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参考人(
前田義徳君) 私
どもの一般的な
考え方を、この際に述べさせていただきたいと思います。
具体的に申しまして、高体連の問題、あるいは道徳教育につきまして、私
どもといたしましては、第一の建前は、
放送番組の編集ということに重点を置いております。で、
放送番組の編集に関しましては、
放送法の精神に基づきまして、私
どもは
NHKの国内番組基準というものを作っております。この国内番組基準は、相当詳細に書いてございますが、問題は、要するに番組の質的向上、内容の向上、それから一般的に文化の向上を目的としたものでございまして、そのうちのスポーツ
部分に、いわゆるプロ的なスポーツよりもアマチュア・スポーツの精神を高揚して参りたいという基本的
考え方を持っております。その基本的
考え方に基づきまして、いろいろな、ことに学校生徒の体育という点からも、私
どもといたしましては、
放送番組の編集、スポーツ番組の編集にあたって、そのアマチュア精神を取り上げていくというところに重点を置いているわけでございまして、今回の高体連の問題につきましても、私
どもがイニシアチブをとったというよりも、高体連の御希望もあって、
放送の場合は、ただいま
鈴木先生からもいろいろなケースについて御質問をいただきましたが、やはり
放送料を差し上げて
放送をするということが、一応の建前でございまして、今
年度の
予算審議の際にも、その
放送料の総額の中でこの問題を
事業計画として処理していくという建前をとったわけでございまして、それがたまたま助成金というような表現によって、内容が非常に複雑化し、また、客観的にもいろいろな
誤解を生じて今日に至ったということは、私
どもとしては、まことに申しわけのない
措置であったと
考えております。しかし、
春日総
局長から御
説明申し上げましたように、このような環境の中で、従来、
放送会社あるいは新聞社等が経済的にあるいは道義的に支持してきたものについては、これを調整して参りたいという最大な努力を払いつつあります。特に、
誤解の
一つのもとは、先ほど
先生の御質問の中でも指摘されました、毎日新聞が主催しております高校選抜野球、それから朝日新聞が長く主催しております高校の甲子園野球でございますが、この二つは、高体連の目標の中には入っておりません。しかし一般的に私
どもが想像いたしますのは、その分までも将来なくなるかという御心配があるかと私
どもは想像いたしております。これにつきましては、それぞれの責任者が各社の人たちと話し合いながらその
誤解をほぐして参りたい、こう
考えております。ただ、この問題を処理する当初にあたって、そのような環境を十分考慮することに手ぬかりがあったということについては、私
どもといたしましても、まことに遺憾だと
考えておりまして、将来はそのようなことの起こらないように努力いたしたい、このように
考えております。
また、道徳教育につきましては、従来の、いわゆる戦前の道徳という観念と今日の道徳という観念は、全く別のものだと私
どもは
考えております。したがいまして、文部省の学習指導要領の中にも、道徳という言葉はすでに使われておりません。これは、共同生活の中で生活指導の
方法がどうあるかという問題でありまして、したがって、戦前、道徳という言葉の中に含まれたいわゆる理念的なものは一切取り払われております。こういう意味での生活指導というものは、やはり私
どもが共同生活をしているという建前から申し上げますならば、共同の福祉のために、他人に迷惑をかけない動き方、これをお互いに、小学校、特に中学校などになりますと、社会の
一つの単位として活動する場も出てくるわけでございますので、そういう意味での社会環境の中で、共同生活のメンバーとしての生活態度の問題、そういう意味での生活指導をどうするかということを、お互いが主観的に、一人々々が自分の立場を
考えながら話し合うという形の番組を作っていることは事実でございまして、先ほど
春日総
局長から例示して申し上げました番組は、すべてこの精神に従うものでございます。文部省の諾否については、私
どもは直接
関係いたしておりませんし、したがって、それがどのような目的であるかは、私
どもは存じ上げておりませんけれ
ども、少なくとも学習指導要領の中のいわゆる行ないの問題については、文部省当局も、私がただいま御
説明申し上げましたような
考え方であると私
どもは理解いたしております。
それから
NHKの学校
放送につきましては、学校教育という建前では、文部省の制定し国会の承認を経た教育法に従って行なうべきことは当然でございまして、その意味で学習指導要領というものが、私
どもの学校
放送番組編集及び政策の基本となることは当然かと
考えられますが、さらに
NHKといたしましては、文部省当局の方々のみならず、広く全国の小学校、中学校、高等学校の現場の
先生の方々並びに教育について見識を持っておられる学者あるいは有識者の方々をすべて交えて、
一つの基本的討論をしていただき、その結果に基づいて、毎
年度の教育
放送の基本的な方針を定めております。
以上申し上げましたことは、はなはだ不備でございますが、
NHKの
考え方としてのスポーツの問題及び学校
放送の基本的な問題のうち、特に生活指導の問題については、私
どもはかような
考え方に立っておりますので、したがって、私
どもは、一部のためにあるいは古い観念のために特別に奉仕しようという
考え方は毛頭持っておりません。ただ、御理解をいただく段階において、私
どもの不手際が、いろいろな方面にいろいろな
誤解を招いていることは、はなはだ遺憾でございまして、今日以後、さらに
先生方の意のあるところを反省いたしまして、万全の手続と万全の連絡をとりながら、できるだけ
誤解を少なくして参るように努力いたしたいと
考えております。