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田中一君 幾ら労働
大臣が当然と言ったって、守らぬのが多いのですよ。あなたは知っているでしょう。よく河野さんが、契約があと半年残っているにかかわらず、すぐやっちまえ、やらなければ首だ、これが事故のもとです、原因です。これはたくさんあるのです。大体において
建設省が行なうものばかりではありません。民間で行なうものも、契約が片務契約です、ことごとく。たとえばよその、別の、本人じゃない者の責任の事故で現場がおくれても、罰金を取られる場合があるのです。不可抗力というものが全く完全に認められていないのが、この工事現場の実情です。不可抗力というものを認めようとしないのです。もしもそれをお前のほうで負担しなければ、この次はお前のほうを指名しないよ、こう言われたら、その請負人はほされるのですから、つぶれるんです。だからやむを得ず相当な莫大な損を皆自分が負担する。ところが請負人は負担しはしません。下請が負担する。下請は、またその下請が負担する、その下請がまた下請に、末端の労働者だけがいい面の皮というのが今までの
現状です。
そういう悪質なものは、だんだん減ってきましたけれ
ども、えてして、
市街地における建築現場にはあまり見受けられませんけれ
ども、相当山の中の工事場なんかには、それが多いわけです。私は、結局現場の安全衛生を守るのは、やっぱり注文する者が、それだけの認識とそれだけの
裏づけの資金を当然出さなければいけないと言っているのです。それが当然でありますから、注文を出す者が守るのでございましょうじゃ片手落ちです。結局商売する請負人なんていうのは、割合損をしないものです。あそこで何億損をしたって、つぶれていないんですよ。どっかへしわ寄せがいくのです。悪い工事をするとか、一番末端の労働者を泣かすとか、材料屋を泣かすとか、そして生きているのです。それにはやはり、こうした罰則を持っている
一つの法律でもって、なるほどこれは労働者の安全を守るためには、どうしても必要な法律でありましょうけれ
ども、結局大きな資金を持って建築しよう、発電工事をやろうとか、そういう企業者に対するその責任は明確にしておられない。中間で働く者だけに責任を負わせよう、そうして当然国が管理すべきもの、監督すべきものを、自主規制という形でもって、現場の担当者に持たせよう、現場の担当者……、
建設しようという意思は発注者です、発注者が、ほんとうの意味の現場の安全というものをはかろうとしなければ、事故が起こるのはあたりまえですよ。まあそいつは今さら言っても答弁しそうもないからその点はやめます。
ただ、もう
一つ伺いたいのは、これはなるほど労使の間で行なわれているのは、現場における安全管理の問題が中心ですが、現場以外の、現場から起こった災害で善良な市民に災害を与える、これはたくさんございます。近ごろちょっとなくなりましたけれ
ども、一週間に一ぺんくらいは
市街地でもって、上から鉄板が落ちてきたとか、丸太が落ちてきて殺したということがあるのですよ。これはその問題に入りません、これは別でございますという答弁をするだろうけれ
ども、やはりそれらの災害を起こした、事故を起こしたというものは、やはりこの法律のワク内の問題なんです。なるほど労災法で、その労働者に対しては一応千日分なら千日分の葬祭の
程度のものは死亡した場合は払われるでしょうけれ
ども、しかしそれによって善良な市民を殺害したという場合の責任というものは、これに入らぬだろうけれ
ども、しかしこれは大きな問題であります。千日分なんかくれやしませんよ。大きな事業主なら——これは事業主の問題ですよ、大きな事業主なら事業主ほど責任をのがれます。そうしてその元請なり下請なり、落した下手人、労働者に対して苛酷な罪を課そうとするのが今の
現状なんです。過失致死とかいうことになるのでしょうけれ
ども、しかし犯罪は、やはり行為を起こした者が責任を持たなければならないのです。なぜそうしなければならなかったかということは、裁判の弁護士あたりの情状酌量論になってきてしまって……、殺害したのは、現実にそうなんです。私は、この法律の中でもって、それを処罰すると言ったってなかなかできません。しかしそこまでのことを考えなければ、災害というものはなくならないのです。新聞に出るから
大臣は気がつくかしらぬけれ
ども、新聞に出ない事故なんかたくさんあるのですよ。もっとも
大臣のお手元には統計で来るから、数字だけしか来ないから、残酷な首がちぎれたり腕がとれたりするのは、目の前によく出ない、私などは現場をよく歩くから、何かあるとすぐたまらなくなる。
私は、この法律のワク内において起こった事故によって、第三者に大きな災害というか被害を与えた場合には、やはり考えられていいと思うのです。発生原因は、これなんです。これは安全を守らせようということでしょうけれ
ども、やはり労災法の中で、それらの点も考慮されていいのではないかと思うのです。
大臣、どうお考えですか。