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国務大臣(
大平正芳君) 問題を一般的に申し上げる前に、綿製品の問題だけに一応限って申しますと、これは綿製品長期
協定というものが去年できまして、ことしの一月から新
協定によってやるという国際的な取りきめがございます。それに基づきましてアメリカ
政府が
一つの提案をいたしてきたことは事実でございます。それを中心に今両国の間で論議いたしておるわけでございますが、
一つの困難は、綿製品
協定の解釈の問題で、彼此の間に解釈の相違がございます。それから、事計数のことでございまして、輸出ベースでとるか輸入ベースでとるか、それから、その細分がどうなっているか、これは
両方の算術がうまく合わないのです。したがって、こういう問題は共通の理解に立たなければいけませんし、共通の数字を持たなければいけませんから、今両国でやっておりますことは、そういう基礎的な事実を確認し合おうということでやっております。で、私
どもの方針といたしましては、この問題は、かくして得られた客観的なデータを基礎にいたしまして、綿製品
協定に対する解釈も帰一いたしまして、二国間の
努力によりまして妥結いたしたいという基本の方針、そこに力点を置いてやっております。しかし、事国際取りきめでございまするし、ガットの
関係もございますので、場合によってはガットの場において論議していただくような場合があるかもしらぬということは、ガット
当局のほうにインフォームいたしておきました。しかしながら、本来外交といたしましては、二国間で円満な解決を見るのが本位でございますので、そこに重点を置いてやっておるというのが今日の段階でございまして、決定的な場合に来ておるわけじゃないので、そういうものを砕いた上で解決をはかって参りたいと思います。
それから、一般的な日米間の貿易問題でございまするが、岡田
委員御
指摘のように、貿易は本来自由でなければいけないし、いろいろな規制を一方的に課してくるというようなことは公正でない、そのとおりでございます。しからば、アメリカ側の今までの態度というものは一体それじゃ理不尽なものかというと、私
どもアメリカの態度を、貿易を自由化したいという願望、その
努力と、国内のいろいろな困難があるにかかわりませず、アメリカ
政府も一生懸命に
努力いたしておる事実は認めなければならぬと思います。御
指摘のバイ・アメリカンの政策にいたしましても、これは御案内のように、アメリカ
政府が品物をその
予算で買う場合、原則は自由である、しかし、これは国際収支が逆調である段階において、こういう制限のもとにアメリカ商品あるいはアメリカの工事人に請け負わせるという
一つの制限を設けたわけでございます。そういうことはけしからんと言うわけでございますが、しからば、
日本の
立場はどうかというと、
日本の場合は百パーセント、バイ・ジャパニーズです。ですから
日本品を買わしてやろうとアメリカと
交渉しようという場合には、お前のほうはこんなに制約を設けちゃいかぬと言うわけにもいきません。それじゃ
日本はどうしているかといえば、
日本は
日本品を買っているということでございますから、本来これはフェアでなければいかぬわけでございまして、ただ、私
どもは貿易の自由化の原則というものは、方針としてその
立場に立って
努力せなければなりませんから、アメリカの政策が不当にアメリカの国内の産業の
保護に傾くというようなことになれば、これに対して鼓を鳴らして反省を、是正を求めることは堂々とやらなければならぬと思うわけでございまして、そういう意味の
努力は私
どももやっておりますし、アメリカ自身も貿易自由化の方向には、わが国に対しましても、これは自由化してくれないかというような要請はあることは当然だと思うわけでございます。しかし、全体として、しからば、対米貿易収支はどうなっておるかと申しますと、去年は十五億ドルでございました。一昨年の三三・二%増になっております。輸入は十六億三千万ドル、一昨年に比し一五・九%の減になって、資本取引を入れますと約二億ドルの黒字を記録いたしておるわけでございます。昨年の対米輸出はわが国の総輸出の三一・三%でございまして、私
どもにとって非常に大事な市場でございます。この間に一点の曇りがあっちゃいかぬと思うのでありまして、お互いの
努力、お互いの真意、お互いの
努力に対しまして正当な評価の上に立ちまして、信頼の上に立ってこの拡大を続けて参らなければならぬと思うのでございます。しかし、御案内のように、アメリカも、
日本も、それぞれ
国内産業をかかえておりまするから、利害の先鋭な対立があることは、もう御案内のとおりでございまして、これは両
政府とも非常に苦心いたしておるところでございます。これは
日本ばかりにあるわけじゃなくて、アメリカ側にも非常に深刻な国内問題であることはもちろん御
承知のとおりでございます。問題は、早く自由化の線に沿いまして、相互に十分な理解を持ってお互いに
話し合いを続けていかなければならぬと
考えております。