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堀末治君 とにかく、私よりもあなたのほうがよくおわかりのとおり、米を何%か入れることを許したのは、たしか二十六年の年からだと思うのです。そのときは非常に米の少ないときでしたから、
清酒業者も十分設備を持ちながら造れないで困っていたことを私はよくわかっているが、今になると米は十分になって、主として去年あたりだというと、
清酒業者のほうではそれだけの米をやるからといっても、向こうのほうは全部引き受けられないというのが今の
清酒の
状況になっている。そこにもっていって、
合成酒のほうにもやるということを聞いたけれ
ども、
合成酒のほうも五%だけでは売れ行きが悪いから、前からの米はたくさん余っているから、そんなに引き受けられないということも事実だ。
一方、要するにこういうものは次々と進歩している。私、一昨年マドリッドに行きましたとき、国会へ行って昼食をごちそうになったところが、そのときそこのおやじさんがいろいろなことから、私が
酒屋だということから、私のところにぜひ来いといって連れていった。なぜ連れていったかというと、そのおやじさんは全世界の酒のコレクションを持っている。二万数千点を地下室に置いてあるのですね。実にたいしたものを置いておる。これを見て、世界には
酒類というものが多くあるけれ
ども、その中に陳列されている
日本の
酒類といえば
清酒だけ、菊正宗の一升びんと四合びんが陳列されている、古びたやつが。あとは全部よその酒ですね。こういうようなことで、今しきりと、貿易
自由化になって、いろいろのものが貿易を盛んにするようにしなければならないというときにもつていって、
日本の酒だけは何も輸出がきかないということになっている。これらのことについても、これは
業者も真剣に考えなければならないけれ
ども、やはり
大蔵省もこれは
日本の
産業のためなら真剣に考えなければならないことだと思うのですが、そういう点からいうと、
日本の
酒税法というのは非常に窮屈なんですよ。それは、
国内においては、取り扱っていくという面においては窮屈なのはけっこうですけれ
ども、もう少し輸出のことなんかを考えたら、そういう点は十分フリーにしてもいいんじゃないかということを私は考える。
それと、また言われたとおり、今しきりと
柴谷さんからいろいろ
お話が出ましたけれ
ども、今の合同の問題なんですよ。今のような製造
方法でいくと、
清酒業者も今のままでは、これはとてもいけないと思う。やがては四季醸造になっていくにきまっている。そうすると、今のような小
規模ではできない。せっかく戦時中に、あれは無理でしたけれ
ども、合同させられたのが、その後みんなばらばらに小さくなってしまった。その小さい
酒屋が実は今日無事に
工合よくいっているかというと、ことしのように
清酒の売れ行きのいいとき、ようやく売れている。しかも、自分の手で売れているかというと、自分の手で売れていない。マークの届いた人の手を借りて、ようやく酒を売っているというのが
現状です。北海道なんかは特にその弊害が多い。米の割当が、要するに古い古い
基礎を基準にしてきめているから、北海道のように
消費がうんと伸びているところにおいて、米の割当をどうかふやしてくれと言っても、ちっともふやさない。やむを得なくて、できた酒を買って、高い
運賃をかけて水を入れたものを運んでやっているというのが
実情でしょう。これは私よりあなたのほうがよくおわかりなんです。実際そういうようないろんな矛盾をはらんできているんですから、今のうちに、酒造
行政というものを根本的に変えなければならないときじゃないかと私は思うのです。
そこで、私申し上げたいのは、しきりとさっき
野溝さんもおっしゃったけれ
ども、今度の改正なんかうしろに何かあるように思うと
野溝さんが言う。そういうようなわけで、私は、今とりあえずこの際、せっかく
合成酒業者が一〇%のことを望んでいるから、一〇%許して、何かいい基準を設けて、
合成酒と
清酒の間の基準をきめて、
大蔵省が間に入って十カ年なら十カ年ぐらいの要するに紳士協定を結んで、その間に今言ったいろいろ酒造
行政の行き方を両方一緒になって真剣に考えたらどうか、こういうことを私はしきりに考えている。去年わざわざこの席へ石川さんが見えた、減税の問題で見えたが、そのとき実に乱暴なことを言ったのです。なぜそんなことを言うか。とにかく
合成酒は憎いということで、われわれのほうはアルコール添加、いろいろ酸を入れてのばすことをやめてもいいということを、はっきり言っている。そういう乱暴なことを言うので、私、実際驚いたけれ
ども、
清酒業者の組合長として妙なことを、しかも自分の単なる
意見として言うことならともかくだけれ
ども、こういう公式の席上で陳情に来てそういうことを言うから、何たることかと思ったのですが、そういうことを考えているより、
現状のままで権利を擁護するよりも、国家の収入に伴うて、この技術の進歩したときだから、それに伴って自分らの権利を守るとともに、権利を広げて、それが国家の興隆のためになり、また自分らの商売の繁盛になると思う。あなた方の頭ではそういうことをお考えになるかどうかわからないけれ
ども、私はそういうことを考えている。
せっかく去年は米を何ぼやるといっても、
合成酒のほうは五%より使えないから、それをよけいもらっても仕方がない。こういうふうに、現にことしはたくさん米が余っているから、そういうような
実情ですから、それでも
清酒が間に合えばけっこうですけれ
ども、今の
実情だと、現に去年
大蔵省が米をやると言っても、取れないほど手一ぱいになっているのが
清酒です。それを今のままふやそうとしても、これはなかなか資金的に容易ではない。そういう
実情ですから、何か今ここで、要するに
清酒というものをしきりに発達させることのために、
大蔵省自体もその取り締まり
行政の上から考えるべきではないかということを私はしきりと思うのです。どうかそういうわけですから、なるべくなら一〇%なら一〇%のものを許す。技術の問題は、失礼ですけれ
ども、
合成酒のほうは真剣にやっているのです。また技術者も多い。そういうわけですから、そういうふうにやらして、それはそれとして、こっちのほうに十分取り入れられるということで、今言ったとおり、今の
情勢で一〇%なら一〇%許して、十カ年なら十カ年、それで
大蔵省が間に立って紳士協定をして、吸収させて、その間にいろいろ技術の進歩もはかり、同時にまた
日本の酒造というものの発展について考えたほうがいいのではないか。そうではなく、今いたずらに一方ばかり押えつけて、一〇%はやれないということを言っているということは、どうしても私は納得できない。今言ったとおり、二万数千点という世界の酒がある。その中に持っていって、
日本のものはわずかしかないのです。何ぼでも、
日本はこういうところで、今これは言うと長くなるけれ
ども、そうだよ、
日本の米はもうたくさんです、実際いうと。それですから、米を別のものに転換させるためには、何か今言ったとおり、そういうような原料のほうをたくさん作らせるというやり方が、
日本の農業の上から非常に必要なことだと思うのです。
どうかそういうわけですから、その辺真剣に考えて、今のあなたの答弁くらいでは納得できませんが、これは今私は何も法律改正をするのに反対するものではない。
業者もそれでいいと言っている。何も文句言うことはないが、ただこれで、
野溝さん言ったように、実際押えつけてしまって動かさないという底意があるなら、反対します。そういうことでなく、やはり
日本の酒造
行政を、せっかく進歩して、
合成酒なんというのはわずかの間にこれほど進歩している。その技術を全部
清酒が取り入れて今日やっているのですから、そういう
実情だから、何も
合成酒を目のかたきにする必要はない。どうかそういう
意味において、ひとつよく
方針をお考え下さい。なるべく近いうちに一〇%にしてやっていただくことを切に希望します。