○賀屋興宣君 私は、自由民主党を代表いたしまして、
政府の施政方針につき若干の
質問を行なわんとするものであります。
まず、国際
外交の問題についてお尋ね申し上げます。
総理の言われるように、米国並びに欧州の自由主義諸国とともに、東アにおける
日本が、
世界の繁栄と平和とをささえる自由主義体制の三大支柱となっておることは、まことにその通りでございます。(
拍手)また、
日本の
経済成長が特にすみやかでありまして、その
国民総生産額は、英仏独諸国の列に迫らんとしておることも、従って、
世界の
大国の
一つになりましたことも、全く御同感であります。しからば、その
日本は、その地位、国力にふさわしい十分なる
努力を
世界の繁栄と平和のために、また、
世界の自由民主主義の推進のために払っておるかどうか、この際静かに
考えてみる必要があると思うのであります。
わが国の
経済成長が特にすみやかでありますおもなる
原因は、
日本民族の能力と勤勉に現われておる優秀性に基づくものでありまするが、それとともに非生産的な防衛費の負担がきわめて少ないことが一大要素となっておるのであります。(
拍手)
日本の防衛費は、三十八年度
予算におきましては
予算総額のわずかに八・五%、
国民総
所得に比較しまして一・四%にすぎません。これを
世界各国の多くが国土防衛費のために平均
予算の三〇%または四〇%前後を充当しておることに比較すれば、まことに恵まれたる環境にあるといわなくてはならないのであります。(
拍手)これ一に日米安保条約及び隣邦自由主義諸国の防衛に対する
努力の好ましい影響というべきであります。わが国は、この恵まれたる環境を善用して、ますますすみやかなる
経済成長を遂げ、
国民生活の向上をはかるべきでありまするが、同時に、伸びる国、恵まれた国、有力な国といたしまして、国際間における協力と
責任とを
考える必要をこの際痛感するものであります。
われわれの欲するものは、
日本にとっても、各国にとっても、独立と平和と自由と繁栄であります。しかるに、われわれに近い
アジアの諸国の現状はどうでございましょうか。
経済はいまだ開発されず、民度は低く、
生活は不安に、治安の乱れておるものも数多いのであります。ことに侵略的帝国主義を基調とするスターリン主義の
拡大は、ラオス、南ベトナムの
危機を招きまして、特に昨年の中印国境の紛争は、まことに目に余るものがあるのでございます。(
拍手)
世界の平和を維持いたしまする根源は、人類の平和愛好、侵略排除の悲願にあります。しかしながら、この正義の声は、いまだ遺憾ながら
現実の問題として有力ではないのであります。ベルリンの
危機を延ばし得ましたのも、
キューバの危険を払いのけたのも、一に自由主義諸国の防衛力の
充実にあるのであります。また、欧米自由主義諸国の
経済が繁栄をいたしまして、
国民の
生活が向上して、
共産主義排除の精神の牢固たるものがあるのがその根源でございます。米ソの間において、核禁止
協定の
成立につきまして若干の曙光が見えて参りましたことは喜ぶべきことではございますが、これがために安易に無邪気な平和ムードを謳歌するわけには絶対にいかないのでございます。(
拍手)
われわれが
世界の繁栄と平和のために貢献するには二つの方法があると思うのであります。その
一つは、自由主義諸国の防衛力を強化しまして、スターリン主義の侵略の蠢動の余地をなからしむることであります。その二つは、自由主義諸国、真の平和愛好国家の
経済の繁栄、成長を助け、その
国民生活の安定、向上に協力することにあるのであります。わが国自身は、断じて
核武装をするものではありません。海外派兵を行なうものでもありません。徴兵制度をしくものでもないのであります。たとい自由主義諸国といえども、外国の軍事的防衛については、直接力をかす
立場には絶対にないのであります。わが国にとって唯一の方途は、
アジア自由主義諸国に対してその
経済の開発に協力し、その民生の安定向上に資し、ひいては諸国家の自由、民主主義尊重の
国民意識を培養することにありと信ずるのであります。(
拍手)
インドは、昨年の中共の国境侵略によりまして、初めて非武装、中立の夢が破られたのであります。インドは今や、その軍隊の員数を数倍に増強し、装備を近代化して、
アジアにおけるスターリン侵略主義の
脅威から何とかして身を免れんと苦慮しているのであります。そのために国防費の負担は一挙に数倍して、
予算総額の半ばにも達せんとしております。従って、
経済五カ年計画の改定は必至でありまして、インドが中共侵略の悪影響に基づく窮乏より免れ、
国民生活の向上のためといわんよりも、ただその最小限度の安定のためにも、外国に対して
経済的援助の
要求は必至であります。インド四億の民衆がスターリン侵略主義の災厄に苦しむのを自由主義諸国はただ放置しておくわけには参らないと思うのであります。(
拍手)
その他の
アジア一般の形勢にかんがみましても、われわれは
アジアにおける真の平和愛好
国民である自由主義諸国のために、
経済援助に乗り出すべき時期来たれりと信ずるものであります。国際的エゴイズムは近視眼であります。
日本は
大国になったのであります。その
立場を反省して、国際的エゴイズム――
日本が今それであるとは申しませんが、今後長く自国の繁栄にのみ専念することは、そのそしりを免れない。
池田総理の
言葉のごとく、他国に対する協力の効果は、やがて自国にはね返って参るのでありまして、国際的
経済的援助こそ
日本の永久繁栄、また平和の道であると信ずるのであります。(
拍手)
政府は、近き将来において
政府資金によって、また民間
資本をも動員して、画期的な対外
経済協力計画を打ち出す
考えがおありになるかどうか、
総理大臣の
所信を伺いたいのであります。
申すまでもありませんが、多額の対外援助と申しましても、国際収支上の影響はその何分の一、十分の一にとどまるものではないかと思うのであります。わが国の対外援助は、船舶、機械、プラント、肥料及び消費物資の
輸出となりますので、これらのための若干の原料輸入が国際収支上のマイナスとなるだけであります。わが国の
経済援助は、国内の財政金融の調節によりまして、わが
輸出産業のいんしんをも招来する効果はなはだ大きいものがあるのであります。この辺につきましても
政府の所見をただしたいと思うのであります。
次に、
日韓交渉についてお尋ねいたします。
歴史的にも、地理的にも、また民族的にも最も
関係の深い、そうして現下国際的対立
関係において、ともに自由主義諸国に属する日韓
両国が、二十年に近い歳月の間国交が回復されていないことそれ自身がおかしいのであります。遠隔の地域にある自由主義国の大多数もすでに
韓国を承認しておるのであります。もはや、われわれは日
韓国交回復の急務である理由を述べる必要はさらさらないのでございます。
韓国側に正しい認識と熱意を持った
政府ができました今こそ好機であります。早く国交を回復し、十数年前共産侵略によって苦しめられた、その
韓国の
経済、民生の安定向上に協力し、ともに手を携えて、平和と自由と繁栄とを楽しみたいというのがわが
国民の念願であるのでございます。(
拍手)
わが
政府は、
両国交渉のうち最も困難と思われます
請求権、
経済援助の問題に関して、事実上の了解点に達せられたのでありまするが、さらに李ライン問題、漁業問題、竹島問題等、従来の主要なる懸案を一括同時に
解決し、過去のいざこざを一掃して、さっぱりした気持で
両国の国交
正常化の一日もすみやかなるよう
努力せられんことを希望いたします。また、
韓国政府においても、互譲協調の精神によって、譲歩すべきものは譲歩し、すみやかに
両国協力の実をあげられんことを切望いたすものであります。
なお、
日韓会談について一言つけ加えておきたいとこは、いわゆる反対論に対する
対策であります。いかなる動機によるのか、実に理解に苦しむような反対論が往々にして聞かれるのであります。先ほどこの壇上においても若干その声があったのでございますが、たとえば
軍事政権と
交渉するのはけしからぬとか、また
日韓会談が南
北朝鮮の統一を妨げるとか、
日韓交渉は
アジアNATOの素地であるとか、実に荒唐無稽なことが流布されておるのであります。(
拍手)軍事独裁政権では
交渉の
相手方にすべきではない、それが正論ならば、
共産主義国は全部軍事独裁政権でありますから、そういう国とは一切国交を中止すべきだということになるのではないでしょうか。(
拍手)民主主義諸国といいましても、その発達過程においては常に完全なる民主主義体制をとり得ない場合が往々あるのでありまして、われわれはこういう
政府に、過渡的政権に協力しまして、自由完全なる民主主義体制に移行する目的を達成せしめることこそ必要適切な方途ではないかと思うのであります。(
拍手)
朝鮮の南北統一を阻害するといいますが、その
最大の
原因は十余年前の
共産主義侵略であります。かくのごとき暴力侵略行為を加えておいて南北両鮮の統一をはかるというがごときは、全く論外のことでございます。(
拍手)南北統一を阻害するものは、一に北鮮が南鮮を共産化せんとする野望にほかならないのであります。(
拍手)
わが国が軍事同盟、NEATOなどを形成する
意思のないことは今さら申すまでもありません。これらの謬説は、ちょうど安保改定の際、安保が通れば徴兵になるとか、直ちに
戦争に巻き込まれるとか、荒唐無稽なことを流布いたしまして心なき
国民を惑わした、これに類するようなやり方と
考えられるのであります。(
拍手)
政府は、よろしくその誤れるゆえん、正しい認識が何であるかということについて、
国民に対して説得力を発揮されたいのであります。(
拍手)安保騒動のごとき苦々しきことが起こることは、絶対に国家の恥と
考えるのであります。この点につきまして
政府の
所信をただしたいのであります。(
拍手)
天然資源の少ないわが国としまして、
貿易が
日本経済成長の限界を制するものであることは、今さら申すまでもないところでございます。若干この点についてお尋ねいたしたいと存じます。
貿易・為替の自由化は、基本的には
経済成長を促進し、
拡大するものでございます。
政府は、昨年十月一日をもってすでに八八%の自由化を実現したのであります。しかし、国際競争力が不十分である現状をこのままにしまして、さらに自由化を促進しますることは、一部産業の破壊を
意味する場合なしといたさないのでございます。
政府はいかなる用意と準備とのもとに、いかなるプログラムによって今後の自由化を推進されんとするのか、その具体案を伺いたいのでございます。
次に、欧州
経済共同体が、第二次大戦前のアウタルキー的、排他的
経済ブロックでないことは、われわれのつとに承認するところでございますが、英国の加盟に反対の機運のあることなどから
考えまして、この際、EECが内向的でなく外向きで国際協調的であることが願わしいのでありまして、この点につきまして、
政府の所見と、また
対策をお伺いいたしたいのでございます。
次に、
経済外交におきましてガット三十五条の適用排除その他、いかにわが国の
輸出増進につきまして障害をすでに排除し、また排除せんとしつつあるか、さらに詳細に具体的に御答弁を願いたいのであります。
また、
輸出秩序、いわゆる
輸出の過当競争の調整であります。
総理大臣も
貿易秩序に言及されているのでございますが、法外に安価なわが
輸出品が、外国の一地方に一時に婿集いたしまして、非常なコムプレインを招くことがしばしばであります。安く売ってしかられて、ために
輸出を阻害し、低賃金などと悪口を言われておるのでありますが、これが是正につきましていかなる
対策をとられんとするのでございますか。
次に、わが
輸出は延べ払い
条件、すなわち金利、年限等において、常に外国との競争に立ちおくれをとっておるのであります。
輸出品は、その原材料等の輸入代金に相当する現金が回収されるならば、たとい延べ払いの取り立てが長期にわたりましても、国際収支上国家の損失とはならないのであります。もっともっと延べ払い
条件を寛大にしまして、
輸出増加について国際競争に負けないようにいたしたいと思いますが、府政の所見はいかがでございましょうか。
次に、
貿易の
拡大はわが国是でありますから、共産圏との
貿易といえども、正常なる限りその例外ではないのであります。しかしながら、クレジットとか延べ払いとか、特殊の便宜をはかる場合においては、自由主義諸国、
中立諸国に対するそれとの均衡、振り合いが大切であります。特に延べ払い資金源にはおよそその限度があるのでありまして、共産圏に便宜を与うるの余り、自由主義諸国との
貿易を圧迫、阻害するがごときことがあってはならないと存ずるのでございますが、
政府の所見いかがでございましょうか。
さらに、外資の導入について伺います。
日本の過去の発達が外資に負うところは非常に多いのでありまして、現在におきましても、一億の外資導入は十億の
経済成長をも可能ならしむるものであります。戦後
日本の外資の導入が復活いたしまして、三十八年度
予算編成に際しましても、東京湾、大阪湾の築港、開銀、電電の資金源及び道路の改良建設のために、
政府みずから外債を
発行し、また
政府保証債の
発行を認めましたことは、その英断を歓迎するにやぶさかではないのであります。しかし、従来、財政当局はとかく外資導入の問題に対しまして小やかましいことを言い、いろいろ
条件をつけ、認可、許可が長引くのでございまするが、その使途が正当で、
条件も適正なものでありまするならば、早くその認可をして、国力の発展をはかるべきものと存ずるのでございます。何とぞ
政府はすみやかに外資導入につきまして標準を明らかにして、速急に事が運んで、
経済の運行をなめらかにするよう
努力せられたいのでございます。
石炭、海運、肥料等に対し、抜本的方策が講ぜられましたことは、まことに当を得たことと
考えるのでありますが、なお
解決を要する問題が残っておると思うのでありまして、その
一つは国際航空であります。
日本の国際航空の現状は、一流国はもとより、いわゆる二流国に比較してもはなはだ劣った
状態にあります。主要国際路線においていまだ
日本機の運航を見ないものもあり、運航を見ましても、その使用機やまたは運航回数がはなはだ遺憾な
状態にあるのであります。また、国際空港については、
日本の
東西に二大空港を建設しなければ、とうてい将来の進運に応ずることができないのであります。これには巨額の経費を要するのでございますが、
政府の決心と方策はいかがでありましょう。(
拍手)
石油資源の重要なことは今さら申すまでもありません。
日本の産業
経済の支配的王座は
石油が占めておると申しても過言ではないのであります。しかし、
日本といたしまして、国産
石油及び天然ガス、アラビヤ
石油またスマトラ
石油のごとき準国産
石油、英米系
石油、
ソ連系
石油、輸入液化ガスというような、いろんな供給資源に関しまして錯綜した問題がいまだ
解決いたしておりません。しかし、この重要な
石油の供給源について、
日本の
経済、産業の観点から、また国際収支との関連から、特に
日本の総合的重要資源依存体制の観点から、すべての問題をあいまいにすることは、これははなはだ不得策であります。近き将来において抜本的の
対策を講ぜられたいと思うのでありますが、
政府の所見はいかがでございましょう。
観光収入は、わが国の自然、天然の状況から見まして、最も
期待し得るところの外貨獲得の源泉でございます。しかるに、現状は、イタリア、フランス、スイス等の観光国に比較いたしましてはなはだおくれていることは申すまでもございません。
政府はいかなる方策を持っておられるのでございましょうか。ことに、明年は国際オリンピック大会が開催せられまして、多数の外国人が来るのでございますが、これらの外人がいかに
日本を理解し、気持よく帰るかということが、将来観光収入の面ばかりでなく、
日本の国際的
立場に関する重要な問題であるのでございます。
政府は、今道路であるとか、競技場の設営などに非常に
努力を払っておられるのでございますが、いかなる方途で外国人を遇するか、交通機関や宿泊、観光等の設備はどうであるか、はなはだ問題が多いと思うのでございますが、
政府の方策をこの際明らかにされたいと思うのでございます。
次に、
減税問題につきまして
政府の所見を伺いたいのであります。
国民負担の公平及び軽減を目ざしますところの一般的
減税の重要であることはもちろんでございますが、いわゆる
政策減税、つまり、国家の緊要とする政策の実現のための
減税、これについて伺いたいのでございます。
政府は、三十八年度において
貿易の振興、
資本蓄積の促進、産業設備の近代化、科学技術の向上、都市の
環境衛生の改善、
中小企業の近代化と農林事業の構造改善等を目途といたしまして、いわゆる
政策減税を行なう計画でありますことは、まさに当を得ておると思うのでございまするが、その
施策の
内容を見ますると、徹底を欠いておるうらみがあるのでございます。それと申すのも、いわゆる
政策減税について認識、理解が十分でない点があるのではないでございましょうか。たとえば、
資本蓄積のために預貯金の利子の課税特例等を推進しようといたしますれば、これは大
所得者に対する不公平なる負担の軽減であるというような反対の声が多いのでありますが、しかし、ここで深く
考えなければならないことは、一番大事なことは、
経済の成長、
国民所得の増大という点にあると思うのであります。わが国は、過去十三年の間に、
所得税を主といたしまして、大
減税を十二回行なったのであります。その
減税総額は一兆円にも近いというのでございます。五人家族で年
所得五十万円の者は、
昭和二十六年には十二万円の
所得税を納めておりましたが、
昭和三十八年度では、わずかに四千二百円に軽減されておるのでございます。こういう
減税が行なわれましたる理由は、
一体どこにあるのでございましょうか。これは全くわが国の
経済が成長いたしまして、
国民の
所得の総額が
増加して、
政府の
自然増収が大いに得られた、これがすなわち根本の
原因でございます。
経済の成長、
所得の増大をはからなければ、
国民負担の軽減も何もできないのであります。従って、
経済の成長を目ざすために必要な、いわゆる
政策減税が、やがては負担の公平と軽減を可能ならしめる基本をつちかうものであるといわなければなりません。(
拍手)目前多少負担の不均衡の点がありましても、これを実行するということは必要であると
考えるのであります。(
拍手)
資本の蓄積推進に関する
租税の軽減において特に必要と感ぜられるものは、わが国
経済成長の速度にあるのでございます。わが国の貯蓄性向は、
世界の諸国に比しまして数割高いといわれておりまするが、しかし、決してこれでは十分ではない。何ゆえならば、
日本においてオーバー・ローンであるとか、
自己資本の過小であるとか、高金利、低金利の進行が阻害される、こういう
原因はいずこにあるのでございましょうか。これは常に健全なる資金の供給不足にあるのであります。これはわが国の
経済成長が飛び抜けて早いというところからくるので、わが国の
経済成長の速度は、
世界の平均よりも二倍半あるいは三倍に達するといってもよろしいのであります。しかるに、貯蓄性向は各国に比してわずかに数割の
増加にすぎない。これではとうていこの早い
経済の進歩に必要な資金の需要には追っつけないのであります。それでありますから、
日本経済の安定成長のために必要な
施策として最もおくれたものは、資金の蓄積にあるといっても過言ではないのであります。(
拍手)そういう
意味におきまして、全力をあげてこれを推進し、
日本の
経済構造のアンバランスを是正することが
経済成長の、要諦でございます。
政府は、はたして、かかる
経済成長を推進するために、今後
政策減税を一段と推し進めるの決心があるやいなや、この点を伺いたいのであります。(
拍手)
世間には負担の公平のみを
考えまして、
政策減税を否定するものがございますが、これは結局、
経済の成長を妨害しまして、負担の軽減、公平を害する自殺的の行為であるということを知らないものであると
考えるのであります。(
拍手)たとえば、社会保障の必要を唱えましても、社会保障を行ない得るような財政状況をつくり上げなければ何もできないのであります。わが党が常に
経済繁栄を唱えるのも、
国民生活の向上、安定、従って、社会保障の実行などが大幅に実現できるためでありまして、現に社会保障費は
池田内閣三年の間に九〇%、二倍に近い
増加を見ておるところからもこれが証明せられるところであります。いたずらに負担の公平のみを唱えまして、
政策減税を否定する行き方は、
経済の繁栄を阻害して、負担の公平をいかに
努力しましても、それはいわゆる貧乏の分け合いにほかならないのでございます。(
拍手)
次に、社会保障、福祉国家の建設について伺います。
生活保護は社会保障政策の中核でございますが、従来とかく閑却されておりました。しかるところ、
池田内閣成立以来、自後三年間に、保護基準が六〇%の
増加を見るに至りましたことは、まことに画期的でありまして、賛辞を呈するにやぶさかならぬところでございます。(
拍手)
しかしながら、その間、
消費者物価の騰貴があり、また、一般の
経済成長がすみやかでありますために、これを長期間において見るならば、
国民一般の
生活水準の向上に比較しまして、格差が縮小するどころか、増大をいたしておるのでございます。そのほか、老人、母子家庭、精薄者、身体障害者等に対する各種の
施策につきまして
努力の跡は見えるのでありますが、いまだわが国の社会保障は十分ではないのであります。
予算総額における社会保障経費の割合を見まするに、先進諸国はおおむね三〇%、少なくとも二〇%は確保いたしておるのでございますが、わが国は非常な躍進を見ましても、なお本年度において一三%にしかすぎないのであります。福祉国家の建設をめざす
政府として、将来いかなる抱負と計画を有せられるのでありましょうか。
社会保障の要諦は、救済を要せざる人、自立のできる人をつくり上げることであります。
経済の繁栄により完全雇用の
状態を実現いたしましても、健康でなければ就職の
機会をつかむことはできないのであります。その
意味において、
国民健康保険等、療養施設の
内容の改善を見ましたが、しかしながら、いまだ非常に不十分であります。結核は医学的には治療可能でありますが、社会的には、いまだ多数
国民の貧乏の大きな
原因であります。結核や、また社会及び家庭にとって最も悲惨なる精神病
対策についていかなる方策があるのでございましょうか。また、疾病の治療はもちろん必要でございまするが、同時に、平素の健康の維持増進が最も重要でございます。この疾病の予防、平素の健康増進につきまして、厚生当局はいかなる腹案を持っておられるのでございましょうか。
次に、
国民各自が健康ならば完全雇用のチャンスをつかむことはできるのでございますが、しかし、その人々が技術能力において低水準であるならば、収入、地位において最低線しかつかむことができないのであります、従って、
国民各自の素質を生かしまして、どこまでもその能力を伸ばす必要があるのでありまして、教育は、その
意味において特に重要視しなければならないところであります。(
拍手)人格において、健康において、能力、特に科学技術の進歩を目ざし、
人づくり政策が進められることははなはだ大切でありまするが、その際に、有能な青年が、
所得に恵まれない
状態にあるために、教育の
機会を得られない、そういう者に対する配慮が特に必要であると
考えられるのであります。(
拍手)育英教育につきましては、若干改善の跡が見られるのでありまするが、特に全額学資補給を目ざす特別奨学の制度は、恵まれざる階層の青年に対して、人生の前途に対して、いわゆる夢を持たすものであります。いな、夢以上に
現実に明るい光明を与えるものであります。(
拍手)かかる
施策は、有能にして恵まれざる
国民が真に社会
生活の、国家
生活の恩恵を感じて、社会人あるいは
国民として真に尽くすべき
責任と愛情とを培養する根源となるものと
考えるのであります。(
拍手)
政府は、貧しき階層に対し、その青少年の天賦の素質を生かすために、いかなる抱負と
対策を有せられるのでありましょうか。
福祉国家建設に関する第三点といたしまして私の伺いたいところは、
国民の半数にも及ぶ低
所得階層、
所得税を納めるにも至らない人々に対する問題であります。これらのうちの最低
所得層、いわゆる
生活保護階層に対する
対策は不十分とはいえども、相当社会の関心を引いておるところでございますが、それよりややまさる、しかも、大都会において、五人家族の、月収二万円またはこれにも満たざるような、しかも、わが国人口の大きな部分、数千万人を占める階層に対する関心が薄いのではないでありましょうか。これらの階層は、
減税によっても従来ほとんど恩恵を受けることがないのであります。わが国において過去十数年の間に、七、八千億円にも上る
所得税の
減税が行なわれましたことは、類例まれなる善政であると私は
考えるのであります。しかし、前にも中しました数千万の低
所得層に対しては、これは何らの恩恵を及ぼすものではない。一方、
消費者物価騰貴の影響は最も深刻にこうむる階層であります。こういう階層に対していかなる
対策に出んとするものでございましょうか。いわゆる
減税につきましても、国税においては
所得税のほか、間接税その他について十分なる配慮をすべきであり、さらに、住民税、
国民健康保険税等、地方税におきまして適切な方策がとらるべきでございます。三十八年度において、電気ガス税や、
国民健康保険税において若干の措置がとられましたが、かかる低
所得層に対する
対策として、今後税制全般において、また、税制以外の方面において、すなわち、歳出による
所得の再分配その他について深甚なる考慮を払う必要があると思うのであります。(
拍手)今後いわゆる
所得倍増計画の
内容及びその運営、その他税制、財政の総合的
施策によりまして、かかる低
所得階層を漸次引き上げまして、いわゆる中産階級に引き上げる
国民全部の中産階級化につきまして、
政府は深甚なる考慮と
対策を立てられんことを切望するものでございます。(
拍手)
母子、児童、心身障害者に対する福祉法は、すでに制定されておるのでありまするが、いまだ老人福祉法の制定がないことは、わが国社会保障立法の一大欠陥であると
考えておるのであります。今議会にはたして
政府は提案されるのでありましょうか。
なお、この際老人
対策について一言したいのは、いわゆる健康なる老人であります。老人
対策といえば、みなすでに老齢になって、健康や能力を失ったような、いわば養老院送りの老人を対象にするかの感があるのでございまするが、今、
日本においては、健康なる有閑老人が数百万にも上るのであります。これらの人々は、時間をもてあまし、職と収入を失い、従って、健康をも失わんとしておるのであります。かかる老人の能力を生かして、適切にその労働力を利用するということは、国家
経済におきまして最も必要、有効なことと
考えなければなりません。一方において、若年
労働者の不足を訴えて労働不足の声が高い際に、他方において、多数の、完全に一人前である、あるいは一人前に近い
状態における、いわゆる健康なる老齢者を遊ばしておくということは、大きな矛盾とむだではないでありましょうか。かかる労働能力を有する老人に対する新たな画期的
施策が必要と
考えるのでございますが、
政府の所見ははたしていかがでございましょうか、お伺いいたしたいものでございます。(
拍手)
消費者物価の抑制、安定をはかることは現下の急務であります。いわゆる
所得水準の上昇が
消費者物価の上昇を上回っておることは、まさに
政府の所見の通りであります。しかしながら、
物価の上昇は何人に対しても一律に影響するところでありまして、低
所得層ほどその圧迫が大きいのであります。また、
所得の
増加は
個人差が多いのでありまして、
増加率の少なき者、定額
所得者のごとく全く
増加せぬ者、はなはだしきは、
所得の減少する人も少なくないのでありまして、これらの事情を
考えます場合においては、一そう親切、周到なる措置が必要であると
考えるのでございます。昨年暮れの消費者米価引き上げに際し、その値上げ幅を適当な線にとどめ、また、これに伴い低
所得者
対策の実行に配慮いたしましたのもこの理由でございます。
物価抑制措置は、複雑多岐にわたるのでありますが、この際、私は簡単に二、三の点を伺いたいと思うのでございます。
それは、生鮮食料品の価格調節についていかなる措置をとられんとするのでありましょうか。生鮮食料品は最も価格の騰貴、動揺の激しいものでございます。また、最も日常
生活に
関係が深いからでございます。
第二に、公共料金につきましては、昨年、一連の引き上げを見たのでございまするが、今後は、
物価安定のムードがはっきりとしますまでは、一切値上げを認めない方針が適切ではないかと思うのでございますが、
政府の所見はいかがでございましょう。
なお、この際、賃金政策についてお尋ねをいたしたいのでございます。
わが国の人口中の多数を占める
勤労者階層の
所得を
増加しまして、その
生活を向上し、福祉を進めることは、わが党の念願とするところでございます。しかしながら、コスト・インフレを起こして産業の国際競争力を阻害するに至りますれば、その不
利益は
労働者自身にもはね返って、はなはだ不幸を見るに至ること、これまた明らかなるととろでございます。また、急激なる賃金の上昇が
消費者物価の高騰に影響することも事実でございます。
政府は、
経済の成長と
国民的利害との調和点に立って賃金政策を考慮すべきではないでありましょうか。この観点よりいたしまして、生産性の向上と能率増進、能率給に対していかなる
考えを持っておられるか。また、最低賃金制、労働秩序の確立につきましていかなる
考えを持っておられるか、忌憚なき御所見を伺いたいと思うのでございます。(
拍手)
次に、
人づくりでございまするが、
人づくりは
国づくりの根幹なりとの
池田総理大臣の信念は、まことに御同感でございます。
人づくりの根本を構成するものは教育でありますが、わが国教育上の
最大の問題は、教育の衝に当たる教員諸君が、はたして
人づくりの資格が十分ありやいなやという点でございます。(
拍手)社会人として、
国民として、また、
個人として必要な能力と人格を備え、道義と
責任とをわきまえる人間をつくり得るだけの資格ありやいなやという点であるのでございます。(
拍手)
私は、この際、教育者養成の一方途として
考えたいのでございますが、ただいまは一般大学の課程の中で教育した者に教員資格を与えているのでございまするが、教員養成の専門教育機関を設立し、知徳兼ね備えた有為の人材を集めまして、教員の養成に画期的な改革を加える必要はないでありましょうか。また、教育は、学校教育、家庭教育、社会教育をもってはいまだ足れりとしないのでございまして、これに加うるに、よき社会環境をつくり上げる、これが最も肝要な要素であると
考えるのであります。そのためには、特に反省すべきは
議会政治のあり方、
国会運営のやり方であると思うのでございます。(
拍手)暴力や非合法や、審議の義務の放棄等の目に余る行為が
国民の眼前にさらされるようなことがあってはどうでございましょうか。
国会の場が少数のために悪用され、
国民多数の
意思が通らないというようなことでは、範を天下に示すべき
立場にある
国会のあり方として、深き反省を要するものがないでありましょうか。(
拍手)
また、暴力の根絶、非行少年の防止、麻薬
対策の徹底等は、よき社会環境をつくり出すため絶対必要な要素でありまして、
政府は万全の
対策を急ぐべきであると信ずるのでございます。
さらに、テレビ、ラジオ、映画、新聞、雑誌等の、いわゆるマスコミの力は絶大でございます。従って、そこにマスコミ倫理確立の問題があると思うのでございます。世の暴力、少年の非行、麻薬禍のごときは、マスコミの影響力の絶大なるに顧みまして、ここに高きマスコミ倫理の自主的確立を要望するの声、今日ほど切実なるものはないのでございます。(
拍手)
政府は、これに対し適切な行政指導を行ない、マスコミ倫理の自主的確立を促すべきであると確信するものでございますが、御所見いかがでございまするか。(
拍手)
なお、このほか、憲法改正あるいは
経済運営の方針と民間の自主調整、産業の新秩序、さらに農業の近代化、
中小企業対策、
社会資本の
充実、地域格差の是正、
環境衛生施設、
沖繩援助、その他につきましても
質問いたしたい事項が多々あるのでございますが、所定の時間もよほど超過いたしましたので、これらは他の
機会に譲りたいと存じ、これをもって私の
質問を終了いたすものでございます。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君登壇〕