○村山
政府委員 今までの税制の経緯を御参考までに申し上げますと、おっしゃるようにシャウプの
一つの
考え方は、法人に対する税金は、かりに留保に対する税金でありましても、結局は個人に対する税金の前取りである、こう考えまして、しかし法人が続いておりますので、一種の源泉徴収としてとっていくのだ、それを法人間の場合には益金不算入という形で還元し、個人の場合には法人、個人を通じまして上積み税率をある
程度、五五%のところで損得がないようにしようとして仕組まれたのが、当時の配当控除の
制度であったわけでございます。従いまして、先生がおっしゃるように、そのときには当然の帰結としまして、今度は配当含みで有価証券を譲渡する形、これを何らか課税しないといかぬという論理になるわけでございまして、有価証券に対する譲渡所得税というものは、これはどうしても押さなくちゃいかぬ、その場合には、現在のように法人が解散する場合に、源泉で清算所得でとるということもいかぬ、これは譲渡所得という形でとらなくちゃいかぬということになってくるわけでございまして、現在やっております清算所得というのはシャウプの考えに合わぬわけでございます。その考えを徹底いたしますと、今度はいわゆる留保所得に対する加算税というものも、単に非同族会社についてだけではなくて、同族会社についても、少なくとも所得税の納付を遅延させている遅延利息だけはとるべきだ、こういう理屈になりまして、非同族会社に対する留保についても課税すべきだ、こういう論理になるわけでございます。これはシャウプのときには全部やったわけでございます。その後おっしゃるように、その
一つ一つがはずれていったわけでございます。おっしゃるところの今の清算所得をまた源泉
段階でとるに至りましたのは、三十年だと思っております。それから譲渡所得を非課税にすると同時に、これは二十九年でございますが、一方有価証券移転税というものを創設してございます。これは当時の記録によりますと、大体譲渡所得の身がわりになるものと言われているわけでございます。現在この有価証券移転税が百億をこえる
金額になっております。譲渡所得をもし課税したならどのくらいになるかということは、
数字を出しておりますが、百億にはとてもならぬという
数字でございます。その間そういう
改正が行なわれた。同時に非同族会社に対する留保所得の加算税も、これは二十五年にやりまして、二十七年にはすでに廃止になっているわけでございます。従いまして、シャウプが考えましたような法人と個人の二重課税の調整といって五本ばかり柱を立てたうち、現在残っておりますのは配当に対する益金不算入、法人の場合の益金不算入、それから配当控除という
制度だけが残っているわけでございます。それだけに、一体
日本の現行のそういう
制度はどういうふうに理解するのか、こういう問題が残ることは、税制調査会においてもすでに指摘されているところでございます。なお検討が続いておりますが、
一般に言われておりますのは、シャウプは、税制上法人というものは個人のいわば前取り
段階である、こういうふうなことを税制の論理として打ち立てたわけでございますが、今日は、五本柱のうちの四本がはずれておってみますと、そういう単純なる法人擬制説とか、あるいは実在説ではもう律し切れない問題ではなかろうか。結局税制を立てるときに、これは
一つの説でございますが、われわれこの説が比較的理解しやすい説ではないかと思っておりますのは、
一つの税源に対して、その形がどうであるにしろ、法人税、所得税で二重にかけるということは、これは国の側の税制という
立場と、それから税源との
関係においてどんなものであろうか。言いかえますと、支出する方の側でも益金とされ、受ける方も益金だ。通常は出す方が損金で、受ける方が益金でございまして、一方に課税が行なわれておるわけでございますが、もし配当について何らの考慮をいたしませんと、法人
段階で課税され、それが直ちに二カ月後には個人の所得になって課税される。同じ税源に対して二重の課税が行なわれる。それがその
一つの税源に対して国民経済上過重になるかならないか、ここの問題ではなかろうかと実は考えておるわけでございます。その間の調整をどうするか。それで、調整の仕方を、あるいは支払い法人
段階において調整するのか、あるいは受け取り
段階側において調整するのか、ここの論議が中心問題として非常に論じられておるわけでございます。ラテン諸国のように、法人と個人というものは
法律形式的にいえば別人格であるから、会計学的に所得は所得だ、そこに税は同じ税源だということを言う必要はないのだ、違う人格に帰属したのだから、それは
法律形式的には二重課税じゃないのだというふうに単純に割り切る税制もございます。しかし今日の大勢でいいますと、主として、この調整の方向が必要であるというのが最近の国の方向でございます。今度アメリカで、いわゆる配当の控除、これは五十ドルを控除いたしまして、五十ドルをこえる分については三%の税額控除、これを今度ケネディ政権は廃止の提案をしておるわけでございます。ただ廃止の提案の中で、こういうことを言っておりまして、これは理由がないということではないのだ、ただ少なくとも現在やっていることが理由があるにせよ、ないにせよ、その
金額はあまりにも小さくてナンセンスだ、従って実効論からいって廃止すべきだ、こういう提案をしておるわけでございまして、理論的な問題として言っているわけではございません。なお各国の税制は、その間、実際申しますと、暗中模索時代ということで、国民経済との照応
関係を見まして、どういう税制を組み立てるのが最もそのときの経済にマッチするか、こういう問題として今追及しているという
段階でございます。