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野々山一三君 私は、ただいま議題になっております三
税法に対しまして、社会党を代表して反対の意見を表明するものであります。
その第一は、この法案が提出される根拠になりましたものに、
税制調査会からの三
税法改正に対する答申があるのであります。この
調査会は、非常に長期にわたり、かつ将来の
税制そのもののあり方についてまで綿密かつ具体的に
検討されて、その根本は、
国民に対する
税負担の公平というものの原則に立脚して、可能な
負担をどういうふうにかけるかという点から答申をされたものでございます。もちろん、私どももこの答申そのものを全面的に賛成し得ないものもあるのでありますが、この答申そのものに対しまして、
政府は大幅にこの答申
内容を変えた法案を提出したのであります。しかも、その出されている法案の中で一番危惧を感ずるのは、低
所得階層、大衆の
税負担を非常に高める
方向、つまり基礎控除など四控除に対して、一万円の控除額の引き上げを提唱しておるものに対して五千円にこれを削るということをいたしながら、租税特別
措置に関しましては、つまり資本の側の
税負担に対しては、これを大幅に減免の
措置を講ずる、
負担を軽くするというような
法律案を出したのでありますが、
二つの点で私は心配いたします。
一つは、今後慎重に、かつ恒常的な
税制を
検討してもらいたいと求めておる
税制調査会がほんとうに、こういうやり方を
政府がとるならば、情熱を持ち誠意を持って一体今後
仕事をしていくであろうか。
これが今後各種の
政府が持っておる
調査会そのものに対しましても、
調査会のメンバーそのものが情熱を失ってしまうというようなことになり、この種の
国民の意見を客観的に聞く
機関の本質がゆがめられてしまうということ。第二は、
国民大衆の
税負担が非常にふえる。一千五百万から一千七百万に及ぶ
税負担者がふえる。しかも、低
所得階層がふえる。
国民は、今
政府が口を開けば減税をするというその期待が、まさに税調を通してさえもやや受け入れられるかとの期待を持っておったのに、これが裏切られたのであります。
国民の
税負担に対する信頼は、まさに薄れて、言うならば、うまいことをやって脱税をするというような根性さえも生み起こしてしまうような結果に相なるのではないかという心配をいたします。その点がまず第一の税調の答申を無視した
政府の態度に対する私の反対の理由であります。
その第二は、根本的な政策であります。
政府は本年度の予算を編成するにあたりまして、いわゆる金つくりということを強調し、その金つくりをしていく理由には、資本の蓄積と会社投資、このことを表看板にいたしておるのでありますけれども、そのもとになっておる経済成長は、名目において八・一%、実質において六・一%の経済成長を
考えておるわけです。今日の
日本経済は、
政府が言っておるように、年間名目において八・一%、実質において六・一%成長するかどうかということは非常に危倶がある。予算を編成する当時から今日までの数カ月を見てみましても、経済はまさに横ばいである。このまま年間平均八%という経済成長を期待するとするならば、本年の後期においては少なくとも一五%くらいの経済成長がはかられなければ年間平均の成長は得られないという根本、一体これに対して
政府の自信のある答弁はなかったのであります。
国民はまさにこれに対して疑問を持っております。
所得倍増、経済成長の政策に対しては、今日もはや危惧の念を抱いているわけであります。加えて、物価の面から見てみますと、二・八%の物価の上昇というものを前提にして、しかも片一方では八%の経済成長ということを前提にしてこの予算を組んだのであります。それを基礎にして税収を
考えている。物価はおそらく今日二・八%でおさまるなんというような事情はないのであります。去年の暮れから今日までの物価の伸びというのは、きわめて、特に消費財においてその伸びがきびしいものがあるだけに、この二・八%というものは維持できるはずはない。
予算委員会でわが党の議員議君がこれに対して
政府に答弁を求めておりますけれども、これまた確信のある政策というものが見受けられないのであります。
そこで、問題は、
国民の
税負担の度合いがどうなっていくかという観点から見てみますと、いわゆる低
所得階層の
税負担率は、五人世帯五十五万数千円の給与
所得者においては、昨年に比べて
税負担率は三%、本
税法によりますとふえるのであります。物価は上がるのであります。三%
税負担率が上がるのであります。
国民生活はそれだけ実質的に圧迫される結果に相なることは言うまでもない。片方、資本の側の
税負担率というものを見てみますと、
わが国の
国民所得に対する
国民一人当たりの
税負担率は二二%、外国の事例を見てみますと、イギリスにおいて三四、フランス三二、アメリカにおいて二九、以下相当
税負担率は高いことに相なっているのでありますけれども、実はいわゆる低
所得階層の
税負担率というものを階層別に見てみますと、名目的に
日本の二二%に比べまして、諸外国の
国民低
所得階層の人の
税負担率は比較にならないほど低いのであります。にもかかわらず、高い
税負担率を表面にあげているのは何かといえば、たとえば
法人税というものを見てみますと、アメリカにおいて五二%
法人の
負担、イギリスは五四、フランス五一、一番低い西独が五〇%の
法人税率というものがあるにもかかわらず、
日本は三八%で、ギリシャその他の国の、つまり西欧の後進的水準にある国の
税負担率であります。
それで、一体二二%という
税負担率の中で金を見出すとすれば、社会資本投資をしなければ、資本の蓄積をしなければならぬという
政府の言い分は、しょせん——だからといって、高い
税負担率に持っていくことはできないので、結局、資本側の租税特別
措置による減免、
国民大衆、つまり低
所得階層に対しては高率の
税負担をかけねばならぬ、こういう結果をもたらしていることであります。さらに加えて、資本の側の社会資本の投資、あるいは公共資本、公共投資の要求というものにこたえていくためには、片一方では金がないといいながら、それにこたえるために、申し上げたように、勤労
所得階層の税率
負担を上げねばならぬという結果を招来し、税の公平の原則というものは、完全に一そう、去年の
税法に比べて今期の
税法は公平を乱しているということになり、必要以上に資本の側の
利益を擁護するための
措置がとられている。こういう点から、つまり租
税負担率の不公平というものを一そう助長しておるという観点から、私は第二に反対をいたすのであります。
第三に、間接税を初め勤労
所得階層に対する税の軽減ということの
政府の約束、これを実行し得なかったことの理由に、
政府当局は、財源がない、こういうように言っておるのであります。しかし、前に第二の点で申し上げたように、
税負担率は不公平になるように、一方は高くし、一方は利子
所得課税のごとく半分にしてしまう。そうして、金がないと言わなければ減税政策をやらない理由を裏づけすることができないということで、財源がないと、こういう言い方をしておるのでありますけれども、去年の予算に比べて今年の予算は、まさに
両方で、片一方一七%、片一方二三%、財投等を含めまして膨大なふくらし方をしておる。そこに今後、不公平な税の建前が、一そう今度は
徴税強化という格好に、この
税法に基づく
徴税執行業務が行なわれていくことは必然であります。額に汗をして働く勤労者階層というものが一そう税をしぼられ、
徴税強化に追いまくられ、片一方は配当
所得に見られるごとく、総理大臣は、先取り税を安くしただけで相対的には同じだと言いながら、平年度において九十億というものが帳面づらで税収減になる。まさにこれは配当
所得者に対する脱税を認めたという結果にならない限り、税収減にならないわけであります。もし総理大臣が言われるように、一銭も大
所得者に対しては減税しておらぬと言われるなら、なぜあの九十億になんなんとする配当
所得税の収入減が生まれてくるのでありましょうか。何らこれに対して、本会議においても、
大蔵委員会においても、
政府の責任ある答弁ができていません。できないはずであります。そういうように財源がないという裏には、からくりがある、こういうふうに申し上げなければならぬのであります。
第四に、租税特別
措置そのものについてであります。今日では、租税特別
措置というものは、もはや順次、資本においてもその力が増大してきた実情にかんがみれば、さらにこれを延長し、助長し、さらに減額をする、減税をするというようなことは、一体あり得るだろうか。こう
考えてみる場合、さらにまた、第二の点で
指摘をしたいのは、もうこの辺で租税特別
措置というものはやめるべきであるという意見が、衆参両院における公聴会に出席された
国民の代表は、ひとしくその口をそろえて、もうこの辺でやめるべきであるというのに、時代逆行もはなはだしく、さも既得権であるかのごとく資本にそれを奉仕する、こういう態度は、今回の
租税特別措置法の一番の特徴的性格である。そういうことはもうこれ以上続ける必要はないという観点から、私は反対をするものであります。
次に、間接税などについてであります。かりに
所得税法、
法人税法、
租税特別措置法などによる私どもの言い分が受け入れられないといたしましても、昨年来の
審議の過程を通しまして、
政府は間接税を引き下げるということはこれを実行いたしますと、国会で
国民に対して約束をいたして参りました。それもただ一言、銭がない、財源がないという言葉でもって、これをほおかぶりし、しかも衆議院で予算が上がったその瞬間に、来年度は、国税において、間接税において、地方税において減税をいたします、税外
負担においてもこれを徹底的に取り締まって縮小をいたしますという見解を明らかにいたしております。まさに国会においては、そういうことの処置についての
質問に対しては、具体的な態度表明を一切いたさずに、国会外においてさような公約をするという態度や、まさに国会軽視であり、
国民を愚弄するもはなはだしい。言葉はきついようでありますけれども、言わざるを得ないのです。そこで、この間接税の減税に対する具体的な処置いかんという
質問に対しても、何らこれを具体的に示さないというのが
現状であります。私ども
国民は、一体、寝ることと食べることのほかに、
考えるのは
税金の問題であります。出さなければならぬ
税金は出しましょう。けれども、まともに取ってもらいたい、公平に取ってもらいたい、
納得のいくように取ってもらいたい。同時にまけるならまけるとして、
納得のいくようにまけてもらいたいというのが、これは
国民の希望であり、政治に対する期待であります。この
国民の税に対する期待、政治に対する期待を裏切ったのがこの三法であるということをいわなければならぬし、間接税の減税を一顧だもしなかったという私どもの批判でもあると申し上げざるを得ないのであります。
時間がありませんから、以上簡単に申し上げました。私どもはあげて三法の
改正に対しては反対をいたしまして、討論を終わります。