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河野国務大臣 ただいま御発言の中に、共産主義国、社会主義国においては
住宅問題は非常によくいっておるが、資本主義国では個人が
住宅を
考えなければならぬからうまくいかないし、やりにくいという御発言でございましたが、決して私は御意見に対してとやかく申すつもりはありませんが、速記録に載りますと、何かそのまま私が了承したようになりますのは工合が悪いものですから、一言言わしていただきたいと思います。確かに私も共産主義国を多少見聞いたしております。たとえば東ベルリンの一部、モスクワその他主要
都市の一部というところではりっぱなアパートがどんどん造営されておることは、事実私もその通り見聞いたします。しかしそれは全体から見ればやはり一部でございまして、少し裏の方に入って参りますと、もしくは少しいなかに参りますと、必ずしも私はそう
住宅問題が解決されておるようには見受けておりません。従って、これらの国家におきましても、
住宅問題については相当の悩みを持っておられると思いまするし、かてて加えて、私自身、これは聞いたことでございますが、モスクワにおきましても、モスクワ市長の申しますには、いかにしてモスクワの市民、市の人口をふやさぬようにするか、七百万がモスクワ人口の理想だと言います。これを七百万以上にふやすことによって、モスクワの市の
計画はすべてくずれる、従ってこれをいかにふやさぬように努力するかということが私の一番大きな任務でございますと、彼は言っておりました。そのくらいに明確に割り切るところは割り切っておりますことは、私もこれは見習わなければならぬことだと思いますが、しかし、その反面において、その理想に達するために、りっぱな市民として、りっぱな生活をさすために努力しておる姿は、今私が申し上げた通りでございます。必ずしもまだでき上がっておるわけでもありません。
建設の途上であるということが当たっておるのだと思います。これがモスクワにおける現状であると私は見聞いたしております。従いまして、わが国における立場を今御指摘でございますが、これは私も同様に
考えないことはございません。
そこで、資本主義国家でございます
日本の場合には一体どうか。ところが、今日
住宅に対する
国民各位の御要望は、一体
住宅は、国、公共団体がやるものか、自分で自分の
住宅は責任を持つものかということの認識——これは国家で必ずしも一定でないと私は思うのでございます。そこは一つの割り切りをする必要があるのじゃなかろうか。これは戦災によりまして、しかも物資が非常に少ない、
住宅建設が思うにまかせないときに、だれのもの、かれのものということなしに、できるだけ
政府もしくは自治体がいたさなければならなかった時代に、そういう一つの
考えを一般の市民諸君に与えたと思うのでございますが、私は、わが国の場合におきましては、低所得者の方々の
住宅は、これは国もしくは公共団体においてお世話を申し上げることが適当である。どこまでもお世話すべきである。しかし、ある程度の所得のある人、自分で
住宅を建てれば建てられる人が、なおかつ拙せんに当たったから入ってやろうということでなしに、なるべく自分で自分の
住宅は責任をお持ちいただくということでいってほしい。ただし、その場合に一番問題は
宅地の問題でございます。
宅地は金だけで済まない問題がございますので、ちょうどかつて
住宅資材が不足しておりますために、これをどうしても国がお世話しなければならなかった時代と逆に、今度は
宅地の方が思うにまかせぬような点が多い。しかも、これが今のお話でいきますれば幾らでも暴騰いたしまして、そうしてこの
土地の高騰のために
住宅がなかなか得にくいという事情に今日なっておりまするし、ますますこの傾向が強い。そこに問題があるというふうに
考えるのでございます。従って、まず
政府としては、低所得者の諸君のために
住宅を設計する、
計画するということが、これからの
住宅政策の基本的あり方ではないか。つまり低所得者諸君に
住宅を、それから自己の
資金において
住宅の
建設ができる人には
宅地をということに
考えて参ることが適切ではないかという
考えのもとに、実は指導をいたしておるのでございます。
そこで、問題は、
住宅の方は
公営住宅もしくは公庫
住宅につきましては別にいたしまして、
宅地の問題につきましては、御承知の通り、
土地の高騰、需給の関係その他におきまして、なかなかこれの解決が困難でございます。しかも、これを解決するために、法的な処置において解決を
考えまする場合、これまたいろいろな点においてなかなか困難が伴います。が、しかし、そのままにいたすわけには参りませんから、今せっかく
調査会等の御研究をいただきまして、そういうものの御答申をちょうだいした上で、何とか法的処置を講ずることができるか、また講ずることが適当であるということであるならば、遅滞なくそれをやりたい。さらにまた、
住宅公団その他をして未開発地の開発もしくは市内のその他の遊閑地の利用というようなことに積極的に乗り出させなければいかぬのじゃなかろうか。今のように未利用の
土地が相当市内もしくは
住宅適地として
都市の近郊に見受けられる。全部が全部とは申しませんけれども、
土地の思惑、空地について利殖をするというような傾向のものもありますことははなはだ遺憾でございます。これらを公団、公社等において利用することができるように、どういうふうに法的処置を講ずるか、先買権であるとかもしくは
土地収用であるとかいうような処置ができるようにするにはどうしたらよいかということを
考えて、せっかく今検討しておりまして、ぜひその方向に行きたいと
考えておるわけであります。