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説明員(
谷川宏君)
酒類の基準
販売価格制度は、仰せのとおり、三十五年十月から実施されたものでございますが、これはそのときまでございました最高
販売価格、いわゆるマル公
制度を廃止いたしまして、基準
販売価格という
制度に切りかえたわけであります。マル公の時代におきましては、最高
販売価格でありながら定価的な運用がなされておりました
関係上、
企業努力によっに
品質をよくし、
価格を安くするということがなかなかできにくかったわけでございます。ただ、酒につきましては、ほかのものがマル公を廃止されたにかかわらず、
酒税の保全と
取引の安全というようなことから、非常におそくまで残されておりましたが、三十五年十月これを廃止して基準
販売価格制度に切りかえたわけであります。
その当時におきましては、この基準
販売価格制度というものは暫定的なものであって、なるべく早い機会にほかの
商品と同じように自由
価格制度に移行すべきものであるという前提のもとに作ったわけでございます。いきなり自由
価格ということになりますると、
酒税の保全という面からいたしましても、また
業界の
取引の円滑という点からいたしましても、少し問題があるのではなかろうかという趣旨で作ったわけでございます。
その
制度といたしましては、
国税庁が告示をいたしました
生産者、それから
販売業者の
販売価格の基準となるべき
価格、これを
中心にある
商品はそれよりも高く、ある
商品はそれよりも安く売ることによって、
取引の安定をはかり、また
消費者の利益を擁護するという趣旨であったわけであります。その内容とするところは、合理的に計算されました原価と適正な利潤、それと
酒税がその要素として
考えられたわけでございますが、二年半基準
販売価格制度を実施して参りましたところ、その間におきましては、
清酒にいたしましても、
ビールにいたしましても、原料代、あるいは人件費、運賃、一般経費が相当上がりました結果、実際の製造コストは基準
販売価格において見たものよりも相当上がってきたわけでございます。で、基準
販売価格でございまするから、コストが上がったからいきなり基準
販売価格そのものを変えるということがいいかどうかという点は問題がございます。基準
販売価格どおりに売らなくてもいいわけでございますから、それよりもコストがかかって
品質がよくて高く十分に売り得るものについては、基準
販売価格をある
程度上回ってもよろしいという趣旨のものでございまするから、一々改定する必要はないかと思いまするけれ
ども、あまりにもはっきりした
値上がり要素がある場合、たとえば
清酒について申しますと、
原料米の
政府の払い下げ
価格が二年半の間に相当上がっております。これをそのまま放置していいかどうか、いろいろ問題があったわけでございます。
それと同時に、
小売の基準
販売価格の運用の実際の
状況を見ますると、
小売業界におきましては、あまり
競争をしないで、基準
販売価格が、または基準
販売価格をこえて、たとえば二十円とか三十円という建値で売る場合におきまして、どの銘柄におきましても、たとえば
清酒二級であれば
小売の基準
販売価格は四百四十円でございます。ところが、実際には四百六十円で売られているものが大部分でございますが、どの銘柄も四百四十円なり四百六十円なりで売られておる。
品質がいいもの、あるいは
消費者が好んで
需要するものと、しからざるものとの間に、
価格の差が生じないような販売のやり方を
業界におきましてはまあやって参ったわけでございます。基準
販売価格がありますると、そういうことになります。
当初のねらいは、そういう固定的なものじゃなくて、もっと弾力性を持ったものであったわけでございますが、
業界の実際のあり方がそういうことでございまするから、この基準
販売価格を現時点においてどうするかということについて、私
どもと主税局といろいろ相談をして研究をしたわけでございまするが、学識経験
委員あるいは
業界の代表の方をまじえまして、一堂に集まって、そこで
意見を拝聴したらどうだろうということで、
国税庁長官が一月の二十三日に三十二人の方々にお集まりいただきまして、
酒類行政懇談会というものを開催いたしまして、この問題を
検討していただいたわけでございます。
その懇談会における大勢を占めた
意見といたしましては、先ほど申しましたような
性質の基準
販売価格でございまするから、なるべく早くこれを廃止して自由
価格に持っていくことが適当である、ただ現時点において全部廃止するかどうかについては、
酒税の保全であるとかあるいは
国民生活に与える影響であるとか、そういう点を慎重に十分に考慮するほうがよろしいのではないか。たとえば
清酒の二級の
製造業者の基準
販売価格あるいは
ビールの
製造業者の基準
販売価格、こういうものについては、今すぐ廃止をすることはどうであろうか、これは残しておくことがいいのではないか。しかし、そのほかの
酒類の基準
販売価格につきましては、これは今廃止して支障がないのじゃないか。し
ょうちゅう、
合成酒、あるいは
みりん等についてはそれぞれ廃止してもいい。廃止した結果、値上がりをするとか、あるいは
業界が困るとか、あるいは国の立場で
酒税保全に困るとかいうようなことがないから、こういうものについては廃止するほうが適当ではなかろうか、ということが大勢を占めた
意見でございました。こういう
酒類行政懇談会における
意見を参考にいたしまして、残すものについてはどうするか、ある
程度値上げをする必要があると
考えられますが、
政府全体の経済政策、物価安定政策との
関係からいって、これはどうするか、また廃止した後の処置をどうするか、
業界に無用な混乱を起こしてもいけませんので、廃止した後におきましては、基準
販売価格がなくなりましても、ある
程度半年なり一年なりは行政指導をいたしまして、混乱を防止するということでいくという
方向で、目下私
ども具体的な案を
検討中でございます。できれば四月中にでもそういう
結論を出しまして、その辺のところで実施をいたしたい、かように
考えております。