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羽山説明員 少し御
説明がこまかくなって恐縮でございますが、御疑問の点は、
法制審議会の
説明と国会における
説明とが食い違っておるじゃないかという御質問でございますので、少し御
説明させていただきたいと思います。
銃砲刀剣類等所持取締法を見ますと、「この
法律において「銃砲」とは、金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び
空気銃(圧縮ガスを使用するものを含む。)をいう。」こう書いておるわけです。それから二項におきまして、「この
法律において「刀剣類」とは、刃渡十五センチメートル以上の刀、剣、やり及びなぎなた並びにあいくち及び四十五度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフをいう。」カッコ書きで御
承知のように除外例が
規定してあるわけであります。
まず一項から申しますと、「「銃砲」とは、金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び
空気銃をいう。」ということになっておりまして、あとは装薬銃、
空気銃とは何であるかということは
銃砲刀剣類等所持取締法自体においてもはっきりしておらぬわけです。
それから二項を見ますと、刃渡り十五センチとか四十五度以上に開刃するということははっきりしておりますが、あと刀、剣、やり及びなぎなたをいうというのでありますが、刀、剣、やり、なぎなたとは一体何をいうのだということははっきりいたしておらぬわけです。それから解説にもございますが、あいくちというのには刃渡り十五センチという文句はかかっておらないわけであります。したがって、あいくちにつきましては、刃渡りにかかわらずあいくちは刀剣になるというふうになっております。ところで、そのあいくちとは一体何であるかということも
銃砲刀剣類等所持取締法上ははっきりいたしておらない。なぜこれを、こういう所持の規制をする
法律でそもそもはっきりしなかったのか、それはこれをはっきりいたしますと脱法手段を生むわけです。それから、もしこれを非常に厳重に書きますと、ほうちょうその他いろいろなものが入ってまいりまして、実生活に非常に不便を来たす。そこで、結局、これは
最高裁判所の判例にもあるわけでございますが、この
銃砲刀剣類というものはしょせん社会通念によって決するよりしょうがない、そしてまた、その社会通念によって決するということは、一面においては罪
刑法定主義の要請を満たすと同時に、一面においては人権保障の要求を満たすということになるのだろうと思うのでございます。
そこでこの
法律立案当時、
法制審議会等におきましては、こちらは御
承知のように一年以上十年以下という
法定刑、特に危険なる刃物による
傷害ということを
考えまして、したがいまして、こちらのほうの所持取締法上にいう所持を規制されるところの対象という
考えと、こっちは
傷害という対象ということから、どうしても少し出入りがあるのじゃなかろうか。しかしながら、その出入りと申しますのは、たとえばここに鉄砲がございまして、その鉄砲の撃心が折れております。現在たまは出ないわけでございます。あるいは現在撃ちますと非常に性能が悪くて、金属性のたまは飛び出すわけにはいかぬけれ
ども、コルクのたまは飛び出すというようなものがあったとしますと、判例上、簡単に修理ができるようなものは銃砲と
考えなければいかぬ、したがいまして、それを持っておりますと
銃砲刀剣類等所持取締法違反になるわけでございます。簡単に修理ができて、手を加えればすぐりっぱな役に立つというものは所持の規制対象になる。ところが、こちらは
傷害でございますから、たとえばここでいま簡単に修理ができるような鉄砲でコルクのたまでもって撃った、そうしてコルクのたまでけがをさせたというような場合には、われわれがいま
考えておりますこちらの
法律のほうでは、この一条ノ二を
適用するわけにはいかないのじゃないか。そういうふうに所持の規制と
傷害という観点からの規制という
意味において出入りはあるのじゃなかろうか、こういうふうに
考えたわけでございます。その他多少出入りがあるのではなかろうかと
考えて、
法制審議会におきましてはああいう御
説明を申し上げたわけでございますが、ただいま局長が申されましたように、
法制審議会におきます
説明段階におきましては、いまだ内閣法制局と十分打ち合わせが済んでおりませんで、内閣法制局との議論の結果は、同じ
ことばを使いながら多少出入りがあるということではちょっとつらいということになってまいったわけでございます。
そこで一応、政府の解釈といたしましては、ただいま申し上げましたように本体は社会通念できまるものでございますし、その出入りと申しましてもそれほど大きな出入りではないのでございまして、それほど食い違いがあるとは思いませんが、一応これは
銃砲刀剣類の二条と同じであるという——どこが同じかと申しますと、結局刃渡り十五センチとか、四十五度というだけについて同じであるということになってきたのでございますが、その
考え方といたしましては、刃渡り十五センチとか、あるいは四十五度というところに着目をして所持の規制をいたしておりますのは、やはりこれが大きな
傷害の結果をもたらす危険かあるからであろう、この
法律がそういう所持の規制をいたしましたのは、やはり危険なものであるという
考えに立ってこれを規制しておるのであろう。そこでこれを
基準としていまこれからの
法案も
考えていかなければいけないのではないか。しかしながら、御指摘のように、もし将来こっちがさらに四十五度というのが五十度になり、あるいは三十度になるということになりますと、この
法律は
刑法の付属法典というような
考え方で、現時点におきましてそういう
考えに立ってつくっておりますので、将来こちらの行政取り締まり法規が変わることによって変わつていくというのでははなはだまずいのであって、やはり
法定刑その他を
考えますると、現時点においてこれが一応の解釈の
基準になるにとどまるのでございまして、これがふらふら動くときに、こちらがまたふらふら動くということでは、はなはだ穏当ではないのではないか、こういうふうに
考えるわけでございます。