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1963-06-18 第43回国会 参議院 外務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月十八日(火曜日)    午後二時三十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岡崎 真一君    理事            井上 清一君            草葉 隆圓君            長谷川 仁君    委員            青柳 秀夫君            木内 四郎君            杉原 荒太君            山本 利壽君            加藤シヅエ君            羽生 三七君            森 元治郎君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君   政府委員    外務政務次官  飯塚 定輔君    外務省移住局長 高木 廣一君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任の件 ○海外移住事業団法案内閣提出、衆  議院送付)   —————————————
  2. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、理事辞任についてお諮りをいたします。  理事森元治郎君から、都合により理事辞任いたしたい旨の申し出がありましたが、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  4. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それでは、海外移住事業団法案議題といたします。  御参考までに申し上げますが、本件は六月十四日衆議院より送付せられ、本審査になっております。  御質疑のあります方は、順次御発言を願います。
  5. 井上清一

    井上清一君 ただいま議題となっております移住事業団法案に関連いたしまして、若干の質疑をいたしたいと思います。  わが国の移住行政につきましては、かねてからこれが刷新と申しますか、根本的に考え直さなければいかぬじゃないかというような声がだいぶ高かったことは御承知のとおりであります。昨年の十二月に海外移住審議会答申提出されまして、その中に、海外移住理念であるとか、新しい移住というものに対する考え方、そしてまた新しい移住政策目標というようなものがこの答申の中に掲げられておりますが、今度政府はこの答申趣旨を尊重いたしまして、今度新たに海外移住事業団というものを作ろうということで今度の法案が御提出になったものと思いますが、前から、海外移住政策基本方針をきめるために、海外移住法案とか、あるいはまた移住基本法というものをだいぶ前からいろいろ考えられておったように聞いております。また、これが移住事業団法より前にそういう基本法的なものが考え出されなければならないと、こう私どもは考えるわけですが、どうして事業団法を先にお出しになって、海外移住法とか移住基本法とかいうようなものが今度この移住事業団法と並行して出されないで、あとに延ばされたか。あるいはまた、これは出されないことになったのか。それらの経緯なり、また、これに対する考え方というものを、この際ひとつ大臣あるいはまた移住局長から承りたい、かように思います。
  6. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) われわれといたしましては、この移住の基本的な問題に関する移住基本法、それから移住援護推進に関する援護法、それから移住を実施いたします事業団法、こういう三つを最初考えておりました。ただ、基本法だけではどうも法律体制にならぬから、援護と合わせて移住法というものと、それから事業団法二つにしたほろがいいのじゃないかという御意見もございました。両方準備しておりましたのです。ただ、事業団のほうは予算関係でもございますので、こちらのほうを急ぎまして、それから移住法のほうは、結局この移住審議会答申の精神及びその他の答申内容をどういうふうに表現し、法律化していくかという問題でございまして、各省権限の問題とか、事業組織の問題につきましては、事業団法及び各省設置法がございます。特に事業団法では、農林外務権限明確化のための大臣及び次官申し合わせもございまして、移住法で残っておりまする問題といたしましては、さっき申しましたような基本理念表現と、それから法律的には、移住あっせん業者をどういう体制でこの移住法の中に入れるか。現在職業安定法がございますので、職安法をそのまま適用すべしという意見と、いや、そのままでは適用しにくいから準用にすべしという意見が、これは労働省の中にも二つ意見があるように聞いております。そして適用いたします場合には、職業安定法を若干改正する必要があるのじゃないか。したがって、むしろ準用のほうがいいというような意見もございまして、御承知のとおり、職業安定法は非常に膨大な条文の法律でございまして、しかも、これは国内の職業あっせんが中心で、移住に該当するところが非常に少ないのでございます。この点をこまかく検討するのに相当時間がかかるから、ちょっと時間をかしてくれというのが労働省の御意見でございました。それ以外には、この表現の問題以外には、移住法のほうはたいした問題はございませんのですが、今度間に合いませんので、次の国会にはぜひ出すようにせっかく急いでいる次第でございます。
  7. 井上清一

    井上清一君 海外移住法についていろいろお話を承ったわけでございますが、その移住法に盛られる基本的な移住に対する政府考え方というようなものを、もうちょっと伺いたいと思います。
  8. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 実はわれわれで一応作りました移住法の草案にもございますが、これは、この法律の目的とか、海外移住理念、それから移住者経緯、国の施策の原則とか、地方公共団体施策、それから、移住者の助成及び海外移住に対する知識の普及、移住者に対する援護及び指導、あるいは受け入れ先の開拓、移住輸送手段の確保、それから第三章で、移住者の保護、困窮移住者の救済、雇用条件等の明示、これは現在、今やっておりますととでございますが、国としてこれらの援助法律的に義務づけるというような意義がこの移住法によって出てくるわけでございまして、さっき申しましたように、その中で、実はわれわれのほうで、雑則で——この職業安定法との関係のところで、準用にするか適用にするか、適用にするにしても、準用にするにしても、職業安定法という相当膨大なものを検討しなければいけないということで時間がかかっておる、内容は大体そんなものでございます。
  9. 井上清一

    井上清一君 ここで御提案になっております海外移住事業団は、監督権の問題をめぐって外務省農林省の間にいろいろ複雑な問題があったということを聞いておりますが、まあ結局外務省がこの事業団専管するということになった。したがって、今後外務省といたしましては、大幅に移住関係実務事業団に委譲いたしまして、事業団をして自主的に運営をさせるという方針であるということを言っておりますけれども、今後事業団が円滑な発展を遂げて、移住という国の大きな政策を飛躍的に推進をさしていく、移住に貢献するかどうかという責任は、外務省専管であります関係上、すべてこれ外務大臣責任だと私ども考えるわけでございます。ついては、今後事業団運営というものについて、外務大臣はどういう御抱負とお考えを持ってお臨みになるか、こういう点についてひとつ基本的な考え方を伺いたいと思います。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のように、移住行政管轄権をめぐって長い間、特に外務省農林省の間に問題がありましたことは、井上委員も御承知のとおりでございます。これには、いろいろ原因があろうかと思いますが、一つは、やはり移住政策推進する根本的な気がまえということが確立していなかったと思うのです。移住というのは、これは移住審議会答申にもありますように、これは非常に自発的なものであり、そして国民的な活力を海外に展開をはかる、その国のためになるし、世界の平和に貢献するという非常に高邁なものでございまして、自発的にやらなければならぬということである以上、本来ならば役所がいろいろ監督をするとか云々権力行政ではないと思うのでございますが、それにもかかわらず、各官庁の間の権限争いというととがあったということは、それ自体非常に不思議なことだと私は思います。したがって、今御指摘のように、これは一つ世話機能を果たす、サービス機能を果たすべきものでございまするから、本来ならば、役所がいかめしく取り扱うべき性質のものでないんで、移住関係団体が非常に順便にやっていただければ、役所はそれに対して可能な限りサービスをしていくということでいくべきものだと思います。したがって、権限争いなんかは、本来あり得べからざるものであったと思うのでございますが、現にあったということは、移住行政というものを権力行政的に考えられておったきらいがありはしないかと私は思います。したがって、今後の方針といたしましては、事業団を自主的なものにして、そして事業団責任を持ってやる、自主的な責任を持って活発に仕事を御推進いただく、役所といたしましては、予算を提供したり、最小限度人事調整をしたりすることにとどめたいと思うのでございます。外務省専管になったということは、外務省がこの移住行政について幅広くみずからの権力を行使するなんということとは全然無関係だと思うのでございまして、むしろ外務省自身がその気持になって事業団を盛り立てていくという工夫をしないと、ほかの省もついてこないと思います。したがって、私が今申し上げますことは一つ考え方でございます。しかし、現実には、井上さんも御承知のとおり、そう簡単に割り切れない問題があります。たとえば農林省設置法には、ちゃんと募集から訓練に至るまで各権限を明示しておるわけでございます。しかし、それはもうやらなくていいんだということは、私のほうで申し上げるわけには参りませんので、私の気持は、役所としていろいろおやりになることはけっこうでありますけれども、これは本来はやはり事業団にまかせてやろうじゃありませんか、外務省自身がそういう気持になりますから、どうぞほかの省もその気持になっていただきたいというふうに持っていくつもりでおるわけでございます。やや私の申し上げることはきれいなことを言っているような感じを受けられるかもしれませんけれども、そのようにやっていかないで、役所の間でいろいろな問題が停滞しておるということは、非常に私は国民に対して申しわけないことだと思うのでございます。それをやるには、どうしても外務省が率先してその気持にならなければならない。これは移住局長以下私どもたびたびきびしく指示いたしているところでございまして、今後そういう気持自主性を高めていく。そのためには、どうしても事業団人事等についてよほど考えて、事業団自身がきびきびとした、清新な、清潔な、能率的な運営ができるという人をやはり配さなければなりませんので、そういう点につきましても、衆参両院の御論議もいろいろございます。十分体しまして、そういう自主的な責任をになうに足る基礎を作って、あと事業団にまかせるという方向で、できるだけ考えて参りたいと思っております。
  11. 井上清一

    井上清一君 だだいま外務大臣から、今後の海外移住行政の抜本的な刷新のために、ひとつ政府としては根本的な再検討をやる、自己反省をやってひとつ十分行き届いた移住行政をやっていきたい、すっきりした形でやっていきたいと、こういうお考えのように言われて、わかったのですが、この事業団法がこの国会提出されるまでのいろいろな経緯も私全然知らぬことはないわけでございますが、この提案までに外務省農林省等関係各省との具体的な権限調整というものが、私はまだ十分に行なわれていない面もあるように考えるわけです。それで、今後そうした点についてどういうふうな完全な調整政府として筋の通った調整をどんなふうに進めていくか、そうしてまた、いろいろ具体的な問題にあたってどういうふうな調整——やはり気持だけでなしに、相当いろいろな権限——各省権限の行きわたるようなものも相当あるように私は思いますが、そうしたことをどういうふうに具体的に調整をしていくかということについてのひとつ考え方を伺いたいと思います。
  12. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 権限調整につきましては、農林外務が問題でございまして、ほかのほうは、その権限調整というような問題はございません。十分緊密な連絡をとっていくということで話し合いまして、農林外務だけが、両省の設置法で、必ずしもはっきりしないところもございますし、衝突するように見えるところもございましたので、この二月の初めに外務農林大臣申し合わせをせられまして、海外移住事業団監督外務省一本で行なう、これは移住審議会答申にもそういうこと書いてあるのですが、外務省一本で行なう。それから、事業団と別に、農業者海外移住に関し農協等が行なう移住者募集選考訓練監督農林省が行なう、こういう申し合わせをしていただいたわけであります。趣旨は、海外移住の一般的な国としての援助推進というものは、この事業団がやる。これは外務省が窓口となって一本でやっていく。もちろん外務省が独占してやるわけじゃなくて、外務省関係各省協議をいたしまして、この事業団が行なうべき基本方針協議してこれを事業団に授ける。あと事業団で自主的にやっていく。これが一般的な、国として行ないます移住推進でございますが、その上に農業移住者につきましては、従来から農協等募集選考訓練につきまして関与いたしておりますし、農林省設置法にもこのことが書かれておるのでございまして、したがって、一般的な移住推進仕事の上に、特に農業者移住推進円滑化を、あるいは積極化を期する意味において農協等の行ないます仕事は、それの監督官庁である農林省がこれを監督し、行なうというのが申し合わせ趣旨でございます。ただしかし、これは実は海外移住審議会答申も大体そのラインになっておるのでございます。答申の「公的実務機関の整備」、「事業団の新設」というところに、こういうような規定がございます。「現在移住実務機関が競合して、これに国の補助金が分散し、行政機構多元性とあいまって、事務の渋滞、国費の無駄、資金効率の低下、方針の不統一等の結果をもたらしている。  この際、海外協会連合会及び移住振興株式会社移住業務等国補助金もしくは資金によるものについてはこれを統合し、新たに単一の公約実務機関を設けて移住実務合理化を断行すべきである。また全国拓植農業協同組合連合会地方海外協会農業労務者派米協議会等との関係は適当に調整すべきである。」というような規定がございまして、一般的な移住推進外務省農業者の特別の推進措置としての施策農林省、それ以外は外務農林次官申し合わせをいたしまして、事業団につきましても、農協の活動につきましても、相互に緊密な連絡をとってやっていくという申し合わせをしまして、これで完全な了解ができているのでございます。ほかの省とは問題ございません。
  13. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ちょっと、局長の言われたことは公式な説明で、そのとおりなんですけれども、御理解いただく意味で、私なんかこのように考えているんです。予算には、井上さん御承知のとおり、外務省にもある、農林省にもあるわけです。海外協会とか府県とかいうものに対して、両方から予算流しているわけです。したがって、予算にもついているし、それから設置法にもちゃんと権限が明記されてあるというようなところから、農林省の立場は非常に強いわけです。そして、それはわれわれが権限を争う意味でこれを指摘していろいろやると、またこれ非常に穏かならぬ問題になるのでございます。正直なところ。そこで、これは私先ほど最初の御答弁で申し上げたように、移住事業団というものをひとつみんなで、外務省も謙虚な気持になるし、農林省もそうなっていただいて、これを主体にしてできるだけこれをりっぱに仕上げようじゃないか。そしてこれがだんだん機能して参りますと、今海外協会という格好で別個法人が各府県にできておりますけれども、ところによっては事業団支部になりたいということを言っている向きもありますから、事業団というものがいいものになれば、これはそれを吸収したほうが地位も安定いたしますし、仕事も筋道が通って参りますから、あるいはそういう機運になるかもしれません。それから、冒頭に言いましたように、これは権力行政じゃないのだから、事業団でりっぱにやっていただければ、農林省がやって、外務省がやってと、そんなに干渉する必要もなくなると思うのです。あなたの御質問を解釈する道は、事業団をりっぱなものにするということが第一であって、そうなってくると、今予算もそれをやっている、設置法上の問題も云々なんという問題も、だんだんと片づく素地がでるのじゃないか、そうしようじゃないか。しかし、今度出しているこの法律案では、中央組織はちゃんとできるのですけれども、地方のほうの海外協会なんというものは、解散命令を出すことはできませんし、今から事業団を固めていく、自発的にそれにみな一緒になろうという機運が出てきたら一緒にしていく。これは、だから、まだ進行過程上の一つの一里塚でございまして、これからだんだんと地方のほうも、現地のほうも、だんだんと固めていかなければいかぬと思うのでございます。そして、これをよくすることによって、役所でやっておったような仕事がだんだんとここでできて参りますと、もう役所のほうでかみしもを着ていろいろやらなくてもいいような状況にしたいものだ。したがって、権限争い権限争いとしてやりますると、それはますますオクターブが上がって参りますので、そうではなくて第三の方式として、事業団をよくすることからひとつ始めようということで、ことしの予算成立以来これは当面の妥協でありまして、それからまたこの答申をやって——少数意見もございまして、これも当面の妥協でございますが、こういうことで素地を固めていっている過程にある問題であって、もう未来永劫に、権限はこのような分野をこうと、ちゃんと両次官申し合わせ、両大臣申し合わせて、これは動かぬのだというような性質のものではないと私は思っております。これは事業団の成長にかかってくるのではないかという感じです。
  14. 山本利壽

    山本利壽君 今ので私わからぬようになったのでちょっと。今まで海外協会連合会とか、それから地方にそういう機関があったし、それからもう一つ移住振興株式会社というようなものもあった。ところが、その運用がどうもうまくいかないから、その二つ団体勢力争いとかなんとかいうものが自然的に出てきたりして、移住関係がうまくいかないから、それをすっかり解散をして、これにまとめようというわけではないのですか。今の、遠い将来にそれが自然的に解消し、こちらへ包含されることのように大臣お話では聞いたのですが、それができたら今すぐに今まであったものは解散するのですか、そこのところを。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは今御指摘の、二つ海協連移住振興会社を集めて、これはこの際御承認いただければ直ちにそうするわけです。ただ、私が申し上げているのは、地方には、御承知のように、海外協会というのがございますね。あれは別個法人でございまして、あれは、海協連というものを吸収すれば自動的に吸収できる性質のものじゃないのです。あれは別個団体なんです。したがって、私の申し上げますのは、これは中央機構というものをまずちゃんとする。それからその次は、地方において、海協のほうでやはり事業団の傘下に入りたいということになってくれば、それに入れていく。したがって、従たる事務所は置けるようにちゃんと法律はしてあるわけです。今この段階では、まだ勝負がついていないのです。そういう過渡的なものです。
  16. 山本利壽

    山本利壽君 ところが、今の地方海外協会というのは、連合会のほうから資金を流してもらっているのです。それだから、連合会というものはこれで解消するわけでしょう、これができれば。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それで、これに吸収する。
  18. 山本利壽

    山本利壽君 地方のものが、いろいろ海外協会というものがあって、それが連合したものが理屈的に言えば連合会なんでしょう。だから、その連合会というものが解散するわけなんでしょう。そうしたら地方海外協会というものは、今までその連合会から資金の割当を受けて活動しておりますね。それに対して県なら県の地方団体も協力して金を幾らか出しておるかもしれぬけれども、そこらの問題が何かおかしい。私はこういうものができるときには、きれいさっぱりと中央地方も一応解散して、それでその職員なら職員というものが、この事業団下部組織に改編されるというのならいいけれども、別個のそういうものがあとに残るということは、私はますます複雑になると思う。そこのところ、ちょっと説明して下さい。
  19. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 海外協会連合会地方海外協会関係は、地方海外協会が集まって連合会になっているのじゃなくて、これは全然別個法人としてあるわけです。それで、ただ、連合会という名前がついておりますから、実は地方海外協会支部にでもするようなつもりで初めはいたのだろうと思いますが、御承知のとおり、地方海外協会というのは、地方それぞれの事情によりまして、民間の盛り上がる運動として地方海外協会ができまして、移住推進をやったわけであります。そうして、国からの補助以外に、県あるいは地方寄付金とか、こういうものをもってできている団体でございます。最初外務省から海外協会連合会を通じて地方海外協会補助金を出しているのですが、数年前から、地方海外協会予算農林省へ移った。農林省から県を通じて地方海外協会補助金を出すということになっておりました。これが一昨年からまた少し戻りまして、この地方海外協会専従職員人件費とそれから庁費補助は、外務省から府県を通じて地方海外協会補助する。事務費農林省から県を通じて地方海外協会に移す。そのときから、すでに財政的には海外協会連合会を通じて資金地方海外協会に移っておらないのでございます。で、われわれといたしましては、したがって、地方海外協会が、皆さんの空気がそうなりますならば、事業団支部に変わっていけば、一番中央地方のつながりがぴっちりいくと、こういうふうに希望するのであります。この審議会答申でも、地方海外協会事業団支部になることが好ましいようなあれが出ております。ただ、地方海外協会は、先ほど申しましたように、民間の自発的な動きであり、地方の自発的な経緯からできた団体でございますので、ある地方海外協会では事業団支部にしてくれという申し出もありますが、ある地方では、いや、事業団支部別個にできても、おれのほうは従来のままで残っていきたいのだというようなこともございます。そこのところ、われわれといたしましても、中央から地方に、強制的にこうしろ、ああしろと言うことは、移住性質上好ましくない、地方の動向、県あるいは地方海協というものの本来のそういう人たちの自発的な考え方も大いに尊重しなければいかぬということで、そういう点を十分話し合って、今後できる限り地方支部に変わるようにいたしたい。ただ、現在の海外協会は、国からの補助金のほか、県からも相当出しております。一応建前は、三分の二、国が補助、三分の一、県補助ということになっていますが、県によりましては、国の補助の二倍、三倍補助しているところなんかもございます。こういうところは、あまり支部になることを好まないところもございます。そういう点、地方に関する限りは、地方の十分の納得を得た上でというのが私たち考えです。ただ、海外協会連合会につきましては、これができました昭和二十九年の閣議決定で、すみやかに法制化するということがうたわれておるのであります。それの根本的な考え方は、この中央において移住推進をはかる団体職員の地位というものが強化されなければいかぬ。ただ、法律に基づかない財団法人ということでございますと、この給与ベースも低うございます。退職金その他の身分の保障もございませんので、どうしてもいい人が来ない。ですから、これはできるだけ早く法制化したい、こういうふうに考えながら今日に来たものでございまして、今度の事業団は、そういう意味におきまして、一つには、その二十九年の閣議決定海外協会連合会を法制化する、そうしてその地歩をしっかりさすという趣旨には合うわけでございます。もう一つは、会社と海外協会連合会がある点ダブる仕事を持っておりまして、競合するようなところがございます。これは二つ一つにしろという意見が相当強いのでございまして、答申もその意見でございましたので、この二つ一つにしたという実情で、地方については、まだ先生のお考えになるように万全ではございませんですが、法案では、一応必要なところには従たる事務所が置けるということで、地方もだんだん支部ができることを私たちは希望しておるわけであります。
  20. 山本利壽

    山本利壽君 ちょっとおかしいと思うのです。私は、それはこの法案を通してこういうものができて、しかも、片一方では今までのようなものが残るとすれば、私は禍根はまたそこにあると思う。それなら、その地方海外協会というものはそのまま残っていけば、今までと同じように、農林省及び外務省とのいろいろな関係があるわけでしょう。ないわけですか。いろいろな仕事の上でそれがややっこしいからこういう新しいものを作ろう。だから、できてから漸次それが解消してこれに一本になることは望ましいと言っても、望ましいなら、今まで非常にあの二本立のために混乱したのだから、それを解消させるように、努力して解消しますから、これが通ったら全部ここですっきりしますと言うのなら、はなはだわかりがいいけれども、それはそれとしておいて、そうして、やはり残ったところの海外協会というものは、農林省のほうでは絶対今までどおり、おれはこれに補助金を流して援助してそれは活動させる。それで、これはこれで立っていこうとすると、今度はまたある県にこの支部的なものができ得るわけになるのですね。そうしたら、これは複雑になりますよ。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのことは、山本先生おっしゃるとおりです。それで、私もことしの予算を作るときに、ざっくばらんに申しまして、中央地方をきちんと、予算化する場合に、農林省にも外務省にもある、府県を通していくやつもあるから、これを何とかひとつきちんとしたいと思ったのでございます。それで、そのようにいろいろお願いもしてみたんですけれども、この際、その事業団について中央地方を通じて、あなたが言うように、完全な金も能力も持たせるというところまで、まだ各方面の移住推進機構に対する考え方が熟していないのです。いろいろ試みたのですけれども、まだそれはできない。  それから、内輪の話でございますけれども、自由民主党でもいろいろこれを御審議いただいたときに、その結論として、海外協会連合会移住振興会社はともかく一緒にしろという御要請でございました。これは、海外協会というのは含んでいないのです。そういう一つの今の段階で見ると、あなたから見ても、私から見ても同じでございますが、これはそんなに完璧なものではないのでございます。ただ、いろいろ移住行政がうまくいってない。成績も不振だし、いろいろな批判が出てきて、審議会答申が出て、政府としてともかく一歩進んだ施策を進めねばならぬというので、とりあえず、これは中央機構というものはひとつきちんとしょうというところになっておると思うのでございます。それで、先ほど私が申し上げましたように、あなたの御指摘になる地方機構のほうは、移住事業団一緒にせよと言っても、このものはどんなことになりますか、これを育て上げて、これが十分軌道に乗るということになれば、関係者が、それは移住事業団とみな一緒にやろうじゃないかという機運が出てくることを局長が期待しているというか、望んでいるということを申し上げたのでございまして、これで完全に私は移住推進機構が整備されたとは思っておりませんので、今の段階において、ぎりぎりここまでのことをやらしていただきたい、しかし、これでわれわれは満足していないのであって、当面はこれをひとついい子供に成長させたいということが、今われわれの主眼である。そうなりますと、あなたの今言われた問題もだんだんと軌道に乗ってくると私は思うのでございまして、当分しんぼうだろうと思っておるのでございます。
  22. 山本利壽

    山本利壽君 私は与党ですから、無理にとんがらかすものではありません。これは私が衆議院におったときから、この移住問題では、初め海外協会連合会を作るときにも、移住振興株式会社を作るときにも、いろいろなことを懸念して十分意見は言うたつもりなんです。だが、できてみると、そのときの希望とは全く違う方向に、われわれが懸念したほうへいつも行きますから、またこれが屋上屋を重ねるということになって混乱してはいけないと憂えるからです。これに統合することを希望されるならば、この法案を出すときには、私はすでに各地の海外協会の代表者も十分集め、そうして、こういう法案が出たら必ずそれに入りますというほどの了解を私は取りつけるべきだと思うのです。そうして、こういうものがスタートしたらうまくいくのに、まあほとんどむずかしいからというので、これはおいでおいで、これを作っていくと二本立、三本立になる。それで今私が希望したいのは、これができたら、これに八億円と、それからさらにその他の振興会社のお金ですか、それに出したお金あたりを一緒にして資金にして、この事業団というものは活動するわけでしょう。それと別に、外務省農林省とが、この移住に関する予算を持っておっても、それはこの事業団というものが、いろいろな移住に関する事業をするときに、これは助けてもらえないか、これが事務的なものであるならば外務省にお願いし、実際の農業関係のことであるなら農林省にお願いすることはいいことですけれども、これ以外のものに対しては、今消えてなくなってほしいと思う在来のものに対しては、外務省農林省も取っておる予算を使うべきではないと私は思う。消えてほしいと言いながら、やはりお出しになるならば、そのものは私は消えないと思う。それは君の懸念だけであってと言われればそれまでですが、そういう懸念は、私はこの法案を審議する者としては十分あることだと思うのです。ですから、それはやはり今までどおりに地方海外協会あたりから言うてきた場合には、補助金といいますか、何かはやはりお出しになるのですか、外務省なり農林省は。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 予算にも計上してありまするし、外務省関係ではこれが七月一日から御承認を得て施行の予定にいたしておりますので、七月一日の分は、外務省の分は予算に計上いたしてありますので、そのあと事業団地方関係を引き継ぐ。事業団予算が七月一日からになっておりますが、それまでの分は外務省予算に計上してございます。農林省の分は一年分ついているわけです。それだから、ちょうど山木先生おっしゃるとおりになっておるわけです。ただあなたの言うように、二重、三重になるのではなくて、これは海協連移住振興会社は一本化されますから、その点は簡素化されるわけでございまして、私は、先ほど申しましたように、まず第一歩として中央機構はきちんとしょうということ、それでこれにできるだけ仕事をまかせようという姿勢でいくという、こういうことなんでございます。地方のほうは、これもちゃんと地方のほうもやった上でこれを出すべきではなかったかと言われるけれども、われわれの力量が足りませんで、そこまでできませんでして。したがって、当面これを育てて、地方のほうの理解も得て、順次それをまとめていく。相当時間をかけ、しんぼうが要るのではないかと思いますが、あなたが考えられているような方向にどう持っていくかの手順の問題だと思います。あなたの御懸念のとおり、私どもも懸念いたしております。どういう手順でそこまでいくかということでございます。
  24. 羽生三七

    ○羽生三七君 今井上さん、山本さんの御指摘の問題、それぞれ重要だと思いますが、それより前の問題として、こういう点をお伺いしてみたいのです。それは、たまたま大臣の御答弁の中にも、事業の不振等もあって、いわゆる海外移住事業ですか——というようなお話がありましたが、ちょっと話が横にそれるようですが、日本の経済が非常に高度な成長をして、雇用が拡大をして、農村ではどんどん農村人口が他産業に流出する。一昨年なんかは、中学校、高校卒百二十万人の中で、新たに農業の従事者は七万六千人と、こういう状態が出ている。そういう趨勢は昭和四十年度は最もはなはだしい形で現われるだろうと言われているのです。ですから、今の人手不足という形は、さらに一そう私は顕著になると思うわけです。そういう条件の中で、一体海外移住というようなものはどういう人たちが希望しているのか、また、今後もそういう希望をする人たちはふえていくのかどうか。政府がしりをたたいていろいろのことをしなければ、出ていく人がだんだんなくなっていくような条件があるのではないか。そういうことが、ひとつは事業の不振といわれることで、運営上の技術的な問題ではなく、根本的なそういう経済の動きにつれての条件というものが存在しているのではないか、そういう感じを受けるわけです。ただしかし、私はそういう感じですから、具体的に移住を希望する人が幾らでも農村にあり、また、今後もその展望が可能だといえばそれは別の話でありますけれども、私は全くの感じですから、一体移住事業というものは今後どうなるのか、今の現状並びに発展——将来の展望ですね、それと今の日本の経済の成長に照応する雇用の問題等の関連で、移住事業そのものの現時点における、状況並びに将来の見通し、こういうものをひとつ大臣から承らしていただきたいと思います。
  25. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 移住審議会答申の冒頭に、「政策理念」というのがうたわれてありまして、これは、先ほど局長からも、私からもお話し申し上げましたように、自発的なもので、そうなければならぬ。単なる労働移動ではないのだ、開発能力の現地移動であって、その国——移住いたしました国の利益になり、世界の平和になるというものでなければならぬのだ、自分の具有する潜在的能力をフロンティアで発揮するのだと、非常に高邁な政策理念をお示しになりておるわけでございます。したがって、たとえば政府移住計画を立てていくという性質のものではないと思うのです。あくまでも個人の自発的な意欲に根ざしたものでありますから、そういう意欲を持った方に、政府として可能な限りインフォーメーションを提供してあげるというようなことが本来あるべき移住政策の姿だと思うのでございます。ところが、今羽生さんが御指摘になったように、そうは申しますものの、この不振の最大の原因は、何といっても日本の経済の成長だ。労働力が、全体的にも地域的にも不足を来たしておる。農業に残留する清新な労働力が少ないというような環境は、確かに今の移住が少ないということの決定的な要因になっておると思うのでございますけれども、しかし、それは先ほど申しました移住政策理念、あるべき姿から申しまして、いわば第二義的な問題になるわけでございます、こういう政策の上の立て方からしますと。しからば、そういう経済成長過程にある日本として、将来移住はどうなるのだという現実の見通しはどうだということになりますと、にわかに私どももこうじゃないかというようなことを言いにくいのでございますが、幸いに、現地に移住して現地でりっぱに仕事をやられておる方々からの呼び寄せというのが非常に多いわけで、全然やみくもに出ていくという人は比較的今の段階では少ないと思うのです。しかし、その面は、世界がこのように狭くなるし、日とともに交通がしげくなってくるし、また、御承知のように、海外移住いたしました日本人の方々が、毎年々々日本で大会を持つようになって参りまして、現地事情の紹介や移住に対する魅力というようなものを漸次日本の社会に植えつけていただくという状況にもなってきておるわけでございまして、東南アジア方面では、日本の移民ということに対しては非常に敏感でございまして、非常に抑制的な考えを持っておりますけれども、中南米は依然として日本の移民に対しては非常に好意的な態度を続けて参ってきておられるので、当面こういうラテン・アメリカ諸国の事情をよくわきまえていただき、それから政府もドミニカの失敗等前車の轍を踏むことなく、政府としてやるべき事前の調査、情報の収集、提供、それから、すでに移民した方々と日本政府との連絡、現地政府との協力体制、そういうものがだんだん出て参りますので、あながち私は悲観したものではないと思うのでございます。今の農村方面の、構造改革もだんだんと、われわれ普通の人が予想しておるよりは早いスピードで進んでおる景況のもとにおきましては、農村で半失業の状態にあえいでおった方々が解放されて第二次産業に吸収されるだけが彼らの新しい人生ではなかろうというものもだんだんと出てくるのじゃないかと思うわけでございまして、必ずしも将来そう暗いものではないと思っておりますが、現実にどのような層の方々が、どのような職業の方々がどういう移住展開の方式をとっていくかというようなことについて具体的に何かしゃべろと言うても、それは私は非常にむずかしいと思うのでございます。
  26. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっともう一つだけ、関連質問ですからすぐやめますが、たとえば移住をする際の訓練というか、事前のいろいろな教育、準備過程で、いろいろお話外務省なりあるいはその他の話を聞いて、今大臣からお話しになったような世界平和だとか、あるいは移住する相手国への協力とか、そういういわゆる高邁なる精神は、あるいはそういう過程で出てくるかもしれぬけれども、私が実際いなかにおってみて、海外移住を希望する人の中には、たまたまいわゆる昔の古くさい言葉で言えば、海外発展というようなととを考える人もないことはないけれども、おおむね大体家がどうにもこうにもならなくなって出ていく人が大多数だと思う。それが、先ほど申し上げた経済情勢の変化の結果、雇用が他産業に吸収されて、無理して遠くまで出て行かなければならないことはないという条件が現実の問題として存在しているわけですね。だから、そういう中で何か高邁な大理想に基づく将来の海外移住計画というものは、出た人を教育して海外に行ったらりっぱな仕事をしてもらう。これはそういうふうにしていかなければならないし、また、なるかもしれぬが、発足する場合の当事者にとっては、そんな大理想でなしに、やはり今の当面する自分の生活環境の変化に求めていくことだろうと思うのです。だから、私はそういうことを考えると、今後なかなかそう簡単にいわゆる発展というようなことを安易には考えられないと思うので、その点私の気持ですが、そこで今の現実に、どういう状態の人とか、あるいは特にこの一、二年では人員からいってどういうふうになっているのか、その点をちょっと具体的に局長のほうからお聞かせいただきたい。
  27. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) 数からいいますと、非常に減りました。昨年は政府の渡航費貸付の移住者が二千二百人、その前は八千人、それから一昨年が六千人と減りまして、去年急に減ったおけです。それで出ていく階層がどういうふうに変わっているかということは、なかなか必ずしもはっきりつかめないのでございますが、最近出て行く方々は、必ずしも日本の生活程度が悪いから、日本でどうにもならぬから外に行くのだというような人よりも、むしろある意味において世界が狭くなって、そして自分はどうもこの狭い日本よりも南米で、今の自分の代よりも子孫の代も考えて、あすこで発展したいというような気持の人とか、それから、最近非常にふえておりますのは青年層、たとえばカリフォルニアで三年働いて帰って来られた派米青年の方々が、今度はお嫁さんを連れて、そろってアルゼンチンに、あるいはブラジルに移住する。こういう方々はある意味において、昔アメリカの開拓者が西へ西へと行ったような、物質だけでない精神的な気持で、内にあふれる——何というのですか、エネルギーを外に出したいというような気持の人がかなりふえています。それから、私たち非常にこれの対策に苦労しておりますのは、男の人ばかりではなくて、若い婦人の方々が移住したい。これなんかも財政的の面とか、そういうことでは全然なくて、あの広い南米で発展したい。ただ婦人が一人で行くということは非常にむずかしいのですから、今言ったような青年と結婚して行ってもらうとか、そういうことを考えております。また、そういう気持の、優秀な青年たちが向こうへ移住しても心配ないような地盤を、あるいはそういう受け入れの体制をできるだけ作りたいと思っておりますが、だんだんそういう種類の人がふえつつある。ある意味において、これは少し離れた例ですが、堀江青年が、ただ海があるからサンフランシスコまでヨットで行ったというような気持が、国民の中に醸成されつつあるのではなかろうかというふうに思います。われわれといたしましては、これは移住審議会答申でも十分議論がありまして、農村の二、三男対策とか、あるいは過剰労働の海外へのさばきというような点を依然として強く強調せられた一部の方がございましたが、大部分の委員の御意見は、羽生先生おっしゃったような、新しい世界を考えて、従来の人口対策というような考え方ではいけない。それでやはり国民の中で、自分の能力をこの日本では発揮できない、第二のフロンティアとでも言いましょうか、海外で発揮したいというような者、こういうような人が移住の本来の姿であって、これをその目的が達成しやすいように国は横から援助する。国が何か事業を起こして、それが人を募集して移住者を連れていくというような考え方は、移住本来の考え方でないというような結論になったようでございます。なお、オランダでも非常におもしろい例がございまして、わがほうの移住審議会答申が出ました一年前に、オランダでも、今先生がおっしゃったように、高度経済発展のために労働力が非常に不足しまして、ごく一部の識者は移住禁止論を唱えられたのですが、その結果、移住をどう考えるかということを審議会に諮問いたしまして、オランダの移住審議会答申は、やはり労働問題あるいはそれから人口問題として移住考えるべきでない、民族の大きい立場から考えるべきである、そうして海外へ行った移住者が相当国の地盤を作り、また相手の国に協力していくということと、経済問題と離れて国民の中に海外へ行きたいという人があるのだから、行きたいという人をいろいろの条件で行けないようなままにしておくのはむしろ禁止すると同じことであって好ましくない、そういう意味においては、国内の政策も頭に入れるべきであるけれども、移住者本位の政策をとるべきである、労働問題を中心にするのは国に残る人本位の政策であって、出て行きたいという人本位の政策でないというような結論で、やはり移住は、国としては行きたい人をできるだけ行きやすいように積極的に協力すべきであるという結論になっていたように思います。
  28. 森元治郎

    ○森元治郎君 今のお話聞いても、経済成長だから人が少ないと言うけれども、ヨーロッパ移民の数を見れば、それは西ドイツはあれだけ成長していても五万台がここしばらく続いているわけです、毎年ね。たいしたものですよ。日本では、過去十年間五万四千人出ているのですよ。向とうは大体毎年五万ぐらい。大臣、そうでしょう。毎年出ているのですね。オランダは禁止論と言ったけれども、禁止論があるというのは、出て行くことなんだな。とにかく相当の数が出て行って、日本は大騒ぎするけれども、さっぱり出て行かないのだよ。そういう問題、あるいは理念の問題、それから人事と機構とか、幾らでもこれは質問があって一カ月や二カ月やっても足りない。そして、今関連ですから、井上さんと山本さんのととに関連しますが、これは山本さんのおっしゃるとおりなんですよ。中央だけの二つ移住会社と海外協会連合会をくっつければ、あとはムードがだんだんそこに——いろいろ不備でございますが、時間をかけて——これで今国会通すつもりだろうが、これはおかしいですよ。この地方海協がくっつからなかったから農林省のほうも静まったと思うんです。これは共管論をさんざん審議会でやったわけだ。農林省外務省との共管——あれは外務省専管のほうが勝ったけれども、ところが、負けた農林省はちゃんと持っているのですよ。地方の県庁や農民とくっついて、農協とくっついている。しかも、予算は、先ほどお話しのとおり、今年度一ぱいついているわけだ。外務省は六月一ばいしかつけてない。向こうはつけている。しかも、農林省の金は県庁を通して地方海協に入る。県庁も出している。寄付もある。地方農協もくっつかって応援している。これはどっちが親しいか。親疎の関係を言ったらば、地方的、土的——泥ですね、そういうものにくっつかっている農林省にこれはくっつかりたいのですよ。それを、移住局長は、やがて支部になることを希望するなんということを言っているが、それはきれいな洋服を着て東京の何とかクラブでひっくり返っている分には差しつかえないが、移住ということに関してくると手が届かないのですよ、そとのところは。それが農林省の大体系統におさまったものだから、これは農林省は共管を徹底してがんばらないで、実体は取った——大平大臣の認可か何かを受けて事業はやるけれども、しかし実際は、農協と組んで、ブラジルで産業組合あるいは県人会と組んでやれば、まあまあ農業関係のことは少なくともおれのほうはやれると、こういうところで、農林省あるいは農協あたりのほうがほこをおさめて静かになっていると私は思うのですがね。要するに、うまくいかなかったことが、農林関係のほうには幸いした。それでまあ皆さんに御提案しているような次第と、外務省のところと中央だけの形で御提案している。実態は一つも進歩していない。これからだんだんに時間をかけましてさようにいたしたいというこれからの御努力ですが、これは非常に機構上としては不備で、しかも、答申案では行政の一元化、それから実務機関の一元化と言うけれども、よく読んでみますと、どうしてどうしてなかなか行政も一元化できていないし、実務機関のほうもいろいろな点が抜けているのですな。こういうふうにお考えになりませんか。外務大臣はこの移住問題に関する限りはあやまる一方で、過去の、ことしになってからの国会でも、外務省は反省いたしましてと言って、まあ地方農民の反発にこたえて、あやまる一方でもう来ているわけですね。実態は、提案理由の末尾に書いてあるような、海外中央地方を一貫いたしましてこの事業団云々というふうな形に御提案いたしておりまするものは、なっていないようですね。そういうようにお考えになりませんか。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 森先生のおっしゃること、よくわかるのです。私もそのように、そういう見方からすれば、森先生のおっしゃるとおりだと思うのです。ただ、私が申し上げておるのは、あやまったり、ムード作ってやろうというのでなくて、つまり農林省外務省との間に移住行政について争いが、何か問題があるなんということはたえられないことでございます。こういうことでいいのだろうかということを根本的に反省せにゃならぬと思うのでございまして、非常に国民の死活の利害にかかわる権利義務というようなことであれば、なるほどこれは責任省といたしまして至大な関心を持っているのですけれども、これは移住者を円滑に送り出していくという世話業なんですから、それがどこであってはいけないなんという議論が起こること自体が、日本全体として反省が要るのじゃないかと私はまず考えたわけでございます。したがって、そういう方向に問題を一歩でも前進さすためには、今せっかく移住審議会の御答申で作案されました事業団というものを作っていく、いいものに作っていって、そうしてこれに責任を持たしてやろうじゃないかという基本的な気持はだんだん出てきたわけでございますから、これは外務省の申し子だから、おれのほうでひとつ専管して排他的に監督するのだなどという気持外務省がまず持ったのでは、あなたが言われている、土との直結において非常に強い力を持っている農林省が私はおさまらぬと思うのです。したがって、外務省は今後事業団というものに対して非常に濶大な気持で、農林省その他皆さんの御協力を得てこれを作り上げて、これが移住行政実務機関としてある程度の実績を上げてきた段階で、もう一ぺん日本の移住行政機構というようなものを考え直してみる必要がありはしないか、そういうときになれば、今までのような緊張した論議なんというものも漸次おさまってくるのじゃなかろうかと私は思うわけでございまして、それには、何をおいても、もう本家本元の外務省自体がそういう気持になろうじゃないか。そういうところから問題を解きほぐしていかないと、どこからも打開の道がなくて、国民に御迷惑をかけるということになるのじゃないか。私なんかもまあ小役人で育ちましたから、役所仕事熱心なところはよくわかるし、それから、行政機関権限なんということに対しては異常な神経を使います役人の習性は、私なんかもよくわかるわけでございますが、しかし、こういうことでいいだろうかということを静かに反省してみますと、何かどこかに打開の糸口を見つけて踏み出さなければよくないのではないか、こういうことで始めておるわけでございます。あるがままの実態から申しますと、森先生のおっしゃるとおりでございますが、さてしからばその次にどうしたらいいかというところに、私どもはこのような方向で問題の解決の糸口を作っていこうという気持、これはひとつ掛値なく御了承いただきたいと思うのです。
  30. 森元治郎

    ○森元治郎君 もう一間。これは「海外移住法案」と言うよりも、「これから法案」と言ったほうがいいと思うのです。ほとんどできたということですが、一番直接移住する人に接触する機関がぼやっとしているのですから、海外移住「これから法案」なんだと思う。その意味で、これは非常に大きな一貫性というものをうたってあるにしては、内容にうんと穴があいていると思うのです。もう一つ移住局長に資料としてお願いしたいのは、大体日本の国会というのは口先と文字でやっているのですが、地図とか図で示すという習慣がない。中央地方海外のこの機構を少し図で示して皆さんのところに置いておくと、金は農林省の一億四千万円、向こうを通って、県庁を通って海協に入る、そうして外務省のほうは、人事と庁費が入る、業務上は農林省である、寄付はこうだ、地方中央は直接はつながらないのだ、こういうものを図で書くと非常によく理解ができる。そこへ書き込んでおけばわかる。それも出先機関、これも出先機関といっても、ばく然としていてわからない。一般にはわかったようなわからないような重要法案ですから、みんな図示して渡しておかなければだめですよ。それだけです。
  31. 山本利壽

    山本利壽君 ちょっと関連。この法案は非常に重要だと思いますから、私はこの法案が通って、こういうものができることを希望するわけなんです。それで、ぜひこれは成立するように希望いたしますが、先ほど羽生さんの言われたように、今労働力が不足して非常に海外へ出る人が少ないのではないか、そういうことも事実だと思うのですが、これは波があるから、またふえることもあると思うのです。ことに私の県なんか貧乏県ですから、五反百姓と言っていますけれども、それではもう食べられない。だから、半分くらい出たって、各戸がせめて一町歩くらい持つようになれば農業の機械化もできるわけだし、だから、私はこの進め方によっては、この海外移住事業団というものが活動したならば、私はまだ相当国民の中にはふえると思うのです。農民を出したほうが、私は日本の残った農民の経済生活というものは裕福になると思う。そういう方向で、ただ行きたい者を世話してやるという意味でなしに、やはり所得倍増論にも機構の改革が出ているわけですが、大いにそういうほうに事業団をして働かすべきだと思うのです。日本の農民が相当行けるように、そうして残った農民が裕福になるように大いに事業団を活動さすべきだと思うのです。その一端として、こういうことを審議したり考えるときに、とかく行く数のことだけをみんな考えがちだけれども、年によって少なくてもいいんだから、この事業団は今まですでに行っている者に対して十分な援助をすることが必要だと思うのです。前に行った者は、非常に刻苦勉励してある程度の資産をなした者もいるけれども、まだ単なる労働者もおるわけです。そういう人たちが安定してりっぱに土地を持ち、あるいは店舗を持つように、資金的にも、技術的にも、私はこの事業団がすでに海外へ行っている者、移住者の指導をして裕福にしてやるということは、私は非常にいいことだと思う。そのためには、将来を見込んで土地をどんどん今買い込んでおくこともいいと思う。振興株式会社あたりもある程度それに力を注いだようですけれども、今のようなときに、まだ土地が安くて買えるようなときに、何らかの組織をもって、とかく日本がその移住者によって侵略するというような誤解をその国に与えてはいけないけれども、その誤解を与えないような方法によって、今行っておるその移民たちのほんとうに基盤を作ってやる。裕福にしてやる。そうすれば、日本でぐずぐずしておるよりも、やはり向こうに行ったほうがいいと思えば、日本における工場労働者とかなんとかいうことで食えないことはないけれども、それ以上に海外へ行くと雄飛することができるということをほんとうに知らしてやる必要があると思う。今ちょうど国内事情からいって、海外へ行きたいという人が少ないのならば、その余力を行っておる人に、繰り返すようですけれども、大いにここであらゆる面から考慮して、しあわせにしてやる。それにつられて次に今の農民たちが行くという手段を講じたならば、こういう法案を作った意義があると私は思う。しかも、その活動の方面は非常に重要なものがあると思いますから、希望と同時に、たぶんそういうことがねらいであったろうけれども、とかくすぐ出て行く人の数だけのことで、こんなことではだめだと思いがちでありますから、念のために私の意見も添えて申し上げておきたい。
  32. 高木廣一

    政府委員高木廣一君) ただいま山本先生のおっしゃいましたとおりに、私たち感じております。それで私たち主体性ということを言いましたのですけれども、これは移住者の主体性を尊重しながら、国としてはできるだけ移住者が、今先生がおっしゃいましたように、海外に発展しやすいように全力を尽して指導援助を講ずべきであるというふうに考えております。また、予算もそういうつもりで一生懸命に勉強して、できるだけたくさんいただくようにしている次第であります。なお、国が何でもかんでもやって、国だけでやっていくという考えは、この事業団にございませんで、現地のいろいろの団体、あるいはブラジルの国籍になっております農業団体、こういうものにも協力してもらう。それから国内でも、今先生がおっしゃいました農業の立場から、やはりこの移住者を積極的に出すことがいいという場合に、農協が積極的な活動をする、この事業団プラス農協の活動がある。また農村の移住者だけでなくて、炭鉱離職者なんかもここ二、三年来出ております。これは、初めブラジルへ炭鉱離職者が行きますというときには、ブラジルにも誤解がありまして、炭鉱離職者が来られては困るという意見があったのですが、行かれた方々は非常に勤労意欲も盛んであり、海外でりっぱな成績を上げられて、現在では非常に好まれているわけです。現在炭鉱離職者は相当の数がございます。こういう方々の就職については、国内でもいろいろな施策が講ぜられておりますが、ある人は海外移住に適した人もおるわけでございます。この場合に、従来農業の移住者海外へ行きます場合に、これは内地開拓の場合に、海外移住補助として一家族二十何万円かの補助金農林省から出ておりました。炭鉱離職者については、労働者は従来九万円でございましたが、今度はこれがまた二十万円に、何か標準価格で二十万円というのですか、大体農業移住者と同じような補助金が与えられる。それから、雇用促進事業団が、これから炭鉱離職者の移住者の場合に、農業訓練を三カ月行なうといっておりまして、この事業団の一般的な移住推進事業のほかに、また各種の団体がそれぞれの分野に適したアディショナルな推進をやるということがむしろ好ましいじゃないか。むしろそれ以外にも民間団体として力行会、あるいはカトリック移住委員会というようなものもございます。こういうものも事業団の活動とうまくタイアップし、調和してやっていくようにすべきであって、事業団民間の活動も押えてしまっては好ましくないというのが、私たち考えでございます。
  33. 羽生三七

    ○羽生三七君 私の意見をもう一つつけ加えさしていただきます。私はこれから移住しようとする人、あるいは現にすでに海外移住しておる人、その人たちのために国が積極的な援助、協力することの必要性は、これは当然のことと考えておる。これはまた、今後とも一そうそれを強化していかなければならないことは当然だと思います。ただ問題は、私の見通しにして誤りがなければ、今後日本の経済が非常な停滞をすればともかく、成長率の高い、低いはとにかくとして、総理が言っておるような七%程度の成長率が今後しばらく続くとすれば、これはどう判断しても、私はそんなに多く数がふえるということは期待はできないと思います。それで、私の言うのは、数を問題にしているわけではない。二千人が千人になったってやむを得ない。その千人に最善の協力をすればいいと思うのであります。ただ問題は、四十年になればもっと今の事情がひどくなるわけです。おそらく四十年を過ぎれば急カーブを描いて下がるかというと、必ずしもそうではない。ほぼこの趨勢は続くと思います。でありますから、農村の中の現在農業をやっている方が、他産業なんかに就業するよりも、こんな狭い日本の農村にいるよりも、海外に出て行ってもっと広大な農業経営をやりたいという気持で、他産業への就業をやめて、それで海外へ行くというような人がどんどん出れば別でありますが、そうでない限りは、私はやはり他産業への就業ということは、かなり今後続くと思う。したがって、私は質問ではありません、意見でありますが、そう過大な人数を期待しても、その展望はあまりないのじゃないか。それは私は数の多い少ないを言うのじゃありません。あまり大きな計画を考えられても、現実にはそういうことではなかなかいかぬのじゃないかという判断をしているということだけ、意見ですから、申し上げておきます。
  34. 森元治郎

    ○森元治郎君 現実にそのとおりなんです、パラグァイでも、アルゼンチンでも。
  35. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 本日は、この程度にいたします。    午後三時五十三分散会    ————————