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足鹿委員 私は、
都道府県の段階で処理すべきものを
中央でやれなどというようなことは、ただいま申しておりません。そこで取り扱いかねるような、やはり示唆に富んだ大きな問題がどこにもころがっておると思うのです。そういうものがほったらかされておる。従ってそういうものを発見し、そしてこれを総合的に必要を認めた場合には、
中央の
試験場あるいは
大学あるいは
中央機関の出先等が、いわゆるブロック別の
試験場等においてもこれをもっと率直に受け入れていくような体制が必要ではないかということを言ったのであります。そこで農林大臣はこの方面については、長いこと
農林省においでになって御研究になっておるようでありますけれども、最近大内力氏が衆議院予算
委員会の公聴会において次のごとく述べておる。
試験場の
制度を
改良普及員とどう結びつけるかという問題がある。他方には
大学における
農業技術の研究なりあるいは農学の研究なりというものと
技術指導をどう結びつけるかという問題がある。現在のところ
試験場、ことに各
府県の
試験場は国からの委託試験に追われ、
現実に
農民が持ち、また
改良普及員の
程度では解決できないようないろいろな
技術的な問題を
試験場が真正面から取り上げ、これが解決をはかるという態勢は整っていない。問題は全体の
農業教育なりあるいは
試験研究なりそうしたものと
改良普及員をどう有機的に結合するか、そういう点にある。こういう点についての根本的な態勢の立て直しがなければ、今日の
改良普及員制度はおそかれ早かれ行き詰まってしまう。従って今や新しい構想が要求されているのではあるまいかと思う。こう述べております。これは私は、実に簡にして要を得た正しい
指摘であり、今日の
都道府県農業試験場の
あり方に対しては十分耳を傾け、
政府としても
試験場の
あり方等については、もっと
都道府県に対しましてはこのような
趣旨に沿うような方針をいかにして流し、
指導するかということが大きな課題であろうかと思う。
ついででありますから、
政府に関係するいろいろな機関をこのごろあなた方はたくさんつくっておられる。そこで貴重ないろいろな文献を出しておられますが、私はこの機会に農林当局の注意を喚起しておきたい。そういう点から、「
日本の
農業」という雑誌を相当な権威機関が出しておる。
農業調査会ですか、その九号の「
普及センターとしての
府県農業試験場」という座談会において小倉武一氏は「国と県を通じて、
農業試験場を再編成しなければならない。(中略)県
農業試験場を
普及センターとして
考えれば、やるべきことは県の段階で非常に多いだろう」と言っておる。つまり大内氏が
一般的に取り上げた
考え方というものを具体的に掘り下げて、さすがに
農林省のベテランといわれるだけあって新しい
一つの構想を示しておる。さらにその日に竹内博氏は「
府県の
農業試験場でどういうことを試験したらよいかということを
考える場合に、
農家がなまに発言し、要求しないことが問題だと思う。」と言っておるのです。「
農家から
普及員に、
普及員から
専門技術員に、
専門技術員から
試験場へと、ひとびとの
意見のやりとりが三回もあって、
試験場へとどいたころの問題意識は、
農家のものとはすっかり変質され、抽象されており、現場の問題とずれてしまうのではないだろうか。」と
指摘しておるではありませんか。これは私がしろうと論をやるわけではない。私も若干
技術には経験を持ち、深い
関心を持っておるものでありまして、こういうものについてはときどき目を通しておりますが、まことに今日の
府県の
試験場の
あり方そのものずばり言っておるではありませんか。さらに竹内博氏は、別なあとの時間において「(前略)
普及員の
仕事の最も大きなものの
一つとして、今後、この
農家の
組織づくりと要求のとりまとめについて努力をかたむけることを提案したい。」ということを言っておる。つまり個々の
普及員が
農家を
指導したりなどということでは間に合わない、もっと
組織された
農家の
意見というものを
試験場へ取り次ぐべきだということを言っておる。
方法論としてりっぱな議論であろうと思う。
一体こういうことに対して、あなた方はわれわれ国
会議員にいろいろな
資料を送られるが、このような切実な問題に対していかように対処されようとしておるか。さらに
日本農学会の泰斗ともいわれる戸苅義次氏は「
府県試験場は、
普及の
センターの相当大きな柱であるということを自覚しての
試験研究を、やらなければいけないと思う。
試験場というのは試験をやる場所にはちがいないが、その「試験」の
内容は
普及すべき
技術の樹立でなくてはならない。」と言っておるのです。いいですか、現在
府県の
試験場はそういうことをやっておりますか。私は寡聞にしてやっておらないとは断定いたしませんが、きわめてこういう問題は軽く取り扱われておる。そこに
試験研究機関と
普及員、
普及員と
農民、そういうものが悪循環をし、累積をされて、
技術員の
資質の問題にも及んでくるのではないか。今日大内さんが
指摘しておられる、
農家の方が進んでおる、こういう批評すらも出てくるのは、こういうところにあるのではないかと思う。「(中略)
試験研究も
普及技術の樹立に直結するし、
専門技術員もここで体得した
技術を
自信をもって
普及できると思う。」と戸苅氏は結んでおります。つまりこういう
都道府県の
試験場の運営の
あり方というものに対してもっとメスを入れ、もっとこれを強力に新しい態勢に直結していく構想なくして、ただそういう方針でやっておりますなどというような御
答弁では私は不満であります。さらに小倉氏は「「
試験場」という名前をかえて「
普及所」にしてしまったらどうか。そして今の
普及所を
試験場の
普及支所というふうにかえたらいいと思う。」とすら言っております。最後にいま
一つ、みんな同じテーマで角度を変えて言っておりますが、三沢氏は「現在の
試験研究組織では、
試験場の研究と
農家の要求とのあいだに大きなギャップがある。
試験場は、研究成果を
農家の
経営に役立ちうるように流すと同時に、
農家のもっている問題を研究のなかに反映させることが必要だ。
技術研究家と農とをつなぐ
役割を担うべきものが
普及制度と
試験場経営部だと思うが、それらはいままでこういった
役割をどの
程度はたしてきたのか疑問がある。」と断定しておるのであります。要するにこれだけの権威者や学者が
指摘しておっても、大臣は先ほど述べられた
程度でよろしいとお
考えになるのでありますか。問題は端的に言うならば、いろいろやりたいことはありましょう、しかし各級の
農業試験場に運営
委員会をつくれ、まず下の
意見を聞き、また
自分たちの
意見を直す、それを
組織につなぐ運営
委員会の構想というものを、私はこの際ぜひ取り上げるべきであろうと思います。私はいろいろな客観的に述べられた
意見を総合いたしまして、私本来の持論が間違っていないという確信を持つものでありますが、この点について誠意のある御
答弁をお願いいたしたい。