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政府委員(稻田耕作君) ただいま
お話がありました緊急
関税及びその対抗
措置と租税法定主義についてお答えいたします。
この緊急
関税を外国がとりました場合に、これに対して対抗推置をとるという場合におきまして、
ガットにおきましては、発動国が緊急
関税を発動した日から九十日以内に対抗
措置を発動しなければならないという定めがあるのであります。その九十日以内の三十日前にこれを
相手に通告しなければならないというようなことに相なっておりまして、きわめて緊急を要するのでありまして、これをそういう観点から
政府限りにおいてということに相なったのであります。
しかし、租税法定主義は憲法の八十四条に
規定するところでありまして、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、
法律又は
法律の定める条件によることを必要とする。」というふうにありますのであります。ただいまの御
審議をいただいておりますこの
法律案によりまして、この
法律の定める条件によるということに相なると思うのであります。したがいまして、租税法定主義とは反することはないのではないかと感じております。しかしながら、この
規定は国民の権利
義務に
影響を与えることは事実なのでありまして、
法律案にもありますように、対抗
措置を発動した場合には、遅滞なくその内容を国会に報告し、またその
措置が相当の期間継続するという場合におきましては、
法律の改正を行なうことは当然であると考えております。
二番は、対抗
措置発動の実例でございますが、昨年の六月にアメリカが板ガラス及びウィルトン・カーペットの
関税引き上げを行なったのであります。この
品目の利害
関係国でありますEECは、英国及び
日本と
協議いたしたのでありますが、EECは昨年八月に対抗
措置といたしまして、アメリカから入っておるポリエチレン等五
品目につきまして
関税引き上げを行なっております。また第二は、アメリカが一九五二年八月トルコに対しまして、トルコからアメリカに入っておりました干しイチジクの
関税を約二倍に引き上げたのでありまして、これに対してトルコがアメリカから
輸入される鉄製の家具、タイプライターなど八種目に対しまして、
関税上の譲許の適用を停止しております。もう一つの例は、やはりアメリカが一九五二年二月、帽子製造用の毛皮の
関税を引き上げたのに対しまして、ベネルックスがアメリカから
輸入されるマステックスという充填料の一種でございますが、これに対して譲許税率の適用を停止いたしております。大体以上三件でございます。