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説明員(
高橋時男君) 昨年のつけものの最盛期にあたりまして、場所によっては消費者から、安い塩、はかり売りの塩を供給してもらいたいと思っているのに、袋詰めの割高の塩だけしか売らぬのはけしからぬじゃないかというような苦情が新聞紙等にもありました。投書欄にも載っておりましたが、また
国会の先生方あるいはその他の
方面からも、電話その他口頭の御連絡等でそういう苦情の御連絡あるいは御忠告等がございました。私どもといたしましては、そういう事態のないように努力してきたのでおりますが、事実としてそういうことが若干ございましたことは、まことに申しわけないと思っております。どうしてそういうことになったかという点を、お話ししたいと思います。大体、全国でソーダ工業用を除きました
一般の家庭用の食用塩、みそ、しょうゆ醸造、あるいはつけもののつけ込み、家庭で料理に使う塩、あるいは化学工業で三千トンとか五千トンとか少しの塩を使う、そういうものを寄せまして、大体百万トンから百十万トンくらいの塩を年間消費するわけでございます。そのほかソーダ用塩が二百六、七十万トン。この百万トンないし百十万トン
程度の、ソーダ工業用以外の塩のうち、家庭で主婦が買って消費される分が大体五十万トン、あと、みそ、しょうゆ屋さん、化学工業等でお使いになるのが五、六万トン、こういうふうに考えております。
この家庭の主婦がお買いになって各家庭でつけものの形あるいは塩そのままの形でお使いになる五十万トンの家庭用塩のうち、約十万トン前後が袋詰めの、家庭用食塩とわれわれ申しておりますけれども、純度九九%以上の塩で、これがポリエチの袋に入っております。それから、あとの四十万トンが、上質塩と申しまして、これは三十キロのセメント袋のようなクラフト紙に入って売られております。昨年度まではわらかますに入った塩でございまして、これは白塩と申しまして、純度が九三%、さっき申しましたセメント袋のような紙の袋に入っておりますものが九五%、こういうことになっております。昨年まではこのわらかますに入っております白塩というものを
一般にも売っておりまして、大きな
農家なんかでつけ込むときには、かます一俵単位で買ってらっしゃる。また、都市の家庭等では、はかり売りで十円、二十円とお買いになる、こういうようなことでありましたが、このわらかますは純度が低いために、しばらく、数カ月しますというと、にがりがしみ出してきて、かますがぬれているわけであります。それから、塩としても固まってしまう、またはかり売りするときにも、わらくずが入るというようなことで、保管の面、それからはかり売りする際の衛生の面等で、他の食品がだんだん衛生化して純度が高まってきているときに、塩のみが依然としていつまでもそういう状態であるのは適当でないというようなことで、三十七年度からはわらかますで純度の低いものを入れるということはやめにしたわけです。他方、わらの事情もあったわけでございまして、ああいうわらかますを作るというような
地方の産業というものがだんだん衰微していく。それから袋詰めの段階で、
製塩工場でもああいうわらかますに塩を詰めるということは相当重労働でありまして、塩をあそこへ入れてはかりにはかって縄がけをして倉庫へ積み上げていくというのは、大の男がたくさん要るわけであります。そういうわらかますの
生産事情、それからああいう袋詰めの労働事情等からも、いつまでもわらかますに詰めるという態勢は維持できないという情勢になってきましたので、三十七年度からああいうものに見切りをつけて、袋詰めにする、これにしますというと、ベルト・コンペアでやりますので、婦人労働でも軽く秤量、袋詰めミシンがけ等ができるわけであります。そういうことにしますというと、今度は、紙の袋でありますから、純度を上げないというと湿気が、わらかますと違って紙でありますから、湿気を保持するということは物理的に非常に困難であります。そういう点からも純度を上げる、九五%にする。
そうしますというと、家庭の主婦の苦情はどういう点かといいますと、一つは、従来の白塩のような、こうつかんでみるというと、ややしとっとするような、ああいう感じの塩でないと、さらさらした塩では、何かつけものをつけた場合にききめが薄いのじゃないか、どうもちゃんとつけものがつからぬではないかというような、まあ品種が違っていくためにつけものがよくつからぬというような御心配の苦情が一つと、それから、従来ははかり売りだから、中身だけを正味に買うのだから安いと。ところが、袋詰めになっているものは、袋詰めだから袋代等で割高である。こういうような
二つの不平が主であろうかと思います。
私どもとしては、先ほど申しましたように、今とうふなどでも、ポリエチの袋詰めになっているとうふなどを売っている。また納豆その他でも、大体昔のような包装形態でなしに、きわめて簡易に衛生的に持ち運び、売り買い等ができるような形態になっているのでありまして、これは商品全般の傾向であります。塩につきましても、わらのごみの入ったぬれた塩を家に持ち帰っても、数日するとすぐぼたぼたぬれてしまうというのは、やはり食品販売の形として近代的ではないというようなことから、品質を上げ、袋詰めにするということにしたわけであります。
したがいまして、この袋詰めは、一昨年度から、
昭和三十六年度から一部の
地区でテスト販売をしてみたわけでありますが、その当座は若干不平があったわけでありますが、そういうテスト販売をした
地区につきましては、本年度におきましては不平というものはほとんど聞いておりません。テスト販売ではなしに、三十七年度、去年の秋初めて売り出した
方面では、やはり品物に対する主婦のなじみが少ないということから、非常に不平不満が投書欄等に出ましたが、少し使ってみていただけば、やはり便利である、衛生的である。それから品質においても、これでつけたからさらさらしてききめが少し弱いのではないかというようなことはないわけでありまして、来年度からは、だんだん家庭の主婦がなれていただくことによって、そういう不平はだんだん少なくなるのではないかと考えております。
まだ、割高ではないかという点でありますが、これは純度が高いし、袋に詰めますから、ほかの
一般の自由商品は利幅というか、マージンが大きいですから、袋代込みであっても、従来の値段と同じで売っているのですが、その利幅の中で何とか処理ができますけれども、塩は御
承知のとおり全然もうけない原価主義でやっておりますから、袋詰めにすれば若干の割高になりますけれども、何にいたしましても、このくらいの袋で六百グラムでありますから、普通のサラリーマンの家庭であれば、そう一月で何袋も使うという品物でもないわけであります。また、
農家で大量におつけになる場合は、三十キロ、このくらいのかますが大体五百四十円——詳しい数字はちょっとあれしておりますが、五百四十円
程度でありまして、
農家で四斗だる、一斗だる等でつけ込まれるときは、そういうものをお使いになればよいと思います。このくらいで、家庭用で三・二キロ百円というものがございますから、そう割高の塩を無理に押しつけて、
農家その他の家庭に重い負担をかけておるということでないと思いますが、若干、未端の販売面におきまして、この塩しかないのだ、専売
公社からこれを売れと言われたから、これを売るという、不親切な、お客さんに対する応待等が間々あるやに聞いておりますので、そういうことのないように、先般詳細なお客の扱い方等に関するパンフレットを作成しまして、八万人の小売屋さん全部にそういうものを配りまして、各
地区各
地区の販売人の組合の代表者を集めて講習会のようなものを開いて、よくお客さんの御納得のいくように、買っていただくように、こういう指導の講習会も開いております。来年度からはだんだんそういう御不平、御不満等も解消してくるのではないか、こういうふうに考えております。