○曾祢益君 私は、本
法案が少なくとも従来の経験に徴して
移住問題について相当前向きの姿勢で取り組むとともに、当面まず
移住実務機関の
海外における統合をはかり、また、外務
大臣が各省と十分協調の上で一元的にこの
実務機関を指導するという点において賛成いたします。
ただ、
質疑を通じても申し上げたことでありまするが、元来ならば、この機会に要望——附帯決議の第一項にあるような、元来ならば
移住に関する
基本概念をぐっと明らかにし、その上に立ってから
実務機関の統合その他の行政
機関の統合等にかかるのがほんとうではなかろうか。この点でいささか画龍点睛を欠くうらみがあると思うのであります。特に
質疑を通じて明らかになったように、実は
移住審議会の
答申そのものについても非常に重大な点でまだ問題を概念的にも明確にしていない点があると思うのでありますが、第一は、
日本の
経済構造の大きな変革に伴って行なわれる
国内施策との関連が、単に抽象的に取り上げられているだけであって、これと
移住政策の関連が一向明らかになっていない点であります。すでに
基本概念においては単なる過剰労働力を
海外に持ち出すんだという考えを捨てたとは言いながら、なお、いろいろの施策の面においては、かなり大きな比重を、特に農村あるいは農業者の間から定着
移住の形でやはり
海外における点に相当ウエートが置いてあるけれ
ども、
日本の
経済成長に伴う人口、労働問題の推移等にかんがみて、はたしてそういうことがいいのか、これはさらに検討を要する点ではないか、こう考えるのであります。少なくとも
日本において当然
国内的にやらなければならない農業就業者の過剰人口を
国内的にりっぱに処理する問題、あるいは石炭業その他の不況産業から一時的に起こる転業者に対して手厚い施策をする問題が、
海外移住の方法があるからというような抽象的なすりかえによって私はいいかげんにされてはならない。この点は非常に重大な点だと思うのであります。
第二には、同じことの
海外関係のことでありますが、もしわれわれが
移住問題という位置を、今申し上げましたように、
国内の簡単に言えば人口の圧迫からのがれようとする
国内的な動きあるいはあがきという点を振り捨てて考えるならば、やはりこの
移住という問題は
基本的に
日本の、あるいは
日本国民の
海外活動、あるいは
日本の
海外経済政策、外国に対しては対外
経済援助の
一つの柱としてむしろ考えていくのがほんとうではなかろうか。
南米の曠にインディオと同じくらいの悪条件のもとに、資本も技術も与えないでわが
国民を送るというような
考え方がもしあったならば、これは非常に間違っておると思うのでございまして、そういう意味でこの審議会の
答申案の範囲を出ないという外務
大臣の
考え方をぜひ改めてもらって、
答申案の中では、
移住政策というものは単に対外
経済政策あるいは対外技術政策と並列的に調整されるべきであるというふうに、そんな程度で、逃げているというか、ごまかしているのでは、これでは足りないのではないか。もっともう
一つ上の段階で、やはり大きく対外
経済協力の一環という点で総合して、そのうちにおける主として定着的の
協力はどうあるべきかという観点から見直していく必要があるのではないか、かように思うのであります。むろんそうは言いつつも、一方においては
日本人の市民社会が北米あるいはハワイ、あるいは中
南米等にすでにできていることであるし、それらの日系市民社会と本国である
日本との間に今後とも血縁的な文化的な
関係を深め、またそのことを通じて当該国と
日本との国交をさらに平和的に伸展させるという意味からいっても、私は呼び寄せを含めた
移住並びにそういうような在外日系社会との政策は非常に
重点を置いて考えなければならぬと考えるわけでありますが、それらの点を含めて、どうかひとつこの次に
移住基本法をお出しになるそうでありますから、それまでの間にもっと真剣な討論の中からきわめて明確な前向きな、そしてわが
国民に大きな夢を
海外にフロンティアとして与える。こういう観点から
基本的な
移住に関する
基本概念と
基本政策をぜひ打ち出していただきたいということが
希望の第一点であります。
第二点は、
石田委員からも
指摘されましたように、問題は徐々にやっていく必要がございますけれ
ども、やはり
実務機関の一元化という点からいいましても、
事業団が
日本国内における
地方のいろいろな
機関との
関係における一元化はまだ先に見送られておるのであります。できてから信用をつければ逐次一元化に向かうということを否定はいたしませんが、そういう点においてはやはり勇敢であってほしい。むろん
事業団が民間諸団体のイニシアチブを尊重し、単なるなわ張り根性を起こさないことは非常に
重点でありまするけれ
ども、同時に、役所を含めて、たとえば補助金団体が依然として乱立している。そういうような点も改めるように、少なくとも
国内の
実務機関の統合から、進んではいわゆる官庁のそういうような権限等についても、これはほんとうの総合的な統合の
方向を今後とも出していただきたい。
以上、二点の
希望を付しまして、本
法案並びにただいま岡田
委員から御提案がございました五会派共同の附帯決議案に賛成いたします。