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政府委員(
高木廣一君) 数からいいますと、非常に減りました。昨年は
政府の渡航費貸付の
移住者が二千二百人、その前は八千人、それから一昨年が六千人と減りまして、去年急に減ったおけです。それで出ていく階層がどういうふうに変わっているかということは、なかなか必ずしもはっきりつかめないのでございますが、最近出て行く方々は、必ずしも日本の生活程度が悪いから、日本でどうにもならぬから外に行くのだというような人よりも、むしろある
意味において世界が狭くなって、そして自分はどうもこの狭い日本よりも南米で、今の自分の代よりも子孫の代も
考えて、あすこで発展したいというような
気持の人とか、それから、最近非常にふえておりますのは青年層、たとえばカリフォルニアで三年働いて帰って来られた派米青年の方々が、今度はお嫁さんを連れて、そろってアルゼンチンに、あるいはブラジルに
移住する。こういう方々はある
意味において、昔アメリカの開拓者が西へ西へと行ったような、物質だけでない精神的な
気持で、内にあふれる
——何というのですか、エネルギーを外に出したいというような
気持の人がかなりふえています。それから、私
たち非常にこれの対策に苦労しておりますのは、男の人ばかりではなくて、若い婦人の方々が
移住したい。これなんかも財政的の面とか、そういうことでは全然なくて、あの広い南米で発展したい。ただ婦人が一人で行くということは非常にむずかしいのですから、今言ったような青年と結婚して行ってもらうとか、そういうことを
考えております。また、そういう
気持の、優秀な青年
たちが向こうへ
移住しても心配ないような地盤を、あるいはそういう受け入れの
体制をできるだけ作りたいと思っておりますが、だんだんそういう種類の人がふえつつある。ある
意味において、これは少し離れた例ですが、堀江青年が、ただ海があるからサンフランシスコまでヨットで行ったというような
気持が、国民の中に醸成されつつあるのではなかろうかというふうに思います。われわれといたしましては、これは
移住審議会の
答申でも十分議論がありまして、農村の二、三男対策とか、あるいは過剰労働の
海外へのさばきというような点を依然として強く強調せられた一部の方がございましたが、大部分の
委員の御
意見は、羽生先生おっしゃったような、新しい世界を
考えて、従来の人口対策というような
考え方ではいけない。それでやはり国民の中で、自分の能力をこの日本では発揮できない、第二のフロンティアとでも言いましょうか、
海外で発揮したいというような者、こういうような人が
移住の本来の姿であって、これをその目的が達成しやすいように国は横から
援助する。国が何か事業を起こして、それが人を
募集して
移住者を連れていくというような
考え方は、
移住本来の
考え方でないというような結論になったようでございます。なお、オランダでも非常におもしろい例がございまして、わがほうの
移住審議会の
答申が出ました一年前に、オランダでも、今先生がおっしゃったように、高度経済発展のために労働力が非常に不足しまして、ごく一部の識者は
移住禁止論を唱えられたのですが、その結果、
移住をどう
考えるかということを
審議会に諮問いたしまして、オランダの
移住審議会の
答申は、やはり労働問題あるいはそれから人口問題として
移住を
考えるべきでない、民族の大きい立場から
考えるべきである、そうして
海外へ行った
移住者が相当国の地盤を作り、また相手の国に協力していくということと、経済問題と離れて国民の中に
海外へ行きたいという人があるのだから、行きたいという人をいろいろの条件で行けないようなままにしておくのはむしろ禁止すると同じことであって好ましくない、そういう
意味においては、国内の
政策も頭に入れるべきであるけれども、
移住者本位の
政策をとるべきである、労働問題を中心にするのは国に残る人本位の
政策であって、出て行きたいという人本位の
政策でないというような結論で、やはり
移住は、国としては行きたい人をできるだけ行きやすいように積極的に協力すべきであるという結論になっていたように思います。