○加藤清二君 私は、
日本社会党を代表しまして、ただいま上程されておりまする
議長清瀬一郎君不信任
動議に
賛成の
討論をせんとするものでございます。(
拍手)
今日、わが国において正常化が必要とされているものが二つございます。その一つが金融であり、またの一つが国会の正常化でございます。そのうちでもわれわれが
責任を持って緊急に対処いたさねばならぬものが国会の正常化であると存ずるものでございます。
なぜかならば、その及ぼすところは国民の幸福、日本の平和、海外諸国への信用等、国の内外にわたり重大なる影響を持つからでございます。国会の正常化が政治家の合いことばとなってからすでに十数年、いまだ正常な国会運営、国民の納得のできる国会審議は遺憾ながら行なわれておらないのであります。アベックで月世界に旅行ができるという原子力の時代、科学時代の今日に、わが国会では全く前時代的な国会運営が繰り返されているのでございます。数百年前の英国民主憲法制定時代の昔に返ったような感がいたすのでございます。なぜ一体こうなるのか。議員一人一人が悪いのか。そうではございません。数万、数十万の信頼を得られた
方々お一人お一人は、保守党の方といえどもみんなりっぱな方であると私は存じます。そのりっぱな一人一人が集団を組むと暴走をする。個々がよれば、これはそのまとまりは一そうよくなければならないはずでございます。にもかかわりませず、その逆が行なわれているということは、これはすなわちこれを統率する人、すなわち
議長が無能か、あるいは能力あっても実行しないか、いずれにしても統率者、
議長の欠陥といわなければなりません。(
拍手)
試みに不正常国会の
現状を見まするのに、第一、議会運営に計画性が乏しいといわなければなりませんが、たとえば国会初期におきましては、時間的の余裕がある間は法案の
提出も常にのろのろと行なわれているのでございます。審議もまたのろのろでございます。ところで、まことにおもしろいことに、保守党の出席率は、本日も定足数を欠くほどでございまするけれども、普通の
委員会の場合は、ほとんど定足数の一、二割というのが普通でございます。(
拍手)次に時間切れのベルが鳴るころになりますると、これがが然一斉ダッシュということになりまして、その場限りの採決要員議員を動員され、そうして採決をされるというのが保守党の常套手段でございます。(
拍手)なおそれでも間に合わないと見れば、今度は無理やり会期
延長でございます。それでもできなければどうなるか。暴力団と衛視のデモンストレーションのもとで、廊下や机の下で指を一本出したらこれで採決ができたというのが、これが定石と相なっているのでございます。(
拍手)言うなれば、初めは処女のごとく終わりは悪鬼のごとし、これがいまや年中行事と化し、法案が
委員会を台風のごとく暴走するのでございます。いまや国民の不満はブレーキの限界に達しているのでございます。国会法を破り、国会の権威を汚し、国民のひんしゅくを買う、これよりはなはだしきはないといわざるを得ません。(
拍手)国会内において無用な激突は不必要であり、極力避けるべきであるにもかかわりませず、これが毎回年中行事化しているのは、一にかかってマンネリ化したところの議会運営を直すことのできない
議長その人の
責任でございます。清瀬
議長に良心があれば、まず腹を切るべきでございましょう。しからば、あなたの名は残るでございましょう。しからざれば、名は名でも汚名だけが残るでございましょう。
国会の正常がこわされた例を、この際私のからだが知る範囲内で歴史的に見ると同時に、そのつど行なわれた反省、その反省の上に立って行なわれました両党の申し合わせ事項を読み返してみて、清瀬
議長の反省と同時に私自身の反省の材料としたいと存じます。
まず
昭和二十七年四月、講和条約が発効されましたそれ以後の例でございます。第十三通常国会には破防法騒動が行なわれました。第十五国会にもばかやろう解散で、半年にして命を議員は失いました。同じくその年の第十六特別国会の灰ざら事件では、事件当時の方が末席にもいらっしゃるはずでございます。次いで二十八年六月三日、第十九通常国会、これは警職法をめぐる衆議院本
会議の激突でございまして、このとき初めて警察隊が院内に出動、警察隊に守られて堤
議長は、
議長の入口でもない、あそこです、そこで指を二本示しただけで二日間の
延長をきめたのであります。国会問答無用の始まりであり、野党の審議権は無視され、民主主義は警察のどろぐつによりじゅうりんされたのでございました。これに対して両社党及び日本自由党、当時こちらに席がございました。労農党、共産党の各派は会期
延長を無効として、本
会議に出席をいたしませんでした。変則国会の出現でございます。しかし、この警職法を成立させ、その後、変則国会収拾のために国会史上前例のない全員協議会が開かれ、衆議院全員一致で共同声明が発表されたのでございます。国会自粛に関する共同声明でございます。(「記録が間違っておる」と呼ぶ者あり)記憶ではございません。記録から出してきておるのでございます。
「今日ほど議院の神聖と品位を傷け、民主政治の健全な発達を希う国民の期待に背いだことはない。ここにわれらは深く反省するとともに自粛自戒し各党各々その立場を異にするも良識をもって法規典例に遵うとともに、政治道義を守り、もって人心に及ぼした不安と失墜したる信用を速かに回復し、議院の威信を保持して国民の負託にこたえんととを期する。」とこうなっておるのでございます。
時間が長引くことをおそれますから途中を省きまして、事件を追わずに申し合わせ事項だけを拾い上げて読んでみます。違うならば、はっきり違うと御指摘を願いたいのでございます。質問を許しますからどうぞ……
次いで行なわれましたのに、三十一年一月二十九日、これは石橋首相が初めてその首班指名にあずかられましたおりに、五つの誓いを立てて、その冒頭に国会正常化をうたわれたのございます。そのときの会談の申し合わせ事項、第一、話し合いにより国会運営を円満に進める。第二、国会法の欠陥を再検討修正する。第三、深夜国会の悪習を改める。こうなっておるのでございます。(
拍手)
次には、
昭和三十三年十一月二十二日、これは鈴木・岸両党首会談が行なわれ、自民、社会両党は民主主義を守ってその健全な発達をはかり、国会の威信を保持するというこの目的のもとに、一、
議長の高い地位と不偏の立場を確立するために、両党は互いに信頼し、互譲の精神をもって国会運営に当たる。その結果、この当時の、あの警職法騒ぎの責めを感じてか感じないかは知りませんが、星島
議長、椎熊副
議長ともに辞任、加藤、正木両正副
議長が党籍を離脱して
議長席に着くことになられたのでございます。
次の第三十一通常国会、三十三年十二月十日でございます。その申し合わせによれば、正副
議長の党籍離脱の慣行を樹立すると相なっておるのでございます。次に、
議事円滑運営のため法規、申し合わせ、
決議を厳重に尊重、必要により国会法を修正するとなっております。三つ目には、両院協議会制度の活用または改善、次に、国会に対する集団的要請行動規正のため両党による特別
委員会制度を設けて検討する、こう相なっておるのでございます。
次は、皆さん御存じの、過ぐる総選挙で行なわれました初のテレビ対談でございます。このおりに、三党首の会談及び唐島基智三氏の司会によりまして、国民の前で次の公約がなされました。一つ、今後単独審議はしない。(
拍手)二番目、そのかわり実力行使もしない。こうなっているのでございます。(
拍手)それ以後のことは、当選された皆さんのほうがよく御存じでございます。
このように、国会正常化が唱えられましてすでに久しいのに、なぜ正常化が
実現しないのか。それは、議員みずからの自覚もさることながら、
議長みずからが法規、慣例、申し合わせを尊重せず、これを破っているところにございます。たとえば今国会におきましても、単独審議が自民党によって次から次へと行なわれたことは、すでにさきの弁士が述べたとおりでございます。(
拍手)それは全く暴風のごとく、神風タクシーのごとき勢いでございます。天意の暴風はとめることが不可能といたしましても、人為の神風タクシーをとめることは決して不可能ではございません。また、これはなさねばならぬことであると同時に、これをなさぬのは、先ほど申し上げましたように、無能か怠慢か、はたまた一方の手先といわなければならぬのでございます。(
拍手)
議長のあり方について、申し上げるまでもなく
——請求がございまするので、結論にしたいと存じます。(「時間時間」と呼び、その他
発言する者あり)守ります。抜きます。正常化の具体策も抜きましょう。私は、この際、皆さんに国会の正常化について提案をしたかったのでございまするが、時間の請求がございまするので、結論にしたいと存じます。
清瀬
議長の就任は、さきに述べましたような歴史を受けて立っておられまするが、清瀬
議長の就任の弁をここに御参考に披瀝したいと存じます。「本日、私は、
諸君の御推挙により、衆議院
議長の職につくことに相なりました。まことに光栄の至りでございます。感激にたえません。つきましては、
諸君の御協力を得て、常に公平無私、国会の円満なる運営をはかる覚悟でございます。」云々とありまして、途中が抜けて、「わが国の繁栄を期し、世界平和の確立に寄与するため、国民の国会に対する期待はますます大きなものがあると存じます。」ここで
拍手が鳴っているのでございます。「従って、
議長の職責もまた、その重きを加えるに至りました。最善の努力を傾けて、議会政治の健全なる発達と国会運営の正常化に努め、もって国民の信頼にこたえたいと念願いたしております。」ここでまた
拍手がございます。「ここに、就任に際して、切に皆様の御支援と御鞭撻をお願い申し上げて、ごあいさつといたします。」こうなっております。
議長清瀬一郎君がここで
議長席に着いておられまするが、清瀬さんにお尋ねしたい。今日の心境と行動ははたしてこれに間違いございませんか。ことに間違いがあればこそ、わが党はこぞって、国民の名において不信任の
動議を出さなければならぬわけでございます。(
拍手)すなわちあなたは、理想をわが国の繁栄と世界の平和の二つに定め、方法としては議会政治の健全な発達と国会運営の正常化の二つにしぼり、身を持する信念としては公平無私、運営には円満と、これに最善の努力を傾けるとありますが、文は名文、理想は遠大、信念は健全で、まことにけっこうずくめでございまするが、行為言行ははたして千載青史に残るものでありましょうや。政治家で歴史に残るものは、文章ではなくて行為行動であるということを知らなければなりません。(
拍手)あなたの行為行動はこのあいさつのことばとは全くうらはらであり、逆転しているということ、それが今日の国会を不正常化した
最大の原因であり、不信任される基であります。
結論を申し上げます。もう
あと一枚でございます。どうしても無理をおっしゃるならば、定足数をそろえると同時に、副
議長みずからも姿勢を正してもらいたい。運営は円満なこともありまするけれども、常に与党の独走、初めは処女のごとく最後は脱兎のごとし。信念は公平無私と言いながら、常に
政府・自民党の言いなり次第、少数意見に耳を傾けるはおろか、理事会にもはからず、入り口でサインと
拍手で決定させたり、全く与党一辺倒も気違いじみたさたの限りといわなければなりません。(
拍手)
かくて、内、国民には繁栄ではなく、不安と
生活苦と、希望を喪失させているのでございます。外、世界には、平和の基ではなくして、二大陣営の争いに巻き込まれる原因をつくり、わが国国会に対しては不信の念を助長させているのでございます。まさに罪万死に値いたします。
先哲の言にいわく、終わりを慎むこと初めのごとくせよとありますので、私も終わりを慎みます。しかしあなたは下世話にいうところの……