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1963-02-18 第43回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月十八日(月曜日)     午前十時九分開議  出席分科員    主査 中村三之丞君       相川 勝六君    仮谷 忠男君       周東 英雄君    松浦周太郎君       石田 宥全君    加藤 清二君       川俣 清音君    栗原 俊夫君       高田 富之君    芳賀  貢君       安井 吉典君    玉置 一徳君    兼務 島本 虎三君 兼務 田口 誠治君  出席国務大臣         農 林 大 臣 重政 誠之君  出席政府委員         農林政務次官  津島 文治君         農林事務官         (大臣官房長) 林田悠紀夫君         農林事務官         (大臣官房予算         課長)     太田 康二君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         農林事務官         (農政局長)  齋藤  誠君         農林技官         (農地局長)  任田 新治君         農林事務官         (畜産局長)  村田 豐三君         農林事務官         (蚕糸局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (園芸局長)  富谷 彰介君         食糧庁長官   大澤  融君         林野庁長官   吉村 清英君         水産庁長官   庄野五一郎君         建 設 技 官         (河川局長)  山内 一郎君     ————————————— 二月十八日  分科員高田富之委員辞任につき、その補欠と  して栗原俊夫君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員栗原俊夫委員辞任につき、その補欠と  して安井吉典君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員安井吉典委員辞任につき、その補欠と  して芳賀貢君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員芳賀貢委員辞任につき、その補欠とし  て高田富之君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員田中幾三郎委員辞任につき、その補欠  として玉置一徳君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員王置一徳委員辞任につき、その補欠と  して田中幾三郎君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  第二分科員田口誠治君及び第四分科員島本虎三  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十八年度一般会計予算農林省所管  昭和三十八年度特別会計予算農林省所管      ————◇—————
  2. 中村三之丞

    中村主査 これより会議を開きます。  昭和三十八年度一般会計予算及び同特別会計予算中、農林省所管を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑通告順によりこれを許します。  川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣分科員 主査並びに農林大臣要望があるのです。それは、本委員会が始まった当初において、農林省資料要求をいたしております。これがまだ今日まで手元に届いておりません。十分審議を尽したいということで資料要求をしておりますけれども、これが出て参りませんので、資料が出た上で質問をいたしたいと思いますから、資料が出るまで質問を保留いたしておきたいと思います。もし分科会の日程の中で出て参りませんければ、分科会を延ばすなり、一般質問でいたしたいということにいたしますから、どうぞ主査並びに農林大臣資料をすみやかに御提出願いたいと思います。
  4. 加藤清二

    加藤(清)分科員 議事進行……。承れば、農林のベテランの川俣氏の要求された資料が出ていないということで、そのために審議がスムーズに行なわれないとするならば、その責任は一にかかって農林省の方にあると言わなければなりません。従って、今お話し通り分科会で行ないたいと予定していたのが資料関係でできないということであるならば、やむを得ませんので、これは予算委員会一般質問なり、あるいは総括質問なり、残されたその機会川俣委員質問が行なわれまするよう、主査においてお取り計らいが願いたいのでございます。
  5. 中村三之丞

    中村主査 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  6. 中村三之丞

    中村主査 速記を始めて下さい。  川俣君の御発言の趣旨は了承いたしました。主査において善処いたしたいと存じます。  石田宥全君
  7. 石田宥全

    石田(宥)分科員 私は、きょうのは主として土地改良の問題について質問を申し上げたいと思うのでありますけれども、この間の予算委員会においての農協の問題については、時間の関係がございまして、十分意を尽くしておりませんので、若干補足的な質問を申し上げたいと思うのであります。  そこで、最初に、農協法によりますと、大臣知事行政監督をしなければならないことになっておるのでありますが、現在行なわれておりまする大臣知事行政監督というものが、どんな実情であるかということ、これは、具体的なことは局長なり適当な方でいいと思うのでありますけれども大臣から一応その考え方を承りたいと思います。
  8. 重政誠之

    重政国務大臣 これは主として経理の会計上の検査が非常に重大であると思うのでありますが、監督権といたしましては、会計検査のみならず、一般組合並びに連合会事業運営についても監督権があることは申すまでもないのでありまして、定款の変更であるとか、その他新たに事業をやるというような場合においては、それぞれその相談にも乗り、行政上の指導監督をいたしておるわけでありますが、なお具体的には農政局長から説明をいたさせます。
  9. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 ただいま大臣からお話がありましたように、大体法令上に基づく監督といたしましては、定款なりあるいは事業許可等につきまして、法令上の措置に基づいて監督いたしておるわけでございますが、今御指摘になりました面は、むしろ組合の健全な運営をはかる意味の各種の検査が問題だと思うのでございます。これにつきましては、大体役所側検査といたしましては、全国団体に関連するものは農林省検査する、県内以下のものにつきましては府県知事検査をするということにいたしておりまして、大体中央団体につきましては、主要な全国団体について二年に一度の割合くらいで検査をいたしております。府県におきましても定例検査を施行いたしておりますので、大体において検査業務を通じての公正な運営をはかろう、こういうことを主としてやっておるわけでございます。
  10. 石田宥全

    石田(宥)分科員 次に、やはり農協法によりますと、中央会農協活動について指導監査を行なうことになっておるわけでありますが、中央会の行なう指導監査行政監督との関係を承りたいと思います。それからあわせて、中央でもそういうことが言えるのでありますが、指導監査を行なうところの中央会が、中央では全購連なり全販等の負担金運営される。地方でもやはりそういうことが言える。たとえば新潟などのような場合には、信連に対しては相当指導監査を厳重にしなければならないにもかかわらず、信連会長中央会会長兼務しておる。こういうことになると、適切な指導監査が行なわれないのではないかということが心配されるわけですが、それらの関係についての見解を、これは局長でけっこうですが、一つ伺っておきたいと思います。
  11. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 組合に対します監査には、今御指摘のように、国が行なうものと、それから組合みずからが行なういわゆる自治監査二つあるわけでございまして、国の検査は、御承知のように法令に基づく検査でございますので、どちらかとい言えば、組合組合員外との関係、特に農民利益保護というような見地、あるいは組合が法的に違法行為のないような運営が行なわれておるかどうかというような意味検査ををやっておりまして、従って、この検査については、法律上も、当然その義務に違反した場合における措置を伴うような権限的な検査監督を行なっておるわけでございますが、組合自治監査は、どちらかと言えば組合——もちろん御指摘のように、賦課金にっよてある程度行なっておる団体でございますので、いわば組合から内部運営についての受託を受けて、自主的に監査を行なうというような性格のものでございまして、行政権限に基づく非違行為の防止、いわば矯正的な、行ないをためるところの行政的な権限に対しまして、いわば組合の自主的な受託に基づいて自治監査農協団体で行なわれている、こういういわば唇歯輔車の関係にある、こういうふうにわれわれは理解しておるわけでございます。
  12. 石田宥全

    石田(宥)分科員 そういたしますと、中央会監査というものと、また購連なり販連なり、あるいけ地方連合会における信連なりの自治監査との関係はどういうことになるか。中央会指導をし、監査をする。ところが信連などは、中央会監査などはあんなものはどうでもいいんだ、われわれは自治監査でやっているのだから、意味はないとい批判も行なわれておるのでありますが、それは現状では、私は、重複するということでなくて、むしろ、どっちの方の監査も不十分、不徹底のそしりを免れないのではないかと思うのですが、どうでしょう。
  13. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 御指摘通りでございまして、むしろ両方が行なわるべき性質のものでありますし、国の検査合法性を確保する、不正行為あるいは非違行為についての矯正的措置を伴うといったような、むしろ合法性を中心とした監査監督であるわけでございまして、農業団体の行なうものは、むしろ今御指摘になりましたような面からいえば、経営が合理的に合理性を持って運営されているかというふうな監査でございます。従って、これには強制力というものは当然ない。先ほど申し上げましたように、受託関係に基づいて監査が行われるとい性質のものでございます。従って、これは、いずれがあればいいかということではなくて、両々相待って両方が当然行なわれるべきものであるというように私は考えておるわけでございます。ただ、自治監査が不十分であるとかいうような点については改善をする余地があろうと思いますけれども両方とも今後とも進めていくべきものである、こう考えておるわけでございます。
  14. 石田宥全

    石田(宥)分科員 この点は、かなり微妙な問題でございますので、これは局長からも御注意を願いたいし、大臣からも今後そういう点万遺憾のないように一つ措置を願いたいと思います。  次に移りますが、今日の農業団体がきわめて民主的に運営が行なわれておるといことを、農協諸君はかなり高姿勢でものを言っておるようでありますが、私どもは必ずしもそうとは考えておらないのであります。たとえば、ここ数年来米価要求闘争を組んでおるのでありますが、各県などでは、たとえば昨年では、新潟県、山形県、長野県等では、いろいろ農民要求が県の大会などで盛り上がっておるのでありますが、農協県段階役員はそれを抑さえつけるのに大わらわであって、ついに新潟県などは下からの農民要求を抑圧するのに懸命になって、その大会を流会に導くというような事態を生んでおり、農民意思農協運営に反映する機会というものは非常に限られておるわけです。ようやくにしてそういう場が持たれても、今申し上げたように、中央からの指令によって、県の役員農民意思を抑圧するのに懸命になっているというようなのがどうも実情のようです。地方に参りますと、やはり同じことが言えるのでありますが、農協諸君は、農協は民主的に運営されていると言うけれども米価闘争大会などは別といたしまして、常時の会合などを見ましても、私も県の会合にはしばしば出席をいたしておるのでありますが、ほとんど自由な発言を許さない、時間を制限する、そうして閉会時間がもう間近だというようなことで、非常な不平不満がある。単協諸君単協組合員発言を抑制するのに、あらゆるあのこの手を使っている。全く単協組合員意思というものが県段階に反映しない。それから中央でも同じことが言えるので、中央はもっとひどい。県から出てきた代議員の意思というものが、中央大会にはもう全然反映しないと言っても過言ではない。私どもはこの目で見ている。おそらく局長大臣もごらんになつておられると思うのでありますが、はたしてこれで農協運営が民主的に行なわれていると一体どこを押せば言えるかと、実は私どもは言いたいのでありますが、 この点は、大臣は、全体の責任者として、今の農協運営というものが、農民意思が十分反映されるような運営が行なわれているとお考えになっているかどうか、一つ総括的に意見を承っておきたい。
  15. 重政誠之

    重政国務大臣 それは非常に大切なことであると思うのであります。お話のようなことがあるといたしましても、これは運営の問題でありまして、制度的にこれをどうするということに参らぬのじゃないかと私は思うのであります。これは、それぞれの農協幹部におかれて十分その点を一つ気をつけてもらって、農家諸君の意向が反映するような運営をやっていただくよりほかはないと思うのであります。
  16. 石田宥全

    石田(宥)分科員 実は、そういう点は、具体的にいろいろ材料は山ほどあるのですけれども、私は、きょうは土地改良問題を相当やりたいと思いますので、あまり深く掘り下げようとは存じませんが、少なくとも国家行政国家公務員、これについては国会とい審議の場がありまして、これはあまり不当な行政をやったり、またそういう国家公務員がある場合においては、かなり国会で手きびしく批判を受ける。また、地方行政地方公務員は、これはやはり県議会なり市町村議会なりがあって、ここで行き過ぎはチェックされる可能性が十分ある。ところが、農協にはたしてそういう場があるかというと、どうも先ほど申し上げたように、私どもの知る範囲においては、農民意思が十分に反映をし、行き過ぎや不当な行為というものをチェックする場が全然ないのではないか、私は、これが今日農協にとって非常な弊害を生む大きな原因ではないかと思うのです。今日日本で、これはもうどうせ表に出した問題ですから、私ははっきり申し上げますが、日本民主団体と言われる民主団体の中で、たとえば中央会の一楽常務といものがおりますが、これは一楽天皇日本じゅう通っておる。官民ともにこれを認めておる。一体民主化した今日の日本の中で、役人といえ、ども、あるいは政党幹部といども、何々天皇などということが、官民ともに認められて通用するなどということは、一体どこから起こっておるか。私は、今申し上げたように、今の農協の通常というものが、行政機関や官僚に対してはチェックする場があるけれども農協に対しては何人も触れることができないのではないかというところに、私は重大な問題が伏在しておると思う。これはこのまま見のがしておくわけにはいかないと思う。ことに私は、この間の委員会で、冒頭に、農業基本法審議にあたって、農林漁業基本問題調費会が、農業団体の再編成ということになぜ手を触れなかったかということを大臣質問をしたのですけれども大臣はよくおわかりにならないようでありましたが、私の聞くところによると、農林漁業基本問題調査会の有力なメンバーの一人は、私にこういうことを言っておる。実は基本法制定にあたって、当然農業団体に手を触れなければならなかったのであるが、農業団体からの要望に基づいて手を触れることはできなかったと言っておる。しかし、これは単なる要望と私どもは受け取るわけにいかない。これこそ重大な圧力であると言わなければならない。こういうふうに、いやしくも国の姿勢を正そうとするその重大な問題の討議にあたってすらも、農業団体圧力のためにそれを討議することができない、また、政府決定をし、与党が決定をしても、農協の一部の議員団のためにそれもじゅうりんされるというような政治が、一体正しい政治であると言えるかどうか。この点は、やはり重大でございますから、今後また機会を見て、私は、もろもろの問題の討議国会の場でやることが、農協のためになると考えておる。私は、今農協連動については、私も農協組合長をやったこともありますし、農協については十分理解をしておるつもりでありますが、しかし、今のままで農協が独走をすれば、農民から手きびしい反発が起こって、ついに農協運動はそれがためにくずれ去るのではないかと私は心配しておる。私は、農協のために現状のような運営を惜しむのであります。これについての大臣所見を私は承りたいと思います。
  17. 重政誠之

    重政国務大臣 私は、ただいまこの農業基本法制定当時の農業団体についてのいきさつを初めてお伺いいたしたわけであります。御指摘通りに、そういうことであってはならないと思うのであります。少なくとも私は、私の信じましたことは、あくまでも実行をいたしていくという建前で今日まできております。将来においても同様の考えを持っておるわけであります。  農協運営について、いろいろ御心配の点をお述べになりましたが、私は、実は学校を出ましてから——当時は産業組合と言っておったのでありますが、若いときから、産業組合の問題については、農林省役人として長い間取り組んで参ったのでありますが、私が特に感じておりますことは、産業組合運動の当時のように今日その精神的な一本の柱が通っておるかどうかということを、私は率直に言って心配をいたしておるのであります。ただいま石田さんのお述べになりました通りに、あくまでも農業団体農民のための団体でなければならぬ。それがややともすると、その根本的な一つ精神的な柱というものが失われたかのような感じを与える場合がある。そういうことで、ただいまお話しになりましたようないろいろの御心配が出てくるのであろうと思うのでありまして、私は、どこまでも農業団体農民のためのものである、こういう根本の精神に立脚をいたしまして、将来におきましても、農業団体運営については十分に一つ反省も求め、また指導もいたしたい、こういうふうに考えております。
  18. 石田宥全

    石田(宥)分科員 大臣も御承知のように、農協法では、独禁法の適用除外の規定とか税法上の恩典がある。これはまことにけっこうです。今の農業の状態から見て、他産業との所得格差を是正するというような点から見れば、私は、もっとこれは大幅に配慮されなければならない性質のものであろうと思うのであります。しかし、前段申し上げますように、それが農民のために行なわれることにならないで、結果的には団体屋の利害につながってしまって、そして団体団体とが紛争をして、農民がその犠牲にされるというようなことがあってはならないと思うのです。私は農業団体政治活動を否定しようとは存じません。今日のような政治情勢のもとにおいて、農民政治活動というものはきわめて重要な意義を持つでありましょう。しかし、私は、この点きょうは割愛いたしますけれども、いろいろな意味で実は農協にはあぶく銭がある。そしてその資金と、同時にまた、膨大な機関誌を持っている。新聞雑誌を持っている。この威力が一つ圧力となっておることはいなめない。だから、今日の農協というものは、全く目に余るものがあって、農民の怨嗟の的となっておるにもかかおらず、国会の場でかってだれも手を触れることができなかったのではないか。大政党である自由民主党すらも、これに手を触れるととはできなかったのではないか。私は、一人の有力な自民党の幹部の口からこういうことを聞いた。今の農協幹部というものは、まさに以前の地主と同じ存在ではないか、こういうことすら私は聞いておる。全く農協幹部に対する批判というものは野に山に満ちておる。天に日なし、人をして言わしむ。今日私は重大な決意をして、この問題を国会の遡上に乗せたわけです。そういうふうな現状でありますので、私は、さらに機会を見て、いろいろな農協内部の、いわゆる農協の恥部を、一つ国民の前に、農民の前に暴露しなければならない事態が起こるのではないかと考えるのでありますが、どうか一つ農協に対するあらゆる恩恵、これは農協とい団体に対する恩恵ではなしに、日本農業に対し、農民に対する政策であるということを農業団体諸君が取り違えないように、大臣局長から十分の配慮を願わなければならないと考えるのであります。大臣所見がございましたならば一つ承っておきたい。
  19. 重政誠之

    重政国務大臣 これはもう御意見通りでありまして、農民のためにいろいろの特典を与えるのであって、農民を離れた農協というような団体特別扱いをする場合は非常に少ないのでありますから、それはもう御指摘通りであります。そういうことについての精神は十分に普及をいたしますように善処いたします。
  20. 石田宥全

    石田(宥)分科員 この問題は、さっき述べましたように、また別の機会に取り上げたいと思います。  次に、土地改良の問題についてお伺いをいたしますが、政府農業基盤整備に関する法律案提案予定になっておるようでありますが、いつごろ御提案予定でございますか。
  21. 重政誠之

    重政国務大臣 土地改良法改正法律案を出そう、こういう考えでありますが、これも遠からず提案をいたしたいと考えております。
  22. 石田宥全

    石田(宥)分科員 ことしは統一地方選挙が行なわれますので、早急にお運びにならないと、これは成立ができないおそれがございますので、早急にお運びを願いたい。しかし、私は拙速主義大臣要望するのではございません。やはり根本的に農業農民のためになる農業機械化近代化をはかる上において役立つものでなければならないと思いますので、以下重要な項目についてお尋ねを申し上げたいと思うのであります。  構造改善事業などで政府指導方針は、道路は大体五メートルか五・五メートルくらいの指導方針をとっておられるようでありますが、もちろんそれは必要なことだと思います。しかし、その場合に、道路が広がる、それだけ農地がつぶれる。つぶれた農地がどういうことになるかというと、これは今までの狭い道路なら、それほど近代的なトラックダンプカー等が通らないわけでありますけれども、五メートル以上にもなりますと、トラクターも通さなければならないわけでありますから、トラックも、ダンプカーも通る。農民土地がつぶれて、それが道路になる。そうすると、その道路を非常にこわす。これの維持管理費全額農民負担になる。ここに非常な不合理があると私は思うのですが、そういう面において二つの問題がある。  その一つは、個人の所有地道路になると、その所有権は国のものになる。これが一つ。それから道路である以上、あれは通っていけない、これは通っていけないと交通制限はできません。何もかも通る。しかし、そのこわした跡始末や維持管理農民だけが負担しなければならないという不合理な問題があると思う。この二つの問題は、新しい法案ではどういうふうにお取り扱いになる御方針ですか。これは局長でけっこうです。
  23. 任田新治

    任田政府委員 ただいま道路の問題でございますが、全般的に、この土地改良法改正におきましては、目下農林省部内でいろいろ検討を加えておる段階でございまして、実はまだ大臣に庁内の改正意見というものは申し上げてはございません。早急に取りまとめまして、改正につきまして国会に上程をいたしたいとは思っておりますが、ただいまの段階ではそこまでは参っておりません。道路の問題につきましては、これは農業近代化ということになりますと、勢い農家におかれましても幅員の増大というものの要求がございますが、一方また、これが増大いたしますと、ただいま御指摘通り一般トラックその他も通れるというようなことで、そのようになっていくということになりますと、将来はこの農道というものが市町村道に移管されていくというような姿が望ましいのではないかと思います。しかし、この点の改正については、まだ目下のところ検討中の段階でございます。
  24. 石田宥全

    石田(宥)分科員 その問題は、非常に大きな問題でありまして、あとで排水の関係の御質問を申し上げたいと思うのでございますけれども、一例を申し上げますと、新潟県の亀田郷という七千町歩ほどの土地改良事業がございますが、これは相当年月を経ておりますけれども、国から二十億の助成をもらって工事をやっておるのです。ところが、その土地改良事業をやったために、全部農民のたんぼがつぶれて、道路になり水路になった。それは国の所有になるのです。それがために、国から二十億円の補助、助成をもらったけれども、その農民土地が道・水路になって国有地になった分を今評価いたしますと、八十億に相当する。こういう実情のもとにおいて、構造改善事業ども大きな障害に突き当たるのではないかと私は考えるのでありますが、こういう点についてはこれから検討するでは、どうもはなはだ心細い話であります。きょう、私は、実はこの点は、法制局の関係者も呼んで、法律上の見解もただしたいと思ったのでありますが、時間の関係もありますので、きょうその煩を省きますけれども、やはりその点を農地局長は実態を把握されまして、関係各省との折衝に相当強い態度で臨まれないと、今後の農地基盤整備事業というものが、私は非常な障害に突き当たるのではないかと思うのでありまして、できるならばこれはやはり今度土地改良法提案までに、法案の中にこれを文書として盛り込まれないにしても、その政府の見解というものは統一されて、農民が非常な、不利益を受けることのないように、一つ御配慮を願いたいと思いますが、どうでしょうか、どの程度までそれは進めていただけましょうか。
  25. 任田新治

    任田政府委員 ただいまの石田先生の御指摘の問題は、道路を一例におとりになっておられるわけでありますけれども、これは土地改良事業が施行されて参ります場合に、単に道路のみならず、水路その他全般的にこの事業ができ上がって参りますと、それの施設の公共性の問題になろうかと思うわけでございます。従って、公共性の強いものにつきましては、先ほども申し上げたのでございますが、単に道路だけではございませんけれども、今後市町村への移管の問題も出て参りましょうし、それからまた、この事業を進行する段階におきまして、地方の自治団体負担の一部をお願いするというような場合も出てくると思うのでございまして、この点についての配慮は何とかいたしたいというふうに現在では思っておるわけでございます。
  26. 石田宥全

    石田(宥)分科員 これは一つ自信と勇気を持ってやってもらわないと、あとで結局やはり局長のところに責任が舞い戻ってくることになりますから、一つしっかりやってもらいたい。  それから、やはり同じような性質の問題でありますけれども、例の排水の関係でありますが、特にこれは新潟県、愛知県等が大きな問題でありまして、しかし全国的に言えることでありますが、排水施設というものの施設費もさることながら、維持管理費も、電力料金、人件費、事務費等で相当な多額に上っておるわけであります。その場合に、はたしてその排水というものがたんぼだけの排水かどうかとなると、ほとんどそうではなくなった。いわゆる市街地、住宅、工場、もちろん道路もある。そういうふうな及ぼすところの受益地というものは広範なものがあるのです。ところが、その排水機の施設費は若干国が補助するといたしましても、維持管理は全部これは農民負担になる。こういう不合理が現在行なわれておるわけです。全国ではほんの一部、昨年度からその維持管理費は国がめんどうを見ることになったようでありますけれども、これはまだ不十分であって、やはりもっとこの点については、その公共性というものを認めてもらわなければならない性質のものではなかろうかと考えておる。そこで、この維持管理費については、これは当然農民だけが負担をするというような不合理を排して、漸次公共団体がもっと応分の負担をし、また国もそれに見合った負担をすべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  27. 任田新治

    任田政府委員 農村が逐次その場所によりまして工場化され、あるいは宅地化されていく傾向がございます。従って、一定の地域の中の非農地の率が逐次高まって参る傾向がございます。もちろん、面積的に申しました場合に、その面積の過半が農地であれば、これは土地改良事業として、それらの地域の排水につきまして事業を遂行することについては、われわれはそれでいいというふうに思っておるわけでありますが、ただいまの御指摘通り、逐次市街化される、その場合にいわゆる流出の出方が早くなってくる。従って、従来の排水施設においては不十分であるという面は確かにございます。また一方、作物の選択的拡大という点からいきまして、従来稲作でもってやっておったような地帯の排水におきましては、これは稲の成育の問題から考えて、湛水量その他からいきまして、一週間あるいは十日間稲そのものにがまんをしてもらうというような排水計画の設定であることも事実でございます。しかしながら、今日になりますと、水田の地帯にあちらこちらでトマトを植えるとか、蔬菜を植えたいという欲望が非常に大きくなって参りますので、農業それ自体におきましても、排水計画の基本的な考え方を変更しなければならない時代になってきておる。従って、一方においては、工場化、宅地化の問題もございますが、また農業それ自体においても、排水量の計画を変更して施設の増大をはからなければならないということになって参りますので、この点はまことにむずかしい問題があるわけであります。しかしながら、今後その地域の内部の市町村の行政としまして、明らかに利益がそこに生まれてくるというような土地改良事業につきましては、これは市町村にどの程度の負担ということは、ただいま明確には申し上げられませんが、何らかの算出の基本を考えまして、そこに負担考えていかなければならない問題だ、かように考えております。
  28. 石田宥全

    石田(宥)分科員 自治省を呼んであったのですが、見えておりますか——局長が言われておるように、農地以外の受益地というものが非常に多いのです。地方によって、場所によっては背後地で受益地が三〇%もある。その経費は全部農民だけが負担する。こういう不合理が今日許されるということは、これは考えられないですね。そこで、われわれの知っておる範囲では、やはり農民負担に耐え切れないので、市町村なり県なりにその一部の負担を要請するのです。ところが、市町村や府県はなかなかそれに応じないのですよ。私は、これは自治省が悪いと思うので、一つ自治省の責任を大いに追及しなければならぬと考えたのですが、きょうは来てないし、時間の都合もあって、これから呼んでというわけには参りませんので、また別の機会を見ましょう。そういう不合理が今許されるということは、これは不届き千万な話ですから、局長も強く要求してもらいたいし、大臣からも自治省その他へ——これはやはり国の政治全体の問題だと思うのですよ。今申し上げたように、膨大な維持管理費負担なんですね。二割も三割も農地以外の人たちが排水による利益を得ておるのに、農民だけがそれを負担しなければならないというような不合理は許さるべきでないと思うのです。これは大臣から自治大臣にも話されて、やはりその地方自活体が応分の負担をする、二〇%受益があるから二〇%というふうにはいかないかもしれないけれども、やはり応分の負担地方自治体がこれを負担をし得るような自治行政のあり方が望ましい。やっぱり自治省がそういう姿勢でなければならないと思うのですから、これはぜひ一つ大臣の方から、特に自治大臣その他の関係でこういう不合理をなくするようにやっていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  29. 重政誠之

    重政国務大臣 よく一つ相談をいたします。
  30. 石田宥全

    石田(宥)分科員 建設省、まだ来ませんか。——河川局長、見えられたばかりで恐縮ですけれども、実は最近、これは全国的な問題でありますが、建設省は、河川管理というものは治水第一主義におやりになるわけですね。これは当然だと思うのです。そういう治水第一主義でやることと、最近建設事業が進んで参りまして、バラスの採取が急に非常な量に及んでおるわけです。そういたしますと、河床が急ピッチで下がってまいります。河床が急ピッチで下がって参りますと、従来の灌漑施設では水の取り入れが不可能になる。もう一つは、河床が高いということは、かりに流水量が少なくとも、伏流水となってやはり灌漑水になっておるのです。ところが、バラスをどんどんとる、それから従来のカーブをなくするものだから、急ピッチで河床が下がる。そうすると、灌漑施設がもちろんだめになりますし、伏流水がとんどんだめになって、ほとんど今までは伏流水に依存しておったようなたんぼが、全部灌漑施設をしなければならなくなっておるわけですね。こういう状態が全国的な現象として起こっておるわけでありますが、これに対しては、新潟県で起こった場合に、その一部を県から助成させた例もあるわけでありますけれども、やはり建設省は、本来的な使命としては治水第一主義でありましょうけれども、その治水のための工事なりあるいはバラスの採取というようなことから、灌漑が不可能になるというような場合においては、当然建設省がそれを見てやるべきだと思うのです。今のところ、まだ建設省はそれを見ておられないようでありますけれども、将来これは何とか措置しなければならぬ問題であるとお考えでしょうか、どうでしょうか。
  31. 山内一郎

    ○山内(一郎政府委員 河川管理は、治水第一といいますか、治水は優先的には考えますが、やはり利水と総合的に考えてやって参っておるわけであります。ただいま先生の御指摘がございました、河川の治水の面から河床をある程度下げる計画もございます。そのために、いろいろ堰堤をつくったり、あるいは護岸を深くする、こういうような工事もやっております。そのためにいろいろな影響も出てくると思いますが、その辺の手当が現在のところそう十分ではございません。しかし、治水の面からいきましても、これ以上下がったら因るという限界もございます。従って、そういう場合には、床どめの堰堤をやるこによって、従来のほかの面の利水にも影響のないように、あるいはそういう効果が確保されるように、こういう点にも現在考慮してやっておるわけであります。
  32. 石田宥全

    石田(宥)分科員 本年度予算で、農林省は、この面で用水障害事業というようなことで、何か要求をされたように承っておるのでありますけれども、この点では、農林省と建設省の間の連絡が十分でなかったのではないかと考えられる節があるのですが、農林省と建設省の関係ですか、あるいは大蔵省の方の認識が十分でなかったためですか。この事情をお聞かせ願いたい。
  33. 任田新治

    任田政府委員 用水障害の問題につきましては、ただいま河川局長からのお話もございましたが、この点についての私の方の見解を申し上げます。もちろん、障害が起こる原因といたしましては、上流のダム群の問題もございます。それは治水的な効果という面においては十分ではございますが、逆に河床低下の問題も出て参るわけでございます。一方、先ほど御指摘のように、骨材の採取による低下もあるわけでございます。しかしながら、全般的な問題といたしましては、ある河川の勾配の途中がゆるやかな方がいい、すなわち、河川の内部におきまして土砂が堆積しておるというものが、一洪水ありますと、それが逐次動いていくという実態がございます。従って、これは長い年月によりまして、それぞれ一つの河川の中に上流あるいは中流あるいは下流部におきまして、、河川内の堆積物が何年かかかって逐次動いていくという実態がございまして、ただいま申しげました砂利採取あるいは上流のダム群との関係ももちろんありますが、全般的にただいま申し上げましたような原因のものもあるわけでありまして、原因がはたして百パーセント砂利採取にあるかということになりますと、なかなかむずかしい点がございます。全国の用水障害というものにつきましての各地元の要望をとって検討いたしますと、その一部分につきましては、もちろん用水障害の原因といたしまして砂利採取というようなことがあり、また、先ほど御指摘のように湾曲した河川のショート・カットによりましての河床低下というようなものも一部分に見受けられるわけでございますが、これが全般というわけには参りません。従って、われわれ内部におきましてその内容を検討いたしますと、はたして用水障害が砂利採収のみに原因を帰すべきかということについては疑問もあるわけでございます。しかし、現実におきまして、そこにそのようなことがあることは事実でありますので、これは一般土地改良事業の中へなるたけ優先して取り上げて、改良事業として実施をいたしたいというふうに思っておるわけであります。  建設省と農林省との間の連絡不十分というようなことについでは、特別何もございません。
  34. 石田宥全

    石田(宥)分科員 この用水障害というものがここ一、二年激しくなってきた問題でございますだけに、今河川局長の治水第一主義ではないといお話でございますし、また利水関係というものは一つの公共事業でもございますので、できるならば、建設省の事業その他の関係で起こった障害については、これは建設省の付帯工事としてある程度見てもらう。農民負担によってそれを全部まかなわなければたらないということは、私どもはどうしても納得がいきません。これは政府機関の中でどことどこがどう配分するかということは別といたしましても、これは近代的な発生障害なんですから、そういう意味でぜひ農林省と建設省の関係で十分話し合いを遂げられて、全額農民負担によってその施設や方途を講じなければならないという不合理をなくするように努力をしていただきたい。これは河川局長の方に強く要求したいと思うのです。今の建設大臣は、かつて農林大臣を二回もやられて、農業関係については十分理解のある方でありますから、局長の方から特にこの問題を大臣に進言されて、そういうことによって農民負担が過重になるようなことのないように一つ御配慮願いたいと思います。
  35. 加藤清二

    加藤(清)分科員 ただいまの石田分科員質問に関連して、一言だけ御質問させていただきたいと存じますが、特にこれは農林大臣によく聞いていただきたいことでございます。  すなわち、ダム建設あるいは砂利採取等によりまして河川が破壊される。その結果治水、利水に大へんな迷惑を及ぼしている。その始末につきましては、当然その原因をつくった方においてこれを処理するというのが建前であるはずでございます。特にあなたの大先輩でいらっしゃいまする、かつての農林大臣河野さんは、砂利採取法とい法律を通産委員会において通しました。ところが、それは小金さんが主体になってやられたということでけちがつきまして、これはついにお流れになりました。そうして翌年になって通過を見た法律、それがすなわち砂利採取法でございます。これは通産省所管に和なっております。なぜそういうことになってお流れになったかというと、今の上が農地地になっていて、その下に砂利や砂が埋没している、それを取り出すという場合もあり得る。特にこれは神奈川県地区に多い。その場合は、取った者が元の姿に返す、こういうことに相なっているわけでございます。河野さんの意思によってそのように改善されたおけです。私どももそれで賛成したわけです。つまり水路を破壊する、砂利をとったおかげで水の取入口が低くなる、それは、その原因をつくった者がその原因を除去し、他の目的のために農耕地を破壊した者があったとすれば、目的が終わってしまったあとにおいては元の姿に返す。その精神は今日の法律では生きているわけでございます。そのゆえにこそ愛知用水におきましても、水上において水をとりましたところ、下の木津、官田の用水の取入口が干上がったという理由のもとに、あそこはりっぱに愛知用水の力によって直したはずでございます。ただいまのような問題は各地に発生しておるわけてございます。特に水の利用が今日ほど激しくなって参りますると、これは砂利のみならず、工業関係の利水のために農業者が非常な不利益、つまり過去の権益を侵害されるという例がときどき出てくるわけでございます。これが今日農林省において放置されている。いわんや、その跡始末が農民の力によって処理されているということは、さなきだに困っている農民負担を一そう加重するものだと思います。従って、これは関係各省とよく連絡の上、農民にのみ負担がかけられるというような不公平が行なわれないように厳重に調査すると同時に、始末を可及的すみやかにやっていただきたいと思います。特に河川局長はその道のべテランでいらっしゃるはずでございますので、各省に威令を及ぼして、ぜひ農民のために利水あるいは灌漑用水に悪影響を及ぼさないようにしていただきたい、かように思うわけでございます。大臣どう思われますか。
  36. 重政誠之

    重政国務大臣 十分に一つ検討をいたして、善処いたします。
  37. 石田宥全

    石田(宥)分科員 もう二、三質問を申し上げて終りたいと思うのでございます。  今加藤分科員からも触れられましたように、用水というものは、かつてはほとんど農業用水が中心でありましたが、漸次工業用水、上水道の関係のものが多くなって参りました。そうなりますと、農業用の灌漑用水というものがだんだん軽んぜられてくるような傾向が強くなって参りました。まあこれは農林省でもお調べだと思うのでありますけれども、大体全国で河川から灌漑用水取り入れをしておる取り入れ口が六万五千ヵ所くらいあるだろうといわれておる。しかも、それがちゃんとした土地改良区があればまだよろしいのですけれども、そうじゃなくて、任意組合等ではっきりした土地改良団体のないような場合には、往々にして今申し上げたような上水道なり工業用水なりあるいは河川管理上のもろもろの問題から、灌漑用水というものが単なる慣行としてきておるから、だんだんその権限を狭められてくる、こういう心配があるわけですね。そこで私は、今度の土地改良法改正の際に、どうしても灌漑用水の慣行権というものを法律上明確にしなければならない段階にきておるのではないか、こう考えるのです。しかし、これは建設者はもちろん、通産省あるいは厚生省等とまたがる重大な問題でありますから、容易ならぬ問題であると思うのでありますが、やはりこの機会にこれを明らかにしなければならない段階にきておると思いますので、これについての大臣所見を承りたいのです。
  38. 重政誠之

    重政国務大臣 水の問題、ことに利水慣行の問題は、御承知通りなかなかめんどうな問題でありまして、往々にしてこれを中心に大騒動が起こるということも、古くからその事例がたくさんにあるわけであります。これを法律上の権利として認めるか——しかし、おそらくこれは、今日まで私は非常に尊重せられてきておることと思うのであります。それをここで法律上のはっきりした権利に扱うかどうかということについては、その慣行のいろいろの実態があろうと思うのであります。そういうことも十分に研究をいたしてやらなければならぬと考えます。なお、これはいろいろのケースが断りまして、その慣行を内容的にも固定的のものに将来してしまうことがいいか悪いかということも私は問題があろうと思うのであります。つまり、これはきわめて重要な問題であると同時に、また複雑な問題でありますので、十分調査もいたしまして、検討もしてどうするかということについて一つきめたい、こう考えます。
  39. 石田宥全

    石田(宥)分科員 何もかも検討々々じゃ……。この水利用問題については、もうすでに三年も前に農林省で出しまた大きな資料ができておるのです。そして今にしてこれを立法化されなかったならば、さっき指摘いたしましたように、ちゃんとした土地改良区のあるところはそれほど侵害を受けないにしても、任意組合のようなところはどんどん侵害されていくおそれがある。だから、やはりこれは今度の法改正の際に、法律の中に織り込むべきであると私は考えるのだけれども、しかし、それが非常に困難だとしても、やはりこの法案の審議までには関係各省ともおおよその話し合いをつけておかなければならない問題だと私は考える。これを立法化す、それは非常に困難でしょう、困難でしょうけれども、従来の行政訴訟その他による判例等もたくさん出ておるわけだし、そして何かなしくずし的に慣行権というものが無視されるような事態になってからでは時がおそい。だから今のうちに、やはりもっと明確なものを出すべきだと私は信じておる。これは一つ、ぜひそういうふうな方向で準備を願いたい。
  40. 重政誠之

    重政国務大臣 今の問題は河川法に関係をする問題ですから、河川局長から……。
  41. 山内一郎

    ○山内(一郎政府委員 河川法は非常に古く明治二十九年にできましたが、そのときの施行規則で、それまでに水を使っていた、主として農業関係でございますが、その権利は河川法の許可をとらなくても認められる、こういうことになっているわけでございます。ただ、そのときに数が非常に多かったせいでございますが、数量的には明確にはなってない。ただ土地改良といわれておりますその数量だけは、ともかく河川法としては明確にその権利として認められておる、こういうことに相なっているわけでございます。従って今後の問題として、その数量をいかにして明確にするかという問題が残されております。それを今後進めるべきであると思っておりますが、非常に大へんな数に上ることと、一々それをチェックするという方法も非常にむずかしゅうございますので、現在のところまだ放置をされて、ただ権利だけは十分認められておる、こういうことになっております。
  42. 石田宥全

    石田(宥)分科員 その問題と関連いたしまして、土地改良団体の組織の整備の問題があるのです。これは大臣も御承知だと思うのでありますけれども土地改良団体というものが乱立と申しますか、できるときにはできるだけの理由があったのでございましょうが、今日では非常に重複している場合が多い。愛知県でも土地改良団体一つのたんぼに四段階負担がかかっておるという例がございます。新潟県では、灌漑関係が四つ重なっておって、その上に今度排水の関係、水害防除関係、そういう関係が三つ重なっておる。団体が七つ重なっておるのがあるのです。そうすると、その七つの団体が、やはり事務、人件費があったり、いろいろ交際費のようなものがあったり、みんな一枚のたんぼに七団体負担がかかってくるわけです。一体こういう状態のままに放置しておいていいか。私は、やはり法改正機会にこれは整備統合さるべきであると考えるのでありますが、この点は法律改正の過程において当然問題になった問題であろうと思いますが、局長から一つ事情を伺っておきたい。
  43. 任田新治

    任田政府委員 ただいま御指摘の問題は、これは前々からのことでありまして、われわれも十分その点につきまして検討を加えておるわけでありまして、昭和三十五年度からこの面の指導、特に内容を検討いたしまして、毎年土地改良区の実態の調査もやっておるわけでありますが、明らかに弱小土地改良というものの存在が出て参りまして、これでは仕事の面におきましても、またこの事業に付帯するところの事務の内容の問題におきましても、当然不備が出て参りまして、何とかこれは統合する方向にいかなければならないというふうに思っておるわけでございます。もちろん、現在の段階でも、三十七年度におきまして、また三十八年度におきましても、統合を極力勧奨し得るものはしておるということではございますが、一方においては経理の問題、また負担金の融資のズレの問題、あるいは水利系統の相違の問題というようなことがございまして、必ずしも地域が相隣り合い、相重なっておりましても、統合が困難な場合もないではございません。問題は、やはり現在の法律の範囲におきまして、事業の種目が一種目に限られておるという点もございますので、法律改正におきましてはこの点も十分考えまして、弱小の土地改良区ができ上がるようなことのないような姿勢を考えていきたい、かように考えておるわけでございます。
  44. 石田宥全

    石田(宥)分科員 これは今局長が御答弁になったように、用水関係と、排水関係と、それから水系別の関係と、こういうふうに一定の基準をつくって、同時にそれをそのまま民主的にやらせようといっても、なかなかむずかしい点がある。これは局長承知通り、さつき私は農協の問題に触れたのでありますけれども、やはり同じような土地改良団体地方ボスの存在というものが大きな障害をなしておる。ですから、やはりそれについては政府もある程度予算措置をやって、相当金をかけても、農民のためには土地改良区の整備統合を行なうべきだと思う。ただ標準を示しただけでもいけないし、やはり法律の建前もすっきりする、同時に行政指導の面でもこれをやる、いろいろな点で姿勢を正さなければ、簡単に正せる問題ではないのです。しかし、それはやらなければならない。やらなければ、農民負担が幾らでも多くなる一方ですから、この点については、大臣もよく頭に置いていただいて、ことしの予算というわけにはいかないかもしれないけれども、来年度は積極的な団体の統合の対策を考えてもらわなければならないと思いますが、ぜひ一つお願いしたいと思います。どうですか。
  45. 重政誠之

    重政国務大臣 お話のようなことは私も聞き及んでおりまして、土地改良区の運営に支障を免じておるというようなものもあると思うのでございまして、それらにつきましては十分実態を調査いたしまして、合同なりなんなりやりまして、運営に支障のないようにやろう、こういうつもりでおります。御承知のように、本年度におきましても若干の調査費を予算に計上いたしておるようなわけでありまして、できるだけすみやかに御指摘のような方法を講じて参りたい、こう考えております。
  46. 石田宥全

    石田(宥)分科員 次に土地改良全体の問題でありますが、ことしは九十八億ほど基盤整備の予算がふえて——まあ、ふえたことはけっこうですが、しかし、日本農業の置かれておる国際的な地位の状態、あるいは貿易自由化等々の関連から考えますと、私は、何といっても基盤整備が先行さるべき問題であると思うのでありまして、九十八億ほどふえたからといって、これでいいというものではなかろうと思う。  そこで予算の総額の問題ももちろん問題であるが、もう一つの問題は、土地改良事業の予算が単年度予算だということ、それがために当初は七年計画で始めたけれども、十五年たってまだ五〇%しかできない、こういうような問題が生ずるわけです。そうすると、すでに借入金の償還期に入った、償還に入ったけれども、経済的には効率が上がっていない。全然利益が上がらないところで償還に入るというようなことが土地改良団体運営の障害となり、農民の非協力の重大な原因となるのでありまして、なるほど土地改良事業を次々とやらなければならないとい関係もあって、大蔵省もなかなかまかない切れないという文句も言うかもしれませんけれども、私は、やはり今の土地改良事業というものが単年度予算で、そうして毎年々々陳情騒ぎをやってむだ金を使わなければその年の予算の確保ができない、そういう状態であってはならないと思うのです。やはり五年計画ならば計画的な予算をつけて、五年でやり通せるというならば五年でぴしっと、運動してもしなくても五年でちゃんとやる。五年でできないところは、初めから七年なら七年とちゃんとやって、そうして七年たてばそのかわりちゃんと利益が上がるんだ、それならば償還が可能なのであって、それなしには私は土地改良事業というものは、今までのようなことを繰り返すだけになると思うのです。これは大蔵省の関係でありますので、実は連絡が悪いのできょうは大蔵省が来ておりませんが、また別の機会で私は大蔵省に要求したいと思うのでありますが、これについては農林省が相当な決意で大蔵省その他に当たっていかなければならないと思います。これについてはすでに問題になった問題であろうと思うのでありますが、大臣所見をただしておきたいと思います。
  47. 重政誠之

    重政国務大臣 これはもうおっしゃる通りでありまして、できるだけすみやかに手をつけたものは完了する、こういう方向で進まなければならないと思っておるのであります。予算の執行にあたりましても、そういう趣旨において既着工地区をすみやかに完成するとい方針で実施をいたしていくつもりでおるのであります。御了承を賜わりたいと考えるのであります。局長、何か言うことがあれば……。
  48. 任田新治

    任田政府委員 御指摘の点まことにその通りでございまして、従来この点はわれわれも極力重点項目として考えておるわけでありますが、特に今後の土地改良計画につきましては、国営事業から末端は団体営の土地改良事業に至るまで、一貫してスムーズに仕事がいくように配慮をいたしたいと思う次第でございます。明年度におきましては、ただいま要求しております予算につきましても、特に国営につながるところの県営事業は、国営の進度に応じまして一般県営から切り離した考え方で逐次仕事を進めていこうというふうに考えておるわけであります。もちろん一般県営の事業におきましても、この県営事業と付随する団体営におきましても、今後はその点を十分配慮しながらやっていこうと思う次第でございます。
  49. 石田宥全

    石田(宥)分科員 委員長から御注意もありますので、もう一問だけ申し上げておきたいと思うのでありますが、今ちょっと触れられたのでありますけれども、従来の土地改良事業というものが、御案内のように、国営、県営、団体常、みなそれぞれ計画設計が行なわれ、また事業もそれぞれ行なわれている。でありますから、国営工事を行なうにあたっては、国営についての計画設計の説明をやる。農民はそれだけですべて行なわれるかのように錯覚を起こして、反当たり幾らの負担でできる、こう考えておる。そうすると、国営がある程度進んでから、今度県営の説明会でまた相当額の負担ということになる。県営が終わると、今度はまた団体営でくる。三段でやってくる。計画設計が一貫していない。事業も一貫していない。そこで、初めは反当たり二万円の負担でよかったというのが、今度は五万円も負担しなければならないというなことになるところに問題がある。初めから五万円なら五万円でやむ々得ないということできちっとした計画設計のもとに工事に着工しておれば、そういう問題は起こらない。これは私は、土地改良団体の役職員の諸君も迷惑しごくだと思うのです。これはすでに愛知用水公団等が一貫した計画設計もやり、事業もやっておりまするし、今後は万難を排して水系別の一貫した計画設計、同時に施工、こういう態勢でなければならないと思います。これにはいろいろ障害もございましょうけれども、やはり、もうこれからはいいかげんに農民をごまかしてやるような時代ではないので、機械化し近代化していくには、金がかかるならかかってもやむを得ないのだ。それは農民もよく知っておりますが、従来ややもすると、そういうふうな施工のやり方が、あとで問題が起こって混乱を生ずる原因になると思う。これは一ぺんにはなかなかむずかしい問題でしょうけれども、これも法律改正される機会に、その姿勢だけは正しておくべきだと考えるし、やはり早晩これを実施しなければならない問題であろうと思います、これは一つ局長の方からはっきり答弁を承りたい。
  50. 任田新治

    任田政府委員 ただいまの問題につきましては、何年度ということは今ちょっと覚えておりませんが、もうすでにその地域全般としての国営、県営、団体営ないしは県営、団体ということでワン・セットとしての費用負担がどの程度になるということを出しまして、それでもって計画の内容を固め、また地元の納得が得られるかどうかということを新規の事業につきましてはやっておるわけであります。もちろん、法改正の問題につきましても、従来のこの考え方の趣旨にのっとって検討を進めなければならぬわけでありまして、今後水系別についての考え方、また地域の特性に応じた計画というものを考えていきたいというふうに思っておるのであります。
  51. 石田宥全

    石田(宥)分科員 大体これは問題を提起した程度で実はあまり深く掘り下げておりませんが、別の機会にやはりもっと掘り下げなければならない問題だと実は思います。だから、基本的な問題だけは一応提起したわけですから、これについて大臣なり局長なりもそのつもりで真剣に一つ取り組んでいただきたい。私は、また法案審議にあたってそれはいたしたいと思いますし、同時にまた、これは私の方の手続上の手抜かりもあったようでありますが、きょうは大蔵省も自治省も出ておりませんので、それらの関係についてもまた別の機会質問いたしたいと思いますけれども、しかし、やはり何といっても中心は農林省でありますから、農林省が中心になって対自治省関係、対大蔵省関係等についての積極的な対策を要望いたしまして、私の質問を終わります。
  52. 中村三之丞

    ○中村(三)主査 栗原俊夫君。
  53. 栗原俊夫

    栗原分科員 私は、農畜産物価の問題、蚕糸業の問題、コンニャク問題、それから土地改良で国営鏑川群馬用水、こんな盛りだくさんのものをお聞きしょうと思うのですが、時間の制約がありますので、端的にお伺いしますから、答弁の方も一つ簡潔にお願いしたいと思います。  まず農畜産物の価格問題でございますが、農民の所得がいろいろ論議されて、所得倍増という中に、生産費及び所得補償方式というような形で、内容的にはまだ満足とはいきませんが、生産者米価が計算されるようになりました。農業基本法ができました。ところが、実は政府の方で提案されたあの農業基本法の中には、やはり農民の労賃というものをしっかりと考えた生産費及び所得補償方式の価格方針が出されるかと期待したのですが、そう出ていない、こういうことでわれわれも反対をしたわけでございますが、今日重政農林大臣は、農畜産物の価格、こういうものについて基本的にはやはり農業基本法の中でいうような需給均衡価格という価格でやっていこうとなさっておるのか、あるいはこの時点ではそういう行き方ではうまくない、こういう考え方になられておるのか、この点を明らかにしていただきたい、かように考えます。   〔主査退席、仮谷主査代理着席〕
  54. 重政誠之

    重政国務大臣 農畜産物の価格は、御承知のように食管法でやっておるやり方、それから農安法、畜安法でそれぞれ価格支持の算定方式でやっておる方式があるわけであります。私は、現在やっておりますこの価格安定支持の方式を踏襲して参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  55. 栗原俊夫

    栗原分科員 今おっしゃいました価格の安定方式に二つある。一方は生産費及び所得補償方式だ、その他の農安法やこれに類する畜産物価格安定法あるいは繭糸価格安定法、こういう他の方法もある、こう二つあるのですが、しかし、二つでいいというのはおかしいのであって、どっちかが正しくなくてはならぬ、どっちかでいくべきではないか、こう思うのです。私たちは、やはり生産費及び所得補償方式でいくべきだ、こう考えるのですが、二つで参ろうとい考え方は、米以外のものについては、やはり需給均衡というものに重点を置いた行き方で今後も続けるんだ、このように理解してよろしゅうございますか。
  56. 重政誠之

    重政国務大臣 米以外のものは、必ずしも需給均衡ということを中心にして支持価格がきめられておるとは考えないのであります。これはやはり生産費あるいは一般物価等を考慮をいたしまして、そうして最低の支持価格をきめる方式に大体今までなっておると考えるのであります。需給均衡方式と言われれば、これは需給によっておのずから値段がきまるわけでありますから、これは価格の安定、支持の政策ではないと私は考えるのであります。いやしくも現在政府がとっておりますこの価格安定支持政策というものは、やはり物価の状況あるいは生産費の状況というようなものを考慮をいたしまして、そうして需給によってはそれ以下に下がろうというものをある一定のところで支持し安定させよう、こういうのが現在とっておる政策であろうと考えるのであります。
  57. 栗原俊夫

    栗原分科員 御説明は一応わかるのでありますが、生産費及び所得補償方式と打って出ないところに、他の方式はやはり相当問題がある。もちろん需給均衡だけできめておるのではありませんが、やはり重点が需給均衡の方に強く置かれておる、こう思うわけです。従って、今労働界等においては最低賃金法というようなをのもでき——その具体的な法律にはいろいろな議論があるにしても、最低賃金法というようなものができ、しかもその内容改善要求されておる。こういうときに、農民の労賃というものがいかにあるべきかということが本当に議論され、論争されるのは、生産費及び所得補償方式、こういう所得というものが前面に押し出される、農畜産物価格の決定方式でないというと、その場がほんとうに出てこない。こう思うのでございますが、この点についての大臣の御所見を重ねてお伺い申し上げます。
  58. 重政誠之

    重政国務大臣 これは非常にむずかしい問題であると私は思うのでありますが、特に米の例をとって申しますれば、米は何と申しましても、これは農家の所得形成上最も重大な農産品である。また日本の零細農経営の実態から見まして、これはきわめて重要なものでありますから、生産費及び所得補償方式という方式をとっておると私は心得るのであります。すなわち、これは米もやはり商品的性質を有する。その点につきましては、統制をやっておれば商品ではないではないかというような御議論をせられる方もありますが、しかし本質は、これはやはり商品なんです。商品である以上は、需給によってその価格が影響を受けることは当然でありますが、そういうことを無視して、農家の所得という点にもっぱら重点を置いて価格をきめるという方式を採用した。その他のものはいずれも商品であります。商品でありますから、ほうっておけば需給給によってきまることは当然でありますが、それでは農家の所得あるいは生産という方面に、これをほうっておいたのでは非常な支障を与えるから、そこで、この生産費とかあるいは一般物価というようなものを考慮して安定支持価格というものをきめる、こういう方式に出ておるのであると思うのであります。でありますから、今日の場合は、私はこの両方の方式を採用していくのが最も実態に合っておる、こういうふうに考えます。
  59. 栗原俊夫

    栗原分科員 これまた一応はわかるのでございますが、それでは農業基本法の中で、食生活の大変革の中で、すでに米麦増産の時期ではない、今後選択的拡大生産をする方向は畜産であり、果樹園芸である、こういうことで、こういうことを別に法律にきめたわけではありませんが、世間では畜産三倍、果樹二倍、こういうことを言っておるわけです。これだけ気負って政府政治上の大責任を持って農民に勧める以上は、この程度のものは、これは需給均衡あるいは需給均衡に重きを置くということではなくて、これだけは少なくとも生産費及び所得補償方式の価格政策をとってもらわなければなるまいと思うのです。畜産三倍、果樹二倍、この指導によって農民がこれをやる。生産が多過ぎた、いわゆる供給が多いのだ。従って需給というものに相当なウエートをかければ、価格が安くなるのもまたやむを得ない。こういうことでは、それ畜産をふやせ、それ果樹をふやせというような指導をした責任は一体どこに出てくるのか。おっしゃる通り、いろいろなものを勘案して一応の価格というものはきめるのだとおっしゃるけれども、しかし、その中にへ含まれる農民の労賃というものは何ら補償されない。こういうようなことであってはならぬのであって、やはり農業憲法といおれる農業基本法の中で選択的拡大の方向を、政府が、畜産であり果樹園芸と示す以上は、このものについては生産費及び所得補償方式の価格政策をここにがっちりと立てなければならぬ。このように思うのですが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  60. 重政誠之

    重政国務大臣 どうもお話を承っておりますと、いろいろな条件と言いますか、そういうものはもう考えないでも、価格だけでとにかく片をつけようというようなふうに聞こえるのでありますが、私は、ただいまお述べになりました果樹園芸、あるいは畜産にいたしましても、現在行なっております、たとえば畜産振興事業団で買い上げの措置をとっております。また昨年の四月にとりました豚の問題にいたしましても、これは私はりっぱに成功いたしておると思います。値段だけでいきますと、経営の改善とか、早い話が豚について言いましても、豚の子を七千円も八千円も出して買ったんでは、どんなことをやったってこれはやれるわけがない、つじつまが合うわけがないと思います。やはり豚の子は、三千円なり四千円程度でこれを買って飼育するということでいかなければいけないと私は思うのであります。たとえて言えば、そういうように、あるいは飼料の問題でも、工夫をすることなしに販売飼料を買ってやる、それで引き合うような値段を出せと言われても、これはなかなかそういうわけには参らない、こう考えるのであります。従って、生産をする方でも、経営の面において農家諸君に十分なる努力をしてもらわなければいかねと私は考える。政府でもその面に大いに力を入れてやらなければならぬと思うのであります。御承知通り、生産のコストなどというものは、これはピンからキリまであるわけであります。そうしてややともすれば、その最高生産費と申しますか、そういうところに値段がきまりがちなものなんです。そういうことにすれば、先ほどもお話しになりましたように、現在の国際環境のもとに置かれておる日本農業といたしまして、私は実に前途を危ぶむものであります。どうしてもここで十分なる工夫をやり、まじめな経営をやって、そうしてできるだけこの国際競争場裏においても太刀打ちができるとまではいかぬでも、何らか政府が方策を講じていけばとにかくやっていける、しかも農家の所得というものはこれである程度に増加していく、こういう線でいかなければならぬと私は考えておるのであります。生産費及び所得補償方式という方式でいきますればこれは極端に申し上げるようでありますが、私はこれは一つの鎖国農業である。こういうふうに思うのであります。世の中がどんなになって、需給が何とあろうと、これだけは政府が金を出すということになれば、これはもう一般の経済、一般の企業というようなものとは切り離した別なものができる。こういうことになりますから、私は、そういう方式は、米については話はわかるけれども、その他のものについては、そういう方式を採用するについてはよほど考えなければならないというのが現在私の考えなんです。
  61. 栗原俊夫

    栗原分科員 だいぶ大臣も話を広げて答弁をされておられるので、幾らか私の質問がぼかされておるのですが、農民が、これがもうかるだろうということで、全く気まま勝手にやっておって、それをこれだけかかったのだからこれだけ、その中におれの労賃はこれだけだ、こういうことは、これは大臣のおっしゃるようなことになろうかと思うのです。しかし、農業基本法の中で、今後行くべき道を政府責任を持って選択拡大の方向を差し示して行政指導をやっておるわけなんです。そういうものについて、しかもそういう中でも、それはきにはべらぼうに高いものもできるでしょう。しかし、そういうべらぼうな特異なものを取り上げるのでなくて、言うならば、政府がたとえば試験的に飼養してみて、常識的にはこういうものだ——今はいろいろなランダム調査とか、いろいろな方法でもって計算しておるようでありますけれども、それとは別個に、政府がおれの責任でやればこれでできるんだと、万民の納得できるようなやり方をやって、そして生産費、所得補償方式でやったらいいじゃないか、こうわれわれは思うわけですよ。なぜかというと、今おっしゃるようなことになると、農民の所程々々と言っても、結局農民の所得というものは労賃ですからね。ほかには何もありゃしませんよ。結局労賃というものが認められなければ、所得倍増で農民はああだこうだと言ってみたところで、農民の所得は実際いってどうにもならぬのですから、縮小再生産になっていってしまう。従って、今おっしゃる通りむちゃくちゃに、無政府的に、これだけかかったということを生産費所得補償方式でやれと、言っているんじゃないのです。ランダム調査でやる、それも一つでしょう。そして、一番大きな資料でしょう。いま一つは、政府みずからがいろいろな試験方式によって標準的な資料を、あらゆる一般農民がやり得る条件のもとでやってみて、これだけかかる、それに農民の労賃はこれだけ加算して生産費・所得補償方式でこうなんだと、やはりこういった姿のものが出てこなければ話にならぬと思うのですよ。そしてまた需給の問題もありますが、農民自身にはとても全体的な需給なんか展望できません。できないからこそ、安くなれば、おれの方が光れなくなりゃせぬかといって投げ売りして、みずから値をくずすようなことになってくるのです。そうなんだから、やはり強力に行政指導をするとともに、今言ったような、農民が、そして農民以外の一般人も納得できるような計算に基づく生産費・所得補償方式でささえるべきだと、こう思うわけなんですが、こういうワクをはめた意味の生産費及び所得補償方式でいかがでしょう。さっき大臣が受け取られたのは野放しの中の生産費及び所得補償方式なんだけれども、私の言うのは、政府が、行くべき道はこれだぞと行政指導を強力にやる、しかもその生産費及び所得補償方式の計算方式は、今言う、ようなものの考え方の計算方式でやっていくべきではないか。こういう私の考え方に対する大臣所見を承りたい。
  62. 重政誠之

    重政国務大臣 たとえば畜産について申しましても、私どもは今多頭飼育ということをやっているわけであります。従来のように一頭、二頭では、これは何ともならぬ。少なくとも七頭八頭を飼わなければいかぬということをやっておるわけです。そうしてそれに対しては、えさは少なくとも七割以上を革で飼育しなければならぬ。そのために草地の改良、草地の開発をやる。国有林を開放する必要があれば開放いたします、私はこう言っておるわけなんです。そういうふうに生産面において、経営面に全力を入れていくならば、私は今の、ただ生産費及び所得補償方式がどうだ、いや農安法及び畜安法の方式がどうだという抽象的な問題よりか、そういうことでいってみれば私はりっぱに採算がとれる、こう考えるのであります。しかも、ここで価格支持で、一定以下に下がった場合には政府はこれを買い上げしめる、こういうことでいけば、私はいくのではないかと思う。その場合に、一頭とか二頭とかいうような飼育をしておる者までも十分に所得が入るようにやろうとすれば、そこに無理ができると私は思うのでありまして、これはただ理屈の問題でなしに、具体的に、一つまた別の機会に十分御懇談をいたしたいと考えます。
  63. 栗原俊夫

    栗原分科員 価格問題はとても短時間でここで掘り下げ切るわけにはいきませんので、次へ移らせていただきます。  養蚕問題についてお尋ねしますが、今から五年ばかり前に、三十三年、繭が大暴落しまして、言うならば、日本の蚕糸業が崩壊の寸前まで行ったということは、御記憶に新たなことだと思うのですが、当時須賀さんや大澤さんが生糸に対して判断をして、化学繊維の発展に伴って生糸は弔うそろそろ口の没する産業だ、こういうような方向もとられ、かつて私たちが子供時代には、生糸は輸出品の大宗にしてという教育を受けたのですけれども、もう輸出産品としてもそろそろ評価もできなくなりつつある。従って、金をくれるから三万町歩ばかり桑を掘れ、こういうような形になった時代があるわけです。しかし、昨今はべらぼうな相場が出てきて、これについてあとから御意見も開きたいのですが、大へんさま変わり、こういうことになつてきているわけですが、今日ただいまの時点において、養蚕業に対してどのような基本的なお考えをお持ちになっておられるか、これを明らかにしていただきたい。
  64. 重政誠之

    重政国務大臣 私は往年の生糸の不況ということもまだ記憶いたしておりますが、これは私は化学繊維に対する考えが甘かったのではないかと思います。今さら言ってもしようがないことでありますが、それで非常に御迷惑なことが起こったわけでありますが、今日におきましては、私は、むしろもう化学繊維によって変わるものは変わる、そうして世系の用途というものがややはっきりしてきたのではないかというふうな感じを受けておるのであります。従って、言うなれば、今日は一応ここで生糸の需要というものが安定をしておるのではないか、そうして値段も今非常に高いが、しかし、これはイタリア等の糸と同じ程度の値段にまでなっておる。こういうのが現状ではないかと思うのであります。従って、ここで増産をやるべきではないかという御意見も私はいろいろ聞くわけでありますが、慎重にかまえておるわけであります。そうしてあの往年の当時は、全国至るところで養蚕をやったわけでありますが、しかし、もうこの時代になりますと、全国至るところでやれやれというようなわけにはいかぬのではないか。やはり主産地というものがおのずからできておるのでありますから、そういう方面におきましては、やはり相当の、非常にじみにステップ・バイ・ステップに養蚕もふえていく、桑園も漸次ふえていっておる。この姿が今のところではいいのではないかと私は思っておるのでありますが、しかし、糸の値段が高過ぎるから、もっとうんとやれという有力な御意見のあることも私は承知いたしております。現在のところではそう考えておるのでありますが、これはまた、十分皆さんの御意見も承って善処いたしたいと考えております。
  65. 栗原俊夫

    栗原分科員 そうしますと、ここに大澤さんもおるので、大澤さんも幾らか面はゆいだろうと思うのですが、少なくとも生糸というものは、確かに新しく出てきた化学繊維、合成繊維と競合する、一町はこれに圧倒されるというような判断も行なわれたけれども、今日までの時点にくると、もうそういうことではないのだ、生糸は生糸としての存在価値というものがあるのだ、こういう立場に立って今後蚕糸業の方策を打ち立てられていく、こういう立場と理解してよろしゅうございますか。
  66. 重政誠之

    重政国務大臣 大体そういうふうに私は考えております。御承知通りに、あれのいい当時は、アメリカの御婦人の靴下をこさえるのにほとんど使われたわけでありますが、そういうものがみな化学繊維に変わっていって、今日はやはり織物の方にいっておるわけでありますから、世界的にやはり生活の水準もだんだん高くなっていくというようなことで、内地における需要も相当に伸びておりますし、海外の輸出もある程度はやっておるわけであります。お述べになりましたようなところで安定をしておるのじゃないかというふうに考えておるわけであります。
  67. 栗原俊夫

    栗原分科員 そこで、先ほど大臣もちょっと触れたのですが、そういう立場に立って今後蚕糸対策というものをやっていくわけなんですが、確かに、今値段が非常にいい値になってきております。農村でもこれに対して、相当新しく桑を植えようという気分も出ておることは、間違いありません。ありませんが、やはり農民とすれば、五年前のあの惨状を忘れることができないわけです。いつまたしっぺ返しがくるかわからない、こういうようなことを非常に心配しながらふやそう、こういう考え方なんで、そこで、大臣もなかなか言いにくいと思うのですが、生糸の生産量を大体ここ数年来の数量に抑えていくのか、あるいは何割かふやしていくのか、この辺をある程度世界的な需要の動向と見合って方向づけてもらわぬと、末端農民——一年草でない桑でございますから、すぐその年に使えるものじゃありません。また、三年、四年たったものをすぐ抜くわけにもいかぬ、こういうものですから、基本的な、やや長期にわたる展望の上に立った方向を示していただかぬと、養蚕農民としてはたえられない、こういうことなので、非常にむずかしいところでございましょうが、これは大臣でなく、局長さんからでもけっこうですが、やや長期の展望を、一つ……。
  68. 昌谷孝

    昌谷政府委員 最近の生糸の需給関係は、大局的には、ただいま大臣の言われた通りであります。最近の需要の強調に見合いまして、今後日本でどれだけの生糸の供給を確保していくかということでございますが、基本的には、昨年農林省全体として公表いたしました農産物一般の需給の見通し作業がございます。一応私どもは、あの作業の結果を現在の行政の指針として考えております。御承知通り、あの場合は、かなり養蚕農家の意欲に期待はいたしておりますが、年三三%程度の供給増をこなすだけの需要は見込めるということを、大体見当をつけたわけであります。現実の生産量の問題でございますが、御承知のように、天候その他の関係もございまして、価格がいい割には供給がふえません。むしろ三十七年のごときは、前年に比べて若干減りました。平年状態になりますれば、先ほど申しましたような事情もございますので、年々堅実に少しずつの供給の伸びは、生産の合理化と申しますか、個別経営の経営規模の拡大という線を通じまして、こなしていくだけの需要が期待できる、そういうふうに考えております。
  69. 栗原俊夫

    栗原分科員 そうした基本的な方針の上に立って、それでは関係農民、あるいは関係製糸業者が心配するか安心するかという目途は、やはりすでにある繭糸価格安定法によるところの下限の値段なんです。最低繭値、最低糸価、これがどこで設定されるかということが、安心できるかできぬかの目安なんですが、率直にいってただいまはだいぶ安い。糸が一俵換算十七万幾ら、繭の方が一貫目千四百円くらいになっておるやに聞いておりますが、そこで養蚕農民の立場に立ってものを考えますと、やはり先ほど価格論争でやった一こまになるわけなんですが、やはり生産費及び所得補償方式——おれたちの手間賃だって、他の百姓をやった手間賃と同じくらいにしてもらってもいいてはないか、こういう議論が当然出るのです。そこで生産者米価の方が八時間換算千円以上になる。そういうことになれば、おれたちの手間賃だって八時間換算千円くらいになってもいいではないか、そういう最低の繭値というものを設定をしてもらいたい。いろいろな条件を出してもらっても、何といっても最後の安心のきずなというものはこれなんだ、こういうことになるわけです。そこでお尋ねしますが、蚕糸局長さん、今の最低繭価の中に含まれておるであろう養蚕農民の八時間換算の賃金というものは、幾らくらいになっておるのですか。
  70. 昌谷孝

    昌谷政府委員 統計調査部が実行しております、現在の生産費調査の場合の自家労働賃金の評価の方法は、先住御承知だろうと思いますが、それぞれの地帯で臨時の日雇い賃金労働者を確保するに必要な実際支出額を採用いたしておるわけでございます。最近に出ております三十六年の生産費調査におきましては、地帯によって違いを生じておりますが、たいがい四百円そこそこではなかったかと記憶しております。実際に実現いたしました農家手取りは、最低価格よりも上の地帯が多い関係がございまして、統計調査部の同時点の調査によりますれば、一日当たりは約四百五十円という全国平均を示しております。
  71. 栗原俊夫

    栗原分科員 大臣、お聞きの通り、まことにどうも養蚕農民も経済的につらい立場に置かれているわけです。また実際にはその上で取引されている、こういうことなんですが、最後のささえになるものが労賃として四百円そこそこの線しか認めてもらえない、こういうことでは、農民としてとてもこれではやっていけません。そこで先般もいろいろお聞きしますというと、昨今の横浜の生糸の相場あるいは前橋の乾繭の相場、こういうものは今までの常識からいえばべらぼうな相場だ、こういうことになっておるのですけれども、養蚕農民や、養蚕農民が養蚕時に雇用する臨時人夫の労賃等を、千円というような押え方をすれば、大体の相場に見合う、こういうのですね。従って相場自体の方が実際農民はかくあるべきだということを引き出しておるような形になっておるわけです。従って、近く三月ともなれば、繭糸価格安定審議会等も開かれるのだと思いますが、こういうときに、やはり今まで実態がこうだったのだから、その数字に基づいて最低価格はこの程度でいいのだ、こういう形では、これはせっかく最低価格をつくってくれるのだけれども、私はよく地元へ行って養蚕農民に話をするのに、突っかい棒はあるけれども、寸足らずの突っかい棒で役に立たないんだ、こういう話をするのですけれども、突っかい棒をする以上は、やはり突っかい棒として役に立つ程度の突っかい棒をつくってもらわなければいかぬと思うのです。審議会に対してもちろん農林大臣が御諮問なさるはずなんですが、この諮問案の作成についての心がまえとか、せめて米づくりの農民と大体見合う程度の労賃というものを、お蚕飼いの農民にも与えてやる、こういうような考え方で臨まれるという御意思はございませんでしょうか。
  72. 重政誠之

    重政国務大臣 御承知通りに米の場合は、都市労賃に貫きかえて計算をいたしております。今の養蚕の場合は、その地方の実際の雇用労賃ということでの方式でいっておりますから、どういうことになりますか、米と同じような計算の方法には私はいかないだろうと思うのであります。この点はよくおわかりになっておることと思うのでありますが、念のために、私さらに言わぬでいいことかもわかりませんが、第二次産業の中におきましてもあるいは鉄鋼、石油あるいは繊維産業、化繊、いろいろ業態によって必ずしも労賃というものは私は一本になっておらないと思うのです。これはやはり産業の種類によっていい場合もあり、悪い場合もあるので、農業の場合だけが農畜産品についてすべて一本でいかなければならぬということは、いかがなものかと私は思うのでありまして、やはり農業もだんだん市場生産になって参り、機械を導入してだんだん手間を省いていくというようなことになって参りますから、従前よりか労賃に非常に力を入れて考えることが、将来に向かってはだんだんにウエートが少なくなっていくのじゃないかと私は思うのであります。これはよけいなことでありますが、とにかくおっしゃる通りにこれが突っかい棒になるようなことを考えということであります。これはもちろんそういうことで、ことに私どもは大いに注意してやらなければならぬ、こう考えておる次第であります。
  73. 川俣清音

    川俣分科員 今の栗原さんの質問に関連して、米価の算定について都市労賃に置きかえる、こういう御答弁があったのですが、将来都市労賃に置きかえていくとい意味なのか、従来は都市労賃に振りかえて計算したとい意味ですか。
  74. 重政誠之

    重政国務大臣 私の表現が悪かったから、直ちに専門家であるあなたにつかまえられたわけであります。都市労賃と言いましたが、あれはたしか製造工業の労賃の全国平均、そういうことになっておりますから、私これは訂正いたします。
  75. 栗原俊夫

    栗原分科員 生産者米価の中に含まれる労賃と、その他の農業に従事する者の労賃と、必ずしも同じでなくてもいいではないか、他の産業に従事する者の中にもそれぞれ格差はあるではないか、そういうお話も、それはわかります。わかりますが、現に石炭対策においても、失業した人に四百五十円、一方では六百円出してやってくれとい要求まであるときに、八時間計算でやって四百数十円、しかし実際の労務というものは、八時間労働じゃなくて一日十六時間以上、実際は計算をやるとやります。そういう全く骨身を削ってやっている者の働いた対価が、失業している立場の人に差し上げるお手当と大体同じでいいかなんということは、どうしても農林大臣、けしからぬと実際は怒ってもらいたいところなんです。そんなばかなことがあっていいかという気持で私おるわけなんです。  そこで先ほども価格問題のときに特に申し上げたのですが、農民労賃はいかにあるべきか、こういうことで一度しっかりと議論してみたいと思うのですよ。農民にも労働界と同じように、最低労賃制度というようなものがあってしかるべきだ、そして農民労賃は幾らである、そして諸費用は幾ら、少なくとも農産物の原価はこうなんだ、農産物にも原価主張ぐらいやれる時期が一日も早くきていいじゃないか。実際から言うと、今のあり方は、よく農民にも言うのですが、普通の蔬菜なんかを持っていると、今の農民は昼間手の見えるまで畑で働いて、そして蔬菜を学校子供まで使ってつくって市場へ持っていくと、向こうの言い値ですよ。あの柱の下へ持っていってやれば、一番やりを高くまで突かしてくれるなどというところが知恵一ぱいなんで、こんなことではだめだ。だから原価はこれにつくのだから、諸君もたまには指し値でもって市場出しをやってみろ、高いものではできないだろうから一わ一円そこそこのものなら一二百持っていっても、一日三百円捨てるつもりで指し値出荷をやってみろ、八百屋さんだって一度や二度はそんななまいきを言う百姓の品物は買わぬと言うかもわからぬけれども、向こうさんだって物がなければ商売にはならないから、買った値に持っていって、手数料も乗っけてやはり販売もするだろう、そのくらいのことをやらなければだめなんだが、とにかくもっと基本的には政治的にものを考えてもらって、そして農民労賃というものが少なくともこれだけ以上のもので農産物価を構成するのだという時代を、一日も早くつくってもらうようにわれわれもやるし、多数党である自民党さんにも話し、政府にも話すのだ、こう話しているのですけれども、いま一度重ねてお願いしますが、今のような考え方を少し変えて、そこで繭糸価格安定審議会における、繭の最低価格決定のときにおける養蚕農民労賃というものを、配慮してもらえませんでしょうか、どうです。
  76. 昌谷孝

    昌谷政府委員 お話の中に、先ほど私がお答えしましたことに関連をしまして、ちょっと言葉の足りない点がございますので補います。先ほど私が申し上げました生産費調査は、三十六年度の分についての調査でございます。三十七年度分につきましては、繭糸価格安定審議会に間に合わせますよう目下集計を急いでおります。まだどれだけの実際労賃であったかの計数はつかめておりません。ただ、三十七年度中の実現繭価から私どもが推測をいたしてみますと、三十七年はおおむね五日円ないし六百円程度の平均になっているように承知をいたしております。もちろんこれは全国平均でございます。特に、先ほど大臣お話にもありましたように、養蚕の主産地化ということが現在急速に進んでおりますけれども、一方でかなり効率が悪い生産地帯も残存いたしております。それらをつっくるんでのこれは全国平均の計算で、従いまして、美産地といわれますようなかなり生産性の高い府県だけを取り上げて、ただいまのような計算をいたしてみますれば、千円ないしそれ以上にもなっている収益性のかなり高い作物として評価されることは、先生御承知通りであります。その点を補わさせていただきまして、なお今後新しく適用いたします価格につきましては、目下やっている作業の結果を待ちましていずれ提出いたす段取りになると思います。
  77. 栗原俊夫

    栗原分科員 時間がございませんから、その他の項目につきましては、この分科会で何とか時間の余裕がつくような場合にはなお質問させてもらいますが、最後に締めくくりとしていま一つお尋ねさせてもらいたいと思います。  今話を聞きますと、非常に集約的な効率の高い養蚕をやっているところでは、八時間換算一日千円以上になる養蚕農家もある、確かにそうだと思うのです。しかし先ほどおっしゃる通り三十三年のあの惨落を契機にして、不適地というとオーバーになるかもしれませんが、主産地形成の方向へ進んでおります。そういう中で今後養蚕を続けていこうという養蚕農民の一日当たりの労賃というものは、それは米つくりとは仕事が違うのだからといえば違うことはわかりますけれども、やはり同じ農業をやるという立場に立って、せめて米つくりの労賃くらいに持っていくような努力はすべきなんだ、このくらいの大臣の強い所見を伺いたいのですよ。米つくりは千円以上でなくちゃならぬ、ほかの百姓はもっと安くてもいいのだというのでは、これは農林大臣として何としても承知できぬです。あらゆる農民、どういう農業を営もうとも——少なくとも今一番科学的に計算されておるのは米つくりの生産者米価の中に計算されておる労賃です。これはわれわれはまだ承知しておりませんけれども、科学的に出ておる数字は生産者米価の中に含まれる労賃、せめてそのくらいまであらゆる農業に携わる農民の労賃を上げるように努力する、こういう方向をぜひ大臣のかたい信念として表明していただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  78. 重政誠之

    重政国務大臣 私といたしましては、できるだけ農家所得をふやしたいとい考えでありまして、今養蚕に例をとって申しましても、現在の値段は私は米以上のあれになるだろうと思うのです。ただ価格の安定維持の方式で片方はやっておりますから、米は労賃がかりに千円と計算してあれば、千円ずばりでございますが、こちらの方は最低それより以上は下がりません。それからとは現在のごとくで、千円以上にもなるような場合も出てきておるのでありますから、そこのところはやり方の問題が違っております。それで米以外のものは安くていいとも何とも私は考えておるわけじゃない。これは十分経営を合理化するなり、いろいろな工夫をいたしまして、そうして所得が大いに上がることを私は努力もし、希望もいたしておるわけでありまして、そこのところは一つ誤解のないよ、うにお願いいたします。
  79. 栗原俊夫

    栗原分科員 時間が参りましたので、残余の項目につきましては機会をあらためて質問いたします。
  80. 仮谷忠男

    ○仮谷主査代理 午後は一町三十分から再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ————◇—————    午後一時四十二分開議
  81. 仮谷忠男

    ○仮谷主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  中村主査が所用のため若干おくれますので、その指名により暫時私が主査の職務を勤めます。  昭和三十八年度一般会計予算、同特別会計予算農林省所管に対する質疑を続行いたします。  安井吉典君。
  82. 安井吉典

    安井分科員 漁業関係の国際条約につきまし、て二、三お尋ねをいたします。  時間が十分ないようでございますので、大ざっぱな触れ方になるかもしれませんが、まず二月十五日に、日米加共同委員会が東ベーリング海のオヒョウ保存勧告に関する結論を出して閉会をいたしているようでありますが、その成果につきまして政府はどういうふうに評価をされておりますか、それを一つ伺います。
  83. 重政誠之

    重政国務大臣 これは、なかなかどうもむずかしい問題でありまして、ちょっと私からどうとも言いかねるのですが、御承知通り、あの際はカナダ側の漁業次官でありましたクラーク氏が急死をいたしまして、その翌日に一応の妥結を見たということになっておりまして、カナダの方ではその首席になっておったクラーク漁業次官が、死んだものでありますから、ちょっとそこらの辺も微妙な点がございますので、これは成功だったと言っても工合が悪いし、まずかったと言っても工合が悪いし、実は新聞紙上でごらんをいただいておりますその通りなのです。
  84. 安井吉典

    安井分科員 どうも大臣の御答弁としては、何のことやらちょっとわからないのですが、じゃ、一つ実際その街に当たった水産庁長官の方から伺います。
  85. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 昨年のシアトル会議で東ベ−リング海のオヒョウの抑止の削除の勧告が出されたわけでございまして、東ベーリング海でオヒョウのアブステンションがはずれるということになりました場合におきまする、東ベーリング海におけるオヒョウの資源の保存措置というものについて、中間会議でオヒョウ資源が大きな影響を及ぼさないような措置をする、こういうことに相なって、先般来、日米加の委員並びに随員が参りまして、十五日にその勧告案の採択がなされたことは御承知通りでございます。その勧告につきまして政府はどう評価するか、こういうような御質問でございまして、東ベ−リング海におけるアブステンションがはずれましたあとにおけるオヒョウの共同保存措置というようなことについてのいろいろな問題点を煮つあて、ああいう勧告になったわけでございまして、その衝に当たった者としてこれがどうだったということは差し控えたい、こう思っております。われわれといたしましては最善の努力をいたした次第でございます。
  86. 安井吉典

    安井分科員 政府の方は、一応結果は出たけれども、どう評価していいのかわからないというふうに、何だかきわめて自信がないような感じを受けるわけです。やはり大臣、これは一つのことが終わったときに、その問題をじっくり分析をして、それからあとで初めて次の対策が出てくるのではないかと思うわけです。一応やるだけやったけれども、よかったのか悪かったのかわからぬというふうなことではいけないと思うわけであります。その点、もう少しじっくり落ちついて、これからの対策を出していただかなくてはならないと思うのでありますが、私なりに見てみますと、日本が西経百七十五度以東のベーリング海で、初めて制限つきながらオヒョウの魚獲が認められ、かつ規制海域外ではオヒョウの底びき漁業もできることになったということは、一応の成果であろうと思うわけです。昨年十一月の年次会議の結末がそういう形で認められたというわけでありましょうが、しかしその反面、オヒョウの比較的密集した地域はすべて規制区域とされて、その規制区域は意外に広いわけです。その規制区域内では、はえなわ漁業だけで底びきはやることができないし、底びきでとれたオヒョウも海に捨ててしまわなくてはいけない。一方規制区域外になった地域は、一体オヒョウがいるのかいないのかわからないといったような未開発の地域だけが規制外にされてしまっておる。そこは自由に底びきができるけれども、そこには肝心なオヒョウがいないのではないか、こういうふうなことになって、オヒョウそのものの漁獲は、むしろ実質的に従来よりは制限が多くなったのではないかとも見られるわけでありますが、その点いかがですか。
  87. 重政誠之

    重政国務大臣 これは、そういうことはございません。ベーリング海におきましては、オヒョウはとれないことになっておったのが、ただいまお話しになりましたようなはえなわでとることができる。また北方の方面ではトロールでもとれる、こういうことにいたしたのでありますから、従来よりとれなくなるというようなことはございません。従来は大体オヒョウはとっておらないのでありますから、今度はそっくりそれがプラスになる、こういうことであります。もっとも、それは今の百七十五度以東の話でございます。
  88. 安井吉典

    安井分科員 水産庁長官どうですか。今度の話し合いによるオヒョウその他の漁獲量の今後への影響度ですね。ふえるならふえるようにどのくらいふえるとか、その他の影響の度合いを一つ伺いたいわけです。名をとって実を捨てたというような批判もあるようでありますが、その点いかがですか。
  89. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 このオヒョウの保存措置についての見方につきましては、政府としてわからない、こういうことではないのでございまして、見方にいろいろな観点がございますので、そういういろいろな観点から見て、今、その衝に当たったものとしては申し上げかねる、こう言った次第でございます。もちろんこの中間措置につきまして、十分この経過なり、あるいは今後の操業の実態をよくにらみ合わしまして将来に備えるということは当然分析し、また会議の様子を振り返ってみて、将来どうするかということは当然ただいまから検討しなければならぬ事案だと思います。  なお、オヒョウの規制海域は東ベーリング海、こういうことになっておりますが、今度の中間会議によりまして明確になりましたことは、西経百七十五度から以東の東ベーリング海においてオヒョウの共同保存の措置を講ずる、こういうことに相なっております。それで今後のオヒョウの漁獲高の見通しという御質問でございますが、ただいま、百七十五度以東におきましては底びきあるいははえなわ等で従来漁獲いたしましたオヒョウは、条約のアブステンションの原則によりまして全部海中に投入いたしております。そういうことで今後これがどういうふうにとれていくか、こういうことの見通しにつきましては、今度の規制措置でおおむねプビロフ島のところからアリューシャン群島のウニマック島サリチェフ岬を結ぶ線と、西経百七十度線の線で囲まれた三角形のオヒョウの集中海域がございます。これはいわゆる日本の漁業場の海区制で申しますとEFの海区、こう申しております。東べーリング海で昨年までにアメリカが漁獲いたしましたオヒョウが頭なしで大体三千五百トン程度、こう申しておりますが、その大体七、八割程度がこのEFといいますか、この三角地帯で漁獲されている統計が出ております。そのEFの地帯につきまして本年から漁獲制限をやる。その漁獲量がハリバット頭なしで五千トン、これは一万一千ポンド、こういうふうになっております。これは頭なしで二万一千ポンド、水揚げにいたしますと、頭つきでは約三割程度が増す。約七千トン程度のものが水揚げでキャッチ・リミット、こういうことになります。これはいわゆるグローバル・クオータでありまして、日本、アメリカ、カナダが平等にそこにおいて漁獲いたしました数量が五千トンに達しましたときに、この海区におきますオヒョウ漁業は打ち切る、こういうことになっております。それで結局三角地帯において三月の二十五日から漁期が始まるわけでございますが、それからはえなわによりまして日米加がとります量がどのくらいになるか、こういう見当になるわけでございます。大体この地帯におきましては、米加の操業漁船が昨年の実績では七十五隻程度が入っておる。日本も大体五十ないし六十程度のはえなわが入る見込みになろうと思います。平等の立場において漁獲競争をやる、こういうことに相なろうかと存じますので、そういう点の見通しが明確につきにくいかと思います。それから全地域におきましてトロールによる操業はできますが、それによりまして入ってきました分につきましては、北の方の、先ほど申されました未開発の地帯、ここは体長制限だけ受けるわけでございまして、底びき漁船も保持できる。その他の区域ではトロールは全部海中に投入する、こういうことに相なりますから、漁獲できるのは、いわゆるトロールによる分は、ベーリング海の北の方の未開発地帯、それからはえなわによる分は東ベーリング海の全地区、そういうことに相なりまして、この数字について、ことしは数字がどのくらいになりますか、まだ見当がついておりません。相当のものになるのではないかと思っております。
  90. 安井吉典

    安井分科員 ハリバットの問題ももちろん重要でございますが、明年の六月にこの条約の期限が満了する。その際における措置に関しまして、いわゆる自然的抑止の原則といいますか、こういうような問題がどういうように処理されるかという問題につきまして、昨年からことしにかけての交渉の推移に関心を持ってきたわけでありますが、いずれにいたしましても、自発的抑止の原則というような名前で公海漁業自由の原則を打ち破って、実質的には日本が締め出されておるような条約に今日あるわけであります。占領下の、つまり独立をまだ十分に果たしていなかった時期において、一方的に押しつけられた条約としてこの条約が発足したからそういうことになっているわけで、この理不尽な不平等性を回復しなければ、池田総理が大国主義を振り回したってこれはお笑いぐさだということになるわけであります。そこで、そういうような立場から見ますと、今度のオヒョウの問題についての解決は確かに一つの前進だということが言えるわけでありますが、今日までの段階で、ニシンあるいはオヒョウの問題については、幾らか問題が明るくなってきたわけでありますが、一番問題は、百七十五度以東のサケ・マスの問題であります。この自然抑止の原則そのものについて、これをやめるということについて、今度の会議を中心にして、あるいは従来の会議もそれに関連するわけでございますが、政府はどのような御努力をされておるか、それを一つ承りたいと思います。
  91. 重政誠之

    重政国務大臣 このアブステンションの原則というものは、ただいま安井委員のお述べになりましたような、この条約が十年前にできました当時の状況等から考えてみまして、今回の改定期におきましては、こういう原則はやめたい。少なくともこの条約の改定はぜひいたしたい、こう考えていろいろ努力はいたしております。これは公式なものということはできないわけでありまして、これは条約改定の委員会が設けられましてそういうことになるのでありますが、私が昨年アメリカへ閣僚会議で参りましたときも、内務長官のユードルさんとはこの問題について話をいたし、また本年一月のカナダとの経済閣僚会議におきましても、漁業大臣と私は懇談の機会を持って、この問題について懇談をいたしたわけであります。さらにまた水産当局におきましては、会合のつど、この問題についていろいろ話を進めておるわけであります。アメリカ、カナダともに国内事情が相当にあることも、私どもとしては認識をいたしておるわけでありますが、しかしわれわれの希望通りにこれが参るかどうかは、相手のあることでありますから、今ここで言明するわけには参りませんが、私どもといたしましては、少なくともこの条約の改定、アブステンシヨンの原則の修正というものをやりたい、こういう意図を持って最善の努力をいたしたい、こう考えておる次第であります。   〔仮谷主査代理退席、主査着席〕
  92. 安井吉典

    安井分科員 今度のアメリカ、カナダのオヒョウについての許可の措置が、サケ・マスについての抑止措置を、今後継続しようとする一つの取引のような形で向こうは出したのじゃないか、そういうふうな形で譲歩したのじゃないかといったような、大へんいじの悪い見方をしている向きもないではないようです。まさか政府がそういうことであの話し合いを、結論を出したということでは決してないと思いますが、今度の話し合いの中で、原則そのものをどうしようとかこうしようとか、そういう問題について何かお触れになったことはございませんか。これは実際交渉に当たった長官から……。
  93. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 条約改正に臨む基本的な態度、方針につきましては、ただいま大臣から御説明があった通りでございます。大臣からも、水産庁といたしましてそのつど関係会合の場合に、条約改正の問題について話をしている、こういうような御説明でございます。その通りでございまして、われわれシアトル会議におきましても、今回の中間会議におきまして、あるいはシアトル会議の前におきますハワイにおける中間会議におきましても、この条約が十年の期限の到達直前に迫まっておるわけでございます。日本側の態度というものを、アメリカ、カナダのそれぞれの政府代表等にサウンドの形でいたしております。しかしこのシアトルの会議におきましても、あるいは今回の中間会議におきましても、これはどこまでも現行条約のワク内におきまする任務の遂行でございます。それでこの会議自体が条約改正を云々する、そういう場ではないわけであります。それでただいまサウンドの形で申しておりますのは、非公式な、委員会の外の場におきましてアメリカの政府の代表なりカナダの政府の代表といったものとサウンドいたしておるわけでございまして、そういう点は機会あるごとにわれわれとしては条約の修正ないしは改正、新条約の締結ということについての日本側の考え方なり意見を向こう側に十分伝えたいと努力いたしております。
  94. 安井吉典

    安井分科員 百七十度以西において、日本漁船がどんどん進出しているものですから、向こうの方では資源保護というふうなことから、サケ・マスの抑止線をさらに西の方に移したい。百七十五度から、たとえば百八十度というふうに移したいというような希望があるという報道もあるようでありますが、そういうような点は今日までの段階では見えておりませんか。
  95. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 サケ・マスの問題でございますが、サケ・マスにつきましては、アジア系のサケとアメリカ系のと申しますかブリストル系のサケ、両系統あるわけでございまして、両系統のサケが東ベーリング海あるいは西ベーリング海の付近で混淆している、まじわりつつあるという事実は、確かに科学的にある程度立証されております。それで、御承知のように七十五度以西におきましては、これは日ソの漁業条約によりまして、サケ・マスの資源保護をやりながらクォータ・システムでサケの漁獲をやる、こういうところで今年度の分も間もなく始まる時期になろうかと存じます。それから東の方の東ベーリング海のブリストル系のものが七十五度から百八十度まで張り出して、アジア系の分と混淆しておる。ただいま日米加の漁業条約では、百七十五度以東のサケ・マスのアブステンションの適用を受ける地帯でございますが、アメリカ側といたしましては、アメリカ系のサケ・マスが百七十五度以西まで張り出しておる、こういう点を従来委員会の席上では十分事あるごとに主張いたしております。ただしその混淆の状態についていろいろ問題もあり、百七十五度を西に延ばすということについては、日本側としても科学的に主張する点もないし、またこれとの関係もないということで拒否いたしております。現在において百七十五度をアブステンションの対象にする、こういうことになっております。
  96. 安井吉典

    安井分科員 日ソ漁業条約が一応対等の立場でそのことが論ぜられているような形になっておりますが、しかしアブステンションという原則がある限り、何かこうレベルが迷うのではないかといったような一つの印象をわれわれはぬぐうわけにいかないわけであります。現に日ソの場合についても、日米加がアブステンションがあるのではないかといったような指摘があって、話し合いの一つの難点になった場面もあったというように、あるいは日韓の漁業協定とか、あるいは日中の漁業の民間での話し合いの際も、やはり日米加の問題が話し合いに出されるということも私ども耳にしております。先年の国連の海洋法に関するジュネーブの会議においても、アメリカがこの日米加に彼らが得ております原則を、一般的なものにしようとい提案をしようとしたのが否決されたというふうな一つの経過もありますし、ある学者によれば、アブステンションの原則は、生物学の問題ではなしに、これは分配問題だ、単なる政治の問題だ、外交の問題だというふうにいっております。ですから、私どもはあくまでも今後の改定の際には、これを完全に除去するものでなくてはならないと思うわけです。もちろんアメリカやカナダにおいて国内問題があると思います。しかし同様に日本にもあるわけです。現に国会でも今こういうふうに論議がかわされておるわけでありますが、これはやはり重大な決意を持ってお当たりになっていただかなくてはならないと思いますが、いかがですか。
  97. 重政誠之

    重政国務大臣 これは安井さんのお説の通りでありまして、私どもも重大な問題と心得て今日まで努力もいたし、また将来も努力をいたすつもりでおりますが、何分にもこれは非常に問題が簡単なようで複雑でございまして、先ほど安井さんのお述べになりました百七十五度をソ連地域の方に広げるべきではないかというような意見も出るというようなわけでありまして、そういうことになりますと、非常に問題が複雑になって参るおそれがあるわけでございます。私どもとしては、あくまでも百七十五度の以東、ブリストル湾の問題としてこれを取り扱わなければならぬ。しかもこれは日米加三国の間で片をつける、こういう基本的な原則と申しますか、基本的な基本方針を持ってこの問題の解決に当たる、こういうつもりでおるわけであります。従って、いろいろ複雑な問題も起こって参りますので、なかなか困難な問題であるとは考えますが、しかし、あくまでも筋を通して問題の解決に当たりたい、こういうふうに考えております。
  98. 安井吉典

    安井分科員 なお、この問題については、あとで日ソ交渉の問題についてもちょっと触れたいと思いますが、日ソ交渉の場合にも当てはまることでありますが、私どもが筋の立った主張をする反面において、日本の漁業が略奪的なやり方で、資源保護について十分な配慮がないのではないかというふうな外国からの批判に対しても、われわれはこたえなくてはならないと思うのです。特に今度の日米加の問題でも、アメリカやカナダが資源保護のために払っている努力というものだけは評価をしなければならないと思うのです。ソ連についても同様です。そういうふうな観点からいって、これは特にサケ・マスでありますが、その他についても同様なことがいえますが、資源保護についての政府のかまえが、たとえばそれに関するいろいろな立法もばらばらであって、全体的な統制がとれていないような気がするわけであります。資源保護について総合的な特別立法を持つというふうなお考えはありませんか。
  99. 重政誠之

    重政国務大臣 これはおっしゃる通りに、資源保護に関連してと申しますか、どうも日本の漁業についての各国の信頼というものを十分に得ることができないのが現状じゃないかと思うのでありまして、私もまことに遺憾のことと考えておるのであります。われわれの方針といたしましては、資源の保護、公海における資源は平等に利用する、この二つが基本的な方針であります。あくまでも資源は保護する、しかし公海における資源の利用は平等でなければならぬ、こういう二つの基本方針を持ってすべてに臨んでおるわけでありますが、ただいまお話しになりましたような問題、これは信用の問題がまといますので、どうも難航する場合が多いのでありますが、そういう点については十分に一つ気をつけて参りたいと思うのであります。冒頭に御質問になりましたこのオヒョウの問題につきましても、私どもは資源保護という立場において決してアメリカ、カナダに劣るものでないという、そのことを現実に表現をするという立場も大いに考慮をいたしまして先般の協定を妥結するに至ったわけであります。将来ともこの問題につきましては、具体的な問題につきましてその立場を堅持して参りたい、こういうふうに考えております。
  100. 安井吉典

    安井分科員 全体的なかまえといいますか、そういうようなものについて、相手を説得し得るような材料をやはりお持ちになることが必要だと思うのです。ですから、サケ・マスの孵化の問題やあるいはまた河川遡上というふうなことについても、河川がよごれぱなしになっておる。河川遡上についての捕獲禁止の問題についても、十分な措置が講ぜられていない。関係の立法はみなそれぞれ一応あることはあるわけですよ。しかしそういうようなものをまとめて、一つの総合的な形で、そのためにはこれだけのことをやっておるということを示しになることが、相手の説得力に迫力を持たせる意味において有効ではないかと思います。そういうような意味で申し上げたわけでございますが、御検討になるということでございますので、今後に待ちたいと思うのであります。  そこで最後に、日ソ漁業交渉の問題について、もう時間がきてしまっておりますので、一、二点だけ何って終わりたいと思いますが、東京で今度三月四日から始められるというふうに報道をされておりますが、いつもに比べますと開始が非常におそいわけであります。春の漁期まで例年に比べるとずいぶん日がなくなってきております。いわゆる百日交渉という言葉からすれば、その半分しかないわけでありますが、今度の場合は短期で十分な成果を得られるというふうな自信をお持ちだと思うのでありますが、いかがですか。
  101. 重政誠之

    重政国務大臣 昨年の日ソ協定によりまして、御承知通りに、出漁の時期がきめられておるということ、それからB区域における数量の点も、ある程度のワクと申しますか、その基礎的なことがきめられておるというようなことからいたしまして、一昨年以前の交渉の状態よりはよほど今年は違った交渉になると考えますので、私どもといたしましては、従前のような百日交渉というようなことはなくて済むのではないかというふうに考えておる次第であります。
  102. 安井吉典

    安井分科員 それでは二点だけ、しぼってお伺いいたしますが、第一点は漁獲量の問題であります。  昨年は、A、Bと二区域に分けて、A区域は北緯四十三度以北の母船式操業区域で五万、五千トン、B区域は流し網、はえなお操業区域で六万トンと決定を見たわけでありますが、ことしは大体において豊漁年だというふうな見通しが立っておるようでありますし、また昨年の交渉で、大臣も今ちょっとお触れになりましたが、B区域は、交換公文で一0%増とすることができるというふうな規定がありますし、A区域についても、河野・イシコフ会談におきまして一0%増という内約が取りつけられてあるというような報道も私ども聞くわけであります。そういうような関係で、水産業界の方は、去年と違って割合に楽観視して、黙って見ておるというふうな状態ではないかと思います。去年よりも大体において一割くらいふえるのではないかというふうな期待が、一般にあるわけでありますが、政府としても、当然これにこたえられるのではないかと思うのでありますが、どうでしょうか。
  103. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 ただいま御指摘になり、大臣からお答えになった通りでございます。ただことしは、御指摘通りサケ・マスにつきまして豊漁年に当たっております。それで臨む態度といたしまして、われわれ昨年の漁獲統計その他政府統計全部をよく整理いたしまして、資源状態がどういうふうになりつつあるかというようなことを十分検討いたしまして、御趣旨に沿うように努力していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  104. 安井吉典

    安井分科員 一割増しということについて私が今申し上げましたが、その根拠はその通りですか。つまりB区域については交換公文で、それからA区域については河野・イシコフ交渉の中で約束があるというような見方について伺います。
  105. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 必ずしもそうばかりではないと思います。やはり資源状態が一番きめ手になろうかと思います。幸いことしは豊漁年にあたっておりますが、その豊漁年にあたっていることしの大体の回遊の状況というものを、昨年からことしにかけまして集まりましたデータ等で十分検討いたしまして、どの程度に漁獲量を決定したらいいかといことは、やはり化物学的な意味における資源量というものを十分突き詰めて、それによって交渉をやっていかなくちゃならない。もちろん昨年取りつけてありますB地区についての一割程度というようなもの、それから河野大臣がイシコフとの紳士協定においてなされたそういうことも一つの論拠にはなろうかと思いますが、一番問題になるのは、やはり資源の状態がどういうふうになりつつあるかということで、これを十分われわれは科学的によく検討いたしまして、それに基づいてそういった主張をしていく、こういうことに相なろうかと思います。
  106. 安井吉典

    安井分科員 それじゃもう一点。ソ連の監視の問題でありますが、ソ連の監視員が日本船に乗り込んでというような形で去年は結論が出たわけでありますが、その昨年の交渉の結果では、ことしはどうなるかということについては明らかにされてないはずであります。しかし、自主規制のB区域にソ連の監視船が入るということになりますと、いわゆる自主規制ではなくなるし、あるいは領海権の問題も出てくるかもしれないし、ずいぶん問題がややこしくなってくるわけでありますが、これについての政府の態度を一つ伺います。
  107. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 昨年からB地域は自主規制ではなしに規制区域、その総量は六万トン、一0%のアローアンスは認められる、こういうことになったわけでございまして、B地域におきまする漁業の日ソにおきまする取り締まりの方式については、交換公文によりまして、一九六二年においては漁業取り締まりは日本側によってのみ実施され、ソ連の取締官は日本の取締船にオブザーバーとして乗船する、こういうことに相なっておるわけであります。ことしの分については未決定でございますが、このB地域につきましての取り締まりの問題につきましては、やはり交換公文と同じような考え方でわれわれといたしましても一九六三年は対処していきたい、こういうふうに考えます。
  108. 安井吉典

    安井分科員 昨年はA、Bと二つに分けて、B区域の方は、これも同時に規制区域じゃないかと言ったら、何かこちらの方は自主規制の方が強いんでというふうにむしろ弁解的に言われていたのが、きょうの長官のお話でありますと、はっきりBの方は規制区域だ。規制区域には違いないが、私どもが去年そう言ったら、去年の場合は何かずいぶんAとBとはニュアンスがあって、Bの方は自主規制の今までの状態とそう変わらぬというふうに河野農林大臣も言っていたように記憶があるわけであります。いずれにしても、そのBの区域にソ連監視船が入るということは、もうA、Bの区別が全くないということに、これは事実となってくるわけです。だから、これも今度の漁業交渉の一つの重要な。ポイントになるのではないかと思うわけであります。ただ、ここで私ども考えまして問題となると思いますのは、監視の問題を強く押していったら、じゃ監視の方は日本の言い分を通す、しかし漁獲量は減らすのだぞというふうな話に、妙な方向に問題がはみ出してこないとも限らないわけです。しかし、量の問題は全く別個の問題なわけです。それが、量が取引されるということは全く不合理だと思います。その点、大臣の御決意を伺っておきます。
  109. 重政誠之

    重政国務大臣 それは、お話通りだろうと思うのであります。私も、その点まだ詳しい研究をしておりませんけれども、今までの日ソ交渉の成り行きを聞いておりまして、このB地域というものが去年設定をせられたのでありますが、あの地域はもともとは制限地域外であった。しかし、その量はどれだけということがきめられてあった。それが、その量をオーバーしてその地域でずいぶん漁獲をせられたということから、問題がああいうふうになったと思うのであります。そういう意味におきましては、B地域の設定の沿革から考えても、これはA地域とおのずからその取り扱いは異にせらるべき筋合いのものである、こういうふうに私自身は考えておるわけであります。いずれにいたしましても、これは相手方のあることでありますから、いろいろのケースが起こって参ると私は考えますが、その場にあたりまして私どもは最善の方法を尽くして参りたいと考えております。  監視の問題と数量問題というものは、当然別なものであります。要するに日本の漁業に対する信用が薄くなると何でも監視ということになるわけであります。できるだけ約束は守って、信用を博すような方向で参りたい、こういうふうに考えております。
  110. 安井吉典

    安井分科員 同じ規制といっても、向こうが規制するのと自主規制ということではその法律効果からいっても、特に国民が受ける感情からいってもずいぶん違うわけですね。だから、その点私どもは、やはりA区域とB区域との間の相違というものははっきりさせていかなければならぬ、そういうふうに申し上げているわけです。  それからなお今度の交渉の際に歯舞、色丹周辺のコンブ漁についての安全操業、その他樺太近海においても起きておりますが、安全操業の問題についても当然お触れになって、もう少し有効な方策をお話し合いの中から打ち出すべきだと思いますが、いかがですか。
  111. 重政誠之

    重政国務大臣 これはできるだけそういうことでやってみたいと考えますが、御承知通りに、これは、ソ連側としては平和条約を締結するということが非常に強い条件になっておりますので、問題は簡単に片づくような性質のものじゃないのではないかと懸念をいたしておる次第でありますが、最善の努力はいたすつもりでおります。
  112. 中村三之丞

  113. 芳賀貢

    芳賀分科員 この際畜産問題と国内の甘味資源問題について、農林大臣に主要な点をお尋ねします。  第一に、最近における大蔵省の関税局の統計によりますと、三十六年度の貿易の帳じりは、輸出が四十二億ドル、輸入が五十八億ドル、で、結局十六億ドル入超ということになっておることは大臣も御承知と思いますが、特に注意しなければならぬ点は、ここ数年、輸入品の中で農産物関係の輸入額が逐年増加しておる、こういう現象が顕著であります。これは農業基本法に照らした場合において毛、国内の農産物あるいは農林畜産の製品に対して国内の需要度が高まってきておることは事実でございますが、その主要の増加分がほとんど輸入依存という形で数字に現われておるということは、農業基本法精神に照しましても、国内における農業の選択拡大の政策を進めることによってでき得る限り自給度を高めて、外国への依存から脱却する、ここに基本法の本来の精神があるわけでございますが、結果的には、これが全くその実績を上げておらないわけです。特に重要な点としましては、たとえば食糧関係の小麦の輸入、あるいは大豆の輸入、トウモロコシの輸入、砂糖の輸入、これらは農産物関係では主要な輸入品目でございます。これらの四品目が、たとえば三十六年度の輸入総額の中においてどの程度の比粛を持っておるかということは、おおよそおわかりと思いますから、その点について、その数量、金額等について、大まかな数字でいいですけれども大臣承知しておる点を述べていただきたい。
  114. 重政誠之

    重政国務大臣 数字にわたりますから、これは政府委員から御答弁申しますが、私の頭にありますのは、たしか綿花、羊毛まで含めて農産物の輸入というのがおおよそ五億ドル前後に上っておるのじゃないかと思うのであります。小麦でありますとか、あるいは綿花、羊毛を除いたあとの食糧、飼料というようなもので三億ドルを少々越すのじゃないかというふうな見当でおるわけでありますが、政府委員から一つ……。
  115. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 三十六年の農産物の輸入を申し上げますと、総輸入額が五十八億一千四十万ドルのうちで、農産物関係が七億九千二百万ドル、これは葉たばこをも入れました数字でございます。
  116. 芳賀貢

    芳賀分科員 私のお尋ねしたのは小麦、トウモロコシ、大豆、砂糖等について、それぞれ三十六年度において数量、金額、その品目が輸入総額のうち何%程度を占めておるか、そういう点について尋ねたわけでございまして、これは、大臣おわかりにならぬとすれば、政府委員から、この四品目が貿易の中でどのような比重を占めておるかを明らかにしてもらいたい。
  117. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 数量の点が、今手元に資料がないのでございまするが、金額で申し上げさせていただきます。  まず三十六年の穀類一億七百七十二万七千ドル、その内訳といたしましては、小麦が一億七千九百四十二万八千ドル、米が千六百五十七万ドル、砂糖類が一億三千四百七十二万七千ドル、その次に大きいものを申し上げますると、コーヒーが千七百七十六万三千ドル、果実三千百六十三万六千ドル、飼料一億五千百十四万五千ドル……。
  118. 芳賀貢

    芳賀分科員 四品目だけでいいですよ。
  119. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 今あげられました四品目について数量と金額を申し上げます。  まず小麦でございますが、小麦は、数量は二百六十三万九百七十七トン、それから金額は一億七千九百四十二万八千ドルでございます。それからトウモロコシは、数量は百八十三万六百五十五トン、金額は一億六百九十六万八千ドルでございます。その次は大豆でございますが、大豆は、数量が百十五万八千二百六十五トン、金額が一億二千八百七十八万八千ドルでございます。それから砂糖でございますが、砂糖は、数量が百三十九万二千五百三十五トン、金額が一億二千二百二十八万二千ドルでございます。
  120. 芳賀貢

    芳賀分科員 今政府委員からの説明があった通りですね。大臣としてこれをどう考えるかという点ですが、このように、日本は歴史的な農業国であったにもかかわらず農畜産物の輸入度が非常に高いということは、諸外国に比べてもこのように農業関係の輸入量が多いということは、決して自慢にはならぬと思うのです。結局国内における農業政策の方向いかんによっては、この輸入数量を減らして輸入依存から漸一次脱却することが可能であると私たちは考えておりますが、農林大臣としては、そういうことはできないと思っておるか、いかがですか。
  121. 重政誠之

    重政国務大臣 これは私も、畜産が非常に盛んになると輸入飼料が年々ふえていくという状態を見て憂慮をいたしておるものであります。ただ心配をするだけでなしに、輸入飼料は減じて、しかも入れるにしても安いものを入れて、国内でつくっていく、飼料の内容の転換もぜひやりたい、こういうふうに考えておるわけであります。ところが小麦のようなものになりますと、御承知通りに、本年あたりは、軟質の小麦は内地で転換をいたしまして、輸入の軟質小麦は減しております。数量は現実に減っておるのであります。そういうふうな方法を講じましてやっていきますが、しかし、どうしても品質の違う硬質の小麦というようなものは日本ではできない、遠い将来において、あるいは技術の進歩によってできることが絶無ではないかもしれませんが、これは自然的条件等がございますので、現在の時点においてはなかなかそう簡単には参らないと思うのであります。その他砂糖にいたしましても、できるだけ内地で自給の率を上げていきたい、こういうふうに考えておるのであります。しかし、これも幾ら値段が高くなっても自給をするのだというわけには参らないと思うのであります。やはりある限度自然的条件というものを加味して考えなければならぬ、こう考えておるわけであります。いずれにいたしましても、できるだけこれらの輸入の第一次産品につきましては、その量を減して自給をやっていく、こういう方向に進みたいと考えております。
  122. 芳賀貢

    芳賀分科員 次に、濃厚飼料の問題ですが、これは政府方針としても、たとえば所得倍増計画に即応して十ヵ年間に畜産全体を三倍に伸ばす、牛乳については五・七倍にする。もしもこの政府の十ヵ年計画が軌道に乗って上昇線をたどるということになれば、国内における飼料の需要量は年々一0%程度は増加するということに当然なると思う。三十六年の資料によりますと、濃厚飼料関係だけでも、国内の生産、それから輸入を入れると九百万トンをこえておるわけです。そのうちの大体四〇%程度は輸入ということになっておりますね。三十七年度はまだ年度末の集計ができていないとしても、これは国内産並びに輸入を入れるとおそらく一千万トンをこえておると思うのですが、このえさについても、毎年需要の伸びた分だけは、国内の生産が増加しないで、ほとんど全部輸入が増加しているということになるわけです。ですから、おそらく三十七年度は、輸入の飼料が四百万トンをこえておると思う。これがこのような趨勢でいった場合において、たとえば、昭和四十両年が十ヵ年計画の達成年次ですが、その年次に達する場合、家畜の飼育状態、それから飼料の需要状態というものは、一体推計でどのようなことになるか。その点は十分な資料があると思いますから、農林大臣から御説明を願いたいと思います。
  123. 重政誠之

    重政国務大臣 政府委員から……。
  124. 芳賀貢

    芳賀分科員 そういう場合に、農林大臣は、これは私はわかりませんから、政府委員から答えますと言ってから局長が言うべきじゃないですか。
  125. 重政誠之

    重政国務大臣 数字にわたりますから、畜産局長から御答弁させます。
  126. 村田豐三

    ○村田政府委員 ただいま御指摘のございました畜産物の需給の長期見通しに立ちまして、飼料にきましての長期の見通しを一応予定を立てておるのでありますが、それによりますと、可消化栄養分で便宜申し上げさしていただきますけれども、現在、三十七年度の時点で、国内産の粗飼料並びに濃厚飼料並びに輸入飼料、すなわち全飼料を含めまして、いわゆる可消化栄養分、PDNで千二百七十万トンの計画でございますが、これが昭和四十五年度末におきましては、PDNで総量二千二百八十万トンの需要の見込みになる計算でございます。
  127. 芳賀貢

    芳賀分科員 その場合、特に濃厚飼料だけをとった場合、国内生産が四十五年度にはどの程度で、輸入がどの程度か、これが一番大事な点ですから……。
  128. 村田豐三

    ○村田政府委員 概数で申し上げさしていただきますけれども、まず国内の飼料生産、粗飼料関係がPDNで千二百五十七万トン、まあ千二百五十万トンでございます。それから国内産の濃厚飼料でございますが、これが五百九十四万トン、それから輸入によります濃厚飼料が四百二十万トンでございます。比率で申し上げますと、国産の粗飼料によりますものが全体の五五%、国産の濃厚飼料によりますものが二五%、輸入濃厚飼料が二〇%という見込みにいたしております。
  129. 芳賀貢

    芳賀分科員 それでは農林大臣にお尋ねしますが、今局長の説明によると、十ヵ年計画に到達する四十五年度において、国内生産の濃厚飼料が五百九十四万トン、輸入が四百三十万トンということでございますが、たとえば国内生産の五百九十四万トンというものは、昭和三十六年度においてすでに国内において五百七十万トンの濃厚飼料が生産されております。おそらく三十七年度は、若干の伸びを示したとしても、自給と流通を合わせれば、六百万トン程度の濃厚飼料の生産はできておる。そうすると、四十五年まではあと全然国内における濃厚飼料の出産はやらないということになるわけですね。それから輸入についても、昭和三十六年が三百四十五万トンですから、今年度はすでに四百万トンをこえているわけです。ですから、四十五年において四百二十万トンということになれば、来年以降四十五年までの間は、濃厚飼料の輸入は全然ふやさない。一体こういうことが可能ですか。そして残余の一千二百万トンというものは、粗飼料を一大増産して自給する。こういうでたらめな答弁をこの席で行なっても、これはまじめにわれわれは了解することはできないわけです。来年以降輸入をふやさない、国内の濃厚飼料の生産をふやさない、今後国内における粗飼料の増産体制だけで飼料の需給計画は全部達成できる、そういうばかなことをあなたの部下である畜産局長が言っておるわけですが、大臣としてそういうことが現実に可能と考えますか。
  130. 重政誠之

    重政国務大臣 芳賀さん、ちょっと誤解があるのではないかと思うのですが、先ほど畜産局長が申しました通り、現物そのもののあれで言っておるんじゃないのであって、すべての飼料を栄養価で換算をしてトン数を言っておるのでありますから、従って現実の生産のトン数、輸入のトン数とは違うわけです。もう一ぺん畜産局長から御説明します。
  131. 村田豐三

    ○村田政府委員 芳賀先生もよく御承知だと存じますけれども、便宜可消化栄養分で先ほど来数字を申し上げておるのでございます。従いまして、ただいま申し上げました、また芳賀先生からも御指摘のございました、国産の実際の飼料形態によります、あるいは原料形態によります実トン数と、ただいま飼料形態でなくて、あるいは実際の原料形態等でなくて、PDNで申し上げました数字とには相当の開きがあるのでございます。たとえば、先ほど申し上げました三十七年度千二百七十万トンのPDN数量も、これを原料形態あるいは飼料形態で申し上げますと、粗飼料につきまして五千百万トンの数量に相なっております。それから濃厚飼料の国産の飼料につきましては、ただいま芳賀先生からも御指摘がございましたように、PDNでは四百万トンでございますけれども、飼料形態では五百七十万トン。それから輸入数量につきましては、三十七年度の計画は三百三十万トンでございますけれども、これは輸入実量で申し上げれば四百三十万トンというふうに相なっております。
  132. 芳賀貢

    芳賀分科員 四十五年度の輸入は、現物で幾らになるのですか。
  133. 村田豐三

    ○村田政府委員 先ほど申し上げました四十五年度のPDN総量二千二百八十万トンのうちPDNで輸入量を申しますと、四百二十万トン、これを輸入実量で申しますと、おおむね六百万トンという計画に相なっております。
  134. 芳賀貢

    芳賀分科員 それで数字は一応述べられたわけですが、これにいたしましても、大体輸入数量は現在の五割以上ふやさなければならぬということになるわけですが、この程度では間に合わないでしょう。それで、その根拠になる数字ですが、一体昭和四十五年度にわが国の家畜の飼養頭数はどのくらいになるという計画の上に立っておられますか。最近の傾向からいいますと、役牛については、これはもう増加傾向はたどっていないですね。これは若干減る傾向を示しておる。馬についても、競馬馬なんかは別ですけれども一般の農耕馬と称するものは、これも機械化によって飼育頭数が減少しておる。綿羊等においても、そういう傾向をたどっておるから、問題は乳牛ですね。乳牛、豚、鶏、こういうものが拡大生産の方向をたどるわけですから、これらを中心にして昭和四十五年度のわが国の家畜の飼養頭羽数というものは大体どの程度になるか。それをえさと同じように、家畜の家畜単位にこれを換算した場合には何百万トンくらいになるか、それを明らかにしてもらえば、それに対応して大体どの程度の飼料というものがあれば足りるかということになると思います。その点の説明をお願いします。
  135. 村田豐三

    ○村田政府委員 畜産局で先ほど申しました畜産物の長期の需要見通しをもとにいたしまして、単純なる家畜の増加頭数でなくて、需要量にある程度まかない得る供給力を付与するという立場から、多少意欲的に乳牛なりあるいは豚なりの増殖見通しというものをただいま計算をいたしておりますその数値を申し上げますると、概数で申し上げさしていただきますが、乳牛につきましては二百九十万頭、豚につきましては七百四十万頭、鶏につきましては、卵用鶏が一億二千万羽、肉用鶏が三千万羽、合わせて一億五千万羽という見通しを立てております。
  136. 芳賀貢

    芳賀分科員 全部の家畜を入れて、家畜単位で幾らになるのですか。
  137. 村田豐三

    ○村田政府委員 ただいまちょっと手元に資料を持ち合わしておりませんが、直ちに調べまして後ほど御報告申し上げます。
  138. 芳賀貢

    芳賀分科員 全体の家畜単位が出なければ四十五年度にこれだけの飼料が要るか要らぬかわからぬじゃないですか。
  139. 村田豐三

    ○村田政府委員 まさしく御指摘通りでございまして、今資料一つ調べまして御報告いたします。
  140. 芳賀貢

    芳賀分科員 それでは資料がくるまでにさらにお尋ねいたしますが、今の説明によると、乳牛については、三十七年度の現在は、農林省の統計によると約百万頭ですね。それが二百九十万頭ということになると、三十七年度を一00にして四十五年度までに乳牛は三倍ということになるわけですね。ところが豚については、三十七年度の統計によりますと、四ご旦二万三千頭というふうになっておるが、これが四十五年までにわずかに三百万頭程度しかふえぬということになると、豚については二倍までにはできないということになるのですか。その乳牛と豚の関係についてもう少し根拠のある説明を願いたい。
  141. 村田豐三

    ○村田政府委員 畜産物の長期の需要見通し等から推算をいたしまして、それをできるだけ国産でまかなうという大前提に立っての将来の需給の見通しでございます。この場合、乳牛につきましては約三倍という伸びでございまするが、御指摘のように、過去におきましても、十年間に約三倍程度の伸びを示しております。それから豚につきましても、過去において三、四倍の伸びがございまするけれども、食肉全体の需給から将来の長期にわたる豚の需給見通しを立てます際には、やはり豚肉そのものも、もちろんこれは牛肉との関連も若干あるのでございまするけれども、牛肉はただいま御指摘のございましたように、需要の伸びもまた肉牛そのものの供給の伸びも停滞傾向を示しておりまするし、一挙にこれが増産の見込みは少ないのでございます。結局豚が中心に州なりまして、将来の長期の需要に見合う豚の増産見通しとして、伸び率は乳牛に比べますと低うございますけれども、この程度で大体需要をまかなえるという観点からこういう計画を立てておるわけでございます。
  142. 芳賀貢

    芳賀分科員 そうしますと、これは所得倍増計画の、特に畜産三倍、牛乳五・七倍という、この十カ年計画はもうずさんなものでだめだということになりますね。どうですか、その点。
  143. 村田豐三

    ○村田政府委員 数字的なことを申し上げますけれども、ただいま私どもの計画で立てておりまする数字は、農業の長期の見通しに基づいた数量を国産でまかなう数字でございますから、農業基本法に基づいて長期の需給計画を立てておりまするその計画に立脚した数字である、かように考えます。
  144. 芳賀貢

    芳賀分科員 大臣にお尋ねしますが、所得倍増計画というのは、三十六年に始まり、四十五年に終わるわけですね。この倍増計画の農業の部門については、特に畜産に触れて、畜産の生産については、十年間にこれを三倍にする。その中で牛乳の生産については五・七倍にするということを言っておるのであります。だから、所得倍増計画に照らすと、農林省が今考えている長期見通しというものは池田内閣が策定した所得倍増計画の農業部門について、その中の畜産関係の部門については、これは計画はでたらめである、そういうことになると思うのですが、いかがですか。
  145. 重政誠之

    重政国務大臣 私、今数字を持っておりませんから、はっきりお答えができがたいのでありますが、おそらくそういうことにはならぬと思うのであります。あの所得倍増計画というのは、一応の十年先のめどを立てたのでありますから、実行上はもちろん、私はその間に若干の増減ができることは、これは当然なことであると思うのであります。そういうような点から考えまして、今畜産局長が申しましたのがどういうことになっておりますか、私もちょっと今承知いたしておりませんから、これはよく取り調べましてお答えをいたします。
  146. 芳賀貢

    芳賀分科員 乳牛、役牛、馬、豚、綿羊、ヤギ、鶏、こういうものを全部家畜単位に直すと、昭和三十七年度において五百六十八万八千頭ということになっているわけです。この三十七年は、これは十カ年計画の基準年ではないから、基準年はもとより若干下回るとしても、その中で役牛、農耕馬あるいは綿羊、ヤギというものはだんだん頭数が減少の方向をたどっておるわけです。増加する分については、乳牛と豚と鶏ということになれば、畜産全体が十ヵ年計画で三倍になるということになれば、今の局長の説明のようなことでは、なるほど乳牛については約三倍の数字をあげておるが、豚については二倍にもならぬ。大体八割程度の伸びしか可能でないということになれば、これはだれが考えても十ヵ年計画というものは間違いである。こういうことを早く農民の前に明らかにして、豚については、四十五年までに現在の四百万頭というものをあと三百万頭程度しかふやしてはいけない、こうことを明らかにしないと、単に所得倍増計画の幻想にかられて、そして政府の施策に協力して畜産がどんどん拡大したという場合においては、最後は全部農民の犠牲のもとに処理されるということになると思うのです。だから、同じ数字を出す場合にも、同じ政府が策定した国民所得倍増計画であるとか基本法に基づく長期計画、そういうものはやはりどこかできちんと数字を合わせるような努力をしないと、てんでんばらばらになって迷惑を受けるのは国民であり、農民であるということに終わると思う。えさの問題については、これは相当議論をしなければなりませんが、特に三十八年度の予算を見ましても、前向きの、今局長の述べられたような、たとえば国内において粗飼料の生産を急速度に進あるという点についても、何ら具体的にその措置というものが講ぜられていないじゃないですか。わずかに草地造成等が公共事業費として若干の予算の増加は示しておるけれども、あの程度の事業の実施では、今述べたような国内における飼料の増産というものが可能であるかどうか。やはりこれを強力にやるためには、もちろん外国からの輸入依存から脱却しなければ、ほんとうの意味の畜産というものは発展させることはできないが、それにはやはり飼料対策というものを、十分な制度をつくり、法律をつくって、これに基づいて、たとえば今述べられたような飼料の国内生産が可能のような、そういう体制というものを速急に確立しなければいけないと思うのです。われわれ社会党といたしましては、たとえば飼料の需給並びに価格安定の法律案であるとか、あるいは国内における自給飼料の生産促進の法律案であるとか、あるいはまた国内における草地の開発造成のための必要な法律であるとか、そういう法案というものを着々と用意して今国会提案をする予定でおりますけれども政府の方を見ると、何らそういうような用意がないじゃないですか。政府も全然飼料の制度等については努力をしておらぬ、与党自民党もまた飼料対策等については何ら熱意のある政策を立てようとしておらない。こういうことになると、全く日本の畜産の前途は暗たんとしたものになってしまうと思うのです。ですからこの際、農林省においても具体的な飼料対策を十分立てて、そうしてやはり大事なことは、その根拠となる制度を一日も早く確立して、立法化を行なって十分な対策を進める必要があると思いますが、そういう点については、農林大臣としてどのような具体的な考えを持っておられるか、この際示していただきたい。
  147. 重政誠之

    重政国務大臣 お話し通り、飼料の問題は畜産の根幹をなすものと私は考えて非常に重視をいたしております。従って、現在のように濃厚飼料を多く用いて畜産の経営をするということは非常に危険である、あくまでも牧算その他の草飼料を主軸として飼料問題の解決をしなければならぬと私は考えておるわけであります。それがためには、必要に応じまして、場合によれば大胆に国有林の開放もいたしたい、こう決意をいたしておるわけであります。ただ、法律を用意しておるかどうかといお話でありますが、私は、法律が必要であれば法律を出すここにやぶさかでございません。これは当然やらなければならぬことでありますが、しかし、法律をつくったからといってこれはどうにもなるものではないのである。問題は、実質が問題でございますから、私といたしましては実質的にこれに手をつけて、ただいま申しましたような方向で飼料問題の解決をはかるという方向に進みつつあるわけであります。
  148. 芳賀貢

    芳賀分科員 法律をつくってもしょうがないと言うが、一体国有林を開放するといっても、何の目的で、どういう方法で開放するかということは、やはり根拠がなかったらできないでしょう。農林大臣の一存で、この辺を全部開放するから売り払えといっても、一体国民の財産を何のために、どのような目的をもって開放するか、使用するかということは、やはり法律とか制度というものが先にきらっと固まっていなければできないじゃないですか。その場合であっても、開放した国有林というものを基盤にして草地の造成とか開発をする場合にも、一体これを全額国庫負担でやるものであるか、あるいは受益者が中心になってそれを開発するものであるか、そういう点についてもやはりちゃんとした法律がなければ、これは国が予算をつけることもできないじゃないですか。あなた、何でも法律無用論者でして、農業近代化農業の構造改善にしても法律は要らぬ、実質だけ伴えばいいということを言っておるが、この法治国家において法律無用論をあまり唱えるということは問題が起きますよ。きょうの程度では失言にはならぬかもしれぬが、何でもかんでも法律は要らぬ、勘でやっていけばいいということになれば、これは他日問題が起きますから注意しておきますが、やはりほんとうにやろうとすれば、その根拠を明らかにして、それに基づいて前進する、こういうことにぜひやってもらいたいと思うのです。  時間がありませんから、あと国内の甘味資源の問題について若干お尋ねしておきますが……
  149. 重政誠之

    重政国務大臣 ちょっと芳賀さん、今の話のことで……。国有林の開放問題についてお述べになりましたが、私は実はこの問題は検討いたしたのです。芳賀さんのおっしゃる通りに、法律をどうしても必要とするかどうかということについて検討いたしました結果、現行の法令によりまして、その運用によって、国有林を草地に払い下げることができるというめどを一応立てましたので、あえて法律提案するに至っておらないわけであります。決して勘でできるものではないのです。これはもうおっしゃる通りに、必要とするものは当然法律によらなければならぬ、法律を制定しなければならぬ、こう私は考えておるのであります。法律無用論では断じてないことを一つ念のために御了承を願っておきたいと思うのであります。
  150. 芳賀貢

    芳賀分科員 それでは、草地の造成、開発に適する国有林あるいは国有の未墾地、こういうものは一定の計画を定めて、そして積極的に草地造成のために使用する、あなたの言うのはそういうことですね。そうであれば、これはやはり計画というものを明らかにして——農地局の調査によっても、草地を中心として農用地に適する未墾地というものは、大体六百万町歩ということがいわれておるわけなのです。ですから、これだけの資源を草地開発あるいは飼料の自給度向上のために活用するということになれば、相当思い切ったことがやれるわけです。たとえば一年に十万町歩ずつやったところで、昭和四十五年までには八ヵ年しかないのですから、八十万町歩くらいの開発しかできませんが、そのくらいの意欲を持って計画を立てて、当然これは公共事業で全面的にやるということになれば、農地の開発、造成と同じように、全額国の負担で一大草地造成をやるということにそれは通ずると思いますが、そういう意欲的な構想を立ててやろうというお考えかどうか、その点はいかがですか。
  151. 重政誠之

    重政国務大臣 全部国の経費でそれを開発するということがいいか悪いか、これは問題だろうと思いますが、現状は、御承知通り五割の補助でやっております。それから国有林も、何でもかんでも草地にするというわけには参らぬことは、これはもう当然でありまして、保安林が必要なところもありましょうし、それからまた森林の経営をする方がいいところもありましょうし、いろいろあるわけであります。そのうちで、草地にし得る面積も相当にあるわけであります、そういう面積が、具体的に草地にして、そこで乳牛なら乳牛を飼育するという現実の状態にこれが合ってこないと、なかなかそういうわけには参らないのでありまして、ついここが草地に適するからそこでやるのだと言ってみても、草地にしても牛を飼うことができぬことになったのでは、これは意味をなさないわけでありますから、そこらの点は、現実の問題として、すべての諸条件が整ってきて、そして開放する、こういうことに現実の問題ではなると思うのであります。もちろん、ただいま私が申しましたような意欲を持って、そういう必要があるところは思い切ってどんどん開放していく、こういう方針で今やっておるわけであります。
  152. 芳賀貢

    芳賀分科員 この問題については、いずれ三月に畜産物安定審議会等がありますから、その際また十分大臣の意のあるところをただしたいと思います。  それで、甘味資源の問題ですが、時間があまりないようですので、重点的な問題だけお尋ねしますが、第一に、昭和三十四年に政府は甘味資源十ヵ年対策を立てたことは、大臣も御承知通りです。それが現在において非常に計画が伸びておらないということも、これは大臣承知と思います。この十ヵ年計画によりますと、昭和四十三年がちょうど十ヵ年の終期になっておるわけでございますが、この四十三年の砂糖類の需給度合いというものは、これは国内における需要総量が百五十二万トン、これに対しまして国内の出産計画は、てん菜糖については四十万トンで、そのうち北海道が三十万トン、内地府県のいわゆる暖地ビートが十万トン、カンシャ糖については、奄美大島並びに沖繩を合わせてこれが二十万トン、ブドウ糖については十五万トンで、合わせて七十五万トンを国内で生産して、あと不足の七十七万トンは輸入に依存する、こういう計画の内容ですが、最近の砂糖類の需要関係を見ますと、すでに昭和三十六年におきまして五十六万トン消費されておるわけです。結局現実には、三十六年度の消費数量が、いわゆる当時立てた四十三年の到達目標である百五十二万トンと大体合致するわけでして、最近砂糖類の消費が非常に増大しておるわけですですから、そういうことになると、当然国の甘味資源十カ年計画を実情に合うようにこの際改定して、そして、特に国内における甘味資源の増産対策等については、でき得る限り国の責任でこれを進めていくということは当然だと思いますけれども、まず国全体の需給計画を実情に合うように改定する必要があるかどうか、あるいはまたこの十カ年計画というものは、もう用をなさぬものであるから、ここらで打ち切って、新たに三十八年度なら三十八年度から新発足の長期計画を立てていく考えであるかどうか、まず、この点を明らかにしてもらいたいわけです。  それから次に、お尋ねしたい点は、てん菜糖関係の問題でございますが、問題になるのは、内地府県における緩地ビートの生産奨励については、政府としても数年間努力されておるわけでございますが、たとえば青森県におけるフジ製糖が工場を建てて、青森を中心にしたてん菜の生産については、これは大体成功したということが言えると思いますが、九州の大分の新光製糖の場合には、せっかく一日六百トン処理の工場が建ったにもかかわらず、昨年の秋には原料がないということを理由にして、操業を中止したわけです。大分の新光製糖は、せっかくの新工場が操業も中止している。そして九州で生産されたてんについては、それを岡山の横浜精糖に原料を輸送して、そして処理するというような現状になったわけです。こういうことを考えると、一体てん菜糖の将来を考えた場合に、せっかく政府が奨励して工場の建設の認可まで与えて、建設を行なったにもかかわらず、それが操業ができないというような事態になったことに対する政府責任というものは、やはり明らかにする必要があると思うわけです。最近また、聞くところによると、岡山県の横浜精糖を今度は九州の鹿児島の方にまた移転するというような話も聞くわけでございますが、そういう国内における甘味資源の振興対策というものは、政府の無計画な態度によって、各方面に非常な迷惑や犠牲を与えるというようなやり方が、今後もとらるべきものであるかどうか、そういう点について、この際明らかにしておいてもらいたいわけです。  その次は、北海道におけるてん菜糖の現状にいたしましても、これは昭和三十五年から四十二年までの八ヵ年計画というものが立てられておるわけでございますが、この計画は北海道庁が立てた計画だけというのではなくて、もちろんこれは当時自民党の町村知事が立てた案でございますが、これは全面的に農林省が承認して、国の北海道における甘味資源の長期計画ということで進められておるわけです。ところが、この計画についても、たとえば昭和三十五年度の計画は、作付面積については四万三千二百ヘクタール、ヘクタール当たりの収穫が二六・七トン、総収量が百十五万、五千トンで、砂糖の生産量が十五万八千トンということになっておって、これは三十五年から発足したわけですからして、実績も大体これと同様でございますが、それが三十七年度にはどういうことになつているかというと、計画によると、作付の面積は五万三千ヘクタール、これに対して実績は四万四千二百ヘクタールでありまして、初年度と何ら数字が変わっていないのですね。計画は伸びておるけれども、実際は依然として伸びておらない。ヘクタール当たりの収量についても、計画は三一七年度には二七・五トンということになっているが、これも三十七年度の実績というものは二四・五トンで、初年度と幾らも変わっていない。総収量については三十七年度の計画は百四一十五万八千トンということになっておるけれども、実績は百八万三千トンで、初年度の実績である百万五千トンと全然変わりがない。砂糖の生産量についても、三十七度の計画は二十万トンでございますが、実績は十四万二一十トン程度である。こういうことで終了わっておるわけです。ですから、三十、五年、三十六年、三十七年間は計画はどんどん急速度に進むことになっているが、実績は初年度を全然上回っていない。毎年毎年足踏みしているということで、計画と実績が非常な大きな懸隔が出てしまったわけです。このまま放置して、たとえば終期の四十二年までいった場合においては、計画は約倍になって、作付は七万一千九ヘクタールにたって、原料は二百十四万七千トン、砂糖の出産量が三十万トンということになるが、今のような状態でいくと、この計画というものは、全く絵にかいたもちで終わってしまうわけです。ですから、この辺で国の計画の現状に合わした改訂ももちろんでございますが、北海道におけるこのような実績を伴わない八カ年計画というものは、農林省責任において直ちに改訂する必要があるのではないか。この点を私は大臣指摘しておきたいと思うわけです。なぜこの際こういうことを言うかというと、たとえば、昨年度は北海道においては九工場が操業しておるわけです。昨年二工場ふえまして、大日本製糖が本別、それからホクレンが第二工場を清水に建てたわけです。ですから九工場ですね。百八万トンの原料を九工場で分けると、一工場当たり平均すると大体十二万トンしか処理できないということになるのです。農林省の北海道における工場建設の適正基準というものは、少なくとも一工場当たり十四万七千トンの最低原料を確保させて、そうして国内における標準糖価であるところのキロ当たり百二十一円七十銭を維持するという、そういう計画で進んでおるが、実績が上がらないのに、政府や自民党の方のいろいろな理由で、工場だけどんどん建てさせて、工場がふえれば原料もふえるというようなでたらめな考え方の上に立ってやった結果が、一工場十二万トン、これでは非常に生産コストというものが高まって、おそらく十四万七千トン処理した場合と十二万トンしか処理しない場合においては、キロ当たり五円程度コストが違うと思うのです。こういう状態を放置して、われわれは反対でございますが、もしも砂糖の自由化を進めるというようなことになれば、国内においては、国際競争力を高めるというような方向と逆に、非常にコスト高のてん菜糖あるいはカンシャ糖だけが生産されて、ますます国際価格との間における差がついてくる、こういう結果になるわけです。ですから、こういう無計画な工場乱立を取りやめることにすれば、やはりこの際、計画を早急に改訂して、現実に即した計画の上に立って、今後北海道におけるてん菜工場の建設をどうしたらいいか、あるいは原料に比較して工場の数が多い傾向があるとすれば、これをどういうふうにして合理的な操業をやるかということについては、やはり北海道庁だけにまかしておかないで、農林省責任においてこの際長期計画の改訂の上に立って、北海道におけるビート工業の今後の問題を大臣責任で明らかにしてもらわなければならないと思うわけです。こういうことを整理していかなければ、昭和三十八年度のてん菜のいわゆる原料価格等の決定についてもまだ方針が立ってないでしょう。政府としては、年度内に新しい法律提案して、その成立を期して、それを根拠にして国内の甘味資源の生産態勢を進めるということを言っておられるようでありますが、まだその法律についても、いつごろ提案されるかというめどが全然ついてないじゃあないですか。われわれ社会党としては、近日中に、相当内容の雄渾な計画を盛り込んだ、いわゆる砂糖類の価格安定と甘味資源の生産振興法案を出しますが、どうも政策面を比較すると、社会党の政策よりも政府や自民党の政策が立ちおくれて、何か社会党に政策的に引きずられて、しょうがなしに歩いているようにしか考えられないわけですが、そういうことではいけないと思うのですよ。単に頭数だけを持っておる与党を基盤にして、政府が全く無為無策で日を送るということは、これはわれわれが見ても残念しごくな点ですからして、国内における甘味資源対策についても、もう少し今私が指摘したような点についてははっきりした態度をこの際示してもらいたいわけです。  特にもう一点、これに付随して問題になるは、昨年二工場の操業が行なわれたわけでございますが、あと四工場については昭和三十九年までに建設を認めるという条件がついておるわけです。そうしてこの四工場については、増産担当区域と称する一定の区域を三十九年度建設予定の会社については与えて、これをなわ張りにして増産担当区域として生産に励んでもらいたいというような約束をしておるわけでございますが、今日においても原料に比較して工場が多過ぎるという状態の中で、三十九年にまた四工場建てるとか、その前提に増産担当区域というようなものをいたずらに与えて、将来各生産者も会社側も迷惑をするようなことがあってはいかないと思う。だから、今後の北海道における計画の改訂の問題、工場の合理的な経営の問題、増産担当区域の取りやめの問題とか、こういう問題が処理されなければ、本年度作付するビートの作付に対しても、農民は全然意欲を燃やすことができないのじゃないかとわれわれは心配しておるわけです。  時間がないので、数項目もずっと並べて質問しましたが、大事な点を落とさないようにして、明らかにお答え願いたいと思います。忘れた点はまたお尋ねします。
  153. 重政誠之

    重政国務大臣 第一の御質問の、昭和三十四年に農林省で計画を立てたことは、すでに本年において実現をしておるのであるから、さらにこれは計画の改定が必要ではないかとい質問であります。これは計画といえば計画でありますが、ただ一応の見通しを立てておったのであると私は考えておるのであります。そうかっちりした計画でもなかったのではないかと思うのでありますが、いずれにしましても、砂糖の消費は非常に伸びておりますが、国内の甘味資源の開発と申しますか、原料砂糖類の生産というものは、あの当時見通しを立てたほど活発にいっていないというのは御指摘通り事実でございます。そこで、私といたしましては、さらに十分に検討いたしまして、当時の見通しの無理なところは十分に手直しをして、一定のめどをつけて増産を進めていきたい、こう考えておるわけであります。  それから第二のは、北海道のてん菜糖の問題につきましては、るる今お述べになりましたのが、大体事情はそういうことであります。ただ、私が感じておりますことは、生産の態勢が従来予期した通りに進んでいないということであります。そこで、私どもは、今回貿易自由化の態勢に即応いたしまして、国内の糖業並びにこれにつながる原料の生産に当たっておる農家諸君の所得の安定、企業の安定というものをやらなければならぬ。それがためには、まず生産態勢を充実して推進をするということ、それからまた企業につきましても、その製品である国内産の砂糖がある一定の標準以下になった場合においては、政府が買い上げの措置をとる。これはビート糖につきましても、ブドー糖につきましても、あるいはカンシャ糖につきましても同様な考えであります。さらに輸入糖につきましても、タリフ・クォータ・システムの制度をとる、そしてまた、将来輸入原糖が非常に暴落をするというような場合においては、今の消費税を関税に振りかえる、あるいはまた緊急関税の制度を運用する、こういうふうな骨子によって国内糖関係の企業並びに生産農家の安定をはかっていく、こういう態勢で考えておるわけであります。  生産の問題につきましては、従来北海道のビートの問題につきましては、畜産とてん菜の生産とを結びつける、あるいは土地改良をやる、さらには機械の利用によって手間を省いていくとかいうようなことで、三十八年度予算にもおおむね二十億前後の予算を計上いたしておるようなわけでありまして、これを強力に三十八年度からはやっていこう、こういう考えになっておるわけであります。  それから、北海道のビート糖製造工場の問題についてお触れになりましたが、これは三十九年度以降において、生産の状況等を考えて、工場の増設が可能な場合に工場を増設するということになっておるのであります。何でもかんでも三十九年度から四工場を新設するということにはなっておらないそうであります、私は、それは当然のことであろうと思うのであります。私の考えでは、何といたしましてもこのてん菜の増産をやる、そうして今現にあります九工場に対して原料の供給が計画通りにできると、それ以上の生産を上げて、初めてこれは新設の工場を認めていく、こういう行き方にいたしたいと考えておるのであります。さらにはまた、今の九工場もできるだけ企業の合理化をはかっていきたい、こういうふうに私は考えておるわけであります。  それから、第三の暖地ビートの問題でございますが、九州の新光製糖ですか、これが工場閉鎖を昨年の暮れいたしました。これは一つよくお考えおきをいただきたいと思いますことは、農林省におきましては、暖地ビートについては、御承知通りに試験研究所を設けて、はたしてこれが適当に可能に採算がとれてやっていけるものであるかどうかということは、今研究をいたしておる段階であります。青森の辺のフジ製糖の工場の設立はいたしましたが、御指摘通りに、研究の結果は、大体あの辺はいけるというめどが立っているわけでありますが、その他の地方におきましては、どういう品種をつくって、その含糖率が多い品種はこれであるというような、そういう栽培上のことについても、目下まだ研究をいたしておるのであります。しかるに、この新光製糖は、今のお話の六百トンですかの能力の工場をつくった。これは農林省がつくらしたわけではないことを一つ御認識をいただかなければならぬと思うのであります。何も農林省が注文してつくらしたものでも何でもない。やはり企業意欲によって、これは有望らしいから早いところつばをつけるというような意味もあったのではないかと思うのでありますが、私から考えれば、まだ見当がはっきり立たないのに六百トンの工場をつくるというのは、これはよほどのことであったろうと思うのでありますが、それがどうも生産の方とマッチしていかないので、昨年の暮れに閉鎖をいたしたようなわけであります。私といたしましては、工場の閉鎖はやむを得ないが、それがために、これを栽培している農家に損失を与えてはいかぬ、こういう見地からいたしまして、栽培農家に対しては、相当の犠牲を払って、そうして損失をかけないようにして、お話し通り岡山の横浜精糖の工場にこれを持ち込むことにいたしたわけであります。これらの問題については目下検討中でありまして、将来いかにこれを処理していくかということにつきまして、できるだけすみやかに結論を出したいと考えておる次第であります。
  154. 芳賀貢

    芳賀分科員 もう二点ばかり落ちているのですが、第一点は、岡山にある横浜精糖をまた鹿児島に移転させるという問題、これは実際そういうことをやるかやらぬかという点です。もう一点は、三十九年度以降建設可能であれば北海道において四工場設置するという御答弁ですが、それであれば、昨年以来、この四工場を認めるというそれぞれの会社に対しては、増産担当区域として一定の区域を推定して、各関係会社はこの上区域内に生産が高まるような財政的ないろんな努力をせいということを農林省が指示しているわけであります。それらの会社は、三十九年にはやれるということをあてにして、多いところでは何千万円という金を投じておると思いますが、そういうことを無方針にやらして、そうして三十九年あるいは四十年になっても実現不可能であるということになった場合、関係の会社にしても生産者にしても、非常に大きな迷惑をこうむると思う。だから、見通しがなければないで、そういろ無用な、会社だけの努力で増産担当区域を進めてやれなんということは、やはりこの際取りやめるなら取りやめるという、すっきりした態度で出直さないと、どうなるかわからぬということで、金をつぎ込んでも、あとからまた締めくくってやらなければならぬということになると、この点に対して毛計画の改定と、あわせて農林大臣としてどう指導するか。結局私の言っているのは、標準の十五万トン工場であってもなかなか国際価格との競争は不可能である中で、十二万トンしか原料を与えなければ五円コスト高になるわけです。農林省から出ておる資料によりますと、十五万トン処理の場合と十八万トン処理の場合では、十八万トンの場合にはキロ五円コスト・ダウンができる。さらに二十万トンと十五万トンを比較した場合には、キロ当たり十円コスト・ダウンができるという明細な資料が、食糧庁の方から私たちに提示されておるわけです。ですから、たとえば適正な原料の配分と企業努力によって、一キロ十円コストが違うとすれば、キロ十円だからばかにならぬですよ。それではキロ十円というものを一トンの原料代に置きかえた場合にどうなるかというと、二二・五%の歩どまりの場合には、一キロ十円のコストというものは、一トンについて千三百五十円という価格になるわけです。だから、農林省の適正な指導とか会社の企業努力によって、たとえば十円のコスト・ダウンが行なわれるとすれば、生産者に対して、現在の原料価格の一トン六千十五円よりもさらに千三百五十円原料代を引き上げても、現在の生産コストというものは上げなくても済む、そういうちゃんとした数字が出ているわけです。こういうことを重視した場合には、決して、わが国においてはてん菜糖の生産が将来とも永久に国際的に競争ができないというものではないと思うのです。工場の処理能力とか、あるいは企業努力とか、原料生産の努力とか、そういうものがうまく総合的に解決されれば、決して日本においてそういう国際競争力に耐え得ないというものではないということを、われわれは確信を持っておるわけですから、この点については、農林省としても、従来非常な批判がありますが、この際、はっきりした態度で明確な政策というものを立てて進んでもらいたい。そういうことでやれるかどうか、最後にお尋ねして、私のきょうの質問は終わります。
  155. 重政誠之

    重政国務大臣 今の岡山の横浜工場を南九州に移すかどうかということについては、検討いたしております。工場を移しても、それがまた独立ができないということであっては、これは全く私の責任になるわけでありますから、私といたしましては、十分にあらゆる方面から、原料の方面はもちろんのこと、あるいは工場採算の点等も十分に勘案をして、その後にこれは決定しなければならぬ問題と考えておりますので、目下検討いたしております。  それから、ただいまお述べになりました北海道のてん菜並びにビート糖製造の工場の問題でありますが、全くお話し通りであります。原料あるいは工場の合理化、生産の増強というようなことを総合的に考えますれば、いろいろ政府の政策と相待っていけばビート糖は独立ができるものであると私も考えておるわけであります。せっかくその方向でいろいろの施策を私は進めたいと考えておるわけであります。いずれこれは法律提案をするようにしたいと考えております。  増産担当区域の問題、これは北海道庁と十分に相談をいたして、改定の必要があれば改定をしなければならぬと思うのでありますが、何といってもこれは原料の増産でありますから、その増産について各社が努力をせられることも望ましいことであり、政府政府で努力し、また北海道庁は北海道庁で十分に努力して、三者が一体となって進めるべきものである、こういうふうに私は考えております。
  156. 中村三之丞

  157. 田口誠治

    田口(誠)分科員 時間を制約されましたので、ちょっと質問の内容を変えまして、ごく軽いものをお聞きいたしたいと思います。  その前に、新産業都市の指定基準を経済企画庁の場でやるときに、当然農林省からも来ていただいていろいろ御説明を伺わなければならぬ面もございますが、そのときには大臣はおそらくおいでにならないと思いますので、若干ここで大臣の抱負だけお聞きをしておきたいと思います。と申しますのは、いずれにいたしましても、農村問題に対して、政府にしても、与党にしても、野党にしても、いろいろ問題を提起しておりますけれども日本の農村を開発するということは非常に困難性があるわけなんです。従って、政府といたしましても、新産業都市の指定あるいは低開発地域の指定その他によって、農村の所得を都市の労働者とのバランスをとるように、また農村におけるところのいろいろな隘路をこの面で解消するようにという心づかいはされておりますけれども、一体今日までその点についてどういう進め方をされてきておるのか、その経過をまず承っておきたいし、そうして大臣がその問題に対して将来への抱負があれば承って、私、次の質問に移りたいと思います。
  158. 重政誠之

    重政国務大臣 現在までのところでは、各府県におきまして新産業都市の指定を受けたいという地域について、資料をもって経済企画庁の方に説明をいたしておる段階でございます。
  159. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 先生御承知のように、新産業都市並びに後進地域の開発の問題につきましては、経済企画庁が中心になりまして、各省と折衝をして今後きめていくということになっておる次第でございまして、今大臣から仰せの通りでございますが、農林省といたしましては、新しく後進地域に産業が出て参るということによりまして、農業者のうちでその産業に吸収される者があるということが非常に重要な問題でございますので、そういう労働関係の調整の問題、あるいは新しく都市ができることによりまして、そこで消費が起こって参る、そういうことによりまして、農産物の消費が高度化されて出て参るということがございますので、この両方の面から、これに十分注意しながら対処していくということにいたしておる次第でございます。
  160. 田口誠治

    田口(誠)分科員 法を実施する」において、それぞれの担当省がいろいろ調査に乗り出しておるのですが、おそらく農林省の方でも調査に乗り出しておられると思います。その経緯について承っておきたいと思います。なければない、あるならあるてん……。
  161. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 現在経済企画庁を中心にしてやっておりまして、農林省といたしましては、むしろ受け身の立場と申しますか、そういう立場にございますので、必要なところには一緒に調査に参っておりますが、農林省から進んでやるというところまではいたしてございません。
  162. 田口誠治

    田口(誠)分科員 私から申しげなくとも御存じの通り、経済企画庁が主役でやるのですけれども、これはやはり七省に関係をいたしておりますので、それで、経済企画庁からそれぞれ関係の省の方に調査の依頼なり、いろいろ協力の要請をいたしておるはずなのであります。従って、それぞれの竹ではそれぞれの立場で調査に入っておるはずなのです。それで、私は、農林省としてはどの程度この問題に取り組んでおられるかということをまず承っておきたいと思います。
  163. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 農林省の方としましては、官房企画室というものがございまして、そこにその方の専任をいたしておる調査官がおりまして、それが中心になりまして、一緒に調査に行く場合もございますし、あるいは必要とあらば独自で出かける、こういうふうなことをいたしております。
  164. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これ以上内容を追及してお聞きしても、きょうの場合は具体的な答弁はいただけぬようでありますので、これはいずれ経済企画庁の場において、農林省の方からもおいでをいただいて十分にお聞きをしたい面もあろうと思いますので、一つ今から準備をしておいていただきたいと思います。それから農林大臣もやはり農業関係の専門政治家でございますから、こういう面には大きく抱負も持っておられると思いましたけれども、まことに短い言葉で尽きる答弁をいただいたわけでありますが、どうか、今度経済企画庁の場で私が質問申し上げるときには、もし大臣がおいでにならなくとも、大臣の抱負もあわせて担当の係官が答弁のできるような準備をしておいていただきたい。それでよろしいですか。
  165. 重政誠之

    重政国務大臣 承知いたしました。私の抱負というほどのこともないのでありますが、私は、この新産業都市ができることにつきましては、そういうような工業地帯と申しますか、第二次、第三次の都市がつくられることは大局から見て賛成であります。それがために農村の方面に非常な悪い影響を生ずるとは考えておりません。むろん、個々の場合におきしましてはいろいろなそれぞれの影響はあると思いますが、これらは調整のつく問題である、対極的にはやはりけっこうなことである、こういうふうに考えております。
  166. 田口誠治

    田口(誠)分科員 この問題につきましては、先ほど来申しておりますように、経済企画庁の場で質問を申し上げますので、一つ十分に今日までの経緯をまとめておいていただきたいと思います。  それから次へ移ります。次は、小さな問題でございまするが、農業共済団体関係でございます。そこでまず第一に、御質問申し上げたいことは、連合会の職員の待遇の関係でございます。この点につきましては、昭和三十六年に千五百円のアップをしてもらったことにおいて一万五千五百四十四円ベースということに相なっておるわけでございまするが、これは国家公務員の給与と比較いたしましても、一万一千円ほど少ないわけです。従って、昨年もこの問題を取り上げましてそうしていろいろ質疑応答の中において次の待遇改善を行なうときにおいては、一気に国家公務員なり地方公務員並みにまで持っていくという約束はできないけれども、やはり相当この方面へ力を入れ、予算を盛って、待遇の改善をいたしたいという内容の答弁をいただいてありまするが、ちょうど明日国家公務員の給与の問題の審議に入るわけでありまするし、人事院の勧告なり、政府から出された国家公務員の賃金のベース・アップの内容は十分にお知りになっておると思いまするが、これと関連をして、この連合会の職員の場合はどのような予算措置がとられておるか、この点をまず承りたいと思います。
  167. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 農業共済組合連合会の職員の待遇の改善につきましては、年々その改善をはかって参っておるのでございますが、来年度におきましては、まず給与のベース・アップにつきましては、昨年十月、現在の給与に比較しまして連合会職員の給与を九・九%、約一〇%引き上げることが一つでございます。そのために予算といたしましては、前年度より月額千四百二十円の増加でございます。このほかに、従来共済団体の職員につきましては期末手当がなかったのでございますが、これに対しまして来年度から新たに一・二ヵ月分に相当する期末手当を加えるということにいたしまして、その期末手当の支給に必要な予算といたしましては、四千九百七十二万四千円の予算を計上いたしました。
  168. 田口誠治

    田口(誠)分科員 期末手当の一・二というのは、数字は違っておりませんか。
  169. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 一・二に相違ございません。
  170. 田口誠治

    田口(誠)分科員 ただいまお聞きいたしますと、去年のということは、三十七年の十月ということですね。
  171. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 さようでございます。公務員のベース・アップと同時期で、十月からということでございます。
  172. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そうしますと、三十七年の十月より九・九%易のベース・アップということになると、千五百円ほどのベース・アップになる。現在のベースに加えますと、大体一万七千円ベースということになるわけです。そこで、この二万七千円ベース取っておる人はどういう人が対象かといえば、年令は三十五才か三十六才が平均になると思います。それから扶養家族は大体三人ぐらいだろうと思います。この人が一万七千円の賃金で食える賃金ということはなかなか言えないと思うのですが、昨年こういう点について言葉のやりとりがしてありましたので、私は多く申し上げませんけれども、やはり賃金というものの労働の報酬という面からいきましても、民間給与との格差の是正という面からいきましても、公務員の給与との比較からいっても、これはあまりにも少な過ぎるのではないか、かように考えておるわけなんです。こういう点から、九・九%という数字は、大蔵省の予算の面でこれ以上いかなかったのか、あなた方の給与に対する考え方が僕の考え方と違っておるのか、その点を一つ御説明いただきたいと思うのです。
  173. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 御指摘のありましたように、大体連合会の職員の給与ベースを地方公務員県段階の職員に比較いたしますと、現状においてやや劣っておりまナが、これは漸次改善しておりまして、先ほどもお話がありましたように、特に千五百円のべース・アップを加えますとか、今回のベース・アップで月額千四百二十円を加えるというようなことによりまして漸次改善をしておるのでございます。そのほかに、来年度からは、全く新規のものとしまして期末手当を加えるということにいたしまして、少しでも改善しようということでやって参っておるのでございます。
  174. 田口誠治

    田口(誠)分科員 期末手当の関係は、国家公務員の場合もこれは勧告にもございましたし、そういうことで右へならえということになろうと思うのですが、三十五才、三十六才になって、扶養家旅三人かかえておって今度ベース・アップをしてもらって給与が一万七千円程度のものでは、これはなかなか生活ができるものではありませんし、これは国家公務員ではございませんので、国家公務員法の一条に盛られておるような、能率を発揮して、環境のいいところで十分農民のサービスをするんだということは、この賃金ではなかなかできないと思うのです。こういうことから、九・九%というようなことではあまりにも少な過ぎるので、とにかく二万一千円から違うんだから、ここでやはり思い切った予算をとってもらわなければ、これは徐々に改善をしていくのでいつかは追いつくだろうということですけれども、しからば、七・一%国家公務員が上がるのに、九・九%上がって、二・八%ずつ上がっていくとしまして、これはいつになったら地方公務員なり国家公務員に追いつけるかということです。こんなことは承服のできる内容のものではないわけなんです。従って、これ以上の待遇を改善する方法は農業共済組合連合会の職員にはできないものかどうかということなんです。できないということになると、やはり各県単位にいろいろとめんどうを見なくてはならない。めんどうを見るには、ほかに予算がないから、農民負担になる。こういうことで、農民も、所得が他の産業の労働者と比較して非常に低いわけなんで、その中でかかえておる農業共済団体の職員の給与まで負担していかなければならないとい現状を非常に困っておるわけです。従って、こういうようなことを政府の方では十分にお考えになっておるのかどうかということが疑問に思えるわけなんですが、この辺どうなんですか。
  175. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 連合会職員の給与の改善につきましては、今後とも十分努力を要するのではないかと考えておりますが、一方におきまして、共済団体の職員の給与をほかの農業団体であります農協系統などに比較しますと、必ずしも劣るというわけではなくて、むしろ若干いいという状態にはあるのでございます。それらも勘案しまして、現状においてはまだ十分とは必ずしも申し上げられませんが、今後さらに一そう改善するように努力いたしたいと考えております。
  176. 田口誠治

    田口(誠)分科員 質問をすれば、十分ではないから努力するというお答えは、これは常識的なんです。常識的な答弁が繰り返されてきて、今度九・九%アップしてもらっても、今日国家公務員なり地方公務員と二万一千円も二千円も開きがあるんだから、この解消を将来どういう目標でしようとされておるのか、これが私は聞きたいわけなんです。一気に今年国家公務員並みにせよとか地方公務員並みにせよということは、むずかしいことは知っておりますから、それは申し上げませんけれども、あまりにも差があるんだから、いつになったらここまでいくんだという何か計画なり目標がなかったら、これはいけないと思うのです。ただ努力をしますということは、おそらくこの九・九%も努力の結晶だと思うのです。努力の結晶がわずか九・九%のベース・アップというようなことでは、これはなかなか納得のいけるものではないのです。勤めておる連合会の職員の皆さん方は火のつくような催促で、何とか私どもの待遇を地方公務員に近いところに早く持っていってもらいたいという、非常に強い要望があるのですから、もう少し計画的な答弁をしていただかなくては納得できないので、もう一度この点について御答弁をいただきたいと思います。
  177. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 しばしばお話がありますように、地方公務員の給与ベースというものは、農業共済団体の仕事の性格からいたしまして、一つの目安であろうと思います。もう一つ考えなければなりませんのは、共済団体は、必ずしも必須事業だけではなくて、任意共済事業を一部やっておるのであります。それらの関係もありまして、実際の給与は——ここで計算しておりますのは、予算上における単価を申し上げておるのでございますが、その任意関係の仕事もありますので、これは農協系統なんかと同様の仕事でございますが、それらの関係から、若干そちらの関係の給与も出ておるわけであります。これは職員の定数に関係があるわけであります。そういった関係もございまして、他の農業団体とのバランス等も考えまして実際に行なっておるわけでございますが、今後の目標としては、一応地方公務員のベースというものが一つの目標であると考えております。
  178. 田口誠治

    田口(誠)分科員 ただいま申し上げておる金額も、これは定数があるのだから、定数にかけて助成していただくわけなんです。そして実際的には現場にいきますと、この定数だけでは作業ができないわけです。従って、今申し上げておるところの給与そのものは、また多くの人に割ってやらなくてはならないということなんです。そういうことになりますと、団体負担というものは非常に多くなりまして、そういう点で、私申し上げておる以上になお苦痛なものがあるのでありまして、私は、この定数というものも、この際お考え願えないかということを申し上げたいと思うわけなんですが、この定数については何かお考えいただいておりますか。
  179. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 共済団体の職員の実数につきましては、いろいろ調査もいたしておりますが、漸次減る傾向もあるのでございます。しかしながら、連合会の職員の定数につきましては、来年度におきましては現状維持で、横ばいの定数でやっておるわけでございます。
  180. 田口誠治

    田口(誠)分科員 私の調査したのと、農林省の方で調査されておるのと数字的に相違があるかもわかりませんが、私は、定数以上にやはり事務員を使わなければならない、使っておる、こういう数字を持っておるのですが、あなたの方ではどういうことになっておりますか。
  181. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 どういう御調査に基づくかわかりませんが、私どもの方で一応報告を徴しておりますところによりますと、ほぼ予算定員と実員数が見合っておる、あるいは若干それは人事の都合等もありますので、予算定員に余裕ができている場合があるのじゃないか、かように考えております。
  182. 田口誠治

    田口(誠)分科員 今の御答弁の内容ですが、これは調査される場合には、ただ数字の報告を受けるのですか、これは二本受けるのですか。こちらの方で定数をきめてある分と、それから実際に向こうで作業をしておる数字とやはり分けて報告を受けるようになっておるのか、ただこちらの方で与えてある定数の報告だけ受けておるのか、その調査の仕方を伺いたいと思います。ちょっと私、数字が違っておりますから参考にいたしたいと思います。
  183. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 共済団体から徴しております報告は実員数、共済団体で現に雇っております職員の数の実員数を報告してもらっておるのでございます。予算定員の方は、これは予算の配賦上の定員でございまして、共済団体にその定員の範囲内で人を使えということをきめておるわけではございません。補助金の配賦の基礎になる定員でございますので、それはこちらから定員分を配賦するわけでございます。そういう関係になっております。
  184. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そうすると、たとえば定数は八人だが、実際には十人使っておるのだという場合には、十人というように予算措置をされるのか、やはり前年通りの八人で予算措置をされるのか、こういう点はどういうようになっておりますか。
  185. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 予算の配賦の仕方は、これは人件費だけではございませんで、事務費等もございますが、大体管内の共済組合の数とか、その他いろいろな要素を入れまして予算の配布を行なっておるのでございます。実員の方につきましては、必ずしも予算の範囲内にとどまるものではなくて、任意共済の事業等の定数は定員でなくて、団体自体で別に人を雇っておるとい関係になっておるのでございます。
  186. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これは、私は全く知らずに聞くのですが、期末手当の関係は、先ほど御答弁のありましたような内容は若干知っておりましたけれども、通勤手当は、この職員の場合はどういうようになっておりますか。
  187. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 通勤手当は予算の上の基礎に入っておりません。
  188. 田口誠治

    田口(誠)分科員 その点については、当然このごろはどの職場でも通勤手当というのはもう常識的なものですから、私は通勤手当もこの際予算に組む必要があると思うのですが、その点のお考え方はどうなんですか。今年は今年としまして、将来のものとして一つ御答弁をいただきたい。
  189. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 今まで申し上げましたのは、予算の配賦についての基礎でございますが、現実に各連合会がどういうふうに職員の給与を定めていくかということは、必ずしも政府の指示するところではないのでございます。これは一定の給与規程を当該連合会の総会等にかけまして定めて、給与しておるのでございます。その制度は、必ずしも公務員の一々の制度とマッチしているとはきまっていないわけでございます。ただ通勤手当につきましては、公務員については見られておりますので、その問題については今後も検討させていただきたい、かように考えます。
  190. 田口誠治

    田口(誠)分科員 通勤手当は今ついておりませんが、通勤手当を払っておるところと払ってないところとあるから、私はその点がわからないからお聞きしたら、政府としての予算措置はないということなんです。従って、政府としても、通勤手当の予算措置を考慮してもらう必要がある。こういうことを申し上げておるのですが、そういう考え方の上に立って、今後の予算措置について考慮をお願いいたしたいと思いますので、この点はお願いをいたしておきます。  なお、こういう一切のことにつきましては、それぞれの団体の総会等で決議をされて、政府の方へ反映をされておると思うのですが、私が申し上げるだけでなしに、今までに団体として要請をいたしておると思うのですが、その点どうなんですか。
  191. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 昨年末等の来年度予算を編成する当時などにおきましては、各連合会あるいは職員団体等からそういう御要望がいろいろ出て参りました。大体給与ベースの改定と期末手当をつけてくれという御要望が参っております。
  192. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そこで待遇改善関係はこれでやめますが、農業共済団体の事務費でございます。これは今日のところどの程度助成されておるのですか。これは何パーセントに該当するか、こういうように承りたい。
  193. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 共済団体の事務費負担金の来年度の額は約四十九億円でございます。
  194. 田口誠治

    田口(誠)分科員 実際にこの事務費の要る金額の何%に該当するものを国の方で見ていただいてあるかということを承っておるのです。
  195. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 ちょっと正確な資料を手元に持っておりませんが、大体実際に必要としておる額と申しますか、実際に支出しておる額の三分の二くらいだったと記憶いたしております。これはもちろん任意共済等からもその財源が出ておるのでございます。
  196. 田口誠治

    田口(誠)分科員 私は、団体の支出を軽減させるためにまず事務費を全額国庫負担にしてもらいたいということをお願いしたい。この点について、きょうは確実な数字をお持ち合わせでないようでございますので、それだけやはりこの問題に対して関心が薄いと思うのですが、どうか今年全国的な調査をしていただきまして、来年度には全額事務費の国庫負担とい考え方で予算措置をお願いいたしたいと思います。
  197. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 事務費の補助の充実につきましても、さらに努力をいたしたい、さように考えます。
  198. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それから今日まで各県からいろいろと要請がきておると思いまするが、共済連絡員の、損害評価員の手当です。この点もやはり相当増額をしてもらわなくてはならないと思うのですが、現在あなたの方で把握されておるのはどの程度になっておりますか。
  199. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 年額八百円でございます。
  200. 田口誠治

    田口(誠)分科員 一括はわかりますが、これも何%に該当するものか、あるいは何人でどれだけずつこの手当を支給しておるのか。この手当の増額というのは相当強く各県から要望されておることでございますので、あえてこの点を再答弁をお願いいたしたいと思います。
  201. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 大体損害評価員の定員といたしましては四万五千六百五十人と見まして、年額八百円の三分の二補助を考えておるわけでございますが、ただ、これは実際に損害が出た場合に評価に出てもらうのでございまして、その辺に相当な繁閑があるわけでございます。それらについては運用上それぞれの団体におきまして相当な工夫をやっていただいているはずでございます。
  202. 田口誠治

    田口(誠)分科員 時間がありませんので、私一つだけ伺っておきたいと思います。  今農村の実態を見ましても、岐阜県の実態を見ましても、相当に水の足りないところがあるわけです。旱魃するところがあるわけです。従って、用水を引いておっても、砂利作業をする請負師が深掘りをし過ぎて用水の水を漏らしてしまって、入る水が四分の一も五分の一も出てこないというような実態にありますし、まあこれは建設省の方でやってもらえばやってもらえますが、私は、いろいろ水害その他がある現状からいきまして、中国などでやっておりますように、井戸を掘って、そうしてポンプによって用水をつくるというようなことも考える必要があると思いますので、私は知らないので聞くのですが、現在井戸を掘ってポンプを備えるというような場合には、これは農林省の方ではどの程度の助成がしてもらえてあるのか、承りたいと思います。
  203. 任田新治

    任田政府委員 旱魃に備えまして用水不足を補うということでいろいろの施設が工夫されているわけでありますが、ただいまのお話は地下水を利用するという場合でございます。規模によっていろいろ差がございますが、必ずしも一ヵ所に大きなものをつくることのできない地層を持っている場合がございますので、一がいには申せませんが、おおむねこのような場合は団体営の土地改良事業として実施するわけでございまして、補助といたしましては、その内容によりまして大体四割の補助をするということになっております。また、地域全般としまして、この地域がはたして地下水に恵まれているかどうかという問題につきましては、基本的な調査も全国数ヵ所で実施をしているわけでございます。
  204. 田口誠治

    田口(誠)分科員 もちろんこれは地下水でありますから、専門的な調査が必要でございますけれども、この四割という補助、これは私はもっと高いように把握しておったのですが、この四割というのは平均なんですか、四割ということですか、どうなんですか。
  205. 任田新治

    任田政府委員 これは規模の大小によっての問題でございまして、ただいま申し上げましたのは団体営の補助事業で、これは四割でございます。
  206. 田口誠治

    田口(誠)分科員 わからないのでくどくお聞きいたしますが、規模によって相違はあろうと思いますが、必要に応じてはこの四割にはこだわらぬということなんですか。四割は固定したものなんですか。
  207. 任田新治

    任田政府委員 それはその規模によって固定しておるわけであります。
  208. 田口誠治

    田口(誠)分科員 その点につきましては、私はいっか直接お伺いをして、そしてその規模も伺い、それから助成の割合も伺いたいと思いまするが、今全国的にこうした問題が要望されておりまするので、私はやはりこの助成の割合もこの際ふやしてもらうような法の——これは法によってですか。この基準は何によってきめられておるのですか。
  209. 任田新治

    任田政府委員 予算措置でございます。
  210. 田口誠治

    田口(誠)分科員 予算措置ということは、ただ農林省農地局として予算要求する場合に、今年はこの程度要るのだから四割としてこれだけ要求しようという程度のことであって、別に文章できまったものでないのですね。
  211. 任田新治

    任田政府委員 それぞれの規模、たとえば受益面積、別にそれぞれの規模がきまっておりまして、それに対する補助規定ができ上がっております。それに基づいておるわけであります。
  212. 田口誠治

    田口(誠)分科員 私そういうように把握しておりましたら、今までの答弁でいきますと、どうも何にも基づいておらぬような受け取り方をいたしましたので、くどい質問になりましたが、やはりこの面につきましては、農林水産の方では優秀な専門の委員の方々がお見えになって、地方からそれぞれ要求を受けておられると思いますので、如才なくこの点には取り組んでいただけると思います。また、私は私なりに直接あなたのところに伺って、お願いもいたしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。いろいろ時間も考慮してのことでございますが、これで質問を終わります。
  213. 中村三之丞

    中村主査代理 玉置一徳君。
  214. 玉置一徳

    玉置分科員 農林大臣にお伺いいたしたいと思います。  農業基本法と農村の現状についてまずお伺いをするのですが、今年のグリーン・レポートにおきましても、順調な成長は遂げておるとは言いながら、農業は他産業との格差が一向に狭まっておらないというのが、三十六年度、三十七年度、どちらも年次報告においては同じでありまして、農業基本法にいう他産業との格差を解消するとい農業基本法の悲願は一体いつになったら遂げることができるのか。ヨーロッパを見ましても、アメリカを見ましても、あのくらい経営規模を拡大いたしましても、イギリスを除きまして、どこも一と二との差は依然として続いておる。今からあわてて十何年かかって日本農業を再編成されようとせられても、今の農業構造改善事業のような手では、あと百年たってもおそらく格差が縮まらぬ。いや、ますます拡大すると見るのが当然じゃないか。あれは一体われわれ農業の問題に取り組む者の悲願であるのか、現実に法律の前文として書くだけの信憑性があるのかないのか、あれは間違ったのだから、この文章だけは取り消すとおっしゃるかどうか、一つ所見を伺いたいと思います。
  215. 重政誠之

    重政国務大臣 これは百年たってもできぬというふうに今から断定するわけにも参りませんが、御質問なさる方もよくおわかりになっておることであろうと思うのでありまして、私はいつでも言うのでありますが、工業自体の中だって格差があるじゃないか。航空事業と鉄鋼業、石油化学、繊維化学、みな時代とともに格差があるじゃないか。農業は、御承知通りに自然的条件、社会的条件、経済的条件が第二、第三次産業と異なっておることも、これは御承知通りなのです。   〔主査退席、仮谷主査代理着席〕 これは天候に支配され、片方は工場生産である。これはいろいろ違っておるのでありますから、そこで、いつになったらそれが全部解消ができるか言えと私に言われても、なかなかこれは私もそういうことを勇敢に言うわけに参らないわけであります。私といたしましては、農業基本法に定められておる諸条項を忠実にすみやかに具現をいたしまして、そうしてできるだけこの格差を縮めていく、こういう方向にいくよりほかはない、そういう決意でおるわけであります。
  216. 玉置一徳

    玉置分科員 この問題にあまりとらわれてもどうかと思いますので、せっかく一つ諸条件の整備に邁進していただくことをお願いをして次に移りたいと思います。  そこで、当今一番問題になっておりますのは、新学卒者で農業に就業する者の率が、年次報告を見ましても年々減少しておる。その上になお在村の農業に従事しておった若い方々が離農しておるという数も決して少なくない。このままいきますと、いわゆる農業従事者の質的な構成は非常に心配するあれがある。これも土地基盤整備なりあるいは農業近代化、機械化がこれに並行して参りますと、問題はおのずから違った問題になるのでありますが、現在のところ、そういう問題が並行していない現状におきまして、なだれのごときこういう人口移動が起こることは、随所に手不足その他が起こりまして、せっかくの農業基本法の意気込みにかかわらず、非常に大きな問題が各所に起こっておる。青年諸君が農村から離脱するという問題は大問題であり、しかもお嫁さんのき手も少ないということは農林大臣も聞いておいでになると思いますが、これは大問題なのです。一体これはどういう原因で青年諸君が農村に希望なり関心を持たないようになったのか、魅力を持たないようになったのか、どういうようにお思いになりますか、これに対してはどういう手をお打ちになるか、お伺いしたい。
  217. 重政誠之

    重政国務大臣 これは、何と申しましても第一の原因は、農業所得が他の産業に比して劣っておるということでありましょう。しかし、グリーン・レポートにも申し上げております通りに、農業の所得は十年計画でいっております程度にはふえておるわけでありますが、しかし、他の産業の方が急速に成長をいたしました関係上、どうもバランスが合っておらぬというのが実情であると思うのであります。何と申しましても、所得が大きくなるということが私は非常に大きな魅力であると思うのであります。  それから第二の問題は、まあいろいろ原因は想像いたしますとあると思うのでありますが、これは私どもが少し考えなければならぬ点もあると思うのであります。これは非常な言い過ぎになるかもわかりません、あるいはまたラフな考えであるかもわかりませんが、率直に申しますと、農業の将来というものがあまりに暗いのだというふうな印象を若い者に、しかもこれは農業の方の関係についてはベテランと称せられるような方がどこへ行ってもそういうことを言われる。これが予算をとったりあるいは補助金をよけいとるために、その方面に言われることならまことにもっともなことであると思うのでありますが、若い青年諸君の前でそういうことを言われる。この場合でも、現状において現在の農業の体質をそのままにしておいて、決して将来は明るいものとは私は考えない。しかし、体質の改善はすでに着手をして、われわれ政治家もまた農村に関係のある者も一致して体質の改善をやらんとし、その実行をやりつつあるのであります。今まであまり他産業あるいは科学というようなものから見て、農業が進歩しない、取り残されておったとすればするほど、将来は明るいのじゃないかとい考えも私はいたすのであります。でありますから、必要以上に農業が前途は暗いというようなことはお互いに私どもは慎しまなければならぬ。そうして前向きに大いに体質を改善して農業の所得もふやしていく方向にいかなければならぬのではないかと、これは私自身がそう思っておるわけであります。でありますから、確かに御指摘になりました通りに、農村の若い者が農業に従事をしないで他の方面、第二次、第三次の方面に流れていくということは非常に重視を私もいたしておるわけでありますが、これは何も中学校を卒業した、あるいは高等学校を卒業したような者全部が全部農村に残ってもらう必要はないと思う。次代をになうこれらの若手で、必要な程度の者はとどまってもらいたい、こう思うのであります。それには、今申しましたようなことを私ども考え、そうしてまた体質改善によって農業の所得をふやしていく、同時に農業についての心配はあまりしない。どうも前途まっ暗だというような心配をさせないようにやる必要がある。従って、現在も各府県においてやっております経営伝習農場というようなものを十分に私は充実をして、これを活用して、新しい農業経営に必要な知識を十分に与え、また経験も与える。果樹園造成をやればこうなる、畜産の経営をすればこうなる、農業機械はこういうふうに運用すべきものであり、また機械についての知識も与えるというようなことを実行して参れば、私は非常に違ってくるのではないかというふうな感じがいたしております。
  218. 玉置一徳

    玉置分科員 きょうは別にあげ足をとる会ではありませんし、ともにこの分科会心配をし合うわけですから、少々放言でもけっこうでございます。一つ思われるように率直に御返答いただければ非常にしあわせだ、こう思うのであります。  そこで今のお話は、一番問題はやはり所得が少ない、もうからぬということを青年諸君は知っていますから来ないんだ。こういうことですが、後段のあまり心配するような暗い話をしないでくれ、これは一応外に置いておきまして、暗いことを知っておるから来ないのです。問題は、暗いと言うとまた語弊がありますが、所得があまり多くない。農業所得は思っておる通りにいっておるのだけれども、よその産業の所得がよけい伸びたのだと、これは同じことなんで、結局言い回し方だけなんでございますが、先ほど申しましたように、ヨーロッパの農業あるいはアメリカの農業を見れば、あのくらい経営規模を拡大し、あのくらい経営面積を——おそらく日本がこれからやっても、十年たっても追いつかぬだろうというくらい拡大をされておっても、なお工業所得の方がさらに進んでおるから、一と二の開きがあるのだということを申し上げておるわけです。そこで問題は、そういう意味から言いまして、今大臣のおっしゃるようにあと三十年、四十年たって、いろんな経営の諸条件が整って参りましたときには、人が少ないから、少ない者が相当な大きな所得を得るだろうということは、そのときに、減っておった方が明るくなるのだということはあり得るかもわかりませんけれども、そういう数字は書けますけれども、その間しんぼうしておれというのもまたえげつない話でして、とお思いになると思うのですが、私は原始産業の、しかも非常に少なくなってくる専業農家にがんばってくれる青年諸君に希望を与えるのは違った形でなければいかぬ。結局、その人間を政府がある意味ではまるがかえすると申しますか、イギリスの農業で、よく農民政府がまるがかえしているという言い方を申しますが、価格の政策にしろ、あるいは金融の政策にしろ、人によってそれをぼつぼつ考えていいのではないか。食糧自給のために、あと三十年、五十年必ずしも明るいような、あるいは突拍子もない投機的な明るさを持たない農業に、ほんとうに従事してくれる青年諸君のために、金融は年二分、五十年、あるいは年一分でもよろしいというような、酪農でも十頭、二十頭人的担保で貸してあげるというような思い切った施策を一つ講じることによって、農業青年諸君の希望を満たし、それがひいては真の日本農業構造改善をやっていくのだというような施策をお考えになる必要があるのではないだろうか、こういうように思うのですが、ことしをどうというのではございません。将来にわたってそういうようにお考えになる必要があるのではないかということを、青年諸君の農村離村の多い現状にかんがみましてつくづく思うがゆえに、一つ農林大臣のお気持ちをお聞かせいただきたいと思うのです。
  219. 重政誠之

    重政国務大臣 私は、現在のようにいわゆる専業農家、兼業農家、第二種兼業というふうに内容が分かれて参っております現状で、将来の農政はこれらの段階のある経営、すなわち農家においてどういう取り扱いをしていくべきであるか、どれをどういう目標でいくべきであるかということが今後の問題であると実は思っておったのです。   〔仮谷主査代理退席、主査着席〕  ただいま青壮年の問題についての一つの示唆を与えられたわけでございまして私もそれを十分拝聴いたしましたので、十分に考えてみたいと思います。
  220. 玉置一徳

    玉置分科員 と申しますのは、ことし農林大臣に就任以来農村金利について非常に御苦心をいただきまして、その額は十分とは言えませんけれども、三分五厘のともかく初めての芽を出していただいたということにつきましては、日本農民が非常にありがたく思っております。そこで問題は、畜産の導入には幾らだとか、草地改良に何割の補助だとか、全部物について今までは補助金がついて回っております。一・五頭平均の酪農じゃだめだ、十頭平均でなければだめだということはわかりきって、しかも望ましいのだと言いながら、あるいはそういう方向に金融をなるべく指向したいと思っておるともおっしゃっておりますけれども、もうぼつぼつ人によって、真に日本農業のしんばりになってくれる人間だ、青年だ、そういうものに思いきって集中し、金利を安くし長期にしてやるという金融、人による金融というものも二段がまえで考えていっていいんじゃないだろうかということを、私去年ぐらいからつくづく考えておりましたので、きょう大臣にお願いをしておきたい。いつかこういう構想をお打ち出しいただくことが構造改善になるんじゃないだろうか。せっかく構造改善事業費として配っていただく金が、それが物によって行っておる関係上、真の政府考えておる構造改善として基盤の非常に強い農家経営ができるのにはまだ一歩というような感じがする。ついては、こういう手を片方からお打ちいただくことが、早く所望のようなところへいくんじゃないだろうかというふうに考えますがゆえに、この際お願いを申し上げたい、こう思うのであります。  そこで次に、農業の構造改善という言葉が盛んに使われておりますが、これは実際はむずかしい問題じゃないか、何もかにも構造改善という使い方をしておりますが、日本の米麦主体の農業を、畜産もしくは果樹園芸その他のいわゆるこのごろおっしゃっておる成長財にむかって体質改善していくのだ、これも日本農業の構造改善と言えると思います。あるいは手労働その他のあれを機械化された、近代化された農業にかえるのだということも構造改善だろうと思います。先ほども申しましたが、農家経営を主体に見た構造改善は大体三つくらいに把握できるんじゃないか。そこで政府がよくおっしゃいます、日本農業を今までの米麦を主体としたものではなくて、畜産その他果樹園芸等の高等園芸に構造を改善していくのだ、こういうお話がございます。これもやり方によっては私は一つ考え方で、考えというよりも必要なことだと思うのであります。かつてデンマークは、穀類のヨーロッパにおける最高の生産性を持っておった繁栄した農業国でありましたときに、十年向こうを見通して畜産に切りかえた。それがまた国民学校というものをこしらえてその中核体にしたというようなところを見ましても、私は、これは相当農家の方々全部に政府もこの考え方を行き渡らせ、また、先ほど申し上げたようないろいろな助成金融の施策も、そういうところに非常に有利に持っていくことによって、みんなが相ともに呼応してやっていけるような方面を探さなければいかぬ。今のやり方では、乳価の問題一つでも、わっしょわっしょ言われるような形では、どこかが欠けておるんじゃないかと思うのですが、これについての御所見を承りたい、こう思うのであります。
  221. 重政誠之

    重政国務大臣 構造改善は、確かにただいまお話しになりました通りに、土地の基盤を整備いたしまして機械化農業を進めるというのも重要な構造改善の目標であります。それと動じに、成長部門の果樹園芸あるいは畜産も農業経営に取り入れていくということも、お述べになりました通りに構造改善の重要な一つの部門であります。畜産につきましては、これは非常にむずかしい問題ではありますが、今のままではやれない。少し遠い将来を考えてみますと、このままではな、なかいかない、こう考えておるのであります。私がしばしば飼料問題について、これを重視いたしまして、何とか現在の飼料の実態を変えていかなければならぬ。どうしても乳牛等につきましては草で飼育するということがその中心にならなければならぬということを私がしばしば申しておるのでありますが、これは何とかして私もやり遂げたい、こういうふうに考えておる次第であります。どうも乳価の問題もいろいろめんどうな問題が起こりますが、とにかくこれは畜産に限らないのでありますが、農家の所得を価格問題一本で片づけていこうというような考え方は、どうも私は賛成できないのであります。価格問題はむろん必要でありますが、根本は、やはりこの生産の条件を改善していくということに主力がなければならぬ。こう私は考えましていろいろ御説もありますけれども、私は私なりにその方向でやっていきたい、こう考えておる次第であります。
  222. 玉置一徳

    玉置分科員 農相のおっしゃる通りだと思うのです。私は河野さんのときにもよくお伺いしたのですが、目の前で貿易の自由化が参ります。これについてもほんとうはお伺いしたいのですが。時間がありませんからまたの機会に譲りたいと思いますけれども日本農業の生産性を高める、酪農なら酪農を成長部門として十年間で三倍やってもらいたい、どういう生産形態のものが三倍にやってもらいたいかということであって、数量全般の言い方を今までしておいでになるところに、日本農林省指導の弱さがあるというように感じてしょうがないのです。今農林大臣のおっしゃる通りでありますけれども、だからというて今のやつをこのままほっておくことはできない。たとえば乳価の問題にいたしましても、この流通のやり方も、ヨーロッパ並み、あるいは若干高くありますけれども、その二倍半以内ですべて市販されておるにもかかわらず、日本のは三倍以上になりつつある。これでは需要が拡大するはずがないわけでありまして、あれだって五年なら五年、食管の形に取り入れて、似た形に持ち上げて、そうして十円か十一円くらいで、流通の過程において、足らぬ分は財政から取り出して、流通部門の掃除をする。五年の間に十一円くらいの牛乳でもって需要を二倍、三倍にして、その間、一般農家の生産者の生産条件はそのようにしなさいよというような一つ思い切った政策でもしない限り、おっしゃる通り、今の飼料屋に奉公しているような酪農のやり方をさせておってはまずいのではないかということをつくづく思うのですが、そういう当面の問題は当面の問題で処理しながら、しかも根本的に向かう道へ連れていくという農政を強力に打ち出していただきたいと思うのですが、これについての御所見を承りたい。
  223. 重政誠之

    重政国務大臣 全く同感でありまして、ぜひそういう方向に持っていきたい、こう考えておるのであります。せっかく将来一つ御協力をお願いする次第であります。
  224. 玉置一徳

    玉置分科員 そこで問題は、すべての農産物で今問題になっておりますのは流通の問題であり、価格の問題じゃないかと私は思います。政府農業構造改善事業のあれを、主として市町村長の責任あるいは指導と申しましょうか、におまかせになっておいでになります。そこで、主産地形成と称し、いろいろな農産物を一生懸命やっていただいておりますけれども、これが全国的に非常に過剰になるということを、だれもつかみどころがなくてやっておるというのが現状であります。そういうような意味で、この資本主義社会におきまして、価格の形成をする、それがある程度の安定を得させるのには、やはり自主的な流通の規制が要る。はっきり申しますと、作付と出荷のほぼ調整ができ得る機能を持っておるものは何かと言いますと、私は農協だと思うのです。県段階あるいは国段階で、ある程度専門農協連合会ができまして、これが出荷とあれを統制するということは、ほぼ国なり府県指導を横に仰ぎながらできぬことはないと思います。かつて私がカンショの問題を一つ選びましてやりましたときに、中央市場に、カンショはカンショで入って来る場所は、十年間の統計によりまして、大体どこの主産地からどの程度入ってくるということが、一、二年の少々の差はありますが、ほぼきまったものでありました。そういうような果樹園芸農協、畜産農協、何農協という専門農協が、府県並びに国段階におきまして、それぞれ国及び府県指導によりまして、ほぼの作付統制と出荷の統制をしない限り、いかに町村ごとに主産地形成をそれぞれがやりましても、これはあとの責任を持つ者がないということが、言葉は悪くて失礼でございますけれども、現在の構造改善であるという感じがするわけでございます。将来そういう形でもってほぼのあれができますと、政府の施策というものも非常にやりやすくなるのではないか、こう思うのです。これが私たちの言う農協の編成の問題にもなるわけでありますけれども、こういう流通あるいは価格の形成、価格の形成も今おっしゃいますように、どれだけをどうしてくれという形ではかなわぬとおっしゃる。そのやり方も、今言うようなスムーズな形でさえいけば、これはまた御要求を聞いていただいたり、あるいはまたそれを少々上げたり下げたり、あるいは当面問題になっておる貿易の自由化にも対処できる方法も、その間いろいろな手の打ち方ができるのではないか。これができておらない現状におきましては、やみくもでみんながともかくどの産物は十年間に三倍だ、どの産物は二倍ほど要るだろうという答は出ておりますが、どこでどうしてどういうようにつくっておるのか、お互いに主産地が知らないままに手探りでやっておるとい現状でありますので、こういう点につきましては一段の流通面のお考え一ついただきたい。  かつて私が河野農林大臣に、中央市場は国がある程度管理権を持たなければやれぬのじゃないかというて御質問申し上げたのはこういうことでありまして、何も中央市場を国の管轄にせいとい意味ではなくて、私の言い方は、そういうものを農家の生産者団体でもってある程度需給の調整ができるよな、出荷統制ができるような機構にやらなければだめじゃないでしょうかとい質問をしたわけであります。これにつきまして一つ所見をいただき、今後ともお気ばりをいただきたい、こう思います。
  225. 重政誠之

    重政国務大臣 申すまでもなく、この需給問題ということを考えなければ、価格安定もできないわけでありますから、たとえば牛乳について申しますれば、昨年中央中央酪農会議を設け、各県にも酪農会議を設けまして、そうして需給の検討をいたしまして、さらに進んでは原料乳の取引についての条件等についても指導なり、あるいは場合によれば介入をして、公正な取引に持っていこうというような目的でそういう会議を設けて、その運用の緒についたという現段階であります。市場相手の出産がだんだんにこれはふえるわけであります。市場生産がふえるのでありますから、ことにこの市場という流通機構というものが非常に重大な問題に、ただいま御指摘になりました通りなって参るわけでありますから、この方面については、畜産の肉の取引あるいは青果物の取引、そういうような農産物の取引、流通の部面に改善を加えなけれ、ばならぬ、こう私は考えておるのであります。市場についても、中央の市場並びに地方市場、そういうものが真に市場としての機能を発揮し得るような、あるいは物的設備も必要でありましょうが、あるいはこの取引の内容についても改善を加えて参りたい、こういう考えをもちまして、三十八年度予算においても若干の予算を計上いたしておるわけであります。四十億前後の予算は計上をいたしたようなわけであります。ますますこの方面の改善はいたしていかなければならぬ、こう考えておるのであります。出荷調整につきましても、同様にこれは拡充をいたしていかなければならぬ、こう考えておるのであります。その場合に、農業団体の活動が必要であることも、これもまた申すまでもないことであります。専門農協の発展というようなことも、私は非常に重視をいたしておる次第であります。
  226. 玉置一徳

    玉置分科員 酪農の問題、流通の問題、いろいろな問題につきまして、また機会を見ましてゆっくり一つお伺いし、私たちの意見も申し述べて参考にしていただきたいと思うのですが、最後に一点だけしぼりましてお答えをいただきたいと思うのは、貿易の自由化であります。  先ほども申しましたように、日本農業をどういうように持っていくかという大きな当面の柱の中に、貿易の自由化にどう対処するかという問題があると思います。農産物はそう簡単に残りのものはできないんだという言い方で終始されておるように思いますけれども、世界的に見ますと、低開発国の第一次産業をどっかが買い取らなければ、そこの国々は生活程度を向上し得ない、極端に言えば生活し得ないということも事実だと思います。そういう観点に立ちまして、なお、日本が原料国じゃなくて、こういう原料を輸入して工業によって生きていかなければならないという必然性からいたしましても、いろいろな言はありますけれども、貿易の自由化というものはかなり必然性を持ってきておる問題であります。従って、率直に申し上げて、私は去年河野さんにも御質問を申し上げておったのですが、為政者というものは、大体どの程度のときにどのくらいの貿易の自由化の必要に迫られることと思うということ、そのうらにこういう構造改善の手は打ちますけれども、あるいは所得格差の補給金は出しますが、どういう心組みでものをやっていただかなければいけないということを率直に言う方がはるかに親切である。なかなかやらないやらないということにして、農林大臣がかわるなり、二つ三つぼこっぼこっとやみ討ち的なやり方でする方が殺生ですよということを河野さんに申し上げておりました。それはそうだといお話ですが、そこで農林大臣は、農産物の貿易自由化の残りの問題についてどういう考えでやっておゆきになるか、率直な一つお見通しをお答えいただきたい、こう思うのです。
  227. 重政誠之

    重政国務大臣 御承知通りに、農産物の自由化、あるいは関税措置、あるいはその他の行政措置をとりまして、大体自由化しても急激に大なる影響は及ばないという見通しがつきましたものから段階的に自由化をして今日に至っておるわけであります。ところが、現在の国際環境は日に日に貿易自由化に迫られておるということは御承知通りであります。そこで、今詳細な品目について、これをこうするということはまだ考えておりません。これはこれから検討をいたしまして、どういうふうにやるか、段階的にどうするかということのめどをつけていかなければならぬ段階でありますが、現在の段階におきましては、少なくとも米や麦やあるいは酪農製品、あるいは豚肉でありますとかいうような主たる肉類でありますとか、あるいは農産加工品の中でもその一部のものというものは、これは現在の段階ではなかなかむずかしい。私の考えでは米麦、酪農製品というものは、とうていしばらくはやれない、こういうふうに私は考えております。その他のものにつきましては、できるだけ早くどうするかということを考えたい、こういうふうに思っております。
  228. 玉置一徳

    玉置分科員 関連いたしまして、砂糖の自由化の成案をおまとめになりますのはいつごろで、いつごろに国会提案をされますか。
  229. 重政誠之

    重政国務大臣 これは、私の考えはもうずっと前にできておるのでありますが、いろいろこれについて慎重に検討を要請せられておるものもありますから、それらの点が片がつけば直ちに提案をいたしたい、こういうふうに考えておるのであります。およそ何月何日ごろということは、そういう状況でありますから申しかねますが、私の考えでは、こういうものは早いところ片をつけておかないと、この態勢では、この国際環境の中にあっては次々に問題が起こってくる。場合によれば、一緒にいろいろなものが要請せられて起こってくるというような格好になりかねない。そういう際に、この砂糖の問題だけは別だと言ってみても、国際的にもまた国内的にもなかなかめんどうな問題になると思って、実はこの砂糖はできるだけ早い機会に国内甘味資源の体制を整えて、またそれに連なる企業の合理化も行なって、独立ができるという政策をこの際に一つ打ち出して、そうして自由化をする方が農民のためにもなり日本の企業のためにもなる、こういうふうに私は考えておるのでありますから、私といたしましては、それらの一環した準備が具体的に実現をいたしますれば、砂糖の自由化というものもできるだけ早い機会にやったらよろしい。それにはまず予算の成立、あるいは関係法案の成立ということが必要になって参る、こう考えております。
  230. 玉置一徳

    玉置分科員 われわれとしては、できるだけ早く国内産糖の助成案、あるいは企業の強化策というようなものを審議させていただきたい、こう思うのです。  いろいろ御質問を申し上げたいことはございますが、時間がありませんのでかえって要を得ませんでしたが、この程度にいたしまして、またの機会一つお願いを申し上げたいと思います。ありがとうございました。
  231. 中村三之丞

  232. 島本虎三

    島本分科員 どうも皆さん御苦労さんです。私で最後ですから、がんばってもらいたいと思います。  私は端的に質問しますが、果樹と畑作物の共済制度の問題について、すでに大臣も十分御存じだと思うのですが、昨年の夏、一昨年の夏、秋の集中豪雨、本年の豪雪、こういうふうにしていろいろと被害が算定されておりますちらで一番多いのは、農家に対する個人被害です。それを見ましても、これはそのままにしておけない部門が、やはり今のように、私が指摘するようにして残っていると思います。これは御存じだと思いますが、昨年の八月二十四日にちょうど災害対策特別委員会が第一委員室であったとき、この畑作物の共済制度の問題に関連して、私の方で、北海道において特に緊急な要望があるが、その措置はどうしてくれるのだ、考えているのか、こういうふうに質問したのに対して、共済制度を実施すべきかどうかということについては、北海道庁に委託しております。その調査を今やってもらっておりますから、そう長くないうちにその調査の報告があると思うのでありますが、それをもちまして善処いたしたいと考えておりますというのが大臣の御答弁でございました。今、議事録を読んだのですが、そういたしますと、去年のことですから、これで一年ですが、その経過はどういうふうになっておりますか、それについての御所感をまず承りたいと思います。
  233. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 畑作物、特に雑穀等につきまして保険の対象にすることにつきましては、これは内地の方におきましては雑穀類等はきわめて分散されて、しかも非常に小規模な作付が行なわれておりますので、そういった関係から保険の対象とすることは技術的に非常にむずかしい点があるのでございます。そこで北海道につきましては、今お話がありましたように、昨年からでありますか、北海道庁に調査を委託しまして、雑穀類等の保険としての可能性について調査いたしておるのであります。これは何といたしましても、共済制度の対象にするには被害統計が、まず現在米なんかについては、二十年間分の被害統計に基づいて被害率を算定しておるのでございますが、ある程度長期にわたる被害の算定ができるような資料の整備が必要でございます。そのほか作付の分布とか、いろいろ保険制度の仕組みをつくるに必要な資料の整備があるわけでございまして、一年、二年程度の調査ではなかなか制度化が困難であります。来年度もせっかく継続して、北海道庁に委託しまして調査をいたしたいと考えております。
  234. 島本虎三

    島本分科員 これは昨年質問したときに、やはり大臣もそういうふうな答弁であった。ところがその後調べましたら、これで四年間継続してことしで三年目だそうです。来年、年度が変わると四年目になる。そうすると、一年、二年でなくて、四年もやるわけですから、もうそろそろ結論も出ていいし、大臣も結論が出るころだと言っております。今に始まったことじゃない。この要望は現に北海道の農民からも、道庁自体からも強い。そういう段階からもうすでに一年ではないし、二年くらいではないということで、この問題に対しては、大臣もそろそろ決意してもらわなければならないのじゃないかと思いますが、こういうような点いかがでありますか。
  235. 重政誠之

    重政国務大臣 これは、御承知通りに、いろいろの統計資料も必要でございます。それが一年や二年のものではなかなかその確率もないわけでありますから、やはり調査は慎重にいたしたい、そういうふうに考えて念を入れてやっておるわけでありますから、御了承を賜わりたいと考えます。
  236. 島本虎三

    島本分科員 調査を慎重にやることは賛成です。しかし、急いで早く現実に合わせるような効果を生むようにしてもらいたい。と申しますのは、もうすでにこの豪雪でも、北陸一帯、ことに秋田、山形のこの辺までも、果樹の裂傷、それから折損、こういうものの損害が新潟県を含めて膨大に出ておる。これでもやはりないといってほったらかしておいては、現在どうにもしようがない。こういうような農家の個人の被害に対する救済策は、融資以外にも、共済制度の問題も一つありましょうが、もう少し身を入れて早く調査して結論を出すべきだと思うのです。現に、この果樹の裂傷、破損、こういうようなものに対しては、現在全然これに対する補償の道はないのですか。
  237. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 果樹の共済につきましては、これも要望が非常にございます。過去三ヵ年程度被害統計等の整備あるいは調査をやって参りましたが、来年度から実際に試験的に共済を設定いたしまして実施して、それがはたしてうまく共済制度に乗るかどうかという試験を試みることにいたしております。現在は、果樹の被害に対しましては、農林金融公庫資金でありますとか、天災融資法から融資いたしまして、災害に対する対策をとっておりますが、果樹の共済につきましても、そういう状況で、せっかくいろいろな調査なり試験を来年度からいたすことにいたしております。御了承いただきたいと思います。
  238. 島本虎三

    島本分科員 その場合には、畑作物の共済の面と合わせて、早く結論を出すことを要望しておきたいと思うのです。  この問題とあわせて、大臣、もう一つ、今度の雪害の場合の被害がまだ判明しないけれども、大きいと見られるのは開拓部落が方々に散在しておって、そういうようなところに対する学童の問題を含めて、今度はまたいろいろな保健衛生上の問題も出てきておるようです。そういたしますと、やはりこの開拓部落に対するいろいろな指導や援助を、農林省あたりでも見てやらぬといけないわけですが、これは直接寄宿舎の問題でも、それからほんとうに病気になったら、孤立してしまって、どうにも連絡ができない。ヘリコプターで行ったらなだれのおそれがあって困る、こういうようなところは、何か雪上車でも準備をして見回りに行かなければ、飛行機でもだめだ、そういうところには方法がなかろうかと思うのです。こういうような集団には保健婦を乗せて連れていったり、またいろいろ連絡したり、緊急な用に間に合わせるようにして、開拓部落の現に営々として働かれておるような、孤立しておる、また孤立するおそれがあるところには、そういう配慮も払う必要があると思います。これは大臣権限外ですが、大臣、御見解はいかがですが。
  239. 重政誠之

    重政国務大臣 十分関係大臣と連絡をとりまして、できるだけのことはいたしたいと考えております。
  240. 島本虎三

    島本分科員 次に、農村の問題で電気施設の問題ですが、無灯火部落解消の問題についてお伺いいたします。これは昨年から同じ予算委員会の引き継ぎになっておるのです。これは九万円まで補助できるようなところは徐々に解消していっておる。現に残っておるのは、もう九万円ではどうにもできないようなところがたくさん残っておる。北海道あたりでは二万数千戸がまだ残っておるけれども、九万円や十一万円の補助くらいではどうにもできないところがたくさん残っておる。これに対して今回少し予算の補助面が前進したようです。しかし、この十一万円くらいのものでは、これはまたどうにもできないような部落がたくさん残っておるのですが、こういうような部落の解消について、年次計画なりまたははっきりした解消の見通しがあったならばお示し願いたいと思う。
  241. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 無点灯部落の解消施策として、御承知のように三十四年度から電気導入促進法というもので発電施設あるいは送電配電施設、受電施設に対して補助いたしておるのでありますが、昨年以来島本先生ほか熱心に単価の引き上げについて御要望があったわけでございます。昨年までの実績でありますと、大体全国平均して八万円台でございましたので、われわれとしては九万円までの事業費に対して助成をいたしたわけでございますが、その後だんだん事業費のかさむところもふえて参りましたので、三十八年度からは十二万円ということに単価を引き上げたわけでございます。ただ、十一万円でございますので、ことし計画として予定しておりますのは八千三百五十二戸を対象に考えておりますが、これらにつきましては、その単価において大体まかなうことができるのではないだろうかと考えております。しかし、特殊の地域におきまして十一万円以上にオーバーするというようなところももちろんあるように承知いたしておりますが、これは十一万円以内の事業やるというわけでは必ずしもないのでございまして、十二万円、十三万円かかる場合もあるわけでございますが、国としては十一万円までの事業費について補助をする。その際オーバーしたような金額については、市町村等でこれを負担するというふうな例もありまして、これらにつきましては僻地に対する特別の起債とい措置も過去においてございますので、われわれといたしましては、多年懸案でありました九万円から十一万円に引き上げるとい措置によって、残る戸数についても大体まかなっていけるのではなかろうかというふうに考えておる次第であります。
  242. 島本虎三

    島本分科員 なるほどわかりました。そうすると、現在のところ十二万円以上の費用を要するようなところは、裕福な市であれば、直接やっておるところは補助によってとっくに解消しておるのではなかろうかと思う。これは計画的にやっておるところはもうすでに成果を生んでおると思います。現在残されておるところは、貧弱といえば失礼かもしれませんが、へんぴな村か町に属して、どうにもできなくなっておるようなところが依然として残されておる。私も現にそういう部落をよく知っております。そういうようなところでは、引くコストがぐんと高くなって、十一万円や十二万円ではどうしてもおさまらない。むしろこれの二倍以上かかっておる。そうすると村で負い切れない。負い切れないからしてがまんしてそのままランプの生活をしておる。地域格差は、所得の格差とかいろいろな格差がつく一方です。こういうふうにしていても、やはりしし営々として営んでおる部落民に対しては、そういうしゃくし定木の行き方でなく、村の財政の度合いも見ながら、こういう十二万円の線を引いても、実際にはどれほど見るというような弾力性のある措置考えられないかどうか。これはあなたでは無理かもしれませんが、大臣、こういうような点を考えて処置してもらいたいと思いますが、いかがなものですか。
  243. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 仰せのような事態のところもあると承知いたしておりますが、この単価につきましては、大体従来とも実績単価をとっておりまして、その実績単価によって年々ある程度改定しておるわけでございます。三十七年度の実績単価で見ますと、八万よりちょっとこしたところと記憶いたしておりますが、来年度、今申し上げた八千三百五十二戸につきましても、県の具体的な申請戸数すべてを対象にして予算化いたしたわけであります。それの単価から見まして、十一万円程度であれば十分措置できるんじゃないか。なお足らざる部分については、町村によって従来ともやっておる例があるわけでございますが、そういう措置をとっていただいてできるんじゃないか。今のところ弾力性をとる考えは持っておりません。
  244. 任田新治

    任田政府委員 この問題にあわせて開拓地の関係を申し上げます。  僻遠の地には開拓地が比較的多いわけでございますので、ただいまの御指摘の点につきまして、開拓地については特別の計らいをいたしていこうと思っておるわけでございます。開拓地は現在二万九千戸ばかり三十七年度末には無点灯地区が残るわけでございますが、これにつきましては、三十八年度は六千戸の解決をはかりたい、かように考えておるわけでありまして、従来九万円以下のものにつきましては国が三分の一、県が三分の一、残りの三分の一は御本人に負担していただいておったわけでありますけれども、今回は、三十八年度からは九万円以上の分につきまして、さしあたり十五万円の範囲までのものにつきましては国が二分の一出しまして、合わせて県からも二分の一出していただきまして、さしあたり十五万円までの分につきましては何とか解決をはかりたいというふうに考えておるわけでございます。
  245. 島本虎三

    島本分科員 そういうふうにして計画的に無灯火部落の解消をそれぞれはかってもらいたいということを強く要望しておきたいと思います。  ところが、現在そういうふうにして無灯火部落を解消しても、できているその事態は受電組合によるところの組合組織、それだけではどうしてもいろいろなことで不便なんです。従って、これは電力会社の方へどうしてもこれを一括して買い上げてもらって、移管して、それによって今度電力を買うようにする、こういうように施設を移管してもらいたいとい要望がだんだん強くなってきております。そういうような措置は当然次から次とはかっていかなければ、農家要望に応じられないような状態になっておるんじゃないかと思いますが、こういうようにして自家発電から一般受電の方にこれを変更するように徐々に計画を立てていると思います。これはどういうような計画になっておりますか、計画をお示し願いたいと思います。
  246. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 内地におきましては、現在の受電方式はほとんど一般受電の方式に切りかえておるわけでございますが、北海道につきましては、まだ一般受電に切りかえていないという状態が相当残っておるわけでございます。われわれとしましても、できるだけ早く一般受電に切りかえるようにということを、道庁の方には勧奨いたしておるわけでございますが、北海道においては、御承知のようにそういうふうな地域的な関係でなかなかうまく参らない。特に一戸当たりの電柱の制限本数というようなことに制約されまして、北海道の電力会社が一般受電に切りかえることについて必ずしも受け入れ体制ができていないというような実情にあるわけでございます。しかし、計画としていつどうするということは、たびたび道の方には申しておりますが、現状においてはまだないとい実情でございます。
  247. 島本虎三

    島本分科員 これもまた大事な問題なんです。せっかくそこまでやっても、今度は所管が変わるんですね。通産省の所管になってしまって、農林省だけではどうにもできなくなってしまう、これはまことに残念なんです。先年度においては、はっきりこの問題については、あの当時は佐藤通産大臣だったと思いますが、開銀からの融資その他によってこういうような問題の解決をはからせると言っていたのです。ここで皆さんに諮ったかどうか聞いても、この場所では無理だと思いますが、通産省のどなたか来ておりますか……。
  248. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 そこで、計画としてはございませんけれども、われわれとしては、できるだけ一般受電に切りかえる方法をとるようにしたいということを希望いたしておりますので、本年も、北海道は一ヵ所か二ヵ所かと思いますけれども、かりに一般受電に切りかえるということによって特別の修理費、改修費が必要である、改修、修理をやることによって一般受電に切りかえるということが可能であるような場合におきましては、これに対して助成をするという道を開くことにいたしておりまして、すでに九州地区におきましては、その方法を昨年以来からとっておるわけでありますが、北海道におきましてもそういう計画戸数があがってくるならば、ことし三十八年度から助成の措置を講じたいということで、予算の形状を考えておるわけでございます。
  249. 島本虎三

    島本分科員 そういうような場合、初めから共同受電ではなく、買電の施設にやっていきたいための費用の負担のいろいろな要請が上がってきた場合には、特に善処して御指導を願いたい、こういうように強く要請しておきたいと思います。  それから先ほど大臣の言った生産の要件を変えていくことが農業の面として大事だ、その面とあわせて、この無灯火部落の解消の面と、もう一つだけ大事な点がある。それは農家、漁家で無水部落があるのです。水のない部落。この水のない部落も、無灯火部落と同じ戸数くらいまだ残っているのです。これはどっちみち行くところは全然ございませんし、農林省の所管になっている。この無水部落の解消というやつは、数年前からいわれているのですが、これだけはあまり改善の色が見えないようです。農家にして無水部落、こういうことでは、家畜の問題でも農業そのものにでも、いろいろな点でものすごく影響がくる、ほかに健康の面でも相当影響があると思います。この無水部落解消に対しての対策、予算それから年次計画、こういうものがあったらお示し願いたいと思います。
  250. 任田新治

    任田政府委員 開拓地の問題につきまして申し上げます。これはもちろん開拓地の実情によりまして、すでに大した事業費を投じなくても水源を求め得るというところもあるわけでありますから、ただいまのところでは、三十七年度までにおきましては、昭和二十九年度から約三千六百八十二ヵ所の解決をはかっておるわけでありまして、三十八年度におきましては、新たに一億二千三百万円の予算を組みまして、千五百ヵ所の解決をはかりたいというふうに考えておるわけであります。内容といたしましては、その場所々々の実情によるわけでありますが、天水槽をつくるとか、あるいは深井戸を設けるとか、また関係河川からの簡易な増配水施設を行なう、このようなことでやって参っておるわけでございます。
  251. 島本虎三

    島本分科員 だいぶ時間がたって申しわけないと思いますが、これは一つ大事な問題なものですから、少しかんべん願いたいと思います。  この無水部落の解消の問題については、いろいろとデータなりやって進められておるようですが、この北海道の問題だけは、戸数がいまだに二万三百八十五戸、十一万九千五十二名が総体的な無水農漁家になっている。そうして農家は逆に六六・二%に当たる二万三千四百八十八戸、これだけあるわけです。漁家が六千八百九十七戸で三三・八%に該当する、これだけ依然として残されてあるわけです。こういうようなところは、内容はすでにデータによってはっきり手元にありますし、はっきり権威のあるデータですから、これは読み上げても何ですけれども、まだ手を入れなければならないようなところが相当にあると思います。また農家そのものの改善をしなければならないように思われる点も、相当まだ放置されてあるようです。もう少しこの無水部落の解消は計面的にもっともっと行なうのでなければ、ほんとうの意味で生産の条件を変えていくというようなことにはならないのじゃないか。大臣は生産の条件を変えていきたいと言うけれども、こういうようにして無水部落があり、無灯火部落がある、それをそのままにしておいていかに条件を変えていっても、これはやはり格差が開くだけであって、条件を変える方には何の足しにもならないのじゃないかと思われるわけです。これは大事な問題ですから、北海道だけが残っているということは、まことに遺憾です。北海道はよその国ですか、これはやはり九州や四国、そのほかと同じに、もう少し施策を強化していく必要があると思います。この点等について確信ある御所見を承りたいと思う。
  252. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 北海道の無水部落の解消につきましては、開拓地も多いことと存じますが、この水の問題は、農林省だけでなくて、厚生省に非常に関係の深い問題でございまして、過般、漁村なんかにおきましても、構造改善をやる場合に、水の問題を解決しようというふうなことでこれに取り組んだこともあるのでございますが、厚生省の所管であるというようなこともございまして、まだ解決を見なかったような次第でございます。今後両省で十分協議いたしまして、この問題に取り組みたいと存じます。
  253. 島本虎三

    島本分科員 では、これで成果を期待してやめておきたいと思います。しかしながら、私どもで見ていますと、年間無水農漁家が飲用水等の取得のために使う時間というのが意外にあるのです。これは一戸当たりで五百五十三時間、それと同時に、総戸数では千百二十七万二千二百九十五時間、こういうふうになって現われる。一日中時間として、日数に換算すれば五十五日、百十二万七千二百三十日となるのですよ。一日の労賃を五百円と仮定すると、この無水農漁家が飲用水を収得するための労働、これを金額に換算すると一戸当たり二万七千五百円、総額は相当な額になるのです。そういうようなあんばいで、このために苦労している人たちの状態を見ますと大へんだと思う。そういうような状態ですから、この解消は地域格差の是正になるチャンピオンですから、一つぜひとも計画的に強力に進めてもらいたいと思います。これを要望して、きょうはこれで終わっておきます。
  254. 中村三之丞

    中村主査 本日はこの程度にとどめ、次会は明十九日午前十時から開会し、農林省に対する質疑を続けることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十四分散会