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1963-06-27 第43回国会 参議院 内閣委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月二十七日(木曜日)    午後一時十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     村山 道雄君    理事            石原幹市郎君            下村  定君            鶴園 哲夫君            山本伊三郎君    委員            大谷藤之助君            栗原 祐幸君            源田  実君            小柳 牧衞君            伊藤 顕道君            鬼木 勝利君            田畑 金光君   国務大臣    法 務 大 臣 中垣 國男君   政府委員    法務政務次官  野本 品吉君    法務大臣官房司    法法制調査部長 津田  實君    法務省民事局長 平賀 健太君    法務省矯生局長 大澤 一郎君    法務省保護局長 武内 孝之君    法務省人件擁護    局長      稻川 龍雄君    法務省入国管理    局長      小川清四郎君   事務局側    常任委員会専門    員       伊藤  清君   説明員    大蔵省主計局主    計官      秋吉 良雄君    法務大臣官房人    事課長     神谷 尚雄君    法務省刑事局総    務課長     辻 辰三郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○法務省設置法等の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 村山道雄

    委員長村山道雄君) これより内閣委員会を開会いたします。  法務省設置法等の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続きこれより質疑を行ないます。  政府側より、ただいま野本法務政務次官津田司法法制調査部長平賀民事局長稲川人権擁護局長小川入国管理局長が出席いたしております。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 人権擁護局の問題につきまして一つだけお尋ねをいたしたいわけです。それは人権擁護委員というのがございますですね。八千七百名前後の人権擁護委員、この人権擁護委員は国が委嘱をいたしておるわけですか。
  4. 稻川龍雄

    政府委員稻川龍雄君) さようであります。
  5. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは委嘱をしましてどういうような仕事担当しておるのでしょうか。
  6. 稻川龍雄

    政府委員稻川龍雄君) 大体人権侵犯事件の通報、調査、それから人権問題についての各種相談でございます。人権思想普及活動、こういったことを担当しております。
  7. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この費用関係はどういうふうになっておりますか。実費弁償であるとか、それから旅費も要りましょうが、また若干の手当等も要るんだろうと思うのですが、そういう関係はどういうふうになっておりますでしょうか。
  8. 稻川龍雄

    政府委員稻川龍雄君) 人権擁護委員につきましては、給与は支給しないということになっております。ただし、実費弁償制度をとっておりまして、実費を弁償するということになっております。その三十八年度の予算では、実費弁償金が二千七百二十二万円ばかり、委員旅費が八百三十四万円ばかり、都合この人件擁護委員活動経費として計上されておりましたものが三千五百五十六万円、一人当たり年間三千九百二十円ということに相なります。そのうち、大体実費弁億金の単価が一人当たり三千円、九百二十円というのが旅費、かような内訳になっております。
  9. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 全体といたしまして、三千五百五十六万円、一人当たりにすると三千九百二十円、その中の実費弁償というのが三千円で、調査旅費、そういうものが一人当たり九百二十円という御説明でございますが、この金で足りないというところから、自治体のほうから金を出しておるようでございますけれども、それはどういうあれになっておりますか、どういうような法令に基づいてやっておられるわけでございますか。
  10. 稻川龍雄

    政府委員稻川龍雄君) お説のとおりでありまして、現在非常にそういう予算不足しておりまして、実際上全国の各自治体から三千五百万円の補助を受けております。その法令上の根拠はございませんが、ただ、地方自治体が各委員を選出しておりますることに協力する関係上その地域社会人権擁護活動その他の事件担当する建前上、市町村がこれに実際上協力してそういう助成金を出していただいておるということになっております。
  11. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 国が人権擁護委員というものを委嘱をいたしましてそれに必要な経費を三千五百五十六万円組んである。それでは今まで不足であるからして、それとほぼ同じ程度の三千五百万円程度のものを自治体から協力してもらっている。それは法令に基づくものではないというわけでございますが、だんだん断わるところが出ておるようでございますが、そういう場合に、市町村長等交際費みたいなものから市町村長はやむを得ず出すというようなことも聞くわけなんです。人頭割で大体町村としては考えている。住民一人当たりなんぼという、十円とか二十円とか、そういうような形で、どうも私はせっかく人権擁護局というのができて、そして、国がそういう人権擁護委員というのを委嘱をしておるにかかわらず、そういう形で協力を仰ぐというのは、どうも私はふに落ちないわけです。これは各省ともいろいろな、そういうような民間の人たち委嘱しているものがあるわけですけれども、そういうものを、それでは自治体に半分程度費用負担させているかというと、どうもそうではないように思うのです、私の承知している限りでは。そうすると、法務省だけが、何かそういうような協力をさしておるという形になっている。これはどうも私は好ましいことではないと思うわけなのです。何せ国の経費とほぼ同額のものを自治体が無理に協力しているということは好ましくない。ですから、やはりせっかくいい制度でありますし、また、りっぱな仕事をやっているわけですからして、この程度のものはやはり国が考えていかなければならないのではないかというふうに思うわけですけれども、どういうふうに考えているのかをひとつ局長お尋ねをいたします。
  12. 稻川龍雄

    政府委員稻川龍雄君) お説のとおり、自治体相当負担をかけているということはまことに好ましくないことだと思います。ただ、私ども地方法務局、あるいは法務局管内人権擁護委員協議会もしくは連合会県単位連合会、この方々市町村と協議されて、協力されておることでございますので、詳細は存じておらないのでありますが、おりませんけれども、そういうような実態があるということはよく存じておりまして、できれば、こういうことはやめなければならない。ことにそういう法令上の根拠のないものでございまして、私ども地方のいろいろな会合に参りましても、国家相当関心を持たれておる事業であれば、国が全体の予算を持つということはあたりまえではないか、こうよく言われるのでありますが、そのとおりでありまして、私どももそれには一言もなく賛成しておるのでありまして、ただ現実の問題として各人権擁護委員連合会なり、あるいは協議会がいろいろな運営資金に困るという関係上、市町村単位にいろいろの擁護仕事協力してやっている関係もございまして現状のようなことになっておるんだと思います。しかし、これはいずれにしても好ましくないことなんで、このような心配をしないで国の予算が組まれることが一日も早いことを私どもは希望しております。
  13. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 その連合会なりあるいは協議会というところが経費不足その他についていろいろお考えになるのはわかります。しかし、国か直接委嘱をして任務を与えている人権擁護委員について、半分も国が持たないで自治体から協力を仰いでいるというのは好ましくない。おっしゃるとおりだと思います。しかもこの経費というのは帳簿上はともかくとして、金は局に入るようですね。ですからそこの取扱いは、今お話のありました三千五百万円程度の国の予算と、それから市町村から協力を願っている三千五百万円と込みになった形で経理上は、実際上は処理されている。帳簿は別でありますけれども、そういうふうにも現実問題として私ども聞いているわけなんです。それではますますやはり困りますので、これは大臣にもひとつお伺いをして、こういう点をすっきりさせていただかないと、各省にもありますけれども、それぞれ各省のそういう委嘱をしている人たちもそれぞれの地域におりましていろいろな問題を処理いたしておるわけでありまして、それに対して市町村が無理やりに協力しているという例は私あまり承知しないのですけれども、しかもきらっておる傾向もあるようでありますし、できれば市町村が自分の交際費の中から出すというような形になって参りますと、やはりこれは運営上としても問題が出てくるというふうに思いますし、すみやかに善処方を御要望申し上げておきたいと思います。あと大臣一言だけこの問題についてお尋ねをしておきたいと思います。
  14. 稻川龍雄

    政府委員稻川龍雄君) 今の経理上の問題でありますが、私詳細は存じないのでございますが、地方人権擁護委員会地方協議会もしくは県単位連合会、こういうものには事務局がないものでございますから、その協議会長なりあるいは連合会長の特別の委任によりまして、地方局には課長以下二名、都合大体三名の課員がございますか、三名の課員の一名が連合会長なり地方協議会長の依頼でその事務管理しておるような状況じゃなかろうか、深く突っ込んだことはございませんが。したがって、その経理出納関係は全部協議会長名もしくは連合会長名でもってなされておるのではなかろうか、したがって、その間地方法務局との経理上の混淆とか、われわれがもちろん好ましくないことではございますけれども経理上の心配のある点は目下はないのじゃなかろうかというふうに考えております。もちろん御趣旨のとおり、これは何とかいい方法を講じて、心配のないようにしたいと思っております。
  15. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それで次に、保護局の問題につきましてですが、局長お見えになっていらっしゃいますか。
  16. 村山道雄

    委員長村山道雄君) 武内保護局長が来ております。
  17. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 保護局関係で、昨年の三月に法務省設置法がかかりましたときにお尋ねをいたしまして、答弁をいただいたわけでありますが、重ねましてお尋ねをいたしたいと思います。  昨年答弁をいただきましたときには、保護観察官兼務観察官というのが百五十九名ですか、それから専従観察官というのが二百八十八名、こういうふうに伺ったのですね。で、件数としては十六万九千件くらいになるということであります。今私申し上げました専従観察官兼務観察官の数は大体どういうふうになっておりますか。
  18. 武内孝之

    政府委員武内孝之君) ただいまお尋ね保護観察官のうち兼務観察官と仰せられましたのは、所長課長はすべての保護観察官身分を持っております。それ以外の保護観察官、これはいわゆる平の職員でありますが、これのことを専従観察官という場合もございましたので、そういうふうにお答えいたします。合計いたしまして、所長課長もそれぞれ事務量を考えまして、一人の負担件数課長などの役付になりますと、専従観察官よりは負担数は、事件担当数は減っておりますが、いずれも担当しておるわけでございます。
  19. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 どうも私が伺ったのと少し違うのですが、専従観察官というのは何名いらっしゃいますか。
  20. 武内孝之

    政府委員武内孝之君) 観察官総員では六百五十九名であります。そのうち所長課長をしているものは二百六名であります。
  21. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そうすると、あと残りの四百何名というのが専従観察官……。
  22. 武内孝之

    政府委員武内孝之君) そうでございます。
  23. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そうしますと、昨年承ったときとちょっと数字が違うようですけれどもまあ私はこういう点を伺いたいわけなんです。専従観察官といいますと、観察専門にやっていられる方、それ以外に経理をやる、あるいは庶務をやっている方も観察官という任務を持っておられるのではないかと、それを兼務観察官というふうに言っているるのではないか。ですから所長とか、課長は当然観察官の職務を持っておられましょうが、それ以外に庶務とか経理をやっている中から観察官を任命していらっしゃる方が相当数いらっしゃるのではないか、こういうこと、それが専従兼務という言葉になっていろというふうに私は理解しておったのですけれども、いかがでございましょうか。
  24. 武内孝之

    政府委員武内孝之君) 庶務系統経理関係系統、つまり本来の保護観察事務とは違った仕事に従事しているものを事務官として置いておりますが、これには実際上の保護観察仕事をさせてはおりません。  先ほど申しました保護観察官の数は申し落しがありまして、地方更生保護委員会にも保護観察官を配置しておりますので、その分を申しました。地方更生保護委員会には専従保護観察官が五十五名、それから役付課長部長などをしております者が三十三名でございます。事務員、いわゆる事務官といいますものは、不十分ですが、これはもう保護観察官仕事をさせておりません。
  25. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それは、その問題は、後刻私はもう少しはっきり確かめましてお尋ねをいたしますが、昨年お伺いいたしましたときは、この観察官という仕事が非常に多忙でありますし、あるいは土曜日とか、夜ということもやらなければならないという点を中心にしてお尋ねをいたしたのですが、その後私が承知した限りにおいては、そういう観察官のほかに、普通の事務官に対しても観察官という官名が与えられている。それは俗称兼任観察官ということになっているというふうに伺っているわけです。それはまた今のお話と少し食い違っているものもあるようでございますから、別途はっきりさせましてからお尋ねをいたしますが、それ以外に保護司という人たちが入っておりますね内勤保護司というもの、これが百三十名から百四十名程度おられるのではないかと言われております。御承知のように、司法保護司というふうにしてあるものの中から、百四、五十名程度のものが勤めておる、そういう実情にございますですね。これはどういうようなことでこういうことになっているのか、これは臨時職員でもないしそれから公務員として採用なさっておるのかどうか、そういう意味身分関係ですね、それをお尋ねしたいと思う。
  26. 武内孝之

    政府委員武内孝之君) 御せのとおり、内勤保護司というものがございます。これは役所定員の外にあるものであります。その給与一般保護司と同じように、事件数担当して、担当者としての仕事をしてもらっておる面におきまして、補導費を支給いたしております。
  27. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この司法保護司というのは、これはどういう性質のものでございますか。
  28. 武内孝之

    政府委員武内孝之君) 現在保護司という、保護司法に基づきましてできました保護司というものでありますが、非常勤国家公務員であります。
  29. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 その非常勤国家公務員の中から、百四、五十名程度というものが、常動的に法務局勤務をしておる、こういうわけですね。
  30. 武内孝之

    政府委員武内孝之君) そうでございます。
  31. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これはどういうわけですか。
  32. 武内孝之

    政府委員武内孝之君) 事実上の事務官の少ないところへ持ってきまして、本来の事務官の扱うべき管理事務、その他雑務などがありますし、また、その保護司としましては、そこに勤務しておる保護司としましては毎日出てきておりますが、役所のバトンタッチの面では、非常に一般ケースを扱います場合に、手元に保護司がいてくれますと、ケース委嘱また対象者の連絡、めんどうを見る点において、非常にスムーズにいきますので、そういう実益などもからんできまして、各庁とも一、二名の保護司委嘱しまして、そしてそれをいわゆる内勤保護司と名付けまして、役所仕事をしてもらっておるわけであります。
  33. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは公務員ですね、明かに。そして常勤ですね。日々勤めておるわけですね。そして、それは臨時職員ではない。そういう存在が今、日本公務員の、この役所の中にあるのでしょうか。
  34. 武内孝之

    政府委員武内孝之君) 普通の、お話のような公務員ではございませんから、これを定員の中に正規の常勤公務員として繰り入れたいのでございますが、お話のように、本来建前非常勤でございますので、役所側としては常勤ということをあまり強く求められない形にはなっております。実際来てくれておりますけれども常勤ということを建前に押すことはできませんので、その点は普通の職員と違った勤務ぶりが行なわれておるのであります。
  35. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それは建前であって、実際上は毎日勤務をして、書類の整理あるいはその他をやっておる。それは臨時職員ではない。そういう公務員というのが、今、日本政府の中にあるのかと私は思うのですけれどもね。これは臨時職員なら、これはありますですけれども、そうでない公務員というものはあるのかなと思うのですよ。それでこれは臨時職員にできないわけですか経費の出所が違うわけですね——。その経費はどこから出てくるのですか。
  36. 武内孝之

    政府委員武内孝之君) その経費保護司実費弁償金の中から補導費等としての項目から出るだけであります。それをからにならないように二、三件ずつその人たちにはケースを持ってもらって実際の町の保護司さんと同じように、仕事は軽いかもしれませんが、担当してもらって、その報酬という形で出しております。
  37. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それじゃ予算には組んである保護司経費というものをくすねてといいますか、少しプールして、それでその一人のあるいは二人か三人の人をそこに勤務してもらっておるわけですね。これは明かに国家公務員ですね。ところがどうもそれは臨時職員ではない。そうしますと身分的に非常に不安定なものになりますね。これは共済組合に入りませんし、どうもすみやかに臨時職員なら臨時職員にしなければ、そういう種類の公務員というのは私は聞いたことがないのです。で、観察官が非常に多忙であってとてもたいへんだということは十分承知しております。そういう関係からいって、人員が足りないという点もあって、こういう本来きわめて軽い意味非常勤であるところの司法保護司、その中から、百二、三十名か百四、五十名程度人員法務局常勤として勤務しておる。その金は本来はそういうことに使っちゃいかぬわけですけれども司法保護司活動費を幾らか取る、くすねてというと工合が悪いが、どっかこう削って人件費を持ってくる、したがって、その人は臨時職員ではない、国家公務員には間違いないのだけれども、そういうものは、今のところ定義に該当するものは日本政府にいないのではないかと私は思うのですが、ある場合とか、あるいはほんとうの臨時職員か、あるいは残っておる常勤職員か、そうでなければ、定員公務員、ですからそれ以外にどうも該当しないように思いますが、これはどうも——どういうふうにすみやかにこれは臨時職員にするか、そうしないとこれは非常に不安定ですね。共済組合にも入れませんしね。何年勤めても共済組合に入れないし、普通の仕事一般公務員と同じような仕事を机を並べてやっておるわけですから、どういうふうにしますか、ひとつすみやかに臨時職員にするかどうかということになるのでしょうが、そういうふうにしてもらいたい。これはまた経費が足りないということにもなるかもしれませんけれども、どうもこう見てみますと、保護局の問題もそうですけれども、先ほど申し上げました人権擁護局の問題でも、中央のほうはとにかく、地方のほうの出先機関となると、非常に何となく割り切れない問題が、昔ならそういうものもあったかもしれないし、あっただろうと思うのですけれども、戦後の新しい制度の中で、こういう非常に不合理なものが残っておりますと、ですからこれは大臣がいらっしゃるとこの点はっきり、やはり人が足りないせいですから、その場合にだれでもかれでも雇うには金がないと、そうすると手っとり早いところが司法保護司という形で、法務省と密接な関係にあるといいますか、法務省との関係で、非常勤職員であるそのものを便宜持ってきて、事務所に持ってきて使っておると、仕事をしてもらっておる、こういう存在になるわけですよ。ですからやはり人員が足りないわけだから、その点をはっきりしていたただきいと思いますね。私はこういうふうに思っておったのですが、観察官というのは非常に多忙であると、たいへんな多忙であるし、したがって、まあ調整号俸もついているわけですが、したがいまして、兼務観察官という形で、会計なり庶務をやっておられる方々の中でも、号俸の上の人たち相当兼務観察官という形でお使いにならざるを得ないのではないか、そうしますと、庶務なり経理なりという関係仕事が足りませんので、保護司を、本来そういうふうに使ってはならないのですけれども保護司を、ひとつおれのところに来て事務をとってくれということで働いてもらっておる、そういうような悪循環になっておるのではないかという私は感じを持って、ずっと伺おうと思っていたのですが、これはやはり根本的には人員が足りないというところに問題があるのじゃないでしょうか。  それから同じようなことですけれども、これは法務省関係全体に通ずる問題だと思いますけれども、この保護局の場合においても同じでありますが、今各行政官庁におきましては、等級別定数を改正するのに非常に努力をしておるわけです。近年非常に努力をいたしております。ところが、法務省の場合におきましては、そういう努力が私はどうも行なわれていないのではないか、それは私昨年も申し上げましたけれども、実際管理をしておられる人たちが、特殊な検察官と、あるいは裁判官と、こういう人がやっておられるわけで、これは給与の体系が違うわけなんですよ、別建になっておるのですね。そうしますと、どうしても一般人たち給与の体系なり、そういうものについての関心がやはり何といっても薄いということになってくるのじゃないか。したがって、各省におきましては等級別定数を是正するために近年非常に努力をしてきている。そのために五等級なりあるいは六等級なりというものの実質上の給与というものは高まっておるわけです。どうも法務省の場合におきましては保護観察官の場合をとったにいたしましても、それから人権擁護局の場合等におきましてもあるいは法務局地方法務局に行って伺ってみましたが、どうもそういう点の努力をなされた経緯というものがうかがえないような状態にあるように思いますですけれどもね。そういう点についてどうもちょっと行政官庁なんだけれども、どうもこういう公務員取り扱いあるいは給与取り扱い等について各省と比べてみてどうも見劣りがと言うと恐縮ですけれども、そういう印象を強く受けるのですけれどもね。これは調査部長お尋ねいたしましょうか。
  38. 津田實

    政府委員津田實君) その点につきましては、担当人事課長が参っておりますから神谷人事課長から。
  39. 神谷尚雄

    説明員神谷尚雄君) ただいま法務省につきまして等級別定数獲得の熱意が足りないのではないかというお尋ね趣旨と伺ったのでございますが、私どもとしましては、その等級別定数獲得ということは一つの大きな毎年の重点事項といたしまして十分努力はしておるつもりでございます。各省との比較ということになりますと、私どもの立場では必ずしもよくわかりませんが、人事院当局の係官のお話によりましても、法務省に対しては相当めんどうは見ておるということも申しておられるところから、各省と比べまして私どもが劣るというようにも実は考えていないのでございます。ただしかしながら、等級別定数、特に御指摘のございました行政職の(一)俸給表の五等級、六等級の充実ということにつきましては毎年私どもなりにできる限りの努力をして、また重点を置いてやって参っておるのでございます。そういう次第でございまして、これからもできるだけの努力をいたして参ることも十分考えておるわけでございます。
  40. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 こまかく伺いますと、詳細に伺ってもいいわけです。これはあとでひとつ諸課長にこまかく私伺いますが、ただ法務局へ行ってみる、それから観察関係方々に会ってみる。その場合の、いろいろ伺ってみますと、私は配慮が足りないのではないかという印象を非常に強く受けます。近年御承知のとおり、各行政官庁におきましては四等にするにはなかなか困難になっております。あるいは五等にするにも困難な状況になっております。したがって、いろいろな官名を作っております、たくさん作っております。独任官、係員のいない五等級、それから四等級、こういうものが一ぱいできておることは御承知のとおりです。そういうものに対する配慮がないように思いますね。そうしますと、非常に、四十、五十になって六等だあるいは五等だという不満が非常にあるわけですよ。そりゃ保護観察官でありますと、保護観察官の中の相当のものを保護観察官の主任とかなんとか適当ないい名前をつけて処理するという傾向が非常にあるわけです。それはそれとしてのまた役割があるわけです。そういう意味努力が払われていないものですから、どうも四等、五等というところにみんなとまってしまう。五等あたりでとまってしまってどうにもならないという不満が一ぱいある。私はそれを先ほど、少し牽強付会だということにあるいはなるかもしれませんが、どうも検察官なり、裁判官の人たち管理しておられるというところに問題があるのではないか、詰めるところは。各省と違いまして、そういう印象を持つわけです。俸給体系が全然違って別の存在ですから、行政官庁においてはつながっております。六、五、四、三、課長と次の補佐、班長、係長とつながっておりますから、すぐ自分の足もとにおりますから、これはどういう状況にあるかということは身につまされて知っておるわけです。したがって、それの苦労なり、あるいはそれの処遇というものについては、いろいろな意味努力が近年払われておるのです。どうも法務省の場合においては全然別体系にあります。その意味努力が、私としては、払われておるけれども各省に比べた場合のそういう意味のものが行なわれていないという印象を持つわけです。ですから、これは法務省として特殊な関係にあるわけでありますから、特殊というのは、管理と、管理されるものとの間に特殊な関係にあるわけであります。俸給体系が違う検察官であり、裁判官である。そしてそれ以外の者は一般職である。こういうような非常に違った役所の体系になっておりますから、特にそういう点について留意されてお骨折りいただきますように要望いたしておきたいと思います。なおこの点につきましても、大臣にも一言ひとつ申し上げておきたいと思います。  それから次に、今度は民事局長お尋ねをいたしたいのですけれども、先週、税務署から仕事法務局に来た問題につきましていろいろお尋ねしたわけですが、この点についてあとでもう一ぺん大臣がお見えになりましたときに、局長大臣に一緒にお尋ねいたしたいと思います。  次の問題は、昨年やはり三月にお尋ねをいたしましておる問題ですが、六人以下の庁、七人以上の庁、七人以上の庁については宿日直手当が出る。しかし、六人以下のところは宿日直手当が出ていない。従来は出ていなかったのだが、三年か四年ほど前から日直だけは一年間のうちに十日だけ出て、昨年から一年のうち六十四日日直料が出たということでございましたね。それでそのときに六十四日の日直料が出たのだけれども、その六十四日というのは、一年間のうちの日曜、祭日、いわゆる全休の日、それが六十四日ある。したがって、六十四日は、宿直料は出さないが日直料は出そう、こういうことになった。その場合に、せっかくそういうことになったのが経費関係があって、それに要する分の金は超過勤務手当から持ってくる。こういう遺憾な状態になった。こういう状況でした。仕事が忙しくどうにも人が足りないので有名な法務局で超過勤務手当を削って日直料に回したわけです。そういう遺憾な状態があったのですが、本年はどういうふうになりましたか。
  41. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 本年度におきましては、日直料の問題は昨年度と同じことで六十四日分入っておるわけでございます。超過勤務手当につきましては一人一カ月十二時間ということで、超過勤務手当の予算が入っております。昨年度に比べまして、昨年度は十・九六時間、約十一時間でございましたのが、一時間ふえておるということで、若干よくなっておるわけでございます。
  42. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは金にはしるしがついておりませんですから、はっきりしないのですが、大蔵省の主計官の方にお尋ねいたしますけれども、昨年は六十四日の日宿料を出すということだったですが、六十四日出すうちの三十二日分は超過勤務手当を削除してこっちに持ってくるということだったですが、その超過勤務手当を削除したというのは、ことしはやはり削除されておるんですか。それははっきりしないのだが、それ以外にいろいろな超過勤務手当がふえたから十・九時間が十二時間になるということになるのじゃないでしょうか。
  43. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) 先ほど十・九何時間が十二時間に手当がふえたという政府委員からの答弁がありましたが、これはいろいろの……、あるいは間違っておったら訂正願いますが、いろいろの中身の、たとえば一元化の超勤とかいろいろございまして、事務系統の超勤につきましてはもっと大きくふえておるのじゃないかと思いますが、したがって、ただいま先生の御指摘の点は解消したものと思っております。
  44. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それでは続いてお尋ねをいたしますけれども、これは宿直を出さないのはどういう理由ですか、これは宿直しておるんですね、宿直をしておるんだが出さない、実際しておるわけですよ。しかも労働基準法によりますと、一週のうちに一日宿直ということになっておりますね。ところが、ここの場合においては毎日宿直しなければならない、宿直はしておるけれども金は払っていない、ただし宿舎がつながっているという関係はありますね、しかし、そこのところはやはり配慮をしなければならぬのじゃないかと思いますが、どういうふうにお考えになっておりますか。
  45. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 先ほどお話のように、職員六人以下の出張所におきましては、所長がその庁舎に付属しておりますところの居住室に家族と一緒に居住をいたしまして、同時に宿直勤務に服しておるわけでございます。これは明治以来から宿直をするというふうになっておりまして、現在におきましては、「法務局地方法務局事務章程」というのがございまして、大臣の訓令でございますが、これによりまして、宿直の勤務に服しておるわけでございます。私どもといたしましては、なるほど家族と一緒に庁舎に付属しておりますところの居住室に居住をしておるのでございますけれども、やはり庁舎の管理のことがございますし、登記簿その他の重要書類の保管ということがございますし、それから登記の嘱託などでございますと、登記の嘱託書が郵便で送られてくるというようなこともございまして、そういう文書の受付の問題もございます。で、そういう関係もございますので、この宿直手当というものがやはり支給されるべきではないか。一般の宿直の場合と違います点は、ただいまも申し上げましたように、家族と一緒に居住しながら宿直をしておる。それからその居住するにつきましては、宿舎料なんかは別に払っておるわけでございません、無料宿舎でございます。そういう関係もございますので、一律に論ずることはできないにしましても、これは肉体的、精神的に相当負担になるわけでございまして、一年三百六十五日拘束されるということになるわけでありますから、何らかの手当が支給さるべきではないかということで、私ども数年前から予算化に努力をいたしておるわけでありますが、不幸にして今日までまだ実現がされていないのでございまして、できる限り早い機会に、何らかの形におきまして手当が支給されるようにしたいと努力をいしておる状況でございます。
  46. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大蔵省のほうは。
  47. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) 宿直手当の問題でございますが、ただいま民事局長から説明がございましたように、宿直、それがまた一方で申しますと、居住室を使用しておる、また居住地となっておる実態がございまして、特殊な勤務状態にあるわけであります。したがって、この問題をどのように給与面で考慮するかということは、なかなかいろいろな点で問題があるのではないかと、ころ思っております。関係機関においても、この問題についてはまだ結論が出ていないのじゃないかということでございまして、本年度予算化を見送らざるを得なかったわけでありますが、関係機関でこの問題について結論が出ましたら、十分慎重に検討して参りたい、こう思っております。
  48. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは昨年のときにもここで問題にいたした点でありますが、人事院の行政措置要求に対します判定が出ておりますね。その判定の中で、この問題については何らかの措置をする必要があるという判定になっているわけですね。ですから、人事院としましても、これは何らかの措置をする必要があるということになっておるわけです。関係機関とというう、大蔵省と人事院ということになるのだろうと思うのですが、これは法務省のほうとしては何らかの措置をすべきだということで努力をしておられる、ここ数年努力をしておられるのだが、関係機関との協議で結論がまだ出ていない、こういうことですか。
  49. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) 人事院の判定で何らかの措置を考慮する必要があるという御指摘でございますが、それをどのような形で、しかもどのようにということはまだ具体的に結論が出ていないわけでありまして、今後とも関係機関の結論と申しますか、検討が出次第、さらに検討をしていかなければならぬと思っております。
  50. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 民事局長お話のように、数年努力をしておられる、そうして人事院の判定が出ましたのは四年ほど前になるわけですね。三十四年の十二月に出ておりますね。どうも協議するにしてはあまりにも長過ぎます。いつまでも結論を待っておる問題ではない。長過ぎると思う。すみやかに結論を出すべきだと思うのですけれども
  51. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいま人事院の判定のお話が出ましたが、私ども承知いたしておりますところでは、昨年の三月に人事院に対しまして行政措置の要求がなされまして、その判定がまだ出ていないように私どもは聞いておるのでございますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、とにかく六人以下の職員の出張所というのが約千六百近くあるわけでございます。で、これは相当の数になるわけでございますので、何らかの手当を出すとしても、相当の金額になるわけでございまして、大蔵省のほうでも財源その他の問題で、それからほかとの均衡その他の問題で非常に問題があることは私どもも重々承知はいたしておりますけれども、一年じゅう拘束される。それからまあ最近のようにあちこちによく災害がございますと、ほんとうにこの登記簿を守りますためには、家族総ぐるみで、命がけで登記簿を守るというような事態が少なからず起こってくるわけでございまして、私どもが家庭におりましてまくらを高くして夜は休むというのとはずいぶん違うわけでございます。これは何らかの措置がなされるべきではないかということを私どもは考えておるわけでございまして、今後ともなお大蔵省とよく折衝をいたしまして、何らかの形でこれが実現されますように努力をしたいと考えておるのでございます。
  52. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私、申し上げましたのは、三十四年の十二月出ましたのは、渡し切り費を中心にした判定が出ておる。その中に、何らかの措置をすべきであるというのが出ている。あらためて昨年の十二月に再度この宿日直の点だけについて行政措置要求を出しておるというのが実情だと思うのです。したがって、何らかの措置をしなければならぬということについては、三十四年の十二月の判定に出ている。ですから、それについて相談中だという、協議がととのわないという長引いたお話ではこれはどうも困ると、こういうことなんですがね。だから、こまかい問題だということで放置されてはかなわない。全体の公務員の問題を取り扱っておられるわけだし、大蔵省は大蔵省として取り扱っておられるわけですから、こまかい点といえばこまかいものですが、局長お話ですと、金は非常にかさばるというお話でありますが、しかし、やはり出すものは出していかないと、そのままに置いておいたのでは、これは不平不満はたえないし、非常に御苦労をかけているということになるのじゃないでしょうか。大蔵省のほうにすみやかに結論をすように、要望したいと思うのですが、いかがでしょうか。
  53. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) 昨年の人事院に行政措置の要求があって、まだ判定が出ていないという段階でありまして、その判定の結果を待ちまして十分慎重に検討していきたい、こう思っております。
  54. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 なかなか役所というのは長くかかるものですね。重ねて申しておきますが、三十四年の十二月に出ているのです、何らかの措置をすべきであるということは渡し切りと一緒に……。  一向実行しないものだから、重ねて昨年の十二月にまたこれだけについて行政措置要求を出した、こういう経過ですから、主計官の努力を頼みます。  それからこの土曜日の半日直、これは出るようになったのですか。
  55. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この土曜日の半日直につきましては、たしか人事院の規則が、土曜日の退庁後、同一人が日直をし、宿直をする場合には、従来は一回分ということで三百六十円を支給するというのが、たしか三百六十円に六十円プラスして四百二十円支給することに改まっております。その関係予算上におきましては、法務局関係におきましても四百二十円ということで日直手当の予算が入ってる。そういうことになっています。
  56. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、俸給調整について努力をしておられるということを昨年承りました。これはどういうふうな形に今年はなっておるのですか。
  57. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 俸給調整につきましても、実は数年来私ども法務省といたしましては、裁判所職員との権衡、それからほかの官庁の例なんかを見まして、法務局職員勤務の特殊性にかんがみ、俸給調整がされるべきであるということで、人事院並びに大蔵省と折衝をしてきておるわけでございます。ところが、これはやはり影響するところが多いということもございまして、いまだ実現を見ておりません。はなはだ私どもとしては遺憾に存じておりますが、今後もなお努力を続けていきたいと考えております。
  58. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは大蔵省はどうですか。
  59. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) 俸給の調整につきましては、私予算のほうの主計官でございまして、これは人事院と大蔵の給与課で所掌しておりますから、答弁を差し控えさしていただきたいと思います。
  60. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 昨年、この法務局関係につきまして種々論議をいたしまして、それで本院としての附帯決議がついてるわけですね。処遇改善なり、それから定員の増、それから出張所の庁舎の整備、三点につきましてすみやかに検討して努力するようにという附帯決議がついておる。それぞれ努力はされたわけですけれども、思わしくない。思わしくないというよりも、どうもはなはだしく期待に反するように思うのですが、局長のお考えはどうですか。
  61. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいま御指摘の点、私どもといたしましてもぜひ実現したいということで努力をして参ったのでございます。ただ本年度予算におきまして、かなり改善措置が講ぜられましたのは渡し切りの関係でございまして、昨年度は一庁平均一万三千円でございましたのを、平均一万八千円ということで増額されました。これは大体私どもの要望どおりを認めてもらったと考えております。相当それは支庁にとりましては改善の措置になると考えております。
  62. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、国家公務員法の百一条ですね、百一条の三項、それに基づきまして人事院規則の十五の三。この関係についてお尋ねをしたいわけですけれども、今ILOの八十七号条約が特別委員会にかかっておりまして、国家公務員法の改正その他について、今私ども検討を加えつつあるところですけれども、この点につきましても、どうも法務省のお考えは各省に比べてはなはだしく配慮が足りない。職員でなければ組合は作れないということになっております、現行法は。職員でなければ組合の役員にはなれないということになっております。そうしますと、組合の運営のためには、これは国家公務員法の百一条によって公務専念の義務というものも免除することができることになっておるわけです。その具体的な手続は人事院規則でまた定めてある。ですから、これについての配慮がまた各省に比べてうんと落ちますね。どうでしょう、これは局長の問題です、民事局長の問題ですよ。ですから、どうも私法務省というのは、先ほど来私は文句を言っているのだけれども、文句をつけたくなるのです。どうも裁判官と検事さんが管理者なものですから、どうも給与その他についてもどうもすき間が多過ぎる。こういう問題につきましてもどうも配慮が足りないと私は思うのです。これは私、人事院にも聞きました。それで大体の大まかな基準というものはあるわけですね。五百名に一人とか、千名に一人とかいうのですけれども、一人休暇をとるのに三年も四年もかかったという話では、法務局だけで九千五百、今度ふえまして九千七百程度、九千八百という数字なんですが、いかがですか、これは。どうも常識論として、常識論というと法の運営についての常識というものがあるわけですね。これについての配慮が著しく欠けるように思いますけれども
  63. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいまの御質問はいわゆる専従職員の問題でございますが、私どもの考え方から申しますと、なるほど法務局職員は現在約九千五百、今度本年度二百名の増員がございまするので九千七百をこえるのでございます。九千七百の中から二人や三人いいではないかというふうにも考えられるわけでございますが、これは前回も申し上げたことでございますが、法務局の出先の庁というのは非常に他の官庁に比較いたしまして、約二千カ所の出先があるわけでございまして、小規模の出張所におきましては、職員がわずか一名しかいないという庁が現在におきましても三百四十二カ所ある。それから二人庁が八百十四カ所、半数以上がわずか職員一人あるいは二人だけなのでございます。  それから、私ども法務局所管の業務を処理していきます場合には、一人庁というのはできるだけなくしたい。ことに登録税の問題を扱っております関係で、職員一人でありますと監督者がいない。相互監視ということができない関係上、ややともすれば不正事件が起こりがちである。たとえ事件が少なくても最小限度二人は置くべきものだというふうに考えておるわけでございますが、どうも背に腹はかえられないということで、どうしても一人庁を作らなくちゃいけない。しかも現在のような状況でございますと、都会地あるいは都会地の周辺新たに発展する土地の登記事件というものが非常にふえております関係上、少しでも人員の余裕が出先の小さい出張所なんかにございますと、それを引き揚げまして忙しいところに回す関係で、この一人庁あるいは二人庁が私どものの希望に反しましてふえていくのでございます。職員一人をさくということは、要するに、やはりそれだけ人手が少なくなるという非常に機構がこんなに分散しておりません場合には、一人、二人、三人、四人さきましてもあまりの影響がないのでございます。法務局におきましてそういう専従職員というものを出しますということは、直ちにこれは業務に響いてくる関係がございます。そういう関係で、民事部といたしましては、専従職員の数はできるだけ少なくしてもらいたい、組合の諸君と私どもお話をするときにもそういう事情を申しまして、できるだけ最小限度にしぼってくれということを私どもの希望として申しておるわけでございます。ただ実際問題として、先ほどもお話がございましたように、わずか一人しか専従職員は認めていない、まあほかの省ではかなりの専従職員が認められており、また、これはうわさでございますけれども、やみ専従などと称する者もあるというようなうわさも聞くのでございますけれども法務省といたしましては、そういうやみ専従というようなものが実際あるのか私ども確かめたこともございませんけれども、そういうことはしたくない、認めるなら認めるで、はっきり認めるべきであるというふうに私は考えております。そういうやみは法務省としてはやるべきではない、そういうふうに考えておりまして、一人というのはこれは一人から絶対にふやさない、ふやしてはいけないというふうには私どもは考えているわけではございません。よく実情を見まして、この問題は私ども内部におきましてなお十分検討したいと、その点は考えておるわけでございます。  それからなお前回も申し上げましたが、最近になりまして法務局の増員ということが少しずつ実現してくるようになったのでございまして、昭和三十五年度に百四十二名の増員があり、それから十名、百名、ことしの二百名というふうに増員が認められてきたのでございますが、それ以前は一人の増員も認められないという状況でございまして、非常に窮屈な職員の絶対数の不足にあえいでおったという実情がございますので、一人でも必要だという考えが私どもの頭に非常に強く影響をしておったのでございます。これも特殊の事情として、追加して申し上げたいと思うのでございます。
  64. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 局長のお気持はわかるわけですが、法律の百一案に規定をしてあります公務に差しつかえない限りという言葉が入っておりますし、各省ともそれぞれ多忙であろうと思います。また一人庁、二人庁と言わなくてもあるいはその程度の一人庁、二人庁というものもあります。たとえば運輸省の海運局にも一人庁、二人庁、一ぱいあります。法務省法務局の例だけではないと思います。また三人、四人という、そういう小さい庁のところも一ぱいあります。ですから、それは特殊なものと私としては考えられないと思います。ただ法務局は、従来から人員が少なくて忙しいが、その割には、人員の増加は認められてこなかったために、局長としていろいろ御苦労なさったということはわかりますが、しかし、あまりにも各行政官庁と比較いたします場合に、この点についてのお考えがきつ過ぎると思うわけです。六千名の組合員にたった一人の専従、これは職員でなければ役員になれないことになっております。六千名の組合を作るのに、一人の専従でできるとは考えられない。やはり四人、五人程度の者はいなければならぬ。だれしもこれは良識上考えられることである。しかも法律もそれを認めている。各省もそういう措置をとっているという中で、法務省だけがどうもそれについての配慮が今まで足りなかった。一人とるのに、三年も五年もかかるという話ではどうにもならない。しかもそういうことが、私が先ほど申し上げましたように、その問題だけでなくして、それ以外の諸点について今まで指摘して参りましたが、人権擁護局の問題にしましてもあるいは保護観察官の問題にいたしましても、もっと詳細にいろいろお尋ねしたいと思うのですけれども、そういう意味の配慮に欠けるところがあるように思います。ですから、この問題につきましても、ひとつすみやかに、これは局長の権限でできるわけです。本来はこれは地方局長の権限でできるわけです。すべて上のほうにお伺いを立てるという慣習が非常に強いようでございますが、すみやかにこの点についての解決をはかるようにひとつ要望いたしたいと思います。局長いかがでございましょうか。
  65. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この問題につきましては、かねてから組合のほうからの要望がございます。私もその問題は承知いたしておりますので、目下、私のほうとして検討しておる段階でございます。十分、ただいま御指摘の点考慮いたしまして、私のほうとして妥当な結論を出したいと思います。
  66. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣はまだお見えになりませんですが、それでは冒頭に申しました法務局の登記所のほうから、同じ管轄の税務署に対しまして通知を出すという問題です。これはおととい伺ったときは、法務大臣は何かわかったような話だったが、あとお話を聞いてみたら、逆に理解しておられるようです。ですからこれは、大臣とももう一ぺん話をして、重ねて大臣にもお尋ねをしたいと思っております。私は、これは民事局としてはお断わりになるべきではないかという考え方から、種々お話しいたしたわけです。繰り返してここで申し上げるのも恐縮なんですけれども、非常に人間が足りない、忙しい。組合の専従を一人とるだけでも数年かかったいわくつきの民事局なんです。そこに従来から税務署の人たちが月に一回、二日、三日と来て登記簿を見せてもらって、そうして調査していった、その仕事をそっくり登記所のほうでおやりになる。そのために臨時職員を七、八十名たくさん雇われるというお話なんです。これはどうも解せないというのが一つ。もう一つは、国の機関としての協力だというお話です。確かに登記所の仕事と無関係仕事ではありませんし、全く異質の仕事ではない。その意味で相互の国の機関としてこれを能率的に、あるいは経費を節減するという立場から協力するという点については、これは理解がつきます。しかしながら、この協力は一カ月やるとか、あるいは臨時にやるとか、あるいは随時やるとかというのではなくて、年間を通じて、しかも昭和三十六年以来三年間にわたってこの仕事をやっている。しかも、これは件数にして五万件をこえておる、一年間に。一カ月でまとめてやるという仕事ではない。登記をするたびにチェックしていって、カードに書き込んでいかなければならぬ、そういう仕事です。そうしますと、これはどうも協力という範囲を越えておるのではないか。税務署から来て登記簿を見せてくれ、それを見せてあげる、事務所の一部を貸してあげる、あるいはそれに必要があればいろいろ説明してあげるということはともかくとしまして、こういう形の協力というのはどうもその範囲を越しておるのではないか。なお、この種の仕事というのは法律によってきめられた税務署の必要不可欠の仕事ではないか、法定された必要不可欠の仕事ではないか、その意味協力についてはあまりにも法務局の立場が弱過ぎるのではないか、初年度は百七十万円の金がきた、昨年は四百万円の金がきた、本年は一千二百万円の金がきた、なおこれでは不十分だと思っている、こういう形になりますと、法務局としては大きな犠牲をこうむっておるというふうに見なければならない。さらに徴税の関係から言いましても、百七十万でできるならともかく、千一百万、千二百万とふくれ上がってきますと、これは経費節約の面から非常に大きな問題になってくるというふうに思います。さらに実際に仕事をしておるものの立場からいって登記所にいる人たちは、これは亀田さんの説明ではないけれども、コップの中に水が一ぱいあふれるばかりに入っている、今登記所の仕事というのは、それにちょびっと水を落としただけでもあふれるという説明をしておられますが、そういう気持じゃないでしょうか。しかもまとまってやるのではない、始終登記所に登記するたびにチェックしてカードに書き込んでいかなければならない。一日じゅうその仕事をやらなければならない、そういうものから、いいますとこれはどうもいやだと言う。税務署のほうからいいますと、これは従来ずっとやってきた、年じゅう徴税々々でやっている。そういう仕事の中から月に二、三日は同じ役所の中で、同じ官庁に行って解き放されたような気持で登記簿を見る、あるいは書き写したり調査したりというのは気分転換の上からも非常によろしい、こういう考え方を持っておる。ですから勤務している登記所並びに税務署の人たちの考えもそうだ。それはまたその気持は私どもよく理解できます。さらにこれは協力でありまするからして、忙しいときはやめる、地方局長の判断によって中止をする、そうして向こうから来てもらう。事徴税の問題について、こういうあいまいな形で処理されているということは問題があると私は思います。したがって、これらの問題について、すみやかに適当な処理をされるように、こういうふうに私は申し上げたつもりだったのです。ところが、どうも逆におとりいただいたような形になりまして、私としては不本意であるわけです。これは税務所の人たちが、税務署の職員が登記所に行ってそういう書類を見て書き写しをしているのを見たら国民として……やはり一ぱい来ていますから、そういう所でやられるというのは工合が悪いとか、あるいはいろいろ定員関係なり、その他職務上の問題なり、庁舎等の問題に対して、民事のほうで法務省に対して負い目があるものですからそういうことになるのか。私はそういう話ではなかろうと思うのです。私はそういうことではないという立場から、先ほど四、五点にわたって申し上げておるわけです。これは一応ここで質問をおきまして、あと伊藤委員が質問があるそうでありますから、私はこの答弁は一応ここで保留していただきまして、答弁は合いただかなくていいです、あとでいただきます。
  67. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この問題につきましては前回お答えいたしたわけでございます。国の機関その他の協力ということで、見解の相違があるというところに帰着するのかもしれませんが、私どもといたしましても、これは地方税法によりまして、市町村に対する通知ということが全然全く新しい仕事でございますと、これははっきり申していいのであります。私どもも引き受けなかったと思うのでございます。地方税法に基づきまして法律で義務づけられまして市町村に通知をやっておりますので、それと関連をしてやっていけば、もちろんこれは事務量の増加にはなりますけれども、全く新しい仕事を引き受けたというのとはかなり事情が違うのでございます。それからなお、私どものほうにおきましても、登記所が非常に忙しくてとても手が回らないというときには、これは現に去年もやったことでございますが、去年の暮れにおきましては、非常に登記事務の多いところの出張所につきましては、国税庁と話をいたしまして、年末の十二月は国税庁のほうから見に来てくれ、こちらから通知はしないからということで、国税庁に話して通知をやめたところもございます。それからままた、市町村に対する通知は、これは地方税法で定めてはございますけれども、これは市町村の登記所とも話し合いまして、向こうから見に来てもらうというような方法もとらしております。そういう関係で、どうもならないときはこれをやらない、そういう根本の了解が実はあるわけでございます。前回これを落としておりましたので、追加させていただきます。
  68. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 その点につきまして先般も申し上げたのですが、職務内容というのは一応法律できめられて——地方税法によりまして市町村長に対するところの通知というものは法律によってきめられている。したがって、職務内容としては変わってくる。それとほぼ似たような同じようなものであるからということで、職務内容として新しく加えるということは、これは私は局長でできることなのかあるいは法務大臣の訓令でおやりになることなのか、これは問題があると思います。  なお同じ仕事だというお話でありますけれども、今度はカードも違うのです。市町村長に出される様式というものと税務署に出される様式は違ってくるでしょう、違っているはずです、今度はカード式でしょう。ですから同じ仕事ということにならないのです。カードに書き込まなければならぬ、向こうの所定のカードに。ですから謄写版に刷って、何といいますか、一枚書けば下に四枚ぐらいとれる、その中の三部を税務署に送ればいい、そういうことにはならないのです。ですから、その点は私は私のほうに理屈があると思うのです。そういう意味からいいましても協力の度を越している、付加業務としてなさるなら付加業務としての考え方を出していただきたい。これは付加業務ではないのです。どうも私としては何か市町村長に出す、それと同じようなものであるからて法定はされていないけれども便宜上協力をしたということですけれども、しかし、それはいろんな角度から論議をしてみましても、これは度を越しているというふうに思います。ぜひこの点についてはひとつ再考慮していただきたいというふうに思います。先般伺いましたときに、ことしやってみて検討したいということでしたし、もう二年やったのです。三十六年、三十七年と。こういう私は公務のやり方はどうも法務省としてはふさわしくないのではないか。ふさわしくないということは、こまかく法理でやれる割合にはどうも便宜主義だという感じがしてならないんです。きょうは私は答弁はいただかなくてもいいです。あと答弁していただきます。ちょっと局長と話をしまして…。
  69. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回は細部の問題について事務当局にお伺いいたしましたので、きょうは大体基本的な問題の二、三について大臣にお伺いしたいと思います。  この提案理由の説明を見ますると、少年院の業務を強化するために、法務教官を二十名ほど増員するとか、あるいはまた、少年鑑別所の業務を強化するために、法務技官をわずか十名ほど増員する、こういう意味説明があるわけですが、ここでお伺いしたいのは、少年院なり、少年鑑別所、それぞれ重要な使命があろうかと思うのですが、特に最近少年の犯罪が非常に激増しておる、こういう情勢の中で、やはり少年院なり少年鑑別所の使命は相当重いと思うのですが、こういう程度の増員で、少年院なり、少年鑑別所の業務ははたして期待どおり強化できるものかどうか、こういう点を大臣にまずお伺いしたいと思います。
  70. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。  御審議をいただいておりますこの設置法の職員の増員の関係のところでありますが、少年院並びに少年鑑別所等におきまして、この程度の増員で十分であるというようなことは実はないのでございまして、まだこれでも非常に足らないと思います。ただ、今度の考え方といたしまして、教育主義に徹していくためには、質のよい教官と申しますか、程度の高い教官を必要とする、そういうことが前々から衆参両院の議員の先生方の御意見でもありましたので、それにこたえたいという考え方でこういうことをやったわけでございます。施設の点等から申し上げましても、また教官並びに職員等の点から見ましても、人つくりということを池田内閣が強く主張しております。こういう関係から見ましても、実はまだまだ充実していかなければならない、かように考えております。
  71. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今申し上げたように、少年犯罪問題が非常に重要視されておる、こういう情勢の中でありますので、ひとつ思い切って少年院なり、少年鑑別所、こういう点の遺憾のない運営ができますよう、さらに一段とそういう方面に努力を願いたいと思いますが、なお、この少年院なり少年鑑別所に勤務なさっておる職員方々勤務状況を見ますると、今なお、前の日終夜勤務された方が、翌日午前中ないしは平生どおりの勤務をしておる、こういうところも昨日事務当局にお伺いいたしますると、だいぶ改善はされたけれども、まだまだそういうところが遺憾ながらあると、こういう御説明であったわけです。これは法務省本省につとめておられる方ではそういうことはなかろうと思うのです。これは各省庁ともそういうことはない、こういう中で、ひとり少年院なり少年鑑別所、ああいうじみちな、まことに縁の下の力持ちというか、そういう恵まれない立場にある勤務方々がそういう心身の苦労をなさっている上に、特に、徹夜で勤務なさった方が、翌日さらに午前中とか、あるいは終日平生どおり勤務なさるということが、たとえ一部でもあっては相ならぬと思います。これは非常に過酷な勤務状況と言わなければならない、法務省でも人権擁護ということを強調せられておると思うのですが、かような観点から、こういうことは即刻、そういう過酷な勤務をしないでも、少年院なり少年鑑別所の、いわゆる日程が組まれるよう特別配慮をすべきではなかろうか、この点について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  72. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 職員勤務時間等につきましては、従来、御指摘のとおりに、非常に超過勤務のような傾向がございまして、それを是正するために、この数年間努力を続けて参っておるのでありますが、やや緩和したとは聞いております、けれども、まだなかなか八時間勤務というわけには参らないようでございます。さしずめそういうことを考慮いたしまして、御審議をいただきました本年度の予算におきまして、超過勤務手当の時間の裁定の問題、そういう問題につきまして、処遇の改善等もいたしましたし、なお、その他の問題につきましても考慮をいたしておるのでございます。しかし何といいましても問題は、手当やなんかの問題でなくて、もう原則論からいいますと、職員が足りないということでございますので、こういうことにつきましては、今後とも十分努力を尽して参りたいと存じます。
  73. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、問題を変えて、国民大衆に非常に関係の深い登記事務について一点だけお尋ねしたいと思いますが、この問題については、最近の十年間でこの事務量が三倍ないし四倍にも激増しておる、こういう情勢の中で、迷惑を受けるのは国民大衆であると思うのです。こういうことでは、やはり特段の方法を講じないとだんだん仕事がふえる一方という状況、何か抜本的な手を打たないと、ますます登記事務は渋滞する、こういう情勢になろうかと思う。したがって、この際、この点についても鋭意対策を具体的に講じなければならぬと思うのですが、この点については大臣いかようにお考えですか。
  74. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 登記事務が非常に件数の上から見ましても、逐年増加しておる傾向にございまして、まだなかなか件数が横ばいになったという状態でない、ますます増加しておる傾向でございます。したがいまして、登記所の職員の労働過重というものが非常に強く各地から訴えられてきておりますので、法務省といたしましても、これを捨ておくわけには参りませんし、また、全国からの強い要望も毎年繰り返し行なわれておりますので、さしずめ登記事務の能率化ということを考えまして、これを解決するのにどういうことが最も効果的で、また、それを行なわなければならないかということを検討しました結果果、さしずめ増員をまず考える、次には、登記事務の機械化と申しますか、そういう合理的なカードを製作しましたり、あるいは謄写機であるとか、リコピーであるとか、機械力による能率の増進をはかるというようなことから、増員の問題並びにそういう機械を購入する予算の問題等をあわせまして、予算の御審議をいただき、予算はすでに衆参両院とも通過させていただいたわけでございますが、そういうことを行ないまして、人をふやすといいましても、なかなか限度があるものでありますから、できるだけそういう能率の上がる、一人当たり事務量も能率の上がる行き方を行なってるいなければならない、そういう両面からの、もう一つは、処遇の問題についてもいろいろ問題があるようでございます。そういうあらゆる面から考えまして改善をいたして参りたい、かように考えております。
  75. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 特に末端の法務局とか、あるいは出張所、こういう所では関係市町村とか、あるいは会社等から応援を求めて、事務をさばいておる。こういう現状はいやしくも法務省ともあろうものが不見識もはなはだしいと思うのです。このことはすぐそのしわ寄せが、繰り返して申し上げておるように、国民大衆の肩にかかってくるわけで、国民に影響すること、まことに大きな問題であるので、今御答弁もあったわけでけれども。今後も特にひとつこの点に鋭意具体的な、先ほど御説明のあった方向で努力願いたいと思っております。行管のほうからも特にこの問題については御指摘もあり、さらに勧告もあったと思うのですけれども、やはり指摘され、勧告されればそれに対して具体的な、いわゆる具体化をはからなければならないこういう責任もあろうかと思いますので、その点についていま一度決意のほどをお伺いしたいと思います。
  76. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) ちょうど十年間の統計で見ますと、約三百七、八十万件から二千八百万件ぐらいになっておるわけでございまして、八倍ぐらいになっておるわけでございます。登記事務量で申しますと。そして、人員はどうかと申しますと、わずか一〇%程度増員をいたしておるのでございますから、これはもう非常に事務量が過重であるということは数字の上からも明らかでございます。そこで行管といたしましては、これらの事務の処理について、人間の数だけでこれを解決するという考え方よりも、やはりもう少し近代化した事務方式を考えたらどうかという勧告等も受けておりますので、昨年からそれを実施いたしまして、試験的にやってみたわけでありますが、確信を得まして、これならいけるということで、謄写機と申しますか、リコピーといったような、そういう機械力を入れるという予算をことしは相当に計上いたしまして、徐々に、これは技術訓練が必要でございますから、そういうもので、大体確信がついておりますので、三十九年度には人間の増員もさることながら、機械化のほうにもつと力を尽くしたい、こういうことで一生懸命にやっております。
  77. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この問題に関連して、地方法務局とか、あるいは出張所職員の一人当たりの業務量はその地域々々によって相当格差があるように聞いておるわけです。そこで、やはりこういう問題を解決する一つの具体的な方策として出張所等の統廃合によってある程度問題を解決し得る、そういうこにもなろうと思うのです。特にこの問題については、前にこの内閣委員会でも相当論議がもうすでに重ねられておるわけであります。したがって、こまかいことは申しませんが、この問題について、一体その後どのように努力され、具体化されたのか、それともそのままになっておるのか、こういう点についてお聞かせいただきたいと思います。
  78. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいま大臣からお答えになったところで大体尽きておると思うのでございますが、少し敷衍して申し上げますと、地方によりまして法務局職員事務負損量が違うということがあり得るわけでございます。たとえば表日本のほうは非常に開発が進んでおるその関係で、登記の事件が非常に多い。裏日本のほうであると比較的少ない。それから大都会をかかえておる所は非常に事件が多い。そうでない所は少ないというような違いがございまして、この現在のやり方は法務局地方法務局ごとに定員を割り当てまして、その割り当てられた定員の中でその管内の人員の配置を各法務局地方法務局できめておるのでありますが、この法務局相互、地方法務局相互の間がやはりバランスを失することがあるわけでございます。その点につきましては、私どものほうでも注意をいたしまして、随時法務局地方法務局定員の再配分ということを行ないまして、できるだけその不均衡にならないようにということで努力をいたしております。ただ、法務局の管内がやはり一様ではございませんで、非常に広い所があり小さい所があり、この管内にたくさんの登記所——五十以上も登記所をかかえている所もあるかと思うと、三十未満の登記所をかかえている所もある。そういういろいろな違いがありますので、あらゆる要素を考えまして定員の配分ということは常時是正を今までもやってきておりますし、今後もやっていく考えでございます。それからなお、昨年この内閣委員会におきまして御決議をいただいたのでございますが、その趣旨を体しまして実現に努力をして参りまして、増員、それから事務の合理化のための各種の備品の整理、それから登記所の施設の整備その他につきまして本年度は昨年に比べましてある程度の進歩があるわけでございます。それから登記所の統廃合につきましても、これは前回お尋ねがございましたが、地元にあまりに迷惑をかけない限度におきまして地元とよくお話をしました上で、交通事情その他を考えまして、無理がいかないようにということを念頭におきまして徐々に実現できるものからやっていくという状況でございます。
  79. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお検事が不足しておると、こういうことに基づくいわゆる検察事務が非常におくれておる。こういうことについても第四十国会の当内閣委員会で指摘せられておるのですが、したがって、それに即応してあるいは検事の処遇改善とかいろいろ具体的な方策が講じられてきたかと思うのですが、こういう点について一体どのような具体策が進められてどのような成果が上がったのか上がらないのか、そのままかどうかという点についてお尋ねしたいと思います。
  80. 津田實

    政府委員津田實君) お話しのとおり、検察庁の事務が逐年増加して参っておりますことは皆様御承知のとおりでございます。検察庁におきましては、この事務の能率化につきましてもいろいろと工夫をいたして参っておりまして、特に最近のものとして、御承知のように、本年当初から交通切符制を実施いたしておる、そういうことによりまして、できるだけ検察事務の能率化をはかっておるわけであります。しかしながら、全体としてこれを考えます場合、大多数の事件すなわち約総数の七七%ぐらいは事件を検察庁が受理いたしまして一カ月以内に起訴あるいは不起訴の処分をいたしておるわけでありまして、全体としては必ずしも検察事務が渋滞しておるということは申し上げられない。この処理の期間が三カ月をこえますものはようやく九%程度でございますので、大体においてはそういうことは申し得ると思います。次に検察庁の職員の処遇の問題でございますが、検察官の待遇の問題につきましては、前通常国会におきまして当委員会で御審議を願いました臨時司法制度調査会におきまして裁判官の任用制度給与制度とともに検察官の任用制度給与制度についても目下審議を進められておるわけであります。で、御承知のように、同調査会は来年の八月三十一日をもって存立の期限といたしておりますので、それまでには何らかの要綱なり結論が出るものと考えられております。その結論によりまして、政府は、立法化その他の処置をいたすことになっております。現在におきましては、検察官の待遇につきましては一般行政職の場合と同じように、人事院勧告の線に沿いますベースアップというものはもちろんいたしておりますが、それ以上の特段の措置につきましては、ただいま申し上げました臨時司法制度調査会の結論待ちという状況になっておるわけでございます。
  81. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、問題になっておる麻薬検察の充実強化というこの内容の説明がございますので、この問題についてお伺いしたいのですが、もちろん麻薬の取り締まりについては、厚生省とかあるいは警察、海上保安庁が所管しておるというふうに聞いておりますが、やはり検察業務は何といっても法務省の所管であろうと思うので、その点についてお伺いしたいのですが、特に日本の場合は麻薬の天国だと言われているくらいに、非常にこの点近年特に問題になっておるわけですが、これはいろいろ原因もありましょうけれども日本の取り締まり法規が非常に外国に比較して手ぬるいと、こういうところにも密輸とかあるいは密売が盛んに行なわれる一つの原因になっておるのではなかろうかと思うのです。こういう点については、法務大臣としてはどうお考えですか。
  82. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 麻薬対策につきましては、昨年内閣に麻薬対策関係閣僚会議を開き、また、麻薬対策推進本部等を設けまして、政府は総合的な施策を進めて参っておるわけでございますが、法務省といたしましては、本年度の予算におきまして、麻薬専門担当検事を東京、大阪、神戸等に配置をします関係上、人員不足になりますので、増員の御審議をいただいておるわけでございます。また、これによりまして、検察事務官不足を来たしておりますので、麻薬専門の検察事務官を六名ほど増員をお願いをしておるわけでございます。麻薬が日本で非常に相当多量に取り扱われておりますこれらの理由については、いろいろあろうかと存じますが、第一番目には、外国から日本へ搬入しやすいそういう諸条件下に日本が置かれておることだろうと思います。これにつきましては、関係各省庁が努力をいたしまして、たとえば厚生省の麻薬取締官あるいは法務省の入国調査官、あるいは税関、あるいはまた、警察官等におきまして、いろいろ従来あまり横の連絡等がございませんでしたので、それを絶えず横の機関と連絡を保ちながら、できるだけ外国から入ってくるのをばその場で押えていくような強い措置を今日とっておりまして、かなり効果を上げておるようでございます。一歩を実は進めまして、香港、シンガポール、バンコックというようなところにそういう情報や調査をします係官を派遣をいたしまして、そういうところからも日本に入ってくるようなことを少しでも防止しようというふうな考え方を持ちまして、これも厚生省から予算の要求が出され、通過いたしているようでございますが、法務省といたしましても、これに歩調を合わせていくつもりでございます。また、国内におきましての状況を見ますと、かつてほとんど特殊な、一種の麻薬暴力団と申しますか、そういう名前があるか存じませんけれども、麻薬業者と申します、そういうもちろん非合法ではございますが、そういう人々の手によって売りさばかれていたものが、政府が暴力取り締まりを徹底的にやるようになりました関係上一暴力団であるとか、ぐれん隊であるとか、そういうものが非常に経済的な条件が悪くなって参りまして、これがだんだん麻薬のほうに手を出している、麻薬に移行をしている、こういう傾向が見られるのであります。したがいまして、調査、捜査等につきましても、非常に困難な面も出て参っておりますけれども、それらのことをよく関係官庁が横の連絡をとりまして、最近かなり摘発の実績を上げている。なお一そう努力を続けて参りたいと、かように考えております。
  83. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私が特にお伺いしたかったのは、日本に特に麻薬の密輸、密売が多いのは、いろいろ御指摘のような原因もありましょうけれども、特に取り締まり法規は非常に手ぬるいからではなかろうか。たとえば日本の場合、取り締まり違反の場合、最高がたしか十年だと記憶しておりますが、あるいはタイとか台湾の場合は、これはもう銃殺にしているとか、アメリカでは絞首刑にしている。それに比較しては、非常に社会にはかり知れない害毒を流しているこの麻薬密輸、密売については、もっと極刑をもって臨んでしかるべきではないか、最高十年というのは軽過ぎるのではないか、そういうことが密輸、密売を醸成しているのではなかろうか、これに対する大臣のお考えはどうか、こういう意味でお伺いしたわけです。
  84. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) このたび麻薬取締法の一部改正を提案をいたしまして、これはもうすでに衆議院参議院通過いたしたわけでございますが、今度は十年の刑というのを無期に科刑を引き上げました。それに準じまして科刑の引き上げをやったのでありますが、これによりまして相当予防的な効果を上げ得るのではなかろうか、あるいは再犯者を防ぐことができるのではなかろうかという期待を持っておるわけでございます。
  85. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 麻薬も使いようによっては医薬品として相当重要な医薬の部分を占めているわけで、そういうことから、あるいはインドとかトルコから麻薬の材料である、原料であるアヘンを大体五十トンぐらい年に入れていると思うのですが、ところが、これは反復使用することによって、結局中毒癖を生ずると、この害毒については言うまでもないのですが、そこでお伺いしたいのは、これはどのくらい患者があるかということの一つですが、麻薬中毒的症状、これは古い統計でよく知りませんが、私が調べたところによると四十万ないし五十万ぐらい、これが現在どういうふうになっているかということ、それから重症で、重症というと、ほとんどこれはもう廃人同様な患者だと思うのですが、これが大体古い統計のようですが、二十万人、現在はどの程度にふえているか、こういう数をまずお聞かせいただきたいのですが。
  86. 津田實

    政府委員津田實君) これは、はっきりした統計というふうに申し上げかねるのでありますけれども、一応の統計といたしまして、麻薬中毒者の実態といたしましては、昭和三十七年におきましては、確認されたものが約六千四百、未確認のものが三千百というような数字が一応あげられておりますが、潜在的に申しましては、二十万もいるというようなことも言われておるわけでございますけれども、実態は必ずしも確認されておりません。統計的にはこの確認、不確認を合わせまして、九千五百五十五という一応の数字になっております。
  87. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この密輸とか密売については、これは非常に国際的な、いわゆる横の連絡が緊密にとられておる関係もあって、特に、国際化がだんだんひどくなって、第三国人によって密輸されるあるいは密売される。そこで大体、これもお伺いしたいのですが、十三段階くらいの卸売を経て、ようやく末端にきて値段がきまる、こうも言われておるわけですが、大体第三国人が年間に手にする利益は、これは推定のようですが、大体七百億円ぐらいだと聞いておるのですが、もしそれに近い金額だとすると、これは容易ならぬ金額になるわけですが、それだけ額が多ければ多いほど、日本人が害毒の犠牲になっておるということが、裏を返せば、そういうことになろうかと思うのですね。こういう問題で特にここで右翼の団体とかあるいは暴力団、こういうものが資金として一部を流用しておる、こういう問題も起きて参りますし、また、暴力団がこういう問題に関係してくると、あらゆる手を講じてまずアヘンを飲ませる、そうすることによって患者がふえてくると、どうしても、麻薬が切れるとどうにもならない。そこでそういう麻薬がぜひほしい、こういう心理を利用して、結局問題になっている売春とかその他の犯罪をしいている、こういうことで、一たびすると、だんだん深入りをしていく、こういうことが現状ではなかろうかと思う。こういうことをほっておくと、ますます麻薬の害ははかり知れない方向へ進んでいこうかと思うのです。こういう意味からも、先ほど言った無期の懲役ですか、無期懲役といえば相当重いわけですが、そういう点と、取り締まりの強化と、さらに検挙の強化、こういうことが並行してお行われないと、なかなか根絶しにくい問題だと思うのですが、こういう点について、大臣としてはどうお考えですか。
  88. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 外国から第三国人の手を通じまして、日本へ持ち込まれてくる麻薬の量は、相当多額なものであると聞いておりますが、今、ここでちょっと正確な数字がわかりませんので、お答えいたしかねますけれども、取り締まりや捜査につきましては、これは非常に実は力を入れておるのでありまして、従来麻薬患者等、発見いたしましても、それを保安処分のような形で、収容する施設等が非常に少なかったのでありまして、これからはそういうものに対しましても、やはり売りさばく人の追及だけでなく、それを使用しておる医者の許可なく使用しておるという、そういう面からも実はこの捜査を進めていくというやり方をしておるのでありまして、売りさばきの者に対しましては、先ほど申し上げましたように、もう麻薬をひとつ撲滅する、麻薬というものは正規に政府が許可を与えて購入する以外のものは一切日本でこれを全滅させるという意気込みで実はやっておるわけでございまして、これは単に法務省だけがやっておるわけではございません。政府の中に麻薬対策閣僚会議並びに麻薬対策推進本部というものを設けまして、これを総合的な施策といたしまして全力をあげておるのでありますが、今後とも一そう力を尽くして参りたいと、かように考えております。
  89. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで、お伺いいたしますが、今回の法改正によって麻薬検察の充実をはかるために検事を三名、検察事務官を六名、こういう増員がこの内容になっておるわけですが、それほど今大臣のおっしゃったような決意がおありなら、そして無期にまで刑罰を引き上げてきた、その重要性から見て、もう少しこう何とかならないものかとし検事三名、検察事務官六名と、まことに微々たる陣容の強化で、これではたして今大臣のおっしゃったような決意のほどが期待できるのかどうか、こう一応危ぶまざるを得ないのですね。こういうことでは、なかなか問題は根絶はおろか、なかなか解決ができないと思うのです。先ほども申し上げたように、年々何十万という日本人が廃人化していく、これは推定ですから、また法務省の今資料がないそうですが、私の調べたところによると、第三国人の年に得る利益は推定約七百億——なかなか正確な数字はつかみにくいと思うのです。約七百億、こういうものが第三国人に持ち去られる、こういう重大な問題を抜本的に根絶するというその決意はよく理解できるのですが、それにしては、検事三名、検察事務官六名ぐらいの強化で、こういう難問題と真剣に取り組むことができるのかどうか、一応危ぶまざるを得ないのです。この点について……。
  90. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。  先ほど少し言葉が足りなかったと思うのでございますが、検事三名、検察事務官六名というのは増員分でございまして、現在各所に配置されておる麻薬関係の検事、検察事務官というものはもっとずっと多いのでありまして、大阪、福岡等にもございますし、また、函館等にもございます。そういうふうに非常に広範囲に麻薬関係の検事を配置し、事務官を配置いたしまして、最近はかなり効果を上げております。なるほど現状をもちましては、法務大臣といたしまして決して満足はいたしておりません。少なくともまだ麻薬関係の検察官というものはもう少し増員をしてでも配置をしなければならないと考えております。それからこの七月二日に麻薬担当の検察官、検事会議をば東京で行ないまして、各第一線に携っております検事の意見を十分聴取いたすつもりでございます。それによりまして、政府が進めておる総合対策の一環の一部といたしまして、法務省はどう対処するかという結論を出しまして、三十九年度の予算にはこれらの意見をまとめてまた御審議をいただく予定でございます。
  91. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御指摘のように、検察陣を強化する、もちろん非常に大事なことなんですが、したがって、さらに一段と強化の方向へ努力を願いたいのですが、その前に大事なことは、取り締まりをさらに強化をしていくこと、取り締まりが強化されれば、検挙もそれだけ少なくなろうというのが常識であろうと思いますが、したがって、取り締まりについては厚生省とか、先ほど御説明で、地方の入国管理事務所、あるいは海上保安庁とか警察、こういう多方面の取り締まりが強化されなけばならぬ、それでもなおかつ検挙はさらに一段とこれと並行して強化する、そういうことが相待って根絶に向かっていくと思うのですが、こういう意味から総合的な努力をさらに一段とお願いしたいと思うのです。  次に、問題を変えまして刑法改正という問題と、社会不安ということを結びつけて一、二点お伺いしたいと思いますが、最近新聞とかラジオで問題になっております。幼児の誘拐事件とか、あるいは全く意味のない殺人事件、こういう問題で非常に一般市民の社会不安は極度に達しておると思います。一方これに対して刑法改正案なども考えられて、こういう問題については、悪質の犯罪に対しては重罪をもって臨むべきだ、こういう意見も相当強化されておるようですが、こういう問題に対して大臣としてはどうお考えですか。
  92. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 刑法の改正につきましては、刑法の全面改正を考えまして、現在法務省におきまして、法制審議会に五月の二十日に諮問をいたしたわけでありますが、しかし、その結論が出て、国会で御審議をお願いいたしますまでには、なかなか時間がかかると予想されますので、ただいま御指摘のような誘拐事件、特に私どもは身代金を要求するといったような悪質な誘拐事件等に対しましては、今の課刑だけではとうてい十分措置しにくいというふうに考えておりますし、一部改正をいたしましてでも国民の不安を解消するために踏み切るべきである、こういうふうに考えまして、目下法務省は刑事局におきましてその法案を検討中でございますから、次の国会には提案されると思います。御承知のとおりに、悪質の犯罪が特に最近目立つような傾向になっておりまして、まことに遺憾に存じますけれども、問題はやはり刑を引き上げるだけで用を達するとは実は考えておりませんので、真犯人をできるだけ早く逮捕いたしまして、それを適当に処罰をしていくということが非常に迅速に行なわれる必要があると存じております。そういうことでございますので、警察庁とも連絡をとりまして、非常に悪質な犯罪に対しましてはもう少し重点的にその犯人の逮捕ということについて警察も力を尽くしますように、私のほうもまた警察と歩調を合わせまして、そういう悪質犯に対しましてしは徹底的な捜査を行なう方針でございます。この誘拐事件は、どうも何と申しますか、流行病みたいな形になって参りまして、あの吉展ちゃん事件というのがございましてから、非常にふえておりまして、未遂まで入れますと約三十日ぐらいの間に六十数件も出ておるようでございますが、これにつきましても、いろいろ警察自身も捜査については具体的な検討を行なっておるようでございますけれども、私どものほうとしましても、こういうことに遺憾のないような措置をとるべきである、特に法務省といたしましては刑法を担当しておるのでありますから、こうい面からの世論に対する措置を怠ってはならない、こういうふうに実は考えておる次第であります。
  93. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 よくわかりました。お伺いしたい要旨は、悪質の犯罪者に対して、たとえいかような重罰を課せようとも、これは万全の策でない。結局悪いことをすればすぐつかまる。そういういわゆる検挙の迅速ということがいわゆる社会不安を除くことにもなりますし、また、うっかり悪いことはできない、すぐつかまるということにもなるかと思う。そういう点特に御指摘もございましたから、これ以上お伺いいたしませんが、さらに方向を変えて、今次の統一地方選挙でも非常に選挙史上まれに見る悪質な犯罪が出ておるようですが、買収事件を初めとして、にせ証紙事件とか等々の悪質な犯罪がいまだかつて見なかったほど考えられる。事ほどさように今次の統一選挙は非常に悪質の続出であったと思うのです。こういう点はもちろんきわめて遺憾とするところで、大臣としても責任を感じておられると思うのですが、この点についてのお考えをひとつ端的にお聞かせいただきたいのです。
  94. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) このたびの統一地方選挙に際しまして、政府といたしましては自由でかつ公明な選挙が執行されますように期待をいたしまして、昨年十月以来、公明選挙運動を真剣に促進して参ったわけでございます。特に予備費等まで出して啓蒙宣伝したということはかつて今までなかったのでありますが、そうして、大いに期待をしておったのでありますけれども、御指摘のように、まことに悪質な違反等が出まして遺憾に存じます。ただいまこの問題は法務省に、警察と検察庁におきまして捜査中の問題でございますので、具体的な内容等については、私も詳細な報告をまだ受けておりませんけれども、できるだけ徹底的に追及いたしまして、そうして真相をできるだけ早い機会に国民の前に明らかにしたい、そういう考えで進めております。
  95. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは他に質問の方もございますので、最後に一点だけ要望をかねてお伺いしたいのですが、今決意の御一端をお伺いしたわけですが、ひとつかような悪質な違反者の責任の追及という点については、法務省としては何ものにも屈することなくきぜんたる態度でひとつ初心を貫いていただいて、どこまでも追及する手をゆるめないで、あくまでも掘り下げて追及の手をゆるめない、こういうきぜんたる態度で臨んでいただきたい。また、このことに対して大臣としての一大決意のほどを重ねてお伺いしたい。
  96. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 選挙違反につきましては、法務大臣といたしましては、ほんとうにもう厳正公平な立場をもちましてこの事件の捜査につきましてたびたび検事長会議並びに次席会議、検事正会議等をいたしまして激励をしておるわけでございます。日常検察行政関係は私といたしましては検事総長を信頼いたしまして検事総長に一切をゆだねておるわけでございますが、私自身がこの捜査に対しまして手心を加えるような、あるいは何らかの力で捜査を妨害するような、さようなことは一切いたしません。私は、日本の民主政治の基盤であると選挙を考えておるのでありまして、その基盤を作るためにはいかなることがあってもこれは徹頭徹尾捜査をいたしまして真相を明らかにする。そうしてそれぞれ法によって処断をしていく、こういうことでなければならない、こういう強い決心をいたしております。
  97. 村山道雄

    委員長村山道雄君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  98. 村山道雄

    委員長村山道雄君) 速記をつけて。
  99. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大臣おられる間にちょっと聞いておきたいのですが、この前の国会で川崎入国者収容所の位置を変更するということが一応承認されたことを覚えておるのですが、この説明を聞くのと、衆議院で修正されたのとちょっとわからないのですが、その事情をちょっと聞かせていただきたい。
  100. 津田實

    政府委員津田實君) 前回当委員会におきまして御審議をいただきました法務省設置法の一部を改正する法律によりまして、川崎市にあります川崎入国者収容所を横浜に移転するという趣旨の法律を御審議いただき、成立したわけであります。その際に、施行の時期といたしましては、公布の日から一年以内で政令で定めるということになっておったわけでございます。その一年の施行時期が本年の三月三十日が最終期限になっておる。ところが、川崎入国者収容所につきまして、その法律を御審議願いました当時は、すでに横浜本牧にその敷地を確保いたしまして、さらにその上に建物は川崎入国者収容所の隣接しておりますところの川崎化成におきまして、その本牧の土地の上に建物を建設いたしまして、それと現在川崎の入国者収容所のある土地、建物とを交換する。いわゆる建交換によって本牧に施設を新設するということで進めて参ったわけであります。その建交換を完了し得る期間が本年の三月三十一日という目標になっておったわけでございます。ところが、昨年におきまして、その後の経済事情によりまして、川崎化成がその本牧の土地を建交換するということの経済的な力に不安がありましたために、その建交換を辞退したいということを申し入れて参ったわけでございます。その理由はいろいろありましょうが、建交換をいたすために、その川崎にあります収容所の敷地、建物をさらに評価をいたしましたところ、その後の値上がりによりまして、建交換をいたしましてもなおかつ差額を相当川崎化成が負担しなければならぬという事情になりまして、そういう事情を勘案いたしまして、川崎化成としては、この交換には資力的に応じがたいという結論になった模様でありまして、その旨を法務省に申し出て参ったのであります。そこで、そういうような事情になりましたので、事情やむを得ないことでありますが、その当時はすでに昨年度の半ばを過ぎておりましたので、もはやあらためて建交換の相手を選定するといういとまがなくなりまして、結局はその問題はそれによって不調に終わるということになり、したがって、本年におきまして、その本牧のすでにございます敷地の上に新たに敷設を国家予算をもって建設をするという方途を講ずるのはかなかったわけであります。そういたしまして、本年度予算にその経費を計上いたしたわけであります。で、本年度予算につきましては、すでに御承認を得ておるわけでございますが、そういう事情でありましたので、本年の三月三十日までには横浜にこれを移転することができないということになったわけです。そこで、本年の一月、今回御審議を願っております法務省設置法等の一部を改正する法律案を提出いたしました際、その第二条におきまして、川崎入国者収容所を横浜に移転するという問題を一年延期したい、延期するという趣旨法律案を持ったわけでございます。ところが、衆議院の御審議の段階におきまして、昨年成立いたしました法律の期限であります三月三十日がまさに到来せんといたしたわけです。かような場合にいかがすべきかという問題があるわけでございます。政府といたしましては、法律の趣旨を尊重して、とにかく川崎入国者収容所を横浜に移転すべきであるという結論に到達いたしまして、三月三十日付をもって政令を公布いたしまして、川崎入国者収容所を横浜に移転したわけでございます。横浜に移転したと申しましても、本牧においてその施設はありませんので、現在横浜の入国管理事務所の施設に川崎入国者収容所を移転いたしまして、そこに横浜入国者収容所を開設いたしたわけでございますが、その横浜入国管理事務所の施設には、その収容室等が不足でありますので、旧川崎入国者収容所の施設をもって法務大臣が指定いたしまして、横浜入国者収容所川崎収容室といたして現在に及んでおるわけでございます。そういう意味におきまして、もうすでに横浜に移転は実施されましたわけでございますので、衆議院の段階におきまして、第二条を削除するという御修正があったわけでございます。政府といたしましては、まことに相当である御修正であるということでお受けをいたした次第でございます。
  101. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これはなんですか、川崎化成と建交換をということは、向こうのほうから契約解除というのですか。これは話し合いで、口約束程度のものであったのですか。
  102. 津田實

    政府委員津田實君) 事情を申し上げますと非常に長くなるわけですが、一口に申しますと、川崎入国者収容所には本来の建物、敷地と、それに若干の空地とを持っておったわけです。そこで本牧の土地を取得いたしますにつきまして、本牧に適当な土地を見つけましたところ、これをすみやかに確保する必要があったということによりまして、その川崎の入国者収容所の敷地の一部をさきまして、それととりあえず本牧の土地とを交換すべく川崎化成と契約いたした。その際、第二次交換として、現在あります川崎化成の土地、建物と向こうの建物施設とを第二次交換にするということの第二次交換のかりの契約をいたしておったわけでございますが、その点、何ら法律的に拘束力と申すものはないと言わざるを得なかった状態でありました。
  103. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 政府のやり方はいつもそうなっちゃうんです。法律案が通り、予算が通らなければ実施できないということで、当局者の責任を問うわけではないのですが、われわれが内閣委員会法律案を決定をし、しかもそれが向こうのほうから契約を破棄されたからまた次の国会にこうこうだということでは、これは国会の権威は法務省自身が、どういう手落ちか知らないけれども、落としているのじゃないかと私は思うのです。それは事情はありますよ。いろいろ言われましたけれども、少なくりも国会に法律案を出すときには、もう間違いのないというはっきりしたものを持っておられたと思うのです。それが川崎化成の経済事情が変わったから——商売人というものはみんなそういうものですよ。それは先ほど言われましたけれども、交換しても、向こうのほうがまだ追銭——追銭という言葉は悪いのですが、まだ少し超過の負担をしなければならぬというようなお話があったのですが、そういうものを法務省あたりでも十分間違いのない検討をして、私は法律案を出していただきたいと思うのです。その点大臣どうですか。
  104. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。今御指摘のとおりだと存じます。このたびの経過は三十五年度から始まっているようでございますが、これを私一読いたしまして考えますことは、第一に、こういう国の施設を行ないますときに、今の建物を売却する、そういう金で新しいものを建てるという考え方にも少し誤りがあるのじゃないかと思いまして、できることならば、全額国費で先にやって、不用なものをあと相当価格で払い下げていくべきものである、こういう建前が一番適当ではなかったろうかと思うのでありますけれども、前からの継続でございまして、そういう話し合いをしたけれども、私が聞いたところによりますと、あの当時昭和三十六年の暮れのころから政府が資金引き締め政策をとりまして、それが一番大きな原因となりまして、川崎化成は法務省との約束を実行することができなくなったということであったと聞いております。そういうことは、これは何といいましても言いわけにはならないのでございますけれども法務省としまして、そういう目標といいますか、予想を立てて、その予想が狂ったということは、これはまことに遺憾であると存じます。今後はそのようなことがいなよう十分注意しなければならぬと思いますけれども、今度の場合は、突然にそういう一方的にお断わりを受けた、そういうことから、簡単に急速に解決ができないようなところに法務省が立たされまして、その臨時的な措置として横浜の事務所に一応看板をかける、そうして、このたびあらためて提案をいたしまして御審議をいただき、御了解をいただきましたならば、今度は新しい角度に立ちまして建設を進めていきたい、こういうことでございます。
  105. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は、こういうことのありがちなことがありますので、法務省当局を責めたいとは思わないのです。しかし、少なくとも法務省設置法として、しかも入国者収容所という法律的にも相当問題のあるものを国会の審議を得て、それが川崎化成との契約がうまくいかなかったら、今度はこうやるのだ、そういうことになると、今後法務省から出してくる単——に川崎入国者収容所だけでなくて、あるいは刑務所も相当移転の場合がありますが、そういう場合に一々これは間違いありませんかということで、法務大臣が約束しても、向こうに間違いがあったら仕方がない、こういうことでは私は困ると思う。法律的には非常に厳格な法務省が、商人相手にかかって振り回されておるのではないか、そういう気持も私はするのです。この点、その衝に当たった方には非常に気の毒ですけれども、その点は十分今後こういう問題を出すときには、今大臣の言われましたように、そんな建交換とか、そういうものじゃなくて、こういう政府の建物でもあるし、しかも重要な建物であるから、こういうことをやらないような措置をとるべきであると思うのですが、もう一ぺん大臣、確認しておいて、次の問題に移ります。
  106. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) このたびの川崎の入国者収容所の事件、問題につきましては、御指摘のとおりに、まことに遺憾の意を表する次第でございますが、今後の問題につきましては、このようなことがないように十分注意をして参りたい。また、御指摘がありましたとおりに、法案として出したものを、法律が通過したけれども、実施ができなかったというようなことでありましては、ほんとうに申しわけがないのでございまして、今後このようなことがないように一生懸命に、最善の努力を尽くしますように、法務省のすべての幹部の諸君に厳重に申し伝える考えでございます。
  107. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、今度の法律案の内容に関連して、先ほど同僚伊藤君から麻薬対策について検事の動員とかいろいろ出ましたけれども、この機会にひとつ法務当局に、これはどなたでもいいのですが、お聞きしておきたいのですが、法制審議会で刑法改正の問題が上っておるようですが、現在の日本の刑法は若干いろいろの変化はありますが、明治四十一年に実施されたものであって、内容的に見ますると、特別単独法によって刑法自体があのままでは、いわゆる動かないような、運用できないような形になっておるのですが、この前、これは新聞で拝見したのですが、法務大臣がこの審議会に対して刑法改正についてすみやかに答申をしてもらいたいという諮問をされたようでありますが、問題点というのはどういうところに専門的にいうとあるのですか、あまりこまかいことじゃなくて……。
  108. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 刑法改正の問題点でございますが、大きく分けまして大体三点であろうかと存じます。  まず、ただいま御指摘になりましたように、現行刑法は施行後五十年あまりを経過いたしておりますが、その間におきまする刑法理論の発展というものと現行刑法との関係でございまして、その間の刑法理論をどういうふうに刑法の改正のほうに盛り込んでいくかという問題点が一つあろうかと存ずます。  第二点は、これも近年の刑事政策思想というものの発展をどういうふうに刑法改正に盛り込んでいくかという問題でございまして、たとえば、保安処分の問題であるとか、不定期刑の問題であるとか、そういう刑事政策的な新しい思想をどういうふうに考えるか、これが第二点の問題点でございます。  第三点は、現行刑法の刑法各則に定められております各種の犯罪及びそれに対する刑罰、この各種の罪につきまして、その構成要件や法定刑の定め方をどうするか、さらに各種の罪の相互の間における法定刑の均衡というものを、やはりこの五十年間におきまする社会の変化、国民感情の変遷、こういうものの関係でどういうふうに評価していくか、こういう問題であろうかと存じます。  以上大体この三点が問題点であろうかと存じます。
  109. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ごもっともな趣旨だと思います。しかし、いつもこの刑法改正の論が出るのですけれども、なかなかその結論に達するということはむずかしいようです。先ほど刑法理論についていろいろ問題があるということは、これはわれわれ学者ではないけれども、そういうことも感じられると思うのです。それがために、今の刑法たるの役目を果たさないような状態になっておると思うのですが、もう時間も、これだけ聞いておっても約二時間ぐらいかかりますから、あまり私はこまかく聞きませんが、現在この刑法改正の委員になっておられる方々の人数とにぶれはどういう顔ぶれですか。学者の顔ぶれをちょっと聞かせて下さい。
  110. 津田實

    政府委員津田實君) 先ほど大臣が申し上げましたように、本年の五月三十日、法制審議会の総会におきまして、この刑法を全面的に改正すべきかどうかという法務大臣の諮問に対しての審議方法を定めたわけでございます。それによりましてこの問題につきましては、刑事法特別部会というものを法制審議会の中に設けまして、それによってあらかじめ審議をいたし、その結果を総会に報告させて、さらに総会で審議をする。こういう審議方法をとることになったわけです。その刑事法特別部会は、新たに設けられる部会でございますので、これに対しまして、その委員の人選をいたすことになったわけであります。目下のところ、学者十数名、あるいは判事、検事等の学識経験者やはり十数名、そのほか幹事クラスの者二、三十名というようなことで、大体総人数といたしまして、七十名程度の者を予定しております。しかしながら、まだ人選につきましては、いろいろ内交渉その他学者の中におきましても、いろいろのバランス等もございますので、ただいままだ具体的に申し上げかねるわけでございますが、全国の有数な学者を全部網羅いたしたいということで人選を進めておるわけであります。なお、ただいまのところの予定といたしましては、この刑事法部会の第一回の会議は来月の六日開催する予定でございますので、少なくとも今月中にはその人選を確定いたしたいということで進行いたしておるわけでございます。
  111. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この法制審議会は総理大臣の諮問機関なんですか。法務大臣の諮問機関になっておりますか。
  112. 津田實

    政府委員津田實君) 今までいろいろな変遷がございましたが、現在におきましては、法務大臣の諮問機関になっております。
  113. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この間の法務大臣の格間の意見というのは、私ちっょと受け取り方間違っておったかもしれませんが、現行刑法を改正すべきであるか、改正すべきでないか、という諮問であって、具体的にこういう点をやってもらいたいという諮問ではなかったのですね。
  114. 津田實

    政府委員津田實君) その諮問の形式の表現は「刑法に全面改正を加える必要があるか、あるとすればその要綱を示されたい」ということでございまして、個々の原案を法務省が持ちまして、その原案について諮問をいたしたわけではないのでございます。
  115. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 中垣法務大臣専門家であるかどうか私よく知りませんが、どうですか、私先ほど刑事部長ですかの答弁のときにもおったのですが、私は改正しなければならぬという建前で見ておるのです、刑法自体は。刑事訴訟法もそのとおりだと思うのです。それを改正するかしないか。あるとすれば、というような諮問はどうも法務大臣としては信念がないと思うのですが、その点どうですか。
  116. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。ただいまのような御疑問が出るのはごもっともだと思います。実は法務大臣といたしましては、全面改正すべしという結論に立って諮問したのでありますけれども、あの法制審議会の委員方々は、学者から出られる方も、あるいは判検事、弁護士等から出られる方も、ほんとうにいわゆる権威者ぞろいでありまして、そういうものに対しまして、あまり断定的なことを押しつけることはよくありませんので、全面改正をすべきかいなかという格間を実はすることに、私がそういうことを省議のときに発言しまして、私の考えによってああいう言葉になって出たわけでありますが、当然これはあなたのただいまのお言葉にありましたとおりに、全面改正をするという実は前提に立っておるのですが、そういう言い方は少しどぎついという感じがいたしましたので、まず純粋な立場から、白紙の立場から最初まずお考えをいただく。そうして、できるだけ法務省といたしましては、この審議会に牽制と申しますか、ある種の圧力と申しますか、そういうことを一切してはならぬというのが私の考え方であります。したがって、従来の考え方でいきますと、審議会に対しましては一つの原案を、法務省の原案を提示しまして諮問するのが大体従来の考え方であったのでありますが、私はそういう原案そを示してはならぬと、ただし、ただばく然とそういうことを言っても進めようもないでありましょうから、非常に長い間かかって法務省の中で刑法の全面改正につきましては検討がなされております。それにつきまして、法務省側から見た問題点というものは今浮き彫りにされておるわけでございます。そこで、そういうものをまとめまして、それは御審議をいただくための一つの資料である。決して法務省の原案ではございません。これは資料でございますから御参考に供したい。こういう考え方を持ちまして、自由な立場で審議委員方々に御審議をいただく。こういう立場を私は堅持したい。こういう考えに基づくまして、以上のような措置をとらせていただいた次第でございます。
  117. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 法務大臣、中垣法務大臣の人格、考え方というのをうかがえる発言ですが、私はこれは公職選挙法とかそういうものと違って、先ほど言われましたように、刑法理論もありましょうが、刑事政策という点が相当出てくると思うのですよ。それが、政府の考え方というものを出さずに学者の意見を出して下さいというようなやり方では、私はおそらく結論がなかなか出てこないと思うのですよ。特に刑法学者というのはいろいろ強い学説を持っておりますから、委員、学者の顔ぶれまあ聞いておりませんが、入ってくる人はおのおのやっぱり違う刑法理論、刑理論というものを持っている人だと思うのですよ。一つの条項にしてもなかなか私は出さぬと思う。あなたはそのとき、すみやかにひとつ答申をしていただきたいという言葉をつけ加えられておりますが、私はおそらく学者にまかせておいたら私は結論というものはいつ出るか、おそらく四年や五年で出ないと見ておるのです。したがって、私は、一応の考え方というものを投げ出して、これに対して学者の意見を聞くということが、少なくとも私は刑法改正というような重要な国家的使命を果たす私は政府の役目だと思うのです。それはあなたの言うことは民主的でいいですよ。皆さん考えて下さい。いいものが出れば政府がこれをとってやりますという考え方はいいですけれども、私は刑事法に関してはそういうものが簡単に出てこない。私はそう見ておるのですが、中垣法務大臣自信ありますか。
  118. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。  法制審議会は御承知のとおりに法律によって制度としてできておる制度でございますから、私はその法制審議会の制度趣旨を尊重いたしまして、一応法務大臣といたしましては全面改正の時期が来ておるということを信念的に持っておるわけでありますが、しかし、まず改正すべきであるかどうかということを第一歩から踏み出すことのほうが正しいという見地に立ったわけでありまして、すみやかにと申しましても、実は私も少なくとも三年ぐらいは要するだろうというふうに考えまして、できるだけ三年ぐらいで結論を出していただきたいものだという私の希望をつけて実は御審議をいただいたわけでありますが、これによりまして、資料そのものにつきましては、私のほうとしては、委員会が出せと言えば、法務大臣はいつでも法務省の持っております刑法改正の原案とまでいかないにいたしましても、草案のようなものは持っておるわけでありますから、必要があれば、いつでも出すという準備が整いましたので、私、そのような措置をとらしていただいたわけであります。
  119. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もちろん、立法権は国会にあるのですから、案ができればもちろん、政府から刑法改正法律案が出る、全面的になるか一部改正になるかは別としてこれは出る。私は学者の意見を尊重するということについては賛成です。しかし、じんぜん日を送って、全く日本の刑法というものは形はあるけれども中身はないのだというようなことでは困る。  それから刑訴法にも私はまだまだ相当問題があると思う。何もこの法律案を審議しておるのじゃないのですから、ここでこまごま言いませんが、私は大所高所から見ているのですが、今日のような形では私は、検察当局も困る問題があると思うのです。また、国民の側から見ても問題があると思うのです。だからこの点はひとつ早急に、督励をして、督励という言葉は適当でないかもしれませんが、三年といわれておるが、私は三年で出ればほめたいと思うのですが、おそらく五年くらいは少なくもかかるのじゃないかと私は思っておる、そこはあなたとかけ、かけするというと法律に引っかかりますからかけはいたしませんが、相当、私は少なくともそれ以上かかる。というのは、明治四十一年から五十数年というもの実施されたものをここで変えるのです。河川法は明治二十九年からといいますけれども、あれはこれほど国民に対して実際的にそんな刑罰を課するのじゃないのですから、知事さんが反対する程度だったのですが、今度のやつは国民全般のいわゆる罪をきめる法律ですから、学者はなかなか慎重になると思う。できるだけひとつ法務省でも国民の立場に立って、これの改正の日の早いように努力されたいと思うのです。
  120. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。  刑事訴訟法等の改正につきましても、これは当然のことといたしまして、刑法が改正されればこれも改正しなければならないということで、法務省にはすでに事務当局に命じまして検討をいたしておるところでございます。また、監獄法等も同じように関連のある法律でございますから、これにつきましても適当な機会に改正をするという考え方で作業を進めております。  それからこの審議の能率の問題でございますが、実はいろいろ考えまして、七十名からの審議委員をここでお願いしまして、これは五つくらいの部会を作りまして、そうしてできるだけ審議がすみやかにいくためにも、一部会や二部会でやっていたのでは、先ほど御指摘のように四年も五年もかかるということを考えますので、諸外国の刑法改正の立法作業等もよく調査をいたしまして、実は五つの部会で出発する予定でございます。したがいまして、私は法務省当局がこの審議会に協力さえしていけば三年間くらいでできるのではないかというふうに考えております。
  121. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 わかりました。刑法改正問題については、この程度にしておきます。  それで次に具体的な問題ですが、今交通事犯が相当世上やかましく言われているが、あれは法運用上から相当罪をきつくするということで、殺人罪を適用してはということを新聞で見ているのですが、そういう刑法の極刑を適用するということについては、ちょっと私は疑問に思うのですが、法務当局としてはどういう考えですか。
  122. 津田實

    政府委員津田實君) 交通事犯につきまして殺人罪を適用するという問題でございますが、これは新聞等においてときどきそういうことが出ております。これは非常に理論的にこまかい問題になりますが、御承知のように、刑法理論におきましては、未必の故意というのがございます。未必の故意に該当する場合におきましては、外形的に過失によく見えるものでも、あえてこれを行なうということであれば、未必の故意という解釈論があります。未必の故意は故意なのでありますから、これは当然人が生命を断たれるということについて、未必の故意があれば、これは理論的に殺人罪を適用してもいいということになるわけでありますが、はたして実際そういう事件が具体的にどれだけ存在するかということになると、これは個々の事件について申さなければならないことでございますので、どういう例があったかということは申し上げかねますが、理論的にはあるわけでありますから、かりに新聞の報道が正しいといたしますると、そういう意味におけるものであろうと、考えるわけであります。
  123. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 今言われましたのは、いわゆる自動車や交通機関を利用して殺人の犯意を持ってやったとすれば、それは一つの交通機関を殺人の凶器としてやったというわけです。私の言っているのは、交通機関の自動車を自分で運転するまたは電車、汽車を運転しているわけなのです。その場合、私は誤解を受けると思う。今言われたことは、交通機関そのものを殺人凶器として用いたという場合であって、犯意があるのだから、何を持ってやろうとも、これは殺人である。私の言っているのは、交通事犯そのものが、殺人罪に該当するのだということは、今日不注意なドライバーが多いから、それに対する一つの警告だと私は受け取っておるが、刑法理論からいって、そういうことで純真ないわゆる交通機関に携る人々に対してきわめて悪い私は印象を与えると思う、職業としてやっておるんですから。この人が事故を起こして殺人に問われるというようなことは、そんな刑法理論を知らない人から見れば、非常にあの人の家族というものは、その職業を選択した人に対して非常に家庭的に重圧を加えておると思う。私は前、言っておるように、非常に交通事故が多い、しかも悪質な事故もある。犯意のあるないは別といたしまして、ひき逃げをしたり、そういうこともあるから、それに対しては厳格な、いわゆる罪を与えなければいけないけれども、職業でやっておる人に対して非常に重圧をかけるような印象を与えるということは、法務当局としてああいうことに対して、今言われたような一つのそういう職業に携る人に対する、何といいますか、そういう重圧をのけるような声明をする必要はないか。その点どう思われますか。
  124. 津田實

    政府委員津田實君) 具体的に殺人罪というようなものについては、適用された事件につきましては、そういう具体的な事例はよく承知いたしておりませんが、先ほど申し上げました理論に当たるものについては、理論的にはそういうこともあり得るということなんでございますが、単にそれは職業に従事しておるからすぐそうなるんだということではもちろんありません。要するに、私どもが理論的にそういう問題として考えまする場合は、相手を殺しても差しつかえないということで交通機関を運転するというようなことあるいは自動車を運転するというような場合のごく特殊な例ではないかというふうに考えるのでありまして、通常のいわゆる過失事故というものの結果、致傷になりあるいは致死になりましても、そういうものは直ちに殺人罪になるというようなことはあり得ないと思うのであります。
  125. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 こういう論争は法務委員会でやってもらってもいいですけれども、私の言っていることが理解されていないのです。私は交通事犯というものは正常な交通に携わる人々については、私はそういうものを適用すべきじゃない。それに殺人、人を殺してやろうという意味において運転する場合は、それは何も交通事犯でなくして交通機関を凶器として用いて殺してやろうという犯意があるということですね、そういうものを取り違えられておると、正常な形で交通機関に職務を持つ人は、本人は別として、家族に非常に不安を与える。何か人をひいて、御存じのように、東京あたりを走っておると、いつどんなに本人の意思によらず、犯意はもちろんないが、そういう過失で事故を起こす場合があるが、そういう区別がつかないから、私は交通事故なり交通事犯においてはそういうものはあり得ないんだ、ただし交通機関そのものを凶器として殺人の意思を持ってやる場合には、これは交通事犯ではないんだ、これは殺人罪を適用する場合には、それは凶器として扱ったものであるという、そういうはっきりしたものが法務省にあるのかどうか、この点を私は尋ねておる。
  126. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) ただいまの調査部長が申しましたことに関連いたしまして、検察庁が交通事犯いわゆる交通事故といいますか、交通機関、自動車によりまして人が死んだというような結果が出ました事犯につきまして、殺人罪を適用したというようなケースはまことに異例な場合でございまして、今的確にその事実関係を申し上げることはできませんが、私の記憶によりますところでは、たとえばこういう事犯があったと思うのです。これは交通関係の取り締まりに当たっております警察官から指示を受けまして、それをはねのけて、さらに追いすがって行く警察官を振り切って逃げて行った。その結果警察官は死んだ、警察官が死ぬということがわかって、自分がとまれとまれと言っているのを振り切って行く、こういうようなケースでございまして、まことに異例のケースでございます。その他殺人まではいきませんが、傷害の未必の故意があるということで傷害罪、または傷害致死罪を適用したケースも十数件くらいはあったと思うのでございます。
  127. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あまりこういう論議をしておるとまた御迷惑になるかと思いますが、この問題については、私はこの程度においておきますが、これについては自分は自分なりに一つの考えがあるんですが、それで検事を増員して、今交通事犯についていろいろと強化するということですが、私は、そのこと自体はけっこうだと思います。やはり社会の秩序ということは、交通問題ということは今重要な問題ですから、ただ私はその取り締まりにあたりまして、私はその今出された事故とかそういう事犯についてはよく私は知っておるんですが、そうでなく、全く職業として自分の職務を遂行するという形でやっておりながらああいう事故を起こしたときには、人間性というのはその時点において変わってくるという場合がある。ひどいことをしたというその瞬間に、狂暴性はないんですが、非常にまた次に連鎖的にそういう行為を起こすという場合もあるらしいです。そういう点についてはひとつ、りっぱな検事の方々を選ばれると思いますが、十分その点は考えて、今日実に輻湊する都会のドライバー諸君はどちらかというと非常に気の毒な職業に私はあると思うのです。したがって、社会の秩序なり正義を守るということは必要だけれども、そういう立場にいる人についてもやはり反面考える必要があると思うのです。この点についてどうですか、法務大臣でなくてもいいですが。
  128. 津田實

    政府委員津田實君) 交通事犯につきましてももちろんこれは犯罪として処罰されるわけでございます。そのものの罪を犯すと申しますかあるいは過失と申しまするものについては、他の一般事件と同じく厳重にこれを考えるべきものであると思いますし、また、厳重にこれを考えて慎重に処理をするということにいたしておるわけでございます。ただ御承知のとおり年々事件数はふえまして、少なくとも昭和三十八年におきましては六百万件ぐらいになるのではないかと思われる。その件数のうちには非常に軽微なものもありますが、そういうものにつきましても一々検察庁におきまして取り調べを行ない、それによって処理をいたしているわけなんでございまして、決して交通事件であるがゆえに簡易に扱っておる、また、そういう犯意あるいは過失の有無について簡易にこれを認定しておるというようなことはないものと信じております。
  129. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 法務大臣、聞いておいていただきたいのですがね、私、少なくとも刑法なんか扱う皆様方となると、ほんとうに正義を守るという立場でこの法を扱っでいただきたいと思うのです。なるほど交通事故が多くなっでいることは統計数字で言われたとおりです。これを何とかしで少なくし、道路上の安寧、安寧といいますか、安全と秩序を守るということは一つの現在の政治の大きい目標になっでおりますがね。しかし、その交通事故が多くなったということは、単にそれに当たる運転手なりそういう関係者だけが原因ではない。いわゆる交通政策、これは政府の責任もある、いろいろの人がやはりこれを一緒になっで解決しなければ、交通の安全ということはあり得ないと私は見ておるのです。ところが、ああいうものがぱっと出でくると、私は検事の人はみんな人格者と思うけれども、つい、そういうムードというか感情というかに走っで、ことさらに法の適用というものに公正を欠きはせぬかという気がするのです。そういう点をひとつ私は法務大臣としで十分警戒をしでいただきたい。交通事故をなくすということはわれわれ全部の責任であり、もちろん関係者は注意しなければいけない。それは無謀な運転をする人もありますから、そういうものは厳重に取り締まるべきであるけれども、少なくとも刑法をそれに当てはめるという場合には、いわゆるそういう法の正義の上に立って私はやっていただきたいということを、検事増員にあたって、一つの私の希望的な質問として申し上げておるので、その趣旨を間違えぬようにしでいただきたい。
  130. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 交通事犯につきましての取り調べ並びに求刑の問題でありますが、これは御指摘どおりに社会的な背景を無視するわけには参らないと思います。特に御指摘のとおりに、非常に狭い道路に車両が、交通量が多いわけでございますし、かりに故意にそういう事故を起こそうという意思がなくとも、やむを得ない事故等もたくさんあろうかと思います。そういう意味におきまして、特に子供の歩道横断等につきましてのもう少し社会的な教育ということも必要あろうかと思いますが、政府といたしましては、道路等の整備につきましてもあるいは信号等につきましても、遺憾のない惜置をとっていくべきだろうと思います。また、私は絶えず自分の主張として言っておるのでありますが、こういう問題につきましては、罪を憎んで人を憎まないということわざもございますけれども、そういう態度こそ必要ではなかろうかと存じております。
  131. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は、こういう問題を今の世論というか、今のムードからいうと、逆の立場の発言をしておるんですが、きわめてやりにくいことだと思うのです。交通事故にあった被害者については、僕らみたいなことを言うと、何だ、あいつはもっと交通事故があってもいいのじゃないかという考えを持っておるように思われるが、そういうことではない。しかし、実際問題として、それを職業とせざるを得ない人々の立場というものは、また別の立場があるんですよ。とにかく現在東京、大阪の大都市で、運転する人は朝出たら帰るまで、御主人の顔を見てほっとするというのが今の実情ですよ、そういう人についてはやはり法の保護ということを、保護と申しますか、公正な適用ということが私は必要だということを言っているのであって、そういう事故を起こした不注意な者まで擁護するということじゃないのです。それにはみんな政治家も、あるいは行政官も一緒になって交通事故を少なくしていきたい、たまたま交通事故を起こした人については、十分その真相を調べて、本人の過失の度合いとか、あるいは殺人罪というようなことを申しましたけれども、刑法の傷害罪に適用するにしても、十分その点を考えてやっていただきたいということを希望しておきます。答弁は要りません。  次に、これまた案に従ってちょっと二、三尋ねておきたいのですが、今監獄法というものがそのまま実施されておるんですが、監獄の状態をちょっと聞いておきたいのですが、刑務所といいますけれども、懲役監、禁固監、拘留場、拘置監というものがあるんですが、一説に聞くと、拘置監は非常に満員だと、禁固監というのはほとんどもう入る人もない、けっこうなことですが、懲役監の実情は、収容の状態はどうなんですか。
  132. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 懲役囚の数は年々減少しておりまして、大体今、ちょっと数字が古うございますが、昨年の暮れで五万九千八百五十八、その後ややなお減少の傾向を示しておりまして、大体刑務所の現在の定員のちょうど一ぱいぐらいという状況でございます。
  133. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この五万九千八百五十八の中で、五年以上の長期刑というものはどのくらいおりますか——、出ておりませんか、出ていなければあとで——、禁固監というのはこれは政治犯なんかであって、今ではもう閑散としているようですが、どういう状態ですか。大体懲役監と併設されていると思うのです。
  134. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 禁固監と申しますと、事実上特別の施設というのはほとんどないわけでございます。刑務所の一部の一棟をそれに充てる、ないしは一棟のうちの一部をそれに充てる、非常に数が少のうございまして、ただ最近、先ほどの話に関連いたすわけでありますが、道路交通関係事故が非常に多いというので、現在禁固刑の言い渡しを受けた者が各地に出て参りました。自動車の運転を、常にめちゃな運転をやりまして、引き続いて、人罰金刑を受けたのにまた人をひくというような、不注意な運転手ないしは特に注意しないというような禁固刑が最近出て参りました。そういうので、今それらの禁固囚が相当出て参りましたので、東京と名古屋の地区に禁固囚だけを集めまして、それも特にそういう道路交通違反関係の者でございます。それらの者を集めまして、それもいずれも四、五十名ずつございます。特にそれらに対して自動車の運転についての再教育と申しますか、さようなことを実施している状況でございます。
  135. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 拘留場は大体ああいう二月という制限もあるので、警察あたりで全部、警察の拘留場ですか、あいつを利用して、実際は刑務所にはあまりおられぬのですか、満員になっておるのですか。
  136. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) いわゆる手へんの拘留刑でございますが、最近ほとんどございません。ちょっと私今その執行状況を頭にないくらいでございます。
  137. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは先に進みますが、今度は特設少年監獄ですね、これは懲役監とかいうところに分界をして、一緒に併設しておるところもありますが、特別に独立して持っておるのはどういう——戦前のやつは大体知っておるのですが、今日どのくらいあるのですか。
  138. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) ただいまの御質問は、少年を収容する刑務所という意味と思いますが、少年刑務所は全国に七カ所と、特別の少年刑務所を置きまして、大体二十三才以下の者を収容しておるのでございます。
  139. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これはちょっと僕も実情を知らなかったのですが、二十三才以上になると、普通の懲役監に入れるのですか、二十六才じゃなかったですか。
  140. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 少年法によりますと、二十才までが少年でございまして、しかし、受刑中に二十才をこえる者がある、そこで少年から直ちにおとなというふうに持って参りますのも、処遇が急激な変更になりますので、大体二十三才までを基準として、少年刑務所で収容しておるわけです。しかし、それも必ずしも厳密なものではございません。特にその者の性格なり、素質なり、あるいはそこで勉強しております作業の技術等の関係でその施設に置くという、その辺は融通をつけて実情に即した処遇をいたしております。
  141. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 少年法によっていろいろ規定されておるのですが、最近少年の犯罪が非常に悪質化しておる、それにはまた社会的ないろんな事情もありましょうけれども、二十三才まで、それもけっこうであるが、それ以上、かりに少年刑務所に収容するという場合には、これは法務大臣の決定でできるのですか。
  142. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 現在受刑者を収容いたしますのに、法務大臣の個々の命令ではございません。分類基準というものを設けておりまして、法務大臣の訓令で出ておるのでございます。かような性格の者は、いわゆる精神病者であるとか、あるいは病気を持っておる者は、医療刑務所であるとか、二十才までは純然たる少年として処遇する、二十三才はいわゆる準少年として処遇する、それと改悛が困難な者、再犯等で幾らやってもまた刑務所に戻ってくる者と、初犯者を別にするという分類基準が設けられております。それに基づきまして、刑が確定しますと、分類いたしましてそれぞれの指定されております刑務所に収容することになっております。
  143. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は、行刑運営にまで立ち入ってどうこう言いませんが、大体二十才をこえて二十三才まで入れようというような人は少年であっても相当罪の重い犯罪を犯したと見ておるのですが、それをもう二十三才、最高二十三才までいけばもうすぐ普通の大人の懲役監と同じようにやるというのは、私はまだ問題があると思うのです。したがって、教育刑主義という立場から見ますと、もう少し私はその点も考えて、特に今の少年が悪質な犯罪を犯すというのは社会的な背景もあろうけれども、行刑上においても配慮する点があるのではないかと思うのですが、大臣おられませんけれども、あなた専門家としてどう思われますか。
  144. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 少年犯罪の動向は、御指摘のございましたように、最近非常に狂暴化と申しますか、悪質化の傾向を示しておるのであります。従来でございますと、刑務所に入っております者の罪質は窃盗が半分、七、八割というふうな状況であったのでございますが、最近は窃盗犯の比率が五〇%から四〇%というふうに減って参りまして、それにかわっていわゆる強盗あるいは恐喝あるいは、いわゆる姦淫の罪または傷害というふうにふえて参りまして、特に少年刑務所等で見ます場合に少年院——まだ刑罰がないのでございますが、少年院に行ったその卒業生が刑務所に入ってきているというような状況でございまして、われわれといたしましては、むしろ少年院の処遇を充実いたしまして、少年院で何とか、それらの者が立ち直るように努力していきたい。また、少年の受刑者につきましては、特に職業訓練等を充実いたしまして、これらの者が社会に出て適当な職業につけるように職業訓練に重点を置いて、彼らが再び罪に陥らなくてもいいように社会的生活に適応性を与えることに努力いたしたい。また、その線で努めておるわけでございます。
  145. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ここまで尋ねるのはどうかと思いますが、この法務省にはいろいろ研究書もあるのですが、そういう少年が非常に悪質な犯罪を犯して、しかもそれが数が非常にふえてきた、これには社会的な背景があるということをちょっと言ったけれども、ここにはやはり考えるべきものがあるのではないかと思うのです。私は、まだきょうは統計をさっきから探しているのですが、そういう悪質犯罪に入っていった動機を調べた、あなたのほうから出しておった資料があったと思うのですが、まず第一に、賭博にひとしい競輪とかパチンコとか、そういうところにまず足を入れて、それから金に詰まり、だんだんと悪の道に入っていく。金の算段のために殺人、強盗といったことに入っていったという人が相当数に上っている資料が出ておったと思うのです。したがって、私は、今日少年の犯罪が悪質なものがふえておるということは、単に私は、行刑関係の皆さんだけでなくして、政治家も一緒になって考えなくてはならないのですが、こういう競輪、競馬はちょっと特殊なばくちだと言われますけれども、富くじにひとしいものを、刑法で一応禁止しているやつも認められている社会というものに対して行刑担当者として一体どう見ますか。これは大臣からひとつ答えてもらってもいいし、また、専門家から答えてもらってもいいですが。
  146. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) まあ、いわゆる社会の現在の悪あるいは感化が少年を犯罪に陥らしめるという点は御指摘のとおりで、私も同感しておりますが、まあ私、法務省の役人といたしまして、他省の所管であります娯楽とか、あるいは競馬とか、そういうものについてとやかく申し上げることは差し控えたいと思いますが、各省におかれましても、少年犯罪につきましては大きな問題であろうかと思うのでございます。特に警察あるいは厚生省等におかれましても、いろいろ御研究になり、そしてまた政府におきましても、これを非常な問題として取り上げられまして、総理府に中央青少年問題協議会というようなものを設けられまして、各省連携いたしまして、それぞれその機能を一体化して犯罪防止あいるはその矯正ということに当たるべきであろうと思います。私もその線に沿いまして、各省とよく連絡をして処置を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  147. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は、まあこういう席上ですから、行刑担当法務省方々は、まあ表現はきわめておだやかに言っておられるが、法務大臣は政治家ですが、今日のあの映画を見ても、テレビの娯楽版を見ましても、それから先ほど申しましたように、パチンコや、あるいは競輪、競馬——しかもこれは政府が奨励はしていないけれども政府の特許になっているようなものが、そういうようなものが社会の背景にあって、そうして少年の犯罪が多いから、行刑当局がこれに対して是非を下さなければならないというようなことは、私は一方でそれを製造しておいて、一方ではそれを押えるというようなちぐはぐな政治が行なわれておるのではないかと思うのです。ただし、競輪あるいは競馬についてもあるいはそれの存在する社会的な価値というのはその人から見ればあると思うのです。なければあんなものは存続しない。社会的な価値というものは人によっては無価値だという者もいるが、やはり社会的の価値があるから出ておると思うのです。しかし、少なくとも少年犯罪というものから見ますと、ああいうものに対してもっと注意深く見なければならないと思うのですが、この点について法務大臣はどういうお考えでしょうか。
  148. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 非行少年問題につきましては、その非行少年の発生の原因というようなものをまず深く追及する必要があるかと思うのでありますが、政府におきましては、青少年問題は非常に重点的な政策として取り上げまして、先ほど御指摘のとおりに、非常に関係官庁も多いのでございますが、これも各省がまちまちな政策を行なっていては必ずしも目的を達成することができないという考え方に立ちまして、一応その総合的な政策を進めておるのでありますけれども、特に非行少年問題に対しましては、すでに法律を犯した、法律に触れた少年、それから法律を犯すおそれのある少年というふうに二つに分けて考えておりまして、こういうものに対して法務省はどういう態度で臨むかということも、先ごろ少年係の検事を東京に集めまして、三日間にわたりましていろいろな立場から検討をしたわけでございますが、これにつきましては三十九年度の予算ではいろいろな角度からの予算要求をいたすつもりでございますが、ただいまお尋ねのような現在の社会におきまして非行少年が出るということは、私は率直に言いますと、どうも非行少年が出やすいような社会環境下に少年が置かれているという御意見につきまして全く同感であります。率直に申し上げて道義の支配するそういう社会、それを実現することさえできれば、今日の非行少年というものはそれこそ何十分の一にも減ってくるであろうと考えられるのでありまして、そういうことのために、たとえば先ほど御指摘いただきました映画の問題あるいはテレビその他の読みもの、こういうものにつきましても、いま少し政府といたしましては憲法の範囲の中におきまして政策を進めていく、施策を進めていく必要があろうかと存じます。競馬、競輪等のことにつきましては、これもすでにあらゆる角度から議論がなされているのでございますけれども、ただいまの法律でこれを直ちに禁止するということがはたしてできるかどうかということになりますと、これもまた幾多の問題があろうかと思います。私はできるだけ家庭の教育を通じて、それから学校の教育を通じ、社会教育を通じまして、現在の制度でおとなが見ましてこういうものは取り除いたほうがいいというような問題、そういうことにつきまして、家庭、学校、社会において少年に対してよく指導しますならば、たとえ競輪、競馬等がありましても、それによる非行少年等の発生する余地というものは食いとめることができるのではなかろうかというふうに考えております。特に少年問題につきまして、私は非常な関心を持っておるのでありますが、法務大臣としての立場で申し上げますと、一度あやまちを犯した者を二度あやまちを犯さしてはならないという、こういう考えに徹した行政をやっていかなければならない、こういうふうに考えておるのでございます。
  149. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで、大体法務大臣はもう私のこれから尋ねようとすることもある程度わかって言われたと思うのですが、少年院なりあるいは少年刑務所の指導ということですが、私はそういう方向でやられておると思うのですが、ただそれを指導する指導員というのですか、職員ですね。監獄の職員の待遇はきわめてよろしくないのですね。比較すると、皆さん方どう思われますか、ああいういやな仕事をしておる人については、そういう一般公務員ですからあまりそうはいかないと私は思うのですが、法務当局としてはどう考えておられますか。
  150. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 刑務所あるいは少年院におきまする職員勤務でございまするが、なるほど部外者の方からごらんになられますと、きわめて人生の裏街道と申しますか、陰うつなへいの中の仕事でございますいます。さような意味から申しますと、なかなか不愉快であろうと思います。まあお察し願っておるわけであります。で事実われわれといたしまして、へいの中で勤務いたすということは並みたいていのことじゃございません。また、夜間にしましても逃走等がございますれば、これまた社会に大きな不安を与えることになりますので、交代ではございますが、神経をとがらして勤務しなければならぬ。しかしながら反面、少年等に当たっておりまする職員と申しますのは、そのことに非常に情熱を燃やしまして、一人の人間が自分の力と申しますとはなはだ僣越ではございますが、一年間手塩にかけてそれがりっぱになってまた社会に出て、いい姿であいさつしに来たということに喜びを感じまして勤務しておるわけでございまして、また、言うに言われぬ楽しみがあるわけでございます。ただ、勤務につきましては、一般公務員でありまして、特別の公務員法の許す限り、あるいは俸給表では公安職の俸給をいただいておるわけでございますが、それ以上の特別の優遇策というものはございません。しかしながら、われわれといたしまして、国家公務員共済組合というものがございますが、公務員共済組合等の活躍によりまして、できるだけ彼らの生活環境というものの改善あるいは福祉の増進ということを考えていきたいと、かように存ずる次第であります。
  151. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 今ちょっと触れられましたが、ああいう仕事に情熱を燃やしてやっておるということは、事実そういう人があると思います。また、現にそうかと思いますが、行刑当局として、法務当局としてこれに甘んじたら私は間違いを起こすと思うのです。これは人間ですから、医者には医者の情熱があり、看護婦には看護婦の情熱があると言われますけれども、情熱があるからそれの一つの楽しみでやっておるというようなあなたの頭では、僕はちょっと考え違いを起こすと思います。しかし、そういう意味で言われたのではないと思います。私が言うのは、給与国家公務員法の給与表に定められたそういうものについては特別にやるということは、今検察庁、検事あたり、裁判官ですかね、そういう人は別な扱いをしておりますからできない。ただ私が言うのは、そういうところで働いている人たちの何といいますか、慰安、娯楽といいますか、休養所といいますか、こういう設備をやはりやって、単に遊びという意味じゃないのです。そういう指導をする人については、やはり精神的にいつもきちっと行き詰まったような感じ、張り詰めた感じを持っているから、しかも少年を指導するための知識を養うとか、音楽とか、そういう設備をあの中にやるということはできないかどうか。そういう音楽の聞えることは、囚人に対する行刑政策として悪いかどうか、この点どうですか。
  152. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 職員の福祉ということにつきましては、特にわれわれ考えているのでございまして、予算の許す範囲内におきまして、刑務所には各クラブを設けまして、職員の慰安と申しますか、娯楽の設備等を設けているわけでございます。また、音楽につきましては、これが職員関係に直接ではございませんが、今はやっておりますが、バック・グラウンド・ミュージックという、音楽が自然に聞えてきて、それが精神を安定さすとか、あるいは激励するとか、いろいろむずかしい——私、その方面の専門家じゃございませんのでわかりかねますが、さような音楽を矯正教育に利用しているというのが現に二、三の地方で実施しております。さような意味で、さような音楽の施設も、施設には全部拡声器で聞えるようになっておりますので、さような音楽の方面も活用して、職員もそれによって楽しむという方途をますます充実していきたいと、かように考えます。
  153. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 職員に対しては、ひとつああいう行刑事務というものは結局情熱のあるないにかかわらず、非常に困難な、精神的にも暗い仕事ですから、十分配慮してもらいたい。  それと同時に、もう一つ今、関連して聞いておきたいのですが、いわゆる服役をしている囚人に対する処遇ですが、戦後非常によくなったという表現をしておきましょう、よくなったということですが、これが非常に裏と表の問題があると思うのです。あそこがよ過ぎるとみなあそこへ行きたがっては困りますからね。だからやはり刑罰を受けるのですから、ある程度のそういう刑罰的なものがなければいけない。そうかといってそれをきつくすると反感を持って、また再犯、累犯ができてくるということですが、そういう点について、法務省は囚人に対する処遇の研究なんかしているというふうなところはあるのですか。
  154. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 矯正局の中に医療分類課というのがございまして、それらにはいわゆるお医者さん、あるいは精神、心理学者、あるいは栄養士の資格のある人というものがおりまして、常に被服とか、食料とか、さようなものの適正な基準というものについて、常に研究しているのでございます。特にこれは手前みそになりますが、矯正局の栄養関係職員は、全国的にも有名な人であります。学校給食の講師にも文部省のほうから頼まれるくらいの人材がおりますので、それらの者が常に研究しているわけでございます。なおまた、法務省の付設機関であります法務総合研究所におきましても、囚人の処遇というものの基準につきまして学問的な研究、または外国とし比較ということについて研究しております。それらのものからまた勧告を得まして、常に適正をはかっていきたい、かように考えます。
  155. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一つにしておきましょう。結論的に、だいぶ飛ばしますから、ずっと飛んだ結論ですが、今度の、先ほど私が言いました刑法改正の問題が起こっておりますが、刑法自体の実体法の改正もありましょうし、刑訴法の改正もありましょうが、私はこの行刑法関係の法律、これにも十分法務当局は意を用いてもらいたいと思うのです。起訴するということの事実を済んで、裁判してしまった。そうして罪は確定してしまった。ところが、その後が私は一番、人間が人間をさばいたあとの問題ですから、この点はこれは私は重要な問題ではないかと思うのです。先ほど私は冒頭に刑法改正の問題を取り上げた結論というのは、いろいろ尋ねたあとで、それを言いたかったのですが、途中飛んでおりますから、理解できないか知りませんが、今度の刑法改正をなされる場合には、行刑関係の法律についても、十分政府としては考えてもらいたいと思う。学者は往々に——私は今の学者が、だれがなるか知りませんが、刑法理論ばかり取り上げて、あれやこれやとやって、二年三年やると、えてすると、そういう問題は法務当局の皆さんにそういう間はゆだねてしまうのじゃないかと思う。しかし、失礼な言い方で、りっぱな人がたくさんおられますから、そういう一貫した検察裁判それから行刑という三者そろった意味日本の憲法に合ったりっぱなひとつ刑法にしてもらうように、特に法務大臣にそれをまあ希望して私の質問を終わりたいのですが、それに対しての答弁をお願いしたい、
  156. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) ちょっと先ほどお答えしたのでありますが、刑法の改正に関連をいたしまして、刑事訴訟法の改正並びに監獄法の改正は、これは当然のこととして全面的に改正をしなければならない問題だと考えております。私は事務当局に命じまして、刑事訴訟法の改正並びに監獄法の改正につきまして、問題点等の調査を命じておるのでございまして、御期待に沿うことができるように努力をしたいと思います。
  157. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これで終わろうと思ったのですが、監獄法という法律がまだあるのですがね。監獄ということはどうですか、ちょっとどう思いますか。監獄という言葉について、どう考えておりますか。
  158. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 現在の監獄法で、いわゆる刑務所が監獄というふうに法律には書いてございますが、実際法務省内部の慣習、訓令、あるいは政令等におきましても全部刑務所という名前を使っております。しかし、刑務所もだんだんみなの耳についてきましたので、何かいいい名前がないかということで研究中でございます。
  159. 村山道雄

    委員長村山道雄君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  160. 村山道雄

    委員長村山道雄君) 速記をつけて。
  161. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 さっき大臣が法務委員会との関係でおいでいただかない間に四つほどお尋ねを申し上げたわけです。それで、人権擁護局の問題について、それから保護観察官の問題につきまして、お尋ねいたしまして大体事務当局の御答弁をいただいたわけです。もう少し時間がありますと法務大臣にもはっきりしたお答えをいただきたいと思っておったのですが、事務当局の答弁がありましたので、それでその問題を終わりまして、一昨日お尋ねをいたしました、本来税務署がやっておった仕事を三十六年の七月から登記所のほうでおやりになるようになりましたその問題につきまして、いろいろの角度からお尋ねをいたしたわけであります。私としましては、きょうも要点をかいつまみまして、それに従事している税務署の職員あるいは登記所の職員の気持、それから協力という考え方の範囲、それからやっております仕事が法律によって定められた仕事であるかどうかという問題等々の諸点から、この点についてひとつ再検討をお願いしたいという考え方で、先ほど民事局長に対しまして御質問いたしたわけでありますが、私はそういう立場からすみやかな機会にこれを御検討いただいて、やはり税務署のほうでおやりになるというふうにしていただきたい、こう思っておるわけでありますが大臣のひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  162. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。  税務署の通知事務の問題につきましては、一昨日いろいろ御意見をいただきまして、私も全く同感であるということを申し上げたのでございまして、こういう法規上制度化されていないようないわゆる協力するといったような立場に立っての事務でございますから、これを軽々に法務省が義務づけられたような形で引き受けるというようなことをしては私はならないと考えております。いずれも御指摘されました点はもっともなことばかりでございまして、だからといって、ことしすぐ今やめるかといいますと、これもどうかと思いますので、御指摘の点を十分考慮に入れまして、法務省の態度をきめて参りたいと思います。今後の問題につきましては、御指摘されましたような点を十分考慮に入れまして、法務省といたしましても真剣に調査をさせて結論を得たいと、かように考えております。
  163. 村山道雄

    委員長村山道雄君) 他に御質疑はありませんか。——他に御発言がなければ、本案の質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言がなければ、討論は終局したものと認め、これより採決に入ります。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  164. 村山道雄

    委員長村山道雄君) 総員挙手と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により、議長に提出する報告書の作成等につきましては、先例により委員長に御一任を願います。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時九分散会