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政府委員(川合武君) それでは新旧対照表がございますから、対照表で御
説明することにいたします。
現行法では、消防の任務を火災とその他の災害、すなわち風水害または地震等の災害、この二つに区別と申しますか、ニュアンスを異にさせております。すなわち火災の場合におきましては、まあ専売特許と申しますと語弊がございますが、ほとんど独占に準ずるような役割を消防が火災について持っており、しかも最近科学消防になりましたことともあわせまして、予防から火災の鎮圧まで、いわば一貫的に行なっております。これに対しまして、風水害または地震等の災害におきましては、消防の役割ではございますけれ
ども、しかしまた他の
行政機関の役割でもございまして、火災における場合とこれらの災害における場合と、消防の役割は趣を異にしておることはお察しのとおりでございます。そこで現行法におきましては、繰り返しますが、火災につきましては一貫作業的に、ほとんどすべて消防の任務でありますが、風水害または地震等の災害による場合においては、被害を軽減する、こういうことをもって消防の任務とする。こういうふうに現行法で規定をされております。ところが、昨今におきまして、私
どもの消防、この場合の消防はいわば現地機関と申しますか、実際あの動く姿の消防でございまして、申し上げるまでもなく、その施設及び人員を活用して、こういう動きを示す消防の任務でございます。その場合におきまして、被害を軽減するという表現をもっては、現在の消防機関の活動の姿を表わすのに不十分であるというふうに私
どもは
考えざるを得ないのでございます。もとより、予防あるいは未然の防止といっても、他の
行政官庁の行ないますところの予防とか、あるいは未然の防止というような権限を促したり、あるいは管理主体といたしまして、そこまで消防機関が入っていくということにはならないと思いますが、しかし現地の活動を見ましても、被害を軽減するというような消極的な
言葉をもっては必ずしも適当でなくて、進んでこれを防ぎとめるというような意気込み
——申しますと、まあ精神論みたいになりますが、さような活動を期待されてもおりますし、
現実にも行なっておるというふうに私
どもは
考えております。ことに、昨今防災に関します一般の世論、またわれわれに対します激励もございまして、でき得る範囲であろうけれ
ども、災害を防ぎとめるという
考え方で、前向きの
考え方でいくべきであるというふうな要請もされておると思います。また、実際を見ましても、現行の
消防法におきましても、被害の軽減という
言葉、この
言葉の中に含めるのには、必ずしも適当でないと思われるような条文が現行法でもございます。
消防法におきましても、これを警戒し、あるいはこれを鎮圧するというような規定もございますし、いわば予防的な予警法の規定もあるわけでございます。私は全国的に見ました場合に、災害を防ぎとめるということは、大災害の場合は不可能かも存じませんけれ
ども、市町村単位に見ました場合において、その市町村におきましていわば被害を防ぎとめたというような場面もあるわけでございます。現にまた事実問題といたしまして少しくどくなって恐縮でございますが、がけくずれの防止の場合に、あるいはなだれの防止の場合に、消防機関が事前に現地をパトロールいたしまして、危険区域を発見し、これに対しましてある
程度の事前的な保全
措置もやっておる、こういうことでございます。要しまするに、現行の防災の問題の重要性にかんがみまして、消防の役割をもう少し前向きにしていただくという
意味で、被害の軽減という
言葉の中に含まれておりましたと従来解されておりました災害を防ぐという観念を抜き出しまして、今回の
改正案におきましては「災害を防除し、」という
言葉を付け加えさしていただきまして、私
どもの現地消防機関に対します前向きの努力を認めさしていただくと同時に、今後がんばらさしていただきたい。こういう
意味におきまして第一条に「防除し、及びこれらの災害」という文字を加えさしていただきたい、こういうことでございます。繰り返しますが、「その施設及び人員を活用して、」とありますから、いわば消防的な防除でありまして、他の
行政機関の権限を直ちに侵すという
意味合いではございません。第一条の改正をお願いしております
考え方は以上でございます。
次に、第四条でございますが、第四条は消防庁の所掌
事務が書いてございます。三のところに「防火査察」、カッコして「失火犯の捜査」、それから四のところに「失火犯の捜査技術」「捜査員」という、この「捜査」をいずれも「調査」と改めるということでございます。これは従来の
法律におきましては、警察の捜査とまぎらわしいのでございまして、私
どもの場合におきましては「調査」という
言葉を
消防法において使っておりますので、これは「調査」と改めるべきが当然であり、正しいということで、かような改正をいたしたいということでございます。
その次の五は、これは技術的な修正でございます。
それから次の十五、十六でございますが、今般
消防法のほうで、救急業務を
消防法の改正で消防の
仕事に付け加えさしていただきたいということを
改正案として出しておりますので、それに伴いまして新しい十六でかようなことを消防庁の所掌に加えさしていただく、こういうことでございます。
新しい二十でございます。二十は災害対策基本法ができまして、私
どもの防災機関としての消防もこの施行に伴いまして努力をいたさなければなりませんので、特にその点につきまして消防庁の所掌
事務として消防にかかるものについて国と
地方団体との連絡、
地方団体相互間の連絡につきまして特に努力をいたしたい、こういうことでございます。
次は第十条でございます。第十条は、御
承知のように、従来は現行法の第九条で、私
どもの消防機関は消防本部及び消防署
——いわゆる役所の消防と、それから消防団と、どちらを置いてもいいということになっております。その市町村の
実情でどちらを置いてもいいということになっておりますが、現行は四百四十一の市町村が消防本部、消防署を持ち、おおむね消防団もあわせ持っております。で、だんだんと火災現象が複雑にもなりましたし、またこの消防力がこれに対応して火災を防ぎとめますためにも、少なくとも都市におきましては消防本部、消防署を持ちまして、そして消防力の充実をはからねばならぬ
実情に至っておると思います。そこで今般新しい十条で特定の市町村、すなわち現在
考えておりますところでは密集地域一万の市街地を持っておるような市町村、これを政令でもう少しきめ細かく規定いたすつもりでございますが、大体の
考え方は密集地域、連〇地域一万の市街地を有する市町村、これにつきましては消防本部、消防署を置かなければならないと、かような規定を新しい第十条で義務づけをいたしたい、こういうことでございます。第九条の原則は残しつつ、第十条で密集地域の市町村にはかような義務づけをいたしたい、こういうことでございます。これに上りまして現在大ざっぱに予想いたしまして現行の四百四十に加わる百二十六の市町村が消防本部、消防署を置くことになると思います。それに対しまして、これは来年、政令ができましてから四年間という猶予の規定を後に設けておりますけれ
ども、それに対します
財源措置につきましては十分考慮をいたすつもりでございます。
第十条、第十一条、第十二条、第十三条、第十四条、第十五条、第十五条の二、三、四、五、六、それから第十七条等は、これは技術的な条文の整理と申しますか、修正でございまして、特に新しい内容がこれによって盛られたわけではございません。この
機会に何分にも年月を経過しました
法律でもございますので、最近のスタイルその他に合わせまして字句、条文の修正をいたしたい、こういう技術的な見地からただいま申しましたような条文の整頓をいたしたいということでございます。
飛びまして第十八条の二でございます。第十八条の二は、従来、現行法でも都道府県の消防に関しましての
事務を書いておるわけでございます。この十八条の二の中に、現行法の十八条の二の三に「消防に関する市町村相互の連絡に関する事項」というのがございます。ごらんいただきますように、都道府県の消防に関する
事務は、教養訓練とか、消防統計、情報とか、ただいま申しました市町村相互の連絡等々ございます。私
どもは、だんだんと消防が発達−発達と申しますか、近代消防になっていかなければならない、かような見地から、都道府県が、市町村の消防に対しましてこれの連絡の役割、都道府県元来の
地方自治法上持つところの、その連絡の機能その他を十分に発揮してもらって、市町村消防が伸びていくということを期待いたすわけでございます。ことにお察しのように、昨今は火を消すということとあわせまして、予防
行政等が緻密になって参りまして、全国三千ぐらいの市町村が消防団地区でもありますし、この複雑なる予防
行政をこなすにつきましては、市町村間の連絡等を十分必要といたします。でないと、あまり予防
行政の面でアンバランスでございますと、住民にも
——国民にも御迷惑をかけるという点もなきにしもあらずでございます。さような点から、この市町村の消防が十分に行なわれるように、県と市町村との連絡、市町村相互間の連絡というものを、特に県としてがんばってやってほしい、こういう気持で十八条の二の三を、
最初に
——前のほうに持ってきましたわけでございます。私
どもの
考えは、県も消防に関しまして、もう少ししっかりやってもらわなければならない、こういうふうに正直のところ思っております。ただし、住民に接する場面におきましては市町村がやるべきであって、それは
国民、住民と溶け合った姿であるべき消防の本質である、こういうふうに
考えております。したがいまして、市町村消防を強くし、それを盛り立てるべき都道府県もっとがんばってもらわなければならない、こういうことを期待いたしまして、十八条の二の文章を
考えて、御審議をお願いしておるわけでございます。ここに新しい
改正案の二で、「市町村相互間における消防職員の人事交流のあっせんに関する事項」というのを、特に入れさしていただきたいということでございますが、これはお察しのように、大都市の消防はさておきまして、中小の都市の消防におきましては、新しい消防の制度になりましてから十五年、ちょうど本日が、できまして十五周年になるわけでございますが、人事が率直に申しまして非常に行き詰まっております。小さいところでは三十人か四十人の全職員でございますので、まあ上に上がろうにも上がれないし、もう詰まり切っているということでございます。それから、これに対しまして何らかの
措置を 交流をするべきであるということが消防界のほうの世論になっております。また、先ほど申しましたように、今回、義務づけで消防本部、消防署を百二十も作りますときには、やはり相当練摩した人に中核になってもらわなければなりませんので、むしろ大都市からまあ一級品に近い人を出してもらって、そうして消防界全体のレベル・アップをしなければならないという
実情になっております。したがいまして、この「市町村相互間における消防職員の人事交流のあつせん」を特に規定をいたしたいということでございます。むろん、この場合におきまして、市町村の要請に応じまして人事交流のあっせん、お世話役を
——仲人役を都道府県がやりますのでございまして、人事の
干渉というようなことは
考えてもおりませんし、厳に慎むべきであるというふうに思っております。この取り扱いにつきましては、念には念を入れて、
現実に必要としております人事交流のお世話役ということをはっきりといたすように指導もし、運用もいたしたい、こういう気持でございます。
次に、第二十条でございますが、第二十条は、私
どもの長官の
仕事でございますが、従来は都道府県……、ごらんいただきますと、一番最後のところに、「設備、機械器具及び資材の斡旋」という古い規定がございまして、これは統制時代の、と申しますか、物のなかった時代のなごりでございますが、今はもうこういうことは
現実に
一つも行なっておりませんので、この点はなくする。それに合わせまして都道府県
知事、市町村長、市町村の消防長というものに対しまして、従来は、勧告はやり、それから指導、助言は「要求があった場合」というふうになっておりましたが、これを一本にし、助言、勧告、指導を行なうことができるというふうにさしていただきたい。と申しますのは、まあ、そう言うと口はばっとうございますが、私
どもの消防庁も、いろいろ昨今は消防研究所その他に新しい施設も加わりまして、
現実に技術的な指導というものを要請もされ、やっております。したがいまして、私
どもの
立場から主として
——主としてと申しますか、技術的な指導、助言を与えて、消防界のレベル・アップをはかりたいということで、前向きにさしていただきたい、こういう気持でございます。
それから第二十一条は、応援の規定でございますが、市町村長は、従来は、「相互応援に関して協定することができる。」という、いわば消極的な規定でございましたが、これを「努めなければならない。」というふうに、積極的に少し
考えてもらおうということでございます。相互応援の必要は、風水害の場合にはむろんのこと、火災の場合におきましても特に必要に、昨今はなっております。したがいまして、新しい二十一条で応援に努めなければならないというふうにして、現状に合わしたい、こういうことでございます。
次に、
消防団員等公務災害補償責任共済基金法の改正でございますが、これは、災害対策基本法ができまして、災害対策基本法の八十四条の規定によりまして、応急
措置の業務に従事した者に損害補償の規定が設けられました。この規定に基づきまして公務災害補償の問題を、どこの
関係でこれを具体化するかということでございますが、私
どもの
消防団員等公務災害補償責任共済基金法、現在のこの基金法で、
消防法、水防法等の場合におきましての共済制度をこれでまかなっておりますので、今度新しくできました災害対策基本法の八十四条の場合には、市町村長が市町村の住民に従事してもらった場合で、死んだり事故が起きましたときに、市町村の損害補償責任ということでございますが、これは私
どもの
消防団員等公務災害補償責任共済基金法で扱うことが一番実際に適し、便利であろうということで、各
関係の向きとも了解をとりまして、この私
どもの
法律の中へこの問題を取り入れたい
——取り入れて規定をいたしたい、こういうことでございます。
以上簡単でございますが、組織法並びに基金法の一部
改正案の御
説明でございます。