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政府委員(
木村睦男君) 先ほど来、
陸運事務所の問題、それから
登録の
関係、ただいま車両検査について
小林先生、林先生から御
質問がございましたが、
運輸省といたしまして、これらの問題につきまして簡単に
お答えをいたしたいと思います。
陸運事務所につきましてまず申し上げますと、これは
昭和二十四年の八月に占領政策の一環として、中央
権限を一部
地方委譲ということで、
運輸省といたしましては、当時
陸運局の分室というものが各
府県にあったわけでございますが、それを
知事の
権限下に移しまして
陸運事務所という機構にしたわけでございます。もちろん人員あるいは任命権――人事権、予算、すべて
運輸大臣が現在でも持っておるわけでございまして、これは
行政の性質が運輸
行政として縦に一貫すべきもので、その体制をとっておったにもかかわらず、たまたまそういった占領政策の犠牲といえば言い過ぎかもしれませんが、
一つの方途として各省ともそういう事実があったのでありまして、
運輸省としては
陸運局分室を
知事の
権限下に入れたということになっております。その後、すでに十数年たっておるのでございますが、
陸運事務所のやっております運輸
行政につきましては、
知事の
監督下にはあるのでございますが、実質上は
運輸大臣、
陸運局、
陸運事務所という縦につながる
行政をそのままやって参っておりまして、現状に至っております。これも運輸
行政というもののあるべき姿から当然出ることでございまして、その間この機構問題につきましては、いろいろ
行政管理庁におかれましても監察をされまして、たとえば
昭和二十八年に
行政管理庁の監察局の報告書の中を見ましても
陸運事務所というものが非常にあいまいな地位にいつまでも置かれておることは、職員の士気を低下し、また
責任の所在の不明確と
事務能率の阻害を生ずるおそれがあるので、早急に解決すべきであるというふうな報告も出ております。また
昭和三十年の八月にもやはり
行政管理庁から所見の発表がありまして、この場合にも
陸運事務所というものが奇形児的な
存在に置かれておる、したがって、これを文字どおり
運輸省の支分部局の組織のもとに入れて、
権限分野をすっきりすべきであるという勧告をもらっておるわけであります。事実、職員が、もともと
運輸省の職員でありましたものが、そういういびつな
関係にある、しかも占領政策の結果である。しかも、占領を解除されてすでに何年もたっておる今日、依然としてこの形態では困るということで、職員の士気に非常に悪い
影響を与えておることも事実でございますし、また
事務の能率化あるいは簡素化、その点から申しましても非常に不合理な面が多いのでございます。早くこれを一本の縦に筋の通った形にまとめたいということで努力をして参ったのでございます。たとえば
昭和三十五年の八月ごろには、一応当時の
政府といたしまして、
関係各省の間におきまして、
陸運事務所をもとの姿に戻すというほぼ話し合いがついたのでございますが、たまたまその直後、内閣の更迭等がありまして、またもとに戻ったというようないきさつをたどって現在に至っております。なかなかこういった機構というものは、一たびこういう形になりますと、もとへ戻すということはいろいろ抵抗がありまして困難なのが実情でございます。幸いに現在、
臨時行政調査会ができまして、こういった機構問題についての
検討をしていただいておりますので、われわれといたしましても、この機会にとにかくすっきりした形にいたしたいということで、調査会のほうにも
運輸省としての
意見も十分開陳をいたしております。この調査会の
結論を待ってこの問題は処置いたしたい、かように
考えておるのでございます。
それから
陸運事務所の
権限が非常に強くて、いろいろそこに問題があるという御指摘がございましたが、実は
陸運事務所長の
権限はしかく強大ではないのでございます。むしろ
権限を持たしていないでおかしいではないかというような御
質問のほうが多いのでありまして、
タクシーの
免許権にいたしましても
陸運局長の
権限でございまして、
陸運事務所長は
陸運局長の指示によりまして具体的な事実調査、実態調査等はいたしますが、処分
権限は持っていないのでございます。若干、事業計画の変更、たとえば停留所を変えるとか、そういった
程度の
権限は持っておりますが、いわゆる
免許にかかわる
権限は一切
陸運事務所長は持っておりません。ただ
免許につきましては必ず
反対と賛成とございまして、半分はどうしても処分については不利な
立場に立ちますので、いろいろそこでいかに公正をはかりましても不利な処分を受けたほうからはいろいろな非難が出るのでございまして、これは一
陸運事務所のみに限りません。
陸運局長もしかりでございますし、またわれわれ
本省の
責任者もそういう場合には、常に片側からは非常な非難を受けておるというふうな実情でございます。しかも、これらの
免許というものがすべて、何といいますか、利権に関連のあるいわゆる企業でございますので、いろいろそういった
立場から批判を受けるのでございまして、われわれ職員といたしましては常に公正に処置するように注意をいたしておるのでございます。今後とも一そうその
方面につきましては努力を重ねていくつもりでございます。
なお、
タクシー業務も
知事に移したらというふうな御
意見もございましたが、これは
川島長官から
お話がありましたような
状態でございますが、さらにつけ加えますと、なるほど
タクシーにいたしましても、
一つの県あるいは
一つの都区内で動いておりますが、たとえば東京都と神奈川県を比べてみましても、東京のすぐ隣りに川崎がございまして、川崎は神奈川県でございますが、いずれも事業区域はそれぞれ神奈川県、東京都になっておりますが、お客を乗せて事業区域を中心に着発は片ほうは県外に出てもいいわけでございますので、東京の
タクシーが神奈川県に出る、また川崎の
タクシーが東京都にお客を輸送するという場合もあります。したがいまして、たとえば料金等につきましても、やはり川崎あるいは横浜、東京、そういったものを一応横に関連をつけて
考えてみますると、そこに料金等の格差がございますと、やはり
監督をいかに厳重にいたしましても、安い料金のものが高い料金の地帯に入り込むといったようなことで、輸送秩序を乱すという場合もあります。そういう
意味合いから申しますと、やはり
交通事業というものが次第に広域化しているのは御
承知のとおりでございますので、できるだけ広い範囲においてこれを
監督指導するのが適切ではないか、こういう
意味も合わせ
考えまして、われわれといたしましては、先ほど
行政管理庁長官のおっしゃったような理由ももちろん加味いたしまして、
陸運局長の
権限にあったほうがよかろうというふうな
考えを現状では持っておるわけでございます。それから大きな県等で
登録あるいは車両検査等の
事務で出先を拡張するとか、あるいは別に出先を設けるというふうな御
質問がございましたが、実はわれわれも全く同感でございまして、この車両検査あるいは
登録の
事務につきましては、非常に業務量がふえて参っておりますので、その処理に実は苦慮しておるのでございます。一例を申し上げますと、八年前の
昭和三十年に
自動車の数が百五十万両で
全国であったわけでございます。今日ではその三倍をオーバーいたしまして、五百四十万両くらいになっております。しかし、これらの車について検査
登録という業務は、車のふえる数と物理的に全く並行してふえるわけでございますが、この間車が三倍有余ふえましたのに対しまして、これを担当する人員は三割くらいしかふえていないという
状況で、一人当たりの業務量が十倍に近くふえておる、こういう
状況でございます。したがいまして現在車両の検査につきましては、各県に――東京都は別でございます、四カ所ございますが、普通の県ですと県庁の所在地に一カ所、
運輸省の直轄といいますか、直営といいますか、車両検査所がありまして、そのほか県内に出張車検所と申しまして、
施設を借賃を出して借り上げをして、そして週一回なりあるいは二回なりということで職員がそこに出張いたしまして、検査をいたしておる、こういうところが二百数十カ所あるわけでございます。こういうことで、この少ない人員でこれだけの増加する車の
登録検査をやっておりますので、なかなか手が回わらない。車両検査等は、これは本来サービス
行政であるべきものでございますが、なかなかそれがはかどらないということで、毎年実は定員の増加の要求もいたしております。しかし、単純に業務量の増加という理由では増員しないというふうな従来の
政府の方針でもございますので、われわれといたしましては毎年ごくわずかの増員の
程度で、ほんとうに焼け石に水の
程度の増員でがまんしておるわけでございます。職員からは現在われわれ幹部はその点では突き上げられておるような
状況でございまして、なんとか
仕事の合理化、簡素化をあわせ
考えまして、押し寄せて参りますこの業務量を、できるだけ早く公正にさばくという努力はいたしておりますが、現状はそういうことでございますので、出張所なり、あるいはそのほかの機関を設けたいのでございますが、今後の努力に待ちたい、かように
考えておるような
状況でございます。