運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1963-03-20 第43回国会 衆議院 農林水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月二十日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 山中 貞則君    理事 東海林 稔君       安倍晋太郎君    伊藤  幟君       大野 市郎君    金子 岩三君       亀岡 高夫君    仮谷 忠男君       倉成  正君    小枝 一雄君       坂田 英一君    田邉 國男君       綱島 正興君    寺島隆太郎君       野原 正勝君    松浦 東介君       松本 一郎君    米山 恒治君       稻村 隆一君    角屋堅次郎君       川俣 清音君    栗林 三郎君       楢崎弥之助君    安井 吉典君       山田 長司君    湯山  勇君  出席国務大臣         農 林 大 臣 重政 誠之君  出席政府委員         農林政務次官  津島 文治君         林野庁長官   吉村 清英君  委員外出席者         議     員 安井 吉典君         議     員 湯山  勇君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 三月二十日  委員稻村隆一君辞任につき、その補欠として川  俣清音君が議長指名委員に選任された。 同日  委員川俣清音辞任につき、その補欠として稻  村隆一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十日  森林組合合併助成法案内閣提出第七三号)(  参議院送付)  林業信用基金法案内閣提出第八一号)(参議  院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  水産業改良助長法案湯山勇君外十一名提出、  衆法第二六号)  水産物価格安定等に関する法律案安井吉  典君外十一名提出衆法第二五号)  森林組合合併助成法案内閣提出第七三号)(  参議院送付)  林業信用基金法案内閣提出第八一号)(参議  院送付)      ————◇—————
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  湯山勇君外十一名提出にかかる水産業改良助長法案安井吉典君外十一名提出にかかる水産物価格安定等に関する法律案の両案を一括議題とし、審査に入ります。     —————————————
  3. 長谷川四郎

    長谷川委員長 まず、提出者からそれぞれ提案理由説明を聴取いたします。湯山勇君。
  4. 湯山勇

    湯山議員 ただいま議題となりました水産業改良助長法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  わが国水産業は、近来目ざましい発屋を遂げ、年間七百万トン近い漁獲をあげ、国民経済の成長と安定の上に重要な役割を果たしているのでありますが、一たび漁業内部構造に目を転じますならば、そこには企業形態の相違による生産面の断層はきわめて著しく、資本漁業漁獲は零細な漁家漁業のそれを圧倒しており、多数の漁民を擁する沿岸漁業の悲運は日に深刻の度を加えているのであります。  このような現実の事態に対する反省の上に立って、ようやく、水産政策の重点を沿岸漁業振興に向け、各般施策をここに集中すべきであるとの機運が次第に醸成されて参っていることは各位の御承知の通りであります。しかしながら、これらの諸施策が真に実効をおさめるには、漁業者の自主的な再建意欲を盛り上げ、その活動を助長するための裏づけとして、技術経営に関し国と地方公共団体とが力を合わせ、強力な指導援助を行なうことができる基本制度の確立がはかられなければならぬことは、言うを待たないととろであります。  近年、沿岸漁村においては、青壮年による研究グループが続々と結成され、沿岸漁業振興推進力として実践活動を行ない、その成果には見るべきものが少なくないのであります。国及び都道府県における試験研究機関の相互の連絡を一そう緊密にし、能率的に試験研究を推進助長するとともに、漁民の要求に応じ、あるいはみずから進んで彼らに接触し、漁掛、養殖及び加工の各般にわたり技術改良経営の刷新に役立たしめるよう広くこれを提供し、あわせて生活改善原理技術を授け、もって、水産業の合理的な発展漁民生活の安定に資することができる基本法制整備いたしますことは、現下の最も重要かつ適切な施策と考えられる次第であります。  以上申し述べました趣旨に即し、この際、所要法的措置を講じ、水産業改良普及事業積極的発展基礎を固めたいと存じ、ここにこの法案提出いたした次第であります。  次に、この法律案の大要について御説明申し上げます。  第一に、試験研究に対する助長措置でありますが、水産業改良普及事業に関する試験研究を推進するため、国は、都道府県その他の試験研究機関に対し、次の各号に定める経費を補助することといたしました。  (一) 水産業改良研究員設置につい   て都道府県の要する経費の三分の   二  (二) 改良普及事業に必要な試験研究   を行なうための試験研究施設の設   置及び運用について都道府県の要   する経費の三分の二  (三) 国及び地方の実情から見て緊急   と認められる都道府県及びその他   の試験研究機関の行なう特定の試   験研究に要する経費の全部または   一部  (四) 都道府県の行なう水面の総合利   用をはかるため必要な調査並びに   試験に要する経費の二分の一  第二に、農林省試験研究機関協力についてでありますが、都道府県水産試験場は、この法律目的を達成するために行なう試験研究に関し、農林省試験研究機関に対して必要な助言と協力を求めるととができることといたしました。  第三に、水産業改良普及事業に対する助成でありますが、国は都道府県に対し、水産業改良普及事業に要する経費のうち、次の各号に定める経費を補助することといたしました。  (一) 水産専門技術員及び水産改良普   及員の設置のために要する経費の   三分の二  (二) 水産専門技術員または水産業改   良普及員巡回指導出版物の配   布、講習会の開催、器材の利用そ   の他の手段による漁民に対する水   産業または漁民生活改善に関す   る教示及び実地展示のために要す   る経費の三分の二  (三) 水産専門技術員及び水産業改良   普及員養成研修のために要す   る経費の三分の二  (四) 水産専門技術員または水産改良   普及員協力して水産業または漁   民生活改善を推進する漁民の育   成のために要する経費の二分の一  (五) 漁村における研究団体の自主的   活動を助長するために要する経費   の二分の一  第四に、水産業改良普及事業実施についてでありますが、この法律規定により補助金交付を受けた都道府県は、水産業改良普及事業実施にあたっては、農林大臣と協議して定めた方針によらなければならないことといたしました。  第五に、改良研究員専門技術員及び改良普及員任務その他についてでありますが、改良研究員は最も高い資格を有する研究者を充てることといたしており、改良普及事業に必要な試験研究を行なうことをその任務といたしております。専門技術員は、試験研究機関及び水産改良研究員と密接な連絡を保ち、専門事項について調査研究をするとともに、水産改良普及員指導することが任務となっております。改良普及員は直接漁民に接して水産または漁民生活改善に関する科学的技術及び経営上の知識普及指導に当たることを任務といたしました。日常漁民に接し、技術経営及び生活改善についての普及指導に当たるのは主として改良普及員であり、その能力のいかんは水産業発展漁民生活改善に大きく影響いたします関係から、水産専門技術員及び水産改良普及員養成研修を積極的に行なうことといたしております。  第六に、水産改良普及所についてでありますが、各都道府県の特性を勘案し、水産改良普及所設置し、水産業改良普及員の行なう水産業改良普及事業に関する事務連絡調整、その他水産業及び漁民生活改善に関する科学的技術及び経営上の知識の総合的な普及指導に関する事務をとらせることといたしました。  第七に、専門技術員及び改良普及員の勤務の状態を考慮し、特に水産改良普及手当支給することができることとし、その支給額を法定いたしました。  以上が本案提出した理由及び法案のおもな内容であります。何とぞ慎重審議の上すみやかに御可決下さらんことをお願い申し上げます。
  5. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に、安井吉典君。
  6. 安井吉典

    安井議員 ただいま議題となりました水産物価格安定等に関する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  わが国水産業は、戦後上昇の一途をたどり、昭和三十六年度には漁獲高が六百七十一万トンに達しました。見落としてはならないことは、このような急激な発展の槓杆となりましたものは、イカ釣漁業、揚繰きんちゃく網漁業サンマ棒受網漁業等中小漁業者によって営まれる漁業であって、そのおもなる魚種は、イワシイカサンマアジサバ等一般家庭の食膳をにぎわす大衆魚であるということであります。  これらの大衆魚は、北海道、東北地方あるいは九州方面等水揚地点における受け入れ態勢の不十分な漁場に片寄って、しかも短期間に集中的に漁獲されるという特徴を持っているのであります。  従いまして、これらの多獲性大衆魚は全国的に見まするならば、その供給は必ずしも需要を上回っていないにもかかわらず、地域的または時期的にははなはだしい過剰生産の様相を呈し、その価格は暴落し、せっかく大量の漁獲をあげながらも漁業者所得はかえって減少し、漁業者は明日の油代、明日の生活費にも事欠くという事態をしばしば招来しているのであります。しかも、不思議なことには、このような場合におきましても、これらのものの消費者価格生産地における魚価低落をそのまま反映しないのが通常でありまして、ここに水産物の流通、価格政策に重大な欠陥があるのであります。  とのことは、単に漁家経済あるいは漁業経営の面からのみならず、国民生活観点からもゆるがせにできないところであります。  農業におきましては米麦をはじめカンショ、バレイショ、大豆、菜種、豚肉、牛乳等重要農畜産物に対しては、内容は不十分ではありましても、とにもかくにも価格安定措置ができ上がっておりまして、豊作貧乏の嘆きを緩和できるのであります。ところが、水産業におきましては多年にわたる水産物価格安定対策樹立の強い要望にもかかわらず、今日まで実効ある制度が打ち立てられていなかったことはきわめて遺憾であります。  政府は、昭和三十四年度において、わずかにサンマかす及びスルメに限り、系統機関が共同保管した場合その組合員に対する前渡金の金利の一部に相当する金額を補助する措置を講じましたが、これは全く一時的な糊塗策であったにすぎないのであります。また、第三十八通常国会において成立を見ました魚価安定基金法及び漁業生産調整組合法にいたしましても、その考え方はきわめて消極的で、漁業調整組合員に対し、同組合組合員調整金支給する場合、その支給に要する経費の全部または一部に相当する金額支給することとしたほかは、サンマかす調整保管に要する金利及び倉敷料の一部を補助するための仕組みにすぎず、見るべき効果をあげ得ないことは、実施以来の経験によっても明らかであります。  日本社会党が本法案をあえて提案することにいたしましたのは、以上の二法によっては、関係漁業者所得の保障と多獲性大衆魚の適正な魚価水準実現はとうてい期し得ないと信ずるからにほかなりません。  以下法案の骨子について御説明申し上げます。  第一点は、この法律対象とする魚種を、アジサバサンマイワシスルメイカ等の多獲性大衆魚としたことであります。  これらの魚種は、その漁獲量においていずれも重要な地位を占め、年間三十−五十万トン程度の漁獲を示し、しかもその平均販売価格は一キログラム当たり十五円−三十円という最も低廉なるものであります。  第二点は、農林大臣または都道府県知事は、組合の申請に基づき、また、漁船等生産能力基準として、それぞれ組合ごと標準販売数量をあらかじめ決定、この数量限度内において価格を保証することとし、その手続規定を定めたことであります。  第三点は、政府は、多獲性大衆魚につき、その生産費基準として水産物価格安定審議会に諮った上、その保証価格を定めなければならないこととする一方、漁業者漁業協同組合または同連合会を通じて指定市場において漁獲物を共同販売することを条件として、その平均販売価格保証価格に達しない場合には、政府はその差額に標準販売数量限度内における販売数量を乗じた額に相当する金額組合交付することとしたことであります。  また、交付金交付を受けた組合は、その組合員に対し、組合員販売数量に応じて按分してこれを交付しなければならないこととし、組合員生産費等を補償することといたしております。  第四点は、組合が、多獲性大衆魚を販売する市場は指定することとし、この指定市場開設者は、組合が多獲性大衆魚をその市場において販売した場合には、その販売価格及び販売数量農林大臣に報告しなければならないこととし、これに要する経費は国が負担することといたしております。  第五点は、多獲性大衆魚を原料として製造した魚かす低落を防止し、その価格の安定をはかるため、農林大臣は、必要に応じ輸入魚かす輸入業者に対し、その輸入した魚かす水産物購買販売事業団に売り渡すべきことを指示することができることにしたことであります。  第六点は、多獲性大衆魚価格の安定に関する重要事項を調査審議するため、委員二十人以内で組織する水産物価格安定審議会設置することであります。  第七点は、多獲性大衆魚等の適正な魚価水準実現をはかるため、特殊法人として水産物購買販売事業団を設けることであります。  事業団は、多獲性大衆魚保管等のため生産地及び消費地において冷蔵庫の建設、運搬施設整備等を行なうほか、多獲性大衆魚及びその製品が著しく低落もしくは騰貴し、生産者または消費者を保護する必要がある場合における買い入れ、売り渡し、あるいは大衆魚需要増進等に関する業務を行なうものとし、その資本金は、政府出資額二十億円と都道府県水産業協同組合等出資額合計額成立当初の資本金は二十五億を予定)とし、その他の組織規定は他の同種組織体の例にならって、これを設けることといたしております。  以上が本案提案理由及びその概要であります。何とぞ御審議の上すみやかに御可決あらんことを希望する次第であります。
  7. 長谷川四郎

    長谷川委員長 この際暫時休憩し、午後一時定刻再開をいたします。    午前十時五十七分休憩      ————◇—————    午後一時四分開議
  8. 長谷川四郎

    長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  参議院から送付されました内閣提出にかかる森林組合合併助成法案及び林業信用基金法案、両案を一括議題とし、審査に入ります。     —————————————
  9. 長谷川四郎

    長谷川委員長 まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。津島政務次官
  10. 津島文治

    津島政府委員 森林組合合併助成法案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  森林組合は、昭和二十六年の森林法改正により強制加入組合から協同組合原理に立脚する森林所有者協同組織としてその組織を変更して以来、今日まで十有余年の歩みを通じまして、民有林における森林施業合理化森林生産力増進にその一翼をになうとともに、森林所有者の経済的、社会的地位向上に寄与して参りました。  しこうして、最近における国民経済の進展と林業を取り巻く諸般の情勢の変化に即応して、林業経営改善林業就業者所得向上等を重視する新しい施策が、各方面から強く要請されるに至っておりますが、御承知のように、わが国民有林は、その多くが零細経営でありまして、森林所有者協同組織活動によらなければ、経営改善等をはかることがきわめて困難な状況にあり、また、経済的社会的に後進性の強い山村地域におきましては、林業発展をはかることなくしては、地域格差の是正は期しがたいと考えられるのであります。従いまして、このような観点から、森林所有者の唯一の協同組織たる森林組合には、従来にも増して、民有林発展山村振興のための多面的な役割が期待されるのであります。  しかしながら、森林組合の現状を顧みますと、相当多くの組合は停滞を続け、系統組織全体としても必ずしも以上申し述べました期待に十分こたえることができない状況にあります。  従来、政府におきましては、森林組合に対して、弱小な組合合併促進のための予算措置を講じ、不振組合対策としては相応の効果をおさめてきたのでありますが、以上の趣旨を体しまして、組合規模に再検討を加え、新たな構想による、いわば前向きの合併促進により、民有林発展山村振興の強力なにない手たり得る、より大型の森林組合を広範に育成し、もって森林組合組織整備強化体質改善をはかる必要性が痛感されるに至っているのであります。  そこで、政府といたしましても、以上のような趣旨合併を促進するため、森林組合合併についての援助合併後の組合事業経営基礎を確立するのに必要な助成等措置を講じ、新たな時代の要請に即応する森林所有者協同組織の健全な発展に資するべく本法案提出した次第であります。  次に、本法案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、本法案による助成等対象は、施設組合合併といたしており、その手続は、関係組合が、共同して、一定事項を記載した合併及び合併後の組合事業経営に関する計画を立て、都道府県知事適否認定を求めることといたしております。  第二に、都道府県知事は、計画適否認定にあたりまして、森林組合に関し学識経験を有する者の意見を聞かなければならないことといたしておりますが、特に適正な事業経営基礎要件と考えられる組合規模出資の総領及び事業執行体制につきましては、政令で一定基準を設定することといたしております。  第三に、政府は、その計画が適当である旨の認定を受けた森林組合合併いたしました場合には、予算範囲内において、適正な事業経営のため必要な施設整備に要する経費の一部及び都道府県計画樹立実施のため行なう指導に要する経費の一部につき補助することといたしております。  第四に、本法案による助成等措置は、五年間行なうものとし、昭和四十三年三月三十一日までに合併したものをその対象とすることといたしております。  なお、本法案と関連して別に提案をしております租税特別措置法の一部を改正する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案によりまして、合併後の森林組合が被合併組合から引き継いだ欠損金につきまして、法人税及び事業税課税標準たる所得の計算上、損金算入を認めることとするほか、被合併組合の資産の評価益から生じた清算所得、不動産の権利取得にかかる登記につきましてもそれぞれ法人税法地方税法登録税法特例措置を設け、従来から合併推進の障害となってきた問題につきまして、税制面での優遇措置を講ずることといたしております。  以上が本法案提案理由並びにその主要な内容でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。  次に、林業信用基金法案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明を申し上げます。  御承知のように、最近における国民経済の著しい発展に伴いまして、林業経営改善とその就業者所得向上をはかることが各方面から要請せられ、他方、木材需要増大等林産物需要構造にも顕著な変化が見られるのであります。このような事態に対処いたしまして、林業生産増大、その生産性向上木材の需給と価格安定等に資するための施策の一環としまして林業金融円滑化をはかる必要があるのでございまして、昨年の中央森林審議会におきましても、この趣旨の答申がなされているのであります。  申し上げるまでもなく、現在林業におきましては、森林組合系統組織預金業務を行なっていないため、農協、漁協の系統組織に比べまして、その内部で必要な資金を自己調達する能力がきわめて乏しく、また林業固有融資保証機関も存在していないのであります。このような事情にかんがみまして、林業生産性向上林業経営改善に資するためには、農林中央金庫その他の民間融資機関から林業経営に必要な資金の円滑な導入をはかることが必要であります。このため、林業者等木材等林産物生産に要する資金種苗等林業生産に必要な資材共同購入に要する資金等林業経営改善に資する資金民間融資機関から借り受ける場合に、その借り入れにかかる債務を保証する林業信用基金制度を新たに設けることといたし、この法律案提出することといたしたのであります。  次に、この法律案内容について概略を御説明申し上げます。  まず第一に、第一章の総則におきましては、この法律を通じて問題になります「林業者等」及び「融資機関」の定義をいたしますとともに、特殊法人たる林業信用基金目的事務所、定款資本金出資等所要事項規定しております。「林業者等」の定義につきましては、林業を営む者、森林組合及びその連合会並びに林業を営む者が直接または間接構成員となっている中小企業等協同組合農業協同組合及びその連合会その他の法人がこれに該当するわけでありますが、制度趣旨にかんがみまして林業を営む者については、中小規模のものに限っております。また、出資の点につきましては、基金は、政府都道府県及び民間林業者等共同出資による法人でありまして、政府は、この基金に三億五千万円を出資することといたしております。なお、この基金成立当時における資本金は、五億円を下ってはならないと法定されております。  第二に、第二章及び第三章におきましては、基金組織といたしまして、役員の定数、職務、権限、任命、任期等並び諮問機関たる評議員会について規定しております。特にこの基金におきましては、業務の適正な運営の確保と出資者の意思の尊重をはかる見地から、定款の変更等重要な事項は必ず評議員会に諮問しなければならないことといたしております。  第三に、第四章の業務におきましては、基金の行なう業務範囲業務方法書等について規定しております。基金業務は、ききにも述べましたように、出資者たる林業者等融資機関から借り入れられる資金につき、当該融資機関に対して負担する債務を保証することでありますが、その対象となる資金には次の三種類を規定しております。すなわち、その一は、出資者たる林業者等がその林業経営のために必要とする資金であり・その二は、出資者たる組合がその直接の構成員となっている林業者等に対しその林業経営に必要な資金を貸し付けるために必要とする資金で、いわゆる転貸資金であり、その三は、出資者たる組合がその直接または間接構成員となっている林業者等にその林業経営に必要な資材を供給するために必要とする資金で、いわゆる共同購入資金であります。  第四に、第五章の財務及び会計におきましては、予算、決算等重要な事項について、農林大臣の認可または承認にかからしめることとしたほか、余裕金運用等について所要規定を設けております。  その他、若干の監督規定を設けるほか所要罰則規定等を設けまして、基金運営が健全かつ適正に行なわれるように配慮いたしております。  以上がこの法律案提案理由及びその主要な内容でございます。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いする次第でございます。
  11. 長谷川四郎

    長谷川委員長 引き続き補足説明を聴取いたします。林野庁長官
  12. 吉村清英

    ○吉村政府委員 森林組合合併助成法案内容につきまして、補足して御説明申し上げます。  さきに御説明いたしました提案理由にもありました通り、本法案森林組合合併についての援助合併後の森林組合事業経営基礎を確立するために必要な助成等措置を定めて、森林組合合併の促進をはかることを目的としておりまして、法案の構成といたしましては、第一に合併参加組合が共同して樹立する合併及び事業経営計画手続等につき規定し、第二に都道府県知事による計画適否認定につき規定し、第三に認定にかかる合併に対する政府助成措置につき規定いたしている次第であります。  以下、その細目につき若干補足させていただきます。  まず第一に計画樹立手続等についてでありますが、これは、第二条及び第三条に規定しております。現行森林法では、森林所有者協同組織たる森林組合として、施設組合生産組合の二種を設けておりますが、本法案による助成等措置施設組合合併対象としております。合併参加組合が共同で立てる合併及び事業経営計画内容には、合併についての基本方針、合併後の組合事業経営基礎となるべき事項その他所要の法定事項を記載するものといたしますとともに、計画樹立の重要性にかんがみまして、計画を立てるにあたりましては、各合併参加組合ごとに、総会における特別議決を行なうことを要求しております。なお、都道府県知事認定を求めるための計画の最終提出期限は、昭和四十二年十二月三十一日と定めております。  第二に都道府県知事認定でありますが、第四条第二項では、二つの認定要件を定めております。  まずその一は、提案理由説明にもありましたが、合併後の組合が適正な事業経営を行なうための基礎要件として、組合規模出資の総額及び事業執行体制の三要素のすべてにつき政令で定める一定基準に適合することとなることであります。この政令で定める基準といたしましては、組合員経営する森林の合計面積がおおむね五千ヘクタール以上、払い込み済みの出資の総額が百万円以上、常勤役職員数が五人以上と定めることを予定しております。  その二は、合併後の組合事業経営に関する計画が、その組合経営条件から見て適当であり、かつ、計画達成が確実であると認められることであります。  なお、第四条第一項では、都道府県知事適否認定を行なうにあたって意見を聞く、組合に関し学識経験を有する者は政令で定めることとしておりますが、これには、都道府県森林組合連合会理事、単位森林組合理事等を含める予定であります。  第三に政府助成措置でありますが、これは第五条に規定しておりまして、都道府県に対し次の二種の補助金交付できることといたしております。  その一は、施設整備補助金であります。これは、都道府県知事認定にかかる合併昭和四十三年三月三十一日までに行なった場合におきまして、合併後の組合が、その計画に従いまして施設の統合整備をはかるにあたって、これに必要な施設改良、造成、取得に要する経費都道府県が補助するときにおける経費に対する補助金でありまして、助成対象となる施設といたしましては、ただいまのところ、林業機械等の林業に関する共同利用施設、オートバイ等を考えております。  その二は、指導補助金であります。これは、都道府県計画樹立実施につき指導を行なう場合における経費に対する補助金であります。  以上の補助金は、いずれも、予算範囲内において、政令で定めるところにより、交付することといたしておりますが、ただいまのところ、補助率は、施設整備費の三分の一、指導経費の二分の一を予定しております。なお、三十八年度予算では、四十六合併分の経費として六百八万三千円を要求しております。  次に、林業信用基金法案関係いたしまして、提案理由の補足説明を申し上げます。  第一点といたしまして、第二条第一項の「林業者等」の定義につきましては、提案理由の中で「林業を営む者」は、中小規模の事業者に限定する旨の説明がありましたが、これを具体的に申しますと、会社にあっては資本の額または出資の総額が一千万円以下のもの及び常時使用する従業者の数が三百人以下のものを、個人にあっては常時使用する従業者の数が三百人以下のものを規定しております。次に、第二条第二項では、「融資機関」の定義を掲げておりますが、第三号及び第五号の森林組合及び事業協同組合で政令で定めるものは、融資機関としての適格性の見地から、出資の総額、執行体制等が一定基準以上であるものに限定することを予定しております。また、第七号の銀行その他の金融機関で政令で定めるものにつきましては、検討中でありますが、銀行、相互銀行、信用金庫等を予定しております。  第二点といたしまして、定款及び業務方法書の変更についてでありますが、このことは基金組織及び運営に関する基本的事項でありますので、第五条第二項及び第三十条第二項におきまして農林大臣の認可にかからしめることといたしたほか、第二十七条におきまして学識経験者及び出資者組織する評議員会への必要的諮問事項といたしております。  第三点といたしまして、資本金の減少は、その性質上、基金業務に重大な支障を及ぼしますので、第十条におきましては、出資者に対する持ち分の払い戻しを禁止するほか、基金出資者の持ち分を取得したり、または質権の目的としてこれを受けることも禁止しております。しかしながら基金から債務の保証を受けるようなことがなくなった者がいつまでも出資者として存続しなければならないことも不都合でありますので、そのような場合には、基金の承認を得て持ち分を譲り渡すことができる道を第十二条において規定しております。なお、基金の解散の場合には、出資の額を限度として残余財産を各出資者に対して分配する旨第四十四条に規定いたしております。  第四点といたしまして、第十九条におきましては、他の政府出資特殊法人と同様でございますが、理事長及び監事は、農林大臣が任命することとし、理事は、理事長が農林大臣の認可を受けて任命することとし、第二十八条におきましては、評議員は、出資者及び学識経験者から農林大臣が任命することとして、広く適任者を求めるとともに、基金運営の適正を期しております。なお、基金の中立性を確保するとともに公務員の職務に専念する義務との抵触を避けるため、第二十一条におきまして役員の欠格条項を設けているのであります。  第五点といたしまして、基金業務について若干申し上げますと、さきに提案理由の中で業務対象となる資金については三種類あることの説明がありましたが、これらの資金は第二十九条第一号で政令で定めることとなっておりまして、この政令で定める資金といたしましては、木材等林産物生産に要する資金種苗等林業生産に必要な資材共同購入に要する資金等について具体的に定めることを予定しております。また、林業者等が自己の林業経営のために必要とする資金につきましては、組合出資しておりますときは、その直接の構成員となっております林業者等は、みずから出資をいたさなくても債務保証を受けられるようになっております。なお、第三十一条におきまして基金業務は、業務方法書で定めるところにより、その一部を融資機関に委託することができるようになっており、適正、円滑に制度が運用されるように配慮しております。  第六点といたしまして、第三十七条では、業務上の余裕金を安全かつ確実に管理するために、その運用方法といたしまして、農林中央金庫等への預金、金銭信託、国債、地方債その他農林大臣の指定する有価証券の取得に限定いたしております。  以上若干申し上げまして提案理由の補足説明といたします。     —————————————
  13. 長谷川四郎

    長谷川委員長 引き続き、両案について質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。川俣清音君。
  14. 川俣清音

    川俣委員 ただいま上程になっておりまする森林二法案について、審議を進める前提といたしまして、林業政策全体について大臣の所見を伺いたいと思います。  このことは、林業の基本的な構想の中で、その具体策として金融の処置あるいは生産団体でありまする森林組合の方途なども生まれてくるのでありますが、こうした部分的な法律によりましてむしろ先に立てらるべき基本的な構想が曲げられるおそれも出てくると思いますので、農林大臣のこの法案を出すに至りました基本的な構想についてお尋ねをしなければならないと思うのでございます。  そこで私は、日本の林業について幾多の議論が行なわれておるし、また参議院におきましても、との二法案成立の際附帯決議がなされております。「政府は、可及的速かに、農林漁業基本問題調査会及び中央森林審議会の答申等を尊重し、かつ、農業施策との関連をも考慮しつつ林業政策の根本方針を確立し、これが実施のため必要な立法措置を講ずべきである。」という附帯決議がなされておるわけでございまして、私どもも全く同感でございます。この点について大臣はいかようにお考えになっておりますか、まずお尋ねをいたしたいと思います。
  15. 重政誠之

    ○重政国務大臣 ただいま御朗読になりました参議院の附帯決議は全くその通りであります。審議会、調査会等の答申を十分に尊重しつつ、農業経営との関連を十分に考えまして基本的な方針を樹立して法律を制定すべきものは制定をいたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  16. 川俣清音

    川俣委員 特に林業は長期計画を要するものでありますし、従って長期展望の上に立って林業発展を促進さしていかなければならないと思うのであります。それだけに、やはり基本的構想が明らかになっておりませんと、民有林の育成の上にも、あるいは林業総体の生産性向上の上にも、長期見通しが立たなければ計画が立たないのではないか。特に森林法におきましては長期計画を立てることを強要いたしております。どんな形で今後林業界が推移するであろうかという見通しと、規制、助成の基本的な考え方が生まれてこなければ、森林組合の単なる合併あるいは単なる融資制度では、基本的な政府の構想が具体的に法律となって現われてこない限り、一つの確信を持って事業を遂行することがなかなか困難である。従って、名前は基本法であろうと何であろうとけっこうですけれども、基本構想を具体化した法律をすみやかにお出しにならなければならないのじゃないかと思うのです。いつごろお出しになる用意がございますか、この点をお尋ねしたい。
  17. 重政誠之

    ○重政国務大臣 川俣さんはもうこの道にかけての専門家ですからよく御承知のことと思うのでありますが、現在の林業経営というものはほとんどその大部分が十町歩以下、しかもそれは農業経営と兼業をしておるという状態です。そこで、そういう状態を一面においてはっきりと把握するとともに、常識的に考えれば二十町歩くらいからが林業経営としての独立の形態じゃないかと思っておるわけでありますが、しかしとれも、はたしてどこへいってもそうであるかどうかということも、私は問題があろうと思うのであります。そこで、三十八年度におきましては、そういうような点を十分に調査をいたして現実を把握いたしました上に、一つ林業に関する構造改善と申しますか、そういうものを打ち立てていきたい、大体こういう考えでおるわけであります。でありますから、できるだけ早い機会にそれらの調査結果も十分に参酌いたしまして基本的な構想を立てていきたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  18. 川俣清音

    川俣委員 大臣の今の答弁は一応了承いたします。しかしながら、基本問題調査会が発足して二年の間研究を遂げ、その答申があって、中央森林審議会において意見が出され、それに基づいて相当検討が進められておらなければならなかったのではないか。大臣はいろいろな調査の必要がまだあることを強調されましたが、私もそれは認めますけれども、漫然として時期を過ごすことは許されないのではないかという点を強調したいのでございます。特に、この基本問題調査会の答申についてもその具体化についてはいろいろ問題のあることは明らかでございますが、何といいましても、私どもといたしましてはこういう天然資源というものは国民に与えられたる資源であり、国民すべての生活を豊かにするためにわが国土を最高度に活用することは国の政治の最高の責任であると確信をいたしておるのであります。このために、国の調査によって山林、原野の面積を正確に把握し、土地利用区分を定め、山林として利用すべき区分には強力な山林政策を適用し、農用地として利用すべき土地は耕作農民にその利用を開放し、あるいは特に大規模山林所有者等につきましては対価をもって買収する。あるいは利用を共用する等の抜本的な施策を講じなければならぬと思うのでありますが、その前提として、日本の国有林の面積あるいは森林の状態等を正確に把握することが、日本の資源問題としてもまた利用者にとりましても必要なことだろうと思う。これがまだ国有林といえども蓄積あるいは樹種あるいは成長度合いあるいは土質の度合い等が正確に把握されておらない。従いまして、明治初年以来日本の総蓄積量は六十億石といわれましたりあるいは七十億石といわれましたりいたしまして、一体蓄積量がどのくらいあるのかという正確なものがない。林野の境界にいたしましても、おのおの台帳に載ってはおりますものの、これも正確であるかどうかという立証も十分ではない。特に、予算委員会におきまして淡谷君が質問をいたしましたように、国有財産台帳には千島の立木並びに地積まで載っておる、これは森林法によりますと、所有しているばかりでなくて、営林の意思を持って所有していなければ森林とみなきないということになっている、単なる所有ではなくて、営林、育林の施業を持っていなければ森林所有者と見なさないという規定をみずから森林法に認めておる、規定をいたしておる。それにかかわらず、保育もできない、管理もできないところを自分の面積に持っておるなんということは、これは私はいい悪いの問題ではない、十分な調査が行き届いておらない結果出てきたものだと思う。この問題をあえてここで取り上げましたのは、そういう欠陥をつく意味でなくして、十分な把握ができておらないという一例にすぎないのでありますけれども、その他幾多指摘ができると思う。ために、日本の資源問題といたしましても、国有林の面積あるいは民有林の面積あるいは森林適地の面積、土壌等を十分調査をして、把握をした上に、森林政策を立てなければならないと思うのでありますが、予算上の制約を受けまして多年の要望がいまだに達成されておらない。むしろとの方が基本的な問題でないかと思いますが、大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  19. 重政誠之

    ○重政国務大臣 もう全く御意見の通りでありまして、私も全く同感であります。ただ正確にその実態をつかんでおらないといわれる点でありますが、これも今お考えになっておるような非常に厳格な意味における正確さといえば、全く御指摘の通りであろうと思うのでありますが、大体のところは今はつかんで林政を行なっておる、これはむろん国有林の話であります。それから千島の問題になりますと、御承知のような事情でありますから、営林財産からはずすのはおけはないのだろうと思いますが、それがいいか悪いか、これもよほど外交的に毛また国内の問題としても私は問題だと思うのでありまして、この点については十分に今後研究、検討をしなければならぬと思いますが、とにかく実態を十分につかんで、そうしてその上に根本的な対策を立てるということは全く同感であります。それから、日本は七割以上毛山国でありますから、ことに国有林につきまして、森林に適するか、あるいはその他農業に適するか、そういうような利用区分というものはしなければならぬ、そうして高度に山を利用するということにいかなければならぬということも全く私も同感であります。ただそういう利用区分というのが抽象的にできてみてもしようのない話であり、現実の問題として、あるいは酪農をやるので国有林のとこのところは牧草地帯にすべきであるということで、現実にそういう計画とその利用区分とがマッチするところに初めて私は完全な経済的な山の利用ということができるのだろうと思うのであります。しかし抽象的といいましても、その利用区分は一応計画的に考えなければならぬ、こう考えまして、これは事務当局で検討せしめておるわけでございます。
  20. 川俣清音

    川俣委員 ある程度の蓄積の把握が行なわれておるし、ある程度の所有の状態が把握されておる、こういう説明です。ある程度というのが問題なんです。私は必ずしも一厘一分違ってはならないとまでは申し上げませんけれども、今後の木材の輸入、あるいは非常時における増伐の問題等が起こって参りました場合、蓄積がはっきりしておませんと、増伐することによってかえって木材価格を高騰させるというような欠陥を露呈することにもなると思うんです。従って国民ひとしく信頼するような蓄積が明確になっておらなければならない。とのぐらいの増伐をしてもなお蓄積がこのぐらいある、さらに生産力はこう拡大していくのだという安心感がなければ、いたずらなる木材の騰貴を招くことがあるでありましょうし、また低落を来たすようなことも起きて参りましょうから、ある程度信頼するに足るような、何人もおおよそこの程度という信頼の置けるような把握でなければならぬ。自分だけが把握しておるのだといいましても、国民の信頼がなければ価値は生まれてこないと思うんです。そういう意味で、もっと徹底した調査が必要ではないか。御承知の通り、アマゾンの流域の立木の調査が世界の木材界に、また世界の産業界に大きな役割を果たしたのです。単なるブラジルの森林の問題じゃなくして、世界的に大きな影響を持っておる。日本も面積は小さいながらも相当蓄積のあるところとされております。こういう点について世界的に信用されるデータがなければ、いたずらに輸入材が日本の森林資源を軽視して、価格の高騰も出てくるでありましょう、あるいは輸入についてもいろいろな向こうからの思惑も加わるだろうと思われるわけです。正常な取引が阻害ざれるということになりますので、国民的信頼を受けるばかりでなく世界的な信頼を受ける実態調査というものが公表されなければならないと思うんです。それにはやはり基礎調査というものが必要だと思うのでありまして、基本法をつくる以前の問題としてこれに取り組まなければならぬと思いますが、この点についての御意見を伺いたい。
  21. 吉村清英

    ○吉村政府委員 私からかわってお答えいたします。  先生の御指摘の通りでございまして、私どもといたしましては、国有林はもちろんでございますが、民有林におきましても、航空測量、それから現地の実地の測量等を進めておるわけでございますが、その点はまだ御指摘のように十分確実なものが得られているということは申し上げられないかと存じますが、昨年まとめましたサンプリング調査でございますが、全国に一万スポットとりまして、これによって従来の積み上げ方式の調査がはたして信頼度があるかどうかということを検討いたしてみたのでございますが、その結果といたしましては、大体——この大体は先ほど先生から申されたおおむね信頼ができる程度という、その程度に私どもとしてはこの積み上げ調査の結果は得られたと存じておるのでございます。しかしながら、これだけではやはり不十分であるということは先ほど来先生の御指摘の通りでございますので、さらに精度を高めますために、そのような方法、それから実地調査の方法をあわせて進めて参らなければならない、かように考えております。
  22. 川俣清音

    川俣委員 そこでこの際なお指摘しておきたいのは、森林法も林業の基本的な性格を持っておるのだと言われておりますが、「この法律において「森林所有者」とは、権原に基き森林の土地の上に大竹を所有し、及び育成することができる者をいう。」ということで、単なる所有者ではないわけです。土地の上に森林のある所有者だけでは森林所有者とは言わないという規定で、「及び育成することができる者をいち。」というのでございますが、森林所有者と名づけられておりまする者、自称しておる者で、この森林法の適用される森林所有者とは言いがたい存在があると思います。最近人工造林等をいたしまして、営林にいそしんでおる人もございまするけれども、ただ親代々一度も見たとともない、あるいは使用人を派遣したこともないという森林地積を持っておる者、あなたの方の林野庁からいえば森林所有者でない者が森林所有者として存在をしておるということ、これは森林地積を持っておるだけであって、森林所有者とは言わないという規定でありますね。首をかしげるけれども何ですか。森林法第二条「この法律において「森林所有者」とは、権原に基き森林の土地の上に大竹を所有し、及び育成することができる者をいう。」こういうのですから、「所有し、及び育成することができる者」営林のできる者を所有者というのでありますかう、地積を持っておる者は森林所有者ではないのです。あとでまた各論のときに申し上げますけれども、森林法の組合員の中にも、森林所有者でない者で組合員になっておる方もないわけではないのです。大面積を所有しておる、地積を所有しておるというだけで、いわゆる森林法の適用外の人もおられるわけでございまして、そういう意味におきましても、基本的なあり方について、はたして林業の基本法というものは、森林法で規定しているような森林の所有者でなければならないのか、あるいはこういうものは除外するのかということがもう少し明確にならなければならないのじゃないか、こういう意味で、別にこれをもってあなたの方の施策を非難するという意味じゃないのです。基本的なものをあらためて出す必要があるのではないかという例に引いたにとどまるわけです。  次に、特に国有林について申し上げたいと思いますが、その前に、林野庁が「林業振興のための対策具体化施策」という構想を発表された。おそらくこれが基本となりまして基本法が生まれるのではないか、これはかなり参考にされるのではないか、いろいろ検討されたものでございましょう。もし大臣、答弁できなかったら答弁しないでけっこうですから、そうあまりしつこく言いません。わかっておるところだけでけっこうです。これによりますと、具体化施策の第一に、生産増大生産性向上というものを題目にあげております。これはもっともだと思います。少なくとも林業政策を論じるものといたしまして、施策を講じるものといたしまして、生産増大生産性向上を主眼といたしますことは、これは何人も同一であろうと思われます。しかし、問題は二点出て参ります。一体生産性向上を林野庁がそう主張できるのかどうか、こういう点について非常な疑問を感ずるのであります。民有林生産性向上あるいは生産増大ということを民有林に責任をかぶせて助成をする、あるいは指導をするということはけっこうなことで、これは間違いじゃありませんよ。その通りでなければならぬ。しからば生産性向上におきましても、国有林みずから範をたれなければならないと思うのです。ところが、同じく林野庁の出しております「日本林業の現状と問題点」三十七年二月によりますと、林野庁所管の国有林は全国森林のうち、面積で三分の一弱、森林蓄積の二分の一弱を占め、単位面積当たりの蓄積は民有林のそれの二倍以上であるが、立地条件の悪い奥地にある老齢天然林が多いため、単位面積当たりの成長量、すなわち生産性は、民有林のそれと比べると六〇%弱にとどまっておる。これから大いに育成しなければならぬ劣っている民有林、それよりも、成長量、生産性は六〇%に達しないということなんです。それは奥地に老齢の天然林を持っておるからだ。持っておるのをどうしなければならないかということが問題なのでありまして、持っているから生産性が低くたってやむを得ないんだという説明は、民有林を育成するという立場に立ちましても自己批判をしなければならぬ問題じゃないかと思いますが、この点だけは大臣答弁できるでしょう。そんなむずかしい問題じゃない。
  23. 重政誠之

    ○重政国務大臣 御指摘の通り、国有林は、天然老齢林と申しますか、過熟林分が相当にあると思います。これを人工造林に切りかえていくということは、年々その方針でやっておるわけであります。それにはもちろん林道をつくり、そうして、天然過熟林はこれを研伐をやる、そうしてそこに造林をやっていくということをやらなければならぬわけでありまして、これも一応計画的に進めておるわけであります。どうも一度にやるわけに参りませんので、できるだけその速度を速めまして人工造林に切りかえていく、こういう方針でやりたいと考えます。
  24. 川俣清音

    川俣委員 先ほど読み上げましたように、森林法に規定いたしまして民間の規制をいたしまして、あるいは規制ばかりでなくて助成もいたすわけでございますが、奨励、勧告もいたしまして、森林資源の保全並びにその生産力の増大のために力をいたすということを林業基本法の根本的建前にしておる。それはよろしい。それは何人も容認する。ところが、国有林がみずから老齢過熟なものを持っておりますならば、その土地の生産性を高めていかなければならない義務を、国有林自体、政府自体がその責任を負っておるのではないか。人に強要することについては非常に厳格だけれども、自分のことは粗略にしておるということになりますと、指導性などというものは生まれてこない。みずから法律を立ててこれをもって指導しておりながら、みずからその指導性を欠くようなことがあっては、国有林の使命が果たせないではないかと思うのです。それであえて強調したのです。だんだんやっていきますよ。民間だってだんだんやりますよ。こういうことになる。それではいかぬということで基本法をつくられるという考え方でしょう。もっと促進をしようという考え方、近代的に進めていこうという意図でつくられる、それならみずからもっと計画を改変していかなければならないことになっておるわけですが、従来の惰性でやるということは許されないのじゃないか。自分は惰性でやっておるものだから、基本法をつくるというと自分が縛られるために基本法をつくることをちゅうちょしておるのではないかという非難も出てくると思うのですが、大臣、との点どうですか。
  25. 重政誠之

    ○重政国務大臣 これは御説の通りであります。速度を速めて人工造林に切りかえていかなければならぬ、こう考えておるわけであります。
  26. 川俣清音

    川俣委員 速度を速める、いつから速めるのですか。今までの五カ年計画を見ましても、そんなに速めてはおりません。むしろ伐採量はふえて参りましても、官行造林等明治の末期から大正の初めに植林したものを対象にいたしていくでしょう。従来の林野の伐採も、老齢過熟なものを対象にしておるよりも、もう少し手近な人工植林的なもの、あるいは手近なところに存在するものを伐採しておるという状態です。奥地には手が伸びていないのです。最も生産性の低いところに手が伸びないで、やや高いところに手が伸びておる。それをもっと高めようというのですから、これは悪くないでしょうが、そういう経営のずさんさというものはあってはたらないのではないかと思うけれども、これも大臣一つ答弁を願いたい。もう十分知っておるからいいだろうというお話ですが、知っておるのをやらないから問題にするのです。
  27. 重政誠之

    ○重政国務大臣 奥地の生産性が低い、そういう天然過熟林が存在する、これはそうでありますが、これもやはり自然的条件がありまして、それを人工造林に切りかえていくなら、大いに生産性が上がるところもあれば、上がらないところもあるのではないかと思うのです。それからまた治山治水の関係上伐採のできないところもあるのじゃないか、こういうように私は思うのでありますが、御趣旨の点は全く同感でありますから、十分に一つ事務当局を督励いたしまして、御趣旨に沿うようにやって参りたい、こう考えます。
  28. 川俣清音

    川俣委員 大臣の答弁、その通りでいいのです。ここは人工造林に編成がえをすることができないとか、ここは保安林ではないけれども保安林に当たるような場所であるからこの資源は保存するとかいうような調査ができておれば、それでよろしいのです。できておる、できておると言うから、それじゃその計画に基づいてやっておられるかと聞いたのです。調査ができておれば大臣の今の答弁はおかしいと思う。まだできていなければ大臣の答弁は正確だ、こう私は思う。それでよろしいと思う。調査ができているかと聞けばできている、こちらに聞けばいやそいつはまだ十分にできていないために手はつけられない、こういうことになりますと、どうも大臣の答弁自身に矛盾があると思う。私は矛盾をあえてこの際つこうとは思いませんけれども、これは久しい前からの問題でございまして、要は予算に制約を受けておるということなんです。特にこの予算の問題につきまして、私がたびたび強調することでございますが、公共予算は、直接税であろうと間接税であろうと、国民の税負担という形による歳入をもって歳出をはかりまするから、できるだけ苛斂誅求のないように歳出が制約を受けることはやむを得ないと思うのですが、企業財産であるからには、あるいは林野の持っておる使命として一つは保安施設を講じなければならぬのと、もう一つはやはり企業性を高めるために生産性向上に努めていかなければならぬということが企業運営の基本でなければならないと思うのです。ところが従来は、歳入にこだわっておって、拡大すべき歳出、すなわち追加投資を行なうような歳出の制約を受けておる。奥地を開発するならば追加投資をしなければならない。その追加投資の制約を受けておるために、奥地林が開発されていないという欠陥を生じておる。たばこ専売ですら広告費を多大にかけておるのですよ。たばこ専売なんて広告費をかける必要はないのじゃないかと思うのですけれども、その必要性があるという。たばこ専売の収益が増大するための投資だそうです。大蔵省だってたばこの広告費まで収益増大の投資と見るからには、造林についてこれが投資であるという考え方になってもよろしいのじゃないか。ならせないとするならば、説明が悪いか熱意が足りないか、そういう農林省  の態度でないかと思う。大体木を切れば収益だ——財産を減らせば収益で造林は支出だなんという考え方で運営されておるのじゃないかと思うのです。植林をすることは長期投資であっ  て、財産をふやすことですよ。どらむすこがいておやじの木を切ることは生産でも何でもないですよ。財産を減らすだげです。売り食いするだけです。タケノコ生活ですよ。今の林野庁はタケノコ生活でしょう。前から持っていたものを売り払って食っていこうとするのはタケノコ生活だ。タケノコを植えることをやらないで、できたものから皮をむいてだんだん食っていこうということなんです。どうもそういう方法になっておるのではないかと思う。これは林野庁の特別会計の制度が悪いのでありまして、たびたび指摘していることでありますけれども、国有林野の経営規程を私はもう一度ここで読んでおきますが、「国有林野は、国土の保全その他国民の福祉の増進を図ることを旨とし、森林資源の培養、森林生産力向上及び経営合理化に努めて、経営しなければならない。」という国有林野経営規程がございます。この方針通り行なえないように予算の制約を受けておる。さらに第三条は「国有林野の経営については、森林基本計画(森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第四条第一項の森林基本計画をいう。)に従い、特に次の各号に掲げる事項を推進することに努めなければならない。(一)林産物の供給、搬出施設その他の事項に関し、国有林野以外の森林の経営との調整々図ること。(二)伐採跡地及び未立木地に対する植栽、林相の改良」——これは大臣御承知の通り、生産性の低い林相を生産性の高い林相に変えるということです。「林相の改良、林分の保育その他により、森林資源の培養及び森林生産力向上を図ること。(三)林地の開発及び林産物の集約利用のために必要な林道その他の生産施設を拡充すること。」これは三項までで、四項、五項は除きますが、こういうように林野経営の憲法ともいわるべき経営案を持っている。林野庁の職員になるには大たいこの試験をパスしなければならない。これを順奉することを誓約しなければ職員になれない。それでこれを基本にして経営をされておる。この経営方針と特別会計とは衝突するわけです。そこで林野の内部におきましては、これが林野の憲法として尊重されておる。訓令ではありますけれども、この林野の憲法として尊重されておるものと会計の運営とは衝突を来たす。むしろこの運営を制約する形になっておるわけでありますから、特別会計について一段と改正をする必要があるのじゃないか。これが基本になって民有林についてもこれと同様な森林計画樹立させることを目的にいたしております。こういう森林計画に基づいて森林組合運営されなければならない、森林所有者はこれに基づいて運営しなければならないと規定されておるのでございますから、民有林は別に特別会計法の制約を受けませんけれども、その指導の立場にある国有林が特別会計の制約のもとにおいて拡大していかなければならない、雇用の安定をはかっていかなければならない、あるいは山村の経済に寄与していかなければならないという使命、またはさらに国土の保全その他国民の福祉の増進をはかることを旨として経営していかなければならないというこの規定は、非常に尊重されていいものだと思うのです。これを制約をするような特別会計法についてはこれを改正する必要があると思いますが、この点についてのお考えを伺っておきたい。
  29. 重政誠之

    ○重政国務大臣 ただいまお述べになりましたように、事ごとにどうも会計法と衝突し矛盾をしておるとも考えないわけでございますが、十分一つ御趣旨を体して検討いたします。その上で改正の必要があるものはすみやかに改正の手続をとりたい、こう考えております。
  30. 川俣清音

    川俣委員 私があえてこれを強調いたしますのは、先ほど申し上げましたように、長期投資あるいは追加投資というものが必要であるにもかかわらず、これが制約されておるから生産性向上させる基礎ができないのだ、一般に生産性向上民有林に強要するからには、みずからの生産性を高めていかなければならない、その生産性を高めていく制約の基礎になっておるのは特別会計法だ、こう指摘したのでありまして、こういう点についての改正の必要があるのだ、こういう点でございます。  次に一つ問題を変えてお尋ねをしたいと思いますが、森林基本計画ができました際にこの制度の発足にあたりまして、国会において林野庁が説明をいたしておりますが、その説明によりますと、森林計画制度は、国の責任において森林計画々編成し、国が最小限度に要請する森林施業についての義務と制限の限界々明示し、その範囲内で所有者の行為を制限し、または積極的に行為を義務づけることにした、従って従来の施業案制度と比較するならば、一面においては民有林施業案を国家権力をもって著しく制限をすると同時に、他面においては、所有者の施業に対する監督的な立場を離れて指導的立場に立つこととした。こういう説明をして、森林計画制度に移りかわるという説明をしておるわけであります。これによりますると、森林基本計画は林産物の需給調整を内容とする計画ではなく、その目標はあくまでも森林生産の保続をはかることであり、森林施業合理化に資するためであると説明をしておるわけです。これはかなりドイツ林業の影響をまだ受けておるではありましょうけれども、森林基本計画なるものについては、こういう態度で森林法の改正、森林計画制度を国会の承認を求めたわけでございます。これによりますると、林産物の需給調整の内容を有する計画ではなく、その目標はあくまでも森林生産の保続をはかることであるというのです。森林生産の保続をはかることであるというのでありまするからして、もちろん合理化を伴うのでありましょうけれども、さらに積極的に人工造林等を行なうことによって、森林生産の保続をはかることが目的であって、伐採をするようなことは目的ではないんだ、まあ反語で言えばそういう反語になると思う。ところが今国有林は、先ほど申し上げましたように、伐採を収入として、それを歳入にして植林を行なうという形をしておるために、木材価格が下落をいたしますると、本来であれば価格の調整の役割を果たして売り惜しみをするというか伐採を制限し、価格が高騰した場合には増伐をして価格の調整を行なう等、国有林野の特質でありまする価格の調整あるいは需給の調整を行なう国有林野の使命というものがあるにかかわらず、むしろ価格が下落すると歳入面に欠陥を来たすものですから、あえて増伐等を行なうあるいは石当り単価の高いものに伐採を変えていく等の収入増の計画をいたしましてバランスをとるというやり方が、今なお行なわれておるのです。これは林野庁の首脳部はいやそういうことはありませんと、おそらく説明するでありましょうけれども、それは中央ではそういう計画ではないのですけれども、歳入をやかましくされまするとそういう欠陥が出てき  ておることは明らかであります。これは監査官等が地方に参りましたならば、おそらく調査が行なわれておることだと思うのです。歳入を非常に強調しておる国の財産の処分でありまするから、厳格であることはあたりまえでございましょう。厳格でなければならぬでしょう。特に歳入を考えるということはこういう欠陥を起こしておるでしょうし、また今ごろ歳入増になりますると、伐採したものの売り払いを四月、五月に延ばしておるのですよ。そういうバランスの仕方をしておる。三月に伐採したものを、もう土場に出たものを年度内に予定の歳入に達すると売らない。すでに市場効果のあるものを売らない。これは価格の調整のために売らないなら別ですよ。単に歳入という形で考えるために売らない。今ごろ土場に行ってごらんなさい。政務次官がときどき出張するでしょうから、土場に行って見てごらんなさい。  一定の歳入に達すればすでに伐採したもの、生産したものを売らないで来年度の歳入にするというやり方を行なっておるのです。足りないというとさらに追加伐採をする、あるいはもっと近いところで伐採をする、そういうことで歳入を補おうとするやり方が行なわれておりまして、森林計画に基づく伐採だとか造林じゃないのです。人には実に模範的な手本を示しておりますけれども、下手な絵かきが手本をつくったようなものでありまして、手本にはならない。大臣、これは一体どうですか。
  31. 吉村清英

    ○吉村政府委員 先生の御指摘のような事業の運営でございますが、せんだっても答弁申し上げたのですけれども、特別会計が創設をされましたごく初期でございます。終戦間もない初期でございまして、そのころには確かにこの資金繰りその他からそういったことが行なわれたかと考えておりますが、現在におきましてはそういうようなことはやっておりませんし、また現に、この木材価格の調整等のためには進んで貢献をずるという積極的な態度で事業を行なっておるわけでございます。あるいは先生の誤解を受けております場合によっては御都合次第で適当なところを切るというような御指摘があったかと思いますが、そういうようなとこはやはりこの木材市場の調整等の目的からぜひ必要でありますというような場合には、経営計画の変更をいたしまして、また特別の場合には一定限度をもちまして節伐、過伐、増伐をいたすことも許されている範囲内ではやっておるわけでございます。それから売り払い未了越しの問題でございますが、販売未了越しにつきましては、やはり林業と申しますか、期限を年度末で切りますと、冬山から夏山へかかる間に若干の期間が出て参りまして、その間の木材需要にこたえられないというようなことから、先生の御承知のような、秋田あたりでは年々一定限度をもちまして未了越しの材をつくっておるわけでございます。かつてなかなか特別会計の経営状況が困難でありました時代とは、現在は非常に面目を新たにしておると考えておるわけでございますが、さらに十分にその点は注意をいたしまして、かりそめにもさようなことの起こらないように私どもも指導して参らなければならないというように考えております。
  32. 川俣清音

    川俣委員 私の指摘したのは、森林計画に基づいた歳入歳出をはかっておるのじゃなくて、むしろ会計に支配されておることを指摘をしたにとどまるわけです。そのやり方が不正であるとか不当であるとかという摘発ではないのであって、森林計画に基づいて計画をするという建前でありながら、その建前を放棄して特別会計に縛られて逆に森林計画が乱用されておるという点を指摘したにとどまるわけであります。  次に、こういうことがいまだによくいわれておるわけでございますが、伐採することを生産と言う。直営生産とは何かというと、直営で伐採することが直営生産だ。農業上の生産というのは、耕耘、種をおろして育成して収穫するまでを生産といわれておるわけです。すなわち農林省の統計におきましても、農産物の生産という中にはそういう意味に生産を使っております。農林統計におきましても生産とはそのように理解をして統計がつくられておるわけでございますが、伐採を生産とするという用語に使うというようなことは、林野の法律の中にも、あるいは規定の中にも伐採が生産であるなんという用語に当たる用語が見つかりません。生産とはやはり植林をすること、あるいは種苗の生産というようなことはございまするけれども、伐採を生産なんということにはなっておりません。製品生産という言葉はございまするけれども、伐採を生産なんということにはなっていないようであります。きょう法令用語をいろいろ調べましたけれども、法令用語にも伐採が生産であるというような用語の使い方はないようでございます。これは通称そういうふうに言われておるのでございましょうが、この観念は、材木屋に素材を届けることが、材木屋のために生産という言葉が使われたのだろうと思う。材木屋から見れば自分のところへ届くまでが生産だというように認識を持つのもあたりまえだと思いまするから、これは材木の供給業ということならば、生産ということを使われてもあえて悪くはないと思いまするけれども、これも森林基本計画によりますると、生産とは植栽をすることであります。明瞭でございます。その生産性を高めることである。通称伐採すること、自分でやることは直営生産だ、請負師に木を切らせるととは請負生産、こういう用語が普通に使われておる。惰性で使われておる。言葉ですからどうでもいいですよ。しかし従来そういう惰性で使われておることは、切ることが能であって、植えることが従であるという考え方がここへ出てきておるのではないかということを私は指摘したいのです。切ることだけが仕事であって、植えることは別だという考え方が出てきておるのではないかということを指摘したい。すなわち、この考え方というものは森林基本計画でいう方針に従っておらないやり方であるということを指摘したい。もしみずからがそういうことでありますならば、この森林基本計画に基づいて施業しなければならぬ。森林組合等に指導することもできない、合併いたしましても指示を与えることはできないであろうということを憂うるあまりにこの問題を提起したのでございますが、これはたびたび林野庁に指摘をしておるところでありまして、林野全体の考え方が歳入、すなわち木を切れば歳入だという頭に支配されて、切ることだけが能であって、切るための合理化、切るための近代化ということについては、かなりの努力を払っておりまするようですが、さらに生産性を高めるための地ごしらえであるとか、育林であるとか、あるいは、はなはだしいところになりますると、当然指摘されておりまするような保育に関する事項、下刈り、つる切り、枝打ち、除伐等の施業が十分国有林におきましても行なわれていない。予算上の制約を受けて下刈りの費用を節約しなければならない、あるいはつる切りの費用を惜しまねばならぬ、あるいはそういう必要を認めておりながらも、六カ月以上の長期雇用になるからこの程度で打ち切っておかなければならない、そういうふうに予算に制約を受けて生産性予算上からあえて低下さしておるということが事実あるわけです。そうあってはならないという森林基本計画、それに基づいて今度の民有林についても育成しよう、そういう意味においても林業の金融制度もやろう、こういう考え方をしておりながらみずからが予算に制約を受けて、雇用の問題についても、基本計画から雇用がきまるのではなくて、予算上制約を受けているというやり方が行なわれておりますと、将来非常に問題を起こすものであるということをこの際指摘して、あとに徐々に具体的に指摘をしたいと思うのですが、この点についての大臣の御答弁を願いたいと思います。
  33. 重政誠之

    ○重政国務大臣 お話の通りに、原則としましては国有林の経営は施業案を立てて、そして継続して輪伐をしていくという、いわば永久に森林を保存していくという方向でやっておるわけでありますが、かといってそればかりではない、やはり場合によれば木材の需給にも相当役立つ面も実際はあろうかと思うのでありますが、そこらは調和をとってやっておるわけでございます。  ただいま御指摘のございましたように、生産というのが、木材を中心にして、直営生産といえばやはり木材を中心にしての言葉であろうと思うのです。これは理論的にいえばむろん造林からが木材生産であって、いわゆる請負生産とかあるいは直営生産というのは、生産の一つの部面、加工部面といいますか、そういうことになるのかもしれないと思うのでありますが、それはそういう言葉の使い方も十分心得てはおるわけでありますけれども、ややともすればそれを誤って観念をしがちであるということの御注意は、まことにごもっともであります。それらの点も何かいい方法があれば、決して固執するものではないのでありまして、改めるにやぶさかではなく、それらの点も十分検討いたします。
  34. 川俣清音

    川俣委員 大臣がお急ぎのようですから、おもなる点を大臣にお聞きいたしまして、大臣退席のあとでもう少し具体的に長官にお尋ねをしようと思いますが、さらに基本計画によりますと、第二にあげておりますのは造林の推進ということであります。「木材需要増大傾向に対処し、将来の需給の安定をはかるとともに、農山村所得水準の向上に資するため造林推進の施策を強化する。(一)人工造林の推進(ア)拡大造林の推進 昭和六十年までに民有林の人工造林地を一千万ヘクタールに拡大することを目標として補助を強化するとともに、融資枠の拡大、融資条件の改善をはかる。(イ)早期育成林業の推進 早成樹種、林地施肥を補助の対象とするほか、密植造林等の指導を強化する。」さらに「(2)優良種苗の確保(ア)林木育種事業の強化」として「採種園、採穂園の造成等に対する助成を強化するとともに、用地確保のための措置を講ずる。」用地確保のための措置を講ずるという考え方が出ておるわけでございますが、ここで問題にしたいのは、この前にも予算の分科会で大臣にお尋ねしたところでございますけれども、将来の造林計画を、民有林の造林計画あるいは林業を促進するからには、地代が生産の大きなウエートを占めて参りますために採算を割るような結果に陥るのではないか。いたずらに土地の騰貴というものが、むしろ農業生産の上に大きな障害となるのではないか。単に林業ばかりではなくて農産物全体にとって、農地の地価、林地の地価の高騰が将来の生産を大きく制約をする、制限をする結果になるのではないか、こう思うのです。そこで、できるだけ土地の高騰を押えて、その上にその土地を利用して耕作をする、あるいは植林をする、その生産に利益をもたらせるようにしなければならないと思うのですが、大臣はこの点についていかようにお考えになっておりますか。
  35. 重政誠之

    ○重政国務大臣 お説の通りであります。ところが地価の高騰を抑制する具体的な方法はなかなか有効適切な方法が見つからないわけでございます。これは農業といわず林業といわずすべてそうであります。さらには私は製造工業もそうであろうと思います。とにかく日本は土地の値段が高過ぎるということはあらゆる方面で言われておりますが、それにもかかわらずなかなかむずかしい。ただ農業につきましては、御承知のように収益価格で土地耕地は売買をせしめるという、いわゆる自作農の創定の方針がございまして、それに現在はよっておるのでありますが、しかし実際はなかなか行なわれないというのが現状であります。これはなかなかむずかしいことでありますが、われわれも十分に検討をいたしたいと思うのでありますが、川俣さんのような専門家で何かいい知恵があればそれもまた教えていただきたい、こう考える次第であります。
  36. 川俣清音

    川俣委員 そういうふうに教えてもらいたいと逃げる、こちらは質問したのでありまして、政府施策をお伺いしているのでありますが、私と大臣と立場がかわれば大いに施策を論ずるわけであります。そういうわけではなく、何らかの方途を講じなければならぬであろうということと、今政府が考えておられまする、従来は固定資産税というものは収益価格で固定資産税の基礎をつくっておったわけですが、最近は時価主義に変わられるわけであります。今年から実行されようとしておるわけですが、こういう時価主義になりますると、地勢の悪い、土質の悪い山林地でありましても、山林面積が不足でありまするというと、土地の値段が高騰するということにもなります。土壌がよくて地勢がよくて収益が上がるところで高くなるならば、これはやむを得ないということも、一応言えるのではないかと思いますけれども、そうではなしに、土壌が悪くても、地勢が悪くても、その環境上林地が不足だというとこうかう林地の価格が上がる、時価が上がるということもあり得るわけです。そうなって参りますと将来の林業政策というものは破綻をするのではないか、これは林業ばかりではなく農地についても同様です。ことに生産性は低いと言われており、しかも農業所得というものが補償されない価格であると言われておりながらも、その収益価格と言われるなら、これまたやむを得ない点もありましょうが、時価でやるならば、これは全く生産性を無視した価格で課税をきれるというようなことについては、農林省はこれは反対をしなければならぬだろうと思うのですが、大臣はいかようにお考えになっておりますか。これは農業上重大なことだと思います。
  37. 重政誠之

    ○重政国務大臣 固定資産税の評価がえにつきましては、私も十分詳しくはないのでありますが、大体評価がえをいたしましても全体としての固定資産税というものは変えないというのが方針のようであります。そこで今度は農地なら農地について内訳を見てみますというと、ほんとうに農業経営する、その対象となる耕地を農地であると言うばかりではない。すぐにも宅地になり、工場の敷地になるというようなところも、やはり稲をつくり麦をつくっておるならばこれは耕地である。こういうふうに耕地というものが総称せられておりますために、実際の売買は都市近郊、ことに今にも宅地になり、市街地になるというようなところは、決して収益価格では売買にならない。当然そういうところは宅地としての時価で売買をせられる。それがやはり耕地として固定資産税の対象額が、きめられておれば、これは純粋の農業経営対象となる耕地との間に差異がないということになり非常に不合理なことである。そこでそこら辺のところはやはり時価主義による方が公平にいくのではないかと私は思うのであります。問題は要するに全体としては税金の総額としては変わらない、ただ配分の方が今申しますように純粋なる農地と、あるいは農地とは言っておるけれども、すでにこれは宅地と目されるようなところに、つまり課税の公平を期するという意味からすれば、現在考えられておるような固定資産税の評価がえを時価主義によってやる、そうして税率がおのずから違っていく、こういう方が、税の公平という面からいけば、あるいは適当なのではないかと私は考えるのであります。ただ税率が上がれば、これは問題はなくただいま御指摘の通りであろうと私は思うのであります。
  38. 川俣清音

    川俣委員 それは大蔵省の説明をうのみにされますというと、そういう説明を納得されるでありましょう。確かに大蔵省の主張するように実際は農耕地でありながら、事実上は宅地または工場用地に転用をせられる用意のあるところ、あるいは近く都市計画によって宅地になるであろうと計画されておる土地については、それもしかるべきだと思います。しかし、本来農耕地を使用いたしまして生産をしようとする農業者にとりましては、時価主義などによられますと、何といいましても農産物の価格を上げていかなければならない。ところが、一般の消費者方面から制約を受けて価格を下げなければならないという両はさみの中に崩壊をしていく農業というものを見られるわけでございまして、私どもは非常に憂慮しておるのでございます。この点について、特に農林省として、基本計画もけっこうでありましょうが、こうしたことの起こらないように、すみやかに林地につきましても基本計画を立てまして、こういう林地につきましては、林地以外に使用させないような案を打ち出されて、いたずらに時価相場によるところの売買による林産物の生産の低下を来たさないようにしなければならないのではないか。基本法が出る前に、すでにこういう点について手を打つ必要があるであろうということを強調しておきたいと思うのでございます。  次に、もう一点だけ特に大臣にお聞きしておかねばならぬと思いますが、従来水資源につきましては、国民生活向上に伴いまして、また工業生産増大に伴いまして、都市の形成の変貌によりまして、水の需要が非常に拡大をしてきておることは、大臣お認めの通りでございます。工業用水にいたしましても、上水道にいたしましても、あるいは農業用水にいたしましても、水の確保が緊急な問題とされております。ところが、林野庁は、水源林、保安林を持っており、これに特別な施策を講じておりますものの、森林の機能に漫然と依存をいたしておりまして、水源林、保安林だからして水の保有能力を果たしておるのだという机上だけの安心感で施業案を立てておるのではないかと思うのです。わかりやすくいえば、水源林、保安林だから水資源の確保に役立っておるであろう、こう考えておるだけだ。ざらに、日本では、驟雨もありましょうしあるいは長期の雨もありましょう、集中豪雨もあるわけでありますが、これらの雨量をどのように確保して下流に流出させるかということが、本来の水源林の機能でなければならないと思うのであります。もう少し世界的な視野で近代化して、水の保有力を森林地内にたたえるという方途を講じなければならぬのじゃないか。これにはすでに拡水法と呼ばれておりまする溝渠方式、立て穴方式、あるいは冠水方式等が考えられて研究されておるわけであります。林野の管理規程を見ますと、国有地の一木一草といえども管理しなければならない規定になっておりますが、そのうちでも一番価値の高い水については、管理の規定がない。一体山林地内の水は公の水なのか私の水なのかという問題もまだ解決されてはおりませんけれども、森林地内に降った水はやはり所有者の水と見て、これを地下水として、さらに表流水として下流に徐々に流してやるということの施設を講じまして水を売ることを考えることも一つの方法ではないかと思うのです。これには地方税法の七百三条によりましてこういう負担金的な課税をする方法も講ぜられております。いわゆる受益者に対する負担金として課税方法をとっておるわけですが、これは課税というのか、負担金というのか、負担金はとりにくいですから課税方法をとったのでございましょうけれども、一応そういう方法もとられておるわけですから、国有林野におきまして水を保有して、徐々に流水として流してやるということは、下流の工業用水にとりましても、上流水にとりましても、非常に貴重な水となるであろうと思うのです。建設省は、途中からキャッチしましてダムをつくると、それから先は有料だという考え方ですけれども、もっと上流において徐々に流す施設を講じて、用水料をとっても、貯水料をとっても、決して悪くはないと思います。むしろそういうことによって水の調節がはかられ、しかも案外下流でダムをつくるよりもそうした施設をみずからつくることによって森林機能の発揮をすることもまた森林計画の一つでなければならないと思いますが、大臣、一つ勇ましくこの計画を立てられたらどうですか。これは私は、損はしない、相当な収益の上がる施設であるというふうに理解をしております。
  39. 重政誠之

    ○重政国務大臣 御説拝聴いたしましたが、これは関係するところも多いと私は思うのであります。まあ言ってみれば、下流でダムをつくるのを、それぞれ上流で、山のふもとでダムをつくるというようなことになるわけでありますが、そこら辺がどういうことになりますか、これはとにかく検討の価値はありますから、十分検討いたします。
  40. 川俣清音

    川俣委員 価値があるということで片づけられちゃ情けないが、大臣はよろしゅうございます。あとは長官に質問します。  ほんとうに水源林の機能を十分発揮するという使命をさらに充実する必要があるのではないか、そのために、今日の国民生活の上から急迫を告げております水資源の確保が森林機能の果たす役割だということを強調しているわけです。従ってその強調される手前上もさらに保水能力を完備いたしまして、下流に水の供給をするという施設を、水源林の中であるいは保安林の中でなくても、そういう適地におきまして、森林の部内におきまして、森林の経営の中におきまして、施設を講ずることが、森林計画とは決して衝突しないばかりでなく、森林の機能をあらためて下流利用者に認識させることになると思うのですが、これらのことについてすでに研究はされているはずでありますから、施策の上に、来年度、再来年度の予算の上に、これらの案を盛る御意思があるかどうか、お尋ねしておきたいと思うのです。
  41. 吉村清英

    ○吉村政府委員 先ほど来の先生の御意見に対しまして、私どももかねてから検討はいたしているのでございますが、この拡水法その他は、逐次予算を計上いたしまして実施をいたして参りたい、またすでに若干はやっているのでございますが、もっとじっくり計画的に進めて参りたいというように考えております。  ただダムの建設の問題でございますが、私どもの方でやっておりますのは、土砂をためるダムでございます。水をためますダムをつくるということになりますと、いろいろな関係も出てくるということは、先ほど大臣が御答弁をされた通りだと思うのでございますが、そういう水をどこでダム・アップして下の利用に供するのがいいか、そういった問題もかなり検討を要する問題ではないかというように考えております。それを、やはりそうやった場合に、受益者がどの範囲になるかというような問題も出てくるかと思うのでございますが、かなり前から先生の御指摘があるわけでございまして、私どもといたしましても検討はいたしておりますが、なかなかこれならという案が出て参らない状態でございまして、さらに勉強をいたしたいと存じます。
  42. 川俣清音

    川俣委員 同じく基本構想の中に、「林業構造の改善」という第二の項目を設け、その(一)として「家族労働力による林業経営の近代化」その説明の中に、「林業発展林業従事者の地位向上をはかることが特に必要である。」というわけで、林業従事者の地位向上を高く評価して、今後の林業経営の近代化の推進の必要な要素として考えられているようでございます。さらに「雇用労働力による林業経営の近代化」という項目を設けまして、木材の需給の長期展望と価格安定の保障が必要であるということを強調されながら、特に「林業労働条件の改善」という(3)のところで「雇用労働力の確保および林業従事者の地位向上をはかるため、林業労働条件の改善を促進する。」そして「雇用の安定化」として「林業生産の仕組みを改善普及して、雇用の安定化をはかる。」さらに「賃金水準の確保」では「林業生産性向上して賃金水準の上昇に応えるとともに、最低賃金制の推進等により妥当な賃金水準の確保をはかる。」民有林指導にあたってかかる方途を示しております。これが基本政策の一つの要綱をなしておるわけですが、この考え方は今でも変わらないのでありましょうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  43. 吉村清英

    ○吉村政府委員 先にちょっとお断わりをしておかなければならないと思うのですが、その印刷物は林野庁が発表したものではございませんで、私ども、基本対策の答申が出ましたときに、あらゆる角度から検討をする必要のある事項をあげたものでございますので、必ずしもそれ全部が林野庁の考え方だということにはならないわけでございます。  それを御了承願いまして、雇用労働力による経営の問題でございますが、私ども雇用労働力による経営と申しますのは大体規模といたしますと三十町歩をこえてくると雇用労働力による事業が自家労力よりもふえてくるという関係になると考えております。そういう大規模経営がその経営に当たると思うのでございますが、その中で現状を見ますと、働いております労働者と申しますか、作業員でございますが、所得はかなり他の産業に比較いたしますと低いものがある。これをあらゆる面から検討をいたしまして、労働条件の改善をして参らなければならぬということが私どもの考え方でございますが、そのためにはやはりこの経営と申しますか、林業生産性向上いたしまして、それによってそういった支払いの能力を上げてくる。そのためにはやはり林業の近代化ということ、特に機械化ということ、あるいは林道の完備ということが必要になってくるかと思うのでございますが、その中であるいは最低賃金制でありますとかその他の事項が出ておりますが、そういう問題については今後ざらに十分検討する必要があるであろうという事項もあわせて上がっているわけでございます。
  44. 川俣清音

    川俣委員 私これをお使いしたのは、これに基づいて質問する方が答弁がしやすいのでないかという大いに好意を持って聞いたつもりでございます。順序もこれに従う方が答弁しやすいと考えて、大いに能率を上げるつもりで利用いたしたのでございますが、これにこだわらないでも同様な質問を続けなければならぬと思うのです。特に国有林は一定の施業案を持って伐採をし、植栽を続けていくからには、その計画が遂行されなければならない義務を負っておると思います。遂行するからにはやはり雇用の確保が前提にならなければ計画倒れになると思うのであります。最近のあらゆる生産事業が雇用の確保のために多大の経費をかけると同時に、生産を確保するために雇用の拡大をはかっておること、御承知の通りであります。ところが山村の農民は所得の少なさのためにだんだん山村から離れて雇用の安定した事業に移動する傾向が顕著になってきておりますし、一方職業安定所等も林業のような、漁業のような雇用の不安定なところにはあっせんをしないという態度を露骨に最近はとってきております。従いまして雇用の確保が今後の林野企業の上に大きなウエートを占めることは明らかでございます。それにかかわらず、従来惰性で慢性的に林野事業につきましては雇用に事欠かないという安心感の上に企業が計画されておるようですが、今後はそうした安心感によって雇用というものは確保されませんので、どうしても安定的な通年雇用、いわゆる職業安定所でいう安定した雇用状態が生まれてこなければ雇用の確保ができないというところに追い詰められてきておると思うのです。しかしまだ惰性といいますか、従来の慣習、慣行によりましてわずかながら確保されておると思うのでありますが、今にしてこれを十分確保しておかなければ林業に対する熟練度の高い、危険を避ける感応性の高い雇用を確保できないのではないか。これは、御承知のように山という特殊な状態で作業をするものでありますから、労力があるからといって必ずしも——山へ入れますと山の気象条件あるいは地勢条件によって災害を受けることの激しいものでございます。従って山の作業になれた者ですら往々にして危険を伴うものでありますだけに、雇用の確保が重要な施策の一つとして取り上げられなければならないのではないか。それを各現場におきましては従来も確保できたのだということで、少し安閑としておられるのではないか。今のうちに十分な施策を講じておきませんと、最後にはもはや——兄弟あるいは親子代々、二代、三代と続いて林業に従事しておった者がだんだんと希少価値を生じてくるような結果になってきております。それだけに、特に民有林指導役割をとっております国有林野にとりましては、こうした山村における労務の確保を大きな柱としなければならないと思うわけでございますが、今のやり方では不十分だというお考え方ができておりませんかどうか、この点をお尋ねしておきます。
  45. 吉村清英

    ○吉村政府委員 労務の確保の問題でございますが、この点につきましては先生の御指摘の通り、山村からの人口の流出は他の農村に比べまして比率としましても大きくなっておるかと思います。従いまして私ども国有林の事業の運営にあたりましては、その点を十分関心を持って計画を進めて参らなければならないと考えておる次第でございます。なかんずくやはり造林関係の作業員というものは御指摘のようにかなり窮屈になっております。そういう点では特に私ども注意をいたして積極的に雇用の安定をいたしますためには、やはり事業の年間の継続的な進行をはかって参らなければならぬと考えておるのでございまして、そういった体制等も十分検討も進めて、この雇用の安定も計画的に進められるように措置を講じて参りつつあるところでございます。
  46. 川俣清音

    川俣委員 この一問できょうは終わりたいと思いますが、特に造林等について労務が確保されないために、これを請負等に出している事例がだんだんふえてきております。かつて大正の初めごろでも非常に経済不況の際は労務が十分確保できたために、人工造林等の成績が非常によく上がっている時代もありまするし、労力が確保できなかった時代の造林が、三十年後の今日におきまして著しい差等ができておること、すでに御存じの通りであります。従いまして、未熟な請負にこれを依存いたしますると、何十年後に大きな悔いを残すことになると思いまするし、現在の人々の責任が三十年後に追及されましても、そのときにはすでに悔いを残すだけにとどまってしまうのでございますが、こういうことが伝統のある林野行政といたしまして、将来に禍根を残して批判を受けることのないように努めなければならないと思うのです。そのために、その場限りの請負に依存する、あるいは請負師の誘導に乗って請負をさせる、あるいは五十ヘクタール以下ならいいじゃないかということでやられましょうけれども、それが将来の森林計画を大きく破綻させる結果になりかねないと私は非常に憂慮するのです。どんな農業といえども、精農の行なった農産物と、忙しい、片手間でやった生産とは見劣りのするものでありますことは明らかであります。一年の生産物ですら非常に激しいのでございまするから、長年月を要するこの植林につきましては、あとで植えかえをすることは非常に不経済であるばかりでなく、非能率でございます。しかもこれが五年、六年たたなければ結果が現われてこない。十年後あるいは二十年後に明らかに欠陥となって現われてくるようなものにつきましては、植林の責任は国で負わなければならぬものでありまして、請負に付すべきではないと思う。国から預かったこれらの土地を、森林の機能発揮のために林野庁が存在するのでありまするから、みずからの責任でこれを実行することが必要であろうし、それが任務であると私は理解しますが、この点についての明快な御答弁を得まして、私のきょうの質問は終わりたいと思います。
  47. 吉村清英

    ○吉村政府委員 造林の直営と請負の問題でございますが、御指摘の通り、やはり私どもが責任を持てる体制で造林事業を進めて参らなければならないと考えておるのでございます。労務の不足等から請負に回っておりますものも出て参っております。この点につきましては労務管理上の問題もございまして、やはり地元の労務の状況から、国の規制をする時間では出たくない、直営では時間的に出たくないが、いわゆるパート・タイム的に自分の都合のいいときに出たいというようなものも最近出て参っておりまして、そういうような関係から、直営ではなかなかできないでも、請負ならできるというような事態も起きて参っておるのでございます。そういう現状でございますが、私ども先生が御心配をされますと同様な心配をいたしておるのでございまして、かねてから請負でやっておりました造林事業がはたして成績がいかがかということについて昨年等も監査をしてみたのでございます。幸いにして、今のところではなかなか直営にまさるとも劣らぬというような批評も出ておるわけでございまして、その点は私どもも現在ではまずまずと思っておるのでございますが、将来やはりその点が非常に憂慮いたされますので、十分にこの点は慎重に取り扱って参りたい、かように考えておる次第でございます。
  48. 川俣清音

    川俣委員 政務次官がせっかくおいでになっておりますから一つお尋ねしておきたいと思います。  青森で県会と県民あげて国有林の開放同盟をつくって、国有林を開放させようという運動が起こっておるようでありますが、政務次官、これに賛成でございますか。反対であればどのように説得しておられますか。その点をお尋ねいたしたいと思うのでございます。
  49. 津島文治

    津島政府委員 お答え申し上げます。  国有林の開放でございます。ことにただいま青森県というお話でございましたので申し上げたいと存じますが、青森県の国有林というのが県全体の面積から見まして半分あるのであります。でありますから、青森県人の生活にとりましては実に重大な問題でございます。しこうして、最近特に開放が強く叫ばれて参りましたのが、御承知農業構造改善につながりまして、農業のなにを改善するためにはやはり国有林というものをできる限り多く利用をしなければならない、こういうような点から強くこの声が出て参ったものと思うのでございます。私も青森県の実情からいたしまして、今後農村といわず漁村の方々の生活を向上させるためには、どうしてもこの開放に依存をしなければならない、かように考えるのであります。しかしながら開放すると申しましても、私はそこに非常に綿密な計画が要ると思うのであります。計画なしにというわけでありませんが、計画を粗末にいたしまして開放した場合においてはやはり悔いが残るのであります。従いまして、どこまでも綿密な計画のもとに、しこうして相当大胆に開放して参らなければならぬのではないかというふうに考えておる次第であります。
  50. 川俣清音

    川俣委員 政務次官、それは大へんな間違いを起こす結果になるのではないかと思うのですが、町村合併に基づいて林野の整備が行なわれたあとを調査される必要があるのではないか。秋田の例を二、三あげましても、青森の例をあげましても、あるいは岩手の例をあげましても、町村合併に基づいて基本財産を育成するということで処分したものが、町村財産として育成されておるかというと、そうでなしに、だれか山林業者から金を融通を受けまして、それを売り払い代金に充てて、伐採すると同時に土地までそれらの人に処分をしておる。そしてさらに、林業地は別といたしましても、それを切り売りする等によって払い下げ価格をオーバーする金を取得いたしたい。その金で学校を建築する等、用途は別にいたしましても、林業を育成するという意味から、あるいは農業の育成という意味に役立てないで、学校建築の用途であるとか、あるいは河川の負担金を払うとか、あるいはその他消防施設を講ずるとか、あるいは町村の庁舎を建築する等の費用に充てられて、むだには充てられておりませんけれども、基本財産を育成するという用途のもとに払い下げられたのが、その用途を達成していないという事実は、お調べになれば明らかだと思います。さらに明治の末期におきまして日露戦争のあとに農村が疲弊をいたしましたときに、国有林野の開放が一時行なわれております。それが今日まで農民の手に残っておるのはおそらく百分の一にも足らないで、いずれもみな吸収されまして、大山地主をつくる原因になっておると思うのです。それらを考えますと、開放することがすなわち農民に生産手段を与えることにはならないで、農民の一時的な窮乏を救うゆえんではありまするけれども、それほど窮乏いたしておりますがために、一時的なりとも窮乏を打開したいという念願については私ども非常に同情には値しますけれども、それが同情は別の形で政府施策をするものでありまして、政策を誤ってはならないと思うのです。農林政務次官ともなれば、青森県民の事情もわかるでありましょうが、日本の林業全体の政策の上から、もう一ぺん検討されまして、県民の誤っている姿というものをあらためて啓蒙されることが政務次官の使命でもないかと存じまするから、このことだけ申し上げて、あと答弁は要りません。一つ考慮を促しておきたいと思います。
  51. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次会は追って公報をもってお知らせいたすことにいたします。  これにて散会をいたします。    午後三時三十二分散会