運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1963-02-12 第43回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月十二日(火曜日)    午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 安藤  覺君    理事 野田 卯一君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 辻原 弘市君       井出一太郎君    植木庚子郎君       尾関 義一君    仮谷 忠男君       北澤 直吉君    倉成  正君       小坂善太郎君    櫻内 義雄君       正示啓次郎君    田中伊三次君       高橋清一郎君    中村三之丞君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       羽田武嗣郎君    船田  中君       松野 頼三君    松本 俊一君       山口 好一君    山手 滿男君       淡谷 悠藏君    加藤 清二君       高田 富之君    堂森 芳夫君       西村 力弥君    野原  覺君       堀  昌雄君    武藤 山治君       山花 秀雄君    山口丈太郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         農 林 大 臣 重政 誠之君         通商産業大臣  福田  一君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         総理府総務長官         総理府事務官  徳安 實藏君         (経済企画庁調         整局長)    山本 重信君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (理財局長)  稲益  繁君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君         自治事務官         (財政局長)  奥野 誠亮君         消防庁長官   藤井 貞夫君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十二日  委員稻葉修君、菅野和太郎君、山本猛夫君、勝  澤芳雄君、永井勝次郎君及び渡辺惣蔵辞任に  つき、その補欠として高橋清一郎君、松野頼三  君、倉成正君、堀昌雄君、横路節雄君及び武藤  山治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員堀昌雄君及び武藤山治辞任につき、その  補欠として西村力弥君及び渡辺惣蔵君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員西村力弥辞任につき、その補欠として小  松幹君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会設置に関する件  昭和三十八年度一般会計予算  昭和三十八年度特別会計予算  昭和三十八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより会議を開きます。  昭和三十八年度一般会計予算昭和三十八年度特別会計予算昭和三十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤委員 まずきょうの質問では、減税を中心お尋ねをしようと思っておるわけでありますが、大蔵大臣の都合もございますので、冒頭に企画庁長官に二、三お尋ねをしておきたいと思うわけであります。  企画庁長官も御承知のように、本年度予算を見ますと、貿易振興及び経済協力費という非常に輸出に力をかけた予算を議決をいたしておるわけであります。その中で特に海外経済協力基金の問題でございますが、この海外経済協力基金日本貿易振興あるいは低開発国、特に東南アジアとの交流を促進する役割をどのように果たしておるか、また現実に果たしたかという過去の実績について、ちょっとお尋ねしておきたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 海外経済協力基金は、御承知のようにただいま百四億円の基金を持っておるわけでございますが、なお、三十七年度に六十五億円出資の予定がございまして、現実には出資されておりませんけれども、予算としては百六十九億円の基金を持ち得ることになっておるわけでございます。その進行状況につきましては、私ども当初期待しておりましたようにすみやかな進行をしておらないというのは事実でございます。これは、輸出入銀行等がとり得ない種類のやや長期の、しかも複雑な計画についてできるだけ御相談に乗っていこうという建前、できるだけ早くという心がまえは持っておりますが、事の性質上おくれがちでありまして、ただいまのところは、現在で出資をいたしましたものが十億円、これは北スマトラにおける油田の復旧開発北スマトラ石油開発協力株式会社でございます。それから海外非鉄金属探鉱をいたしますための海外鉱物資源開発株式会社、この両社に出資、前者に七億五千万円、後者に二億五千万円でございます。それから貸付につきましてはチリボリビアアラブ連合北ボルネオ、ギリシャにつきまして、住友金属、三菱金属株式会社水野組北ボルネオ水産日本鉱業等合わせまして八億円の貸付をいたしております。従って、出資貸付と合わせまして十八億円というのがただいままでの実績でございます。
  5. 武藤山治

    武藤委員 ただいま企画庁長官答弁によりますると、百七十九億円の基金の中でまだ十八億しか使っていないわけであります。そうなりますと、百七十九億ですから、まあ百八十億と申しますが、百八十億円もある中から十八億しか使っていないということは、まだ百六十億以上残っておるわけですね。そういう予算使用状況というものを見て、あなた長官として、監督責任者として、これはちょっとずさんだなという感じを持ちませんか。いかがでしょう。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 百六十九億でございます。そこで百六十九億のうちで十八億円ということでございますが、まさに御説のようなことを感ずるわけでございます。これは、ずさんという方に感じますよりは、ある程度計画具体化をしており、採算に乗るものについては先に輸出入銀行でとる、しかしながら、相当計画長期であって、かついわゆる輸出入銀行的な採算に乗りにくいものは海外経済協力基金でとっていこう、そういうことでやっておるのでありますが、たとえば三十七年度中にも、イスラエルのヘジャース鉄道のごときものは、相当話は進んでおるのでございます。これは二十五億円であったと記憶いたしますが、相当進んでおるのであります。もう一つ、いかに協力基金といいましても、計画具体性といいますか、それがもう一つ進みませんものですから、ついに今年度内に金を出すまでに至らなかった。相当長期計画をめんどうをみるのでありますから、あまり大ざっぱにやるわけにも参りません。さりとて、金はこれだけ使ってもよろしいという国会の御意思であるわけでありますから、あまり重箱の底をつつくようなことをいたすような心組みではおらないのでありますが、現実にはそういう進行状況でございます。
  7. 武藤山治

    武藤委員 どうも企画庁長官責任をのがれるような気持で、ずさんであるかないかという率直な答えを出さないのでありますが、私は結論的にずさんであると思うのです。どうしてずさんであるかという理由を申し上げるならばこの基金は、旧東南アジア開発協力基金というものが三十三年度にできて、すでに当時五十億円の一般会計からの予算をとっておるわけです。その五十億円の三十三年度資金ですら今日まだ消化してないのですよ、十八億しか使ってないのですから。そういう非常に使用が困難だという見通しにもかかわらず、三十六年度にまた五十億円とっておるじゃないですか。三十三年度の金を使わずに置いて、また三十六年度に五十億とり、国会が承認をしたからというけれども、またその翌年三十七年度、本年度に六十五億円とっておるじゃありませんか。あなたは使う見込み——あるいは特に国家経済に、貿易振興に、海外開発に直接緊急と思われないものを、計画をだっと乗せてきたものでも予算要求してどんどんとることが、国家財政の上から好ましいと思いますか。その点どうですか、好ましいですか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 必ずしもそう考えませんでしたために、三十八年度においては、新しい出資を予定しないということにいたしたわけでございます。
  9. 武藤山治

    武藤委員 好ましいか好ましくないかというあなたの考え一つ聞かして下さい。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、海外経済協力建前から申しますれば、多少輸出入銀行ほどのきびしさでないものさしでも、そのものさしに乗るような計画具体化をいたしまして、ここから金が出ていくということが最も望ましいことであると思います。決してそれをきびしくいたしておるわけではございませんので、なかなか計画がうまくものさしに乗ってこないということが過去の事実であったと思います。従って三十八年度は、巨額の金を持って持ち越しますので、新たに予算要求をいたさないで、既存のものの消化と申しますか、なるべく計画を具体的に進めていこう、こういう気持でおります。
  11. 武藤山治

    武藤委員 私が聞いておるのは、そういうことじゃないのですよ。昭和三十三年度に五十億円出し、三十六年度に五十億、三十七年度に六十五億と、使用もしないのに二年間でさらに百十億円の追加をするというそういう態度、これは好ましいですか。あなたは、これは間違いない、妥当だ、こういう予算の取り方でいいんだ、そうお考えになりますか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、予算をとりますときに、ある程度考えられる幾つかの計画があったわけでございますが、それがその通りのスケジュールで実現をしなかったということでございますから、その間計上した予算を使えなかったじゃないかとおっしゃるならば、その通りでございました。
  13. 武藤山治

    武藤委員 その通りでありましたということは、好ましくないということですね。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、好ましい好ましくないという問題であるよりは、具体的に計画が熟さなかった。あるいは逆に言えば、熟すると思って計上したところの予算が不用であったということであったと思うのであります。
  15. 武藤山治

    武藤委員 大臣、そこまであなたのほんとう気持を答えないならば、私は全部聞きますよ。それではあなたの部下羽柴参事官が、十二月五日の大蔵委員会で私に答えたことと、大臣の今の答弁とは全く違うんです。いいですか。一々それを全部聞きますよ。初めに好ましくないなら好ましくないと答えたらいいじゃないですか。あなたの答弁通りですと言いながら、今度は答弁通りだということは好ましくないということかと聞いておるのですから、好ましくないと言ったらいいのを、計画がなかなか実行に移せなかった、相手の事情があったと言って逃げようとするのですね。私はそういう態度はいかぬと思うのです。もっと率直に、百八十億もある予算の中から十八億しか使えなかったのは、まさに好ましくありません、今後は十分これを督励して、こういう予算の効率のないような仕方というものは改めます、こう答えるのが国の責任者大臣答弁であるべきだと思うのですが、私の考えは間違いでしょうか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あまり危ない金を貸すということは、いかがかと思われるわけでございます。さりとて、きびしくするという意味ではございませんけれども、貸しても大丈夫だという金でなければ貸すべきでないというふうに考えます。
  17. 武藤山治

    武藤委員 そうしますと、先ほど企画庁長官はこういう過般の実績を見て本年度予算要求をしなかったと申しますが、ほんとう大蔵省予算要求をしなかったわけですか。したけれども、大蔵省の査定で、今までの実績がこういう状況だから出せませんよということで、けられたのじゃないですか。その点はどうですか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一応最初の要求はいたしておるのでありますが、これは私自身が、これだけ金があって、こういう国家財政の現状でありますから、この金は要らないと自分で申しました。
  19. 武藤山治

    武藤委員 あなたがそう要らないと申し込む前に、あなたの部下は私の手元へ十二月五日にこういう計画書を出しております。三十七年度基金設備投資額見込みとして、マライ水産合弁会社に七千万円、マライのすずの精練に三億一千五百万円、北ボルネオに三千万円、インドネシアに三億五千万円、ニッケル開発に一億六千六百万円、カリマンタン森林開発に二億七千八百万円、以下ずっとラオス、台湾、エクアドルペルーチリーボリビア、ナイジェリア、こういうところに三十七年度中、というのですから、この三月一ぱいに八十億円出す見込みでありますと答えておる。しかも資料を印刷にしてあなたの方から出しておるのです。その八十億円の見込みも、全くうそじゃないですか。国会におけるでたらめの答弁じゃないですか、あなたの今の答弁からいくならば。さらに大臣答弁がいいかげんだという証拠に申し上げたいのは、三十八年中の基金融資額見込み、来年度見込みですね。どんな見込みを立てておるかというと、インドネシアカリマンタン森林開発十一億、ニッケル開発四億、ラオスのヴィエンチャンの上水道が二億、以下パキスタンやマライ、サウジアラビア、メキシコ、ペルーエクアドル、ガーナ、これらの国々に三十八年度中に二百二十三億円予定しておるというのですよ。あなたは、自分の方から予算はけっこうですといって引っ込めた、大蔵省要求するのを。しかしあなたの部下の、しかも参事官は、三十八年度に二百二十三億円も契約の見込みを立てて仕事をやりたいと言っておる。まるで違うじゃないですか。こういう仕事は全部これは不適格で好ましくないというので、あなたの判断で大蔵省への予算要求は取りやめたのですか、どっちなんですか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一向にそうではございません。計画に乗る話があればできるだけ貸してあげたい、それが海外経済協力であると思いますが、しかし金を貸すわけでございますから、やはり計画というものはある程度精査をして、一応の自信を持って金を貸さなければならないと思います。あっちこっちにこういう計画可能性があるということで、国会にも申し上げ、予算要求をする、それはそれでよろしゅうございますけれども、さてそれなら、はっきりわからないのに、その金を何でも貸すかといえば、私はそうは参らないと思います。
  21. 武藤山治

    武藤委員 私はそういうことを言っておるのではないですよ。そうすると、大臣考え方が正しいと私は思うのです、あなたは最高責任者ですから。そうすると、あなたの部下委員会における答弁は、事実と反する、間違っておると認識してよろしゅうございますね。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうではございませんで、そういういろいろな計画がございますということを申し上げたのだと思います。
  23. 武藤山治

    武藤委員 その計画を実行することは困難だとあなたは考えたので、予算要求もしないのか、それとも今まで百八十億もある金を十八億しか使っていなかったから、残った金を全部使い切るまで予算要求をしないという気持から要求しなかったのか、それはどうですか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 とにかく百数十億も、こういう国家財政のときに金を使わずに持っておるわけでございますから、そうして過去もなかなか具体的に計画が乗ってこないのでございますから、その上にどういう計画が積み上がりましょうとも、さらに何十億あるいは何百億出してくれということは、私は適当でないと思ったのであります。
  25. 武藤山治

    武藤委員 今度はあなたは適当でないという表現を使いました。私は先ほど好ましくないという表現を使ったわけです。適当でないという表現と好ましくないということとどのくらい違うか知りませんけれども、私はこういう予算執行状況は好ましくない、妥当でない、かように考えるのです。が、大臣どうです。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 事柄が二つ違っておると思いますので、今度三十八年度にさらに予算要求をすることはどうであろうかということについては、私はこれだけ金を持っている以上、それは適当でないというふうに申したのでございます。過去においてこれだけ予算を持ちながら、それを使わなかったことは好ましくないではないかとおっしゃれば、それは金を貸すのでありますから、適当な計画がなければ貸せない、むしろそれを貸したならば、かえって好ましくなかったかもしれないというぐらいに思います。
  27. 武藤山治

    武藤委員 あなた、この基金制度のできた法律の精神から見て、これはやはり東南アジア中心にして、低開発国開発しよう、日本経済交流を高めようということなんですね。  そこでお尋ねしますが、ボリビアチリーという国は、日本経済協力の上でどの程度の寄与率があるのですか。すでに今まで実行した中で、ボリビア銅鉱山探鉱調査費、これを海外鉱物資源株式会社に貸しておるわけでありますが、このすでに貸した三億四千万円のボリビア銅山チリー銅山調査費ボリビアチリーというものの国情をあなたは一体どのように認識をして、こういう計画が適当と考えておりますか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはたしか銅鉱山開発のための探鉱費であったと考えます。それはわが国金属鉱山会社が、国内探鉱もさることでありますが、海外に銅の鉱石を求めたい、こういうことから探鉱をやってみたわけであります。  御承知のように、一般的な政情というものは、あの地方はそう安定しているとは思いませんけれども、しかし銅鉱山開発などは、政情のいかんにかかわらず行なわれ得るものでありますから、探鉱をすることは差しつかえない。探鉱でありますから、必ず鉱石があるかないかということについては問題がございましょうけれども、しかしプロスペクティングをすることは必要であろう、こう思ったわけでございます。
  29. 武藤山治

    武藤委員 ボリビア政情は非常に不安定であることも私たち書物あるいは報道を通じて承知しております。しかもボリビアの首都の位置が、高度四千メートルという高いところにあり、銅の所在している地域などはみな三千メートル以上の高いところにあると聞いております。ほとんどが高山病で、労働生産性は非常に低いところだそうです。道ばたにごろごろ寝ころんでおるような住民の生活が、まだまだその国に行くならば散見される。しかも港はない。こういうところの銅山を調査するために、国民の血のにじむような税金をこういう形で貸し付けてやるというその態度は、私は慎重さを欠いておるような気がするのです。しかも海外経済協力基金の本旨は、東南アジア経済開発ということを中心考えておる。ただへ理屈を言うならば、東南アジア等という文字が一字書かれておりますから、等の中にはボリビアチリ南アメリカが含まれておるという逃げ答弁はおそらくあると思いますけれども、しかし法の精神東南アジア開発ということが中心のはずなんです。それはいずれとしても、そういうボリビアチリの高度四千メートルの銅を発見したところで、一体、その生産コスト考え日本国内に持ち帰ることを考え、諸般の港の状況などを考えた際には、好ましいところの投資だとは私は考えられない。あなたはその点どう考えますか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現実の問題といたしまして、探鉱という、鉱脈をさぐるということは、うまくいく場合とうまくいかない場合が当然あるわけでありますが、御指摘ボリビアの場合には探鉱でございましたから、三億五千万円でございますか金は貸しましたが、担保の方は実は四億より少しよけいとっておる。そういうところはやはり念を入れてやっておるつもりでございます。  政情の不安定ということをあまり申しますと、ラテンアメリカばかりでなく、東南アジア等でも、必ずしも政情は常に安定しているというわけにも参らないわけでございますから、むしろ計画そのものわが国経済にとって、あるいは経済協力にとってどれほど大事であるかということを考えてやって参らなければならないと思います。  なお、東南アジアが主体ではないかとおっしゃいます点については、わが国と地域的にも近うございますから、その方に重点をかけるということはそのように思いますが、しかし広く海外経済協力ということで、東南アジアに限ったことはない。わが国経済にとってよく、かつ将来の国際経済関係によろしければ、それに限るというふうには考えておりません。
  31. 武藤山治

    武藤委員 それではボリビアチリ銅山開発の目的が将来の国際経済あるいは日本国内経済考えた場合に好ましいのですかね。私は今提案されておる三十八年度予算を見ると、政府の方で考えておるのは、金属鉱物探鉱融資事業団というものを新たに三十八年度からつくります。これは何のためにつくるかといえば、貿易自由化によって外国の安い銅がどんどん入って参り、非鉄金属が入ってきて、日本銅鉱山が困るじゃないか、労働者はどんどん首を切られるじゃないか、そこで国内資源開発するように国家はもっと力を入れようじゃないかといって、ようやく今になって気がついて、自由化をしてからどろなわ式にこの融資事業団を三十八年度からつくるのですよ。そういうものとボリビアチリ銅山開発資金というものは、私は無関係に考えるわけにいかぬと思う。私たちは野党で批判の立場ですから、一つ一つのものを切り離して無関係に考えてもいいでしょう、しかしあなたたちはいやしくも国民全体の代表として、国の政治をつかさどる与党の大臣なんですから、もっと責任ある——この問題が日本労働者に、日本銅鉱山にどういう影響があるかということを十分勘案して海外投資というものをやらなければいかぬと思うのです。そういうものの規制もしなければいかぬと思うのです。そういう点から、今通産大臣もお見えになりましたが、金属鉱物探鉱融資事業団と、チリボリビアにおける銅山開発が行なわれた際に——日本資金でですよ——国内鉱山を圧迫しませんか。そういう点から考えて好ましいか好ましくないか、どうでしょう。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 探鉱事業団は、実は私も率先してその計画通産大臣と御一緒に進めた方でありまして、これは非鉄金属の将来への自由化に備えて、やはりどうしても国内鉱脈探鉱しなければいけない、そのために政府としても何がしかの助成をいたすべきだ、こういう考えでやっておるわけでございます。これは、今御指摘のように、まさに国内非鉄金属の企業、その労働事情、あるいは国内鉱物資源を持っておくべきである、そういう考え方から出ております。しかし他方で、申し上げるまでもなく、わが国のこれから先の銅鉱供給価格というものは決して安くはないのでありまして、国際競争から考えますと、世界で一番安いところの銅鉱わが国としても確保しておくことは必要であると考えます。ラテンアメリカのあの地方は、世界でも有数なカッパー・ベルトといわれておるところの、豊富な銅鉱のある地方でございますから、そこへ先方の国と経済協力関係に立って探鉱して銅鉱石を確保するということは、わが国経済にとって非常に必要であると考えます。
  33. 武藤山治

    武藤委員 大臣、ばかは休み休み言わぬと、私は大へんなことになると思う。日本経済に大へん利益になるというのですが、大へんという、語気を少し強めてまでして自信のほどを示したのですが、ボリビアチリの銅は、山の場合にはただでもやるから十年で掘ってくれと向こうの政府が言うような場所を、銅を掘り出して生産性考え輸送考え日本の銅とどのくらいのコスト違いですか。それだけ自信があるんだったら、どれだけ安く買えるのですか。あなたの計算を数字をもって答えて下さい。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国経済銅鉱石は四割以上外国から輸入いたしておると思います。輸入依存度は四〇何%と考えておるわけであります。そこで現実探鉱して、それは出してみなければわからないわけでありますが、品位から考えますと、輸送費を含めましても十分にその方が安い。それでありますから、さっきおっしゃいましたように、国内非鉄金属鉱山をどうするんだという問題が初めて出てくるわけであります。
  35. 武藤山治

    武藤委員 そこで、アメリカやカナダから買うものでなくて、ボリビアチリから日本が買う銅の価格は幾らですか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 こまかい数字にわたりますので、ただいまちょっと私申し上げかねますけれども、それは一般的に申して、わが国国内銅鉱資源開発するよりは安いということは、常識的には言えると思っております。
  37. 武藤山治

    武藤委員 大臣、だめですよ、常識的にはいえると思うなんといういいかげんな答弁をしては。さっきは大へん安い、大へん安いのは、アメリカなりカナダから現在買っている価格をあなたは頭に持っているのでしょう。私が今議論しているのは、ボリビアチリという高度四千メートル、三千メートルの高山病にかかるようなところの労働生産性考え、港を考え、そういうものを計算して実際に考えた場合には、そうあなたが自信を持って大へん安いなんというようなものじゃないと思う。そういう点はもっと科学的な資料に基づき——あなた責任者なんだから、もうちょっと私たちが納得のいくような答弁ができるように、この次までに一つ勉強し直してもらいたいと思うのです。これは要望しておきます。  次の質問に時間がなくなってしまいますから、企画庁長官にはこの程度にいたしておきます。  次に、通産大臣にせっかく足を運んでもらったわけでありますから、ちょっとお尋ねしておきますが、今あなたのいない留守に企画庁長官お尋ねをして、海外経済協力基金資金が運用益を含めて百七十九億円ある、約百八十億円あるのです。あなたの答弁は間違っておるのです。それはあなたの部下の数字によってはっきり私は百七十九億と確認しておりますから、もし私の方が違っておったら、あとで大臣名で訂正して下さい。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 運営益を含めればその通りです。
  39. 武藤山治

    武藤委員 その百七十九億円の金額のうち、すでに実行した予算は十八億円です。あなたは今、日本の輸出振興のために大いに力を入れて、日本経済の扶養力は輸出増大だ、扶養力の一つの柱として大いに輸出増強を叫んでおるわけでありますから、こういう資金が具体的に輸出振興にプラスにならなければいけませんよ。そうしないと、予算の執行というものは、私は非常にずさんと批判しなければなりません。そこで、この海外経済協力基金日本の輸出にどのような寄与をいたしておるか、どのような貢献をしておるか、通産大臣の所見でけっこうです、お尋ねをいたします。
  40. 福田一

    ○福田国務大臣 御承知のように、海外経済協力ということになりますと、そのプロジェクトの内容等をよく研究をしませんというと、金は出したわ、あとで返ってこないというようなことになっては困ります。それから、その相手方の国との交渉その他もいろいろございまして、こういうことをなるべく早くやるということも大事ですが、間違ってやったら大へんだということになりますので、慎重を期しておる。いささか慎重を期し過ぎておるじゃないかというおしかりを受けることはやむを得ないと思うのでありますが、われわれはそういう意味で非常に慎重にやらしておるという意味合いにおきまして、百八十億円ある資金が十八億円しかまだ使われておらないということは、まことに残念であります。しかし、現在、企画庁長官からも御説明があったと思いますが、もう三百億近くの申し込みがございまして、今しきりとその内容について検討を加えておる段階でございますので、なるべくすみやかに適当な事業にこの基金を利用できるように、今後大いに努力をいたしたいと考えておる次第であります。
  41. 武藤山治

    武藤委員 通産大臣にもう一つお尋ねしておきますが、たとえばボリビアとかチリエクアドルペルー、ナイジェリア、これらの国の輸出実績、輸入実績というものはどのようになっていますか。
  42. 福田一

    ○福田国務大臣 まことに恐縮ですが、今数字をここに持っておりませんのでお答えできませんが、あとで取り寄せてお答えいたしたいと思います。
  43. 武藤山治

    武藤委員 その数字は、私の調べでは非常に微々たるものです。日本の輸出総額の中に占める比率も、非常に微々たるものです。そういうところに金をつぎ込むよりも、東南アジアの同一人種で、しかも地理的にも非常に便利なところに投資をして、大いに経済を盛んにしていこうという考え方が、政府のとってきた考え方だと私は思うのです。従って先ほどあなたの率直な、残念だったという表現の中にあるように、今後こういう資金を十分活用するなり、あるいは活用しないのならば、大蔵省資金運用部資金に預けてある資金などは、当然戻して、こういうものを減税資金に充てるとか——大臣は財源がない財源がないといってこぼしているのですから、財源がないために減税もちょっぴりしかできなかったと言っているのですから、この百六十億円の金をそっくり財源にして減税をしたら喜ぶですよ。だからこういう計画を立てる際には、もっと慎重で迅速で、しかも計画が立たないと思ったら、直ちにその資金を効率的に使うような配慮をすることが、私は為政者の務めではなかろうかと思うのです。従ってそういう点を通産大臣も十分一つ、これから海外経済協力基金の活用を通じて、輸出の振興にプラスになるあなたたちの立場を活用しなければならないということを、私は強く要望しておきます。  時間が一時間半という非常に限られた時間でありますから、次の質問に入っていきたいと思います。  次に、大蔵大臣お尋ねをいたしますが、現在、世界の資本主義先進国といわれる国は、恐慌とまでは言われなくとも、大部分不況の状態あるいは鎮静の状態にあるということは間違いないと私は思うのです。従って、そういう不況状態あるいは鎮静状態の経済をどうしようかということで、各国の財政当局はいろいろな目標と対策を立てて努力をいたしておると思うのです。  そこで大臣お尋ねをしたいのは、過般勝間田委員の質問に企画庁長官が答えたのでは、昨年から本年にかけて現在の状況は、設備投資をし過ぎて、製造工業では平均二〇%、鉄鋼界は二五%、けさの新聞によると三〇%になっておりますが、石油化学は四〇%、こういうような操業短縮の状況だということを本委員会企画庁長官は数字をあげて答えております。すなわち高度経済成長政策で設備投資を超過大にいたした結果、その二割五分から三割というものは今日機械が動かない状態にある。すなわち三割の資金というものは、むだな設備をしたということに結果的にはなってしまった。おそらく大臣は、今はむだでもやがてはこれがフルに動いて、経済の規模が拡大されるのだと答えるかもしれません。しかしながら現状は、このように設備されたものが遊んでおるという状態は、不況と認識をすべきか。一体私は、これははっきり過剰生産の傾向でありますから不況だと思うのですが、大臣は現状の日本経済の認識をどう考えておりますか。
  44. 田中角榮

    田中国務大臣 主要工業諸国が、景気が非常によろしいというような状態にないということは今申されましたが、アメリカにしてもイギリスにしても、西ドイツにしてもフランス、イタリーにしても、二、三年前のような経済成長がたくましい当時の状況に比べて、多少鎮静の状態であることは、お説の通りだと考えております。日本の現状はどうかということでありますが、これは私たちは、設備投資も鎮静に向かっておりますと、こういう表現を使っておるのでありまして、景気が非常に悪いというふうに考え得るかどうか、これは比較の問題でありまして、日本の二年、三年前との比較から言いますと、経済成長率が実質一四%にも一五%にもなった昭和三十五年、六年の状態と比べますと、確かに経済成長率は非常に落ちておりますから、景気も沈滞ぎみであるというふうに言われるわけでありますし、もう一つ外国との例を考えますと、アメリカは三%か三・五%の経済成長率を四%ないし四・五%にいかにして引き上げるかということでありますし、イギリスにおいても、画ECの加盟ができなくなった今日、どのような財政投資を行なって景気の上向きをはかるかというような状態であることに比較をしますと、名目八・一%、実質六%余の経済成長率を見込まれる現在としては、もちろん過熱ではありませんし、過去のものに比べては相当沈滞はしておりますが、これが即不景気であるというように考え得るかどうかは問題があると思います。
  45. 武藤山治

    武藤委員 景気が沈滞をしておるということは認める、しかしこのことを不況と見るかどうかはいろいろ意見がある、あなたの意見はどうなのですか。これだけの設備投資が遊んでおって、しかも過剰生産、恐慌ぎみがくるというので、設備投資経済見通しは昨年よりダウンをして、経済見通し全般を見ると、不況に対処しなければならぬというあせりが経済見通しの中にはっきり現われておるのですね。設備投資は拡大しないという方向の数字を出しておる。それをあなたはただ沈滞ぎみだという表現で、不況とは認識しませんか。あなた自身の判断はどうですか。
  46. 田中角榮

    田中国務大臣 日本産業全体から考えてみまして、一部の過剰設備投資を行なった企業だけをもって全産業の状態を表現するわけにはいかないと思います。御承知の鉄鋼や石油精製工場とか、その他設備が過剰投資の行なわれておる面もありますし、操業度が六〇%、七〇%という面もありますから、これらの産業にありましては確かに不況感も相当深刻だと思いますが、しかし、一般的な全産業を見ますと、まだまだ設備の投資を行なわなければならない面もありますし、自由化に対処して設備改善、近代化等を行なわなければならない部面もありますし、相当下がって参りました卸売り物価も横ばいになり、この一、二月相当程度上げ方向になっておるというような事実、また国民の消費に対して供給面がバランスがとれておらないという面もありまして、流通面その他に対してまだまだ設備の投資を必要とする面もあります。その意味において消費者物価は上がっておりますから、産業全般の面から見て不況であり、不景気であるというように必ずしも言えないというふうに考えておるわけであります。
  47. 武藤山治

    武藤委員 これはもうはっきり、企画庁の見通しからいっても、答弁からいっても、不況であることは間違いないのですね。まだ沈滞だ、では沈滞と不況は違うのかといったら、沈滞ということは大体景気がよくないということであります。けれども、これは不況なんですよ。そんなに、政府が不況だという認識をしたから、どうも政策の失敗だと社会党に追及されるだろうからなんという考慮をしないで、やはり国民経済全体を考えて、事実を科学的にそのまま認識をして財政政策というものを考えないと、非常に片ちんばなひずみの出てくる不公平なものが財政政策の中に現われてくると思うのです。そういう点から大臣の意思を伺おうと思ったのですが、あなたがとうとうのらりくらりで、それは不況とは言えない、沈滞は沈滞だが、あるいは産業によっては不況だ。あなた自身の確固たる経済に対する見方というものをあなたは発表しないのですね。それはそれでいいです。  そこで池田自民党内閣の国民に贈った最大の贈りものは、高度成長政策の結果、まず物価の高騰ということは明らかに今日の日本国民大衆がはだで感じておる政府の贈りものであります。あるいは人いわく、交通地獄もそうだろう。あるいは高校入学の入学地獄も、急激に設備投資をあおり、高度成長をあせって他方の教育設備を怠ったひずみがこういう形になってきておる。あるいは所得の格差の拡大だという人もある。とにかく急激な酔っぱらい運転で高度成長をあまりにも急いで選挙政策を掲げたために、こういうような物価騰貴が起こり、交通地獄や入学地獄や所得格差というものが国民に贈られたということも私はある程度事実だと認識をいたしております。  きょうは大蔵大臣への質問でありますから、これらの高度成長政策の結果もたらした贈りもののうち、物価騰貴というものに対して財政上から一体どういう手当を政府はしようとしておるのか。三十八年度予算を通じてこの物価騰貴に対する考慮というものが私は非常に欠けておるような気がいたします。御承知のように、不況のときに、あるいは沈滞のときに財政当局としてとるべき措置には私はいろいろあると思います。もちろん今日の近代経済学、近代財政論の上に立ってものを考えるならば、予算規模の拡大ということも有効需要の拡大に役立つのでありますから、予算の規模拡大ということもげっこうでしょう。これは私は非難をし、否定をしようとするものではない。しかしながら、ただ単に予算の規模を拡大したというだけでは、その拡大された資金がどのように流れるかという資金の流れというものをわれわれ考えるときに、国民の多くの者に拡大された予算が均霑するような恩恵を与えるとは考えられない。もちろん三十八年度予算を通じて特に金が流れるのは、オリンピック関係の事業である土建業者あるいはそれに付随した産業というものに非常に多くの政府資金というものが流れることは明らかです。そういう方法で景気を上向きにさせることも、あるいは資本主義経済の立場に立つ財政当局としてはやむを得ざることであろうと私は思うのです。しかしながら、昨年末にイギリスのモードリング大蔵大臣が大減税を断行して、輸出競争力をつけようというので、自動車国内消費税の大幅減税を行なって大衆の購買力をふやそう、同時にそれが一挙両得に輸出価格のコスト・ダウンにそれを向けて輸出競争で勝とうというので、英国の蔵相は思い切った大減税をやったことは皆さん御承知通りです。本年のケネディの財政政策を見ましても、ケネディは、いい悪いは別としても、百億ドルの赤字財政を覚悟の上で所得税、法人税を基本にした購買力増大という見地からの三百五十億ドルの減税をケネディは発表いたしたのであります。この英米両国の景気を刺激しようとする政策の基本は、すなわち減税であります。大減税であります。しかも、それは所得税という国民の多くの者のふところに直接関係のある減税を通じて有効需要の拡大をはかろう、個人消費の拡大をはかっていこう、こういう考え方が先進資本主義国家のとられておる今日の財政政策であります。ところが、日本の最も政党政治家としてわれわれが信頼をし期待をしておる田中大蔵大臣の今回とった財政上の措置は、物価騰貴に対する国民への思いやりが非常に薄い。なぜ可処分所得をふやして、もっと国民大衆の生活水準を高めながら貯蓄の増強をはかり、資本の資金の充実をはかろうという英米が今回とろうとするような減税方針を堅持しないで、利子配当に重点を置き、しかもストレートに業界に利益が結びつくような観点から財政的政策を推し進めるというこの態度、私は、これはまさに国民に背を向けたうしろ向きの財政政策であると断ぜざるを得ないのであります。そういう点について、大蔵大臣は一体可処分所得増加策として、具体的に三十八年度財政の中であなた自身どういう考慮を払われましたか。可処分所得拡大策としての見地から財政をどのように運営をするつもりで予算編成をしたか、その点をお尋ねいたします。
  48. 田中角榮

    田中国務大臣 三十八年度私が組んだ予算は、精一ぱいの誠意と善意をもって組んだ予算でありまして、国民に対してうしろ向きであるというふうには絶対考えておりません。一歩でも前向きであり、前進的でなければならぬという基本に立って予算編成に当たったわけであります。  それから今ケネディ政策及びイギリスのモードリング大蔵大臣の減税政策を言われましたが、こういう事実に対しても、私は十分検討と配慮を加えたわけでありますが、もうアメリカは、御承知通りドル防衛をやりながらも、ドルの不足というものに対してどう対処しなければならないか、IMFから六十億ドルの基金をつくってもらおうというようなことも、これらに対する手当であります。そういう状態でありながらも、先ほど申し上げた通り、年間の経済成長率三・五%、これを四・五%くらいに上げなければ、五%程度の失業率を四%には下げられないということで、ケネディ政権の一つの大きな経済政策というよりも、政治的な運命をかけたと言われておるくらいに、国内需要のかき立てということに対しては相当な努力をしておるという国内的な問題がございます。それから、イギリスは、御承知通り、昨年外貨の危機になり、IMFからの借り入れ二十億ドルというような非常に大きな借り入れを行なわなければならないような外貨上の相当な困難な状態でありまして、これを前向きに解決するためにEECに対する加入も真剣に検討せられたわけであります。これが加入中断ということになって、今とられることは、国内有効需要の確保に対して減税政策も打ち出しておりますが、国際収支の状況から見ても、またイギリスの財政の状況から見ても、一体これが成功するかどうか、なかなか疑問のあるところであります。これはエコノミストが日本経済に対して評価をしながら、イギリスの国民に対して述べておる態度を見てもわかると思います。こういうように国内的な事情によって減税政策を唯一無二のものとしてやらなければならないイギリスやアメリカの状態とは、日本は違うということだけは申し上げ得ると思います。  今度の三十八年度予算で、国民の可処分所得をふやしてということでありますが、これは私も十分配意をいたしておるわけでありますが、いずれにしても、自由化を前提として日本の当面する重要な問題としては、産業基盤の強化と輸出力の増大、国際競争力をいかにして培養するかということにすべての国民の運命がかかっておるというふうに考えておりますので、国民の生活基盤を確保し、あしたへの希望をつなぐものは、産業政策をやること以外にはないという考えのもとで、産業政策を中心にして強力な政策の推進をはかっておるわけであります。
  49. 武藤山治

    武藤委員 大蔵大臣にちょっと注意をしておいてもらいたいのですが、答弁は質問をした個所だけきちっと答弁をしていただきたい。そうしないと私、時間をよけいもらいますから。あまり答弁を長々やられますと、私の質問時間に制限がございますから、よけいなことはなるべく言わぬようにしてもらいたい。  とにかく可処分所得増大策を大蔵大臣としては十分配慮した、これが今の答えです。しかし、私どもの調査では十分配慮したとは思われません。どういう点で配慮をしてないかという点については順を追って質問をしていきたいと思いますが、今の答弁に対してはまことに不満であります。  次に入りますが、大蔵大臣は昨年十二月十日、税制調査会から答申のあったことは御承知ですね。その税制調査会の答申あるいはその審議の内容と経過の説明、二冊配付をされました。おそらくこの答申についていろいろ異議のある人もあろうと思いますが、この内容は間違っていると思うかどうか、間違っていれば間違っている、間違っていなければいない、その答えをはっきり一つ聞かしてもらいたい。
  50. 田中角榮

    田中国務大臣 おおむね妥当であると認めます。
  51. 武藤山治

    武藤委員 答申はおおむね妥当である、従って妥当でない部分も幾らかはあるという意味であろうと思いますが、妥当ではないと思われる——おおむねというのですから、妥当でない部分もあるわけですね。妥当でない部分は具体的に一体どの部分ですか。
  52. 田中角榮

    田中国務大臣 日本語の感覚でおおむねというまくらをつけたわけでありますが、御承知通り、税法の改正は行政大権でありまして、政府責任においてこれが改正に対して国会の審議を仰ぐわけであります。その全きを期すために、御承知通り税制調査会なるものを設けて、国民の側からの有識者の意見を十分聞き、政府が法律改正により万遺憾なきを期すというためにこそ設けられたのでありまして、政府も、その基本的な答申に対しては尊重するという大原則に立っておりますし、当然尊重しなければならないという建前をとっておりますので、方向としては政府が首肯できるものであるということで、おおむねという言葉を使ったわけであります。
  53. 武藤山治

    武藤委員 そうしますと、私の質問の、間違っているかいないか、間違っていませんねということに対しては、間違ってはいない、まあおおむね妥当だ。いいですね、間違っていないではい、わかりました。  そこでその答申の中で、所得税の本来の負担は、実質所得に対する負担を中心考えなければならない、名目所得が上がったからといって、それにばたばた従前の税率をかけられたのでは本来の税の精神に反するという意味のことが書かれてあるわけですね。さらに物価上昇がある場合には、所得税が累進課税になっているため、実質所得に対する実効税率よりも名目所得に対する実効税率の方が高くなる。こういうことがこの税調の答申に書いてありますが、こういう税調の判断は間違っていますか、いませんか。
  54. 田中角榮

    田中国務大臣 理論としては正しいと考えます。
  55. 武藤山治

    武藤委員 そこで税調のこの理論が正しいということに大臣は賛成をされましたのでお尋ねをするわけでありますが、所得税の減税が、調査会の正しい理論に基づいてつくられた内容と、あなたが今回国会に出された内容とでは大へんな違いです。そこで所得税の減税を調査会としては三百九十三億円三十八年度減税をしよう、特に中小企業向けの留保所得課税の減税を二十億円認めよう、その他のものは全部従来通りに税率も制度もそのままにして二年間延長しようというのが税調の答申であります。税調の正しい理論と、あなたの提案された三十八年度の減税内容とが大へん違うというのは、この一点を見ても大へん違うじゃありませんか。あなたの提案をした今度の減税では、税調が全く答申をしていない利子所得、配当所得、その他の特別措置を含めて今回大減税をしようというのであります。しかもその減税の中身たるや、私たちがどうしても理解に苦しむ納得のできない中身をたくさん含んでおります。それでもあなたは税調の理論の正しいものを大筋として認めて今回の予算編成をした、歳入見積もりをした、減税をした、そういうようにお考えですか。私は税調の答申は全く踏みにじられてずたずたにされたという判断でありますが、あなたはどうですか。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 基本的には税調の答申を尊重し、これが実現をはかったというふうに考えております。税調の答申は、今申された通り三点にわたっております。第一点は、所得税の減税であります。第二点は、中小企業に対する留保所得の問題であります。第三点は、その他租税特別措置法にかかる問題であります。第一点につきましては、数字上のとり方は多少政府との間には考え方が違う面がありますが、所得税に対しましても、物価の値上がりを十分カバーでき得るということ、それに加えて、歴年やっておりますわが党政府の根幹である減税を引き続いて将来もなお行なうという立場に立って所得税減税を行なっております。第二の問題に対しては、答申通り措置いたしております。第三の問題、いわゆる租税特別措置法に関する問題は、答申の線をより一歩進めて諸般の整備を行なったわけであります。
  57. 武藤山治

    武藤委員 大臣、私は最初に可処分所得の増大策をとったかということを質問したのも、これに関連があるわけでありますが、政府の出しておるこの歳入見積り、収入予算の説明を見ますると、この二十七ページに「租税特別措置及び税制の整備」ということで、税調は一銭も減税をしない案を出したのにもかかわらず、あなたの方は租税特別措置による、利子以下配当を中心にして二百四十六億円減税、しかし、これ以外に——これは三十八年度一〇%を五%にしただけなんです。それ以外に、例年、従来の一〇%の税率でいっても、分離課税の特例と源泉徴収税率の特例という今までのそのままを残してあるものが三百十億円あるわけですから、その三百十億円に、さらに今回の五%減による減税ですから、この租税特別措置の項を見ただけでも、六百六十二億円というものが政策減税になるわけです。いいですね。利子、配当を中心に六百六十二億円の大減税をやっておいて、一千数百万人の所得税納税者、労働者、農民、中小商工業者に対しては二百七十七億円しか減税をしない。これはバランスがとれぬですよ。どうも片方にあまりにも恩典がいき過ぎますね。これで十分物価値上がりをカバーするような減税をしたなどという数字は、どこからも出てこない。あとでそれは一つずつ聞きますけれども、あなたはカバーすると言うのですから、具体的に表をもって数字でカバーするかどうかを説明してもらいたい。税調のわれわれに配った資料では、三控除それぞれ一万円ずつ引き下げなければ完全な調整ができないとしておる。そうすると、税調の理論、資料が正しいと言っておきながら、その正しいものだけを減税しなければ、あなたは十分カバーしたなどということは言えないじゃないですか。もっと率直に、カバーできないならカバーできない点はあった、やむを得なかった。しかし、今日社会資本あるいは輸出増強、こういうことで、そっちは削ってこうしたと、なぜほんとうの正直なことを言わぬのですか。私は、そういうことで逃げ答弁をしてはいかぬと思うのです。われわれは国会においては、真実を述べて、事実を語ってもらわぬことには、国民はそれを信頼するのですからね。そういう点で、あなたの答弁は、どうも誠意がないような気がする。  質問に戻りますが、とにかく所得税の方は二百七十七億円しか減税をしないで、これは物価調整の減税ですね。片方は、従来の分を含めて六百六十二億円、特に利子、配当がその中心です。あとのものはつけたりです。利子と配当をこんなに減税して、ほかのものを少しやらぬと、中小企業の味方の政府だと言えなくなるとか、いや非難が出るだろうという考慮から、おそらくちょこちょことつけ足しをしたものと私は判断する。ほんとうは利子と配当をごっそり負けて、それだけでやめたいけれども、それでは非難が出るからというので、つけ足しの特定公共事業や、合併に伴う清算所得、あるいは中小企業設備に対する割り増し償却、その他のものはつけ足しの減税にちょっぴり租税特別措置を認める。これはまことに卑劣な瞞着ですよ。国民をごまかしながら、こういう表で一部のものに恩典がいくような大減税をやるやり方ですね。正直じゃないですね。これは、あなたの性格に反する減税の中味ですね。そういう点で、私はまず所得税を、物価騰貴というものを調整するという立場から考えるならば、二百七十七億円と、政策減税の六百六十二億円は、どう考えても納得がいかぬし、均衡がとれないし、不公平である。あなたは不公平ではない、正しいんだと言い切れる論拠があるのですか。
  58. 田中角榮

    田中国務大臣 数字的な問題について、物価値上がりと減税分との比較に対しては主税局長からあとで申し上げますから、それで御了承いただきたいと思いますが、今租税特別措置法において今年度の減税をした分は少ないようであるけれども、すでに特例をもって納めなければならないものに対して減免税をしているものが非常に大きいから六百何十億になる。六百何十億対二百何十億であるということでありますが、その理論をそのまま申し上げると、今まで過去十年において行なわれてきた減税は、一般減税を中心にして行なわれておりますことは御承知通りであります。でありますから、今まで一兆円余にわたっての減税を行ないましたが、その七割余は所得税中心の減税であります。それが租税特別措置法による分と年度別に平仄を合わせればどうなるかということは、あとからまた申し上げることにいたしまして、いずれにしてもこれが非常に不公平なものであるというようなお考えにはお立ちにならないようにしていただきたい。  また、先ほどあなたは、あっさり言いなさいということでありますが、これは勝間田委員にも申し上げましたが、私も初めての大蔵大臣ですから、やりたいことは当然であって、減税政策は第一に考えておったわけですが、やはり世界的な情勢の中でわが民族の逢着しておる事実を十分見まして、元も子もなくするというようなことよりも、行政の責任ある政府としては、物の軽重というものを十分考えながら、諸般の調整をある時期において行なわなければならないということは、これはもう政府のつらい立場でありますが、当然またそうあらなければならぬと思うわけで、自由化に対応して、国際競争力をつけていかなければならないという現実を見るときに、産業政策として種々な政策が行なわれることは、ただ大企業中心であるとか、産業界中心であるというような簡単な理論をもってお片づけにならないで、十分一つ検討していただきたい。私が去年例の電力に対する融資をいたしましたときも、造船の計画を取り上げましたときも、肥料の問題を片づけましたときも、今度の石炭の問題を政府がお互いの努力によって片づけようとすることも、これは昔であれば、大企業中心であるというような議論に通じたと思いますが、現在外に向かって日本が貿易をしていかなければならないというときに、また国内においても、これらのものが分離して一つの企業として立っているわけではない。造船一つがおくれたために何百万という下請企業、中小企業、お互い国民にどのように影響するかという事実を調べてみますとわかることであると思う。国際的なこういう情勢に立たされている日本というものは、お互いが一つ一つ分離して考えられるものではなく、やはりわれわれの生活基盤、産業基盤というものをほんとうに確保していかなければならないのだという建前に立って減税政策を行なったわけでありまして、あなたがあっさり言えといえば、諸般の情勢やむを得ずということでありまして、来年、再来年、引き続いてこれが不足であるというならば——いうならばということではなく、所得税減税に対しては勇往邁進して参りたい、こういう考えでございます。
  59. 武藤山治

    武藤委員 大臣答弁は、全然答弁になっておらぬ。納得できません。全く納得できない。というのは、あなたは、本会議における有馬議員の質問に答えても、また本委員会における勝間田さんの質問に答えても、「物価の値上がりよりも減税率が少ないという場合には、増税式になるというような理論が生まれるかもしれませんが、少なくとも今度政府が減税をいたした一般減税については、物価の値上がりを十分織り込んで、少なくとも増税にはならない」と、こう答えておる。ところが、あなたが先ほど正しいと認めると言った税調では、はっきりこう言っているじゃないですか。税調の答申の三十二ページに一、二、三と、しかもその基礎控除のみを引き上げた場合、さらに基礎控除と扶養控除のみを一万円ずつ引き上げた場合、さらに第三には、基礎控除と扶養控除と配偶者控除、この三つを一万円ずつ三万円引き上げ、減税を行なった場合に、最後の場合だけ初めて調整ができるということがはっきりと答申の中に書いてある。あなたはこれを守らないのですから、調整がし切れているなんということを言うのがおかしいのです。もっと具体的に、すでに税調の一部の委員の中から、実質増税が心配だという文句が出ておるじゃないですか。これは新聞の間違いですか。しかも、この税制調査会の中で特に増徴になるという心配から政府案に強硬な意見を述べた人は——人までちゃんと書いてある。ですから私は、あなたとここで論議するよりも、こういう人をこの委員会へ参考人として呼んで十分聞きます。これはあなたが幾ら陳弁努めても、この案をつくった税調の委員自身が増税のおそれがあると言っているのですからね。しかも答申の三十二ページの文章を読むならば、今度の政府の所得税減税では物価騰貴を調整し切れない、そういうことが明らかなんです。あなたは主税局長に数字でごまかさせようとしても、私はきょうは主税局長答弁は聞かないですよ。あなたは要求してません。大蔵委員会でゆっくりあなたの事務当局としての答弁は聞きますから。大体政策減税を決定したのは大臣なんです。あなたと総理大臣の相談でつくったのですからね。きょうは私は、主税局長をしてなんというあなたの答弁は聞きませんよ。それはだめです。あなたに答えてもらう。従って、あなたが本会議なり委員会で、増税にはならない、十分政府は物価の値上がりを織り込んで心配がない、増税にはならないという答弁は、税調の正しい理論とは一致しない。あなたの判断が間違っている、増税になる。こういうことを私ははっきりここで言っておくだけで次へ進みます。これはもうはっきり増税になりますから。  そこで、今日の利子配当の問題を一つ最初に考えてみようじゃないですか。利子所得の分離課税という特別措置で二百十億円従来減収になっておった。これは本年三月末日で特別措置の期限は切れるものであったわけです。その次の配当所得の源泉徴収税率の特例で百億円、これもことしの三月一ぱいで特別措置の期限は切れるものです。ですからこれを今度五%に税率を安くする。すなわち減税倍増ですね。利子と配当者には減税倍増ですよ。その減税倍増のプラスをしたものを今度の利子所得と配当所得者に対する減税として恩恵を与えることになる。そういうような今までの二百十億円の利子と、配当の百億円、三百十億円の減税では物足りないのか、不足なのか。日本国家財政上から見てこれだけの従来の減税恩典では足りないのかどうか。そこはどうですか。足りないか、少ないかだけをきちっと答えればいいのです。
  60. 田中角榮

    田中国務大臣 そう簡単に足りないか、少ないかと言うわけにはいかないのでありまして、これから資本の蓄積を行なわなければならぬということ、貯蓄を増強しなければならないということが要請せられておりますから、この目的を達成せしむるためには、今年度においては一〇%の源泉を五%に引き下げましたが、私は、将来国際的な競争等を考えると、全廃の方向に進んで行くのではないかというふうに考えております。しかし、これはまだ税調に対して、かかる政策的な問題に対しては基本的な問題を諮問いたしておりますし、来年、再来年度予算までには、その年度における予算編成上必要な事項として税制調査会から当然答申がいただけるものと思いますので、私の考えだけを強行しようなどという考えは毛頭ございませんが、税調の意見も十分お聞きしながら、方向としては優遇措置を講じていくことがいいのではないかというふうに現在考えております。
  61. 武藤山治

    武藤委員 そういたしますと、田中さんは、本来利子所得と配当所得は税金をとるべきでない、全免をすべきだ、そういうあなたの持論なんですね。その持論から見ると、利子所得と配当所得から税金をとるという今日の制度そのものが不満だ。従って、特別措置によってある程度の減税はしてもらっておるが、これではとても足りないどころじゃなくて、あなたの基本的な考え方からいくと、税金をとること自体があなたはいかぬというような考え方のようです。全免をしたいというのですから。だから、三百十億をもっと減税してやろうと、一〇%を五%ぐらいにしてやるのはまあいいだろうという、めのこ勘定で五%にしたわけですね。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 日本がこれから国際場裏に裸で出ていかなければならぬ、しかも貿易依存の国である。歴史を言うまでもなく、実際日本から米を輸出して民族が百年の間に倍、三倍になったわけではありません。明治初年の人口は、明治五年に三千四百万でありますが、わずか九十年で九千四百万になっております。一億になんなんとしておるわけでありますが、この民族が第二次大戦で全くまる裸になりながら、今日の産業的ないんしんをきわめておるということ、将来民族が何に運命を託すかというと、やはり貿易依存の国であるということは、これは歴史が証する通りであります。また、そういうときに、原材料を持っておる国々と持たない日本がこれから裸で国際競争場裏で立ち向かっていかなければならないとしたなら、一体どうしなければならないかということは、もう産業を強化していく以外にはありません。しかし金利の面において、どこの国よりも、原材料を持っている国よりも、またシェアを自分自身が確保できる国々よりも金利は高いのであります。私は、そういう意味において、低金利をやるとか、いわゆる国際金利にさや寄せをする場合にも、どういうふうな状態で環境づくりをしなければならないかということは、より高い立場で考えなければならないとい奇考え一つでありますし、もう一つは、貯蓄をしながら物価がだんだんと上がってきた、いわゆるインフレになってきた。日本人は貯蓄心が非常に旺盛でありますから貯蓄をして参りましたけれども、少なくとも貯蓄をしてくれる方々に対しては、将来これが投資をされて自分たち自身の生活の向上に戻ってくるのだという観念、その上なお政府ができる限り政策上の恩典を与えるということは当然のことだ。また、そうしなければ自由化に対処していけないというような基本的な考え方に立ったのでありまして、狭い技術論また比較論だけによって踏み切ったわけではございません。
  63. 武藤山治

    武藤委員 国際競争力をつけるために、結局産業資金を預金という形で多額に吸収をしようというねらいから、あなたは利子の所得に対しては税金をかけないのが好ましい、こういうことですね。資金量をふやして、そうして低金利政策を断行できるように預金量をふやしていこう、そのためには利子課税なんかはしない方がいいんだ、こういう考え方なんですね、今の答弁は。そうしますと、一体、利子所得に税金をかけなければ貯蓄が増強される、利子所得に対して一〇%から五%に減税を倍にしてやれば貯蓄がさらに増大をされる、すなわち、端的に言えば利子所得に対する税金と貯蓄性向との関係ですね。そういう税制上の優遇措置によって貯蓄性向というものはどのように変遷をしてきたか、過去の数字がそこにありますから一つ答えて下さい。
  64. 田中角榮

    田中国務大臣 御質問にまっすぐ答えられないで申しわけありませんが、貯蓄減税が行なわれる、また免税というような方向を打ち出すということがもしありとすれば、そういうことによって預金がふえるのだという貯蓄増強のためにのみ私はこれらの政策をとっておるのではありません。この点は誤解のないようにしていただきたいのですが、これは税制理論から言いますと、私も専門家の主税局長からさんざんレクチュアも受けましたが、いわゆるそういう専門的な議論でなく、政治的な立場から考えまして、非常にテンポの早い国際情勢、非常に今までの歴史では考えられないような経済の変動等に対処して考えるには、私は租税措置法というものは弾力的に運用すべきである、またそうでなければとても事態に対処できるものではないという考え方を前提にしておるわけであります。西ドイツなどは戦後十七年間にどのような配慮をしてきたか、またイタリアその他の国々がどういうような配慮をしてきたかということを考えれば、われわれも、そういう方面に対して相当前向きでものをやはり考えていかなければいかぬというような考えであります。特に難民が東独から流れてきたときには、思い切って難民収容施設に対しては免税を行なう。難民がとまれば、この特例措置はとりやめる。私は、そういうふうな政策的な税制に対しては、より弾力的に行なうべきだというような考えもあわせて、今度の利子減税に踏み切っておるわけでありまして、これを踏み切ることによって貯蓄がどれだけ増強するというふうな面からは——あとから過去の問題に対しては数字をあげて申し上げますが、そこに重点を置いたものではない。ただ、結果論として、貯蓄も増強せられるであろうということは否定いたしません。
  65. 武藤山治

    武藤委員 とにかく二百八十六億円の取れる税金を取らないのですからね。三十八年度まけてやるのですからね。そのことによってどの程度貯金がふえるかどうかわからないなどというあやふやな話で、そんないいかげんな話でもって、私は減税をこんなにやられては大へんだと思うのですね。利子所得だけですよ。それで所得の方だけは、こまかいデータを調べて、もうこれなら何とか物価との調整ができたろうなどという、でたらめの数字を合わして、これは増税にならぬと言って、へ理屈をさんざん言う。利子の方を質問してみると、何だかさっぱりわからぬ。どのくらい効果があるか、貯蓄性向に寄与するかもようわからぬ。ただ政策的な見地から、東ドイツから西ドイツへ流れ込んだときには税制上の措置をどうだとか、そういうことでは答弁にならぬですよ。そんないいかげんな数字でもって国家財政を切り盛りすることは、まさに天人ともに許さぬと思う。たとえば、具体的に過去の貯蓄性向を見てみようじゃないですか、税調で出したやつだけでも。昭和二十八年からずっと貯蓄性向の伸びを見ると、一〇・七五%が二十八年で、年々貯蓄性向というものは向上しております。現在は貯蓄性向が二〇・五三になっています。ということは、世界的に貯蓄をしておる国民性をここで現わしておるのです。世界各国の貯蓄性向をざっと一覧表を出してみると、おそらく日本の貯蓄性向は最高ですよ。そのくらい日本人は老後の心配がある、病気の心配がある、不時の災難の心配がある。すなわち、社会保障が完備をしてないから、結局生活は苦しいけれども、貯金をするというのが日本の実態なんです。そのことが、二〇・五三%という貯蓄性向を示しておるのです。そのことは、私が言わなくとも、かなり権威あるいろいろなもので、金融財政事情の中にも貯蓄の性向がいろいろ具体的にこまかに数字が出ておる。あるいは最近の日本経済新聞の統計資料を見ても、各人がどういう目的やどういう状況から貯蓄をしておるかということも、かなり詳しく数字が出ておる。日本の学者の調査によっても、利子課税を減税することによって貯金がふえるなどという数字は、どこからも出てこない。出てくるのは、田中蔵相の頭の中から出てくるだけです。だから私は不思議なんです。ところが、あなたは今答弁で、ふえるともはっきり言ってない。ふえるかもしらぬが、わからぬ。貯蓄性向がふえるかふえないかわからぬものを、社会資本の充実、国際競争力の強化、対外的に競争するためには国民は犠牲にならなければしようがないという理論じゃないですか。戦争中の理論と同じじゃないですか。国際競争に勝つためには、国民の所得者はがまんして下さい、農民、労働者、商工業者、がまんして下さい、利子所得や配当所得をうんと安くして、最後には免税にして、そして貯蓄をうんとふやして国際競争力をつけるのですという理論でしょう。国際競争するためには国民の大部分は犠牲になりなさいという理論じゃないですか。そういう理論で、利子課税と貯蓄性向との関連も具体的に答弁できないで、そういう資料に基づかないで、これだけの膨大な減税をするということは、まさに不公平な政治です。国民に対しては冷淡無告な課税ですよ。私は、こういうバランスのとれない不公平な利子所得の減税をあなたがなぜ行なったか、何かほかに圧力があって、あなた自身の良識的な良心に基づいての政策判断ではなくて、他に何か圧力がある、そういう原因があってのことじゃなかろうかと思うのです。あなたどうですか。
  66. 田中角榮

    田中国務大臣 圧力に屈するようなことは断じてありません。あなたが今御質問になっておられたことを前提にしてそのまま私が申し上げても、相当配慮をした減税だということがそのまま受け取られると思うのです。あなたは、今世界の情勢を見まして、一〇・七五%であったものが二〇・五三になった。確かにそれは国民が、社会保障の問題もありますし、これは余力のある人が使い切ってしまわないで、余った金を貯蓄しておるのではありません。やはり将来のために、着物を三枚着るところを二枚買っておこうというような気持、しかも、民族的に次代の国民のため、また自分の子供のために貯蓄をしてやろうということでありますから、私は、今度の貯蓄減税に対しまして、先ほども申し上げたように、これは国民ほんとうに血の出るような金を将来のために蓄積をしておるのでありますから、こういう人に対して税を取っておるということ自体が考えなければならない問題だと思う。だから、理論的に言って、所得税を減税するだけが一般に還付をすることではないということであります。でありますし、先ほど申し上げておるように、貯蓄を増すことにのみ重点を置いて貯蓄の減税をやったということを言えば、あなたが今言われるようなことになると思いますが、いずれにしても、そうではなく、貯蓄をふやすというよりも、先ほども言ったように、いろいろな理由がありますが、その中の一番大きな理由は、国際競争力をつけるというような——現在においても利息は非常に高い。これはただ日銀の公定歩合の引き下げだけによって政府が人為的に行なえるものではないのであります。でありますから、金融の環境整備もありますし、また、国民がより貯蓄をするということにも意を用いなければなりませんし、それらのことを十分配慮した結果、貯蓄減税を行なったのでありまして、これも、私は、ある意味においては貯蓄をする人を守ってやる、また利益を確保してやるというわけではなく、一般減税、すなわち所得税の減税にも通ずるものだと考えております。
  67. 武藤山治

    武藤委員 大蔵大臣答弁はそれだからつじつまが合わなくなる。あなたは今前段で、零細な苦しい中だけれども、老後のことや不時の災難や教育や、いろいろのために貯金をしておるのだ、そういう人に減税してやるのはあたりまえじゃないかという理屈ですね。それは、知らない新聞記者の人や何かは、なるほどそれじゃ大蔵大臣の言うことは正しいと思うわね、今の議論では。ところが、日本の今の実際の預貯金——五十万円までの郵便貯金には全然税金がかからない制度になっておりますし、さらに今までは貯蓄組合制度というものがあって、匿名で貯金をしておけば、五十万円までは何口持ってたって税金を取られなかったのですから、従って、今までの総預金額に対して税金を取られていた率は、わずか一三・一%ですよ。日本国内の総預金のうち、一割三分しか税金の対象になっていないのですよ。ですから、いなかの郵便局や信用金庫や銀行へ五十万までの貯金をしておる人たちには、もともとこの利子所得の減税は全く何の関係もないのです。減税の恩典を何も受けないのです。ですから、今度あらためて一〇%を五%にするということは、それ以外の人が恩恵を受けるのですよ。どういう人が恩恵を受けるかというと、税調の資料を基礎にしたり、私の調査を基礎にして考えてみましても、年間所得が大体二百万円をこえる所得者——たち国会議員は二百万円以上もらっておるから、あるいはそのやや前後でしょうが、その程度の人、二百万円をこえる所得層に恩典が非常に厚いのであります。税調の調査では、総所得税納税者のわずか一・三%しか利子所得税は納めていない。一・三%というと、あなた、全人口の何%になります。わずか〇・三%ですよ。納税者の数で二百二十三万六千人でございます。これだけの人たちが利子所得税を納めておる。この人たちが減税倍増になるのです。一人当たり幾らの減税になると思いますか。一般の所得者には一人当たり千七百数十円しか減税にならない。利子所得を今まで納めておった人にはそれの八倍以上の減税になるのです。これは不公平ですね。あなたがどう弁解をしても、貯蓄増強には無関係のようであります。全く無関係です。もし関係あるとするならば、これだけの減税によってこれだけの貯金がふえるぞ、そうすると日本の預金総量はこう変化するぞ、そのことによって、今日の金利制度というものはこのくらい低金利にできますよ、そして国際競争力はこうついて、日本国民に、所得にこうはね返ってきますよ、生活水準にこうはね返りますよと、理路整然と答弁して下さい。もしそれが貯蓄に貢献をするならば、その寄与率も明らかにして下さい。それをしないで、ただ一生懸命ためた人に税金を安くしてやるのはけっこうだなんというと、みなその通りだと思いますが、かかっている人とかかってない人の階級をぴちっと分けると、ほんとうの高額所得者に大恩典を与えて、大半の勤労者、農民、零細商工業者はほとんど全くといってもいいほど恩典を受けない。ここで記事を書いて下さっておる新聞記者の諸君も、おそらくだれもこの利益は受けない。そういう利子所得の大減税です。これではあなた、国際競争力を強めるためにはそういう不公平はがまんをしろとおっしゃいますか。どうでしょう。
  68. 田中角榮

    田中国務大臣 利子所得につきましては、昭和三十八年度分として約千七百八十億円程度のものが対象になると見込まれますから、これを一〇%現行税率でかけると百七十八億ということであります。しかし、現行の国民貯蓄組合法が非常に乱用をせられておるということで、五十万ずつ幾つも幾つもやっておるというようなことで、いろいろな問題を起こし、また、これが伝票の整理等によって銀行はねじりはち巻で徹夜でやらなければならぬために、資金コストに非常に大きく響いておるとか、そういう問題もありまして、これを五%にいたしたわけでございます。これを五%にすると、大体どのくらいの金額に五%かかるのかといいますと、大体三千億程度と見ておるわけであります。でありますから、五%で百五十億の減収が立つわけでありますが、これらの問題につきましては、先ほどから申し上げておる通りただ貯蓄をふやすということだけではなく、またその金利水準をだんだん国際金利にさや寄せをしていかなければならないとか、また貯蓄性の非常に高い国民に対し政府がそれらの適切な施策を行なわなければならないとか、そういう諸般の情勢を勘案してやったことでありまして、この貯蓄減免税というものが要らないのだということはお考えになっておらないと思いますが、それをやるだけの余力があるならば、その分だけでも所得税を減税した方がより理論的であるという考えで、御質問になっておられると思います。所得税の問題その他に対しては、引き続いて減税を行なうという基本的方針を明らかにいたしておるのでありますので、以上御了解賜わりたいと存じます。
  69. 武藤山治

    武藤委員 それは答弁になっておらぬ。全く答弁になっておらぬ。というのは、私の言っておるのは、こういう一部の少数の人、高額所得者、平たくいえば大金持ち、今の減税は大金持ちは天国、働く者は地獄の減税ですよ。私は、それが理論的に正しいとかなんとかあなた言っているけれども、そんなことじゃないのです。公平を欠いておる。格差をますます拡大しておる。だから、あなたの意図するような国際競争力を強化する役割をこれが果たす、あるいは貯蓄増強の役割を果たす、そして低金利政策の方向に進む。だとするならば、その一つのプロセスを数字で説明したらいいでしょう。たとえば、これだけの減税をすることによって預金量はこうふえていく、そうしてその預金量が日本の企業の回転の油となって、すなわち資本となって、日本経済をこのように前進をさせる、近代化させる役割になる、そうして金利はこの程度まで年次計画を立ててみたら下げられる、再来年はどう、その次はどうぐらいまではいける、そのためには必要な資金量は大体幾らあったらいいですか。具体的に聞きますが、日本の今日の利子を国際水準までの金利体系におろすには、あなたのこれからの見通しで、今の経済体制の中でどのくらいの預金量が集まればそれがいきますか。
  70. 田中角榮

    田中国務大臣 それは、うまく計画経済をやっておれば幾らでも計画はできますが、中国においてもソ連においても、そんな計画が当たったためしはありません。わが政府においても、経済見通しをずっと歴年立てておりますが、その間において、当初の経済見通しの約倍くらいにもなっておるのであります。しかも、私が今申し上げておりますのは、今度行なった貯蓄減税というものの目標はどういう根拠に基づいてやったのかというから、私は先ほど申し上げた通り、あなたも先ほど言われた通り、国際金利にさや寄せをしなければならない、その環境づくりの一助にもならなければならぬし、事実国民は金が余っておる者だけが貯蓄をしておるわけではありませんから、貯蓄に対しても十分配慮しなければならないし、それからまた、何十万人かの、大した人ではなく、相当高額者に対しての優遇ではないかと言われますが、これが現在のような状態で、貯蓄をするよりも株に投資した方がいいのか、株に投資をすることよりも土地でも買っておいた方がいいのか、こういう問題で、いわゆる景気過熱も招いたのでありますから、それらの事態をも十分考えて、日本人が持つ余力というものができる限り国が目ざしておるような方向に向かって集約をされていくというためには、政府は適切な方策をとらなければならないのであって、これで今貯蓄減税を五%に下げたために一体どの程度寄与するのかというものは、これはつくれ、こう……(武藤委員「当然そのくらいのものをつくらなければ、これだけの減税はできないですよ」と呼ぶ)これは減税をやりますと、各層別にどのように及ぼすか、これがどのように寄与したのかという問題に対しては、これからお互いに十分検討することでありまして、その上に、なおこれが寄与率が大きければ来年全廃しようという議論も起こってくるのでありまして、現在の一〇%を五%に減税をすることによってどのくらい貯金がふえるだろう、それは申せと言えば言われますけれども、それは無責任自信のない数字を申し上げるにすぎないのであって、そういう形式的な御答弁を申し上げるよりも、政府の意のあるところを、一つ真意を御理解賜わりたいと思います。
  71. 塚原俊郎

    塚原委員長 武藤君、申し合わせの時間が経過いたしましたので、結論をなるべく早くお急ぎ下さい。
  72. 武藤山治

    武藤委員 大臣答弁を聞いておると、全くもう理論は支離滅裂でございます。全くつかみ銭的な減税をやった以外にない。ただ、私は、最初に税調の答申を正しいか間違っておるかという質問をして、あなたは間違っていないと言う。間違っていないということは正しいということです。その正しい資料によってみても、減税恩典を与えることによって貯蓄性向はふえる見通しがない、そんなことは疑問だということを書いておるわけだ。今までの過去の実績から見て、可処分所得をふやすことによって貯蓄性向は増大をしておる。これが結論です。そうして利子所得課税というものに対しては、今の特別措置すらもはずして、本則に戻って税金をうんととる方向が、税調の基本的な考え方なんです。あなたとは全く違うわけです。あなたは、こういうものは全廃してしまえ、税調の答申は、こういうものは本則の法律のもと通りに戻して、特別措置をはずす方が本来的な姿だという考え方の方が強いのです。あなたは、全くそういう税の公平という税調の立場といろものを踏みにじっておるのですよ。あなたが、いや踏みにじってない、気持の中では尊重したんだ、十分考慮したなどと言っても、今日出てきた事実は踏みにじっているのですよ。そこで問題があるのです。しかも、この中に、利子所得に対する特別措置を拡大すれば、後に述べる配当所得の分離課税の問題がやかましくなってくるという心配をもしておる。ところが政府は、税調のそういうことの答申は見ないで、政策的につまみ銭で配当と所得と両方をばかっとまけてやってしまう。全く筋を無視し、科学的根拠を無視し、国民の大部分の納税者を犠牲にし、あなたと総理大臣の好みによる減税です。そう言われても、これが正しいとなると、弁解の余地がない。税調が正しいとなると、そういうことになる。そこであなたは、幾ら私が質問をしていっても、いや国際競争力だ、国際金利さや寄せだと言ったって、具体的にはどういう効果があるかといえば、何にも答えられないのだから、そうきめつけられたってやむを得ないでしょう。しょうがないでしょう。もしそれが違うのだというなら、あなたやはりこの次きちっと数字を出して、税調が調べたように、あなたのアイデアでこれからのプロセスと科学的な資料というものを持って、私はこういう将来の日本経済に貢献をすると思ったから、こうやるのだともこれをはっきりしなければ、一国の大臣ともあろうものはいかぬですよ。大臣の失格者になりますよ。私は、ひそかに、田中さんは特に官僚出身の政治家でないだけに、内心ほんとうに敬意を表しておるのです。こういう政治家が一人でもふえるということが、日本の政党政治発展のために好ましいと思っておったのです。ところが、今度は、政党政治家がある程度官僚を牽制する力を持つのはいいが、学者や公平な人までみんな入れた税調の意見まで踏みにじって、線路からはずれて、脱線をしていくに至りましては、いささか不安の感を抱かざるを得ないという心境です。こういう点は十分一つ日本の財政をあずかっておるのですから、あなたは慎重にやらなければいかぬと思うのです。あなたの将来の政治生命にも私は非常な心配をいたすものです。とにかく、貯蓄増強はそういうことで論拠薄弱、大臣答弁はなっておらない。自民党の諸君は、質問が少し痛いからといって、そうあせるものではありませんよ。やはりゆっくりやらせなければいかぬ。  もう一つ、配当所得の問題についても、配当所得の五%にまた減税をする。しかも、配当所得は、証券界が希望してなかったかしらぬが、利子所得の減税に付随をして証券の方も恩恵がくるというような、たなぼた式に利益を受ける、こういう結果になってきたわけです。これもまた、三十五年分の実績の調査に基づいて調べてみましても、年所得百万までの所得者が、配当所得申告者の五四・九%を占めています。百万以下の人が人員では五四%。しかし、配当の金額の方の割合で見ると、百万円以下の所得者は、わずか一一・一%しか配当金額ではふところに入っていないのです。これに反して一年間五百万円以上の所得者、この人たちが総配当金額の七二・四%、七割二分は年間五百万円以上の所得者が配当所得というものを得ておるのです。すなわち、年所得百五十万円以上の高額者が、非常にこの減税によって恩恵を受けます。私は、こういうような一部高額所得者だけが大恩典を受ける、同時に、同じ年に所得税の減税は非常にちょっぴり、これじゃ均衡がとれないじゃないですか、大臣。私は、そういう点で、税の均衡、公平、国民の所得格差の是正、そういう観点から見るならば、この配当所得の減税もまことに不当である、不正とは申しませんが、不当である、こう考えますが、あなたはどう考えますか。
  73. 塚原俊郎

    塚原委員長 武藤君、それで終わって下さい、もう十五分経過いたしております。理事会で申し合わせた時間を守っていただきます。
  74. 田中角榮

    田中国務大臣 もう国民の六〇%も株式所得を得ているということでありまして、一部の投資家の利益を守るというような観点に立ってこの問題を論ずべきでないことは、御承知通りでございます。しかも、現在の産業の資本形態を見ますときに、非常に自己資本の比率が悪いのでありまして、先ほどから申し上げておりますが、これから国際競争力をほんとうに強めていくという立場から考えても、資本の蓄積がいかに将来の日本のために重要であるかということは、言うを待たないわけでありまして、政府は、より高い立場で、これらの国民の将来の投資、将来の方向に対して、しかるべき施策をやることは政府の務めであるという考えで、時宜に即した施策を行なったということであります。
  75. 塚原俊郎

    塚原委員長 委員長から武藤君に再度申し上げます。お約束した時間が過ぎました。
  76. 武藤山治

    武藤委員 あと五分間で終わりますから…。
  77. 塚原俊郎

    塚原委員長 分科会その他もございますので、残余はそのときにしていただきたいと思います。では、あと一問だけ許します。
  78. 武藤山治

    武藤委員 一問だけいただきましたから——今の答弁も全くなっておりませんが、だいぶ与党の諸君もやあやあとせき立てますから、五分間でやめます。この一問でやめます。  いろいろ利子所得、さらに配当所得の減税の根拠について、理由についてただしましたが、どうも私の納得のいく回答は出ません。全く国民を瞞着した減税のやり方で、不公平きわまりないと断ぜざるを得ません。この減税をいたした動機というものを私の推察によるならば、私は非常に不純なものではなかろうかと推察ができるのです。私は、しかし、あえて不純なものがあると断定はいたしません。  そこで、私は、一つだけ大蔵大臣お尋ねをしたいのでありますが、十一月十五日の官報に、昨年一月一日から六月三十日までの政治献金の報告が報道されております。この政治献金の中で、証券業者から寄付をされた金額——一問しか許されておりませんから、自分の方から申しますが、自由民主党に二千万円、宏池会という、おそらく池田さんの派閥の会であろうと思いますが、宏池会という会に一千万円、しかも東京証券正会員の会から六百万、野村証券から百万、山一証券から百万、日興証券から百万、大和証券から百万、こういうように、証券会社からわれわれの観念からいくならば多額の政治献金が出ております。こういう政治献金は、全く無関係に何の見返りもなく、何の保護もないところにはなかなか金を出すものではないと私は判断をいたします。そういうような政治献金が半年間ですらこれだけあるのですから、その以後の七月から十二月まで、あるいは前年の問題全部きれいに調査をしてみませんとある程度の断定はできませんけれども、どうも私は、こういう証券業者から献金をもらって、それに対する恩返しのような気持から、利子所得課税あるいは配当所得課税の問題が、非常にルーズに、つかみ銭的に、国民の公平ということを無視して行なわれたような推察ができるのです。もしそうだとするならば、一国の政治というものを担当する者が、国の政治を党利党略なり、自己の立身出世なり、自己の派閥なりの拡大のために、政策を悪用して恩恵を戻してやるというがごときに至りましては、まさに日本の政治は乱れたりと断ぜざるを得ません。私は、そういう点で、今回の質問を通じて、答弁に非常に不満でありますけれども、時間の都合でやむを得ずやめますけれども、かような点を十分今後留意されて、財政の運営というものを行なってもらいたいという要望をいたしておきます。
  79. 田中角榮

    田中国務大臣 三百申し上げます。  業者の陳情その他において政策がゆがめられてはならないことは、御説の通りでありますし、政府はそのようなことは断じて行なわないという基本的な態度を堅持いたしておりますから、そのように御了承願いたいと思います。  それから、ただいまいろいろな政治献金の問題が出ましたが、これらの問題が行なわれたというゆえをもって、政策減税の一端としての証券に対する減税を行なったのではないということを明らかにいたしておきます。御承知通り国民が証券に投資をしておる総額は、つまびらかにいたしませんが、六兆円もしくは七兆円だと思います。これは国民投資をしておるのでありますから、これらに対して利益を守ってやるというような問題に対して政府が施策を考えることは、時宜を得たことであり、当然そうあらねばならぬという国民の立場に立って考えておりますことを明らかにしておきます。
  80. 塚原俊郎

  81. 倉成正

    倉成委員 私は、海外移住政策、オリンピック準備体制、当面する財政金融問題に関して、それぞれ関係大臣にお伺いいたしたいと思います。  まず、人づくりと海外雄飛の問題について、外務大臣と文部大臣にお伺いを申し上げたいと思います。もう少し具体的に申しますならば、今まで比較的日の当たることの少なかった海外移住という事柄について、人づくりという観点においてお伺いいたしたいのであります。  政府は、海外移住に関する行政を刷新するため、海外移住事業団を新設し、従来の各省間の権限の争いを調整し、事業団の監督は外務省に一元化し、積極的な移住行政に乗り出されようとしております。この問題に関し、当初から外務大臣は非常な熱意を持って臨んでおられるようでありますが、海外移住政策をいかなる認識と理念を持って推し進められようとするものか、まず、外務大臣にお伺いいたしたいと思います。
  82. 大平正芳

    ○大平国務大臣 お答えいたします。  最近、わが国経済成長に伴いまして、労働力が相対的に不足するという事態が出て参りまして、また、その他の理由もございまして、移住が不振になっておりますことは、御案内の通りでございます。私どもといたしましては、健全な社会の姿というものは、経済的な繁栄だけで実現できるものではないと考えておるのでありまして、国民の一人々々が木具いたしました個性と能力を十分に開発し、これを伸ばして発揮できるような場を与えるということが大切であると考えております。海外では開発途上にある国がたくさんございまして、そこには未完成の魅力が存在いたしますし、創造的な活動の機会が存分に与えられておるわけでございますので、わが国国民に活力が横温いたしておりますれば、どんなに国内の生活が豊かになりましても、そういうものに飽きたらず、新しい機会を海外に求めまして、みずからの夢を海外に実現しようとする方々が少なからず存在するはずでございます。このような方々の希望を遂げさせることが、とりもなおさず、海外移住体制を整備いたします第一の理由でございます。  次に、有為な人が海外に発展することは、その方法さえ誤りがなければ、受け入れ国の開発に甚大な寄与をなすことになりまして、このことは、われわれの同胞が海外に出かけられまして今日まで築き上げられました実績に徴しまして、明らかなことでございまして、受け入れ国のよき市民、よき国民として責任を果たされるばかりでなく、その国の開発に大きな寄与をなしておるわけでございます。今後こういうことを推進して参ることは、わが国世界における信用を根深いところでつちかっていくことになると思うのでございます。  第三に、海外移住の道は、国内における生活に比べまして数々の試練を要するわけでございまして、そういう試練に耐えながら力強くみずからの運命を開拓していくことは、国内で比較的安易な生活に陥りやすい人々、特に青少年に対して、他に類例のない清新の気を注入するものになると期待するわけでございます。そういう意味で、青少年対策上からも、私どもは海外移住の意義を高く評価いたしておるわけでございます。
  83. 倉成正

    倉成委員 ただいま外務大臣から、新しい観点からの海外移住政策のお話がございましたが、従来の海外移住政策は、必ずしもただいま御答弁のあったような考え方によっておらなかったことは御承知通りであります。私はただいまの外務大臣の御答弁を敷衍しまして、外務大臣がよく外交問題で言われるような、もっと高い次元の問題として取り上げるべきではないかと考えるのであります。すなわち、池田総理は、施政演説においても人づくりということを述べられておる。私どもまことに同感であります。しかしながら、人づくりの中身が何であるかということは百家争鳴でありまして、必ずしも明らかでない。それはこれからの問題であるかもしれません。しかし、修身の徳目とか、学校の増設とか、技術者の養成というようなことしか中身は盛られず、具体的な人間像が連想されないところに、為政者として考えなければならない問題があると思うのであります。国民は何かを求めておる。特に青少年は求めて得られないやるせなさを感じておる。国民の若いエネルギーをここなら思い切って投入できるという方向を、一つでも二つでも具体的に見出してみることが必要ではないでしょうか。現にアメリカの大統領ケネディの平和部隊の構想は、後進地援助とか、自由陣営におけるアメリカないしアメリカ人の不評を挽回するためのものばかりでなく、それよりももっと深い理由がある。それは、ややもすれば失われようとするアメリカの開拓者精神、すなわち、辺地にいどむ精神であり、野生とたくましさであります。国が広くして資源が豊富でありさえすれば国が栄えるというものではありません。このアメリカの開拓精神が今日のアメリカの繁栄をもたらしたものと思います。しかし、アメリカでは、御承知のように今日はカリフォルニアの波打ちぎわまで開発しまして、経済的には繁栄しておるけれども、建国の開拓精神が失われて、サラリーマン型の安全を求める人々がふえておる。この精神の老衰を救おうというのが、ケネディの平和部隊の構想として、青年を海外の辺地に送ることになったと思うのであります。日本海外移住の問題が、今まで一部の熱意ある人々の努力にもかかわらず、必ずしも十分な成果を期待し得なかったのは、こういう意味の海外移住の理念が確立されていなかったからだと思うのであります。数日前の毎日新聞にも記載されておりましたが、私の郷里の長崎におります一開業医の長尾さんという人が、ベット二十一、また看護婦四名も持っておる大きな病院を捨てまして、ボリビアの奥地に移住のためにこの三月に出発することになっております。ケネディの構想の前に、南米のボリビアの原始林の中に一家をあげて一生の運命を託して努力して参りました日本人が、私の郷里だけでも数百人をこえております。泥の中に馬さえ足を埋めて死んだようなところに、今や新しい天地ができ上がり、学校、病院ができ上がっておる。これはボリビアだけではない。アルゼンチン、パラグァイ、ブラジルも同様なことであります。これらの日本人、日本を去って、しかも国籍は日本を離れましても、本来の日本人が海外にたくましく艱難にいどみ個性と能力をフルに発揮している姿は、単に青少年の夢をわかせるのみでなく、満員電車の中に押し込められているその日その日の生活に追われておるサラリーマンにも大きな夢と刺激を与えると考えるのであります。海外移住の問題も、やりようによっては平和部隊以上のものである。海外移住に関する機構もまたこれにふさわしい抜本的なものでなければならないと考えるのでありますが、こういった角度から外務大臣はいかにこれから先の政策をお進めになろうとするか、外務大臣の御所見と、また、青少年の教育という意味において文部大臣の御所見をあわせてお伺いしたいと思います。
  84. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今倉成さんのおっしゃった通りでございまして、新しい理念に基づきまして、新しい機構で新発足をいたさねばならないと考えておるわけでございます。審議会の御答申の趣旨もそこにあると思うのでございます。そこで、私どもの考え方といたしましては、本日閣議できめていただきまして、海外移住事業団というものを、ただいままでの海外移住振興株式会社海外協会連合会、これを統合いたしまして新しい事業体をつくることにもくろんだわけでございます。そして、従来移住の事業の監督が政府側から多岐にわたって出ておりましたので、これを一本化いたしまして、そして、この事業団に大幅な自主性を認めて、政府側の指導監督というようなことは最小限度にとどめたい方針でございます。また、事業体自体につきましても、地方から中央、現地を通じまして、全責任を持っていただきまして、弾力的にお仕事を進めていただくようにいたしたいと思っております。また、この事業団を構成する方々は、今申されたような精神を把持された有能な方々にお願いしようと、清新な人材を広く求めまして、少数精鋭主義でもって経営の推進に当たっていただきたいというように進めて参る方針でございます。この事業団が全責任をみずから持たれて一貫した仕事を進めていただくというようにいたしたいわけでございます。ところが、こういう機構の切りかえ、脱皮をやりますにつきましては、往々にして若干の障害があることも事実でございまして、本年の予算をごらんになりましても、地方において事業団組織を確立して参るということにつきましてはまだ経過的に若干の問題が残っておることは、倉成さんも御案内の通りでございまして、私ども、世論も強くその必要を認めておるようでございますので、できるだけすみやかに、中央、地方海外を通じまして一貫した責任体制を確立いたしたいと思っております。しかし、私がこう申しましても、ただいままで外務省がやって参りましたことは数々の欠陥があったと思うのでございまして、外務省がやって参りましたことに対する批判は百パーセント受けるつもりでございまして、こういう新しいことをやるにつきましては、よほどの決意で当たらなければならぬと思いますし、外務省の移住行政につきましても、私ども十分内省を加えまして、今申しましたような趣旨に沿うように持って参るつもりでおります。
  85. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。大体、私が申し上げねばならないことも外務大臣の先刻来の話で尽きておるようにも思いますが、いささか蛇足を添えて申し上げたいと思います。  海外移住あるいは海外に雄飛するという事柄それ自体が青少年に与える一つの夢の課題であることは間違いないと思います。ただ、一旗組的な、日本国内で食い詰めた者が何か海外に行けばいいことがあるだろうというばく然たる気持でとかく従来は行った傾向がなかったかと、しろうと考えながらそういうふうな懸念も一面において持つわけであります。今後海外に出かけて青年の夢を実現せんとするならば、それは単に功利的な立場のみでなくて、自分自身の持っておる知能あるいは人間性というものを発揮して、自分みずからも修行すると同時に、出かけました先の国家社会のためにもなる、あるいは相手国の人々の幸福にもつながるという真剣な努力を通じて、初めてほんとうの意味の海外移住の結論が出るものと私は思うのであります。  そういうことで思い起こしますことは、もう三十年ばかり前に聞いた話でありますが、ソ連で赤色革命が行なわれたときに、黒龍江を渡って続々と漢民族が満州国に避難してきた、大黒河あたりに避難してきたときに、多年たくわえた砂金の袋を、日本人と見れば、しばらく預かってくれといって窓からほうり込んで逃げていった。しかるに、三十年前の当時の状況すらもが、このごろの日本人は何ですか、逆に漢民族をいじめておる、しいたげておるということを、当時大黒河等にいました年寄りの人々が嘆いておったことを思い起こします。  いやしくも海外に出かけるとならば、日本人である限り、その土地の人々から絶対の信頼を持たれるだけの人間性を身につけて行きたいものだ、かように思うわけであります。むろん、知識、技能のすぐれたものを身につけることも当然でありますが、そういう角度から、学校教育の面にこのことを移し植えて考えますれば、今申し上げたような人づくりが学校教育を通じて行なわれ、そうして学窓を出まして海外に出た場合、たとえば今申し上げたような信頼度の高い人間として雄飛してもらう必要があろうかと思います。そういう意味におきまして、新しい教育課程では、日本人としてりっぱであることを望むと同時に、国際的な正しい認識を身につけ、海外事情も実態も十分に教えるという角度から編成されておりますので、万全とは言い得ませんでも、今申したような意味にいささかでも沿うのではなかろうかと期待しておるような次第であります。また、高等学校で外国語を必須科目にいたしまして、それもいわば今おっしゃるようなことにもつながる一つの施策であろうかとも思います。  いずれにしましても、冒頭申し上げましたように、出かけます以上は、漫然として一旗組の無責任な心がまえではなしに、ほんとう日本人としての誇りと責任を果たしながら、出かけました先の相手国の国民にも信頼され、感謝されるような業績を残すような人でありたい、そういうことを目標に教育面でも考えたいと思う次第であります。
  86. 倉成正

    倉成委員 ただいま、外務、文部両大臣からきわめて適切なお答えがございましたので、海外移住の問題については一応終わりたいと思いますが、この際、事業団の発足にあたって、外務大臣が申された通り、人事を徹底的に刷新をする、また、これから先の運営について、従来の海外移住をはばんでおったものが官庁の無用の干渉であったということに思いをいたされまして、大綱はきめるけれども、つまらない干渉や何かはしないで、自主的な運営をもってやらせるということを、特に文字通りお願い申し上げたいと思います。  さらに、文部大臣の御答弁に関連して御要望申し上げたいのは、やはり教育の場を与える、やはり具体的でなければならない。学校の教室の中でいかに人づくりを言い、あるいはいろいろな徳目を並べましても、これは、社会の実勢を反映するわけでありますから、なかなかうまくいかない。思い切って、高等学校の生徒でも大学校の生徒でも、一つ南米の天地に送って勉強させる。経費の問題がございましょうけれども、そういう一つの夢を抱かせるような施策をこれから考えていただきたいということを御要望申し上げまして、海外移住の問題については終わらしていただきたいと思います。  次は、三十八年度予算並びに財政投融資に関連をして大蔵大臣お尋ねをいたしたいと思います。三十八年度財政金融に課せられた課題は、三十六、七年度の教訓にかんがみまして、景気変動の波を少なくして経済の継続的成長を推し進めることにあると思います。また、さらに、もう一つの重要な課題は、戦後十八年を経た日本経済世界経済の中で大きく体質改善の方向を踏み出すことにあると思います。そこで、私は、大蔵大臣に、三十八年度予算と関連をいたしまして、日本経済に関する基本的な考え方、将来の見通しということについてもあわせて御質問申し上げたいと思うのであります。  まずお伺いしたいのは、社会資本の充実ということであります。大蔵大臣は、財政演説でも、第一に社会資本の充実ということを取り上げられております。一般公共事業の災害を除いた事業費の総額は、三十七年度当初に比較しまして、七百七十八億円、二〇・六%の増加となっており、まことに御同慶にたえない次第であります。しかしながら、社会資本の充実ということは、単に今年の予算が二割ふえたということではなくして、長い目で見た土台の弱い日本経済の体質改善をはかろうという大事業であります。よほどの決意と準備がなければできぬことであり、さらに、三十八年度予算はその氷山の一角と理解するのでありますが、そういう意味において大臣にお伺いしたいのは、第一に、日本経済において社会資本がなぜこのようにおくれたかということの原因をやはり明らかにする必要がある。第二に、社会資本の充実をいかなる速度でどのような目安ではかっていくかということであります。たとえば、道路につきましては、建設省の資料によりますと、国民所得の四%ずつ毎年道路予算に計上して参りましても、昭和五十五年にやっと外国並みになるという数字が出ておる。こういうふうな膨大な資金量を要するわけでありますが、どういう速度でどのような目安でやっていくかという点。さらにまた、社会資本を、治山治水、災害復旧等の国土保全、道路、港湾、用水等の国土開発、住宅、下水道、病院等の生活環境に分類するといたしますならば、そのバランスをいかに考えるかというのがもう一つの問題であろうかと思います。ややもすれば、産業基盤の整備という点、国土開発のみが重視せられまして、環境整備の方が閑却せられるのではないかという心配があるわけでありますが、これらの点について大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  87. 田中角榮

    田中国務大臣 ただいまお述べになりました通り、三十八年度予算案の策定については、一般会計及び財政投融資等を通じまして、前年度対比より大幅に伸びておるということは事実でございますが、この単年度主義の予算をもって日本の社会資本が充実せられ、問題が解決するのではないということを十分考えております。非常にいい質問でありますから、政府考え方を率直に申し上げたいと思いますが、日本で社会資本が非常に不足しているということにつきましては、戦後長いこと荒廃をした日本がここまでようやく伸びてきまして、資金の効率的な投資が行なわれなかったというよりも、まずさしあたったものにやむを得ず投資をするということで、現状やむを得ない面もあったのでありますが、ことしから八条国移行ということも現実の問題でありますし、自由化に対応していかなければならぬ問題、また世界経済の中の一員として出発しなければならぬ日本が、すべての問題に対して思い切った計画的な事業を進めて国内均衡の保持に目標を置かなければならぬことは言うを待たないわけであります。道路その他の公共投資が非常におくれておるということでありますが、これは、今までは、荒廃をしておった道路、港湾、鉄道その他に対して重点的に、とにかく動くように、原状に復するようにということが戦後の第一の段階であり、第二の段階は、昭和二十七、八年、先回も申し上げましたが、道路費の予算約八十億というようなときでありましたが、新しい体制を整備するために、ガソリン税を目的税的なものにしまして道路整備五カ年計画をつくられ、前後三回の改定が行なわれ、今日四回目になって、五カ年間に二兆一千億であります。今年度予算におきましても、道路面だけをとっても、これを三兆円に改定し、三兆五千億に改定しなければならない、国民所得に対して四%ないし五%を投資をするような五カ年計画、すなわち三兆五千億程度の五カ年計画に改定をしても、長期投資が約束されなければならないというような数字上の問題があります。私ここで明らかにしておきますのは、日本には特殊事情がありまして、この特殊事情を解決するという方向をきめないで、ただ産業投資が行なわれるので、そのあとについて道路を拡充し、下水道をつくり、工業用水を確保し、土地を造成するという考え方を進めていきますと、これはイタチごっこでありまして、どこまでいってもこの問題は解決しないのであります。今の新しい計画につきましては、所得倍増計画であらゆる計画がなされておりますが、この所得倍増計画の中の公共投資の面に対しては、もう一回新しい観点から考えなければ、また同じ問題が起きて参ると思います。それは自然発生的な産業形態をそのままにとっておりますので、結局平面都市がどんどんつくられていくということで、これから十年ないし十五年後を想定しますと、アメリカや先進工業国の水準まで社会投資が行なわれても、日本においてはアンバランスの面が是正せられない、こういう面が起こり得るのであります。これはなぜかというと、一億の人口が一億一千万になり一億二千万になりましたときに、面積は非常に狭いのでありますが、人口の分布があまりにも複雑である、またゴマ塩のような状態であって、ゴマ塩をつなぐのが日本の道路網である、日本の鉄道網である、日本の公共投資網である、というところで全く世界の各国と産業の状態が違うのであります。でありますが、東京のように、土地が少ないからどんどんたんぼをつぶして平面都市をつくり、東京湾をつぶして土地をつくっていく、こういうことでは解決しないのであります。御承知の、今オリンピック道路をやりますと、千億の道路費をかけて、そのうちの七五%ないし八〇%は、新しい道路をつくるのではなく、立ちのきや補償費であります。こういうふうに家ができてから、その間を縫って道路を拡幅するということが、つくるよりもこわす方に金がよけいかかる、こういうことであって、いわゆる産業の基盤というものは計画的にやらなければいけませんし、それから、土地というものは造成すればいいんだというのではなく、現在ある土地の再開発を行なって、これを高度化していく、いわゆる何百年前にやられたパリの都市の建設の方針、こういうものをつくって産業基盤というものは立体化していくということを考えませんと、これらの問題は無限大の投資を必要とするわけでありまして、今の所得倍増十カ年計画の中の産業の基盤はどうあるべきかという基本的な体制を考えていけば、社会資本の充実をはかりながら、国内整備、均衡保持もはかり得るのではないか。こういう基本的な問題に取り組むべきである。なお、具体的な問題としては、新産業都市の問題とか、水資源開発の問題であるとか、低開発開発促進の問題とか、首都圏整備の問題とか、各般の問題が行なわれておりますが、これをいかに総合的に運用するかということで新しい投資計画をきめるべきだ、こういうふうに考えております。
  88. 倉成正

    倉成委員 ただいま社会資本の充実の問題について大蔵大臣から率直な御答弁がございまして、現在組まれております予算の額、この額そのものが必ずしも大きくないにかかわらず、その予算が実際社会資本の充実という本来の目的に必ずしも百パーセント役立っていない、たとえば用地取得等の費用に使われる面が非常に大きいという率直なお話がございまして、私も全く同感であります。しかし、もう一言考えておかなければならない問題は、わが国の社会資本が非常におくれたもう一つの大きな原因は、日本の民主主義が非常に根が浅いと申しますか、伝統が薄いのでありますから、社会資本に対する考え方自体が非常に薄いのではないか、社会共通の財産としての考え方が非常に国民全体に薄いのではないか。外国を回った人々が口をそろえて言うように、道路をされいにするとか、あるいは街路の木を折らないとか、こういった点がやはり根本の問題ではないかという点が一点と、もう一点は、日本の財政当局を含めまして、役所の方々が非常に近視眼的にものを見過ぎるのじゃないか。国土の開発、社会資本の充実ということを口にするならば、もう少し大きな余裕を持って考えるべきじゃないか。たとえば、オランダの干拓を一つ見ましても、これは、あの狭いオランダの地に土地を造成し、しかも、土が全然ないところでありますから、土さえ輸入しなければならない、そういった多額の国費を使って干拓をやっておるにかかわらず、非常に長い期間をもってこの干拓地を見ておる。日本の場合、八郎潟が来年できるから、もう入植をどうしてというように、すぐつじつまを合わせようというところに問題があるのじゃないか。名神高速道路ができましたけれども、これも四車線。しかし、おそらく六車線を要求する時代が近き将来にやってくるに相違ない。そうすれば、やはり、一見むだなようでありましても、六車線の土地を確保する。これは、もちろん、いろいろな問題がございまして、言うことはやすくしても、事実はむずかしいと思います。しかし、基本的な考え方としては、そういった先行投資的な考え方を徹底的に推し進めるのでなければ、社会資本の充実ということは、額を幾らふやして参りましても、そのテンポを早めましても、効果を十分あげることはできないと考えるのでありますが、この点はいかがでございましょうか。
  89. 田中角榮

    田中国務大臣 まさにその通りであります。これらの問題が国会で議論をせられない、あまり重点的に時間をかけてやられないというところには、問題があると私たちも思っておったわけでありますが、日本の各分野に対しまして、予算が伸びれば、予算が倍増されれば仕事は片づく、こう言いましても、状況によっては、予算が三倍になっても仕事は現状維持だという場合がたくさんあります。現在の東京や大阪の都市改造を行なう場合に、金が一体どのくらいかかればいいのか、これはあらゆる財政的な方途で検討してみてもなかなか結論が出ないぐらいに膨大なものがかかります。同時に、東京という同じ新しいものをどこかにつくった場合、一体どの程度の金でできるかといいましたら、これは何分の一かでできる。これはもうこわす方によけいに金がかかっておる、こういうことであります。特に、日本は、明治から三千四百万、四千万、五千万、六千万、七千万と、こういうふうにふえてきて、現在九千四百万、九千五百万というのでありますが、当時四つの島々で住めなかったものが、戦後はここで一億、一億一千万という人間が住まなければならないのでありますから、経済論とかその他の問題に対しては自由濶達なことが考えられますが、少なくとも国土計画というものに関しては、相当計画的な、三十年、五十年後の人口というものに合った産業形態、国土計画というものの理念をはっきりときめて、国民の協力も待ちながら、これに対して先行投資を行なっていくということでなければ、公共投資問題に対しては、これはもう永久に片づいていかない。だから、少なくとも国土計画に対しては、人口というものを十分考えながら計画投資を行なっていくということをほんとう考えて、これを行なっていくということを前提にしなければならないのであり、そういう政策をとることによって、今の地域格差の問題とか、低開発地の開発の問題などはもう自動的に解決をするのであって、低開発地の開発促進というものが特殊な目的のためにやられるというのではなく、そうすることが国の将来の計画である、いわゆる自然発生的なものに公共投資を追っかけていったならばいつまでもこの問題は解決しないのだというふうに、やはり踏み切っていくべきときである。それには歴史的にも重大な段階に逢着しておる、私はこのように考えます。
  90. 倉成正

    倉成委員 ただいま大蔵大臣から非常に次元の高いお話がございました。国土計画をやはり再検討し、また、所得倍増計画自体についても再検討する段階に来ておるという御発言でありますが、まさにその通りと思います。今日の日本の行政機構の現状の姿から見ますと、これらのいろいろな社会資本の充実ということを総合調整する役所は、これは経済企画庁でなければならない。しかし、残念ながら、経済企画庁の現状の姿で、そういった長期的な総合計画、また、この大切な国費を使っていくわけでありますから、先行投資ということについて効果をどういうやり方で測定していくかということは非常に大切なことでありますので、こういったことの検討が十分なされているかどうかということについて私は疑うものでありますけれども、現在のところは、大蔵省予算査定という課程を通じて、ばく然としておるけれどもそういった総合的な見地からいろいろやっておる。これは唯一の防波堤というか、事実上唯一の良心、と言うと言い過ぎかもしれませんが、そういうことになっておるのが事実じゃないかと思うのであります。もっと高い見地からやはりそういった総合的な計画が進められていく必要があると思うのでありますが、これらの点について企画庁長官はどういうふうにお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  91. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどわが国の社会投資がどうしてこれだけおくれておるかというお尋ねがあったわけでございますが、私ども考えますと、一つは、やはり非常に長い歴史、古くから狭い国土にたくさんの国民がおって、その人たちの居住権、耕作権というようなものがほとんど住み得るところには確立をしておったということが一つと思います。それから台風、地震等の災害が比較的多い国であるということがもう一つと思います。それから最近の事象について見ますと、終戦前にはやはり軍事費の負担が重かったということ。しかも、それが、ヨーロッパの国でありますならば、国内に、道路でありますとか何とか、国防上の目的からいわゆる社会投資の形で金が落とされたでありましょうが、わが国の場合、残念ながら、それらの軍の支出が国の外に向けて使われておったということが言えると思います。それから終戦後は、終戦による破壊、貧困等が原因であったというふうに考えるわけでございます。  それで、先ほどから仰せられましたことはその通りと思います。私どもは、所得倍増計画では、政府の行政投資、公共投資が目標年次には民間の設備投資の大体二分の一になることをねらっておるわけでございますが、残念ながら、初めの数年におきましては三分の一程度でございます。昨年、ことしと、ようやくそれが四割に近づいてきたというのが現状でございますが、今後、やはり国の財政あるいは財政投融資または金融等を通じまして、できるだけ公共投資に必要な金をつくってもらって、そして、私どもが悲願としておるところの常時二対一ぐらいな目標に近づけていきたいと考えておるわけでございます。  それから、もう一つの国土の総合開発計画につきましては、母法となりますところの総合開発計画そのものがようやく昨年でき上がって、それも十年前の要請とだいぶ違った情勢においてでき上がって参りました。それより先行して、地方開発でありますとか、低開発地帯の工業化でありますとか、あるいは新産業都市というようなものが動きつつあるわけでございますから、これから先の問題としては、総合開発計画というキー・プランの上に各地方開発計画を調整して乗せていくという仕事が残されておると思います。仰せられますように、それらの計画を有権的に実行するということが、私どもの役所で非常に困難でありますが、私どもに与えられた総合調整の使命の一つ考えております。
  92. 倉成正

    倉成委員 長期的な総合計画を立てるということはなかなかむずかしい問題であります。しかし、少なくとも諸外国のいろいろな実例を考えてみますと、いろいろな困難を冒して意欲的にこういう計画を立てられておるということを考えますときに、日本経済企画庁はもう少し元気を出して長期的な総合計画について真剣に取り組むべきではないか。そういった計画が立てられなければ、社会資本の充実ということについての財源の問題等についていろいろ響いてくると思うのです。もし綿密な計画、または先行投資の効果についてのある程度納得のいく計算ができるとするならば、財源を求める道はいろいろあると思う。たとえばインフレにならない程度に建設公債等を発行していいのじゃないか。しかし、計画が立てられなくて、将来の見通しがなくしていたずらに予算の額をふやすということは、ここに非常な問題がある。これが問題の焦点ではないかと思うのでありますので、今後の御検討をお願い申し上げたいと思います。  そこで、先ほど大蔵大臣も触れられました地域格差の是正という問題についての考え方をお伺いしたいと思います。これは、三十八年度予算をしさいに検討いたしますと、地域格差の是正という点だけから見ますと、必ずしも十分ではない。むしろ地域格差はある程度拡大するきらいがある。既存工業地帯の再開発、大都市の再開発あるいは新産業都市にいたしましても、ある地域に片寄るということは御承知通りであります。そこで、これは、こういう地域が非常に緊要性を有するから、緊要性の高いところから公共投資を行なうということについても、私はよく理解ができるわけでありますけれども、まあこまかい数字は時間がございませんから省略いたすにいたしましても、既存のそういう再開発される地域については、公共事業費が非常にふえるために、地元負担が相当大きくなってくる。従って、地元の地方財政を相当圧迫する。また、そういった公共事業の配分の少ない地域については、単独事業で何とかやらなければいかぬという意味から、非常に財政的な問題が出てくる。来年度地方財政は、御承知通り、そういった人件費の義務的な経費が上がったりいろいろする関係上、税収の減等から考えまして、いろいろの問題をはらんでいることも御承知通りであります。従って、地域格差の是正という点、これはよく合言葉のようになっておりますが、この問題をどういうふうに考えるか。もちろん、単年度だけで考えるべきではないけれども、基本的な考え方を明らかにしておく必要がある。この点についてお伺いをいたしてみたいと思います。
  93. 田中角榮

    田中国務大臣 国内均衡の保持、地域格差の解消、業種間格差の解消、歌い文句のように言っておりますが、地域格差の解消ということが一体どうすればできるのかという問題に対しては、これからの問題として、政府は真剣に取り組むべき問題であるというふうに考えております。予算の面におきましては、五百三十億であった東北開発及び離島の費用等が六百三十億になっておるから、政府は前向きでございますと、こういう答弁はできるのでありますが、しかし、それで片づくのかといえば、片づかないわけであります。これは、計算すると、今のような投資を進めていけば、地域格差は広まっていくということは、数字的にはどうしても出るのであります。それで、先ほどあなたが非常に原則的なお話をされましたが、やはり所得倍増計画の中の投資の面の中に私は改定を必要とすると言ったのは、人口問題をこれから年次計画を立てまして、どこの県のどこの地域では一体幾ら人口が生まれるのだ、こういう人口問題の長期計画を立てて、これを産業的にどこに収容せしむるのだ、こういう計画を前提にしないで、今のように、何々白書、何々白書というので、現実はこうでございます。去年はこうでございましたが、ことしはこうでございます。でありますからこれを解決するためにはこういう費用が要ります、こういうような解決の方法だけをとっていくと、確かに格差は広がるということになっておる。でありますから、昭和二十五年に国土開発法を作りましてから、その後北海道開発法から九州開発法まで、その他、新産業都市建設法とか、低開発開発法とか、離島振興法とか、産炭地振興法とか、あらゆることをやっておりますが、これは、まだ緒についたばかり、まだ緒につかざるところもある、こういうことでございまして、これらの地方開発というものは、もう辺地を開発するという特殊な事情に基づくものではなく、日本民族の将来として、新しい人口・産業の再分布をはかるために、先行き投資を必要とする、こういう観念をはっきりきめて計画投資を行なわなければ、これらの問題は解決をしていかないという基本的な考え方を持っております。特に、その中で一番障害になるものは、これは戦後の新しい問題でありますが、地方自治の問題、地方財政の問題。いわゆる東京や大阪というものは財源調整ができませんし、自然発生的な状態をこのままにしておけば、いずれにしても、これから十年たつと、一億一千五百万人の国民のうち、その五五%は東京・名古屋・大阪の周辺に寄るであろうという数字は明らかに出ているのでありますから、これらに対して、やはり政治的にも財政的にもまっ正面から取り組んでいくということでなければ、地域格差解消という問題はなかなか解決できない。財政当局でもそのような考え方で新産業都市の問題その他に対して予算配分等を行なっておるわけであります。
  94. 倉成正

    倉成委員 地域格差の是正という問題は、ただいま大蔵大臣が申されましたように、やはり長期政策の課題で、単年度で見るべきものではありません。しかし、地域と称するものが、ほとんど徳川時代の行政区画そのままのものでありますし、経済的に再検討されたことが、残念ながらほとんどない。しかし、一般国民の通念としては、東京の生活も鹿児島の所得水準も平準化していくということが一つの目安になる。一体これをどう結びつけて、どういう順序でやっていくかということが非常に大事なことではないかと思うわけであります。私は、やはり地域の特性を十分生かした国土計画を、ただいま大蔵大臣言われたように十分立てられるということと、やはり交通網を徹底的に確保いたしまして、そういった将来の態勢をつくり上げていく。今すぐ所得水準がどうだこうだというようなこと、これは民主主義の時代でありますから一つの目安にはなるでありましょうけれども、少なくとも長期政策を考える立場の人々としては、長い目で見ていく。しかし同時に、そういったプロセスを明らかにしていくということが大事であると思うわけであります。これらの点は、将来の研究課題として、大蔵大臣並びに企画庁長官にお願いをいたしておきたいと思います。  次の問題といたしまして、財政と密接な関係にある金融政策の中で、金利政策についてお尋ねをいたしたいと思います。わが国の金利水準が諸外国に比して割高であり、その引き下げがかねてより要請されており、国際競争力強化のために国際水準にさや寄せしていく必要があるということは、大蔵大臣も施政演説で述べられている通りであります。しかし、その実施にあたっては、昭和三十六年度資金需要を無視した低金利政策が国際収支の悪化をもたらしたということを考えますときに、慎重を要する。従って大臣が、金利引き下げのための環境づくりということを言われておりますが、その内容は具体的にどういうものであるか、お伺いしたいと思います。
  95. 田中角榮

    田中国務大臣 自由化に対処して、国際金利にさや寄せをしていかなければならぬことは当然であります。また、この金利を下げなければいかぬということは、これは数字的に見ますと、原材料を持っておる国と原材料を持っておらない国の差がまだあるのですから、働くというようなことで、低賃金、低コストということでかつての日本の輸出は維持されておったわけでありますが、今度はILO条約も批准をしようということになっておりますし、また労働賃金も国際的にさや寄せをしていかなければならないという趨勢にあるということも申しておりますし、ですから、働くことは日本人の英知、勤勉さはもとよりでありますが、その上になお金利を下げていかなければならぬ、これは当然のことでありますが、これをただ政府が人為的な、一方的な行政指導等で下げ得るものかどうかということは、混乱が起きるのでありまして、なぜ金利が高いかという問題を検討しますときには、資金の需要供給がアンバランスでありますから、資金量の確保ということが重大な問題であります。また戦後金融の中立化ということで、さなきだに資金が枯渇をしておりますときに、金融上の機関も自主的な運営をされたということで、民主化は非常に行なわれましたが、その後新しい機構としてできた農業関係金融機関の問題、それから相互銀行の問題、信用金庫の資金量がもうすでに五千億にもなっておるということで、時々刻々に金融機関も変わっておりますので、これらを調整していかなければならぬ。調整ということが一方的になってはいかぬということで、私が就任後申し述べているのは、一番の金融政策としては一般会計、財政投融資、民間資金がお互いに調和のとれた総合的な立場で、しかもその主権が侵されないというような状態で、合理的な運営が行なわれることでなければならないということに重点を置いておるわけです。でありますから、十月、十一月の公定歩合の引き下げ、それから日銀の買いオペレーション制度、それから財政余裕金をもってしての買いオペレーション、それから今まで日銀との取引がなかった県信連や相互銀行、信用金庫も日銀と取引を行なうというような諸般の環境整備を行なっておりまして、自然的に金利が国際水準にさや寄せしていくような方向を政府としても慫慂しつつ参る、こういう態勢をとっておるわけであります。
  96. 倉成正

    倉成委員 元来、金利は資金の需給関係できまるべきものでありますから、こういった態勢を、大蔵大臣が言われるようないろいろな施策をとられることは当然のことであろうかと思います。企業の体質改善をやり、あるいはオーバー・ローンを解消する、社公債の市場を育成するというような問題が、環境づくりにはよく言われておるわけでありますが、これらの問題は後ほど触れるといたしまして、金利政策を弾力的に進めるため、かねてより郵便貯金の金利を法律によらずして、機動的に政令によって定めることが必要であると言われておりますが、この問題にいかに対処されるつもりであるか、伺いたいと思います。
  97. 田中角榮

    田中国務大臣 郵便貯金の金利は、御承知通り法定主義をとっておりますが、できればこの国会に、郵便貯金金利は政令にゆだねると、弾力的運用ができ得るような方向で改正案を提出をいたしたいということを私は考えておりまして、国会へ提案するまでには、政府としての最終態度を決定して国会に提出するわけでありますので、せっかく郵政大臣等とも意見の調整を行なっておる段階でございます。
  98. 倉成正

    倉成委員 国債の金利が安い、また外為証券、食管証券等、短期証券の金利が安いために、ほとんど日銀の背負い込みとなっておるわけでありますが、これを是正するお考えはございませんか。
  99. 田中角榮

    田中国務大臣 現在、国債の金利を上げようというような考えはありません。
  100. 倉成正

    倉成委員 それでは預貯金の金利は日銀政策委員会できめるという現在の臨時金利調整法、これを改正する御意向はありますか。
  101. 田中角榮

    田中国務大臣 これは今のところ私は改正する意思はありません。これはいろいろ金融界からは、この臨時金利調整法は廃止をした方がいいということを言っておりますが、私は低金利というような、いわゆる国際金利にさや寄せしようというように政府考えており、また国民もそうでなければいけないと思っておりながら、政府は、一方的にやらないというくらいに金融の中立性は侵さないという原則を確立しておるわけであります。去年等の非常に国際収支改善の過程におきましては、国民政府の余裕金等はどんどん使うべきだ、こういうことでありましたが、これは金融の二元化になるのだからそういうことはやるべきでないということで、日銀の買いオペの方針を決定した。戦後の金融機関の自主性、中立性というものを前提に置いて考えておりますが、しかし戦後の状態を考えますと、大蔵大臣の権限はあまりにない。普通の国はどうかというと、イギリスにも資金調整法というものがありまして、これはしょっちゅう使うと全く金融の中立性が侵されるわけですが、これは適宜に必要な場合、たなからおろしてきて使って、要らなくなれば早急にたな上げする、こういうように弾力的なことをやっておるわけでありまして、どこの国にも必要であるといいながら、日本はないわけです。そういうものがなくても比較的うまく運用せられてきた戦後の日本の金融と大蔵省との間を、これ以上刺激的なことにして、政策オンリーでもって専行すべきじゃないという基本的な考えを持っておりますが、せめて臨時金利調整法は、大蔵大臣と日銀総裁が話し合ってきめるということになっておるのですから、こういうことは適宜電話でも話ができるので、お互いの意思の疎通ははかれるのでありますので、これらの問題は十分金融機関の意見も徴して運用せられておりますので、障害はない、こういう考えでありますし、前段申し上げたようないろいろな事情もありますので、これは今廃止をするということは、少し時期尚早ではないかというふうな考えです。
  102. 倉成正

    倉成委員 金利政策の一つの課題として公定歩合の問題がありますけれども、かなり資金の需給関係が緩和したという判断に立つと、近く公定歩合を引き下げられる意思があるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  103. 田中角榮

    田中国務大臣 公定歩合の問題は議論にならないで、さっと中央銀行総裁が間断なく行えばいいのでありますが、日本は戦後の自由化、民主化ということで、公定歩合に対しては相当議論が行なわれておるわけであります。しかし先ほどあなたが申された通り、公定歩合を引き下げるという問題は、金利にすぐ響きますし、また景気過熱という問題を一年前に起こしたばかりであります。特に戦後三回目の国際収支がようやく改善をして、それが自由化に対して一体逆戻りをしないかということもおそれておるときでありますから、これらの問題に対しては、非常に慎重な態度を私どもとしてはとっておるわけであります。法律的にも日銀総裁の権限で行なわれるものでありますが、日銀は現在のところ私に対して、公定歩合の引き下げに対してどうこうというような協議はございません。また時期を見ながら、必要があれば日銀総裁が行なう、こういうことでいいのではないかというふうに現在考えておりますから、さしあたり引き下げるというような気配のないことを申し上げておきます。
  104. 倉成正

    倉成委員 公定歩合の問題は非常にデリケートな問題がありますし、特に日本経済政府の一挙手一投足に非常に注目する、心理的な影響を受けるという段階で、これ以上お伺いするのは無理かと思うのでありますが、私はやはり経済の実勢に応じて公定歩合の引き上げ、引き下げをやれるような日本経済をつくり上げることがやはり大切じゃないか、そういう意味で申し上げたのであります。  金融政策に関連してもう一つお伺いしたいのは、日銀の新買いオペ方式による通貨増発の問題であります。これがインフレにならないかどうか、もちろん政府保証債を買い上げますときに、一年間の期限を切ったもの、一年以上のものというような条件、あるいは買い戻し等の条件があることも承知しておりますが、事実上日銀はこれらの政府保証債、またこのワクを広げられましたので、いろいろな債券を買ってくれと言われた場合に、拒否することはなかなかできないじゃないか。そろなりますと通貨量の増発ということになって参りまして、適正な通貨量ということの判断がなかなか事実上できないと思いますが、うっかりするとインフレになる懸念を持つわけでありますが、この点はいかがお考えになりますか。
  105. 田中角榮

    田中国務大臣 前回池田総理大臣が申し述べました通り、通貨発行限度額の問題、それから通貨発行高の問題等に対して、これで一体適正であるのかどうか。産業の実態等を調べて、また各国の例等も徴しながら、慎重に現在検討しなければならない問題であることは申し上げるまでもありません。しかし、新買いオペ方針の運用の過程において、インフレを助長し、日銀券の発行の増発を促す要因には絶対ならないようにということは、もともと配慮いたしております。この問題は、御承知通り日銀依存度が非常に高い、またコールで運用せられておる面が非常に多い、含み貸し出しが多いという金融の不正常な状況を直すために、これらの新制度をつくったわけでありまして、これが政府保証債を引き受けるためとか、国債発行の前提であるとか、またインフレ要因になるとか、通貨発行高をふやすとか、こういうものに対しては非常にこまかく配意をしながらいきたいというふうに考えております。そういう意味で、これは日銀だけではなく、日銀、大蔵省、それから市中金融機関、地方銀行その他の金融機関、証券社会もあわせて随時お互いに会議を開いて、四角ばったことを言っておる時期ではないから、お互いに意思の疎通をはかりながら、金融の正常化という問題に対しては努力をしていこうという前向きの考え方でありますし、民間人も何でもしゃべりますから——どうも大蔵省に行くと、そうほんとうのことを言えなかったのですが、今度は一つ何でも申し上げます、こういうふうにお互いに胸襟を開いてこの難局に処そうという考えでありますので、新方式がお説のような懸念はないように配慮いたします。
  106. 倉成正

    倉成委員 大蔵大臣の意図のいかんにかかわらず、制度としてそういう危険性があるということを御指摘申し上げたわけでありますので、この運用については十分配慮されると同時に、制度としても何かそういうチェックする方法について御検討されることが必要ではないかという点の御注意を喚起申し上げておきます。  次に、財政投融資計画についてお尋ね申し上げたいと思います。  三十八年度財政投融資計画は一兆円をこしまして、前年度に比し二千四十五億円、二二・六%の大幅増であります。元来財政投融資は、二十八年ころまでは、戦後の海運や電力等についての生産力の回復という量的な補完から、だんだん住宅環境設備、中小企業等の質的な補完に移ってきたということは御承知通りであります。しかしこの財政投融資が景気並びに国民生活に及ぼす影響は、一般会計に比して劣らぬほど重要性を持ってきておるのであります。  そこでまず第一にお伺いしたいのは、財政投融資が大幅にふくれて、本年度一般会計に元来ならば計上をしてもいいじゃないかというものまで、財政投融資計画の中に盛られているということになって参りますと、だんだんそういった道路や住宅、そういうものをさしておるわけでありますけれども、いろいろな行政について一般会計と財政投融資との関係、また各種の公団がつくられて、公社もわれわれが知らないくらいたくさんあるということになって参りますと、そういう行政の一貫性ということを欠くのではないかというふうに考えるわけであります。そこで将来とも財政投融資を、こういう速度で大幅に増加していかれる考えかどうかという、財政の基本的な運営の考え方についてお尋ねしたいと思います。
  107. 田中角榮

    田中国務大臣 本委員会でも、たびたび問題になる問題であります。一般会計と財政投融資の関係は、明らかに御答弁申し上げておるわけであります。一般会計は単年度主義の財政法を基盤としてつくっておるものでありますし、それからおおむね渡し切りということであります。財政投融資は、ただいまの御発言もありました通り、金融の補完的業務及び金融を、どう言いますか、財政投融資計画を基礎として民間金融が起こり得るような、協調融資ができるようにという状態も考えております。原則的には、これは貸金であるというところに差があるということであります。民間金融と一般財政のちょうど中間にある、こういう一方的定義を下して御説明申し上げておるわけでありますが、これはなぜ大きくなったか、社会資本を相当この中でまかなっておるということでありますが、これは時代の複雑性、時代の要請で今日まで財政投融資が大きなウエートを持って参ったわけでありますが、この問題については、将来このまま無制限にいけるのかということになると、財政法上の問題も確かに出て参るでありましょうし、国の予算という問題も出て参るだろうと思いますので、これらの問題は、時代の要請を十分慎重に検討しながら、これらの制度そのもの及び基金制度のようなものが考えられるかどうかとか、公団に対する問題その他についてはこれから衆知を集めて、慎重ではありますが積極的な立場から検討すべき問題であろう、このように理解をしております。
  108. 倉成正

    倉成委員 財政投融資の問題については時間もございませんので、原資について、資金運用部資金のうち郵便貯金は、三十八年度千九百億というふうに想定されますが、この見込みはどうなっておりますか。
  109. 田中角榮

    田中国務大臣 財政投融資計画の三十八年度資金のうち、郵便貯金を原資とするものは千九百億でございます。三十七年度の投融資計画のうち、原資見込みとして郵便貯金を充てたものが千五百五十億でありますが、千五百五十億はその後の金融情勢の緩和等によりまして、すでに実績千九百億を上回るというような状態でございますので、三十八年度の原資見込み千九百億は当年度に比して過大ではありません。
  110. 倉成正

    倉成委員 財政投融資と関連しまして、将来の資金需要がどうなるか、これは日銀の買いオペ方式とも関連するわけでありますが、現在の融資が滞貨やあるいは減産資金、うしろ向きの融資が非常に多いということはよく承知するわけでありますけれども、前向きの資金の需要がだんだん出てくるんじゃないか。特に中小企業の合理化資金の意欲がかなり大きいということになって参りますと、設備投資政府見込みというのはさらにふくれるんじゃないかという感じを、最近の経済動向から抱いておるわけでありますが、大蔵大臣どういうふうにお考えになりますか。
  111. 田中角榮

    田中国務大臣 二、三年前は四兆円にもなんなんとした設備投資も、漸次鎮静をいたしまして、三十七年度三兆六千億とはじいておるわけでありますが、三十八年度は民間の設備投資は三兆五千億、このように見ております。これが一部においては、今度の予算その他において多少景気が刺激をされ、また自由化等に対応する国民的な気持においても設備が過大になって、三兆五千億をこすんじゃないかという議論もありますが、大よその議論は、三兆五千億を維持できるかという議論の方が多少多いのではないかというふうに看取せられます。
  112. 倉成正

    倉成委員 それでは、財政投融資はその程度にしまして、最後に現行の財政制度の改正についてお伺いをしたいと思います。  今日の国民経済における財政の比重が非常に大きくなりまして、また国民の税負担が少なからず高率にありますとき、財政に対する政府の役割はいよいよ拡大強化しております。わが国の財政法におきましては、予算の編成、執行、財政投融資計画の策定、実行等におきまして、政府が景気調整の機能をある程度果たすことができるわけでありますけれども、財政のプロパーについて景気調整の効果を十分上げることがなかなか現行制度ではむずかしいのではないか。そこで一部の論者、たとえば高橋亀吉その他において二、三の議論がなされておる。すなわち、いわゆる継続予算を認めて、その決定の時期を内閣にゆだねようとする、あるいは景気調整の効果ある一定の税額について、一定の振幅の範囲で、税率を機動的に弾力的に動かす権限を与える。またその三は、単年度収支均衡ではなくして、一定の周期、たとえば三ないし四年の収支均衡予算を立てる。換言すれば、不況期には赤字予算、好況期には黒字予算、こういうことをしたらどうかという提案がございます。これらの提案につきましては、経済の見通しが正確に立てられるという前提が一つと、今日の日本の憲法八十三条による国会予算審議権その他の問題があることもよく承知しております。しかし、日本経済世界経済に伍して、これから大いにやっていかなければならない今日において、大蔵大臣としてこの現行の財政法について改善すべき点があるとお考えになるかどうかということをお伺いしたいと思います。
  113. 田中角榮

    田中国務大臣 現行財政法が、世界諸国に比べて大蔵大臣の権限を非常に強めておる、歳出、歳入ともについて非常に強い権限が与えられておるということも承知いたしておりますが、反面、この財政法を守ってきたために戦後の復興も、また健全財政が貫いてこれたわけでありまして、その功罪を考える場合、功績の方が多かった、これは自画自賛ではありませんが、いずれにしてもそのように考えておるわけであります。  財政法の改正については、何年か前に一部改正が行なわれましたり、また、昨年度経済の非常にむずかしい状況に対して、財政の弾力的運用という意味で財政法の改正が一部議論になり、自民党と政府との間で意見調整を行なったこともあります。部分的な改修正はあり得るにしましても、現在の段階において、私が財政法をこのように改正した方がよりいいでありましょうというようなことを答弁する段階に至っておりません。それは、御承知の財政制度審議会へ答申を求めておりますし、それも安値な考えで、一年、半年でもって結論を出してもらうというようなものではなく、憲法上の問題、それから会計制度の問題、それから会計年度の問題、いろんな問題がありまして、これらの問題を総合的に判断をして、やはり相当期間、どんなにテンポが早くても、国の財政の基本でありますから、これらの改正等に対しては衆知を集めて、より高い立場で検討していただくということで諮問をしておりますので、これが答申等を待ちまして、政府としては態度決定をいたしたいというふうに考えております。
  114. 倉成正

    倉成委員 財政問題に関する大蔵大臣への質問はこれで終わりたいと思いますが、日本経済が非常な転換期にきておる、また、日本経済に対し、財政の役割が非常に大きな影響を及ぼすという今日、大蔵大臣は施政演説で、中国の古典を引かれまして、「財は国の命なり」ということを申されました。大よそ行政と政治の本質的な相違点は、行政は現実の問題の処理を中心にする、政治はやはり将来のことを考えるということにあると私は考えるわけでありまして、予算の中に含まれておる将来の可能性について、十分御検討いただきまして、今後の財政金融政策の運営に当たられることを御要望申し上げまして、大蔵大臣に対する質問を終わらしていただきます。  次は、オリンピックの問題についてお尋ねを申し上げたいと思います。  東京オリンピックまでに二年足らずになりましたけれども、東京オリンピックを諸外国のオリンピックと比較いたしまして、問題点は、やはり言葉が非常に不自由な日本において行なわれるということと、東京のような交通地獄のさなかにおいて行なわれる、宿泊施設が十分でないという、いろいろな欠点を持っておるわけでありますので、この三つの欠点をいかに除去するかということが今日非常に大切なことではないかと思うのでありますが、言葉の問題はおくといたしまして、まず総務長官お尋ねしたいのは、道路が東京の各地で掘り返されておる。これは必ず時期までに間に合うかどうかというのが第一点。それから宿泊施設は、現在、東京ではベッド一万四千ベッドということが言われておりますが、申し込みがすでに二万二千ベッドある。将来を考えると、三万ベッドの準備が必要であると言われておりますが、こういった宿泊設備の準備がなされているかどうかという点についてお伺いをいたしたいと思います。
  115. 徳安實藏

    徳安政府委員 オリンピックの関係に属しまする道路問題でございますが、現在政府で行なっておりまする点を御報告申し上げます。  関連道路といたしましてただいま百八十七億一千百万円、さらに街路といたしまして八百十八億二千四百万円、首都高速道路七百二十億七千五百万円、これを投じまして整備に邁進中でございますが、道路関係につきましてはおおむね順調に進捗いたしまして、これはもう絶対に間違いないという河野建設大臣の言明でございますから、間違いないと思います。  次に、宿泊対策といたしまして、現在三万人程度を予定してやっておるのでございますが、そのおもなるものを申し上げますれば、政府登録ホテル及び政府登録旅館に収容する計画のもとにいろいろ具体案を進めておりまして、さらに日本旅館の改造でありますとか、ユース・ホステルの整備でありますとか、船の中に泊まっていただきまする設備でありますとか、あるいは公共アパート転用等の具体的措置につきまして各関係筋で慎重に検討いたしておりまして、現在三万人程度の宿泊は何とか確保したいということで、一生懸命各方面で努力中でございます。
  116. 倉成正

    倉成委員 政府においても十分御準備を進められておりますから、信頼申し上げますけれども、ただいま申されました住宅の確保について、アパートの建設というのは大賛成であります。特に単なるオリンピックのためにホテルをつくるということじゃなくして、アパートをつくって将来の住宅難の解消にこれを充てていく、あるいは個人住宅の借り上げということにもう少し重点を置いて、個人住宅の改造費にある程度の補助なり融資を与えるというようなことも大切なことではないかと思いますので、これらの点も積極的にお進めをいただきたいと思います。  そこで時間もございませんから、オリンピックがなぜ盛り上がらないかという点についてお尋ね申し上げたいと思います。  一部の関係者は非常に御熱心であります。しかし国民全体として見ますと、どうも十分盛り上がっていないというのが実情ではないかと思うのであります。これは啓蒙運動であるとか、あるいはもっと環境の整備であるとか、いろいろな点が考えられると思いますけれども、これは体協の任務になるわけでありますが、オリンピックは参加することか、勝つことかという議論があります。私は率直にいって、やはり勝つ態勢を整えるということが大事じゃないか。ちょうど大鵬やあるいは豊山というのが相撲の黄金時代を築いておりますように、全然日章旗の立たないような見込みのところでは、なかなか国民のオリンピックに対する関心は出てこないわけでありますので、そういった態勢というのをやはりある程度整えていく。これは一朝一夕にはできないと思いますけれども、陸上競技等についてはどうも悲観的な見方がとられておるようであります。これらの点について、どういうふうにしたらオリンピックが盛り上がっていくかということについてお伺いしたいと思います。
  117. 徳安實藏

    徳安政府委員 ただいまの御質問にお答えいたしますが、御承知のように、組織委員会が、会長が辞任されまして以来しばらく補充がつきませんで、多少ごたごたしておりました。ようやく先日会長もできまするし、また政府の方におきましても、従来文部大臣と私だけが組織委員の中に入っておりましたが、担当大臣でありまする川島国務大臣にも組織委員会に入っていただきまして、政府と組織委員会との関連をきわめて密にするように努力をいたしております。そうして政府の所管し、政府責任において行なうべきところの事柄、組織委員会のなすべきこと、また各地方公共団体、つまり東京都、神奈川県、埼玉県、そういうところで責任を持ってやっていただく点、そういうことを明確にいたしまして、それぞれその責任分担に応じて、ただいま相当の実績をあげつつあると思います。  さらに、ただいまお話しがございました選手の強化でございますが、これは日本体育協会が責任を持ちまして強化策をやっているわけであります。政府の方におきましても、これに補助を与えまして推進しているわけであります。三十八年度、つまり来年度予算におきましても二億五百万円の予算を計上いたしまして、選手強化に補助を与えているわけでありますが、こうしたことがだんだんに仕事の上に盛り上がって参るようになりますと、国民のオリンピックに対する気分も盛り上がってこようかと思います。誠心誠意一生懸命にやるつもりでございます。
  118. 倉成正

    倉成委員 オリンピックの開会式、あるいはマラソンというようなことを具体的に頭の中に思い浮かべてみますと、これは大へんなことじゃないかという感じがするわけでありますので、これらの準備体制には一つ十分留意されまして、さらに国民全般のものとしてオリンピック運動を推進されることを御要望申し上げます。特にこういった計画の綿密さ、準備体制を完全にやるということが一番大事なことでありますが、そういった前提のもとに立って、やはり何といってもお金が要ることでございますから、せっかく大蔵大臣おられますので、その資金の裏づけについては十分なことをされるかどうかということを一言お伺いしておきたいと思います。
  119. 田中角榮

    田中国務大臣 オリンピックは日本が招致したものでありますし、これが毎年あるものではありません。しかも国際的な意義を持つ祭典ともいうべきものであり、日本のスポーツに対する国民性の発達にも大いに寄与するものでありますから、政府もこれが十分完全に行なえる体制をとるために、予算的財政的な措置は遺憾なく行ないたい、このように考えております。
  120. 倉成正

    倉成委員 これで終わります。
  121. 塚原俊郎

    塚原委員長 午後は二時十分から再開することといたします。  暫時休憩いたします。    午後一時三十七分休憩      ————◇—————    午後二時二十一分開議
  122. 塚原俊郎

    塚原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十八年度予算に対する質疑を続行いたします。  堀昌雄君。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 最初に、経済企画庁長官に、物価の問題で少しお伺いをいたします。皆さんの方で御発表になっております昭和三十八年度の消費者物価の上昇率は、二・八%ということになっておりますけれども、一体この二・八%をお出しになった基礎といいますか、その根拠は何かを一つ伺いたいと思います。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大数的に過去からの趨勢、それから個々の物資の生産状況、消費の伸び等を、結論から先に申し上げれば、大数的に考えてということを申し上げることになるわけでありますが、過去の消費者物価の値上がりを見ますと、ここ数年間生鮮食料品の値上がりによりますところの寄与率が三割ないし四割近くあるわけでございます。そこで、幸いにして三十八年度は、生鮮食料品の供給の方の体制が前二年に比べてかなり大きくなっておるようでございますし、また供給のための流通機構、あるいは貯蔵機構などにも改善の跡が見られますので、経済全般の動きが比較的にぶいことと考え合わせまして、生鮮食料品についても過去数年のような大きな動きはないであろう、こういうふうに考えたわけでございます。  なお、もう少し具体的にいろいろなデータを集めておりますが、一つのデータを申し上げますと、過去において個人消費が一定の伸びをいたしましたときに、それと相関関係にありますところの消費者物価指数がどれだけ動いたかという経験率がございます。それによりますと、消費者の個人消費支出が一割動きましたときに、大体消費者物価の動きが二とか三とかということでございます。これは具体的なそういう係数があるわけでございますが、そういうことをも参照いたしまして、まず二ないし三、三に近いあたりというような大数観察をいたしたわけでございます。
  125. 堀昌雄

    ○堀委員 それではお伺いをいたしますが今個人消費をもとにして相関式でお出しになったということで、昭和三十八年度の個人消費の伸びは一〇%というふうにお出しになっておりますが、実は昭和三十七年度におきましても、個人消費の伸びが八・四%と見られたときに、同じように二・八%の上昇を見込んでおられたわけです。一体それではどっちが正しいのか、三十七年度のそういう相関式による出し方は間違いであったのかどうか、ちょっとはっきりして下さい。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 三十七年度の当初の見込みを立てましたときのことにつきまして考えますると、三十六年からいわゆる経済調整に入りまして、その効果が比較的早く現われるであろうというふうに見通しを立てておったようでございます。それは生産も比較的早く落ちるであろうし、従ってそれからややおくれて消費も消費者物価も落ちつくであろう、こう考えておったようであります。この点が、今から考えますと基本的に誤っておったわけでございまして、景気調整の効果というものが、三十七年度の見通しを立てます三十六年度の十二月ないし三十七年の一月ごろに考えておったよりは、はるかに景気調整の効果が現われるのがおそくなりまして、実際には、三十七年の春過ぎてからようやくその効果が出てきたということでございました。この基本的な動向を誤りましたために、三十七年の当初に立てましたところのもろもろの指標が誤ってきた。基本的には、そういう景気調整の効果が現われる時期について若干の希望的観測もまじえて判断を誤った、こういうことであったと反省いたします。
  127. 堀昌雄

    ○堀委員 私が今伺っておりますのは、個人消費の八・四%というのが皆さんの見通し、実績見込みの一三・八%になったということではなくて、相関式でお出しになったということであるならば、個人消費の伸びを一〇%と見たときに二・八%が出て、これはことしの結果ですね。昨年は八・四%という個人消費の率を当初見込んでおって、同じ二・八%が出るというのは相関式という形ではおかしいのではないかということを伺っておるわけです。だから一体どっちが相関式を使った場合正しいのか。一〇なら二・八、多少の誤差があったとしても、これはトレンドの線のあり方によりますから、多少の誤差があっても八・四と一〇で、同じ二・八が出るというようなことは、これは数学の問題として理解ができないのですが、そうすると一体どっちが間違っておるのか、去年が間違いであるということならよろしいのです。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはまことにごもっともなお尋ねだと思います。それで、いろいろデータがございますが、たとえば相関式もございますというふうに申し上げたわけでありまして、相関式だけにたよったわけではございません。三十七年の場合、明らかにこの相関式だけでやったといたしますと、誤りであったと思います。いずれにいたしましても、相関式だけが判断の基準ではございませんので、そういうこともございますということを実は申し上げたつもりでございました。
  129. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしたら、二・八というのは非常に科学的な数ですから、その他の要素で今の相関式で出たものを修正したなら修正したと、何でポイント幾ら修正したのか、ちょっと教えていただきたい。
  130. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二・八と申しますと、いかにもこれは科学的な数字と仰せられても文句の言いようもございませんけれども、先ほど申しましたように、二とか三とか、三に近い方ではなかろうかというような達観を加えたわけでございますから、その二・八という刻みはどうして出たかとおっしゃいますと、それについては正確にお答えすることは困難でございます。
  131. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、二と三くらいのところで、何となく八ぐらいにしておこう、こういうことですね、率直に言うと。根拠があればよろしい、なければその通りですから……。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前年度に対する上がりを計算しておるわけでございますから、そのうちで前年度分が一・三ぐらいは現実にあるわけでございますから、そこでそういうことを申しましたわけで、堀さんのお尋ねに対しては、まずそんなことでございますと申し上げるよりほかございません。
  133. 堀昌雄

    ○堀委員 消費者物価の見通しというものはきわめてあいまいであるということを今はっきりと企画庁長官がお認めをいただきましたから、私はそれにこだわりませんけれども、そこでもう一つ今度お伺いをしたいのですが、三十七年度の消費者物価の上昇の実績見込みを五・九%というふうに経済見通しでお出しになっております。今これは間違いないですか、どうですか。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あと二月ばかりあるわけでございますが、六%にならないで押えたいと考えておりましたので、五・九%ということを数字としては考えております。その辺でいけると思っております。
  135. 堀昌雄

    ○堀委員 事務当局が出られてもけっこうですが、私はこれはそうならないと思います。ならない一つの理由は、昨年の十二月の消費者物価指数は皆さんの予想を裏切って一一五・六になりまして、十一月の二三・三から二・三一ぺんにはね上がっておるわけですね。私は、ちょっとこれは試算をしてみたのですけれども、試算をしてみますと、このあなた方のおっしゃるところへ落ちつけるためには、あと毎月一一四・九で一、二、三月が推移をしなければ、この中へはおさまりません。ところが過去の例を見ますと、十二月の一一五・六から一一四・九まで下がるというようなことは、過去の十二月、一月の例ではないわけですから、おそらく一月はそんなには下がらない。そこへもってきて豪雪の被害が出て、前年の中ではかなり私は生鮮食料品を含めて物価上昇はあるというふうな判断をするわけです。だから、少なくとも私は、現在の時点で考えるならば、昭和三十七年度実績見込みは六%をこえる。これはあと三カ月ほどすればまた宮澤さんにお目にかかって、どうでしたかということになるので、うそも隠しも逃げ隠れもできませんからお伺いしますが、どうですか、あなたは六%をこえないとおっしゃる、政府でそんな力がありますか。
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 堀さんのそういう御試算は、その通りであると思うのであります。まあ二月、三月が毎年比較的消費者物価の低い、支出の低い月でございますから、かりに豪雪等のことを除外して考えまして、私どもが五・九でいけるだろうと考えましたのにも十分な理由はあるわけであります。豪雪等の影響がどういう形で現われますか、今、少し先のことはわかりますが、手前のことがよりわかりませんので、にわかに何とも申し上げられません。しかし、私どもとしては六%にならずに済ませられるであろう、こういうことをいまだに思っております。ただ、これは仰せのように、二カ月もいたしますとはっきりいたすことでございますから、そのときの結果について検討いたすしかないと思います。ただいまはまだそういうふうに考えております。
  137. 堀昌雄

    ○堀委員 大体今のお答えを伺って、あなた方は少し熱心さが足らないと私は思うのです。消費者物価というのは、——これは数の論議ではありますけれども、今私が申し上げておるのは科学的な数の論議をしておりますから、かなり客観的な事実に基づいて言っておるわけです。今の御答弁の中で二月、三月は比較的消費者物価というのは伸びないんだ、こういうお話ですけれども、過去の例で今わかっておりますのは、昭和三十五年は一月が九八・八、二月が九八・七、三月が九八・六、下がっておりますけれども、〇・一ずつ下がっただけです。三十六年は一月が一〇二・五、二月が一〇三・〇、三月が一〇二・八で、これもあなたがおっしゃるように著しく下がるような情景ではないわけです。だから少なくとも本年度の状態は、十二月に一一五・六まで上がったものが、たとい下がっても二五ぐらいのところで横ばいということになれば、これはもう明らかに六%はこえるわけです。だから、さっきは、初めには五・九で上がらないようにやりますとおっしゃり、まあそうなるだろう、だんだんうしろへくるほど答弁自信を欠いておられるようでありますが、私は、やはりもっと率直にそういう情勢を見つめた上であなた方が問題に対処してもらわないと、物価は上がるという前提でものを考えれば諸施策はそのようになりますけれども、押えておくんだ、押えておくんだ、現実には上がっていくというようなことで政策をやられたのでは、これは私は国民は困ると思います。  それからもう一つ、過去の状態から見まして、今度は来年の問題に移りますけれども、ことしが非常にずれてくると、また来年が二・八%というのはそれだけでくずれるわけですね。皆さんがお出しになっておるのは、単に二・八%をお出しになっているだけではなくて、消費者物価指数をお出しになっているわけですね。三十八年度の見通しは一二六・八というふうにお出しになっている。それで二・八%は出てくるのですから、二・八%を先にはじいて一一六・八が出てきたわけではないです。一一六・八という年間平均指数を先へ出しておられるから、そうすると土台の一一三・六というのは、これは今申し上げたように動いてくると私は思いますから、これが上がってくれば二・八よりは小さくなりますね。それは小さくなるはずはないと私は思うんです。スタートの土台が上がっておって、皆さんがここだと思っていたのにスタートはここまできた、しかし終点は同じだなんてことは考えられませんね。皆さんはやはり二・八%の増というものを含んで一一六・八を出されたと私は思うわけです。そうすると、ここは動きますね。動きますか、動きませんか。
  138. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこらは非常に議論のあるところだと思いますが、たとえば今一一五・六と言われましたのは、前年の十二月をおっしゃったと思います。これにつきましては、前年につきましては、いっとき非常に高かったわけでございますけれども、ともかく十月ごろには一一二・八でございますか、三ぐらいの数字のところまではいっておったわけでありまして、十二月の場合は、やはり米価を中心とした引き上げ動向がここに入ってきておると思います。一月もおそらく、これは私の感じでございますけれども、十二月より下がるということはないであろう。そこまでは私もそう思いますが、全体の経済の動きにやはり左右される要素が多いと思います。三十五年においてこうこうであったということを仰せられますけれども、それは経済の動きが大体鎮静する方向にいくのか、あるいは伸びる方向にいくのかなどということに非常に大きく影響されると思います。もう一つは、先ほど申し上げましたような生鮮食料品の対策が上手にいくかどうか、これで三割、四割の勝負がきまるわけでございますから、この二つのことであろうと思いますので、農林大臣などとも御相談しながら、この異常気象に対処して生鮮食料品の供給のことも実はあれこれ頭を悩ましておるようなわけでございます。  それから、かりに三十七年度が五・九というものを突破していった場合に、それがそのまま、つまりかさ上げの形で上にいくかというお尋ねでございますが、それは私はそうでないだろうと思います。卸売物価が一定の平静を保ち、そうして先ほど申し上げましたような対策が誤りなければ、これは床が上がっただけ今度は上がりの幅は小さくなる、こういうふうなことが論理としては当然考えられると思うのであります。
  139. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ論理はそうかもしれませんが、物価が論理のようにいってくれればいいんですけれども、いかないんじゃないかと思うのです。  そこでちょっと中身に入って伺いますが、この二・八の上昇率の中には、都市バス、民営バスの値上げの問題は織り込み済みなのかどうか、ふろ代の値上げは織り込み済みなのかどうか、タクシーの値上げは織り込み済みなのかどうか、この三点をちょっと、公共料金ですからお伺いいたします。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、二・八をどうやってともかくそのような数字を出したかというお尋ねに対しましては、先ほどお答えいたしました通りでございますから、ただいまおっしゃいましたような要素というものとは一応別個のものである。それぞれについてどうするかという政策であれば、また別途にお答えいたしますが、両者は無関係のことでございます。
  141. 堀昌雄

    ○堀委員 無関係なものということは織り込み済みではないということですか。要するに都市バスが値上げになる、ふろ代が値上げになる、タクシーが値上げになったら、この二・八は動きますよということなのか、これを値上げをしても二・八でいけますということなのか、どっちか。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、六大都市のバスの料金などの値上げについて賛成をする気持は実はないのでございますけれども、二・八というのは、先ほど申しましたような大数観察、あるいは相関係数などから出しておりますから、個々の現象がどういうふうに動くかということとは無関係に算出されたものである、こういうことを申しておるのであります。
  143. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、算出の経過はいいのです。私が言うのは、もし今のバスなり、ふろ代なり、タクシーの値上げをしたときは、それを値上げをしても二・八というあなた方の目標は動かないのか、値上げをしたら動くのか、そこを伺っておるのですよ。それだけ答えて下さい。その計算の過程を聞いているんじゃない。結果としてどうなるか。
  144. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、値上げを許すとか許さないとかいうことと全く別に申し上げれば、そういうことによって影響は受けないというのが、答えとしては正しいと思います。
  145. 堀昌雄

    ○堀委員 じゃ、もう一ぺん確認をしますと、値上げをしても二・八%、値上げをしなくても二・八%、こういうことですか。おかしいですね。
  146. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、そういう御質問があってはおかしいのでありまして、大数観察をいたしますときには、いろいろな要素がプラスに出たりマイナスに出たりするものが突っ込んでございますから、一つのものがこうなろうと、それだけで影響があるというわけには計算の性質上参らないということを申し上げたかったのであります。
  147. 堀昌雄

    ○堀委員 それではあれですね、これはただあなた方計算で出しただけで、世の中の現実の問題とは全然関係はないということになってしまうじゃないですか。私は具体的な問題として、結果としてのことを聞いているわけです。あなた方は今二・八%見通しとして出しています。だから、それを守るためにやろうということになれば、原則としてやはり都市バスの値上げも、ふろ代の値上げも、タクシーの値上げも、そういう公共料金の値上げを一切やらさないというのなら、私は二・八がそのままいくということはわかるのですよ。しかし、あなた方がもう二・八の中に織り込み済みでありますというなら、値上げをしたってかまわないじゃないかということになるので、そこで私は伺っておるのです。計算の過程とか、そういうことではなくして、今上げることによってこれは動くのか動かないのかという現実の問題としてどうなるのか。結果として事実出てくるのですから、消費者物価として動くのですから……。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは最初から明らかでありまして、個々の現象とは無関係だと申し上げたのはその意味でございます。かりに何かのものが上がる、しかし、また何かのものが下がる、そういういろいろなものの相関関係を経験に基づいてはじき出しているわけですから、かりにバスの値が上がりますと、都会におけるところのCPIというものはその部分だけ上がる、これはもちろん問題なくその通りでございますけれども、しかし、一年間の動きを大数観察いたしましたときに、そのことが織り込んであるとかないとかいうことでこの二・八というものが動くということではないと思うのであります。
  149. 堀昌雄

    ○堀委員 今のお話で、私もこれ以上これには触れませんが、そういう大数観察で出したものは非常に機械的なものであって、それでは現実の政治とはかみ合わないのだというふうに聞えますね。そんな現実の政治に関係のないものを政府経済見通しなんかということで出す必要ないじゃないですか。これは何のために出すのですか。それを伺いたい。しょっちゅう間違っている。
  150. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現実の問題として申すならば、それは明らかに一つの指標であり、また、場合によっては政策の目標になるわけでございます。それですから、これだけ努力をして二・八でとめたいという、そういう気持がむろん経済政策の基本的運営の態度として出ておるわけでございます。それをそういうふうにとめるためにはどういうことをしなければならないかという政策目的はおのずから出て参ります。それは何々の供給をどうするとか、公共料金は値上げを認めないとかいうことはそこから出てきておりますから、それなりに意味があることだと思います。
  151. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、話を前に進めて、本年度じゅうは今の三つのものは値上がりしませんね。公共料金を上げないと、この間大蔵委員会でもはっきりおっしゃったし、政府の方針だそうですから、上げないということを一つはっきりさしていただくと、国民は非常に喜びますよ。どうでしょう。
  152. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 生鮮食料品その他の対策鉱工業はあまり心配しておりませんけれども、そういうものが予期した通りいきまして、まず物価が上がっていくというような生活の脅威がしばらくなくて、国民がもうそういう生活の脅威というものを感じなくて済むというような雰囲気になりますまでは、そういうものについては手をつけることは適当でないと思っております。
  153. 堀昌雄

    ○堀委員 さっきからだいぶ生鮮食料品がよく出るのですが、実は昭和三十七年の消費者物価で見ますと——年度ではございません。それで見ますと、季節性の商品を除きましても、全都市で昭和三十五年と三十六年の間は五・三、それから三十六年と三十七年の間が六・八、これは季節性の商品を除いても六・三と五・八ですから、実際は季節性商品というものは、おっしゃるほどに、なるほど上昇寄与率の中に占める割合は約五割くらいありますけれども、しかしその他のものの寄与率というものが相当大きいということ、特に最近の状態は雑費の値上がりというものは終始一貫一つのトレンドをもって上がっております。全都市の寄与率で見ると、雑費が三三、特に教養・娯楽費が寄与率の中で一四、東京の場合には二六、雑費が五〇というように非常に大きな比重を持っておるわけです。だから、その中で見ると、やはり今申し上げたような都市バスなりふろ代なりタクシーの値上げというものは、あなたのおっしゃるように簡単なものだとは私は思っていないわけです。今後も、今もおっしゃるように生鮮食料品、これもあとでちょっと触れますけれども、問題があると思いますが、大丈夫ですか。生鮮食料品の方が落ちついていれば上がらないという見通しが立ちますか。
  154. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おっしゃいますように、四割、五割の寄与率があるわけでございますから、まずこれだけをきちんとしておきますと、あとの心配の大半は除かれるというような気持でおるわけでございます。もとより、そこで公共料金をどんどん上げるようではいけないのでありまして、それは先ほど申し上げたような態度でおるわけでございますから、まずこれをきちんとすることが先決であると考えておるのでありますが、雑費、教養・娯楽費などにつきましては、これはある程度需要に弾力性のあるものでございます。生鮮食料品に至りましては、生活のぎりぎりの必需科目でございますから、その持っておる安定度に対する重要性というのはおのずからやはり違うだろう、どうしてもここに主力を注いでいきたいというふうに思っております。
  155. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、それじゃ寄与率の方で申し上げますと、大体昨年度からことしにかけて寄与率のふえておるものというのは、生鮮食料品の中では魚介が六から一一へ、肉類が三から四へ、乳、卵が七から一〇へというふうに、こういうものは寄与率が非常にふえております。加工食品は値段は上がっておりますが、寄与率はほぼ同じになっております。こういうふうな中で一つ問題がありますのは、昨年は酒類が実は減税になって下がりましたから、そして強い統制力でこれを押えておりましたから、酒類というのは食料品の中では下がったわけです。一体ことしはどうなりますか。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年の十一月でございますか、しょうちゅうの値上げを一部許したことがございますが、それ以外はおっしゃるようなトレンドでございました。そして三十八年度に出てきそうな問題はまずピールでございます。それから清酒でございます。そのいずれも、私はこの際値を上げるということは自重をしてもらいたい、同意しがたいという態度でおります。
  157. 堀昌雄

    ○堀委員 この酒類というのは、大蔵省が所管をしておる監督行政の強いものでありますから、皆さんが絶対上げないといえば、それは上がらないで済むかもわかりませんが、ちょっと私そこでお伺いをしたいのですけれども、ビールはさておいて、まず日本酒の方ですが、これは今のままで基準価格ということでやっていって、値段が押えられますか。実はもうだいぶ米の値段も上がっておるし、労務費その他も上がっておるから、何か盛んに上げてくれという要望が強く出ておるわけです。これは御承知だと思う。そこで、今あなた方の方で基準価格というのはどういうことになっておるかといいますと、一級酒の基準価格というのは、小売販売価格で五百九十円なんですけれども、現在市場では六百四十円、六百二十円、六百十円という格好に現実にはなっているわけですね。この基準価格は動かさない。それは動かさなくていいでしょうけれども、実質的なそういうものは、そうだからといって一切動かさないというわけに、やはり原価が上がっていていろいろな人件費その他が上がっているから、上げてくれとくると、そのままでは済まないと思うのですが、その今のあなたのお考えというのは、そういう基準価格のようなものは据え置くということで、上げないようにできると思われるかどうか。
  158. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 酒類業団体法によるところの基準価格というものを置いておることがいいのか悪いのかということは、前から問題があるわけでございますが、それはそれといたしまして、今の清酒の需給関係から申しますれば、やはり値引きなんということが行なわれておる、一種の過当競争みたいな状態だと思います。それで酒屋さんがちゃんとコストが引き合っておるかどうかということには、議論をし出すといろいろ問題があると思いますが、ともかく供給というものが決して過小ではないのでございますから、私は、どうも清酒についても値を上げるということについては賛成しがたい。酒屋さんにはあるいはお気の毒なことであるかもしれませんけれども、少なくとも一般の国民生活に関係の深い種類の酒については、上げるということには同意をしがたいというつもりでおります。
  159. 堀昌雄

    ○堀委員 今あなたがお触れになったのですが、供給は少しオーバーのようだ、値引きが行なわれておる。では、市中のわれわれ消費者が値引きでお酒を買っていますか。
  160. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは最終消費者にと申すよりは、卸等に対して造石の大きいところがいろいろな意味での優待でありますとか、値引きでありますとかいうことをいたしておるということを申したわけであります。
  161. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、生産は少し過剰ぎみで、生産者は、流通段階に対しては多少過当競争ぎみでサービスはするが、国民大衆は、私どもが願っておる消費者物価に関係のある部分に影響がないというのなら、これはやはり下げる方法を積極的に考える必要はないのですか。あなたは上げたくないとおっしゃるけれども、自由主義経済の中で供給が過剰になっておってなぜ下がらないのですか。消費者段階で下がらないには下がらない理由があるでしょう。その理由をとっぱずせば、自由主義経済の原則なら、上がるものもあるでしょうけれども、下がるのが原則じゃないのですか、供給過剰の中で。どうですか。
  162. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、私もひどく詳しくはございませんけれども、小売のマージンが圧迫されておるということは確かだと思うのでございます。ですから、そういう一種の供給過多の状態が最終消費者まで利益となって均霑してこない。小売に伴うところの人件費、施設費等、いわゆる小売マージンでカバーされるところが非常に苦しくなっておる、こういうことだと思うのでございます。それならば——これは私は政策として申すわけではございません。私はそういうことを有権的に申す立場にはないのでございますから、政策として申すのではございませんが、やはり清酒の醸造業の企業整備とかなんとかいうことがかりに行なわれるとすれば、これはもう少し合理化ができるだろうということは、考えることは考えます。
  163. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、よく聞いておいて下さい。これはあさっては大蔵委員会でやりますから、きょうはあなたには触れません。企画庁だけやります。  そこで、あまり宮澤さんお詳しくないのに、いじめるようで悪いけれども、あなたは上げたくない、こうおっしゃるものですから、上げたくないには、やはりある程度の確固とした理由がおありだろうと思う。しかし、私が今伺っておるところでは、どうも理由が非常に薄弱です。何か小売マージンが非常に圧縮をされておる、逆なんですね。実はいろいろなリベートや何かが要っているのは、卸よりも小売に非常にかかっておるわけです。御承知のように、現在の小売というものは、戦前に比べると非常に数が減っておりまして、そこで、これはカルテル的な免許業者ですから、ここで締まっておるものだから、幾ら私どもがこれまで生産段階の自由化をきょうまでやってきて、オーバーにしオーバーにしてきても、末端は依然として価格はストップをして、消費者が全然それらの恩恵が受けられない。これは今の場合は非常に大きな問題になっておる。あなた方は上げないことを考える前に、いかにしたら下がるかということをもっと真剣に私は考えるべきだと思うのです。いかにしたら下がるかということは、やはり流通段階におけるいろいろな価格を自由化をするということだと私は思っておるわけです。私は、大体今のあなた方がやっておられるいろいろな問題の中に、金利問題、これはきょうやりませんが、これだって統制価格があるから問題があるので、いろいろな問題を私はもっと自由化をすべきだと思う。自由化をする中で資本主義のいいところが現われてきて、そうしていいものは高いけれども、少し十分でないものは安くて大衆に行き届くようになる。その中で競争をしていけば、だんだんいいものがより安く大衆の手に入るということになるのじゃないか。だから、一つ私は長官にはっきり申し上げておきたいのは、その押えたいのだということなら、自由競争をする自然の中で値上がりをしないような政策をとるのが正しい。だから私はこれまで三年間にわたって、酒類については生産者段階におけるところの自由化、米の割当をふやして、そうしていい業者がどんどんつくるものはつくりなさい。いいものをつくって、そうしてだめな人はもっと自分の能力に見合って減産をして、そうしてやればいいわけですから、そういう中で自由化をすれば、大衆はより安い酒が飲めるのですが、残念ながら小売段階が防波堤になってしまって、少しも安い酒は売られない。年末の話では、十本について二本も値引きがされておる。にもかかわらず、年末に酒を買った人で、今の価格から割り引いてもらった人は日本では一人もないのです。だから、それを一つ申し上げておきたいのと。もう一つは、これは大蔵大臣よく聞いておいてもらいたいのですが、これほど価格の差が少なくて末端へいって値開きのあるものはないということです。実は例として灘もので申し上げると、生産者の税抜き価格は一級酒が二百四十七円六十二銭、二級酒が二百二十二円七十六銭、この間の差は二十四円八十六銭しかありません。生産者価格、税抜きでは、一級酒、二級酒の値段の差というのは二十四円八十六銭です。ところが末端へいくと四百八十円と六百四十円で、百六十円差がついてしまうんですね。一級酒と特級酒の差はわずか十四円十銭、それが驚くなかれ二百十円末端へいくと差がついている。製品の中で十四円十銭しか値段の違わないものというのは、本来あまり実質的には違いはないはずですね、大量生産をしているので。それが末端へいって二百十円も違うというような、これは大蔵大臣、何といったって酒税は高過ぎますよ。むちゃくちゃだ。これは、だからもっと考えなければいかぬと思うのです。しかし、それはそれとして、こういう状態ならもっと自由化をすればやはりいいものが安くできるという条件は私はあると思っているわけです。ですから、国民はこれまで公定価格で酒を買っていたものですから、酒というものはもう値引きをしてくれないものだと思っていると思うので、一つ私は、企画庁長官が音頭をとって、一つ酒は今度は末端まで自由化をしてもらいましょう、酒を買いにいったら国民は大いに値引きを要求しなさい、いい酒を安く引いてくれるところにみな買いにいきますよ、という運動を一つ大々的にやってもらいたい。そうすればあなたの言う二・八%の中におさまる方向に酒の問題は解決をすると私は思うのです。それは一つ私の希望として申し上げておきます。  そこで、今のような状態で、私は結論として言いますと、消費者物価はあなたのおっしゃる二・八の中にはおさまらない。大体来年の今ごろにまたここへ参って、まあ宮澤さん、そのときにはおかわりになっておって、だれかほかの人では話がつながらなくて困るのですが、もう一ぺんここへ立って、去年は宮澤さんにこう言った、やはり三・六でしたね、なんというようなことに結果としては私はなるだろうと思うのです。  そこで、これから大蔵大臣にお伺いをすることにいたします。さっき武藤君がいろいろと大へんいい質問をしまして、だいぶん大臣苦しそうな答弁でお気の毒だと思ったのですが、私は、また少しいやみなことを言うので、きょうは消化不良が起きないかと思って私も大へん心配をいたしますけれども、帰りに消化剤でも一つ。  一番最初にお伺いをいたしたいことは、ことしのやはり減税の問題なんですけれども——委員長、これからしばらく少し政治的な論議をやりますから、政府委員の発言は私一つ御遠慮を願いたいと思います。政治的な問題が済みましたら、政府委員よろしいと私言いますから……。  最初に、大臣にお伺いいたします。今皆さんのお手元に、新聞記者の方にもお届けをしたと思うのですが、ちょっと読み方を申し上げておきますと、右の方に二行並んで書いてございます初年度(三十八年度)というところに、AとBと書いてございます。Aというのは、税制調査会の答申案によるところの減収額であります。Bというのは、政府の改正案によるところの減収額でございます。AマイナスBというのは、その差額でございます。その次の平年度のところの右側の端が、これが政府案の減収額でございます。まん中にあるのが税制調査会の案でございます。そこで、さっきの武藤君の質問に対して大臣は、税制調査会の答申は間違いございません、理論的にも正しいものだと思います、こういうお答えだったと思いますが、ちょっと最初にそれだけ確認をしてから話を進めたいと思います。
  164. 田中角榮

    田中国務大臣 先回お答えした通りでございます。
  165. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、ちょっと大臣に伺いたいのですが、下の段ですね。「租税特別措置及び税制の整備」の第一番目のところ、「利子所得の源泉徴収税率の引下げ及び貯蓄に対する免税制度の改正」、これが初年度七十六億、平年度二十八億、こうございます。大体税制では、普通初年度が減収が少なくて、平年度が多いというのがこれは常識ですね。初年度というのは九ヵ月、平年度十二カ月ですからね。そこで、一体これはなぜ初年度の方が多くて、平年度の方が二十八億と少ないのでしょうか。——むずかしいことは聞きません。政治的なことだけですからね。——こんなはっきりしたことで、事務当局から一々聞かなきゃならないようなことでは困るのだ、大蔵大臣
  166. 田中角榮

    田中国務大臣 法人の初年度分の減収であります。
  167. 堀昌雄

    ○堀委員 法人の初年度分の減収というと、そうすると、その減収分はどうなるのですか。
  168. 田中角榮

    田中国務大臣 初年度以降において徴収するわけであります。
  169. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、大蔵大臣はことし一体幾ら減税しようと思いましたか。昭和一二十八年度における減税の総額は、あなたは幾ら減税するつもりだったのですか。
  170. 田中角榮

    田中国務大臣 私の一番初めのことですか、それとも提出をしておる……。
  171. 堀昌雄

    ○堀委員 提出をしておるこれで、一体幾らやるつもりだったのですか。
  172. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、おおむね五百億ないし六百億ということを、大臣就任後から税制調査会に諮問をして答申を受ける当時まで、そのような目標を持っておったわけです。これは大蔵委員会でたびたび申し上げておる通りでございます。
  173. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、現在のこの状態であなたは幾ら減税したと思いますか。今この改正案を出しておりますが、幾ら減税しましたか。
  174. 田中角榮

    田中国務大臣 平年度五百四十億でございます。
  175. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、初年度で……。
  176. 田中角榮

    田中国務大臣 四百九十九億でしたかな。——五百四十二億でありますか。
  177. 堀昌雄

    ○堀委員 今の減税五百四十二億、間違いありませんね。ちょっとだめを押します。
  178. 田中角榮

    田中国務大臣 四百四十二億でございまして、私の手元にいただきました資料は百億違います。
  179. 堀昌雄

    ○堀委員 私がここへお配りしたのは、これは政府の減収額が書いてあるのです。初年度の減収額です。私は今減税額を聞いたのです。だからそれを私がもう一回確認したのです。それじゃ今あなたは初年度の減税は四百四十二億ということをおっしゃったわけですね。初めは五百億ないし六百億減税したいと言っておられた。五百四十二億というのがあるから、減収になっていますね。この五百四十二億の減収というのは、ことしの自然増収とのバランスで出てきたわけでしょう。
  180. 田中角榮

    田中国務大臣 差額の百億は後年度で取り戻していきます。
  181. 堀昌雄

    ○堀委員 いやいや、私が聞いているのは、ことしの自然増収の中で、ともかく減税をするために減収になるでしょう。それは五百四十二億というところに押えたいということであったわけですね。だから、そのことと減税という問題は実は別なんです。それはわかりますね。そうすると、その五百四十二億にしなければならなかった理由ですね。減収額を五百四十二億にしなければならなかったのは、ほかのいろいろなつり合いの関係があって、本年度の自然増収の中で減税引き当ての減収分になるのは五百四十二億だということになさったのですか。——わかりにくいですか。じゃもう一ぺん言いましょう。要するに、五百四十二億の減収額を立てて、減税が四百四十二億になるということでしょう。だからことしの自然増収、要するに、ことしの歳入全体でいいです、歳入全体の中で見て、その中で五百四十二億以上は減収部分に充てられない、ほかのいろいろな歳出がありますからね、ということでおきめになったわけでしょう。違いますか。ほかに理由がありますか。私はそうだと思う。いろいろな歳出を考えて、ことしの中で減税に充てられる部分は五百四十二億しかないから、それだけやったので、もしもっと財源があるならもっとやるわけでしょう。他に財源がないから、そこでもう五百四十二億で打ち切った、こういうことじゃないですか。——わかりませんか。五百四十二億にしたという理由は、要するに、ほかに財源がないから、ほかにいろいろ支出があって、あなた方の方の歳出の関係で、ことしの歳入としては五百四十二億の減収にとどめざるを得なかった、こういうことでしょう。違いますか。それ以外に意味がないと思うのだけれども……。これは政府委員答弁じゃないです。減税額の大ワクをきめたのはあなたがきめたんじゃないですか。
  182. 田中角榮

    田中国務大臣 技術問題につきましては、政府委員をして答弁いたさせます。
  183. 堀昌雄

    ○堀委員 技術的な問題じゃないですよ。簡単な五百四十二億のことですから、事務当局の答弁じゃないですよ。
  184. 塚原俊郎

    塚原委員長 委員長主税局長に発言を許しました。
  185. 村山達雄

    ○村山政府委員 今堀委員指摘のように、来年度の税制改正によりまして、減収としては五百四十二億でございます。ただし、先ほども大臣がお答えになりましたように、利子、配当について、法人につきましてそれぞれ初年度の減収が五十億ずつ生じます。従いまして、国民負担に関係のある減税としては、四百四十二億でございます。もちろん、これらは今度の改正をやることに伴いまして、こういう数字になるわけでございまして、その辺を見合って減収並びに減税の総ワクをきめているわけでございます。
  186. 堀昌雄

    ○堀委員 だから、今聞いたって、別に何も新しいことはないので、私はそんなことを聞いておるのではないのです。要するに、大蔵大臣、五百四十二億の減収になったというのは、たとえば税制調査会が書いているように、ここに三百九十三億の減税をしたとすれば、これからあと百十七億ふえるわけですね。ところが、それをあなた方の方では財源がないから削ったのでしょう。そういうことじゃないですか。私が聞いているのはそういうことなのですよ。だから、財源がないから、減収額を五百四十二億にとどめざるを得なかった、こういうことでしょう、違いますか。財源があるならば、税制調査会の答申の百十七億の減税をやったっていいのです。しかし、財源がないからこういうふうにしたというので、これは事務当局の答弁じゃないですよ。政治的な判断ですから、大臣答弁です。他にないから、あれば減税すると言っておるのだから……。
  187. 田中角榮

    田中国務大臣 むずかしく御質問にならないで、もう少し私にわかるような御質問をいただければありがたいわけです。所得税に関して税制調査会が答申をした分は、なぜ答申通りやらなかったか、こういうことではないのですか。
  188. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、違うのです。
  189. 田中角榮

    田中国務大臣 それは財源の問題がありましたから、前にもお答えをいたした通り、一万円の引き上げを五千円に、二分の一に削ったということでありまして、これはもう財源上の問題であります。
  190. 堀昌雄

    ○堀委員 それだけでいいのです。簡単なのです。私は、財源上の関係であなたがこうしたと聞きたかったわけです。それだけ聞きたいのを、あなたがむずかしく考え過ぎて、何を聞かれるのかと思われたのでしょうが、そういうことでしょう。財源がなかったから——いいですね。その点確認します。  そこで、今主税局長答弁したように、この問題の中には、実は五百四十二億の減収に本年度なりますよ。昭和三十八年度減収になって、財政のワクとしては減るのですけれども、その分は、来年度経済とか税制に関係なく、百億だけ三十九年入ってくるわけです。この分が自動的に入るのですね。そこは確認できますね。
  191. 田中角榮

    田中国務大臣 お説の通りであります。
  192. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、財源が百億、昭和三十九年度に何らかの格好で繰り入れることができさえすれば——三十九年度の自然増収とか何とかいうことに関係なく、三十九年百億入るのですからね。要するに、いつも池田さんが言われるように、金の足りないときは借りてきたらいいじゃないか、そして返せばいいのだというのが池田さんの論理ですね。まあ国際収支が赤字になったら外国から借りればいいじゃないか、こういう論理です。これは田中さんも経済人だから、金がないときは借りてきてあとで返せばいいというのは、これは私は自由主義経済の原則だと思います。そこで、私がお伺いいたしたいのは、第二次補正予算で、皆さん方は三百五十億産投資金に繰り入れをなさいましたね。そうして来年度、三十八年度の産投会計では、その資金から九十三億取りくずすことにあなた方は今しておられますね。そうして一般会計から昭和三十八年度に四百九十七億繰り入れることにしていられます。そうすると、これは、産投へ三百五十億ことしの第二次補正で繰り入れた金は、九十三億しか昭和三十八年度中取りくずしませんから、産投会計としては、約二百六十億という金が資金のままで三十九年に行くわけですね。おわかりですね。そこで私は、ほんとうにあなたがこれまで朝から立って、減税はしたいのだ、大衆のための減税はしたいのだという本気があるなら、この百億というような技術的な問題で、過年度に自動的に繰り越す百億があるなら、ことしの一般会計からの産投会計の繰り入れの四百九十七億を、三百九十七億一般会計から昭和三十八年度へ繰り入れる、そうして資金から百九十三億とりくずす、同じになりますよ、産投会計の受け入れば。そうすると、資金は九十億しか三十九年度へ繰り越しになりませんね。しかし、三十九年度予算では、今の全然たなぼたの自然増収その他何も関係がないものがここへ返ってくるから、三十九年度の税収で返ってくるのですから、それを産投会計の資金へ繰り入れるということをすれば、現実にはどこも腹が痛まなくて、税制調査会の答申通りの減税ができたはずじゃありませんか。そう思いませんか。どうですか。
  193. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたの質問の方向は非常によくわかりました。どうも先ほどの御質問のやり方では、主税局の専門家が計算しなければわからないような部門に入るのかと思っておりましたから、私もちゅうちょいたしたわけでございますが、そういう政治論になれば大臣分野でございますから、私からお答えいたします。  これは三十九年度に百億繰り入れられるものである。なお問題は、組みかえ動議をお出しになったように、三百五十億の繰り入れの財源があるにもかかわらず、なぜ答申通りの減税をやらなかったかという問題でございますが、この問題につきましては、るる申し述べておりますように、国際競争力を培養しなければならないという産業政策上の問題、それから産投の資金が枯渇をしておりますので、これをいつでも要請に応じ得る体制をとるという観点に重点を置いたわけであります。しかし、減税の問題につきましては、るる申し述べておりますように、今年度から両三年にわたって、減税についてはより高い立場で、内閣の税制調査会において検討していただき、それが答申を待ちながら、特に今年度よりも来年度、来年度よりも再来年度というように、減税に対しては前向きの態度をとっていくということを明らかにいたしておりますので、今年度答申によって政府に要請をせられた面については、来年度以降において処して参りたいという考えは申し上げた通りでございます。  もう一つは、答申をいただいたときと時間的なずれがございまして、三十八年度の財源見積もりというものに対して的確な数字がいまだしの状態に答申を受けたわけでありますし、その後主税局で検討をし、党との間に調整を行なっておりました結果と、それから第二次補正を提出いたした時期との間には、相当時間的なずれがありますし、それらの問題の結果、審議を求めておるような状態になったわけでありまして、税制調査会が答申をしておる一般減税に対して、政府はやらないとか、これをうんと削ってもいいのだとか、産業投資よりもこれが優先しないのだなどという考えを持っておらないことを明らかにいたしておきます。
  194. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、産投の一般会計で九十三億しか今の予算でとりくずしを出してないけれども、これはあとのも年度内にとりくずしをするという前提ですか。この資金の三百五十億円の繰り入れというのは、昭和三十八年度に全部とりくずすんだという前提で、それではこれは組まれておるのですか。
  195. 田中角榮

    田中国務大臣 三十九年度以降に基金として繰り入れておるわけでありますが、しかし、三十八年度中の諸要請があれば、これをとりくずさなければならない場合も想像せられるわけであります。
  196. 堀昌雄

    ○堀委員 一体それじゃ、もし今から予測ができるものがあればおっしゃって——予測は全くないというなら、ただ貯金に積んでおきたい、こういうことですか。
  197. 田中角榮

    田中国務大臣 本委会員でもいろいろ問題になっております八条国移行の問題、完全自由化の問題をいつにするかといって、このめどを繰り上げ、繰り下げることによっていろいろな財政的な支出を要請せられることは、昨年の臨時国会で、石炭問題に対して、石炭のためにのみ臨時国会を開かなければならなかったという事実に徴しても明らかであると思います。
  198. 堀昌雄

    ○堀委員 要するに、そうすると、産業基盤の強化の方が、とりあえず個人のそういう減税に優先をするというのが大体自民党の政策だ、こう理解してよろしいんですね。
  199. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げました通り、その軽重をきめて、産業政策の方が優先をするということではございませんということを明らかにいたしておきます。
  200. 堀昌雄

    ○堀委員 まあこれからあとぼつぼつやりますから、いいですけれども、それではこれから政府委員答弁を認めます。  実は、税制改正によるものと税制調査会によるものとで、納税人員に相違が出ておると思います。一体課税最低限が下がってきたことによるところの納税人員の増加は何名ですか。
  201. 村山達雄

    ○村山政府委員 税制調査会の答申通り実施いたしたといたしますと、失格者は百五十四万人に及ぶ予定でございますが、今度の答申案では若干縮まりましたので、それが百十七万人、差引三十七万人失格者が減ったということでございますが、しかし、百十七万人は失格する予定でございます。
  202. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣に伺いますが、さっきのいろいろなお話で、いや、ともかく減税は大いにやっているんだ、今後もやるんだとおっしゃったのですが、ここで減税というのは、あなた方の方では一体どういうことを減税というのか、ちょっと伺いたいのです。減税というのは、要するに、さっきも議論が出たと思いますが、実質所得の中で減税されるのか。名目所得で減税をしても、それが実質所得の物価上昇のはね返り分をカバーできなかったし、減税とは——私は増税とまでは言いませんよ。勝間田さんは増税じゃないかと言われたんですが、増税とまでは言わないけれども、減税じゃないと思うんですね。どうでしょう。
  203. 田中角榮

    田中国務大臣 従来は名目でいっておるそうでありますが、しかし、減税という以上、実質的な減税にならなければいかないのであって、実質的な面の減税を目標にすべきであると思います。
  204. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、まず第一点の今の三十七万人という人は、税制調査会——あなたのさっきの答弁では、税制調査会の考え方は正しいとおっしゃるのですから、本来これは失格、税金を払わなくて済むようになるはずの人が、あなた方の手直しで税金を払わされるようになったわけですね。そうすると、こういうのはどういうことになるんでしょう。
  205. 田中角榮

    田中国務大臣 この三十七万人が納める税金が、税調と政府案との間でどの程度になるかは、なかなか推定はむずかしいのですが、おおむね事務当局で推定させると一億円内外であろうということであります。これが増税になるということにきっと言及されようとしておるんでしょうが、いずれにしても、百十七万人でも減税になっておるのでありますし、ただ、あとの三十七万人が税制調査会の答申通りにやれば減税の恩典に浴したということですが、減税の恩典に浴すのが少し延びた、こういうことだと思います。
  206. 堀昌雄

    ○堀委員 だから、この人たちは、税制調査会の答申通りになっていれば税金は払わなくて済んだものが、新たにあなた方の改正によって税金を取られることになったという事実は、これはあなた確認されますね。
  207. 田中角榮

    田中国務大臣 税制調査会通りの減税案を政府案として提案をすれば、この人たちは納めないでよかったわけであります。しかし、幾らか修正せられた案が出ておりますから、この三十七万人の方々は税金を納めていただくということになります。
  208. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、あとからずっと高い方をやりますが、これはやはり一番下積みの方だということは確認できますね。下積みの方の人が税金を負担せざるを得なくなった改正だ。下の方の人に負担が寄ったということ——金額は一億かどうか知りませんよ。しかし、少なくとも下の方にこの問題は寄っているということは間違いないですね。三十七万人については……。
  209. 田中角榮

    田中国務大臣 それよりもたくさん納めておる方々からいえば下でありますし、それから減税の恩典に浴した方からいえば一番上になるかと思います。
  210. 堀昌雄

    ○堀委員 なるほどその通り。しかし、そこにあなた方の方の問題がありますね。上は上といっても、どこらくらいだと思いますか。田中さん、今の私の言う三十七万人というのは、所得で大体どの辺の人だと思いますか。
  211. 田中角榮

    田中国務大臣 免税されておる人が大体総人口の五〇%、こういうことを言うのでありますから、おおむね国民の生計を営んでおる方々のまん中の方々であります。
  212. 堀昌雄

    ○堀委員 主税局長に伺いますけれども、今免税されておる者が国民の総世帯の半分もありますか。今あなた方は納税世帯は一千七百万くらいと言っておるのに、日本の世帯というのは二千万しかないのに、その半分ですか。計算が合わないですね。
  213. 村山達雄

    ○村山政府委員 これは所得人口に対しての納税者割合を個人別に見ます場合と、それから全体の世帯数のうち、どれだけ納税者を含む世帯があるかという点では、若干違って参ります。ただいま大臣がお答えになりましたのは、有業人口に対する所得者の割合でお答えしておるわけでございます。世帯で言いますと、納税者世帯の比率は若干下がります。つまり、家族構成が所得の低い世帯ほど多いというところから、若干の相違が出て参ります。
  214. 堀昌雄

    ○堀委員 今有業人口の中で課税対象にならないというのは、実は農民なんですよ。だからそういう意味で考えると、勤労所得を持っておる者から見ますと、今おっしゃるようなことは実はなかなか通らないわけで、そういう点では今いろいろ議論があろうとも、これは下積みの方には間違いない。大体これは最低限度のところはわかっておりますから、一々ここで私は申し上げませんけれども、二十万くらいのところから四十万くらいの間にくるわけですが、ここで特に私は問題を少し明らかにしておきたいと思うのは、今の皆さん方の改正は少しちびったというのですか、結果はどういうことになって現われているかというと、もう時間がありませんから、私の方から言いますけれども、主税局がいろいろと科学的に生計費の調査や何かをやって、そうしてマーケット・バスケットをやった中で、課税最低限と、それから最低生計費、これもお粗末なもので、ちょっと私は無理じゃないかと思いますが、それとの状態を見比べてみますと、三十六年と三十七年の比率を出している。要するに、一番開きが多いのは、夫婦二人というのが一四一、三人が一三三、四人が一二六、一人が一二四、五人家族が一一二、こういう格好になるのです。ですから、今の日本の世帯構成の中では、税制上の問題で一番苦労をしておる、子供を学校へやったり、いろいろなことで一番苦労をしておるのは、実は夫婦二人と子供が三人という世帯が非常に困っておるということです。その差も、今申し上げたように、非常に著しい差が実はついておるわけです。この五人世帯の子供の構成比というのが、十五才未満が三人というのが、これは主税局の出しておる実態調査の結果なんですよ。そうすると、あなた方がここで扶養控除一万円減らすものを五千円減らしたということは、この世帯だけについていえば、一万五千円減ったことになるのです。配偶者控除五千円削ったから、この人たちは、税制調査会の答申から見れば二万円も減ったわけですね。税制調査会としてはなるたけこういう点が少しあるからと思って——これは私、この前あなたに、大蔵委員会で一回言ったことがあるのですよ。こういう小さい子供に対してもっと減税しなさい、これがほんとうの政治じゃないですかと言ったのですが、私は、配偶者の点は、こういう状態ですから、二人家族ならあんまり影響がないんだからともかくとして、子供を三人持っておる人たちがもっと税制の恩典に浴するようなあり方は、当然とるべきじゃないかと思うのです。きょうは文部大臣も呼んでおりませんし、時間がないから申し上げないのですが、最近の父兄負担によるところの教育費の増加というものは、実に目ざましいものがあるのです。子供を学校にやっているというのは大へんなことなんですよ。ところが、この子供たちを親が苦労して育てて——これはやはり生産に関係してきて、あなた方の言う産業基盤の強化に役立つけれども、親の方は苦労のしっぱなしというのが最近の現状ですから、何とかこういう低所得における家族の多い人たちに、もっとあなた方は真剣に考えるべきじゃなかったか、こういうふうに私は思います。その点は、心静かに今度の減税のちびり方を考えてとがめませんか、ちょっと伺いたい。
  215. 田中角榮

    田中国務大臣 民主政治家であれば、これは答申の線にプラスしてでも減税をやりたいということにならなければならぬことは、いつも申し上げておる通りでありますし、私も、こういう意味において所得税減税に対して熱意を持っておるということは、毎度申し上げておる通りでございます。しかし、今度行ない得なかったものにつきましては、過去において相当大きな減税を連年やって参っておりますし、今度の問題も、やっておるからやらないでいいということではないのでありますが、来年も再来年も、減税内閣といわれておるようなわが内閣でありますから、そういうものにつきましては、将来とも減税を進めて参りたいという基本姿勢に対しては、明らかにいたしておるわけでございます。ただ、政策減税等加味いたしましたものは、日本の産業の実態を考え、われわれ国民そのものと産業というものが別のものではなく、自由化ということは必至な状態でありまして、今日このような長期投資的な面も進めなければ、究極においてわれわれの生活が豊かにならず、産業投資も拡大することもできず、教育費の充実もできないという問題がありましたので、これらの問題とあわせて行なったというにすぎないわけであります。なお、子供の多い低所得階層を優遇しなければならないことは、これは当然のことであります。これは政治以前の問題であるとさえ考えておりますが、私は、これらがただ減税だけによってまかなわれるものではなく、今度の三十八年度予算にもあります通り、教科書の無償配付、それからミルクの無償供与というような施策、及び低所得者に対するあらゆる社会施策を行なわなければならないということとあわせて施策を行なったわけでありまして、残余の問題は来年度の減税に一つ期待をしていただきたい、こう考えます。
  216. 堀昌雄

    ○堀委員 さっきからたびたび出ますが、それじゃあなた、来年度はどのくらい減税するつもりですか。かげ声だけでは困るので、あなたが、来年度これだけ減税しますから、ことしは一つごかんべん願いたいということなら了承しますが、来年度幾ら減税しますか、あなたが大蔵大臣であったとして。大蔵大臣でなかったら仕方がない。
  217. 田中角榮

    田中国務大臣 私がもう大蔵大臣でなければできないということでもありません。これは政党政治でありますから、私が代議士をやめない以上、お互いに協力をして減税政策を推し進めるわけでありますが、先ほどから申し上げております通り、内閣の税制調査会とも緊密な連絡をとっておりますし、明年はこれを一つ大いに守って参りたいと考えております。(「幾らやれるか」と呼ぶ者あり)幾らやれるかということは、これはお問いになる方が無理でありまして、来年度の税収等を見まして、少なくとも私が申し上げておる今年度政府案と内閣の税制調査会との差額くらいなものについては、いずれにしろ、最低限の減税を行なわなければならないというくらいな基本的態度は、現に持っておるわけであります。   〔発言する者あり〕
  218. 塚原俊郎

    塚原委員長 不規則発言はお慎み願います。
  219. 堀昌雄

    ○堀委員 今二点出ましたから、確認をしておきますが、来年度は税制調査会の答申を守る、とれが一点。それから二点目は、ことしのは百十七億ちびったわけですから、百十七億を下回らざる所得税の減税をやる、この二点を確認しておきます。
  220. 田中角榮

    田中国務大臣 私が大蔵大臣でもしあるならば、そのようなことをいたします。
  221. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣であれば税制調査会の答申を必ず守ると言われましたから、これを一つ確認をいたしておきます。  その次に、銀行局、資料のあとの分きましたか。——私は、財源がないから減税をやらないということは了承するのですよ。それは仕方がないですよ。しかし、それは少なくとも税制調査会が言ったように、利子及び配当の所得については、一〇%据え置きのまま向こう二年間やるという前提があるなら、ことしは財源がないんだから、私はあなたのおっしゃるように了承しますよ。しかし、片一方では削っておいて、片一方ではさっき申し上げたように、答申しないものをあなた方減税したでしょう。そこで、さっきから武藤君が質問をしましたときに、あなたは何だかよくわからないことを答弁しておられるわけです。ともかく金利を下げて国際競争力をつけるために、預貯金が要るんだという話、今度証券の方へきたら、自己資本をふやすために大いに証券に金が要るんだ。一体預貯金というものの総額の中で、それは打ち出の小づちのようにたたけば幾らでも出てくるのならいいですが、もとをただせば国民のふところというものは一つですから、その一つの中で、実はこれまでのいろいろな姿は、株の方は投資信託なんかが利回りがよければ、自由経済の原則でみんながそっちへ投資をする、これが暴落すれば、こわいからというので、預貯金へくるという、これが自然の現象じゃないですか。大蔵大臣、どうですか。
  222. 田中角榮

    田中国務大臣 証券の不況のときには預貯金が非常に増勢に向かうということは、今までの統計によって明らかでありますし、また、証券がいい場合には、預貯金の伸び率が多少鈍化しながら証券の方の投資が行なわれる。これは国民がお互いに利益追求ということで必然的な現象だと考えます。
  223. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、私が今お手元へ皆さんに配ったのは、さっきあなたはともかく預金をふやすのだふやすのだと言っておられるのですが、これは日本銀行の資料でありまして、二枚になっておりまして、一枚の方が金額、裏が日数ですが、金額の方だけでもいいですが、五十万円までの預金と五十万円以上の預金を定期預金に限って見ますと、五十万円以上が、昭和三十五年三月を一〇〇として、三十六年三月が一一九。五、三十七年の三月が一二七・九、三十七年の九月は一二四・〇、ややここは足踏み状態にあるわけです。ところが、今度の利子所得の軽減がきいてくる五十万円以上の預金の方を見ますと、これはすでに、三十六年の三月から三十七年の三月において、五十万円以下の小口の預金の伸びよりもはるかに大きい二二六・七という伸び方をして、三十七年の九月、昨年の九月においては二三四・八という、これはもう小口預金の倍以上の増加を現実に示しておるわけです。このことは、一体、あなたが今さら利子減税をやったから貯蓄がふえるなどということではなく、経済的な諸般の状況の中で実はそういう問題というのは自然に起こるわけです。これは何を裏書きしておるかといえば、投資信託が不振であり、証券が不振であって非常に痛い目をした人たちが、これではかなわぬ、預金の方が間違いないといって流れてきた結果でなければ、自然な所得の増加ではこういう格好は出てこないわけです。わかりますね。だから、そういう経済の原則の方が大きく働くのであって、あなたがおっしゃるように一〇%の分離課税を五%にしたから貯金がふえたりするというものじゃないわけです。どうですか、一つそこの点は。
  224. 田中角榮

    田中国務大臣 いただきました資料で、昨年の九月ごろ非常に預貯金がふえておるということは、当時株価が暴落いたしておりましたから、その影響があるであろうということは、容易に首肯できることでございます。また、一〇%の分離課税を五%にしたことによって預金がふえるなどというようなことを考えるのは安易だというふうなお説でありますが、これに対しては、先ほどから申し上げております通り、預貯金をこれによってふやすためだけの問題ではありませんということは前の質問者にお答えをいたしてございますが、預貯金というもの、いわゆる資本蓄積というものに対して、それがただ積んでおくというのではなく、そうでなくても社会資本が非常に少ないというような状態でありますし、またこれが効率的に運用せられて国民自体に戻ってくるものであります。これからの国づくり・人づくりに対して金が必要であるということはもう当然のことであります。でありますから、金づくり政策、——いつも人づくり・国づくりは出てきますが、金づくりということはあまり議論せられないようでありますが、金づくりの一つの施策であると言ってもいいと思います。また、これだけでもってどうにもなるものではありませんが、少なくとも、先ほどの御質問がございました通り、これは余っておる人が貯金をしておるだけのものではありませんし、二・五五というような高い貯蓄率で、将来のためにしておる国民大多数の預金というものを優遇するということは、政策上やはり重点的に考えるべきであるという観点に立って減税を行なっておるわけであります。
  225. 堀昌雄

    ○堀委員 さっきからあなたの貯蓄の話を聞きますと、国民全般国民全般とおっしゃるのですが、国民全般かどうか。武藤君も言いましたけれども、これは全般じゃないでしょう。高額所得者だというふうに言ってもらえばやめます。
  226. 田中角榮

    田中国務大臣 現在の状態においてのみものを言われるとそういうことになりますが、日本の国力というものはこれからだんだんよくしていく、お互いに貯蓄をできるようにするのですから、(「十年先の減税を今やるの」と呼ぶ者あり)それは、政治というものは十年・百年の将来に思いをはせるべきものであって、私はこのような政策がいけない政策とは全然考えておりません。これからの産業政策やその他を考えて、日本ほんとうの国づくりを考える場合、これらの預貯金に対しての減免政策を行なっていくということは、一つのやらなければならない施策の重点である、このように政府考えておるわけであります。
  227. 堀昌雄

    ○堀委員 経済企画庁長官に伺いますが、お宅で出しておられる消費者動向予測調査結果報告というのがある。これを大蔵省の方でもいろいろな資料の土台にしておられる。もう一つ、内閣総理府が貯蓄動向調査をやっております。二つありますが、きょうはこれで話をしますと、大体、預貯金が五十万円をこえる、今度の小額免税をこえる階層は、所得階層としては百万円以上になるわけです。この人たちはそれではどうかというと、百二十五万四千円の総貯蓄がある中で五十二万七千五百円を預貯金に回しておる。ところが、この五十二万七千五百円というのは、これは郵便貯金と銀行預金全体の総預金の中で見れば五〇%くらいで、郵便貯金が一三%くらいあるわけですから、これを差し引くと、これはまた小額免税の中に入ってしまうわけです。だから、税制調査会の方では、二百万円超くらいの所得階層ではないか、こういうふうに現在の利子課税の恩典に当たる人を言っているわけですね。だから、その利子課税に当たる人たちは、国民の中では二百万円超というのなら、今の所得階層分布から見て高額所得者だと思いませんか。
  228. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは確かに中以上の所得者だと思います。
  229. 堀昌雄

    ○堀委員 中以上ということではちょっと私はまだ納得できない。私、三年ここで所得階層の分布をやるのですが、一体、日本の今の所得階層の分布で、二百万円以上の所得階層というのは、全体の世帯数の中の何%になりますか。概略ラウンド・ナンバーでいいです。
  230. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二百万円以上でございますと、二%くらいと思います。
  231. 堀昌雄

    ○堀委員 さっき田中さんは十年計画とおっしゃった。十年たつと今の二%が二〇%になるかもしれませんが、二〇%になってもまだちょっと遠いのです。しかし、少なくとも三十八年度予算ですからね。それで、二%の国民のために、——あなたはさっき多数の者の所得税の減税をと言ったが、所得税の減税の方は下だけでないのです。全部にかかるのですからね。ずっと上までかかる。決して下だけへ行くのじゃないのにかかわらず、あなたは比重は全然別だと言われるが、どうですか。二%の高額所得者の方を大事にするのか、九八%の一般国民を大事にするのか、そこをはっきりしてもらいたい。
  232. 田中角榮

    田中国務大臣 利子減税を行なったことは、二%の方々にだけ及ぶのではなく、それ以上の方にも全部及ぶわけであります。
  233. 堀昌雄

    ○堀委員 及ぶかもしれないけれども、貯蓄のない人には及ばないじゃないですか。貯蓄がないじゃないですか。税法は及ぶでしょうが、貯蓄のない人、利子の来ない人に利子免税したって、きかないじゃないですか。どうですか。
  234. 田中角榮

    田中国務大臣 所得階層二百万円以上のものが二%程度だというのでありまして、これは実際預貯金ができ得る人たちが二%ではないことは御承知だと思います。
  235. 堀昌雄

    ○堀委員 それはわかっているのです。私が言っているのは、五十万円以上の人でなければ今の利子免税の恩典に浴さないのです。五十万円以下は小額免税になるのですから。いいですか。だから、それなら、今のあなた方のこういう科学的な資料で見ると、二百万円以上でなければ恩典に浴さない。そうしたら、それは二%だ。あなた方のベースで話しているわけです。それ以下のものは、小額貯蓄免税で、恩典じゃなくてちゃんと楽になっているのだから、こんなことしたってだめだということです。  そこで、もう一つ申し上げておきたいのは、これは実は一〇%を五%にしたという問題ではないわけです。御承知のように、基本税制は、これは二〇%の源泉徴収の総合課税です。そこで、私がさっきの日銀の資料を調べてみると、どういうことになっているかといいますと、一口一千万円以上の預金をしておるという人が、今全国銀行で四千九百人ほどあります。昭和三十七年九月末現在でです。信託について調べてみますと、その一口は約二千万円に匹敵をします。そこで、その二千万円ある人を私は一応例にとりますから、現実にあることですから、その二千万円の預金を一年定期にやると幾らになるかというと、年の利子が百十万円。この人が一体所得が幾らあるかわかりませんけれども、かりに百万円・二百万円じゃなかなか二千万円の定期預金はできませんから、六百万円くらいの年所得のある人だと推定をしてみますと、これは、税法通りにやれば、この人は五〇%の上積み税率ですから、現実に五十五万円税金を払わなければならないのです。ところが、その人が、今までの一〇%の分離課税なら、十一万円にすでにまけてもらっているわけです。この差額が四十四万円、すでに一〇%のときにまけてもらっておるのです。一人で四十四万円の税金なんといったら、われわれの所得みたいなものですから、それだけまけてもらっていて、それを今度あなた方はさらに半分にして五万五千円にしようということなんです。だから、問題は、十一万円から五万五千円にするところにあるんじゃなくて、本来の預金利子のような、働かずして入ってくる百十万円。一生懸命労働して汗水流して働いても百十万円取れない国民というのが、さっきのあれで言ったら、おそらく八五%くらい、九〇%くらいあるでしょう。汗水たらして働く九〇%の国民はこれに伴って税金をとられるわけです。勤労所得であるから税金をとられる。三菱信託なら三菱信託に二千万円預金をしている人は、じっと家ですわっておるだけで百十万円の所得があるけれども、税金を五万五千円にあなた方はするというわけだ。おわかりですね。これをあなた方は一つ真剣に考えていただかなければいかぬということなんです。このことは決して十一万円を五万五千円にするという問題ではないということなんです。要するに、五十五万円を払うべき人が払っていないのだ。この認識の上に立たずして、私がさっき言う五人世帯三人家族のこの人たちの苦しい家計と比べてみたときに、一体あなた方は政治家として恥ずかしくないのかどうか。これを私は伺いたい。
  236. 田中角榮

    田中国務大臣 税に対しては、過去長いこと負担の公平という原則に非常にウエートが置かれてきたことは私も承知いたしておりますし、将来も、負担の公平という問題に対しては重点を置かなければならぬとは思いますが、こういうテンポの早い世界的な情勢のときに、政治というものは生きておりますし、弾力的にいろいろな施策を行なわなければならないことは言うを待たないと思います。私は、そういう意味で、負担の公平論というものを一面に重視をするとともに、また、低所得者のレベル・アップというものに対しては、政治はもちろん重点的に施策を行なわなければならないとともに、政策的に必要であるものに対しても勇気を持ってやらなければならない。これは私は当然のことだと考えておるわけであります。日本が当面する現状を静かに考えるときに、資本蓄積というものがいかに必要であるかということは、これは私が申し上げても釈迦に説法だと思いますから申し上げませんが、私は、ある時期においては、二〇%の税率を一〇%にしなければならなかった時代の要請を一歩進めて、これを五%にし、ある場合にはゼロにすることはあり得ると考えるのでありまして、私どもが現在の状態を静かに考えて、預貯金の減免ということは政策的に重大な意義を持つものである、こういう観点に立って減税を行なったわけであります。
  237. 堀昌雄

    ○堀委員 皆さんのお手もとにお配りした資料をもう一ぺん見ていただきたいのですが、五十万円くらいまでの人によって現在の預貯金の八三%は占められておるわけですよ。あとの一七%くらいが課税対象になる部分ということになるだろうと思う。そうしてみると、あなたがおっしゃる社会資本の充実のための貯蓄というものは、これはまさにその低額の所得者によってささえられておるのですよ。高額所得者の一口二千万円の人が幾らいたって、これらの数は大したことはない。全体で具体的に申し上げれば、一口一千万円以上の預金は、現在は八百六十三億しかないのです。大金持の預金は、一千万円以上の預金というのは八百六十三億しかないけれど、現在の預貯金の総額というのは一体幾らあるとお思いですか。さっきもあなたがおっしゃっておったように、少なくとも十八兆円くらいでしょうか、ちょっと今資料を見てないのではっきりしませんが、その程度あるわけですからね。そのくらいの中で、高額所得者の分はごく一部である。ほんとうは苦しい暮らしの中で労働しておる人たちが現在の貯蓄をささえておるということをあなたはもっと確認していただかなければならない。  それから、時間がないから、最後に一つだけ伺っておきたいのは、今、配当所得は御承知のように総合課税です。総合課税であるならば、本来的に、源泉を幾らに動かそうと、減税なんというのは本来働いてくるはずはないわけですね。そうでしょう。ところが、減税も働いておるし、減収も立つというわけですね。減収の方は、さっき申し上げたように、法人の振りかえ分ですからいいですが、要するに、この百二十五億の中の七十五億八千七百万円というのが個人分に対する減税額です、今度の五%に配当利子を削ったための。こういうことは、私は、もっと税務行政上きちんとして、とれるものは総合課税の原則でとらすようにすべきであると思いますが、この点はどうですか。
  238. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどの問題に対して、もう一度申し上げますと、今国民貯蓄組合によって免税が行なわれておるのは五兆三千億くらいであります。今度現行法で減税になるものがおおむね四兆余でありまして、法人が三、四兆円ありますので、総合計は、預貯金の合計は十八兆円という数字であります。  それから、先ほどの私のお答えに付言して申し上げますと、国民貯蓄組合の制度が非常に乱用せられておりましたために、いろいろな問題を起こしておったことは御承知通りでありますし、ある金融機関に対しては検察庁からの警告もあったというような事情もありますから、これらの運用の適正を期すために何らかの処置をとらなければいかぬというようなことも一つの問題であります。それらの問題も加味をしておりますことも、あわせて御承知願いたいと思います。  なお、株式の所得に対する減税問題につきましては、先ほどから申し上げておりますように、今の株式というものが六兆円ないし七兆円の発行高だと思いますが、これらはもう原則的には資本蓄積という問題を重点に置いておるわけでありますが、これは国民の六割ぐらいが株式投資をしておるという事実を考えると、これはもう国民全般に対する減税であり、あわせて一般の減税のうちにも入るものだという認識のもとで減税を行なったものであります。
  239. 堀昌雄

    ○堀委員 今の問題は、まだ私どもこれから大蔵委員会もございますからみっちりやりますけれども、私は、やはり、大蔵大臣予算委員会を通じて一般国民に、さっきのお話のように、非常に負担の不公平があるものを、ゼロにしてもいいんだなんという言い方をされることは、国民全般は、地方選挙のさなかで、やはり自民党というのは高額所得者の政党だということを認識をするだろうと私は思う。だから、これは、私、大蔵委員会で前にも申しました。一般減税というのは国民のためのものだから、ともかくこれをしっかりやりなさい。ところが、現実には、今日違うわけです。ですから、そういう態度をやはり改められないと、これは資本優先という姿があまりに浮き彫りになるというふうに国民は理解をするだろうことを申し伝えて、特に委員長にお願いをいたしておきますが、実は、今までの論議の中で非常に解明不十分な点がありますので、私は、この際、この予算委員会に、税制調査会の会長を一つ参考人として出席をしていただいて、もう少し今までの問題点を明らかにする必要があると思いますので、その点を特に一つ強く委員長に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  240. 塚原俊郎

    塚原委員長 お申し出の件につきましては、理事会において御相談することにいたします。  西村力弥君。
  241. 西村力弥

    西村(力)委員 最初に文部大臣中心としてお尋ねをしたいと思いますが、池田内閣が人づくりというキャッチ・フレーズを掲げて、それを進めておりまするが、この問題については、本会議において、あるいは当委員会において論議されて参りました。   〔委員長退席、青木委員長代理着席〕 そこで明らかになりましたことは、大臣は、教育基本法では日本人はつくれない、これはおれの信念だ、かように申しております。池田総理は、野原委員の質問に答えて、あの一条の精神、すなわち教育基本法第一条の精神でありまするが、これは私は古今を通じて誤らないと申してはひどいかもしれませんが、とにかくりっぱな精神でありますと、こう答弁しております。この二つを対比してみますると、総理と文部大臣の意見というものは全く相反するのだということを野原委員は追求しておりますが、最後的に、この調整といいますか、一致点を見出すためにか、まあ立法論としてそう言うのであって、現実に文部大臣にある立場からは、現在の法制に従ってやるんだ、かようにあなたは申されております。それはそれとしまして、私は、ですから、ここで大臣にはっきりしてもらいたいと思うことは、とにかく、文部大臣として信念を持っておられることであるならば、一体、この教育基本法では人間はつくれないのだという、すなわち、現在の教育において教育されるこの日本人というものはどこに欠陥があるというのか、そういう点について、あなたの信念であるならば、この際はっきりとしていただきたいと思うのです。そしてまた、そういう御信念であるならば、教育基本法のどこをどういう方法で改正なさろうとしておるのか、こういう点を一つ明確にしていただきたいと思います。
  242. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  総理が人づくりを言われ、それについての御質問に応じて答えましたことと、私のお答え申し上げたことにはいささかの相違もございません。今西村さん御指摘のように、私、就任当時、ある会合の席で、教育基本法に触れて、いつぞやもこの席でお答え申し上げた通り、立法論の立場から教育基本法に言及したことはございます。これは、そのときも申し上げましたように、憲法すらもが、あえて国会議員に限らず、国民一人々々があれでいいかということを考えることは自由であり、また、そういう意味を受けまして憲法調査会ができて数年来検討しておるのと同じ意味において、教育基本法を改正すべきかいなか、改正するとすればいかなる点が補充されればもっといいものになるかということは検討すべき課題の一つである、そういう立場に立ってものを申したことはあります。その意味においては今でもそう思っておる、こういうことでございまして、しからば、今お尋ねのように、教育基本法のどこが悪い、どこが足りないからどうしようとお前は思うか、それを言ってみろという意味のお尋ねだったかと思いますが、それは、これこそが、きわめて未熟ながら、個人的に出与える節がないではございません。ですけれども、そういうことまで触れることは、いかに立法論の立場で個人的な意見としましても、公にすることは御遠慮すべきであろう、こういう心境のもとに今日まで参っておりまして、具体的な意見を述べたことはございません。この点は、そういう気持でこの問題と取っ組んでおるのだと御理解いただきたいと思うのであります。
  243. 西村力弥

    西村(力)委員 そういう御答弁であるならば、教育基本法では人間はつくれないというような、いやしくも文教の衝に当たるあなたが、そういうことを言われること自体を控えられてはいかがかと思う。あなたが教育基本法では日本人はつくれないということはおれの信念だとこの席でおっしゃっておることは速記録で私たち承知しましたが、そういう場合に、信念を持って言われるならば、やはりここで明確にすべきである、私はそう要求したいのです。それこそ文部行政の責任の衝にあるあなたの責任ある態度表明ではないか、こう思う。ですから、私はその点について答弁を求めたわけでありまするが、しかし、今のように答弁をされないとするならば、これはまあ文教委員会におきまして問題としてこれからも解明されていかなければならないことではないだろうか。その際に、文教の衝にある責任のある立場で言った言葉に対する確信は、明瞭に表明されてしかるべきではないか。うやむやのうちに、ただ立法論として改正の必要あり、こういう言い方だけでは、これは文部大臣としての御発言としては不十分である、私はさように思うわけなんであります。  ところで、この人づくりの問題に関連をいたしまして、私は、去る三十五年の十月に発せられた伊勢神宮の御鏡の問題に対する政府答弁書、これについてお尋ねをいたしたいと思います。  この概略は申し上げるまでもないことであると思うのでありまするが、三十五年の十月十八日に濱地文平議員がこういう質問書を出しておるわけなんであります。「伊勢の神宮に奉祀されている御鏡の取扱いに関する質問主意書」、「近年伊勢の神宮の制度について、いろいろの議論がある。この問題は、国民精神上重要な問題であるが、憲法との関係からして、あるいは一般宗教との関係からして、複雑な問題もあり、その結論を得るのには慎重な研究を要すると思う。しかしながら、世上この問題に関連して、伊勢の神宮に奉祀されてある御鏡(ヤタノカガミ)が、天皇の御鏡であるかそれとも宗教法人のものであるかというような議論もあるが、このような問題を、いつまでも不確実あいまいのままに放任していることはよくない。これは国民良識上明らかなことで、伊勢の御鏡は、皇祖から皇位継承者たる皇孫に授けられたものであって、皇室経済法第七条にいわゆる「皇位とともに伝わるべき由緒ある物は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける。」とあるように、日本国の天皇の御位と不可分の関係にあるものと信ぜられる。政府は、この点について、いかに解釈しているか。」、そのあとまた第二、第三と質問が続いておりまするが、それについて十月の二十二日に内閣から総理大臣名をもって出された答弁書は、「伊勢の神宮に奉祀されている神鏡は、皇祖が皇孫にお授けになった八脳鏡であって、歴世同殿に奉祀せられたが、崇神天皇の御代に同殿なることを畏みたまい、大和笠縫邑に遷し奉り、皇女豊鍬入姫命をして斎き祀らしめられ、ついで、垂仁天皇は、皇女倭姫命をして伊勢五十鈴川上に遷し奉祀せしめられた沿革を有するものであって、天皇が伊勢神宮に授けられたのではなく、奉祀せしめられたのである。この関係は、歴代を経て現代に及ぶのである。したがって、皇室経済法第七条の規定にいう「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」として、皇居内に奉安されている形代の宝鏡とともにその御本体である伊勢の神鏡も皇位とともに伝わるものと解すべきであると思う。」、それから第二、第三点の御答弁が続いておりますが、今読み上げました通り、この答弁書は、伊勢神宮の御神体である御鏡は、皇祖が皇孫に授けられたもので、崇神天皇の御代に大和の笠縫邑に移し奉り、次いで垂仁天皇の御代に五十鈴川のほとりに移し奉祀せしめられた、こう申しておりますが、このことは、日本書紀に記述されている通りの沿革というものを認めて、したがって、皇室経済法第七条の規定にいう皇位とともに伝わるべき由緒ある物と断定をしておるわけなのでございます。  そこで、私一応お尋ねをいたしたいことは、この件に関しましては、憲法調査会における参考人の発言におきましては、憲法調査会の第三十八回総会の議事録には、岸本英夫氏が、東大教授でありますが、その岸本さんは、「それが新憲法の結果、現在では、国から離れた一つの民間の神社としての伊勢神宮の所有に属しております。」、かような表現をしておりますし、また、憲法調査会第三委員会の第十四回会議録を読んでみますと、飯沼一省さんが、「皇室経済法第七条によりますと、」とあって、「天皇のお受けになった神器と解釈されます。しかしまた一面、宗教法人法の建前から申しますれば、それは神宮という一宗教法人の所有物であって、一私法人が任意に管理をし、任意に処分をしてさしつかえないものであるという解釈の成り立たんこともないという、制度上まことに遺憾な状態が、今日そのままに放置されておるのであります。」、かような工合に申しております。私も、神宮の御鏡が勝手に処分されたり、外国に渡ったりすることは許してはならないことであると思います。ただ、皇室のものか宗教法人のものかという議論のあるときに、政府が公権解釈あるいは公式見解としてこれに断を下すということは、これは相当慎重を要する問題であると思う。しかも、事宗教法人に関することであります。われわれの憲法には、信教の自由、政教分離というこういう大原則がはっきり立っておるはずであります。でありますから、こういう断を政府が下すということは、政府の見解でこういう宗教上の問題について公的な立場というか、そういうものを与えるという、これは重大なものでありまして、私は、現在の法制上から言いますと、これはいろいろな国民の願望や何かはとにかくとしまして、現在の法制上、宗教法人というものは政府がそこに介入をすべきじゃないということが明確でありますので、この答弁書は、この政教分離という大原則に抵触する危険がないか、こういう工合に考えられるわけなのであります。この政府見解が発表された当時、キリスト教あるいは仏教その他の教派神道、その他の一般宗教団体あるいは宗教人は、この危険というものを指摘して、行く行くは神社神道を国教としてすべての国民に神社の崇敬を強制した昔のような日本に逆戻りするようなものではないかという疑念さえ唱えた者があったのは御承知通りであると思うのであります。でありますから、こういう政府の断定というものは、政教分離の原則というものに抵触する危険というものが非常にある。であるから、私をして言わしむるならば、そういう気持があるならば、政府の公権解釈というものでなく、別の方法でそういうようなことをやる方法はなかっただろうか。そうすれば、この政教分離に対する危険性も払拭できるはずであります。そういうようなことを考えるわけなのであります。この件に関して、文部大臣の所見を明確に一つ出してもらいたいと思います。
  244. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  御指摘のように、問題が非常に複雑な、むずかしい課題でございますから、そう簡単に断定的なことは申しかねる問題かと思います。ただ昭和三十五年十月二十二日、御指摘通り、質問に対しまして内閣の回答をいたしておりますが、これも、専門家等に相談をいたしまして、およそこういうふうな考え方であろうということを回答したわけであります。その回答そのものが、お話のように、政教分離そのものを政教一体化する意図を持ち、もしくはそういうふうに考えられるような回答をしたのではなかろうと私は理解いたします。現実問題として、今日あるがままの姿を説明するとならば、こういうふうな解釈のもとに現実に行なわれておるであろうという見解が中心になった回答だと私は記憶いたしておりますが、それだけに、今御質問がございましても、三十五年十月二十二日に政府の回答として出しました以上の特別な検討をしているわけでもございませず、それ以外の考え方を、私初め文部省として、あるいは政府として持っているわけではございません。
  245. 西村力弥

    西村(力)委員 現在の法制上の立場から言いますと、やっぱり伊勢の神宮においては、もちろんこの解釈に対し  て異議はとなえないでしょう。ですが、純法的に考えると、これに異議をとなえる可能性もやっぱり考えなければならない。考え得る。もちろんこの際はそういうことはありませんけれども。そうすると、これはやっぱ所有権の係争事件へと発展する可能性もあるわけなんです。ですから、こういうところに政府が断を下すというようなこと、これはやっぱり三権分立の立場から言うても一応問題があるのではないか、かように考えられる。ただいまのお話では、現実にそうあるのだ、それ以上のことは何も考えていないのだ、こういうふうな御答弁でありまするが、それ以上に考えられたら、これはやっぱり困ることであると思います。ところで、私が一番心配しておるのは、文部大臣のあなたとして、この解釈、政府声明の立論の根拠というものは、古事記、日本書紀にある神話を史実として認めて、そこに立論の根拠を求めておる、こう回答書は見なければならないわけなんであります。御鏡を伊勢に移して奉祀したということは、古事記にはその記載がなく、日本書紀だけなはずであったと私は思っておりまするが、とにかく記紀に根拠を求めるとともに、歴代を経て現在に及ぶのであると回答しておるのでありまするが、私はこの神話は、神話としての価値あるいはその意義、こういうものがもちろんある、こう思うのです。ですが、それを今度は史実と見るということは、これは学問研究の成果が明らかに公認されたときに初めて許されることではないだろうか、こう思うのです。もちろん、記紀にある神話を史実と認める学者もおられるでしょうし、学問的証明はどうであれ、記紀は世界にも珍らしい史書であるから、これによる以外にないではないかと言われる学者もあることでありましょう。しかしながら、戦後の日本古代史や考古学の科学的研究から、これらの神話は歴史上の事実としては認められないとする学者が多い。私は専門でないので、断言はできないが、厳格な意味において史実とは認められないというのが定説に近いのではないかと思っておるわけなんであります。このように、学問的に公認されていないことを史実として立論することは、許されていいかどうかということ、そしてこういうことを許して、記紀に記載されている神話を史実と認めていくならば、今後の国民教育における歴史教育は、一体どうなるのか、史実として教えるという方向をとるということが、政府の見解としてだんだんとやっぱり進められるのではないだろうか、こう思うのです。そうしますと、真理と正義を愛しという教育基本法の教育目的をゆがめて、葦間的には完全に認められてはいないけれども、こうなのだと教え込まなければならないというようになるではないか。こういうことになりますると、非常な問題が発生するわけでありますし、第一に学問自体の成立というものがその根底を危うくしてくるのではないか。そうして結局、歴史教育という立場が戦前の皇国史観に立つ、そういうことになり、また神国思想の再現ということにもなりかねないのであります。国土と民族を愛する心、それはついこの間の何新聞でしたかに鼎談会がありましたが、そこにもありました。私は紀元節に反対だけれども、国土を愛する愛国心ではだれにも負けない、こういうような発言をしている人もおりましたが、これはだれでもが持っておる。これをあるべき姿にしようというあなたの考え方が、教育基本法では人はつくれないという、こういう考え方になるのだろうと思うのですが、しかしこういう愛国心というものは、これはより原始的なものであります。私たち自身だって愛国心というものはだれにも負けないつもりで持っておるわけなんで、ただその愛国心のあり方というものが、私は、文部大臣とは少し違うかもしれません。考え方が違うかもしれません。とにかく、この神話というものを史実と認定して、それで教育していくということになると、このだれでも持っている原始的な愛国心、これを非科学的な愛国心や偏狭な民族主義、そういう方向に持っていく危険というものを大きく感ぜらるるわけなのであります。このような愛国心、すなわち非科学的な愛国心とか偏狭な民族主義、こういうような愛国心が国を誤ったという、これはかつて大東亜戦争の苦汁をなめた日本人は身にしみて知っているところであります。そういう点から言いまして、決してそういう方向に持ち込むことは許さるべきことではないと私は思う。それで、この池田内閣の人づくりというものは、この答弁書から見まして、この人づくりの環境整備の一つとして、神話というものを史実として、こういう史観というものを復活する、こういうような危険性があるのではないか、こういう点から私はこの答弁書というものを非常に重視しておるわけなのであります。これに対する文部大臣の見解を一つおっしゃっていただきたいと思う。
  246. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。私は歴史学を専攻したわけでもございませんので、皇国史観が何だということを申し上げる資格はありません。ただ、神話であれ、あるいは記紀にいたしましても、千二百年くらい経過いたしましたでしょうか、記紀の内容が今日まで伝わっておることは事実だと思います。おっしゃるように、記紀の内容それ自体あるいは神代の時代の言い伝えというものが、いわゆる科学的に立証される真実であるかどうかということは、立証不可能なくらいのものじゃなかろうか、しろうと考えにそう思うくらいであります。   〔青木委員長代理退席、委員長着席〕 ですけれども、その検討は学者に譲るといたしましても、千年以上言い伝えられておるという事実だけは、これはやはり西村さんもおっしゃったように、学問的にどう解釈するかは別として、そういうことが伝承されておるということ、そのことを歴史の内容の一つとして教えるということは、有害とは言い得ないのじゃなかろうか。おそらくそういう考え方に立って、学習指導要領を編纂するにつきましても、日本の古典あるいは神話等のことは、そのことそれ自体としては教える。しかし、それがおっしゃるように、いわゆる科学的な真実なりとして教えるという立場ではないという立場で教科書等にも取り入れられておる、それを文部省が検定いたしておるという関係であって、繰り返し申し上げるようですけれども、一定の皇国史観といわれるがごときものの考え方の方に無理無体に持っていくという意図は全然ないものと私は思います。またそういう必要もない。いずれの国といえども、国家創始の時代のことはほとんど神話的なものであろうと思いますが、諸外国においても、やはり神話は神話として、そういうものが言い伝わっておるのだということを教えることはやっておると思います。それと同じ立場に立ち、意味合いをもちまして、学校教育におきましても、神話、伝説、伝承ないしは記紀そのものの言い伝えられておること、そのことを教えることは懸念する必要はないじゃないか、こういうふうに私は思います。
  247. 西村力弥

    西村(力)委員 何か、この答弁書を出された責任のある立場におれはあるのではないのだ、こういうような響きを持つ御答弁でありまするが、しかし、文教の責任の衝にある立場の文部大臣でありまするから、明確な立場に立つ答弁を願いたいと思うのであります。そうしますると、この答弁書は、これはもう読めばすなおにはっきりと皇祖が皇孫に賜わった、こういう神話の個所が史実として認めておる、こういう工合にしか読めないのでありますが、そうするならば、そこの条項というものは、やはり神話には、日本書紀あるいは古事記には、このように記載されておる、こういう注釈が加わっていなければならなかったじゃないか、こう私は思うわけなのであります。その点大臣は一体どうお答えになりまするか、この通りにすなおに読みますと、これは史実である、こうだからこうだ、皇室経済法に基づく由緒あるものだ、こう断定している、こうわれわれは解釈せざるを得ないわけなんですが、大臣答弁一つ願いたいと思います。
  248. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答えを申し上げます。  この答弁そのものを否定する意思は毛頭ございません。むろん政府としての責任ある回答書であることには間違いないわけでありますが、この第一項目の回答の重点は、さっきも申し上げましたように、現在そうあることを事実そのままに説明をしたという以上のものではないと思います。ただそれを説明する意味において、記紀に伝わるようなことを引用し、——引用するそのことは、それが科学的真実だという意味でなくて、そういうふうに言い伝わりながら現実にこうなっておる、そう解すべきであると思う、ということで結んでおることでも明瞭でありますように、現実そのものに立脚いたしまして、そして回答に書いておるという考え方に立っておるわけであります。
  249. 西村力弥

    西村(力)委員 しかし、これはもう憲法制定当時、宮中にあるいわゆる三種の神器、これは宗教的性格を持つものである、であるからこれはやっぱり皇室のプライベートの財産として、そして皇室経済法にこれを譲る、こういう立場をとられてあるわけなんでありまして、その際に、伊勢の神宮にある鏡の件については何ら言及されない、しかも現在の法体系からいいますると、これはやっぱり岸本先生がいうような工合に、伊勢の皇大神宮に帰属するのだ、こういう工合にもいえるわけなのでありますから、今のような御答弁でありますると、現実にあることをずっと述べただけだ、こういうことならば、それを基礎にして政府がこういう断を下だすというようなことは、まことに薄弱なる根拠ではないか。こういうことでこれだけの答弁書を出されるというようなことは、相当政府としては軽率というか、冒険というか、そういうふうなそしりを免れないではないだろうかと思うわけなんです。私たちは、こういう問題に関しまして、ことを進める場合において常に思い出さなきゃならぬ問題は、昭和二十一年の初頭において発せられた天皇の人間宣言、これをやっぱり思い起こしていかなければならぬじゃないかと思う。その人間宣言の中には、「朕ト爾等国民トノ間ノ紐帯ハ、終始相互の信頼ト敬愛トニ依リテ結バレ、単ナル神話ト伝説トニ依リテ生ゼルモノニ非ズ。天皇ヲ以テ現御神トシ、且日本国民ヲ以テ他ノ民族ニ優越セル民族ニシテ、延テ世界ヲ支配スベキ運命ヲ有ストノ架空ナル観念ニ基クモノニ非ズ。」こう仰せられた。この点は、やはり政府においても、われわれ国会においても、こういう問題を処理する場合におけるわれわれの念頭から去ってはならない大事な点であると私は思うのです。これは「朕ト爾等国民トノ間ノ紐帯ハ、終始相互ノ信頼ト敬愛トニ依リ」、こういうことでありまするから、こういうことをきめる場合には、この仰せられておる「信頼ト敬愛」、だからみんな納得をして喜んで進めるときに初めてこういう問題は進められていく、こういう建前をとらなきやならないと思う。象徴天皇としてのわれわれとの紐帯を置く現憲法下においては、この人間宣言の趣旨というもりは、私たちは常に念頭に置いてやらなきゃいかぬじゃないか、こういう意味からいいまして、このように反対の強いときに、これを今言ったような薄弱なる根拠、現実にこうであるからといって、そこまでいって、由緒あるものと断ずるという、この契機というものは全然説明されていない、こういうようなことで、こういう政府の公式見解、公権解釈を出すということは、これは実に問題をはらむものである、かように私は思わざるを得ないわけなんであります。文部大臣の所見を一つ伺いたい。
  250. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 先ほど来申し上げている通りでございまして、答弁書それ自体で直接今の御質問にもお答えするほかにはない事柄だと思います。憲法にも、今お話に出ましたように、国家の象徴として、国民統合の象徴としての天皇というものは、厳然として認められ存在しておる。これは人間であることに間違いないといたしましても、憲法上の一つの存在でもある。その天皇の御一家の、いわば今までの伝承として鏡その他がある、このことは否定できない現実だと思います。そのそもそもの由来がどういうものかという、答弁書に引用しておりますことも、記紀その他の内容のことを便宜引用しておるのであって、繰り返し申し上げるようですが、そのことが学問的にはいろいろ賛否分かれておることも御指摘通り。ですけれども、記紀そのものがあったことだけは事実。その学問的真偽は、また別途に検討さるべき課題ではありましょうけれども、そういういきさつを経て今日まできておる今の時点に立って、これをとらえてみました場合、答弁書にあるような考え方が裏にあると推察されざるを得ないので、そのことを素直に述べておるということだと考えるのであります。
  251. 西村力弥

    西村(力)委員 そこで、記紀そのものに述べられておることはその通りである。こういうことはその通りであると思うのですが、神話は神話として、その通り沿革としてあるのだ、こう見ている。それだから政府がこの解釈を下してよろしい、こういう工合に考えられた根拠というものを私は聞きたいのです。ほんとうにこういう工合になさろうとするならば、私は、先ほど申しましたように、国民全体が納得する方向で、そして国民がみんな喜ぶというような方向をとる。これこそほんとうのこの問題に対するわれわれの態度政府態度であると思う。それを政府の有権解釈としてこういう工合に、そういう神話によって沿革がそうなっておるのだ、これを述べただけだ。こう言うが、その次に、これを基礎にして政府はこういう断定を下したという。あなたの答弁というものは少しもない。ですから、どうも今の答弁というものは、いつまでたってもこのままで、あなたの方ではただうやむやというか、まあ少なくとも議員は質問する権利がある、あなたの方では答弁する義務があるでしょう、だから答弁した。そういうことだけでは済まない内容を持つものである。現にその当時、国民の各層ことに宗教人関係においては、このことは伊勢の鏡に公的な立場を与えた、そういうことから引き続いて国家神道となって、神道はあらゆる宗教に優越する、こういう昔日の姿になるではないか。そして国民全体はもうだれでもが、神社を崇敬することを強制されるようにだんだんと進む危険性があるではないか、こういうところまでいっておるわけなのでありますから、この点につきましては、政府は、今言われたような工合で済まされるものではないではないか、かように思うわけなのであります。ですが、あなたの答弁が繰り返し同じようなことで進むならば、もうこれ以上論議してもしようがないというような気もするわけなのです。繰り返して言いますが、私たちは、こういう皇室関係のことをやるときには、信教の自由とか、政教分離の原則とか、そういうようなこと、あるいは国民がすべて納得して喜んでいくというような手順、方法をとってやらなければ、日本国民はまたぞろ非常に暗い環境の中に追い込まれる危険性をやはり感ぜざるを得ないわけなのであります。その点について、私の申している趣旨というものを十分に理解をしてもらわなければならないと思うのです。  次に、別の問題に入りたいと思います。現在農村地帯から季節的な出かせぎが数多く出て参っております。これは昨年の予算の分科会におきまして河野農林大臣の出席のもとにいろいろ問題にしたのでありますが、再度取り上げるわけは、これが昨年よりもずっと数を増しておるという現状、それから全国的な問題に発展しているという現状。ついこの間ですか、一カ月以上前でありましたか、テレビで見たのでありますが、熊本県から紀伊半島の先にある発電所工事に出かせぎに来た人々のことがテレビに出て参りました。そこで、私の非常に注意を引かされたのは、写真をとってくれた。それで、これはもう記念にとってくれたのだろう、あるいはまた、労務手帳に張る写真をとってくれたのではないか、こういうわけで喜んでおったのでありますが、実を聞きますと、事故によって死亡した場合の写真に使うのだというのでぎくりとした、こういうことがテレビに出ておりました。このように全国的な状態に広がっております。大臣は初めてお聞きになる方もあると思いますから、この出かせぎの現状について少し申してみたいと思います。  私の山形県なんか、職安を通したのは大体八千人であるが、推定四万人くらい出ておるではないか、こういうことであります。一郡市の青年団の中で三分の一ないし四分の一、そういうような工合に多数出ておる。部落によっては、五十戸のうち四十八人出かせぎに出ておる。こういうように多数出かせぎに出ておるわけであります。そうして、その出かせぎに出て行った職場というものは、いろいろな実地について私も見ておりますが、地下鉄工事とか、水道工事とか、発電所工事とか、さまざまございますが、その現場における労働条件が非常に悪い。労働保護の問題はほとんど行なわれていない。労災とか健保とか、そういうものに加入しているのかいないのかわからないのがあるわけです。こういうような事情。それから、賃金問題にしましても、初めの話と契約がだいぶ違うということ。そうしてそれの支払いのあれを見ますと、何日働いたから何ぼ、それに経費が何ぼ、それに食費が何ぼ、こういうようなことになって、保険料を払ったかどうかなんということも全然書いてない。そういうような非常に悪い賃金状況あるいは労働条件のもとに働いておるわけなんであります。残された家族の方はどうかということになりますと、半年間主人あるいは青年が働きに出ておる。そういうために残された嫁としゅうとの仲違いが出てくるとかいうようなこともありますし、それをおそれてことしあたりは夫婦連れの出かせぎが非常によけいになってきておるわけであります。その結果、あとに残された子供たち態度が、落ちつきを欠いてくる。その結果学力が落ちてくる、あるいは不良化のきざしが出てくる、あるいはまた夫婦で出かせぎしたあと、おばあさんの手で育てられる幼児は栄養が片寄るというような問題、それから病気になった場合には、夫のいないときにしゅうと、おばあさんを悪くしてはならぬというわけで早々に医者にかかる、こういうような例とか、あるいはついこの間なんかは、夫がいないとき、子供が工合が悪くなったからお母さんがおんぶをして医者に連れて行った、そのときにたまたま豪雪に見舞われて帰ることができなくなった。こういうような例とか、そしてまた地域的に言いますと、青年学級とか青年団の活動というものは完全に停滞をしておる。あるいは消防団の編成が非常に困難になってきておる。こういうような事態が起きておるわけなのであります。  こういう事態につきまして、まず農林大臣お尋ねしたいと思いまするが、こういう事態というものは農業構造改善事業、こういうものを完成するまでの過渡的なものとしてやむを得ないものだ、こう考えられるか、あるいはまた地域格差の是正という政府の意図している施策が完全にできるかどうかということは問題になりまするが、現実には農村と都市の所得格差はむしろ開いているという状況にあるわけでありまするから、こういうところにいくまでに至る過渡的な事象である、これはやむを得ないのだ、こういう工合に考えられておるかどうか。私は、農林省のこの問題に対する取っ組み方を見ますると、そういうふうな考え方で、冷ややかにこれを見送っておるのではないだろうか、こういう疑いを持たざるを得ないわけなのであります。この点について農林大臣答弁を願いたい。
  252. 重政誠之

    ○重政国務大臣 御指摘通りに、年間約二十万人前後の方が出かせぎに行っておられまして、またこれは、東北とかあるいは北陸という方面の方々がその二十万人のうちの六割以上にも相なるのではないかと思うのでありますが、農林省といたしましては、そういう出かせぎに行かれまして、あとの農業経営等に支障があってはならぬと考えまして、その方面のことについては、いろいろ普及員をして指導をせしめるとか、それからまた農作業そのものに支障があるというようなことでは困りますので、農村労力の調整協議会というようなものを各地につくらせまして、その調整をはかる、こういう方法を講じておるわけであります。従って、私どもといたしましては、残存の農業経営を担当をする方々の農業経営についての相談とか、あるいは農業技術の指導、さらに経営についての労力が足らないというような場合の調整をはかる、こういうことをやっておるわけであります。
  253. 西村力弥

    西村(力)委員 農家の中心である主人が出かせぎに出たあと主婦だけになってくる。その結果、翌年の営農準備というものが不十分になる。こういう点について指導をしたい。こういうようなことをおっしゃっておりまするが、それだけではなく、私が期待したいのは、とにかく農林省がやっている施策、その欠陥からこういう好ましくない、とにかく所得を補うために出かせぎによって補わなければならぬ、こういう事態でどんどん出かせぎに出ておるわけなのでありまするが、こういう事態をもっと本格的に、これは農林省の責任の問題であるという立場で取り上げるお考え、こういうものを私は期待したいわけなのであります。この点について、ただいまのお話ですと、営農上の計画性が失われる危険性について考慮したい、これだけでありまするが、もっともっと積極的な立場というものをとられる必要があると思う。この点について、再度農林大臣としてのお考えを聞きたいわけなのです。
  254. 重政誠之

    ○重政国務大臣 調整協議会では、営農上の労力の調整をやるのが当面の重要な任務になっておりますが、同時にさらに進んでは、就業先の労働条件等についてもお世話をするというような方法を講じておるようであります。
  255. 西村力弥

    西村(力)委員 根本的には、出かせぎをしなくてもやれる農村をつくる、ここになければならぬと思うのですが、現実にどんどん出かせぎをしなければやっていけないという状況から、年々ふえておる現状を農林省の責任あるこの問題に対する取っ組み方というものを私は期待するわけなのでありますが、今のようなお話だけでは、とうていこの問題に対する十分なる解決というか、対処策というものは生まれてこない。政府自体が、この事態を過渡的なものだからやむを得ないというのではなくて、本気になってこの状態を何とか不安のないように、誤りのないようにしていこうという心組み、これを私は期待するわけなんですが、そういう工合にいきますると、たとえば就労動向調査におきましても、労働力がどういう工合にいっているか、季節的にどういうところにどういう条件で行っておるか、こういうところまで調査を進めることも可能となってくるわけでありますから、そういう工合にし、また、各省ともいろいろこの問題に対する実態把握の上から折衡する部面も出てくるでしょう。だから、この際農林大臣はそこまで取っ組む心組みというものを固めてもらう、こういうことを私は要求したいわけなんです。御答弁一つ願いたい。
  256. 重政誠之

    ○重政国務大臣 季節労働は、御承知通り、ことに東北、北陸等の単作地帯におきましては、農業経営の上から申し上げますと、やはり農閑期というものがあるわけでありますから、ただいまの御意見のようにいたしますためには、その農閑期を十分に利用のできる事業を興すとか、あるいは施設を講ずるとかいうようなところまで進まなければならぬと思うのでありますが、これはなかなか一朝一夕にそういうわけには参りません。出かせぎをせられる方のほとんど六、七割までというものは、あるいは建設業とか、あるいは製造業というものに就労をしておられるようでありますが、そういう関係で、これは一朝一夕にやるということはなかなかむずかしい問題であると思うのであります。天候のかげんもあることでありましょうし、それらの点については十分検討をいたしていかなければ、とこう考えております。
  257. 西村力弥

    西村(力)委員 検討するという段階はずでに過ぎておるのではないか。これはやはり、もう少し検討してではなくて、就労動向調査においてこれこれのものを徹底的に調査するということ、あるいはその市町村あるいは公民館というところに依頼して調査の完全を期するとか、あるいは各省と、その調査の結果に基づいて問題点については大臣はその問題点の解決のために折衝を行なわれるとか、こういうところまで私は進めたい、こういうことをこの際一つはっきりしてもらいたい、こう思うのです。ただ今日研究する段階にとどまるということは、これはすでにして時は過ぎておるではないか、こう私は思うのです。確かに就労動向調査というのは、全体の就労動向調査だけはやっておりますけれども、それをそういうことにとどまらず、前進させるという方法をとってもらいたい、こう思うのです。いかがですか。
  258. 重政誠之

    ○重政国務大臣 それだけの二十万人の人を依然として農村にとどめる必要が一体あるのかどうかということも、これは問題なんです。出かせぎできる、就労の条件がいい場合には、農村にとどまっていろいろな仕事をやるよりか、その方が所得が多いというような場合も、私はたくさんにあるだろうと思うのです。でありますから、そう簡単に出かせぎをやめて、農閑期に農村にとどまっておる方が所得が多いのだというような仕事を探すということになりますと、なかなかこれは私は困難な問題だと思います。そうしてまた、必ずしもそれが絶対にそうなければならぬというものでもないだろうと私は思うのであります。
  259. 西村力弥

    西村(力)委員 そういうようなことを仰せられては、私は困ると思う。他に転業したいという気持を持つ人も相当出て参っております。青年諸君なんかは、ことにそういう工合にどんどんと離れておりますが、今出かせぎをしている諸君は、離れようとしても離れられない。ところが、冬季農閑期にあたりまして、うちでべんべんとしておることもできない、こういうような事情から、出かせぎに出ておるわけなんであります。これは現実です。こういう現実にどう対処するか。私は、今のような答弁で、出かせぎに出なければならぬとか、とどまる必要はないではないかというような、こういう言い方では、現実に出かせぎをせざるを得ない、しかしながら、農村を離れることはできない、こういうところに置かれている農民の事情に対する農林大臣の御理解としては、私としては、何というか、非常に温情の欠けているお言葉じゃないか、こう思うのです。ですから、私が言うのは、農林大臣として、この現実は、あなたの希望としては、そう出かせぎに出ないで、移りぎり移ったらいいじゃないか、こういうようなことであるかもしれませんが、現実に移りぎりには移れない、しかし、出かせぎにも出なければならないという現実、これを見のがすわけにはいかぬという、こういう立場で問題を考えてくれるというところまで一ついっていただくわけにはいかぬか。そこまで農林省の一つの行政を——ちょっと本質的なものからはずれる工合に見えますけれども、しかしながら、現実の問題として、こういう事象というものに対して、農林行政を担当するあなたとしては、これに対してやはり一応心組みというものを積極的に向けていく必要がある、こう私は思うのです。そこまで一つ大臣答弁というものをこの際強く期待をするわけなんであります。
  260. 重政誠之

    ○重政国務大臣 それでありますから、農業所得をふやすということが第一義であり、そして出かせぎに行かれたその留守の農業経営に支障のないように指導もし、相談にも乗り、また労力の調整もやる、こういうことが私のできる、そしてやらなければならぬ任務であると考えてやっておるわけでありまして、家族の中心になられる方が相当に出かせぎに行っておられます。これは今御指摘通りでありまして、そういう方は他の職業に転じてもらわないことを私は望むわけであります。従いまして、出かせぎに行かれる先方のいろいろの就労の条件であるとかなんとかいうようなことも十分調査して、お世話を今の協議会でやる、そして片方では農業経営に支障のないような方法を講ずる、こういうことで私はやって参っておるわけであります。御了承を願います。
  261. 西村力弥

    西村(力)委員 就労動向調査を、もう少し出かせぎの実態を明確にするような工合に、農林省として範囲を広げるというか、あるいは緻密にするというか、こういう方向をとられる意思は表明できませんか。
  262. 重政誠之

    ○重政国務大臣 これは一応調査はいたしておりまして、その実態も大体のところはつかんでおるつもりでありますが、詳細のところは、あるいはまだ調査の範囲が狭い、対象が狭いというようなことで、十分でないところがあろうかと思いますが、それもできるだけ一つ詳細に調査をするようにいたします。
  263. 西村力弥

    西村(力)委員 それでは次に、労働大臣お尋ねしますが、この出かせぎの人々は、職安を通して行くのが非常に少ないのです。縁故的な就職が非常に多い、ほんとうに職安を通すのが少ないわけなんでありますが、この結果、やはり労働条件というものは非常に悪くなるということになるわけなんであります。職安を通せば、求人側の雇用条件というものは、職安の場において相当保証されるということになりますが、この点を何とか職安を通して、大多数がそういうルートを通して行けるような工合に指導する方法はないのか、この点について労働省の所見等はどうでしょうか。
  264. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 大体、農村から出かせぎというふうな季節労働に出る数が二十万程度であると思います。三十五年におきましては少し少ないのですが、三十六年では、労働省の調べでは約十九万余りになっております。大体これらは職安を通していっておるのでございますが、このほかに、職安を通さずにいっておる者がたくさんあるやにただいまお話でございましたが、その数は私どもつかんでおりません。先ほど来農林大臣も申されましたるごとく、農村におきまして調整協議会を経て紹介いたしておりますが、調整協議会を通じて求職される方々は、職安を通していっておるような形に相なっております。
  265. 西村力弥

    西村(力)委員 私が言うのは、もう縁故就職でなく、大多数が職安を通して行くような工合に仕向ける方法を労働省としては考えていないかということです。そういうことが望ましいことなんです。また、出かせぎ先の現場における労働条件も、そのことによって確保されることに相なりますから、これを進める方策というものを何とかとれないかという問題であります。この点について大蔵大臣にちょっとお尋ねしたいのですが、この職安を通さない原因というものは、税金の問題にいささかひっかかる、こういうことがあるわけなんであります。税金は、これはもう正確に計算していきますと、これだけの農業所得で、これこれの出かせぎ賃金でやるならば、税金はかからないという限界というものは、明確にあるはずなんです。そのことに対する知識というものがあまりないということで、税金をとられるのじゃないかというおそれから、職安を通さないという例も相当あるわけであります。特別に、出かせぎに行きますと、往復の旅費、支度金、そのほか、正月には帰宅するとか、さまざまな費用がかかる。こっちに来ればまたそれだけの費用がかかるということから、その帰りに、持っていった金の相当部分というのは、その費用によって相殺されてしまう。ですから、現実の収入というものはそう多くはないのです。ですから、この問題について、大蔵大臣として、そういう税金の扱い方についてどうこうするということ、これはこの席で申すことはできないかもしれませんけれども、税金に対する不安だけは解消するというような方向、こういうような工合にして、そういう人々に周知させるというような方法、こういうような方向をとらるべきじゃないかと思うのですが、労働大臣に今言ったように、職安を通しても大多数がいけるような工合に労働行政として進める、このやり方、それをお尋ねするとともに、大蔵大臣にも一言答弁してもらいたい、こう思うわけなんです。
  266. 田中角榮

    田中国務大臣 冬季における季節労働者その他職安を通らないで出かせぎに出るというのは、税の問題が本能的にあるのではないかというようなお話でありますが、私は必ずしもそのようには考えておりません。これは私の出身県などは新潟でありまして、酒屋の杜氏とかその他に出かせぎに出ておりますが、これらの問題に対しては、長い伝統的な、その季節になると、そこにもう常時毎年出るという問題もありますし、それからもう一つは、リーダーのもとに班を編成しまして、請負制度というような状態で出ていこうというものもありますし、職安というものに対しての理解がないという問題も一つはあるでありましょうが、何か仕事の面に対して、小間割や請負的なグループでそういうものを選んで、高い収入を得るというような面もあるわけでありまして、それが継続的な仕事が得れないというような問題にもぶつかりますし、また労働力を均等に必要なところにさくという問題にも支障があるので、これも職安を通していくというような問題は、これは相当検討をする必要があるだろうというふうに考えます。税の問題に対しては、今言われたようなことに対して、もしそれが原因であるというようなことであれば、周知徹底せしめたり、適切な処置をとるべきだというふうに考えます。
  267. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、職安を通して出かせぎにいくものの数は、私どもの方でも把握いたしておりますが、それ以外の方は、実は数の調べをいたしておりません。また、どういう理由で特に職安を通すことが回避されておるか、それらもただいまのところは調査がございませんが、しかし、労働省といたしましては、労務の需給を円滑にいたしますると同時に、雇用される現場の労働条件につきましてもつまびらかにし、そしてまた、労働条件の監督等も考えますると、できるだけ多くの出かせぎが職安を通していってもらうということが望ましいことではあると思います。しかし、ただいまのところ、調査ができておりませんので、できるだけすみやかにそれらの実情を十分調査いたしまして、将来何分の措置をとるようにいたしたいと思います。
  268. 西村力弥

    西村(力)委員 それとともに、労働大臣にぜひ考えていただきたいことは、この出かせぎの現場の監督行政であります。ついこの間、私のところに、出かせぎの人がけがをしたので連絡がありましたが、それで救急車を呼ぼうとしたら、何なまいきを言うかといってぶんなぐられたとかいう問題があります。それから一人の青年が死んでおります。これは昨年でございますが、地下鉄の工事でございましたか、一・八メートルずつ段階をつけて掘っていくとか、そういうことをおろそかにして、十メートルも下で作業をして、土砂くずれで完全に内臓破裂でだめになった、こういうような事態もあります。  それから賃金の問題にしましても、これは二十五日締め切り五日払い、あるいは月末締め切り十日払いとか、こういうようなことになりまして、結局、最終農業作業をやらなければならぬ三月末になって帰ろうとするときにおいて、これの不払いということが大きく起きておるわけなんであります。今金がないからそのうち送るからと言う。金をもらわぬで帰れない、こう言うと、いやそのうち必ず送るからというので、もう農耕の方が目の前でありまするから、その言葉を信じて帰るということになりますると、とうとう送ってこないという事例が非常に多いのです。この件については、昨年あなたの方の監督局ですかの方にいろいろお願いして、相当解決してもらって、これは御努力ありがとうございましたと申し上げるほかないわけですが、ついこの間も、請負に来ておるその元請と下請のこじれから、その下請が解散になって、行き場に困ったというようなこともありました。こういうときに、都内のある職安を通してその再就職をはかっていただいた。これもありがとうございましたと申し上げるのですが、とにかくこの現場については、これはそこに限らずということになるでしょうけれども、そういう季節的にやむを得ず出てきている諸君が、いなかの者として、荒くれ者のそういう作業現場の人々と一緒になってやる、このところの現場というのは、ことに注意して監督を強化していただく必要があるのではなかろうか。それをやるにしても、農林省において市町村なんかと連絡をして、その出かせぎの実態というものをもっともっと把握する。これは十一月とか十二月とかに集中的に出かけるのですから、これは把握のしようは十分できるはずであります。そういう工合にしてそれを労働省の方に連絡すること、そういう労働監督行政の方に連絡するということになれば、その現場において働いているそういう農民諸君も、相当安心してやれるということになるわけなんであります。そういう点の監督行政というもの、こういうものについて、労働省のお考えについてお述べを願いたい、こう思うわけなんです。
  269. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 農村からの季節労働者仕事先と申しますると、男子につきましては建設業が圧倒的に多いのでございます。女子につきましては食料品加工業等が多いのでございますが、これらの事業所の中で、特に建設業というものは、労働省の方でも、基準監督の上からいきますと要注意の業種に相なっておりまして、出かせぎ者ばかりでなく、一般的に土建の現場には基準法違反の事件が多くなっておるのであります。従いまして、基準監督官といたしましても、特に建設業の方へは足しげく監督に立ち回るようにいたしておりまして、一般の事業に比べまして、この重点的な事業として二倍以上足を運ぶというように、監督に留意はいたしております。しかし、それにしても、とにかく違反率の最も高い事業でございまして、違反事件のおもなる事項といたしましては、第一は、危害の防止において基準が守られていない、第二は、男子の労働時間及び休日が規定通り行なわれていない、それから賃金の計算が不適当である、こういうことがおもなる事項に相なっておるのでございます。これらのことを調べて参りますると直ちに気のつきますことは、これらの建設業というものの経営なり、また労務管理というものが、非常に近代化していないというところに原因があるようでございまして、労働省といたしましては、法規の励行に努めますると同時に、労務管理なり、また事業の経営なりの近代化につきまして不断に指導を行なって、そうして改善をはかっておるような次第でございます。特に災害の問題につきましては、焦眉の急務でございまするので、明年度におきましては特別に予算をとりまして、また、災害防止のための特別の法案を提出し、何とかこの災害防止に力を入れたい、こう思っておりまするし、同時に、労務管理の指導面におきましても、今後一そう力を入れて参りたい、かように存じます。
  270. 西村力弥

    西村(力)委員 次に、自治省の方にお尋ねをしたいのですが、この出かせぎを多く出しておる市町村というものは、相当の悩みを持っておりまして、出かせぎ地に係員を派遣して実態調査をし、あるいは慰問をする、あるいは町報とか学校報なんかを送付しておる、あるいは青年学級の通信教育の試みをやっておるようなところとか、あるいは残された者に対する営農上の指導を行なっておるとか、それから残された家族が生活が困る場合には、臨時に生活保護の措置をとるとか、それから消防団がほとんど編成不可能な状態になっておるのに応じて、それを編成するためにいろいろな措置を講ずるとか、こういうような広範ないろいろな問題に、自治体として親身に苦慮しておることが多いのでありまするが、こういうことをやりやすくするために、こういう出かせぎのたくさん出ておる市町村というものに対して、財政的な何らかの考慮というものを払うべきではないだろうか、こう思うのでありまするが、自治省の考え方を承りたいと思うのです。
  271. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 大臣にかわりましてお答えさせていただきたいと思います。  農村地帯におきましては、今お話のような問題、さらにひいては人口が減ってくるというような問題がございます。地方交付税の計算におきましては、人口とか児童生徒数、こういうものも基礎にいたしまして、基準財政需要額を算定いたしております。その結果は、だんだんとこれらの財源が少なく算定される、こういうようなことにもなりまして、現状のままにしておきますと、むしろ格差が開いてくる、こういう結果になってしまいます。そういうこともございますので、たとえば三十六年度からは、農村地帯に対しまして特に傾斜的に財源を配分するというようなことで、専門的に申し上げますと、九種地以下の市町村にだけ毎年四十数億円ずつ基準財政需要額を増額するという方法をとってきて参っております。また、教育費の算定におきましても、児童、生徒数のウエートを学級数に置いていく、学級数に置いて参りましたものをさらに学校数に移しかえてくる、こういうような算定の方法も講じて参ってきておりまして、減少する結果基準財政需要額が減る、これを防止するよりも、さらに一そう財源をふやしていく、そうして少しでも格差是正に努めていきたい、こういう考え方で財源措置を講じて参ってきておるのでございます。
  272. 西村力弥

    西村(力)委員 直接ではありませんけれども、総体的な考え方でそういう市町村に対する財政力の強化に努力されておるようなことでありますが、こういう工合によけい出れば出るほど、やはり市町村のそういう財的支出というものがよけいになって参る現状でありますので、ぜひ一つなお一段と考究せられることが必要であると思うわけであります。  ところで、消防庁関係でありますが、昨年、消防庁に、自由消防団員が出かせぎをしたあと、そこのお父さんがかわりに出たとか、こういうような場合に、災害の場合の補償があるかということであります。そういう場合にやれる建前になっておる、こういう答弁でありましたが、私の県の山形新聞の記事によりますと、出かせぎが各地とも例年より多く、消防団員の不足のため、婦人消防団や一般の活躍が目立っているが、これらの臨時団員が火事現場で災害を受けた場合、全く補償がないことが問題になっている、こういうことが出ておるのであります。昨年の答弁と全く違うし、昨年の答弁の後、こういう答弁通りの趣旨を徹底させるための努力も何らなされておらなかった、こういうことが判明しておるわけなんであります。こういうことでありますので、婦人消防団の編成もなかなか困難だということ、あるいは災害補償の日当も引き上げなければならないというような事態になっておる、こういうことを言っております。消防庁の関係の人がおりますならば——昨年は山本説明員という人が答弁をしておる。臨時に出た人も、それはもう十分に補償されるのだ、こういうことを言っておりますが、これはうそであったということになっておるのですか、その点一つ明確にしていただきたいと思うわけであります。
  273. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 お答えいたします。  ただいまの消防団員が出かせぎをいたしました際におきまして、その補充をやる。たとえばそのむすこの方が、お父さんが出ていったあとの身がわりをやるという場合の公務災害補償の問題でございますが、これは形式的に申せば、むすこさんも消防団員ということで任命行為がございますれば、むろんこれは問題がないわけであります。おそらく今御指摘になりました点につきましては、私の方でも実情をさらに調査をいたしてみたいと思いますが、ただ単に事実行為で、任命その他のことが、定数関係その他で行なわれておらなかったというような事例が出てきておるのではないかというように推測されるわけであります。ただ、今の一般的な傾向といたしまして、出かせぎがどんどんふえていく、さらには出かせぎという一時的なものでなくとも、全体的に農村人口というものが都市の方にどんどん出ていって、農村人口というものが絶対的に不足してくるという事態になって参りますと、あまりそういう形式的なことにこだわっておりますと、非常に実態にも支障がくるというようなことにも相なりますので、そういう任命行為自体も法的になし得るような定数上の措置も講じますとともに、実質上そういうような消防団活動に従事をするというような事実がございますれば、これは当然公務災害補償の対象にするということで、その点の周知徹底をはかりたいと考えております。その点、方針として昨年申し上げたことと別に変わっておりませんが、今お話しの点につきましては、私といたしましても、実情を具体的に調査いたしまして善処いたしたいと思います。
  274. 西村力弥

    西村(力)委員 今の点は昨年通りだと、臨時に出ても、これは協力を求められて協力したという形にして、これは公務災害の対象にする、こうなっておるのだということを総務課長の山本さんが答弁しておる。ところが、今から周知徹底をはかろうということになると、一年間放置されたということになってくるんではないかと思う。ぜひそれは早急にやって、そういう消防団編成の困難なんかを解消するという機敏な行動というものをとっていただかなければならぬ、こう思うわけなんであります。  次に、文部大臣お尋ねいたしますが、御承知のように、出かせぎによって青年団活動とか青年学級が休業状態になっているのが広範にあるわけです。これについて、去年は社会教育局長が、実験学級云々、こういうことを言って、農村構造改善の実験学級を農村に置くことによって足をとめよう、こういうような意向を言われておりましたが、そんなことでとどまるものではない。こういう事態の解消のためには、何らかもっと文部省として検討しなければいかぬ。現在、青年団の活動なりあるいは青年学級の活動なりというのは、社会教育上の文部省のやるべき仕事として重要なものであるはずでありまするから、この休業状態というものを何らかの形で解決する努力、検討というものはなされなければならぬのじゃないですか。これについて文部大臣の方はどういうお考えを持っていらっしゃるか。
  275. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  御指摘通り、農村の青年が季節的に出かせぎに行くことももちろんですけれども、恒久的に農村を離れて他に職場を求めるという傾向が近年きわめて顕著であることは、お話しの通りであります。まあ御質問がありますので、山形県のことをちょっと調べてもらったんですけれども、青年団員数という角度からだけ見ましても、昭和三十一年から三十六年にかけての変動は、団員数三万一千人ぐらいあったものが一万六千人ぐらいになっておる。これがすべてを物語るわけではむろんございますまいけれども、大勢は察知するに足る。そういうこともありまして、西村さん御自身御承知通り、たとえば山形県におきましても、出かせぎ青年の村というがごとき取り扱い方をして、特別の青年団ないしは青年学級を通じての社会教育に力を入れておるわけでございますが、全国的に見まして、やはり同じ傾向が顕著でございまするので、その原因いかんは一応別といたしましても、社会教育面及び学校教育面でとらえまして、何らかの措置を講ずべきことは当然のことだと思います。従来やっております青年団の指導育成あるいは定時制高校の充実、さらにまた農業高等学校それ自体を農業基本法の期待し意図するような方向に合わせるように、たとえば農芸化学あるいは農業土木あるいは農産加工工業等に関連する学科目を新たに設けるという体質改善をやりますることも一つの手段かと思いますが、お話しの、出かせぎするものだから残りの青年数が非常に少ないので、従来の概念に立った青年団の育成指導とか、あるいは定時制青年学級という考え方ではまかない切れない場面が続出し始めておる、こういうふうに考えるわけでありまして、そこで、十分のそれに対する対策というのはいまだしでございますけれども、さしより三十八年度におきまして八百万円の予算、わずかでございますが、三分の一補助でございますから、二千四百万円の事業規模になります。二十カ所を予定いたしまして、たとえば、仮称勤労青年学校とでもいうようなものを公共団体と協力してつくりまして、出かせぎ先の農村青年に対して一般教養も一部、さらに職業課程等も予定いたしまして受け入れるという考え方が必要ではなかろうか。さらに、この構想は、都会等に恒久的に出ていきました残りのわずかの人数では、従来の考えではちょっとまかない切れませんので、数カ町村を一緒にしました規模において、たとえば勤労青年学校と申しましたそういう構想を農村地帯にも実験学校的にやってみたらいかがであろう、そういう考えを三十八年度におきましては具体化していきたいと思っておるのであります。
  276. 西村力弥

    西村(力)委員 とにかく、青年団活動、青年学級活動にしましても、これは農繁期においてはなかなか行ない得ない。冬季の農閑期においてやろうとするときに、団員あるいは学級員は遠くに離れてしまう。それで幹部諸君は非常に苦慮をしておるわけなんであります。ですから、ところによっては、通信によるそういう総合研究なんかもやるとか、そういう試みもやっておりますが、とにかく文部省としてはこういう面における打開策というものをもっと検討していくことを望みたいと思うわけなんです。  ところで、とれに直接関係はありませんが、この際一つ尋ねておきたいのは、中学を卒業して就職のために上京するとかなんとか、そういう子供さん方がこっちに参りまして高等学校に入ろうとしても、すでに募集が終わったというようなことになってしまったのでは、これは大へん困る。やはり、そういう向学心に燃える者は定時制なり夜間なりに就学したい。ところが、その募集はすでに三月中に終了しておった、こういうことになったのでは困るのでありますから、こういう問題については文部省としてはどういう指導をしておられるか。やはり、そういう就職上京組の向学心が十分満たされる機会を開いておく、私たちはこういうことがぜひ必要であると思うのですが、どうですか。
  277. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  今のお話のような特殊の具体的な事柄に対してどうしておるか、どうしようとしておるかということは、ちょっと私お答えいたしかねるのでございますけれども、かりに想像をめぐらせておそれ入りますが、しゃくし定木に、志望すべき期限が切れたからだめだと無慈悲に突っぱねるべきものではなかろう、できることならば、何らかそこに便宜措置があってしかるべきではなかろうかということをとらえまして、どういう指導を現にしておるか、あるいはしていないかということをちょっと申し上げかねるので、おそれ入りますが、お許しをいただきます。もししてないとするならば、何か考えるべき事柄ではなかろうかというふうに思います。
  278. 塚原俊郎

    塚原委員長 西村君に申し上げますが、申し合わせの時間が経過いたしましたので、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  279. 西村力弥

    西村(力)委員 もう終わります。  今の件は、行政指導として相当考えてもらわなければならぬ問題だと思うのです。想像をめぐらせての話ではなくて、ぜひその点は考えていただきたい、こう思うのです。  最後に、建設大臣に、はなはだお待たせして済みませんでしたが、この話は昨年建設大臣を相手にしていろいろやったのですが、この出かせぎというものが元請に来ておる者はほとんどない。ついこの間けがをしたところなんかは、第四次請負です。その四次請負はただ単なる人入れ稼業的なもので、稼業というと言葉が悪いのですが、それだけのものというような状態であります。そのために賃金とか労働条件も悪くなるし、また、それがその一段上の請負といざこざがあって、そのなにが解散というようなことになって、新しい職場を見出さなければならぬというような事態にもなっております。しかもまた、そういう出かせぎと関係なく考えましても、こういう何次請負という工合になりますと、それだけの工事量というものに見合う資金量というものは非常に削減された形になってしまうのじゃないか。ですから、資金は十分に生かされない、予算は十分に生かされない、こういうことになって参ると思うのです。この請負形態の問題について何か抜本的な解決というものをとられる必要があるのではなかろうか、こういう工合に思うわけなんです。これは出かせぎに関係なくそういうことが言えるのじゃないかと思うのです。その点についての大臣のお考えをお示し願いたいと思います。
  280. 河野一郎

    ○河野国務大臣 建設業界は、非常に大きな会社・組合から始まっておりまして、地方の機械もあまり持っていない小さなものまであるようでございます。そこで、私どもといたしましては、第一には、なるべく大きなものから順次小さなものに仕事がわたって参りますように、入札制度につきまして一つの指示をいたしまして、必ずA、B、C、Dとグループが分けてございます。どの程度がA、どの程度がB、C、Dと。そこで、仕事の量によりまして、これはAグループに従来やらしておる、これはDグループにやらしておるということになっていますのを、Aのグループの指名の場合にはBのグループを必ず何%かそれに入れる、Cの場合にはDを必ず入れて、必ず同一の階級だけでやらぬようにして、下のものを順次上の階級に入れ、順次上に上進していくような指名の方法をとるように指導いたしましたことが一点。それだけではむろんうまくいきませんので、できることならば、地方の業者の自発的な奮発によりまして、協同組合もしくは自己の任意組合等によりまして、小さなものが数組、合併じゃございません、協同いたしまして、そうして機械その他のものを準備して、そうして順次大きな仕事が取れるようにということを極力奨励いたしまして、従来のように小さなものがそのままでおりませんように御承知のように、機械等が非常に発達して参っておりますので、これらのものを持っておりませんと、どうも建設業と申しましても、他の大きなものと競争してやるわけに参りません。従って、これらのものを持ち得るように協同組合をつくる、組合法によってもよらぬでもよろしいから、組合をつくって入札に参加せよということで、極力組合を奨励いたしております。従って、だんだんそれが趣旨徹底しておりますし、指導宜しきを得ますれば、従来のように、上のAの会社が元請で、それがDまで行くのにはその間に三段階も四段階も経て、Dのものは実際人足を集めて仕事をやっておるということのないように、極力Dを五つ合わせてBに昇格させて、Bの入札に参加させる、それぞれ合わさったものでやるということを奨励いたしておるわけでございます。
  281. 西村力弥

    西村(力)委員 最後に農林大臣に伺います。  とにかく、これは過渡的な問題であるという工合に放置されることなく、農業の置かれておる現状というものに対して、やはり農政の立場から責任ある問題である、こういう工合に考えられまして、これについて全般的な不幸なる事態や何かの発生を防ぐ、あるいは各市町村におけるいろいろ財政支出なんかの問題についても考慮するとか、さまざまな点について、農林省として、やはりこれは農林省の責任という立場で、この問題に政府全体が取っ組んでいかなければならぬ、こういう考え方に立ってもらいたい、こう思うのです。そういう点について大臣の御所見を一つ最後にお聞きして、終わりにしたいと思います。
  282. 重政誠之

    ○重政国務大臣 農林大臣の所管をいたします範囲内におきましては、できるだけ御趣旨に沿うように努めたいと考えます。      ————◇—————
  283. 塚原俊郎

    塚原委員長 この際、お諮りいたします。  昭和三十八年度予算審査のため四個の分科会を設けることといたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  284. 塚原俊郎

    塚原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、分科会の区分、分科員の配置及び主査の選定等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  285. 塚原俊郎

    塚原委員長 御異議なしと認めます。よって、分科会の区分は従来通りとし、分科員及び主査は追って指名いたします。  次会は明十三日午前十時から開会することといたします。本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十六分散会