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政府委員(木村睦男君) 御審議をいただくことになっております
道路運送車両法の一部
改正法律案につきまして、先般大臣から提案理由の
説明を申し上げましたが、その補足的な御
説明を申し上げたいと思います。
道路運送車両法は、
昭和二十六年にできました
法律でございまして、この
法律で規定いたしております事柄は、大分けをいたしますと、自動車の車両の検査、登録、それから自動車の
整備、それから自動車の分解
整備等を業とする分解
整備事業者に対する
監督、おおむねこれだけの事柄について規定をしてある
法律であります。ところで、最近の自動車の量数というものが、御承知のごとく非常に増加しております。また車両の性能も非常に向上しております。また、車の種類も変化をいたしております。こういう実態に照らしまして、現在の車両法によります車両保安の向上をはかるにはどうしたらよろしいか、また検査、登録等の事務を迅速にやるため、また的確にやるために、現在の車両法でよろしいかといった点につきましては、実はこの
法律ができまして十年以上たちますので、実態に必ずしも即応している点が全部でないというふうなこともございまして、そこで、
運輸省といたしましては、
昭和三十五年と六年の二年度にわたりまして、臨時に自動車審議会という大臣の諮問
機関を作りまして、各界の専門、あるいは学識経験の方にお集まりを願いまして、この自動車の
実情の実態に合うべき車両法をどういうふうに再検討すべきかということを諮問いたしたわけであります。その結果、自動車審議会からも答申をいただいております。これを参考にいたし、なおかつ、従来の
実情を十分検討いたしまして、この際に
道路車両法の一部
改正を
考えたわけでございます。もちろん今回提案いたしております
改正の部分以外にもいろいろ
改正したい点はあるのでございますが、
法律による秩序の安定ということも、ある
程度考慮いたさなければなりませんので、この際はそれらの中で特に緊急あるいは必要度の強いものにつきまして、
改正を試みたわけでございます。
次に、
改正の要点につきまして逐次申し上げたいと思うのでございますが、まず
改正の第一の眼目が、車両保安の向上の確保でございますが、これにつきまして申し上げます。
その第一は、定期点検
整備の義務づけでありますが、これは自動車を使用する者に対しては、一定の期間ごとに、
運輸省令で定めます技術上の基準によりまして、自動車を点検
整備いたしまして、それを記録することを義務づけることになっております。これによりまして、自動車の使用者が自主的に自分の車の
整備の励行をはかる、したがって、
整備不良の車は運行しないようにこれを防止するのが、目的でございます。なお、これにつきましては、現在では自動車の保有者に対しまして
整備の勧告をすることができることになっておりますが、これを発展させまして一定期間
整備をすることを義務づけたのでございます。そういうふうな経過をたどっておりますので、この義務づけにつきましては、罰則は伴わないものでございます。ただ、この点検をしておるかどうかということは、定期の車両検査の際に、この点検、
整備の記録簿の呈示を求めまして、これを確認する、それによって行政指導の徹底をはかりたい、かように
考えております。
第二点は、自動車の
整備管理者の選任義務の加重でございます。一定の自動車の使用者は、自動車の
整備等に関しまする事項を処理するために、一定の
資格を有する
整備管理者というものを選任しなければならないことに現状でもなっておりますが、この
整備管理者を置く場合に、現状では特に八トン以上の大型トラック、そういった車の使用者に対しまして、十両以上を単位にいたしまして、その使用の本拠ごとに
整備管理者を置くようにしておるのでございますが、これを五両以上の使用者の本拠ごとにするように少し強めたわけでございます。これによりまして、砂利トラックあるいはダンプカー、特に最近
事故多発の傾向のあります大型車の使用者につきまして、
整備の向上あるいは、ひいては車両欠陥
事故の防止をより一そう徹底いたしたい、かような意図のもとに
整備管理者の設置の範囲を強くしたのでございます。
第三点は、臨時検査の対象となります自動車の車両の範囲を拡大いたしますとともに、その実施手続を簡略化したことでございます。これは軽自動車につきまして、今回臨時検査を対象にいたしたわけでございますが、現在軽自動車につきましては、定期の検査は受ける必要がないことになっております。しかし、軽自動車につきましても、車両欠陥による
事故がある
程度ございますので、これらが保安基準に適合しないというふうな場合も
考えられますので、自動車の使用者が著しく多い場合に限って実施されることになっております臨時検査の対象に軽自動車を含めることにいたしたのでございます。なお、この実施の際には、陸運局長限りの判断におきまして、適宜時期を失しないで検査ができるようにしたいというふうにこの
制度を設定するわけでございます。
第四点は、三輪以上の軽自動車の分解
整備事業を認証制の対象といたしたことでございます。最近の自動車
関係の技術の進歩によりまして、特に軽自動車のうち三輪、四輪の軽自動車はその構造、性能等が、現在の小型自動車とほとんど大差なくなってきております。また軽自動車の
事故率もかなり上がっております。また、この
事故によります被害の
程度も、小型自動車とあまり大きな差異がないというふうな
実情でございます。しかも、自動車の増加の傾向の中で、軽自動車の増加の軽向は特に強いというふうな
状況でございますので、この傾自動車の保安確保の具体策といたしまして定期の点検
整備を義務づけ、さらに、必要と認めるときには、官みずからが臨時検査を実施し得るような体制をとったわけであります。その一環といたしまして、三輪以上の軽自動車を対象とする分解
整備事業をも認証制の対象といたしまして、適切な
整備の設備、技術等の
整備能力を持つ者が
整備事業を担当するように、
整備能力の
関係の維持向上をはかることを目的といたしたのでございます。
第五点は、自動車等の保安基準の項目の追加でございます。保安基準につきましては、現在もいろいろ基準の対象の項目が列挙されておりますが、最近の
実情にかんがみまして、さらにこれに項目を追加いたしまして、保安度の確保向上をはかる、こういう
考え方でございます。
次に、
制度の合理化、それから簡素化等につきまして一連の
改正を
考えているのでございますが、まず第一は、自動車の種別に関する
改正でございます。これは特に農耕用の作業用軽自動車、つまり、たんぼで農耕用に使います車でございます。あるいは特殊作業用の軽自動車、たとえて申しますと、工事等に使いますショベルが前についたような軽自動車、そういったような構造、機能、それから使用の形態等を
考えまして、これらは、
道路上において人や貨物を運搬するのでもなければ、また
道路を走ることが主たる目的でもございませんので、これを従来一括して軽自動車というものの中の範疇に入れておったのでございますが、これを分類いたしまして小型特殊自動車ということにいたしまして、軽自動車とは異なる取り扱いをいたし、簡易な取り扱いに移したい、こうしたのでございます。これらの農耕用作業用車、それから特殊作業用車というものは、車両保安の面からもあまり問題となっておりませんし、また、かりにたんぼへ行く場合に、
道路は使いますけれ
ども、これらの車の速度も非常に低いというふうな点から、取り扱いを簡易にいたすというのがこの趣旨でございます。
第二点は、自動車の登録の際の登録がえの手続の簡略化であります。登録がえといいますと、車の持ち主が個々の県で登録しておりますのを移住しその他で乙の県に移りました場合に、その車の軍籍も移す場合がございますが、その場合に、現行では、前居住地の甲の県で自動車の登録原簿の謄本を作りまして、これを新しい乙の県に送りまして、それによって乙の県でその車の登録原簿を作成する、前の原簿は、以前の県のほうで保存しておくという格好になっておりますが、これを新しいほうの県に原簿そのものを送ってしまう、そうすることによりまして登録用謄本の発行あるいは新しい登録原簿の作成等の手続を省略することができて、事務能率の向上にもなりますので、こういうふうな
方法に変えるわけでございます。
第三点は、自動車登録番号標の交付代行者に対する
監督規定の強化でございます。自動車登録番号標、つまり登録自動車のナンバー・プレートでございますが、これは交付代行者というものを陸運局長が指定することによってこの代行者が交付いたすのが現行の
制度でございますが、自動車の登録番号標というものは、いろいろな
意味で重要性の深いものでございますので、この登録番号標、つまり、ナンバー・プレートを交付する者につきましては、その指定の際の条件あるいは期限をつけるようにいたしたい。また、交付代行者が守るべき必要な事柄も定め、これらに違反した場合に、必要な是正命令を発し得るというふうにいたすことによりまして、交付代行者の行ないます登録番号標の適切な交付の確保をはかりたい、かように
考えたのでございます。
第四点は自動車
整備士に関する規定の
改正でございます。現在でも自動車
整備士につきましては、省令でそれぞれ規定はしておりますが、本来これは
法律上の
制度として規定すべきものでございますので、この際これを
法律上の
制度といたしますとともに、
運輸大臣が養成施設の指定をいたしますか、その養成施設の課程を終了した者につきましては、この
整備士の技能検定試験の一部を免除し得るようにする措置をとったわけでございます。現在
運転の免許についても、大体同様な
制度をとっておりますが、まあこれに似た
制度にいたしたわけでございます。これによりまして
整備士の養成施設も大いに発展向上させ、また自動車
整備士のレベル・アップ、あるいは
整備士の必要人員の確保をはかるようにいたしたい、かように
考えたのでございます。
第五点は、これも事務の簡素化と申しますか、抹消いたしました自動車登録原簿の保存期間の短縮でございます。現在では、自動車の登録を抹消いたします場合に、登録原簿というものは、その後十年間保存することになっておりますが、自動車の耐用年数あるいは抹消した自動車登録原簿の利用
状況を見ますというと、大体五年間の間にいろいろな照会等がございますが、五年以上は皆無といってもいい
状況でございます。不必要に長期間この整理保存をさすことをやめまして、これを五年間に短縮いたしたい、かように
改正をするわけでございます。
第六点は、登録の際の変更、登録の事由の追加でございます。自動車の型式というものは、登録原簿の記載事項となっておりますが、現在は、この型式の変更がありましたときに、変更登録を受ける必要がないことになっております。したがいまして、自動車の実態と登録原簿に記載されております車というものの間に相違が起こることも予想されますので、型式の変更をも変更登録の事由に加えるように規定の
整備をはかったわけでございます。
第七点は、電気自動車の分解
整備事業に関する
改正でございます。分解
整備事業につきまして、現行でいろいろ種類別にしてありますが、その
一つの種類といたしまして、電気自動車分解
整備事業というものを置いております。しかし、これは終戦後非常に電気自動車がたくさんできましたときに、特殊の技術、技能をもって分解
整備事業に従事することが必要であり、また、その
監督上、電気自動車の分解
整備事業という
一つの業種を置いて
監督指導をして参ったのでございますが、御承知のように、現在ではほとんど電気自動車というものもございませんので、これの分解
整備事業を
一つの業種といたしませんで、普通の自動車分解
整備事業あるいは小型の自動車分解
整備事業の中に溶け込ましてよろしいのではないかというふうに実態に即応した改め方をいたしたわけであります。
第八点は、自動車分解
整備事業の行ないます分解
整備検査に関する
改正でございます。自動車分解
整備事業者が分解
整備を完了いたしましたときには、点検検査をやるわけでございますが、その場合に、分解
整備の部分にかかわらず、車全体の検査をしなければならないということになっております。ここまで分解
整備事業者に要求することは、
実情に合いませんし、分解
整備事業者の義務の過剰にもなりますので、その事業者が当該車につきまして分解
整備をいたしました部分だけについて検査をすればよろしいということに、
実情に合うように改めたわけでございます。
第九点は、継続検査の際の自動車税納付の確認手続の簡略化でございます。これは、車が一年あるいは二年ごとに検査を受けることになっておりますが、この検査の際に、
政府の納税施策に協力する
意味で、自動車
関係の諸税を納めたという証明書を提出しなければ、この検査をしないことになっております。この証明書につきまして、従来は、たとえば市町村と地方
公共団体の長の発行する納税証明書というものでなければいけないということになっております。ここまで厳格にしなくても、振替等で払い込みました場合には、その振替の受け取りを確認すればそれでよろしいのではないかというふうに
考えまして、納税の確認手続を簡略にいたしたい、かように
考えた
改正でございます。
以上が、今回提案いたしました
道路運送車両法の一部
改正の要旨でございます。補定的に御
説明を申し上げた次第でございます。