運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1963-06-27 第43回国会 参議院 外務委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月二十七日(木曜日)    午前十一時二十三分開会     —————————————   委員の異動 六月二十七日  辞任       補欠選任   大和 与一君   加藤シヅエ君     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岡崎 真一君    理事            草葉 隆圓君            長谷川 仁君            岡田 宗司君    委員            青柳 秀夫君           大野木秀次郎君            木内 四郎君            杉原 荒太君            西田 信一君            山本 利壽君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            森 元治郎君            石田 次男君            佐藤 尚武君            曾祢  益君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君   政府委員    外務政務次官  飯塚 定輔君    外務大臣官房長 湯川 盛夫君    外務省移住局長 高木 廣一君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   説明員    農林省農政局参    事官      丸山 幸一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○海外移住事業団法案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  昨日に引き続き、海外移住事業団法案を議題といたします。質疑を続行いたします。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 石田次男

    石田次男君 この事業団がかかってきておりますが、私旅行いたしておりましてこの内容を聞いておらないのです。その点からいいましてダブる点も相当あるかと思いますが、ひとつ質問いたしますから、要を得てお答えをいただきたいと思います。  まず最初に、事業団を発足させるについての基本理念の問題でございますが、何度もお伺いもしたかと思いますが、どういう基本理念で今度の事業団の運営に当たられるか、それを最初にお伺いしたいと思います。
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 移住基本理念というのは、移住審議会答申に示されたところを把持してやって参ろうということでございまして、これは今法律案を別途作案中でございますので、次の通常国会には御提案申し上げる予定であります。したがって、その骨子はすでに答申の形でお示しがございましたわけでございます。今度の事業団のほうは、この理念に基礎を置きまして、移住実務機構というものが複雑多岐になっておりますし、その間の協力関係も十全じゃない、また移住実績にかんがみましても、今沈滞の傾向にあるということを憂えて、この際、実務機構を、できることならば一元化して参りたいと努力いたしたわけでございますけれども、しかし、さしあたって今御審議いただいております事業団は、移住振興会社海協連というものをとりあえず一つにさしていただく。そうしてその事業団にできるだけ自主性を与えて、活発な弾力的なサービスを発揮していただくというようにいたしたい。あわせて事業団監督外務省にまとめていく。しかしながら、外務省能力から考えましても、また、その他の省の持っている固有の移住に対する権限から申しましても、移住事業団に対する監督外務省に一元化いたしますけれども移住行政そのものの一元化ということには、今日まだなっていないわけでございまして、当面の目標は、移住事業団というものをりっぱに育て上げて移住中核体としてきびきびした活動ができるような能力を持たし、モラルを持たし、情熱を持たしていく。そうして他の移住関係団体との協調関係を打ち立てて参りまして、移住推進に資したいというのが、今度の私どもの提案いたしました趣旨でございます。
  5. 石田次男

    石田次男君 今までの移住実績をずっと見ておりましても、最近においてはこちらの募集人員予定数に満たなくなっておるわけですね。ドミニカ移民失敗の刺激もありましょうし、国内の景気の変動から人手不足が出て参りまして、そういう観点から見ても、若干整備されておるのじゃないかと思いますけれども、しかし、移住という仕事が、今までの惰性でもって持っていかれたのじゃ、この壁を打ち破るわけにはいかないと思うのです。そういうわけで、事業団ができたのを機会として、抜本的な手を打たなればならない時期だと思いますが、それについて強力な募集、送出の体制がはっきりとれるという自信をお持ちですか。
  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 本委員会におきましても、その点がいろいろ論議に相なったわけでございまして、募集という言葉は、この移住事業団法律に出ていないという点についての御指摘がございまして、石田さんがおっしゃるように、強力な募集体制を確立していくという必要があるのではないかという御指摘がございましたことは事実でございます。私どもといたしましては、移住基本理念といたしまして、移住はあくまでも移住者主体性主体的意欲情熱というものに基調を置かなければならぬ。これは移住審議会答申にもお示しがあることでございまして、したがって、政府が一定の目標を持ちまして移住に動員をかけるというようなことは、基本理念として採用すべきではないと思っておるわけでございます。しかし、そんな上品なことを言っておっては移住実績が上がらないのじゃないかという御指摘は、おっしゃるとおりでありますので、私どもといたしましては、この事業団はもとより、政府におきましても、また在来の移住関係機関におきましても、移住に対して国民の自発的な意欲が発揚されるような契機を作らなければいけませんし、そういう意味で実際上計画を立てて動員するのではないけれども、自発的に移住意欲が発揚されて参る。また、そういう意欲を持たれた方々に対するサービス機能が充実して参るようにいたすことによって、所期目的を自然に達するという工合に持っていきたいと思っているわけでございまして、過去における移住行政欠陥というものを、この際、深刻に反省いたしまして、足らないサービス機能につきましては、十分これが発揮できますような姿勢をとって参らなければならないと思いますし、また、過去の失敗を克明に分析いたしまして、やはり政府側におきましても、事業団側におきましても、十分の事前調査というものに正確を期し、そのインフォーメーションに欠くることのないように努力することによって、今、お示しのような実績をあげていく方向に全力をあげて参らなければならないということでございまして、基本理念としては、主体性を尊重する。しかし、そういう前提の上で、どうして所期目標を達するかにつきましては、各種の工夫、これはサービス改善、充実が行なわれなければならんと思うのでございまして、そういう方面に鋭意努力するつもりでございます。
  7. 石田次男

    石田次男君 この事業団サービス機関であるというのは、これはわかっている話です。今までのそういう点についてのサービスが悪かった、機構が一元化してない点もありましたし、事前調査失敗は、ドミニカでさんざん味わったとおりでありまして、その点ははっきりわかっておりますが、サービス機関を整備して受け入れ体制改善したというだけでは、この問題は解決できないと思いますね。というのは、現在国内移住というものに関心を持って海外へ出て行こうという人間が非常に少ないわけです。これは昔だったら、そうじゃないのです。まあ、初期移住は、ハワイから始まって、北米、それから南米へ舞台が移っていきました。これは日本の大正から昭和初期にかけての経済不況が刺激したわけですね。これは御存じのとおりです。戦争中の満蒙開拓は軍部が力を入れて軍事的な目的から啓蒙したわけですが、これに対しては、非常に国民関心を持っておったのです。ところが、戦後から現在に至るまで、移住ということに関心を持っている国民というものは、非常に少ないんですね。ですから、事業団を作ってサービスを向上させて、それで、ただいらっしゃいと言っているだけでは、今までの欠陥は除去できないと私は思っている。手っとり早く言うならば、外務省あたりがそれこそ本腰を入れて、移住に対しての宣伝活動、PRをうんとしなければ、海外進出の、移住に対する国民関心というものは盛り上がらぬというふうに思うんです。現在、海外へ出て行っているのは、非常に学生も多いし、アフリカあたりは、トランクをかついで歩いているのは日本商人と西ドイツの商人だと言われているくらい、商社関係では人が出て行っているんです。結局、海外進出していこうという意欲はあるのだけれども、それがほとんど商業活動のほうに向いておりまして、移住してそっちへ永住しようという方向には向いてないわけですね。その点については、事業団を作ってサービスを満足させれば、それで盛り上がってくる問題ではないと私は思います。やはり機構の整備とともに、そういった方面開拓が、外務省事業団の連携の上での大きな仕事になってきはせんかと思うのですが、この点はどうでしょう。
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、事業団のこの法案の二十一条におきましても、第一に、やはり「海外移住に関する調査及び知識普及」という点がうたわれておりまして、その次に「相談に応じ、あっせんを行なうこと。」ということが示されているわけでございます。それから、一連の事業団のこの事業をずっと列記いたしてあるわけでございますが、これとても、今石田委員が御指摘のように、非常な熱意、情熱を傾けてやらなければ、今の客観情勢移住に好適な条件でございませんこと、御指摘のとおりでございます。したがって、問題はこれに携わる諸君の情熱にかかることは当然でございます。一方外務省としてもっと積極的に移住に関する知識啓発啓蒙努力すべきじゃないかという仰せもそのとおりでございます。幸いにいたしまして、非常に世界が狭くなり、各国との接触が非常に密接になって参っておりまするし、ここ二、三年来、御承知のように、海外移住者の大会が日本において行なわれるということになってきておりまするし、移住地と本国との間の関係がますます濃密になってきつつある気配が見えますことは、われわれを非常に勇気づけるわけでございまして、今お示しのように、外務省自体も積極的に啓発啓蒙という点に努力を傾けなければならないと考えております。
  9. 長谷川仁

    長谷川仁君 今、石田委員から指摘がございましたように、外務省調査月報、一九六一年十一月の「海外移住希望者の分布と海外移住を促す要因」というのを見ますると、国民海外移住に無関心だというのが六八・八%あるわけですね。それから、百名の調査の中で、海外移住ということに対して誇り高い行為だと認めておるのが三分の一しかない。こういうデータが出ているわけです。私も今大臣の御説明で大体了解したんでございますけれども、しかし、もっと大きな問題を、外務省だけの問題ではなくて、国民全体にこの海外移住観、いわゆる海外雄飛、進取の気性、その海外移住というのは、食えないから移住するんではなくて、これからこの法案説明書にもありますように、大いに平和部隊として行くのだ。しかし、その平和部隊として行くんなら、アメリカのニュー・フロンティアとか、そういった使命観とか、海外に行くにはどういった目的があり、どういった理想があるんだ。そういった一つの抽象的な言葉ではなくて、何かそれを国民に与えなければ、私はこれはなかなか若人たちが奮起もしないし、また行こうともしないと思う。ただ、ここで私は考えなければならんことは、この調査月報を読みますと、都会のほうが、都会でしかも学生層、若ければ若いほど海外に行きたがっておる。こういった傾向があるとするならば、なお一そう国民全体の海外移住観というものを私は確立しなければいけないと思いますが、いかがでしょうか。
  10. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 仰せのとおりでございます。実はその点は、過去二、三年来の海外移住審議会でも問題になりまして、移住推進の一番大事な点は教育にある、国民的な教育啓発を考えるべきであるということが指摘せられまして、さっそく文部省教育指導から始めてやるということで、一昨年でございますか、文部省のほうともわれわれ連絡いたしました。そのときの話では、教科書編さんは今自由になっていて、昔のように国定教科書というのはない。しかし、教科書編さんの場合の何か指導要綱のようなものを与えることになっている。小学校のほうは済んでしまっておって、さしあたって、中学校からやりましょうということになって、中学校教科書を作る場合に、海外発展移住という項目に力を入れてもらうことになりました。この次に小学校——今のは中学校でございます。小学校の場合は、今度改訂する場合にひとつ入れましょう。それから、もっと大事なことは、成人教育とか、あるいはPTAとか、こういう関係組織が相当大きな組織であるから、これも十分資料を整えて、地方教育委員会等と連絡してやるようにやろうという話はやっておるのですが、まだ十分資料等を整えてやるところまでいっておりません。この点われわれ足らないところだと感じております。
  11. 長谷川仁

    長谷川仁君 もう一点。大臣にお尋ねしたいのですが、海外移住重点が中南米に向いているということ、これは現在の状況でやむを得ないことだと思うのでありますけれども、われわれ全国を歩いても、青年なりあるいは学生なりに、君たちは一体将来どこへ行きたいかと、こう聞きますと、東南アジアというところに対しては非常な希望といいますか、理想を持っているのです。ところが、現在日本と一番親しいはずのアメリカ日本移民を排斥しておる。それから南米も、それは入れることは入れているけれども、やっぱり重点は欧州の移民第一主義。それから、英連邦もやはり日本は入れない。ところが、戦後の東南アジア各国を歩いてみますると、カーキ色を着たような日本人が再び来ることは歓迎しないけれども、しかし、われわれの国土を開発してくれるような技術部隊は大いに歓迎するという意向があるわけです。したがって、これから東南アジアに対する門戸開放ということは、私は外務省としては当然日本外交政策として強く打ち出すべきだと思うのですけれども、入れないから、あるいは向こうが積極的でないからといって黙っているよりも、若い世代の層がそういった希望を持っているのだから、日本外交として将来の親善を展開するには、なおさらこれは積極的に呼びかけなければいかぬと思うのです。その点大臣に伺っておきたいと思います。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、これはアジアの諸国民日本に対する、対日不信といいますか、そういうものは相当根強く戦後にありましたことは、長谷川委員指摘のとおりでございまして、日本国是が変わりまして、平和愛好国としてやるという基本的な国是を確立したことと、またそれに対する国民的確信が裏づけになっておるということ、そして日本人海外への進出というのは、これはいわゆる経済進出とか帝国主義的な進出というのではなくて、純粋にその国のために考えて、その国と日本とのコープロスペリティというものを確立していくんだということを、東南アジアの諸国民が理解するような工合外交は持っていかなければならないと思うのでございますが、ようやくそういった根強い不信というものがだんだん希釈れて参っておることは、私は認めますし、またこういう日本のほんとうの気持東南アジア諸国に御理解いただく努力を続けておるわけでございまして、それはようやく明るい見通しに私はなってきていると思うのでございます。ただしかし、それが直ちに今言われたように、定着性を持った移民を今大量的に受けるというところまでまだ熟していないことは非常に遺憾だと思うのでございまして、現にこの間タイタナット外務大臣が来られたときに、私は、現地の商社の滞在する割当——クォータがありまして、それから、そのターン・オーバーが一年だというようなことでは、とてもどうも仕事にならぬので、一ぺんその制約を取り除いてくれと、そうして日本の商売人というのは、何もタイでもうけていってやろうなんて思ってないのだから、あなたのほうの経済開発にも協力する、そうしてそのようにこの商社員能力を使ったほうがいいじゃないかと言いましたら、それは移民じゃないですかと言うわけです。いや、とんでもない、移民でないので、ただ一年というようなことで暫定的に腰かけているなんて根性ではとてもだめなんだからということでありましたが、移民でなければ、私は考えますというようなことを言われたので、ちょっと私もまだ定着性移民を迎えるようなメンタリティにはまだなっていない。したがって、これはあなたがおっしゃるように、もっと日本の真意をわからせて、大いに日本方々を受け入れようじゃないかという機運を醸成すること、これはアジア外交の根本でございますが、それをひとつ精力的に続けていって、もう少し時期を見ないと、移住というような問題を東南アジア諸国と話し合っていくというには少し時期が早い。しかし、そういう気持が先方に起こる、日本に対する信頼が起こるように、少なくとも疑惑が一掃されるように持っていくのが、東南アジア外交の一番基本だと私は心得えております。今のところ、まだ移住を論ずるまでには至っていないということでございます。
  13. 石田次男

    石田次男君 最近移住局長外交時報に書いておられたのですけれども、戦後十二、三年の間で、ヨーロッパから南米に対しては六百六十万ですかの人が入ってきているというのです。それに比べれば、日本から向こうへ行った人員というものは微々たるものです。向こうのほうとしては、人種も同じ、言葉も同じ、生活環境も同じだから、行きやすいのはわかるのです。これだけ大量の人間がどんどん定期的に流れていて、それに比べれば、日本のほうで幾ら努力してもなかなか出ていかない。これは国内移住に対する知識普及の仕方が相当大きな関係があるのではないかと思うのです。たとえば福岡県庁へ行ってみましても、あそこでは移住関係を扱っている部屋は、看板一つかけて、中は十畳ぐらいで机が四つばかりありまして、人間なんかいはしない。いるでしょうけれども、遊びにいっているのでしょう。そういうわけで、じっと見ていても一日じゅうその部屋へ出入りするということは実にまれなんです。結局、そういうふうになっているのは、実務のほうを農林省関係が押えているからこういうことになるのじゃないかと思うのです。私は、そういうことで、いろいろな現象から見て、全拓連関係日本移住普及を阻害しているということをひたひた感ずるのですが、その点については外務省側の見解と、それから農林省、だれか来ていますか——両方から、意見を伺いたいのです。
  14. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 移住についての一般の関心が非常に低い、また福岡県の海外協会のごとく、係官がいなくて、あまり熱がないということでございますが、これは第一の日本全体の外に対する考え方が低調であると思いますが、これは最近になりまして、日本の新聞もだんだん外国の記事を載せるようになり、相当部分も大きくなりましたが、つい最近まではほとんどなかった。これに対してヨーロッパ諸国は、海外ヨーロッパそのものの延長であるという考え方に立っております。それはやはり新大陸がヨーロッパ人で建設されたという気持から、隣村のように考えている点だろうと思います。こういう点について、これからの移住海外発展思想啓発ということも、日本にとっては相当大きな、本腰でやらなければなかなか達成しないことだろうと思います。そういう点で、われわれその責任の重大を感じて、外務省が窓口になりまして、関係各省、特に文部省とかその他の御協力を得て、海外思想啓発というものに力を入れるべきである、それでなければならないと思います。  それから福岡県の海外協会で、係の人が遊んでいた、おらなかったというお話でございますが、実は地方海外協会でもいろいろやり方がございまして、そこで待機をして、来る方に移住相談をする場合と、あるいはその市町村へ出られて啓発をせられる場合もございますので、その場合がはたしてどういうことかわからないと思います。なお全拓連農協海協との問題は、これはすでにいろいろ言われておりまして、その関係、われわれ自身も今後大いに反省し、そうして農協地方海協もみんなが協力できるような体制をできるだけすみやかにやっていかなければいかぬ。それには大平外務大臣が常に言われますように、根本的に従来の反目の形じゃなくて、協力融和の形でもって行きたいというふうに思います。この事業団法案国会のほうに提案をいたしておりますのも、その協力体制の第一歩と思う次第でございます。
  15. 丸山幸一

    説明員丸山幸一君) 農林省といたしましても、ただいま移住局長から御答弁申し上げたとおり、私ども移住につきましては、どれかの機関が独占的あるいは排他的にやるという筋合いのものではないと承知しております。あらゆる民間の機関、特に農協組織も大いに活用、助長していく。全体の何と申しますか、総力をあげて移住を促進して参りたいというつもりでおるわけでございます。先ほど全拓連があるいはブレーキになっておるのじゃないかというような御指摘があったわけでございますが、実はあるいは私ども反省してみて、おのおのの機関内部において協力体制というか、あるいは意思疎通を欠いておったというような点、これは実は皆無とは申せなかったと思いますが、今後におきましては、この事業団の設立を契機にいたしまして、よく連絡を密にし、相協調いたして移住の促進をはかって参りたいと存じております。
  16. 石田次男

    石田次男君 私が福岡県庁の例をあげましたが、ここはしょっちゅう出入りしておりますので、一回や二回じゃない。ほとんど行けば毎回様子を注目して見ておるわけです。移住者というものは、毎日希望者が出てくるものでないことはわかるのです。それはわかりますが、まあいつ行ってみたって仕事はないですね。役員はみんな兼務職員ですから、その方面仕事はあろうと思います。どうも移住関係のほうは全然動いていないのですよ。ただ看板だけ下げておるだけ、県庁内部で見てポスターの一枚も出ておるかというと、これも出ていない。おそらく移住希望者が出てきても、これをしっかり啓蒙するような知識を持っておるような人もいないのじゃないかと思います。いわんや、納得させるようなパンフレットや資料等もそろっていそうもないのですね。極端に言えば部屋一つ全部ほこりをかぶって開店休業だと、そんな状態なんです。これは熊本へ行ったって、幾らか活発に動いているのは長崎ですがね、佐賀へ行ったって、どこへ行ったって、同じことなんです。そういう状態県庁の中が全然活動しておりませんし、全拓連がやっておるのは、いろんな角度から見て、ただ金を食っているばかりじゃないかと思うのですよ。そういう点について農林省側は深刻な実情を把握していらっしゃるのですか。
  17. 丸山幸一

    説明員丸山幸一君) 移住関係、先ほど先生御指摘になりましたように、まあ国内のこういう産業構造変化もございますし、また、農村の私どものほうは構造改善をやっておるわけでございます。だんだん御存じのように人が少なくなって参りまして、全体のこの状況変化をして参りましたので、なかなか私ども事志と違いと申しますか、思うようになっていないのが実は実情でございます。しかし、潜在的というか、ひとつ外へ出たいという気持は、これは相当あると思うのでございまして、経済事情変化いたしましても、相当弾力的というか、まだその余地は相当残っておると承知をいたしておるわけでございます。それは余地がある、余裕がある点について啓蒙というか、募集というか、ということを積極的に展開して参らなければならぬのであります。そこで、これには民間のやはり活動というか、農協組織というか、そういうものを利用することが非常に重要なことでございまして、そういう意味で農協組織ひとつがんばってもらえないかということを実は私どもお願いをいたしておるのであります。予算等必ずしも十分でございませんし、活発にきびきび動いていない、あるいは動けないという実情にあろうかと思いますけれども、今後努めて促進して参りたいと存じております。
  18. 石田次男

    石田次男君 この全拓連系の問題ですけれども海協連地方支部は今度は事業団の傘下に入ってこないわけです。これはどっちみちこのままではおさまりませんよ。必ず統合しなければ事業団というものの機能が発揮されないわけですから、急いでこれは統合すべき問題だと思うのですが、今回は入らない。したがって、これを統一するについての農林省外務省の話し合いというものが当然この春から行なわれてきておるわけですね。農林省としては、それをどういうふうにしていこうというつもりでいらっしゃるのか。必ず統合するという前提のもとにものを進めていらっしゃるのか。それともそうではない、その点をひとつまず農林省のほうからお尋ねいたします。
  19. 丸山幸一

    説明員丸山幸一君) 実は地方海外協会というのは、地方の何といいますか、自主的な組織でございまして、県及び国から補助金を出しております。地方の地域的なあるいはちょっとオーバーかもしれませんが、一つの血縁的な地域組織であるわけであります。したがって、その地域の特殊性等も各県によっていろいろあろうかと存じております。これを事業団支部ということの縦割りの全国一律的な線に切りかえるということが支部組織であるわけであります。そこらあたりの調整をどのようにしていくか、これはむろん地方協会で公益法人でございまして、民法上の公益法人でございますから国が解散させるということはできないわけであります。そこで、したがいまして、やはりそういうおい立ちもございまして、地方実情に即して御希望等よく拝聴いたしましてきめていきたいということで、外務省と御相談を申し上げている段階でございます。
  20. 石田次男

    石田次男君 私の言うのは、海協連地方支部、それから全拓連系、これが共通な人間がポストを占めておるし、また両方とも関係の深い人間がポストにいるわけでございまして、ですから、これは見方によっては裏表なんですよ。ほとんど一体に近いような関係にあるわけです。これはそういう関係で、これは地方独自の組織で、農林省のほうではどうこうできないとおっしゃったけれどもね。しかしながら、その全拓連の一番上のポストを占めておる人がどんな人であるか、これは私が言わなくてもわかるはずです。そんな関係から、結局海協連の予算は、人事関係については外務省のほうが出す、業務関係については農林省が出す、今まではそうであったわけです。この金の関係一つあり、それから海協連全拓連その他全拓連系の移住に関するいろんな組織のポスト、これらをほとんど同一人物ないし関連のある人物で占められておる。こういう事実に照らして見れば、農林省のほうの県支部を一本化しようという意向があれば、そちらのほうへ進むにきまっているのです。農林省のほうでそれを拒否すれば、進まないにきまっている。だから、結局統合できるかできないかの問題のかぎは、根本的には農林省の腹一つにかかる。その点については、ほんとうは大臣、重政さんにお伺いしなければならぬところですけれどもね。
  21. 丸山幸一

    説明員丸山幸一君) 私ども農林省といたしましてというか、私どもといたしましては、支部に反対だということは全然申し上げておりませんので、地方実情等よく御意見を拝聴し、外務省とも御相談をいたしまして結論を出したい。決して反対ということは終始申し上げておらない次第でございます。
  22. 石田次男

    石田次男君 最後のところをもう一回。ちょっと聞きのがしました。
  23. 丸山幸一

    説明員丸山幸一君) 終始、農林省としては、支部設置反対ということは申し上げておらないわけでございます。
  24. 石田次男

    石田次男君 賛成はしますか、しませんか。
  25. 丸山幸一

    説明員丸山幸一君) 目下フランクに外務省とよく検討中でございます。
  26. 石田次男

    石田次男君 イエスかノーかで答えてほしいですね。     —————————————
  27. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) この際、委員の異動について御報告申し上げます。本日付をもって大和与一君が委員を辞任され、その補欠として加藤シヅエ君が委員に選任されました。     —————————————
  28. 石田次男

    石田次男君 大臣はお忙しいようですが、もうちょっとがまんして下さい。  それじゃ、問題をもうちょっともとへ戻しまして、グァタパラの既往経費の問題、あの問題片づきましたか。
  29. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 全拓連が使いました既往経費のうち、適法かつ妥当なものを海外移住振興会社のほうへ引き継ぐということになりまして、すでに払いました土地代であるとか、その他はっきりしたものは引き継ぎまして、そして、移住会社としてはどうも認めがたい、しかし、これは従来農協等が農協等の関連で使われた金で、農協の立場からは妥当であるというような額については、実は移住会社は認めないで、しかし、そういう農協全拓連側のコメントがあった金額を合わせまして会計検査院へ回す。会計検査院の意見を聞いて最終的確定をするということで、農林、外務、大蔵話をつけまして、その方針で進むことにいたしております。
  30. 石田次男

    石田次男君 事業団が発足すれば、やはりグァタパラの経営について事業団のほうへも当然吸収なされると思うのです。ですから、この問題については、特に三月の予算委員会で長々とお伺いしたわけですけれども、問題は事業団事業を委譲できるだけの結末がついたかつかぬかということですね。ついておらなかったら、いつ出すか、その点についていかがでしょう。
  31. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) これはただいま申しましたことは、一応移住会社側で見まして、不適当と思ったものは一応切り捨てたわけであります。そうして引き継いだのですが、会計検査院で、これはあまり切り捨てるのは酷である、この程度入れたらいいじゃないかという場合には、それを考慮してまた修正することがあるという了解でしておりますので、その形で引き継ぐことになっております。
  32. 石田次男

    石田次男君 農林省にお伺いします。このグァタパラ問題は客観的に見て私どもは明らかに失敗であったし、金の使い方が非常にどんぶり勘定で乱脈であったというふうに思うのです。農林省としてどういうふうに思っておりますか。大体これは手を出したのが間違いなんですね。
  33. 丸山幸一

    説明員丸山幸一君) 私ども海外移住一つの方式として、国内開拓のような方式、いわゆる農地も会社で造成をしてやる、ある程度の基本的なおぜん立てをしてやって、そうしてそこへ計画的に移住者を入れてやるというようなことは、これは国内開拓の場合にはそういう方式をとっているわけでございます。したがって、そういう一つの手厚いバック・グラウンドのもとに送出したらどうかということで、あの事業拓連系で始まったのであります。ところが結果は、実は一番大きな理由は、やはり移民方々が計画どおりに入っていかないということでございまして、本来ならば、ことしで終わるわけでございます。今の見込みでは三年くらいずれるというようなことでございまして、したがいまして、入植者が入らないということになりますと、当初もらう頭金ももらえない。したがって、会社の資金源が窮屈になるというようないろいろな問題が出てきているわけでございます。これは先ほど申しましたように、当初の計画について相当なそごがあったことは、これは率直に認めざるを得ないと思っております。しかし、グァタパラの入植者も行っておりませんけれども、一般の計画移民も、御案内のようにたいした数量実は行っておりませんが、その中におけるパーセントというか、率から見ると、グァタパラについては、ある程度一般に比べてこれは進度が高いわけでございます。それはそれといたしまして、現実はそういうような情勢になっております。私ども結果的に見れば、これは事志と違ったということは、これは率直に認めざるを得ないと思いますけれども、あの方式自体が、今後移民政策としてああいう方式というのは、これは落第というふうに烙印を押されると、ちょっと私どもいささかさびしい気がいたすわけでございます。これらの点については、よく今後も検討いたし、皆さんと御相談をいたして参りたいと思います。
  34. 石田次男

    石田次男君 私の言っているのは、入植者が予定数に満たないとか、あるいは経営の仕方がいい悪いとかいうことを言っているのではないのです。これは全拓連系がやった仕事ですよ、独走で。そうして一般管理費の二千六百万円ですか、これをめちゃくちゃにしているわけでしょう。それでグァタパラの開拓が成功したか失敗したか、これは仕事を始めてからのてこ入れの問題ですから、それはいいのですよ。よしんば失敗失敗であったとしても、それは救いようもあろうし、どうにでもできると思うのです。問題は全拓連移住の中の農業移住というものを独占的に扱って、そこでもってはね上がって、その結果大きな穴をあけている。さらに失敗している。この全拓連系の移住に対するあり方をお伺いしているのです。二千六百万円の使途について農林省側でこれは納得できるのですか、東京の一般管理費。
  35. 丸山幸一

    説明員丸山幸一君) 当初一般管理費は事業費の七%ぐらいをめどにして、全拓連の計画によりますと、七%ぐらいをめどにしてやっていたわけでございます。まあ普通仕事を始める場合において、会社が事業をやる場合においても、その他のことをやる場合においても、管理費は事業費に対して一定の比率が要るわけでございます。そこで大体七%くらいをめどにしてスタートをいたして参ったわけであります。ところが、その後においてこれを振興会社に引き継ぐという際に三省で——外務、大蔵並びに農林省で覚書をかわしまして、この経費のうち適正及び妥当なものについては会社に引き継ぐ、こういうことに相なっておるわけでありまして、適正及び妥当とは何ぞやということを当たっておりまして、先ほど移住局長が御答弁申し上げましたように、一応の検討はいたしたわけでありますけれども、なお、最後的には会計検査院のひとつ審査に待とうということに相なっておるわけであります。したがって、私どもとしては七%即すぐ無条件だ、オーケーだということを申し上げておるのではございませんで、適正妥当なものについては引き継ごう、こういうことになっておるわけであります。
  36. 石田次男

    石田次男君 今の話ですと、会計検査院がオーケーと言えばそれでいいと言っていますが、しかし、会計検査院をこの前の予算委員会で呼んで聞いてみたら、要するに農林省外務省、大蔵省、三省了解した分だけ監査するというのでしょう。二千六百万円について直接に突っ込んでいくという立場でないのですね、検査院は。それじゃ問題の本質は出ないわけです。これはどんぶり勘定でもってやらかして、結局使途が不明で、それを今度国家の金で出せと言っているわけですから、ここに明らかに大きな問題があるわけです。全拓連がやった仕事はこんなものだということを私は言いたいのです。それから、今言ったような地方海協の支部ですね、これは内容的には全拓連系の人間が占めている。そうしてさっぱり何もしていない。そういう点からいって、まだいろいろある。ぽつぽつ出しますけれどもね。そういう点からいって、過去は過去として切り捨てて、これは事業団に各県の海協連の支部を統合してすっきりして、その上で農林省のほうで協力すべきことは協力していく、そこまで踏み切らなければ、今までのくされ縁は切れないということなんです。それについて反対はしないが賛成もしないというような言い方で、一年も二年も引っぱっていったら、移住行政全体がどうなります。この行政全体はここ十年か二十年の間の勝負だと言っている。ヨーロッパのほうからどんどん入ってきている。移住全体の問題としては、技術移住の段階に入ってきていますが、農業移住もやはり大事だ。人間も相当なパーセンテージで入っている。それに対する考え方が、農林省側考え方が今までと同じ考え方でもって事業団ができたあとでもやっていったんじゃ、結局移住行政の体質改善ということは農林省にはばまれるわけですね。それについての農林省側の見解をはっきりさせんがためにいろいろな問題を出している。実は問題が大きくて大臣でなければだめだと思うのですけれども、まあ代表で来ているわけですから、もう少しはっきり意見を述べてもらいたいと思うのです。
  37. 丸山幸一

    説明員丸山幸一君) 支部の問題については、先ほど申し上げたとおりでありますが、実は今年度の予算については海協、地協に予算がついておりまして、したがいまして、予算上の措置は三十九年度からになっているわけであります。したがいまして、これは私どものほうも白紙みたいなことを申し上げて恐縮でございますが、予算時期にだんだんなって参りますので、外務ないし大蔵と相談して予算時期までに結論を出したいと思っておるわけでございます。なお、とかく従来あるいは意思疎通を欠くとかというような点があったことは、これは各機関についてあったことは、それは私は率直に認めざるを得ないと思うのであります。これは私ども、ほんとうに今回この事業団法を契機にいたしまして、お互いに反省すべき点は反省をして、ほんとうに協調をしてやっていきたいということを、私ども事務当局としてはその熱意に燃えているわけでありますので、御了承願いたいと思います。
  38. 石田次男

    石田次男君 私いろいろの角度から農林省のほうの移住に対する態度を打診しているのですがね。結局一番進歩して協調してやろうというのは大臣ですね。これは国会の答弁では、いろいろ農林省側の立場をカバーしてものを言っていらっしゃいますけれども、結局一番協調的で一番進歩的なのは大臣です。その足を引っぱっているのが実は農林省の事務関係ですね。そうしてそれは全拓連系につながっている。具体的な証拠をあげろと言われても私はここに出すわけにいかんのですがね。出せば大ごとになる。ですから、この海協連の県連支部の扱いについて、もうそろそろ農林省としてはっきりといつごろまでに事業団に渡すとか、もう少し話し合いを進めるべき時期に来ているのではないかと思うのですがね、その点はっきりできませんか。
  39. 丸山幸一

    説明員丸山幸一君) 先ほど申し上げました、農林省としては予算時期までに結論を出さなければいけないわけであります。したがいまして、それを目途に外務省とよく御相談をいたして参りたいと思います。
  40. 石田次男

    石田次男君 それから春にちょっと聞いたことですがね、全拓連系の幹部が農業移住協力会というものを作る運動をやっていましたが、その後の経過はどうなりましたか。
  41. 丸山幸一

    説明員丸山幸一君) 協力会というのは、実は全拓連、これは農協組織でございますから、事業以外の一般経費等は賦課金をもってこれはまかなうということが建前でございますけれども、なかなか賦課金は十分集まらないということもありまして、従来系統内部において、たとえば中央会あるいは地域機関あるいは共済連とか、その他系統内部の御協力をお願いいたしておった。これがばらばらに直接取引で——全拓連とたとえば中央会と直接取引で協力をお願いしようというようなことも、率直に申しまして各組織内におけるアンバラ等もございますので、ひとつ組織内部で相談をしようということで、かりにそれを協力会ということにいたしまして、内部で御相談いたしまして、ひとつこの程度協力全拓連にしようじゃないかということが協力会の実態のようであります。聞くところによると、その後一回くらいしか会合は実はいたしておらないように聞いております。
  42. 石田次男

    石田次男君 これは、ことしの二月の末に全拓連の一幹部が大阪商船の副社長のところに行って始めた話ですよ。結局、全拓連は農中金とかその他農業諸団体の援助で今まで運営されてきたわけです。ところが、だんだん事業実績が悪くなってきたのですね。結局それで関係農業団体から全拓連解散論が出てきているわけですよ。それじゃたまらぬというわけで、金集めにかかっているのです。そういうことで、大阪商船に乗り込んで移住協力会を作って資金的に何とかこれを持ちこたえよう、こういうわけですね。結局移住自体をよくしようとかどうこうの問題ではないようです。もちろんこれは民間の動きでありますから云々はしませんけれども、それでこういう行き方で移住というものが利用されたり、あるいは移住協力会という名目を立てた。名目を立てたがために、それに関連して移住行政のほうについて何らかの動きがまた出てくる。そういうふうにして仲間内からも見放されているような全拓連がこれからの移住にタッチしていくのは大いに弊害があると思う。その点については農林省のほうではこういう動きをどう把握していらっしゃいますか。
  43. 丸山幸一

    説明員丸山幸一君) 全拓連農協でございますから、農林省が指導いたしておるわけでございます。移住不振等と関連をいたしましていろいろな問題が出てきたと思うのでございますけれども、だからこれは移住行政については全拓連はガンであるという結論を下すというのは非常に時期尚早というか、それは酷であろうと私ども考えております。今度の事業団法の精神もやはりこれは農協組織なり何なりを育成し助長していくということであります。それは完全無欠とは申し上げかねますが、それはあやまちはあやまちとして改めて、せっかく移住目的とした民間組織としてできておるわけでありますから、私どもはあやまちがあるとすればそれは改めて是正し、育成していくのがやはり筋じゃないかというふうに考えるわけでございます。
  44. 石田次男

    石田次男君 今、全拓連系がやっていた仕事をちょっとだけ出してみたわけです。これに関連して農業拓植基金協会の問題もあるわけですね。これもやはり全拓連系の人は中央で一人ですか、地方では相当数が勤務しているわけですよ。こういう関係がどうもすっきりしないのですがね。しかも、農拓基金の金というのは相当に余っているでしょう。結局使い道がないから余る。余る金を一体じゃあどうするか、それから出てくる利子等の運営はどうするか、こういう点相当問題がありますが、きょうは詳しくは言わないつもりですが、そういうふうに結局もとをたぐってくれば海協連地方支部というところにしほられてくるわけですよ。全拓連地方支部、この関係にしぼられてくるのですね。それはあくまでも予算関係農林省側で押えておくとなれば、どこまで行っても移住行政はよくならぬということを私は言っておるわけです。こきおろすのは酷だという見方もある。また、それらについて事業のやり方を改善させればいいじゃないかという見方もある。やはり直接のいろいろな経過は経過といたしましても、思い切って事業団に、実務サービス機関としてしっかりやらせる、それに農林省側も大いに協力する、予算関係なんかも事業団にすっぱり渡して新しい体制でやったらいいじゃないか、私の意見はそういう意見です。農林省側はそこのところをどこまで突っ込んで考えていらっしゃるか、これをお伺いしているわけです。
  45. 丸山幸一

    説明員丸山幸一君) 先ほど御回答申し上げたとおりでございまして、とにかく私どもとしては移住行政を振興していく、よくなることに即して、その目途で、もし改むべき点があれば改めて参るという率直な気持でおりまして、外務省とよく相談を申し上げて早急に結論を出したいと存じております。
  46. 石田次男

    石田次男君 大臣にお伺いします。地方支部の扱いについて、現在大臣間でどのような話し合いまで進んでいるでしょうか。
  47. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもの間ではまだこの問題を取り上げておりませんが、今農林省側からも申し出がありましたように、来年度予算の編成の段階までによく話し合いまして、妥当な結論を得たいと思っております。  問題は地方の問題でありますけれども、何といっても外務省農林省との間の腹が合わなければなりませんので、これは今農林省側の御説明申し上げましたように、お互いにフランクになっておりますから、私はフランクな気持を双方が持っている限りすっきりと漸次問題は解決の軌道に乗ると思っております。
  48. 石田次男

    石田次男君 この次に移住基本法的なものをお出しになる、そこまで構想は進んでおいでのようでありますから、それまでの間に実務機関の中核——ある意味では中核にもなりますから、県単位の支部の問題、めどをはっきりつけてかかることが必要じゃないかと思うのです。そういう意味では、これからの大臣間の話し合いはむしろその辺に大きな焦点が来るのじゃないかと思いますが、そこまで、次の法案を出すまでに進められる覚悟がおありかどうか、その点をお伺いします。
  49. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 当然、私どもの責任でございますので、そういう方向努力をしたいと思います。
  50. 石田次男

    石田次男君 問題を、ちょっと観点変えますが、最近ドミニカから帰ってきた人たちからまた陳情のたぐいが出ておりますね。これは外務省のほう御存じですか。
  51. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) はい、存じております。
  52. 石田次男

    石田次男君 内容は、帰ってきてからの援護がさっぱり行き届かぬ、住宅の手当もなければ、これからの立ち上がり資金もどこからも貸してくれない、こういう内容になっておりますが、この点については内容御存じでしょうか。
  53. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) これらの陳情は、やはり補償金を主目的にしておられるようでございます。ドミニカ移住者に関しましては、昨年引揚者が帰られまして以来、外務省が一番責任を感じまして関係各省の御協力も得まして、就職、それから住宅、その他生活の安定のためのお世話につきまして、外務省及び海外協会が窓口になりまして、また県もこれに非常に協力していただきましてお世話して参りました。大体この問題は、満足ではないかもしれませんが、一応現在のところお世話ができたと思っております。  ちょっと御報告申し上げます。  帰国せられた方が百二十七家族ございますんですが、そのうち自家営業者が二十一名、それから職業訓練所入所者七名、それから児島湾干拓地入植者三名、南米再渡航者三名を除きまして八十七名の者が就職済みでございます。未就職六名ございますが、これは高年令者が二名。これはおばあさんが二人でございます。家族がなくてお帰りになった方です、御主人が向こうでなくなったりしまして。この方々は娘さんのところその他のところにおいでになりまして、一応きまっております。それからあと病気で長期療養者二名ございますが、この方は就職もできませんので、生活保護とそれから療養関係の保護を受けておられます。それからそれ以外にあと二名、自己の意思で就職しない方がございます。そのうちの一名は、奥さんと娘さんがお働きになって御主人が働いておられない。もう一人は就職を一度お世話いたしまして就職せられたのですが、それで満足でないということで東京で就職しておられない。このお二人の方が残っておられるのであります。  病人、訓練所入所者、就職者中低所得者に関しましては、生活保護の適用をしております。  なお、この生活保護法の適用につきましては、県といたしまして相当このドミニカ移住者は特別扱いをいたしまして、一定の収入になりますとこの生活保護が適用されないのですが、きわめて甘く見て、できるだけこの保護法をいただくように計らっているというのが県からの報告でございます。  なお、帰国者百二十七名の住宅状況は、自宅入居者が二十九名、公営住宅入居者が三十八名、就職先の社宅、工場寮等入居者二十四名、親戚同居、借家等入居者が三十三名、南米移住者で住宅の必要のない者三名、こういうことになっております。  なお、社宅、借家等入居中の方も公営住宅入居申請中であって、近くもらわれる方もございます。たしか私が聞きましたのでは、この種の一部の方も最近公営住宅に入居せられたように伺っております。  それから帰国者百二十七名中、家庭裕福で最初から生活保護の基準に乗らない者、及び本人の意思によって適用を辞退せられた方四十六名を除きまして、八十一名が帰国直後に生活保護法——これは医療保護、教育保護を合わせましての適用を受けておりましたが、就職等によって一定の所得に達し、逐次支給を打ち切り、または削減せられた結果、現在適用者は病弱で就労不能者、職業訓練所入所者、就労中低所得者等三十七名でございます。この適用者につきましては、さっき申しましたように、県のほうではこの生活保護法をできるだけ甘く見て、移住者のために特別考慮するということをやっておるわけであります。  その他国民金融公庫から事業資金の融資が実現いたしまして、五十万円の融資を受けられた方が一名ございます。それから、一部事業を計画せられて、相当大きい、これは鹿児島の漁業者の件でございますが、最初六百何十万円かの計画せられて、これは一緒にやられる方が六名か何かなければいけないというのに、その数がないというので、その計画がだめになって、また違う計画をやっておられるというような懸案中のものもございます。  大体お帰りになった方々につきましては、ドミニカ移住失敗であったから、損失補償ということはやらないで、現在の機構下においてできる限りのお世話をするということ、これは昨年の国会におきます決算委員会におきましても、大体のお考えが損失補償とかなんとかということになると、他の移住者に対する波及その他を考えて、無理であるが、今言ったような措置で、できる限りお世話をすべきであるということでございましたので、われわれもその方針でやっております。幸い昨今は労働状況が非常によろしゅうございますので、大体解決したと思います。ただ、現在東京に二名の方がおいでになって、今の陳情をせられたりしておるのですが、この方々ともたびたび接触をしておりますのですが、その方々は、団体交渉で何か損失補償のようなものを取りたいというのがお考えのようでございます。われわれとしましては、昨年来の経験で、団体交渉ということになると、かえって就職その他もできませんので、一人一人についてお世話をする。各自出身地においてお世話するということでやっております。しかし、今後とも県及び地方海外協会を通じまして一そうのお世話を続けるつもりでおります。
  54. 石田次男

    石田次男君 その件については了解いたしました。  それで、事業団の発足について一番肝心なのは、今言った県単位の問題と、それから事業団そのものの人事の問題と、それから出先であるブラジル、ボリビア、パラグァイ、そういった方面での今まで移住会社、海協連等がやっていた仕事、その内容の正確な引き継ぎ及び今までの弊害を除去した引き継ぎの仕方ですね、このところが問題になってくるのですね。ことし初めて会計検査院が現地へ行った。これは事業団ができたことと何か関連があったわけですか。
  55. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) そういうことではございませんが、従来会計検査院が海外へ、南米へおいでにならなかった。南米では海協連移住会社等相当大きな関係があるからということで、ことし初めておいでになった。事業団の設立ということも一つの刺激にはなったかと思います。
  56. 石田次男

    石田次男君 この検査院から向こうへ行った人たちですね、もう今月帰ってきたんじゃないですか、帰ってきておりますね。で、大和さんからもこれについて話があったということでしたが、内容を私聞いておりませんので残念でしたが、まだ正式な書類として監査の内容を発表するという段階までに来ていないのじゃないかと思うのです。しかし、外務省及び農林省としては当然のことですがね、現地へ行った人と会って、あらましアウト・ラインだけはお聞きになったのじゃないかと思うのですが、その点いかがですか、お会いになりましたか。
  57. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 私直接まだお会いいたしておりませんが、私のほうでお伺いして意見を聞いておるようでございます。これは詳細な報告はまだできないそうでございますが、大ざっぱなところ、私聞きましたところでは、その会計経理についての知識が不足して非常に不十分なところが相当ある、しかし、個人的な不正ということはなさそうであるというのが御意見のようでございました。
  58. 石田次男

    石田次男君 農林省のほうで聞きましたか。
  59. 丸山幸一

    説明員丸山幸一君) 私ども移住会社並びに海協連海外関係のあれを、直接には関係がございませんので、まだ実はお伺いいたしておりません。
  60. 石田次男

    石田次男君 この報告書は大体いつごろ出る見通しですか。
  61. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) ちょっと私わからないのですが、現在も会計検査院は外務省関係団体の検査もおやりになっておりますから、一カ月くらいの間にはできるのじゃないか、報告ができるのじゃないかと私推察いたします。
  62. 石田次男

    石田次男君 私がこの問題を持ち出した意味は、今度事業団ができても、事業団の人事と会計についての監査の機能がしっかりしないとたいへんだと思うのです。その意味合いで持ち出しているわけですが、事業団について監査の機能ですね、これはどういうふうに今後していく構想でいらっしゃいますか。
  63. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) これにつきましては、外務省全般といたしましては、外務省の会計課におきまして関係団体の一般的な監督といいますか、経理上の監査、勧告はやっております。  なお、事業団におきましては、監事が責任を持って監査していかれると了解いたします。
  64. 石田次男

    石田次男君 この監査の問題ですが、当然事業団国内と国外両方にまたがって事業をしていくわけです。国内のほうの監査というものはこれはやりやすいと思う。国外の監査のほうがやりにくくて、しかも問題が多いのですね。で、よほどしっかりした監査の機能を賦与しておかないと、せっかくの事業団が結局どろをかぶってやりにくくなるのじゃないか、そういう意味合いで、少し問題を持ち出したいのです。最近南米のボリビアから内地へ帰って来たあるお医者さんがいるのです。今、佐賀県におります。で、この人からいろいろと話を聞いたわけですがね、今、高木さんがおっしゃったように、検査院が行って調べた結果が、不正はないが知識の不足からいろいろ不十分な点が感じられる。まあそういうふうにおっしゃったわけです。局長としてはその程度しか今言えないかと思いますが、外務関係の人あるいは農林関係の人、両方にまたがって、現地に住んでいた人としては耐えがたいいろいろな問題を味わってきているわけですね。それらのいろいろな話を順序を立てて並べてみれば、不十分ではあるが不正はなかったようだなんと言っているようなしろものじゃないのです。もちろん一人の話をもってそれを真実なりときめ込むわけにはいきませんけれども、しかし、その一人の話の中に相当に裏づけられるものがある。それはその人の話及び別な角度からの話、そういうものを総合して共通するものがあるのですね。事実問題としては一致するものがあるわけです。ですから、事業団が現地で仕事を始めるについて、現地の仕事の引き継ぎについては、よほどしっかりせぬとたいへんなことになるなという、こういう感じを受けるわけですよ。その参考に申し上げたいのですが、前の海協連のボリビア支部長には何か問題がありませんか。
  65. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) それがきっと今の会計経理の問題と関連しているのじゃないかと思います。この点につきましては、私たちも実は非常に関心を持って会計検査院の方の検査の結果、まだ正式に報告はいただかないのですが、お伺いしたわけでありまして、結局、御承知のとおり、会計規則というものが、この会計というのは非常にむずかしい処理を要するわけです。そういう点についての知識が非常に不足しているために、会計法上からいえば、非常にでたらめなようなやり方をしている。しかし見ると、個人的には何ら個人が着服したとかそういうようなことがないようであるということで、会計検査院の帰られた方の御意見では、そういうことです。しかし、経理の仕方については、一向規則を知らないでむちゃくちゃをやっているように思われるというようなことを言っておられました。
  66. 石田次男

    石田次男君 むちゃくちゃであるが不正はないと、私の調べた範囲内では私はほぼあるのじゃないかと言いたいわけです。ここで名前を出して個人の将来を傷つけようという気持はありませんけれども、問題は、今までの海協連の支部長及びブレーンが現地で何をやったかという問題です。結局現地のワンマンになって相当なことをしておりますね。まあ、会計検査の面に出てくる面とそれから出てこない面があるわけです。その出てこない面のほうを一つ、二つちょっとだけ申し上げておきますが、この現地のほうに、この人はお医者さんですから、病院へ行ったわけです。その病院が海協連の支部長の支配下にあるわけですね。おそらくこういうことになりますと、この病院だけではなかったのじゃないかと思うのです。しかも、男女関係の乱れもあれば、一方的に手紙を全部開封して読んだりつぶしたり、まず常識では考えられないような事件があった模様です。しかも、こういうことが、半年、一年じゃなくて、継続的に行なわれているんですね。結局病院の経営についても海協連支部長の暗黒政治、こういう形なわけです。そういう点について、今まで外務省のほうでは現地海協連の動きというものは全然わかりませんでしたか。
  67. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 今のボリビアの場合は、大使館がラパスにございまして、移住地はサンファンの下のほうにあるわけでございます。大使館からできる限り再々移住地に参りまして、移住地のお世話なりあるいは監督をしていたわけであります。最近になりまして、移住地のすぐ近くのサンタクルスに大使館の出張所——まだ領事館とは正式に申しておらないのですが、出張所を作りまして、もっな接近した移住地のお世話をする態勢になっております。最近におきましては十分移住者の事情をつかまえていると思いますが、初期におきましては不十分であったというきらいは免れないと思います。
  68. 石田次男

    石田次男君 それで、この開拓地というところはほとんど無警察状態なんですね。法というものを無視して、金銭、人事その他いろいろな関係で相当無軌道なことが海協連幹部の間で行なわれていたんじゃないか、私はこういうふうに推測をするんです。そうしてその辺で起こった不正の疑惑を持たれるような行為をした人たちは、都合が悪くなると飛ぶんですね。ここへ出てきているのはボリビアの事件ですけれども、例外なしにブラジルへ飛んでいます。結局ボリビアでいろいろなことをして、そのあとで抜き差しならなくなるとブラジルに飛んでしまう。そういうようなことで、事件が表面ざたにならないようなことがあるんじゃないか。結局移住行政としてそういう点が盲点になっているんじゃないかと思うんです。今後も盲点になるおそれがあるんじゃないかと思う。事業団あたりがよほど人の動きと金の動きと、それらについて正確な強力な監査機能を持たなかったならば、やはり事業団も今までの海協連等と同じように現地移住者の信頼を失って、結局、外務省は何してるんだ、農林省は何してるんだ、また海協連は何やってるんだと、それと同じようなことを言われる立場になってくるんじゃないか、こう思うわけです。  それについて、ボリビアに天川事件というのがあったんです。どういうことか私詳細はわかりませんですが、何かこれは日本人同士の殺人事件だと言っていましたがね。
  69. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 私正確に存じませんが、三、四年前のことではないかと思います。そうして、これは御承知のとおり、ボリビアのサンファン移住地はほんとうに原始林の中に日本人開拓しているところでございます。たしか今おっしゃったように、日本人だけの社会であって、警察も外からもなしに、内においてもある意味において無警察であって、お互いの自治でやっているわけであります。その際に、きっとその話だと思うんですが、ある日本人移住者がおられまして、これは非常に素行が悪く、酒を飲むと乱暴をしてピストルをぶっ放すとかいうようなことがあった。その結果、この方はボリビア政府から強制退去を命ぜられて日本へ帰って来た。そのことじゃないかと思いますが、それ以外には、昨年邦人が自分の雇っていたボリビア人から、金を持っていたのがわかって殺されたというケース、その二つしか私覚えないのですが……。
  70. 石田次男

    石田次男君 これは事件内容については現地間ではっきりわかっているのですね。某県出身の代議士が一ぺん調査に行ったことがあるそうですな。結局ごまかされて帰って来た。こういうふうにうやむやになって無警察状態です。奥に入ると、結局、内地では良識を持っている人たちも、だんだん生活環境からこういうことが起こりかねない、こういう一種の社会不安もあれば、あるいは農産物の過剰でもって、これはしたけれども、これを金にかえることができぬというような悪条件もあり、そういうことでよほど現地の受け入れ体制並びに移住後の援助、監督というものを強化しないと、今後事業団はできても移住は伸びない。やはりそういったことが伝わってきますと、これは内地から行こうという者が二の足を踏みます。そういうようなことが多々あるわけです。でありまするから、今度会計検査院で行って、そこから出てきた問題等については、これは単なる金の数字的問題ではなくて、深く掘り下げて研究をして、それらを今後の政策の中にぜひ盛り込んでいただきたい。あるいは、それらの問題の起こる点を、法制上の処置並びに組織上の処置、運営等を通じて思い切った改善の手を打ってもらいたい、こういうふうに思うわけです。その点大臣からひとつ。
  71. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いろいろな事例をあげて、移住地における移住事業だけでなく、移住地の社会におけるモラルの問題につきましての御指摘でございまして、これはやはり政府はもとより、事業団といたしましても、先ほど局長からも申しましたように、過去の失敗、前車の轍を踏むことのないように十全な、周到な態度で臨まなければならぬと思うわけでございます。また、それと関連いたしまして、今後の私は法律、制度という問題よりも前に、人間の問題があると思うのでございまして、できる限り清新な人材が熱意を持って事に当たるような環境を作ることが第一だと思うのでございます。しかし、それをもってしてもなおまだ足らないというような面につきまして、法制上の必要があれば、それはまた検討して参ることにやぶさかではございません。
  72. 石田次男

    石田次男君 これに関連した事例としてあと一、二出してやめますですが、今までそういった病院の設備ですね。医療機械等相当こっちからてこ入れして応援して出しているのは事実です。ところが、現地へ病院を建ててその機械を運び込んでも役に立たないんです。というのは、こっちで作った機械はみな高度な機械で全部電気で動くんですね。向こうへ行ったらサイクルは違うわ、電気は来ないわというわけで一つも使いものにならない。だから、自分は医師として数年間現地にいたけれども、開腹手術を要するような患者に多々会ったけれども、結局は使えないというのです。そういうことで、移住全体に対するこの機械の導入、それからいろいろな角度の物資の援護ですけれども、現地の実情に合っていないのです。農業機械もそうです。ドミニカの場合もそうです。あすこへどんどん機械を持って行ったけれども、結局使ったのはつるはしだけだとなるのです。その点で、内地の人の考えておる現地の情勢判断というものは、非常にずれておる。これらの調整が今後非常に大事なように思いますが、その点、現地と内地との交流、ないし情報の交換、そういったことはどの程度改革していかれる気持があられるか、その点をお伺いしておきます。
  73. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) ただいま御指摘欠陥は、われわれも痛感いたしておりまして、できるだけ現地に即した措置を講じなければいけない。また、せっかく医療機械を出しながら、発電関係の設備がおくれておるというような、これは予算の点で半分切られたためにできなかったということもございます。そういう点で、われわれとしても不十分であるということを痛感いたしておりますので、ただいまの先生の御質問の点は、人事の交流、情報の交換、それから、われわれ在外公館の側面よりの協力によりまして、そごのないようにいたしたいと思います。機械につきましても、たとえばパラグァイのごときは、初めにべらぼうな大きな機械を持って行って笑われたこともございます。ずいぶん失敗いたしておりますのですが、もう戦後、移住が始まりまして十年になるわけでございますから、ここらで事業団設立の機会に、ほんとうに先生が御心配になっておる点を矯正するような趣旨で、そういうことを工夫して事業団が実行するように努力いたしたいと思います。
  74. 石田次男

    石田次男君 問題は、これらの事件を通じてはっきりと出てくることは、そういった現地とこっちのそごがあるにもかかわらず、今まで海協連並びに移住会社のほうでは、ほとんど本国のほうに誠意のある運動や報告というものはしていない。結局、向こうへ行って大将になって現地の天皇式なものをやるのです。だから、病院を作るについても、初め組合の米倉庫を建設するという名目で移住振興会社から金を借りたらしい。とんでもないことをしておる。  それから、もっとひどいこともあるのです。これは言っていいか悪いかわからぬのですけれども、現地へ女部屋を作るという動きがあったそうですよ。しかも、これは建物を作り始めたというのです。そうして、それがまずくなって、本人は最後にブラジルへ飛んでおる、投げ出して。そういうようなこともあるのです。  それから海協連の現地支部長——前支部長ですけれども、相当横暴なことをしたのじゃないかという疑いを私は持つのです。一言でいえば、下剋上的なもので、人事に対して相当強権をふるった、こういうようなことも現地ではうわさになっておるわけです。あえて、うわさと申し上げておきます。  それから視察団が現地へ行った場合の扱い方が、どうもこっちの視察団のほうとしても、結局、視察の目的を果たさずに帰ってきておる。なぜ、その視察の目的を果たして帰って来れなかったかということについては、現地のほうの動きに責任がある。  そういうふうなことがたくさんあるわけです。でありますから、このボリビアだけではなくて、もうおそらく南米各地の海協連支部の動きについては、相当に目を届かす必要がある現状になっておるのじゃないか、一を見て全体をそうだと言っては失礼になりますけれども、しかしながらそういう疑いもある、こういうようないろいろな話が現在ございます。ですから、よほど現地側の問題解決に対して今後強力に本腰入れてやりませんと、結局移民全体がただ観念になって——移住が伸びない原因は現地にも大いにある。こういう実情については外務、農林両省のほうでどの程度にわかっていらっしゃるのか。もちろんわかっていてもここには出せないことは多々あろうと思いますけれども、しかしながら、それについての今度は改善意欲がなかったら、これは外務省としても責任問題になりますからね。そこらに対する情報の集め方、問題に対する外務省の決意といったようなものをお伺いしたい。
  75. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) その点はわれわれも十分痛感しておりまして、邦人が相当多くおります移住地につきましては、新たに領事館を設置する。たとえば今のサンタクルスはまだ領事館は設立していませんが、出張所を出す。また、パラグァイの移住地の近くのエンカルナスにも今度は領事館を作るように予算的にも努力するというような措置を一方でやりますとともに、在外出先公館全般といたしまして、海外協会及び移住会社の活動につきましては十分目を光らすということでやっておりまして、最近におきましては相当事情がよくなっているように私考えるのであります。しかし、今度、事業団になりますれば、組織も、民間団体である海外協会連合会から、特別の法律に基づく事業団となるわけでございますし、より一そうしっかりとした体制移住推進ができるというふうに私は思います。なお、ただいま先生がおっしゃった点は、事業団自身の心がけとしても十分徹底し、そして、これにわがほうの出先が協力する態勢を強化するということでやりたいと、その決意いかんという点ですが、確かに先生のおっしゃったように、この移住推進の非常に大きな要素は出先におけるお世話のいかんでございますので、その点は十分注意いたしたいと思っております。
  76. 石田次男

    石田次男君 今度は大臣にお伺いいたしますが、これについては現地の大使館、公使館、領事館のたぐいが全然知らないんじゃないですか。つまり、現地の公館が儀礼外交ばっかりやっていて、ほんとうに移住者なんかとの接触がゼロに等しいような状態になっているんじゃないでしょうか。その点はどういうふうにお考えでございますか。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今御指摘の問題は、非常に大きな問題だと思うのでございます。私どもも、外務省の出先の陣容がどういう規模であらねばならぬかということにつきましても、各国と比較いたしましていろいろ検討いたしておるのでございますが、たとえば先進移住諸国では、本国人一人に対しまして現地で雇用いたしました補助的な役割を果たす職員が一おるわけでございますが、わが国ではそれが四分の一であったり三分の一であったりする現状でございます。つまり、要員全体が不足しておる、絶対的な不足にあるということはどうもいなめないようでございます。したがって、御指摘のようにやっておりますと、それでもう時間がとられてしまうというような弊風がないと断言し切れないものを感ずるわけでございまして、これは一つには在外外交陣容というものの整備というものを漸次進めて参らなければならぬと同時に、やはり心がまえの問題でございまして、現在移住地を全然閑却して見ないかというと、そうではないと思いますけれども、なお一段と熱意を持ってこれに当たるような気風、積極性をエンカレッジして参るように私としては努力しなければならぬと思います。
  78. 石田次男

    石田次男君 今の続きでございますが、大体ですね、大使館あたりで年に一回でも移住地見て回っていますか。
  79. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 現在は回っております。たとえばブラジルのごときも、今ブラジル大使が、御承知のとおりブラジルは非常に広いのでございますが、アマゾンの移住地各地を回りまして移住者を激励する。これだけではなく、全地域を——これはもう一つ一つ移住地を回ることはとてもできませんが、おもなところを回る。サンパウロの総領事も移住地を回り、その各地の州統領にお願いするというようなことが任務になっております。それから人里離れたような移住地、たとえばボリビアのサンファン、パラグァイのアルトパラナ、こういうところも現在では再三大使及び館員が訪問している実情でございまして、最近移住地をたびたび訪問しない館長というのはむしろございませんです。
  80. 石田次男

    石田次男君 大使館員と現地の海協連移住会社等の幹部との接触の程度はどうでしょうか。
  81. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) これは大使館なり、総領事館の所在地の海協連支部あたりは、むしろ大使館なり総領事館の中に事務所を置くくらいにしてやっております。しかし、大使館、総領事館と離れたところに働く海外協会連合会の指導員と申しますか、こういう方々との接触は、全部十分のことはなかなかむずかしいと思いますが、わがほうの出先としては相当努力していずれもやっているというふうに見ております。
  82. 石田次男

    石田次男君 これらの領事館、大公使館から現地の移住関係について定期的に報告をとる仕組みになっておりますか。なっておりませんか。
  83. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) これは定期的というよりも、もっと再三報告いたしております。
  84. 石田次男

    石田次男君 報告をとっているにしては、全然問題が出てきていないように感じますが、その報告の中で、この一年くらいで何か問題じゃないかと思うようなことはございましたか。
  85. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) ございます。それはたとえばボリビアの場合は、ボリビアの日本人移住者は米作をやっておりまして、最近はそれ以外にジュートの栽培とか、あるいは大豆の栽培を計画しておりますが、まだそこまで行っていない。ところが最近ボリビアがアメリカの余剰農産物として米をもらったということで、さっき先生ちょっとおっしゃったように、米の過剰が一時的に起こったということで、わがほうの出先大使はボリビア政府に申し入れて、余剰農産物としては米を除いてもらいたい、ほかのものを入れるようにしてもらいたいというようなことを要請した。しかしながら、ボリビアの移住地につきまして米作一本の体制を一日も早く改善しなければいけない、この問題は焦眉の問題であるという注意が来ております。この点についても、われわれとしては、事務当局といたしまして関係省とこの対策を急がなければいかぬものと思っております。それから今のような大きなものにつきましては、直接大使館、公使館から報告がございますし、それ以外に海外協会連合会の出先が本部に送りますこまかい報告の写しを送って参ります。それを見ておりますと大体わかるのでありますが、今言った人間の争いの問題とかいうことになりますと、ちょっとわからないというのが実情でございます。
  86. 石田次男

    石田次男君 あと具体的には、会計検査院の検査結果が公表になりましてから、その報告書次第でいろいろお伺いしたいと思うのでありますが、要するに、今いろいろと申し上げたような件、こういうことが各移住地で相当にあると私は思うのです。ということは、結局一人の話だけではなくて、最近帰って来た人、あるいは現地の移住者からの報告、それらを突き合わせてみると、共通する点がたくさん出てくるのです。でありますから、全体的に内地で考えている以上に乱脈なものがある。大陸へ渡って気が大きくなるせいか、人事関係、男女関係、それに金の関係、これはきょうは出しませんですけれども、えらい情報も入っているのです。そういうことで、全体的に移住者の指導者的立場にある階層の人を絞め上げなければ移住者が苦しむと、結論的には私はこう申し上げたいわけです。しかも、それに対して、現地へ行った人たちの保護並びに援助に当たられる大使館、領事館といったそういう関係者がすっかり浮き上がって、形式的な儀礼外交ばかりやっておって、本省で考えていらっしゃるような移住者のてこ入れは一つもしておらぬ。いわんや、実際に何が起こっているかなんということは、海協連の幹部あたりにだまされて、何も知ってないような、そういうようなことを感ずるわけです。そうでありますから、特に南米関係の在外公館については、移住関係を強力にやるメンバーをそろえておく必要がありはしないかと、私は私なりにそういうことを感ずるわけです。こういう点をひとつ外務大臣、大いに参考にしていただいて、事業団ができるのを機会に、何か抜本的な対策を講じていただきたい、こういうふうに要望申し上げる次第です。
  87. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 衆議院におきましても、私ども承知していない移住社会の内面にわたっていろいろの人が御指摘になりましたし、ただいま石田先生からも同様な御指摘がございまして、実は官辺にまで一々インフォーメーションが浸透していないうらみがあるのではないかと私も感じておるのでございまして、両院を通じての御論議はもう一度振り返りまして、現地の官憲にも徹底するようにいたし、事業団を初め大公使館の人事につきまして、これを機会に一ぺん見直しまして、刷新の挙に出たいと考えます。
  88. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 外務大臣にお伺いします。今度移住事業団ができるわけですが、今までの海協連、それから移住振興会社、これがどうもたいへんうまくいって、そうして仕事はいい成績が上がった。だから二つ一緒にして、もっといい成績を上げよう。つまり相乗的効果を表わすために、移住事業団というようなものを作ったのではないと思うのです。おそらく、あまりうまくないから、何か新しいものを作ろう、こういうことで新しいものを作ることになった。そこで私どもが考えますのには、この移住事業団に、前の二つの会社がいろいろ欠陥があった、その欠陥をそのまま引き継がれてはこれはたいへんだと思います。そこでお伺いするのは、もし前のこの二つの団体に欠陥があったとすれば、その欠陥を除去して、そうして新しいものを出発させなければならぬ、その二つの団体が今までいろいろ御指摘のありましたような欠陥もあったのですが、外務大臣としては、どういう点に欠陥があったか、それは組織の上の欠陥と、それから運営上の欠陥があるわけですけれども、その欠陥はどういうふうにお考えになっているか、それを伺いたい。
  89. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この前にも申し上げましたように、これは損得でディメリットがちゃんと判断されるような営利企業でございませんし、政府のあてがった予算でサービスをやるという仕組みでございまして、しかも、それに対して政府側からいろいろな注文をつけて、これに対する監督も多岐であったという状況下におきまして、いろいろな仕事の停滞繁雑が出てきたのではないかと思うのでございますし、両団体の間で現地における移住指導につきまして重複の面もあったと聞いておるわけでございまして、そういう点、一度新しい出発をするほうがいいと私は考えます。  それから第二点として、海協連にいたしましても、移住振興会社にいたしましても、これはいわば民間の団体でございまして、確たる身分の保障もない、待遇もまた菲薄であるというような状況でございますので、これを権威のある特殊法人に格上げをいたしまして、一ぺん身分の保障をすると同時に、モラルも確立するということによって、今までの弊害が除去できる面があるだろうと私は思うのでございます。しかし、しからばこれによってすべての弊害が矯正されるかということまで楽観的には思えないのでございまして、問題は、せっかく作り上げるものを今からよく育てなければならぬと思うわけでございまして、したがって、今までおりました要員につきましても、今それぞれ吟味していただきまして、だんだんと淘汰して参りまして、きびきび働けるアクチブな方々に残っていただくように配慮しつつあるわけでございます。今から役員の選考にかかるわけでございますが、役員もまた公正な清新な人材を持って行くようにし、また御就任をお願いするにいたしましても、よほどの覚悟を持って当たっていただかなければなりませんので、私自身も御懇談申し上げてとくとお願いをして、不動の責任感を持って当たるようにしていただきたい。そういたしますれば、今までの問題、いろいろな不始末、思わしくいかなかったものの矯正に私は相当役立つものと考えておるわけでございます。
  90. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 この二つの団体が新しい一つの団体になっていくわけですけれども、先ほどから石田さんも御指摘になり、また昨日も大和さんも御指摘になっておりましたような不始末の事件が起こっております。海協連にしても何にしても起こっておりますが、これは不始末というのは、やはり人が起こしたので、その人がその不始末を起こしたまま今度の団体に引き継がれるということであっては私はならぬ、これはそういうようなことになりますと、せっかく移住事業団が新しく発生したって、一向改まらないのじゃないかという印象をよそへ与えるばかりじゃない。やはり同じようなことが繰り返されるおそれがあろうと思うのです。たとえば今、石田さんがボリビアの不始末のことをあげられました。このボリビアのサンファンの移住地でもって海協連の支部長が金をでたらめに使った。そのために、会計検査院が行って、これをまあ不正はないけれども、とにかくでたらめな使い方があったということは、あなたのほうでもお認めになった。一体こういう人はどういう責任をとらしたのですか。こういう人は今度の団体へ引き継がれるのですか、そのまま。そこをちょっとお伺いしたい。
  91. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) ただいまの点は、私のほうも十分検討をいたしまして、今の御注意が無にならないようにいたしたいと思っておるわけでございます。まだ具体的に今度の事業団の人事全部を確定しておりませんけれども、十分その点は考慮して参りたいと思います。
  92. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 海協連外務省のほうで監督しておるわけですね。そしてボリビアの事件が起こって、そしてあなたのほうも、紊乱しておった、こういう報告は受けたと思うのですね。その際外務省からどういう注意を与え、その無責任なことをやった人に対してどういう処置をとりましたか。
  93. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) ただいまの予算の会計経理の問題につきましては、この支出が——その経理が正確でないという点は昨年の暮れごろわかりました。そしてこちらのほうから、これはやはり海外協力連合会から行く前に十分言ってあるはずであるので、知っているはずであるにもかかわらず、こういうことであったということで、この会計経理につきましては、今支部長と言われましたが、そのあとの人から始末書がとってあります。それから、今言われたその支部長はこちらへ帰っておりますが、外務省といたしましては海協連に厳重な注意をするとともに、今後再びこういうことのないように、会計について相当経理に明るい人をさらに派遣しました。こういうことをやっております。今言われた支部長をどうするかということについては、今日の段階ではまだ最終的な決断が出ておりません。
  94. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それで外務省監督の責任が務まるのですか。新しい支部長、あとから行った支部長は始末書をとられる。前に紊乱をさした支部長は、東京へ帰って来て本部におってのほほんとしておる。それに対して外務省のほうでは、その海協連に対してそういうことは今後十分注意するように、これであんた監督になりますかね。大平外務大臣どう思います。そういう監督はりっぱな監督だと思いますか。
  95. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ外務省のやり口につきまして、本委員会におきましてもいろいろ御指摘があったので、まあそこは上品過ぎるじゃないかという御批判もありまして、そういう御批判は私もある程度当たっておると思うのでございます。要するに、外務省移住行政をやる場合における強靱な意志力というものも若干欠けておったのじゃないかと私も思います。したがいまして、数々の御注意もございますし、私自身もそのように感じますので、一段と活を入れなきゃならぬ。それから、不正は不正として、正すべきものは正さなければいかぬし、けじめをちゃんとつけなければ、とてもモラルの確立になりませんので、その点は責任を持ちまして配慮して参りたいと思います。
  96. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今問題になっている人は、三十七年三月にこっちに帰って来ております。そうでしょう、局長、どうです。
  97. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) お話しになっている支部長は、そうでございます。
  98. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 こちらに帰って来る際、外務省の某参事官が前の森重理事長のところに行って、その人をこちらに帰すようにということを進言しているのですね。それはお聞きになって知っておりますか。
  99. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 存じております。
  100. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 外務大臣、どう思います。こういうような会計の紊乱を起こした人を、その人の責任を追及しないで、そうして某参事官海協連の理事長——この方はおやめになっておりますが、そこに行って相当きつい談判をして、こちらに呼び戻さしたということになると、これはどういうことになりますか。
  101. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) その事情は、ちょっと申し上げますが、これはその本人の父が非常な高齢で危篤に瀕するというか、いつ死ぬかわからない。もうボリビアに行ってから非常に長いので帰していただきたいという家族からの申し出がありまして、そのことを伝えたのであって、きつい云々ということはございません。
  102. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 お父さんが高齢で病気だからこちらへ帰していただきたい、それはよろしいのですが、そういう場合だと、おかしなことをやって、そうして非難を受けて逃げ出さなければならぬような事情になった、そういう者をかばうのですか。
  103. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) ただいまの経理の問題は、昨年の暮れからわかったことでございます。それまではそういうような経理上の問題は、全然承知いたしません。
  104. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 しかし、前支部長というのは、それまでにいろいろな問題を起こして、ずいぶん現地で問題になっておるのですね。それは先ほど石田さんもいろいろ言われておる。私も別のほうからいろいろ報告を聞いているのです。そういたしますと、結局ボリビアの在外公館が、そういうような人について、何ら報告も受けてなかったか、あるいは報告を受けても、それはうやむやにして、その人をかばっておったのか、そのどっちかだと思うのですね。もし報告を受けておらなかった、あるいは監査が行き届かなかったとすれば、これはあなた、おかしな話ですし、それから、そういうような報告を聞いておって、あるいはそういう情報を知っておって、在外公館がこれに何も手を打たなかったとしたら、あなた、これは無責任もはなはだしいというよりも、むしろ悪いことをするのをかばうようなことになるのじゃないですか。
  105. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) ただいまのモラルの問題は、私は全然存じませんが、一番最初に私がちょっと申しました、あすこで非常に酒癖の悪い人がおられて、そうしてだれ彼となくピストルでおどかすというようなこと、それから、あの移住地ではやはり組合、団体が必要であるということで、販売部を組合として作ったところが、その方が自分で個人でまたその前に販売部を作るのだということで騒いだというようなこともございます。その点におきましては、今言った支部長が相当思い切ったことをやったということはよく存じております。そうして、これはやむを得なかったと思います。  それから、先ほど御説明申し上げませんでしたが、在外の日本人社会というのは、ある意味において日本の社会の縮図であります。大きいところ、小さいところもみなそうであります。非常にいいところもありますとともに、非常に悪いところがあるのです。それから、今のボリビアとか。パラグァイのような移住地には、これは行きました移住者の農業団体、協同組合、こういうものを中心にして、なるべく団体でやっていかなければいけないのです。また、団体でやっていくことに対して、今度はまるっきり反対をする方があって、みな非常に迷惑せられておるということも相当ございます。そういう点におきまして、私ども今日まで承知いたしましたところでは、その支部長は相当自分自身の身の危険もございましたが、相当よくやったというふうに実は承知しておったのでありまして、その婦人関係とかなんとかということは、私たち全然存じませんでした。
  106. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ともかく在外公館の人たちは下世話に通じない面があるんじゃないでしょうかね。まあそれはそれでいいとして、今度はドミニカのほうがああいう失敗がありましたね。もちろんあの失敗にはいろいろな原因があると思うんです。たとえば向こうに政変があったこともそうでしょうし、いろいろあろうと思うんですが、そういうのは別として、まあ調査が足りなかったという点が私は非常に大きな原因だと思うんです。それであの話に飛びついて、そして行ったのはやはりあすこの海協連の支部でありますが、同時にまた、在外公館だったろうと思います。そうしますと、一体あすこの海協連の支部なり在外公館なりというものは、十分なる調査をしなかったんでしょうか。
  107. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) それはドミニカ移住の話ができまして、それからわがほうの在外公館ができ、移住者と一緒に海外協会の支部員が支部として出た次第でございまして、移住者の行く前は内地から視察団が参り、調査団が行ったわけであります。
  108. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 あすこの公使館ですか、たいへん調査が行き届いていなかったそうで、現地まで行ってないそうじゃないですか。
  109. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) それは、公館が行く前に日本から調査団が行きまして、移住者が行くということになって、公館が始まったのであります。そしてドミニカでは、ドミニカ政府移住地を決定するということで、日本だけじゃなくて、スペインとか、あるいはイスラエルとか、その他あれはドイツ人の植民地もございましたか、そういうものを勧誘して入れたわけであります。で、これらのドミニカ政府の企画いたしました移住地は、最初の視察団は視察しているというふうに私了解しております。ただドミニカ政府はその後もいろいろの移住地を計画すると、あるいは新たに灌漑装置を作って、施設をしてそれから入れるというような計画で、計画半ばで募集していた。そして最初にスペイン人とかが入って、日本のほうがあとで入ったときには、ドミニカの作った灌漑施設が、土木技術が劣っていたことで、土地が十分農耕に適していなかったために、スペイン人のところまでは水が行ったけれども日本人のところまでは届かなかったということで、ほかへ移したということがございます。
  110. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 どうも私の質問にお答えになっておられないんですがね。こっちから調査団が行って調べた、そういう場合にはドミニカの在外公館は調べないで、のほほんとしているんですか。
  111. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 私申しましたのは、在外公館は移住者が行くようになってからできたのであります。
  112. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 で、悪い問題は移住者が行くようになってからできた。その際に最初からいろいろ問題が起こっているわけですけれども、その最初から問題が起こっておるときに、一体ドミニカの公館はどれだけ現地へ行って視察されて、そしてこれはむずかしいということだったならば、どれだけドミニカ政府と交渉をし、また内地に報告をして、この問題について早期に手を打つことをしなかったのか。
  113. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) これは非常に複雑な関係がございまして、最初行かれまして問題になりましたのは、与えられた土地が非常に少ないということの苦情でございました。それでドミニカ移住者につきましては、他の移住地と違いまして、ドミニカ政府が生活補給金を出していたのであります。これは一家族六十ドルから百二十ドルくらいの補給金を出していた。そして最初ドミニカ政府との話し合いで、第一回の収穫があるまでこれを補うために生活補給金を出すというふうになっていたのでありますが、先方の土地が思ったより狭かったとか、あるいはさっき申しましたように、行ったところが灌漑施設が十分でなかったからほかへ移らなければいかぬというようなこともございましたのですが、行きました移住者のほとんど全部が、その後もずっと続けて生活補給金をもらっていたのであります。ところが、一昨年ですか、その前でございますか、キューバにカストロ政権ができまして、ドミニカの大統領、独裁者であるからこれは非常に目の上のたんこぶであるということで、キューバからドミニカの国のまん中に、ちょうど日本移住者がおります近くに侵入の飛行機が入ったのです。こういうことがきっかけとなりまして、ドミニカ政府では国防に力を入れる、海岸のほうも船を出すとかいうことで、国防費に非常に金がかかって、だんだんこの生活補給金が削られていった。あるところではなくなったというようなこと、それから、そういうようないきさつからドミニカのあれは前の大統領も相当の人であって、自分に反対するキューバとベネズエラ政権に非常に不満を持っていたのですが、その間ベネズエラの大統領のベタンクール暗殺の事件が起こりまして、これに関係があるのだということからドミニカは汎米諸国から国交断絶を受けて、経済断交を受けた。そのためにドミニカで作っておりましたものが輸出できなくなったということで、経済情勢が非常に悪くなった。それからこの問題が起こり出したのでございまして、初めの新聞あるいは現地から録音のテープなんかも来ておるのでございますので、これによりますと、むしろ入った移住者は、非常にいいところだと言っておられるのが実情でございます。この問題が起こりましたのは、キューバから侵入軍が入ってきたということ、一昨年でしたか、一昨昨年のことでございます。
  114. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は、こっちの在外公館がどれだけ調査や何かをやったり、そういうような事件が起きたときに活動していたかということを聞いているので、キューバが侵入してきてドミニカの政治情勢やあるいは経済情勢が変化してきたことをお聞きしているのじゃないのです。つまり、在外公館のこういう場合にとる措置並びに責任というものが、一体どこにあるかということをお伺いしているのです。
  115. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 在外公館は積極的にドミニカ政府に働いておりました。まず、土地をもっと広くもらいたいことについても交渉しておりました。あるいは土地をかえるとかいうことを、言っておりました。それから生活補給金が、これはさっき申しましたように、第一回の収穫までということでございましたが続けておりまして、これが切られたような場合にも、これを続けてもらわなければ困るというような交渉をやっております。それから、その他これは移住者が参りました移住地は国有地でございまして、十年ないし十五年たった際にその所有権が来るのだということになっていた。それまでどうもはっきりせぬじゃないかということで、この点につきましても、大使館から先方の政府に、一札よこせということをたびたび交渉しておるのであります。
  116. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先ほど私が在外公館が調査をしてなかったじゃないかと言ったら、まあ移民が行くようになってから在外公館ができたのだ、こういうお話でした。しかしですな、ドミニカとはそれまで国交があったでしょう。あそこに在外公館がなくたって、どっかの大使館なり公使館なりがやはり兼任でドミニカのほうを見ていたのですか。そうじゃないのですか。やはりそのほうは何も見に行かなければ、話にも乗ってなかったのですか。
  117. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) ドミニカへの移住の勧誘は、在京のドミニカ大使から日本政府のほうに話がございまして、中米は、あの当時はワシントンの大使館が管轄していたと思います。それでワシントンの大使館から人が行ってもよくわからないので、むしろこちらのほうからそういう専門家をやったのは妥当であると思います。本省のほうから出したわけであります。
  118. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 本省のほうから出したのですね。そうするとやっぱり外務省ですね。そうすると、外務省の人が向こうへ行って、あまり現地へ行かなかったようなお話なんですが、ほんとうですか。
  119. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) いや、現地で見ております。
  120. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それならもうちっとよくわかりそうなものだと思うのですがね。どっかドミニカの首都か何かでもって適当に遊んで、向うの役所の話を聞いて帰ってきたのじゃないですか。
  121. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) この点は、実はもう少し御説明しなければいかぬのですが、このドミニカ移住地ドミニカ政府が作りました移住地につきましてはFAOも協力しておるのです。それでFAOが相当の調査をとる、そうしてFAOの協力のもとにやっておりまして、これについての信頼も相当あったのだろうと思いますが、日本側からも外務省の者、農林省の者で団を組みまして調査しております。
  122. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 FAOのほうが何と言おうと、結果がこういうことになったので、あとから責めるのもあるいは気の毒かもしれませんけれども、しかし、じゃあなたは外務省のほうから出した調査団は十分に調査をした、責任ある調査をした、しかし、別な事情でもってああいう失敗になったのだ、そういうふうにお考えですか。万全の調査だとお考えですか。
  123. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 決して万全であるとは思いません。非常に不足であると思います。
  124. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 非常な不足な調査をしたのだということになりますと、ドミニカ移民失敗というものは、外務省に相当大きな責任があるということになると思わなければならないわけですが、そうお考えですか。
  125. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) これは予算の関係もございまして、万全というと、どの程度までやりますか。これは実は昨年の衆議院の決算委員会でも、農林省の技師の方が仰せになったわけでございまして、当時、政府の予算の許す範囲内においてベストを尽しましたのですが、決して十分であるとはわれわれは思わない。ドミニカは小さい国とはいいながら、やはり日本の半分以上あるところでございますので、今から見ますと、不十分であった点は重々認めます。
  126. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうしますと、先ほどドミニカ移住失敗は、いろいろな原因があるけれども調査の不足だということがありますので、したがって、その調査団を出した政府の責任もあると、こういうことをお認めになるわけですか。
  127. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) その範囲内において責任はあると思います。
  128. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そこで、ドミニカ移民の跡始末に返るのですが、この前も、それからきょう石田さんの御質問に対しても、いろいろ具体的な数字をおあげになっていたのですが、なるほど帰って来て、みんな大半は就職された。しかし、鳴りもの入りで宣伝して、つられて、中には土地や家屋まで売り払って行った人もいる。そういう人たちが帰って来る。そうして二万円か二万五千円の就職をさせて、生活保護法で見てやったり、何とか食わしてやったからこれで事足れりとお考えですか。帰って来た人は食わしてやったのだから、おれらは責任を果たしたのだということになっているようですが、それで責任を果たしたとお考えですか。
  129. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 決して果たしたとは思っておりません。その点、さっき申しましたように、今後とも続けてお世話しなければいけない。ただ、私が申しましたのは、このドミニカの問題を契機といたしまして、他の南米諸国移住者もこのドミニカ移住者に対する政府の措置については非常な関心を持っておられるのであります。それで、その前からでございますが、行かれた移住者の中で、何というのですか、うまくいかなければ、これは全部政府の宣伝で行ったのだから、全部政府の責任であるということで、おれは帰えるのだから渡航費を出せとか、あるいはこの前、一昨年ですか、名古屋の人権擁護局に訴えられた方があって、その件がブラジルの新聞に出て、ブラジル邦人全部が非常に憤慨したケースがあったのですが、これは呼び寄せられて行ったところが、向こうの雇い主がけしからぬということで、自分で帰えられて、今度は名古屋の人権擁護局に訴えられた。ところが、聞いてみると、ちっとも働かないで給料だけ要求せられてどうにもならなかったというようなケースがございますが、そういうような一部の邦人もございまして、このドミニカ移住に対する扱いぶりというものが、南米移住者に対して非常な大きな影響があるということを考えまして、補償金を出すということは、ほかへの影響が非常に重大であるから、これはなくして済ましたい、それ以外のことはできるだけお世話しなければいけない。だから、私たち決してこれで責任をはたしたと思っておらないのです。今後、移住推進のために、移住者にはもっと親切を尽さなければいけないということで、今後とも今の引揚者に対してお世話したいと思っております。
  130. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先ほど言われましたように、政府調査が行き届かないで、そうして鳴りもの入りで送り出しておいて、それで土地や家を売って行った者もたくさんあったと、それが失敗して帰って来た。わずかばかりな給料の就職の世話をしたり、あるいは生活保護法にかかるようにめんどうを見てやったと、これじゃ私はどうもあまりりっぱなお世話だと思わないのですね。政府の一体責任というのはどこにあるのですか、それをどう背負っているのか、その責任に対して。そういう調査失敗や何かをお認めになった責任に対して、こういうふうな人たちに政府としてなぜ措置が講ぜられないのか。先ほど、よそへ及ぼす影響ということを言われましたが、ただ、ブラジルから引き揚げてこられて、何か人権擁護局に訴えられた人の例をあげましたけれども、ちょっとこの場合とはずいぶん違うと思いますね。私は、補償という形が他に及ぼす影響ということがあるならば、それはそれとして、別の方法でもう少し考えてやれるのじゃないかと思うのですが、そういうことをちっとも政府が責任を持ってめんどうを見ないから、まあ就職を世話してやった、生活保護法をかけてやった、それでいいのだというので済ますから、みんな二の足を踏んで行かなくなってしまうのです。そこらの点、もうちっとあなたのほうでお考えになりませんか。
  131. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 私はこの前、昨年も議論になりましたのですが、移住者募集の問題についてもずいぶん議論が出まして、結局、いわゆる募集をしたものかどうかということもずいぶん議論になったわけでありますが、移住して失敗した場合に、移住は国がやるのだから、移住者失敗して帰って来る場合には、国が補償しなければいけないというようなことになりますと、相当大きな問題であろうというふうに思います。国はあくまでもお世話するという建前で貫くべきであるというふうに思うのであります。
  132. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 外務大臣、そんなことでこれから大いに移住の奨励ができますか。
  133. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これはただいままでの、率直にいろいろ御答弁申し上げ、いろいろだだいままでやって参りましたことに対する御批判もいただいたわけでございますが、私がたびたび申し上げておりますように、今までの移住政策上の不信、あるいは不始末、そういったことに対して私どもが深刻に反省しておるということと、また、これをいかにして改善すべきかということについての意欲は、十分岡田委員もおくみ取りいただいたと思うのでございまして、私どもは責任を回避するつもりはございませんし、また、これからこの責任を懈怠するというつもりでもございませんし、事業団設立を契機といたしまして、ふんどしを締めてかかりたいということでございますので、これからの私どものやり口につきまして十分御監視いただき、御鞭撻いただきたいと思うのでございまして、一々のケースについてどうこうするということまで徹底した御論議の機会がなかったことをたいへん残念に思いまするけれども、私どもの志のあるところ、それはもうおくみ取りいただきたいと思います。
  134. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今度の移住事業団の役員とか、職員の問題についてお伺いしたいのですが、きのうでしたか、局長のほうから人間はまあ三十数人要ると、あるいはもっと要るかもしれないというお話でしたが、役員ですね、海協連なり、あるいは振興会社ですね、この役員は一ぺん全部辞表を出すのですか。
  135. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) これは事業団ができますと、会社及び海協連は解散することになっております。
  136. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますと、この両団体の役員は全部消滅するわけですね。
  137. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) そうです。
  138. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それから、それまでに両団体でもって人間の整理をすることになるわけですが、すでに三十数名そういうことになって、あとは引き継がれるのですね。
  139. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 大体そういうことになると思いますが、今、会社と海協連の中でお互いにやっておられて検討を続けておられます。
  140. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それについては外務省のほうはどういう人が整理されるかというようなことについては、インフォ−メーションは受けておられるのですか。
  141. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 大体の点は受けております。
  142. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それから、それに対して外務省のほうではある種の指導を行なっておりますか。
  143. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) やっておりませんが、これは事業団法が通りました場合に、最終的にこれはしなければならないと思います。
  144. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 内地の人については、これは定年になるような人は別問題ですよ、あとの人はそれほど問題がないと思うが、外地の両団体の統合、それからその人の整理というようなことはなかなかむずかしい問題があろうと思う。特に外地の出先におけるいろいろな欠陥というか、失態というものがあるので、そういう点の考慮はどういうふうに払われておりますか。
  145. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) その点は、ことに支部長とか、そういう関係の人は特に重要でございますので、厳格にやりたいと思いますし、出先の大公使とも十分連絡をしてやりたいと思います。
  146. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先ほどお話がありましたような、ボリビアの前支部長のような会計紊乱の責任を負わなければならないような人は、この際やはり考慮されますか。
  147. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 会計紊乱の責任があれば考慮しなければいけないと思います。
  148. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それから次に、今度の役員ですね、理事長と理事は任期四年ですか、非常勤理事というのがおりますね、これも四年なんですが、よくいろいろな団体の非常勤理事というと、ただで月給をもらって何もしないのがいるのですが、この四人もそうですが。
  149. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) これはそういう意図ではございません。会社と海協連を合わせました役員の数と同じことになるわけですが、非常勤を入れまして。われわれといたしましては、常任理事四名で十分である、あとはしっかりした知識のある方に高等のディレクターとして入ってもらって積極的な協力をしてもらうが、毎日出てくる必要がない。それでこれは謝金程度で働いてもらって、これは単なる顧問のような形ではなく、事業団の運営に参画するというような非常にわれわれとしては期待しておる人を入れたいと思います。
  150. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そのものずばりで言いますが、外務省の古手の役人を、月給が取れなくなったのだからということでまあ四年間食わせよう、こういうことでお入れになるのじゃないですか。それでは困りますよ。
  151. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 私のほうはそういう考えは毛頭ございません。事業団については相当の責任を感じておりますから、その責任を十分果たせるような人事の刷新を希望いたします。これは新理事長とも十分話し合わなければいけないと思います。
  152. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それから、今度の事業団に、やっぱり理事長の権限か何か知りませんが、嘱託というものをたくさん置くのですか。
  153. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 現在はわれわれは考えておりません。
  154. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 現在考えないでも、あとで考えるのじゃ困るのですがね。仕事をやる嘱託ならいいが、ただ名目だけ嘱託で、ただ月給を払っておるということはやめていただきたい。
  155. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) ただいまの点、全くわれわれも同感でございまして、従来の移住会社の場合の顧問とかたくさんある。これはもう二度と繰り返さないようにしております。
  156. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まあ、ひとつそういう点は十分になにを願いたいと思います。実は私どもも今度の事業団は年次報告を国会に出してもらいたい、こう思いますが、それはああいう報告書でも出ないというと、われわれも忘れてしまって文句のつけようがないことになりますので、ああいうものが出ていますと、思い出して嘱託は何人いるか、これは何も仕事をしないでも飯を食わしているのじゃないかということもときどきお聞きできるので、つまらぬ金を使うこともなくなるししますから、どうかひとつ今度の経理と人事の問題については、十分に慎重な考慮を払っていただきたいと思います。私の質問はこれで終わります。
  157. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 時間がございませんので、きわめて簡単に二点だけお伺いいたします。  他の委員からすでに御発言になっておりますが、国策的に見て、海外移住ということに対して外務大臣はどういう御所見であるか、これは私非常に重要なことと思いますので、あえてお伺いをいたします。日本の国が非常に狭くて人口が多い。これは非常に私は不自然であると思っております。海外にだんだん何かの形で行くのが日本民族のためである、また外国相手のことでございますから、たいへんだと思います。ことに最近は日本のほうも労力が足りぬというような状況でございますけれども、しかし、これはまあ一時的の問題というふうなそういう問題だから、まあ適当にやっていけばいいのだ、また、外務大臣とされては、外交の本来の仕事が非常に重要であるから、移住のほうはまあ適当にやっていけばいいというようなお考えでおいでになるのか。今の御答弁を伺いますと、大臣のお人柄が非常に円満であるために、きわめておだやかな御答弁を伺っておりますけれども、まあ、どちらかといえば、もっと気魄のある御答弁がほしいのであります。それは、この移住問題というのが日本の将来の運命を決するような大問題でありまして、現在の国民教育というか、そういう点も盛り上がっておりませんので、幾分弱いようでありますけれども、これは植民地的の考えではなしに、ほんとうに世界に貢献するという意味から、大きな夢を実現していく。明治維新に次ぐような百年千年の先になって、大平さんがおいでになったのでこういうふうになったという意味で御所見を伺います。
  158. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は外交は民族の活力の外的な展開の環境を整備し、それが発展するような温度といいますか、湿度といいますか、そういう環境作りをやることであると思うのでございまして、したがって、外交プローパーの仕事移住政策の推進ということが別個のものであるとは思っておりません。今御指摘のように、日本人海外の発展につきまして海外の信頼を得、尊敬をかち得、そして好個な環境を作るということは外交本来の本務でございまして、その意味におきまして、移住行政外交というのは別個でなくて一体のものであると心得ております。それから、日本人はきのうも申し上げましたように、海外に雄飛する十分の素質に恵まれているわけでございますので、今御指摘のように日本人の夢、新しいフロンティア、みずからの運命を開拓しようという夢の実現、それに対するサービス、そういった点につきましては、外交本来の任務といたしまして精力的に進んで参るつもりです。
  159. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 いま一点だけですが、これは政策というより実務の問題で、今度の事業団ができましたことは非常にけっこうだと思っております。しかし、この内容を見ますと、いろいろございますが、たとえば移住者に対する渡航費の貸付、支度金の支給というふうに書いてありまして、私は渡航費も支給したほうがいいのじゃないかと思っております。そんなわけで、全体見まして、非常にいいことはいいけれども、消極的である、物足りないという気がするのでございます。行く人になれば、国を去って他の国へ行って働くのですから、非常に不便も多いし、さびしい。それに対しては、もっと手厚い行き方をしていただきたいのであります。北海道の例を見ましても、北海道に移民を持ってくるときは、全部旅費等は当然国の負担、土地ももちろん五町歩から二十町歩は無償交付、その上に農機具、牛馬等もどんどん与える。いろいろの点で手厚い努力をやっておるにかかわらず、海外に対しては非常にその点が行き届いていないような気がするものですから申し上げるわけですが、なお、もう時間がございませんからくどいことは言いませんが、横浜埠頭における移民の出ていく情景を見ますると、非常に、これは言葉で表わせないような気がいたします。食費はわずかに五十円、一日五十円の食費で、壮行会もやらない。こんなさびしい姿で送り出すことは、私は涙が出る思いをしたのでございまするが、どうかひとつ行く方の身にもなって、移民の身にもなって送り出し、また現地においては、せっかく事業団ができるのですから、国がほんとうに真剣に活動されまして、そして行った人が十分向こうで働いて、その国にも尽くし得るように、うんと力を入れていただきたいということを申し上げ、また御答弁を伺いたいと思います。
  160. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 切々たる移住者に対する愛情を伺いまして、いたく感銘いたします。私どもといたしまして、十全のお世話を与え、便宜を供与しなければならぬこと当然でございまして、ただいまの予算その他の仕組み必ずしも十全でございませんので、御協力を得まして逐次改善し充実さして参りたいと思います。
  161. 森元治郎

    ○森元治郎君 簡単に、大が一つ小が一つ。  大のほうは、先ほど石田同僚委員全拓連をこてんこてんに頭はたかれちゃって、これはちょっとかわいそうだと思うのです。何といっても、過去からきょうまで、あるいはあしたまで、あさってまで、大きく言えば農協というものが移住事業に果たした役割は大きいと思うのであります。  そこで伺いたいのは、これから日本農協も大いに張り切って、さらに馬力をかけて、日本農協向こうにいる日系の農協、それから、現地のコロニアル、こういうものと提携して、大いにやろうとしておるのです。そこで政府は、これに対して、国内と外国で活動するこの農協活動に対して、自主的な活動に対して、大いにこれを伸ばすようにしてもらいたいと思うのだがどうかということと、それからまた、事業団ができちゃった、小さいあっせん団体、そんなものはもう当てにしないで、きのう移住局長の非常にデリケートな御説明によれば、募集という字はないが、あっせんという、カウンセリングという英語までくっつけて、あっせんという中にそのリクルートのやわらかいものが入っておるのだというところから見ると、これは大いにやるつもりらしい。したがって、こういうものについては協力は仰がなくたっていいのだというようなことがあっちゃたいへんなんで、事業団はこれらに対して協力をするのかどうか。大臣に、御決心を承っておきたい。
  162. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この前の前の委員会で、森八三一委員にもお答え申し上げましたように、事業団は排他的に移住のあっせんサービスは独占するのだというふうな考えは毛頭ございませんので、むしろへりくだりまして、他の移住関係の団体、農協を初め団体の御協力を得にゃいかぬし、それに対して事業団としてお手伝いすることは手伝うという心がまえで参りたいと思います。農林省外務省の問題につきましても、これはお互いの信頼でございますので、その信頼をこわすようなことのないように用心深く折衝をいたしまして、お互いの完全な理解の上に立ちまして移住本来の仕事推進していくようにいたしたいと思います。  それから、募集という用語の問題でございますけれども、これはきのういろいろお話がございましたけれども、森先生の言う、まあ泥くささがなくちゃだめじゃないかというお示しは、十分肝に銘じておるわけでございまして、積極的にこの法律に示された精神を生かして移住実績を上げて参りますように私どもとして十分の努力を払いたいと思います。
  163. 森元治郎

    ○森元治郎君 もう一点は、移住局長にグァタパラの結末について伺いたい。着工もおそくなったり、それから昨年末の完成が今年末までになる。先ほど農林省政府委員のお話では三年とか延びたと、一体これをやるつもりなのかどうか。資金難の中であくまでもこれをやるつもりなのか。それから、今まで入植者は二百六十二戸ですね、日本側からは。全部で三百七十五ですか。二百六十二のうちで、昨年の第三四半期、私の手元にいただいた資料では、昨年の第三四半期までは五十二戸入っている。その後一体どうなっているのか。今後の見通しとか、それから、完成が延びると言うが、三年で確かにでき上がるのか。これに入れる人に対してはどう考えているのか。この点ちょっと。
  164. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) この着工が半年延びたのですが、その延びました理由は、グァタパラの移住地は一千町歩以上の移住地でございますので、ブラジルの移植民法の規定で、一千町歩以上の土地はブラジル人が三割入らなければいけない。一外国人は三割以上入っちゃいけないという規則がございます。で、そうしますと、日本人はわずか三割しか入れないということになりますので、少なくともブラジル人の三割、これはやむを得ない。これは日系のブラジル人を入れるとして、あとの七割は日本からの移住者を入れたいというので、七割の入植許可を取りつけたいというので努力しておりまして、正式の許可ということはないのですが、実質上それに相当するような了解だけはどうしても取りつけないと、せっかくやり出して日本人が入れないということになると困るということで、慎重を期しまして、やっとまあ了解を得ましたのが半年おくれたという理由でございます。  それから、この移住地は三百六十五ロッテに分けて二百六十二ロッテは内地から、あと残りはブラジル側からという計画になっておるのでございまして、移住地建設の計画といたしましては、河に面したところに堤防を作るということと、それから、移住地内部の道路とか、幹線、支線道路及びある程度の高地——高いところにおきます灌漑施設を作るという仕事がございます。それで、この堤防を作るとき、これはもう急いでやりますと、ただ移住者が続いて入りませんから、移住者が将来入るであろうところに細い道を作ったり、川を作るというようなことは状況を見ながらやっていこうということで計画しておる……。
  165. 森元治郎

    ○森元治郎君 計画を放棄しないのかどうか。できる見通しがあるのか。そのできる見通しをどの辺に置いているかということだけでけっこうです。
  166. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) この計画はすでに始まっておるのでございまして、続けざるを得ないわけであります。ただ、なかなか入らない場合に、入らないところをあるいは事業団の直接の経営農地にするか、あるいはコチアなんかに経営をお願いするかというような問題がございまして、これは今後関係者と十分相談をして方針をきめていきたいというふうに思っております。
  167. 森元治郎

    ○森元治郎君 放棄しない、あくまで所定の計画どおり、その主体をだれにするかは別として、あくまであれをやると、こういう意味ですか。
  168. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 最初の計画どおり続けられるかどうかは今後の問題になると思います。ただ、入られた移住者、今後入る移住者に支障ないようにして、入らないところが相当大部分でございますので、これの活用方法を考えていく。その場合、今のように小さくロッテに分けないで、もっと大きいままにしておいて、大農的なことを考えるというようなこともございます。これは、今後関係者と相談をしなけりゃならない面でございます。
  169. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 他に御発言はございませんか。——なければ、本件の質疑はこの程度にとどめたいと存じます。これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  170. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  171. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 本件につきまして、今まで衆議院において、また参議院において、いろいろと質疑がかわされて参りました。この海外移住事業団が新しく発足をいたしましても、なかなかいろいろむずかしい問題をかかえておるわけでございますが、当局の熱意をもってこの移住事業団のりっぱな成立をはかり、またその仕事を熱心にかつ円滑に進めるように指導してやってもらいたいと思います。そして、この海外移住事業団が今後やる仕事がうまくいくかいかないかによりまして、日本海外移住政策というものは大きく左右されるわけでございますので、りっぱな運用が望ましいわけでございますが、この海外移住事業団が成立するにあたりまして、私どもはいろんな点で質疑を通じて危惧の念を抱く面も少なしとしないのであります。  そこで、自由民主党、日本社会党、公明会、民主社会党、第二院クラブの外務委員方々が相諮りまして、今後この海外移住事業団がりっぱに成立をし、また成功をおさめますように、政府が十分な指導をするようにという点から、次の附帯決議をつけまして、そしてこの法律案に賛成をしたいと思うのであります。附帯決議につきまして政府のほうにおいても十分かつ慎重に考えていただいて、そしてこの附帯決議の精神に沿うてまたこれを実現していただきたいと思います。  一、政府は、海外移住基本理念及 び振興策を明らかにする海外移住 基本法を次期通常国会に提出する こと。  二、政府は、事業団の運営及び移住 地の状況に関し毎年国会に報告資 料を提出すること。  三、外務省は、農林省その他関係各 省及び地方公共団体と連絡協調を 緊密にし、海外移住行政の円滑な 推進に努めること。  四、事業団は、高い識見と強い指導 力を持つ理事長の下に、海外移住情熱をもち、実務に専念する清 新、誠実な人材をもつて構成する こと。  以上です。
  172. 石田次男

    石田次男君 私はこの事業団法案に賛成いたしますが、それについて今後さらに行政機構の一元化に向かって進んでいただきたい。すなわち、海協連の県支部の統合ということを将来の目標にしていただきたい。これ一点申し上げます。  次、全拓連移住組織の今までの功績はもちろんございますが、それと同時に幾多の失敗並びに弊害がございましたが、これについての動き及び体質改善を要望いたします。  次に、いろいろ質疑を通じてわかってきたことでありますが、事業団が現地の動きについての監督、監査の機能を持たないと、必ず移住行政に対する失敗が起こる。そういう点で監査機能の強化という面をこれから考えていただきたい。それに伴いまして移住地現地における幹部の綱紀の引き締めを政策の大きな眼目にしていただきたい。  次が在外公館の移住行政に対する大きなてこ入れを要望いたします。  そのほか、今岡田さんから出て参りました附帯決議案、この四項目に対して誠実なひとつ前向きの処置を要望いたしまして、本法案に対して賛成いたします。
  173. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は、本法案が少なくとも従来の経験に徴して移住問題について相当前向きの姿勢で取り組むとともに、当面まず移住実務機関海外における統合をはかり、また、外務大臣が各省と十分協調の上で一元的にこの実務機関を指導するという点において賛成いたします。  ただ、質疑を通じても申し上げたことでありまするが、元来ならば、この機会に要望——附帯決議の第一項にあるような、元来ならば移住に関する基本概念をぐっと明らかにし、その上に立ってから実務機関の統合その他の行政機関の統合等にかかるのがほんとうではなかろうか。この点でいささか画龍点睛を欠くうらみがあると思うのであります。特に質疑を通じて明らかになったように、実は移住審議会答申そのものについても非常に重大な点でまだ問題を概念的にも明確にしていない点があると思うのでありますが、第一は、日本経済構造の大きな変革に伴って行なわれる国内施策との関連が、単に抽象的に取り上げられているだけであって、これと移住政策の関連が一向明らかになっていない点であります。すでに基本概念においては単なる過剰労働力を海外に持ち出すんだという考えを捨てたとは言いながら、なお、いろいろの施策の面においては、かなり大きな比重を、特に農村あるいは農業者の間から定着移住の形でやはり海外における点に相当ウエートが置いてあるけれども日本経済成長に伴う人口、労働問題の推移等にかんがみて、はたしてそういうことがいいのか、これはさらに検討を要する点ではないか、こう考えるのであります。少なくとも日本において当然国内的にやらなければならない農業就業者の過剰人口を国内的にりっぱに処理する問題、あるいは石炭業その他の不況産業から一時的に起こる転業者に対して手厚い施策をする問題が、海外移住の方法があるからというような抽象的なすりかえによって私はいいかげんにされてはならない。この点は非常に重大な点だと思うのであります。  第二には、同じことの海外関係のことでありますが、もしわれわれが移住問題という位置を、今申し上げましたように、国内の簡単に言えば人口の圧迫からのがれようとする国内的な動きあるいはあがきという点を振り捨てて考えるならば、やはりこの移住という問題は基本的に日本の、あるいは日本国民海外活動、あるいは日本海外経済政策、外国に対しては対外経済援助の一つの柱としてむしろ考えていくのがほんとうではなかろうか。南米の曠にインディオと同じくらいの悪条件のもとに、資本も技術も与えないでわが国民を送るというような考え方がもしあったならば、これは非常に間違っておると思うのでございまして、そういう意味でこの審議会の答申案の範囲を出ないという外務大臣考え方をぜひ改めてもらって、答申案の中では、移住政策というものは単に対外経済政策あるいは対外技術政策と並列的に調整されるべきであるというふうに、そんな程度で、逃げているというか、ごまかしているのでは、これでは足りないのではないか。もっともう一つ上の段階で、やはり大きく対外経済協力の一環という点で総合して、そのうちにおける主として定着的の協力はどうあるべきかという観点から見直していく必要があるのではないか、かように思うのであります。むろんそうは言いつつも、一方においては日本人の市民社会が北米あるいはハワイ、あるいは中南米等にすでにできていることであるし、それらの日系市民社会と本国である日本との間に今後とも血縁的な文化的な関係を深め、またそのことを通じて当該国と日本との国交をさらに平和的に伸展させるという意味からいっても、私は呼び寄せを含めた移住並びにそういうような在外日系社会との政策は非常に重点を置いて考えなければならぬと考えるわけでありますが、それらの点を含めて、どうかひとつこの次に移住基本法をお出しになるそうでありますから、それまでの間にもっと真剣な討論の中からきわめて明確な前向きな、そしてわが国民に大きな夢を海外にフロンティアとして与える。こういう観点から基本的な移住に関する基本概念と基本政策をぜひ打ち出していただきたいということが希望の第一点であります。  第二点は、石田委員からも指摘されましたように、問題は徐々にやっていく必要がございますけれども、やはり実務機関の一元化という点からいいましても、事業団日本国内における地方のいろいろな機関との関係における一元化はまだ先に見送られておるのであります。できてから信用をつければ逐次一元化に向かうということを否定はいたしませんが、そういう点においてはやはり勇敢であってほしい。むろん事業団が民間諸団体のイニシアチブを尊重し、単なるなわ張り根性を起こさないことは非常に重点でありまするけれども、同時に、役所を含めて、たとえば補助金団体が依然として乱立している。そういうような点も改めるように、少なくとも国内実務機関の統合から、進んではいわゆる官庁のそういうような権限等についても、これはほんとうの総合的な統合の方向を今後とも出していただきたい。  以上、二点の希望を付しまして、本法案並びにただいま岡田委員から御提案がございました五会派共同の附帯決議案に賛成いたします。
  174. 長谷川仁

    長谷川仁君 私は自由民主党を代表いたしまして、賛成いたします。ただ、一言申し上げたいことは、海外移住日本にとりまして非常に重要な国策でありますし、事業団が発足してからは、政府は従来の移住政策を十二分に検討されまして、そして国民各層に明確なそして希望に満ちた海外移住観を植えつけていただきまして、そして大いに成果を上げられることを期待いたしたい、こう考える次第であります。
  175. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  176. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  海外移住事業団法案を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  177. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 全会一致であります。よって本案は、全会一致をもって、原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、討論中に述べられました岡田委員提出の附帯決議案を議題といたします。岡田委員提出の附帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  178. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 全会一致と認めます。よって岡田委員提出の附帯決議案は、全会一致をもって、本委員会の決議とすることに決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  大平国務大臣
  180. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま本委員会の御決議に対しまして、ただいままでの移住行政に対する解明と反省の上に立ちまして、新しい決意を持ちまして決議案の趣旨に沿って努力をいたす所存でございます。
  181. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  182. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 速記を始めて。  これをもって休憩いたします。    午後二時二十九分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕