それから、これは非常に重大なことだと思うのだけれども、農村と比べて、漁村のほうがいろいろな点で落ちていると思うのです。収入の面で落ちている。したがって、文化の程度も落ちているだろうと思う。ですから、先ほどから申し上げているように、人が意欲的になって、そしていろいろな施策を推進するという態度が生まれないというと実効が上がらないという話を申し上げた。  そこで先ほどどなたかの質問にございましたように、いわゆる労務者の賃金の問題ですね。それはさっきの御答弁を私はよく聞きませんでしたけれども、調査をする、調査費用を今度はつけるとかいう話でございますが、そういう調査費をつけて、ある程度調査をするということも必要でしょうけれども、一番その問題について重要なのは、やっぱり漁村の漁家の封建性だと思うのです。これは一番低いと思うのです。そこで最低賃金制という議論があって、最低賃金制を確立するためには、政府が一片の法律を出しても、とてもこれはできないのだから、それ以上に私は漁業労働者の場合には、賃金をどうする、こうするということを言ったって、近代的な賃金まではとてもいかない。その基盤をなす漁村の漁民の意識の問題だろうと思うのです。そこで私は賃金の調査をする前に、前提条件になるものは、私は漁業労働者の労働組合だろうと思うのです、はっきり言うて。そういうものを作ろうとすると、ごたぶんに漏れず、これは選挙でもそうなんです。上からの圧力でぴしゃっとなる例が非常に多いですよ。それはぴしゃりとなって、自民党を支持しようと社会党を支持しようが、そんなことは知ったことではありませんけれども、とにかくそういう意識というものでは、これは政府が賃金の問題を取り組もうとしても、とてもこれは実効は期しがたいと思う。そのためには、まず組合というものを作るように、そういうものを助長するようにしむけなければいけない。ほっておいたらできない。  そこでお伺いしますが、漁業労働者の組合というものは、いろいろな態様があると思いますが、どういう程度できておりますか、うまく行っている組合というものはございますか。
  123. 和田正明

    政府委員和田正明君) 全日本海員組合という所に漁船部というのがございまして、そこに組織化されているのが四万、それから地帯ごとに、それぞれ労組がございまして、それが全国協議会というものを組織しております。そのほうが四万、合計八万ぐらいが組織化されているというのが現状でございます。
  124. 大森創造

    ○大森創造君 八万などという数字は、これは非常に微々たるもので、組織された労働組合は本来的な労働組合の機能をきっと発揮していないと思うのです。  そこで、これは賃金の問題などというものは、一片の法律や、それから行政指導によって、どうなるものでもございません。労使と申しますか、そういう対立関係の中において、複雑な人間的な関係の中から生まれてくるものでございますから、どうしても新しい漁業の形にするということになれば、ここに私はメスをあてなければならぬと思うのです。したがって、組合員というものをだんだん作っていく。できた組合を育成強化する。これは水産庁だけではできませんので、労働省方面と連絡をして、そして私はこの指導の万全を期していただきたいと思うのです。ところが組合を作ろうとするというと、これを不当に押えてしまうのですね、船主が、あるいはその他の圧力が。で、これは労働法違反ですよ、はっきり言うというと。そういうものを手をこまねいて見ておるという形ではいかぬと思うのです。これは水産業の発展になるのですから、労働組合の育成強化ということは。こういうことについて、ひとつ労働省のほうと連絡をして、そうして主体は漁業の発展という純粋な立場から考えられることが必要なんでありますから、ひとつこの点は、あなたのほうでも、大いに留意をしていただきたい。いろいろございますが。
  125. 天田勝正

    ○天田勝正君 ちょっと今の関連、答弁のほうはいいから。  今、やっと和田部長も答弁されたような気がするのだが、今八万というのは、私も知っておるし、実は全日本海員組合の漁船部長も、きょうこの院内に来ているが、そういう労働組合を結成されておるところは、今ここで問題になっておる沿岸漁業のほうでは実はないのであって、大きな大洋とか、林兼とか、そういうところなんです。  ですから、問題は今、漁村の封建制という言葉で、大森委員から指摘されたことは、今問題になっておる二十トンとか、そういう小さいところ、一隻、二隻しか持たない、そういうところだと労働組合の結成などは、すぐ押えられる。そうして成就しようというのが、その中でごく数が少ない、ここに問題がある。まあ、着々と大きな業者、それに対応する労働組合というほうは、一歩々々前進をしていることは間違いないが、沿岸漁業という、今ここで問題になっているほうのところは、まことにもってこれは、それこそ近代労働者というか、それとはほど遠い存在になっておるというか、きれておるというか、そういう格好になっておるということを指摘しておきます。
  126. 大森創造

    ○大森創造君 これは、大体今まで申し上げたようなことが、私の言わんとする筋でございますので、よくひとつ考えていただきたいと思います。沿岸漁業振興法などという法律を出して、で、漁業基本法はどうだというと、沿岸漁業法が置かれておるから、これをひとつ重点的にやるのだと、そのつもりになって、一々の条文を見ると、先ほど申し上げたように、一々ごもっともだけれども、量において少ないし、助成補助の幅において少ない。ねらっておるものは、的はずれではございませんよ。いずれこういうことなんでしょうが。だから、冒頭に申し上げたように、一体法律というのは何だ、法律というのは、日本国憲法のごとく一つの目標を示すものが法律なのか、より現実に足元に密着したような、こういう法律を作って着々実現を期するものなのか、この法案に書かれておるようなものは、今までの法律によって補助をしたり行政指導をしたりしている。だけれども、あらためてこういう法律を出すゆえんのものは、一体どこにあるのだということでございますので、議論をするというと、そういう角度から、一々申し上げなければならないのです。魚価の問題についても、流通の問題についても、ここまでやっているのでしょう。二十億の元金で、一億六千万円でもって、そうして魚価安定基金の運用をしたということなんで、それが幾らかでもサンマの魚価についてプラスになったということならば、それを幅を拡充するような方向に向けなければならぬ。私がこの法案について、どうも首をかしげているゆえんのものは、この法案を現時点において出す、今まで二回流したが、今度出すということは何だ。大蔵省の関係があるだろう、自民党、社会党の関係があるだろう、その他いろんな関係があって、現段階においては、現時点では、ここら辺の程度でしょうということだと思う、あなたの考えは。だけれども、だから議論するというと、個々の問題についてございますよ、だけれども、大型の魚礁を公共事業化すれば、小型魚礁もやってほしい、投石の問題、築いその問題、その他こういう施策をやってほしいということでございます。そういうことを幾ら議論を繰り返してもだめでございますから、きちっとやってほしいということです。この法案の内容——あるいはぶん流れても、こういうことをやることになっているのですから、一々の条項について責任を持ってやってほしい。大蔵省の関係で、フィッシュ・ミールがどうとか、あるいは魚価安定対策のことについて、頭の中で考えていたら、このことはあるけれども、現実にはできない、そういうこと。文章はあたかも沿岸漁家にとって、零細漁家にとって、バら色の夢を、そこはかとなくただよわしている法案でございます、ほんとうですよ。もっと大きくかまえて、そうして言うところの沿岸漁業の擬興を期してもらいたい。一々のことについて言うたり言われたりしたって、始まりませんから、ここらで打ち切っておきます。
  127. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 大体、同僚議員からいろいろ聞かれたので、大綱については聞きませんが、小さい点について聞きたいと思うのですが、その前に今、問題になっております日韓の漁業問題について、これはぜひ大臣に聞きたいと思うのですが、大臣、来られる時間はいつごろになりましょうか。
  128. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  129. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 速記を起こして。
  130. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それじゃ大臣が見えたときに聞く問題がありますから、その点は残して、ほかの点を聞こうと思います。まず初めに、何度も何度も聞かれたことですが、三条の第一項にいろんな点が書いてありますが、特に七ですか、「職業訓練及び職業紹介の事業の充実」云々という点ですが、これはいろいろ、たとえば石炭離職者の職業紹介、あるいは訓練、それから、この間成立しました職業安定法、失対法、こういう点にも、これと同じものがあるわけです。それからまた、農業構造改善事業の中にも、これに似たようなのが出てくるわけですね。これも、またそれと大なり小なり似たようなもののようですが、大体漁村においては、もうすでに零細漁民の子弟というのは、ほとんど中学を出れば就職をする。結局残っているのは、中高年令層じゃないかと、こう思うのですね、そういう中高年令層の諸君を一体、どういうように訓練をするのか、また、それをどういうような職業紹介をするのか、なかなか多種多様の階層からやって来るものをやっていくわけなんですから、これをひとつ、もうちっと具体的に説明していただきたい、こういうように思うのです。
  131. 和田正明

    政府委員和田正明君) 法に申します「職業訓練及び職業紹介」と申しますものには、積極的に漁業から、こちらから追い出すということではございませんで、本人の希望等に対応しながら処理をして参るわけでございます。一番やはり私どもとして重点を置いて考えておりますことは、最近のレジャー・ブームと申しますか、そういうようなことで、非常に、ゲーム・フィッシングというのが非常にはやっております。それでやはり自分の持ち船を利用して、そういう人たちを漁場に案内しながら日銭を稼ぐ、あるいは投石とか大型魚礁の設置とかいう形で、各種の事業が今後実施されますわけでございまして、そういう漁業内部での、そういう新しい場所に雇用の場所を見出すとか、いろいろな方法はあろうかと思いますが、ここで一例でございますが、長崎の地区で構造改善事業を実施いたしました場合に、県の調査で見ますと、転業を希望する職業というのは、希望者というのは、大体一三%ある。こういうふうに県からは報告をされておりますが、商業とか、農林業に専業するとかいうような形のが大多数でございます。
  132. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 農林業というと、まあ大体農村においても、土地の問題がまず第一、突き当たってくると思うのです。林業というと、ほとんど——ほとんどというわけじゃありませんが、国有林というのが大部分を占めてくるわけですね。そういうようなところで、一体漁業者が、どういう仕事をやろうと希望しているのか、ちょっとそれを一つ聞きたいと思う。
  133. 和田正明

    政府委員和田正明君) 今、長崎の一つの事例について申し上げましたわけですが、これは要するに兼業として漁業をやっております人たちが、漁業のほうをむしろ捨てて、そして農業なら農業、林業なら林業のほうに、集中的に、その経営をしていきたいという趣旨の希望であろうと思います。  ですから、あるいはその付近に、ほかの人から土地を借りたのか、売ったのかよくわかりませんけれども、あるいは経営形態を何か非常により高度集約的なものに変えたのかしれませんが、希望としては、兼業形態での漁業をやめて、農林業——農業あるいは林業というような方向に集中していきたいというような希望が特に多いと、こういうことを申し上げます。
  134. 矢山有作

    ○矢山有作君 関連です。今、漁政部長の答弁を聞いておると、ただいまの第三条一項七号に対する小宮委員の質問に対して、観光客相手のまあ仕事をやるというようなことが一番に打ち出されてきたわけですけれどもね。私は、七号に職業訓練云々を取り上げているというのは、その程度のことなんですか。それからさらに希望として、農林業へ専業する希望が多かったからというぐらいな消極的な考え方なんですか。むしろ今日の沿岸漁民なり中小漁業者の状態からみて、沿岸漁業振興法を作ろうというのは、やはり一つの考え方の中心としては、よかれ悪しかれこの職業訓練によっての他産業への転換、それによる漁業者と他産業従事者との所得の格差を解消していくのだということが、私は一つのねらいになっておると思うのです。  そうしたら、そういう足場を踏まえてのより積極的な施策が出てこなければならぬはずなんで、農林業に転換希望者が多いから云々ということで逃げられたんじゃ、現在の農林業が、日本の経済の全体の中において、どういう立場に置かれておるか、このことを考えたら、おのずから答えは出てくるはずだと思う。そういうような誠意のない答弁をなさるから、やはり問題になってくる。
  135. 和田正明

    政府委員和田正明君) 小宮委員の御質問が、最近漁村には老令層、高令層が多いだろうから、そういうものの転換については何を考えるか、こういう御質問でございましたので、そういう人については、直ちに他産業に変われといっても、いろいろの点で無理があろうから、その技術を生かして、スポーツ・フィッシングとかあるいは漁場の中での大型魚礁等の設置というようなことが一番多いであろう、現実に調査した一例で申しますれば、長崎の調査では、こういうことがあるということを申し上げたのでありますが、私の言葉が足りませんので、誤解を呼びましたことをおわびいたします。
  136. 矢山有作

    ○矢山有作君 じゃ私が、今御質問したことについての、この七号に関連する具体的な施策をどうやっていかれるのかということをひとつお伺いしたいと思うのです。
  137. 和田正明

    政府委員和田正明君) 最初に、職業訓練でござますが、これは御存じのように職業訓練法がございまして、この法律に基づいて、いろいろな公共職業訓練が行なわれておるわけでございますが、無線通信の通信技術あるいは水産加工の技術というふうに、できるだけ関連のありますような技術訓練をその面で生かすように重点を置いて考えてみたいというふうに具体的には考えております。  それから職業紹介の問題につきましては、御承知のように、職業紹介法でございますか、そういうことで職業紹介所等が設置をされておるわけでございますし、一方雇用促進事業団の仕事もございますわけですが、やはり私どもとして考えます場合には、今後漁業の進展に連れまして、陸上での通信機能の強化というようなことが重点たらざるを得ないと思います。そういうところに重点を置いて職業紹介あるいは職業訓練をしていきたいというのが重点的な考え方でございます。
  138. 矢山有作

    ○矢山有作君 そこでお伺いしたいのは、私は「その希望及び能力に従って」ということがうたわれておるのですが、一番問題になるのは、その能力に従って、はたして適当な職業につかせるのに、どうしなければならぬかということが問題だと思う。その場合に、たとえば職業訓練一つ取り上げても、先ほどお話がありましたけれども、漁村というところは地理的に言っても非常に不便なところが多いと、こういうのですね。農村は比較的漁村よりも、まだ地理的にめぐまれておる。ところが、そういう農村地帯における職業訓練すら、なかなか今進まないというのが実態なんですね。そうしたら、むしろ不便なところに位置しておるそういう漁村における転職希望というものをかなえていくための職業訓練というのは非常に困難性が伴うと思うのですが、現実の問題として、そういう点を、どういうふうに解決していくのかということが一つの大きな問題だと思うのです。ただ、法案の中に掲げられることによって解決できる問題じゃないと思うのです。しかも、先ほど最初に申し上げましたように、職業訓練によって転職をはかっていくということは、いい悪いは別として、沿岸漁業振興のための一つの基本に僕はとられておると思うのですよ。そこら辺で、私はそういった漁村の実態というものを踏まえて、具体的に職業訓練というのを、どう展開されるのかということが一番問題、そこに対する水産庁の抱負なり考え方というものを、もっと具体的に示してほしいと思うのです。  つまりもう一度申し上げると、職業訓練を受けさせると簡単におっしゃるけれども、漁村の地理的な条件からして、職業訓練所に漁村の方々が通うにしても、非常に地理的に不便なところにある、そういった問題もあるし、さらに漁民の人の現在の生活実態を考えた場合には、農村よりも、まだ生活の実態が悪いと思うのですがね、そういう状態の中における漁民への職業訓練というものは、具体的にどう展開されなければならぬかということです。
  139. 和田正明

    政府委員和田正明君) 先ほどもちょっと触れましたように、この事業の中で、関係した府県なり市町村等で、転業あるいは職業訓練のための打合会の開催とか、相談相手になりますための運営とか、そういうことについての助成は考えたことはございますが、御指摘のように、場所的にみて、きわめてそういう訓練を受けることについて、農村に比べて困難性があるとか、そういう点は御指摘のとおりでございますが、今ここで、具体的にこうだと、こういうふうにきめたというふうなことは、まだ実ははっきりきめてございません。今後、労働省ともよく打ち合わせをいたしまして処置をして参りたいと思います。
  140. 矢山有作

    ○矢山有作君 もう答弁は要りませんが、この法案が提出されてから、すでに二年にも三年にもなっているのですよ。その間に、この問題一つすら、そういう具体策がないというような答弁をなさるから、われわれはこの法律はだめだといっているのでよ。そういうようなことでは、法律を作っても実効は上がらないのですよ。今度初めて法案を提出されたというのならまだわかりますよ、今の御答弁で。ところが、提案されてから相当の時日がたっておる、その間に、これに対する具体的な答弁すらできないというようなことでは、われわれは政府のその真意を疑わざるを得ないのです。もう答弁要りません。私は、もうあとの質問がありますから、これでやめますが、そういうようなことでは絶対だめですよ、これは。
  141. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 さっきのお話の中に、協議会の運営費の補助金を出すと、これは何にするのかよくわからんけれども、それで職業の転換ができたり、何かうまく転換ができるというふうには思われないのですよ。それは長い間漁村に住みついた人ですから、その中で収入を増していこうということなんでしょうから——ところが、前に話を戻しますが、職業訓練をやるということになりますと、中高年令層というのは、一家をささえているわけです。生活の方途というものはないわけですよ、一本釣やっていても何でも……。ところが、たとえば漁業やっている人で、農業やっていても、それは一町とか何とかという大きな農業をやっている人はないと思う。ささいな一反か二反、まあ三反ぐらいのところがやまです。そういう人が、今度は訓練に行く場合に、一体行けるかどうかということですね。炭鉱離職者に対しては訓練手当を一応考えたわけですね。これは長い間かかって、労働省その他と交渉ができて、そういう手当を作って訓練をする、こういうわけなんですが、これはあまりに私は残酷じゃないかというような気がするのですね、これじゃ。これは全くなっていないのじゃないか。こういうふうに思うのですが、その点どうでしょう。
  142. 和田正明

    政府委員和田正明君) 職業紹介にしろ、あるいは転業の教育にしろ、主として他省の所管に属しますので、具体的にそれに基づきます計画をということにつきましては、先ほど矢山委員におしかりをいただきましたけれども、一般的に、それほどまだ地帯別に、具体的にまだ持っておりません。ただ雇用促進事業団の事業につきましては、御存じのように訓練手当の支給というようなことがございますので、これにつきましては、労働省とも打ち合わせをしまして、この事業団の事業として、そういう訓練が受けられますようなことについては話し合いがつけてございます。
  143. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうすると、職業訓練所に行けば、訓練手当というものは出るのですね。
  144. 和田正明

    政府委員和田正明君) 雇用促進事業団の事業として、そういうことをいたします場合には、訓練手当が支給できるように運輸省、労働省と話がつけてございます。
  145. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 こういう場合に雇用促進事業団の対象のものになるかどうか、その点を明確にお答え願いたいと思います。
  146. 和田正明

    政府委員和田正明君) たとえば簡易の職業講習会の開催とか、組合の職業訓練所とかいうものにつきまして、労働省と協議をいたしまして、この事業の中で取り込んでいくようにいたしたいということを申し上げておるわけでございます。
  147. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうすると、これから労働省と話し合いをして、そういう道を開いていこうということなんですか。そういうように了解していいのですか。
  148. 和田正明

    政府委員和田正明君) 法案が成立をいたしました上では、そういう措置をしていきたいということで労働省と話し合いがついておると、こういう意味でございます。
  149. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうすると、第五条「第三条第一項の施策を実施するために必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない」こういうことに関係があるわけですね。そうすると、「法制上及び財政上の措置」の、この法制上というのは、どういうことを考えられているのですか。
  150. 和田正明

    政府委員和田正明君) 今の職業訓練についてという意味でございますか。——今、具体的に特に考えておりません。
  151. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それではその財政上は、どういう考え方ですか。
  152. 和田正明

    政府委員和田正明君) 具体的に残業紹介なり、あるいは職業訓練をいたすということになりますれば、水産庁の予算ではなく、それぞれ関係省の予算になりますので、法案が成立をいたしましたら、それぞれの将来の具体的な計画について予算措置をとるということで、法案成立後全体として各省と協議をしながら、来年度以降の予算について、そういうことを考んていく、こういうつもりでおります。
  153. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 今の答弁を聞いていても、まあさっき大森委員から、方向については、文章としては了承できるというような話があった。まあこの文章を見ているとわかるのですよ。ところが今のようにずっと問い詰めると、具体性がない、ですから、結局山吹法案みたいで実がない、こういうわけなんですね。だからわれわれは、そういう点をもう少し明確にしてもらわぬと、漁民というものは、なかなか安心ができないのですよ。たとえば、農業基本法にしてもそうなんです。農村というものも非常に貧困でございまして、何とかしてもらわなければならぬ。漁民もそのとおりなんです。そこで、漁民という名がついたり、あるいは農村、農業というような名のつく法律ができると、とにかく何でも作ってもらえ、作ってもらえば、何かいいことがあるだろうといって、そういうことを頼みにして、だから農業基本法でも早う作ってくれよ、これも早う作ってくれよ、こうなるわけです。ところが開いてみると実がならない、こういうことになると、これは全くがっかりしちゃう、こういうことなんです。今お聞きしても、何も、これからお話し合いをする、これからどうします、これじゃどうも、われわれは文章には賛成ですよ。法律の全体の制度には賛成はできないですね。
  154. 和田正明

    政府委員和田正明君) 水産庁の独自の予算でなくて、他省の関係にかかりますことでございますから、先ほど大森委員が何で法律を出すのかと、こういうふうにおっしゃいましたけれども、予算の幅を、全体として量的に広げるということのほかに、政府としてのかまえと申しますか、施策の方向を法律によって義務づけをしたいということに一つのねらいがあるわけでございますから、御指摘のような点につきましては、法案が成立をいたしますれば、当然この法案の趣旨に沿って、関係各省が協議をして施策の方向をきめなければならないことになるわけでございます。  そこで今後、審議会等の場も活用しながら、他省の所管にかかわります部分につきましては、この法案の趣旨の線で、政府としてそれぞれ具体的な施策を今後具体化して参るということになろうかと思います。したがって、今幾らそれじゃ金額が組んであるか、こうおっしゃられましても、方向として法律で、そういうことを義務づけをすると申しますか、そういう段階に、まだ法案の段階でございますので、通りました上には、御趣旨のように具体化をいたしまして、きちんとやる方向で考えております。
  155. 矢山有作

    ○矢山有作君 それじゃ私は政務次官が来ておられるので、この問題こそ、政務次官にはっきりと御注文申し上げておきたいのですが、職業訓練云々で、多少あげておりますが、今の御答弁を聞いておりますと、法案が提案されて、すでに二年になる。ところが、このこと一つを取り上げてみても、何らの方針もないのです、お聞きのように。私はこれからの職業訓練というものは、先ほどちょっと言われておりましたが、ちょっと講習会をやって、そして職業転換をはかるのだというなまやさしいものじゃないと思う。そんなことをやっているんだったら、雇われていく先は臨時工か、社外工か、それこそ生活の安定ははかれないので、これはやはり生活の安定をはからそうと思えば、職業訓練をするにしても、本格的な職業訓練をやらなければならない。特に近代産業がどんどん伸びていく今日の事態にあっては、職業訓練の質も変わってこなければならないのです。その点をよく考えていただいて、これから政府で具体的に、この問題を立案されるときに、十分われわれが今言ったことにこたえていただきたい。一年もすれば、この結果というものは出てくるのですから、一年先で、また、何も方針がありませんというようなぶざまな形じゃわれわれは納得できませんので、その点は、特に政府次官に注文しておきたいと思います。
  156. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それは、その程度にいたしまして、次に沿岸の海水汚濁の問題、それから埋め立て、干拓等この問題について、ちょっとお尋ねしたいと思うのですが、この中にうたわれておりますように、工業の振興等が書いてあります。今問題になっております新産業都市振興法といいますか、そういう海岸地帯を、ベルト地帯を、いろいろのコンビナートにしたい、こういう希望、また施策があるわけです。  そうしますと、この問題は非常に沿岸漁業に直接関係がある、こういうように思うのですが、こういうものについての、もっとこまかい規制といいますか、そういうものがなければ、いろいろな問題が惹起すると思うのですが、そういう点が、これを見ても非常に抽象的で、われわれは納得いかない点がありますが、その点いかがでしょうか。
  157. 和田正明

    政府委員和田正明君) 基本法でございますという意味において、基本的な政府の施策の方向を明記して義務づけておりますので、細部についてまで、ここに書いてない点も多々御指摘のようにあろうかと思いますが、たとえば水質汚濁という問題につきましては、御承知のように、いわゆる水質二法というものが、すでに制定をされておりまして、今日までに二十何水域でございましたか、指定をいたしまして、その水質基準の作成を実施をいたしておるわけでございますが、御指摘の新産業都市等につきましては、今後政府のほうで指定がございました場合には、それぞれの地区ごとに漁業への影響等につきましては、それぞれ現行の規定、法律、制度等活用をしながら、漁業への影響を極力チェックをしていくという方向で、具体的に措置をして参りたいと思っております。
  158. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 これは政務次官にちょっとお尋ねしたいのですが、これは地域的になっておそれ入りますけれども、有明海の没岸に、干拓を、もうすでに十年前から始めているんです。地域的に言いますと、福岡県大牟田から筑後川に向かっての沿岸、佐賀県もあると思いますが、そういう地帯で、農林省が干拓を始めているわけですね、やっている、長いことかかっている、やがて潮どめをして、来年か再来年あたりは干拓地になると思いますが、その干拓をやるときに、浅海ですが、採貝業をやっていた者が、今ノリをやっている、ノリはかなり水産業のほうでも伸びているわけです。そのかわり採貝業がだんだん低下してくる、ところが沿岸の干拓について、そういう採貝業、ノリ業者が、いわゆる補償をもらっているわけです。補償の話が当時非常に困難であったけれども成立したわけです。ところが、農業の干拓ですから、やがて何百町歩かの水田ができる、ですから、さっきのお話じゃないけれども、まあ漁場は狭くなったけれども農業ができる、こういうことで、まあ補償も、幾らかのところで落ちついてやっている。  ところが、今日、そこで石炭を掘り始めた、筑豊の炭田は、もうすでに寿命が尽きて参りました、有明海の炭田を中心に持ってきた。ところが、その干拓地の一部を鉱業権者に使用させているわけです。許可してさせているわけです。そうなりますと、漁民は今度は黙っていないわけですよ、あのときは水田を作るということで話があったのだから、漁場が狭くなれば、当然土地を分けてもらえるのだから、そうすれば農業をやり漁業をやることができるのじゃないか。ところが鉱業地帯になってしまうと、そういうことができないので、かえって今度は汚濁水がきますし、いろいろな関係で、それじゃそのときのはうそじゃないか、だから補償の問題も今度は別だ、こう言って、今、そういう問題が起こりつつあるわけです。同じ農林省の問題でございますから、こういう点を、どういうように調整されていくのか、ちょっとお伺いをしたいと思います。
  159. 大谷贇雄

    政府委員(大谷贇雄君) ただいま小宮先生の有明海の干拓の問題に関しての御質疑でございますが、そういうような問題は、有明海のほかにも、実は私——森委員も愛知県でございますが私どものほうにも、臨海工業地帯ができまして、やはりのりが同じようにたくさんとれるわけでありますが、それがとれなくなって補償の問題が、やはり非常になかなか厄介な問題に実はなっておるわけであります。有明海のほうは、実際を知りませんが、愛知県のほうから想像いたしまして、さもありなんと了解をするわけでございますが、今お話のように、農林省が農地として農地造成のために干拓をしたものが時勢の変化によって工業地帯に転移をいたしていく。そこで、この漁民の人たちが、漁場が狭くなったのだから農地として転用をして農業もやるということで了承をして、まあ補償もある程度でまけておくかというようなことであったのが、それがまた工業地帯になれば、そんなことはけしからぬと怒られるのはごもっともなことでございまして、その問題につきましては、今聞きますると、漁民の方々と県のほうにおきまして、ただいま折衝をいたしておる最中であると承っております。農地局のほうでも、おそらくこの点は、そういうような場合の時代の変化に伴って、そういう事情になっているということを心配をいたしておりますが、ただいま県と漁業者のほうで折衝段階であるので、その調整を業林省としてどうするか、こういう御質問だと思いますが、ただいまのところ、県当局との折衝中でございますので、工合よく調整できることを私望んでおるわけであります。
  160. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 いや、実は県は、実に迷惑な話だと思うのです。私は近所におりますからよく聞くのですけれども、その時分、干拓をする初めごろには、もうすでに近所でボーリングをやっていたわけです。だから、ボーリングをやっていて石炭を掘るのじゃないか、そういううわさがあるのに、干拓をやる。だから、今になってみると、漁民も農民もだまされたという感じを持っているわけです。御承知のとおり、海の中を掘れば、一トン当たり水がどのくらい出るかという計算でコストが安くなったり、高くなったりする。そうすると、干拓しますと、それだけトン当りの水が少なくなる。そうするとコスト安になる。これは石炭のほうじゃそれでいいと思うのです。おかのほうの農民、漁民は、これはたまったものじゃない。なんだ、だまされたのじゃないか、こういう空気が非常に強いわけです。  ですから、今政務次官のお言葉ですけれども、県で今、よりより相談をしている——これは迷惑な話だと思うのですけれども、こういう点については、同じ農林省の中の話でしょう、しかも今度は工業のベルト地帯を作ろうとするのですから、もっと話を煮詰めてもらわないと、いざ今度はやろうという時期になったら、たいへんな混乱が起きるというふうに思うのですけれども、そういう点、どうでしょう、農林省の中の問題は中の問題として、早くお考えをまとめてもらって、通産省との関係は通産省との関係ですね。そういうものを、ひとつ具体的に出してもらわぬと困ると思うのですが、どうでしょう。
  161. 大谷贇雄

    政府委員(大谷贇雄君) 私が、この詳しいことを知りませんで、十分なお答えができなかったのでありますが、この漁民の方々からは、水産庁のほうへお話もあり、水産庁としましては、非常にその点を心配をいたしまして、お話のように、農林省内部のことでありますから、農地局と思想統一をして、この漁民の方に工合のいいようにということで、ただいま話し合いをいたしておりますし、また農地局といたしましても、通産省のほうと協議をいたして、善処できるように、ただいま進んでおる状況でございます。
  162. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 この問題については、もう長くやらぬつもりですが、どうぞひとつ、そういう点は農民や漁民をほんとうに窮地に追い込まぬようにやっていただきたい。  そこで、さっき大森委員から、漁協の運営の問題について御質問がありました。その漁協は規模の大きいのと小さいのがそれぞれございます。まあ大体自治体では、漁協を適当な規模に統合しょうという指導をやっているわけですね。ところが、なかなかこれが、いろいろなセクトがありますし、従来からの歴史的な過程があったりして、なかなかこの統合ができないでおりますが、水産庁では、この問題については、どういう取り組み方をしておるか、ちょっとお聞きしたいと思うのであります。
  163. 和田正明

    政府委員和田正明君) 合併統合につきましては、先ほどもお答えを申しましたように、合併奨励金を交付をいたしまする等の措置をとりまして、計画的に合併促進をはかって参りましたわけでございますが、御指摘のように、いろいろ過去からの因縁とかその他の事情で、必ずしも計画どおり進んでおりませんことは御指摘のとおりでございます。  そこで、まあそれだけが直ちに合併促進に役立つかどうかという点につきましては、あるいは問題もあるかもしれませんけれども、本年度から従前の合併奨励金を、従前、一組合当たり五万円でございましたのを、倍額の十万円というふうに広げまして、奨励措置等についても、何がしか呼び水と申しますか、奨励措置が呼び水になりますような方向を考えておるわけでございますが、なかなか具体的にはむずかしい点も多いと思いますが、その他指導等強化をいたしながら、できるだけ今後とも弱小組合の合併を進めて参りたいと思っております。
  164. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 関連、私の質問の時間にも触れる問題の一つですので、この漁協の問題を関連してお伺いをいたしたいと思うのですが、たとえば岩手の例をとりましても、宮古から北のほう、下閉伊、九戸の沿岸漁業協同組合の区域は、部落単位のものもあるというのが実態であります。この漁業協同組合というものは、沿岸漁業振興する場合には主役を担当するきわめて重要な機能であるはずです。特に、定置漁業権なりあるいは区画漁業権は、優先して漁協にこれる認可する建前からいっても、この漁業協同組合に期待される役割は、きわめて重大であるといわなければならない。しかるに、この漁業協同組合が、今言いましたように、あるいは部落単位というような、きわめて細分化されておる実態のために、いろいろな問題が、紛争が起こっておる。たとえば、そのことで起こっておる一つの例は、地先水面の問題で、非常にその組合の区域が細分化されているためにその境界も定かならざるため、不必要な紛争が現地でしばしば惹起されておる。こういう実態を踏まえて、沿岸振興なり、あるいは当面の漁業構造改善というものを推進するにあたりましては、こういう漁協現状をもってしては、合併に五万円を倍増しして十万円にするというような、そんなことでは、とうていこういう大きな役割が完全に発揮できないというのが実態である。そういう点から見れば、むしろ農協なり、あるいは過般の、この四十三国会で通過した森林組合の合併以上に、この沿岸漁業振興法に関連した措置としては、もっと抜本的な、適正規模にこれを推進する行政的な措置も必要であるし、また、漁協自体に対する、そういう認識の喚起も必要であると思うのです。  そういう点が、とおり一ぺんの、従来非合併組合、一組合あたり五万円を十万円にしたというような、そういう上っつらな行政措置では、その基本的な機能を期待するわけにはいかない。そういう点で、私は漁業協同組合に期待するがゆえに、もっと積極的な施策というものが取り上げられなければならないというふうに考えるのですが、その点は、一体その程度、今の答弁程度で、お茶を濁して、なおかつ、こういう地先水面の拡張における紛争の問題、定置漁業権なりあるいは区画漁業権を優先する漁協の実態等を見て、それでいいと考えておられるのかを、関連してお伺いしておきます。
  165. 和田正明

    政府委員和田正明君) 私、先ほど行政措置として、合併の奨励金の増加のことを申し上げましたわけですが、実は制度的には、昨年漁業法の改正をいたしました際にも、先ほど渡辺委員から御指摘のございましたような部落別の組合が合併をいたしました場合に、その管理をいたしております漁業権の優先性というようなことについて問題が生じますために、合併が阻害をきれておるというようなことが、部落別組合が成立をしております場所にはままございましたので、昨年漁業法を改正をいたしました場合に、漁業権につきましては、従前に浦々の地先水面と申しますか、そこの地元の地区の人たちの優先性というものをできるだけ配慮しながら、組合が合併をいたしましても、漁業権としては、一つ一つ従前のままで独立した権利として認められるというような形で従前の権益を尊重しつつ合併が促進できるような改正をひとついたしましたわけであります。  それからもう一つ、漁港につきましては、先ほど構造改善計画の中で、中核漁港というようなことも、ちょっと答弁の中で申し上げましたけれども漁港設備を作ります場合にも、数カ所の部落の個々にではなく、何かそこに中核的な漁港設備を設けまして、そこへ中心に各種の施設を設けるというようなことで、そこを中心にして合併の促進がはかられるというようなことも、漁港計画を考えます場合には配慮をいたすというようなことを措置をいたしております。  もちろん、今申しましたような三つだけで、あるいは万全でないという御指摘もあろうかと思いますが、そういうことも含め、さらに漁協の系統団体に対しまする各種の全体としての指導方針等も含めまして、今後できるだけ弱小組合が早期に縮減をいたします方法に努めたいというふうに思っております。
  166. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 今、部長が触れた問題以外に、現実に入会権で、その区域が錯綜している問題等もあるわけですね。たとえば具体的な例を申しますと、山田湾漁連というのが下閉伊にあります。この山田湾漁連の共同漁業権を持っておる組合以外に、その組合員であって隣の重茂の地先水面に入会権を持っている組合があるという事態を積極的に解決するためには、そういう入会権紛争を根本から解決するためにも、さらに、これらの隣接地区を含めた適正規模の漁協のあり方というものが必要ではないか。そういう点に対しては政府では、何ら適切な指導が現地に対して行なわれていないという実態ですが、これらの各地に見られる地先水面をめぐる入会権については、政府はどう考えて措置をされようとしておられるのか。関連して、これだけを伺っておきます。
  167. 和田正明

    政府委員和田正明君) これも昨年御審議をいただきました漁業法の改正案と関連があるわけでございますが、従前漁業権というのは、そのまま期限が切れましても更新をするということで、従前の権益を基本的に尊重するというような形をとって参りましたわけであります。昨年改正をいたします際に、主として一般的には五年、あるいはものによっては、さらに十年というような長期のものを考えましたけれども、やはり漁場の実情とか、あるいはその後の漁協の変化というようなことに対応いたしまして、新しい事情に応じて、さらに再検討を加えながら今後漁業権の免許をしていくというようなことにいたしまして、単に改正前のように、既存の権益をそのまま尊重するという形をとらずに、今後それぞれの漁協なり、漁場の実情に応じながら、再検討を加えて処置をしていくという制度的な改正をいたしたわけでございます。山田湾の問題そのものにつきまして、私も具体的に承知をいたしておりませんけれども、法律を改正をしました趣旨は、ただいま御指摘のございましたような問題について、できるだけ新しい事態に即応しながら新しい漁場計画を立てさせていくという考え方で改正をいたしましたわけでございます。現在、たしか八月末で従来の漁業権が切れまして、新しい漁場計画を作成をいたし、それをそれぞれの海区の調整委員会等で審議をいたしまして告示をしておる段階だと思いますが、具体的な事案につきましては、よく県庁等を指導をいたしまして、改正法の趣旨等にかんがみまして、具体的に指導をして参りたいと思います。
  168. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 もう一つ、今の部長の言ったように、漁業法が改正されて、その新しい精神で実施をされていないので、問題を提起しているわけです。というのは、これは岩手の例をとりましたから、岩手の例をさらに具体的に申しますと、岩手の漁業調整委員会で漁場計画を諮問した際に、これらの問題が未解決のために、いまだ結論が出ていない。漁場計画自体すっきりした結論に達していないのが問題点の一つなわけです。ですから、漁業法がせっかく改正されても、あなたが今答弁したような、そういう精神が末端までしみ通ってそれが効率的な方向に向かっていないところに、私は先般来、同僚委員が質問したその沿振法の改正にあたっても、何となく先行きに対する不信感を抱かざるを得ない。すでに去年、あれだけの論議を国会で経た漁業法の運用においても、これ一つすら、現実には解決する方向に向かっていない。その点を、ここでは答弁は要りませんから指摘をいたしておきます。
  169. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 漁協運営の問題については、それぞれの関連質問等もございましたから、時間の都合もございますので、これで終わりたいと思いますけれども、ただ、五万円を十万円に上げて、それで事足れりというようなことではお粗末すぎると思う。もっと積極的にやっていただきたいと思うのです。  次にお尋ねをしたいのですが、大臣が来られてから、最後的な御答弁を願いたいのですが、全国の漁業者、特に九州の沿岸漁業者は、韓国との漁業協定、この成り行きというものを非常に注視をしているわけです。ところが昨日、漁業専門家会議ですか、これが行なわれて、和田さんも出席されておる。韓国は第二次案を出したというので新聞報道がございました。はっきりしたところを聞きたいと思います。
  170. 和田正明

    政府委員和田正明君) 昨日、側が第二次案として提示をして参りましたものの概要は、新聞等に出ておりましたとおりでございます。つまり三点ございまして、第一点としては、沿岸から四十海里の範囲を専管水域というふうに考えて、領海と同じように漁業上の権利を行使する、これは日本も韓国も同じだという趣旨でございます。  それから二番目が、その専管水域の外に、四カ所ほどの共同規制水域を作りまして、その水域につきましては、漁獲量なりあるいは漁船の隻数なり、あるいは漁獲の時期なりを、日本も韓国も同じように規制をしたい。  それから第三点は、日韓共同委員会というものを設置をいたしまして、資源の調査と、それから双方の間で生ずるであろうところの漁場の紛争の調停等の仕事を担当させたい。大要この三点の提案が口頭でありましたわけで、従前、韓国側としては、公海上に一方的に李ラインを設置いたしまして、たびたび拿捕が繰り返えされ、そのたびに釈放等について強い要求をしておりましたわけですが、今回の提案について韓国側が自賛しておりますことは、李ラインをやめたということにおいて、きわめて韓国側としては大譲歩だという言い方をしているのでございますが、私どもとしては、国際法上、どういうものを専管水域にするかということが、いろいろな例はあるにいたしましても、少なくとも四十海里というような例は一つもございませんので、そういう案はのめないということで、その場で拒否をいたしまして、今後とも李ライン撤回を前提として、双方で納得のできるような協定を作るということで、今後とも折衝をいたしたい、こういう段階でございます。
  171. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 あとは農林大臣に聞きたいと思いますが、新聞を見ますと、楽覧論と非常にきびしい考えと両方出ている。手放しの楽観ということではないですけれども、今出しているのは、韓国は、つもりで出してみて、徐々に接近するのだというような楽観論と、もう一つは、これはたいへんだぞ、韓国の沿岸漁民というものは、韓国の政情にかんがみて非常な決意を持って、これに反対しているのだというような、楽観論ときびしい論とあるわけですが、そこでまさか政府のほうは楽観論じゃないと思うのですが、その決意は農林大臣に聞きたいと思うのですが、そのほかに技術協力なんということがひょろりと出ている。一体、技術協力について話し合いがあったのですか、どうですか。
  172. 和田正明

    政府委員和田正明君) 韓国側は非常に漁民の数も多うございまして、沿岸漁民が非常に零細で、漁業所得が少ない。彼らの説明ですと、年間四十ドル程度というようなことを申しておりますけれども、そういう沿岸漁業の実情なので、できるだけ日本もその沿岸漁業が成り立っていくようにしてほしいということは、一般的に希望を述べておるわけでございます。ただ、私どもといたしましては、やはり李ラインというような問題が完全に撤去され、かつ各種の国際上の従前の条約等の前例に従って、妥当な漁業協定ができるまでは、いろいろ曲折はあろうと思いますが、努力をいたす、こういうふうに考えております。  なお技術協力の問題と申しますのは、実は現在、日本ではコロンボ・プラン等によりまして、インドとかセイロン等に、そういうことをいたしておりますが、そういう実例について、先般韓国側で説明をしてほしいというので、よその国においては、こういうことをやった例があるという、今後国交等が回復し、李ライン等の撤去について明確な協定ができた上では、これらの例にならって御相談する用意があるという程度のことを口頭で話しました段階でございます。
  173. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 大臣が見えてから、あとはします。
  174. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) ここで暫く休憩し、午後八時より再開いたします。    午後六時五十八分休憩    ————・————    午後八時十二分開会
  175. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) ただいまから委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、沿岸漁業等振興法案を議題といたします。  質疑のおありの方は、御発言願います。
  176. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 漁業の基本的政策の目標は、国民経済の成長発展と社会生活の進歩発展に即応して漁業の自然的、経済的、社会的不利を補正するということが大前提で、その上に立ってわが国漁業の構造改革を通じて漁業生産力の発展、漁業における階層間の格差の是正をはかるということにより、漁民の所得を増大し、その生活水準が他産業従事者のそれと均衡を同じくするということの目的にあると考えます。特にその大前提となる漁業のこうむる自然的、経済的、社会的制約の不利の補正の中で、制約された時間で質問をいたすわけでありますから、特に自然的制約ということを、どうしたならその不利を補正するか、このことを最近の異常自然現象を中心として、それぞれの政府委員に質問をいたしたいと思います。  申すまでもなく、漁業のよって立つ生産基盤は漁場にあるわけであります。この漁場が、近年異常なる自然現象の発生に伴いまして大きな異変を生じつつあることは、従来の既成概念のもとに進められておるところのその実施段階に入っておる、しばしば同僚委員によってただされた漁業構造改善事業を根底からゆさぶる大きな問題を提起するものと言わざるを得ません。たとえば千葉沖ではことしの二月末から三月の初めにかけて、前年度から十度近く水温の低下したことにより、一部魚類の斃死状態が発生した事実がございます。あるいは銚子沖にサバの群が見られないという事態もまた惹起をいたしております。また北海魚であるタラが南下をしておるという異変も発生をいたしております。さらには異常冷水が生んだ悲劇として焼津方面では、この状態が長く続くならば破産状態に陥るであろうと報ぜられております。また、鹿児島ではサバ冷凍死浮上して、カツオはさっぱり姿を見せないということを現地で親しく耳にいたしております。また、先月の二十三日と二十五日には押し寄せたサンマの大群に横浜海岸は異常な風景を呈したことは、テレビでも繰り返し出ておるところでございます。この異常冷水による漁場の変貌ということについて、これから科学技術庁なり、気象庁なり、海上保安庁の水路部なり、農林省の水産庁なり、あるいは科学技術庁で掌握されておる防災科学技術センターなりで、この問題をどう対処しておるかを具体的にお尋ねをいたしたいと思います。  その前に去る六月二十六日の朝日新聞の社説に出ておることを一部引用して、具体的な質問に入りたいと思います。  朝日の二十六日の社説には「異常自然現象の究明」としておおむね次のような論調を掲げております。「一九五〇年をさかいとして地球は十年間の”暖かい地球”と別れ”寒い地球”の時代にはいったといわれる。また地球の自転速度はことしになって一日当り一万分の六秒速くなっていたことが観測され、その原因はシベリア大陸の高気圧と太平洋低気圧という気圧配置が長く続いたため、地球上の空気と海水が大量に南半球から北半球に移動したことその他二、三の要因によるものといわれる。今冬北半球を悩ました強烈な寒波もそのせいで、中緯度にある東京が、この一月平均気圧が”十万年に一回”という低さを記録したのもそのためのようである。すべてをこの説によって律するわけにはいかぬが、ここ二、三年来日本列島が次々と見舞われる、さまざまの異常自然現象も、こうした地球の変化と無関係とはいえないようである。”三八・一豪雪”に始まり、いまなお続いている太平洋、日本海南部海水の低温異変、晴天の数えるほどよりなかった四、五月の長雨と集中豪雨、そして台風の初夏上陸。さらには大被害を出した麦作に加えて稲作についても”冷害・干ばつ”の予想が出ている。この原因についても諸説があるが”東冷西暑”という言葉があるように、東日本が冷害の時は西日本は干ばつ、という年は今までにもかなり多く、ことしがこの周朝に当らねばよいがと心配されている。」。「三月以来の魚類の変調も続き、暖流に住む魚が低温で死んだり姿を消したり、寒流に住む魚が南下するといったことも依然として続いている。」。「そこでこの際、緊急に必要なことは、異常現象の原因究明とそのための調査である。」 というような社説を掲げておるわけであります。  もとよりこれは単に朝日だけの取り上げ方ではなしに、その他の日刊紙等においても、この異常自然現象をそれぞれ取り上げておる実情でございます。そこで、この異常な自然現象に政府は一体いかに対処しておるか、この調査等について、従来の調査をされたデーター並びに今後における長朝予想というものに対して、どれだけの政府における気象条件あるいは海洋、水産、地球物理などの調査研究をそれぞれのセクションで調査をされておるだけではなしに、総合的に調査をして、将来にわたりこれは対処をしなければならない重大な問題であると思います。このことなしには、漁業構造の改善もそれぞれの漁場の変貌によってある漁村はさびれ、ある漁村は意外に漁場の中心となったために、時ならぬ豊漁を呈すというようなことで、従来の漁業構造改善自体にも非常に大きな手直しをせざるを得ないことでもあり、これは漁業の今後の施策の基本にも触れる大きな問題であると考えられるわけでございます。  そこで、まず第一に、海上保安庁にお尋ねをいたしますが、海上保安庁としてはこれらの異常自然現象について、冷水の従来の異変というものを、どれだけの機能を発揮して実態調査をしておられるか。なお時間がありませんから、引き続いて伺うことは、それらの調査をもとにして、今後の長期にわたるその作業のふまえ方というものをあわせてまずお伺いをいたしたいと思います。
  177. 庄司大太郎

    説明員(庄司大太郎君) 私のほうで海洋の調査を行なっておりますのは、航海の安全といいますか、海上保安といいますか、そういう意味の基礎資料を集める意味でやっております。それでただいまのところでは、大体毎月一回の行動で海洋に出られます船が約三ばいございますが、その三ばいでもって、主として潮ノ岬から塩屋崎における黒潮の調査をおもにやっております。それでときに応じましては、南のほうもあるいは北のほうもやりますが、大体それがわれわれのせい一ぱいのところでございます。  それから現在の冷水現象についてどうわれわれ考えるかと申しますと、実は観測範囲が非常に狭い、太平洋に比べますと、われわれのやっている所は、日本の本土から約三百マイル沖ぐらいまでを毎月やっておりますので、非常に狭いので、なかなか原因まで言えませんけれども、最近、ことにこの五、六月ごろの異変をわれわれが非常に珍しい現象と思っておりますのは、非常に変動が激しいということであります。気象庁がしばらく前にやりました観測では、三陸沖の黒潮がだいぶ南に下がっていたということでありますが、われわれのほうでは、それをよく確認しておりません。まあ海洋現象的には黒潮の変動が非常にことしは大きい。この現象は、われわれのつかんでおるところでは、大体去年の八月ごろから激しくなっているような気がいたしますけれども、範囲が何さま狭いのでよくつかんでおりません。  それから将来でございますが、将来については、年に大体毎月一回のあれで観測船を動かしまして、そのほか巡視船の巡視警戒業務とともに、水温なりあるいは海流なりをはかるということをずっと続けていくつもりであります。そのほかに後ほど科学技術庁からも説明がございますけれども、飛行機を使って水温を迅速にはかるという方法を試みたいと思っております。
  178. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 私はこの委員会を通じてできるだけ詳細な資料を提出して説明を願いたいと申し上げたのですが、それは資料は何もないのですか。というのは、たとえばおたくの水路部の所属の明洋が六月十八日に実態を調査したデータを発表している。あるいは拓洋が五月十四日に異常海水の実態調査をしている。その実態調査の中から、将来の冷水の長期展望というものもまた傾向値として出ておるはずであります。そういう点をもっと納得のいくように説明をしてもらわぬと、私の質問に答えたことにはならぬ。
  179. 庄司大太郎

    説明員(庄司大太郎君) 資料はいろいろございますけれども、この資料、最近たまたま新聞紙上に出ました分は、あれはわれわれのやっております長いうちの一部でございまして、ここにもたくさんの資料があるのでございますが、将来の展望については、われわれが微力でこうなるであろうということを言うことができないのが非常に残念、といいますのは、海洋の観測の仕事は始まって約数十年、二、三十年やっておりますが、船でやる仕事でなかなか広範囲まで及びませんので、われわれの今つかんでいる現象が、まあ異常でありますけれども、これが何年ぐらいの周期で起こるものであるかどうかという、その統計資料はわれわれまだ十分につかんでおりませんので、これからの将来の見通しがこうなるであろうというふうなことは、ちょっと言いかねると思います。それでわれわれは今黒潮をおもにやっておりますので、そのほかの他海区のことについては、断片的な資料が海洋観測をやっております官庁の連絡によりまして入って参りますけれども、それをまだ十分解析してこれがこうであるというふうなことはちょっと言いかねるので、資料をもっぱら収集しているという段階であります。
  180. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 今資料を求めても質疑には間に合いませんが、私たちは漁業の将来を展望するにあたっても、この自然的な制約をどうして分析補正するかということが、国の政策の大きな眼目であると思い、その自然条件の異常なる現象というものについては、必ずしも昨今起こった異変だけではないというふうに考えざるを得ないのか、あるいはこれが全く一万年に一度の異変であるのか、そういう点を科学的に理解をいたしませんと、この実態に基づく政策というものの確立がなりがたいわけであります。特にただいま審議中の沿岸漁業等振興法案は、大臣も繰り返し同僚委員の質問に答えておるように、すでに改正され成立されておる水協法なり漁業法なりと合わせてこの三本でわが社会党が提案をしておる漁業基本法が要らないという答弁をされるにつけても、その長期にわたる漁業政策の審議の上からも、この問題はゆるがせにできない重大な課題であると考えます。海上保安庁で今集めた範囲の資料は、これはこの委員会がきょうで国会を終了するわけでありますが、その後においても委員会にはひとつ御提出を願いたい。その点を委員長から確かめておいてほしいと思います。それでは気象庁お見えでありますか。
  181. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 来ております。
  182. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 気象庁にお伺いをいたします。同じようなことであります。時間の制約がありますから質問はあまりくどく申し上げません。これは衆議院の委員会でも、質問を同僚委員がしたのでありますが、あの程度の回答では、何らこの施策を検討するに満足な御答弁ではなかったので、この委員会にはもっと納得のいく気象庁の短期あるいは長期の予報に基づくデータを中心として御説明を願うように申し上げておったのでありますが、重復を避けてなお具体的な納得のいく資料と御説明を承りたいと思います。
  183. 柴田淑次

    説明員(柴田淑次君) ただいまの御質疑に対しまして、気象庁の現状及び現在われわれが考えているところにつきまして、若干お答えを兼ねましてお話し申し上げたいと思います。  御承知のように気象庁は東京の本庁のほうに凌風、千二百トンの船がありまして、そのほかに函館と神戸と長崎にそれぞれ百五十トンないし三百五十トンの海洋観測船がございまして、大体期間は一カ月でございますが、一カ月の航海ということで年に数回観測をやっております。最近の観測といたしましては、五月から六月にかけまして海洋観測をやりました。その観測が最近でございまして、何分にもデータが非常に多いものでございますが、ここに一つ、二つのデータそれはなまのままのものですが、そのデータを持って参りました。これを印刷して配付するにはあまりに詳細なものでございますので御必要ならばこれをごらん下さいますればけっこうでございます。そういうようにいたしまして、一昨日また凌風が観測に参りました。そういうようにいたしまして特に今年は、お話しのように年度始めあるいは昨年の末と申しますか、そのころから海水の温度が低いという現象がございましたので、気象庁といたしましては、所属の観測船に対しまして、できるだけ海水温度及び海流に対して注意をするように注意しましたことはもちろんのこと、そのほかにたとえば神戸の春風という船に対しましては普通定期的に航海します航海以外に、特にその航路をはみ出しまして、この海水の低温のために観測させた次第でございます。  そういうようなデータをもちまして、現在われわれの手元にある資料から判断いたしますと、現況といたしましては、確かに例年に比べまして、海水の温度は低うございます。特に岩手県の沖上の三陸の付近は、ずっと今年の初めから今日に至るまで平年よりも二度くらい低温になっております。黒潮の流れ、御承知のように、黒潮は暖流でございますが、その黒潮の流れは現在におきましては、海上保安庁のほうもおやりになっておるようでございますけれども、どちらかといいますと、やはり例年に比べまして南のほうに下がっておるような状態でございます。ただし遠州灘と申しますか、西日本のほうの海面の海水の温度は、この春に比べまして若干上昇しておりまして、ほぼ平年くらいのところまでこぎつけておるような気がいたします。先ほど申しましたことをもう一度言うようでございますが、三陸沖は相変わらず低温になって三陸沖だけが現状といたしまして特典現象のような気がいたします。  なお暖流である黒潮の流れが、例年に比べまして蛇行、へビのように回りくねった状態で流れておるというような特徴、あるいは若干例年に比べましてその流れの変化が激しいように思われるというようなことはございます。  なお、気象庁といたしましては、全国の海洋観測所に対しまして適当なところを選出いたしまして、沿岸の海水の温度をはかっております。たとえば東北地方といたしますと八戸に測候所がございますが、八戸の測候所では八戸の沿岸の海水温度をはかっております。宮古でもはかっております。そういうようなところの沿岸の海水の温度の資料を見てみますと、これは全般的にやはり例年よりも低目のようなことになっております。  そういったのが現況でございまして、ただいまの御質問の将来の見通しということにつきましては、ただいまも海上保安庁のほうからお話がありましたように、気象庁といたしましても的確にこうなるということにつきましては、実は非常に決定打を放てないというような現況でございます。何分にも海水というものは非常に大きな慣性、イナーシャを持っておるものでございますので、一ぺんそういうふうな状態になりますと、急に前のような状態に戻らないというようなことは考えられますので、こういう状態があすあさって、あるいは一週間以内とか半月とかいうような短期間には、平年どおりになるというようなことは申し上げにくいのじゃないかというような気がいたします。  なお、気象庁におきましては海潮予報というものをやっておりまして、その海潮予報というのは主として盛夏のころの、夏のころの海潮の予報でございます。これは大体春ごろにその夏のころの海潮予報をまず始めるわけなのですが、この海潮予報によりまして考えてみましても、これからそう急には特にその三陸沿岸の海水温度というものは、急には平年のようにはなりにくいのではないかというように考えられるのでございます。ただちょっと蛇足かもしれませんが、この海潮予報というものの予報をやる根拠でございますが、これはあるいは御承知のことかと思いますが、現在のところはただ過去こういうような場合にはこういうようなことになったという過去の事実を統計的に考えまして、春こういう状態であれば、夏はこういうような状態のことが多いというまあ経験と申しますか、過去の経験から一番もっともらしいような予報を考えるわけでありまして、そういうような予報の根拠でございますので、何分にも統計的なものでございますから、百発百中というわけには現在のところまで参っておりません。なお、われわれといたしましては、もちろんこれでは満足はしておりません。その海潮予報にいたしましても、もっと根拠のある予報のやり方で予報をやりたい、将来は予報をやってみたいというように考えまして、現在大いにその勉強中でございます。大体現状から今の将来の見通しにつきましては、これくらいのものであります。
  184. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 どうも今の御答弁では、私のようなしろうとには、さっぱりわかったようなわからないような、雲をつかむような受け取り方しかできないのでありますが、現実に漁業に従事しておる関係者としては、これは重大問題なわけであります。そこで私は長期予報に対しても、もっと必要ならば予算を伴い、科学的なその根源の追及こそが、われわれの産業の発展のシンボルでありますから、そういう必要が制約されて今のような御答弁であるとするならば、ぜひ必要な予算を計上して、十分なる調査研究の機能を発揮するような積極的な取り組み方をお願いいたしたいと思います。  時間がありませんので、引き続いて農林省にお伺いをいたしますが、この異常なる自然現象は、陸ではその被害をこうむるのが農業であり、海では漁業であることはもとよりであります。きょうは沿岸関係漁業法案でありますから、この漁業にその中心を置いておるその立場から、農林省ではこの異常なる自然現象による冷海水というものにどれだけの調査をし、どれだけのデータをもって今後のまた関連する漁場に対応する積極的な方向を取り上げておるのか、その点を農林省にお伺いをいたします。
  185. 花岡資

    説明員(花岡資君) この異常冷水につきましては、本年の初めごろから、各地から報告が参っておりまして、それにつれまして私どものほうの各水産研究所所属の調査船の調査に出ます際に、特に気をつけてその冷水化の現象をつかまえるように、あるいは魚況につきまして、十分な情報を集めるように指示いたしました。それは刻々報告が参っております。それからまた、各県の水産試験場にも依頼しまして、この情報並びに観測結果などを報告してもらっております。これは刻々今のところ月二回全国的に取りまとめをいたしまして、各方面に報告いたしております。  これらを総合いたしまして申し上げますと、三月の末ごろ一番冷水現象としてはひどく現われております。犬吠岬の東に例年より十四度ぐらい低い水質が出たわけでありますが、その後四月になりましてから徐々に回復いたしまして、最近では平年に比べましてマイナス四度が三度ぐらい低いような水域が出ているようであります。そうして太平洋岸では、三月までに犬吠岬から西のほうそれから日本海岸では、能登半島から西のほうにかなり一般的に魚類の弊死あるいは浮上、弱って浮き上がる、あるいは死んで浮き上がるというような現象がかなり部分的に出ておるようでありまして、特に行動力の少ないような底魚類の被害があったようであります。その種類などは、かなり多く出ておりますが、浮き魚につきましては、比較的弊死という形で起こらずに、漁期のおくれという形で起こっております。四月を峠といたしまして、その後徐々に回復いたしまして、六月の報告によりますと、若狭湾付近、それから支那東海の北の方面に、平年より三度、四度低い水帯が残っているようでありますが、表面は大体平年に近く回復したようであります。ただ中層水にやはり多少冷水、例年より低い水帯が残っておるようであります。東北方面は三月ころまではむしろ平年か、あるいは少し高めでありましたが、その後五月、六月になりまして、南のほうの水温が回復し、平年に近づいてくるに反しまして、北のほうはかえって水温の上昇がおくれるというような現象が起きておりまして、そのために漁期のおくれもかなりきわだって出ているようであります。六月の二十一日から二十六日にかけまして行ないました東北の水産研究所の船の報告によりますと、金華山沖あたりで平年が十二、三度ぐらいでありますが、最近九度ぐらい、やはり三度ぐらいは平年より低いという報告が二、三日前にきております。しかし、そのためにかえって冷水性の魚は、平年よりも豊漁であるというような現象も出ております。ただ、そういうふうに北のほうの水帯の回復がおそいものでありますから、サンマども北上がおくれまして、それから先ほど気象庁のほうからもお話がありましたが、黒潮の流域がかなり変動するらしいのでありまして、そのために先だってのように東京湾に黒潮に押されて近海にいたサンマが東京湾に追い込まれてくるというような現象が起こっておるものと解釈されます。  こういう現象につきまして今後の見通しでございますが、先ほどからいろいろのお話し、気象庁あるいは水路部のほうからお話がありましたように、非常に地球的な北半球の気圧の配置状況の異常というふうなことから起こっているらしいということと、それから黒潮が大体九年ぐらいの周期でもって勢力の消長の現象が起こっているというふうに言われております。ちょうど本年がその勢力の強い年に当たっているわけであります。それから黒潮のほうは四、五年の周期でやはり北変あるいは南変するというような周期があるといわれておりますが、本年はやはり南変する事に当たっておりますので、そういうことが重なって、こういうふうに非常に異常な現象が起こったのであるということが考えられます。  そういうことを今後十分あらかじめ予知するというようなことをやる必要があるわけでございますが、平生の十分な観測網をもちましてそれを常に変動をキャァチしていくということが必要であると思いますので、本年は、この既定予算によりましての調査に出かけます際には、もちろん観測を十分いたしましてその変化を観察いたしますが、同時に、今後は科学技術庁、それから気象庁水路部のほうと協力いたしまして、全国的に月一回一斉観測をして、その変動を把握するということと、それから魚況につきましては、全国的に主要な漁場につきまして漁船を四十隻ばかり依頼いたしまして、その魚況を報告してもらうということでそれを分析して今後に資していきたいというふうに考えております。特に魚況につきましては、斃死現象もありましたし、それから浮魚につきましては漁期のおくれという形で出ておりまして、最近になりますと、サバにいたしましても、あるいはマグロ類その他にいたしましても、比較的例年に近い漁獲にまで追いついてきたようでございますが、しかし今までの異常現象によりまして産卵とか、あるいは稚魚の育成、あるいは回遊路の変更、そういうことで今後の資源の保存にどういう影響があるかということは、十分に観察していかなくちゃいけないと思います。そういう面につきまして十分なる体制を整えてやっていきたいと思っております。
  186. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 今まで概括を伺っただけでも、気象なり、海洋なり、水産なり、地球物理なり、それぞれの部門で調査を進めておることは一応わかるのでありますが、これらがどうも受け取るほうとしては、各官庁がそれぞれの分野についてやることはもとよりでありましょうけれども、そうがどうもセリショナリズムのきらいがあるのではないかという感じがいたすのであります。こういう大きな問題に対しては、もっとそれらの官庁の持っておる機能を総合的に発揮して、これらの事態に対処する正しい方向づけというものを示していかなければならないような非常に重大な段階に逢着しておると思います。ただいま提出をされました研究調査局のこの資料を見ましても、明らかにこれらの異変による魚況の変調というものを指摘し、「このような現象が今年のみにとどまらず、今後もくり返えして生じるような場合には、日本の漁業構造を大きく転換させることとなる恐れもある。」というふうにこの調査研究の趣旨にうたっておるわけでありまして、私もそういうおそれを抱くので、長期展望等は一体どうかということまで触れてお尋ねをいたしたわけでございます。  そこで最後に科学技術庁にお尋ねをいたしますが、やっと店開きをした例の防災基本計画、これにもうたってありますように、これを進めるためには、相互の緊密な連係のもとに研究の提携をしていくというふうにうたっておりますように、これらを総括する部門としては科学技術庁が担当するものだろうと私は理解するのでありますが、そういう立場に立ってこの資料等を通じて見ても、非常にその趣旨なり研究の概要なりというものの中身は、きわめてどうもこういう調査に立ち向こう内容としては、お粗末過ぎるのではないかという感じを受けるわけであります。特にことしの十月ですか、ユネスコの肝いりもあって、東南アジ地域の海洋専門家会議というものも開かれて、そうしてこれが東京で開かれるということでありますが、これは日本近海のこの黒潮調査を各国協力のもとで調査をやろうという準備会議であるわけでありますが、こうしたような、日本だけではなしに、各国の肝いりでこういうことを進める上からいっても、よほどわが国としてはこのことに対して従来のマンネリズムの上に、ただ資料等を集め、会議を月一ぺん持つというような、そういうことではなしに、もっと抜本的にこの黒潮の海洋の調査というものを学術的にもその研究を進めて、この調査研究の趣旨にあるようなおそれのある事態に対処して安心して漁業に従事することができるような、そういう基本的な姿勢が必要だと思うのであります。科学技術庁としては、今まで御答弁があった気象庁なり、海上保安庁なり、あるいは農林省なりのそれぞれのセクションでやっておる気象、海洋、水産という、そういう調査をふまえて、どういう姿勢でこれらの事態をもっと科学的に究明し、将来にわたる展望を遂げて、今後の日本の漁業構造というものに、これは至大な関係のある立場から質問いたすのでありますが、そういうことにも適宜対処でき得るような、そういう研究の成果を上げる、その内容というようなものをお聞かせを願いたいと思います。
  187. 芥川輝孝

    政府委員(芥川輝孝君) 科学技術庁におきましては、科学技術の全般にわたりまして、これを総合的に推進いたしまして、国民経済の進展に寄与することを任務としておるわけでございます。そのやり方といたしましては、各省庁の持っておる試験研究機関の研究を促進すると、そういう形をとっておるわけでございますが、ただ、いま問題になっております異常冷水の問題につきましては、特に急速に処理すべき問題だという考えで、さらにこれの問題の基本は広範囲の実態調査をいたしまして、その実態を迅速につかむことにある。そういうふうに考えまして、そこで、私のほうに持っておりまする特別研究促進調整費、これから支出をいたしまして、お手元に資料として提出したような調査研究を展開しておるわけでございますが、その内容を簡単に申し上げますと、水産庁、気象庁、海上保安庁等で持っております調査船、それから各県の水産研究所の持っておるやはり調査船、それからさらに一般の漁船も動員いたしまして、これの総合的な調査をする、そういうことを目的としております。そこで、総合研究課題といたしましては、日本近海における異常冷水の調査研究、こういうふうな総合研究テーマをまず設定いたしたわけでざごいます。そこで、連絡体制といたしましては、科学技術庁に異常冷水研究連絡会というのを作りまして、その促進をはかって参るつもりでおります。  内容は、二枚目に詳細出ておりますが、まず考え方といたしまして、沖合いと沿岸というふうに考えまして、さらにそれに新技術をできるだけ取り入れて参りたいというふうに考えたわけでございまして、この内容を一々申し上げることは省略さしていただきたいと思いますが、異常冷水現象の究明というのを第一項に起こしまして、ただいまいわれておりまする冷水海の実態等を究明したい。その場合には、そこにも載せておりますが、国立大学の能力をもこれを動員したいというふうに考えておるわけでございます。また沿岸の状況につきましては、県の水産試験所なり、また漁船を三百二十隻ほど協力を求めまして、その漁船による資料等を、やはり先ほど申し上げたように、国立試験研究機関のほかに大学にも協力願いましてこれを分析して参ろう。それから新技術と申しましたのは、航空機によりまして表面温度を迅速に計って参りたいというのと、それから水温、気温等の自動記録をいたしまする海洋観測塔を試作いたしまして、これは今後長期にその観測船をこれに与えまして、長期の観測を容易ならしめたいというふうに考えておるわけでございます。  以上申し上げたような総合テーマを私のほうでこれを取りまとめまして、今後の研究推進にあたりまして、まず第一段として実態を正確に把握する、次に施策がそれから出るという考えでございまして、ただいまこの日付のとおり七月三日にこの金の支出を決定した次第でございます。
  188. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 それでは、どうも私のいろいろな質問についてたくさん残っておりますので、この異常冷水現象についての質問はこれで打ち切ります。大臣が見えておりますので、前の委員の大臣に対する質問の都合もありますので、一応私のこの問題の質問は打ち切っておきます。
  189. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 日韓会談が年内に結ばれるだろう、非常に急いでいるということが報ぜられておりまして、大体請求権問題については、あと技術的な問題だけである。問題はこの漁業協定にかかっているというようにいわれているわけですが、実際まあそういう方向であろうと思うのですが、そこで西日本の漁業界、特に九州の沿岸漁業者にとっては、非常に複雑な感じを持ってこの成り行きについて見守っているわけです。特に昨日第二十八回ですか、日韓漁業専門家会議が行なわれて、韓国から漁業の第二次案が示された。これについては先ほど和田漁政部長にお聞きいたしました。大体新聞に出ているとおりだ、内容はこういうことであります。その内容というのは、韓国の漁業専管水域は韓国沿岸から四十海里とする。その外側に突堤の日韓共同規制水域を設ける。三点は、魚族資源の調査と日韓間の漁業紛争解決のため共同委員会を設ける.大体こういうように報ぜられているわけです。そのようでございますか。その三点をお伺いいたします。
  190. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) 私の報告を受けておりますのも、大体今御指摘になったようなことであるのと同様なことでございます。
  191. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 さきに池田総理もたしか予算委員会か何かだったと思いますが、漁業協定が成立しないと、日韓会談はすべて見送らざるを得ないというように発言されたと記憶しております。そうしますと、非常に重要な問題だと思うのです。農林大臣は衆議院の農林水産委員会でお述べになっている中で、この李ライン撤廃ということが、これはまあわが国の考え方であるし、大臣もその李ライン撤廃ということでいくのだということを、何度も繰り返しておっしゃっているようであります。それについては、われわれも全く賛成でありますが、しかし李ラインの撤廃といっても、一海里切っても撤廃だし、二海里切っても撤廃だ。そうすると、どこどこにその基本を置いてやっているか、こういう点をひとつ明らかにしてもらいたい、こう思います。
  192. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) ただいまわが方から韓国側に提案をいたしておりますのは、御承知のとおり韓国の沿岸から十二海里を韓国の領海なりあるいは韓国の漁業専管区域にする、こういう方針のもとに提案をいたしている次第であります。
  193. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうしますと、これは一九六〇年ですか、ジュネーブの国際海洋法会議で論議されましたあの大体十二海里と申しますか、その採択はされなかったけれども、その十二海里というものを原則として主張する、こういうわけでございますか。十二海里というものを、そういう国際的な一つの常識といいますか、そういうものを基本にして主張されているということなんですか。
  194. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) そういうわけでございます。それを標準といたしまして交渉をいたしたい、こう考えております。
  195. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうしますと、この十二海里はもう絶対に日本としては譲れないんだ、こういう固い決心であるのか、あるいはまたこの前、日本とアメリカ、カナダの漁業問題については相手のあることであるから、まだ交渉中であるからわからぬというようなお話があったのですが、その十二海里というのは、あくまでも日本としてはこの線だという、最後まで強い決意で臨まれる十二海里ですか。
  196. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) これは外交交渉のことでございますから、それらの日本側の態度につきまして、今ここで明らかに申し上げることは差し控えなければならぬと思うのでありますが、一応それを標準といたしまして交渉を進めておる次第であります。さきに御指摘になりましたように、これは国際的な一つの原則には、まだなっておりません。なっておりませんが、大体さきにイギリスにおいてもこういったようなことを建前として紛争解決をしたというような事例もございますので、私どももそれにならってやりたい、こういうように考えております。
  197. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 さきに行なわれました日米加漁業条約の問題のときも、この抑止原則を重視して、わが国から政府代表として行かれた伊東事務次官も非常にがんばられたと私は思うわけです。ところが、先日帰ってこられて、新聞の報道でございますが、こういうことを帰国されて言われているわけですね。その内容は、日本とアメリカ、カナダ側の主張が平行線のまま九月の東京交渉に持ち越されたが、東京交渉も非常にむずかしいものになるだろう、日本の新条約案は近くその骨子を発表して国民の批判を仰ぎたい、こういうように語ったと伝えられておるのですが、そのとおりでございましょうか。そういうことを大臣はお聞きになったでしょうか。
  198. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) そういう報告を受けております。
  199. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうすると、この問題は韓国の漁業協定について非常な影響があると私は思うのですが、その骨子を発表して国民の批判を仰ぎたいというこの勇気は、私は非常に水産庁として、農林省としてりっぱな態度だと思うのであります。そこで、そういう勇気があるならば、もっと強いはっきりした日韓会談に向かう日本の漁業協定に対する態度というものを明らかにすべきだと思うのですが、大臣の所見を伺いたいと思います。
  200. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) これは先ほど申しましたとおりに、李ラインはこれは当初から当方においては認めておらないことであります。そういうようなラインは認めない、そうしまして新たなる漁業交渉をやりたい、その漁業交渉に臨む態度といたしましては、先ほど申しましたとおり韓国沿岸から十二海里のところを韓国の漁業専管の水域ということにいたしまして、これを標準として交渉を進めていきたい、こう考えておる次第でございます。
  201. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それではさきに戻りますがね。日本とアメリカ、カナダとのこの漁業協定の新条約ですね。この骨子を発表したいという、その骨子はいつごろ発表なさるお考えでしょう。
  202. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) これはすでに伊東代表がアメリカ側及びカナダ側にも話をいたしまして、その骨子の発表はするという了解を得ておりますので、近く発表いたしたい、こう考えております。
  203. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 韓国が勝手に李ラインと称するものを作っておる、日本は承認していないと思いますけれども。しかし、この第一次案は、李ラインにほぼ匹敵するようなものを出してきた。今度四十海里、こういうのですが、十二海里と四十海里というのは相当の幅があるようですが、これを今後いろいろな形で双方から折衝が行なわれると思いますが、その中で、そのほかに外側に共同規制の水域を設けたい、こういうことを出しておるようでありますが、そういうものについて応ずるというお考えがあるのかないのか、承っておきたいと思います。
  204. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) いろいろな細目につきまして、一々私は目下交渉中に返答するということは、非常にむずかしいことであると思うのでありますからいましばらくそれはごかんべんをいただきたいと思います。
  205. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 どうもごかんべんを願いたいと言われると、何も言えなくなりますけれども、しかし韓国のあれは何といいますか、裴駐日大使が二日にお帰りになり、韓国の空港では記者会見などでいろいろ御発表になっておりますね。そういう中で共同規制の問題であるとか、漁業技術協定の問題とか、そういういろいろなことが報ぜられておるわけです。そういうことは漁民にはひしひしとこたえてくるわけです。一体どういうようになるだろうという心配が先に立つわけです。日本はどこまで腹をかまえているのだろうという、そういう考え方が非常に多いわけなのですよ。しかし、こちらとしては相手側があることだし、なかなかはっきりしたことは言えない。こういうことになると、どうも押されるのではないか、どんどん押して押されるのではないか、こういう心配を持っているのですがね。大臣、そういう点をもっと明らかにできないものでしょうか。
  206. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) これは目下交渉中のことでございますから、その内容についていろいろ申し上げることは、実際日本の国益のために私は適当でないと思うのです。押されるか押されぬかという御心配のようでありますが、私はこれは相当強力なのです。
  207. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 もう一つ問題でありますことは、水域の問題と、あるは技術協定という問題でございますね。この技術協定というのは、どういうことが考えられるでしょうか。
  208. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) これはいろいろなことがあるわけでありますが、どうもそれ、一々今申し上げていいかどうか、これはやはりいましばらく御猶予願ったほうがいいと思います。
  209. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それではそうおっしゃられると、平行線といいますか、私が聞いてもそういうことになりますから、これだけはひとつ大臣によくお考えいただきたいと思うのです。共同規制水域というのがかりにできて、そこでどういうような漁業が行なわれるか、それについては沿岸漁民というのは非常に心配をしているというか問題を持っているわけなんです。特に伝え聞くところによると、韓国と日本の合弁会社等を作って、そこでやるのじゃないか、こういうのが沿岸漁業に対して非常に脅威を与える。そういうことが流れておりますから脅威を与えている、こういう面もあるわけなんです。そういう点は強くひとつ考えていっていただかないと、韓国の漁民だけでなくて、日本の漁民が困るわけなんですから、その点ひとつ十分考えていたできたい。
  210. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) これはいかなる限度において日本側が韓国側に漁業協力をするかという問題であると思うのであります。これは申すまでもなく、この水域の決定は、私は日本国民の納得のできるような水域の決定をいたさなければならぬと思うのでありますが、さればといって、日本だけがよければいいというわけにも参りません。韓国側におきましては、韓国の漁民の生活について心配があることであり、日本の漁民が心配をいたしておると同様に、向こうでも非常な心配をいたしておるそうでありますから、やはりこれはこちらだけがよければいいというようなことでは、なかなか私は協定は妥結に至らないと思うのであります。やはり向こうの漁民も納得するような線を考えなければならぬ。それがためには、許される限度におきましては漁業の協力もやらなければならぬと、私は考えておるのでありますが、具体的に今のお話しのような合弁会社を作ってどうとかするというような、そういうことは、まだ話に全然出ておりませんです。
  211. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 最後ですけれども、技術に対して協力をするというようなことがいろいろ考えられると思うのですが、特に魚種が同じなんですね。それからまたノリなどというのは、ほとんど韓国人は食べないのですね。ほとんど日本向けに作っているのじゃないかというふうに思われるのですが、最近は一億枚ですか、制限がございまして、日本のノリ業者も一応落ちついたような格好になっているのですが、しかし一枚大体三円六十銭ですか、そうすると日本で作っているノリは大体十円から十三円くらいですね。そうするとずっと安いのです。また日本もいろいろと技術協力をして、今のノリの技術を教えるということになれば、韓国の漁民も生産が高まって非常によろしいと、大臣のお考えのようにいけばなるわけですね。そうすると、それを輸出するというのなら、結局わが国が買うというようになるかもしれない、どこかほかのところへ行くかもしれないが、とにかくそういう公算が強いわけですね。そうすると日本の漁民を圧迫していくという結果になりかねない。これは一例でありますけれども、そういうことがあると思うのですが、そういうような点について、やはりまだ疑問が残っておるわけなんです。そういう点について十分な配慮を、配慮といいますか、そういう点については十分考えて進めてもらいたい、こういうふうに思います。
  212. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) いろいろ問題が具体的になって参りますと、あるだろうと思いますが、むろん十分に配慮をいたしてきめていかなければならぬと考えております。
  213. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 それでは、大臣に五、六点ほどお伺いいたしますが、順序不同で、お許しを願いますが、価格安定について、まずお伺いします。  従来も、この委員会で同僚委員からこの問題についても触れて質問がありましたが、なるべく重複を避けてお尋ねをいたします。政府から提出された資料を見ますと、三十年の漁獲高は四百九十万トン、七年後の三十六年では六百七十一万トンと資料に出ております。大体パーセンテージでは、この七年間に漁獲高は全体で四割増し、ところが、この総漁獲高の中で、三十年の四百九十万トンの中で、多獲性大衆魚は百六十四万トン、それが三十六年では百八十八万トン、総漁獲高が四〇%も増加しているのに、多獲性大衆魚はわずか一四%の増加しか見ていない。これは一体どこに原因があるか、大臣の御説明をまずお伺いしたい。
  214. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) これは一つは国民の所得が急激に増しまして、国民生活が非常に向上いたしまして、食料に支払う支出が非常に増大しておりますことは、御承知のとおりでありますが、質的に見ますというと、やはり魚について申しましても、大衆魚需要がだんだん従来のごとく伸びないで、むしろ高級品の需要が伸びている。そういう関係上漁獲のほうもなるべくこの高級魚のほうを取るという方向に私はいっているのじゃないか、こういうふうに考えております。
  215. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 大臣の推定は、はなはだどうも奇抜な推定であって、食生活が高くなったから、国民は大衆魚をあまり食わなくなって、高級魚を食うから、自然大衆魚の水揚げも少ない、これはどう考えてもピントのはずれた答弁であると言わざるを得ない。確かにあなたから見た国民の食生活は向上しているでありましょうが、なお、依然として、毎日の生計費に事欠く零細な大衆があることを忘れた答弁であります。私は、むしろそういう答弁に憤りを感じます。大衆魚が、当然漁獲資源というものが年々漁場の変貌あるいは資源の造成というものを怠ってきている結果、その総漁獲高に占める割合が全体の比率に対比して非常に低いものであり、このことが零細漁民の生計をさらに困窮に陥れておることであって、そういう一つの感覚でこれらの行政的な最高指導の立場に立ってやられたのでは、国民大衆はたまったものじゃないと思います。もっとその大衆魚の漁獲高に占める軽減の方向というもの、その魚族資源なり、それらの培養に対する施策の至らなかったことの反省にこれはして、今度の法律においてももっと内容のある具体的な予算の裏づけ等も必要であるということが、この法案の審議のきなかに取り上げられておる中心課題であるというのに、今のお答えは何たるすれ違いの答弁でありますか。もうこれ以上このことについてあなたと質疑をいたしません。  引き続いて御質問いたします。この大衆魚は、御承知のように、北海道、東北地方、九州方面等水揚げ地点における受け入れ態勢の不十分な漁場に片寄って、しかも短期間に集中的に漁獲される特徴を持っております。したがって、こうした多獲性大衆魚は、全国的にはその供給は必ずしも需要を上回っておらないにもかかわらず、地域的あるいは時期的にはなはだしい過剰生産の様相を呈しておるのであります。したがって、価格は暴落し、せっかく大量の漁獲を上げながらも、漁業者の所得はかえって大漁貧乏に悩まされておる。こういうのが沿岸漁民の実態であります。多獲性大衆魚中心としてなりわいを立てている零細漁民のこれは実態であります。で、このような場合でも、これらの消費者価格生産地における大漁貧乏の嘆きをよそにして、その低落価格がそのまま小売価格に反映しないのが従来のこれは通例であります。ここに水産物の流通価格政策に従来実施されてきた大きな欠陥があると指摘せざるを得ません。でないとしたならば、この多獲性大衆魚に対するその価格なり流通なりについて、どういう施策を講じてこられたか、まずそのとった施策の経過を大臣からお伺いをいたしたい。
  216. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) 先ほど私の答弁について若干私の言い方が悪かったかもしれませんが、誤解があってははなはだ遺憾でありますから念のために申し上げますと、御指摘のとおりに、大衆魚の漁獲のふえ方の率が全体の漁獲高に比べて少ない、全体の漁獲高が四割であるのに、片一方は二割に満たないということであります。何もこれを私ども大衆魚をほうっておるわけでも何でもないのでありまして、実際の問題として遠洋漁業が非常に進出をいたしまして、そうして遠洋における漁獲が非常に多くなった、こういうふうに申し上げれば、まあ同じに事を言ったつもりなんでありますが、そういうことであります。  それからただいまの御質疑の大衆魚の漁獲をいたしまして、その価格の問題でありますが、私どもは御承知のとおりにこの価格の安定をはかりたいというので、生産地に冷蔵庫を設ける、あるいは冷凍貨車を年々建造をいたしまして、大市場に早くこれを持ち込む、あるいはまた小市場におきましても、大冷蔵庫を三十八年度から設ける、こういうようなことで、できるだけのこの価格を安定せしめるための方策を講じて今日まで参っている次第であります。  それから流通機構についての御指摘がございましたが、これは全く中央卸売市場、それから中央卸売市場の施設の面、それから取引の面、さらには機構の面から、さらに進みましては、小売の状態というようなものを見て、御指摘のように非常に遺憾の点も私は少なくないと思うのであります。そこでこれらの点について改善をいたしたいというので、目下検討をいたしているわけでありますが、これも近く成案を得まして実施に移したいというふうに考えております。
  217. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 まず、流通機構についてもう少し具体的にお尋ねいたしますが、確かに今お話しの項目は、予算で出ておりますが、それも具体的に内容を見ますと、生産地の冷蔵庫は二カ所しか見ていない、それから冷蔵自動車は十台しか設置助成を見ていない、それから冷蔵運搬船は三隻の用船料に対する助成継続しか見ていない。大消費地の東京、大阪に一万五千トンの冷蔵能力の冷蔵庫を一カ所ずつしか設けていない。抽象的に大冷蔵庫と称し、いろいろな項目を並べましたけれども、具体的な施策として見られる予算にはきわめてどうも、この今問題になっている特に多獲性大衆魚価格安定に対する、それらの流通における設備に対する政府の予算的措置は、非常に零細過ぎると思うのであります。これで十分だとお思いですか。
  218. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) 決して私ども満足しているわけではございませんが、さらに私どもはできるだけこれは努力をしてその拡充をいたしたいと考えておりますが、現在までの内容につきましてやや詳細にひとつ政府委員から御答弁いたさせます。
  219. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 時間がないからいいです。それでは、そういう具体的なスローガンは非常にけっこうだが、予算は実態の要請には十分の一にも足りない、きわめて微々たるものである。これではせっかくの流通改善、そういう調整の機能というものは、二階から目薬である、貧弱な内容であるということだけは数字がこれを証明しているので大臣に再確認をしていただきたい。  第二に流通機構の改善について内容に立ち入ってお伺いいたしますが、せりの問題、仲買人の問題、卸売市場機構の問題、手数料の問題、それについて大臣はいかなる具体的な施策をもって最終的結論に持ち込もうとされるか。所管大臣の決意のほどを具体的に項目別にお伺いしておきたいと思います。
  220. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) せりの問題も、これはやはり設備から整備をいたしていかなければならぬと思います。これらの設備改善をいたしまして、公正にせりが行なわれるように持っていきたい、こう考えております。それから仲買人も現在のところ市場によりましては数が多過ぎます。したがって、やはり仲買人もこれはある程度数を減らさなければならぬと考えているのであります。さらに、手数料の問題でありますが、手数料の問題も、これはできるだけ圧縮をして参りたい、こういうふうに考えております。
  221. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 まあこれ以上この問題についてはお伺いをいたしません。  次に、価格そのものについてお伺いをいたしたいのであります。現在は従来この委員会で御答弁がありましたように、結局この三十八通常国会で成立した魚価安定基金法とか、あるいは漁業生産調整組合法等の中で、そのサンマかすなり、あるいはスルメ等に限って価格調整をするという内容であると了解をいたしておるのでありますが、こういうことでは、前提に申し上げた多獲性大衆魚価格安定の措置にはほど遠い。たとえばこのサンマにいたしましても、三陸でこれを水揚げいたしましてそれぞれ現地の冷蔵庫に保管、管理をし、その金利、倉敷等に対しても非常な負担を感じ、しかもそれがさらに倉出しをした場合には非常な安値で、依然としてこれらの機能が十分生産者のふところまで行き届かなかった幾多の事例もあるわけであります。で、政府から出されましたこの多獲性大衆魚価格の変動でありますが、出された資料は卸売価格で出ておりますので、もっとこれを突っ込んでお伺いをいたしますが、これは大臣に伺う前に漁政部長に伺いますが、この生産地の漁業者の手取り価格、いわゆる生産者の手取り価格とそれから消費地におけるその小売価格、こういうものの開差はどうなっておる、これをひとまずお伺いをいたします。
  222. 和田正明

    政府委員和田正明君) 魚によりましていろいろ違いますが……
  223. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 総括でいいです。
  224. 和田正明

    政府委員和田正明君) まあ概括して申しまして、消費地の小売価格が産地から二倍ないし三倍ぐらいのところでございます。
  225. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 私はなぜ貴重な時間に、大臣に出席を求めていながら部長に聞いているかということは、二倍ないし三倍とは何ですか一体。二倍と三倍は大違いですよ。しかもあなたが出された資料自体は生産地と大都市の卸資価格ですでに二割二分一厘の開差を示しておる。小売価格生産者の手取り価格が二倍ないし三倍とは何ですか。もっと具体的に答弁して下さい。
  226. 和田正明

    政府委員和田正明君) 魚によって違うということを申し上げましたら、概括でということで……
  227. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 いや、この概括表に基づいて答弁して下さい。この資料の、いいですか、水産庁が出した沿岸漁業振興法案関係資料その一です。その一の十七ページに、多獲性大衆魚の漁獲総数が出ておる。それの生産者手取り価格消費地の小売価格を聞いておる。
  228. 和田正明

    政府委員和田正明君) ここに載せてありますような多獲性大衆魚につきましては、御承知のように単価が低いという関係がございますので、やはり単位あたりと申しますと、一キログラム当たりの手数料というのがいろいろな面で割合多くかかります。したがって生産地卸価格と、六大都市の卸売価格と、大体ここにございますような格差があるわけでございますが、産地における価格はこの表に対応いたしまして、たとえばサンマで申しますと、三十六年でございますと、生産地の価格がこの表で平均二十二円というふうに出ておりますが、そのときの生産者の手取りの平均は十八円であります。
  229. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 そのサンマ、スルメイカ、アジサバ、マイワシ、ウルメイワシ別に聞いているのじゃなくて、時間の制約があるから、それらをあなたは総括した資料を出しておるから、総括の資料で生産地の卸が四十七円であり、六大都市の卸が百四円であると、三十六年度の数字に出しておる。卸と卸の比較はわれわれのこれはあまり必要とする資料じゃないので、現地の魚価が、その水揚で得た取得価格が幾らで、消費地の六大都市の多獲性大衆魚の一キログラム当たりの三十六年の小売消費者価格は幾らであるかということを聞いておる。
  230. 和田正明

    政府委員和田正明君) この資料の魚獲総数というのは、多獲性大衆魚だけではございませんで、整理をいたしたわけでございますが、ちょっと今資料を調べましてすぐお答えをいたします。
  231. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 審議に協力する意味でその資料を待つ間に関連して大臣にお伺いをいたしますが、私は三陸の魚場の実態から見て、この魚獲の手取り価格と、大都市の消費者価格との開きは少なくとも五倍以上の開きがあると想定をします。資料をさらに見せていただいて、誤りがあれば私の認識を訂正いたしますが、きわめてその開きが多過ぎる、先ほども言いましたように、この時期的に、地域的に集中している多獲性大衆魚の特徴としては、産地安の消費地高という傾向を従来の価格がたどっておる。そういう実態の中から、もしも沿岸のこの中小漁業あるいはそれに従事する人たちの所得を確保しようとするならば、少なくともこれらの価格については従来のわずか基金に対して政府が八千万円程度の出資をしてお茶を濁すというようなことではなく、もっと抜本的なこれらの多獲性大衆魚価格安定のための措置を講ずる必要があると思います。そういうことなしには、この提案された沿岸漁業等振興法案は、これは期待した漁民はその実態を物理的にだんだんに知るに従って、抱いたバラ色の夢がこれは憤りに転化すると思います。したがって、これら法案を内容として、今後具体的な施策を講ずるにあたって、この多獲性大衆魚の大きな価格の変動、また産地と消費地における開きを解消するための流通機構の合理化、いろいろ積極的に打っていかなければならない手段はあるわけでありますが、特に価格そのものに対して抜本的にこれらの価格の安定をはかるということが、私は絶対的に必要だと考えるわけであります。その点について大臣はどうお考えですか。
  232. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) 御指摘のとおりに、魚価特に大衆魚価格安定をはかるということは、非常に必要なことでありまして、そのためには出荷の調整も必要であります、あるいはまた加工施設も必要であります。したがって魚油製造の施設でありますとか、そういうものも産地にこれは作っていかなければならぬ。さらにお話しの魚価安定基金の拡充というようなことも、私は必要であると思うのであります。これらの点につきましては、さらにさらに努力いたして参りたいと、こういうふうに考えております。
  233. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 安定基金の政府出資を拡大する、さらにさらに努力をするというその努力の目標は、具体的にはどういうことで、どれだけの安定基金を政府出資をし、どれだけの根拠で一体産地の生産価格を指示するというお考えでございますか。その点をもっと具体的にお述べを願いたい。
  234. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) これは魚価安定基金と申しましても、具体的にこれはなまものでありますから、どういうふうにこれをやるかということが、実は非常な問題であります。昨年も私はこの問題についてはいろいろ検討をいたしたのでありますが、どうも自信のある具体的な案を得ることができなかったので、現状のような状況になっておるわけでありまして、具体的にどういうふうになまものを扱ってやるかということを、まず検討いたさなければならないと思うのでありまして、その具体的な方法が出ますれば、おのずから金額はどれだけ要るかということが出てくると、こう考えておるのであります。
  235. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 どうもそらぞらしい答弁で、はなはだどうも誠意を欠く答弁だと思うのです。大臣は社会党から提案しておりますところの水産物価格等に関する安定の法案を理解されておりますか、どうですか。
  236. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) 十分理解をしておるということは申し上げかねますけれども、いろいろ検討はいたしておるのでありますが、技術的にもいろいろの困難な点もあると考えておるわけでございます。
  237. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 私は、大臣はまたぞろそらぞらしい答弁をしておることを遺憾に思います。少なくともわれわれ社会党は、これが最もいい価格の安定の施策であるとして政策を掲げて政府に対して対決を迫っておるわけであります。それだけ私たちがあらゆる努力を払って提案をしておる法律のその内容すら御存じなしに、基金をふやすとか、だんだんに努力するとか、そういう答弁では、私は非常に遺憾だと思うのであります。われわれ社会党が提案しておるこれらの水産物価格安定に対する法律案、もしもいけない点があったらそれを直して、そうして最もいいそれらの対策を具体的に施策に表わすのが、政府のとるべき態度だと思うのであります。時間がないから、この問題について私は時間をさくことを非常に措しみますが、あなたがおっしゃったようにこれは容易な道ではありません。しかし不可能なことではないのであります。社会党が提案しておるこの水産物の多獲性大衆魚価格安定は、それぞれの組合で水揚げをして、予想された平均水揚高を越えない範囲で政府が指示する価格を下回った場合は、その下回った価格を補給するという、その基本的な構想に基づいて提案をいたしておるのであります。これは決してやろうとすればできないものではない。やる気がないだけのことであります。あなたはそういう内容も十分知悉しないで、そうしてしゃにむに今のようなおざなりな価格政策を内容とする沿岸漁業振興法案、これを押し通そうとすることは、不勉強もはなはだしいし、ふまじめもはなはだしいと言わざるを得ない。基本法についても同様であります。これはいずれ項を改めて質問いたします。もっとまじめにわれわれの政策の那辺にあるかを十分検討し、吟味をし、その中で取るべきものは取り、捨つべきものは捨てて、初めてこれは政府の客観的な態度であると思う。横をちょっと向いて聞かなければわからぬような、そんな耳打ちしたくらいでわれわれの心血を注いだ法案の内容がわかるはずはないのであります。そういう内容がこの法案には出ていない。そこで、私たちはこの法案に対しては徹頭徹尾批判的な立場をとらざるを得ない、こういうことであります。一番大事な点であります。だから、そこまではやり得ないとしても、どういう今の考え方を具体的にお進めになるのか。たとえば基金制度を拡充するならば、三十九年度は沿岸漁業振興法案がもしも通過するとしたならば、これだけの価格安定のための政府出資を大臣としては大蔵大臣と折衝してもぜひとも確保する用意がある、それぐらいは示さぬと、この法案が泣くと思うのですが、もっと具体的にひとつお答えを願いたいと思います。
  238. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) 価格政策をさらに推進をしてやらなければならぬということは、今申し上げておるとおりでありますが、今その具体的な内容をこの法案と同時に示せといわれても、これはちょっとむずかしいことであると思うのであります。今の価格政策を実行するということが、この沿振法の条項に入っておりましても、これはその大方針をきめられたものであって、その具体的のものはこれから十分に検討をいたして、さらに一歩々々進んでいかなければならぬと、こういうふうに考えておるわけであります。
  239. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 私はそれとは逆じゃないかと思うのです。少なくともこの法案を通したからには、かくかくの施策を用意しておる、だからこの法案は内容の充実したものだというふうにやるべきものじゃないですか。法案が通ったらそれから考えるというのは、何を考えるかわからぬじゃないですか、今の答弁では。少なくともこの法案が通ったならば、価格に対しては自分の責任でこれだけの施策は国会において約束をするというぐらいなことがなければ、大衆はこれをどう受け取りますか。山吹法じゃないですか。もっと価格安定の目安を大臣の責任において明確に答弁をしていただきたい。
  240. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) これは現在やっております価格安定の諸施策をさらに充実、推進をする、こういうふうに考えておるわけであります。
  241. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 どうもそれでは国民は納得しないということだけははっきりと銘記していただきたい。そんな抽象的なことでは、国民は納得をしません。もう少し誠意のある、内容のある答弁をして、初めてこの法案が生きる。今のような答弁なら、依然として私たちは、これは山吹法と言わざるを得ない。これだけははっきり申し上げておきます。それから、時間もありませんので、もう大臣とこういうナマズ応答をしてもしようがないですから、一つだけお伺いをいたします。私は、この沿岸漁業等振興法案は、沿岸漁民の中小業者、そういうものを建前として持っておるということでありますけれども、しかし、これは衆議院の委員会で、答弁にも繰り返されておるように、第一条から第七条は、これは憲章法的な章条で貫かれておる。第八条から実体法に入っておる。したがって、大臣も、この法律が通れば、かねて出ておる漁業法なり、水協法なりとあわせて、一体となって、社会党が提案しておる漁業基本法案なり、今言った水産物価格安定法案なり、あるいは水産業改良助長法案なり、沿岸漁業振興法案なりにこたえるものであるという御答弁があったから、ここで私はあらためてお伺いをいたすのでありますが、何としても、この沿岸漁業の零細な人たちを守るというためには、大資本漁業の不当行動というものを規制するという中で、沿岸漁業振興がはかられなければ、これはしり抜け法であります。そういう点を……、もしもこれ以外に、政府としては恒久的な、憲章法的な基本法をお出しにならないとあなたが言うておる限り、今の自民党内閣が続く限りは出さぬでありましょう。われわれは、あくまでも漁業基本法案を掲げて、政府漁業政策と対決いたします。そういう意味において、この掲げられた沿岸漁業等振興法案は、憲章法的なものとしては、まことに片寄った取り上げ方であります。大資本漁業規制を何らすることなく、沿岸漁業振興というものは期せられない。そういう点を、この法案の中に修正をするという大臣のお心がまえはないかということを、最後にお伺いをいたします。
  242. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) しばしば御答弁を申し上げましたように、漁業法によりまして、資本漁業については、いろいろ規制を加えておるわけであります。この沿振法が成立をいたしますれば、これらを一体として運用をいたして参りたい。そうして沿岸漁業を保護するためには、何と申しましても、第一は、沿岸における漁業資源を確保する、そうしてさらに漁場の整備をするということとともに、沿岸における底びきであるとかなんとかというようなものをできるだけ減らして、こういうものはだんだん沖合いに出す、沖合いはさらに遠洋に出すというような方法によりまして、沿岸の漁獲が多くなるような方法を講じたい、また、現にこれも講じつつあるわけでありますが、これをさらに推進して参りたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  243. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 他に御発言もなければ、これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  244. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 御異議ないものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  245. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 私は、提案されました沿岸漁業等振興法案に対して、日本社会党を代表して反対の討論をいたさんとするものであります。  戦後、わが国の漁業は、急速の発展を遂げて現在に至っておりますが、その発展の構造約分析をいたしますならば、階層間の不均衡拡大のもとに進行している事実を見のがすわけには参りません。すなわち遠洋、そして沖合い漁業の急速な発展に比べて、沿岸漁業の停滞は、政府提案資料によっても明らかであります。このことは、漁業における格差の拡大と競争の激化によって、総体的な漁業生産高の増加にもかかわらず、巨大資本漁業と一部の上層漁業者を除いて、一般に漁業の経営は、かえって不安の度を加え、零細漁民や漁業労働者の所得や生活水準は、他産業に比して著しく劣悪となっていることも、政府提出の資料によって明らかであります。これは、生産及び流通の場において、中小漁業者が巨大資本によって収奪されていることによるものであり、同時に、歴代政府が行なってきた大資本漁業偏重、零細漁業軽視の誤った政策の結果にほかならないと断ぜざるを得ないのであります。かかる漁業格差を解消し、逆立ちした政策を是正するためには、すべての漁業分野を通ずるところの恒久的な基本政策、憲章法の制定、それに基づく総合的な実体法及び施策をそれぞれ制定していく必要があるわけであります。一般漁民は、かって農林漁業問題基本調査会の答申に対して、淡いバラ色の夢を抱いたことも事実であります。農業に農業基本法があるように、漁業にも漁業基本法が出てきて、日本漁業方向が明確に位置づけられて、これならば池田内閣の所得倍増計画も、漁民にも期待することが可能であろうと夢を抱いたはずであります。少なくとも政府は、そうしたビジョンを振りまいたことに間違いはございません。しかるにそれに対する答えは、ただいま提案されました沿岸漁業等振興法案であります。この法案の内容に対して、私たちは、限られた物理的日数の範囲において、この法案の内在する諸矛盾を幾つか指摘をいたしました。  そのうち特に、第一点として掲げなければならないのは、この沿岸漁業等振興法案の第一条、これは漁業基本法的な性格を持つものであると、大臣も答弁しておるものでありますが、その中に、なぜ政府が、かつて多数決で国会を通過したあの農業基本法と同じように、少なくとも政府が無理押しに通過したあの農業基本法の前文の目的にうたっているように、わが国漁業構造の改革を通じて漁業のこうむる自然的、経済的、社会的制約の不利を補正るすということをうたわなかったのか。なぜ、従事者の所得の増大を他産業従事者と同じようにするという目的を明確に目的にうたわなかったのか。こういう大目的があって初めて私は漁業の階層間の所得の格差を是正する基本的なかまえが、これによって打ち出されるものと思うのであります。そういう点はかたくなにこれを入れるという態勢になかったことをきわめて遺憾といたします。これが基本的な問題であります。  また、第三条にいろいろな施策を盛っておりますけれども、この第一条に、そうしたようなわが国の漁業構造の改革を通じていろいろな不利益を補正するというものを受けて、第三条には、少なくとも、適正な漁業生産秩序の確保ということなしには、沼津漁業振興というものは非常にこれはしり抜けの内容になるということでございます。なお、わが国漁業上の実態というもの、そういうものを考慮するということが欠けている。あるいは、過般の本国会で通過いたしました漁港の問題にいたしましても、単に特定の三種を設定して一割の補助を増すというようなこそくなことではなしに、漁港全体の総合的な見地に立つ整備ということがうたわれていない。そういう点を抜きにして、はたして漁業構造改善いずこにありやと言わざるを得ないのであります。  最後に私は、この法案に対して異論を唱えますのは、何としても農業者以上に低所得におかれている谷間の日のあたらない漁民に対して、その漁獲した生産物に対して政府はその生産費を十分補償するという建前でこの沿岸漁業振興法の中に価格政策を一条明確に打ち出し、その価格の決定にあたっては、生産者の意見も聞いてきめるという民主的な価格決定をこの法律にうたわなかったことは、明らかに山吹法といわざるを得ないのであります。私は、こういう意味において、衆議院においては三党によって共同修正をせられましたが、遺憾ながらわが党の修正の中で、その日の目を見なかったこの問題点を指摘して、政府に今後の施策にはこういう点を強く取り上げることを要求して、反対討論を終わります。(拍手)
  246. 北條雋八

    ○北條雋八君 私は公明会を代表いたしまして、本案に対しまして賛成の討論を簡単に申し述べます。  賛成の理由の第一点は、本法案昭和三十七年第四十国会で審議未了になって以来、引き続いて第四十一回、第四十二回の国会に提出されましたけれども、いずれも実質的の審議が行なわれないで、ようやく今回この国会におきまして審議が行なわれたものでありまして、漁民が非常に期待をかけている法案でございます。この法案に盛られました振興対策によりまして、第一次産業の中でも最も所得の少ない大ぜいの零細中小漁家の生活安定と福祉の向上が期待できるからであります。  第二点は、衆議院におきまして慎重審議の上、自民、社会、民社三党一致した共同修正が行なわれ、当初の政府原案に国会の意思が多分に加えられまして、より完全なものとなったからでございます。ゆえに私は、次の三つの希望を付しまして、本案に賛成するものであります。  すなわち、その一は、豊漁貧乏をなくし、漁家所得の増大をはかるために、水産物、特に魚価の安定と流通の改善に一そうの創意工夫を加えて、生産者に増産意欲を起こさせるような価格安定政策を樹立すること。  その二は、漁場の拡充と魚族の繁殖をはかるために、魚礁、投石、つきいそ等の設置を大々的に実施し、養殖場、集団操業施設の拡充、近代化を強力に助成、拡充すること。  その三は、水産資源減少の原因を徹底的に除去するために、水質汚濁等の防止、なかんずく屎尿の海洋投棄については関係当局は真剣に再検討を加え、すみやかにこれが対策を講ずること。  以上申し述べまして、討論を終わります。
  247. 天田勝正

    ○天田勝正君 民主社会党は、沿岸漁業振興法案に対して賛成をいたします。  簡単にその理由を述べますと、質疑を通じて明らかなように、本法案には、かなりの問題点がございますが、しかし、衆議院におきまして、わが党を含む三党修正が成立し、政府原案にきわめてあいまいな表現でありましたものが、列挙主義によってかなりこれが明確になったということであります。  しかし、これで万全であると考えているのではないのでありまして、特に衆議院修正によって明確化した項目に対する政府の、受け取り方、態度、あるいは今後の施策の準備という点につきましては、はなはだしく不十分な点があることを指摘せざるを得ないのであります。要するに、この法律が沿岸漁家に渇望されているゆえんのものは、大企業漁業に対して、また、他産業従事者に対して所得の格差をなくしていくということにあると思います。ところが、衆議院修正のうち九条四項、すなわち賃金等の労働条件その他の関係及び労働環境に関する事項が載せられておりますけれども、集約すれば、私はこの漁業従事者、特に一番下積みである労働者の環境や待遇、賃金等が改善されなければ、その実は結ばないと考えておりますが、しかるに、これに対する先ほどの私の質疑に対する政府の答弁は、まことに不満足であり、しかも、実態も勉強されておらない。ことに、他の委員でありますけれども、労働組合組織の状況を質疑いたしましたところ、その答えは、むしろ遠洋漁業、大漁業の従業員に対する労働組合の状態である。今日最も困っている沿岸漁業従事者、あるいは下積みの労働者の問題は、何らキャッチされておらないのであります。しかしそうした不満がありましても、これが発足は沿岸漁家の渇望するところでありまするし、一日もすみやかに発達せしめたほうが、これら不十分の調査等も早く完了して、前向きに進んで参ることが可能であろうと思いますから賛成するのでございます。  さらにもう一点指摘いたしたいことは、格価の問題がここで論ぜられる場合、必ず私は流通の是正を主張して参りました。ところが、これに対しても政府側の答弁はまことに不満足であります。私はかつて生鮮食料品につきましては、その価格の追跡調査を行なわなければならないということを幾たびも幾たびも主張して参りました。ところが先ほど来も、本委員会における議論でも明らかなように、当局がつかんでおりまするものは、結局、生産地の卸売価格消費地の卸売価格だけであります。でありまするから、生産者から消費者へは二倍か三倍の開きのごとくに言うておりますけれども、実は農村において豊作にして飢饉を叫ばなければならないと同様に、漁村におきましては豊漁にして貧乏を叫ばなければならないというのが実態であります。二倍、三倍の開きどころか、豊漁貧乏のときには実に二十倍にも上っておるのが実情であります。私どもの調査機関を持たざるものの調べでもさようになっておる。このことは何を現わしておるかと言えば、現在の資本主義下におきましては、結局、価格の変動、不安、そのしわというものが第一次産業に全部押し寄せてくるという事実であります。でありまするから、今日、政府が追跡調査をおそらくするならば、決して豊漁のときも漁村は豊かにならず、不漁のときはなおさら苦しい生活に追い込まれる。したがいましてそこに働いておる下積みの、かあちゃん漁業等もありますけれども、それらの人たちは実に惨たんたる生活に陥らざるを得ない。このことは現に長欠児童の最も多いのが漁村であることが明らかに示しておるのであります。こうした事態を今後の施策において、小さいことだから見のがす、こういうことでなしに、そういうところへこそ、あたたかいあるいはきめのこまかい行き届いた施策を行なうことが、沿岸漁業振興法の目的を達するゆえんであることを指摘いたしまして賛成をいたします。
  248. 森八三一

    ○森八三一君 私はただいま議題になっておる沿振法に対しまして、非常に零細な沿岸漁業漁民の諸君を直視いたしまするときに、この法律は数歩の前進である。同時にまた向かうべき方向を示したものとして賛意を表するのであります。ただしかし、本法を運営する際にいろいろ希望する事項はありまするが、質疑を通しましてそれぞれ明らかにいたしましたので、ここには特にすみやかにその実現を期すべきであると存じまする数点を、項目的に申し上げて格別の善処を希望いたします。  その一つは何と申しましても、自然を相手にして行なう漁のことでございますので、不測の予期せざる損害に逢着するのであります。その際に共済事業がきわめて大きなささえをなしますることは論ずる余地のないところであり、すでに数カ年間このことは試験時代を終えまして、まさに実施の段階に入っておる。でありまするから、本法の実施と同時に、昭和三十九年度からは養殖をも含めた全面的な共済事業というものを法律のもとにしっかり推進をするということを、ぜひとも実現をしていただきたい。  同時にまた、沿岸漁業につきましては、何と申しましても私養殖の問題を解決いたしますることが当面最大の急務だと存じます。このことについては格別の努力を願いたい。同時にまた零細漁民のことでございまするので、その組織を強化いたしますることがきわめて重要だと思います。でありまするから、先般の法律改正の際にも申し上げましたが、唯一のよりどころでございまする漁業協同組合の育成強化という点につきましては、格別の助成と推進を希望いたしまして、私の賛成討論を終わります。
  249. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 御異議ないものと認めます。  これより採決に入ります。  沿岸漁業等振興法案を問題に供します。本案を衆議院送付案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  251. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 多数でございます。よって本案は多数をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  252. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。  ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  253. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) では、速記を起こして。  当委員会に付託されました請願について審査の結果、  第二八号福岡県母畑ダム建設促進  に関する請願、第五五号 農業共済  制度改正に関する請願、第五六号  福岡県宮田町笠城国有林下げに関  する請願、第一五二号 生産者乳価  値下げ反対に関する請願、第一五五  号 農林年金制度改正に関する請願  外二十八件、第二二七号 農業構造  改善事業推進に関する請願、第二二  八号 農業改良普及事業拡充強化  に関する請願、第二二九号 三十九  トン型かつおまぐろ漁船の居住区  改善に伴う増トン許可に関する請  願、第三一六号 農業共済組合等の  事務費国庫負担額に関する請願外二  件、第三八三号 多頭飼育加入奨励  金の全面交付実現に関する請願外二  件、第三九〇号 家畜共済病傷部分  掛金二分の一国庫負担実現に関する  請願外三件、第六五一号  津町等ののり養殖場被害補償等に関  する請願、第七四九号 農業構造改  善事業に係る国有林野開放促進に関  する請願、第七八九号 食糖管理制  度撤廃反対等に関する請願外二件、  第八二三号 乳価値下げ阻止並びに  酪農政策確立に関する請願、第八二  八号 国有林野開放に関する請願外  一件、第九一八号 利根川水資源確  保及び流域開発促進に関する請願、  第九八六号 鹿児島県川内山内低開  発地域工業開発指定地区内の国有林  払下げに関する請願、第一〇八七号   内水面漁業振興に関する請願、外二  件、第二二九八号 酪農政策及び飼  料政策に関する請願、第二匹六五号   乳価安定等に関する請願外一件、  第二四六六号 菓子の輸入自由化延  期等に関する請願、第二四八〇号  酪農振興抜本的施策推進に関する  請願、第二六〇一号 乳価安定対策  に関する請願、第二六三一号 乳価  安定対策措置に関する請願、第二六  五二号 乳価値下げ反対等に関する  請願、第二七〇二号 畜産物価格安  定に関する請願外一件、第二九四四  号 農林水産物加工業者補助金、  融資等に関する請願、第二九九一  号 放魚祭並びに水産資源保護全国  運動に関する請願、第二九九二号  長雨による農作物の被害対策に関す  る請願、第三五九一号 長雨による  農作物の災害対策確立に関する請  願外一件、第三一九四号 昭和三十  八年産米価に関する請願外五十件、  第三三〇四号 農業構造改善事業推  進に関する請願、第三三〇五号 農  業委員会補助金の増額及び同補助  率の定率化に関する請願、第三六六  三号 輸入生鮮果実類のくん蒸庫設  置に関する請願、第三三八九号 除  虫菊生産振興に関する請願  右の三百十九件の請願は、採択の上、議院の会議に付し、内閣に送付を要するものと決定することに異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  254. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 御異議ないと認めます。  よって、さよう決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  255. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。  なお、他の請願は留保することに決定いたします。   —————————————
  256. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) お諮りいたします。  農林水産政策に関する調査につきましては、閉会中も調査を行なうため継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 御異議ないと認めます。  よって、さよう決定いたしました。  なお、要求書の作成は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  258. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  259. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 速記を起して。  これをもって散会いたします。    午後十一時三分散会    ————・————