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田中国務大臣 税務職員が非常に努力をしておられることに対しては深い敬意を払っております。税務職長が求められることのみ多くして与えられないということに対しては、私も遺憾と存じておりまして、できるだけこれが安定、優遇に対して施策を行なうべきであるということで検討を進めておるわけでございます。先ほ
ども言いました
通り、税務署の職員の特殊の立場
——脱税をしておっても、取られる人は取られる人の立場でもって税務署を見ますし、税務署の職員といえば取られるものだというふうに、こう冷たい目で見られながら、黙々として法規裁量でやらなければならない職員の労苦に対しては、私は十分
承知をいたしております。この間から検討いたしておるのでありますが、東京などはどんどんと会社がふえていく。税務署というのは、神田橋に総合庁舎をつくる予定でございますが、このようなことをしても、住宅から総合庁舎まで出てき、それから帰るだけでも大へんであります。だから、税務、徴税機構そのものは一体現在でいいのかどうかということで、私はこの間から国税局長会議などでもって自分の
意見を申しておるのですが、少しこれは専門的な立場だけではなく、しろうとの
意見も広く知恵をかりて、抜本的に問題を片づけなければならぬ。ある人は冗談に、これだけのものを集めておるのだから、その一%だけでもいいから、財源を特定するというわけではないけれ
ども、そのくらいのものでもってわれわれの環境整備の歳出をしてもいいじゃないかという
議論もあります。しかし、税務署なるがゆえにそういう財源を特定するようなものをつくれるわけはない。ないけれ
ども、当然報いなければならないということで、私は税務署というものを、東京都に例をとりまして、三十五区に
一つずつ今もありますというのですが、これは非常に
権限の小さい昔ながらの税務署であります。麹町税務署などは格が非常によいといわれておりながら、小さな税務署でございます。これをもっと大きくして、もっと相当な人を配し、陣容も大きくし、機械化も行なって、大体国税局まで、国税庁まで出てくるだけでもって往復一時間、二時間でもってどうにもならないような状態をなくするために、徹税機構そのものに対しても再検討をする必要がある。それには税務署長
権限というものを相当大きくする必要がございます。現在二千万円までの資本金の会社を、五千万円まではそれを税務署長にまかすとか、こういういわゆる
制度上の問題が
一つ大きくございます。
もう
一つは、税務署の職員の職掌柄、一年交代、長くとも二年でもって、同一任地に長く置かない、こういうことでもってどんどんと各地方を回しておる。こういうことが一体いいのかどうか。そうしなければ税務署のいわゆる姿勢を正せないのか。こんな信用しないようなことで一体いいのか。昔も小学校の教員などに対しては、確かに自分の村でやるよりも、隣村以外でもって勤務地をきめるというようなことがあったが、今日はそのようなことはありません。だから、こういうほかの業種でもってすぐ解決しておるものを、税務署員なるがゆえにそれほど姿勢を正さなければいかぬのか。そうしなければほんとうに税務署職員というものの規律は守れないのか、もっと真剣に大蔵省自体も国税局も検討すべきである、私はそういうことを言っております。
もう
一つは、今のように複雑な経済であり、複雑な経理でございますから、法人税係になる人は多いけれ
ども、徴収などというじみないやな仕事に対しては、これはなかないやな仕事だと思います。また、法人税係になれば正面も広くなりますので、ほとんどエキスパートがどんどんと引き抜かれて民間会社に行ってしまう。あとに残る人は、一体希望をつなげるのかどうか。私はこういう問題に対して、もっと積極的になぜ検討しないのかと思います。
もう
一つあります。一体月給に対して、あなたが言われた調査査察などというのは非常にエキスパートであり、いやな仕事をやるわけでありますが、これに対し、副検事が検事になるように、また裁判所の書記官補が書記官になるように、何らか特別な手当を与えるということはできないのか。
制度上の問題は、一体徴税官というようなもので特別な俸給
制度がつくれないのかと、検討は相当やっておるのであります。それだけでなく、求めることだけ多いということでなく、バランスをとるために、今の
国会でさんざん
議論せられた公認会計士、それから税理士、計理士、こういう
制度の中で、少なくとも税務講習所を出て十年間たった者はどう、十五年たった者はどう、二十年たった者は会計士になれるというような、
制度上、
法制上の問題もなぜ一体検討しないのか。
私はしろうとなりに、これらの問題を全部自分から発議をして、国税局長会議でもって自分の
意見を言っておるのであります。こういうことを
一つずつ解決をしないで、税務職員にはなり手がないということで、これから一体どうなるのですか。
しかも、それだけではない。私はあなたの御
質問の中に、私もその
通りというような気持でもってさっきお聞きをしておったのでありますが、確かに
言葉の上や理論の上ではちゃんと割り切っておるのでありますが、実際の徴税の状態になるといろいろな不公平が行なわれる。それは、五千万円くらいの会社が東京や大阪にあってもお目こぼれの機会はたくさんある。ところが、青森県や北海道で五千万円の会社といえば五指に屈するということになるから、徹底的にやられるのであります。でありますから、全国の産業の本社は全部東京や大阪に集まっておる。自分の工場のあるところに本社を置けば、毎年必ず査察を受ける、調査を受けるけれ
ども、大阪に行けば三年に一ペん、東京に行けば、うまくすれば十年くらいのがれられるかもしれない。これは事実であります。こういう事実に目をおおうて、徴税機構が
法律上、理論上うまくいっておりますなどということで解決はしない。こういうことを私は自分で事例を全部あげまして、この間も言ったのですが、東京へ来たら逆に税率を少し高くする、このくらいやるのがほんとうです。そうでなければ、突際の徴税上一銭厘毫の目こぼれの余地もないというような地方の状態を
考えてみるのと、東京や大阪や県庁の所在地における企業との間には、事実アンバランスがあるだろうと思う。こういう問題に取り組みなさい。
私は、今の
予算が通過したら、こういう問題に対して少なくとも二カ月でも三カ月でもかかって、この次の
国会には、こういう問題に対してどの程度税務署を優遇することができるか、税務職員に希望を与えることができるか。そういうものに対して相当の突き当たりはあるでありましょう。いろいろな調整困難なものもあるでありましょうが、私は徴税機構というものは、今日のように秩序を守って法規裁量でがまんをしてくれておるところに、
日本の健全財政もあるのであるし、ひいては
日本の今日の建設もあるのありでますから、やはり報いるべきである。悪平等でそれをやれば、どこの
官吏でも何でもみな同率に扱うべきであるというような
考え方よりも、一歩も二歩も進めて、これらの環境整備、現状打開に前進をしたいということを私自身が
考えており、私のアイデアもぶつけておるのでありますから、これが徴税の組織、またその他の機構の問題、それから施設の整備等に対しても、各般の措置をとるように、できるだけ早い機会にこれが案をまとめて実行に移したいという誠意を申し上げておきます。