○
坂根参考人 私は
改正案に対して絶対
反対であり、政府に対して本
改正案の撤回を要求します。
私がこの
改正案に
反対する
理由は二つあります。
第一に、
暴力団に対する
取り締まりをほんとうに
強化しようとするのであれば、このような法
改正をこのように急いでやることを必要としない。まず何よりも警察行政の姿勢を正し、政治の姿勢を正すことによって、
現行の
刑罰法令のもとで十分にその目的を達することができると思うからであります。警察が
暴力団との
結びつきを断ち切り、峻厳な態度で
取り締まりに当たるならば、相当
程度に
暴力団の跳梁ばっこを押えることができます。警察が
暴力団を大目に見、これと
結びつき、これを利用しているところに問題があります。
現在、都内江戸川区葛西に
日本ロールという会社があります。千名に及ぶ労働者が牛馬のように酷使されるという劣悪な労働条件のもとで、昨年十月十八日初めて労働組合をつくり、家族手当をよこせ、作業用石けんは会社持ちにせよ、あるいは二千五百円の賃上げなど、ささやかな要求で闘争に立ち上がっております。これに対して青木という社長が組合幹部三十三名の首切りを通告、いまなお争議中であります。青木社長は、銀座の武井組という
暴力団からぐれん隊風の男数十名を臨時守衛という名目で雇い入れ、連日労働者に対してなぐる、けるの
暴行を働き、いまなお多数の負傷者を出しています。これらの
暴力団は寮にまで入り込み、労働者の家族にまで髪を引つぱったり、首を締めたり
暴行を働いています。これに対して警察は、目の前で労働者が
暴行を加えられているのに、労働者が血を流すまでは見て見ぬふりをしています。組合側の抗議によってようやく一人を逮捕した。そのかわり、これをやむなく押えようとした組合側をも逮捕している。労働者に
暴行を加え、傷を負わせた
暴力団を労働者が取り押えて警官に連絡すると、警察はあとで調べるからと言って逃がしてしまう、こういう事例があります。
日本ロールの工場や寮はいまやまさに無法地帯と化していると言っても過言ではありません。常にそうでありますが、労働組合員が
暴力団に
暴行を加えられているときは、見て見ぬふりをするのであるが、労働組合員が
暴力団の
暴行を取り押えようとすると出動してくる、これがいまの警察のやり方であります。さらに
暴力団同士がけんかを始める場合には、警察官は飛んで行ってその仲裁に入って仲直りをさせる。こういうふうな
状態の中で、
日本ロールの労働者は、警察が会社の番兵になっているということと、警察と
暴力団はぐるになっている、こういうことを異口同音に怒りをこめて述べています。安保闘争や三池闘争をはじめ
労働争議、民主
運動に対して、
暴力団と警察が一体となって労働者や善良な
市民に対して
暴行を加え、傷を負わせ、とうとい
生命まで奪っている実例は枚挙にいとまがありません。
議員諸公も
御存じでしょうが、三年前の六月十五日、維新行動隊の隊長は石井一昌といいますけれ
ども、これが安保批判の会や新劇人グループなどの国会
請願隊になぐり込みをかけて、七十数名に
暴行を働いて三十名近くの人に重傷を負わせた
事件があります。この法廷で石井一昌が何と言っているか、六月十四日の日に公安一課の佐竹という巡査が来てビールを五、六本飲みながらいろいろと話をした。維新行動隊のデモは無届けであるので、したがって、ひとつあしたお前ついていってくれないかと言ったところ、佐竹巡査は、よろしい、じゃ同行しようという了解を与えて、六月十五日にはこの右翼のデモに警官が同行しておる。その席上で、石井一昌が法廷で証言したことによれば、当日、この佐竹巡査から
社会党の田中稔男代議士をおどかしてくれということを頼まれたと了解をしておる、こういうことを法廷で述べています。この一言からしても警視庁、警察官と
暴力団の
結びつきというものはまさにこれは明々白々であると思います。
さらに三池闘争の中で、これも三十五年三月二十九日でありますけれ
ども、久保清さんという人が殺されました。殺されたときになぐり込みをかけ、短刀で刺したこれらの
暴力団を、警察の機動部隊はその場では取り逃がしておる。こういう実例は枚挙にいとまがありません。
このように警察が
暴力団とぐるになっている。ここに問題があると思います。さらに町のダニあるいはぐれん隊などの親分が地元警察に顔がきく存在であるということはだれ知らぬ者のない常識となっていることも、議員の皆さんもよく
御存じだろうと思います。警察がこのような
暴力団との
結びつきを断ち切ることが、
暴力団の
取り締まり強化の第一歩であると考えます。
さらにいまの警察の体制に問題があります。いま警備、公安警察中心の警察の体制になっております。御
承知のように警備、公安警察というのは労働
運動、民主
運動に対する弾圧とスパイ活動をやる部門でありますけれ
ども、この東京警視庁の人員配置を例にとってみましても、機動隊と公安が四千七百八十一名で全体の二八・九%を占めています。直接
犯罪の捜査に当たる警察官は二千四百八十一名で全体の八・九%、防犯に至っては一千七百七十九名で、六・四%という
状態であります、したがって、これでは吉展ちゃん
事件や中田善枝さん
事件のようなたいへんな手ぬかりが生まれることは当然でありますし、また
暴力団の
取り締まりを徹底することは不可能であるということができます。
警察が
暴力団との
結びつきを断ち切り、警備、公安警察中心のあり方を改めて、本気で取り組むならば、
暴力団の
取り締まりは
現行刑罰法令で十分に行なえるのであります。
刑法では
傷害の罪には最高十年の
懲役を科することになっております。
裁判所は
暴力団事件に対しては実刑の
判決を言い渡し、また職業的
暴力団には保釈を認めないとともできます。現にそのような運用が行なわれているように見受けられます。したがって、このような
改正案を全く必要としないと言うことができるのであります。
次に、このような
法律改正よりも、根本的には自民党が
暴力団と手を切って、池田内閣が政治の姿勢を正すことによって
暴力団を根絶やしにすることができると考えます。数年前に現職の法務大臣、これは中村さんといったと思いますが、テキヤの親分の葬儀に花輪を贈って、
国民のひんしゅくを買った事実を皆さんもよく
御存じだと思います。今度の都知事選では、自民党と右翼
暴力団の
結びつきが相当
程度に明るみに出ました。もちろんここに列席の自民党議員の皆さんは
関係していらっしゃらないと考えるのでありますけれ
ども、いわく、にせ証紙、はがきの横流し、これを買っているわけです。泡沫候補、果ては幽霊候補、いわゆるダッチワイフ政策で有名な橋本勝という男、演説会のやじ部隊など、とにかく自民党は右翼
暴力団に何百万円とか——これは新聞にも出ておりますが、あるいは何千万円ともいわれる莫大な金を出して東さんを当選させました。
暴力団はこの金で生活をし、子分を養い、勢力を伸ばしているのです。このような
法律改正をやるよりも、まず自民党が
暴力団を飼育しているというこのあり方を改めることが先決ではないでしょうか。
なお池田内閣は、池田さんのよく言われることばを使って申し上げると、政治の姿勢を正すべきだと考えます。このことが
暴力団取り締まりのきめ手です。
国民の大部分が
反対している原子力潜水艦の寄港を認めようとしたり、あるいはF105D水爆機の導入を行なったり、あるいは独占資本本位の高度成長政策、一千万人といわれる失業、半失業者の上に、さらに貧乏と失業をつくり出す冷酷な政治、御
承知のように炭鉱労働者七万人の首切り、失対労働者をさらに生活のできないようにこれを打ち切る、このようにまことに冷酷な政治、戦争と人殺し、
暴力団犯罪をテーマとする映画、テレビのはんらん、議員諸公の茶の間のテレビにも映るでありましょう。そのような中で
国民に希望を与えることのできない政治、このような中で
暴力団も商売になるといういまの池田さんを中心とした自民党の政治、これこそが
暴力団をはびこらせているのではないでしょうか。
日本が完全に独立し、民主主義を確立して、
国民が平和で豊かな生活のできる政治を行なうことが、繰り返しますけれ
ども、
暴力団退治のきめ手であります。このことは自民党の皆さん方といえ
どもお認めなさるところと考えます。どうかほんとうに
暴力団を取り締まろうとするのであれば、その根源である政治の姿勢を正し、警察行政の姿勢を正すべきであります。いまにわかに法
改正の必要を認めないということが、私が本
改正案に
反対する第一の
理由であります。
次に、この
改正案に
反対する第二の
理由は、この
改正案が
暴力団の
取り締まり強化に名をかりて、労働
運動、民主
運動に対する弾圧体制の
強化をねらっているからであります。最近特に安保闘争以降、労働
運動、民主
運動に対する弾圧が強められています。安保闘争は
日本国
憲法の基本原理である平和主義、民主主義の実現を目ざして労働者、
国民が大きく前進をした歴史的な闘争であり、世界に誇るべき一大
国民運動であったわけです。この闘争の中で、労働者、
国民は政治的に目を開き、団結が強まりました。このことはほんとうに
日本国
憲法の精神に立つならば、喜ぶべきことなのであります。しかるに資本家陣営と政府は、労働
運動、民主
運動を
犯罪視して、これを弾圧し、新安保条約が指向しているところの方向、すなわち、
日本の平和と独立と安全を脅かす危険な方向へ、民主主義を抑圧し、労働者、
国民の生活を破壊する方向へと引きずっていこうとしているのであります。
刑事弾圧は強められています。不当な解雇が激増しています。労働組合活動、政治活動の権利と民主的自由が抑圧されています。労働組合、
民主団体に対する組織破壊の攻撃が強められています。警備公安警察の
強化とともに、自衛隊の治安出動準備まで進められていることはすでに明らかなところです。公安条例の改悪、道交法の改悪国税通則法の制定、これらとともに、ILO八十七号条約の批准に便乗した国内法の改悪、労働協約、就業規則の改悪が企てられ、進められています。治安
立法として悪名高い政防法が三たび企てられ、労働者、
国民の
反対闘争によってつぶされたことは、いまだに記憶に新しいところであります。このように労働
運動、民主
運動に対する弾圧の
強化とともに、弾圧体制の整備が進められています。
こういう情勢の中で
暴力法がどのように悪用されているでしょうか。
団体交渉の席上大声を発したといって
暴行とされ、起訴された例、これは全日赤という労働組合、ビラ張りを
器物損壊として起訴された例、これは国鉄労働組合その他、争議中
暴力団の襲撃があり、
生命の安全を守ろうとした労働者が起訴された例、これは三池闘争や主婦と生活社の争議などなど、数えきれないほどの
事件があります。これらを三十六年度警察庁の
犯罪統計書によると、
暴力法適用件数三千七百七件、八千三百五十六人のうち、弾圧
事件と推定されるものが一千三百五十一件、四千四百三十人で、その割合は件数において三七%、人員において五四%となっているのであります。
また、法務省の
犯罪白書、これは
昭和三十五年版所載でございますが、
昭和三十年から三十四年までの五年間の
犯罪統計によると、公安
犯罪、いわゆる労働
運動、民主
運動に対する弾圧
事件のうち、
暴力法が適用されたものが二丁六%、
傷害罪の適用されたものが二〇・五%と
暴力法が第一位を占めています。これを
労働争議に限ってみますと、
傷害罪適用が二三・四%、
暴力法適用が一九・六%と、この場合も第二位となっています。いまの
暴力法制定当時、労働
運動や
小作争議に適用しないという旨の政府答弁がなされたにもかかわらず、
暴力法は現にこのように労働
運動、民主
運動弾圧の有力な武器としていまもなお悪用されているのであります。
次に、今度の
改正案は一体何をねらっているのでしょうか。御
承知のように
改正点は四点あります。