○畑和君 私は、ただいま
議題となりました
郵便貯金法の一部を改正する
法律案につき、
日本社会党を代表いたしまして、総理、大蔵大臣、郵政大臣、通産大臣、労働大臣、
経済企画庁長官等、
政府当局に対しまして質問をいたしまして、さらに逓信
委員長の
報告、少数意見の
報告につき、それぞれ
委員長及び少数意見
報告者森本靖君に対し、順次
質疑をいたしたいと存じます。(
拍手)
まず最初に、本案と預金者の権利保護との
関係につき、総理にお伺いいたしたいのであります。
そもそも郵便貯金の利子については、
昭和二十二年の十一月までは命令をもってこれを定める旨の規定が
郵便貯金法にあったのでありますけれども、新憲法の精神にのっとり、
国民の権利の尊重という要請にこたえて、同年十二月から、郵便貯金の利子は
法律をもって定めるということに改正されたのであります。このことにより、戦時中のインフレに悩まされながら、郵便貯金制度に大きな不安を抱いておりました
国民は、郵便貯金制度に信頼を寄せるようになったといって差しつかえないと存じます。(
拍手)このように、行政命令から
法律への大衆保護の精神を没却いたしまして、単に金利政策の弾力的運用という、
政府にだけ都合のよい金融政策的な
理由だけで、郵便貯金の利子規定を逆に政令に委譲することは、絶対に許されないと考えるものであります。
申すまでもなく、郵便貯金は零細な大衆の汗の結晶ともいうべき貯蓄であり、
国民の大部分がこれを利用し、親しんでおるところであり、しかも、総額一兆五千億にも達し、
政府の
資金運用部
資金の約五〇%を占め、財政投融資計画において、重要な役割りをになっておるものであります。それだけに、単に金利政策の弾力的運用のためという
政府の一方的な口実をもって、貯金者の権利が踏みにじられてはならないと私は思うのであります。総理は、かつて本
会議場におきまして、わが党の安宅
議員の質問に答え、次のように言っておられます。「
法律で利率をきめるのを政令できめたら預金者の保護にならぬとおっしゃるのですが、これは私は理論に合わないと思う。利子を
法律できめようが、
法律に基づく政令できめようが、預金者の保護には何ら
関係はございません。上げるとか下げるとかということが問題でございます。金融的には問題になりません。」かように答えておるのであります。私は、総理のこの
答弁の中にこそ、問題があると思うのであります。なるほど、金融的に申せば、総理の言われるとおりでございましょう。しかし、そのことばの中にこそ、私は、総理の国の金融政策のみあって、貯金者保護についての配慮が等閑視される危険性を見出さないわけにはまいらぬのであります。
政府のかってにはならないこと、直接
国民によって選ばれたわれわれ国
会議員による議決がなければ利子の変更ができないこと、この手続こそが、若干はめんどうでありましても、それこそが
国民の権利保護の保障であり、とりでであると私は思うのでありますが、このことを総理は強く銘記すべきだと思う。これがいままでの
法律でございますと、われわれが議決をせなければなりませんから、われわれは
国民の代表として、
国民の権利を守るために、利子を下げるときにはきわめて特に慎重にやる。これが政令でございますと、利子を下げるのは
政府のほんとうに金融的な考え方からして下げるのでありますから、きわめて簡単に下げられてしまう。また、市中銀行等の抵抗がありますから、どうしてもそういう傾向に私はなろうと思うのであります。この点につきましても、あわせて総理の御所見を承りたいと思うのであります。
次に、利率決定を政令にゆだねることにする必要性の緊急度の問題でございます。この点は総理ほか
関係各大臣にあわせて一緒に伺います。
日本の全預金に対しまする郵便貯金の割合は、数年前は一三%でありましたけれども、二、三年後には約一%になり、現在は八%に落ちておるはずでございます。もちろん郵便貯金の総額においては漸増してはおりますが、全預金に対する割合はだんだんと減ってきており、
昭和三十八年四月末で全預金総額二十兆千二百七十三億に対し、郵便貯金は一兆五千二百八十五億であり、
相互銀行が一兆八千二百四十三億、信用金庫が一兆七千五十四億ということになり、いずれも郵便貯金を凌駕するようになっております。総理は、安宅
議員の質問に答えまして、かように述べておられる。「貯蓄の増強が鈍るとか、非常にふえないとか言っておられますが、
昭和三十六年、三十七年、また三十八年度において、貯蓄がいかにふえたか、郵便貯金がいかにふえたかという実績をごらんになったら、あなたの理屈は通らぬと思います。」と力み返っておられましたけれども、郵便貯金がふえておるのは何も池田さんの功績でも何でもない。しかも、郵便貯金が全体の
国民貯蓄の中に占める割合が漸減しておるところに私は問題があると思うのであります。郵便貯金の利子よりも消費者物価の上昇率のほうが大きいというこの高度
経済成長政策の失敗の中において、利率決定を政令に委譲し、低金利政策に奉仕させようということが、郵便貯金を利用する
国民貯蓄の心理にいかに影響するでありましょうか。この時点において、金利政策の弾力的運用ということのため利率決定を政令委譲する緊急度がはたしてあるであろうか、はなはだ疑問であると私は思うのであります。(
拍手)
今回の利率改定の政令委譲
措置で貯金預金者は近き将来の利子引き下げを予想し、他面、消費者物価は市中金利、郵便貯金利子をはるかに上回る異常な上昇ぶりを示しているため、預金者は貯蓄心をなくし、換物的な傾向に走ることになり、したがって、貯蓄の減少、ひいては財政投融資計画にも影響すると思うが、どうか。さらには、かかる危険をおかしてまで現時点において本件政令委譲
措置をやる必要性の緊急度があるかどうか。以上の点につき、総理、
経済企画庁長官、大蔵、郵政、通産、労働の各大臣のそれぞれの立場からの意見を承りたいと存じます。(
拍手)
特に、労働大臣に対しましては、財政投融資の原資確保のため、貯金の募集については現在でも割り当て制度に事実上なっておりまして、郵政労働者の労働強化となってあらわれておりますが、さらにこれが強化されるおそれがあると思うけれども、所管大臣としてはこれをどうお考えになられるか。
次は、郵便貯金の貸し付け制度の問題であります。一方解約を
防止し、他方預金者の利便をはかるため、他の金融機関と同様貸し付け制度をとることはきわめて有効適切であり、
国民的要望でもあり、多く異論はないものと存じます。第四十回国会におきまして
郵便貯金法の改正案が
審議せられました際、逓信
委員会において貸し付け制度の
実施を検討するよう附帯決議がなされたことは、この
国民的要望が国会において取り上げられた結果であると考えるものでありますが、今回預金者の権利を不安定ならしめ、貯蓄意欲を低下せしめるおそれのある本法案を提案しながら、附帯決議に沿う貸し付け制度の
実施を提案しなかったのはいかなるわけであるか。国家財政に寄与するため、国家の経営する郵便貯金という特殊性にもよるであろうけれども、他の金融機関と異なり、ただ預け入れるだけの一方交通でございまして、
資金運用部
資金を通じ、財政投融資計画のうちの大きな部分を占めることによって預金者の意思と全く無
関係の大資本にのみ奉仕させ、肝心の預金者に少しも還元の道を講じないのは明らかに不当であります。本制度につき、郵政大臣は大蔵大臣と一体いかなる協議をなされたか、利率決定を政令に委譲する本案と引きかえに貸し付け制度を
実施させることが郵政省の当初の意気込みであり、案であったけれども、この案はいつ一体どういうところで消えてしまったか、郵政大臣は、この
国民的な要望を背景として、現大蔵大臣
田中角榮氏をも含めて、歴代郵政大臣が果たそうとして果たせなかった願望を、職を賭してでもなぜかちとることができなかったか、その辺の事情を郵政大臣に承りたいのであります。
なお、四十回国会での附帯決議の際は、
田中蔵相は時の郵政大臣としてこの案の推進者であったのではないかと思うのでありますが、いまでは相手方大臣ということになり、消極論のように承っておりますが、現在の時点においてこの案に
賛成か
反対か、立場が違うので、前には
賛成だったが、いまでは
反対だとでもいうのかどうか、その所見を承りたいと思います。
次に、将来低金利政策を
実施するにあたっても、郵便貯金は
国民大衆の零細な貯蓄であるから、市中金利が下がっても郵便貯金の利率は下げるべきではない――ずっと下げないという意味ではありませんけれども、にわかに下げるべきではない、かように思うのでありますが、その点、総理、大蔵大臣、郵政大臣はどのように考えておられるか、承りたい。
次にまた郵政大臣に伺いたい。利率を政令できめる場合、郵政
審議会に諮問するとのことでありますけれども、そのメンバーに、預金者の利益を代表する者はいかなる者を選定するか、また人数等はどうであるか。
次には、
委員長に対して簡単に質問いたします。
第一、
委員会における本改正案採決の際、
委員会の定足数に不足はなかったかどうか、第二、少数意見者の
反対意見発表の際、その
発言時間を不当に
制限したような事実はあったかなかったか、第三、これは重要な法案であるからというので参考人の意見を徴しようというような議があったと聞いておるが、はたしてそういう議があったかどうか、またそれに対してどう
措置をしたか、この点を承りたいのであります。
次は、少数意見に対する質問といたしまして、森本靖君にお尋ねいたしたい。
まず、今回の郵便貯金の利率規定の政令委譲については、改正案には法第十二条において、郵便貯金の利率を政令できめる場合は、郵便貯金の特殊性に基づき十分な考慮を払うべき旨の精神的な訓示規定と、さらに利率改定の際、郵政
審議会に諮問するという規定を新たに設けたが、この規定でどの程度預金者の権利が保護されると考えられるか、第二、利率規定の政令委譲は預金者保護に何らの影響はないという
政府の見解に対し、
委員会においてどのように反駁されたか、第三、郵便貯金貸し付け制度、郵便貯金総額の
制限額緩和等の点がなぜ本改正案に取り上げられなかったか、その原因について強く
政府側を追及したと思うけれども、その点はどうか、第四、郵便貯金
資金の運用について郵政省側がどのような計画を持ち、その具体化のためどのように折衝したかを追及したかどうか、第五、利率規定を政令にゆだねることの緊急度について、
政府はいかなる見解を示したか。
以上、各当局者、
委員長、あるいは少数意見の
報告者に対しまして、質問をいたします。
以上をもちまして、質問を終わりますが、懇切丁寧にひとつ
答弁を承りたい。(
拍手)
〔本名武君
登壇〕