○下村定君 過日来本
委員会におきましての審議を通じて明らかになりましたとおり、現行の恩給法及び援護法にはなお
改正を要する点がたくさん残存していると思います。これにつきましては、前の各
質問者からいろいろ例をあげて
指摘されましたので、私はこれを繰り返して申し上げることはいたしません。ただ、私が前々から
政府の御注意を喚起すべく機会あるごとに申し述べて参りました事項を、なるべく簡単に要約して、
質問と申すよりもむしろ主として総務長官に対して総括的なお願いをいたしたいと思います。
その第一点は、これは過日来の席上で論議されましたが、現行の恩給法、援護法のワクをもってしましては、太平洋戦争間、公の
職務について被害を受けた人たちをあまねく援護することはできないということでございます。太平洋戦争では、その前の各戦争と違いまして、軍人軍属以外の公務員または一般国民で、
政府の命令によって軍人軍属とほとんど差別しがたい公務に服し、また、当時の国策に基づいて外国
政府または在外特殊法人組織の
職員となっておられた、あるいはまた、旧敵国側の一方的な
措置によりまして不当に職を罷免せられ、または長期の抑留を受けた者等が多種多様にございます。これらの人たちの中には従来の
改正及び今回の
改正案によりまして拾い上げられる者もありますが、まだいろいろの落ちこぼれが相当あると思います。ことに同じ
ケースの人が数が少ないために陳情も請願もできないで泣き寝入りになっている者も私
どもは見のがすことができないと思います。今日、日本の財政経済は目ざましい復興を見せました。終戦処理の一環として、あるいは農地被買収者の問題、あるいは在外私有財産の調査等につきまして仕事が進められておるのでございます。かような
段階にありましては、これと並行しまして、前に申しましたようなさびしく不遇を
感じておる零細な戦争犠牲者にあたたかい手を差し伸べることは、
政府として当然、なすべき責務であると私は考えます。これにつきましては、先般来
徳安長官のお気持を十分了承いたしましたが、このお気持が一日も早く実現されるようにお願いいたします。
第二点は、現行恩給法または援護法のワク内で一応の処遇は受けておりますが、その処遇になお幾多不合理、不均衡の点があることであります。これにつきましては、前の各
質問者からいろいろ実例をあげられまして
質問もしくは要望がありましたから、
——それ以外のもので、なお、残っておりますが、省略いたします。これらの案件を一挙に是正することはもとより望むことはできませんが、ただいま大谷
委員から法制処置についてお話もありましたとおり、私は従来行なわれました
恩給法等の修正には、遺族、傷病者、高齢者優先というような方針は一応ありますけれ
ども、それ以外には
全般を見渡した基本的な計画がありません。いわばそのときどきの都合によって小刻みに行なわれておる。また、ときとしては
改正の緩急順序が必ずしも当を得ない点もあったように感ずるのであります。そこで、私が
当局にお伺いいたしたいのは、法制の問題はもちろんございますが、
政府におかれましても現行法に残存しております不合理、不均衡を漏れなく網羅した、いわゆる、いわば台帳のようなものをお作りになって各案件の緩急、軽重を考慮して、何カ年間かにわたる継続的な計画をお立てになり、これに基づいて毎年秩序ある
法律の
改正、予算の組み立て等を行なわれることが適当ではないかと存ずるのであります。かくすることによりまして、毎年々々
個々の案件について、煩雑な折衝や陳情が繰り返される手数が緩和されることと存ずるのであります。
第三点は、国民生活水準の向上、現職公務員の
給与改善等に伴って恩給及び各種
年金受給者を置いてきぼりにしてはならないということであります。本件につきましては、すでに第三十八通常
国会におきまして、本
委員会から
政府が常時これらの件を調査して適時適切の処置を講ぜられるように附帯決議がつけられております。また、昨年の四月二十六日、本
委員会において私の
質問に対して小平前総務長官から御理解のある答弁をいただいております。本件につきましては、
徳安長官は深い御理解、御熱意をお持ちになっておりますことはこれまでの御答弁によって十分拝察することができます。私
どもは、長官のこの御熱意が一日も早く制度の上に実現することを強くお願いいたしまして、私の
質問を終わります。