○武藤山治君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題になりました税法三法に対し討論を試み、政府・自民党に反省を求むるものであります。(
拍手)
今回の税制
改正の内容は、所得税初年度二百七十七億、法人税十九億、租税
特別措置の新たな拡大により二百四十六億円の減税をしようとするものであります。その二百四十六億の租税
特別措置のうち、二百一億円を利子配当の追加減税にしようというのであって、私どもは、かかる不公平な減税のやり方に対しては断固反対をするものであります。(
拍手)特に、
昭和三十八年度に予想される三千百三十億円の自然増収のうち、所得税はわずか二百七十七億円しか減税をしないのにかかわらず、利子配当課税については税率一〇%を五%に改め、分離課税等の従来の
措置をそのまま存続をして、あわせて三十八年度だけでも五百十一億円の利子配当の減税をするのであります。かかる税制
改正は、
国民大衆を忘れ、一部少数の者に奉仕をする減税と断ぜざるを得ません。(
拍手)
今回の減税に対する私どもの不満の点をあげますならば、第一は、税制
調査会の答申を全く無視し、党利党略による減税であるという点であります。第二は、高度経済成長政策による失敗は、物価の高騰をもたらしたことは自民党の諸君といえども否定することはできないのであります。この物価騰貴に対する実質減税を行なわずして、逆に二百七十七億の減税では、実質増税を意味するということであります。第三は、今回の
改正は、担税力ある高額所得者に優遇であって、租税公平の原則をまことに紊乱しておるという点であります。第四には、低所得者に対する思いやりのない課税最低限度——世界各国との比較の上から見ましても、まことに課税最低限度が
日本の場合には低過ぎて、大衆負担をますます重加するという減税の中身であります。第五は、租税
特別措置の拡大によって、金融資本、証券会社等に特別優遇
措置を与える大資本擁護の減税と断ぜざるを得ない点であります。第六は、予算委員会を通じ、あるいは大蔵委員会を通じて明らかになりましたることは、今回の減税を行なう論拠が明らかでありません。私どもは、この利子配当の大減税を行なう裏に、昨年一ヵ年間政党に献金をされた厖大な金額というものを勘案する際に、これらの献金に対する見返り減税であると思われる節があるのであります。(
拍手)
以下、これらの六点について、政府の施策を批判いたし、政府・自民党の猛省を促すものであります。
自民党・政府は、さきに農地被買収者問題
調査会の答申を踏みにじり、あるいは選挙制度
調査会の答申も踏みにじり、今回またまた税制
調査会の答申を踏みにじり、中立的な科学的根拠に立って答申をされる機関をことごとく無視するに至りましては、まさに党利党略の政治と断ぜざるを得ません。(
拍手)しかも、税制
調査会は、非常に科学的な、しかも、世界的な各国の例を統計的に明示し、今日利子配当の一〇%から五%への減税などということは、
調査会の答申の中からは全く引き出すことができないのであります。かかる税制
調査会の案を無視するに至りましては、
日本の政治がせっかく予算をかけてつくった機関を無視するものでありまして、政治の姿勢を乱すものであると私は断ぜざるを得ないのであって、かかる点が、まず第一に本案に反対をする理由であります。(発言する者あり)
諸君、議会は言論の府であるから、ヤジることは大いにけっこうであるけれども、今日の税制の内容を真剣に
国民の立場に立って検討する
責任があるとわれわれは思うので、少しく腹が立つかもしれませんけれども、私は論旨を進めざるを得ません。
第二の点は、税制
調査会の中山会長あるいは税制
調査会委員みずからが、今回の所得税の減税は、実質所得にこれを計算してみるならば増税になると申しておる。納税者の中で約三十七万人程度は実質的な増税になるということを税制
調査会の会長は大蔵委員会で
答弁いたしておるのであります。田中大蔵
大臣は、税制
調査会の意見を十分尊重した、十分物価騰貴に対して調整を行なっておると再三陳弁これ努めたのでありますが、税制
調査会の権威ある
資料によっても、
答弁によっても、
大臣の
答弁はまことに事実を偽っておるといわなければなりません。私たちは、かかる所得税の実質増税を行なった自民党池田
内閣に対し、
国民の立場から鋭く批判をしなければならぬと思うのであります。(
拍手)
第三は、租税公平の原則に反するという点であります。御承知のように、近代国家における租税制度は、
国民への所得の再配分をも意味し、担税力ある者から税を徴収して、社会の正義のために、秩序の前進のためにこれを使おうという建前に立っておることは、私が申し上げるまでもありません。しかるに、今回の租税
特別措置は、担税力ある利子配当の高額所得者に対して特別の恩恵を与える減税であって、これは利子並びに配当所得の納税者の数を見ましても明らかであります。税制
調査会の
資料によりましても、利子所得者でどのくらいの人数がおるかと申すならば、全所得税納税者のわずか一・三%、有業人口に対して〇・三%しか利子所得税の納税者はおらないのであります。さらに、配当所得者にいたしましても、年間五百万円以上の所得者が全配当の八割二分を占めておるというこの数字を見ましても、利子配当の所得を大減税するということは、いかに高額所得者に有利な減税であるかは火を見るよりも明らかであります。(
拍手)他方、
国民大部分の大衆に対しては、二百七十七億の、ちょっぴりスズメの涙の減税、他方、一握りの高額所得者に対しては、五百十一億円の大減税を惜しみなく行なうという池田
内閣の性格は、一体何と批評したらよろしゅうございますか。私は、
国民大衆には地獄、大金持ちには天国の減税が今回の減税であると断ぜざるを得ません。(
拍手)
しかも、今日の
租税特別措置法の中身を見ますると、大蔵省の発表だけでも、利子所得の分離課税及び税率の軽減によって三十八年度は三百六十億円、配当所得に対する源泉徴収税率の軽減二百十一億円、有価証券譲渡所得の非課税によって七十億円、これらの
租税特別措置法によって、年間二百万円以上の所得者は非常な恩恵を受けるのであります。かりに、今、年間五百万円の所得の人を例にとって申し上げるならば、
給与所得の場合は、総合所得で百九十三万四千九百四十二円の税金をとられる。利子所得の場合には二十五万七百円で済みます。配当所得の場合はややそれより多く、百万四千円の税負担と相なっておるのであります。これらの事実を見ても、いかに勤労所得あるいは事業所得というものが高い総合課税になり、高い税率であるかということがうかがえる。もしこれが当然であるというならば、利子配当の税率があまりにも安過ぎるということも言えるのであります。いずれに
原因があるにせよ、こんな片ちんばな、アンバランスな税法が常々と大手を振って多数決で通るという今日の
日本の政治を、私は
国民の立場からまことに憂えてやまないのであります。(
拍手)
第五に、大衆負担が非常に重いということであります。課税最低限度を先進資本主義国家と比較するならば、池田さんは口を開けば、
日本は今や大国になった、先進資本主義国家の仲間入りができた、こういう
答弁を再々いたしておりますが、税金の面で一体先進国並みになりつつありますか。大衆負担の面で、これらの一等国の仲間入りができるような
状態に、今日の税制は改革をされておりますか。
アメリカは年
給与所得百二十万円まではかかりません。イギリスは七十三万円、
西ドイツは八十三万一千円であります。(「税体系が違う」と呼ぶ者あり)税体系が違うと言うけれども、税制
調査会においては、間接税、直接税の比較をして、同じ種類の税率の比較をいたしておることは明らかであります。そういう負け惜しみを言っても、学者や専門家が研究をした数字が明らかにこれを物語っておるのであります。しかるに、
日本は、三十八年度において四十三万八千円、平年度においても四十四万五千円が標準世帯の課税最低限度ということになっております。すなわち、先進資本主義国家と比較して、倍も
日本の大衆の税金は高いということが明らかであります。(
拍手)特に
日本の税のとり方を見ますると、地方税が、
国民健康保険税その他固定資産税、それ以外に税外負担としてPTAや多くの寄付をとられておる。これらのことを勘案いたしますると、年間百万円以下の所得者に対しては非常な過重な税負担がかかっておることは明らかであります。
わが党は、かかる今日の税制を
改正して、年所得、当面六十万円までの所得に対しては税金をかけないという税制改革案を世に問うておるのであります。これを言うならば、あるいは財源がない、仕事はどんどんふえる一方で、財政需要は拡大の一途をたどるから、案はよろしいけれども減税はできないと言って政府は逃げるでありましょう。しかしながら、今日の
租税特別措置法を見ましても、国税で一千九百九十八億円の減税、地方税で一千百四億円の租税
特別措置による減収であります。あわせて三千百億円という租税
特別措置による減収があります。これらの中で、そもそものできましたときは、
特別措置として発生をしておるのであるから、これを恒久化せずして不合理なものは廃し、すでに緊急必要でないものはやめて、これを大衆減税に回せというわが党の主張が、一体なぜ自民党政府に耳を傾けて聞いてもらえないのでありましょうか。すなわち、政府・自民党は、大資本の声を代弁し、独占資本にストレートに有利な税制を、多数決によって無理やりに通しておるというのが今日の
日本の政治の姿であります。予算委員会において、あるいは大蔵委員会において
質問をいたしますると、国際競争力強化のために、資本調達のために利子配当の減税をいたしましたと
答弁をしておる。ところが、利子配当の減税をいたしました結果、貯蓄は一体幾ら伸びるのでありましょう。貯蓄性向というものを調べてみましても、利子配当の減税によって貯蓄はふえていないのです。貯蓄性向は、
日本は世界一であります。では、貯蓄をふやして、
日本の資本量をふやすためには何が先決であるかというならば、可処分所得の増大が最も貯蓄増強にストレートに相関関係を持っておるということは明らかであります。その可処分所得を増大させる道は、単なる利子配当の減税ではなくて、
一般国民への減税を大幅に行なうことが貯蓄をふやす道であることをわれわれは強く主張するのであります。(
拍手)
かく、われわれが批判をして参りましたときに、かように筋の通らない減税をなぜやったのでありましょう。私は自治省に正式に申告をされておる政治献金を
調査してみますると、昨年一ヵ年間だけで、
日本の証券会社からの自由民主党並びに自由民主党の派閥に対する政治献金は一億円であります。証券会社が何ゆえに政府・自民党に一億円の政治献金をやるのでしょうか。何かその見返りがなければ、ただで一億の金を出すはずはありません。この証券会社からの献金の見返りが今回の利子配当の筋の通らない大減税であると私は考えます。(
拍手)
かような、政治が一部少数の者に利用され、
国民にはちゅうをなめさせて、上の方では特級酒を飲むというがごとき今日の不公平な
日本の政治は、
国民の前に徹底的に明らかにして、われわれは世論を通じて政府に猛省を促してやまないものであります。
私の討論を終わります。(
拍手)