○三木(喜)
委員 それならけっこうなんですが、そうしますと、三十六年、三十七年と続いてあるのですから、何もこの
法律が出るのを見越してそうする必要はないのではないか。ただ、やはりあなたもそういう心配があるやに聞いた、あるいはまたそういうことを内心心配せられておるからこれを出されておるのであって、私はやはりここに今度の
法案の問題点があると思うし、また業界も非常に問題にしておる。そういう点について業界としてはありていにものが書いたい。しかしながら、これは後ほど事実かどうかということは聞きますけれ
ども、事実そのことは言えない、そういう空気の中に業界が置かれておる。私も今度この問題に対してどのように把握されておるか業者をたずねてみました。いままで業者に対して行き来はいたしませんでしたけれ
ども、今度はいろいろな方面から聞いてみました。そうすると、これを
文部省に言うてくれるな、
文部省に聞こえたらだめなんだと非常に警戒をしておられます。それは私自身にそういう危険的な要素があるのなれば別ですが、私自身ではなさそうです。
教科書の問題についていろいろな話をすると、戦々恐々として、そうして
文部省に知れたらたいへんだ、このようなことをたくさんの業者が言います。一体
教科書はだれが使うのか。これは子供が使うのですが、それをつくる人、それを
採択する人にこういう非常な抑圧を加えられるということは私は問題があると思います。それはそれといたしまして、この読売
新聞の論説の中には「潜航した
教科書合戦」という題で、三十八年の五月十三日それを発表しております。その中で、私がいま申しましたように、業界それ自体疑心暗鬼になっておるということが書いてある。まず「
教科書会社の
立場からいえば、県単位、五、六種という規定はかなり痛い。
文部省では現在だって七、八種が平均だから大したしぼり方ではないというが、中小業者にしてみればこの二、三
種類が死活問題になってくる。しかも一度
採択した
教科書は三年間変えてはいけないという条項もあるのだからなおさらだ。現在、日本全国の教科会社は八十六社(うち
義務教育専門は四十七社)あり、年間二億一千万冊、金額にして百八十億円の
教科書を発行しているが、このうち九割までが大手といわれる十五、六社の発行になるものだ。
教科書は生徒一人に一冊しか売れない。いわば土俵がきまっているので、業績をあげる、つまり部数を伸ばすためにはどうしても他社の市場に食い込まなければならない。
教科書会社の宣伝合戦が激しくなるのもこんなとこに原因がある。」大手のことが書いてあって、そこで「全則から先生や
教育長のおえら方を旅費、日当、宿泊費持ちで招待し、終われば宴会というのがこれまでの“定石”だった。しかし一昨年の
教科書汚職いらい、この宣伝合戦は、いわば地下に潜航した感が深い。ある業者にいわせると「おんみつ化した。」のだそうだ。たとえば
教科書のほか、辞書や参考書な
ども出版している会社では、
学校回りの宣伝費が「
教科書ではなく辞書や参考書の宣伝員がにきた」といって逃げるし、大会社では、新
制度の
採択方式を見越して、すでに知事、県
会議員など政治力のある黒幕にわたりをつけているといったぐあいだ。しかしいくら宣伝戦がおんみつ化したといっても、なくなったわけではない。現に一昨年の汚職で手入れを受けた会社な
ども、その後発行部数が減っていない現状で、業者仲間にいわせれば「宣伝力がものをいっているからだ」ということになる。」そこで「悲壮な自粛宣言」「自粛宣言で、加盟六十六社はとりあえず1、三十九年度用小、中
学校の
教科書については、誤解を生ずるおそれのある宣伝活動はいっさいやらない2、高校用についても十分戒心する3、
研究会、講習会は五、六、七月の禁止期間後は基準を設けて制限する4、宣伝活動の公正を期し、過当競争を防ぐため、現地に監理機構を設けるなど方法をとることになったが、五月にはいって開かれた各ブロックごとの
趣旨徹底懇親会では、おたがい疑心暗鬼で話があまりはずまなかったそうだ。中小業者のなかには、こんどの自粛宣言を大手会社が十分手をうったあとの休戦協定だという皮肉な見方をするものも多いし、自粛四項目中の「監理機構設置」についても、大手会社が中小会社を監視するのではないかとか、核兵器の監理基機構と同じで守られるはずがないとか、早くも悲観的見方をするものが続出する始末だ。」このような業界の空気です。
そこで冒頭申し上げましたように、あなた方は、業界が納得したと思われておるかどうか。納得したように思います。業界はこれについて文句を言わなかったです。非常に静粛にこの問題を聞いた、このように把握されておることに私は間違いがあると思う。こういう点は、読売
新聞が五月十三日にこういうふうに書いております。私は読売
新聞のことばをかった、だけでなく
現実私も行ってみましたが、
教科書業界に異様な空気がただよっておる。その一つは、ものが言えぬということです。その一つは、こういう統制をやられることに対するおそれ、この二つです。このことは即、次の汚職に連なる大きな要素になってくる、
採択範囲が大きくなるのですから、というように私は申し上げておるのですが、まず最初の、そういう把握をされていなかったかどうか。おとなしく聞かれた、これで納得されておる、こういうように思っておられるのですか。それからさらに汚職の大きな要素をつくっておると思いになりませんか。