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政府委員(中野正一君) 今御指摘がありましたように、現在
日本の石炭
産業の置かれておる情勢というものは非常にシビアでございまして、特に、世界的な団体エネルギーから流体エネルギーへと、世界的なエネルギー革命の中で非常なあらしの中にあるわけでありますが、しかしながら、過去の
日本の石炭
産業が、
日本の
経済、
産業の発展に寄与した、基礎
産業、重要
産業としての果たした役割というものから考えてみましても、また、現在石炭
産業の置かれておる、また、果たしておりまするそういう役割というものから言いましても、やはりエネルギーの安定的な供給源の重要な一環をなしておるわけでございます。この点については、石炭
調査団が昨年の四月から十月まで
調査をされた際も非常に強調された点でございます。しかしながら、
一つには、現在のこのエネルギー革命の
一つの原則、いわゆる消費者の自由選択の原則を、言葉をかえて言いますれば、いわゆる
経済性というものが相当シビアに貫いておることもまた現実の問題でございまして、そういう関係から流体エネルギー、特に油に相当取ってかわられつつあるということも事実でありまして、そういう
事態に直面をいたしまして、どうしても石炭
産業がこのエネルギー革命の中でその与えられた役割を果たしていくというためには、どうしてもコストというものを相当引き下げなければならぬというむずかしい情勢に来ておるわけであります。その
意味で、
政府としては昭和三十四年以来いわゆる出炭五千五百万トンベースというものを目標にいたしました、炭価千二百円引き下げベースという非常にシビアな状態を、これは業界並びに
労働者に対してもそうでございますが、これを要望いたしまして、その線に沿って着々とスクラップ・アンド・ビルドというものをやってきたわけであります。そういう
意味合いからいきましても、また同時に、これに働いておる炭鉱労務者の数も相当多いわけでございまして、そういう
意味合いから言うと、いわゆる雇用の安定という
意味合いからいたしましても、非常に石炭
産業の安定というものは重要じゃないかと考えております。したがって、このエネルギー供給源としての安全性、あるいは国際収支から見ても外貨を節約し得るという点、それから雇用の安定と、こういう点等にらみ合わせて、単に
経済性的な合理性を貫くというだけでは、この
わが国の重要なエネルギー
産業を安定させ、また、これを育成していくということはできないと、こういう観点に立ちまして、
内閣においても、石炭
調査団に今後の石炭対策のあるべき方向というものの答申を求められたのであろうと思います。その線に沿って答申が出ましたので、昨年の十一月二十九日に石炭政策大綱というものをきめまして、これに従って今いろいろな施策をし、また、予算も要求し、また、関係の法案も
提出しておるわけであります。ただ、先ほ
ども申し上げましたように、一般
産業というか、一般の消費者に対しては、やはり
経済性というものが非常に大きく作用するし、また、油と比較した場合に、技術的に
経済的にやはりどうしてもこれは太刀打ちは基本的にはむずかしいという基本観念に立たざるを得ないのでありまして、そういう点からいわゆる
経済性とその他の要素、すなわち安全保障、国際収支、雇用の安定というような点を総合的ににらみ合わせまして、
調査団は五千五百万トンの需要確保、あるいはこれが合理的な
生産の確保という、また、そこに働いておる者の近代的な雇用の安定というようなことをやるためには、どうしてもこれだけくらいの、五千五百万トンの需要は確保すべきである。また、この数量の確保は、
わが国のエネルギーの総合バランスの上から言っても、また、エネルギーの安全保障という点から言っても最小限度必要じゃないかという結論を出されましたので、この点に向かって政策をやっていこう、ただ、先般来の国会の論議におきまして、五千五百万トン以上、たとえば六千万トンの需要確保ということは非常にむずかしいが、なおそういう問題についてはいろいろな観点から
努力をするという総理の御答弁もございますので、そういう点は
調査団の答申とは幾分違っておるということは言えると思いますが、これはまあ政治的な判断でそういう方向が打ち出されたと思いますので、そのことも十分頭に入れて通産省としては政策をやっていくつもりでおります。