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1963-03-26 第43回国会 参議院 大蔵委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月二十六日(火曜日)    午前十時四十七分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐野  廣君    理事            柴田  栄君            西川甚五郎君            柴谷  要君            渋谷 邦彦君    委員            青木 一男君            太田 正孝君            川野 三暁君            田中 茂穂君            高橋  衛君            津島 壽一君            林屋亀次郎君            日高 広為君            堀  末治君            森部 隆輔君            佐野 芳雄君            野々山一三君            野溝  勝君            原島 宏治君            鈴木 市藏君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君   政府委員    内閣法制局長官 林  修三君    大蔵政務次官  池田 清志君    大蔵省主税局長 村山 達雄君    大蔵省理財局長 稻益  繁君    大蔵省銀行局長 大月  高君    運輸省港湾局長 比田  正君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   説明員    自治省財政局理    財課長     立田 清士君   参考人    日本開発銀行総    裁       太田利三郎君    日本開発銀行理    事       大島 寛一君    日本輸出入銀行    総裁      森永貞一郎君    日本輸出入銀行    理事      山本菊一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○東京港湾区域における土地造成事  業等のため発行される外貨地方債証  券に関する特別措置法案内閣提  出、衆議院送付) ○日本輸出入銀行法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○日本開発銀行法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 佐野廣

    委員長佐野廣君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案、以上いずれも衆議院送付の三案を一括議題とし、質疑を行ないます。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 野溝勝

    野溝勝君 私は、ただいま提案になりました法律案に関連しまして、この際、予算並びに財政経済等の問題について、総理を初め大臣からお伺いいたしたいと思います。自然休会まぎわで非常にお忙しいところを御出席願いまして、ありがとうございました。私は、質問をするにあたりまして、要綱といたしまして六つの点で総理からお伺いいたしたいと思います。  第一は、三十八年度予算実施に対する心がまえにつきましてお伺いいたしたいと思います。第二は、経済成長の真実についてお伺いいたしたいと思います。第三は、国民生活景気という問題につきまして、関連をお伺いいたしたいと思います。それから第四は、IMF八条国移行に関して、貿易の問題をお伺いしたいと思います。第五は、外貨債の発行に関連し、通商条約との関係につきましてお伺いいたしたいと思います。第六は、自由化日本産業の再検討等についてお伺いしたいと思います。非常に問題の範囲は広いのでございますが、総理もたいへんお忙しいのですから、時間の範囲内で私は質問をし、かつまた、総理の御意見の開陳を願いたいと思うのです。  第一について申し上げたいことは、政府は三十八年度予算を立てまして、一般会計におきましては二兆八千五百億、また財投におきましては一兆一千百億、こういうまあ予算でございますが、しかし、この予算につきましては、ここで今とやかくは言いませんが、政府といたしましては、この膨大な予算を計上いたしまして、その政策の主目標として公共投費社会保障文教という柱を立てたということが言われております。しかし、この予算内容を検討してみますると、貿易自由化不況に対する対策という点が相当織り込まれておることがわかるのでございます。私は、今申し上げました三つの柱というよりは、むしろこの経済政策に注目いたしたい。総理はこの点につきまして、どちらにウエートを置いているのか、伺いたい。お答えは必ずどちらもだと、こう言われるでしょうが、私の見るところ、特に財投については、いまだ見ざる膨大な予算を組んでいるだけでなくて、一般予算に比較いたしましても増大率は非常に大きく、画期的な編成だと思うのです。それだけに、財投にいまだかつて見ざるこれだけの、予算を思い切って計上したことは、不況貿易自由化に対処するものと見ざるを得ないのですが、どうかその点につきまして総理から見解を御開陳願い、かつまたこれに、関連した御意見がありましたならば、この際お伺いしたいと思います。
  4. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 予算編成建前は、今回は、従来もそうでございましたが、社会資本充実社会保障拡充文教の刷新、こういう三つの柱を主としてやったのであります。産投会計の膨大は、経済拡大に伴いましてやっていかなければならぬ。そしてその原因は、貿易自由化の問題もありましょうけれども、やっぱり経済拡大に伴う産業基盤の強化ということが主であるのでございます。
  5. 野溝勝

    野溝勝君 非常に簡潔なんでございますが、その簡潔はけっこうなんでございますけれども、私の心配をした質問内容というものは、ただ貿易自由化なり不況なりに対する比重というものに非常に重点を置いておるということを見のがしてはならぬということを思いまして、質問をしたのです。さらに、もし政府がそういうふうに重点があるとするならば、私はその財政投融資の使い方などにつきましても、これを受け入れる側も十分な態勢を準備していなければうまくいかぬと思うのです。きょう私はイデオロギーとかそんな理念質問するのじゃございません。特に財政経済に明るい総理でもありますから、そのおつもりでお答え願いたい。私は、自由化後における日本産業構造というものは非常に変わってくると思うのです。合理化あるいは近代化という名前において相当変ってくると思うのです。そういう点を、ただ単に合理化あるいは近代化という文字だけでなく、総理がどういう方向に行くことが望ましいかというような見解がありましたならば、この際お伺いしておきたいと思います。
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 三十八年に特に変わってくるというようなことはないと思います。三十五年、六年、七年と、設備あるいは技術の近代化合理化へ非常に速いテンポで行っております。その速いテンポ合理化近代化に沿うようにやっておるのでございます。三十八年に特に新しい方向があるとか、新しい問題が非常に発展するとかということはございません。貿易自由化も、御承知のとおり、三十四年から計画を立てまして、徐々にいっておるのでございます。三十八年に特に変わった事態が出てくるということは、私は考えておりません。
  7. 野溝勝

    野溝勝君 では、三十七年度からの方針であるということでございますが、大体私が聞かんとする疑問の点は、貿易自由化に対する体制を順次整えてきたといいますけれども、貿易自由化といいましてもやはり相手のあることでございまして、特に国際経済動向輸出環境が好転するかどうかという情勢判断や、根本的にわが国貿易構造の現状などがこの自由化に対する計画基礎になると思うのでございますが、この点、政府貿易政策に疑問を持っています。今日の国際経済動向については総理は十分御承知のことと思いますが、私は、特にアメリカ中心とする欧米中心の今のわが国貿易対策には相当問題があり、わが国の今後の輸出には相当困難性が強まってくると思うのでございます。こういう事態に当面して、この西欧陣営と申しましょうか、自由主義国家群に対して従来のような貿易政策をとっておったのでは、私は貿易自由化というものは成果を上げないと思うのでございます。それは見解相違だといえば相違でございますが、現実に外国の動きを総理は御存じだと思う。私が申し上げるまでもなく、またこの委員会においてもたびたび私は大蔵大臣にも質問したのでございますが、自由化といい、あるいはIMF八条国移行の問題といい、いろいろ国際協定には積極的に参加する体制はけっこうであるけれども、日本国内産業日本国民経済、そういう点にマイナスがあるようなことがあってはいけないから、十分総理と相談して善処してもらいたいということをたびたび本委員会においても申し上げました。  そこで、問題は、総理も御承知のごとく、アメリカとの貿易には、基本的に、いつもわが国相当赤字入超であるという非常に悪い問題があるのでございます。特にきょうはアメリカだけ申し上げますが、大蔵省貿易統計、これは無為替輸入を含む輸出入の実態で見ると、日米貿易は三十六年度で、輸出日本円で三千七百八十四億円、輸入が七千四百八十六億円、三十七年度は輸出が五千四十一億円、輸入が六千五百十一億、したがって、三十六年度の入超が三千七百二億、三十七年度の入超が千四百七十億円、赤字幅が減っているといいながら、こういう状態で、従来も今後もこういう傾向にあると見られるのでございます。これは対アメリカ貿易についてだけでございます。特はまた、西欧各国経済情勢はあまりよくなく、いずれも停滞、後退傾向を示し、さらにきびしい対日差別を設けて、これが撤廃には非常な困難が予想されるのが実情です。こういう諸事情から見まして、自由化自由化といいますけれども、自由化に対する対策といたしまして、一体どう対処していくか。日本のようにまだまだ経済の弱い、基礎の浅い産業状態では、ちっとやそっとのことでは、なかなか容易じゃないと思います。そこで、私としましては、楽観いたしかねるのであります。  総理といたしましては、貿易自由化に対処して努力を重ねていかれるわけでありましょうが、国内産業に対してもそういう意味保護育成をはかられるものと思うが、もしも今のような経済的な国際環境自由主義国家群情勢から見て思うようにいかぬというようなことが三十八年度にも展望し得るようになりましたならば、これに対する手を考えておられるかどうか。特に具体的にいうならば、日中貿易であるとか、あるいは日ソ貿易であるとか、これらをどうお考えか、お伺いしたい。  総理はお忙しく、時間の関係もありますから、これに関連して質問を継続するのでございますが、私の心配いたすところとして、総理西欧陣営中心にして考えておられるが、私はこの点、基本的に疑問を持っております。すでに御承知のごとく、ヒューム外相が近日来るらしいのでございますけれども、現に英国などでは、日本の場合と異なり油送管対ソ輸出あるいは中共貿易等の問題につきましては、積極的に手を打とうとしておる状態でございます。さらに中国の貿易次官なども英国へ行っておられるようでございますが、その間、チンコムなどの問題についても、ココムなどの問題についても、むしろ英国はこれを積極的に広義に解釈して進めていくのじゃないかと私は思うのです。こういう点について、特に財政経済に明るい総理といたしまして、なお先般欧州各国を回ってこられた総理といたしましては、その間の事情等も十分検討されておると思いますが、私はこの問題についてひとつ総理の英断を願いたいと思うのです。私は決して思想を買うわけでもなければ思想を受け入れるという意味ではございません。日本経済発展に関し私の見解を申し述べておるのでございます。総理といたしましても、この間相当に苦心をされておるとは思いますが、総理見解をこの際聞いておきたいと思います。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 野溝先生と私とは、事実の認識につきまして少し違いがあると思います。御承知のとおり、三十六年度は日本経済が飛躍的に伸びたときでございます。そういうときにはアメリカからの輸入が多い。お話のとおり、三十六年度においては四千億円近くの輸入超過になっておることは事実でございます。しかし、翌年の昨年、三十七年度におきましては、千何百億円とおっしゃいましたが、そうはなっておりません。一億五、六千万ドルでございまするから五百億円ばかりの輸入超過であります。非常に減って参っております。しかも、輸出が非常に伸びた。アメリカに対して三割以上伸びました。だから、アメリカとの関係は、ずっと見てみますと、毎年貿易では輸入超過日本経済が非常に伸びるときには非常な輸入超過日本経済があまり伸びないというときには、今度は輸出アメリカにいくのでございます。アメリカとの関係は、私はお話のような事実には相なっていないと思います。  また、ヨーロッパ関係におきましても、EECその他におきましては、ずっと相当輸出伸びております。やはり三割近く伸びておるのでございます。  日本輸出伸び方というのは、これは輸出入合わせて申しますと、世界の貿易伸び方が四%ないし五%というときには、日本は大体その倍あるいは倍半伸びるのが今までの例でございます。私は、日本経済の底が浅いと今まで言っておられますが、日本経済相当底が深くなりつつあると私は考えておるのであります。国際競争力も、私はありま負けないと考えております。  そうして、また、第二段の御質問共産圏に対しましては、常に申し上げておりますが、われわれは政治理念の問題とは別に、政経可分という建前でやっておりまする関係上、ソ連との貿易もかなり伸びていく。ただ、過去二、三年伸びまして、今後は伸び方が少なくなっておりますが、この原因はやはり延べ払いということが主になるものでございますから、過去三年の伸び率が一応とまっております。しかし、われわれ、通常の貿易であるならば、これをとめるという気持は持っておりません。中共関係におきましても、最近非常に伸びつつあるのでございます。ただ、問題は、チンコムココムの問題は、これはわれわれは守らなければなりません。しこうして、ソ連ヨーロッパとの関係並みにわれわれもやっていこう、特にヨーロッパ諸国ソ連に対しまして自由な貿易をしておる、日本がそれとは違って貿易を不自由にするという考え方は持っていないのでございます。やはりヨーロッパ並みに、しかもまた、地域的にはこちらが近いのですから、貿易促進につきましては、われわれは積極的に施策を進めていきたいと考えておるのであります。
  9. 野溝勝

    野溝勝君 そうすると、こういうふうに、総理、解釈してよいでしょうか。アメリカ貿易関係につきましては、総理見解と私とは違うのでございますが、しかし、対共産圏といいましょうか、東欧諸国に対しましては、いろいろの困難は情勢もある、特に延べ払い等の問題もあって、そこに隘路がある、こういいますけれども、そういう問題がもし話がつくならば、共産圏であろうと貿易の運営につきましては努力する、かように解釈してもいいでしょうか。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そのとおりでございます。
  11. 野溝勝

    野溝勝君 よくわかりました。  次に、お伺いしておきたいことは、国民生活景気と、ちょっとおもしろい表題といいましょうか、どうもつながりのある表題でございます。景気という言葉は印象的にはいいのでございますが、今日の国民大衆生活の実際から見ると、景気ということは縁遠いように思うのです。  総理定時制の問題といい、東京都における水飢謹の問題といい、国民生活のこまかい問題に留意されて、閣議で発言されて論議されておることには、私は感謝いたしています。まことに琴線に触れた御意見であると思う。ところで、景気といえば、今までにも岩戸景気だとか、神武景気だとかいわれておりましたけれども、これも国民大衆にはあまりぴんとこないのです。今日の国民大衆生活状態は、景気景気という表現ではわからないものがあり、非常に苦しくなっております。  私は総理にお伺いするのですが、むしろ国民生活の安定ということを打ち出してもらったほうが具体的であり、われわれには最も実生活の身近に感ずる。私の考えといたしましては、先般も大蔵大臣にも申したのですが、やはり国民生活安定には社会保障の徹底的な充実、あるいは物価の徹底的な安定、生産力拡充貿易拡大、これらが中心になると私は思うのです。そこで、特に物価について今日の不安定な状態は、何とかしてもらわなければかなわぬと思う。これはひとつ、思い切った手を打ってもらいたい。経済的に精通されておる総理は、この間も消費物価の問題につきまして、特に農産物の問題について、閣議で発言されまして、閣僚懇談会だかを作ったようですが、非常にけっこうだと思うのです。けれども、これは閣僚だけにまかしておいたのではとても解決しないと思うのです。公共料金などを見ても上がっておるのですが、こういう点をひとつしっかりしてもらいたい。ほかの減税とかわけのわからぬ——わけのわからぬと言っちゃ何んでございますけれども、大衆がほんとうに減税になったと思うようなことでないような減税の仕方で、あなたとしては最高の努力を払ったのでしょうが、われわれから見ると、今言ったようなことなんです。ですから、そういうことでなくて、それも徹底したやつをやってもらいたいが、とにかく物価の安定について、何とか具体的な手を打つというお考えはないでしょうか。私は、この景気景気というが、所得倍増もけっこうだし、高度成長もけっこうでございますが、何かぴんとこないのです、実際は。どうか、一番国民生活の安定の中心問題でございまする、物価対策について特にあなたの見識をお伺いしておきたいと、こう思います。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 社会保障国民生活の安定向上——安定だけじゃいかぬ、向上が必要なんです。いろいろ議論がございますが、私は一般国民生活相当安定向上しておると思います。戦前に比べましても、大体戦前は、昭和九年−十一年をとりますと、大体五割余り生活水準が上がっておるという統計になっているのです。もちろん、十分ではございません。所得はどんどんふえて参っておりますが、やはり先進国に比べますと、アメリカの六分の一とか、あるいは英、仏の一人当たりの四分の一近く、こうなっておるので、まだまだ所得を伸ばしていかなければなりませんが、そういう先進国に比べて、低いながらも、私は相当の急ピッチで生活水準は上がっていっておると思います。  そこで、社会保障制度お話しになりましたが、昔に比べれば、日本はおくればせながら、非常な速いピッチで社会保障制度拡充もできつつある。いわゆるこれは経済発展成長に基づいた結果である。  物価の安定ということは、これはもちろん国民生活の安定のために非常に必要であります。これを国際的に見ますと、卸売価格が安定しておるということが、やっぱり国際的には非常に強みなのです。したがいまして、先ほど申し上げましたように、各国に比べまして、日本輸出入貿易伸びが倍、あるいはそれ以上になっているというゆえんのものも、これは卸売物価の安定ということであるのであります。卸売物価の安定というものは、やはり生産性向上によりまして安定が保ち得るのであります。しかし、者物価ということになりますと、生産性向上が期待できないものがございます。たとえば農業にいたしましても、あるいはサービス業にいたしましても、このものの上がり方は、これは私は先進国並み経済になる場合には、越さなければならない関所だと考えておるのであります。  したがいまして、物価の安定ということが政治の主たる問題になるのならば、これは私は、いわゆる不景気ということ、需要を少なくするということになれば、物価の安定ということが得られます。しかし、物価の安定ということは、国民生活水準上昇ということが主眼てありまして、その結果として、なるべく物価は安定さすようにということで、絶対安定が必要じゃない、生活水準近代化向上ということが必要であるのです。日本の上がり方は、急速な生活水準上昇からきまするいわゆるサービス料金を主とした値上がりでございます。経済機構近代化につれて、私はやむを得ないと思います。  これは先進国と申しますか、フランスにおきましても、イタリーにおきましても、これはヨーロッパにおけるフランスイタリーが、今般も経済成長の強い、非常な伸び方をしておるのです。イギリスや西ドイツに比べまして、フランスイタリーは、最近は非常な伸びでございます。フランスイタリー状況を見ますと、生産性伸び、非常に国民生活水準が上がってくるというときには、やはりフランスイタリーも、去年は消費者価格が大体前年に比べまして、五、六%の上昇をしております。日本並みにいっております。これは願わしいことじゃございませんが、経済の、何といいますか、越えなければならない一つ関所だと私は考える。  問題は、その物価が上がったために生活が苦しくなるということではいかない。しかし、苦しくならないようにするためには、物価の上がることよりも所得実収入が多くなること、これを見ていかなければならない。で、幸いにわれわれの実質生活水準というものは、上下の階級を問わず、私は物価上昇よりも上がっていっていると考えておるのであります。もちろん、労働賃金が上がって参りますが、労働賃金が上がるだけでいいというわけのものではございません。やはりサービス業の人も上がっていかなければならぬし、農民の人も上がっていかなければならぬ。ただ、その上がり方が、生活が実質的に下がる、あるいは横ばいではいけない。実質的に上がっていくという現象内における消費者物価のある程度の上昇は、これは望ましいことではございませんが、やむを得ない場面があると考えておるのであります。  しかし、いずれにいたしましても、公共料金につきましては、できるだけ上げないという原則を保ちまして、今東京都その他のバスの料金の値上げも出ておりますが、これを押えているような状況でございます。  だから、長い目で見て、そうして実際の国民生活がどうなるかということを私は十分検討して、御批判願いたいと思います。
  13. 野溝勝

    野溝勝君 総理見解は、この点、あまりにも違い過ぎると私は思うのです。総理見解だと、生活安定、物価安定ということになれば、不景気になるというようなお答えでございますけれども、幾分物価上昇はやむを得ぬという話でございます。これは幾分どころではないと思うのです。現に問題になっております国民生活に必要な必需物資値上がりがひどい。卸売物価は、あなたが言われるように横ばいか、経企庁では消費者物価上昇見込み二・八%を修正しなければならないだろうと見ている。牛乳を飲んでも、砂糖をなめても、ビールを飲んでも、とてもそんな安定のないことをしております。これは一つの例でございますが、砂糖などは二十円から上がっております。一キロ百五十円です。公共料金など、ただいま総理は規制しようと努力していると替われましたが、とにかく国民生活必要物資についてはひどい値上がりでございます。  幾分値上がりはあると。幾分というのは、どの程度が幾分か、私にはよくわかりません。大体、所得倍増というようなこと、もちろんけっこうなことでございますが、つり合いがとれていないところに多くの問題、意見があると思うのでございます。こんなことはもう総理は十分ご承知のことでしょう。いかに言っても、まだその総理考えているような大衆生活状態には、至っておらぬのであります。外国との比較などから見れば、確かにだんだんよくなってきています。しかし、よくなってきたということについて、その中身をよく見ねばなりません。  総理は非常に御心配されまして、わが国経済は成長した、これも事実だと私は思うのです。しかし、経済高度成長といいますか、これにはいろいろ理由もございますけれども、私は三つのことが言えると思うのです。  戦後の、あの敗戦国家としての窮乏の状態というものは、想像以上のものでございました。しかし、その後の復興が非常に早かった。経済発展はまことに目ざましいものがあった。これは一つには、農地解放による食糧の増産であります。食糧飢饉際における外国からの食糧を少しでも押えなければならぬ。それで、国内でそれをまかなうようにしようという農地解放後の農民の家族総動員的な生産というものが、急速な経済発展基礎をなした。これが第一だと思っております。外国からドルはかせいではこないが、外国から借金をしないというようなことも、国際収支の上に大きな役割を果たしていると私は思います。第二は、総理等がその当時非常に御心配になった軍事予算というものが、国防予算というものが非常に少なかった。第三は貿易発展だと思っております。この三つが私は高度成長の基本的な柱だと思うのでございます。  総理は十分御承知のことでありますから申し上げませんが、その後のわが国経済所得配分を見ますると、国民各層の間にまことに大きな格差が出てきております。この格差を税制の面で補足するか、あるいは政策の面でこれを直していくか、こういうふうな点について、総理が思い切った方針を出して、これに善処するという心がまえが必要だと思うのでございます。しかし、総理としてはいろいろお考えもあるでしょうが、私どもはそう考えております。  ついては、総理にこの点をお尋ねしておきたいと思うのです。景気といいましても、今申したようなわけで、国民生活の安定とほど遠いものがあるのでございますから、政府としては景気を、いわゆる特殊のものが所得を急増するということでなくて、これを全体に潤うように、そういう景気、すなわち国民生活の真の安定をはかるようにしなければならないと思うのです。だから、むしろ景気のPRをするよりも、国民生活の安定をはかるという点で、総理からひとつ打ち出してもらって、所得格差はあまりなくなるような経済政策をお考えを願いたいと思うのです。こういう点について、ひとつ総理から見解をお伺いしておきたいと思うのです。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 福祉国家の建設と、こう申しまするが、要は、やはり国民生活水準向上と完全雇用、社会保障制度拡充、これに帰すると思います。今お話しの日本経済の急速な発展三つあげられました。農地の解放によって食糧が増産せられた。これは一つの見方で、私もそう思います。しかし、食糧が増産せられたということのみじゃない。食糧が増産され、農地が解放されて、農民の生活がよくなってきて、そうして健全な消費が行なわれたということでございます。日本経済の進歩というものは、第三にあげられました貿易拡大ということでございます。貿易拡大ということがございますが、輸出というものは、いかに努力しても、生産の二割を輸出する国はございません。日本がよほどよかったときでも一割二、三分でございます、総生産の。西ドイツが輸出伸びたと申しましても、生産の一割七、八分、イギリスのように昔からの貿易国でも生産総額の一割五、六分が最高、日本は一割二分、要は、経済発展は、輸出もちろん伸ばしていかなければなりませんが、国内で生産されたものを国民大衆が健全にこれを消費していくということが、経済発展の私は一つの基本だと思います。もちろん、輸出を私はないがしろにする意味じゃございません。こういう意味において、私は、経済発展は、やはり上層階級の所得がふえるということじゃ発展できない。何ぼ金持でも一ぺん二枚の洋服は着られぬ。大衆に着てもらうようにしなければならぬ。これが経済発展のもとであります。  したがいまして、私は、経済を興すのには、大衆の人が生活が上がって、より楽な生活にもっていくようにすることが政策の根本である。社会保障とか、完全雇用とか、生活向上とかいうのは、結局大衆生活をよりよくするということがもとであります。また、大衆生活をよりよくすることによってこそ、健全な経済の成長ができる。こういう考えでいっておるわけでございます。  私は、所得倍増ということも、これは戦争中のように乏しきを憂えずひとしからざるを憂う、これでは経済発展がない。ひとしからざるを憂えますが、やはり乏しきも憂える、この関係で、こういう考え方のもとに経済成長をやっていく、そうして低所得階層の者を上の所得階層の者よりもうんと伸ばしていこうというのが経済成長を唱えるもとなんで、ございます。  私はその方針でやっていって、及ばずながら、予期どおりとは申しませんが、大体所期の目的を達しつつあると思います。
  15. 野溝勝

    野溝勝君 池田総理お話は、その表はけっこうだと思うのでございますが、実際には、そのとおりにいっておりませんので、私はその点をお伺いしたのでございます。この数字についての見解をもう少し聞きたいと思うのでありますが、この点については、また後日、委員会などでなく、総理とひざをまじえてお話をする機会を得たいと思います。  次に私がお伺いしたいのは、IMF八条国移行に関しまして、今後の貿易考えてみると、思ったより心配される点が多いように思いますので、この点について、さらにお伺いしておきたい。  大蔵委員会でもたびたび申しましたが、総理大蔵大臣も御承知のように、最近における国際関係はどうでございますか、特に最近ひどいのは、EECの諸国の動きに見るように、日本製品に対して反ダンピング法を適用しようという動きのあることです。これは一体何事でございますか。それじゃよその外国のものはみなダンピングだという解釈もできる。そうして私どもの心配している点は、最近フランスの外相も来ると言われております、また英国の外相も明後日ですか来日するということですが、この諸君の持ってきているものの中には、日本商品輸入の緊急抑制をやるというのがあるやに聞いております。さらに、そのほかにもいろいろと手を打とうとしているようです。自由化に入っても、もしもこういうことが出るのでは、最恵国待遇を受けても、看板だけのことで、手かせ足かせで行動を縛られるのと同じだと思うのです。だから、総理、何でも国際協定を重んずることはけっこうでございます。ILOも重んじて、日本はこの協定の承認早くやらなければならない。  日本が有力国とし大いに国際協定を受け入れることはけっこうでございますが、今申したようなことになるのでは、これはどうしようもならぬと私は思う。  特に、総理は、綿製品の問題では一時、非常に楽観されたようでございますが、最近総理も非常に強くなったらしいのでございます。綿製品の問題なども、アメリカでは消費量の一%ぐらいしか日本の綿製品を使っていない。この数字もまた私の数字と違っておると言われるかもしれませんが、私はこれは通産省でいただいた資料によっているのでございます。この綿製品交渉で、今度はいよいよ政府並びに民間が強くなったので、アメリカも一応考えるという段取りになりました。もとに戻して、長期協定の三条交渉から四条交渉に移るということですから、これはけっこうなことだと思います。これは一つの例でございまして、こんなことは、私が申さずとも、もうすでに総理は御承知のわけなんですが、こういうことが、次々とやってくるのでございます。こういう点に対して総理閣議におきましては、日本産業上、経済上不利になるようなことについては応じない、こういうような腹がまえを見せておられるようでございます。しかし、腹がまえはそうであっても、いざ具体的な折衝になるとくずれてくるのでございますが、こういう点をわれわれは非常に心配しています。  日本の民族産業を守り発展させることは、日本国民大衆生活を高めることになるのでございますから、そういう点では、私どもはこれをただに階級的に見るとか、そういうけちな根性は持ちません。現時点において私はものを見るのでございます。ですから、ひとつ総理の心がまえを聞いておきたいと思うわけでございます。特に、先ほどのお話総理の腹はよくわかりました。私は非常に収穫を得たと思っております。ですから、この点についても、総理の見識あるお答えを願いたいと思っております。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 敗戦後の日本は、各国から特別差別待遇を受けておるのであります。すなわち、その代表的なものとしては、ガット三十五条を欧州各国は援用しておる。欧州ばかりではございません。オーストラリア、ニュージーランド等々も従来やっておったのでございます。私は、ガット三十五条の援用をしておる国を、ガット三十五条を援用しないようにすることが、まず第一の案件だと考えております。その過程として、イギリス、あるいはベネルックスなんかにも、ある程度のセーフガードの規定を暫定的に置くことは、これはやむを得ない。これはさるぐつわをはめられたというのじゃない。今までは部屋に入ってこれなかったのを入った。そしてお互いに対等の立場になる。しかし、日本がむちゃな貿易上のフラッドその他をやるならば、これはそのときには特別の措置をとります。だから、やらないようにしてくれ、正常な取引をしてくれ、こういう歩調がございますから、ないにこしたことはございませんが、日本の正常な貿易を阻害する規定ではない。しかも、経過的にはやむを得ない措置だと思っておるのでございます。  それから、今のアメリカとの綿製品の関係で、向こうの消費の一%、こう言っておられますが、これは別珍なんかは、向こうの消費の五〇%以上日本輸出しておる。三十六品目のうちで、五%程度のものもございますし、一%程度のものもございます、〇・五%もあるし、いろいろ種類がございます。しかし、それはいずれにいたしましても、やはりお互いに話し合いでいかなければならない。しかし、原則として、ジュネーブのガットの会議で、長期的に綿製品の取引の相談をしようという原則を去年きめたのであります。その原則と、そうして両国の間で話し合いでいこう、こういう両方を動かしながら今やっておるのでございます。  綿製品の問題については、毎年あります。御承知のとおり、昨年は、綿製品の輸入に対して八・五%の賦課金を課税する、こういう問題があって非常に騒ぎましたが、これもわれわれの主張が通りました。しこうして、今度の一般綿製品のアメリカ輸入についてどうこういっておりまするが、私はテレビでも話したごとく、日本からアメリカ輸出する場合において、十五億ドルの輸出総額のうち、綿製品は八千万ドルでございます。八千万ドルの中の一〇%ふやすかあるいは減らすかという問題で、全体からいったならば〇・何%という程度のものでございます。しかし、それは積み重ねていく関係からいって、おろそかにするわけではございません。しかし、大きい目で見て、しかもアメリカが非常に苦しい立場にあるときには、私はこういう言葉を使いましたが、ケネディ大統領はマサチュセッツ州出身であり、非常に綿業の盛んな所である、それが斜陽産業になった。それから民主党の勢力圏である西南のほうも、やはり綿業が主たる産業である。非常に泣きどころだから、日本もそういうことをよく考えていかなければならぬ。ちょうど日本アメリカの自動車を輸入するということをほとんど禁止しておる。何百台しか——日本では年に数十万台できますが、アメリカの自動車は何台入れておりますか。私は、やはり日本日本産業を守るために、アメリカがどうしてもたくさん入れてくれという自動車を非常に押えております。こういう点もやはりお互いに考えながら、立場を尊重しながら、話し合いでやっていこうというので、決して弱気ではございません。日本が自由に自動車を今すぐ入れるということになったら、アメリカ相当綿製品を買ってくれるでしょう。こういう点はやはり自分のことも考え、自分が人にどういうことをしているかということを考えながら、人の気持もくんで、そうしてやっていかなければならぬ。しかも、先ほど申し上げましたごとく、日本アメリカヘの輸出は年々相当伸びております。去年なんかは三割近く前年に比べて伸びております。輸入は非常に減っております。こういう点も考えて、お互いに立場々々を尊重しながら、両者共存共栄の立場で話を進めていかなければならぬと考えておるのでございます。
  17. 野溝勝

    野溝勝君 時間的に制約されておりますので、私は残念でございますが、あとまとめて質問をいたしたいと思います。  総理の、お互い謙虚な姿勢をもってやるということはけっこうでございます。昨日ですか一昨日ですか、閣議におきましても、通商航海条約の問題について非常に心配をされておる発言をしておられたということを紙上で見ました。そのときの最後の腹がまえが、総理の今言われたようなお答えにまとまったようでございます。  しかし、私は一つ心配いたしています。それは五百六十八億ですか、そういう膨大な外貨債を発行しなければならぬというときでございます。わが国の今の財政経済事情として、こういう外貨債の発行という弱みと申しましょうか、こういうときには、えてして、通商航海条約でいう相互の最恵国待遇の精神と逆に、実際面は相手国の有利に、日本の不利という結果がもたらされる心配があるのです。私はこういう点について今申しておるのです。この問題については、いずれ機会を得て、また総理にお伺いすることにいたします。  最後にお伺いしたいことは、自由化とこれに対応する日本産業体制等の再検討についてでございます。私は、先ほど前段において申し上げましたとおり、政府自由化に対応するためにいろいろの手を打とうとしておりますけれども、業界そのものが今のような状態では、はなはだ失礼でございますが、政府政策などではとても所期の目標に向って軌道に乗せることはむずかしいと私は思うのでございます。この点は総理ももう経験を持っておられるわけで、高度経済の成長の見通しなどについても、成長率については修正しなければならないようなことになっておるのではございませんか。総理みずからやはり再検討されておると思う。経済の指標が狂ってくるといっても、相手のある仕事でございます。いわんや国際的な問題はなかなかむずかしい。社会党が政権をとってみたって、こういう問題はそう簡単にはいかぬと私は思う。その点はよく私どもはわかっています。けれども、あまりにどうも違い過ぎるということは、私はどうかと思う。そこで、この政府政策が裏づけされるようになるには、産業、金融、証券等各界全体が反省しなければならぬと思う。  たとえば金融面を見てみると、正常化といっておりますが、コール・レートを中心にして動くような今の金融界の動きというものは、不正常もはなはだしいものと思う。資金というものはこんな動きをするのでなく、もっと産業界の生産向上のほうに流れるよう、金融界を指導していかなければならぬと考えております。私は前々から申しておりましたが、最近信用組合、監督官庁は都道府県だというんでございますが、こういうものも、中央政府の方針と違った動きをしている。あるいはそれが無軌道的に動くとすれば、金融機関がこういうことでは常に問題をかもす。将来にわたって問題がたえない。そこで、私は再参これを指摘し、金融界における混乱になるぞということを念を押しておきました。はたせるかなホテルとかゴルフ場を持っているという伴理事長ですか、その昼夜信用組合のようなことが出てきた。かわいそうに、児童の子供預金の七百万円をふいにしてしまった。大蔵大臣は、監督官庁が都道府県にあることはよろしくないから、今度はこれを大蔵省に移そうという意見を新聞に出しておられたのでございます。私は当然そうすべきで、けっこうだと思う。金融界のことですから、むずかしいところですが、私は、財政経済に通じている総理のときに、かようなものはきちんと整理してもらいたいと思う。これは一つの例でございます。  さらに金融界全般を見て強く感じるところですが、金融界はどうですか。市中銀行あり、相互銀行あり、信用金庫あり、信託銀行あり、協同組合あり、まことに七花八裂の状態でございます。これで一体産業と金融についてスムーズに、一つの確固たる方針がとれるかどうか。協会というものがある。協会があったって、そんなものはある点においては一致しますけれども、今申し上げたように、コール・レートの問題になってくると、どんすこどんすこ勝手に独走するのでございます。特にこの点、同族会社系にはよろしくないものが間々見られると思うのだが、こういう点もひとつ考えていただきたい。  さらに、産業面ですが、巨大産業合理化といっても、三十八年度予算案などで見るところ、救済策のにおいが強い。そういう合理化対策であってはならないと思う。私は日本における貿易の六割以上を占める中小企業と大企業をどういうように調整していくかについて、もっと考えてもらいたいと思う。さらに零細企業問題などまことに重大なものがあります。スーパー・マーケットだとか、チャーミング・コーナー等の出現もあり、今日、野菜が高い、何が高いと、日常消費物資の値上がりで、流通機構の問題、市場の問題などが、一そう考えられなければならないときですから、これらの点には十分留意、善処願わねばならない。総理承知のごとく、百姓から売るときの価格というものと小売から売るときの価格というものを、ひとつよく御検討下さい。総理は非常に心配されているようでございますが、全く、どこの階層か知りませんけれども、マージン屋が多くて、農産物の小売価格は生産者価格の三倍、五倍というひどい開きがあります。河野君などは市場を改革するとかなんとかいって手がけ始めましたけれども、結果においては、この根本的な矛盾を除くという点では、まだ何にもなっちゃおりません。  だから、こういう流通機関、金融機関、産業機関、こういうものに対して、総理、ひとつこの際十分検討されて、自由化に対応し、ひいては国民経済国民生活の安定と向上を期してもらわねばならないと思うのでございます。ひとつ総理から御見解をお伺いしたいと思います。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおり、金融正常化は喫緊の要務でございます。われわれとしても大蔵省に申し出まして、着々その実をあげつつあるのでございます。金融機関の数の問題がございましたが、今から三十年前に私が大蔵省に入ったときには、銀行が千五百ございました。これは千五百が八十くらいに減って参りました。当時、貯蓄銀行が三百くらいございましたが、これも貯蓄銀行がなくなった。無尽会社が銀行になりましたが、これも七、八十で、アメリカの一万近い銀行に比べまして、日本の銀行は非常に合同整理されました。大蔵省としても、信用金庫、相互銀行、一般銀行は監督しておりますが、御承知のとおり、信用組合にまでは手が届かない。また、資金量も非常に少ないというのであれしておったんですが、いろいろな問題がありますので、今後この問題は検討して参りたいと思います。  また、消費者物価のこと、野菜の流通につきましても、昨年の三月に総合物価対策をあれいたしまして、そうしていろいろ流通面におきまして、輸送の関係、保存倉庫の関係等々予算も私はできるだけ出すように指示しておるのであります。もちろん、各種類におきまして、農民の方のお売りになったものと一般都会の消費者の買う価格について差のあることは認めております。それをいかにして縮小するかということがやはり消費者物価安定の非常に有力な手段でございますので、昨年から予備金を出して、今年の予算につきましてもその方面へ今までにないほどの金を出し、そうして流通機構の健全適正をはかろうといたしておる次第でございます。
  19. 野溝勝

    野溝勝君 中小企業の。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中小企業の金融につきましても、もう十年前のそれと比べましては格段なあれでございます。特に、先ほど申し上げました信用金庫、相互銀行は、中小企業を主体としておる。ただ問題は、日銀との関係がなかった。あるいはまた、このごろは中小企業金融には相当金が集まっております。お話のように、コール市場に対しましては地方銀行、別に相互銀行、信用金庫のコールの放出が相当ありまして、しかも高金利であったということは、農協、農信連ともに言われておるのでございます。この点もだんだん改まってきつつありますし……
  21. 野溝勝

    野溝勝君 合理化の問題。巨大産業だけではなくて、中小企業の産業合理化
  22. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは従来から、一般銀行に対しても、中小企業金融ということにつきまして格段の注意を払う、そうして相互銀行、信用金庫も、これは本来の性質からいって、中小企業のほうに相当出しておる。  御承知のとおり、相互銀行の伸び方というものはたいへんなんです。今から十年前に無尽会社を相互銀行にいたしましたときには、大体千二、三百億円でございました。それが一兆五、六千億をこえております。所得十年倍増ではなくて、十何倍増になっておる。こういうことが今の相互銀行の実態でございます。したがって、金は集まりますが、貸し出し先その他については十分の調査がいきませんし、片一方はコールが五銭も五銭五厘もするという異常な状態でございますので、そういうことがありました。今後は私は、特殊な相互銀行につきましては、日銀との取引を開始するとかいろいろな金融制度の合理化をはかって、万全を期しておる次第でございます。
  23. 野溝勝

    野溝勝君 巨大産業と中小企業の合理化、その相関関係についての見解、どういうお考えかということ。
  24. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大企業にしても中小企業にしても、やはり近代化合理化をはかる。そうして大企業と中小企業との関係を緊密にしていく。これは従来からの方針でございます。
  25. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 時間がありませんので、簡単に申し上げたいと思います。今の問題と若干関連があるかと思いますが、一つは中小企業に対する金融の問題。農林漁業金融公庫の場合ですと、年利率が現在最低四分、最高七分五厘、しかも償還期間は最長三十年というふうになっておると思う。ところが、それに引きかえまして、中小企業関係政府金融機関におきましては、年利九分、償還期間は一年以上五年程度というのが、大体建前になっておるようでございます。もちろん、農林漁業の日本経済に占める位置が非常に重要であるということは理解できますが、中小企業においてもわが国経済に占める位置が相当大きい。かかる観点に立ちまして、しかも自由化を控えている今日、年利率の引き下げあるいは償還期間の延長というものも当然考慮されてしかるべきではないかと思われるのでございますが、この点について総理の御見解を伺いたいと思います。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) このこまかい問題で十分御納得いけるかどうかわかりませんが、この農林漁業金融公庫の資金というものは、政府資金でできておるのであります。政府資金でございます。しかも、特殊の原始産業のために、特殊の業態に対して貸すものでございます。これは範疇が違います。今のお話の商工組合中央金庫——商工中金のごときは、ある程度政府資金も入っておりますが、これは商工中金債、いわゆる割商の分が相当入っておる。しこうして一般預金はございますが、少のうございます。割商のあれは、やはり負担が商工中金で七分二、三厘かかっているのではございますまいか。割商を買う人の分が六分三厘七毛ですから、そうすると七分三、四厘の原資の負担をしていると、どうしても九分くらいで貸さなくちゃいかぬ。これも五、六年前はやはり一割をこえております。このごろはやはり九分何厘程度に下げていっておるのであります。  一般の商業工業資金というのは、これは九分というのは高い。これは下げていかなくちゃなりませんが、これはやはり預金の金利、そして税金、そして銀行の経営必要経費等々で、急激に下げていくわけには参りませんが、やはり国際競争力の点から申しまして金利が低いということは、非常に競争力を強めるものでございます。徐々にやはり中小企業の金利も下げていくように努力いたしたいと考えております。
  27. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 さらに、関連するのでございますが、一般の中小企業の声といたしまして、政府金融機関からの貸し出し増加ということを非常に強く要望している向きがございます。そうした点から、中小企業の金融を民間企業にだけ依存するということではなくして、政府自体が本腰を入れてそうした金融の面でもリードしていくという、そうしたお考えが現在ございますかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 戦後におきまして、そういうお考えのもとにやはり商工中金の原資をふやすと同時に、今から七年くらい前に中小企業金融公庫を作りまして、これの融資は政府からやはり手数百億円出ておると思います。また、国民金融公庫もその後非常にふえて参りまして、これも一千億円以上のお金を貸し付けておる。こういう方法で、原則は民間がやるべきでございますけれども、その足らざるところを政府はできるだけ政府資金で補っていこう、こういう考えで今後進みたいと思います。
  29. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それでは、時間もありませんので、最後に一つだけお伺いして質問を終わりたいと思いますが、中小企業に対する課税の問題でありますが、今日重要産業の設備投資の場合、租税特別措置ということによって実際上の減税措置を受けるような仕組みになっております。もちろん、中小企業者は受けないということはないのでございますが、実質的にはほとんど大企業に傾いている、そういう傾向があるように見られます。ところが、中小企業がその設備の近代化を行なうために、そうした観点から税金が納められない、そういうような声が、直接私が実際に中小企業の方々に会ってみるとそういう声が強く出ておるのであります。また、帳面上は非常に黒字であっても、設備投資を行なう、ところが、そのために今度今申し上げましたように税金が納められない、こういうような実情の人がたくさんあるのではないかと思います。今後国際経済の荒波に対処して参りますためには、当然こうした面を考えていかなければならないと思うわけであります。中小企業に対するいゆる租税特別措置を、本腰を入れてこれを推進していかれるかどうか。また、その徴税方法にあたっては、現在非常にトラブルが起きておるようにいわれております。こういう問題について、非常に抽象的な言い回しになって恐縮でございますが、いわゆる結論から申し上げれば、中小企業に対しても大幅の、そうして中小企業育成の根幹としての租税特別措置をやられるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。務大臣池田勇人君) お話のとおり、租税の特別措置は、主として今までは大企業に適用する場合が多かったのでございます。その後だんだん改めまして、中小企業の設備に対しましても、当然これが及ぶようになっている。また、今回の税制改正におきましても、そういう点について意を用いたのでございます。  お話のとおりに、勘定合って金足らずということは、私もよくわかります。ことに設備を急速に拡張したときには、そういうことになると思いますが、そういう点につきましては、やはり税のほうで考えることもさることながら、資産もそれだけあるのですから、所得の一部に対する課税については、やはり銀行の借入金で一時を切り抜ける。そうしてそういう問題に対しましては、利子を払って、滞納を奨励するわけじゃありませんが、特殊な場合においては、いろいろな方法も考え得ると私は思っております。  今後におきましても、中小企業に対します一般租税制度の改正、並びに特殊の助成方策を特別措置法で考えていくということは続けていきたいと思います。
  30. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 速記をとめて、   〔速記中止〕
  31. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 速記を起こして。  午前はこの程度とし、午後は一時三十分に再会いたします。  暫時休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      —————・—————    午後二時十八分開会
  32. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 午前に引き続き、委員会を再会いたします。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  33. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 午前中に引き続きまして、大蔵大臣にお尋ねをいろいろいたしたいと思います。午前中に同僚の野溝委員から、大所高所の立場からの総理大臣への御質問があったのでございますが、私のお尋ねしようと思っております問題にも触れておられたような点もございますので、そういう点を避けて、この際、上程せられておりまする所得税法の一部改正の問題に関連いたしまして、大蔵省の低金利政策、金融正常化の問題等に関連いたしまして、金融機関の指導監督の立場にある大蔵省の態度や方針についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  政府は、最近、金融正常化のためにいろいろの努力をされているようであります。去る二十日には、公定歩合の一厘引き下げを行ない、近くまたさらに一厘引き下げを行なうというふうに聞いております。また、買いオペや公定歩合の引き下げなどの一連の施策が、低金利政策のための一つのコースとして行なわれておるのでありますが、私はそのことについて注文をつけようとは思いません。日銀が買いオペを盛んにし、市中銀行の資金を豊富にしてコール・レートの低下をはかろうとしていることにもあえて反対するのではないのであります。確かに最近のコール市場は平穏のようでございます。年末の繁忙期は別といたしまして、昨年と比較いたしますると、昨年の二月末において月越しが約三銭八厘であったものが、ことしの二月では二銭七厘でありますから、これは一応の成果をあげたと言えると思うのであります。もっとも、しかしこれらの施策の原則が、都市銀行のための、あるいは大企業の利益を守るということに結果しておるということについては問題があると思うのであります。この点につきましては午前中の野溝氏も尋ねておったようでございますが、しかし、私はきょうそのことについて触れないことにいたします。この際、大蔵大臣にお伺いをいたしておきたいということは、こういうふうな施策を実行せられておる中で、金融正常化、低金利政策を行なっておるのでありますが、金融機関の指導的監督の立場にある大蔵省の態度や方針について明らかにしたいと思うのであります。  そこで、まずお伺いしたいのは、公定歩合の引き下げの結果として考えられる、やがて関連して起こるだろうところの預金の利息引き下げの問題でございます。公定歩合の引き下げは金融機関の貸し出しの金利につながると思いますが、それは低金利の政策がねらいでありますから、当然のことでありますが、そこで今度は預金利息の問題が次の課題になろうかと思います。そこで、大蔵省大蔵大臣は預金の利息の問題についてどのように現在お考えになっておるか、将来についてのお考えがあればお伺いいたしたいと思います。
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 金利引き下げということにつきましては、政府が一方的な金利の引き下げを行なうというような考えはございません。国会に対して明らかにいたしておりますように、自由化に対応しまして国際金利にさや寄せをいたして参りたいという政府の基本的な考え方を、まず明らかにいたしておるわけでございます。これが具体的な施策の遂行につきましては、政府側からの一方的な引き下げの手段をとらずして、金融環境の整備をはかるという前提的な事項の整備に意を用いておるわけでございます。これが御承知のとおりの日銀の買いオペの施策となり、また預金の吸収のために、貯蓄奨励のために、税制上の優遇措置を考えましたり、今まで金融の健全化という立場から相当抑止しておりました店舗その他預金を集めるために必要な機構の整備その他のために店舗行政等大幅に緩和をいたしたり、金融環境の整備に格段の意を用いているわけでございます。  金利は、先般の公定歩合の一厘引き下げにつきまして、当然貸し出し金利も二十五日から下げてもらえるように、全銀協で協議をいたしてきめてもらったようでございますが、好ましいことだと考えておるわけでございます。しかし、ただいま仰せになりました、あとの一厘を引き続いて引き下げるかどうかという問題に対しては、日銀当局でもいまだ決定をいたしておらないようでございますし、この問題に対しては、その時点における金融のあり方等、十分検討の上、適切な措置がとらるべきだと考えておりますので、引き続いての公定歩合の引き下げに対しては、現在は日銀当局からも聞いておりませんし、また私どもでもそのような考え方も持っておらないわけでございます。  将来の金利水準というものに対してはどうかということでございますが、先ほど申し上げました原則論としては国際金利にさや寄せをするようにということでございますが、日本の金利の高いというのは、申すまでもなく、需要供給のバランスがとれないところに高い金利があるわけでありますし、できるだけ環境整備によって実質的貸し出し金利も下がっていくような環境づくりをして参りたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、預金金利と貸し出し金利との関連はどうかということでございますが、今度の一厘引き下げというような問題に対しては、現行の預金の金利を引き下げるというところまでは考える必要はないのではないかと考えますが、常識論として、将来相当程度金利が引き下がっていくというような場合、当然預金金利の引き下げということも考慮しなければならない問題でございますので、これらの問題はこれからの金利の引き下げられる、合理化される状態を十分考えながら、見通しながら、預金金利の問題に対しては対処して参るべきだと考えておるわけでございます。
  35. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 預金利息の問題についての大蔵大臣お答えは、実は不満足なんでありますが、もう少し大蔵省としてのあるいは大蔵大臣としての御見解を承りたいと思うのでありますが、預金利息の問題は、銀行側からいいますと、コストの問題に直接関係いたしますし、また一面からいいますと、預金吸収という面において関連があるのでありまして、そういう両面を持っておりますので、これは十分に検討を加え、話し合いをすることが必要だと思いますが、きょうはこの点は避けまして、後日にその問題を譲りたいと考えます。  そこで、大蔵省は、今銀行の歩積みや両建の抑制について非常に積極的意欲を示しておられるようであります。歩積み、両建については、今までにも大蔵省は金融機関に対しまして自粛を幾たびか要望されておるのでありますが、なかなか実効があがらない。今度それを実行して、いわゆる監督官庁として立場を明確にしよう、そうして金利の引き下げ、いわゆる低金利政策、金融の正常化をはかろうということで、今度監督官庁としての大蔵省の伝家の宝刀である検査をされたように承っております。新聞の伝えるところによりますと、これは三月三日のある新聞でありまするが、三段抜きで相当大きく大蔵省が両建・歩積みの抑制のために抜き打ち検査をしたということが実は記事になっておるのであります。ところが、この記事を見ておりまするというと、見出しに、「銀行がこわい時節」、こういう見出しが実はついています。そしてさらに、サブタイトルといたしまして、「歩積み・両建一掃へ、Gメンが抜き打ち検査」、まことにはでな見出しになっておるわけであります。記事は非常にまじめに書いておるのですが、見出しは相当勇み足であります。これは大蔵当局の意気込みが非常に強いのか、あるいはPRが行き過ぎたということが新聞の見出しに現われておるのではないかというふうに考えます。そこで、私はこの新聞を見て感じましたことは、一般の人が、特に金融機関を利用しておる中小企業は、好意と好感をもって大蔵省のこの方針に目を向けておるようでございます。いわゆる両建・歩積みはこの際やはり強く規制してほしいという中小企業者の願いが、この記事に対する好感となって現われておると思うのであります。  そこで大蔵省のほうでは、この新聞によりますると、三月の一日、二日、三日、全国の十数行に対して抜き打ち検査をした、こう伝えておるのでありまするが、実際にそういうふうにされたのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  36. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 銀行局長より答弁させます。
  37. 大月高

    政府委員(大月高君) 歩積み・両建に関する特別検査につきましては、ただいまお話がございましたように、実施いたしまして、現在その実態を集計中でございます。具体的には、都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫、合わせまして三十二の金融機関を選びまして、一つの金融機関につきましては三店舗程度、それからその一店舗につきましては大体二十ないし三十の債務者を抽出いたしまして、特に問題があろうと思われるものを特別に検査いたしたわけでございます。で、その結果、やはり一般に言われておりますように、相当数の歩積み・両建、われわれとして自粛してもらいたいという事例かございました。  大体の感じを申し上げますと、一般の銀行におきましては大体調査いたしました貸し出し金額の一〇%程度それから相互銀行におきましては二〇%程度、信用金庫においては一五・六%程度、その程度のものは、われわれとして自粛をしてもらいたい、こういうような判定を下しておるわけでございます。
  38. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 今三十二の金融機関について検査をされたと言われるんですが、都市銀行の幾つを検査されたのか、地方銀行の幾つを検査されたのか、あるいは相互銀行、信用金庫、それぞれ幾つずつ検査をされたかを、お聞かせ願いたいと思います。  なお、検査の内容につきましては、機密保持の原則がございますから、この際お尋ねすることは御遠慮申し上げたいと存じますが、今銀行局長のお話によりますと、ある程度の集計と見通しを持っておられるようでございますので、この際、わかれば、それぞれ都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫について歩積み・両建ての現状が、現在の預金総額のどのような比率を持っておるかという点の、現在の預金総額に対して想定されまする、予想されまする歩積み・両建の金額はどのぐらいの比率になっておるか、これがわかればお聞かせ願いたいと思います。
  39. 大月高

    政府委員(大月高君) 都市銀行につきましては六行でございます。東京所在の銀行三行、大阪所在の銀行二行、名古屋所在の銀行一行でございます。  それから、実態につきましてでございますが、この程度の抽出検査におきましては、全体の預金に対してどのくらいという感じはなかなか統計的には申し上げにくいと思いますが、先ほど申し上げましたように、融資の金額に対しまして都市銀行一〇%程度、相互銀行二〇%程度、信用金庫一五・六%程度のものは自粛すべきものである、こういうように判定いたしたわけであります。
  40. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 私が聞いておるのは、自粛すべきであるという大蔵省の側の考え方ではなしに、抽出されて検査された結果として、実際にどのぐらいの歩積み・両建を強制しておるか、これが知りたいのであります。  たとえば、相互銀行の昨年十二月末の預金量を見ますと、一兆八千七百億円である。信金が一兆六千九百億円である。もしこのうちのたとえば二割程度のものが両建・歩積みの拘束預金であるということになりますると、一兆八千七百億円の二割、三千六百億円余は、これはからの預金なんです。だから、相互銀行の預金は実際はこれだけ減らなければならぬ、こういうことになりますので、そういう意味で、検査された結果を、現実にどの程度の歩積み・両建を行なっておるかということを、都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫と、それぞれ事情は違うとは思うんですが、相銀や信用は都市銀行に比してそういう歩積み・両建は多いと思うんです。そこで、各金融機関の性格に応じて、もし実情をわかればお知らせ願いたいと思います。
  41. 大月高

    政府委員(大月高君) ただいま申し上げましたように、対象の金融機関がわずか三十二でございますから、ここから出ました数字をもって、たとえば相互銀行二兆の預金に対してどれだけという推定を下すことは、はなはだ危険であろうと思います。そういう意味で、現実に調査いたしましたものだけについて申し上げますれば、それから大体の感じをおつかみいただけるかと思うわけでございますが、そういう観点から申し上げますと、自粛の対象とすべき預金としてわれわれが見ましたのは、都市銀行におきましては融資総額に対して一〇・八%、先ほど申し上げました一〇%程度ということでございます。これは具体的な数字で申し上げますれば……
  42. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 それは大蔵省の希望する実際ですか、実情ですか。
  43. 大月高

    政府委員(大月高君) 自粛すべきものということでございますが、これはわれわれが客観的に認定いたしまして、歩積み・両建と一般に言われておりますものでも、革に預金と貸し出しとが両建になっておるという形だけでは、必ずしもこれは非難すべきものではないわけでありまして、商慣習上当然是認されるものもございますし、あるいは当然、たとえば預金担保にしてしかるべしというのもございます。そういうものはわれわれといたしましては自粛の対象にいたさないわけでございまして、むしろ一般の慣習を越えて債務者の意思に反しまして拘束をしておる預金、そういうものをわれわれは自粛の対象といたす預金というように考えておるわけでございます。そういう一つの概念をもちまして調査いたしました結果について、客観的な数字として申し上げておるわけでございます。  そういたしますと、都市銀行の調査対象は、融資の合計におきまして二百六十七億でございます。それに対しまして、自粛の対象となるべきものと認定いたしましたものが二十三億でございますので、今のような数字になるわけでございます。それから、地方銀行でございますが、同じく対象になりました融資の総額二百四十四億、それに対しまして自粛の対象となるべきものと認定いたしましたものが二十七億でございます。したがいまして、その割合が一〇・九%という数字でございます。それから、相互銀行でございますが、対象となりました融資の総額が百六十九億、それに対しまして自粛の対象とすべきものといたしました預金の金額が四十億、したがいまして、その割合が二三、三%。それから、信用金庫は、対象といたしました融資総額が九十五億でございまして、自粛の対象とすべきものといたしましたものが十六億でございます。この率が一六・二%でございます。これをもって全体の数字の基礎とするわけには参らないと思いますが、大体の感じが出ておるかと思います。
  44. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 今おっしゃられたのは、抽出検査であるようでありまするから、実際の特に中小企業への貸し出しの場合の状況とは相当食い違いも出てこようかと思いますが、私たちは今日まで常識的に、相互銀行あるいは信用金庫等が歩積みを大体二割ないし三割くらい、両建も同じように行なっておるということは実はよく了解しておったのでございますが、ここ二、三年の実際の状況を利用者から聴取いたしましたところによりますと、おおむね三〇%から四〇%に近い歩積み・両建強要されておる。特に取引の浅い中小企業では、五割をこえるような歩積み・両建も行なわれておる。しかしそれを承知しなければ貸してもらえないから、やむを得ずそれに応じる。しかも、これは表ではようしゃべれない、こういうのが最近の実情であろうと思います。しかし、金融機関としてはそういう業者ばかりを相手にしておるわけではなく、何十年も取引している信用のものもありましょうから、歩積み・両建を必要としないものもありますから、今おっしゃったようなことになったのだろうと思いますが、そこで相互銀行の場合は、おっしゃるように、二三%というものがこの自粛の対象になる。そういたしますと、一兆千億という預金のうち四千億円ばかりはすでに歩積み・両建でございますから、自粛いたしますと、この預金の総額から減になる、こういうことになるわけですね。  そこで、そういう実情は実情といたしまして、歩積み・両建の取り締まりは、金融の正常化、景気の見通しからいくと、大いにやってもらいたいと思うのであります。しかしながら、ここで問題になりますことは、大蔵大臣にぜひ今後の御努力をお願いいたしたいし、決意のほどをお伺いいたしたいと思うのでありますけれども、今言いますように、よいことではありまするけれども、金融機関側としては好ましくないことをしてきた結果としての罪滅ぼしなんでございましょうけれども、現在の預金の相当部分が減少をする。しかも、現在ありますその預金は、手数のかからないところの預金であります。預金コストに影響しない預金である。それがなくなるんだということになりますと、預金額の額として減りまするし、あるいはその額がコストの要らないものが減ることになりますから、歩積み・両建の抑制ということは金融機関にとっては非常な問題になると私は思うのであります。今局長もおっしゃいましたように、確かに歩積み・両建はある程度のものは債権確保の意味において一つの役割を持っておると思います。しかし、今言いますように、このままでいきますると、相互銀行、信用金庫のようなものは歩積み・両建は押えられた。しかも、先ほど来言いましたように、利用者は大蔵省の今度の政策に対して好感を寄せております。したがって、将来歩積み・両建を強要された場合には、そのパーセントの問題は別といたしまして、銀行けしからんじゃないかという注文がつくことは想像できるわけであります。そうすると、金融機関側としてはそんなにまでして貸す必要はないということで貸すことを渋る、あるいは窮屈になる傾向が出てきはしないか。特に金融機関との取引の浅い中小企業、小企業の場合には、再び金融機関の窓口から締め出されるという結果になるおそれが出てくる。そういたしますと、当然そういう人たちが行くところは高利貸し以外にないわけであります。したがって、高利貸しが今度繁盛するという結果が生まれるのではないかと思うのでありますが、その点について見解を伺いたい。
  45. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど来の御質問もありますとおり、公定歩合を引き下げ、貸し出し金利を引き下げるというだけでなく、実質金利を引き下げるということも、中小企業その他の企業の負担軽減につきましては十分これを考慮いたしているわけでございます。ただいまのように歩積み・両建が強要せられたり、また一面において一カ月一カ月の手形を切りかえるために、一ヵ年を通じて十二日も十三日も重複して金利を払うというような問題もありますし、そのほか、なお二カ月に一ぺんずつは新しい名目で調査費が徴収されるということになると、実質三銭五厘から五銭になるわけでありますから、そういうものは公定歩合で一厘引き下げる、貸し出し金利を一厘引き下げるということでなく、これが合理化されてくるということになると、三厘も五厘も一銭も下がるわけであります。もっと下がると私は思うのであります。まあひどいのになると五銭くらいのものもあると思いますから、五銭を三銭に下げれば二銭下がるわけでございますので、こういう面を銀行行政の上では十分留意をしていかなければならぬことは、先ほどから申し上げておるとおりでございます。  しかし、この金融機関における歩積み・両建というのは、慣習として歩積み・両建は世界じゅうにあるのでございますから、いわゆる慣習を越えたもの、それから実際は預金量が非常に多い、また貸し出し量も非常に多いといって預金量と貸し出しの実績を誇っておりながら、内容は両建であったというようなことでは困るのであります。これは健全な金融にはならないわけでございますので、こういう意味で、真に健全な金融機関を育成強化をするという建前からも、銀行の検査等随時に行なっておるわけであります。でありますから、あなたが今言われたとおり、大蔵省でも積極的にやっておるので、今度は歩積み・両建を強要したら、強要しなくても、まあ信用第一の取引でございますから、少しおやりになったらどうですかといったら、すぐ大蔵省に投書をするか文句を言ってくるというようなことはないと思うのであります。これは金融というものは長い信用取引でございますし、いわゆる担保に対して何カ月というのではなく、場合によっては熱担保で信用貸しといったのが続いていくべきでありますから、私は金融機関も自粛をすると同時に、やはり信用取引が基本である。借り主も実質的な金利負担からのがれるということは、これは当然のことでございますが、やはり慣習として歩積み・両建をすることが何年か何十年かのうちにはそれはえらい大きな預金になって、人の金を借りなくても自己資金でまかなっていけるようなことにもなるのでございますから、そういうものは結論としては、金融機関も借り主もお互いの良識をもって行動するということをひとつますます進めていただくように指導して参りたい、こう考えるわけでございます。  また、いつまでやっても金融機関が歩積み・両建というものをやめないで、ますますそういうことをするというようなことになれば、いかに金融の忠実性と言い、金融機関の自由運営ということを基盤にいたしております大蔵省考え方も、三月一日から行なったように検査は随時行なう、こういうことになるわけでございますので、ここはひとつ両々お互いに相待って金融の正常化を進めて参りたい、こう考えておるわけであります。
  46. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 大蔵大臣のおっしゃること、私もよくわかるのですよ。ただ、今おっしゃるような方針がこのままで延長されますると、今までの経験から申しますと、自粛するという努力はいたしましても、なかなか実行困難ではないのかというふうに私は考えざるを得ないのでございます。と申しますことは、今度相互銀行と信用金庫に対しまして二百億円以上ということのワクがあるようでありますけれども、日銀で準備預金制度が行なわれます。これはパーセントは幾らになるのか知りませんけれども、無利息なんです。そのほかに、さらに公社債の保有を約束づけておる。私たちの聞いております範囲では、相互銀行の預金コストは七分四厘から五厘になる。公社債の利回りはたしか七分一厘くらい、七二%じゃないかと思いますが、逆ざやになるわけです。一部ではありまするけれども、無利息の金を日銀に預け、逆ざやの公社債を持たされる、自粛によって手数のかからない預金が減っていく、しかも金利の低下の問題が目の前に来ておる。銀行自体も非常な努力をして、合理化された体制に沿うように努力はするでありましょうけれども、現状は非常にむずかしい経営の実態に直面せざるを得ない。しかも、コール・レートはどんどん下がって正常になってきておる。今までは余裕金をコールに回すことによって、余裕金の運用効率化によって利益をあげておる。これもだめになってくるということになりますと、非常に窮屈になりますから、そこに銀行側といたしましては、特に地方銀行以下の金融機関は、大蔵省のそういうふうな方針に沿おうとしながら沿い得ない状態がやはり出てくるのではないか、それが中小企業のほうにさらに強くしわ寄せされる事情が生まれてきはしないかということを私たちは想像するわけであります。そういたしますというと、当然高利貸しのほうに行かざるを得ないわけです。これに対して大蔵省はもっと最善の策を十分におとりになる決意と覚悟をこの際申し述べていただくことが必要だと思いますが、これに対する御意見を伺いたいと思います。
  47. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおりでございまして、堂々めぐりをやって、中小企業のために金利負担の軽減をやろうとしておるのが、逆に高利貸しのほうに行ってしまうということは、全く事志と違うわけでございますので、両面から慎重な配慮を行なっておるわけでございます。でありますから、日銀も、公定歩合の引き下げなどという問題に対しても、急激に合理化というもののテンポに合わないような状態で公定歩合の引き下げをしたりしてはたいへんだと考えておるのでございますし、また大蔵省も、方向だけは非常に強く明らかにいたしておりますが、大蔵省が一方的に低金利政策を進めないということを言っておりながら、低金利の方向に向かって合理化体制を確立していただくことに努力を要請しておるのも、そういう配慮からでございます。  でありますが、先ほど申されたとおり、確かにコール・レートが下がる、また下げるようにやっておるわけですから下がりますし、それから公社債を持たなければならぬし、日銀に対してもということでございますが、同時に、日銀からの信用取引で今度金も借りられるわけでございますし、また政府も資金運用部資金をもって公社債の買い入れを行なって随時資金を供給するということも考えておりますので、結局今までのように、安易な歩積み・両建をすれば一番簡単だし、また資金が逼迫をしておればコールは五銭にも六銭にもなるというような甘い考えでは、これはやっていけないし、またそういうものは異常な経営でありまして、金融機関の持つ公的制度から考えると、任務から考えると、当然合理化すべきものは合理化をし、しかも歩積み・両建というような慣習をオーバーするようなものは是正しながら、その上になお金融機関としての使命を達成していかなければならない機関でございます。また同時に、そういう機関のよき環境を作っていくために、大蔵省も、先ほど申し上げましたように、いろいろの制度や、それから日銀としての信用取引の制度等、あらゆる面に対してこれが側面的にも応援もするという態勢をあわせて行なっておるわけでございますから、金融機関の、ただみずからの合理化だけを強行に押し進めて、事志と違うて、中小企業その他の借り入れを必要とする皆さんが高利の、俗にいう市中金融に走らなければならないというような配慮をしながら、合理化を進めておるわけでございます。
  48. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 そこで、この際関連いたしまして、これは銀行局長にお伺いいたしたいのですけれども、今日いわゆる貸し金業者といわれるものが全国にどのくらいあるのか、その貸し金の総額はどのくらいになっておるのか、あるいはその金利の最高あるいは最低あるいは平均貸し出し金利はどのくらいかということがおわかりでしたら、その資料をちょうだいいたしたいと思うのですが。
  49. 大月高

    政府委員(大月高君) 若干前に、調べたものがございますが、今手元にございませんので、後ほどお届けいたします。
  50. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 貸し金業者の問題は、大蔵省は直接監督いたしておるわけではないのでございまして、届け出を受けるだけで、しかし事務は都道府県知事に委任しておるわけでございますが、しかし、法律には罰則規定もありますし、いろいろありますから、当然大蔵省としては、直接監督するという立場でないとしても、資料その他は十分お持ちになっていると思いますので、その実態を把握されておると私は考えておりますので、その資料をいつ出していただけますか。これは実は明日また質問を続けたいと思いますけれども、所得税法の改正に実は関連もございますので、この資料をひとつぜひ審議に間に合うようにお出し願えますかどうか、お尋ねしたい。
  51. 大月高

    政府委員(大月高君) 非常に正確な資料としてお出しできるかどうかわかりませんが、帰りますれば、手元にある限りに調整してお出しいしたいと思います。
  52. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 それではお聞きいたしますけれども、今日、明日、明後日ぐらいまでにできますか。所得税法の審議に関係ありますから、資料をいただかぬとちょっと審議しにくい。その点、どうですか。
  53. 大月高

    政府委員(大月高君) ただいま限りの資料で、あるいは非常に正確を欠いているかもしれませんけれども、これは推定も含めまして、何らかの形で調製してお出ししたいと思います。
  54. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 それから、あわせてこの際、都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫の預金の現状と貸し金の現況、そして余裕金と申しますか、現金、積立金と預け金と、あるいはその他に運用いたしているものとの勘定を、ひとつお知らせ願いたい。そしてそれぞれの性格の銀行の金利を、平均の金利をひとつ。それらから預金原価を、これは明日でもできましたらお願いをいたしたいと思います。よろしゅうございますか。
  55. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 ちょっと関連して。先ほど大蔵大臣、相互銀行についての日銀との信用制度の問題を新しく開始するというようなことで、合理化の問題についてちょっと触れましたけれども、相互銀行全般じゃないでしょうね。つまり、ある特殊な、まあ預金の高とか業績とかいったようなものだと思いますが、その日銀と信用関係を開始することのできる、つまりめどというか、引く線はどの辺ですか。あるいは具体的にわかったら、ひとつ銀行の名前を直接あげていただけば非常にわかりいい。
  56. 大月高

    政府委員(大月高君) 準備預金制度の適用の対象といたしますのは資金量二百億円以上のものに限りまして、それ以下のものについては適用いたしません。それから、二百億円以上のものにつきましても、一般の銀行に適用いたします率の半分ということにいたしておりますから、実際に日本銀行に預ける金額というものは非常に小さい。多分さしあたり数十億という数字だと思います。それから、日本銀行と準備預金取引じゃなしに預金取引を開きますのも、逐次銀行の、相互銀行、信用金庫の内容を見ながら日本銀行が計らっておりますので、今開いておりますので、数字はそう大きいものではございません。それから、貸し出しの契約につきましては、ごく少数にとどまっておりますが、これはいずれそれぞれの機関の次第に発達するに従いまして、日本銀行が一つ一つ見ながらやっていくと思います。そういう意味で、まだ時間的の目標、あるいはどのくらいの金額になれば取引がある、そういうものについては申し上げる段階でないと思います。
  57. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 四月一日から実施するということをきめているのですが、そうすると、今あなたのおっしゃった一応のめどはわかりましたけれども、四月一日から実施するという具体的な処置についていま少し聞きたい。これは相互銀行だけでなくて、信用金庫にも及ぶかどうかということを、はっきりとひとつ。
  58. 大月高

    政府委員(大月高君) 準備預金制度は四月一日から実施いたす予定でございまして、すでにその関係の政令は公布になっております。具体的な預金の利子等につきましては、日本銀行の告示で一日からやると、こういうことでございます。  それから、対象の金融機関につきましては、現在は銀行でございますが、四月一日から相互銀行及び信用金庫を含めまして、対象にいたす予定でございます。
  59. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 まだいろいろお尋ねいたしたいのですが、どうせ次の機会が明日か明後日かございますので、あとの三つの議案の審議の関係もございますので、私のきょうの質問は時間の関係でこれで終わりたいと思います。  いろいろ申し上げましたように、金融の正常化、低金利政策という、政府の、大蔵省の重要施策を、私たちは多少意見相違はありますけれども、正直に見守っているわけであります。したがって、大蔵大臣としては、この金融の正常化、低金利政策を行ないつつ、金融機関を守り育てていくという立場においては、きぜんたる決意をもって実はやるのだということであるのかどうか、そのお覚悟を伺っておきたいと思います。
  60. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ただいまの御発言のとおりの基本姿勢で、万遺憾なきを期して参りたいと思います。
  61. 佐野廣

    委員長佐野廣君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  62. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 速記を始めて。     —————————————
  63. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 次に、東京港湾区域における土地造成事業等のため発行される外貨地方債証券に関する特別措置法案日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案日本開発銀行法の一部を改正する法律案、以上いずれも衆議院送付の三葉を一括議題とし、質疑に入ります。   —————————————
  64. 佐野廣

    委員長佐野廣君) この際、参考人の出席につきましてお諮りいたします。  日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案及び日本開発銀行法の一部を改正する法律案の審査のため、日本輸出入銀行及び日本開発銀行の役職員を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。  ただいま森永輸出入銀行総裁、山本同じく理事太田開発銀行総裁、大島同じく理事が出席されております。   —————————————
  66. 佐野廣

    委員長佐野廣君) それでは、三案につきまして御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  67. 柴谷要

    ○柴谷要君 東京港湾の土地造成事業並びに関連事業について、自治省から概略でけっこうですけれども、説明をいただきたいと思うのです。
  68. 立田清士

    説明員(立田清士君) 自治省の理財課長でございます。ただいま御質問がございました東京港整備につきましての外債関係事業について、概略を御説明いたしたいと思います。  東京港整備につきましては、御承知のとおりすでに従来からもやっておったわけでございますが、今回外債対象の事業として行ないますのは、土地造成を主体にいたしました事業費を申しますと、六百六十八億という土地造成事業がございます。その六百六十八億に対しまして、その財源といたしまして外債を起こすわけでございますが、その六百六十八億外債関係事業を事業費の面から見ますと、いわゆる漁業補償の関係がございますので、漁業補償関係ですでに三百三十億というものを別に予定いたしておりますので、事業費総体といたしましては九百九十八億、こういうことになります。それから、なお、ただいまの土地造成六百六十八億のほかに、港湾のいわゆる岩壁等の港湾整備事業と申しまするものは、このほかに四百七十五億、それから上屋とか荷役機械とか、そういうような関連の事業が九十七億ございます。造成されます面積でございますが、六百七十八万坪、こういう予定になっております。それで、なお、来年度予定されておりまする外債につきましては、ただいまの土地造成を主体にしました埋立事業という六百六十八億の事業費になっております。こういうことでございます。
  69. 柴谷要

    ○柴谷要君 東京湾の埋め立てに関して、土地造成ということが主たる目的で、しかもそれるやるために不足資金の外債を仰ごう、こういう計画だと承知をしておるわけでありますが、この土地造成事業並びに関連事業を完遂するために、所要額としては千二百四十億を必要とする、こういうことになっておる。千二百四十億の内容を見てくると、国の補助が百八億、内国債が二百七億、外貨債が三百六十億、都の会計が五百六十三億出す。こういうことになっておる。都の会計の五百六十三億のうちに漁業補償の三百三十億は含まれておるのか含まれたおらないのか、それから都の会計の五百六十三億というのは、一体どういう費目あるいは運営で出しておるものか、これらについて説明をいただきたい。
  70. 立田清士

    説明員(立田清士君) ただいまの千二百四十億という数字でございますが、先ほど申し上げました土地造成関係中心といたしました埋め立て事業で六百六十八億、それから港湾整備の関係で、岸壁等の港湾整備事業でございますが、それで四百七十五億、それから上屋、荷役機械の系統の事業で九十七億、これで千二百四十億、こういうことになろうかと思います。したがいまして、先ほどの漁業補償関係の三百三十億というのは別にある。こういうことになろうかと思います。
  71. 柴谷要

    ○柴谷要君 一体こういうことを審議する際に、これはまあ自治省に特に注文をつけておきたいと思う。われわれ大蔵委員会にこのような法律案が出されて、審議をするにあたって、しかも、その法案の土地造成なり港湾関係の事業をやる、こういうような大きな仕事をやるときに、自治省が責任をもって指揮監督していると思うのです。この法律が通らなければ三百六十億という金が入ってこないのです。それをこの大蔵委員会に審議をしてもらうというのに、何ら自治省として都の土地造成の問題についてこのような計画でございます、あるいは港湾の建設にあたってはこういう計画でございます、こういうくらいのものは委員会が要求をしなくても最小限度の参考資料は当然出すべきだと思う。そういうものが一向に出ておらぬけれども、政府提案の提案説明だけで事足りると思っているかどうか。自治省の見解を承りたい。
  72. 立田清士

    説明員(立田清士君) 御指摘の点ごもっともでございまして、別に提案理由だけで足りるというふうには考えておらないわけでございます。したがいまして、いろいろ御審議を通じて、御審議の際にいろいろ御説明申し上げて、というつもりでおったのでありまして、資料がないという御指摘に対しては、全く申しわけないと思っております。
  73. 柴谷要

    ○柴谷要君 あえてこういうことを言わざるを得ないということは、私は、委員が特に必要だからほしいという資料要求の前に、基礎資料的なものは当然出してしかるべきだと思う。あなたのほうは関係が地方行政委員会ですから、地方行政委員会で常時こういう形でやっておられるとするならば、これは間違いだと思う。ところが、地方行政委員会には克明な資料を提出しているのを見ているのですよ。ですから、その方面についてはあなた方を責めようとしていない。ところが、異なった委員会であれば、提案しっ放しでいいのだ、こういうふうにわれわれはとらざるを得ないから、かく申し上げた。これからもあることでありますから、あなたを責めるのはちょっと筋違いであるかと思いますけれども、ひとつ十分に御注意を願いたい。  それで、お尋ねをいたしまけすけれども、長い間問題なっておりました三百三十億の漁業補償の問題について、一体どういう基準で補償されておるか、ひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。たとえば、あの土地で長らく営業をやっておったのが埋め立てのためにノリ採取者あたりは仕事がなくなる、こういう方々に対して補償をされたと思うのです。ですから、一体基準をどういう基準でこの三百三十億という金を捻出したか、一戸あたり何円平均で行なっておるのか、まずその基準をひとつ明らかにしてもらいたい。
  74. 立田清士

    説明員(立田清士君) 漁業補償三百三十億の補償でございますが、漁業補償につきましては、実は基本的な考えといたしましては、各漁獲量を一番基準といたしまして、戸数といたしましては三千六百戸になっております。そういたしまして、考え方としては、埋め立てによりまして生活の基盤に関連するわけでございますので、そういう関係生活補償ということを非常に重点に置きながら、ただいま申しましたとおり、計数といたしましては、漁獲量というものを一応の基準にしておる、こういうことでございます。  なお、三百三十億につきましては、そのうち二百五十億を、都が発行いたします公債を交付することによりまして、交付公債で処理をする、残り八十億というものは現金で支払う、こういうような資金の措置になっております。
  75. 柴谷要

    ○柴谷要君 そうしますと、漁獲量だけを算出をして、三千六百戸に支給をしたい、いわゆる補償をした、こういうことだけでございますか。
  76. 立田清士

    説明員(立田清士君) 私の申し上げ方が悪かったと思いますが、別に漁獲量だけでなく、漁獲量を基準としながら、そのほか各種の要素をも勘案いたしましてきめておる、こういうことでことでございます。
  77. 柴谷要

    ○柴谷要君 大体、漁獲量を基準にして考えるのは当然だと思いますが、その他のいろいろの条件という、いろいろというのは、どういうことでございますか。おもなるものをひとつ御説明願いたい。
  78. 立田清士

    説明員(立田清士君) その他の条件と申しますのは、たとえば各種の漁業を専業にしておられる方のいろいろな生活関係の問題もございますし、それから今までの補償の例等もございますし、そういう要素を勘案して、具体的にはそういうものを基準としながら各交渉をそれぞれ持たれておりますので、その結果こういうような数字になったのでございます。基準といたしましては、先ほど申しましたとおり、それだけではございませんが、漁獲量を一応の基準に根本的にはしておる、こういうことでございます。
  79. 柴谷要

    ○柴谷要君 ただいまの御答弁ぐらいしかできないと私は思う。ただ、これから国家的な仕事としていろいろなことをやる場合に、補償というものが多く出てくると思う。これをしゃくし定木に割り切って、何々はどういう基準になっているから幾らという基準だけで問題が解決するとは思いません。ですから、この補償問題については、皆さん御苦労なさっていることも承知しているのですが、ただ、補償を受ける人と補償する側との間に入って、そうして両面に顔を立てようとして、金額をつり上げてみたり切り下げをしてみたり、いろいろやる。ここに私はすべての補償に対する公正な補償ができない。最後には手を打つということは、つじつまの合わない金額でもって手を打つ、こういう形ですから、正しい基準のもとに補償ができるとは思いません。しかし、これらは大いに検討する必要があると思います。  ともかく三百三十億という補償は、大とは言いませんけれども、かなりの高額なものだと思う。これは私個人の見解ですけれども、多いと思う。こういう面が今後東京都周辺に起きる可能性の所があるかないか。たとえば東京都で事業をやろうとする際に、こういう補償問題が起きるような可能性の所があるかないか、これをひとつ、おわかりの程度でけっこうですけれども、ひとつお聞きしておきたいと思う。
  80. 立田清士

    説明員(立田清士君) 私らのほうも、将来のことでございますので、的確には申しかねると思いますが、少なくとも東京港については、現在のこの補償で一応終わりではないか、そういうふうに思います。なお、東京近辺においては若干そういう問題があろうかと思いますけれども、金額的にこのように大きな額のものについては、おそらく東京については今回だけではなかろうかと、そういうふうに考えます。
  81. 柴谷要

    ○柴谷要君 この土地造成の事業は、三十八年から始まって大体四十一年に終わる、こういう計画のようでございますが、そのとおりでございますか。
  82. 立田清士

    説明員(立田清士君) この土地造成事業でございますが、先ほど申しました六百六十八億の事業費を見ますと、今回外債の対象として東京都が計画をしておられますのは、三十八年度から四十一年度と、こういうことになっておりますが、ただ、東京都の計画の六百六十八億という額は、三十六年から四十五年までを一応考えておられる計画の数字になっております。したがいまして、そのうち三十八年から四十一年が一応外債としてやっていきたいという東京都が計画をされておる数字であります。
  83. 柴谷要

    ○柴谷要君 大体外債で三十八年から四十一年にやろう、こういう御計画のようでありますが、その土地造成で完成をする面積はどのくらいになるわけでございますか。
  84. 立田清士

    説明員(立田清士君) 六百六十八億の土地造成でできます面積は、六百七十八万坪でございます。
  85. 柴谷要

    ○柴谷要君 それは三十六年から四十五年の間にできる面積ではございませんか。
  86. 立田清士

    説明員(立田清士君) そのとおりでございます。
  87. 柴谷要

    ○柴谷要君 私の聞いておりますのは、四十一年までに大体どの程度までいくか、何%ぐらいできるか、こういうことをお尋ねしているのですが。
  88. 立田清士

    説明員(立田清士君) 今御指摘の点でございますが、四十一年度までに考えておりますのは、ただいまの六百七十八万坪のうち約四百万坪、パーセンテージにしますと約六〇%になろうかと思います。
  89. 柴谷要

    ○柴谷要君 大体四百万坪の土地造成ができる。これを四十五年までほうっておくとは思いませんけれども、この四百万坪の土地造成ができたものを、どのように使用しようとお考えになっておりますか、その使用計画をひとつ教えていただきたいと思います。
  90. 立田清士

    説明員(立田清士君) 機能別に見ますと、東京港の整備につきましては、すでに御承知かと思いますが、港湾関係の用地、それからいわゆる都市の再開発の関係の用地、それから交通機能の関係の用地、こういうように分かれようかと思います。それで、そのうち約造成されたものの五九%程度を売却をいたしまして、残りは先ほど申しました各種の公共用地がございますので、そういうものに考える、こういうことになると思います。
  91. 柴谷要

    ○柴谷要君 土地を作って四百万坪できますというと、これを売って、そうして大体五九%売って、あとの四〇%を都のほうで使おう、こういう計画でございますね。
  92. 立田清士

    説明員(立田清士君) そういうことでございます。したがいまして、売りません部分につきましては、御承知のとおり、土地造成でございますが、中に道路もできますし、それから公園もできますし、それから埠頭関係の、港湾関係の、港湾機能関係の業種もできますので、そういうものはそのまま造成後都が持っていく、こういうことになろうかと思います。
  93. 柴谷要

    ○柴谷要君 五九%売るのですから、これは買った人が自由に何か作るというのでしょう。残った四一%が都の計画のものに乗る、こういうことになるのじゃありませんか。五九%というのは売るというのですから、これは売る人を限定することになろうとは思いますけれども、勝手に売れば勝手にその人が使っていいと思う。そうすると、六〇%近いものが何ができるかわからぬ、四〇%の範囲が都の計画のベースに乗る、そういうふうになると思うのですが、この点いかがでございますか。
  94. 立田清士

    説明員(立田清士君) これは都のほうとされましては、こういう造成されました土地についての一つの利用計画を持っておられまして、ただいま御指摘のように、これを売却いたします場合においても、やはり東京港の整備という観点から必要な向きに売却をしていく、こういうような考え方を持っておられます。
  95. 柴谷要

    ○柴谷要君 そうすると、都の計画に乗らない人には売らない、こういうことになるわけでございますか。それとあわせて、五九%売るというのなら、一体何ぼで売るのか、その点までつけ加えてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  96. 立田清士

    説明員(立田清士君) ただいままで都のほうで考えておられますのは、港湾——具体的にどういう方にどうかという点は別といたしまして、たとえば、売却いたします場合に、東京港の整備の観点から、東京港整備自体が一つの首都圏整備の一環としてなされておるということでございますので、そういう点から、たとえば売却いたします場合に、その場合の利用計画というものに基づいて売却をしていきたい、こういう考え方を持っております。  なお、造成されます面積は、これは説明の都合上、たいへん恐縮でございますが、先ほどの六百六十八億という数字を前提にして申し上げますと、造成が三十八年から四十一年までの間は四百万坪でありますが、なお四十五年度までに二百七十万坪造成されますので、全体六百七十八万坪で見ますと、単価といたしましては、売却する場合に二つございまして、都自身が公営住宅とかあるいは各種の用地に使われるといったような場合に、特に主として公営住宅等でございますが、住宅用地あるいは市場用地、そういったような各種の用地に、この事業自身が東京都の港湾の特別会計でやっておられますので、他の会計に対する売却を、——売却といってはちょっと語弊がございますが、会計間の売買関係といいますか、そういう観点で考えていきました場合に、都自身に都の他の会計に売却します分は六千六十円、これは坪当たり二万円でございます。これに平米当たりにしますと六千六十円。それから一般に売却します場合には、坪当たりでいきますと三万八千円、一平米当たりに直しますと一万一千五百十五円というふうに、東京都の計画は一応計画されております。
  97. 柴谷要

    ○柴谷要君 一般にまあ坪三万八千円で売るというところには、条件をつけて売る。たとえば都の計画に乗る仕事でなければこれを売らぬ、こういう方針が打ち立てられておるのでございますか。
  98. 立田清士

    説明員(立田清士君) 都の計画によりますれば、地域によりまして、一つの条件と申しましては非常にあれかもしれませんが、条件を設けておりまして、したがいまして、地域によりましては業種が特定される場合も予想されるわけでございます。
  99. 柴谷要

    ○柴谷要君 はっきり言ってもらわぬと困るのですが、私どものほうで調べた範囲では、この土地造成ができ上がりますというと、一般に売り渡すところのものは大体木材業者を対象にしております。それから、石油会社の施設等を作ってあげなければならぬ。まあ、とにかく東京湾にはないから、とにかく東京で使用する石油関係はこの土地造成によってここに作らしてやろう、こういう考え方がある。それからもう一つは、都市のガス事業に対して提供してやろうじゃないか、こういう話もある。それから、あすこに火力発電を作ってやろうじゃないか、こういう計画がある。こう聞いておる。これは単なるうわさでございますか。それとも、都としてそういうような計画をすでに樹立されて、ここには売却しよう、こういう態度を打ち出しておられるのかどうか、この際明確にしてもら  いたい。
  100. 立田清士

    説明員(立田清士君) 運輸省からお答え申し上げます。
  101. 比田正

    政府委員比田正君) ただいまのお話でございますが、この東京港の計画は、十カ年計画といたしまして、三十六年から四十五年まで、先ほど自治省から御説明がありましたような計画を持っておりますけれども、この港湾の計画を作りますときには、港湾のいわゆる岸壁とか防波堤とか、そういう港湾プロパーのものだけではなくて、その中にできますところの土地の輪郭とか面積、形というふうなものも一応計画の対象にいたしまして、運輸省におきましては港湾審議会にかけましてこの計画を承認したものでございます。  その計画によりますと、ただいま御指摘がありましたとおりでございまして、御承知のように、この首都圏の整備方針から、東京の港内には今後重化学工業のような大工場は建てないことになっておりますので、このできます土地の大部分は東京都の、都市再開発という言葉を用いておりますけれども、あるいは上下水道、臨港線の用地、臨港鉄道の用地というようなものに重点を置きまして、売却いたします土地につきましては、都市に密接な関係のありますところの事業でありまして、どうしてもこの埋立地になくてはならない、よそに持っていくよりもこの土地にきめたほうがいいというものをあらかじめ、これは大ざっぱでございますが、あらかじめ概略的に区域をきめまして、この用地は将来東京都民のためのガスの供給のためにガス工場を作る、ここは火力発電がもう一カ所ないと困るのでここに作るとか、あるいはこの部分は港湾の中の臨港鉄道の操車場になる、あるいは港湾にどうしてもなくてはならない港湾倉庫の区域はここである、木材の用地もまた非常に重要でございますから、これも考えてございます。それから、石油タンクにつきましては、石油精製はここでやるのは適当でございませんけれども、都内の需要に供給いたしますところの石油の貯留のためのタンクは一番危険のない、端のほうにでも持っていってはどうかということを考えまして、この埋立地に沿いまして公共用地を一面に置きまして、その公共用地の前面には、船の着きます岸壁を作る、こういう計画になっております。大ざっぱに申しますと、先ほど来御説明申し上げております土地造成面積六百七十八万坪のうち、三百二十三万坪というのは、ただいま申しましたガス、電力、鉄道用地、石油タンク、木材、倉庫というようなものに売却するという予定でそういう計画を提出いたしましたので、運輸省といたしましては、慎重に審議いたしました結果、その計画に対してただいま方針を認めておる次第でございます。
  102. 柴谷要

    ○柴谷要君 港湾局長、助け船に出たようだから、ちょっと詳しく聞きたいと思うのですけれども、審議会で議論をされて、この土地造成のでき上がったところへ招致をしようというのが、今私が申し上げたのを認めたから、多分それになると思うのだが、大体、東京湾の現状からいって、こういう火力発電とか大きな発電所等を作れば、これは重油をたくか石炭をたくかどっちかわかりませんけれども、今の政府の石炭対策らかいえばかなり石炭をひとつふやそうというのだから、火力発電は石炭をたかれると思うのだが、今日でさえ東京都の空気がよごれておる。スモッグが発生する。こういうようなことに対して、審議会がそういう面に対して検討を加えたかどうか、ひとつお答えを願いたい。
  103. 比田正

    政府委員比田正君) 火力発電でございますけれども、これはまだ、ただいますぐ着手することではございません。今後できるならば、この用地であるという計画でございますが、御指摘のように、これを重油にするのかあるいは石炭にするのかというのは、いろいろ燃料政策の問題もございまして、ただいままだ確定しておらないと存じておりますが、いずれにいたしましても、火力発電が一番この中では煙を出すものでございまして、その他煙を出すようなものは認めてございません。スモッグの問題はごく最近非常に顕著になりましたが、この計画がきまりましたのは昭和三十六年の審議会でございまして、これは毎年数回やっておりますので、事情の変化がございますればこれを変えることはやぶさかでございません。しかし、権威のある変更は法案の管理者であります東京都知事が変えまして報告をいたせばいいというような仕組みになっております。御心配の趣旨は十分、われわれ監督官庁といたしまして行政指導もいたしますし、注意もいたしたいと存じております。
  104. 柴谷要

    ○柴谷要君 今まで工場を作っても、行政指導は十分やります、監督はやりますと言いながら、東京はこんなに空気が汚染をしちゃった。ですから、発足の前に十分な用意と対策がなければいけない。ですから、審議会でそのような審議をしたかどうかということを聞いたんですけれども、しておらないというあなたの今の答弁では、事実やっていない。それで、さて都民が空気がよごれて困る、何のかんのと言うと、初めて対策を立てるということでは、これはどろなわ式じゃないかと思うのです。こういう機会に審議会が十分こういう面に検討を加えてもらいたいと思うのです。  港湾ができて、東京港には大体何万トンくらいの船が着く埠頭が幾つできるのですか、それを説明していただきたい。
  105. 比田正

    政府委員比田正君) その前に、東京都の荷物がふえる点をひとつお話ししておきたいと思います。三十六年では、東京港に出入いたしました荷物は、統計によりますと二千五百三十六万トンでございます。これは実績でございます。これが昭和四十年には三千四百万トンという推定をいたしておりまして、大体この線に沿いまして、ただいまは荷物がふえていると記憶しております。さらに四十五年の、この計画を立てましたときから十年後には、四千九百六十万トン、約五千万トンまで東京の荷物が伸びるということを推定いたしまして立った計画でございます。  これによりますと、公共事業費で作りますところの大型船の埠頭は三十七隻分でございます。これは水深にいたしまして八メートル以上のもの、それから、そのそとに防波堤が五千八百八十メートルできまして、湾内を安全にしよう。また船が入って参ります航路等は十メートルにいたしまして、一万トンの船が十分出入できるようにいたしたいと考えております。なお、十メートル以上の水深が必要なのは、特別な原料、たとえば鉄鉱石とか原油とかを持って参ります船は、これより大きい水深が要るわけでございますが、普通の雑貨を積みました船は、当分の間は十メートルで、積みトン一万トンというのが基準でございます。
  106. 柴谷要

    ○柴谷要君 三十七隻岸壁に着けられるという規模ですから、かなり大きなものになると思うのですが、それにしては一万トンとは少し考えが小さ過ぎると思うのですが、これからタンカーなどにおいてもかなり大型のものができるし、世界一のタンカーが日本にあるくらいですから、一万トンなんて、ほかの港でも二万、三万という船が横づけになるでしょう。これはしかも東京にできる港で、千二百四十億も金をかけて土地の造成並びに港湾の整備をするというのに、一万トンとはちょっと小さ過ぎますね。それはどういうことですか。
  107. 比田正

    政府委員比田正君) 先ほど御説明申しましたとおり、東京湾の埋立地の中には、るる御説明いたしましたが、生産工場的なものはできません。したがいまして、ただいま申し上げましたように、十メートル以上の水深を要しますのは、現在の船型では鉄鉱石を持ってくる船、これは製鉄業のところだけに必要でございます。それからタンカーは、原油を持って参りますのが大部分でございまして、これはただいまでは十四メートルから十五メートルというような大きな水深を要しますけれども、これは東京港の中には入らない。東京港に参ります先ほどの石油タンカーは、その他の地区で、たとえば京浜−川崎、横浜、その他千葉というような、東京湾にすでにできました製油所でできましたものを持って参りまして、一時仮置きする。これを陸上で持っていきますと、国道をタンカーで持っていきますと非常に危険でございますので、海から運んで海岸の近くに貯蔵する、こういうような形になりますのでこのほうは大きな船は要らないわけでございます。国の計画から参りますと、東京湾のほうは、東京都を中心にした貨物に重点を置きまして、工場地帯は千葉、川崎あるいは横浜の  一部というようなものに定めた。また、外国貿易は主として横浜のほうに持ってきまして、東京のほうに持って参る。いろいろ検討いたしました結果、ただいま御説明申し上げましたように、水深十メートルあれば当分の間は十分である。あるいはもちろん、これも船型が将来においてさらに大きくなるということがございますれば、この計画は変更もできますし、船の着きます岸壁も前を掘ればある程度の深さは増すことができます。さらにまた、前に数メートル突き出せば、さらに大型の船も着くことができる。いろいろ将来拡張の余地を設計面に残しまして、レイアウト——配置を考えておるわけでございます。御指摘のように、将来そういうような事態が参りますれば、それに適用してわずかな金でこれの設備を強化拡大することはできるような仕組にしてございます。
  108. 柴谷要

    ○柴谷要君 どうも、仕事の中心をなしておるのは東京都なんです。東京都のやっている仕事は、すでにお住まいになっているからよくおわかりだと思うのですが、道路計画にしても、住宅計画にしても、ほんとうに目先のことしかやっておらない。ですから、今の交通のこの混乱の事情、住宅の困窮の度合い、こういうものは長期の展望の上に立ってやらぬからこういうことになってしまったのです。今般東京港がこのような膨大な金をかけるときですから、もっと先のことを見通して、あなたは専門家だからおまかせしますよ、われわれはとやかく言いませんが、もう少し先のことまでお考えになったらどうか。これは一万トン級しか入らない港にしておくのは、何かほかに目的があるのか。たとえばアメリカの原子力潜水艦がどんどん入ってきては困るから、一万トンくらいしか着けられないと、これならわかるのですけれども、そうじゃないでしょう。今の輸送状態はどうですか。東北方面を見てもわかるように、北海道などは滞貨がすごいじゃないですか。政府経済成長をはかっているから、これはますます品物が、北海道あたりは滞貨が山なすごとくで問題が起こる。それを船でもって東京に持ってくるということを考えなければならない。そういうときに、東京港をもっと活用できるように、こういう金をかけるときにやられたらどうかと私どもは思う。ただ、すぐあなたが、大きな船を入れるときには先を掘ればいいと言うけれども、これは第二次、第三次工事になるのです。そうするというと、第一期の工事の際に長期の計画を立ててちゃんとやればいいのではないかと思うがゆえに、専門家のあなたのような方にこういうことを申し上げるのです。  そこで、話はまたもとに戻しますけれども、一体一般に売ります値段の一万一千五百十五円という単価は、高いのですか安いのですか。それとも、かかった経費に対してこれを按分してやるというと、ちょうど一平米一万一千五百十五円、こういう単価になるというので、こういう単価をきめられたのか。これ以上もっとつり上げて、買い手があれば高く売るのだ、こういう考え方でいますか。それとも、あんな埋立地はなかなか買われないというと、これよりも安く売るという見解をお持ちか。幅があるのかないのか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  109. 立田清士

    説明員(立田清士君) 先ほど申し上げました平米当たり一万一千五百十五円という数字は、現在東京都が計画として持っておられる数字でございます。したがいまして、実際にこの事業が進捗していきますについて、いろいろその進捗状況によりまして、その最終売却される場合の単価というものは、それはまた別になろうかと思いますけれども、その点を一応別にいたしまして、今の一万一千五百十五円という平米当たりの単価、つまり坪にいたしまして三万八千円でございますが、これはこの土地造成に関連した各種の経費というものを見込みまして、その結果割り出された数字でございます。したがいまして、この坪三万八千円という数字が一応現在における東京都のこの計画における一つの単価になっておりますが、最近東京都のほうで、この外債関係の事業ではございませんが、造成してすでに売っておりますもので、坪当たり平均三万八千円程度で売られた例はございます。場所は有明町周辺だと思いますが、そういうことでそういう事例はございます。したがいまして、現在の時点において坪当たり三万八千円、もちろんこれにはいろいろな条件があろうかと思いますが、三万八千円でいいかどうかという条件がいろいろあろうかと思いますが、すでに、当坪たり平均三万八千円程度、これは平米に直しますと一万一千五百十五円でございますが、売られているという事例がございます。
  110. 柴谷要

    ○柴谷要君 それは東京都が坪で三万八千円にきめたということがいいとか悪いとかということではないのですよ。現在の情勢の中では高からず低からずということで、ちょうどいいと思うのです。しかし、買い手になった場合に、買い手が競って来た場合には、三万八千円より高く売るか売らないのか、それから買い手が少なくて土地造成の手前から売らなければならないという場合には、三万八千円を下回っても売るかどうか、幅を持った価格であるかどうか。これが固定した価格かどうか、上下に幅があるのかないのか、この二通り。これをひとつお尋ねしておきたいと思うのです。
  111. 立田清士

    説明員(立田清士君) 御質問の点、なかなかむずかしい点でございまして、私の口からちょっと申し上げかねる問題ではございますが、少なくとも現在計画されております条件のもとにおいて、こういう単価になっておるわけでございますが、実際にこれを造成されまして、売るときには、そのいろいろ売る場所の問題も地域もございましょう。いろいろそういう各種の条件によって価格はきまってくるものかとも思います。しかし、都のほうで売却される場合には、やはりそれぞれその評価は、その売却についてのいろいろ審議を経ておやりになるべきだと思いますが、現在やっておられますのは、一応基本的には所要経費というものをこの売却単価に織り込んで売却をしていく、こういう考え方をとっておられるわけでございます。したがいまして、現在の時点において、この計画においてこういうことでございますので、まあ実際に売られる場合も、今先生の御指摘のとおり、三万八千円そのままであるかどうかという点については、その売られる時点の問題もあろうかと思いますが、まあ基本的にはこの数字が一応の——一応というのはちょっとあれでございますが、三万八千円というものが一つの基準になるのではなかろうか、そういうふうに考えております。
  112. 柴谷要

    ○柴谷要君 自治省にこういうことをお尋ねしましたのは、案は私つい最近耳にした話なんですが、土地造成で売却が始まったら、基準価格を、三万八千円をできるだけ安い単価で買わせるように努力しよう、こういうことで実は呼びかけた人があるのを聞いておるのです。これは東京都の都議会議員の中にそういう連中がかなりいるのです、何を目的にやっておるか知りませんけれども。ですから、これこそ、ほんとうにあなたが国会で明確に答えておいてもらわなければ困ると思うから、私は質問したのです。三万八千円は既定どおりだ、この単価でいたします、こう答えていただけば、それでそのうろちょろしているのがおさまると思うのです。そういうことを私は自治省に望みたい。  一体、単価がどういう計算で割り出されたかどうかというようなことについては、時間もありませんから省略をいたしますけれども、この外債を発行するにあたっては、われわれとしても東京都を現状から考えて土地造成大いにやるべし、しかしやるについては今申し上げたように、現在置かれている東京都の実情というものを考えられて、十分ひとつ活用してもらいたいと同時に、港湾整備等については、あとですぐ追っかけて予算を組んで直すような形のものを作らないでもらいたい、これを強く要望しておきたいと思います。東京港湾区域土地造成事業等のために発行する外債の問題については、  一応質問を終わりたいと思います。
  113. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ただいま同僚議員からお話がありましたように、これだけの重要法案を審議する際にあたりまして何らの資料が提出されていないということは、非常に遺憾であることは私も同感であります。したがいまして、今後このようなことのないように十分に配慮していただきたい。最初にそのことを申し上げておきたいと思います。  今の同僚議員の話に関連するのですが、坪当たり三万八千円という価格は、これは民間に対する譲渡価格であるか。しからば、先ほどの説明によれば、東京都のほうは四一%大体確保して、都のほうで使用する、こういうお話でありました。したがいまして、都の場合にはどういう価格になるのか、また三万八千円で買った民間人、民間会社は転売することを許されているかどうか、そうした問題点について伺っておきたいと思います。
  114. 立田清士

    説明員(立田清士君) 第一点でございますが、先ほど来お話がございました坪当たり三万八千円で売るもののほかに、東京都自身が、これは先ほど申しましたとおり、この事業が東京都の港湾整備の特別会計で行ないます事業でございますので、他の会計に売るといってはちょっと語弊があるかと思いますが、そういう単価がもう一つございます。これが坪当たり二万円でございまして、平米当たりで六千六十円ということを東京都の計画としては予定されております。  その単価の算出でございますが、先ほどの外債関係事業といたしまして、埋め立てで六百六十八億かかるわけでございますが、そのほかに漁業補償で三百三十億でございます。そうすると、九百九十八億の事業費になります。それから、この土地造成の関連で起債をいたすことにいたしておりますので、その関係で利子等の経費が三百十三億かかるということで、全体の所要経費としては千三百十一億かかろうと思います。それと坪当たりに直して参りますと、二万円ということになるわけでございますが、その分については都自身が、先ほど申しましたとおり、二万円で平米当たり六千六十円でございますが、これは住宅用地であるとか、あるいは市場用地であるとか、上下水道用地であるとか、そういうように会計間の売買をいたしますので、そのままの単価で参ります。民間に売ります分につきましては、都に売ります分の残りの、民間に売る予定の面積で割りましたものに、この売却に要する経費がありますので、東京都の計画としては、そういう経費を見込みまして坪当たり三万八千円になる。これが平米当たり一万一千五百十五円、こういうことになるのであります。  それから、第二点でございますが、民間に売られましたものがさらに転売することができるであろうか、こういう点かと思いますが、この点につきましては、東京都の考え方とされましては、先ほど来いろいろお話がございましたとおり、この港湾によってできました土地の利用計画がございますので、その利用計画に基づいて、売却をいたしたものを買い受けたほうがさらに転売されるという場合には、やはり御相談をいただくというようなことを考えているようでございます。したがいまして、あくまでも基本的には、利用計画に沿った利用がされるということを期待をしている、こういうことになるわけでございます。
  115. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今の転売の問題ですが、あくまで可能性のあるそうした考え方として申し上げたわけでありまして、今のお答えでございますと、相談によって何とかきめるという話では、必ずそこに盲点が出てくるのじゃないかと思うんです。そこに何かしら、いまわしいにおいが立ち込める危険性も考えられる。もっと厳重にそういう点の規制をはかる方法はないか、この点について答えていただきたいと思います。
  116. 立田清士

    説明員(立田清士君) 私の御説明のし方がまずかったのかと思いますが、売却します場合には、東京都の現在考えられておりますのは、十年間なら十年間の一定期間転売しないということと、そういう全体の利用計画に従ってこれを行なうのだという条件を前提にして売却を考えている、こういう計画を持っております。
  117. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次は、おそらく相当これからも工事が進んでいくだろうと思いますが、あらかじめきめられた売却先はございますか。
  118. 立田清士

    説明員(立田清士君) 私たちが承知しております限りでは、現在のところ、あらかじめ予定されているというところはないようでございます。
  119. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今後売却の問題が当然起こってくると思います。その方法はどんな方法によって売却がなされますか。
  120. 立田清士

    説明員(立田清士君) 現在の東京都の計画しておられますのは、あらかじめ用途を指定いたしまして、入札の方法をとる、こういうやり方になっております。
  121. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 その入札の方法でございますが、どんな入札の方法で臨まれるんですか。
  122. 立田清士

    説明員(立田清士君) 一般競争入札でやるという建前東京都では考えておられるようでございます。
  123. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 それは一般入札というけれどもわれわれの手元にある資料によると、今までの実績からいうと、ほとんど一般入札というのはないですね。随意契約が九つで、指名入札が四つになっていて、一般入札というのはほとんどない。あなた、そんなこと言うならば、ここで言って、あとでそんなことはできないということになると困るから、しっかり答えたほうがいいと思います。
  124. 立田清士

    説明員(立田清士君) 今御指摘の点について私も十分承知していないのでございますが、ただ、東京都が現在考えられておりますのは、これで造成されたものにつきましては、全体の土地の利用計画もございますので、用途を指定いたしまして、現在東京都が行なっておられます方式で売却をしていきたいということを計画としてお持ちのようでございます。
  125. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 どうもその点不明確でありまして、国民に対する疑惑を抱かせるに十分な問題ではないかと思いますが、それはそれまでといたしまして、最後に一点伺いたいことは、過日大阪に参りましたときに、堺港の土地造成の実態をフィルムで見たわけであります。今回の東京港の土地造成の方法は、どんな方法が用いられて造成されるんですか。いろいろ造成の仕方によっては、金のかかる場合と、金のかからない場合、非常に能率的な場合、非能率的な場合、いろいろあろうかと思いますが、その点についてお答えが願いたいと思います。
  126. 比田正

    政府委員比田正君) 東京におきましては、幸いだだいま漁業権の補償が済みました水面がございまして、それが将来は船が停泊する場所、あるいは船が通ります航路に相当する場所でございますので、そのところの土を、ポンプ船と申しまして、浚渫船で吸い上げまして、それを陸上に囲いを作りまして、護岸を作りまして、その中に吹き込むという方法を今もとっておりますし、今後もとる予定でございます。  なお、堺港におきましては、工事を非常に急ぎましたということと、一部泥の質が悪いところがございましたので、その部分につきましては、上のほうの一メーターないし二メーターという薄い層だけを、山から土をトラックで運びまして上土を埋めた、こういうことをしたところもありますが、堺港も、場所によりましては、海の土をそのまま吸い上げて土地を作ることが可能のところが非常にたくさんな面積もございます。ただいまの現状はそういうことでございます。
  127. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 この問題について項目別に簡単にお聞きします。  柴谷委員が、土地造成の目的や、その造成された土地をどういうふうに使うかという問題について質問いたしましたから、これを省きます。この東京湾の造成事業で、すでに指定をされ、あるいはそういうふうな準備を進めている、つまり会社ですね、これを、造成を請け負わせる会社、そういうものについてはもうきまっておりますか。
  128. 比田正

    政府委員比田正君) ただいまの御質問は、工事をいたします会社というふうに解釈をいたしておりますが……。
  129. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 そうです。
  130. 比田正

    政府委員比田正君) これは私のほう、運輸省といたしましては、国といたしましては、直接に監督はいたしておりませんけれども、地方公共団体として、港湾の管理者というものがきまっておりまして、港湾管理者が全責任を持って工事の遂行をするという建前でございまして、東京都におきましては、普通の場合は特定のものを指名して競争入札するという制度をとっておると記憶いたしております。また従来、一つの場所を工事しておりまして、その相隣する、隣接する地域をやるような場合、あるいは陸のほうで一つの会社が工事を請け負っておりまして、それに伴った水面とか関係がございます場所につきましては、随意契約等もしておったこともあります。また、一般の工事の請け負わせ方といたしましては、そういう方法をとることが一般的にはございます、こういうふうに私は記憶いたしております。
  131. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 港湾局長は知らないようですけれども、あるいは知っておられると思いますけれども、実は四つすでにもう予想されている会社名がある。阪神築港と水野組、これは大阪ですが、若松築港、東亜興湾など、大体この四つの会社に工事を請け負わせて、もうすでに名前が出ておる。この四つの会社とも、この間西独マルクを使って埋め立て造成をやった堺ですね、堺の造成をやった会社であって、実はそのときに購入した三千並びに五千馬力の浚渫船が遊んでいるので、したがって、この会社にこの工事を請け負わせる、請け負わしてもらいたいという運動が猛烈に行なわれているといった事実については、承知していませんか。
  132. 比田正

    政府委員比田正君) 私どものところでは、特に大きな問題がありましたときには聞いておりますけれども、補助金を渡したり、あるいは起債を自治省あるいは大蔵省からお許し願いますと、全体の計画に基づいて基本方針が間違いなければ、国といたしましては、港湾建設の面では監督いたしますけれども、工事の実際の実施につきましては東京都にまかしております。したがいまして、そういうような中間的な情報については私は聞いておりません。
  133. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 この問題はこのくらいにして、次に、これもまた東京都だといわれるかもしれませんが、都の港湾局では、この土地造成をやるのにあたって、二百数十人の人員を要求したところが、実際にはわずか十九人しかふえなかった。このために、労働強化が非常に強くて日曜日でも休むことができない。これだけの工事をやることについて、港湾局が二百数十人というのも少ないと思いますけれども、実際にはわずか十九人しか人員を増員しないというのは、これは監督官庁としての立場で、実際こういうふうな状態で予期されたような工事が行なわれるかどうか、お考えになってもわかると思いますが、こういう事実があったときに、あなたのほうで何らかの形で指導体制を強めるということで、東京都に対して言うことができるかどうか、その辺のところをお聞きしたいのです。
  134. 比田正

    政府委員比田正君) ただいまの東京都の人員でございますが、これはおそらく二種類に分けられると思うのであります。一つは、デスク・ワークをやっております者、実際に設計とか金の勘定、経理をいたすとかいうような事務の職員と、もう一つは、実際の現場で働きますところの労務者、こういうふうに分かれると存じますが、労務者につきましては、請負の工事と直営でいたすものとあるはずでございますが、おそらく東京都につきましては、すべてが請負工事で施行されていると思いますので、これを監督いたします人員は工事がふえればふえるということになると思います。したがいまして、そのほうの人間は東京都内の問題として処理いたしてもらいたい。私どもとしてはそこまで都の自治に口ばしを差しはさまない方針で従来もおりますし、今後もそういうつもりでおります。  また、いろいろ設計をしたり、調査をしたり、事務をやります者というか、デスクの人間につきましては、事務職員はおそらく他のほうから、東京都内でも流用しょうと思えばできるのだと思いますけれども、港湾のような専門の技術者ということになりますと、東京都内では必ずしも得られない。もしも東京都から、何十人というのは困るのですが、数名とか若干名というものの要求がございまして、国のほうから応援してくれということがございましたらば、従来も二、三協力した実例もございますし、そういった特殊の技術者につきましては、要請があれば考慮いたしたい、かように考えております。
  135. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 次に、この造成と相待って東京港の管理運営の業務の主体は一体どこがやるのです。ちょっと関連で、それに関連しての質問をいたしますが、たとえば名古屋港などにおいては名港管理組合というふうなものがあります。それから、聞くところによると、東京ではこれを埋め立て公社というふうなものを作って、間接公営方式でいこうというふうなことを考えているそうでありますが、一体これはどこが管理運営の責任を持ってやるのか、あるいはこういうふうな間接管理方式をとらないのか、とるのか、こういう点についての考え方をひとつ示してもらいたい。
  136. 比田正

    政府委員比田正君) ただいまのお話は二つに分かれると思いますけれども、第一の港湾の管理者というものは港湾法という法律によって定めております。これによりますと、三つの形態がございます。一つは、地方公共団体が単独で港湾を管理する場合、これは東京の場合は東京都でございます。横浜の場合は横浜市長ということになっております。その次は、地方自治法によりまして、一部事務組合というものを設けまして管理組合を作る。二つ以上の公共団体が一緒になって港湾という一つのものを管理するという形式でございます。その一例がただいま御指摘のございました名古屋港管理組合でございます。もう一つは、港湾法によって定めるのでございまして、港務局という規定がございまして、これは単独でもよろしいし、あるいは二以上のものが集まりまして港務局を設置いたしまして、別ワクの団体を作りまして、これは公共団体的なものでございます。この港務局にやらす。  こういう三種類がございますけれども、いずれにいたしましても、港湾の管理は、この法律に定めました港務局、一部事務組合あるいは単独管理——地方公共団体の長でございますが、この三者にゆだねられておりまして、もしもただいまお話がありましたような公社等ができましても、おそらく公社というのは事業を実施するという段階でございまして、港湾を管理し、港湾というものそのものを管理いたしまして、これを運営の方針を立てていくというような管理の仕方につきましては、あくまでも東京都のほうは東京都でございます。たとえば港湾の計画を作るとか、予算の措置をいたしますとか、できたものを東京都の条例等、あるいは国の定める法律によりまして管理いたすというようなことは、すべて東京都の責任になると存じておりますが、ただ、その公社なるものにいかような権限を持たすかにつきましては、公社の話それ自体私どもまだ一つも聞いておりませんので、ただいまお答えできないわけでございます。
  137. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 自治省はどうですか。自治省のほうでは聞いておりませんか。
  138. 立田清士

    説明員(立田清士君) 私どものほうも、今の公社という話は全然承知いたしておりません。東京都が直接おやりになる、事業主体としておやりになる、そういうふうに聞いております。
  139. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 これは東京都の長期計画試案という昭和三十七年の七月に出た文書の中に、埋立地造成に関しては「間接公営方式を採用するものとする。」という項目があるのですよ。で、この間接公営方式というのは埋め立て公社を作ってやるということだと大体推定されるわけです。この埋め立て公社をまた新設するということについては、そういうような場合には東京都独断でやれるのか、それともやっぱり自治省の許可あるいは指揮の中に入るのか、その点をはっきりとひとつしておきた  いと思います。
  140. 立田清士

    説明員(立田清士君) ただいま御指摘の公社の形態というものの内容は、全然私どものほうは承知いたしておりませんのでわかりませんが、従来普通に行なわれておりますのは、考えられますのは、民法法人による財団法人あるいは社団法人という形態のものが考えられるわけです。それで、その設立につきましては、民法による手続に一応御承知のとおりよるわけでございますが、これにつきましては、開発公社自体、いわゆる公社というものに対しての一般的な考え方としまして、直接地方団体がやり得るものについてまでこういう公社方式をとることの是非の問題、これはまあいろいろあろうと思いますが、現在は地方団体でいろいろ私ども自治省との関係では御相談等するわけでございますが、御相談がある場合もない場合も両方ございますが、直接規制をするというようなことにはなっておらないわけであります。しかし、問題は、そういう公社と地方団体の、その公社を設立される地方団体との関連問題がございますので、御承知のとおり、地方自治によりまして、そういうふうな公社について当該地方団体が相当程度の出資なりをいたしております場合においては、議会への財務諸表の提出、そういうことが法律で規定をされているのは御承知のとおりであります。そういうことで、直接私たちのほうといたしましては、公共団体自身がみずからやり得るもの、またやることが適当なものについてまで、公社を作るという点については消極的であるというふうな態度できておるわけであります。
  141. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 あと二つ。一つは、この埋立地ができても、これに要する上水道の計画が含まれていないということを聞きますが、事実ですか。
  142. 比田正

    政府委員比田正君) これには上下水道も配置することになっておりますが、下水道のほうは、この埋立地の区域内のものを主といたしますが、場合によっては中とつながるかもしれない。この点は詳しいことは承知いたしておりません。上水道については計画がございます。  上水道の計画を申し上げますと、東のほうの埋立地に対しては、金町水系から日量五万六千トン、大井埠頭、それから横浜寄りのほうの地区につきましては、東村山水系並びに多摩川水系から日量四万四千トン、合計いたしまして十万トンというものを、中へ住まいます人はもちろんのこと、製材所も、先ほどお話がありましたが、そういったような工場とか、すべての業種に使えるように計画に入っております。
  143. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 その計画は、私の手元では一日約十三万トンの水が必要になってきます。一体これだけの水を今東京都で取ろうという場合に、それでなくても水が不足している場合に、どうするのです。東京都は今水飢饉の状態で、一体この約一日十三万トン近い水をここに引く場合に、今の東京都の中であなたの言った金町水系や村山からどうしてこれだけの水を引くことができるか、それについてはどういう計画をお持ちになっていますか。
  144. 立田清士

    説明員(立田清士君) 御指摘の点ごもっともでございまして、東京都自身の水の、この港湾整備によってできます地域ばかりでなくて、全般的な問題がございます。そこで、現在東京都の計画におきましては、御承知のとおり、金町水系、あるいは利根川から水を東京都の水道として持ってくるという、各種の全体計画をもとにしてその整備を急いでいる、こういう状況でございます。したがいまして、今のこの地域に対するこの事業の中で、先ほど運輸省の港湾局長がお話しされましたとおり、上水道事業についても計画が組まれているわけでございますが、それに所要の水を、水量を持っていきますためには、やはりこの地域ばかりでなくて、東京都の水道自体の全体の計画から、この一環といたしまして、ここに給水できるような建設工事をしていくという必要があるわけでございます。
  145. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 そういうわけで、結局できても、土地はできた、建物は建っても、水はこないという状況になる危険性が非常に多いと思うのです、今の計画は。これは先ほど柴谷委員が言ったとおり、先を見通して埠頭を立てないと、またあすこが狭くなってしまうと同じように、私はこういうふうなその場だけの計画ではどうにもならないと思うのだ、東京都は。そういう点からいって、本計画一つのそういう点での科学性を欠いている、将来の見通しも欠き、科学性も欠いているずさんなものだと言わなければならぬと思うのです。  次に、最後の質問は、このような港湾の埋め立てに対する利用度をはかる比率というものが、まだ日本では割合よくできていないと思いますが、本船地区、運河地区、非臨水地区といったそれぞれの地区に分かれた利用度いかんというものは、こういうものにとっては非常に大事だと思うのです。今までの東京都の埋立地の利用度を見てみますと、明治末期の隅田川の第一期の工事から今日に至るまで、ずっと調べた数字が載っておりますが、それを見まして、内容だけ、簡単にその数字だけ見ますと、大体本船地区においては約八割、運河地区においては五割の利用状況であるが、非臨水地区の利用はわずかに二割五分にすぎない、二五%にしかすぎないということを言われております。ですから、こういうことを考えてみますと、先ほど言ったように、約六百万坪余に上るところの埋め立てが行なわれましても、本船地区や運河地区においてはともかく、非臨水地区におけるところの利用度というものはかなり内輪に見積もって、なかなか所期のようには進まないのではないかということが考えられるわけです。そして埋め立てたようなところは、たとえば豊州のようなところはほとんど大会社が独占しておるといってもいいような状況でやられておりますので、結局この埋め立て造成は、これだけの金を使って、都民のふところを痛めて、あるいは外債まで募集してやるにもかかわらず、ほとんど大部分は大企業優先の、大企業利益のための埋め立てに終わってしまうのではないかということをわれわれは懸念するのです。実績が現実においてはそういうふうになっておるので、こういう点において、この計画を実施するにあたっては、どこまでもやはり真に都民の利益という立場に立たなければならないが、先ほど言ったような水の問題、港湾の設備の問題、そういうようなことがなっていない点について、これは残念ながらわれわれとしてはこのような計画、このような方法については再検討を要するものがあるというふうに考えておるわけです。特に、この利用度をはかる実績については、十分ひとつ過去の数字を見て今後の計画を立てなければならないのじゃないかと考えるが、この点についてだけお答え願いたいと思うのです。
  146. 比田正

    政府委員比田正君) ただいまの利用度の点でございますが、ただいまおっしゃった数字があまりよくわからないのでございますけれども、私ども見ております限りにおきましては、相当フルに近い状態に使われておるのではないか。またあるいは事業によりまして、計画があっても一部おくれておって、あき地があるような所があるかもしれませんが、先ほど申しましたように、三十六年から考えまして五年先あるいは十年先を考えますと、相当な広さを持った土地がありませんと、たださえ今既成の東京の土地は混雑して困るのでございますから、先ほども申しましたように、都市の再開発という看板を東京都があげておりますので、この点はまことにごもっともだと思いまして、都の住民に直接利便をもたらすような方向でこの港の整備あるいは土地の造成をしていきたい。御指摘がありました点におきまして、このパーセンテージがよくわかりませんけれども、その他につきましては、われわれも大いに反省いたしまして、むだな金を使わないようにして十分効果のあるものをやっていきたいと考えております。
  147. 野々山一三

    野々山一三君 輸出入銀行法の一部改正の問題について伺いたいのでありますが、私は実は産投会計法の改正の際に、輸銀の問題についてだいぶ深く伺いましたので、きょうあまり時間をとらぬつもりでありますから、簡単に、簡明にお答えいただきたい。  一つは、この間お伺いをいたした際に、昭和三十七年における輸出入銀行の融資計画に対する貸し出し残というものがおおむねまあ一〇%くらいになるのではないかということを前提にして伺ったのでありますが、その後調べてみましたところによりますと、昨年の十二月末現在における貸し出し実績というものは七百四十六億円だと、つまり千二百五十億円に対する七百四十六億円でございますから、大ざっぱに見て去年の年末まで六割しか貸し出しをいたしていないということが現われたのでありますが、一体その後どういう変化をしておるのか、あるいはことしの暮れに来てずっとふえておるのか、もうあとわずかでありますから、正確な推定ができたら、この際伺いたいわけです。
  148. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 去る二月末の数字で申し上げますと、年度当初から二月末までの貸付計画が九百十七億ということに相なっております。三月における貸付額を見込みまして、ここに昨年度貸付見込みといたしましては千百億円を若干上回るという程度の貸付高に相なるのではないかという見込みでおります。   〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕
  149. 野々山一三

    野々山一三君 そこで、これはこういう数字でありますと、十二月末、一月、二月のところで非常にふえたということになるのでございますけれども、そこで、この間の話によりますと、相手国との関係における見込み違いというものが相当あるというのが主たる原因のようでありますけれども、しかし、業界筋の説によりますと、実は非常に審査がきびしくて、おくれて、長過ぎて、手続がめんどうでということで、実は貸し出し残というものが非常に多くなるということをまた他の理由としてあげておる。先ほど言ったように、相手国との関係とか借款の問題とかいうものに対する理由のほかに、そういうものをあげておるのでありますけれども、これは大ざっぱにいって、直接扱っておられる人に今申し上げたようなことを聞いてもなかなかお答えにくいことじゃないかと思いますが、大蔵省当局は一体、私が今指摘したような点についてどういうふうに考えておりますか。
  150. 大月高

    政府委員(大月高君) 本年度の輸出入銀行の貸し出しが予定に達しないであろうという問題につきましては、先般も御説明申し上げましたとおり、インドあるいはパキスタン関係の協力関係のおくれが主因でございまして、一般プラントあるいは船舶等につきましては相当の成約も出ており、かつその融資の約束もできておりまして、その面からの落ち込みはないわけでございます。そういたしますと、結局インド、パキスタン関係の審査自体が非常に繁雑である、いろいろなむずかしい条件をつけるために相手国との話がなかなかつかないからということでございますけれども、これはむしろ相手のほうで事務になれませんとか、あるいは開発計画自体がおくれておりますとかいうような、開発銀行と関係のないような部面におけるおくれが大部分であろうと見ております。われわれは、輸出入銀行は御存じのように、一般金融機関の補完機関でございますので、やはりコマーシャル・ベースに立って健全な融資ということを心がけておりますが、何分にも輸出入振興という使命を持っておりますので、こむずかしいことをいって輸出入の障害になってはいけないという考えを持っておりますので、私どもとしましては、一般の審査については特に非難を受けることはないと思っております。
  151. 野々山一三

    野々山一三君 審査つにいて特に一般の非難を受けることはないというふうに思っておるというお話でありますが、この種の仕事をやっておられる関係業界などの意見を全部一応聞いてみると、通常のもので十種類か以上の書類を出して、ほんとうにややこしい調査をされる。こういうのも国民の税金を種銭にしてそれを貸すのでありますから、   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕 健全に債権を保全するということも必要でありましょう。しかし、業界をあげて輸出はしたい、金は借りたい、手続はめんどうだ、そこでやや小規模なものになってくれば、それをめんどうだからというので、別に資金源を考える。市中銀行における要望を見てみましても、協調融資をやりたいと考えておっても、結局はそっちのほうが手間をとる。だから、市中銀行からという意見が非常に強いわけです。これは今ここで大蔵省当局のほうは、いや、それはそんなことはないとおっしゃれば、水かけ論になります。だから、私も時間もないことですから、ここで水かけ論をやろうとは思いませんけれども、この間も申し上げたように、二年に及んで一〇%くらいの見込み違い、貸し出し残である。しかも、非常に詰まった金を輸銀のほうに入れてやっておる仕事であるという性質から見まして、この際ひとつ思い切って実情を調べて、手続なんかについても検討すべきものはする、あるいはおくれている、ネックになっている問題があれば、それを打開するというようなことをやらなければ、結局輸出振興策としての資金を流し込むことの意味が消えてしまう。これは私は本質からいえば、気持からいえば、毎年一〇%以上も狂っておるようなところに、また金なんか入れる必要なんかないじゃないかという気持があるのでありますけれども、それはさておいて、そういう点について根本的なひとつ検討を加えてもらうというお約束がいただけますか。
  152. 大月高

    政府委員(大月高君) 輸出関係につきましては、輸出入銀行の関係のみならず、一般日本銀行で割り引きます輸出貿易の歩合、それの手続等につきまして、常々輸出最高会議等においても、いろいろ御批判のあるところでございます。毎年その会議におきましても、関係の金融機関も出席いたしまして、業界の率直な御意見を承りながら、逐次改善を進めておるわけでございます。あるいはそのときどきの状況におきまして、なかなか業界の御満足のいくようなところまでいっていないものがあると思います。われわれといたしましても、輸出入銀行の使命にかんがみまして、常々そういう点について関心を持っておるわけでございますけれども、お話のように、十分また輸出入銀行の実情等もよく研究いたしまして、改善をはかって参りたいと思っております。
  153. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 御質問の点でございますが、実は私も昨年暮れに就任いたしましたので、輸出入銀行のあり方等につきましては、率直に業界の御意見も承っております。また、しかし輸出手続が繁雑であるし、時間もかかるというお話をなさった方もございますが、もしそういうことで輸出の商機を失するようなことがございましては、これは申しわけないことでございますから、実情をつぶさに調査をいたしました。現在のところ、私が得た印象は、比較的能率的に運営されておると。もちろん、相手が業者を通じて外国の業者に輸出するわけでございますので、業者の信用状態であるとか、あるいは保証をいたしまする銀行のことであるとか、そういうことをいろいろ調べる関係から、国内の輸出手続のようには参りませんが、その辺も大体軌道に乗って参りまして、そんなに御迷惑をかけないようになっておる。もちろん、これは改善の余地がないわけじゃございません。鋭意改善をするように、目下検討を続けておるわけでございますが、ただいまのところはそういう印象でございます。今後ともなお、それらのことにつきましては部内を督促いたしまして、できるだけ迅速に、かつ簡素に事務が能率的に運ばれますよう、今後とも一そうの努力をいたすつもりでございます。
  154. 野々山一三

    野々山一三君 念のために伺いますけれども、大型のものであるとか、複合したプラントなんかの審査というものは、一体どのくらいの期間がかかっておるとあなたのほうは見ておられますか。
  155. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) ものによって違いますが、平均いたしますと、大体受付後一カ月以内に処理いたしております。
  156. 野々山一三

    野々山一三君 これはどうも食い違うのでございますけれども、私のところに来ておる、業界の名前で来ておるものによりますと、大型プラント及び数社の複合しておるプラントのようなものは三、四ヵ月かかっておる実例を持って私のところに来ておるのです。その点はどういうことになるかわかりませんが、一ぺん調べてもらいたいし、そういうものがあると私は見ておるのですが、間違いないですか。
  157. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) ただいま申し上げましたのは、受付後一ヵ月以内と申し上げましたのは、私どものところに最初に参りますのは、まだ相手国と商談が始まったような段階で来ることが多いのです。手続としては、その後商談がまとまり、政府の許可を受けて融資とこいうとになるわけでございますので初めに相談に来行されましたときから数えますと、それは大きな設備になりますと、なかなかそう簡単に参りませんので、時間がかかるかと思いますが、いよいよ融資の段階になりまして申し込みをされますれば、大体一カ月ぐらいで処置いたしておるのが実情でございます。
  158. 野々山一三

    野々山一三君 どうもあれですが、事前に話し合っておる段階から四カ月ぐらいかかるという場合があるだろうと言われるのですが、私の質問しておるのはそうではなくて、もう契約もできて、いろいろ準備をしてからでも四ヵ月かかっておる事例がたくさんあるのです。これは名前をあげるのは、こういうところですからどうかと思いますから、やめますけれども、事実こういうわけなので困っておる、こう言ってきておる。こういう点をひとつ一ぺん……。総裁は非常に熱心にやられておるようですが、上手の手から水が漏れておるのじゃないかと思うので、これはひとつ念のために申し上げておきますから、詳細に一ぺん調べていただきたい。  それから、次に、この前、実は産投のときに要求をしておいてまだ材料が出てこないものですから、何とも言えませんけれども、最近の計画に対する主要品目別の融資実績というものをあげてくれませんか、その狂いがどういう原因なのかということを述べてくれませんかと言っておきましたけれども、残念ながら手元に来ておりません。きょうは口頭でもけっこうでございますから、大筋のところを聞かしていただければけっこうです。  それから、ついでに申し上げておきますけれども、本年度輸出目標というものを五十二億ドルに立てておられる。この品目別融資計画というのですか、そういうものもお持ちでありましたら、あれしていただきたい。実際、今のところ、やや伸びておるということは一般的にはいわれておるのでありますけれども、非常に多くの点で問題があるように思われるのであります。品目別にもですね。まあ話題になっておる綿製品なんかもそうだし、あるいは船舶、車両、いずれもやはりなかなか大きな問題があることがすでに現われておるのでありまして、四十七、八億ドルのところから五十二億ドル、一割の輸出振興、輸出増ということが一体どの程度確実性があるのかということは、私どもドルそのものの収支関係から見ましても、経済全体の影響から見ましても、非常に、関心のあるところであります。したがって、そういう意味で、お立てになっておるものを、きょうは口頭でもけっこうでございますが、後ほど文書でいただきたいと思います。
  159. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 先ほど大体一カ月と申し上げましたが、これは平均で申し上げております。ですから、中には長いものもあるし、短いものもある。そこで、できるだけ早くそれが運ぶようにということで、なお努力をいたしております。  それから、初めの計画と見込みの品目別でございますが、輸出金融で申し上げますと、千百五十億が大体千三十億ぐらい。それを船舶と一般プラントに分けて申し上げますと、船舶のほうが四百六十五億、これは大体計画どおりに参ります。一般プラントのほうが六百八十四億でございましたのが、五百五、六十億に減るのではないだろうかと思っております。それから、輸入金融の面は、十五億が十四億ぐらいの、一億ぐらいの食い違いでございます。それから、投資金融の面では、八十五億が百五億から十億ぐらいまでのところぐらいじゃないだろうかというふうに今のところは見込んでおります。来年度は輸出金融が千二百四十億、そのうち船舶が五百十五億、それから一般機械が七百二十五億、輸入が二十億、投資が四十億、大体その程度に大ざっぱでございますが予測をいたしております。
  160. 野々山一三

    野々山一三君 八百十億を新しく資金として加えまして、ことしの計画が一千三百億ということになっておりますが、一体この輸出振興に重要な役割を果たしております日本輸出入銀行の資金の充実をはかることが緊要であるので、こういうのが提案理由の一番の泣きどころでございます。何べんももう繰り返したから、これ以上申し上げませんけれども、いつも一〇%以上の見込み違いというものがあって、残がある。ふえ、多過ぎ——まあ融資要請、需要が多くてまかない切れぬので困っておるというのならば、積極的に資本金をふやすとか、あるいは財投、外債など外部から借り入れをふやすというのならば、十分うなづけるのでありますが、先般来申し上げているように、金は余って、貸し出し残が一〇%もあるという事情のもとで、一体資金の充実をはかることが緊要である、こういう文言を使って提案する積極的な理由というもの、裏づけがどの程度のものかということが、これが私の関心事であります。数字の上でそれを積極的に示していただくか、考え方の上で示していただくか。もちろん、数字の上でこまかくさらにいただきたいと思いますけれども、きょうすぐというわけにもいきませんでしょうから、ものの考え方として伺いたい。
  161. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 本年度約一割程度の資金を余す結果になりましたことは、これは理由は先ほど来申し上げておりまするように、インド、パキスタン等の円借款関係等のおくれで、相手方の事情によるものとは申せ、私どもとしても遺憾に存じておる次第であります。  来年度の所要資金につきましては、ことしから来年度へのズレもあることでございまするし、さらに来年度の輸出目標、その中での機械類、さらにその中で私どもの融資の対象になるもの等を精細に検討いたしました結果、必要最小限度の計画として千三百億を計上いたしておるわけでございまして、本年度からのずれ込みもある。その事実だけを考慮いたしましても、むしろ足りないことはあっても、余るようなことはないのじゃないかと思って、心配をいたしておるような次第であります。今後の貿易の趨勢その他から考えますと、ますますプラント輸出、それに対する金融の重要性が痛感されるわけでございまして、私どもといたしましても、貴重な資金を御割愛、割当をいただいておる御趣旨に徹しまして、任務の達成に万全の努力を続けて参りたい、さように考えております。
  162. 野々山一三

    野々山一三君 少しこまかい話ですけれども、できるだけ資金の合理的な運用をはかる努力をするというお話でありまして、具体的にはどういうことをお考えになっておるのか、それを伺いたいのであります。聞くところによると、こまかい点では、たとえば審査を強化するために専門の部局を設けるというようなこともお考えになっていられるやに伺います。あるいは人をふやすというようなこと、ないしは地方の輸出メーカーの便宜を計らうために大阪の地方事務所を作るというようなこともお考えのようでありますが、しかし、これはいわば形の問題でございまして、根本的にそれだけで一体打開できるかということは、なおいろいろ問題があるのじゃないかというふうに、私は実は考えるのでございます。これは私の思い過ぎだと言われれば、何をか言わんやでございますが、具体的に資金運用の合理化策というものをどういうふうに新しい総裁としてはお持ちなのか、あるいは地方の事務所の開設というものが、大阪に一つ作られたわけですけれども、それだけではむしろ足らぬのじゃないかとさえ思われるのです。地域的な振興策というものをぼつぼつ進めていかなければならぬというように思うわけです。そういう面に触れて、運用と、積極的な窓口の拡大と、仕事をより進めるということのための考え方をひとつ伺いたい。
  163. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) まず、陣容の整備でございますが、来年度は三十二名の増員を認めていただきました。その増員をもちまして部内各方面を充実いたすわけでございますが、特にただいま御指摘のございましたように、大阪には駐在員事務所を新設いたしまして、関西方面からの輸出の御相談に機敏に応じ得る態勢を整えることにいたしております。さらにまた、海外の情報の収集並びに海外における事務の運行の円滑を期する意味におきまして、カラチ等に新たに在外駐在員事務所を新設いたす計画をいたしております。なお、部内の運用につきましては、全面的に事務改善の企画を実施いたしたいと思っております。それがために所要の要員を充足いたしまして、実績を上げたいと思っております。さらにまた、当行も創立以来すでに十二年たちまして、この辺で反省をしてみなければならぬような問題もいろいろ起こって参っておりますので、特に総裁直属のスタッフを新設いたしまして、そういった問題等につきましても根本的な検討を遂げ、世間の期待に沿えるようにと、そういった勉強も特に試みてみたいと、いろいろと計画をいたしております次第でございます。具体的に資金運用の面からということにつきましては、まだなかなかこの席で申し上げるようなこともございませんが、ただいま申し上げましたような心組みで、業務全般の刷新改善をこの際大いに期して参りたい、かような考え方でおります。
  164. 野々山一三

    野々山一三君 もう最後ですけれども、今のお説は、千三百億では足らぬのではないかと心配しておる、こういうお話であります。例年、ここ二、三年二百億ずつ新しく出資をしている、その金を、資金ワクを広げるためには、いつでも毎年足らぬのではないか、記録を調べてみると、いつもそういう説明をされて、こう国会は通っております。ことしもやはり同じ言葉なのであります。そこで、私は初めてこの中に入って議論する資格をいただいたので、そこでこれ以上水かけ論をやろうとは思いません。  問題は、先ほど来申し上げておるように、千三百億じゃ足りないかもしれぬが、主要品目別の計画、そうして国は五十二億ドルの輸出計画というものを持っておる、それと結びつける数字が積算の根拠としてあるわけでしょう。先ほども申し上げたことでありますけれども、ぜひそれを早急の機会に委員会に示してもらいたい。それから、資金運用の合理化策、効率改善については、今ここで述べるような具体的なものがないというお話でございました。やむを得ないと思いますけれども、これまた、ひとつ銀行としての一ぺん具体的な策を、かく考えるという要綱的なもので説明をしてもらいたい。同じことを毎年々々繰り返しているのもいかがかと思いますから、私はここを境といたしまして、今後そういう水かけ論をしないでもいいような段取りを固めておいたほうがいい、こういう気持で申し上げるのでございますが、今の二つの点をぜひ誠意をもって提出をしていただくように要望しておきます。  それから、毎年一〇%以上の遊び金があるということは、これは何としても非常な、財投そのものを膨大なものにしながら、しかも、無理をして産投資金の中に金を入れて、そこでまた出すわけです。私どもには、この前も大臣と約束したところでありますけれども、まだほかにほんとうに必要な金に困っておるところがたくさんあるのに、遊び金を作っておるのは非常に残念だ。こういう観点から、これをチェックいたしたい。そういう趣旨を十分くみ取っていただいて、今の申し上げた二点について実行方を要望いたしたいと思います。
  165. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 千三百億ではっきり足りないということを申し上げたわけではございません。足りなくなることをむしろ心配しておるぐらいです。私はおそらく来年度は今年度みたいに一割も余すということはないだろう、そういう気持を申し上げたわけであります。  なお、申し上げるまでもなく、これはプラント輸出の承認の状況、その中でも私どもの融資の対象になる輸出許可、それによるわけでございますが、それに対する私どもの融資の進捗状況は、今までとちっとも変わっておりませんことを念のために申し添えておきます。つまり、対象になるプラント輸出の承認それ自身が、先ほど申し上げましたような事情で減っておるということでございます。それも毎年じゃございません。三十五年度は実は大きく不足をいたしまして、補正をいただきまして、三十六年度も補正をいただいたのですが、その補正を全部使いこなすことができなかったという実情でございますので、その点もまあ念のために申し上げておきたいと思います。
  166. 野々山一三

    野々山一三君 いや、あなたがそういうふうに開き直られるならば、私も具体的に……。先ほど、めんどうであり過ぎて、しかも借りられるのがおそいと。商売ですから、時期をはずしたら話にならぬということで、私の承知している限りでも相当大きな額の輸出をストップされた事例があるのです。繊維機械で五万錘に及ぶ商売がだめになった事例があるのですよ。そこで、やむを得ず、それは市中銀行でまかなって、自己資金でとにかくまかなってやっていくという事例があるわけです。そういう事例をなくすることが、せっかく金を使う以上は必要だ、こういう観点から私は申し上げている。あなたが開き直られるならば、これはもう残念ながら、またもう少し時間をかけて実際にやらざるを得なくなる。その趣旨を十分にくんでもらって運用効率をよくしろと、そうしてもっと振興できるようにすなおにものを見てもらいたい。
  167. 佐野廣

    委員長佐野廣君) それでは、資料の御提出をお願いします。  他に御発言もないようでございますから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより三案の討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。東京港湾区域における土地造成事業等のため発行される外貨地方債証券に関する特別措置法案日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案日本開発銀行法の一部を改正する法律案、以上三案を一括問題に供します。これら三案を原案どおり可決することに賛成の方の御挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  170. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 多数と認めます。よって、三案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十六分散会