○小林(信)
委員 私は、そんなむずかしい議論は、もう何回も聞いておるので……。それよりも、簡単に申し上げますと、採択をする場合の条件、どういう条件が必要であるか、どういう観点から
教科書を選ぶのかという点を率直にお聞きしようと思ったのですが、かえって採択権というふうなむずかしいところで
大臣が御説明になってはっきりすることができないのです。いまの
大臣のお話を聞いておって思い出すのは、先ごろの参考人の方たちの御
意見です。これは与党のほうでもって選んだ参考人のお話ですが、やはり教師の採択ということは重視しなければならぬ、だから採択というものは教師の
代表にさせろ、こういうようなところまで
意見を述べた人があるほどなんです。やはり教師というものは絶対に忘れてならないものだ。ことにある中
学校の先生である参考人のお話を聞いておりますと、おそらく
大臣があの席におれば、教員というものがどれくらい
教科書の問題については執念を持っておるかということがわかっていただけたと思うのですが、
文部省のお役人でもあんなに
教科書に対する関心を持っておる人はないと私は思うのです。明治四年からの
教科書を持ってきたり、それからの
教科書の変遷の“実を具体的なものを持ってきて並べて、私たちに参考に見せてくれるし、あるいは外国のすぐれた
教科書、あるいは参考書、こういうふうなものまで持って、彼らは
教科書の問題と取り組んでおる。その人が言うことに、私は一時間の授業をするには少なくとも三時間の教材研究をしなければならぬ、こうまで
教科書の問題に深く関心を持つ教師というものが何ら
法律的に関係を持たなくてもいいような形でほうっておかれることは、私はこれは
教育行政としてまことに無責任だと
考えざるを行ないわけです。
そこで
大臣がおっしゃいませんから私から申しますが、
教科書課長が
教育委員会月報に書かれた中にもありますが、まず第一番に、その土地の
事情というものを
考えなければならぬ、あるいは子供たちの特性を
考えなければならぬ、子供たちの能力を
考えなければならぬ。父兄の負担というようなことも書いてありましたが、父兄の
立場も
考えなければならぬでしょう。しかし、こういうふうなことについて最もよく判断できるのは一体だれなのか。いまの
教育委員会というのは、決して
制度の上から
教育委員会に採択権ありとはっきり書かれてはございません。そういうような
制度の中でだれが最も適当であるかということを
考えれば、私は教師でなければならぬと思う。この教師を無視した採択権というものを許すならば、日本の
教育はどうなるかわからぬ、私はこうまで言いたいと思うのです。私は先日はほんとうに不用意でございましたが、
大臣に野球の選手のバットの問題をお話ししたら、それは違う、こういうふうな御見解でしたが、
大臣が野球に対してどれくらい経験を持っておられるか私は知りませんが、あれをもし、監督が選んで、このバットでやれ、打てというふうなことをやったら、これはもう絶対に野球なんというものは上達しないと思うのです。(「
教科書とバットは違うよ」と呼ぶれあり)
教科書とバットは違うと言うけれ
ども、私は同じようなものだと思う。その人間が自分の体力を
考えたり自分の経験というものを
考えたりして、自分に適当なバットを選ぶ。これと同じような気持で教師が
教科書を選ぶということも絶対に必要な条件だと私は思う、いまの
教育委員会の
あり方から、ことに任命制の
教育委員がそろっている中で、
教科書を選ぶというようなことは絶対に私は、不可能だと思うのです。しかし、そういうふうに
制度を解釈しながらも、なおかつ
大臣も教師に選択の機会を与えることは絶対必要である、こう言うならば、やはりどうしても
制度の中に、
法律の中にその必要さをぜひとも表明しなければならぬ、こういうふうに私は
考えておるのですが、その必要はないと、
大臣がおっしゃるならば、これはもう議論の余地はないわけで、やはり望ましいくらいの程度で
大臣は
考えておる、こうしか私には受け取れません。したがって、日本の
教育というものは
教育委員会と
文部省がやるような形になるのじゃないかと私は思うのです。もっと教師を生かす
教育というものが必要であって、こういう
法案を出すということは、ほんとうに
教育を後退させるものではないか、こう
考えるわけです。したがって、その問題はなおまた
あとでほかの
委員から
質問をされると思いますので、その程度にして次へ移ります。
これもやはり何回か問題になりましたが、この
法案と出版業者の問題でございますが、いままでの審議の中では出版業者はあまり問題にしておらない。かえって賛意を表しておるというような簡単な業者に対する判断を文部当局はなさっておられるようでございますが、はたしてそのとおりであるかどうか、あらためてこの問題についての御
意見を承りたいと思います。