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1963-02-06 第43回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月六日(水曜日)    午前十時十五分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    安藤  覺君       井出一太郎君    伊藤  幟君       稻葉  修君    今松 治郎君       植木庚子郎君    亀岡 高夫君       菅野和太郎君    櫻内 義雄君       周東 英雄君    田中伊三次君       中曽根康弘君    灘尾 弘吉君       丹羽 兵助君    羽田武嗣郎君       船田  中君    松浦周太郎君       松本 俊一君    山口 好一君       山本 猛夫君    淡谷 悠藏君       石田 宥全君    加藤 清二君       川村 継義君    木原津與志君       小松  幹君    高田 富之君       堂森 芳夫君    野原  覺君       山口丈太郎君    横路 節雄君       田中幾三郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 西村 英一君         農 林 大 臣 重政 誠之君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 小沢久太郎君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 篠田 弘作君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 近藤 鶴代君         国 務 大 臣 志賀健次郎君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 徳安 實藏君         警察庁長官   柏村 信雄君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    山本 重信君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (理財局長)  稲益  繁君  委員外出席者         大蔵事務官         (財務調査官) 佐竹  浩君         大蔵事務官         (財務調査官) 松井 直行君         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月五日  委員池田清志君及び石田宥全君辞任につき、そ  の補欠として江崎真澄君及び岡良一君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員岡良一辞任につき、その補欠として石田  宥全君議長指名委員に選任された。 同月六日  委員北澤直吉君、田澤吉郎君、中村三之丞君、  西村直己君及び西村榮一辞任につき、その補  欠として亀岡高夫君、稻葉修君、丹羽兵助君、  伊藤幟君及び田中幾三郎君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に位した案件  昭和三十八年度一般会計予算  昭和三十八年度特別会計予算  昭和三十八年度政府関係機関予算  昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)  昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)  昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第2  号)      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより会議を開きます。  昭和三十八年度一般会計予算昭和三十八年度特別会計予算昭和三十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  山口丈太郎君。
  3. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は、前日に引き続きまして、社会党を代表して若干の質問を行ないたいと思います。  実は、防衛庁に関する質問につきましては、あとで同士委員からの質問がありますので、若干の質問を行なって、主として内政問題、特に雪害対策等につきまして質問をいたしたいと思っておったのでありますが、防衛庁長官が途中用件があるようでありますから、簡単に二、三の点について御質問を申し上げたいと思います。その前に、私は、質問をするにあたりまして、将来の理想や理念はいろいろありましょうが、現実に今起こっておる問題にのみ質問を行ないますから、従って、率直に総理以下各閣僚からお答えを願いたいと思います。  私は、昨日ニュースで承知をしたのでありますが、本日アメリカ国防次官日本を訪問される、その主たる目的が何であるのか、いろいろと報ぜられておりますが、その目的につきまして、事前総理に対しても連絡があってのことだと思いますが、一つ、そのギルパトリック氏の訪問についての目的につきまして、総理からお答えを願いたいと思います。
  4. 池田清志

    池田国務大臣 アメリカ国防次官おいでになり、明日お会いすることにいたしておりますが、どういうことで来られるのか、特別に手紙を前もってもらったわけではございません。ただ、日米安保条約を結んでおる関係上、国防上につきましての向こう意見なんかを開陳されると思います。また、そういう点について聞かれれば、こちらもこちらとしての意見を言うつもりでございまして、今、どういう目的で来るのだということを、さだかに受け取っておりません。
  5. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 先日来の質問におきまして、アメリカ原子力潜水艦日本に立ち寄りたい、それは日本アメリカ原子力を有する潜水艦の基地を実質上提供する結果になるではないかという質問に対しまして、ただ、総理は、原子力推進機を持っている潜水艦であって、核弾頭を装備した潜水艦でないから、従って、これは普通のものと同じである、こういうような答弁でかわされたのであります。しかし、今度国防次官が来られるのは、報道によれば、ノーチラス型のみならず、ポラリス型の潜水艦日本寄港できるように強く要請するという報道でありますが、これに間違いありませんか。
  6. 池田清志

    池田国務大臣 ポラリス潜水艦日本に来ることを要求するような報道は聞いておりません。
  7. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は別にやりとりをかわそうとは思っていないのですが、しかし、今日日本国民が一番心配をしておりますのは何か。キューバのカリブ海におけるあの危機は一応脱した。それは、首相も認められますように、アメリカ軍事力あるいは力というものが大きな役割を果たした、こういわれておるのでありますが、私も、力と力の関係において、そこに良識が働いて危機を脱したことにつきましては、ほぼ同意見であります。しかしながら、本日の報道によりますると、中共核実験を近く行なおうとしておる。この核実験によりまして中共核兵器を保有するに至る。これは、アメリカにとっても、日本にとっても、首相の言われるいわゆる自由陣営にとっては一大脅威である、こういうことをアメリカ言明をしておるのであります。なるほど脅威でありましょうが、しかし、その場合日本はどういう態度をとろうとされておるのか、総理から率直に御意見を聞かしていただきたいと思います。
  8. 池田清志

    池田国務大臣 ポラリス潜水艦日本への寄港は断わるということを、もう今国会でも前の国会でもたびたび申し上げておるのでございます。従ってまた、そういう日本政府の気持はアメリカにもはっきりわかっておりますから、そういうことを要求することは全然ないと私は思います。ただ、原子力推進力とする潜水艦につきましては、先般もお答えした通りに、私は寄港を認めてもいい。ただし、損害のあった場合については補償をするとか、また、灰の処理その他につきましての十分の措置をするという条件で寄港することを認めるにやぶさかでないということは、答えた通りであります。  それから、中国が核爆発実験をするということにつきましては、世界で一、二年のうちにやるのではないかというふうな話は聞いております。しかし、たとい万一そういうことをやりましても、核武装核兵器を持つということにつきましては、三年や五年ではできるものではない、相当、十年くらいかかるものだということも、これは一般世界で言っているところでございます。それは、フランスの例等を見ましても、核爆発をやったからすぐ核兵器を持てるのだというふうには、これは科学的に考える人はないのであります。従いまして、そういう先のこと、あるかないかわからないことを今ここでどうこう言うことは、私は差し控えます。ただ、問題は、中共がそういうことをしないようにしてもらわなければならぬということは、私は、中共に限らず、今持っている国に対しても常に要望しているわけでございます。今中共がどうこうということを前提に意見を述べることは、私は差し控えます。ただ、中共もほかの国と同様に核爆発核実験をしないということを、強く私はこの機会に要望いたしたいと思います。
  9. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は今の総理の強い決意ある答弁に対してはそれを信頼するのでありますが、しかし、なお私は、この本日の報道のみならず、アメリカ方針によりますと、今後は日本国防日本自体でさらに一そう強化をしてもらいたい、こういう要請がある。しかも、それはNATO北大西洋条約機構加盟各国がとっておりまする国防強化策と同様の国防力強化要請する、こういうことを言っておるのでありますが、総理はこれに対してどういうお考えでありますか。
  10. 池田清志

    池田国務大臣 御質問の点が、NATO並み日本自衛力を強めろという要求か、あるいは、日米防衛に対しまするいわゆるアメリカ援助額を減らせ、こういう要求か、二つの問題があるように御質問でございましたが、日本NATO並み防衛力を持つということは、日本の国情からしてそれはできないことでございます。一般国民所得に対しまして、NATOのやっておるようなことはとうていできませんから、これはわれわれは、防衛力漸増計画で、国力の許す範囲内におきましての最低限度自衛力を持つ、こういうことはもうきまった方針であるのであります。しこうして、それならば、第二段の、いろいろな防衛力の機械その他の整備につきまして、日本でつくるものについてアメリカ援助がございます。援助額についての話があるということは、これはわれわれとしては想像しなければなりません。しかし、この問題につきましては、御承知通り日本防衛力漸増と伴いましてアメリカ負担はなるべく減らしてくれということは、前から言っておることであります。何も今回新たに分担金を減らしてくれということでもないので、これは何も不思議ではない。向こうとして見れば、日本経済力がだんだん伸びていっておる、力がついてきているのだから、アメリカ納税者負担によって日本防衛力を増加する、そのアメリカ負担する割合を減らしてくれということは、もうずっと以前から言っておることであります。また、われわれもその方向でやっていっておるのでありまして、これは何も目新しいことではないと思います。
  11. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は、何もアメリカ日本国防に関して援助をしてもらってそれでやれと言っておるのでは決してないのです。全廃してもらってけっこうなんです。アメリカから援助してもらうことは、日本自主性をそこない、ますますアメリカ国防外交、これに引きずられていく結果になる。従って、日本は、核兵器を保有するしないにかかわらず、再び原子力攻撃を受ける羽目に陥ることは明らかな事実であります。従って、むしろ、援助のみならず、アメリカからある軍隊は引いてもらって、そうして日本独自のものに返るなら返るという態度をはっきりすることの方が日本自主性を守ることであるし、安全な処置であると思うのです。しかるに、今日までたよっていること自体が、私は変則的なものだと思うのであります。しかし、今日までいろいろアメリカ援助をして、そうして日本国防力の増強に資してきたのでありますが、そのためにこういうことを言っておりますが、総理はどういうふうにお考えですか。もし共産圏との間において大規模戦争が起こる場合には、欧州においては北大西洋条約機構すなわちNATOたてになる、アジアにおいては日本台湾等がこの防衛たてになる、そうしてアメリカは剣の役割を果たすのだ、こういうことを言っておるのであります。自分民族の自立、防衛をする場合、他民族犠牲において自己の安全を期そうとすることは、これもまた古今東西を通じて私は議論の余地のない事実だと思うのです。しかし、それならば、われわれがアメリカ国防たてになって犠牲になる必要はごうもないと考える。しかるに、今日のこの報道によれば、ますますそのたてになる役割を深くしつつある。首相ノーチラス型の潜水艦以外の潜水艦寄港させないとおっしゃいますけれども、しかし、実質上、国民は、あるポラリス型の潜水艦が行動しておるという事実から見て、だれもそれを真に受ける者はないのではないか、このように考えるわけでありますが、一体どうお考えになりますか。将来の日本防衛に関し、アメリカが言っておるように、共産圏との間に大規模戦争があった場合、あるいは局地的にせよアジア地域におきまして大規模戦争が発生した場合、日本アメリカ国防たてとして日本の九千万国民を提供する、そういうお考えでありますか、一つ伺いたいと思います。
  12. 池田清志

    池田国務大臣 われわれは戦争を望みません。絶対に回避しなければならない。そのためにこそ、安保条約によって日本を守ろうとしておるのであります。日本アメリカたてになるのではございません。日本の安全をアメリカの力によって保障しようとしておるのであります。
  13. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それは私は詭弁かと思うのです。そういうことで日本国民があなたに自分の居どころの安全をまかすことは困難だと思うのです。私が総理に望みたいことは、ほんとうにわれわれがどの道を選べば将来にわたって日本人の生存が全うできるか、そして繁栄を期することができるかということをもう少し真剣に考えてもらいたいと思います。今日、アメリカ戦略構想というものは、今私が言った通りであります。日本アメリカと結んで国防を全うしたと思いましても、それは過去の戦争におきまして証明されております。外国の飛行機は一機も日本には入れないのだと豪語されたその言質の裏から、日本は全部焼け野原になった。そして原子爆弾の洗礼を受けた国民であります。これは、何回も繰り返さなくとも、首相自身の御出身地がそうであります。私は、従って、今首相の言われますような、戦争をやらないようにする、そのためにアメリカの力を借るんだというやり方というものは、私は改めるべきではないかと思いますが、再度一つ首相からお答えを願いたいと思います。
  14. 池田清志

    池田国務大臣 昭和五十六年にサンフランシスコ平和条約を結び、日米安全保障条約を結び、そうして二年半前にまたこの国会安保条約の改定をして、日本国防につきましては、もうはっきりきまっておるのであります。安保条約体制で今のところいく、これは、私は、もう国会での承認を得まして、国民もそう考えていると思っております。
  15. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 防衛庁長官にお伺いをしますが、きょうギルパトリック氏とお会いになるようでありますが、向こう要請がどういう要請かは、今首相からの御答弁によって、わからないとおっしゃる。しかしながら、今日訪問された主たる目的は、中共の近く行なおうとしておる核実験、これに伴って近く急速に核兵器を保有するに至るであろうことを想定し、一つは、日本自体国防強化、二は、いわゆる北大西洋条約機構すなわちNATO加盟国同様の、もしくはそれに近い国防体制を強く要請する、第三は、アメリカ軍事援助を減額する、そのために現在の防衛費をさらに拡大せよ、また、問題になりましたノーチラス型の潜水艦のみならずポラリス型潜水艦日本への寄港を強く要請する、こういうことが伝えられておるのであります。いずれをとりましても、きわめて重大なことである。しかも、それが、今総理質問をいたしましたように、アメリカ底意は、これらを強くこの自由圏諸国要請することによってアメリカ自身の安全をはかろうとしているように見えるのであります。実際には、底意は、自分の安全を守るために周辺各国に軍備を強大化し、自分陣営に引き入れることによって、これらをたてにしようとしておる。このことは、この国防総省の言明に明らかなところであります。原子力潜水艦日本寄港あるいは在日米軍の変動などによって米国軍事力を一そう強力にする、こう言っておるのであります。従って、そういう要請がある場合に、これは防衛庁長官としては向こうとの折衝には重大な決意を持たなくてはならぬと思いますが、あなたの決意はいかがですか。
  16. 志賀健次郎

    志賀国務大臣 ただいま数々のお尋ねがございましたが、総理から御答弁申し上げたところで一切尽きるのでございます。ちょうど十一時から米国国防次官と会うのでございますが、会見の時間がわずか二十分でございますから、ただいま御指摘になりましたような問題がたくさん出るかどうか。また、総理のお話の通り事前に何らの連絡がございません。どういう問題でお話しなさるのか、また、どういう注文があるのか、もう何も連絡はございません。ただ、私に課せられた重大な使命は、すでに御審議を願っておりまする第二次防衛力整備五カ年計画を、私がこれを最善の努力をいたしてりっぱに遂行するという以外にないのでございます。
  17. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はそういうことを尋ねているのじゃないのです。こういう今申し上げたような要請があった場合に、あなたはどういう決意で当たられるかということを聞いておる。今までの防衛計画があったことは私どもも承知しておるのです。しかしながら、今日、新たな事態として、アメリカからわざわざ国防次官日本に派遣をして、日本によしんば今までの計画があるとしても、新たないわゆる要請を行なおうとしておることは間違いがない。その新たな要請に対して、あなたはわずかに二十分だ三十分だと言って答弁を逃げるわけには参らないのですよ。どういう考えで臨まれるかということを聞いておるのです。
  18. 志賀健次郎

    志賀国務大臣 わずか二十分の間にどういう問題を私に出すか、一向私は考えておりません。また、新たな問題があらためてここに出るとも私は想像いたしておりません。きょう十一時から会うのでございますから、会った上で、どういう話になるか。従って、新たな問題が出てくるとは思わないのでございますから、新たな事態に当面して新たな決意を示せと申されても、ただいままで申し上げた通りでございます。第二次防衛力整備五カ年計画をまじめに遂行するという以外に、私に課せられた責任はないのでございまして、それ以外は、総理が先ほど答弁した通りでございます。
  19. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 他にいろいろありますから、また後日質問することにいたしまして、この程度におきますが、しかし、今言われておりますように、よしんば日本防衛計画が従来の五カ年計画または二年計画によって進められておるといたしましても、いわゆる中共核実験をやる、そういう新たな事態が生じておる。従って、その新たな事態に対処するために、防衛力強化などについて話をするということで参っておるのでありますから、従って、今新聞紙上報道されておるような強い要請をすることは間違いがないと私は思うのです。これに対して、総理またはその担当の衝に当たる防衛庁長官が、あるいは外務大臣が、はっきりとした態度を持って臨まれなければ、ずるずるとアメリカ要請に引きずられて、アメリカのペースに引きずられて、そして事志と違った結果を招来することを非常におそれる。そのために私は真剣にこれを考えなければならぬと思って質問をしておるのです。ところが、答弁はいつも同じような答弁で、国民を納得させるような説得力のある御答弁をいただけないことを私はまことに遺憾に思います。どうか、今後とも、こういった問題については、もっと現実に即して、国民も納得のいくような御答弁を願いたいと思います。  次に、私は雪害対策につきまして二、三質問をいたしたいと思います。  まず、私は、このたびの豪雪にあたりまして、非常に多くの方々が被災され、人命を失われたことに対しまして、深く同情を申し上げるのであります。河野建設大臣は、この豪雪地帯おいでになって、再度困難を冒して調査をせられたのでありまして、このことにつきましては深く感謝をいたします。現在の雪害状況につきまして、どういう状況にありますか、お知らせを願いたいと思います。
  20. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、私、北陸三県、新潟を数日間歩いて参りましたが、現地で見聞いたしましたところによりまして特に注意をいたしたいと思いますことは、今回の雪が、従来例年降っておったところに降ったのではなくて、特異の現象として平坦地に多量の雪が降ったというところに、今回の被害があるように思うのでございます。それで、昔から雪の地帯には雪に備え備えをそれぞれの御家庭でも持っていらっしゃる。たとえば道路にしても、雪の地帯の家並みの込んだ町形をしているところは、比較的道路が広く、もしくは雪に対する備えを持っておるのでございますが、特に例をあげますと、新潟の場合、三条でございますとか、燕でございますとか、この地方一帯のところは、従来は一メートルとか一メートル半とかいう程度の雪が降っておりましたけれども、それが、今回は、その倍もしくは三倍もの雪が降ったのでございます。そのために、ここに非常に雪の被害が出てきておるのでありまして、そこに重点を置いてわれわれとしては対策を講じなければならぬということが一点。  次には、これは北陸三県、新潟においてもその例を見るのでございますが、従来農村地帯に主として雪が降っておりましたが、今回は、産業中小工業の近時にわかに発展いたしておりますところに雪が多量に降りまして、数日間交通途絶をいたしましたために、原材料の不足を告げておる、製品の搬出に困難をしておる、金融関係の取引に非常に支障を来たしておる、もしくは労務者の諸君が工場に行かれなくなっておるということのために、そこに相当の被害が及んでおる、これをどうするかという点にあろうと思います。もっとも、山間地におきましても例年よりも多少多い積雪量を見ておりますから、この方面に、今新聞等報道しておりますように、なだれ対策等も必要であることはもちろんでございますが、いずれにいたしましても、たとえば、新潟に参ります場合に、鉄道で参りまして、新潟小出辺までは、あの山岳地帯は列車はふだんのように比較的早く開通しております。それから高山線も開通しております。これらは、山岳地帯においては平年とそう大して変わりのない雪であって、むしろそれを越えてから平野部に入りまして雪が多いということでございますので、この方面について考えます場合に、地元の府県もしくは市町村長さんの御指導によりまして、食糧等については不安はございませんようでございます。その他日常の雑貨等についても、多少の値上がりはありますけれども、値上がりはあまり見ないようでございます。従って、生活は一応安定いたしておるように見受けております。なお今後も注意するようには努力いたしておりますが、何と申しましても、ただいま申し上げましたように、非常に多い降雪量で、二階の屋根に近い程度になっておりますところが見受けられますので、細い道においてはすみやかにこの除雪をいたしませんと、衛生方面において非常に今後問題が起こってくるのじゃなかろうかというような点、もしくは、商売が一切とまっておりますから、生活の不安感が加わってくるのじゃなかろうかという点等々、いろいろございますので、すみやかにこれらの除雪をする必要があるということを考えまして、特別に自衛隊等の出動を願いまして、これらの雪を除去するように指導いたしております。何にいたしましても、第一は雪をのけて交通、運輸を確保すること、第二は町中の雪を除いて衛生方面もしくは取引方面に協力すること、これを当面の課題といたして努力いたしておりますことに加えて、今後雪解けにあたってなだれもしくは水かさが増しましての被害等については、今後遅滞なく対策を講じて参りたいと考えております。  さらに農林関係におきましては、この多量の雪のために、第一は畜産関係において飼料もしくは畜産製品、たとえば牛乳の搬出に困難を来たしておるとか、豚の販売適期がきておるが売れないとかいうような問題についての施策を協力してやる必要があるだろう。鶏等についても相当の被害があるようでございます。これらをどうするかという問題について、順次補助をしていかなければならぬだろう、協力しなければならぬだろう。さらに果樹園等の被害が相当多いようでございます。これについても、雪解けを待って遅滞なく施策をする必要があるだろう。また苗しろ等がおくれるだろうという心配もしておるようでございますから、これらについても研究をいたしてこれを処理する。もしくは植林方面について非常な被害もあるようでございますから、雪解けを待って、この植えかえ等について考えなければならぬだろうというようなことがございますけれども、いずれにいたしましても農林関係につきましては、雪解けを待って遅滞なく各種の施策をするということが必要と考えております。  その他いろいろ各般にわたっておりますが、地元との連絡を緊密にして、そして遅滞なく施策をしてやりたいと考えております。  ただ一点特に考えられますことは、どの程度のことが補助の対象になるのか、どの程度まで国家として補助をするかということをすみやかにきめて、一つ地方の府県もしくは市町村長さんの行政に事欠かぬようにしてやることが必要であろうということで、せっかくこれも今農林省と自治省との間に御協議を願って、これが指導をすることにいたしております。  他は御質問によってお答えすることといたします。
  21. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 このたびの豪雪が異常なものであるということは、ただいまの報告によってわかったわけでありますが、しかし、交通が途絶をいたしまして十数日にもなる。その間にもっと早い除雪の方法がとれなかったものであるかどうか。聞くところによると、自衛隊の出動あるいは地方公共団体の活動等は非常に目ざましいものがあった。また国鉄職員等のごときは疲労こんぱいの状態にあった。こういうように報道をせられておるのでありますが、一体それらに出動を要請し、あるいは出動をした人員というのはどの程度のものを動員されたのか。一つ総務長官でもわかりましたら、報告を願いたいと思います。
  22. 徳安實藏

    徳安政府委員 今回の豪雪につきましては、最初各県からの報告をちょうだいいたしておりまして、だんだんと大へんだということがわかって参りましたのが二十五日ごろでございます。そこで先月の二十六日に、私の名前で各県知事に、中央に頼みたいようなこと等はすみやかに電報で通知されるように通知をいたしました。二十八日には政府の方で調査団を組織いたしまして、被害の最も多い各府県に調査団を派遣いたしました。二十九日には、とてもその調査団の報告で措置するような小さな問題ではないと考えましたので、閣議に報告いたしまして、非常災害対策本部を総理府に設置していただくことに御了承を得まして、直ちに中央防災会議を開いていただきまして、その処置をとり、そうして三十日には初会合をいたしまして、ただいま御報告になりました河野国務大臣が本部長となり、不肖私が副本部長となりまして、各県から要請して参りましたものをとりまとめて、各省に対してすみやかに臨機の措置をとられるように処置をいたしたのでございます。その後、本部長も福井、石川等の各県を巡視されましてお帰りになりますし、また政府から出しました調査団も帰って参りましたので、二日の日に第二回の会議を開きまして、現地における要請等をつまびらかに報告を受けまして、その処置に対しましては、各省庁に指示を与えました。さらにまた四日には新潟の方に本部長に行っていただきまして、昨晩お帰りになりました。本日第三回の会議を開きまして、その御報告に基づきまして所要の措置をとったわけでありますが、ただいまお話しになりました自衛隊の出動は、現在のところ約一万二千名の方々に御出動願いまして、除雪その他に万遺憾なきを期しておるわけでありますし、またこの上の要請がございますれば、いつでも出動できる態勢になっておるという報告を受けておりますので、各県知事から要請がありましたら、この上ともその希望に沿い得る状態でございます。  なお厚生関係でございますとか、農林関係あるいは運輸関係その他いろいろな役所に関する地方との関連の問題、補助の問題、国の負担の問題、こういう問題につきましては、すみやかに国の方針を決定することが必要だと考えまして、数日来からこの作業を進めておりますが、ここ二、三日のうちには大体のめどをつけまして、各県知事にそれぞれ通知をいたしまして、各県知事が安心して作業ができるように処置いたしたいと考えております。
  23. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私の申しておるのは、いわゆる自衛隊のみならず、各自治体、地方団体に対しても、それぞれ除雪のための非常動員をしたのではないかと思うのですが、これはただ自衛隊にのみおまかせになっていたのかどうか、その点について一つ明確にしてもらいたいと思います。
  24. 徳安實藏

    徳安政府委員 お答えいたします。鉄道路線に対しましては、鉄道がもっぱら除雪に努力いたしておるわけでありますが、おおよそ三分の二くらいは地方の労働力を動員しておるようでございます。各県の災害地の除雪等につきましては、最もひどいところだけ、あるいはまた幹線等につきまして自衛隊が出動いたしておりますので、その他のところにつきましては、やはり県知事の指導によりまして地方の労働力を動員いたしまして、除雪に努力しておるようでございます。
  25. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 自治省にお伺いいたしますが、こういう異常災害の場合に、自治省として、もちろん当局としてはそれは地方団体の自主性にあることだと言われるかもしれませんが、やはり中央官庁として、私は、地方の防災についてはそれぞれ適切な処置をされておると思うのですが、これは何もせずにおられたのですか、それともどういう処置をとられたのですか、一つお聞かせを願いたいと思います。
  26. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 自治省といたしましても、また国家公安委員長といたしましても、消防並びに警官隊を動員いたしまして、治安の維持あるいは災害の防止等に先頭を切りまして対策をやっておるほかに、自治省から、ただいま河野本部長が言われましたように、地方で災害にあって、どういうものが補助金の対象になるものであるか、どういうものがどういう形で助成されるのだろうかということを各府県とも非常に心配しております。出費が非常にかさみまして、その出費について、あとどういう処置がとられるかということを心配しておりますので、自治省から官房長並びに財政担当の課長を現地に派遣いたしまして、現地と相談しながら、どういうものについてはどういう処置を自治省として考えておるというふうに、実際的の打ち合わせをいたしております。
  27. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 総理にち伺いいたしますが、今度の豪雪災害はただ北陸地方だけにとどまっておりません。山陰道あるいは北九州等、非常に広範な地域にわたっておるのであります。これらの降雪地帯の経済活動が停止をしておるということは、日本の経済にとりましても、あるいはまたその豪雪地帯それ自体の生活にとりましても、経済にとりましてもきわめて重大なことであります。総理は、今次の雪害対策につきましてどういう基本的態度で処置をされようとしておりますか、一つそのお考えを聞かしていただきたいと思います。
  28. 池田清志

    池田国務大臣 御質問の点がはっきりいたしませんが、たとえば伊勢湾台風あるいはずっと前からの台風による民間の被害につきましての処置は御存じの通りでございます。ただ問題は、豪雪のための被害が普通の風水害と変わった点があります。そういう点につきましては、建設大臣あるいは自治大臣がお答えしたように、新しい事態につきましての態度につきましては、今後国、地方の負担等につきまして今検討をいたしておるのであります。
  29. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は、特に通産大臣にお伺いしますが、今次の豪雪地帯では、主として農業と、それから中小企業——いわゆる大規模の工場もありましょうが、これはきわめて少ないのでありまして、ほとんどが家内工業の地帯、いわゆる機織りを中心にしておるとか、あるいはまた零細な工場を営んで細々とやっておるような地帯であります。この地帯で経済活動がほとんど麻痺しておる。こういうことは、私は、中小企業にとりましては致命的なものだと思いますが、通産大臣、どういうふうに救済措置を講じようとしておられるのか、一つこれを明らかにしてもらいたいと思います。
  30. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほどちょっと申し落としましたが、これら産業の対策といたしましては、先ほど申し上げましたように、金融の方面からするものと、それから原材料の搬入、製品の処置というものに重点があると心得まして、新聞には、一般の人の動き、交通について慎重な報道をしておりますけれども、物の動きにつきましては、貨車の面につきましては相当に努力をして、これが杜絶期間は少なくなっております。極力原材料の搬入もしくは製品の搬出については努力をするということはしております。これについての不安は、今日は割合なくなっておると私は考えます。  ただ問題は、今お話しの通り、よって生じた損害もしくは取引の不円滑、そのために金融に及ぼす影響等でございますが、その点は、日本銀行の支店を中心にいたしまして、公社、公団の出張所もしくは地元の金融機関等の間に緊密な連絡をおとりいただくように、いささかあっせんもいたしまして、金融上には心配はない。手形の不渡り等につきましても問題が起こっていないということにいたしまして、資金等の手当については、十分とは申しかねますけれども、相当の被害があることを予知いたしまして、これらには十分金融をするようにということの指導をいたしております。また、中央からこれらに特別に融資することの送金等につきましてもいたしております。その点についてはある程度の手は打ってある、こういうことを御報告申し上げます。
  31. 福田一

    ○福田国務大臣 お説の通り北陸地方では、大企業はそうございませんが、全然ないわけではなく、大企業についても特に電力が、異常渇水をいたしておりますので、電力を使う工業においてはちょっと今心配な面もあります。しかし、これは電力融通等の方法によりまして遺憾のないように措置をいたしたいと存じておりますが、お説の通り、中小企業の問題は非常に重大でございます。これにつきましては、すでに本会議におきまして総理大臣からも御説明、御報告がございましたし、ただいままた河野建設大臣、いわゆる本部長の方からもお話がありましたので、大体御了承を願っておると思うのでありますが、ただこの際私は、一言御報告というか申し上げておきたいと思いますことは、北陸地方あるいは東北地方、場合によっては北海道も包含されるでありましょうが、こういうところの中小企業者というのは、販売業を営んでおる者は、雪によって非常に迷惑をするというか、非常な損失をこうむっておる。例年のことであります。ところが、特に今度のような豪雪になりますと、ほとんど商売はございません。ただ、鉄道が通っておりますような、特に北陸本線のような本線が通っておるところではどうにか少しはまだ仕事、商売があるのでありますが、県道になりますと、——私、福井県あたりは、自分関係もありますのでよく知っておりますけれども、県道等になるとほとんど開通しておらぬ。県道が動かないということは、もちろん市道あるいは町村道が動かないということになるのでありますから、商売は全く上がったりである。同時に、今お話がありましたような企業等におきましても、資材が入ってこない、燃料がない、あるいはまた工員が通勤できないというようなことから仕事がストップいたします。そしてそのために荷積みをしようと思ってもそれができない。また貨車繰りもうまくいかないということになりますと、特に輸出品等につきましては、これが船に間に合わない、神戸から船積みするとか、横浜から出すといっても、それに間に合わないということになりますと、今度はクレームがついてくるというようなことがありまして、非常にそういう面で企業関係でも心配をいたしておりますので、実はそういう面については、これは天災によるものであるという証明を現地の通産局長から出させるような工夫もいたしておるわけでありますが、私はこの機会に、そういう雪害というものと同時に、降雪地帯のいわゆる中小企業者あるいは農村関係等々が、雪害のないところとは非常な格差があるのだという考えをまず頭に入れて、今度のような災害についても特に一つ考慮をしていかなければならない、かように考えておる次第でございます。
  32. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 次に、私は運輸省にお伺いをいたしますが、今日鉄道の増強については、東海道新線のごとき世界に誇るスピードを持ったりっぱな鉄道を建設するのだというようなことで、莫大な金を使ってこれが完成を急がれておるのであります。そのやり方についてもいろいろ批判がありますが、しかし、私どもは鉄道の近代化五カ年計画とかいろいろ計画を聞かされておるのであります。しかし、今日一たび雪が降れば、たちまちにして十日も二十日も列車は満足に動かない、こういうような状態は国鉄の運営の根本を誤っておるのではないか。平生からあらゆる事態を想定してそれに対処でき得るような計画を進めておくことが必要であって、今雪が降ったからやれ除雪車が足りないの、やれどうだのと言ってみたところで、それは間に合わないことであります。国鉄の複線化等につきましても、何年計画あるいは何年計画と、たびたび計画は変更されて促進の方向にいっておるように見えるのですけれども、いまだこういった重要な幹線についても単線運転をやっておるというような始末である。一体これはどういうようにお考えになっておるのか。こういうようなことで何年計画、何年計画と言っても、これまたほんとうにその地方の人たちは信用しないことになる。のみならず、今日の国鉄のあり方については非常な批判を越えて非難する声すら上がっております。国鉄の防災非常対策は一体どういうようにしておられるのか、運輸省はどういう方針を持ってこれに対処しておられるのか、一つ詳細にお答え願いたいと思います。
  33. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 国鉄が今度の災害で防雪事業その他についてどういう対策をとり、今後どうするかということは、大体今度の雪というものが、国鉄は去る三十五年の大雪を対象にしてそれに対する防雪施設をいろいろやったのでございますが、それ以上の豪雪でございまして、まことに私どもは遺憾には存じますが、残念ながら、防雪その他について欠くるところがあったのではないかと思います。しかし、これは経済的に考えまして、何十年に一ぺん来るかわからぬものに、国鉄の許された財政でやるということはなかなか困難でございます。財政の許す範囲内におきまして、複線化を促進したり、いろいろな防雪あるいは防災に対する施設はやっているつもりでございます。  詳細は、国鉄総裁が来ておりますから、そちらから報告いたします。
  34. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 運輸大臣のただいまの答弁はまことに具体性を欠いたものであって、何ら答えになっていないと思うのです。総裁に一つお答えを願うのでありますが、あわせてもう一点御質問申し上げます。  国鉄は、いわゆる今日の経営の方針が、国鉄本来の使命を欠いてあまりにも独立採算制をしいられ過ぎていると私は思う。今運輸大臣の御答弁の中にありましたように、いわゆる口には公共団体であるとか、あるいは公益性のあるものであるとか、国鉄に限らず交通機関のすべてには、すべてそういう言葉が使われる。しかし、実質的には採算中心主義で、いわゆる公益中心主義にはなっていない。これがために国鉄の設備を近代化しないでそのままに置いている実情にあると私は思うのです。今日なお列車が満足に動かない。これは主として何に弊害があるかといえば、単線運転である。せめて主要な幹線だけでもやろうと思えば、あの東海道新線を建設されているごとくいつでもやれる。ところが、北陸やいわゆる日本海側におきましては、ほとんどが赤字路線である。そのために、そういったところに経費をつぎ込むことは、いわゆる採算に合わないとして、遅々としてその改良工事を進めていないのが現状ではないか。私は、こういうことでは、国鉄の使命は果たされないのみならず、後進地域における経済開発をおくらせ、都市に人口を集中させている一つの大きな原因だと思いますが、これについては総理大臣にも御答弁を願いたい。今日の現状についてどういう考えを持たれているか。また、将来の対策備えて国鉄当局はどういう考えを持っているのか。運輸大臣はどういうように政府部内においてもこのような事態を解決するために対処されているのか。私は三者からそれぞれ御答弁をいただきたいと思います。
  35. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。採算を無視してやれということは、日本の国有鉄道といたしましては、お説のように独立採算制になっているからしてなかなか困難でございます。しかし、予算の許す範囲内において予算をなるべくよけい出してもらうようにということで、国の財政に応じて、あなたのおっしゃったように、どの点で採算性と公益性を調和せしめるかということについては、私は始終研究し、国鉄にも指示しているのでございます。いまだ完全に参らないことは遺憾に存じますが、現状はさようの通りでございます。
  36. 十河信二

    ○十河説明員 お答え申し上げます。国鉄はもちろん公共機関として公共の使命を最も重く見ておるのであります。先ほどお話がありました複線化というようなことも、輸送力が不足しておるということは全線にわたって今痛感しておるところでありますが、一番輸送力の不足しておるところから順次やっていくということが、やはり公共性に沿うたやり方じゃないかと考えております。  それから企業性云々ということもよく言われることでありますが、国鉄のそういう複線にするとかあるいは電化をするとかという資金はどこから出てくるかと申しますと、国鉄の自己資金と借り入れ資金、この二つがあるのであります。自己資金がよけい出ないと、それだけ工事がおくれるのであります。われわれはできるだけ近代化をして収入を増加することをはかり、合理化をして経費を節約することをはかって、できるだけ自己資金をよけい出るようにいたしまして、それで借入金もできるだけ政府のお世話にあずかって、だんだんと増加いたして参っておるのであります。私が就任いたしましてからも、工事費が当初五百億円でありました。それが第一次の五カ年計画で倍になった。千億円になっております。それでもまだ足りませんので、四年で第一次五カ年計画を打ち切りまして、第二次五カ年計画を、三十六年からさらに倍加して二千億にしてもらって始めておるのでありますが、それでもなかなか行き届かないのでありまして、おくれておることはまことに遺憾でありますが、われわれといたしましては、そういうふうにでき得る限りの努力をいたしておるつもりでありますが、なお今後さらに一段と努力いたしたいと考えております。
  37. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今、総裁から答弁がありましたが、総理、これはどうお考えになりますか。もちろん私は誤解をされては困るのであります。いかなる企業といえども、全然その収入を度外視してやれなんというような乱暴なことを言っているのではありません。しかし私は、国鉄というものは国の要請を強く反映した公的機関である。従って、当然不備な点の改良もしくは建設、施設の増強については、もう少し国が投資をするという観念に立つべきではないと思うのであります。今日産投会計など特別の会計を設けて、他の産業に対しても大きな投資をされておるのであります。この投資の目標は誤っておるのじゃないか、国が投資をして、そして国鉄に運営をさせて、それで国鉄の運営上の収支をまかなわせる。もちろんその中には保守や修繕に至るまで私は見ろというのではございません。しかし、こういうような重大な、基本的な施設の拡充については、当然国が投資をしていくべき問題だと思うのです。それを単に運賃を引き上げて、そうして国鉄の収入を増して、あるいは国鉄自体の借入金でこれをまかなわせる。そういうようなことは、これは口に日本経済の動脈であるとか公共性であるとかいろいろのことを言いながら、すべての責任を大衆に転嫁しておるものである。政府として何らの責任も負うていないと言っても過言ではないと思うのでありますが、総理の見解はいかがですか。
  38. 池田清志

    池田国務大臣 お話の点は、私には了解できます。もちろん今国鉄の固定資産というものは二兆数千億円になっております。これは国民の税金からと言いますか、もう国債はほとんど償還しておりますが、これだけ出しているのを、今度新たにまた国民の税金からこれをやっていけということは、近代的企業経営ではないと私は思う。やはり今のような状態で、自己収入と、そして償還し得べき見通しのある借入金でやっていくのが本筋だと考えております。ただ新線その他初めから採算のつかぬものにつきましては、ある程度国庫が見ていくことも例外的措置としてやむを得ぬと思いますが、原則として、国民の税金で新線建設とかあるいは改良工事をやるということは企業自体の筋でないと考えております。
  39. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 総理は何か考え違いをされているのではないかと思うのです。私の言っているのは、何も総理が大げさに言われるように、すべてのものをそうしろと言っておるのではないのです。今日の雪害による雪害地帯の経済の停滞状態というものは何に原因をするかといえば、やはり国鉄の近代化、施設の強化というものがおくれている。従って、たとえば京浜地方において交通がとまったというのと、あるいは新潟——富山間において交通がとまったというのとでは、なるほどその経済の比重においては違いがあると思います。しかしながら、その地方をとってみますならば、動脈瀞ある国鉄が近代化がおくれているために被害をこうむったとすれば、これは日本経済においては私は大きな損失であると思うのだ。  総理にお伺いしますが、公益性とは一体どういうことなんですか。総理はどういうふうにお考えになっておるのです。国民の税金で国鉄の財産をふやすのはけしからぬとおっしゃるけれども、しかし、一たん国鉄がとまれば、全体の経済について非常に大きな損失を与えておるということは、これは今事実じゃありませんか。現在行なわれておるのではありませんか。そうすれば、ただ、利用者が金を出して国鉄の会計をそれによってまかなって、国、国民全体の者が利益をするその犠牲になる、利用する者だけはその犠牲になるというのは、これはどういうわけなんです。それではたして公共性と言えますか、総理のお考えを聞かしてもらいたい。
  40. 池田清志

    池田国務大臣 国全体を考えてやっておるのであります。今の豪雪地方の鉄道の改良にいたしましても、実は昭和三十二年からだったと思いますが、北陸地方複線の計画を立てまして、そして福井までは早くというのでやっておったのですが、いろんな国鉄の経理状況、賃金の値上がり等によりまして、あるいは三十二年に運賃の値上がりをいたしましたが、それで計画してある福井までの複線も非常におくれる、こういうことで、最近はトンネルもできてだんだん計画をしておりますが、やはりものには順序がございます。豪雪があったから、今までやっていかなかったのが悪いのだと言われるが、今までもやるように努力しておるのです。北陸線につきましては、三十二年から複線の計画を立ててやっておるわけであります。そうして東北地方の電化もいたしております。そこを今急に、ある特定の地に起こったから今までの計画は全部悪いのだというふうなことは、これはいかないので、そういう失敗の経験も頭に入れまして今後はやっていかなければなりませんが、根本的には、やはり利用者がそれを負担するということが、私は原則であると思います。ただ、新線その他初めから採算のつかぬというようなところにつきましては、特別の例は政府としても考えております。
  41. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 これは水かけ論とかのれんに腕押しとかいいますから、私はこれ以上言いませんけれども、それじゃ総理、なんですか、その利益というものは、直接その貨物を輸送してもらったり、あるいは乗せてもらっておる者だけが利益するとお考えになっているのですか。それらの機関を利用するものはもちろん利益を得る。しかし、それを利用するものがあることによって、全体の人々が利益をする。そうすれば、利益に対する報償分担は当然のことだと私は思う。あなたはそれをどうお考えになるのです。その点はっきり一つ聞かしてもらいたいと思います。誤解されちゃ困る。
  42. 池田清志

    池田国務大臣 直接利益を受ける人が分担する建前でございます。間接的に利益を受ける、すなわち、製造業者が製品を送るときには、製造業者が直接鉄道の利益を得る、しかし、そのときに製造業に働く人も利益を受けるんだから、運賃に対しての分を労務者が負担するということは、これは今の経済の建前からしてできないことだと思います。
  43. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 すぐに横へ横へそらして答弁をされているのですよ。私はそんなことを言っているんじゃないのです。総理のような頭のいい人が何ということを言うのですか。たとえば、ものを送ってこなかったら、百貨店でものを売れないでしょう。そうすると、ものを送ってくれるから、利益するんじゃないですか。ですから、国民全体の利益になるのじゃないですか。それを、ただものを運搬することを頼んだ者だけ、あるいは定期券を買うて通うておる者だけが利益するんだというあなたの考えは、よほど私はどうかしているんじゃないかと思うのですよ。そういう考え方でやられちゃ困りますよ。じゃ、何のために国鉄というものはあるのです。何のために公共性があるものと言えるのです。そう単純に利用する者だけが利益を得るんだというなら、何もそう公共性のあるものじゃないじゃないですか。一つそういう観念は改めてやってもらいたいと思うのです。大蔵大臣、これはどうお考えになりますか。
  44. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたの御質問総理答弁、何もすれ違っているわけではないと思いますが、現実的な問題を取り上げられて御質問をしておると思いますので、あなたの御質問の趣旨を要約して申し上げますと、国有鉄道は公共的使命に重点を置くべきである、その意味においては、独立採算制の建前であるけれども、政府はより重点的に財政支出や一般会計等から補てんをすべし、こういうふうなことであります。これは御承知通り政府企業には、道路のように無料公開の原則に立つものがあります。政府及び地方公共団体、すなわち、国民の税金でつくってこれを無料で国民に提供し、維持、修理まで国及び地方公共団体が行なうものもありますし、もう一つは、専売公社とかその他のような、財源を確保するためにやるものもありますし、その中間で、政府が公共支出によってすべてをまかなうものと、それから企業性がありますために、その中間に位するコーポレーション制度のような、現在の三公社五現業等はそういうものでありますが、国有鉄道、電電公社その他があるわけであります。でありますから、公共に重点を置くということに対しては、あなたと同じ考え政府は持っておるのでありまして、でありますから、日本国有鉄道は公共のためにこれを使うという、こういうふうに明らかに定義をいたしておりますが、明治初年から約九十年にわたる日本鉄道というものは、これはウエートを産業の開発、国土の開発というものに置いておりましたから、二兆円に近い非常に大きな国の投資が先行したわけであります。でありますが、戦後のように、日本の経済が非常に規模が大きくなって参りまして、鉄道の利用度というものも、経済採算として合うという範囲にだんだんと成長して参りましたので、現在コーポレーション制度で明らかに独立採算制という建前をとっておるわけですが、独立採算制でありますから政府はめんどうを見ないでいいなどということは考えておらないわけであります。でありますから、大きな国鉄に存する国の資産に対して税金も取っておりませんし、また、財政投融資の上で千数百億という大きな投資をいたしております。財政投融資の中の一割に近い金を入れておるのでありまして、国鉄が一番大口の貸出先であるということをもってしても、政府がいかに重点的に考えておるかということはおわかりになると思うのです。  もう一つは、新線の問題、総理がさっきお答えをいたしましたように、現在の国鉄の経営の内容で、これが国民要請にこたえていくような新線建設費は捻出できないということで、あらためて三十八年度の予算に鉄道整備公団をつくっておるのでありますから、採算に合わないもの、いわゆる公共の福祉を優先させなければならないものに対しては、明らかに明治初年からの政府考え方を貫いておるわけであります。また、今度の豪雪等に対して国鉄がやれないというのは、単線を複線化させないから、また電化をした施設に対して降雪対策施設を行なっておらないから、これらの問題に対しては当然国が負担すべきだという御議論でありますが、そういうものに対しては、随時財政投融資その他において政府は処置いたしておるのでありまして、総理お答えになったのも、一般民間企業と同じように運賃の面だけでまかなうというようなことを言っておるのではないのでありますから、その間の事情を十分御理解賜わりたいと思います。
  45. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 さらに、雪害対策についてお伺いをいたしますが、国鉄の物資の搬入搬出の途絶によりまして、地方の物価は非常な上昇を示しておるといわれます。事実はどうか知りませんが、たばこのごとき専売品ですら何倍かの値上がりをしておる。もちろんこれはやみだと思いますが、そういうような状態にあるといわれます。これは非常にむずかしい問題であります。しかしながら、やはり私は、これをそのままに放置しておくわけには参らない、一刻も早くやはり物資の搬入ということを第一に考えなくてはならぬと思います。物価の抑制対策について、一体どういう処置をおとりになっておるか、お聞かせを願いたいと思います。
  46. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまのたばこが云々の話は、どういうお調べか知りませんが、私、四県を回って、それぞれの関係官から、もしくは地元の団体あたりから聞いた話によりますと、物価はおおむね上がったもので三割程度でございます。生鮮食料品等についても同様でございます。ただし、特に不正な商人がございまして、特別の行為を行なった者に対しましては、一部取り調べと申しますか、検挙と申しますか、した事実は局地的にあるようでございますけれども、それは全くの例外中の例外でございまして、一般には生活上の不安ということは、全然私はないように調査をいたしております。
  47. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そこで、私はお尋ねいたしますが、今次の雪害につきましては、さきに質問をいたしましたように、きわめて大きいものがあります。過去の水害等によりまして被災いたしました地域については、これは昭和二十八年以来、いろいろ特別立法をいたしまして、高額補助の対象にいたしたわけであります。今度の雪害も、各所になだれが起きて、人命を失い、あるいは家を失い、豪雨と全く同じような被害を出しておると思います。そこで、これらの災害救助につきましては、幸いにして特別立法、基本法もあるわけでありますが、従来からせっかくこの高額補助の対象にいたしまして諸種の復旧工事が行なわれましても、大蔵省の査定によってまず削られる、工事が完成をいたしますと、今度は会計検査院がやってきてまたそれを削る、こういうわけで、そういう手続を経なければ最終的に補助金がもらえない。こういうようなことでつなぎ融資をしてもらう。ところが、それは無利子ではないのでありますから、従って、利息を払わなければならぬというような状態になる。そうすれば、せっかく高額補助をしたといっても、それは全く名目に終わってしまって、被災地には実際には非常に大きな借金が残るという結果になっております。ある地方においては、二十八年度の災害に対する跡始末もできないで、村じゅうが騒いでいるというような事態も起きておるのであります。私は、このような事態をなくすためには、敏速に事を処理しなければならぬと思いますが、これはどういうふうになさいますか、一つ考えを聞かしていただきたいと思います。
  48. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  災害につきましては、御承知通り、法律で三カ年間でおおむねこれを行なうことになっております。初年度三、次年度五、三年次目二ということで、過年災につきましては、昭和三十年以前は七、八年もかかったというような時期もありますが、法律制定後はおおむね三カ年間で処置をいたしておるわけであります。また、三カ年かかるということにつきましても、原形復旧の原則をとっておったわけでありますが、改良復旧ということに重点を置いて災害復旧を行なっておりますので、災害の復旧が終わった地方公共団体等の現状を見ますと、災害以前よりも十分の体制がとれておるということであります。なお、本格的工事の前には応急工事もありますし、緊急起工もありますので、応急の問題、緊急の問題に対しても対処いたしております。  それから、高率補助をとっておるけれども、大蔵省が査定をするということでありますが、大蔵省や会計検査院が実情をよく調査するということは、法律に基づいてやることでありまして、これは国民の税金を預かっておる立場としては、当然法律の命に従ってこれら工事の施行に対しては万全を期すべきであることは、言うを待たないわけであります。しかし、必要以上に大蔵省や会計検査院がうるさくいって、災害復旧のじゃまをしているという事実はございません。特に大蔵省がいっておりますのは、これは法律に基づいての基準を明らかにすることでありますし、また、災害便乗というような事件がありまして、国民の批判を受けるようなことがありましたので、国民の側に立っての立場で査定を行なっております。しかし、大蔵省が中に入ったために災害復旧がおくれるとか、合理的な改良復旧が行なわれないなどということは、あくまでも厳に戒めておりますし、大蔵省が入ってかえって災害復旧を進めろというような体制をとっておりますことだけは、御承知願いたいと思います。
  49. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は、別に攻撃したりあげ足をとったりというようなことは考えておりませんが、しかし、実際には、下部の方では大蔵大臣が言われるような工合になっていないのです。官庁の御都合によって事態が左右されている、こういう事態が多いのです。私は別に例をあげてそういうことは申しませんけれども、しかし、どうも機動性というか、融通性というか、そういうものがない。もちろん査定は厳密にやるべきです。便乗してよからぬ行為をやる者は断じて許せるものではない。たとえば、健全なものをこわしてまで災害におっかぶせるがごときことは断じて許さるべきものではない。従って、私は、そういう放慢なことをせよと言っておるのではない。しかし、官庁の御都合によって困窮している者が延々と日を延ばされるということは、せっかくの救助の意味がなくなる。従って、私は、迅速にこれをやるべきだ、もっと官庁は機動性を持ってやれ、こう思うのですが、これはいかがです。
  50. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたが、災害復旧につきましては、今度の豪雪の問題は、応急対策としては、河野本部長が申された通り、諸般の準備体制も行なっておりますが、これからの融雪災害に対してももちろん万全の体制をとっております。しかし、融雪災害時期の前のなだれの問題、それから気温の上昇による一部湛水排除というような問題が、当然市街地においても起こるわけでありますので、これらに対しての工事を早急に行なえるように、特別交付税の繰り上げ交付も行なっておりますし、きのうの新聞でも御承知通り、郵政省は、短期資金の地方公共団体に対する貸付も通告をいたしてございます。これらの問題に対して、まず応急に工事をしなければならない問題に対しては、政府も十分配慮をしておるので、地方公共団体も、政府との間に連絡がとれないからというようなことをもって地元住民に迷惑をかけないように、特に災害救助法の発動に対しても、厚生大臣との事前協議を求める必要はないというように前向きにやっておりますので、今度の豪雪に対して、政府が積極的に災害復旧その他の事態に対処いたしておることを申し上げておきます。
  51. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 農林大臣にお伺いしますが、今度の農業災害というものは、先ほど河野建設大臣が御報告になりましたように、養鶏、養豚及び果樹園の災害等、きわめて大きなものがあります。これについて農相はどういうふうに対策考えておられますか。
  52. 重政誠之

    ○重政国務大臣 お話の通りに、いわゆる豪雪地方、北陸三県及び新潟地方のみならず、非常に広く今度の雪害は及んでおると思います。豪雪地方に対しましては、先ほど河野本部長から御報告があり、対策の要領をお話になりました、あの通り考えておるわけであります。応急の問題としましては、これは大したことはありませんが、それでもやはり米を応急的にその方面に向けたのもあり、それから飼料でありますが、飼料は、富山あるいは新潟の食糧事務所にふすまの手持ちが相当ございますので、順次ふすまを放出いたしておるような状況であります。それからまた、野菜は、先ほど本部長のお話がありました通り、高山線を通じて名古屋から輸送いたしております。  それから除雪につきましては、各府県に相当程度、御承知のブルドーザー等を農林省が補助して持たしておりますが、そういうものを全部動員するような手配にいたしております。  それから雪が解けましてからの被害、融雪の被害が及ばないようにということで、あるいは排水溝を掘らすとか、いろいろそういう方面についても今から調査もし、指導もいたしておるというような状況であります。  それから金の面におきましては、農林漁業金融公庫から融資をせしめるとか、あるいはこれは被害がわかってからあとのことでありますが、天災融資法の発動等も考えておるわけであります。
  53. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 自治大臣にお伺いしますが、ただいま大蔵大臣の御答弁によりますと、地方交付金の繰り上げ交付によって当面をしのぐのだ、こういうようにおっしゃっておるわけでございますが、この豪雪によりまして、地方では自治体がいわゆる予算外に大きな負担を背負っておると思いますが、ただ交付金を繰り上げ交付をしたということだけでは、私はこれはまかない得ないと思いますが、自治大臣はどういう対策をとっておられますか。
  54. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 地方交付金とかの繰り上げ交付、あるいは特別交付金の増額とか、そういう問題は、今大蔵大臣が言った通りであります。この雪害で、地方の知事であるとか市町村長が今一番心配していることはどういうことかと申しますと、雪が解けてから視察に来られたり、調査に来られたのじゃ困るのだ、雪がうんと降っているうちに来てもらいたい、これは本音なんです。これはちょうど水害のときもそうでありますが、水が引いてしまってから見に行って、そんなに損害がないじゃないかと言ってみても、水がほんとうについているときのいろいろなその地方の苦労であるとか、あるいは出費であるとか、あるいは経済上の損害であるとかいうものは、水が引いてからではなかなかわからない。そこで、私どもといたしましてももちろんそうでありますが、豪雪のさなかにできるだけそういう問題についての調査あるいは研究、あるいは相談、すべてそういうことをやりたい、こう考えております。私は、政府の諸機関がすべて、自治省であるとか、建設省であるとか、農林省であるとか、大蔵省であるとかということの別なく、この災害の最中にすべての機関が現地に行って実情を把握する、そうしてそれに対する対策の遺憾なきを期するということが一番大切なことで、これが終わってから行ったのじゃ何にもならない、こういうことであります。
  55. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 意外に時間をとりましたが、総理にお伺いをしますが、これだけ大きな災害をこうむったのですが、これについては、私はなまやさしい小手先の措置ではできない相談だと思うのです。ですから、今補正予算が出されておりますが、この補正予算を組みかえて、緊急対策を盛り込んだ予算になさるお考えはないか、あるいはまた、それができないとするならば、第三次補正予算を組んで、地方公共団体、国鉄並びに中小企業、農業団体等、それぞれに対処する必要があると思いますが、総理のお考えはいかがですか。
  56. 池田清志

    池田国務大臣 まだ災害が起こりつつあり、そうしてその結果を見てからでないと御返事はできません。御承知通り、予備費もあることでございますから、いろいろな調査を待ってから決定すべき問題だと私は思います。
  57. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 大蔵大臣にお伺いいたしますが、一体その流用される予備費というのはどれだけあるのですか。
  58. 田中角榮

    田中国務大臣 現在、昭和三十七年度の予備費として残っておりますものは二十億弱でございますが、しかし、これでもってまかなえるかという次の質問があると思いますので、申し上げますと、先ほどから雪害に対して申し上げておりますのは、現在豪雪に対しては、交通の確保対策とか民生安定対策、それから金融面に対して、産業が萎靡沈滞しないように、また梗塞状態にあるものに対しては、救済融資を行なうというような面で対処していくべきものであります。これからの積雪その他において個人の住家が倒壊をしたり、その他の問題に対しましては、県と打ち合わせをしたり、地方公共団体でもって十分措置のできるものでございます。国が法律に基づいて補助をしなければならない、また行なわなければならない問題は、直轄工事、府県工事、市町村工事についてでございまして、これらの問題については、先ほど申し上げましたように、融雪時における災害が一番大きく懸念せらるるわけであります。この問題は、普通の状態からいいますと、三十八年度の予算で十分対処できるわけでございます。三十八年度の予備費は、御承知通り二百億組んでございますし、現在の豪雪の国が行なわなければならない財政的な措置に対しては、補正予算を組まずして現在の状態で対処し得る、こういうことを考えておるわけでございます。(「できない」と呼ぶ者あり)できない、できないと言うのでありますが、どういう状況で何に必要なのかということを前提にしなければいけない議論でありまして、私たちも、この豪雪を非常に深刻にあなたと同じく考えておるのでありまして、これに必要な財政的な事情に対しては対処でき得るという見通しに立っておるわけでございます。   〔発言する者あり〕
  59. 塚原俊郎

    塚原委員長 御静粛に願います。
  60. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 大蔵大臣、私の求めている答弁以上のことを、何もはたの人が言うたからというて答弁する必要はないのですよ。私が真剣に言っているのは、あなたのような考えではこの損害の償いはできぬのじゃないか。たとえば国鉄の損害でも——新聞紙上に報ずるところでありますから、私は国鉄当局から直接聞きますが、一体どれだけの収入減になったか、除雪に要した費用は一体どれだけか、今までのものでけっこうですから、一つ総裁からでもよいし、事務当局からでもよろしいが、それを明らかにしてもらいたいと思います。
  61. 十河信二

    ○十河説明員 まだよくはわかりませんが、きわめて大ざっぱな計算で、収入は約三十億減、それから支出は約十億増という程度考えておりますが、その収入減も、あるいは今後若干は補うことができる、今までとまっておった物資がよけい動くとか、人がよけい動くとかいうことで補い得るかもしれませんが、そこのところはまだはっきりわかりません。
  62. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 これは、本部長でありますから建設大臣、または総務長官からお答え願いたいと思いますが、今まで国道あるいは県道等の除雪に要した費用だけでも莫大なものだと思うのですけれども、一体どれだけの人員を動員して、どれだけの経費が要っておるのですか。お調べになったことがありますか。
  63. 河野一郎

    河野国務大臣 実は自治省と相談をいたしまして、国道につきましては建設省が、府県道につきましては府県が担当をして、それぞれの交通を確保することに総括的にいたしております。従って、国道の開設につきましては、地方建設局を当たらせまして、目下鋭意努力いたしておりますが、それらの数字については、まだ詳細のものは入手しておりません。
  64. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は、こういう除雪などの緊急処置をする場合には、少なくともどのくらいの人を動員するか、あるいはどれだけの機械力を他から導入していくか、その場当たりのことではなくて、やはりすみやかにちゃんと計画を立てさせて、そして遅滞なく経費を支出して当たるべきだと思うのです。そうしなければ、除雪作業あるいは融雪時における災害に対処することはできないと思うのですが、一体どういう工合にされているのですか。それは、やりっぱなしですか。
  65. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、今あなたのお話しになりましたよりも、もう少しきびしく命令しております。金に糸目はかけるな……。ところが、御承知通り、今の雪は、人の手をもってはどうにもなりません。全国的に手配をして、全部機械を導入いたしまして、機械の導入の可能な範囲においていたしております。これはどこからお調べいただきましても、可能な範囲のことは一切手を打ってやっております。そうしてこれと戦っておる現状でございます。人海戦術とおっしゃいますけれども、あの細い道に人を入れるにも限界がございます。しかも、地元が非常にやかましゅうございまして、雪をそのあたりのたんぼに捨てることを地元民がきらいます。従って、雪はただむやみに道路から近所のたんぼへ捨てるわけに参りませんので、これを運搬して川に捨てなければなりません。しかも、入れ得る人には限界があります。機械を使わなければどうにもなりません。従って、鉄道の開通、運搬を待って、全国的に機械を導入して、鋭意努力いたしておるのが現状でございまして、金が幾らかかるとかかからぬとかというようなことは考えずに、全力をあげて二車線を確保せいということを言っておりまして、幸いにして二車線の確保ができたが、ごく一部分において一車線の場所があるというのが現状でございます。
  66. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 努力は私多といたします。しかし、その裏づけとなる金の問題は、これは予備費で出すのだとか、まだ成立もしておらぬ来年度の予算の中から出すのだとか、そんなことで、一体地方は何をたよってこの復旧作業をやるのですか。政府が、河野建設大臣がおっしゃるように、総力を上げてやれ——河野建設大臣は、私どもの方の国道でも、ツルの一声でりっぱな道路を完成されたりして、非常に実行力があると思うのですけれども、肝心の予算はこうします、だから大いにやりなさいということでなくては、だれがやれますか。安心してやれないじゃありませんか。それにはどういう方法でこうしてやりますということをはっきりさせなければならぬと私は思う。これだけの災害があったのに、来年度の予算でどうのこうのという問題ではない。当然補正予算を組んで、金の支出はこれだけということが明確でなければできないと私は思うのです。一体どう考えておられますか。河野建設大臣がせっかく一生懸命になっているのに、その裏づけもしないという、一体そんなばかなことがありますか。
  67. 河野一郎

    河野国務大臣 数字を今聞きましたから申し上げます。除雪費が国道で一千万円、府県道が二億三千五百万円であります。これを主要な府県に交付して、それで不足をいたしますから、今二億一千万円さらに大蔵省の方に予備費の要求をいたして、これで一応当面は処理できるという所存で、金の面については心配ございません。
  68. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それではお伺いします。この二億三千五百万円というのは交付金ですか。どういう形ですか。
  69. 河野一郎

    河野国務大臣 除雪費の補助でございます。今の二億三千五百万円は除雪費の補助として各府県に交付いたします。それからさらに、政府の方は、一千万円ありますから、それを使ってやっており、足りない分、おおむね二億一千万円不足いたしますので、それを予備費として大蔵省の方に要求して、今交渉中でございます。
  70. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 この二億一千万円の不足というのは、今予備費が二十億あると言いましたが、しかし、ちゃんと組んでくれば、このほかに地方交付税の繰り上げ交付をやるでしょう。そうすると、そこのところへ穴があきますね。そうすれば、補正予算でこれを補ってやらなかったならば、地方財政は困ってしまうではありませんか。一体これはどうするのです。
  71. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 実は特別交付税が二百九十三億まだ私のところにある。そこで、その特別交付税の配分については、豪雪地帯を重点的に見るということで、幾ら要るかという報告を今取りまとめておる。ですから、そのほかに除雪の費用であるとか、あるいは屋根の雪おろしの費用であるとか、今度の豪雪に関する問題については、自治省として交付税、特別交付税で十分見ることができる、こういうことで報告をまとめております。要求については全部私の方で処置します。   〔発言する者あり〕
  72. 塚原俊郎

    塚原委員長 不規則発言は御遠慮願います。
  73. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私の言うのは、単にそういう被災地だけに交付することを目的にしたものではないと考えるのです。ですから、それを集中的に緊急措置として使われることはよいといたしましても、そうすれば、いわゆる他の都道府県に対する交付金というものは、これは減ってくる勘定になる。そうするとどうしても穴埋めをしなければならぬようになるのじゃないですか。それはどういうことになりますか。
  74. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 それは、今こういう特殊の場合でございますから、特殊の事態に対しては重点的にやります。その穴埋めにつきましては、十分ほかに迷惑のかからないように処置していく。(「幾ら使うのか」と呼び、その他発言する者あり)—————————     —————————————
  75. 塚原俊郎

    塚原委員長 御静粛に願います。
  76. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はさきにも総理にも言ったのですけれども、答弁一つ質問者に対してしてもらいたいのです。何かけんかを買っているようなことをやられるのは、私は大へん迷惑なんです、限られた時間なんですから。ですから、一つもっと——まじめにやっておられるからそういうことになるんでしょうけれども、もう少し質問者の言うことを聞いて、それに答えてもらいたい。私ははなはだ遺憾に思うのですが、これは、一つ不規則発言として取り消してもらいたいと思うのです。
  77. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 今質問者以外に対して申し上げたことは取り消します。
  78. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そこで私は、この融雪時における地すべり問題、なだれ問題ですね、これに対する被害等非常に大きい。従って、でき得れば、じゃなくて、今申したように財政というものは、やはり片一方の方へ押せば片一方の方にやはり不利な面が出る。従ってこれは早急に、本国会中に補正予算を組んで、そしてその出所を明確にすることが国民全体を納得させるゆえんでもあろうと思いますから、従って、この国の財政というものは、そういうように明確にしてもらいたいと私は思いますが、大蔵大臣、どうです。
  79. 田中角榮

    田中国務大臣 豪雪地帯に対する対策に対して、非常に御熱心のあまり強い御発言があると思いますし、また政府も、先ほどから河野本部長が答えておりますように、まじめな気持で、これが事態に対しては深刻な気持を前提にしてあらゆる角度からこれが対策に万全を期しておることは、一つ理解していただきたいと思います。  道路の問題に対して質問が集約いたしておりますが、積雪寒冷地における直轄国道及び主要な一、二級国道は国が行なうことになっております。これは法律の建前上そうでありますから、これに対しては、先ほどお答えいたしましたように、二億三千余万円の費用が計上せられておりますから、これを全額投入しておりますということをお答えいたしたわけでございます。しかし、これで足らない問題について補正を組まざるを得ないのじゃないかという問題だろうと思いますが、これに対して、現在残っております二十億の予備費の中で、必要があれば随時支出をいたして参ります。予備費がなくなったらどうなるかということでありますが、その問題に対しましては、今各地方団体から報告を求めておりまして、お互いに豪雪対策に対しては国も地方公共団体も一体になってやらなければならないのであって、間違いがあったり、また連絡不行き届きでもって住民に迷惑をかけてはならないので、早急に被害状況等をお伝えして政府に申し入れをするようにということで、現在府県側からの報告を取りまとめておる段階でございます。でありますから、これからの豪雪に対しては、前の例にもありますように、融雪災害が一番多いのと、それから冠水排除という問題があるのです。これは温度が三度も五度も上がりますと、まわりの雪は溶けなくて、町場の雪だけが溶けてしまって水を排除しなければならない、こういう問題もありますが、地方道の除雪及びこれらの事態に対するものは、地方公共団体が行なう建前になっております。この地方公共団体が行なうものに対しては、特別交付税がまだ二百数十億もあるのでありますから、これらの問題に対して十分対処して参りますということをお答えいたしておるわけでございます。  なお、先ほど総理お答えになりましたが、豪雪地帯状況に対しては現在報告聴取中でありますし、なお政府からも各種の調査団が出ておりますし、なおこれが対策に対しては、災害本部をつくって今検討いたしておるのでありますから、これらの状況と十分勘案しながら財政的な措置を考える、こんなふうに考えているわけであります。
  80. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど申し上げました数字がごちゃごちゃになっておりますから、正確に申し上げます。  直轄の国道に使いましたのが一千万円、補助として出しましたのは三千五百万円、さらに不足を推算いたしまして今予備費を申請いたしておりますものは二億一千万円、これはおおむね大蔵省と話がついておりますから、近日中にこれを配付するというつもりでおります。これに投入いたしております機械、除雪機は二百二十一台を動員して道路の除雪をやっております。以上であります。
  81. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はなぜこういうことを言っているかというと、大蔵大臣、この特別交付金というものは、しかし各府県ともにやはり項目の中に入れて、そして交付を予定しているものなんでしょう。それは地方団体が全然当てにしていない金ではないわけでしょう。それを今私言っているのです。それを災害地へ集中してやってしまったら、予定しているところは穴があいてくるじゃないですか。それをどういうふうになさるのか、こう言っているのですよ。それならやはり補正をし直さなければ、補正をしてやり直さなければ根拠がなくなるのではないですか、金がなくなるのではないですか。そうなれば、これは地方行政上から見て非常に大へんなことだと思うのですよ。大蔵省はああいうことを言うが、自治大臣、どうです。
  82. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 災害に対する交付金というものは、全国的に一応見てあるわけですけれども、今年度は非常に全国的に災害が少なかったわけです。そこで、金といたしましては十分見るだけの金があるわけでありまして、それがもし足りないということであれば、当然地方の財政の基準の需要額が増加するわけでありますから、それに並行しましてふやしていくということになっているわけでありますから、自治省に関する限りは御心配は要らない、こう思っております。
  83. 塚原俊郎

    塚原委員長 山口君に申し上げます。山口君、申し合わせの時間が経過いたしましたので、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  84. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は別に時間を余分にとってどうこうとも言うておるのではないのですよ。しかしこういう行き当たりばったりのことでは困りますよ。ですから、今言うように、特別交付金というものはこれは予備費でも何でもないのですよ。そうでしょう。予備費でも何でもないのですから、だから各自治体ともそれを当てにしているのですよ。必要経費として当てにしているのですよ。しかも年度末になってそれを削られたのでは、これは他の地方団体は非常な迷惑になるではありませんか。だからそういうことで一時をのがれるようなことを言っては私は困ると思う。だから金額が大きくなれば大きくなるほど問題は大きくなります。ですから私は当然これに対しては補正をする必要がある、こういうように言っているのです。あなたはどうなんですか、大蔵大臣、一つぴしゃっとこれははっきりしてもらわないと困りますよ。
  85. 田中角榮

    田中国務大臣 御熱心のあまり御心配をいただくことは、まことに政府としてもありがたいことでありますが、財政の問題は数字の問題でございますので、はっきり申し上げますと、特別交付税交付金は各府県に均等に割るものではありません。御承知通り、当該年度に起きました災害の事業費に対して、各府県の財政需要額が大きくなった場合、その二%に当たる金額を交付するということで一応概算で組んであるわけでございます。でありますから、この金額は現在においては二百九十三億円の残額、まだ夫交付分があるわけでありますが、これは各府県に均等に割り当てられるものであれば別でありますが、三十七年度の災害の状況によって計算をするのでございますが、御承知通り三十にしてもらうように委員長の方で配慮してもらいたいと思います。
  86. 塚原俊郎

    塚原委員長 以上で昭和三十八年度総予算に対する総括質疑は終了いたしました。  午後は一時三十分から再開し、昭和三十七年度第二次補正予算に対する質疑を行なうことといたします。  この際、暫時休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ————◇—————    午後一時四十三分開議
  87. 塚原俊郎

    塚原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)、昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)、昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三案を一括して議題とし、審査を行ないます。  提案の趣旨はすでに聴取いたしておりますので、直ちに質疑に入ります。  楯兼次郎君。
  88. 楯兼次郎

    ○楯委員 第二次補正について若干の御質疑をいたしたいと思います。  その前に、総理は最近人づくりということを言われ、これは政治の姿勢にもつながると思いますので、三点ばかり最近感じました点を申し上げまして、ぜひ一つ施政演説にのっとった態度で今後の政治を運営をしていただきたい、こう思いますので、三点ばかり最初質問をいたしたいと思います。  これは小さい問題かはしれませんが、二日か三日の新聞のワクの中を見ますると、官房長官は、急遽総理大臣の代理として石川県の県知事選挙の応援に行ってもらいたい、こういう要請を受けまして、官房長官は、男の女房はつらい、こう言いながら長ぐつを買いととのえまして応援に行かれた、こういうのを私ども新聞で承知をいたしております。ところが、われわれが不審に思いますのは、行きも帰りも自衛隊機で往復をなさっておる、こういう記事を見まして、どうも、池田さんが本会議や予算委員会で盛んに道徳教育を演説をされる、その足元からこれはちょっとくずれておるのじゃないか、こういうふうに考えますので、そういう事実があったかどうか、官房長官の御答弁をお願いしたいと思います。
  89. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 お答え申します。  今のは、一部事実でございますし、一部間違っております。私ども、総理からのお話は、志賀防衛長官が行かれます機会に石川県のお見舞に参って、そうしてそのついでに知事の応援もしてきてほしい、かようなお話で、志賀防衛庁長官と一緒に、確かに行きますときには自衛隊機で参りました。その日はずっと石川県庁その他を回りまして視察と調査をいたしております。翌日の日曜日でございましたが、午前から午後の一時半ごろまででございますが、それまでは知事の選挙の応援をいたしました。それから、帰りは、私どもは自衛隊機じゃございません。自分たちの手足でもって帰りましたような次第で、往復ともに自衛隊機を使ったというようなことはございません。
  90. 楯兼次郎

    ○楯委員 まあ、官房長官の釈明は、問題が問題ですから、私は別に深く追及をしようとは思いません。思いませんが、あなたが石川県へ行かれました行動も、これは選挙でありまするから、お前が質問をするなら、こういうこともあった、ああいうこともあったというので、私のところに、これをただしてもらいたい、こういうことはいかぬじゃないかという、相当な資料といいますか、ことずけが来ておるわけです。しかし、私はあなたの名誉のためにそこまでは申しませんが、官房長官の答弁はそれより仕方がないでしょう。ないでしょうけれども、自衛隊機に乗って急遽とにかく選挙運動に応援に行くというようなことは、何と弁解なされても、私は、国民の範たる座におられる人のすることではない、こう思うわけです。  この問題はこれでよろしいですが、次に、選挙に関係して総理大臣に一言お伺いをしたいと思いますが、これはこの国会の中ではあまり今まで議論をされておりませんが、簡潔に申しますると、地方選挙をぼつぼつやっておりまするし、これから統一選挙がございます。で、常に与党の方が気違いのようになって選挙運動中主張をされるのは、中央につながる知事でないと仕事ができぬということです。これが徹底的に宣伝をされておる。この前私の選挙区で県知事の選挙がありましたが、こういう宣伝が行なわれておったときに、私の近所に住んでおりました年寄りの人がこういうことを言うのです。中央につながらない県知事は仕事をやってもらえぬならば、税金をちっとはまけてくれるだろうか、仕事をやらぬというのでありますから、税金の方も多少割引をいたしましょうということをやってくれるんだろうか、こう山の中の老人が私に冗談を言いましたが、あのような宣伝が今後行なわれて参りますると、そういう風潮を国民の間に起こすようなおそれがある、こういうふうに思うわけです。だから、総理大臣にこの席ではっきり言っていただきたいと思いますが、一体、地方の県知事は、中央につながらなければ、自民党の公認の候補者でなければ仕事ができませんかどうですか、お答えをいただきたいと思います。
  91. 池田清志

    池田国務大臣 もう答えが済んでおるかしれませんが、私の気持を申し上げておきます。石川県並びに福井県、北陸豪雪に対しましては、私も心をくだいておったのであります。しこうして、官房長官、日曜日は防衛庁長官が行かれるから見舞に行ってきたらどうか、そして、往復とも防衛庁の飛行機では、これはやはり党人だから、もし選挙ということにあれをつけられるといかぬから、雪見舞に行くのだからそのときは防衛庁の飛行機で行ってもいいだろう、しかし、帰りは防衛庁のに乗っちゃいかぬぞということを特に厳命いたしましてやっておる。私はそれだけ心を使っておるのであります。その点は、やはり非常に苦労だったですけれども、私はそういうふうに言いつけまして、あなた方の非難のないように前もって注意しておるのであります。  それから、県知事選挙におきまして、私も応援に行ったときによくそういう質問を受けます。私はこう答えておる。やはり中央と地方とのつながりはあります、従って、自分らの知っている人になってもらった方がやりいい、ベターだ、こう言っておるのであります。悪いとは言っておりません。ベター、よりいいのだ、こう言っておるのです。もちろん、民主主義の時代で、自治体の組織でございますから、どなたを選ぼうと、これは県民の勝手でございます。ただ、聞かれれば、われわれ党人としては、わが党の人の方が、よく知っておりますし、心も通じておりますし、血が通っておりますから、ベターである、これははっきり言っております。
  92. 楯兼次郎

    ○楯委員 総理がそういうことを言われると、またこの問題で質問をしなければならぬわけですが、そうすると、よりベターだということは、対象は仕事をやってくれるやってくれないというところにかかっておるわけです。私は、大体国の財政の支出なんというものは法律に基づいて出ておると思うんですが、何か、よりベターに、たくさん知っておる人ならば金が出て仕事をやれるというような根拠があるのですか。あなたの今の御答弁だとそうとらざるを得ない。いわゆる現地で言っておるのは、仕事がやれるやれぬというところにかかっておるわけです。ただ、知っておる人ならば愉快に話ができる、知らない人は初対面のあいさつから話をしなければならないからぎごちないということじゃないのです。何か特例でもあるのですか、そういうことができるのですか。
  93. 池田清志

    池田国務大臣 法治国ですから、そういう知った人とか知らぬ人によって法を曲げることはできないことは当然のことです。ただ、いろいろなことをやる場合におきまして、こういうことがやりたい、ああいうことがやりたいというときに、法律の範囲内において、よく知り合っておれば、それはこの方がいいのじゃないかと、いろいろな相談もできる。それによって、県政に対してわれわれの経験・知識も参考に言い得られるわけです。それを、全然知らぬということになりますと、しゃくし定木になるということは、これは人情ではありますまいか。それは政党政治のいいところではありますまいか。私はそれを言っておるのであります。もちろん、仕事ができぬことはございません。交付税その他のことにつきましても、ここの道路は反対党だからつけぬとか、そんなことはあり得っこないのです。私は、ベターだというのは、そういう意味を言っておるのであります。
  94. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は、日本の政治の一番弊害というのは陳情政治だと思うんです。それが益になるのかならないのかは知りませんが、毎年新聞あるいは雑誌等で概算額を掲載をいたしておりますが、一年間に東京に陳情に来て浪費をする金が数千億円に上るだろう、こういうことが言われておるのです。だから、私は、この陳情政治をなくすることが、人づくりか金づくりか知りませんが、総理大臣の施政演説にのっとる政治家としてとるべき第一の問題だと思うんです。私は池田総理大臣のちょっと前にヨーロッパへ行ってきたわけですが、パリだとかロンドンというような首都の人口は、大体ヨーロッパのどこの首都でも人口の一割です。ところが、ボンへ行って、——これは総理大臣とわれわれでは格が違いますから、考えるところ、目に映るところ、違うでしょう。私がボンへ行きまして一番感銘を受けましたのは、一九四九年にボンに国会ができました。首都になりました。それから今日まで十四年たっておるわけですが、ボンの人口がわずかに三万人しか増加をしないということです。これはいろいろ議論があるかと思いますが、もし日本国会が新しいところに移転をしたという場合を考えますると、おそらく、一年間に何万、あるいは十四年間には何十万というように人口が拡大をしていくと思います、ところが、ボンは十四年間にわずかに三万人しかふえない。しかも、ケルンの飛行場は、日本のいなかの停車場くらいなものです。これは総理大臣が経験された通りです。だから、私は、おりたとたんに、一体ここは、国会があり大統領が住んでおられるのだが、なぜこんないなか町であり、人口がふえないのかと思って聞いてみた。陳情政治が全然ないというのです。だから、ヨーロッパの今日の繁栄あるいは議会制度においていいところは、陳情政治がないということ、地方分権が確立されておるということです。ここに日本の政治家の学ぶべき点があるのではないか、こうおりたとたんに私は感じたわけでありますが、これは、総理大臣も、そう言えばそうだというふうにお考えになっておると思うのですが、陳情政治があまりにも多過ぎる、こういう点についてどうお考えになりますか。
  95. 池田清志

    池田国務大臣 私は、民主政治におきましては、陳情請願の政治は、請願は私は当然のことだと思います。ただ、問題は、陳情の手段についての問題である。民主主義で陳情政治を私は否定するわけにはいかないと思います。ただ、手段の問題である。しこうして、ドイツは、御承知通り日本とは違いまして、各州が非常な独立的なあれを持っておりまして、日本のような、中央と地方とがほとんど一体になり、地方の財政というものはその八割あるいは県によっては九割近くも国のあれということはございません。国柄が違います。アメリカのような民主主義のところで陳情がないかといったら、これは日本と同じように、やはり代議士に対しての陳情は相当ある。イギリスなんかもそうでございます。だから、日本の東京の人口が多いから、これは陳情政治だと一がいに断ずることはいかないし、陳情が民主政治にあってはいけないということも、私はいかがかと思います。ただ、陳情の方法は、これはやはり改善しなければならぬということは、私も常日ごろから考えております。
  96. 楯兼次郎

    ○楯委員 まあ総理と私の問答ではそういう答弁しかいただけないと思うのですが、これは与野党を通じて真剣に考えていただかなければいかぬと思うのです。たとえば、夏災害が起きます。いなかの町村長は、わらじばきで、自分の町村の手当をするのに、夜も日もない。それにもかかわらず、まず陳情だ、こういうので、ネコの手も借りたいような仕事をほうって東京に陳情に来なければならぬ。こういう政治は、この予算委員会でただ楯を説得屈服せしめるための議論だけでは済まぬ問題だと私は思うのです。私の言っておるのはそういうことを言っておるのです。災害でネコの手も借りたい、そういうときに、陳情しなければだめじゃないかというので、それをほうっておいて東京に三日も四日も来ておる。こんな政治は正常な政治ではない、こういう点を私は言っておるわけでありますので、この点は、やりとりでなくて、将来真剣に池田総理大臣として考えていただきたいと思うのです。  そこで、いよいよ本題に入りますが、補正予算のまず最初に、三十七年度の自然増収は、これは十二月末までわかっておると思いますが、十二月末ですか、最近の自然増収の額、それから年度末の増収の見積もりをお聞かせ願いたいと思います。
  97. 田中角榮

    田中国務大臣 三十七年度の自然増収につきましては、過去何回か申し上げた通り、年度当初は千億前後の自然増収と見込まれておったわけでありますが、その後の徴税実績等を見まして、今度の第二次補正予算の財源も税を中心としての財源として組んだわけでありまして、総額千三百五十億、千三百億程度の自然増収が見込まれるというふうに考えております。
  98. 楯兼次郎

    ○楯委員 そういたしますと、補正予算を考えたのは一月の初めだと思うのですが、大体それ以後一−三月はこれ以上の増収は見込めない、大体第一次、第二次の千三百六十億円でピリオドが打たれる見積もりである、こういうことですか。
  99. 田中角榮

    田中国務大臣 十二月までは、九月決算の法人決算等を見まして、あまり増収を期待できないということで、千億ないし千二百億というふうに十二月ごろは申し上げておったわけでありますが、十二月から一月に対する徴税の実績を見まして現在の補正財源を計上いたしたわけでありますが、全部使い切ってしまうということではありませんが、いずれにしても、そう多額に、もう三百億も四百億もというような自然増収は期待できない。しかし、千三百六十億限度一ばいという考えではございません。
  100. 楯兼次郎

    ○楯委員 そこで、補正予算の作成は財政法二十九条に基づいて行なわれるわけですが、なるほど財政法は一応改正にはなりました。なりましたが、この財政法二十九条の精神というものを非常に踏みにじったのがこの第二次補正予算であるというふうに私どもは考えるわけです。これはちょっと本題からはずれるかもしれませんが、財政法二十九条に、「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」をするために補正予算を組む、こういうふうにありますが、一体、「予算作成後に生じた事由に基づき」という、この作成後というのは、第二次補正予算の場合は、三十七年度予算をさすのか、あるいは三十八年度予算案をさすのか、どちらに解釈をすればいいのですか。
  101. 田中角榮

    田中国務大臣 当然三十七年度予算作成後であります。
  102. 楯兼次郎

    ○楯委員 しかし、われわれが承知をしておるところでは、三十八年度の予算を組んでみたところが、産投会計が足りない、六百三十四億要る、一般会計の繰り入ればせいぜい見積もっても四百九十七億である、産投には自己資金が四十四億ある、従って、九十三億足らぬから、三十八年度の予算を作成したあとの必要によって第二次補正を組んだという要素がきわめて強いと思うのでありますが、この点は二十九条の精神に違反しておりませんか。
  103. 田中角榮

    田中国務大臣 財政法二十九条は、ただいま申された通り、予算編成後の特別の事由に基づいて組むものでありまして、三十七年度の予算編成後に生じた事由に基づいて第一次補正をお願いいたしたわけでございます。第一次補正後の事情に基づいて第二次補正をお願いをいたしておろわけでありまして、三十八年度の産投財源が不足であるからというような事由に基づいて組んだわけではありません。御承知通り、産投原資は三十七年度でもう使い切っておりますし、これからもまだ石炭、海運その他各産業の自由化対策や国内産業基盤の強化、国内均衡をはかるという立場から考えてみましても、当然産投原資が必要であるということは、もう一致した見方でありまして、これが三十八年、三十九年度にわたっての財源確保のため、三十七年度の第二次補正予算を提出いたしたわけであります。
  104. 楯兼次郎

    ○楯委員 田中大蔵大臣は非常に丁寧に答弁をされますが、私どもが一番疑義を持つのは、財政法の建前から言って、もし二十九条の移しかえという条項を適用するとしても、なぜ必要額九十三億円にとどめなかったのか、これが正しい財政法の運用である、こういうふうに私どもは理解をしておるのでありますが、事のついでに三百五十億繰り入れる、こういうことは、それは違法ではないかもしれません。違法ではないかもしれませんけれども、こういうやり方をやっておれば、これは何も産投会計、財投ばかりじゃないと思うのです。公共事業費でも、あるいは文教費でも、一般会計の費用だって、幾らでもできるじゃありませんか。一体、今三十七年度のこの補正で財投とあるいは一般会計というものが混同をされ同一視されて編成されておる、こういうところにわれわれ野党としては一番の疑義を持つわけです。従って、なぜ必要額九十三億円のみにとどめなかったか、なぜ、三百五十億も事のついでにぶち込んでしまえ、こういうやり方をやられたのか、お聞きをしたいと思います。
  105. 田中角榮

    田中国務大臣 第二次補正予算で産投原資に三百五十億円の繰り入れを行ない、このうちの大部分は後年度に使用するということについて、事のついでだというようなお話でございますが、そのような表面から見た理由だけではなく、先ほども申し上げておるように、臨時国会は一体何のための国会であったかというと、石炭国会であったわけであります。日本が今いわゆる自由化に対応して国際競争力をつけながら産業基盤を強化し、輸出第一主義をとっておるということは、これは国の大きな命題としてお互い考えておるわけであります。でありますので、産業基盤の強化国民に直接影響のある各種の事業を行なうために産投原資が今よりもより将来において必要であることは、これは言うを待たないわけであります。三十七年度中においても、また三十八年においても産投原資をほとんど使い切っておりますので、これが税収の見込みの中でまかなえるものでありますので、これを産投原資に繰り入れたのでありまして、政府の行なわなければならない政策の重点的な施行を行なうため、必要やむを得ざる経費として繰り入れたわけであります。
  106. 楯兼次郎

    ○楯委員 それならば、端的にお聞きをいたしますが、そういう考え方なら、先ほど申し上げましたように、公共事業費でも、その他の一般会計の費用でも、できるじゃないですか。その区別を将来どうされるか。
  107. 田中角榮

    田中国務大臣 一般会計は、御承知通り、単年度主義をとっておりますから、継続費制度及び繰り越し明許制度等を除いて後年度に対しての予算を組むべきでないことは、これは財政法の精神通りであります。財政投融資は、たびたび申し上げておりますように、日本の産業政策その他最も重要な施策を行なうに際して、一般会計の支出及び財政投融資の支出、それから民間資金等の相互活用をはかって、よりよい環境をつくっていくためにあるものでありまして、その意味において、財政投融資の活用が弾力的であることを国会でもお認めになっておるとともに、産投会計というのは、非常に弾力的な運用をしなければなりませんし、特に、今産業政策その他に対しては一ときの猶予もできない事態もありますので、それに対応し、一般会計の第二次補正を組むに当たって、これが重要財源を産投に繰り入れる措置をお願いしておるわけであります。
  108. 楯兼次郎

    ○楯委員 ついでにこれをお伺いしておきたいと思いますが、この第二次補正の地方交付税交付金ですが、二百三十七億円、これは年内に地方公共団体に交付されるのが当然だと思うし、そうしなければならぬと思うのですが、この点はどうですか。
  109. 田中角榮

    田中国務大臣 第二次補正に組んでおりますもの二百三十余億円ございますが、この一部は三十八年度に繰り越す予定でございます。細部については政府委員をして答えせしめます。
  110. 石野信一

    ○石野政府委員 お答えいたします。  ただいまの問題、自治省の方と今打ち合わせ中でございますが、一応百二十二億を繰り越す予定にいたしております。そういう考え方で話をいたしております。
  111. 楯兼次郎

    ○楯委員 次にお伺いをいたしますが、これは、私がこの委員会で声を大きくして言わなくても、もう日本国民、マスコミ全部が心配をしておることでありますが、一体、三十八年度の予算を目一ぱいに組んで、これはあなた本会議答弁でもおっしゃいましたが、先ほど議論になりました今の北陸の災害の救済金、補助金、あるいはないことを望むのでありますが、また夏季における不慮の災害等が起きた場合の財源の捻出を一体どうするつもりであるか、どこで出されるつもりであるか、お聞きしたいと思います。
  112. 田中角榮

    田中国務大臣 三十八年度は、誠意をもって、三十八年度の歳入見積もり一ばいという考え方で予算を編成いたしたわけでありますが、しかし、これらの施策が適切に行なわれることによって、産業規模強化し、経済も上向きになるわけでありますので、今の段階で考えますと、災害その他必要な事由がある場合に適当な財政措置ができないというふうには考えておりません。ただ、三十八年度予算の審議中でありますし、また、三十八年度予算にも二百億の予備費が計上せられておりますが、その予備費を上回るような歳出を必要とする場合を仮定しての御質問でありますが、こういう事態が起きた場合、当然それにぶつかったときに対処をしていくということでありまして、現在、補正の必要があった場合という仮定に対しては、お答えは遠慮したいと思います。
  113. 楯兼次郎

    ○楯委員 そこで、今大蔵大臣はわかったようなわからぬような答弁をされて、あるような、ないような答弁をされておりますが、ここで国民が一番不可解に思っておりますのが、三十八年度予算編成のいわゆる隠し財源というやつです。第一次には一応あれだけのワクの予算が決定になりましたが、その後交渉を与党の諸君と繰り返しておるうちに約八百億円増額になった。ところが、反対に予算のワクは五十八億円減ってきた。国民は、一体これは何をやっておるのかわからないというのが率直な気持です。われわれは、この委員会の席上であなた方が説明をされれば、ああそうか、こういうことになるだろうと思いますが、国民ひとしく、この財源というものは一体どこに隠されておったのだろうか、これを不審に思っている。ワクがへこんで要求が通る、八百億もふくらんだ、これを一つ何も知らない人もよくわかるように解明をしていただきたいと思います。
  114. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えをいたします。  御承知通り、財政法に基づいて予算は政府の責任において組むわけでありまして、国会に対しましては、最終的に閣議で決定をした予算案そのものについて御審議をわずらわしたい、こういうふうに原則的に考えるわけであります。それで、世に明らかにせられた概算決定閣議の数字が変わらないで、その後内容が変わっておるじゃないかというような御質問でございますが、これは内閣で最終決定をするまでの間の事象でございまして、(楯委員「必要のない経費を盛っておるのじゃないか」と呼ぶ)——いや、必要のない経費を盛っておるとか、そういう意味ではございませんで、いずれにしても、内閣が国会に責任を負わなければならないのは、最終閣議で決定をした予算でございますので、その過程における問題に対しては、大蔵省で出しておるものがすべて皆様のお耳に入っておらない部面もあるようでございますので、その問題に対しては、私が今申し上げたようなことで御了解を賜わりたいと存じます。  それから、第二問目に何か——五十八億余円の総額が減った部分はどうしたかというのでありますが、これは、御承知通り、石油関税の戻税問題がございましたので、これと、それから、地方税である電気ガス税の平年度分約六十億円、一%該当額を国で補てんをいたしましたが、これが振りかえは十一カ月分を見ておりますので、これら合わせて五十八億円が当然歳入から減りましたので、総額から削減をいたしたわけでございます。
  115. 楯兼次郎

    ○楯委員 田中さん、答弁をしながら何だかお忘れになったように、わからないですよ。あなたの今の御答弁を聞きましても、ここにこういうやつがあったからこう出した、こうおっしゃらぬから、わからない。わからないが、再度質問をしましても、おそらく大同小異だと思うのです。  そこで、それはそれといたしまして、それなら、三十八年度の災害が起きたときに、一体財源がどこから出るのか。この間私は寝ころがってラジオの討論会を聞いておりましたら、官房長官、お手数ですが、あなたとわが党の成田書記長とが討論会をやっておった。成田書記長が、災害が起きたら一体どこから金が出るかと言ったら、御心配は要りません、ちゃんと政府には金がございます、とあなたは答弁されておるのですよ。国民はこれを全部聞いておる。官房長官はどこに隠し財源を持っておるのか、国民全部聞いておりますから、ここで解明をしていただきたいと思います。
  116. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 ただいまのお話でございますが、もう全部使い切ってしまっているじゃないかというようなお話に対しまして、まだまだ先の話でありますから、今そう全部なくなしてしまってというようなことで不安を与えては困りましょうというような受け答えをしたことは事実でございます。御承知通り、来年度の予算の中に二百億の予備費もございますし、また、先ほど大蔵大臣が御答弁になりましたように、将来景気の上昇も考え得ることでございます。そう全部はたききりになって、何が起こっても大へんだというような不安感は与えない方がいいじゃございませんか、こういう趣旨のお話を申しました。
  117. 楯兼次郎

    ○楯委員 そうすると、あるかないか、出るか出ないかわからないが、今ここでそういう不慮の災害にあったら金がないというようなことを言っておいたのでは国民が動揺するので、そこはうまく言っておいた、こういうことなんですね。そうでしょう。今、あなた、財源がどこにあるということをおっしゃらないから、そういうつもりで言ったわけですね。
  118. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 少なくとも二百億の予備費はございます。
  119. 楯兼次郎

    ○楯委員 社会党の書記長が財源がないじゃないかということを発言する上からは、予備費の二百億があるということを知らずに言っておるはずがないじゃないですか。しかし、官房長官がその場の思いつきでおっしゃったことを、財政当局の責任者でもないのに、これ以上追及しても仕方ありませんので、次に進みます。  大体、大かたの意見としては、三十八年度の隠し財源は、税収の過少見積もりにあるということを言っておるのです。その過少見積もりの対象は何か。源泉所得税であり、消費税である。こういうことが言われておるのでありますが、これは事務当局でもよろしい、過去数年やって参りました消費税あるいは源泉所得税の出し方、計算のやり方について、手控えがあるのかないのか、その通りにやってきておるのかどうか、この点を承りたいと思います。
  120. 田中角榮

    田中国務大臣 技術的な問題に対しては事務当局をしてお答えせしめますが、今までの自然増収がありましたというのは、御承知通り三十五年、六年、七年ということで、そのうち五年、六年が非常に大幅な増収があったわけであります。これは御承知昭和二十一年からずっと政府の経済見通しと実際の経済成長実績を比べますと、一〇%見ておったものが一四%になり一五%になったというような、政府が当初、また国民自体も当初考え及ばなかったような経済成長が行なわれました結果、三十五、六、両年度において大幅増収があったわけでありまして、今年度に対しては、これだけの予算を組んでも景気は下向きじゃないかという議論もこの委員会においてもなされておるのでありますし、政府は何らかの施策をして刺激対策をとらなければいかないじゃないかという議論もあるような情勢でありますので、三十八年度は、三十五年、六年の実績に比べて大幅な自然増収を見込む、またその逆に税収見積もりを過少に見積もっておるというような事実はございません。
  121. 松井直行

    ○松井説明員 お答え申し上げます。  まず最初に、税の過少見積もりが予算編成の途中であったじゃないかというお話でございますが、現行法によります三十八年度の税収見込み——税制改正をやります前でございますが、三千百三十一億という数字は、当初はじいたままでございまして、それには変更ございません。それが第一点でございます。  それから、主要税目についてどういうふうにしてはじくかというお話でございますが、骨子だけを申し上げたいと思います。まず源泉所得税につきましては、給与につきまして、雇用、賃金、それから給与以外のもの、たとえば利子、配当等につきまして、経済企画庁で見込みました経済見通しの上の数字がございます。むろんこれは会計年度でございまして、税収ベースと合っておりません。特に法人税等におきましては、これを税収ベースに直す必要がございますが、閣議決定をいたしましたその数字に基づき、かつ過去の税収の実績を勘案いたしまして、たとえば雇用等につきましては、三十七年度の当初予算では一〇四%見込んでおりましたが、三十七年度の実行見込みと言いますか、本年度は五・七になりそうだ。これに対しまして来年度の見込みは、経済企画庁の資料等を勘案いたしまして四・五とはじく。かくのごとくいたしまして、雇用、賃金、給与以外の利子、配当。それから申告所得税におきましては、営業、農業、その他事業と、おのおの本年度の実行見込みに対する三十八年度の伸びを基礎にいたしましてはじいてございます。法人税も、生産、物価を中心にいたしまして、経済企画庁が見込みました計数を基礎にいたしまして、さらに税法上の税収のズレという特殊事情を勘案いたしまして、これを税収ベースに直したものでございます。それから、消費税等につきましては、酒は、過去の消費の伸び、来年度の生産計画、それから分配、国民所得の増等を勘案いたしまして、各酒ごとに来度度の伸びを見込んでおります。それから砂糖消費税につきましては、これは需要見込み数量をはじき、かつ輸入量も見込んでおります。それから物品税につきましては、これは現在までの生産、それから消費の実態と、来年度におきましては、国民の消費支出の伸び、それから各業界、特に物品税の大宗を占めておりますテレビジョン、冷蔵庫、乗用車あるいは扇風機等につきましては、各業者の製造見込み——むろん業界におきましても、消費者の需要見込みというものによりまして、そういう生産見込みをつくっておるわけでございますが、そういうものも参考にいたしまして来年度の課税額の伸びを算定してはじいております。
  122. 楯兼次郎

    ○楯委員 経済企画庁長官にお伺いしたいと思いますが、成長率六%の積算といったところで、これはどうせ見通しは合いませんから、六%とした要因と、個人消費一〇%の中には賃金の上昇は何%含まれておるのか、これだけをお聞きしたいと思います。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 逆にお答えを申し上げた方がよろしいかもしれません。個人消費につきましては、大体雇用の伸びはかなり的確に予想ができるわけでありまして、四%余りと考えております。それから給与そのものの伸びは、これはたしか三十八年度の本予算の御審議をこの委員会でなされます冒頭に政府委員から説明を申し上げたと思いますが、六%ないし七%、従って、合わせて給与所得全体といたしましては一〇%をやや上回るというふうに考えております。その際、消費性向は前年度と大体同じというふうに考えておるわけでございます。そのような一つ一つの項目につきまして、先般お手元に差し上げました経済運営の基本的態度、その基礎資料の八ページのところに、一つ一つの項目につきまして大体前年度に対する伸びを出しておりますが、これを合わせまして見通しを立てたわけでございます。
  124. 楯兼次郎

    ○楯委員 次にお聞きしたいのは、こういう予算の編成で私ども一番心配いたしますのは、三十九年度の財源がどうなるのか、これはよく新聞等にも、三十八年度の予算は種まき予算だとか、調査費予算とかいうように言われておる。三十九年度からいよいよ芽を出してくるわけですね。だから非常に金が要る。たとえばあとでお聞きをしたいと思いますが、地主報償、未亡人給付金、これはどうやって支給されるか知りませんが、各種公団の発足、自由化に対するてこ入れ、それから防衛援助費の削減、これは一月十八日の記者会見で、総理大臣が、年間百八十億円ぐらいの金は、そんなものは平気だ、こうはっきり言われておりますが、援助費の削減、それから午前中の山口委員質問に対して、NATO並み自衛力増強ということはとても考えられないが、漸増はやります、こういうことを総理大臣がおっしゃっておりました。二、三あげましても、ものすごい金が要る。新規財源が要る。それからこの間のこの予算委員会の席上で、大蔵大臣は、三十九年度に大幅減税を行なうためにこそ三十八年度は目一ぱいの予算を組んだのだ、こういうことをおっしゃいましたね。大みえを切られましたね。大幅減税がプラスをされてくると私は思う。この財源を一体どうされるか、私どもは非常に心配をいたしておりますが、こういう点はどうですか。これは重要ですから、総理大臣に一つお答え願いたいと思います。
  125. 池田清志

    池田国務大臣 まず財政担当の大蔵大臣から答えるのが筋だと思います。足らなければ私が答えます。
  126. 田中角榮

    田中国務大臣 三十九年度の予算編成に対して大へんな御心配をいただいてありがたいことでございますが、しかし、前回も申し上げております通り、三十九年度、四十年度、四十一年度と、将来の健全な日本の経済発展をはかるために、いろいろな御議論はありましたが、三十八年度予算を組んだわけであります。その意味で、不必要な予算を組んだのではなく、目一ぱい組んだというけれども、一面においては、石炭対策その他産業対策に対しても、まだ足らないじゃないかといわれる面もあるわけでありまして、自由化を前にし、関税引き下げ、その他海外から押し寄せる波を受けながら、国際経済社会の一員として立ち上がっていくために、最小やむを得ざるものは当然予算措置をしなければならないわけでありまして、政府は、その意味において、三十八年度の予算は、誠意を持ってあらゆる事態を検討してこれに対応する予算を組んだわけでありますので、この予算の執行を適正に行なうことによって、しかも加えて、一面において非常に積極的だと言われておる財政投融資、なおあわせて民間資金との合理的な調和、活用をはかっていくために、経済は正常に長期安定的な方向をたどっていくという考えでありますので、私は、三十九年度も引き続いて健全財政主義を堅持しながら、所要の予算は組んでいかなければならぬし、また組み得るものと考えておるわけであります。  なお、三十八年度に種をまいたものが三十九年度でもって一ぺんに芽を出すようなお話でありますが、これらは、いつも申し上げておりますように、国民各位の意向も十分しんしゃくをしながら、しかも財政の許す範囲内という前提を持っておりますし、三十八年度に計上した新規施策は、すべて三十九年度単年度で終わるものではないのでありまして、これが重点的な年割りに対しては当然国会の審議も経るわけでありますので、三十八年度に引き続き健全財政を堅持しながら、三十九年度、四十年度の予算も組んで参れるという考えでございます。
  127. 楯兼次郎

    ○楯委員 財政法の二十九条の改正によって、今後は従来のような余剰金の保有ということはなくなってくるだろうと思うのです。というのは、剰余金が出る、自然増収が出る、先食い先食いといく。簡単に言うと、将来は予算の編成の慣習というものが変わってくるように考えるわけです。その場合私どもが心配をいたしますのは、財政法六条にありまする剰余金二分の一の国債償還の問題です。国債整理基金特別会計というのは、私も二、三日資料を見たのですが、少しもわからぬ。わからぬので、非常にじみな、つまらぬ問題かもしれませんが、ここでお伺いをしたいと思いますが、三十九年度剰余金がほとんど出ない場合には、三十九年度の国債の償還というものはどうされるのか。ほうっておくわけにはいかぬだろうと思う。これを一つお答えを願いたいと思います。
  128. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。三十九年度の剰余金が出ない場合はというような御発言でありましたが、三十八年度だと思います。
  129. 楯兼次郎

    ○楯委員 三十七年度です。
  130. 田中角榮

    田中国務大臣 三十七年度は剰余金がないじゃないか、全額使い切ってしまったので、というお話でございますが、国債償還は、御承知通り、財政の状況を見ながら償還をしていっておるわけでありまして、大体三十八年、三十九年、四十年度と三カ年ぐらいを見て参りますと、年間五百億、三百億、二百億というような状態で四十年までの償還が予定せられるわけでありますが、御承知の三十六年度の剰余金の二分の一、千六、七十億でございますか、繰り入れてございますし、後年度に当然このうち五百億以上が繰り越されるわけでありますので、国債の償還財源に事を欠くというようなことは全然今考えられません。
  131. 楯兼次郎

    ○楯委員 三十九年度の国債償還の予定は、政府資料によると大体六百八十二億、それからIMFの借り入れ返済があるわけですが、これは金額が出ておりません。だから、合計すると一体幾らか、事務当局に一つお答えを願いたい。それで、それだけの合計額を三十九年度にはたして返す能力があるのかどうか。
  132. 田中角榮

    田中国務大臣 政府委員をしてお答えせしめます。
  133. 稲益繁

    稲益政府委員 お手元にお配りしてございます資料は、御要求が国債の満期額をお尋ねでございました。この満期額というのは、必ずしもその満期額をそのまま償還するわけではございませんで、一番大きな違いは、日本銀行が持っております国債、これは従来ともに借りかえて参っております。従いまして、お手元にございます三十九年度の六百八十二億の満期額、この中にはそういった日銀の国債で借りかえますものが四百九十五億ございます。従いまして、そういう満期のものがそのまま償還ということではございませんで、逆にただいま御指摘ございましたようなIMFの交付国債、こういったものは満期ということはございませんで、要求に応じて国債を償還するわけであります。こういったものが別にございます。従いまして、三十九年度としては、現在私どもが予定いたしておりますのは約三百億程度の償還、かように考えております。
  134. 楯兼次郎

    ○楯委員 今、日銀保有の国債は借りかえる、こうおっしゃる。これは新しい公債発行じゃないですか。従来政府の資料を見ますると、大体日銀保有は全額借りかえですね。そして市銀保有は大体三分の二ぐらい借りかえておる。私は、これは違法じゃないかもしれませんけれども、新しい公債発行だと思うのです。当然償還期間のきたものを無条件に借りかえておる。こういう点は、大蔵大臣どう思われますか。
  135. 池田清志

    池田国務大臣 こまかい問題ですから、私答えます。また大きい問題でございますから。  日本の金融正常化で一番やりにくい点は、日本に国債が少ないということでございます。日本に国債や社債が少ないということが、日本の国の金融正常化に一番やりにくい点である。それだから日銀が社債や国債を持つことが少ない。従って銀行の手形だけにたよっておる。どこを見ましても、アメリカ国民所得の五千五百億ドルに対しまして、国債は三千億ドルをこえておる、七割を占めております。イギリスはやはり国民所得の五割増しぐらいになっておる。日本国民所得十六、七兆円というのに、国債は四、五千億円しかございません。世界に例がない。だから非常にやりにくいのでございます。そこでまた、財政法について、これは私見をもっていたしますれば、前年度剰余金を翌々年度に国債の償還に充てるという浜口時代のあの減債基金制度が日本にいいか悪いかという問題を検討するときがきておるのじゃないか。たとえば、早い話が前年度剰余金が二千億もあったというときには、今度は三十八年度で千二百億円国債整理基金へ入れるわけです。これがいい姿でございましょうか。国債整理基金特別会計へ入れまして、そして整理基金に充てるのですが、国債の利子といったらなんぼでございますか。千二、三百億円新たに入れ、前年度繰り越しが相当ありますが、利払いは内国債、外国債を通じて百億程度じゃないですか。こんな国は世界にない。それで私は、全部変えようとは思いませんが、今三十九年度に国債整理基金へ入れるべき前年度剰余金がないといって心配することは、私は財政の全体と経済の動きを知らざる議論じゃないかと思います。あえて私は申し上げますが、日本の国債整理基金というものは相当たくさんあります。それからまた御質問の借りかえ、借りかえをやるというのは新規発行じゃないか、この議論はさきの国会でもございました。こういうことは、私は、国債発行論が今ぼつぼつ出ておるときに、ここに金があるからといって、日銀の持っている三百億、四百億をすぐ借りかえちゃいかぬという議論は起こらぬと思う。国債発行論というものは、新たに国債を造出することについての是非論です。新たに国債を発行することの是非論につきましては、ここ数年来国債を発行すべきであるという議論が出ておる。こういうことを考えてみますと、三十七年度の剰余金を使ったから、三十九年度の国債の償還に非常に困るとか、あるいは三十九年度の国債を借りかえちゃいかぬとかいう議論は、私には耳に入らない。  そこで、私ははっきり申し上げますが、今の減債基金の制度というものについて検討を要する必要がありましょう。そうしてまた借りかえをするということも、私は借りかえするのが当然であって、これは新規発行ではないと考えております。そうしてやはり政府の発行ということは、問題のなには、国債が日本に少ないこと、社債が少ないということがオーバー・ローンあるいは金融の正常化に非常に害になっている。従って、昨年の一月に公社債信託ができたときに、公社債信託の取り扱い機関を設け、日銀が楽に自由に国債や社債を、一般銀行の手形を受け入れずに、社債を受け入れるようにすることがインフレを防止し金融の正常化のゆえんである。だから、御質問の点とわれわれの考える財政金融政策とは、だいぶん離れておると思っております。
  136. 楯兼次郎

    ○楯委員 この議論は平行線でしょう。しかし総理の話を聞いておりますると、われわれの方が混乱してしまうのです。あなたの本会議やあるいは予算委員会の話を聞いておると、多少の公債発行何ものぞ、礼賛論のようにとれる。ところが今度、それでは来年度公債発行せざるを得ぬだろうと言えば、そんなことはいたしませんと言う。一体どっちが真意なんですか。一方では公債礼賛を唱え、一方ではそういう発行はいたしません、そんなことはいたしません。じゃ、どっちをわれわれは総理の本意として受け取ればいいんですか。あなた、発行いたしませんと再三言っておられるでしょう。一方では、そんなものは何だ、公債ぐらい持ったところで、諸外国と比べてどうだ。一体どっちが本意なんですか。議論のしょうがないじゃないですか。
  137. 池田清志

    池田国務大臣 どっちも真理なんです。国債の発行をしなくても今までやってこれたし、三十九年度も国債の発行をせずにやっていけましょう、こう言っておる。しかし、国債を非常にきらうということは、今の世界の財政のやり方としてこれは少し古いのだ、古いんです。しかも日本は、先ほど申し上げましたように、よその国よりも非常に国債の額が少ない。あまりに国債を発行しちゃいかぬというんで、社会資本がおくれがちであった。これをわれわれは反省しなければならぬ。国債の発行即これがインフレになるかという議論は、もう五、六年前で、国債を発行したからすぐ不健全だという古い考え方は改めなければいかぬ。ことに日本では国債や社債の発行高が少な過ぎるということは、もうだれが考えてもわかることです。だから、アメリカなんかにおきましては、過去七年くらい、当初予算では黒字で、結果は赤字になっております。一九五九年だけ国債を発行せずに済んでおりますが、多いときには百億ドル以上の国債を発行しております。もう七、八年のうちで一年を除いて全部赤字で、国債を発行している。イギリスなんかでもやはりそうやっております。それを、いつまでも国債発行はすぐインフレだというようなことじゃ、社会資本がおくれて、盛り上がる国民の力をセーブできぬ。今までは経済の成長率でそれをやってきました。来年もやっていくつもりでございますが、もしそれ、必要な資金であって、インフレにならざる限りにおいては、国債の発行も私はあってしかるべきだ。要は、健全な日本経済力の伸展ということが主でございまして、国債を発行するか、しないかというのは、その一部の方法論だけであるということを私は申し上げております。
  138. 楯兼次郎

    ○楯委員 われわれは今総理大臣と金融論をやっておるわけじゃないんです。三十九年度に今のやり方をやっていけば、公債を発行せざるを得ぬだろう、こういうおそれを抱いておるわけです。そのときに、あなたが一方では、いや発行しません、一方ではそんなもの発行したっていいじゃないか、こういう議論では、われわれ議員として困る。それじゃ具体的に言いますが、三十九年度は発行しますか、しませんか。
  139. 池田清志

    池田国務大臣 今のところは発行せぬつもりでございます。しかし、非常に社会資本がおくれ、その他必要な経費が要ったときに、国債発行をしませんと言ったから、日本の国はどうなっても、どんな迷惑があっても国債発行しないというような議論は立ちません。こういうことでございまして、これは今まで言っておる通りでございます。国債発行を罪悪とお考えなさるな。しかし、国債発行をせずに今までやってきて、これだけのことをやったのは国民の努力と財政経済政策が当を得た、こう言っておるだけであります。
  140. 楯兼次郎

    ○楯委員 借りかえを私はいかぬとかいいとか言っておるのじゃないのです。聞いておるだけです。ところが、古いのも程度があると思うのです。私どもの聞いておりますのには、戦争前のものがある。借入金の中には、臨時軍事費の特別会計からの分が四百億ある、こういうことを聞いておるのです。だから、戦争中の国債の借りかえの利率は、一体どういうように書きかえるのか。臨軍費の引き継ぎの借入金はいつ返済するのか。そんなことにとらわれる必要はない、そんなものは持っておったって平気じゃないか。これは戦争の残滓、亡霊を国債整理基金が背負って予算を審議しておるのですよ。古いのにも程度があると思うが、この点どうですか。
  141. 池田清志

    池田国務大臣 借りかえのときには、原則として前の金利でいっておると思います。そうしてそれが甲号五分利であろうが、いろんな、昭和の初めごろの国債であろうが、あるいは臨軍費であろうが、金に違いはないのであります。それが臨軍費だから早くやれとか、その前の金だからおそくてもいいとか、金融財政というものは、そういうものじゃございません。感情でいくべきじゃなく、実質でいくべきであります。
  142. 楯兼次郎

    ○楯委員 公債発行しても、直ちにインフレではない、こう総理はおっしゃいます。私どもは、すぐインフレがくるとは思いませんけれども、政府の保証債ですね。保証債の極端な増額がやはりインフレの素地をつくるものじゃないか、こういうおそれを抱くわけです。これは流通市場があって、いろいろな金利体系が調整をされて、流通市場が確立されればわかりません。しかし、現在のように、政府保証債を発行して、日銀引き受け、こういうことになったら、これは直ちにインフレがくるとは言えませんけれども、インフレの素地をつくるものである、こういうふうに私は考えます。これは財政法五条の公債と同じ性質のものじゃないですか。間接的公債発行じゃないですか、政府保証債の増額は。
  143. 池田清志

    池田国務大臣 お話の通りで、一般会計からは出しておりませんが、政府保証債というものは、経済的には国債発行と似たあれがあるのであります。ただ、直接でないだけでありまして、金融的には似たところがございます。しこうして、先ほど申し上げましたごとく、日本には公債とか政府保証債、金融債あるいは一般社債が少な過ぎる。そこで、日銀の貸し出しを見ましても一兆二千億か一兆三千億というもので、ほとんど買いオペをいたしましても千億か千五百億、よその国の中央銀行とは違うのです。一般の社債やあるいは政府保証債が日銀の担保貸しで悪くて、銀行の引き受けた手形がいいんだとは限りますまい。そこで私は、先ほど申し上げましたように、今後公社債の流通機構を設け、これを拡大して、それの働きによって、今後あるかもわからない国債あるいは当然なければならない社債、金融債等の流通をよくして、インフレにはならないように、日銀の直接の引き受けにならないように、こういうことを私は考えておるのであります。
  144. 楯兼次郎

    ○楯委員 政府のお出しになった資料に、三十八年度財政資金対民間収支は、平均して三千七百五十億円の散布超過である。こういうことが載っておるわけです。これは前年度の見通しからいくと七倍ほど増額になっておるのですが、この三千七百五十億円の散布超過というのは、これはインフレ傾向ではないですか。
  145. 池田清志

    池田国務大臣 三十六年度中をごらん下さいましたら、三十六年度は三千数百億の引き揚げ超過になっておったと思います。この原因は主として輸入超過によるものでございます。外貨の関係が主たる問題でございます。しこうして三十七年度におきましては、ただいまのところ相当散布超過になる見込みでございます。これだってインフレ傾向とは言えません。おおむねそれは十八億八千万ドルに外貨がふえておる。十五億足らずから三億なんぼふえたということなんかも原因しております。だから私は、政府関係の散超、引き揚げ超過によって、すぐそれがインフレとかなんとかいうことにつながるものではないと思います。しかし、総体にして経済の規模が大きくなれば、ある程度の散超、ある程度の引き揚げ超過というようなことが起こることはやむを得ない。これは金融の買いオペその他の方法で是正していくのが普通のやり方でございます。
  146. 楯兼次郎

    ○楯委員 時間を食いますし、あと私は二つばかり問題を持っておりますので、早く進みたいと思いますが、買いオペに関連をしましてお尋ねをします。  日銀券の発行限度は、法律を見ますと、現在大蔵大臣の決定になっております。一体この最高の発行限度の基準というものは何によって決定になるのですか。
  147. 池田清志

    池田国務大臣 経済の状況、その他日銀券の過去の発行状況から見まして、一応大蔵大臣が日銀総裁と相談してきめることになっておるのであります。  これは余談かと思いますが、実は去年のきように比べて、正確に言うと、おとといでございます、二日前の去年と今年と比べますと、貸し出しは千億ばかり減っております。しかし、日銀券は二千億ばかりふえております。これは、一兆四千億の日銀券が適正かどうかということになりますと、私は去年なんか一兆二千億という日銀券が少な過ぎる。フランスやイタリアがこのごろ非常に栄えておりますが、これは国民所得の一八・七%を占めております。日本国民所得が十六兆円といっているのに、一兆四千億ということになりますと、列国に比べましても少し少な過ぎる。日銀券の発行は多いと心配する人がありますが、私は少なくても、多いことはないと思っております。しかしてこの点は、今までの状況を見てから発行限度をきめるのです。しかし、これは簡単にすぐきめられるものでございます。
  148. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は限度の基準を聞いておるわけですね。むずかしいには違いないでしょう。しかし、何か最高の基準がなければこれは野放しではないですか。信頼に足る大蔵大臣でありますから、いいようなものの、これは野放しではないですか。大蔵大臣の決定するその基準は何ですか。——総理大臣、待って下さい。あなたはすぐ何かというと、最近はフランス、イタリアのことをおっしゃいますが、われわれは金や外貨が基本になっておると思うのです。また、そうしなければならぬと思うのです。ところが、もう時間がないので政府の方から答弁していただきませんが、一体日本の金の保有と、今あなたのおっしゃるフランス、イタリア、ヨーロッパの金の保有はどうですか。小松君の質問のとき、金なんか少なくても大したことはないとおっしゃいますが、べらぼうに違いますよ。こういう国と直ちに日本の状態と比較するということは、根底が誤っておるような気がするのです。金は非常に少ないのですね。日本はおそらく三億ドルでしょう。ヨーロッパ各国は十倍くらいあるのじゃないですか。何かの基準がなければならぬと私は思うのです。何が基準ですか。こまかいことは要りません。一つ簡単に説明を願いたいと思います、大蔵大臣。
  149. 池田清志

    池田国務大臣 通貨の発行限度というのは、基準は、先ほど申し上げましたように、金融の情勢、経済の動き、過去の日銀券の発行高等を参考にいたしましてきめるのでございます。法律にこういうふうなことできめると書いておりません。情勢を見ながらきめることになっておるのでございます。  それから日本の金の保有高、すなわち貿易額に比例しての外貨の保有高ということになりますと、イギリスと日本は大体似ております。フランスはちょっと今好景気でいいようでございますので、日本よりちょっと上のようでございます。ただ御質問の点は、外貨十八億八千万ドルのうち金が三億ドルくらいしかないじゃないかということですが、これは実際少ない。少ないということは、やはりユーザンスの関係等々がございまして、ドル預けあるいは最近ではポンド預けもしておりますが、これはいつでも金にかわるべきものです。かえていこうと考えてはおりますが、やはり急に日本が金にかえ出すということになりますと、国際金融市場にいろいろな影響をいたしますので、徐々に適当な機会にふやしていこうと考えておるのであります。
  150. 楯兼次郎

    ○楯委員 御返事がございませんから、あとで個人で聞きます。先を急ぎますから次に飛んでいきたいと思います。  ここでわれわれがふに落ちないことがございますが、今財投の問題に入ってきましたので、財投を一つお聞きしたいと思います。去年の国会で、ガリオアの返済金は運用資金をもって処置できると再三、再四総理大臣、大蔵大臣から聞いておりました。ところが、今度の予算書を見ますると、百五十八億円ことしから年々ガリオアの返済をやらなくちゃならぬ。そのために金が足らなくなった。それで三百五十億円入れてしまえ、こういうことになったのだろうと思うのです。これはこの前のガリオア返済の予算論議と大きな食い違いがあると思うのですが、この点はどうですか。運用資金だけで返済できる、国民から二重取りはしない、こうおっしゃったはずです。この点どうです。
  151. 田中角榮

    田中国務大臣 産投会計法改正案の御審議の過程において申し上げたことと全然変わっておりません。そのときも申し上げましたが、対日援助見返り資金の総資産から生ずる運用益をもって産投会計から返済するということが対米債務返済の要件になっておるわけですが、現在開発銀行その他からの納付金が、他の政策において一部減るということは考えられますが、これは全然別な政策的要因に基づいて減ったのでありまして、明らかに見返り資金特別会計から引き継ぎました総資産は変わらないわけであります。それの運用は依然運用益を生んでおるのでありまして、当時の御返事と何ら変わっておりません。しかも海運その他の産業政策を法律できめられた場合、開銀の納付金が減るじゃないかというような御議論が起こるかもしれませんが、これに対しては、一時的でありますが、政府から交付するということになっておりますので、依然として前回答弁申し上げた通りで、対米債務は返済できるわけであります。
  152. 楯兼次郎

    ○楯委員 今大蔵大臣は開発銀行に非常に期待を持っておるようでありますが、開発銀行は一体どういうことになるのか、そんな運用資金をとって返済するなんてことできますか。ことしから海運利子徴収猶予による海運納付金百十八億のたな上げでしょう。それから開銀の使命目的というのは、日本の基幹産業の発展というところにあるのだろうと思うのですが、今日の状態では、まるでこれは政府の不況産業の融資代理業じゃないですか。私はそうだと思うのです。開発銀行の、海運がいつも問題になりますが、一つこれは答弁していただきたいと思いますが、海運の延滞利子ですね。これはたしか補助金適正法第十九条によって、延滞利子は日歩三銭とることになっておるのです。一体延滞金手数料というものはとったことがありますか。これはもしとれない場合にはどういう罰則がありますか。
  153. 田中角榮

    田中国務大臣 開銀内部の問題でありますので、技術的の問題に対しては政府委員をして答弁させます。
  154. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 お答え申し上げます。  海運関係に対する開銀の貸付のうちで、元本の償還について内入れの猶予をいたしておるものが相当ございます。内入れの猶予をいたしました分につきましては、利息の延滞加算金というものは徴収をいたしておりません。
  155. 楯兼次郎

    ○楯委員 それから開銀が復金融資を引き継いだ残高が八百億あるということを聞いておりますが、これがどう処理されるのか、復金の引き継ぎ八百億の処理方法を教えて下さい。
  156. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 お答えいたします。  これにつきましては、債務者の状況を見まして健全な回収をはかるということで、管理、回収に努力をいたすということでやっております。
  157. 楯兼次郎

    ○楯委員 海運と石炭の最近における貸付残高と回収計画実績を簡単に御答弁願います。
  158. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 お答えいたします。  海運関係につきましては、三十七年度において二百十八億円貸し出すことにいたしております。さらに三十八年度におきましては二百三十億円の計画でございます。  なお、これに対しまして、先ほどお話がございましたが、利息の延滞状況でございますが、海運向けのいわゆる加算金をとられております利息の延滞額といたしましては、比較的軽少でございまして、三十七年九月末現在におきまして九千四百万円程度でございます。
  159. 楯兼次郎

    ○楯委員 次に、国鉄の補正が出ておりますので、二、三お聞きをしたいと思います。  第一次で債務負担行為が百二十三億、二次で百六十一億が補正になっておりますが、完成はいろいろ取りざたされておりますが、これは新幹線の補正ですね。新幹線は今日の段階ではいつ完成をする見込みか、お聞かせを願いたいと思います。
  160. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。  大体昭和三十九年十月を完成目途にして、金額は五割近くの増額をいたしましたが、完成年度は大体予定通りにつくっております。
  161. 楯兼次郎

    ○楯委員 この新幹線の当初計画は千九百七十二億円ですね。ところが、今運輸大臣がおっしゃいました増加額が九百五十四億円、しかし、これはあまりにも違い過ぎるじゃないですか。これだけ五割以上追加をしなければ完成をしないということは、当初の計画があまり金額を大きく見積もると賛成が得られないというので、過小見積もりをしたのか、あるいは池田内閣の物価倍増計画による所産であるか、これはどっちかしかないと思うのです。どっちなんですか。
  162. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 それは、初めの計画が、いろいろな事情によりまして、たとえば地方公共団体がルートについてどう直してもらいたいとか、あるいは都内の線をこういうように直してもらいたいとか、主として設計変更によるものが一つ、それからその次は、地価の値上がりによるものが一つ、それから労銀その他建築資材の高騰等々によりまして増加いたしたのでありまして、初めの見積もりが過少であっのでもなく、ただいま申しましたように、やむを得ざる予想以外の工事をやったためにふえたと私は考えております。
  163. 楯兼次郎

    ○楯委員 今運輸大臣の答弁では、手直しをした、物価が上がった、土地が上がったとおっしゃいますが、それは計画当初、当然このような莫大な費用を使って建設をされる大事業ですから、それは相当詳細に検討をして織り込み済みでなくちゃいかぬと思うのです。五割も当初計画から上回るなんということは、何としてもわれわれは納得できないのです。用地の値上がりとおっしゃいますが、用地は政府の資料によると四倍でしょう。しかも、この四倍の用地費は、千九百七十二億円の全体の工事費の予算に占める割合は小さいのです。九百五十四億円ですよ。五割上がっておるのですよ。私は、当初の計画が非常にずさんであるか、意識的に過小見積もりをして工事にかかった、幾ら好意的に考えてもこう思えるのです。そこで、心配をいたしますのは、新幹線の補正は一次、二次と出て参りますが、同じように並行してやっておりまする五カ年計画も、当然今運輸大臣がおっしゃるような要因があるならば、相当大幅に上がって増加額が必要になるので、補正予算についてこなければならぬと思います。ところが、新幹線の方は補正をやってもらわぬことには完成ができない、五カ年計画の方はそういうものが頭を出さぬということは、ローカル線は、東海道線以外はおくれたっていいじゃないか、こういう結論になると思うのですが、この点はどうですか。
  164. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。  そういうような見方もあるかもわかりませんが、五カ年計画については、大体新幹線ほど主要都市を通っておらぬものですから、いろいろな点において大体予定の通りの予算でいっておるものと私は思っております。
  165. 楯兼次郎

    ○楯委員 そのいっておるものと思考するでは、私は納得できません。はっきりして下さい。
  166. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 詳細を国鉄の経理局長に説明させます。私はさように考えております。
  167. 十河信二

    ○十河説明員 お答えいたします。  ただいま大臣から申し上げましたように、現在線の用地の値上がりは新幹線ほど多くはない。それから現在線の設計変更は、これも新幹線ほど多くありませんが、現在線の改良費もやはり増額を必要とするのでございます。新幹線ほどではありませんが、増額を必要とするのであります。ただいま大臣がお答えになったのは、三十八年度においては新幹線の方が工事の最盛期になり出す、それで、新幹線は今お話しのように巨額の投資をするのであります。これをできるだけ早く完成せしめることは、国の経済からいっても、また輸送の必要度からいっても重要じゃないか、こう考えまして、三十八年度は現在の線路の改良費は増しませんが、新幹線の方に全部振り向けたということでありまして、現在線の方も増額を必要とすることはあるのであります。今の大臣のお話もそういう意味だと思いますから、そのことをどうぞ御了承をお願いいたします。
  168. 楯兼次郎

    ○楯委員 どういう弁明をされようと、今国鉄の仕事というのは新幹線に全勢力をあげておると思うのです。だからよその、たとえばローカル線といいますか、新幹線以外の五カ年計画というのは、等閑視をされておると思う。これはいなめないと思います。  そこで、私が一番心配をいたしますのは、新東海道線を三十九年度までにやらなくちゃいかぬというので、全勢力をあげる、そのしわ寄せが人件費まで、職員まで削減をして金をつくらなければいかぬ。それから一番輸送機関として力を入れなくてはならない保安設備にしわ寄せしてきておる。そういうところを仕事をやらずにおって、改良をせずにおって、その金を新幹線の方に回す。簡単に申し上げますと、そういうことを私は一番心配をしておるわけです。たとえば早く申し上げますと、運転保安設備はほんとうに旧態依然です。それからその旧態依然の運転保安設備を辛うじて人力によってささえておるわけでありますが、その人もできるだけ削減をしておる。たとえば三河島事故が起きました直前に運転車掌を廃止してしまった。そして、数字が少し違うかもしれませんけれども、千二百名生み出しておる。だからある人によっては、運転車掌が乗っておったならば、あの三河島事故は防げたであろう、こう言う人すらあるわけです。運転車掌の廃止、それから今交通事故といえば、踏切事故が一番多いわけです。ところが、踏切警手を過去五年間に、私の調べたところでは、六百五十一名も減らしておるのです。これは時代逆行でしょう。それから線路工手を、何か当局の資料によりますと、数千名削減をしようとしておる。これはまさに時代逆行だと思うのです。だから管理者としては、そのようなことはしたくないけれども、新幹線を一日も早く建設をしなければならないという要請から、人まで削って、運転保安設備までおくらして、そうして金を投入しておるというのが、私は、今日の偽らざる国鉄の実態であろうというふうに考えておるわけです。  それからついでに申し上げますが、給与面でも、総理大臣は所得倍増とおっしゃいますが、国鉄の職員で昇給は、他の公社と比べて何%か少ないんですよ。昇給ですら、同じ公社と同一には上がっておらぬのです。三十八年度の予算では増収をしながら、期末手当〇・二削っておるんですよ。前年度より少なくしておるんです。これは所得倍増計画のまさに逆行をいくものなんです。こういうことを総理大臣はお知りにならぬから、賃金が上がった、給与が上がる、こう言って宣伝をしておられますが、こまかい経理の内容に入ると、昇給や期末手当まで削って、新規工事の方へその財源を注ぎ込んでおる、こういう実態です。だから私は、今日の実態というのは、もう議論の場じゃないと思うんです。こんなことをやっておったら、あぶなくて国鉄に乗れぬじゃないか。ここでこういうことを言っては語弊があるかもしれませんけれども、いつまた大事故が起こるかわからないというのが、今日の実態なんです。午前中、山口委員質問総理大臣は、国鉄には一兆一千億の投資がしてあるようなことをおっしゃいましたが、政府から公共企業体に転換になるときに金を出したのは、八十九億円しかないのですよ。それ以来というものは、一銭も政府は投資をしておらない。だから今日の国鉄の資産というのは、みんな職員の汗とあぶらによって改良をされておるというのが実態なんです。そういうことをお知りにならぬから、あたかも政府の方から相当な金が投資してあるから心配ない、こういう間違った考えを私は持っておられるのではないかと思うんです。だから、少なくとも新幹線ぐらいの建設費は、これは政府が出資してしかるべきだと思う。また、そうしなければほかの方はあぶなくて乗れませんよ。またローカル線は、これは与野党を通じて、さてジーゼルをよこせ、あるいはここを複線にしろ、駅を直せ、要求が殺到しておるでしょう。金がないから一切やれません、こう言っておるのが国鉄の現状なんです。こういう点どうお考えになりますか。
  169. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。  楯委員のことをよく肝に銘じまして、国鉄をよく監督いたしまして、なるべく御趣旨に沿うように努力いたします。
  170. 楯兼次郎

    ○楯委員 そこで、運輸大臣と大蔵大臣、総理も聞いていただきたいと思うのですが、この国鉄の資料を見ますと、実際、今私が簡単に申し上げましたような現実なんです。そこで、その資金の調達方について当局の資料を見ますと、こういうことを言っておる。給与改定による人件費増加のため、自己資金を多額に増加することは今後望み得ない。第二番目には、長期的に見れば、財投、借入金の増加についても、収支均衡の点から限度がある。金はほしいんだが、借入金がそんなにたまっては返済ができないから、あんまり借り入れないということを言っておる。しかも金は要る。じゃ、どこで調達しようとしておるのか、運輸大臣、この話聞いておられますか、返事して下さい。
  171. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。  そういう困難を克服して、一日でも収入をよけい上げるような新幹線を早くこしらえたいというのが、私は考え方の一つであると思っております。それで、それができますならば、順次国鉄の財政というものはよくなって、いろいろな面に、改良工事なり踏み切りなり、諸般の施設に金が回り得るようになることを期待いたしております。
  172. 楯兼次郎

    ○楯委員 そういうのんきな実態ではないということを私は言っておるんです。これは乗らなければならぬですからね、あぶないですよ。ところが、大蔵大臣が、来年度減税をするために、目一ぱいの予算を組んだ、こういう原則が今日の国鉄に当てはまらなければあぶないということを言っておるのです。だから、資金はほしいんだが、借入金ではもう何ともならないということを、当局の資料には書いてあるのです。あなたのように、そこを一生懸命やってとおっしゃいますが、一生懸命幾ら力んでおったって、金はどこから出てきますか、そういう考えじゃいかぬと思う。大蔵大臣、どう考えますか。
  173. 田中角榮

    田中国務大臣 国有鉄道の将来に対して真剣に政府考えておることは、これはお認め願えると思います。明治、大正、昭和とずっと計算をしてみますと、国鉄に対しては、明治から大正にかけては、年間多いときには千キロの新線建設を行なったという事例がございます。しかし、昭和十二、三年の戦時中を頂点としまして、戦後昭和二十年からは新線がゼロになった。それから今日まで年間百キロ、二百キロと幾らかずつふえておるわけでありますが、鉄道にウエートのかかっておった明治時代と、それから大正、昭和とずっと時期的に見て参りますと、確かに鉄道に対する国の出資というものが減っておるということは事実であります。同時に、鉄道は、長期において投資をされた国の資産の運用費がふえておるというような数字も出るわけであります。特に国鉄の現況で一番注意しなければならないのは、敗戦によって、爆撃によって荒廃をしたものが、戦後相当原形に復旧するだけで多額の建設資金を要したということが一つありますし、もう一つは、昭和二十一、二年からの社会政策的な大幅な運賃の割引制度が今日まで残っておるというような問題もあります。これはきょう、きのうのことばかり考えては国鉄の再建にはならないのでありまして、鉄道を初めて敷かれた当時の運賃は、現在から比べて相当割高であった。だんだん今日も戦後になって、一番運賃としては低い水準にあり、しかも、物価が四百倍だというのに、国鉄運賃は二百倍に押えられておるというような状態から考えても、運賃収入は低い水準に押えられておりながら、国からの出資が減っておるというようなところに国鉄のむずかしさがあるわけであります。でありますから、政府は、今度の東海道新幹線というものに対しては、思い切った財政的措置をやっております。やっておりますが、この反面、保安施設その他の一般改良事業や地方のローカル線の整備がおくれては困るので、これも限度一ぱいの努力を進めておるわけであります。新幹線が三十九年で終わりまして、翌年の一月から開業するというのでありますから、今度そこからは運賃収益を生むわけであります。自己資金が大幅にふえていくということになりますし、もう一つは、財政投融資の東海道新幹線にかけておったワクがそのままあくわけでありまして、そのワクを国鉄全体の改良、新線その他に使用せられるわけでありますので、新幹線を除く改良工事は、三十七年、八年、九年という三年間が一番しわ寄せをされておるということであります。その意味で今度は、三十八年度は、国鉄の負担で困っておるような地方の新線その他に対しては、鉄道整備公団というようなものも新設をいたしたわけでありまして、国鉄の再建、これからの合理的維持に関して、政府が非常に熱意を持っており、財源確保にあらゆる方途を講じておるということは、御理解願えると思います。
  174. 楯兼次郎

    ○楯委員 後年度努力をするという点はわかるのですが、今私は議論しておるのです。  そこで、この当局の出した資金調達の二項目からわれわれが結論づけられることは、どうしてもこれはあなた方が手当をしなければ運賃値上げをせざるを得ないということですよ。はたせるかな、私は本会議の施政演説から注目をしておったのですが、そういうことを言っておる。賀屋政調会長が総理大臣に質問をしておるときに、総理大臣は、物価、公共料金につきましてはというのでお答えになっておる。そのときに、「そうして鉄道の点でございますが、これは私鉄は大体いいと思います。ただ問題は、」というので、そこで賃金が上がったら云々というふうに、まあ私はそういうふうに聞いておるからそうとれるのか知りませんけれども、賀屋政調会長の質問総理大臣の答弁、国鉄当局の資料、三者を総合すれば、またぞろ運賃値上げにその資金源を求めざるを得ない、こういう結論、こういう仕組みになっておると思うのです。この点について総理大臣は、鉄道については、私鉄はよろしいが、——国鉄とは入っておりません。よろしいが云々という答弁をされておりますが、この内容は何ですか、運賃値上げを予測しておっしゃっておるんじゃないですか。
  175. 池田清志

    池田国務大臣 国鉄あるいはその他のものにつきましては、労銀というものが相当のウエートを持っておるわけでございます。私鉄のときには、今後は労賃はあまり上がらないということも私は聞いております。希望的意見かどうか、そういうことを聞いておる。しかし、国鉄につきまして上がらないという保証は——われわれは上がらないことを望むのですが、しかし、ある程度上がっても、運賃上昇に影響のないような上がり方をしてもらいたいということを私は常に思っておるわけです。だから、大幅な賃金の値上げがありますと、これは運賃に響くということは経済の原則ですから、私はそういうことがないことを望んでおるというのが腹にあるから、そう言っておるのであります。
  176. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは鉄道建設公団についてちょっと聞きたいと思いますが、けさの新聞によると、完成した鉄道を国鉄に有償で貸すか無償で貸すかというので、大蔵省と運輸省が相当論争をしておるようでありますが、一体何でこんなものをおつくりになったのですか。簡単に要点を申し上げますると、国鉄は新線建設をしても、東海道以外経営をしても黒字になるところはない、今日三十数線の新線建設をやっておりますが、これは経営をすればオール赤字なんです。そういうところから建設をしぶる、それならおれの方でやろうじゃないかといって建設をして、当然赤字が出るとわかっておる路線をまたお前やれと言ったって、ますますこれは財政を逼迫させるものじゃないですか。しかも、その赤字経営路線を有償で貸すか無償か、こんなばかなことを今日の実態の上に立って議論をしておるというのは、私はだいぶおくれた時代の議論だと思うのですが、一体こんなものをつくったのは何の目的ですか。
  177. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 新線の建設は国民の大部分の要望でございます。それにこたえるために、国鉄ではなかなか忙しくてやれぬから、私どもは別に鉄道建設公団をこしらえて建設するのが適当なりと考えて、鉄道整備公団を考えた次第でございます。
  178. 楯兼次郎

    ○楯委員 忙しくてやれぬじゃないですよ。金がないし、よそへ金を回さなくちゃならぬし、せっかくつくっても赤字々々で参ってしまうからできないというのですよ。私は新線をつくることには賛成ですよ。しかし、つくるならつくるように、それだけの資金措置をしてやらなくちゃいけない、こういうことを主張しておるのです。ところが、つくれ、借りる方は独算制でめんどうを見ぬ。だから国鉄の方では、本体が参ってしまうからというのでしぶる。それをこっちでつくってやるから、有償でお前に貸してやろう、こんなさか立ちをした議論は私はないと思うのです。こんなのはそう長く演説をやらぬでも、あなた方十分おわかりになっておると思うのです。だから有償で貸せる、無償で貸せるなんという議論は、ほんとうに時代逆行だと私は思うので、もし結論が出ておらなかったら、そういうばかげた議論はおやめ願いたい。これを要望して、次の問題に入りたいと思います。  次の問題は、過日来問題になっておりまする農地補償の問題でありますが、これはもう私がここで贅言を要する必要はないと思います。この問題をやるならば、戦争犠牲者全部を対象にすべきであると思う。そうでなければ、いかなる名目をもっても支出すべきではないというふうに私どもは一貫して考えておるわけです。もし名前を変えて、この旧地主の報償か補償か知りませんが、行なわれた場合には、あと収拾つかない状態が出てくる、こういうふうに私どもは考えておるわけでありますが、再度一つ御見解を承りたいと思います。
  179. 田中角榮

    田中国務大臣 前回も申し上げました通り、農地報償に対しましては、何らかの処置をとる必要ありということでありますから、これがため適切な、また国民各位の意見を十分聞き得るような調査を行なうために調査費を計上いたしたわけでございます。それから何らかの報償をとった場合、戦災、戦時補償的なものに対してすべてやらなければならないじゃないかという議論が起こるということでありますが、戦いに敗れた国が立ち上がって隆々とした国連になった場合、これら犠牲になった方々に対して十分政府が配慮をするということは当然であります。しかし、前にも申し上げた通り、在外財産等を残されて引き揚げてきた方々等に対しては、重要な事項として、すでに内閣に設けられた審議会の答申に基づいて補償措置を三十二年に行なっておりますし、その他もろもろの戦災や、それらを含めた補償が当然起こり得るというお話でございますが、私は、これはもう国民の常識の問題であり、これらの問題に対して補償をしなければならないというほど財政的余裕はないということは先回申し上げた通りでございます。
  180. 楯兼次郎

    ○楯委員 私はこの問題について、自民党が戦中戦後の犠牲者に対して何らかの補償措置をとるという幻想を昨年から与えておると思うのです。昨年の七月の参議院選挙のときに、これは自由民主党の政策、公約なんです。この中にもそれらしいことが書いてある。それからそういう戦争犠牲者全般に対するそういう動きがあったかどうか私は知りませんけれども、昨年の、三十七年十月十五日の日本経済新聞には「戦後処理に調査会」、こういう見出しで「明年度予算編成にからんで旧地主に対する農地補償が再び政治問題化することは必至と見られるが自民党の池田派執行部は最近、この調整策として農地補償だけでなく、引揚者に対する海外財産の補償や、戦時中軍に徴用された船舶、工場施設その他の補償問題などを一括して審議する調査会設置構想を検討している。」これは十月十五日の日本経済新聞に大きく発表されておる。だから、国民は単に農地補償ばかりでなく、ほかの戦災犠牲者も当然農地補償を先頭として何らかの補償をされてくれるものであろう、こういうふうに、昨年のあなたの方の選挙の公約、それから新聞の発表等によれば、これは何らかの動きがあった、そう感じておりますよ。だからこういう問題からいっても、絶対にこれは二者択一の問題である、やれば全部を対象にせよ、やらなければ全部をやめよ、そうしなければ、今日の段階では大混乱になってしまうんじゃないか、こういうふうに私は考えるわけです。だから、それは自由民主党がやることであって、おれたちは知らぬ、まさかこうおっしゃりはすまいと思うのでありますが、そういう動きは、考え方は昨年中あったかどうか。総理大臣が国会に来て、総理としてはもう十回も十五回も農地補償はいたしません、こうはっきりと答弁をされておる。ところが自由民主党の総裁としては、こういうものに目をつぶって横行を放任をしておる、一体これはどういうことですか。
  181. 田中角榮

    田中国務大臣 自由民主党において、戦後処理ということに対して一線を引きたいという考え方があることは承知をいたしております。それは戦後十六、七年間もたっておるのでありまして、新しい国際社会の一員として立ち上がっていくためには、もう過去とのきずなを切りたい、一応線を引いて新しい視野と立場で立ち上がっていくべきであるという政治的な立場における配慮があることは、公党として当然だと思います。しかし、今あなたが御質問をしておりますのは、政府に対して質問をしておられるわけでありますし、これらの問題を自由民主党で討議をいたしましたときも、政治家として、また公党として線を引きたいという精神的な考え方に対して討議をしたものでありまして、農地報償というような問題がどのような結果になろうと、それがすべてのものを呼び起こし、またすべてのものに対して政府が財政措置をしなければならないということを意味しておるものではないと解しておるわけであります。
  182. 楯兼次郎

    ○楯委員 総理一つお答えをいただきたいと思います。総理としては出さない。報償というようなことはあとでお聞きしますが、今まで相当回数出さない、出さないと言明されておる。しかし自民党の総裁としてのあなたは、こういうものを出すとは言わないにしたところが、それらしいことを国民に幻想を与えて放任をされておる、これは一体どっちがほんとうなのです。総裁としてお聞きしたいと思います。
  183. 池田清志

    池田国務大臣 総裁としても総理大臣としても申し上げまするが、農地被買収者に対しまする補償はいたしません、これはもうはっきり言っておるわけです。そこで、この前の通常国会の終わったときに私も言っておりましたが、被買収者に対しまする報償については何らかの措置をしなければならぬということは、もう議員総会でも言っておるわけであります。  そこで、報償と補償とはどう違うかということは、昨日も大蔵大臣からやはり説明したと思いますが、補償というのは、法律的な義務を持って賠償責任を果たす場合が補償でございます。報償とは好意的だというのですか、恵みといいますか、向こうに請求権はございません。補償とは違います。従いまして、好意的の措置をやるかやらぬか、何か方法を講じなければならぬというのが私の心境で、何も今どれだけのものをどうするかということにきまっておるわけではない。そういう昔からずっといわれておる大きい問題について、このままほおっておくというわけにはいきませんので、調査費を見込みまして、どういう措置をとるかということを研究調査するのが今回の予算を要求した趣旨でございます。
  184. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは報償であろうと補償であろうと、とにかく何がしかを出す、そういたしますと、私はほかの戦中戦後の犠牲者がたくさんあると思うのです。それらに対する区別はどうされるのですか。それらとは全然違う、補償にしろ報償にしろ、他の戦争犠牲者のことは今全然考えない、問題外だ、別だ、こうおっしゃるのですか。他の犠牲者に対する考え方を一つお聞きしたいと思います。
  185. 池田清志

    池田国務大臣 私は、昭和三十二年度の予算で、大蔵大臣として引揚者に対する給付金の給与法案を出しまして、いたしました。一応引揚者に対しましてはこれで済んでおることと自分考えて、あのときに立案いたしたのであります。しかし、これも引揚者に対する補償ではございません。あくまで給付金、給付ということで、補償の観念ではいっておりません。しこうして、いろいろな議論があるようでございますが、われわれは今この重大な農地報償の問題について調査しておるので、間接的にいろいろな議論、要望なんかも世論調査でやってみたいと思いますが、今のところ、私は農地報償につきまして調査費を要求し、そうして世論を聞こうといたしておるのであります。
  186. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは総務長官にお伺いしますが、内閣審議室というのはどういう仕事をされるところですか。
  187. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 それは内閣ですか、内閣と総理府と二つあるのですよ。内閣だと私が答弁いたします。
  188. 楯兼次郎

    ○楯委員 内閣です。
  189. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 内閣審議室は、内閣にいろいろな関係があります各省間の問題、特に一つの事柄が一つの省だけでなしに、各省にまたがることが多いものでありますから、内閣に関係する事項で、そういう問題の連絡、調整、総合をいたすところでございます。
  190. 楯兼次郎

    ○楯委員 それではこれは内閣審議室が農地問題に類似する事項と、これに対する措置として、農地補償と同じものであるというので、二十二項目にわたって調査をされておる。これは総理府の内閣審議室か、あなたの方の内閣審議室か知りませんが、二十二項目、これが農地補償と同じものである。戦中、戦後に分けて調査をしておられるのです。一体この調査は何に基づいてやられたのですか。これは初めから答弁して下さい。内閣審議室は何の仕事をするところか……。
  191. 徳安實藏

    徳安政府委員 ただいまお話がございましたようなものは、私どもの方で調査した覚えはございません。
  192. 楯兼次郎

    ○楯委員 それはおかしいじゃないですか。これはもう新聞にも出ておるし、これは一部の新聞にも出ておるのですよ。内閣審議室、私はこの写しを持っておるのですよ。内閣審議室農地問題に類似する事項とこれに対する措置として、事由が戦時中に発生したもの、軍人恩給、在外資産、引揚者、在外公館借入金、小笠原諸島からの引揚者、戦傷病者及び戦没者遺族、それから未帰還者留守家族、未帰還者、学徒動員による被害者、戦災による家屋人員に対するもの、それから強制疎開による被害に対するもの、原爆被災者、企業整備、整理、それから事由が戦後に発生したもの、対象事項、敵産管理による被害者、財産税、預金封鎖、財閥解体、隠退蔵物資、占領軍による被害者、それから接収家屋等の被害、閉鎖機関、戦時補償特別税は農地問題に類似する事項とこれに対する措置として内閣審議室でこれを調査しておる。従って、私が先ほど質問申し上げましたように、自由民主党の公約、新聞の記事、これらを一括して政府は解決しようとした意図が十分なんですよ。ところが今農地問題だけここに上程をしてくるということは、はなはだ私は片手落ちであると思うし、常識から考えても、不可解であると思うのです。内閣審議室というのは、だれの命令によってやるのですか。
  193. 徳安實藏

    徳安政府委員 ただいまお読み上げになりましたものをちょっと聞きますというと、これはかって農地被買収者問題調査会というものが法律によって設置されておりました。その当時院の要求によりまして、調査室で調査して書き出したものだそうでございまして、ずっと前に出したものだそうでございます。
  194. 楯兼次郎

    ○楯委員 先ほど知らないとおっしゃるし、今は、院の要請によってやられたというのですが、それはいつですか。あなたのおっしゃるのはいつのことですか。
  195. 徳安實藏

    徳安政府委員 お答えいたします。これは私がまだその任にないときでございまして、昭和三十六年ごろだろうと言っております。
  196. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは——時間は委員長に協力してもうしばらくでやめますが、それをやっておらぬと言い、またやっておられると言う。だから私は、先ほど質問をしたように、一連の自民党の動きからいって、ちょうどそれに符節を合わせたころにこれをやられておるわけですね。だから政府の方では農地問題と一括してこの問題を解決する用意があったと思うのですが、どういう事情でやられたのか知りませんがね。だから二者択一で、やるなら私は一括してやるべきだと思うし、やらぬならこれはやめなければえらいことになる。しかも政府が否定をなさるのですが、こういうものをつくっておみえになるのです。だてや酔狂でつくったんじゃないでしょう。もの好きでつくったんじゃないでしょう。従って、この問題は私は後日、短時間でありまするから、一つこの問題に関する限り質問を留保してこの問題はやめたいと思います。  そこで、一昨日の質疑で少しわからぬところがありまするから、簡単にこれはお答え願いたいと思います。簡単に質問します。  おととい大蔵大臣は、報償とは行政的に一方的に行なうもので、受ける側が権利や異議を主張することはできない、こうおっしゃいましたね。私どもの解釈では、具体的にそれはどうなるかということを私なりに考えてみましたのですが、そうなると農地の面積には関係がない、個人が対象であって、金額は一律である。こういう結論しか出てこないわけです。そうなりますると、一億何がし盛った調査費というものは必要がないじゃないか。もしあるとするならば世論調査ですね。あなたがおっしゃる基礎調査、世論調査、実態調査をやるために一億数千万円を使うとおっしゃるのだが、もし報償をやるということになれば、大蔵大臣の法的解釈からいって、世論調査だけをやればいい。こういうことに私はなると思うのですよ。実態調査、基礎調査は必要ないと思うのです。報償をやるのに、ほうびをやるのに、なぜ向こうの家庭状態を調べなければならぬのですか。もし、しいてやるとするならば、世論調査だけでいいと思うのですが、これはどうもくっつかぬのです。これはどういうわけですか。
  197. 田中角榮

    田中国務大臣 基礎調査、世論調査、実態調査を行ないもしないで何を一体やるのですかという御意見が過去に何回もあったわけでありますが、いずれにしても、工藤調査会が行なったものは不完全なものであるということはお認め願えると思います。そういう意味で、先回も申し上げましたように基礎調査、実態調査、世論調査、特に世論調査には重点を置いてやることを申し上げておるわけであります。
  198. 楯兼次郎

    ○楯委員 昨年やりました農地被買収者問題調査会は、はっきりと正当な法律に基づいて正当な補償をもって行なわれた農地改革そのもの及び現行農地法の建前を検討することは適当でない、ここではっきり言っておりますね。それから一番最後には、巨額な金銭を被買収者に交付することは諸般の情勢上適当でないと調査会の結論を出しておりますね。その調査会の答申を無視して、何だかやろうという。調査は済んでおるんですよ。まだこまかい、今大蔵大臣が調査されようとする対象の資料も出ておるのじゃないですか。だからもししいて予算を盛ったからやるとおっしゃるならば、私は世論調査だけで十分だと思うんですね。  それからもう一つ一般の家庭よりよい生活をしている旧地主には金は出さない、こうおっしゃっておるんですね。一般の家庭よりよい生活をしておるというのはきわめて抽象的でありますが、それは一体何を標準にしてそのよいという結論を出されるお気持か。
  199. 田中角榮

    田中国務大臣 どうも少し質問が微に入り細に入ったために、私がつり込まれて答弁をしたようなことでありまして、この際明らかにいたしておきます。農地被買収者の報償に関しては、何らかの措置をとる必要がありますが、なお調査を必要といたしますので、と明らかにこれが調査費計上に対する政府の見解を明らかにしておるわけであります。でありますから、私が申し上げたように実態調査も必要であるし、また世論調査も必要であるし、また基礎調査も必要である。すべてはこの結果に待つように、非常に慎重な態度をとっておるのでありまして、金を幾らやるとか、また金でやるのか物でやるのか、それからいろいろな所得制限をするのかというような考えは、まだ全く未定なのでありますが、あまり質問がうまいので、だんだんとつり込まれて私は申し上げたようでありまして、何らかの報償ということ自体に対しても、世論調査を行なう必要を政府は感じておるのでありますから、そういう意味において私が申し上げたことを御理解賜わりたい、こう考えます。
  200. 塚原俊郎

    塚原委員長 楯君に申し上げますが、だいぶ申し合わせの時間が経過いたしましたので……。
  201. 楯兼次郎

    ○楯委員 もう一問でやめます。  大蔵大臣の言われたのは、おとといの答弁と違うのです。だからこれは、今委員長の方から時間がないとおっしゃいますから、私はやめます。やめますが、あなたがあとでおとといの答弁の速記録をお読みになると、おとといときょうと……。
  202. 田中角榮

    田中国務大臣 私が一昨日高田委員の御質問に対して申し上げたのは報償でありますから、一律一体にこれを行なうというような考えに立っておりません。こういうことを明らかに申し上げたわけでございます。
  203. 塚原俊郎

    塚原委員長 簡潔に願います。
  204. 高田富之

    ○高田(富之)委員 ただいまの大蔵大臣の答弁は、一昨日の私の質問に対する答弁と全く違っております。こういう無責任なことを、いいかげんにちょこちょこ、きのう言ったことときょう言ったことが変わるということは、全く私どもとしては黙過できないわけでありまして、先般の答弁には、裕福な地主に報償するなんということは毛頭考えていないと非常にはっきり断言しておるのですよ。もう一ぺんそれを、ちょっと先ほどの答弁が全然違いますので、一昨日の答弁をもう一度繰り返してやっていただきたいと思います。
  205. 田中角榮

    田中国務大臣 速記録がありますから、ちょっと前後の関係を見ます。——間違うと悪いから、速記録をそのまま申し上げます。  また政府は補償を行なわない。しかし最高裁の判決をそのまま認めておるわけでありますから、すべての者に対して反別当たり行なうというならば、当然補償を前提としての話でありますが、政府は補償を前提としておらないのでありますから、あなたが今言われた通り、幾ら生活程度がよくともすべての地主を対象にして補償を行なうのだという議論は、政府答弁からは全然出てこないわけであります。
  206. 高田富之

    ○高田(富之)委員 いや、そのほかの個所にまだあるでしょう。まだありますよ。非常に強調したのですから……。
  207. 塚原俊郎

    塚原委員長 だいぶ時間もたっておりますから、両方でよく速記をお調べの上、さらに一般質問の時間等もございますから、そのときにおやりになったらよいと思います。
  208. 田中角榮

    田中国務大臣 第二には世論調査も重要な項目の中にあるのであります。第三には実態調査をあげております。でありますから、少なくとも一般の世帯よりも十分生計を営み得、しかも十分余力のある者まで報償の対象にしようという考え政府は持っておりません。政府は持っておりません、こう速記に基づいて補足答弁をいたした次第であります。   〔「今の答弁と違う」と呼ぶ者あり〕
  209. 高田富之

    ○高田(富之)委員 そうすると、ただいまの通りですね。ただいまの通り間違いないですね。
  210. 田中角榮

    田中国務大臣 私が先ほどから申し上げておりますもの、前回のもの、あわせて答弁であります。
  211. 楯兼次郎

    ○楯委員 委員長
  212. 塚原俊郎

    塚原委員長 最後の一問ですね。——最後の締めくくりを願います。楯兼次郎君。
  213. 楯兼次郎

    ○楯委員 そうすると今の答弁は、私への答弁とは違っているわけですね。訂正をされたのですね。  それでは最後に、この調査費の使途に関する法律ですね、この法律はいつお出しになるのか、調査施行に関する法律を出してもらわないことには、予算委員会は審議できないですね。いつお出しになるのか。
  214. 田中角榮

    田中国務大臣 予算に計上した調査費に関する立法を行なう考えは今のところありません。
  215. 楯兼次郎

    ○楯委員 そういたしますと、このお金の支出は何に基づいて行なうのですか。
  216. 田中角榮

    田中国務大臣 予算が国会の議決に基づいて通過をいたしたあとは、行政権の範囲で行ない得るのであります。
  217. 塚原俊郎

    塚原委員長 次会は明七日午前十時より開会し、昭和三十七年度第二次補正予算に対する質疑を続行することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十八分散会