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1963-06-20 第43回国会 参議院 農林水産委員会 第36号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月二十日(木曜日)   午前十時五十分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     櫻井 志郎君    理事            仲原 善一君            堀本 宜美君            渡辺 勘吉君            北條 雋八君            森 八三一君    委員            井川 伊平君            植垣弥一郎君            梶原 茂嘉君            木島 義夫君            中野 文門君            温水 三郎君            野知 浩之君            藤野 繁雄君            山崎  斉君            大森 創造君            亀田 得治君            小宮市太郎君            安田 敏雄君            矢山 有作君            牛田  寛君            天田 勝正君   国務大臣    農 林 大 臣 重政 誠之君   政府委員    農林政務次官  大谷 贇雄君    農林省農林経済    局長      松岡  亮君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    農林省農林経済    局農業保険課長 岡安  誠君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○農業災害補償法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) ただいまから委員会を開きます。  農業災害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行なうことにいたします。質疑のおありの方は、御発言願います。
  3. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 提案になっております農業災害補償法の一部を改正する法律案について、前もって私の質問柱立てと申しますか、そういう点を申し上げておきたいと思います。  第一は、全体に関連して、まず総論的に御質問を申し上げる所存でございます。次は、この法律を実施運用するにあたっての機構の問題、当然その質問内容は、簡素化の問題であり、公営化促進についての問題を含めて質問をいたす所存でございます。第三は、共済事業の実施と共済関係の成立について提案された法案に対する問題点お尋ねをいたしたいと存じます。第四点は、共済目的についてでございます。当然この委員会で他の委員から触れられましたように、制度拡充重点を置いた問題点の取り上げでありますが、ただ、従来当委員会としては触れなかった一つの例を中心として具体的に掘り下げて質問をいたしたいのは、菜種の作付なり、需給なり、価格なりの従来の傾向と、これに対する共済目的制度拡充の際にどう対処されようとしているか、そういう具体的な事例を中心としてお伺いいたしたいと思いますので、この問題は、政務次官お答えを願えるならばそれでけっこうでありますが、もしもこうしたようなことについてもっと詳細に、質問に対してお答えが、政務次官として事務的に困難な場合は、食糧庁長官もその際には出席の都合を見計らって、その時間に御質問を申し上げたいと思います。第五点は、補てん方式についての問題。第六点は、共済事故について、これは病虫害の防除の内容になるわけでありますが、これについて従来取り上げられた質疑のさらに触れられなかった点について質問をいたしたいと思います。第七点は、共済責任保険責任について、その具体的な内容をお伺いいたしたい所存であります。第八点は、共済掛金とその国庫負担について、ねらいは農家負担の軽減を中心としていろいろお尋ねをいたしたい予定でございます。   〔委員長退席理事仲原善一着席〕 第九点としては、基準反収損害評価の問題について、特に自主性尊重の角度から御質問を申し上げるつもりでございます。第十点は、事務費人件費、特に待遇改善並びに国庫補助関連においてお尋ねをいたしたいと思います。第十一点は、融資との関連災害においてこの農災法関連して融資措置が相関連してとられるわけでありますが、この点についてのいろいろ問題点お尋ねをいたしたいと思います。第十二点は、任意共済についていろいろ問題があるわけでございます。私は従来の委員会で述べられた抽象的な質疑ではなしに、もっと具体的なデータを中心として、この政府の取り扱いの方針をお伺いする所存であります。次は、市町村移譲に伴う農協との関連における税金の問題、あるいはさらに審議会の問題というようなことを、それぞれお尋ねをいたしたいと思います。もとよりこういうような大きな柱を中心としてお尋ねをいたしますけれども、その問題に関連して順序不同にお尋ねをいたすことも当然あり得るわけでございますので、いずれ全体としては、そうしたような問題点中心として、ただいまから政府当局に対して、今まで比較的明らかにされなかった点に重点を置いて御質問を申し上げる所存でございます。  まず、全体についてお尋ねをいたします場合に、今度の改正法律の中でも、当然この制度根底をささえるものは、農家と村の共済組合との間で結ばれている共済制度そのものについてでございます。これは現行農業災害補償法の最も基本的な問題であると思いますので、この点をまず最初にお伺いをいたしたいわけであります。この共済との結びつき、これは当然隣保共助精神が、一体その作用の及ぶ範囲というものが、新しい共済組合区域であるところの新市町村、こういう広区域まで、従来の農村における諄風美俗といわれました隣保共助精神が十分にその共済制度を支えるものとなるのかどうか、これは非常に問題であると思うのでありますが、この点についてまず政府の御見解を承りたいと思います。
  4. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) お尋ねの点は、非常に農村社会の歴史的な構造と申しますか、そういうことに関連した非常に奥行きのある問題であると思うのでありますが、一般的に言いますならば、広域の市町村になりまして、共済組合はその区域に合併をしておるのであります。その結果として、いわゆる昔流の隣保相助気風といいますか、そういうものは希薄になってきておる。したがってそういうものを基礎にした伝来の助け合い的な組合組織及び共助関係というものは、この制度の末端における基礎としては従来よりは薄弱になったものと考えるのでございます。しかしながら、これは一つ制度としましては、相互組織の点であり、また災害に対してはやはり農村においては地区のいかんにかかわらず助け合うという精神が、これはいずこにおいてもあることでございます。そういうものを根拠にいたしまして、共済制度というものが存立し得る基盤は依然としてあると、こういうように考えております。
  5. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 今も局長答弁にありましたように、従来の農村社会を支配しておった相互扶助精神というものが共済制度をささえる柱にはたしてなり得るかどうか、新しい区域の非常に広い共済組合範疇までこれが支えになるかということについては、必ずしも十分なるものではないという意味の御答弁がありましたが、私もその点が非常にこの制度の大きな問題点をかもし出しておる農村現実的な姿であると考えるのです。特に資本主義経済の進展によって、農村気風というものも、かなりの変革を遂げつつあるそのときに、従来の数戸単位あるいは小字単位等で行なわれておった「ゆい」というようなもの、そういう一つ共助精神というものは、かなり大きな区域にまでこれを期待することは、外的な要因によって非常に困難になってきておる。このことは私は大きな現行制度をささえる根底をゆるがす基本的な課題であると考えるのであります。  そこで第二点としてお伺いをいたしますのは、今回の政府提案改正案で、共済掛金細分化、あるいは相当の努力を改正案の中にも盛られておることは、従来の説明でわかるのでありますけれども、なおかつこの共済組合をさらに細分化した場合でも、このそれぞれの農家負担する共済掛金と田畑の現実被害率というものには、大きな懸隔を生ずることが想像されるわけです。このことがこの改正案にもかかわらず、なおかつこの共済制度を正しい意味で推進することを阻害する大きな要件と考えられるのですが、その点についての局長の御所見はいかがですか。
  6. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) これは渡辺委員の御指摘のように、いわゆる隣保相助気風に立った共済ということが、昔の観念の上に確かに強く働いたと考えられるのでございますけれども、今後におきましては、少なくとも最近におきましては、もう農村実態が新しい町村の上に立ってきておる、この制度もその上に立つ共済として、近代化された意味での共済という観念に移行しつつあり、また移行しなければならないものと考えておるのでございます。   〔理事仲原善一退席委員長着席〕  それは公務員の共済組合あるいはいろんな労働者共済組合、そういうものの一種共通の点があるわけでございますが、それと現在の共済制度との関係におきましては、漸次やはり個別化方法をとらざるを得ない。これは従来は個別化が不十分でございまして、そこに若干の無理が出てくる。その無理はいわゆる共助精神で補うというような考え方にあったと思うのでありますけれども、漸次個別化していって、料率共済金額個人の自主的な選択ができるようなものにしていくということが必要になってくる、こう考えるのでございますが、それには現在の制度の技術的な基礎がまだそこまで徹底できないといううらみが確かにあると思います。今回は共済金額選択につきましては、個人的自由な選択ができ得るようにいたします。それから料率につきましても、従来県一円できめて、さらにそれを十八の危険階級に分けて配分しておりましたものを、今度は村ごとにまずきめる。必要によっては知事の認可を受けて村の中の地区ごとにきめる、ここまで個別化を進めておるのでございますが、それ以上に進めることは、現段階におきましては技術的に困難である、こういう状況でございます。
  7. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 かなり従来の県を十八地区に大きく分けてやったものとは違って、局長が今答弁されましたように、最近の農村農民の心理の実態に即応した改正の意図はわかるのでありますけれども、何と申しましても、その共済組合をさらに細分化する場合でも、この共済を貫く助け合いの精神というものは、現実の立場において理解する範疇というものは、旧部落なり小字単位というものまでこれが細分化されませんと、隣保共助精神が貫きかねる実態であります。それをこの制度の中に取り込むということは、技術的にも困難であるが、不可能ではないはずであります。その点を、実態に即してそこまで問題を取り上げかねたことが、私はこの改正案が今後に非常に現実的に従来とほぼ同じような運用上の内部矛盾をはらみ、さらにこの原案がまかり通る場合には、数年ならずして、農民のまた協力を得ずして大きな崩壊の方向にいく問題点をはらんでおると考えるわけであります。その点まで技術的な検討を加えて抜本的改正という大きな国民の待望する機関が、長い年月を経た今日、そういう点まで改正の中にどうして盛り込めなかったのか、その点重ねてお伺いいたします。
  8. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) その点につきましては、今回の改正におきましても、町村区域をさらに必要によっては、危険率が異なる場合によりましては、部落まででも細分化できるように、こういうように改正考えておるのでございます。それで、さっき私が申しましたのは、個人あるいは少なくとも個人の集団ぐらいまで個別化することは、現段階においてはなかなかできないということでございまして、今回の改正では、必要であれば、部落ぐらいのところまでは領域を選択し得るようにいたしたいと、こういうふうに考えております。
  9. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 この隣組を単位とする共同活動というものは、従来の農村慣行では、もっぱら労力の供出であり、場合によっては生産物の取り上げ方が慣行であったのですけれども、この共済制度そのものは、そういうものとは違って、貨幣の支出という、質的には大きな相違したものを対象とする助け合いなわけであります。この点は同じように共同活動としても、たとえば農業協同組合のように、お互いの農家共同利益のために、その構成員である組合員がだれも利益にあずかる場合とは異質な助け合いの内容になるところに、またこの制度をささえる大きな困難さがあると思うのであります。農家自体のありていの心境を表現すれば、農家は隣りの県と自分の県とのそういう比較とか、あるいはよその町との問題点、不均衡ということよりは、むしろ隣りの農家とのアンバランス、隣りのたんぼとの共済制度アンバランス、隣りの耕作しておる畑と自分の畑との間における共済制度の不均衡、このことにむしろ大きな不平を持ち、不満を持っておるのが、農家の偽らざる心情であってみれば、この制度根底をささえる共済制度というものは、いかに困難な要素を含んでおるかということが明らかになるわけでありますが、そういう困難さというものが、今度の法律改正によって完全に解消されるとお考えですか、どうですか。
  10. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) その点につきましては、先ほどから申し上げておりますように、技術的には現在のところ限界がございまするので、完全に解消し得るということは申し上げにくいと思うのでございます。ただ、そういう技術的困難さをカバーするものとしましては、国が負担する、平均いたしまして掛金の三分の二近いものは国が負担しておるわけでございますから、そういうところで調整はできるものであろう、こういうふうに考えておるのであります。
  11. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 今の御答弁関連するのですけれども、非常にこれは農村農家実態の中からは、想像を絶する不満の累積的な制度であり、そのことを解決するために国が三分の二の補償をする、これでもなおかつ、組織の上において、運営の上において釈然とした解決にはならない、これは明らかであります。そこで、これは意見になりますけれども、こういう困難さをふまえて、今のような仕組みの中で問題を多少の改正をするということよりは、むしろ、思い切って保険方式にそれを切りかえるのか、あるいは三分の二などということではなしに、国家補償を全体を貫く制度にこれを切りかえるのか、そういう抜本的な施策が要請された方向であったと思うのですが、それが舌足らずの改正になっておるという点について、非常にこの制度の今後の運営に大きな危惧を感じ、また、不満の胚胎が解消されない根源をなすものだと思うのですが、そういう点についてどういうふうにお考えですか。
  12. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) ただいまあげられましたものは、制度のほんとうの根本になるわけでございますけれども、今御指摘がありましたように、完全な国家補償といいますか、国の補助のみで行なう制度にするかという考え方と、逆に近代的な徹底した保険やり方をとる方式、その中間がもう一つあるわけでございますが、現行制度中間で、国の補償といいますか、国の負担農家共済と組み合わせてやっておるこの三つの方式が一応考えられるわけでございますけれども、いずれにしても一長一短があるのではないか、こういうように考えるわけでございます。そのまん中をとる方式である現行考え方は、ある意味では中途半端ということは、御指摘のようにいえるかとも思うのでございますが、また、それなりによい点もある。つまり、国の補助金でやるというやり方も、根本的には個人間の公平ということを期する上には、むしろ、保険方式のほうが公平な方式になり得ると私ども考えておるわけでありますが、ところが、保険のほうは逆に言いますと、技術的に徹底した保険理論でやっていくことが不可能である、こういう問題があるわけです。そこで、中間方式ということになるわけでありますが、それは渡辺委員も御指摘のように、共済ということで徹底できないで、やはり、国も負担しなければ無理が調整できないというところで、いずれも一長一短があるというように考えておるのでございますが、私どもとしては、やはり、現行共済と国の負担ということを組み合わせていく方式が一番実際的である、こういうように考えておるわけでございます。
  13. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 今原案に固執して答弁されたのでは、さっぱりどうも、上っつらをなでることで、もう少し良心的に答えてもらいたいと思います。こういう折衷方式がこの制度を不評判にし、農民からはありがたがられるどころではなしに、解散が続出してきておる現象を生んでおるのですから、抜本的に改正するということでなければ何をか言わんやであります。少なくとも多年にわたる問題を、この国会で法律改正で臨もうとするならば、もっとその根源を突き詰めて、文字どおり抜本的改正に根ざした提案でなければならぬと思うのですが、私はこういうことをさらに抽象的に質問申し上げても、これはすれ違いになりますから、もっと具体的な問題に入って、この制度に内在する矛盾を明らかにして政府の所信を伺いたいと思うのですが、御承知のように、この農家経済というのは家計経営が分離されておらぬのであります。そういう農家経済実態からいって、農家自体保険意欲はないとは言わぬのです。保険意欲はあるでしょう、保険意欲はあるけれども保険に対する需要というものは欠除しておる、これがこの制度のまた基本的な問題点だろうと思うのですが、このことについて政府はどう理解されておりますか。
  14. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 保険需要は、日本の農業のような小農経営で、経営家計が分離されていないというところにおいては、一般に保険需要が低い、これは言われておるとおりでございます。ただ、その保険需要が低いということにも、かなり内容的な問題があるわけでありますが、たとえば、作物によって、また地域によってその災害の頻度あるいはその規模の大きさということによって、また需要の高さ低さが違っておるわけであります。現実にもう少し事態を分析して参りますと、解散運動が起きておるのは、ほとんどが低被害地でございます。低被害地において起きておる解散運動というのは、結局掛金負担に対してもらうほうの共済金が低いということが基本で、それが解散運動のほとんどの原因でございます。それに対する回答は、今回の改正が相当というよりも大部分いたしておるように私ども考えておるのであります。
  15. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私はそうは理解しません。非常にそういう農家経済実態家計経営が分離しがたい実態に即した改正案とは、どうしても受け取りかねます。問題は、この農業経営が非常に長期的な展望にわたる計画性というものが確立しがたい、またそのことが保険需要を欠除させておる基本的な要因だと思うのですが、その現われの一つとして、これは後ほどまた項をあらためて伺いますが、損害填補方法として一筆単位制度というものが温存されて、この法案の中に出ておるこのことが、何よりもこの事実を物語っておると思うのです。そういうふうに私は理解するのですが、どうですか。
  16. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 保険需要が低いということは、いろんな意味があるわけでございますけれども現実には低被害地において、掛金負担に対して支払われる共済金というものが多くない、無事故が何年か続くと、どうしても掛金を払うのがいやになる、あるいはこういうものはやめてしまえという運動になるのが現状でございますが、それは結局、やはり一種の不平といいますか、あるいは自分の財政から考えた収支の工合、そういうものから出てくる一つの計数的な観念であると考えられますのであります。それに対しては、家計経営とが分離されておるといなとにかかわらず、制度としましては、無事戻し制度を拡充するとか、あるいは低被害地における料率を、今回の改正によってさらに個別的に実態に即して下げられるようにし、また国庫負担方式を合理化しまして、超過累進方式にする、それから組合通常部分に関する責任を拡充して、地元に金が残るようにするというようなことによってこたえることができる、こう考えておりますのです。そこのところは保険需要内容的な問題でございますが、家計経営が分離されてないということと、長期計画を持って農業経営をやる、やらないということと、問題の性格がちょっと違うのではないか、私はそういう感じがするのでございます。
  17. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それではもう少し具体的に伺いますが、一体、この被保険者保険料を支払うと、そのことは、第一は、事故が発生した場合に、少なくともその事故被害の七、八割というようなもの、そういうものが補償されなければ、保険による経営の安定というものが期されない、そういうことはもう自明の理であります。事故が起こった場合でも、次の再生産確保に支障を来たさないという程度の資本確保を期するというのが、保険本来のこれは目的でなければならない。そういう目的からいけば、繰り返しますが、その被害の少なくとも七、八割というものは、この保険によって経営の安定を期するということが、保険料を被保険者が支払う基本的な建前でなければならない。ところが、この法案の中に出ている一筆単位建てというものは、私が今さら指摘するまでもなく、戦前地主制度の際に、小作料確保の温存のためのこれは制度であって、あくまでもこれは属地主義的な考え方で、一筆単位建て制度というものが実施されてきておる。ところが、戦後の農地解放によって小作人が自作農になって、大きな農業構造の、そういう土地所有関係の変貌が遂げられても、なおかつそういう属地主義的な考え方が属人主義的な考え方にこれは引き上げられなければならない、揚棄されなければならない、そういう考えが当然筋道としては肯定されなければならないのに、依然として従来の属地主義的な一筆単位建て制がこの改正案の骨幹をなしておる。従来の衆議院あるいは本院における機構矛盾を突く際にも、あなた方はこういう一筆建て制度のほうがベターであるから、機構改革二段制そのものを取り上げる問題は半減しておるという抗弁をされておる。だから、私はここで総論としてこの問題を一応取り上げるのでありますけれども、そういう新しい農村実態に即して、農家単位にこれを制度を切りかえなければならないのに、なぜ戦前の属地的な一筆単位制を温存しなければならないか。そこに私は大きな問題がこの制度に胚胎しておるということを指摘せざるを得ないのです。そのことは先ほど申し上げましたように、農家経営計画性が欠けておるということ、農災制度農家保険として見ないで長年の補助金、これを政府から幾らでもより多く確保して、農家経営のマイナスを補なおうとする、そういう思想をこれは是認するものであって、決してこれは抜本的な改正であるとは、ごうまつも言えない。そういうふうにこの一筆建て制を取り上げたことに対して理解するのですが、政府はこれに対してどういうふうに考えていますか。
  18. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 最初損害補てん率の問題でございますが、これはちょっと問題が少し異質のことでございますが、あらかじめお断りいたします。現在は米なり麦の値段の七割、最高七割まで選択できることになっておるわけでございます。共済金が今回の改正では九割まで選択できるようにいたしております。これは補てん率を引き上げている。それから一筆収量建て現行一筆収量建てを残した問題につきましては、再三申し上げたわけでございますが、これは属地、属人の問題ではなくて、むしろ農家単位一筆収量建ての、これは一長一短あり、議論が分かれるところでございますけれども現状において、なかなか農家単位に徹底的にやることができないというのが、一つの問題でございます。それは申すまでもないことでございますが、農家単位補てんを実施いたしますときには、被害を受けた農家の全筆を調査しなければならない。それは増収と減収を相殺するわけでございますから、それがほんとうの農家単位でございます。それで協議会案で答申されました農家単位は、そこまで言っていないわけであります。不徹底な農家単位で、基準収量と相殺するという考え方に立って、結局現状においては完全な農家単位はできないという前提の御答申であったわけであります。それも一つの問題でございます。それから農家単位をやります場合には、どうしてもこれは損害が大きく深く起きた場合には、農家は非常に損害補てんを十分やってもらえる制度でございますが、そのかわりそれほど大きくない比較的浅い損害のときはもらえないという逆の面がある。結局農家から言えば、もらう機会が減って、そのかわり大きな災害のときにもらう割合は大きくなるのが、農家単位の特徴でございますけれども、一筆はその逆でございます。そういうことで、農家の側から見た場合に、現状はもらう機会が多いほうがむしろ農家の要望しておるところではないか、こういう判断の上に立って現行一筆収量建てを継続することにいたしたわけでございます。
  19. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そのことは、私は農家を従来どおり補助金をもらうという根性にこれをいつまでも据え置くという思想につながるのであって、非常に危険な考え方だと思うのです。一筆建ての場合は、全体の自分農業経営の中から見れば、かりに平年作あるいは豊作であっても、部分的に災害があれば、その部分について共済金がもらえる仕組みであるということは、超過保険的作用さえ現実には出てきておる。ここに問題があるわけです。補償を何ら必要としないときに補償がもらえて、真に補償を必要とする場合には、はなはだ不十分にしかその補償補てんされないというところに、一筆建て制の根本的な問題があるわけです。ですから、真に経営の先ほど申しましたような恒久的な安定ということを目途としておる農家にとっては、これは大きな自己矛盾と言わざるを得ないと思うのです。今の農災制度では、災害補償はきわめて不十分である、そういうことが言われておる。そこで従来の三割足切りを一割足切りにする、完全に最高を契約しても六三%にしかならない。この改正案でもこのそしりは依然として免れないと言わざるを得ないのですが、一筆単位制度で十分な補償をするということになれば、したがって従来の掛金よりも二倍以上のこれは負担をもってしなければ解決にはならないと思うのです。そういう掛金を上げないで補償率をよくしようとするためには、これはどうしても農家単位建てに建前としては置く以外にないと思うのですが、その点はどうですか。
  20. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 掛金を上げないで損害が起きたときに十分もらう用意をするという面では、あるいは御指摘のように言えると思うのでありますが、ただそのかわり今度はもらう機会が少ない。したがって全体としてもらう額というものと掛金との関係は必ずしもどちらになるかということは具体的なケースについて考えませんと、そこはどちらともはっきり言えないのではないかと、こういうように考えるものでございます。
  21. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 具体的なケースについて検討をされたのですか。どうですか。
  22. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) それは実験を農家単位についてやったことがあるわけでございます。二十八年当時二、三年やったのでございますけれども、必ずしもその関係はどっちともはっきり言えるわけではないと考えております。
  23. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 まあ、いずれともさだかではないという結論であれば、その調査の内容を見せてもらわないと、よく読み取れかねますけれども、基本的には農家経営というものを、さらに計画的に指導していくという行政庁の責任としても、私はこの一筆建を今度の改正案でも出しておることは、非常に時代逆行のこれは行政的な姿勢だと思うのですけれども、その点はどうですか。
  24. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 私どもはそうは必ずしも考えないわけでございます。先般大臣からもお話しておりますが、今後構造改善等が進んで参りますれば、農家単位の特徴を発掘するようなことは考えられるのではないだろうか。しかしながら、現段階においては、農家単位はその言葉どおり実行することも、いずれにしても困難でございますし、現にやったときに農家がどちらを選ぶかといいまするならば、むしろ一筆収量を選ぶということで、今後の問題としては別である。現状における一筆収量建をとらざるを得ない、こういうように判断しておるのであります。
  25. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 戦前からのように、農家があくまでもこの制度補助金をもらうという基本的観念から脱却させるために毛、私は困難な道ではあるけれども農家建でこれを貫いていくことこそが、改善の措置であると考えるわけです。今の制度は、繰り返しますけれども農家としては一筆建を喜ぶということは、何としてもこれを助け合い制度、強制的な助け合い制度保険的なものに理解しがたい実態に置かれておる。それを諸外国の例にも見るように、農家の意識を開発して、正しい政策の中でこれを解決していくには、何としても一筆建と農家単位建とには、大きな行政的な姿勢の私は基本的な矛盾があると思います。で、これはいずれもっと具体的な各論の中で触れることにして、その程度の意見を申し上げて次に進みたいと思います。
  26. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 ちょっと関連。先日私がこの問題について質問した際にも、ただいま渡辺委員に対する答えのように局長答えられたのですが、そのときに私は一筆建方式をとるということは、そのときに局長答弁では農民の要求によって、現段階においてはそういうような措置もとっておるのだというような発言があったように記憶しておるわけです。そうすると、その要望があったというならば、そういう全国の農家は、その組合を通じまして、そういう何かどちらがいいかというようなアンケートなんかをとって、それを集約したものの結論の中からこういう方式を現段階においてはとらざるを得なかったのかと、こういう点をお聞きしたいわけです。
  27. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) この前にも農民のほうから要望があったということをはっきり申し上げた記憶はないのでありますが、私どもとしては、農家がむしろ一筆収量建を現状においては喜ぶものと判断している、こう申し上げているのでございます。いろいろ協議会で御議論があったわけでありますが、その際は農家単位方向で結論を出されておりますけれども、実際に農家としては、もらう機会が減るよりも、比較的少しでももらう機会が多いほうを選ぶのではないかと、こういう判断をしていると、こういうことでございます。
  28. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 もう一度、そうしますともらう機会が多い、政府のほうでも補助金的にそういうような金を出す場合が機会ごとに多い。しかし全体とすれば、農家建のほうが政府の出す予算措置が多くなるのか、それとも現在の一筆建のほうが少なくて済むのか、こういう点はどういうようになっているわけですか。たとえば二十八年にただいまの答弁ではそういうものを実施したというならば、そういうような財政的な問題についての比較検討が行なわれたわけですか。
  29. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) これは一部の実験でございますから、全体をそれで推定できないのでございます。それと農単方式も協議会でお考えになりましたような、完全な農単方式をとらなかったのでございます。それから何割足切りをやるかというような問題、それらがきまりませんと、政府全体として比較することは困難でございますが、私どもが協議会があった当時、いろいろな試算をやった当時の記憶としては、どちらもそう国の負担としては変わらないのではないか、こういうことであったと記憶いたしております。
  30. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 まあ繰り返しますけれども、少なくともしょっちゅう、より多く農家がもらうという、そういう従来の、戦前からの考え方を脱却させるという、もっと前向きな姿勢がこの法律改正内容の一部をなす農単に切りかえるという、大きなこれは改正方向だと思うのですが、なかなかそれには踏み切れないようであります。制度協議会云々の問題もありましたが、これは制度協議会の審議の内容等も後ほど伺いますので、そこに譲ることにして、次に進みたいと思うのですが、全体の御質問の中ですけれども、私は今のこの制度は、世界でも類例のない複雑な仕組みの中に、また大きな問題が胚胎している、こういうふうに理解せざるを得ないわけです。末端のつながりは、農家組合等との間で、強制的な助け合いをやっている、共済関係につながれている、この共済関係は、冒頭に指摘したように、かなり強制をしなければ維持できない矛盾をはらんでいるということ、これがまず第一点であります。それから県段階で、この改正案での取り上げ方も、これは組合との保険方式を数理的に非常に高度な技術を駆使して運営をしている、こういう関係政府としては超異常災害、異常災害の場合のめんどうも見なければならぬし、基幹事務費費もめんどう見なければならぬ、いわばこれは国の段階では社会保障的な性格を持って臨んでいる、こうした複雑きわまる三段に連なる仕組そのものが、事業運営をする経費が必然的に高まらざるを得ないという内容を持っておるわけです。事務費が非常に多くかかるというのは、むだに事務費を使っておるのではなくして、この末端段階では共済で結ばれ、県段階では保険で結ばれ、国の段階では再保険あるいは社会保障的なつながりで結ばれておる。しかもこれを運営するためには、保険数理技術等の高度の基礎の上に立って運営されなければならない、ここに世界に類例を見ない仕組の上に、高価な事務費が支払われざるを得ない実態がひそんでおるわけです。過般説明があった政府の資料の、三十六年度をとって見ましても、国庫で掛金負担をしておる金額が九十八億円、事務費に対しては三十七億円、合わせて政府の支出が百三十五億円、半面、これをささえる農家掛金負担は七十七億円、事務費に徴集される負担は四十億円、合わせて、農家掛金事務費に支払われなければならない総額は百十七億円であります。全体で見ますと、掛金が昭和三十六年度では百七十五億円、事務費は七十七億円を要しておる、ちょうど農家掛金で払っておる七十七億円が、そっくり事務費に回されておるという勘定にもなっておる。政府農家掛金事務費で投下されている費用というものが、三十六年度で二百五十二億円、二百五十二億円です。政府農家のそれぞれの負担を出し合いながら、三十六年度で共済支払い額がどれだけなされたかと申しますと、政府の資料でも明らかなように、百六十五億円、農家としては、全国の数字でありますが、百六十五億円の共済金の支払いを受けたけれども、反面農家掛金事務費に支払わされた額が百十七億円であります。農家の差し引きの手取りというものが四十七億円にしかすぎない。この百六十五億円もこれは後ほど具体的な、会計検査院の資料によってお伺いをいたしますが、実際には百六十五億円がまるまる農家に支払われていないということが会計検査院の指摘にも明らかである。そういう点から見ますならば、この複雑多岐をきわめた高等技術を駆使しなければ維持できないこの現行機構に、抜本的な改正の施策を講ずるにあらずんば、政府の多額な財政支出も、きわめてその投資効果が稀薄である。こういうことを指摘せざるを得ないわけです。頭は官営で足は民営、これはヌエ的な機構内部矛盾であります。異常災害をめぐって、その異常災害にできるだけ多くを持ち込みたいとする下からの突き上げと、できるだけ異常災害を拒否しようとする官営的な態度との問題が、毎年のように繰り返されておる。こういう矛盾を基本的に解決しなければ、私は抜本的改正とは断じて言いがたいと思うのです。なぜそういう点についての改正をやられなかったのか、総論としてお伺いをまずいたしておきます。
  31. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 国にしろ、農家にしろ、それを合わせました一定の投入に関しまして、産出の効果が大きければ大きいほど望ましいわけであります。これはいかなる費用を取り上げた際にも、そういう筋合でございまするが、私どもとしましては、これはもちろん運営のための機構はできるだけ簡素であるということ、またその費用はできるるだけ節約さるべきものとして考えておるのでございますが、一面におきましては、むしろ、今後としては問題となっております果樹共済等の拡充そういうことを、機構を大きくすることでなしに、できるだけ現状の定員なりあるいは組織を拡大することなくて、そういった制度をできるだけ取り入れてやっていく、ということによって、さらに一そう効率的なものにするのが望ましい、こういうように考えておるのであります。で、確かに相当な費用がかかっておるわけでありまして、それに対する効果といいますか、投資の効果あるいは産出、アウトプットが割合に少ないということは御指摘の点がございますが、これは三十六年度の事例で御指摘になりましたけれども、大災害が起きた場合には、またそれもその機能を発揮する、こういうこともございますので、その点は少な過ぎるともなかなか言い切れないのではないか、これは非常にむずかしい問題でございますけれども、私どもはそう考えておるのであります。
  32. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 どうも霞ヶ関感覚でそういうふうに言われたのじゃ話になりませんから、少しアップ・ツー・デートでひとつ申し上げます。私この農林水産委員会で派遣されて長雨の現地視察に九州に行ったのですが、福岡県の筑紫野町を中心とする五カ町村が集まって町長さんたちや農業団体が陳情に来た。ここはすでに現行制度にいや気がさして五カ町村のうち四カ町村共済事業は全部やめておる。そういう中に現地に行ったのです。そのときに今度の災害を機会に、従来の事業がストップしておった共済組合を復活させたいという指導者の指導があったが今度のあの有史以来の裏作を中心とする被害にもかかわらず、農家は笛吹けども踊らず、そういう実態です。そういう指導をしておる、しかしそれにはついて来ない。町長さんに聞いたのです。どうして公営移管になさらないのか、とてもじゃないがそう簡単に取り上げるわけにはいかない。それが、あなたが言うように、必ずしも十分ではないとは思わないという感覚との大きなずれです。各共済組合が自主的に解散の決議をしても、一片の次官通牒でこれを握りつぶす、そういう怨嗟の的になっておる今の仕組みというものが、先ほど申しましたように、世界に類例をみないこの複雑多岐をきわめる今の仕組み、運営の中に、また問題の矛盾が胚胎をしておる。そういうときに、政府はそれに対して積極的に取り上げようともしない。これが抜本的改正法案とはどうしても受け取れない、さすがに大臣も気がひけたのか、数歩の改善であるという、私から見れば、数歩ともいえない、こういうごまかしの改正では、やがてまた大きなこれは農民の不信感によって全国をおおわれることは明らかであります。だから私はそういう根本的なものに勇気をもって政府が立ち向わなかったことを指摘せざるを得ない。そういう傾向を御存じですか、局長は。
  33. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 福岡地方などに事業休止の組合が多いことは、私もよく承知いたしております。これは比較的無事故であった関係もありますし、制度に対する不満があったことも事実でございます。その制度に対する不満と無事故との関係は、今回の改正でこたえることができると私は思っておるのでございます。それから事業費と保険料といいますか、掛金との関係でございますが、これは私どもは他のいろいろな損害保険などと比較してみたのでございます。たとえば火災保険で言いますと、保険料と事業費との関係は五四・九%でございます。それから海上保険は、これは割り合い少ないのでありますが、二〇・五%、それから、国営の森林保険の四九・四%、農業共済は三三・九%となっておりまして、事業費と掛金とのこれは国の負担する掛金も含めましたものでございますが、その関係は、ほかの損害保険制度に比べれば、必ずしも高いと言えないと思っております。
  34. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) ここでしばらく休憩し、午後一時から再開いたします。    午後零時四分休憩    ――――・――――    午後一時三十七分開会
  35. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) ただいまから委員会を再開いたします。  農業災害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、午前に引き続き質疑を行なうことにいたします。質疑のおありの方は御発言願います。
  36. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 総体的な質問をもう少し継続いたしますが、前回の委員会で資料説明を受けましたうちの一般的事項で、諸外国における農業共済保険制度の実施状況、これの説明を資料を通じてされましたが、それぞれの国の事情も相違をいたしておることでありますので、これを一律にわが国にとって、抜本的改正内容にすること自体は問題のあることはもとよりでありますけれども、相当従来から矛盾の累積している制度を抜本的に改正するにあたっては、思い切って、これら諸国の実施の実態を踏まえて、わが国の改正に参考として取り上げる要素はかなり多いものが見受けられるのであります。提示された例は、アメリカとソ連とカナダのマニトバ州の三例でありますけれども、そのほかにも、フランスの場合、西ドイツの場合、イギリスの場合、かなりわが国の従来の農業災害補償制度抜本的改正するにあたっては、取り上げる要素が多く見うけられるのでありますが、そういう点をどの程度今回の改正にあたっては消化をされたか、そういう点をまずお伺いをいたしたいわけです。
  37. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) フランス、イギリス、西ドイツの場合は――イギリスはどうでありますかはっきりわかりませんが――ひょう害保険が古くから行なわれていたようでございます。フランスは最近新しく農業災害補償制度を作るという動きがあるということは聞いているのでありますが、詳しい資料はわかっておりません。ところでここに出しましたアメリカ、ソ連、カナダ等の資料を協議会でも御検討いただいたわけでありますが、これが直接今回の改正なり、あるいは協議会の御審議の際に取り入れられたということはないのでございます。いろいろ参考にはなったわけでございますが、たとえば強制加入制度の可否とか、そういう論議をされる場合は、アメリカでも任意加入でやっているが、これは試験的なものであるとか、いろいろな点は検討されたわけでございますけれども、特にそのままこちらへ移植したというものはございません。
  38. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 非常に不十分な答弁で遺憾でありますが、たとえばカナダにしても、ひょう害は中心ではなくして作物保険を実施しておる、フランスにおいても、かなり学ぶべき内容を持っておる、これは農林省自体の資料を私は中心として質問をしておるのです。そういう点をきわめてお粗末に、十分消化もしないで、従来の制度の中で多少の手直しをするというその姿勢に、私は基本的な問題がある。私はあまり時間を多くかける意味でこれを取り上げるわけではございませんけれども、それなりに、政府が調査をし整理をした資料を見ましても、かなり抜本的改正に大きな参考になる先進国の事例が散見されるわけです。ほんとうにこれに積極的に取り組むという姿勢があるならば、もっとまじめにこういう先進国の事例等も、局長みずから当たって、特にあなたはいろいろな機会に諸外国も歴訪されておる経験もあるのだから、そういうすぐれた点をわが国の従来の矛盾制度の中に新風を吹き込むというためには、努力すれば十分できないはずはないと思います。そういう点は、どうも今の答弁ではおざなりの答弁であって、きわめて不満足であります。これも時間があれば、もう少し調査をした資料を通じて問題点を明らかにいたしたいと思いますが、これは総論で、これ以上触れることを避けます。  それで、従来の機構なりあるいは運営なりというものに対して、今回提出された改正案では、抜本的な改正でないことは、これはどう言いのがれをしても言いのがれ得ない、現実の手直しなのである。これでは、これから各論でいろいろ触れる問題が明らかになることによって、数年を待たずして、農民の一そうの信頼を喪失する方向をたどるであろうことは明らかであります。この抜本的改正に対して、従来の、午前中に指摘したような、世界に類例を見ない複雑煩瑣な、当然事務費が増高せざるを得ない仕組みの中で、巨額の国費を、当時農民負担を拠出しながら、その得る共済額はきわめてわずかであり、実質においては保険方式という受け取り方ではなしに、補助金をできるだけ多く受け取りたいという農民の素朴な感情の中に、矛盾が激発しておる。そういう事態に対して、抜本的に改正する一つ提案として、国家補償によるべきである、こういう提案がなされておることを局長は御存じですか。
  39. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) よく承知しております。
  40. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 その点の問題の取り上げ方は、どういう内容での――よく承知しているならば、私から伺いますが、どういう具体的な内容での国原補償方式を要求しておるか、その点をあらためてお伺いをいたします。
  41. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 協議会でもだいぶ御論議があったところでありまして、協議会の答申では、国家補償方式を結論としては出されなかったわけですが、当時から、国家補償といわれましても、具体的な提案はない。私の知っている範囲では、具体化されたものはあまりないと承知しております。むしろ一般の補助金制度のうちで、特定の目的を持った補助金を交付するというように私どもは理解をいたしております。
  42. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私が申し上げるのは単なる個人の思いつきや、そういうことで申し上げておるのではなくて、三十四年の十一月に、第七回の全国農協大会で決議をしておるという――よく知っているというから私が念のため聞くので、その決議の内容に触れて、御存じだろうと思うから、どういう理解の仕方か、その理解の上に立って今度の改正に、どう対処したかを私順序として伺っているのです。その内容は、どういうふうに理解されておりますか。
  43. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) そういう決議があったということは承知しておりますが、今その内容について具体的に、これは記憶としては持っておりませんが、協議会において相当論議されておりますので、国家補償考え方がなされておる、その経緯等は私も承知いたしております。
  44. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 どうも非常に冷たい答弁で納得がいきかねるのですが、このことを、どういうふうに受け取られたかということを伺っておるわけですよ。国家補償方式というものを、第七回の三十四年の十一月の全国農協大会で、農民の総意として決議をしている。その内容に対して、今度の抜本的改正にあたって、どう理解し、その点をどう整理して、この提案になったかを伺うわけです。だから、その大会の内容を詳しく知っているなら、その点をまず伺いたい、こういうわけです。
  45. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 大会の内容は詳しくは私ども存じておりませんが、国家補償考え方については、私どもとしてはとり得ないという考え方でございますが、その理由としましては、国家補償をやる場合において、これは結局は補助金の形になるわけでありますが、それを分配するについては、損害評価という保険と同じ方式をとらざるを得ない、その場合に、保険方式のほうが損害評価というものに対する当事者の関心は、はるかに強くなるという実体的な面と、農家の側に立って考えました場合に、補助金は確かに何らの負担を伴わずに受けるものでありますから、その意味では、あるいは好ましいという考え方もあるかもしれませんが、同時に、補助金そのものは、これはあらかじめそういう形の制度として、補助金を出すというような考え方制度とすることはできましても、いついかなるときに、幾ら交付するということは、これはそのときの財政と常にあわせて考えていかなければならない。ところが、現在の災害補償制度では、これは機械的に国の負担すべきものはきまり、不足すれば、必ず財政がその負担をしなければならない。一方において、農家負担するかわりに、同じ方式で国も負担するということによって、自動的に災害対策としての財政の問題ということを離れて解決できておる。そういうような面からいって、現状制度のほうが望ましいのではないか、こういうように考えております。
  46. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 今補助金という表現を使いましたが、農協大会の決議は、補助金ではなくて、国家でこの農作物の天災による損失を補償するということ、それに対して、損害評価の問題と財政負担の問題を反対の理由にあげておりますが、それでは制度協議会の審議の際に、かつて大蔵次官をした河野委員が超無常災害あるいは異常災害の予算支出に支障ありとは考えられない、当然これは、予算的に確保せらるべきものである、という意見を述べておりますが、そういう適正な意見があるにもかかわらず、機械的にそれを予算で確保できないというのが、大方の国家補償を否定する根拠になっておった。その河野委員の明らかなる、私から言えば当然なるそういう発言というものを十分踏まえて、これをもっと積極的に、抜本的改正内容考える、そういう前向きの意思が最初からなかったんじゃないかと思うのですが、どうですか。
  47. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 前向きでありますか、後向きでありますか、私ども必ずしも、そこはどちらということは考えておりませんが、河野委員が当時問題にされたのは、強制加入でなくて、任意加入にしても国庫負担をする理由がある、こういうことを言われたので、国家補償ということに関連して言われたのじゃないと私は記憶いたしております。
  48. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そうではなくて、財政支出を予算であらかじめ超異常災害、異常災害については確保することに何ら支障がないはずである、ということを言うておる。別段、これをこれ以上取り上げる意思もないのですけれども、問題は、今のような政府の予算の、しかも農林予算の相当部分を政府が財政支出をして、なおかつ、それが農家に、末端に届く場合には、さっき言ったように多くの負担から見れば、差し引きはきわめて少ない、せっかく出すためには、そういう当然かかるような仕組みの事務費というものを合理化して、そうしてそれらの相当額を、大部分を、これを災害補償に充てるということこそが、私は税金を有効適切に支出する農業災害に対する基本的なやり方だと思う。そういう農協大会の総意というものを、従来のワクの中で、これをネガティブに取り上げておるところが私は、根本改正がなされない態度の一つだと思う。だから、それをここで取り上げておるわけです。うしろ向きか前向きかわからぬという皮肉めいた答弁ですが、抜本的改正からいえば、そういう要素をきわめて軽視していることを私は抜本的改正に対しては、うしろ向きであると断ぜざるを得ない。だから、こんな手直しでは――あえて手直しと言いますが、手直しでは数年ならずして、この制度がさらに一そうの行き詰りを来たす、そういうことを言うておる。もう少し真剣に考えてほしいと思うのです。
  49. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連して。局長が今、国家補償について財源的な問題にちょっとお触れになった際に、国家補償の場合だと財源を十分確保できないのじゃないか、それに比較すると、現行制度のほうが、計算上きちっと政府は必ず責任を持たなければならぬ、こういうことになってゆくので、そういう面から現行制度のほうがいいのじゃないだろうかというふうな考えを持っておられるように、私ちょっと聞いたわけですが、しかし、そういう取り方は、それは国家補償制度を主張しておる人たちの真意をやっぱりつかんでおらぬわけでして、国家補償制度を樹立する以上は、もちろん、そこに損害評価等の、そういう手続も入るわけですが、そういう手続を踏んで出た結論については、やはり、国は責任を持つ、そういう財政が許す範囲内において処理するとか、そんなあいまいなことをこれは言っているわけじゃないのだ、国家補償というのは。どうもその点、説明中に、そういう点をちょっと誤解されて、かえって、国家補償制度のほうが農民のためにならぬのじゃないかというふうにとっておられるように聞いたわけですが、もう少し、そこを詳細にお答え願いたいと思うのです。
  50. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 少し説明が足りなかったかと思いますが、国家補償制度を提唱される方々は、おそらく今、亀田先生のおっしゃったように、損害評価ができて、それできまった損害に対しては自動的に政府が財政負担して支出する、こういう考え方で提唱されておるが、それは私も、そう理解しておるのであります。ただ今の財政制度からいいまして、たとえば継続費とかそういうものが適用されないわけでありますが、そういった補助金というものが制度としてでき得るかどうか、今の財政制度の中で。まあ例がないと申し上げていいと思いますが、その辺に私ども相当疑問を持っておるのでございます。独立した保険事業の特別会計として、独立して運営されて、必要によっては借り入れもやる、そういうような体制で運営されていくような財政制度としてできるかどうか、かりにまあ論理上はできるにいたしましても、それを実現することについて相当、なかなか困難な問題、いろいろな財政制度上の疑義があるのではないかという点を、私ども事務的に検討したときには持ったわけでございます。
  51. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは関連質問ですから、あまり議論もする必要はないかと思うのですが、農業災害という特殊な問題に対して、国がやはりこれを全部めんどうを見ようという、その方針をきめることが、大事なんであって、きまりさえすれば、この膨大な国家予算の中において、それが毎年義務づけられていくような格好で、この特別会計なりを作り上げるということは、これは私は、少しもそんな困難な問題じゃないと思います。  だから、何かそういうことが非常に既存の財政制度等の上から見てむずかしいのじゃないかというふうな議論は、やはり根本においては、これは国家補償制度をとりたくないという気持があって出てくる議論なんで、私はそういうふうに見ているわけです。この国家補償制度というものは、相当な方々が主張しておることなんですから、もっとありていに検討をしてほしいと思う。まあこれは要求しておきます。
  52. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) もちろんこれは基本的な問題でございますから、今後とも十分検討いたしたいと思います。
  53. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それでは、今度の改正法案が出されるに至った経過を少し伺っておきたいと思う。  まず、最近の新しいところから伺いますが、三十四年の十一月に農業災害補償制度研究会が農林省内に設置された、これの制度改正についての考え方が三十五年の三月十六日にまとめられておりますね。この研究会の考え方、これをどの程度ふまえて改正案を出されたのか、まずその考え方の骨子となるものの御紹介をここでしていただいて、それに対する改正案に、どれだけそれが反映されたかを関連してお伺いをしたいと思います。
  54. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 研究会の考え方の要旨は、第一点としましては、任意加入にしたい。これには若干の制限がございますけれども、そういうことでございます。  それから第二点としましては、共済目的農業所得の形成に重要な地位を占めていない地域では除外できるようにしたい。この考え方は、現在も入っておるわけです。これは協議会案においても、研究会の案というものが基礎になって論議されております。だいぶ協議会案に取り入れられておるわけです。  その次に、補てん方式でございますが、これは農家単位収量建てでございます。これも協議会案に、そのまま取り入れられたわけでありますが、今回の改正法律案には、一筆収最建てを続ける。こういうことになっております。  それから組合共済責任でございますが、これは通常部分を保留し、異常災害部分を国の保険に付するということになっておりまして、これも協議会案では承継されたわけでございますが、今回の政府改正案でも、ほとんどその趣旨に沿って改正案が出されております。  それから、その次の点としては、共済掛金率と国庫負担関係でございますが、掛金率は最近の被害実態を反映するように設定する。  それから、共済掛金のうち通常部分の二分の一と、異常部分の全額を国庫負担とする、この前段のほうは、もちろん今回の改正で取り入れられておりますが、後段のほうの国庫負担方式につきましては、これは超過累進方式を今回の改正案ではとっておりきす。  それから共済事故と、病虫害の防除でございますが、病虫害は共済事故から除外する、こういう考え方を出しております。協議会案でもそれはできるものはそうする、こういうことでございますが、今回の改正案においても、おおむねそういう考え方を踏襲いたしております。  それから、これは少し違うところでございますが、高被害地域の取り扱い、高被害地域は社会保障的見地からの保険として、この農災制度からはずして別途の措置を講ずる、こういう考え方を出しておりますが、これは協議会案では、そのまま取り上げられなかったのでございます。政府案としても、その考え方はとっておりません。
  55. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 今答弁がありましたように、当然この研究会を受け継いで農業災害補償制度協議会が発足をしたわけでありますから、この制度協議会、これが一年以上かかって四十四名の委員が出て、小委員会を設けて、そうして答申をした、この答申の中に、こういうことがうたわれておる、「農業災害補償制度改正については、昨年」――というのは、三十五年ですね、三十五年「四月一日以来当協議会は、慎重審議を重ねた結果別紙の通り意見をとりまとめたので報告する。」  「政府は右の意見を充分尊重して速かに制度改正を実施することを強く要望する。」「なお政府は、当協議会の正式結論が出される前に昭和三十七年度予算編成に関連し、当協議会の経過を軽視する如き措置をとりつつある模様であるが、このことはまことに遺憾である。」まあ、ちょっとこういう取り上げ方は異例に属することだと思うのです。すでにして、これらの政府も自民党も社会党も民社党も学識経験者も、四十四名をもって構成して、そうして慎重審議をして、答申をしておる、その結論が出される前に、もうこうしたような協議会の経過を軽視するごとき措置をすでにとっておる。こういうこと自体が、私は非常に大きな問題だと思うのです。  それで、その軽視する措置というものも、だんだんに経過の中に、まあ明らかにされるわけでありますが、まず第一に、私はこれらの委員会で、十分審議をした答申の内容というものが、十分尊重される内容抜本的改正がなされるべきものと考えておったのでありますが、その法案説明並びにただいままでの当委員会質疑を通じますと、これらの制度協議会の答申は、むざんにも最も重要な点において無視されておる。そういうことでは、これは多年の要望にこたえるものではない。そこで、この制度協議会答申の内容を、この法案を審議するにあたって、十分ここで私は吟味する必要がある。それが審議の促進にもなるし、今の法案に対する一つのはっきりした考え方にもなるわけでありますから、この答申の、それぞれの取り上げた項目について、この点は取り上げなかった、この点はそのまま取り上げた、ということをつけ加えて、今度の改正案と対照して、ひとつ御回答を願いたい。項目別に……。
  56. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) それにつきましては、一番最初に、審議が始められましたときに、資料としてお配りしまして御説明申し上げておりますが、繰り返して申し上げます。  まず共済責任の拡充でございますが、表をごらんいただきたいと思います。その共済責任掛金につきましては、ここにも書いてございますように、協議会案におきましては、「その共済責任のうち、当該組合等の通常危険責任部分を保留し、異常危険責任部分を農業共済保険事業団の保険に付する」ということになっておりますが、三十八国会政府提出案では、これを踏襲はいたしましたが、今回の提出案では、その通常を保留して異常を上に上げるという点では同じでございますけれども機構現状にいたしましたので、「連合会の保険に付する」、こういうことになっておるのでございます。末端の責任を拡充するという点におきましては、協議会案以来、一貫した考え方をとっておるわけであります。  それから協議会案のその次の点では、画一的な強制方式を緩和する、こうございますが、これは「任意加入の範囲を地方の実情に応じ引き上げるものとする」、こういう考え方でございますが、今回の改正法律案は、これを具体的に表現して表わしているわけでございます。  それから「組合等は、水稲、陸稲、麦ごとに組合員の三分の二の同意があるときは共済事業の一部廃止をすることができる。」、つまり一部廃止について協議会案はうたっておりますが、今回の改正法律案におきましても、一部事業廃止を認めております。ただ、そのやり方にちょっと違った点がございます。  それから損害が起きた場合の補てん内容の充実でありますが、これは協議会案が農家単位制をとって二割足切りといたしましたのを、今回の改正法律案は、たびたび申し上げておりますように、現状一筆収量建てでいく。ここが重要な相違点でございます。それから第二点として、「単位当り共済金額を引き上げる」、これは協議会案で出ておるわけでありますが、今回の改正法律案におきましても、九割まで引き上げるということで、協議会案どおりでございます。  それから次は、掛金率と国庫負担方式の合理化でございますが、まず協議会案では「組合ごとに共済掛金標準率を定める。組合等は被害実態に応じ地域別に共済掛金率を細分できる」、こういうことになっておりますが、今回の改正法律案も、ほぼこの協議会案どおりでございます。  それからその次は、水稲の病虫害共済事故除外と共済掛金の割引でございますが、これも協議会案の考え方を、そのまま踏襲いたしましたが、いろいろな、どういう病虫害事故を除外するかということを具体的に定めて、また国庫負担をするということを具体的に定めておるのであります。  最後に、実施機構でございますが、これは先ほど申し上げましたように、事業団方式をやめましたので、この点はまた、大きな違いでございます。  大体、大まかに申し上げますと、以上のとおりであります。
  57. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私は今のお話は、どうも非常に問題点を省略し過ぎていると思うのです。これは各論で質問する際に、それでは引用しますけれども、たとえばこの機構の中でも、組合等の場合に、市町村への事業の移譲、農協等への事務の委託、そういう点を取り上げておる。あるいは今の説明の中に、「現行制度で農作物共済共済関係が当然に成立することとなる農業者については、」――あなたはよく資料を見ろというから、見ながら聞いていたのだが、「その当然成立の要件である一定規模を地方の実情に応じ引き上げるものとする」の説明はあったが、その次の「農業共済組合または市町村(以下「組合等」という。)は、共済目的ごとに、その共済目的について現に共済関係が成立している組合員の三分の二以上の同意がある場合には、その共済事業を廃止することができるものとする」、こういう点を、さっぱり説明していない。これが一体、今度の改正法で、どういう取り上げ方をしているか、そういう最も大事な点を、あなたは説明にはさっぱり触れていない。また、それを実施する場合も、同様の農業者の二分の一以上の同意によってその共済目的について云々ということを協議会では答申しておる、そういう答申を一体、今度の改正案は、どれだけ尊重しているかを総論として聞いておる。  また、共済責任保険責任のところでも、非常にその説明が不十分で、共済金の支払いに不足を生ずる場合の取り上げ方についても、その不足分について事業団の融資または債務保証を行なうということを答申でうたっておるものの紹介がない。資料を見ろと言うから、僕は資料を見ている。大事な点が、さっぱり説明になっていない。総論で、そういう点を親切に説明すれば、各論では時間がかからぬから、私は聞いておるのだ。一切これは各論で、ひとつ具体的に質問せざるを得ない。基準収量についても同様、損害評価についても同様、事務費についても同様、全額が国庫負担する云々ということを、一体政府はどれだけ予算で措置をしようとしておるのか。これも計数をあげて各論で質問せざるを得ない。災害融資との関連をどう取り上げるのか、任意共済はどうなるのか、最も問題になっているのは、さっぱり大ざっぱな説明の中からはずして、資料を見ろと言うから僕は見てあなたに注意しておる。非常に私の質問に対しては、あなたの答弁は不誠意である。これは各論で質問せざるを得ない。それだけ時間がかかりますから……。そういう総体から言えば、制度協議会の答申の肝心なところが骨抜きになって改正案が出ておる。総体的には、そういうことを言わざるを得ない。  そこで、この制度協議会の答申が、かくもむざんに軽視され、要素によっては無視されたものが、どうしてそういうことになったかを年次別に経過で伺うわけですが、それには三十六年の一月十五日に、自民党の農林部会が農業災害補償制度について意見を表明しておられるその点が、制度協議会と一体、どの点が違うのかをひとつ御紹介を願いたい。
  58. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 三十六年一月十五日の自民党の政調でまとめられた考え方は、まず第一点におきましては、特別会計を廃止して保険事業団を新設する。それに対して基金と協会を合併し法制化する、こういうことでございますが、これは協議会案とは違います点は、連合会を事業団に吸収しないという点が違っております。  その次に、「通常災害に対応する共済責任の全部を、組合等にもたせる」ということで、これは協議会案と同じでございます。それからその次に、組合等は手持ち責任部分の一部を、連合会の歩合再共済に付することができる、これも考え方としては同じでございます。それから公団の職員、公団と言いますか、事業団の職員を損害評価の管理のため都道府県に駐在させる、これは当然、協議会案と違っておるわけであります。協議会案では、連合会をも吸収して一体にするわけでありますが、その場合は、連合会はそのままにして、事業団の職員を県に駐在させるという考え方を出しております。  それから共済団体等の基幹的事務費は全額国庫負担、これは協議会案と考え方は共通でございます。それから建物任意共済事業は別途検討する、こういうことになっております。  協議会案と、当時の自民党の政調の御決定は、若干の相違があるようでございます。
  59. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 この相違が、非常にまた問題であることは、当時のいろいろな参考文献を見ても明らかであります。任意共済についても、別途検討するというふうに、非常に扱いが後退をしている。かなりすっきりしたはずの機構も、三段制が復活をしている、これらが先ほど紹介した答申の前文にも現われているように、協議会のはっきりした結論が表向きには出なかったが、小委員会でもうはっきりしている。そういうことを百も承知なのに、その正式結論が出される前に、「当協議会の経過を軽視する如き措置をとりつつある模様であるが、このことはまことに遺憾である。」と、制度協議会の議長名をもって、当時の周東農林大臣に申し入れをしていることが、そういう内容をまた前提として、従来の一年以上にわたる制度協議会としては、きわめて遺憾であるゆえを表明せざるを得なかったと思います。それは一にかかって、この制度協議会のメンバーに、政党でも一番多くの委員を送っている与党である自民党が、その協議会の答申を歪曲して、制度改正について意思表示をしている。三十六年の五月十日に、農林省農林経済局は、制度改正に関する改正法律案要綱を出しているが、これは一体、この協議会の答申と、自民党の農林部会のこの改正と、それぞれをふまえて、どういう関連でこの要綱を出されたのかを御説明願います、相違点を。
  60. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 当時の党と政府側との折衝のこまかい内容につきましては、私つまびらかにいたしませんが、農林省としましては、当時協議会案の答申が出る前に、政府案をきめて予算を編成し、提出すべき法案の骨子をきめて予算を国会に提出しなければならない段階であったわけでございますが、その段階で党と折衝いたしまして、小委員会案に若干の修正を加えて提出いたした、こういう経緯になっているようでございます。  その修正点は、協議会案では、連合会をも吸収した事業団を作るという考えでございますが、政府案におきましては、特別会計だけを改正して、中央に事業団を置く、連合会はそのままにするという点では、党とも考え方は共通になっているようであります。それから基金と協会は吸収しないという点では、党の案とは違う、党の案といいますか、当時の政調の御決定とは違っておるのでございます、政府案は。それから、その他の点につきましては、おおねむ党の政調の考え方と当時の政府案の考え方は、大体同じである、こう申し上げてよろしいかと思うのであります。
  61. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 まあ総論であまり詳しく聞くのも、どうかと思うのですが、それでは順序を追うて聞きますが、三十七年四月二十四日に、自民党の農業災害補償制度改正に関する修正案が公示されましたが、これは協議会答申と、どの点が相違しますか。
  62. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 自民党の修正案が公示されたと言われておるわけですが、これは四月二十七日に衆議院の農林水産委員会において、修正可決されておるわけであります。その修正点は、中央だけの事業団を作るということをやめるということと、農家単位をやめるということが重要な修正点でございます。
  63. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 従来は問題がなかったところの制度改正に伴う掛金の増高する十六道県については、その負担増になる部分は、特例を設けて増高を来たさないように措置する、これはかなり新しい要素ですよ。あなたの答弁にはないが、その点はどうですか。
  64. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 言い忘れましたが、その点も衆議院の修正に入っておるわけであります。
  65. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そこで、この全体の質問は一応おえまして、それぞれの具体的な内容に入って質問をいたしたいと思いますが、まず機構についてであります。  機構については、この制度協議会の答申は、農業共済保険特別会計に農業共済基金を合わせて全国農業共済協会も一本にして、県の連合会はなくする、こういう従来の仕組みからいけば、十分ではもちろんないけれども、かなりの機構の改善であったわけですね。その改善される上部構造機構の要素であるところの内容について、少しく立ち至って伺いたいのです。  まず、農業共済保険特別会計、これの最近年次の会計内容、事業費ですね、担当人件費事務費、これはどういう内容になっておるか、この点から伺います。
  66. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 特別会計の最近におきます状況の収支から申し上げますと、二十二年以来、いろいろ過不足がございます。収入は、大体再保険料が収入になりまして、支払いの再保険金が支出、その差額が収支の過不足分になるわけでございますが、二十二年からずっと二十八年、九年あたりまでは、いろいろ災害が続きまして、特別会計は非常な赤字を生じました。その不足につきましては、一般会計から繰り入れてまかなってきたのでございます。ところが三十二度以降、次第に豊作が続きまして、いわば剰余金が出るという格好になりまして、この剰余金につきましては、一般会計から不足金を繰り入れたときに剰余金が出た場合には、これを一般会計に返済をするということが法律に定められておりますので、順次返済をいたしております。現在なお、返済の不足がございまして、一般会計からは、約九十五億借り入れたままになっておるのでございます。これらも、今後の剰余その他の見込みによりまして、処理していくということになっております。それが特別会計の大体の収支でございます。  あとは、一般会計の収支と申し上げますと、本省の一般会計の事務費といたしましては、通年、最近では二百万円前後、約二百万円でございます。それらの経費が計上されております。それから、さらに都道府県等に対しましては、共済組合等の指導監督のための補助金を支出いたしておりまして、現在約六千八百万円程度、毎年支出いたしております。それから組合等の事務費につきましては、やはり基幹的事務費につきまして負担いたしておるわけでありまして、その額は逐年増加いたしておりますが、最近では約四十九億円程度負担しております。それからさらに、特別会計等を通じまして掛金国庫負担をしております。これらは農作物勘定、蚕繭勘定等におきましては、通常、異常、超異常に分けまして、それぞれ二分の一ずつ、超異常につきましては全額国庫負担いたしますし、家畜等につきましては、死廃関係掛金のほうにつきまして、二分の一相当額負担をいたしております。これらは大体、現在、農作、蚕繭勘定で八十四億円程度を負担をいたし、家畜勘定におきましては七億程度の負担ということになっております。さらに特別会計を処理いたすために、事務人件費等も業務勘定経費として支出いたしておりますが、これが大体一億四千万円程度でございます。その他合わせまして、三十八年度予算におきまして、農業保険関係の一般会計並びに特別会計の経費総額は百四十四億八千七百万円ということになっております。
  67. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 ちょっとつけ足して、この担当職員数は何名ですか。一億四千万のいわゆる事業費と称する事務費人件費の担当職員数。
  68. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 農林本省におきまして、特別会計に従事いたしております定員は現在百五十二名であります。
  69. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私のお伺いしたいことを申し上げて、それに合うかどうか、違ったら、そういうところで、もう一回伺いたいのは、この制度協議会の答申で、農業共済保険事業団を作ることを答申の大きな柱にしておりますが、その場合に移行すべき内容としての対象人員は、何名がこれに当てはまるものか、特別会計の百五十二名だけなのか、一般会計担当者の相当数も移行するのか、そこら辺もあわせて伺いたいわけです。
  70. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 当時、一応考えられておりましたのは、ちょっと数字がはっきりいたしませんが、特別会計の中でも、やはり事業団に移行をいたしませんで、本省に残りまして、いろいろ仕事をする人間があるわけでございまして、それらを差し引きました残りが事業団へ移行する、当時事業団に移行しないで、本省に残る人員は、概略十人内外というふうに記憶いたしております。
  71. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 こまかいようですが、そうすれば事業団移行の員数は、百四十名とみておったと理解していいですか。
  72. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 正確に申し上げますと、当時特別会計から事業団へ移行する人間は百三十六人、に予定しておったようでございます。
  73. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それでは、次に農業共済基金、これの説明はまだ聞いていないわけですが、この基金の事業の内容と、その従事者、事務費、その収入の財源は、どうしてまかなわれているか、その点をひとつお聞かせを願いたい。
  74. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 農業共済基金は、御承知のとおり農業共済基金法、これは昭和二十七年にできました法律でございますが、それによりまして昭和二十七年八月に設立認可があり、九月に登記が完了し、発足をいたしておるのでございます。これは、この法人の目的は基金法にもあるわけでございますが、共済組合及び共済組合連合会の保険収支の長期均衡性にかんがみまして、農作物共済、蚕繭共済、家畜共済等につきまして、その保険金の支払いに必要な資金の供給を円滑にするということが目的になっておるのでございます。会員組織になっておりまして、現在四十六の都道府県農業共済組合連合会が会員になっております。それから事業運営のための資本金でございますが、総額は三十億円でございまして、そのうち政府出資が十五億であり、会員の出資が十五億で、全額払い込み済みでございます。それから業務の内容は、先ほど申し上げた目的に沿い実施いたすのでございますが、具体的には資金の貸付と、それから債務の保証ということになっておりますが、現在債務の保証等はやっておりませんで、すべて資金の貸付をいたすということになっております。なお、三十億円の資本金で不足いたす部分につきましては、農林中央金庫から資金の借り入れをいたしまして、貸付をいたすことにいたしておるのでございます。現在の機構でございますが、役員は理事長一人、専務理事一人、理事二人ということで、そのほかに役員としまして監事二名置くのでございます。職員でございますが、職員は現在二十三人でございます。  それから収支の経費内容を申し上げますと、三十八年度における収入は、貸付金の利息、これがおもでございまして、それらを合わせまして、約二億五千万円でございます。支出もそれに一応見合っておりますが、その支出の大部分、相当部分が中金等から借り入れます借入金の利息支払、これに当たるわけでございますが、いわゆる業務等の経費は、全体で五億五千万円ということになっております。なお三十八年におきます剰余の見込額は約一億三千万円というふうに予定されております。
  75. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 これは、今度の長雨対策等で出てくる問題ですが、これはいずれ大臣が来たら、その点を伺う中の事務的な問題として、あらかじめ伺うのですが、政府は、この処置に対して早期に概算払いをすると言明しておられますね、共済金の。そういう場合に起きてくる問題は、政府がそう言明をしても、地方の県の団体で、これを資金手当をするには、当然この基金からの借り入れに仰がなければならない。その間の借り入れに伴う金利負担が非常に重荷になるわけです。政府は早期に支払うと言明しても、この資金手当は、この団体等で基金からの借り入れでまかなわなければならない。そうした場合の金利というものは、早期に支払いを言明している建前からいっても、相当部分を政府みずからが金利を負担して早期支払いに充てるということであると思うのですが、その点の措置は一体どうなのですか。
  76. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) ちょっと数字――多少事務的にわたりますので、お答え申し上げますが、被害がひどい場合に組合等で仮払いをするわけです。政府といたしましては、なるべく早く仮払いをするようにということを指示いたしております。この仮払い資金でございますが、これは組合の場合には、まず組合に保留されております掛金、これが充当されるわけでございますが、これは現在一割程度しかございませんので、当然これは、連合会からの仮払い資金、これをあてにしなければならないわけでございます。連合会は、当然また必要な仮払い資金を供給するわけでございますが、異常災害でございますので、連合会の手持ちでも、なお支払いに不足するのは当然でございます。ただ、通常危険責任部分をこえます部分につきましては、これは政府の特別会計から概算払いをいたします。したがって、それでまかない得るわけでございますが、問題は通常危険責任部分の中で、組合及び連合会の手持掛金並びに保険料と、それから、危険責任との差額が問題になるわけでございますが、この差額につきましては、これは従来から法定積立金その他の積立金がある連合会は、当然その積立金をくずしまして支払いに充てるわけでございまして、これは金利その他、自己資金でございますので問題はない。そういうような手持ちのない、いわば従来から赤字を持っている連合会でございますが、これらに対しましては、基金から融資いたします。その場合の利子は一銭五厘でございまして、なお、この利子部分につきましては、従来からの赤字もそうでございましたが、元加いたしまして、将来災害の少ないときに返済をいたすということが建前になっております。当面は、金利支払いの資金手当は要しないというふうに私ども考えております。
  77. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 その手持部分の取りくずしのできないケースですね。そのときに利子は元加するということの御答弁ですけれども、私たち現地調査班が九州へ参りました際に、たまたまこの長雨対策は農政局主催で、各県の責任者、県庁の責任者を集めて相談をしておった。そのときに、この利子負担が問題になっておるわけですね。これを元加して、災害が起こらない場合に、これを返済するという措置では、これは政府の措置としては非常にどうも早期に支払うという建前からいって、どうも責任が持てないようなことになるのじゃないかということが現実に相談の中にのっておることを私は報告々受けたわけです。そういう場合の、早急に、これは、各県によって、それらの事情が相違しましょう。しかしどうしても基金からの借り入れによらなければ、政府声明に基づく早期支払いができない場合の金利負担というものは、政府がこれは金利の責任を持つべきものと思うのですが、そういう措置をとるという考えはないのですか。
  78. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) この基金の役割が、ただいま御説明申し上げましたように、連合会の不足金に対して融資する。これは短期の場合もありますし、長期の場合もあるわけでございますが、そういう役割でございまして、その金利は一銭五厘、年五分四厘ないし五厘程度のものでございますが、それで従来、すべての災害に対しまして不足金を融資してきておったわけであります。これはその態勢は今回も変わらないわけでありますが、ただ問題は、むしろ従来から不足金といいますか、赤字が累積しておって、今後連合会がそのために活動が十分できなくなるような事態が起きた場合に、どう措置するかという問題になってくるかと思います。それについては、先般も申し上げましたように、今後も検討して参りまするが、従来からの経緯から見ますると、災害の多発した時期に不足金ができたものが、やや連合会の数からいえば減ってきている傾向がある。また、今回の災害でややふえることが出ると思いまするが、それらの全体を合わせまして、その原因別に検討して、今後必要によっては処理しなければならぬ問題である。こう考えておるのであります。
  79. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いずれそれは各県から、その県の実態に応じて問題が出てくると思いますから、それは直ちに政府言明に即応するような裏づけをひとつぜひ講じていただきたい。これは現地からの要望、現地で受けましたので、この際に御紹介を申し上げておきます。  それから、この方針の対象の一つである機構農業共済保険事業団に対する全国農業共済協会、これについては前の委員会でも、ある程度の質問に対して御回答をいただいておりますが、あの中に、利子収入というのがありますね。これはかなりの巨額に達しておる。それの源泉の説明がなかったのですが、それはどこからあれだけの利子収入を得ておるのか、その点が説明に・なかったので、この際、明らかにしていただきたい。指導事業の説明はあったが、財源収入の源泉の説明はなかった。
  80. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 協会につきまして、その収入は、繰り返して申しますが、特別会計が二つございます。それを除きました会計では、三十七年度でございますが、収入、支出とも約三千三百万円でございます。そのうち今御指摘の利子収入でございますが、私ども、そう多額とは聞いてないのでありまして、三千三百万のうちの約八割は会員の会費二千六百万円、あとは事業委託収入が約二百万円、雑収入が三百五十万円ございますが、これは利子その他ということで、これはそう多額と必ずしもいえないのではないかと考えております。むしろ利子収入があるとすれば、特別会計等におきましては、これは職員の退職その他の給付事業をいたしておりますが、それらの資金の積立がございます。それらの収入は、それぞれ特別会計で処理をいたしておるわけでございます。そのほうは、相当収入もある、こういうふうに考えております。
  81. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それだけが対象ですか。あとは何もないのですか。
  82. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) あとは、前期繰越金が約百万円ございまして、合計三千三百万円。
  83. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 なければ、ないということで理解をしておきます。  この農業共済保険事業団が構成されて、当然県連が解消して、事業団の県の支所に統一される、そういうかなり機構については抜本的な答申が出たのが、なぜもとのもくあみのようになったか、この間の事情をひとつお聞きしたいと思います。
  84. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) これは一面においては、農家単位制をやめたということが、連合会を存置することの大きな理由の一つであったわけでございます。事業団が直接単位組合に設置していく、それで農家単位制を、連合会の職員等ももちろん吸収されまして、陣容を整備して、農家単位損害評価等をできるだけやりたいというふうな趣旨があったわけでございますが、それが、まあ農家単位は、いろいろな事情でやめるということにいたしましたので、事業団は、その残す理由のまあ半分を失ってしまった、こういうことでございます。もう一つの理由は、直接今度は連合会というものを通じないで、二段制にして、移譲部分は全部事業団が負うという建前になったわけであります。それだけは大部分が残ったわけでありますが、存続せしめる理由の一半が失われた、こういうことであると私は承知いたしております。
  85. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 午前の総括では、問題点指摘した際に、一筆建と農単建との問題点を申し上げたのですが、それにしても、この機構現状維持に引き戻す理由の半分が農単建をやめたということであれば、なおさら、こういう一筆建にしたことの私は方向というものが、非常に行政指導の点からいっても、あらゆる点からいっても、これは非常に問題だと思うが、むしろ問題はそこにあるのではなくして、今の仕組み、今の運営、そういうものに、あまりにもとらわれ過ぎた結果である、抜本改正をやる勇気を失った結果である。そうお考えになりませんか。
  86. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) どうも私から当時、人の気持までちょっと申し上げかねるのでございますが、農家単位については、これは実際問題として、われわれは農家が、むしろ一筆制を望むと判断をしたわけでございますが、これはその前に総理府が世論調査をやった場合の結果が出ておるのでございます。二百の組合で三千戸の農家について調査しました結果は、五八%――約六割が一筆制のほうがよろしい、一五%が農家単位のほうを選ぶ、こういう結果が出たのでございます。まあそれらも勘案して、農家単位を存続するという判断をしたわけでございますが、まあそういったことで、現状を変革することに対する、どういう気持だったかということは、ちょっと私からは申し上げかねるのでございます。
  87. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私が申し上げるのは、単なる抽象論ではなくして、午前にも言うたはずですが、どうもあなたには受け取りにくいようですが、今の末端における共済組合農家とのつながりの基本的な問題点と、県段階における保険のつながりと、県と国とのまた再保険、あるいは国家補償的なつながりとのそういう矛盾を断ち切るのには、少なくともこのげたばきの非常にヌエ的な、頭は官営で足は民営というような、そういうものをすっきりして、必要な事務費を最小限にとどめて、政府の支出した貴重な金が、そのまま農家に届くような仕組みの中で前進する仕組みとしては、こうしたような農業共済保険事業団を設置して、県連を廃止して、そうして大きく一歩進むのが、これこそ前進の措置だと考えるのですが、それがどうもアンケートと称する今の五十何%ですか、一筆建が賛成だというような、その農家の今の一筆建という思想は、午前にも指摘しましたように、上からの補助金をもらう仕組みとして考えるから、そういうことになりがちなので、もっと前向きにその問題を持っていくとすれば、困難な要素はあっても、農単建にこれをはっきりと整理をして、そうしてまた上部構造も三またに分かれておるものを一本化し、そうして複雑に仕組まれておる、世界に類例のない複雑な仕組みを二段にする、こういうことこそが、私は、抜本的な改正ではないが、抜本的な改正に大きく一歩を踏み出す措置であると思うのですが、それに対する答弁としては、はなはだどうもその理由は薄弱であると、言わざるを得ない。それは明らかに経過でも取り上げられたように、自民党でその後制度協議会とは異なった現状の三段階がいいという内容政府は引きずられたのであるというふうに考えざるを得ないわけです。基本的なそういう組織の、また仕組みの複雑さというものは、今度の改正では取り上げられていない。改善の方向が取り上げられていない。依然として事務費は増高する運命をになっておるわけです。その点からも、今度の手直しというものは非常に場当たりなものと言わざるを得ない。また制度協議会の答申で、組合等について触れておりますが、必要なものについては、市町村へ事業の移譲云々とうたっておる。これについて過般の農林大臣の答弁は、市町村移譲をあまり奨励しないようなことを言うておるのですが、これもすっきりと政府が、これから出てくる基幹事務費と称するもの、事務費人件費を全額補助をするという建前からいっても、市町村移譲というものは、積極的に指導の方針を政府としては確立すべきものだ。制度協議会においても、そのことを取り上げておる。その点についての局長の御意見はいかがですか。
  88. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 市町村への事業の移譲は、現在は制度として行ない得ることになっておりまして、相当数が年々増加しつつあるわけでありますが、協議会の答申のうち、農業協同組合等への事務の委託を行なうことができる、これは今回の改正でそういうふうにいたしております。それで市町村への事業移譲を促進するかどうかという問題は、これはなかなか重大であり、また非常にむずかしい問題でございますが、農林省としましては、事業規模の小さいもの、適正な運営がむずかしいものは、これは移譲をされてしかるべきだ、しかし全体として促進するということにつきましては、現在の共済組合制度にもまたよい点がある。自主的に運営されるということが、これは農家の意図を反映させるという組織としていい面がある。市町村に移譲された場合は、その点において若干の難点がある。特に最近の都市化された市や町の場合としては、その点に若干の問題があるということも考えておるわけでございまして、市町村に積極的に移譲することを促進するということにつきましては、農林省としては消極的にならざるを得ない、こういうことでございます。
  89. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 政府の提出した資料によりますと、五月一日現在で、市町村に移管したものが六百八ですか、という数字の発表がある。これはかなり最近の傾向値としては増高の一途をたどっている。消極的にならざるを得ないというその姿勢の中で、今後の動向をどう見きわめておられますか、その問題について。
  90. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 今日までの市町村への移譲が相当急速に進んだという点につきましては、これは今まで移譲された町村組合が、どうも事業の効率が非常に悪いとか、あるいは運営が適正を欠いたというところが他に移譲された。また、農家不満がかなり強くて運営がうまくいかないというようなところで移譲が進んだというふうに私ども考えておるわけでありますが、だんだん残って参りまして、残っておる組合はかなり大型の組合であって、運営はこれらの場合に比べれば比較的よく運営されておるというものが残ってきておるのと、また今回の改正によって農家不満が相当緩和されるということを考えまして、市町村への移譲というものは、まあ今までのような急速な勢いでは伸びないのではないか、こういうように考えておるわけでございます。
  91. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 これは見通しの問題ですから、伸びないのか伸びるのか、推移を見なければわかりませんが、私はそうい消極的な態度を捨てて、こういう方向にひとつ積極的な行政指導の姿勢を示してほしいということを意見として申し上げておきます。  それから次に、順序不同でありますが、お伺いをいたしたいのは、この基準収量と損害評価の問題であります。この基準収量と損害評価関係では、前回のこの委員会でわれわれ調査団を代表して温水委員が報告した中にもありましたように、被害率というものを重量評価で出しておる。これについて局長は、被害率は重量評価で出すのだ、経済的減収は見ないのだ。こういうことを別な機会に答弁されておりますが、その点間違いないですか。
  92. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) これは事実的には量的な減収でいかざるを得ないのが現状でございます。しかしながら、今回の長雨被害のような場合にえさにも売れない、全然経済価値がゼロになったようなもの、しかし目方はあるというようなものについては、これを減収の扱いとするように通達はいたしております。それでその基準は近く示したいと考えておるわけでありますが、一般的に、それならば経済価値が低下した場合に、たとえばこれは何円に売れるか、少し被害を受けているそれらも全部減収として考えるかということは、これは実際問題として容易でない。損害評価にあたるにしましても、同じ米が本来一升百円のものが九十円に下がった。その十円を損害評価としてやるかどうかということは、なかなか技術的にむずかしい、実際問題としてむずかしい点ではございます。ですが、これは当委員会の御要望もございますので、どうやってそれをやるか、今後の問題として研究はいたしたいと考えます。
  93. 森八三一

    ○森八三一君 今の問題ですね、きのう私も尋ねたのですが、一穂々々を調べてみれば、その一穂の中には一粒とか二粒とか正常なものがある。そいつを一反歩に延べてやれば、かりに予想収穫量の一割なり一割五分に達する。けれども、今日の時点でそんなことはやっておれないというので、まとめてしまって焼却処分にしてしまったという場合に、一体それはどうなるのだということを、大臣に包括してお伺いをしたのですが、御答弁としては、そういうような場合は当然全損というように見るような趣旨のお答えがあったと思うのです。これは今当面しておる問題ですから、このことをどうなさるのか、明らかにしておいていただきたい。   〔委員長退席理事仲原善一着席
  94. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 焼却する以外に始末のしようがない。かえって置いておいてもじゃまになるような状態であるという場合には、今回のような場合におきましては、これは減収として扱うようにいたしたいと考えております。ただ、それは実態が個々のケースになりますと、非常にむずかしいことはあるかと思いますが、原則的な考え方としては、そういうようにいたして参りたいと考えております。
  95. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 その点が実は非常に現実に問題があるわけです。ここの答弁では何かわかったような答弁をいただいても、あなたの農林省の所管する出先が、非常にその点については、経済減収というものを見ないで、統計の上に報告をしておる県もあり、そういうものを集積していつ現在でありますか、損害が七百何十億というけれども、私たちが現実に見たそういうケースだけを拾っても、その経済的減収を被害金額に載せないケースが、かなり開きがあるわけです。そういうものを経済的減収を考慮して計算すれば、まあ長雨ですから、調査した時点が一日経過するごとに被害が累増していくのですけれども、同じ調査時点でも七百億などというなまやさしい数字でないことだけは、これは明らかだ、一千億を優にこれは突破する被害金額である。これは出先にいけばいくほど、あるいは食糧事務所あるいは統計調査事務所等は、農林省に被害をできるだけ低く見がちな報告を上に出しておる。これを大臣は実態に即して善処すると答弁をされておるけれども、その措置をそれでは答弁に即応して直ちに指令を出されたかどうか。末端ではそういう現実と違った被害金額というものが出てきておる。それを県にいって指摘した結果、県ではその後その数字に対する被害の発表は、なお経済的減収によって被害額が増加をする見込みであるという一句をつけ加えておる。こういう実態です。ですからこれは非常に今度の緊急事態に対処する現実認識の上においても大きな問題でありますので、その点を早急にこの現実に即応した経済的減収というものを、統計の上に正確に反映するような措置を、大臣の言明によって事務当局は直ちに発動してもらったと思うのですが、これは非常に現実の切実な問題でありますから、その措置を講じておられるのかどうかということを承りたい。
  96. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 共済制度運営上の損害評価の問題といたしましては、その取り扱いはすでに一週間か十日ほど前に通達をいたしております。しかし、これは共済のほうの損害評価の取り扱いでございます、これは大臣が言っておられるのは。統計調査部の統計のとり方あるいは食糧事務所の検査の際の扱い、これは必ずしも損害評価と一致し得ない面があるかと思うのです。統計調査部のほうは、収穫高と被害高は原則的には物量で表わす。これはすべて一貫して何十年と続けておるやり方でございます。それで被害金額とういものを推定して、平均価値を推定して被害金額というものをたしか出しておるはずであります。その辺は、統計調査部が統計を作る際においては、あくまでも物量のベースで統計をとりませんと、そこに統計としての一貫性が出てこないし、また、統計自体が非常に乱れてしまうということがありますので、今度は物量がわかったら、それで金額の被害として表わすときにどう見るか、こういう問題になってくるのではないかと思います。その辺は必要があれば、別な機会に統計調査部長から確かめていただいたほうがよろしいかと思います。
  97. 温水三郎

    ○温水三郎君 重ねてお尋ねしますが、今度われわれが視察いたしたところでは、どうにもならなくて立ち腐れになっているところが非常に多い。ところがある地方に行くと、その損害評価を出さなければならないから無理をして買い取ってきて、そして非常に無理をして収量を出しておる。それは全然何にもならない収量です。だから私試みに、一体こんな何にもならないものに、鳥のえさにも何にもならないものをなぜ収量したかというと、政府がそういうことを収量するようにということを言うてくるので、等外玄麦の買い上げをしてくれるものと思うから収量したんだと、こう言っている。今局長の御答弁によると、統計調査部の調査が物量を基礎とするということであると、どうもそういう非常なむらが生じてくると思うので、その辺の取り扱いは大いに善処してもらいたいと思うわけでありますが、その点に対する見解を承りたいと思います。
  98. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) ただいまのお話の点は、食糧事務所の買い上げの際の問題であるかと思うのでございますが、したがいまして、私からちょっと所管外でもございますので申し上げられないのですけれども……。
  99. 温水三郎

    ○温水三郎君 違う、違う。統計事務所のほうなんだ。
  100. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 統計の場合において、そういうことを統計事務所が要請するということは、ちょっと私も信じられないのでございますけれども、よく統計調査部長のほうに連絡をしておきたいと思います。
  101. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 これは今度の長雨被害にも関連して、即刻措置を要する問題ですから、すぐ統計調査部長に出席を求めて、この点統計調査部長にただしたいと思いますので、その措置を講じてほしいと思います。
  102. 仲原善一

    理事仲原善一君) よろしゅうございます。取り計らいいたしましょう。
  103. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 ではそれは後ほどまた担当者のおいでを待って質問をすることにいたします。実に実態というものは、そういう従来の統計の一貫性などというものを乗り越えた、想像せざるレア・ケースにも置かれているということで、これを無視しては正常なる災害対策は出てこない。統計も実態からは歪曲されたものが出てきておる。しかし現地に行ってみれば、被害率七〇何%と称しておる、たとえば菜種にしても現実に収穫した二〇何%は菌核病に侵されて売りものにもならないし、自家用にもならないことを承知して納屋に収納しておる、これが被害率七〇何%だから現実は統計の一貫性もさることながら、そういう実態を確実に把握して、それに対する施策を講じなければならない。これは統計の技術以上の基本的な態度だと思いますから、いずれ統計調査部長が参ったら、その点をさらに具体的に措置についてただしたいと思います。  それから次に、農作物の共済掛金率の問題。今度の法改正によって組合ごとに大臣が定める、従来この委員会質疑をかわされた経過を見ますと、今度の改正農家負担掛金の増加部分については補助金を出す、これだけは明らかになっておるわけです。いかなることがあっても、従来の農家負担を増高することは、これは許されないことは明らかであります。当然であります。当然であるが、その補助金が一体どの金額が予定されておるのか、その点はどうです。
  104. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 具体的には来年度予算に計上する問題でございますし、また実際に適用する料率は、三十七年産の被害率を加えた被害率料率を算定いたしますので、現在私どもが算定して推定しておりますものとは若干の違いが出てくると思うのであります。しかしながら、これはどうも来年度の問題になりますので、今から具体的な金額を申し上げにくいのでありますが、数億円に上るんではないか、こう推定いたしております。衆議院では二億円くらい考えているらしいなという話でございましたが、私どもはもう少し上回るのではないか。これはただ実際の共済金額選択、こういう問題も今後の問題として残ると思います。今軽々にどのくらいかということは、なかなか申し上げにくいのでございます。
  105. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そこで私はおとといの資料説明のときにも、要求した資料の不備を重ねて拠出を求めたのでありますが、三十七年までの統計をもって来年の予算を計上しなければならない。衆議院答弁では、電子計算機をもってしても十月までかかる。だから電子計算機以上にスピード・アップすることは不可能なことでありますから、それはさておいて、それで三十六年までの時点における計数を整理をして、この法律改正に基づく共済目的がはっきりしないと、こういう答弁もありますけれども、従来の行なわれてきた共済目的なり、それらを対象として現在採用し狩る三十六年の、最近年次のデータによって、十分の一を任意抽出したその組合別の具体的な増額する組合、増額しない組合というものが出て参りませんと、これに対する具体的な質疑が抽象化してしまう。そういう資料を衆議院の農林水産委員会でも要求している。できないという答弁はなかった、速記録を見れば。衆議院の資料要求をした時点からかなり経過した参議院の審議の際に、資料として出せないはずはない。そういう具体的な農家負担実態というものをふまえなければ、農作物共済掛金率に対する適正なる判断はできないわけです。この農家負担掛金率の増加分に対する補助金の交付基準は一体どうなるのか、それらのなまのデータをどうしても出してもらわなければ、この委員会の審議は、この問題については、これ以上進まぬのです。これをどうしても出してもらいたい。
  106. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) これは一昨日も申し上げましたように、個々の組合選択しております共済金額というものは、農林省としてはわかっていないわけであります。したがいまして個々の組合員について実額としてどれだけの差額が出るかということはできないのでございますが、全国の推計としましては、全国推計値の共済金額の平均というものはわかっております。十分の一抽出ということは、これは全国の推計値を出すためにとったサンプルでございます。そういう方法による計算はできるわけでございますけれども、個々の組合ごとには、今のところ資料はないので、できかねる、こう申し上げているのでございます。
  107. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そうなると、この法案自体の良心的審議は、三十七年度のデータが出て、衆議院では二億と称し、参議院では五、六億と称する、そういうあいまいなバック・データの前提では、十分なる審議ができない、継続審議によって処置する以外にないと思うが、やむを得ないですね。
  108. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 二億とも五、六億とも、私のほうとしては具体的な金額は申し上げていないわけでございます。料率はお示しいたしております。現行料率改正後の料率と、これは料率を見ていただきますれば、負担の変化というものは判断していただけると私ども考えております。
  109. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 どうもこれ以上農家負担がどれだけ増高するのか、それに対する政府の予算措置がどうなのか、それもわからないままにこの審議をこの問題について続けるというわけには参らぬ。しかもその増高部分に対して当分の間補給するということだけれども、これは増高するという料率の続く限りは、制度的に補給をするということでなければ農民は納得しない、その点はどうですか。
  110. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 従来の料率の改訂の際にも、上がる農家と下がる農家があったわけです。これについては特に交付金を交付するという措置はとらなかったわけでございますが、今回の改正は基本的な改正もございますので、この改正によりまして農家負担が増高するということは、改正法の実施の上から見ましても好ましくないと思いますので、当分の間交付金を交付したい、こう考えておるわけであります。
  111. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そうすれば、ますますこれはどうも不安になりますね。従来は出していなかったが今回はこういう法律改正もあるのだから、お情けに補助金を出すんだ、そういうことであれば、当分の間がいつ打ち切られるかわからないという本能的な不安を農家は抱く。最初はこの法律を通すために補助金を出すが、やがては従来の慣行に戻って補助金を切り下げ、打ち切る。時の行政的な措置によっていかようにでもできるような、こういう当分の間といううたい方では、このこと自体に対しても、農家は明らかに大きな将来に対する負担増の不安を抱くわけです。とてもこれでは納得できない。どれだけ現実に、従来のケースであったならば、負担が増加する、これに対してはその増加分はこの料率でいく限りは、こういう交付基準で永久に負担をしてやるんだ、交付してやるんだというはっきりした法的裏づけがない限りは、この農作物共済掛金率に対する適正なる措置であるとは、言えない。こういう点を明確に整理しなければ、このこと一事にもってしても、将来に対する不信感を払拭できない。それでも今の答弁以上の考えは出てこないというふうに理解していいですか。
  112. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 農林省としましては、今回の改正によりまして農家料率が改訂になる結果として、計算上、農家負担が増額する分については増額にならないように措置したい、こう考えております。
  113. 仲原善一

    理事仲原善一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  114. 仲原善一

    理事仲原善一君) 速記を起こして下さい。
  115. 矢山有作

    ○矢山有作君 今渡辺委員質問している、この改正案が成立して交付金を出す云々という問題は、当分の間補助金を出すということをうたっているのだから、うたう以上は補助金を出すことについての裏づけのものがあるはずです。どういうふうな基準によってどういうふうな組合にどれだけの程度出しているのだということがなければならんはずです。しかもこの問題は、今度の改正案での一つ重点になっているはずなんです。したがって、衆議院でもそのときこれが一つの論争の中心になっているものだから、それからかなりの時日が立っているし、そうすれば当然その点について検討が加えられておるはずなんであり、その点がひとつあれば示していただきたい。
  116. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 私どもとして考えておるところは、今回の改正によって農家負担の増になる部分は、補助金を交付したい、こういうことでございます。どういう組合というよりも、農家に今回の改正によって負担増を来たさないようにいたしたい、こう考えておるわけです。
  117. 矢山有作

    ○矢山有作君 それじゃ当分の間というようなものはつける必要はないのじゃないですか。改正一つ重点掛金負担が重いということで、共済組合解散だとか事業停止だという問題が起こっている。それが一つの重大な点なんですから、そうすれば、当分の間などと言わずに、これは制度化して、今度の改正掛金負担率がふえるものについては、補助金をずっと出していくのだということにすれば、また話は別になってくる。その点どうですか。
  118. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 当分の間といいますのは、特に期限を定めていないわけでありますけれども、大体におきまして最近の料率の傾向を申し上げますと、被害率が漸次低下する傾向を示しておるわけです。それの結果として、農家負担も国の負担も減少することが今後も起こり得るわけです。そういった被害率の今後の推移を見て、そういった経緯を見ながら今後も当分続けていきたい、こう考えております。
  119. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私はどうも実際のデータが出せないはずはないと思うのです。これは三十七を要求しているのじゃないですよ。それは十月でなければできないのですから、それはもうよくわかります。三十六年までの既存のデータでこれを算出して、既存の共済目的でやればこうなるのだという、そういう具体的なデータがなしに、今もあなたみずから言うたように、二億と称し五億と称する、こんなラフな論議はないと思うのですね。だから、そういうデータがなぜ出ないかということです。  私が先ほど伺った、去年の四月二十四日に自民党が農業災害補償制度改正に関する修正案を発表した際に、農災引き受け単位として一筆石建ての現行どおりとするという次に、制度改正に伴う掛金の増高する十六道県については、その負担増になる分は特例を設けて増高を来たさないように措置する。十六都道府県というのは、バック・データがあって初めてできることなのです。この委員会で、そういう最も農民の関心の集中しておる具体的なデータなしに、当分の間云々、従来は出さなかったが、今度の改正で特に出してやる、お情け的なそういう考え方でこれに臨むとすれば、当分の間というものは、まさにわれわれの期待する料率改訂の問題は、その金額で出す場合、また危険率の推移等によって制度的にこれが出てくるものと好意的に解そうとしても解せなくなる。また前の国会では、かなり努力をして、具体的な組合別の負担の増高のリストを出しておる。衆議院で出しておる。それを今度こういう際に出さないで、審議を頼むというわけにいかぬのじゃないですか。   〔理事仲原善一退席委員長着席
  120. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 党の御決定も、十六都道府県というのはどういう基礎に基づくか、ちょっと私どもわからないのですけれども、むしろ私どもは全国どの都道府県も出さなければならないと考えております。十六に限る理由が私にはわからない、どんな農家でも増額になるところは出す、こう申し上げておるわけであります。それから今衆議院に、具体的に金額をはじいた資料をこの前の国会では提出したではないかというお話でございますが、私どももそういう事実はないと記憶しておったために、衆議院でそのお話が出た後に、さらに調べてみたわけであります。提出いたしておりません。
  121. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 その提出した事実がなければ、私はこれは去年の六月に若手県のどことどことどこの組合がこれだけふえるという資料をもらったわけです。だからそれは正式に委員会に出したのでなくして、もらったのかもしれませんが、いずれ試算をすれば出るはずです。現時点における現状を前提として計算すれば。しかし三十七年度で正式に定められたものに基づくものは、これは違うことは百も承知である。三十六年で一応想定される共済目的を前提として、従来の実績をふまえて出せばこういうものになるということは、これは出せないはずはない。
  122. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) どこの組合が上がるかということでございますが、それは先日御提出いたしました十分の一の抽出の表でございますが、これで農家負担等を比べていただければ、大体どこが上がるかということがわかるわけでございます、問題は、どれだけ、金額にして幾ら上がるかということを示せという御注文なので、これはもう一回繰り返しますがすぐ出ない。その理由を申し上げますと、農家掛金負担は、これは共済金額農家負担掛金率をかけまして出るわけであります。ところが共済金額は、まずその農家選択いたします単位当たりの共済金、これは新しい法律によりますと、現在の見通しでは最高七十円から最低十五円でございますが、その間で選択をされまして、それに今度は農家の所有して耕作されます耕地の一筆々々の基準反収それぞれを掛けまして、それの合計金額がその農家共済掛金額でございます。それに掛金率を掛けなければならないということでございます。それと、それぞれの組合、またそれぞれの農家等につきましてそれらを調べませんと出てこないということを申し上げました。一応、率で大体上がるか下がるかという点だけがわかるのではなかろうかということで、訂正いたしたわけでございます。なお、そういうことと、それから国庫負担関係でございますが、先ほど局長から御答弁申し上げましたとおり、私ども農家負担が上がる場合には、これに対しまして補助金を交付するわけでございますが、その計算方法は大体十分の一の資料によりまして全国推計で大体いろいろ試算をいたしまして、予算額等は推算いたしていく、その基礎は三十七年の被害率を入れました掛金率が十月ごろできますので、それを算出いたしまして予算折衝をしたいと考えております。個々の組合別にどれだけ上がるかということは、私にはわからぬということを申し上げたのであります。
  123. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 三十七年を基礎とする資料が十月にできたとしても、個々の組合がどういう共済契約をするかということは、これもわからんですね、予算を獲得する段階でも。そういうときの一応の想定をこの際、三十六年に戻して計算してできないはずはないということを私は要点に申し上げておるのです。
  124. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) その場合に、それぞれ選択はどういう選択になるであろうかということを、従来の傾向から推計を出しまして、全国平均では幾らになるということをきめるわけでございます。たとえば、今回でも現状に基づく計算をしろということであるならば、かりに水稲の場合、全国平均の基準反収をとる。全国平均の反当たりの共済金額をとって計算いたしますれば、この率にございますたとえば水稲の場合でございますが、農家負担が〇・一%上がれば、水稲の場合は全国平均では七円三十銭上がるということが言えるわけでございますが、個々の組合ではこれが〇・一%が十円の場合もあるし、五円の場合もある、いろいろありますので、一がいに、この組合がかりに〇・一%上がったら、農家負担が反当たり七円上がるか十円上がるか言えないということを申し上げたのであります。
  125. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 どうもはっきりしないのですが、やっと名前だけを出してもらったといって、名前を出してもらっても、十分の一出してもらってもどうにもならぬ。そこで問題は、とにかく確定した数字が出ない、しかも三十七年でやることになっているから、ますますきょうの審議でははっきりしないわけですから、そうであればあるだけ、この共済掛金率の審議としては、その農家負担掛金率の増加分に対して補助金の交付の基準とでも申しますか、そういうものをまずここで明らかにしていただいて、しかも、原案にある当分の間というものは、これは制度的に永久にそういうものを交付基準として交付するのだというふうに修正をしてもらわないと、これは納得のできない問題点であるが、その点はどうですか。二点です。
  126. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 第一の点につきましては、料率が変わったために、現金として現なまで増額になる分を補助する、こういうことであります。当分の間はこれは文字どおり半分の間でありますが、永久的とは申せられないわけでございますが、これもわれわれとしては農家負担が増高しないようにできるだけ今後とも努力したい、こういうことでございます。全般的に料率が下がってくればそういうものは加味していかなければならぬと考えますけれども、そういう事態は別としまして、農家負担が増高しないように今後とも努力したい、こう考えるわけであります。
  127. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 きょうの答弁では一応前向きに、わかりましたが、というのは、衆議院で農林大臣がこの問題で答弁した場合に、今までだってふえた農家もあるじゃないか、それを必ずしも政府でめんどうを見るということもやらなかった、こういう答弁があるわけですね、この当分の間というのは、あなたの言うように、農家の新たなる掛金率によって出てくる増加分に対してはキャッシュとしてこれを直接補給するのだと、そういうのを、差額を補給するということの答弁ですから、それはよくわかりました。いやしくも増高を来たすような農家には、これは現金で交付するという基準を設定される、これはいい。これは法律改正のほやほやのときはやるが、だんだん大蔵官僚その他のいびりだしによって、それが、当分の間を、きわめてわれわれから見ればマイナスに解釈を従来しがちなんです。従来の体験からわれわれは不信感を持っておる。だからそういう不信感を抱かせないためにも、これをもうはっきりと安心をして農家負担を来たさないように政府はめんどうを見るんだというためには、当分の間というのはどうしてもこれは削除してもらわぬとどうにもならぬ。あなたのような人情味の厚い局長がいるうちはどんなことがあっても、大蔵省とも折衝して絶対額をやるでしょう、それは時と人の変化によって、おれはよくわからなかったなんてとぼけられて困るのは、農民だけです。それを守るのは法律です、それを審議するのはわれわれの役目です。だから当分の間というようなこういう政治的な操作が可能なような法律の表現は、これをやめてもらいたい。
  128. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 第一の点でございますが、念のため申し上げますが、先ほど現金でふえる分と申し上げたのは、現金を渡すということよりも、現在考えておりますのは、料率が上がらない、つまり相殺してしまおう、こういう考え方をむしろとっておるわけでございます。まあいずれにしても同じでございますけれども、手数を省こうと、こういうことでございます。  それから第二の当分の間という点は、これはどうもやはり考え方の違いになってくるかと思うのでありますけれども、基本的には料率を改訂して、そのつど上がったものと下がったものが出るわけでございますから、上がったものには常に交付金を出すという建前は、私どもは合理的ではないと考えておるわけでありますから、大改正を実施するにあたりまして、改正の結果として農家負担が増高したというような結果を生み出すことは望ましくないと考えておりますので、やはりこれは恒久制度ではございませんけれども、当分の間できるだけ増加しないように努力したい、こういう考えでございます。
  129. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 これは納得ができません。  次に進みます。食糧庁総務部長見えておりますね。それでは共済目的に入ります。この共済目的に対しては、制度協議会は従来の目的以外に、さらに農業所得の上に占める重要度によって、従来の陸稲、麦以外の畑作物及び果実等についてはすみやかに調査検討を行なう、調査検討の経過も伺いましたが、私はこの中で、特に今度の長雨の被害の大きな内容であった、対象であった菜種について、かつて福岡県で任意共済としてこれを取り上げた、非常に赤字のために途中で共済目的からはずさざるを得なかったという事態に置かれておるのですが、この共済目的が、今度の災害でも明らかなように、水、陸稲と、あるいは三麦、養蚕というものが必須共済として出ておる。この改正の機会にこそ、長い間の調査研究が成果を得て、畑作物についても、果実についても目的として取り上げられるべきだったと思う。しかも果実等は、農業基本法でいう選択的拡大の脚光を浴びた重要作物である。それが何ら共済目的に取り上げられていない。これを農林水産委員会として九州に実査をいたしました結果、たとえば福岡県筑後市のナシのごときは、木を切り倒さなければならないほどの赤星病と黒斑病にやられておる、何らそれに対して救済の措置がない。こういうような選択的拡大と称される基幹作物についての共済目的を、これを大臣はすみやかに善処して云々と言っているけれども、こういうお経のようなことを言われたって、全然もうわれわれはありがたくも尊くもない、国会の答弁はそれで済むでしょうけれども農家はそれではどうにもならぬ、ほんとうにこれは切実な現地の問題なわけです。これはいつごろまでのめどで、こうしたような選択的拡大と称する基幹作物についての共済目的を拡大する御意思があるか。抽象論ではなしに、努力する目途というものを国会で明らかにしていただきたい。責任を持ってこれは政務次官にひとつお尋ねします。大臣が見えないから。
  130. 大谷贇雄

    政府委員(大谷贇雄君) ただいま調査をいたしておりますので、その結果をよく見まして、善処をいたしたいと思います。
  131. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 何とか農家が、もう少しめどがあって、その生産意欲がかき立てられるように、もっと具体的な誠意のある答弁を、これはあすでもけっこうですから、政務次官ひとつ大臣を補佐して、あすの委員会では期待のできる答弁をしていただくように、ひとつ内部手配をお願いします。  それから、今度の長雨で、特にひどい影響を受けたものの代表作物には菜種がございます。この菜種については貿易自由化によって受ける打撃がきわめて甚大であるので、大豆、菜種暫定交付金の法律を制定して、そうして貿易自由化によってこうむるであろう生産農家の影響というものを防衛するための助成金の法律が出た。ところが、それが出ても年々作付面積が減少を来たしておる。昭和三十二年度には二十六万町歩の作付面積が三十六年には十九万町歩に落ちている。三十七年は十七万四千町歩と一年の間で二万二千町歩も作付面積が減少しておる。作統部長がくればなお聞きたいのですが、去年菜種の価格の審議の際に、私が取り上げたのは、この菜種が毎年々々作付減少するのは、苗の病気による手当てが不十分であったことと、第二の理由としては、値段が安過ぎた、労力が不足である、こういう三つの理由を作統統計ではあげておったのであります。それを国会で私が指摘した以後において、そういう作付減少の理由というものがその後一ぺんももう出ていない。これは非常に問題点であろうと思うのであります。菜種については改めて質問することにしてひとつ大臣が見えましたので、大臣にいろいろお尋ねをいたしたいと思うのです。  従来この農業共済運営の経過を見ておると、一番会計検査院の指摘の多いのは、これは問題の共済事業であります。これに対して大臣は、善処をするという答弁もありましたけれども、どういう一体善処をされるのか。どういう原因で、こういう不正事件が起きているのか。そういう原因をどう理解されて善処をどうとられるのか。そういう具体的な答弁をきょうはひとつ願いたい。
  132. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) これは今までは若干のいろいろのところに無理があったと思うのであります。と申しますのは、何年も何年も災害が起こらないのに掛金ばかりをするという、いわゆる無事戻しの制度というものがほんとうに活用ができなかった。それからまた、被害率がどうも公平にいかなかったのではないかというようなこと。たとえば河川の改修が行なわれ、いろいろ土地改良が行なわれておるのに、依然として元の被害率であったとか、いろいろそういう点について、所によって違うでありましょうが、多少無理なことが若干現実にあったのではないか。そこで共済金をもらって、それを被害農家に渡さずに、それを共済掛金と相殺をしてしまってやるというようなことが行なわれておったのではないかと思うのでありますが、今回の改正によりまして、そういうような点がよほど改善をせられて参りますれば、私はそういうことはよほどなくなってくるのではないかと考えるのであります。と同時に、今回の改正を行ないまして、合理的にこの制度そのものがなって参りますれば、答申と申しますか、指導と申しますか、そういうものを強力に行なうことができると、こういうふうに私は考えておるわけであります。
  133. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 大臣は非常に性明朗でものの見方もわかるようでありますが、問題はそういう単純なところにはないと私は理解します。具体的に会計検査院の指摘した昭和三十六年度の報告の一、二を見ますと、たとえば大阪府の堺市の上神谷農業共済組合、これはこういうことですよ。「本組合では従来から共済掛金、賦課金を全く徴収せず、また、三十五年産水稲、麦および三十六年産麦共済金計百七十六万一千五百四十六円にその他の農作物共済金等三百六万五千六百二十七円を加えた四百八十二万七千百七十三円のうち八十二万四千八百六十二円が三十五年産水稲共済面積割で支払われたにすぎず、残額四百万二千三百十一円は農作物および建物共済掛金、賦課金に充当されていた。」これは何たることですか。同じく大阪府の堺市の美木多農業共済組合。「本組合では、従来から共済掛金、賦課金を全く徴収せず、また、三十五年産水稲、麦および三十六年産麦共済金計九十一万二千四百四十七円は全く支払われることなく、農作物および建物共済掛金、賦課金に一括充当されていた。」これが軒並みです、十七件のうち。この原因は、私は非常にそのよって来たるところは、深刻なものがあると思う。これだけ制度が堕落しているものは他に類例を見ないでしょう。これに対しては、大臣が陣頭に立ってこの抜本的な病根を断ち切る措置を講じなければ、私は根本的な解決はできないと思う。従来の会計検査院の年次別の指摘も、これは決して減少の方向には来ていない。これは政府の提出された資料によって明らかである。その中の理由の一つは、ここにあるように、何らこの共済掛金、賦課金を徴収しないで、もらったもので払ったことにして残った金は建物共済掛金に充当しておる。これは犯罪行為です。こういう知能犯を誘発しているところに、私は今の制度の根本的な病根があると思う。それに対しては今度の一部改正法律案というものは抜本的な措置ではないと思う。そのことを、実は午前からお待ちをしておったんですが、米審等であちらこちら御多忙なので局長にお伺いしておったんですが、今度の改正案はそういうものに期待するにははるかにほど遠い微温的な改正になっておると思うのです。いかがですか。
  134. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) そういうものを防ぐためには、まず何を申しましても、さきの委員会において森委員から御指摘がありましたように、建物共済任意共済と本来の農作物共済というものの経理をまず別にさす。そうして明らかにしてこれを監督をしていく、こういう手段に出ることが適当であろう、こういうふうに考えておるわけであります。その他制度の上におきまして、そういうような弊害を除くための制度は、できるだけ考えてやらなければならぬと思うのでありますが、何と申しましても、それがいかにいい制度でありましても、運用は人がやるのでありますから、この人の適正な運営ができるようにひとつ指導をしていかなければならぬと考えておりますが、監督はもちろん厳重にいたします。
  135. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 ただいまの大臣の御答弁によって建物共済に触れましたので、限られた時間でありますから、枝葉の問題で時間を空費したくはないのでありますけれども関連して建物共済関連をしてお伺いをいたしたいと思います。  大臣が指摘されたように、経理区分を明確にしなければならない、おっしゃるとおりであります。しかし、このことは従来しばしば言われてきたことであります。しかしながら一向にそれが実行されていないというのが実態であります。私は実態をひとつ大臣のお耳に入れて、ひとつ政府の今までこの措置に対するきわめて無責任な放漫的な措置を、ひとつ反省をしてもらいたいと思うのですが、たとえば兵庫県の氷上郡の春日町の共済組合では経理区分を混同しておる。そうしてたとえば昭和三十六年の決算を見ましても、この決算の中に二万五千円というものを、これを建物農機具推進協議会から繰り入れをしておる。これは三十六年の決算です。農林省が現地に行って経理区分を明確に調べたならば、その後こういう措置は反省されてなかったでありましょう。ところが、この組合の事業計画等を見ますと、三十八年度で、三十八年度の兵庫県の氷上町の農業共済の特別会計の歳入歳出予算を見ますと、かつて三十六年度では二万五千円を雑収入としてこの推進協議会なるえたいの知れない組織から繰り入れをしておった経理の不明確が、計数は一けたはねまして五十万円を建物推進協議会から雑収入として予算で堂々と計上しておる。この過去の経過にかんがみて、私は従来政府がこれらの経理区分に対して責任ある行政措置をとったとは思われない。とったとしてもなおかつこういう五十万という多額を推進協議会から雑収入で堂々と予算に計上するようなそういう措置に対しては、これはどんなに指導してもこれをやったとするならば、これは当事者の責任をあくまでも追及して責任ある措置をとってもらわなければならないと思いますが、従来そういう経過はどうなっておるのですか。
  136. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 今、御指摘のありましたケースでございますが、これはなお十分調査いたしますが、一億円当たりの事務費の賦課総額が六万三千円ほどでございますので、ちょっと私どもとしては考えられない事態でございますけれども、よく調査いたしたいと思います。なお、経理区分につきましては、農林省といたしましても、従来やや徹底を欠いたうらみがあるかと思うのであります。その点は今後十分注意をいたしまして、厳重に指導して参りたいと考えております。
  137. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 うらみどころじゃない。これはもうほんとうに百鬼夜行だと思うのです。会計検査院の抜き取り検査がそれを共通的に指摘しているのです。これはよほどしっかり行政責任を持って臨んでもらわないと、跡を断たない。その根本は今のこの仕組みの中に私は胚胎している、そう思うので、抜本的改正を午前からできるだけ政府考え方と対象して御意見を申し上げているのですが、それで現実にこういう制度の欠陥を任意共済の歳入によって補っている、こういうことは国が当然農災制度に対して負わなければならない責務を農家に、それも一部の任意共済を契約しているものに、締結している農家に転嫁していることのこれは現われである、こういう結果になるでしょう。全体の農家の契約によって出たものではないのですから。で、こういう任意共済の観点からながめても、こういう任意共済から出てくる剰余というのは、これを経理区分を明確にする建前からいっても、当然これは契約者、農家にこれを還元するというものであると思うのですが、その点はいかがですか、指導上の御所見はいかがですか。
  138. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) これはやはり任意事業では、任意事業として独立した採算で運営されるべきものでございますから、剰余は必要があれば積立金として任意勘定に積み立てる、こういう考え方でいくべきものと考えます。
  139. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 この新しい制度改正によると、基幹幹事費そのものを全額国庫で負担するという建前をとっているわけです。そういう点から言いましても、今述べましたような理由によって農災団体がこうしたような任意共済事業を行なわねばならないという、これは問題は除外されたこととこれは考えるのですが、どうですか、その点について。
  140. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 基幹的事務費の全額国庫負担するという協議会の御答申があったわけでございますが、これはもちろん任意事業は対象としては考えないで、必須事業について人件費事務費等の基幹的なものを国が負担するという御趣旨であったと思うのでありますが、その御答申も尊重いたしまして、三十六年の補正からでありましたか、できるだけ国庫負担率を上げてきているのでございます。
  141. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それで私はこの任意共済の問題に入りましたので、これに関連してなお大臣からお伺いをいたしたいのでありますが、市町村共済事業が移行した場合に問題が残っているわけです。というのは、市町村に移行されたその市町村区域で新たに建物共済推進協議会という任意的な団体を作って、その当該市町村の作業が役場で事務処理をやっている。事務局が役場内に置かれている、こういう実態であります。これはいろいろな現地の事例があるわけでありますが、そういう協議会の代表者は、おおむね村長さんとか、助役さんがなって、役場の吏員がその推進協議会に関与をしている、こういう実情です。で、結局このことは私は農業災害補償法のこれは八十五条の点からいっても、きわめて遺憾な措置だと思うのですが、この点は政府の見解はいかがですか。
  142. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 市町村に必須事業が移譲された後におきまして、連合会が直接任意事業を農災を相手にしてやる建前になっておるわけでございます。その場合に部落長などを委嘱いたしまして、掛金の徴収等の事務をやってもらっておるわけであります。それが協議会を作っておるのが、推進部落長協議会、こういうものでございます。これは団体ではもちろんございませんで、実質的な契約は常に連合会と農家との間に成立しておるわけでありますが、ただ御指摘のありましたように、その協議会に町村の吏員が全面的に関与したりあるいは市町村が直接関与しているかのごとき感を与えている事態があるやに聞いておるのでございます。これは市町村の公共団体たる性格からしまして、妥当でない、もしそういうことがあるとすれば、これは是正すべきものと考えておるのでございます。
  143. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それでこの問題は今局長が取り上げたようなケースなんですね、実際名前は推進協議会だが、村長さんが中心になっておるようだというわけで、役場が事務をとっているということで、進めておる、これが共済事業市町村に移行した後もそういう形でいくということは、これはどう見ても、問題が非常にあるわけです。で、端的に申し上げますと、結局こういう措置をとって、しかもそれを一般財源に入れるというようなことをやらせないためにも、法律の百三十二条の二項というものがある。これが農災連のこれは元請を規定しておるのですが、どう見ても、本来ならば県の農災連の構成員である共済組合が、組合員と元請契約をするという上に立つべき県の連合会が、直接元請契約を百三十二条の二項で認めているというところに、こういう問題の根源があるので、大臣にお伺いしますが、このあらゆる点からいって、法律的にも運用的にも多分の疑義を持ち、問題をはらんでおる、こういう不正常な措置を根絶するために、大臣は善処を約束されておるのですけれども、その善処の仕方として、農災法の百三十二条の二項を削除する、今度の国会で削除するように政府が修正をすれば、なおさらけっこうでありますが、これが今度の法案でさらに修正するということもむずかしければ、次の国会ではこの百三十二条の二項を削除するということが、大臣のこの問題に対する善処する具体的な措置だと理解するのですが、大臣のこれに対するお考えはいかがですか。
  144. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) そこまではまだ考えておりません。これは重要な問題でもりまして、先般も森委員から念を入れてその点は御質疑がございまして、私もこれは両団体において話し合い、御協議になって、一応まとまっておられることでありますけれども、十分両団体の今後御了承を得て、御理解を得て正常な方向にこれを運用できるようにひとつ善処をいたしましょう、こういう御返事をしておるのでありまして、渡辺さんのは、それからもっと進んで、来年の国会ではそれに関する法律改正しろどうのと、こう言われるので、どうもそこまで今のところ、そういたしましょうと、こう言って御返事をするわけには参らないのでありまして、現在のこの時点におきましては、森委員お答えをしたあの御答弁でひとつ御了承をいただきたいと思います。
  145. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私はこの両団体が納得した上で云々ということではなしに、行政の責任上、こういう非常に不正常なる事態を法的に認めておるようなそういう条項を削除するのが政府の正しい姿勢だと思う。あなたは不正常なる状況を正常化することに全精力を傾けて努力をするとおっしゃられるのですから、その不正常なる問題の一点は百三十二条の二項の、本来元請けすべからざるものに元請の道を開いておる、その条項が災いをなしておるのですから、大臣のその所信をすなおに承れば、内容としては百二十二条の二項の、組織を飛びこえた元請契約という例外規定を削除することが、この問題の基本的な正常化の手段であるというふうにお考えになりませんか、どうですか。
  146. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) これは正常、不正常と申しましても、これは形の上だけで判断するわけにもいかないと思うのです。こういうような長い間の歴史のある問題として、格好さえよければいいというわけには参らないと思うのでありまして、やはり実質も格好も整うてこなければ、私はりっぱな運営とは申されないと思う。角を矯めて牛を殺すの類では、これはとらざるところでありまして、でありますから、私が両団体の理解を深め、十分なるその御了解のもとに格好のいいひとつ正常の指導をしていきたい、こういうことを申し上げておるわけであります。どうぞ御了承を願いたいと思います。
  147. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私は今の大臣の御答弁は両団体の話し合いに問題を転嫁して、本来行政的に問題の混乱を解決する責任の衝にあるべき大臣が、その姿勢を正してこれに臨むということをおとりにならずに、両団体の話し合い云々の前提をふまえて、不正常を正常化することでは、行政責任ははるかかなたに追いやられておる。私は大臣に期待するのは、そういう姿勢ではなしに、正常なる姿勢に戻すための行政責任を正していただきたい。それには今度の国会で法律の修正を云々することも、今日の時点で無理だろうと思いますので、今度の国会でというようなことまでは申し上げませんが、次の国会にはこういう不正常な胚胎を許すわずか百三十二条の二項の例外規定削除こそが、この両団体にすっきりさせる基本的なこれは政府責任のあり方だと思います。この点を大臣に期待をして御質問を申し上げるのですが、角を矯めて牛を殺すというような、そんなでっかいことじゃないですよ。
  148. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) これは御承知のとおりにもう何年もかかった歴史のある問題でありまして、それをただ政府において法律改正というようなことで簡単に考えて、それがうまくいくとは思ってはおらないのですこれは。やはり実態が十分に理解を深めて、うまくいくようにすることが、先決問題であると私は考えておるのであります。でありますから、法律改正をいつやるかということを今約束せいといわれても、それはなかなかお約束はできません。遺憾ながらひとつまあその程度のところで御理解を、御了承をいただきたいと思います。
  149. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 この建物の任意共済ということは、そもそもこれは自主的な、農協で一元的に扱うことが当然であると思うのですね。これは大臣もお認めでしょう。それを一応両団体で、何か自民党の御指導によって話し合いをつけた、大臣がそれを確認をしておられるのですから、その中で最も問題になるようなこういうところは、大臣の責任で勇気をもって処理をするということでないと、いつまでたっても、こういう不正常な状態のあとを断たんのです。両団体で話し合いをつけ得る問題とつけ得ない問題と、おのずからそこにはむずかしさがあるわけです。これはどうしても行政措置によって明確に問題を、終戦処理をすべき段階にきておるわけです。これをわれわれは、大臣の不正常な状態を正常化するという声明の内容と承っておるわけです。
  150. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) 御承知のとおりに、現行法律によりましては、両団体ともやれることになっておるわけであります。そうして事実やっておるわけなんです。で、今の渡辺さんの御議論のように、片一方だけがやるべき筋合いのものだと、こういうふうにきめてかかるわけにもこれは参らないのだろうと私は思うのであります。しかし、そこで両方がやるにいたしましても、その間の調整が必要であるというので、それぞれ両団体の幹部の方々は責任をもっていろいろお話し合いになって、こういうことにいたそうではないかということで話がまとまったと私は聞き及んでおるわけであります。それを今そういう両団体でまとめられましたものを、その中の事項を、今すぐ、何と申しますか、私はそれが右だ左だといってこれをやれと、いついつまでにやれということを約束せよとわれても、それは無理というものじゃございませんか。私は誠意をもって、私の考えはすでに森委員から御質問がありましたので、私は答弁をいたして御了承を得ておるわけでありますが、私は法律改正を次の国会にやれと、こう言われましても、どうもそれをはっきり私がどういたしますということは、お約束できかねます。
  151. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私が任意共済は農協が一元化すべきであるということを申し上げることは一応さておいて、現在不正常な形を許すことだけは、これは正常化しなきゃならぬ。これは大臣も正常化すると約束をされておられる。その正常化を妨げる、そのもとは百二十二条の二にあるのですよ、本来組織的に県の農災連が県の連合会的機能を果たすべきものを、直接元請契約を認めるというところに、今のような推進協議会の看板を掲げたり、無理な操作でこの事態の不正常を誘致しておる。こういう不正常なケースだけを整理することに限って、私は大臣に処置をお願いしているわけです。それが百三十二条の二項の削除をすることによって内実ともに正常化するわけです。それを約束するわけにはいかぬとなれば、大臣、不正常化というものは言葉の上の不正常化であって、空虚な正常化であると、これは思う。どういう正常化ですか、この点について。
  152. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) 正常化と言っていいのかどうか知りませんが、形を整えることに急であってはならぬと思うのです。こういう問題は実質が問題でありますから、やはりこれは当事者の十分なる理解を深め、了承を得て、そうして、実質的にこれがうまくいくような方向に指導をしていかなければならぬ、こう私は考えておるわけであります。でありますから、まずそれを実地にやりまして、法律改正とかなんとかいうことは第二段の問題と私は考えておるわけであります。
  153. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 どうも大臣の答弁は、あくまでも現状を非常に配慮し過ぎているような答弁に承るわけです。ところが、大臣、農業基本法にもあるとおり、農業基本法で農業の発展と、農民の地位の向上ということを一番目的としているわけなんです。しかも、その基本法で、第二十四条には、私、読みますが、「国は、農業の発展及び農業従事者の地位の向上を図ることができるように農業に関する団体の整備につき必要な施策を講ずるものとする。」ことを精神としてうたっているのですよ。したがって、こういう二団体を中心に過去にこうだから格好をつけるようになんて、それは現状維持的にこれをそのままおくことは、基本法の精神に反しているのじゃないか。それをあなたが担当者なんですよ。ですから、そういう過去の二団体の間にはいろいろいきさつがあったり、そうして、団体の取り扱い等が農民に多少、あるいはそれ以上不便をかけておるという問題があるならば、この団体の整備をあえて行なっていくというところでなければ、農業の発展というものは期せられない。そのことを渡辺さんは聞いておるわけなんです。だから、そういうような角度からいくと、あなたの答弁は非常にどうも、現状維持的な格好をつけるということに終始しておると思うのですね。どうも納得がいかないというように私は思うわけです。御答弁を。
  154. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) 私は農業基本法の条章で、今安田さんがお読みになったことも心得ております。心得ておりますが、行政はやはり現実の上に立って行なわなければ、これはその成果を縛ることはできないと私は心得ておるのです。でありますから、ただこの法律の条章の修正を急に考えるよりか、実体が私は問題である。であるからこの具体的問題につきましては、森委員の御質問お答えをいたしましたような方向で私は処理をいたしていきたいと、こういうふうに考えております。
  155. 森八三一

    ○森八三一君 きょうの質疑応答を聞いておりますと、一応ニュアンスが違っているような印象がありますので、昨日私がメモしたものを持ってきまして読み上げて大臣にお尋ねをし、大臣からそのとおりでありますというお答えをいただきました。あれから、きょうの御答弁は変更されておらぬものと理解いたしますが、それでいいですね。
  156. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) それでいいです。あのときにお答えしたとおりであります。
  157. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私はどうも森委員のその質問やなんかをふまえて言うておるのじゃないのです。私なりに問題を提起しておる。私はもっと端的に、具体的にその問題を提起しておる。それに対してはかんべんしてくれ、そうでしょう。百三十二条の二項を削除することはかんべんしてくれ……。
  158. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) かんべんしてくれとは申しておりません。次の国会で修正をするか、せんかという御質問でありますから、それは現時点においてはお約束はできません、こう言っておるのです。
  159. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 現時点で約束ができないが、そういう方向に対して善処するというお考えであると承っていいのですか、どうですか。
  160. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) まず実態を、両団体の理解を深めて、そうして正常の形に持っていきたい。そういうことができますれば、必要があれば、その場合には法律の修正もやらなければいかぬし、それはいろいろなやり方があるだろうと思いますが、それを今からお約束をするわけには参らない、こういうことを言っておるのです。
  161. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 現状において不正常な事例は枚挙にいとまがないわけです。それは会計検査院の検査の報告もそうだし、経理区分をあなたは厳重に励行させるとおっしゃるが、事実はむしろこの経理が混淆して、この制度の中に非常に大きな要素を占めておる。その一例を私は申し上げたにすぎないのです。推進協議会から雑収入で五十万も年度当初に予定をするという、こういう不正常な姿は、両団体の話し合いということではなしに、そういう種をまいた政府みずからが刈る責任があると私は思う。だからきょうの時点で私の質問に対して、来たる国会に百三十二条の二項の削除を約束できないことはわかります。きょう突然として私が申し上げたのですから。だけれども、その方向に対して次期国会までに善処を約すということは、これはどうしても伺っておかぬと、この不正常な事態に対する正常化の納得のいく答弁とはどうしても受け取れないわけです。そういう次の国会に対しては、正常化に対して善処をするというお考えであると承っていいですか、どうですか。
  162. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) 法律改正について、次の国会までに善処をするというお約束はできません。第一次の国会といったって、臨時国会があったって次の国会だし、そういう約束を今しろと言われることは、少し無理じゃないですか。
  163. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 臨時国会か、通常国会かということですが、私は通常国会でいいと思うのですよ。そうでなければ、抽象的な不正常化を正常化するという内容は、どうも空疎にしか受け取れない。こういう問題の種をまいている根源は、こういう法律があるわけです。それをまず断ち切らなければいけない。そういうことを大臣はお認めになりませんか。
  164. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) 改善をすべき点は、今御指摘になりました点のみならず、その関係においてもあるいはあろうかとも思いますが、十分にこれは検討もいたします。いたしまして両団体の理解を深め、その納得の上に立って、これは改善をいたしていくように指導をしたい、こう考えておる次第であります。
  165. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 くどいようですけれども、この問題を途中で打ち切るわけにはいきませんから申し上げますが、現状の不正常は法律改正を待たずして、政府において正常化をこれは約束していただけますね。こういう推進協議会云々の名称で、現実にこの不正常な事態を実施しておる、そういうことをすみやかに、全国的にこれが行なわれておるそういう不正常な事態を、現実のそういう事態を正常化することは、大臣の責任において約束していただけますね。
  166. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) 私が初めから申し上げておりますとおりに、形だけでこれを正常、不正常ということを言うわけにはいかないのではないか。実態が問題でありますと、こういうことを言っておるんです。形から見ればどうもちょっと普通に考えて、いわゆる不正常というふうな感じもしないわけではありません。が、その実態をひとつ十分に検討をいたしてみまして、そうして実態もひとつ正常になり、形もよくなるという方向に、これは指導して持っていきたい。こういうことを言っておるんです。
  167. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そうすれば、大臣は不正常な実態の認識がまだないということですか。不正常であるという事態の認識は、これからだということですか、農林大臣として。
  168. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) 実態的には、形は別としまして、実態的には私はひとつ全部に当たって見ておりませんからわかりません、わかりませんが、今御指摘になったような、問題なくいっておるのもあるだろう、そういう、そういうケースでないものもあるのじゃないかと思うのですが、しかし他の方面にまたそうでないようなものがあるかもしらぬし、これからよくこれはひとつ私も実態を十分に的確に認識をいたしまして、そうして形も実態もよくいく、形も変な形でないようにこれはもっていきたい。そういう場合の法律改正を必要とするならば、法律改正もやらなければならぬ、こう考えておるんです。
  169. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 申し上げておる問題は、非常に限られた前提に立つ問題で、共済組合の仕事が市町村の公営に移管された場合のそういうレア・ケースなんですね。
  170. 重政誠之

    ○国務大臣(重政誠之君) むろんそうです。むろんそういうことで私も御答弁しておるわけなんです。
  171. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そういう場合に、従来どおり任意共済をやる場合の無理が問題である。これはもう明らかなことです。やらなければ問題はない。それでは農協にやらせれば、それで事は足りるわけですから、そういうことは共通的なこれは実態なわけですから、それはすみやかに実態を認識していただいて、そういうことが私が指摘した一、二の事例が、その他にも共通するということが明らかになれば、法律改正もやぶさかでないという御答弁ですから、そういう御答弁でこの問題は了承して打ち切ることにします。その事実認識に基づいて、ひとつ善処をすみやかにやっていただきたい、そういうふうにお願いを申し上げます。  それから、大臣が見えた機会に、あと二、三点お伺いをいたしたいのでありますが、ちょっと速記を……。
  172. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  173. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 速記をつけて。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時五十五分散会