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1963-02-26 第43回国会 衆議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月二十六日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 山中 貞則君    理事 足鹿  覺君 理事 片島  港君    理事 東海林 稔君       安倍晋太郎君    伊藤  幟君       大野 市郎君    金子 岩三君       仮谷 忠男君    草野一郎平君       小枝 一雄君    坂田 英一君       谷垣 專一君    綱島 正興君       寺島隆太郎君    松浦 東介君       米山 恒治君    稻村 隆一君       角屋堅次郎君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    野口 忠夫君       湯山  勇君    玉置 一徳君  出席政府委員         農林政務次官  津島 文治君         水産庁長官   庄野一郎君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局外務         参事官)    卜部 敏男君         外務事務官         (アメリカ局外         務参事官)   竹内 春海君         專  門  員 岩隈  博君     ————————————— 二月二十一日  委員楢崎弥之助君及び湯山勇辞任につき、そ  の補欠として淺沼享子君及び吉村吉雄君が議長  の指名委員選任された。 同日  委員淺沼享子君及び吉村吉雄辞任につき、そ  の補欠として楢崎弥之助君及び湯山勇君が議長  の指名委員選任された。 同月二十五日  委員仮谷忠男君、網鳥正興君及び米山恒治君辞  任につき、その補欠として古井喜實君、西村直  己君及び濱田正信君が議長指名委員選任  された。 同日  委員西村直己君、横田正信君及び古井喜實君辞  任につき、その補欠として綱島正興君、米山恒  治君及び仮谷忠男君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 二月二十三日  乳価値下げ阻止並びに酪農政策確立に関する請  願(赤城宗徳君外四名紹介)(第二三六一号)  農業災害補償制度の改正に関する請願秋山利  恭君紹介)(第一四二〇号)  同(冨田健治紹介)(第一五六三号)食糧管  理法による米穀取扱人の免許に関する請願(保  利茂紹介)(第一四二一号)  生産者乳価値下げ反対に関する請願小枝一雄  君紹介)(第一六一四号)  内水面漁業振興に関する請願大野伴睦君紹  介)(第一六一五号)  同(田中伊三次君紹介)(第一六五〇号)  同(宇野宗佑紹介)(第一六五一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(漁業問題)      ————◇—————
  2. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  漁業問題について質疑の通告がありますので、これを許します。角屋堅次郎君。
  3. 角屋堅次郎

    角屋委員 きょうは水産関係の一般的な問題について、特に農林大臣、さらに大卒外務大臣出席を求めて、今日問題になっております日米加漁業条約関係、あるいはオットセイ四国会議の今後の問題さらに日ソ漁業交渉日韓李ライン問題等、当面の国際漁業関係の問題に重点を注いでお伺いしたい、こういうふうに考えまして、委員長にもそのように要望して参りましたが、御承知通り予算最終段階でありまして、農林大臣外務大臣もその方にどうしても出席しなければならぬという事情にあるわけであります。私もその間の事情十分了承ができますので、これらの問題については大へん重要でありまするから、両大臣基本的なこういう問題に対する方針等についてはいずれ機会をあらためてまたお尋ねする機会をつくっていただくということにして、きょうはそういう問題にももちろん入るわけでありまするけれども、事務的にといってはなんですけれども、国際漁業関係問題等について、主として水産庁長官、あるいは外務省からおいでの関係担当官にお伺いいたしたいと思います。  申し上げるまでもなく、日本漁業というのは、漁獲高においては世界第一位ということを誇っておりますけれども、しかし沿岸沖合い遠洋等状態を見て参りますと、戦後沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へという外延的な方向での水産指導がなされて参りましたが、その後の情勢推移によって、国際的な漁業関係においてもいろいろなやはり制限、制約等も生まれてくる。さらにまた国際的な漁業条約の内容に入ってみると、敗戦のあとのいろいろな取りきめという条件もあったということもありましょうけれども、いわゆる不平等的な条約というのはたくさんにあるわけでありまして、ちょうどそれらのものが幾つか改定の時期にきておるという段階にあります。たとえば日米加漁業条約について言えば、御承知通り十年の期限がこの六月で満了しようということでありますし、また四国オットセイ会議についても今年度六年間の期限が満了しようということで今会議が進められておるわけでありまして、最初に日米加漁業条約関係の問題について若干お尋ねをいたしたいと思います。  これは本来、過般の予算分科会においても同僚の安井君も若干取り上げたようでありますけれども、一番やはり問題になるのは、自発的抑止原則というものを日本としては今度の条約改定を通じてやめるという基本的な態度で臨むべきことは当然でありまして、かねてから中間会議その他においても、あるいはまた農林大臣アメリカに参りました際にも、カナダと過般会いました際にも、そういう意思を伝えておるわけでありますが、これが実現できるかどうか、国際的にも認められておらぬ漁業上の問題でありますから、当然こういう機会自発的抑止原則というものをやめる、これが大前提だというふうに思うわけであります。問題は六月改定期ということでありまして、これから——今までのような中間会議その他は、いわばその条約ワク内での話し合いというものをやってきたわけでありますが、今度は現行条約の破棄、新条約締結というふうな方針でいくとするならば、新たな角度から六月までの間に政府間の交渉が持たれなければならぬという段階になります。従いまして、水産庁あるいは外務省としても、六月までの段階で、そういう条約ワク内の会議ではなしに、新しい政府間交渉という段取りについて、どういうふうに進められようとしているのか、まずその点からお伺いいたしたいと思います。
  4. 庄野五一郎

    庄野政府委員 日米加漁業条約は、御指摘のように本年六月十一日までで十年間の条約期限が満了いたします。条約にはいろいろと期限の点につきましても規定があるわけでございますが、十年のこの条約期限の到来する機会をとらえまして、従来問題になっております、日米加漁業条約基本をなしております今御指摘自発的抑止原則をどうするかという問題があるわけでございますが、われわれといたしまして、この自発的抑止原則というのはいろいろ問題があり、また不平等な条約であると考えるわけでございますので、この原則を改めた新しい条約を結びたい、こういう考えで対処いたしております。  ただいままでは毎年一回日米加条約によりまして、定例年次会議東京シアトルとバンクーバー、こういうふうに回り持ちでやってきておるわけでありまして、そういう機会にも、この自発的抑止原則を改めた新しい条約締結意思表示をわれわれとしては非公式にいたしたわけでございますが、昨年シアトル会議においてもそういった意向を表明し、その前の八月のハワイにおける中間会議におきましても、前長官から政府間ベース非公式会議においても新しい条約締結意思表示をしたわけでございます。その後外務省を通じまして、アメリカ政府並びにカナダ政府に新条約締結意思表示と、それに対する交渉につきまして打ち合わせをいたしております。われわれといたしましては、現行条約期限であります六月十一日までに、三国の政府間で新条約締結交渉を持ちたい、こういうふうに申し入れております。
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員 御承知通り条約の十一条二項によりますと、この条約は十年間効力を存続しておるわけであります。「その後は、一締約国が他の締約国にこの条約を終了させる意思を通告する日から一年間効力を存続する。この条約は、それによってすべての締約国について終了する。」こういう十一条二項があるわけですが、今長官お話のように、新条約締結という観点に立って、六月までの間に話し合いを開始したいということでありますが、その点では外務省も同じ方向でいかれるのは当然だと思いますけれども、外務省の方は、実は担当としてはアメリカ局長中間会議その他にも出られたことがあるわけですけれども、参事官の方からこの条約改定問題についての外務省のお考えを……。同じことだと思いますが……。
  6. 竹内春海

    竹内説明員 ただいま水産庁長官から説明がありました通り外務省におきましても、現行条約改定したいという方針で進んでおります。
  7. 角屋堅次郎

    角屋委員 問題は、この自発的抑止原則というものを、条約改定機会に、国際的な関係においても認められておらぬ原則でありますから、これを廃止して新しい条約を結んでいくというのは当然でありますが、それと同時に、従来の年次会議あるいは中間会議等経緯、あるいはまた戦後のトルーマン宣言、あるいはそれを受けて立って講和条約をつくります段階で、吉田・ダレスの交渉あるいは吉田書簡、こういうふうな歴史的な日米加漁業条約のできるまでの間における今日の不平等条約を生む要因があったわけでありますけれども、今日の段階ではそれらのものを清算いたしまして、国際漁業条約で認められておる原則に基づいて新条約締結という方針で当然いかなければならぬと思うのでありますが、過去自発的抑止原則対象からはずされて参りました経緯、たとえば第六回の定例年次会議で、アラスカ湾ニシンが一九六〇年の五月二十四日からはずされるということで発効する、あるいは第八回の年次会議においても、ファン・デ・フカ海峡以南米国地先沖合いニシンというものについて一九六二年四月二日にこれが発効する、さらに第九回の年次会議においても東部ベーリング海オヒョウクイーンシャーロット諸島西側ニシン、これは今度の御承知東京で開かれた一九六三年の二月二十五日現在で議論決定された問題でありますが、サケマスニシンオヒョウといううちでもやはり日本立場からいうと、ニシン自発的抑止原則対象からだんだん除外されていく問題にしても、オヒョウの除外されていく問題にしても、これは歓迎すべきことでありますけれども、やはり全体的な重要問題からいきますとサケマスの問題が一体どうなるかということが焦点一つだと思う。特にサケマスの問題は、三月六日でしたか、第七回の日ソ漁業交渉の始まる場合の重要な問題でありますから、従ってこのサケマスという問題について、今度の条約改定、新条約締結等を通じてどこまで日本アメリカカナダから要求をかちとるかというところが大へんむずかしい問題だと思うわけです。しかもアメリカカナダ方面漁業関係者が年来そういうことに対して強い抵抗を示して参りましたことがいろいろ外電その他でも伝えて参っておるという従来の経緯もありまして、これはなかなかむずかしいところだと思うのでありますけれども、この機会水産庁長官から、アメリカカナダサケマスあるいはオヒョウ、こういうものの日米加漁業条約関係した北太平洋地域におけるところの漁獲状況、あるいはアメリカカナダ関係漁民実態というふうなものを一つお話し願いたいと思います。
  8. 庄野五一郎

    庄野政府委員 日米加漁業条約におきまして自発的抑止対象になっております魚種は、サケマス、それからオヒョウニシン、こういうものがございます。それでサケマスは、アメリカにおきましてはブリストル川を中心といたしましてもベニザケが大部分をなしておりますが、カナダフレザー川を中心とするカナダサケマス、それからアメリカブリストル系のもの、そういった各アメリカ並びカナダ国内河川に遡河産卵して、そうして公海において回遊する、こういったサケマス対象になるわけでございます。それからオヒョウは、ベーリング海並びアラスカ湾におきます、アメリカ及びカナダ系沿岸に沿って発生するオヒョウ、それからニシンも、アメリカ系及びカナダ系の海岸に回遊するニシン、こういうものが抑止対象になっておりまして、今御指摘のように、ニシンにつきましては、第六年次会議と第八年次会議におきまして、それぞれ一部の抑止原則を満たしてないということで削除になっております。それから昨年の第九回のシアトル会議におきまして、東ベーリングオヒョウというものと、カナダ系クイーンシャーロット西側ニシンというものがもやはり抑止原則を充足してないということで削除勧告がなされております。べーリング海並びにアラスカ湾におりまする魚族のおもなるものは、今申しましたサケマスオヒョウ、あるいはニシン、その他条約対象になっておりませんが、カニ、スケソウダラ、カニダラ等の底魚がいろいろあるわけでございますが、その中で最も米加が重視いたしておりまするし、また資源保護に非常な注意管理を払っておりまするサケマスについては、抑止原則まで従来の交渉経過等におきまして論争がなされているわけでございまして、なかなか抑止原則からはずすという段階に現在まで至っておりません。百七十五度から抑止原則を適用していますが、アメリカ系サケマスがさらに百七十五度以西にも回遊するというようなことがあって、抑止区域拡大等議論対象になったことがございます。それでサケマスにつきましては、一九六一年の資料がございますが、米国で三億一千四百七十四万九千ポンドというものが河川並びに沿岸河口付近でとられております。それからカナダにおきましては、サケマス一億二千五百万ポントというものが、フレザー川を中心といたしまするカナダ国内河川並びにその河口付近漁獲されております。それからオヒョウでございますが、これはベーリング海アラスカ湾に生息をいたしております。これにつきましても、やはり米加におきましてオヒョウ条約というものを結びまして、オヒョウ資源共同保存措置というものを従来とって、その資源保護に努めてきたものでございますが、一九六一年の統計では米国におきまする  オヒヨゥの漁獲は四千万ポンド、それからカナダにおきましては二千九百四十六万六千ポンド、こういうふうに相なっております。それから東太平洋におきまするアメリカ及びカナダ関係漁民の数でございますが、アメリカはおおむねアラスカ州が中心になり、カナダはコロンビア州といったところが漁業中心になっております。それでアラスカ州のサケマス漁業者は、一九六一年の統計でございますが、一万四千人ございます。それで大体北太平洋岸でとれますサケマス漁獲量の約八割はアラスカで水揚げされている、こういう状態でございます。それからカナダのBC州のサケマス漁業者の数は、正確な数字はまだはっきりいたしておりませんが、大体一万人というように見られております。それからオヒョウ関係でございますが、オヒョウ漁業には米加合わせて年々七百隻程度の出漁がなされておるわけでございますが、大体一隻当たり二人ないし四人乗っておる、こういうことで計算いたしますと、三千人程度オヒョウ漁業に従事している——これは正確なあれではございませんが、大体そういうところと考えております。
  9. 角屋堅次郎

    角屋委員 先ほど触れました過去の自発的抑止原則対象からはずされたアラスカ湾ニシンあるいはファン・デ・フカ海峡付近米国沖合いニシン、それからその後のオヒョウのこれからの計画という問題について、過去のものについてはどれだけ日本側で今日まで実績を上げてきたのか、あるいはこれからのオヒョウの問題についてはどういう方針で臨まれようとするのか、こういう問題について御説明を願いたいと思います。
  10. 庄野五一郎

    庄野政府委員 昨年のシアトル会議におきまして、ニシンオヒョウ抑止をはずすという勧告がなされております。これにつきましての三国政府勧告受諾というのが今それぞれの国において手続中でございまして、いずれ近く三国においてこの日米加漁業委員会勧告受諾意思表示がそろいますれば、直ちに条約附属書の中から東ベーリング海におけるオヒョウ、それからクイーンシャーロット島の西側のヘリングが削除ということになりまして、日本側米加と平等の立場においてオヒョウなりクイーンシャーロットその他の従来落ちましたニシン漁業ができる、こういうことに相なりました。それでただいまのところではニシンにつきましてはまだ操業するという計画業界には十分立っておりません。アラスカ湾ニシン漁獲計画というものを立てつつございますが、本年すぐ出るというふうには聞いておりません。オヒョウは、従来東ベーリング海におきましては、底びき漁業、はえなわ等でかかってくるわけでございますが、アブステンションをされております関係上、西経百七十度以東の海域におきましてはオヒョウはそのまま海中に投棄するという措置を昨年までとったわけでございますが、今年からさきに申しました三国間の勧告受諾ということになりますれば、今度の委員会勧告されましたオヒョウ共同保存措置というものに従いまして漁業をするということに相なります。
  11. 角屋堅次郎

    角屋委員 外務省の方にちょっと聞きたいのですが、ニュージーランドの原大使から、二月六日でしたか、ニュージーランド領域における日本漁船不法入域の問題について、現地側からの抗議もこれあり、外務省にこの辺については十分自粛してもらうようにという連絡がきておろうかと思うのですが、その辺の実態について一つお話を願いたいと思います。
  12. 庄野五一郎

    庄野政府委員 ニュージーランド水域につきましては、日本側といたしましてはカツオマグロ等の船が出漁いたしておりますが、ニュージーランド領海日本漁船が入りましたという理由で、これについて不法入域ということでニュージーランド政府から警告が参った、こういうふうに承知いたしております。それでその理由につきましては、ただいま詳細はわかっておりませんが、ニュージーランドポリネシア系ニュージーランド人はいろいろ病気に弱いということで、外国の船が検疫等なしに領海に入ってきて操業をするといったようなことが今後起こると外国から伝染病等を持ち込むおそれがある、こういったような理由領海無断立ち入りは慎まれたい、こういう警告文が参っておる次第でございます。その後、詳細はわかりませんが、水産庁といたしましては、業界の問題がございますので、カツオマグロの連合体であります日鰹連を通じまして、そういう点に十分注意を払って操業するようにという趣旨の通達を出しております。
  13. 角屋堅次郎

    角屋委員 ちょうど津島政務次官も見えましたので、次官は青森県ですから、大体漁業関係は非常に関係の深いところで実態は十分御認識だと思うのですが、日米加漁業条約の問題は、これが国会で議論された当時、御承知通り、当時政権を担当しておりました自由党以外は、当時は保守党も二つになっておりましたが、自由党以外は全部これに不平等条約として反対をするという実態の中でこれが通ったわけです。しかもそう言っちゃなんですけれども、あの当時署名をした農林大臣広川弘禅さん、あるいは外務大臣の岡崎さん、これはいずれもあれが理由だったかどうか知りませんけれども、政界から失脚するというふうな事態が起こった。これだけでそうなったということじゃないですけれども。先ほど水産庁長官からもお話があり、またかねて農林大臣からもお話があるわけですけれども、自発的抑止原則というのは国際的にも認められておらぬ原則でありますから、条約改定機会にこれをやめて、いわゆる国際法上認められた原則に基づいて改定をやる。このためには、話がまとまるかまとまらぬかということについては特にサケマスの問題に非常に問題がある。しかもこのサケマスの問題というのは日ソ漁業交渉のやはり焦点の問題のサケマスということと関連をしておる。従って、六月で期限が満了するわけですけれども、政府として日米加漁業条約の問題については現行条約を破棄して新条約締結する、そのためには強い決意で臨まなければならぬというのがやはり基本的方針だと思いますが、この条約に臨む政府側方針について政務次官から一つ考えを承りたいと思います。
  14. 津島文治

    津島政府委員 この問題はひとり漁業という問題ばかりでなく、わが国の国際地位というものから考えましても、こういうような条約があることは、いかにも米国等に対して何かそこに気がねをしておるというふうに見えまして、国の一つの体面、面目というものから見ましても、はなはだ遺憾なものである、私はかように考えるのであります。従いまして、ただいまもここで水産庁長官及び外務省参事官が御答弁をいたしておりましたが、相当の強い決心を持ってこの不平等的な、好ましくない条約を破っていかなければならないというふうに進んでおることははっきりと申し上げられることであると、かように考える次第であります。
  15. 角屋堅次郎

    角屋委員 今月の十八日から、御承知通り日本アメリカカナダソ連の四カ国で結んでおります北太平洋オットセイ保存に関する暫定条約改定のための国際会議が開催をされておるわけでありますが、この会議状況等について、まず水産庁長官からお話を伺いたいと思います。
  16. 庄野五一郎

    庄野政府委員 北太平洋オットセイ保存に関する暫定条約、これは一九五七年の十月十四日に発効いたしております。暫定条約条約期間は六年間ということに相なっております。それで条約の第十一条に、当事国政府——これは日米加ソ連でありますが、この当事国政府は、条約期限が参りまする年度の上半期までに、すなわち三月末までの間に、この暫定条約をどういうふうにするかという条約の今後の方針につきまして協議をしなければならぬ、こういうことに条約上なっておるわけでございまして、その十一条に基づきましてただいま東京で、外務省会議室でございますが、日米加ソ連政府間の交渉がなされております。この交渉は御承知のように、オットセイアメリカ系のプリビロフ島を中心にいたしまするアメリカ東太平洋沿岸に沿って回遊するものと、それからソ連領のロッベンとコマンドルを中心繁殖場といたしまして西太平洋沿岸に回遊するものと、二つの系統に分かれるわけでございますが、その陸上猟獲の問題と海上猟獲の問題、こういう問題が中心問題になっております。それでこの条約につきましては、昨年の募れにワシントンでオットセイ年次会議があったわけでございますが、そこの委員会におきまする勧告で、このオットセイ保存に関しまする猟獲方法といたしましては、陸上猟獲が最良の方法である。ただし海上猟獲についても、その可能性についてさらに科学的調査を継続する必要がある、こういった勧告がなされておるわけでございます。日本立場といたしましては、年来海上猟獲が禁止されておりますので、これを海上猟獲が認められるように、そういう立場交渉に臨んでおるわけでございますが、交渉の詳細はまだ、ただいま継続中でございまして、十分申し上げる段階に至っておりませんので、その点御了承願いたいと思います。
  17. 角屋堅次郎

    角屋委員 今水産庁長官からもお話しのように、この条約は今年の十月十四日で期限が参るわけでございまして、従ってこの暫定条約を継続するのかあるいは新条約締結するのかというふうな問題も含めて今議論をしておるわけであります。今もお話しのように日本立場からいえば、従来禁止されておった海上猟獲の問題についてもぜひ実現をする方向でやりたい、またかねてアメリカソ連だけが陸上の猟獲をやって、その一五%を日本カナダにそれぞれ分け与える、こういうやり方でありましたけれども、そういうことでなしに、陸上猟獲についても日本側も参加できるようにする。御承知の海上猟獲の問題については明治四十四年に日米加ソ連の四カ国のオットセイ保護条約締結されるまでの間は、日本でも明治年間には相当盛んにやっておった問題でありますし、そのままこの条約からの戦時中におけるところの条約破棄というふうな問題もあり、三十二年に現行の暫定条約ができたことは御承知通りでありますけれども、自民党の有力な水産関係の代表的な人物であります高碕達之助さんあたりが、数日前に朝日新聞あたりに投稿されまして、日本側で言っておるところの海上猟獲の実現問題、あるいは陸上の問題等についての要請が通らぬようであるならば、この暫定条約から脱退も辞せずという強い姿勢で一つやってもらいたい。この条約の結果いかんというものは、やはり日ソの漁業交渉関係なり、あるいは日韓漁業交渉、あるいは日中の民間におけるところの、この間話し合いが進められておりましたそういう日中の漁業問題等にも大きな影響を与える問題だから、きぜんたる態度で臨んでもらいたい。しかも資源調査等の結果から見ましても、先ほども長官お話しのように、プリビロフ島のオットセイの点では、むしろある程度とらなければ、資源保護その他の面から見て支障が出てきておるというふうにも、資源調査指摘されておる点でありまして、これらの問題に対しての基本方針として、日本としては、あくまでもこの機会日本自身の自主的な立場での要請を実現する、場合によってはこの条約からの脱退というふうなことも辞せないのだという強い姿勢で、この不平等条約の是正のために進まれるつもりであるのか、この点は一つ津島政務次官から御方針を承りたいと思います。
  18. 庄野五一郎

    庄野政府委員 先ほど私お答えしました中に、ちょっと誤りがございましたので、訂正させていただきます。ロッベン島はソ連領と申しましたが、ただいまソ連の管理下にあるところと承知いたしておりますので、さよう御了承願いたいと思います。  ただいま御指摘のプリビロフ島系のオットセイは、その後のオットセイ暫定条約による保存措置というものが、非常に効果が現われて参ったわけでございまして、ただいま相当の資源が回復しておりますが、なおロッベン島、コマンドルの方は、まだ資源の回復が十分じゃない、こういうふうに聞いております。御指摘のように、オットセイの海上猟獲が禁止されましたのは、明治年間の非常に古い経歴があるわけでございまして、それまで海上の猟獲がなされまして、非常にオットセイの資源が激減して、このままでいけば絶滅のおそれありというようなことで、オットセイ条約ができたように聞いております。その後長い歴史を持ちまして、海上猟獲が禁止され、戦時中破棄されて、また海上猟獲が一時なされたわけでございまして、やはり資源の回復が十分でないというような点で、戦後暫定条約調査をやる、一方におきまして、資源の保護をはかるということで、六年間の暫定条約ができたわけでございます。プリビロフの方は回復は非常によくいっておりまして、東の太平洋におきまする海上猟獲等が問題になるわけでございます。ただ昨年の委員会勧告によりますように、資源の回復と猟獲方法の問題と二つあるわけでございます。資源の回復ができたから海上ですぐとってよろしいというふうには、昨年の委員会勧告は、われわれとして努力したわけでありますが、そこまではいっていない。やはり陸上猟獲が資源保護の上からいっても、その他いろいろな毛皮の問題等から申しましても無視できないということになりまして、海上猟獲については、なお、これを許すか、あるいは海上猟獲を禁止すべきかというような点については、科学的な試験がまだ十分でないから、さらにここで科学的調査を継続する必要がある、こういった関係になっております。われわれといたしましては、その東の方については、海上猟獲を認められるようにという努力をいたしておる次第でございますが、そういったような事情で、非常にその点が問題でございます。先般高碕先生が朝日新聞に投稿されたような経緯もあり、われわれとしては、海上猟獲の可能性が何とかこの機会に認められるというような線で交渉しておる次第でございます。
  19. 角屋堅次郎

    角屋委員 今のオットセイ四国会議の今回の会議で、大体どこまでの話し合いができるという性格になっておるのか、十月十四日の期限が切れるまでに、この問題をどうするのか、会議を持つかというような段取りで、今回のこの会議の位置づけがなされておるのか、ここで大体全体的なものを話し合って結論を出そうというのか、今度の会議の性格あるいは今後の期限満了までの段取りというものはどういうふうに考えておりますか。
  20. 庄野五一郎

    庄野政府委員 今回の会議の性格は、条約の十一条に規定されて、先ほど御説明申し上げた次第でございまして、政府間の会議で、この条約をこのまま継続するか、あるいは内容を変えて新条約を結ぶか、あるいは一部を修正して条約を結ぶか、あるいはこれを脱退するか、そういったような性格のものでございます。これは定例年次会議のように、条約ワク内の委員会ではなしに、政府間の交渉でございますので、この会議において、今後条約をいかに持っていくかということの政府間の交渉をやっておるわけでございます。
  21. 角屋堅次郎

    角屋委員 大体いつごろまで会議が続く見通しなんですか。
  22. 庄野五一郎

    庄野政府委員 この会議の日程でございますが、三月の二日までの予定でただいま会議が開かれております。これにつきましては、御承知のように、日ソの漁業条約が、今回は東京で三月の四日から開始されるわけでございますが、われわれといたしましては、いずれも重要な条約でございますので、三月二日までに何とかこの会議が終了するようにという努力をいたしておる次第でございますが、オットセイ会議のこの会合で合意ができないということになれば、また日程を延ばすか、さらにどうするかということは今回の会議の中でまた相談をする、こういうことになろうかと存じます。
  23. 角屋堅次郎

    角屋委員 日米加ソ連四国におけるオットセイ会議の問題についても、先ほどから申しておりますように、これは明らかに不平等的な条約であるという点から、この機会にやはり条約の根本的な改正をやるという方針でさらに会議中でありますので、政府としても、水産庁としても、努力をしてもらいたいということであります。  それから同じく漁業交渉関係では、北洋漁業が非常に大きな比重を占めております。日ソの第七回の漁業交渉がいよいよ来月の四日から開催をされるという段取りにきておるわけですが、これは御承知の昨年の第六回の交渉が相当に難航した段階で、当時の河野農林大臣ソ連に参りまして、最終的に取りきめをやったという段階、そこでA区域、B区域等の区域分けの問題が出て参りまして、従来自主的にやっておりました区域が新しくB区域ということで名称づけられ、そこにおいては去年の段階では自主規制ということでございましたけれども、ソ連のいわゆる監視員が日本の船に乗って、B区域におけるところの漁業操業の実態についてソ連側からも監視をするという形になったわけですが、これは来月の四口から始まるわけですけれども、問題は、日ソの漁業交渉の従来からの第一回以降の、たとえばサケマス等の両国間における漁獲の取りきめ等を見ると、年々歳々減少してきておるわけですが、ことしの場合は豊漁年に当たるという点等もありまして、サケマス等については、去年の交換公文あるいは河野・イシコフ紳士協定によってもA地区、B地区ともに一割の増加ということが期待されるという点が最終的にどうなるかという問題があります。問題は、これは同時にそういう紳士協定なり交換公文だけでなしに、サケマスの資源をどう評価するかというのが基本的な問題であろうかと思いますし、同時にB地区においては、おそらくことしは取り締まりの問題についてソ連側から、去年もそういう要請があったようでありまするけれども、さらに従来よりも強い要請が出て参るのじゃないか。こういう問題に対する日本方針というのははっきりしておるわけでありまするけれども、そういうことをあくまでも貫いていかなければならぬもこういうことでありましょうし、同時に本年の交渉の場合に、去年やったように明年度の大体の漁獲量というものについてもある程度めどをつけておくかどうかというふうな問題もございます。ことにB地区の取り締まりの方法問題等については、去年の自主規制というものの現実の実態というものはどうであったか、こういう問題についても水産庁あたりもデータを持っておられると思うのですけれども、私どもが聞いておるところでは、去年の自主規制の実績というものは従来から見れば非常に好転をしておる。その点では日本も、B地区におけるところの取り締まり問題等ソ連の強い要請に対しても、十分それを説得できる一つの根拠を今度の交渉の場合には持ち得るのだというふうに聞いておるわけでありますけれども、しかし近く参ります第七回の日ソ漁業交渉問題というものに対する日本基本的態度というものについては、最近いろいろ関係方面とも相談をされてきめられて、いよいよこれから本格的舞台に臨むというふうに承っておりますが、その辺のところをお聞かせ願いたいと思います。   〔委員長退席、秋山委員長代理着   席〕
  24. 庄野五一郎

    庄野政府委員 日ソの漁業交渉が、先ほど申しましたように三月四日から東京で開催されるわけでございます。漁獲量の点につきましては、一九六三年、本年でございますが、一九六三年は豊漁年に当たっておるわけでございます。昨年の漁業交渉におきまして、A区域は五万五千、B区域は六万、なおB区域につきましては交換公文によりまして、一九六三年におきまするB区域の漁獲量というものはサケマスの資源状態に応じて、科学者の勧告により、一〇%の範囲内で漁獲量の増加が認められるものとする、こういったような御承知のような交換公文がなされております。なおA区域については交換公文はございませんが、当時モスクワに全権として参られました河野大臣とイシコフとの間でA区域についてもほほ同様の口頭の約束がなされた、こういうふうに伺っておる次第であります。われわれといたしましては資源状態を、昨年の調査あるいは操業におきまする実績の統計、そういうものを十分吟味いたしまして、この交換公文で取りかわされました一〇%というところで話を進めて参りたいというふうに考えておるわけでございます。これはやはり資源状態がどうあったかということが最後のきめ手になろうかと存ずるわけでございまして、その点につきましてはオホーツク海域等の調査、あるいは東ベーリングその他の海域に操業いたしました船から詳細なデータをとる、そういった措置をやっておりますが、そういうものの取りまとめをただいま慎重にやっておる段階でございます。なおB区域は昨年から六万トン、こういう規制量がきまったわけでございますが、この区域は自主的規制を中心としました経緯もあり、自主的規制のA区域とはそういった点で非常にニュアンスが違う、こういうふうにわれわれは考えておるわけでございます。なお御質問のように、本年の漁獲量を決定するとともに一九六四年におきまする漁獲量の大かたの数字といったものも、昨年の例にならいまして、本交渉において取りきめをしていきたい、こういった方針で臨みたいと思っております。  それからB区域の取り締まりでございますが、これもこの交換公文によりまして、御承知のように「条約付属書—(イ)に掲げるB区域において操業する漁船のさけ・ます漁業の取締りは、条約第七条に基づき日ソ双方により共同で実施される。」ただし「一九六二年においては、漁業の取締りは日本国側によってのみ実施される。その際ソヴィエト連邦側の魚族保護監督官は、日本国の監視船に乗船する権利を有する。一九六三年における取締りの実施手続については、両国間の合意により定められるものとする。」こういった交換公文がなされておるわけでございまして、われわれといたしましても一九六二年の例に準じてB区域を取り扱っていきたい、こういうふうに考えております。
  25. 角屋堅次郎

    角屋委員 問題は広範にわたりますので、それぞれの問題についてさらにいろいろお聞きするのは大臣出席機会に譲りたいと思いますが、私、水産庁の従来の仕事の関係等を見ておりますと、これは農業関係の場合ももちろんFAO等の国際会議等もございますけれども、水産庁の場合は、日米加の問題にいたしましても日ソの問題にいたしましても日韓あるいはオットセイの問題にいたしましても、国際的な折衝というものが非常に多い。そして従来からこういう国際会議に出る相手国の代表を見ますと、相当期間固定した人たちがベテランとして登場してくる。ところが日本の場合には、坂村さんが出たかと思うと伊東さんが出、それから大口さんが出、あるいは今の庄野さんが出というふうに、こちらは大体ニュー・フェースで重要会議にあたっているという形がある。しかもたとえば生産部長の大口さんあたりが国際会議の方に奔走して手をとられるということになると、生産部長としての国内のいろいろな処理というものに支障がないのかどうかということが問題になってくる。御承知通り今日は、日本漁獲高の点から見ても、沿岸漁業方面の漁獲の比率というのは相対的に減じてきて、沖合いなりあるいは国際的な漁業に出る遠洋関係の比重が非常に大きい。従って生産部長の果たすべき役割というものは相当大きい。ところが大半は国際会議関係等で奔走して、そういう方面の全体的な指導というものには欠ける点ができるのではないか、こういう感じがするわけであります。従って、農業の場合と違って漁業のように国際的ないろいろの折衝舞台の多いところの水産庁の指導体制や人事というものを一体どう考えるかということは、単なる官庁におけるところてん式人事になることがはたしていいのかどうかということは非常に問題だと私はかねてから思っておるわけであります。やはり庄野さんも水産庁長官になられてから一生懸命勉強しておるかもしれませんが、これはやはり一夜づけではなかなかいかぬのでありまして、当然その道で専門的に知識をたくわえ、また国際舞台におけるお互いの人間的な交流を深めるというようなことで、むずかしい問題を解決していくということが私は必要だろうと思う。今度の日米加漁業条約の問題を日本で開いた場合に、途中非常に激論する場面があったように承っておりますけれども、そういう場合も、かねてから人間的な交流というものが十分なされておるお互いの間でありますと、話がスムーズにいく機会もまた出てくると思います。過般、農林省設置法の一部改正でもって水産庁から次長制というものを廃止したわけですけれども、参事官が農地局と水産庁の兼務という形でもいいのかどうかという問題等もありましょうし、いずれにしてもこれは大臣にお伺いしたいと思っておった問題でありまするけれども、国際的な漁業折衝の問題の多い水産庁の人事あるいはベテランの配置というものについては真剣に考えていかなければならぬ基本的な問題だと思うわけでありますが、これらの問題について今まではそういっていないという現実の姿にあるわけですけれども、政務次官として、これは当面も非常に山積した問題を持っている。今後もやはりそういうことが起こってくるわけでして、優秀な人材を配置をして、長期的にそういう問題に当たらしめる態勢というものを真剣に考えられてはいかがですか。
  26. 津島文治

    津島政府委員 率直に申し上げまして、私の浅い経験でございますが、どうも少しく転任が早いようでございます。これはひとり水産庁に限らず全般でございます。これは非常に大きな問題でございまして、内閣全般の問題であると思いますが、やはり幹部は相当長い期間その地位におるということは必要であると思うのであります。こういうことは言うはやすくして一朝にして改め得ないのでございますが、お説の点につきましては今後は十分に考えていかなければいかぬ大きな問題である、かように考える次第であります。
  27. 角屋堅次郎

    角屋委員 話が日韓問題に入るということにも相なるのですけれども、ただこれはかねて外務委員会その他で同僚の楢崎委員からもいろいろお尋ねのあった点でありますし、これは大臣出席の際にさらに楢崎委員からも触れられる問題でありますので、この点は本日の段階では保留いたしておきます。  そこで今度の国会でいずれILO八十七号条約批准問題などでいろいろ論議するわけですけれども、同じILO関係で、ILO九十二号条約、これは船舶の船員居住設備に関する条約でありまするけれども、この問題の取り扱いに対する甘木側の方針というふうなものをどう考えておられるかという問題についてお尋ねしたいと思うわけであります。  御承知通り昨年来——昨年来と申しますか、それ以前からそういう方面に水産庁としても目を向けてきておるわけでありまするけれども、長期にわたって操業する漁船の中の快適な漁業条件の整備、これは最近の漁業労働力というものの安定的な確保という面から見ても重要でありますし、従って居住区の拡大問題というふうなことが真剣に爼上に上ってき、現実に新船あたりではそういう面で相当配慮して取り上げ、通風機の購入とかいろいろな問題あるいはそれに対してはボーナス・トンの割当をするというようなことも最近やっておるようでありますが、いずれにいたしましても今後の近代的な漁業操業というものを考え、ことに日本が国際舞台で漁業操業をやっておるという立場から申しますると、快適な船内におけるところの環境整備という問題についても十分配慮していかなければならぬ。そういう点で最近若干の前進があるわけですけれども、この際ILOの九十二号条約に対する今後の政府としての考え方あるいは最近の居住区の拡大問題あるいは労働条件その他の問題に対してとってきた指導方針というふうなものについて、お尋ねいたします。
  28. 庄野五一郎

    庄野政府委員 漁業労働問題でございますが、これにつきましては、漁業が陸上の労働環境と非常に違いました特異の環境におきまして操業される労働でございまして、陸上の労働関係とは異なった点が多々あるわけでございます。なおこの漁業労働問題につきましては、われわれといたしましても、今後十分労働問題の改善なり解決なりをやらなければならぬ問題がたくさんあろうと存じます。この点につきましては、かねてから漁業労働に関します懇談会等を水産庁におきまして設けまして、使用者あるいは漁業従事者あるいは学識経験者等を交えまして、そこでいろいろ意見の交換をやり、そして改善すべき方向等の意見を伺って行政に反映させていく、こういった考え方で漁業労働問題等の懇談会を持っておるわけでございます。  なお、漁業労働の労務の行政担当でございますが、これも今回の水産庁におきます機構改革で企画課ができました機会に、企画課の中に漁業労働の班を設けまして、従来より人員を強化しつつこの問題の処理に当たりたいというふうに考えておるわけであります。  なお、ILOの九十二号条約、これは船内の船員設備に関する条約でございまして、まだ批准はなされていないかと承知いたしております。これはILO関係条約といたしまして今国会におきましても非常に問題になるわけでありますが、やはり国内体制を整備しつつ条約の批准をなすということが最も必要かと存ずるわけでございまして、この点につきましても、昨年の暮れだったと存じますが、ジュネーブで漁業専門委員会が持たれておるわけであります。これは日本からは政府代表と、それから労働者代表といたしまして全日海の漁業組合の方、それから使用者側でございますが、大日本水産会から一人、三人出席いたしまして、この船内の船員設備の改善に関する議題につきましていろいろ討議がなされております。  そういうことで、まず条約でございますが、船内の船員の設備、これは漁業ばかりじゃないわけでございまして、御承知のように商船その他全般に関する条約でございまして、一応九十二号は五百トン以上、こういうことに相なっておりますし、また漁船は原則として全部除く、場合によって母船式の捕鯨等についてはこういう条約の適用の可能性あり、こういうことになっております。こういう条約の批准もさることながら、われわれといたしましては、漁業労働関係においては漁船の居住区の問題が一番端的に問題になろうかと存じまして、昨年から居住区の改善ということで指導通達を出しまして、居住区改善のためのトン数増というものは特別にこれを認めるという措置を講じまして、一方その必要な資金等は公庫から支出するということで、居住区の改善をまず手がけております。今後漁業労働問題といたしまして、九十二号を批准いたしました場合、どういう形で漁船にこれを適用するか、またこれは問題といたしましては、商船も九十二号条約に定めるような水準まで日本の商船はいっていないかと存じます。まず商船から適用し、漁船については漁船の漁業実態に即しました改善措置をこれに準じてやっていく、こういう方向でわれわれは考えたいと思います。
  29. 角屋堅次郎

    角屋委員 居住区の拡大の問題に関連して、ボーナス・トンの割当が現実に行なわれているわけですけれども、問題は観点を変えて、去年カツオ、 マグロに対する沿岸漁業からの転業等の問題で約二万二千トン、あるいはその後においてボーナス・トンの問題、既設の船に対する拡大問題としての配給等を行ないまして、これが約二万トン前後というようなことで実施が進められておると思うのです。問題は、この前私が農林大臣にお聞きしたときにもお尋ねしたのでありますけれども、やはりカツオマグロ等の国際的な資源の実態と見合って総トン数をやらないというところに今後問題を残すのじゃないか。たとえば私の三重県などでもマグロカツオ関係に相当出ておりますけれども、そういう方々から聞くと、かつて一操業どれだけとれたかというとれたトン数と今日の一操業でのトン数を比較すると、年々低下してきておるという問題がございます。従って安易に沿岸漁業等の転換あるいは不況漁業の転換等々の問題でカツオマグロにこれだけのトン数を与える、既設の方からも一つということで、それに対してはボーナス・トンの問題がありますけれども、これに与えていくというような形で資源の問題をネグレクトしてトン数の増加をやって参りますと、総体的なカツオマグロの安定的な経営というものへ支障がきてはいかぬというのが重要な問題であろうかと思うわけです。これらの点について今後具体的にどういう方針でいかれようとするのか。しかもこういうボーナス・トン等の問題についても、この前改正をいたしました漁業法の条項との関係での議論をすれば問題はあるわけですけれども、きょうはその点には深く触れません。いずれにしてもそういう問題もありますが、根本的にはやはり国際的なこの方面の資源と日本で操業すべき全体的な総トン数との関係を十分科学的な分析から善処していかないと将来に禍根を残すことになるのじゃないか。こういう問題に対する方針としてどう考えておられるか。さらに、いずれにしても今日そういうことで漁船の新造あるいは改造等が進んで参るということで、最近農林漁業金融公庫の昭和三十七年度のこの方面に対する融資ワクから予備費で十五億円をさらに追加するというような問題等も出てきて参っておるわけです。これらの問題も含めて一つ説明を願いたいと思います。
  30. 庄野五一郎

    庄野政府委員 カツオマグロの新規の許可といたしまして昨年末二万九百トンという新規のワクを許可いたしております。これは御承知のように北洋のサケマスの減船の換転、あるいは沿岸漁業振興のための措置、あるいは日本サケマスが非常に不況にあえいでおるわけでありますが、そういう問題の転換、あるいは以東底びき等の転換といったようないろいろな問題がありまして、マグロにまだ余裕があるというようなことで二万九百トンを許可した次第でございます。御承知のように過去の漁業実態を見ますと、沿岸から沖合い沖合いから遠洋へといった段階を踏んで発達いたして参っておりますが、その段階におきまして沿岸で資源が枯渇し、また操業船も非常にふえて、漁獲努力量に比しまして漁獲量が低減する、こういった問題があって順次遠洋へと伸びてきておるわけでございますが、そこまでのそういった経過を踏んでおります。われわれといたしましてまず資源の保存なりあるいは安定的、持続的な漁業の発展ということを考えて参ります場合におきまして、その漁獲努力量が集中して非常に拡大するという点については、十分長い目をもって先を見通しながら資源状態をよく考えて、操業の実態というものを考えていかなくちゃならぬかと存じます。特に遠洋に出ます場合は、各国の漁業との競合もございます。また資源の乱獲によります激減ということも考えなくちゃならない。それで結局最大の持続的な生産性を上げるというためにどういうふうな規制なりをやったらいいかということに相なろうかと存じます。また遠洋におきましては、各沿岸国との関係あるいはそこに入り会っております各国漁業との競合問題の調整といったような点からも、やはり日本漁業の将来の安定的発展のためには十分その資源保護あるいは資源の共同の保存措置というものには最大の注意と最大の協力を払わなくちゃならぬ、こういうふうにわれわれは考えて参りたいと思っております。それでマグロを二万九百トンふやすときの問題でございますが、御指摘のように最近マグロの水揚高も漁獲努力量に比して減りつつあるという点は考えられるわけでありますが、今直ちにこれを規制するという段階までは、まだ資源状態の科学的な調査等も十分な資料がないわけであります。われわれといたしましてはできるだけこれを実質的に抑えていく方向で資源の保護をはからなくちゃならない、こういうふうに考えております。二万九百トンをふやしますについては、船一トン当たり大体二トン程度の水揚げがあるから、これによって大体四万トン程度マグロ漁獲がふえていくというふうに考え、供給なり需要なりあるいは資源の状態から見てこの辺で大体問題はなかろうというふうに考えて二万九百トンをふやしたわけでございますが、将来の問題につきましては、今まで申しましたように資源の保存、それからそこで操業いたします漁業の持続的、安定的な発展ということを考えながらやっていかなくちゃならない、こういうふうに考えております。
  31. 角屋堅次郎

    角屋委員 これは単にカツオマグロの問題ばかりじゃなくて、やはり資源調査とのタイアップという問題が必要になることは当然であります。そこで新年度のたとえば新漁業開発に対する必要な経費という問題をとらえてみますと、三十七年は御承知通り五千十万四千円ということであったのが三十八年は二千六十一万九千円ということで約半分になっているわけですが、これはお尋ねをすれば水産庁長官の方からは、マグロの市場開発調査というのが三十八年度にはもう済んでなくなったのだ、その関係の費用がここに減じているからであろうと答えられるかと思いますが、本年度は西カムチャッカ北部の中型機船底びき網漁業調査費であるとか、あるいは日本海北方冷水域新漁業開発調査費であるとか、あるいは海外漁場開発調査費補助金であるとか、こういうことで二千六十一万九千円組まれておるわけですけれども、やはり一方では資源の保護の問題、一方では積極的な新漁業場開発の問題ということは、双方タイアップしていかなければならぬ問題でありまして、この程度予算でもっては不十分ではないかという感じがいたすわけです。新漁場開発等の問題に対する考え方等について一つお伺いしたいと存じます。
  32. 庄野五一郎

    庄野政府委員 資源の調査あるいは新漁場開発の調査もこういう問題につきましては、御指摘通り今後非常に力を注いで参らなくちゃならぬかと存じます。ただいま御指摘がありましたマグロの漁場調査でございますが、これは市場開発調査等が一部終了しつつあるということもございますが、この新漁場開発に必要なマグロ調査の相当部分をも生物学調査関係で生物学調査の方に振りかえて、そちらの方でマグロの資源問題の調査をやる、こういった予算の組みかえもございまして、新漁場開発のマグロ調査費がこちらの方では落ちておりますが、生物学調査の方で、マグロの問題を今後県とも共同してやるというようなことで、全体的にはこの新漁場開発なりあるいは生物学的な調査なり、そういったものは前年に比べましてふやして、今後重点的にこういう問題に力を注いで参りたい、こういうふうに考えております。
  33. 角屋堅次郎

    角屋委員 国際漁業の問題についてもまだたくさんお尋ねしたいところがありますが、時間の関係もありますので、国内の水産政策上の問題に関連して、数点だけとりあえずお伺いしてみたいと思います。  まず、新年度予算で、御承知通り公益法人で水産資源保護協会というもの、仮称ですが、これをつくろう。資源保護に関する作業をこれによって行なわせるのだということで、二千万円の予算が組まれたわけでありますけれども、おそらくこれは前任の伊東さんは、政府出資として五億円、あるいは民間の出資五億円ということで、十億円程度で基金のようなシステムで一つ積極的にやろうという考えであったように承っておりましたが、それがいろいろな曲折を経て、結局二千万円で水産資源保護協会というものをことしはつくる。これは農業関係における東畑委員会にタイアップして、事務局長がどなたになるかわかりませんが、塩見委員会でもつくるのじゃないかというふうに巷間伝えられておりますけれども、だれが委員、事務局長になるにいたしましても、この内容というのは——承知通り財団法人で水産資源協会というのは、石原さんが会長でありますし、その他にもこの種のものが民間でもあるわけでして、この運営問題あるいはここで将来何をやろうというのか、将来の発展的な方向をどう考えておるのかということが、やはり一つの問題であろうかと思うわけでありまして、この水産資源保護協会の設置の目的、あるいは今後の運営、将来の発展方向というものをどう考えておられるか、お尋ねをいたします。
  34. 庄野五一郎

    庄野政府委員 先ほどから御指摘のございましたように、この水産資源の保護培養ということは、今後の日本の水産業の永続的な発展を考える上においては、従来以上の力をもってこれに当たらなくちゃならぬかと私は考えておる次第でございます。これは沿岸漁業、あるいは内水面におきましてもしかり、沖合い漁業におきましてもしかり、遠洋漁業におきましても、資源保護という観点に立って日本の水産業がもう一度よく考え直して、そういう点に十分な協力なり、あるいは操業もそういう点も考えてやる、こういうことが非常に大事かと存じます。そういう感覚に立ちまして、内水面におきましても、資源保護サケマスの問題だとか、あるいは保護水面を設定するとか、あるいは沿岸におきましても、昨年御審議をお願いして成立をいたしました三十七年度予算において、瀬戸内海の栽培漁業センターをつくって稚魚の放流等を大々的にやる、こういった問題を考えておるわけでございます。しかしやはりこの資源保護については、国民全般からも、特に水産関係の方々も、強い資源保護という意識なり意欲を燃やすということが大事かと存ずるわけでございまして、そういう点で、今までの行政におきましても、在来の漁業の操業の関係におきましても、欠くるところがあるのじゃないか、思いを新たにして、この資源保護にさらに邁進したい、こういうような考えで、そういった資源保護の普及宣伝なり、調査研究なりあるいは事業なりをやる団体といたしまして、三十八年度予算において委託費二千万円を交付いたしまして、民間から集めます大体同額の金で三十八年度は事業をやる、こういうような関係資源保護協会——これはまだ正式の名前でございませんが、仮称資源保護協会という公共的な団体を設立して、そこで今申しました資源保護の啓蒙普及、あるいは調査研究、あるいはそれに必要な事業、こういったものをやらしたい、こういう考えでございます。新たに資源保護協会というものを設立し、これに民間の御協力を得て、こういった事業を展開して参りたい、こういう考えでございます。
  35. 角屋堅次郎

    角屋委員 まだ長官お話だけでは十分ではありませんけれども、この水産資源保護をやっていくという精神は、これはもう非常に重要な問題でありまして、われわれもその点では異議はないわけです。ただその場合に、従来から法律として存在をしております水産資源保護法というものが、一体現行法のままでいいのか、あるいは最近の情勢から見て、根本的に再検討をして、改むべきものは改むべきじゃないか、そういう点についてはやはり積極的に考えていかなければならない問題だと思う。現行の水産資源保護法というのは、日本漁業の発展から見ればきわめて重要な法律でありますけれども、法の不備の問題もありますし、また政府の怠慢という問題もありまして、一部の条項を除いて、ほとんど死文化しておるというのが今日の状況かと思う。従って水質汚濁防止等に関する問題に関連して、現行の第四条の規定を改めて、農林大臣または都道府県知事が水産資源の保護培養のために必要ありと認めるときに、とにかく従来以上に制限あるいは禁止するなどの規制措置を講じなければならないという、そういう強い点が第四条関係の問題としてさらに前進をさせなければならぬと思いますし、また同時に、資源保護の点では、稚魚の点について乱獲が行なわれるということになると問題でありますから、一部の問題を除いて、稚魚等も、捕獲についての禁止というものも真剣に検討していかなくちゃならぬじゃないかというふうに思いますし、今も長官お話のように、資源保護水域の指定という問題は、たしか今日までの段階で十七ですか、指定をされておるやに承っておりますけれども、これはさらに実地に即して、沿岸漁業振興上特に重要な水域を保護水域として指定をする。従ってその水域におけるところの埋め立て、工場誘致、工場汚水等の流入及び砂利採取等の禁止または制限するというような関係における資源保護水域の指定問題というものを、もっと前向きに考えなければならないという問題もありますし、またサケマス等で行なわれておるわけでありますけれども、人工孵化、放流というような問題についても、さらに水産資源の保護培養という観点から前進をさせなければならぬという問題もありますし、先ほど来の水産資源保護協会のこれからの活動とも関係するわけですけれども、水産資源に関するところの調査研究、あるいは水産資源保護に関する宣伝啓蒙というふうな問題についても、今後の水産の発展と見合って十分進めていかなければならぬかと思うのでございまして、こういう点から見て、水産資源保護法というものについてもこの機会に再検討して、前向きの姿勢で、やはり改定すべきものを改定していくということが必要な時期になっておるかと思うのですが、この点は一つ、せっかくおいでですから、政務次官の方からお答えを願いたい。
  36. 津島文治

    津島政府委員 水産資源を保護するということは、現在でも非常に重要であり、将来ますますこれが必要であろうと思うのであります。どうも漁業の方は非常におくれておりまして、いわゆる農業でいえば略奪農業、こちらでいえば乱獲漁業というようなことに置かれて参りまして、ようやく近年に至りまして、これではいけない、どうしても保護をする、そして増殖をはからなければならないということがやっと本腰になりまして、いわゆる御承知の栽培漁業センターというようなものができたことは、日本の水産にとりましては一つの画期的な進歩である、かように私は考えるのであります。しかし、この考え方をだんだんに広めていかなければならぬのでありまして、残念なことには、この沿岸漁業というものが日本の工業の発展と逆の方向にいくのであります。工業が発展いたしますれば、必ず水産にはマイナスの面が出て参るのでありますから、これらを考えまして、ほんとうに資源を保護するに適当な地域というものに対しましては、やはり広く調査をいたしまして、その保護する個所を多くしていって、そして徹底的に保護を加えるということが必要であると思うのであります。ことに保護を加える場合におきまして、私は、どうもまだ日本の水産にとりましては、ほんとうに科学的な調査が非常に欠除しておるのではないか、かように考えるのであります。先ほど長官からも水産の生物調査というようなことを申しておりますが、やはり学問的にももう少し根本的に掘り下げて研究して、それと今の政策というものとをマッチさせていかなければならない非常に重大な時期にきておるものであると私は考えるのでありまして、従いまして、予算面におきましても、やはり特に注意をして予算の拡大に当たらなければならないものである、かように私は考えておる次第であります。
  37. 角屋堅次郎

    角屋委員 津島政務次官から思わぬ名答弁を承ったわけでありますが、まさにその通りだと思います。そこで、そういう御方針であるならば、水産資源保護法の問題についても、今政務次官が御見解を述べられましたそのお考えに基づいて前向きで再検討して、水産業の発展の観点から、先ほど申しましたような点は具体的な項目についての若干の例でありますけれども、やはり積極的に取っ組むべきじゃないかと思いますが、事務的な段階でこの問題をどう考えておられるか、水産庁長官の方から政務次官のお考えを受けて立った御答弁を一つお願いしたいと思います。
  38. 庄野五一郎

    庄野政府委員 御指摘のように、水産資源保護法というりっぱな法律があるわけでございまして、水産資源の保護を今後さらに一そう強力に進めるために、この水産資源保護法の運用をよろしくやらなければならぬというふうにわれわれは考えるわけでございます。   それで、先ほど御指摘のように、旧来、水産資源保護法に基づきまして予算上あるいは行政上とっております措置でございますが、これは保護水面の管理費の補助金ということで、浅海の貝類市場を確保する措置を昭和二十八年からとっております。これは先ほど十七カ所、かように御指摘になりましたが、十六カ所、帆立貝とかアワビとかアサリ、ハマグリ、アカガイ、ホッキ、そういった点で十六カ所の海面を指定いたしまして、その稚貝の保護その他の繁殖上の保護をいたしております。それからなお三十八年度の新しい事業といたしましては、サケマス保護水面の管理費補助金、これは北海道と内地で、三十八年度は三河川でございますが、保護水面を設定いたしまして、そこで産卵の障害になるような工事とかあるいは施設をやるということのないようにする、あるいは一定の産卵場所を含む一定の場所を禁漁区にする、遡河いたしましたサケマスの産卵に必要ないろいろな保護を加えていきたい、逐次こういう河川の数は多くしてサケマスの保護をやりたい、こういうようなことを新しく考えております。  なお、従来からの保護法に基づきます例といたしましては、御承知のようにサケマス孵化場の問題とか、あるいは放流事業の補助とか、あるいは内水面におきましては、沿岸におきましては、先ほど申しました瀬戸内の栽培センターとか、いろいろな補助なり事業をいたしておるわけでございますが、今後そういう問題は資源保護法を十分運用いたしまして拡充して参りたい、こういうふうに考えております。
  39. 角屋堅次郎

    角屋委員 この資源の問題に関連をして、従来この委員会でも取り上げてきた問題で、やがて法案として提示されてくる一つの問題は、例のPCPの問題についてでありますけれども、これは過般の水産災害の問題でも、有明海の問題であるとか、琵琶湖の問題であるとかいうようなことで、相当の被害が出まして、そうしてこの問題は本委員会においても爼上に上せて、さらにまた別途災害対策特別委員会でも議論した問題でありますけれども、これはやはり漁業団体と農業団体では見解の相違が当然できて参りまして、対立状況で、その対立状況の調整をやりながら、農薬取締法の一部改正の中で、十二条の二項のところを手直しをして、私どもの聞いておるところでは、農協と漁協の了解ということを前提として知事が禁漁区の設定をやるというような内容の法案提出が近くなされるというように聞いているわけでありますが、従来のこの問題に対する経緯と、今日取りきめられている方針について、一つお伺いをいたしたいと思うのです。
  40. 庄野五一郎

    庄野政府委員 PCPに基づく被害ということで、昨年は御承知のように相当の被害が出まして、水産業界としても大問題となり、当委員会においてもいろいろ御指摘なり御質問があった次第でございます。その後水産庁といたしまして、当時の振興局とも十分連絡をとりながら、農薬取締法の一部改正によりまして、このPCPの問題、特に水産資源に影響を及ぼしまする薬害のある農薬の問題をどうするかという点について折衝なりをやったわけでございますが、今御指摘のようにいろいろ問題がありまして、この農薬取締法の改正案の提案が非常におくれていることは遺憾に思いますが、近く農業と水産との関係の調整がつきまして、提案に相なると存じております。  大体の考え方といたしましては、今まで水産資源の薬害というものは、人畜という点は表示されておりましたが、農藥の薬害について、水産資源に対する薬害という問題がなかったということでございますので、そういう点の、水産資源にどういう影響を及ぼすかという点も、登録する場合の表示に書くという問題、それから水産資源に害毒を及ぼすという問題については、これを登録しない、却下するというふうな措置考えていきたい。  なお、従来登録されておりますPCP等の水産資源に影響を及ぼすものにつきましては使用規制の問題を考えよう、それにつきましても、水産と農業との自主的な規制をまずやって、それでさらに話し合いがつかないときは知事なり農林大臣がそういう規制について措置する、こういったような方向で大体法案がとりまとめられて近く提案になる、こういうことに相なります。
  41. 角屋堅次郎

    角屋委員 資源問題ということになりますと、当然これは国内における資源研究機関の体制の整備という問題も直接関係が深いわけであります。水産資源の実態というものを明確に把握する問題として、来年度独立の専門水産研究所の新規設立を考慮ということで、マグロ漁業資源あるいは北洋漁業の資源というふうなものを一本化して、強力な専門の水産研究所をつくりたいという構想もあるやに聞いておりますが、御承知通り、現在は八海区の水域圏が北海道、東北、東海、有明、西海、日本海、内海、淡水海区と、こういうふうにあります。そのほかに真珠研究所もあるわけですけれども、試験研究機関の体制整備という点では、国際的な視野から見て、もっとやはり積極的に取り組まなければならぬという感じがするわけです。これらの問題については今後どういう方針でやっていこうとするのか、一つその点をお伺いいたしたいと思います。
  42. 庄野五一郎

    庄野政府委員 水産関係の試験研究の問題でございますが、これは今御指摘のように、ただいまは内水面を含めまして八海区ということに分かれまして水産関係の試験研究を継続いたしております。この水産関係試験研究機関の機構の問題なりあるいは中でやります試験研究のあり方の問題等につきましては、御指摘のような資源の保護等の問題あるいは新しい漁場の問題あるいは資源の生物学的な問題いろいろあるわけでございまして、そういう問題につきまして、機構の問題も含めまして、将来のあり方については、ただいま学識経験者を交えまして、水産研究機関の将来のあり方についての研究会といったものを持って研究いたしております。いずれその御意見を十分拝聴しまして、そういう点から現状を直すべきところは直して参りたい、こういうふうに考えて、強化の方向でわれわれは考えております。
  43. 角屋堅次郎

    角屋委員 今度の国会では農林水産関係ばかりの問題ではありませんけれども、例の貿易自由化と、それぞれの国内産業への影響の問題についていろいろ論議がなされておるわけですが、水産関係の問題については今日非自由化品目としてニシン、タラ及びそれらの卵、あるいはブリ、サバ、アジ、イワシ、サンマ、さらに煮ぼし、帆立貝、イカ、ノリ、コンブ、魚粉それから鯨肉粉、こういうふうに非自由化品目がまだ相当にあるわけですが、それらの問題の中で、自由化ということになりますと、大へん影響を受けやすい問題はそれぞれにありますけれども、たとえば本委員会等で従来から真剣な論議が展開されて参りましたところの沿岸漁業関係ではノリという問題で、韓国ノリの輸入問題がどうかというふうなことで、従来ともに国会の決議に基づいて一億万枚以上は入れないのだという点を堅持してきておるわけですね。いずれにいたしましても、ノリ以外にも、それぞれ貿易自由化という問題のプログラムを考えます場合に、今後の日本水産関係に影響する問題というものは、やはりそれぞれ真剣に検討をしていかなければならぬということであろうと思うわけです。もちろん御承知の過般のIMF、国際通貨基金の関係で八条国移行の問題が勧告され、さらにそれを受けて立ってガットの総会における十一条国の問題について、日本政府としてはそういう方針でいくのだというきわめて日程が具体化してきておる段階に参っておるわけでありまして、この点で水産関係の非自由化品目のこれからの自由化に対する検討の状況はどうなっておるか、あるいは明確になってきておる自由化のプログラムというものがあるならば、この機会一つ明らかにしていただきたい、かように思うわけです。
  44. 庄野五一郎

    庄野政府委員 ただいま御指摘になりました水産関係のものでまだ自由化されておらないものは、ニシン、タラ及びそれぞれの卵、あるいはブリ、サバ、アジ、イワシ、サンマ、そういうものの鮮魚、塩乾物、それから煮ぼし、帆立貝、イカ、スルメ等も含むわけでございますが、そういったもの、それからノリ、コンブ等の海草類、それから魚粉、それから鯨肉粉、こういった品目になっております。ただいま自由化の方向に非常に進んでいるわけでございますが、農産物並びに水産物等につきましては、御承知のように、国内におきまする農業あるいは水産業、特に水産業におきましてただいま申し上げました品目は、沿岸漁業の非常に零細な漁業者の生産物と競合するわけでございまして、われわれといたしましては、これらのものを今直ちに自由化の方向に持っていくということは考えていない次第でございます。なおこの沿岸漁業の零細な漁業者の対策といたしましては、やはりこの生産性を上げるということが、積極的な対抗策としては必要であろうかと存じまして、そういう点におきましては、沿岸漁業の対策事業というものを昨年から事業化して進めておるというようなことで、あるいは一方においては、漁船の経営の合理化、近代化、そういった点に、沿岸漁業対策を中心にいたしまして、生産性を上げるための対策を講じなければならぬものと存じ、そちらの方もあわせて積極的に進めている次第でございます。
  45. 角屋堅次郎

    角屋委員 政府から沿岸漁業振興法という法案も出されておりまして、わが党の方からは、沿岸沖合い遠洋を含んでの漁業基本的な位置づけあるいは基本的な方針というものを考えるという立場から、漁業基本法案、特にその中で、今日疲弊に瀕しておる沿岸漁業の問題については、重点的にこれを取り上げて、沿岸漁業振興法という形で法案を提示しておることは御承知通りであります。いずれこれらの問題については、そういう問題の審議の際にさらに議論をしたいと思いますが、昨年の国会で、御承知漁業法の一部改正が行なわれ、あるいは水産業協同組合法の一部改正が行なわれるということで、その後において水産庁といたしましても、漁業権切りかえの具体的なスケジュールに基づいての実施がなされてきておるわけでありまして、これは本年の八月三十一日、十二月三十一日、昭和三十九年の三月三十一日というこの三段階の中で漁業権の切りかえをやっていくというお考えで進められておるわけでありますけれども、今日漁業権切りかえの具体的なスケジュールと実施状態について、長官からお話を願いたいと思います。
  46. 庄野五一郎

    庄野政府委員 昨年の国会で御審議願い成立いたしました漁業法の改正は、本年の二月一日から施行実施いたしております。   〔秋山委員長代理退席、委員長着   席〕 それで新漁業法に基づきまして、漁業権の切りかえをやるわけでございますが、このスケジュールにつきましては、大体二月一日を施行日と予定いたしまして、昨年の暮れ中に新しい漁業法に基づく漁場計画を各県において立案してもらいまして、そうしてそれを本年の一月中に公聴会にかけても公聴会で意見を聞き、県知事が三月三十一日までに漁場計画を決定して公示する、こういう段取りで進んでおります。なお漁場計画が決定いたしました暁において、免許の申請期間を四月一ぱいということに申請期間を置きまして、免許をするにつきましての適格性なり優先順位の審議等は、各県の各海区の審議会等で十分意見を聞き、その答申を得まして、そういう準備手続を大体六月中に済ます、それから免許の事務は、八月三十一日、十二月三十一日、来年の三月三十一日と三回に分けて免許切りかえをやっていきたい、こういうスケジュールでただいま進めておる最中でございます。
  47. 角屋堅次郎

    角屋委員 今お話しのように、漁業法の漁業権切りかえのスケジュールの問題については、漁場計画の立案あるいは公聴会の開催も漁場計画の決定及び公示という段階にまで今日きておるわけでありますけれども、いよいよこれからが免許の申請期間であるとかあるいは適格性、優先順位の答申及び審査、あるいは免許事務の完了する段階と、なかなかむずかしい問題を含んでおるわけでありますが、公聴会等の開催の実施状況あるいはそこで出てきたいろいろな意見というものについても水産庁として集約をしておればこの機会に明らかにしてもらいたい。
  48. 庄野五一郎

    庄野政府委員 まだ中央において集約するところまでいっておりません。御承知のようにただいま問題になっております新産業都市の建設計画あるいは港海整備等の公益法上の問題その他漁業調整上の問題等もありまして、多少スケジュールが現段階においてはずれておるところもございますが、また一方においては、裏日本の豪雪等がありまして、そういう点で裏日本が多少おくれておる、こういう事情でございます。その他の地域については、大体スケジュール通りいっておるかと存じます。
  49. 角屋堅次郎

    角屋委員 今後の水産業の振興という観点から見ますと、先ほど来取り上げてきた資源の問題、研究機関の体制の問題、いろいろありますけれども、同時に漁民の自主的な結合体でありますところの漁業協同組合というものの今後の水産業発展の観点からの検討がやはり一つございます。御承知通り漁業協同組合については、不振漁協について漁業協同組合整備促進法に基づいての整備等もなされて参っております。その中では合併等の奨励というふうなこと等もやってきておるわけでありまして、今日までこういう漁協の合併等の実績がどうなっておるのか、あるいは漁業協同組合整備促進法に基づいてなされる知事の勧告に基づく合併という事態で今後ともに推移していっていいのかどうか。根本的に漁業権の切りかえという問題とも関連がありますけれども、農協の合併と違いまして、漁協の合併という問題は非常に零細な姿になっておりまして、今日、たとえば水産業協同組合ということでいけば、大体五千七百からの姿を数えるわけでありましょうし、沿岸地区の出資漁協という点からいけば、大体三千近くを数えるといえ、状態でありまして、きわめて零細な基盤の上に漁業協同組合というものが存在をしておる。ただ私がこの農協と漁協の単協の姿を見ておりますと、農協の場合はいろいろ仕事の範囲も広いということもありますけれども、漁協の場合は余念にとらわれずに生産問題に真剣に取り組むという姿においては、農協自身も学ばなければならぬという漁協の姿勢という点で感心する面もあるわけでありますけれども、しかし何といっても基本的に零細な漁協の姿で、今後の沿岸漁業にいたしましても、それ以上の問題の発展にいたしましても、これはなかなか期待できないということもあるわけでありまして、漁協の基本的なあり方という問題については真剣にやはり検討しなければならぬ段階にあると私は思うのであります。同時にまた、水産業協同組合ということで全体をとらえて参りますと、これについてもやはり交通整理その他いろいろな問題について、水産庁として一つのきぜんたる方針といいますか、そういうものがやはり明示されなければならぬでありましょうし、また最近水産庁調査されました水産加工組合というふうなものの実態を私どもが資料等で見て参りますと、水産加工組合の内容の中で五四・二%近くがほとんど休業状態であるというふうなこと等も出ておりまして、やはり水産物の価格流通対策というふうな、後に述べるような問題に関連して考えてみますと、こういう水産加工組合対策というものと積極的にどう取り組んでいくのかという問題ももちろんございます。従いまして、そういう問題も含めて、いわゆる水産業協同組合のこれからの指導方針あるいは特にその中でも漁業協同組合の今後の発展方向というものをどう指導していかれようとするのか、こういう点についてお考えを承りたいと思います。
  50. 庄野五一郎

    庄野政府委員 水産関係漁業協同組合の育成の問題でございますが、御指摘のように沿岸漁業というものにつきましては、最近非常に零細漁家がありまして、資源の問題漁場の荒廃の問題等から、その不振問題も論議されておるわけでありまして、そういう点については、先ほど御指摘がありましたように、沿岸漁業振興法等を基盤としてこの振興をはかっていこう、こういうことを考えているわけでございます。一つすみやかに御審議願いたい、こういうふうに思っておりますが、なおこの沿岸漁業振興の事業としては、その法案の中にも盛られておりますようないろいろの施策を国としては考えるわけでございますが、最も大きな柱としては、御承知のように沿岸漁業振興構造改善事業というものを、昨年から全国四十二地域について調査し、計画を立てて事業化していく、こういう十年計画を持って国の助成、それに必要な資金の融通といった点を重点的に取り上げる考えであります。そういった事業を推進する上においても、この沿岸漁業の対策事業のにない手として漁業協同組合が非常に大きな力を持たなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございます。この経済的な面等につきましては、地理的な条件等もございまして、農業のようにはすみやかに合併ということもなかなか困難な事情もあろうかと存じますが、これの整備促進、合併を奨励していく、こういう点については漁業協同組合の整備促進法、これは三十五年に御審議を願って施行中でございますが、そういった法律を中核として、県において合併促進の計画を立て、それについて一組合当たり国から五万円、県から五万円、十万円の合併促進費を出していく、こういうことで進めております。それで三十五年度においては五十三組合が二十一組合に合併されております。それから三十六年度は五十五組合が十九組合に合併されております。それから三十七年度の計画では、まだ実績になっておりませんが、大体計画では八十一組合を二十九組合程度に合併促進をしていこう、こういう予定でございます。なお三十八年度等につきましても、ただいま計画立案中でございますが、こういう関係で不振組合の立て直し、それから弱小組合の整備、合併というものを進めながら、この漁業協同組合の育成強化をはかって、沿岸漁業振興をはかっていこう、こういう考えでさらに強力に進めたい、こういうふうに存じております。
  51. 角屋堅次郎

    角屋委員 漁業協同組合の再建整備なりあるいは今後の強化発展の方向の問題については、今後も議論すべき機会がありますから、きょうはこの程度にいたしますが、農業の場合も漁業の場合も、やはり生産物の価格安定という問題が非常に大きな柱になることは当然でありますが、今度のたとえば政府から出して参りました沿岸漁業振興法案なるものを見ますと、いわゆる価格政策というものについては逃げていることは明らかであります。これはいずれ法案審議の際にもさらに論議しなければならぬと思いますが、ただ、従来から多獲性大衆魚に対する価格安定ということで法案の審議がなされ、ほぼ政府原案が通ったわけでありますが、そのときにも社会党から出しました多獲性大衆魚に対する価格安定については、参考人の諸君からは、社会党案が実際は望ましい、しかしないよりは政府原案でもやむを得ないというので、当時参考人としてはほとんどこぞって社会党案に全面的な賛成の意向を示されたという経緯もありますけれども、その不十分な形ですべり出しました多獲性大衆魚に対する政府原案——当面サンマかすに対する問題ですべり出したわけでありますけれども、たとえば昭和三十七年度のこの問題に対する実態というものを見てみますと、こまかい数字は別にいたしまするけれども、調整交付金の内容の中で私どもの承知しておる数字では、関係方面から申請額として三百八十三万八千円という数字が出されたのに対して、これを二百七十四万六千四百五十五円ということで削られたようでありまするし、また保管交付金の問題についても、申請額は一千七百七十一万四千円、こういうふうにあったのを、いわゆる保管期間の日数を削りまして、法案にはそういうことはないのですけれども、そういうものを削りまして一千百七十四万三千八百四十五円、こういうふうにされたようであります。従って締めて千四百四十九万三百円ということになりまするけれども、なおかつこれでもいわゆる基金の運用益の千三百七十七万五千円では足りないということで、二百五十万円の寄付をもらう。さらにそれでもなおかつ当期の損失金として二百四十万三千円のものが出てくる、こういうことでありまして、申請額のものを考えて参りますと、約千二百万円の赤字が出ておるという実態のように私どもとしては判断をいたしております。きわめて不十分な、多獲性大衆魚に対して当面第一段としてサンマかすの問題ですべり出しましたこの事業の運営の状況を見ますと、これからさらにサンマ以外の多獲性大衆魚についての前進をしていかなければならぬという時期に、ここでもう足踏み状態、しかもそれを十分消化できるのでなくて、寄付命をもらったり、あるいはまた申請額の正当な要請というものを削除したりという実態が出てきておるかと思うのであります。当然これは多獲性大衆魚全体に政府原案の場合にも発展をしていくという前提でなされておるわけでありますが、すでに事業開始の当初においてこういう実態に現実に直面をしておるわけです。政府として、全体の水産物の価格安定という問題もありまするけれども、お尋ねをしたいのは、多獲性大衆魚に対する価格安定として取り上げてきたこういう問題に対して今後どういうふうにやっていかれようとするのか、この点についての方針について明確にお答えを願いたいと思います。
  52. 庄野五一郎

    庄野政府委員 魚価安定の問題についてでございますが、御指摘のように魚価安定基金法というものが昭和三十六年に御審議願って成立いたしまして、それに基づきまして政府から八千万円、道府県その他業界を加えまして一億六千四百十万円、こういう魚価安定基金を積みまして、その運用益によりましてただいま御質問になりましたような、主としてサンマにつきましては調整交付金あるいは保管交付金というもので魚価安定をしておるわけでございます。それで、ただいまも御指摘のように多獲性大衆魚につきましては、その最たるサンマについて運用しているわけでございまして、今後この魚種をさらに広げていくという問題もあろうかと思います。われわれといたしましてはそういう点はさらによく吟味しまして、サンマとも競合し、またサンマだけでは魚価安定はできないという問題もございますので、多獲性大衆魚の価格安定基金の対象になります魚種をふやしていこう、こういうことで十分検討して参りたいと思っております。  なお、昨年のサンマの問題でございますが、申請額を削った、こういうふうな御指摘でございますが、申請額につきまして十分これは検討いたしまして、調整交付金につきましては、陸揚げ停止をやりましたものにつきまして、漁船のトン数一トン当たり四百円というものを交付することになっておりますし、それから保管交付金につきましては、御承知のようにサンマのキロ当たり十一円以上で買ったものについての魚かすについて、これを共同保管の委託をした場合に、金利、倉敷料を払う、こういうことに相なっておるわけでございまして、こういうような基準に合致しないものを除いただけでございまして、正当なものを、圧縮した、こういうことではないのであります。その点は御了承願いたいと思います。  なお、そういった基準に合致するものを取り上げて参りまして、先ほど御指摘のように、昨年の運用益では二百五十万円程度不足する、こういうことに相なっております。この二百五十万円につきましては、削減するという方法もございますが、これについては業界等ともよく話し合いまして、業界の出資割合なりあるいは利用割合等でこれを負担していただくということで、二百五十万円はそういう方法で納付金といった形で出していただくということで処理いたしたいという考えでおりますが、今後の魚価安定基金の方向といたしましては、さらにわれわれといたしましては、この基金の額をふやすということが困難であろうかと存じます。今後の方向といたしましては、魚価安定基金の拡充をやるということと、サンマのみならず、その他の多獲性大衆魚にこの魚価安定基金の制度を利用していく、こういう問題を今後の問題として拡充の方向で十分検討したい、こういうように考えております。
  53. 角屋堅次郎

    角屋委員 まだたくさん予定の問題を残しておりますし、大臣に対する質問も残っておるのでありますが、本会議の時間の関係もありますので、一応自余の質問は保留いたします。  ただこの際、委員長にも強く要請を申し上げておきたいのでありますが、御承知通り今回政府からは、沿岸漁業振興法案、こういうものが出されて参りましたし、またわが党の関係からは漁業基本法案、沿岸漁業振興法案、さらに近く水産業改良助長法案あるいは水産物価格安定に関する法律案等を提示して、今国会は一昨年の農政国会のように大いに一つ、ややもすれば政治の片すみに置かれやすい水産問題について、沿岸といわず沖合いといわず遠洋といわず、真剣に一つ議論をしようじゃないか、こういう気分でおるわけであります。従って農林省といたしましても、政務次官おいででありますが、積極的にやはり論議の種を招くような資料を、われわれから資料要求して出すということじゃなしに——最近の農林省の農林水産委員会への資料の出し方を見てみると、資料要求がありますと出して参りますけれども、なるべく論議を招かぬようにという気持があるのかどうか知りませんけれども、従来よりはだんだんと資料の提示の積極性を欠いておるという面があると思う。私どもはやはりこういう国会の論議の際に、農林省としては積極的に論議してもらおう、同時にそのことを通して国会議員の、われわれ委員会に参加しておる者ばかりでなしに、国会全体がそういう問題についての認識をさらに深くしていくということが、たとえば水産の場合でいえば、水産業の発展に大きな貢献をするということにつながると思うのです。従ってそういう点から、今後の論議の問題については、沿岸沖合い遠洋を含めて真剣な論議のできるような態勢でやってもらいたいと思いますし、同時にまた農林省といたしましても、積極的に水産の問題については、今度の国会を水産国会として真剣に一つ議論をしてもらうのだ、沿岸問題といわずいろいろな問題について、とにかく論議を十分にやってもらうための資料を積極的に提示する、こういう気がまえでやっていただきたいということを強く要望いたしまして、残余の質問については保留をいたします。
  54. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 次は楢崎弥之助君。
  55. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間もありませんし、また外務省関係もおられませんから、事務的な点だけ二、三質問しておきたいと思います。  今行なわれております日韓交渉のうち特に漁業交渉について漁業委員会日本側から出られておる方はどなたですか。
  56. 庄野五一郎

    庄野政府委員 水産庁側からといたしましては、水産庁の橘参事官が出ております。それから外務省側からはアジア局の卜部参事官、先ほどここにお見えになっておりましたが、卜部参事官出席しております。
  57. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今も予算の第二分科会で関連の質問をしてきたんですけれども、水産庁考えとしては李ラインと関連をして拿捕された日本の漁船について、船体その他のいろいろな損害、損失、それらにつき国内的には国が損失補償をすべきであるという立場でおられるかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  58. 庄野五一郎

    庄野政府委員 日韓関係におきまして特に韓国の一方的宣言によります李ラインの問題にからみまして、漁船の拿捕が相当数に上っております。これにつきましては、われわれといたしまして不当性を主張いたしまして、漁船の不当拿捕をやめるということと、それから不当拿捕されました分につきましては即時釈放ということを、そのつど外交ルートその他を通じまして韓国に申し入れをいたしております。なおその際、これによりまして受けました損害賠償請求権は保留するということで申し入れをしておるわけでございまして、われわれといたしましては、不当拿捕に基づく漁船その他の損害賠償請求権ありという考えで進んでおります。
  59. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 韓国に対して損害賠償請求権があるという立場で臨まれておるということは、その裏側の問題として国内的には損失を受けた船主や漁夫に損失を補償する、すべきであるという建前だと論理的にはなるわけですが、そういう建前で臨まれておるかどうか。
  60. 庄野五一郎

    庄野政府委員 論理的にそういうふうに参るかどうか、なかなかむずかしい問題があろうかと存じます。われわれは不当拿捕の加害者でございます韓国側に対しまして、不当拿捕に基づく漁船その他の損害賠償請求権ありということで、損害賠償をいずれやるという建前で進んでおるわけでございます。国内的の問題は、韓国との問題がどういうふうに進展するか、そういうことに即応して考えて参らなくちゃならぬかと存じますが、韓国に対して損害賠償請求権ありというのが、国内的に直ちに政府に賠償責任ありということには相ならぬと存じております。
  61. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 過去抑留家族には見舞金を出されておる。これは損害賠償の一部として出すという閣議決定が行なわれた。従ってわれわれは当然、損失補償がある、すべきであるという建前で政府は臨んでおると解さざるを得ないのですが、どうでしょう。
  62. 庄野五一郎

    庄野政府委員 閣議決定につきましては、その損害賠償請求権の一部の内払いということが明確にうたってありますのは、抑留中に死亡した船員等に対します見舞金が明確にうたってございます。その他の見舞金につきましては、暫定的な措置として閣議でああいう見舞金制度あるいは差し入れ品を送った場合の補助、そういう措置を講ずるようにいたしておるように私承知いたしております。
  63. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だからそういう措置がとられておるから、これは当然国内的には損害賠償なりあるいは損失補償をするという建前ではありませんか。建前がどうなっておるか、聞いておる。
  64. 庄野五一郎

    庄野政府委員 閣議決定の建前は、ただいま申しましたように、抑留中の死亡者に対しましては、損害賠償請求権の内払いということが明確にうたってございます。その点ははっきりいたしておりますが、その他の見舞金あるいは差し入れ品の補助、そういう点については明確にうたってございません。日韓交渉におきまして漁船、漁夫あるいは漁獲物等を含みます損害賠償は、われわれは今後続けてやる考えでございますが、そういう問題の処刑等もからめまして、国内的の措置としていかにするかということは、今後の問題かと存じております。
  65. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今の水産庁長官のお答えは大へん不満ですが、そういうあいまいな態度では因ると思うのです。韓国に対して損害賠償請求権があるということは、国内的には損失補償をするということが前提にならなくちゃおかしいじゃないですか。国がとるべきものがあるといって主張しておるのだから、とるべきものががあることは、とった場合にはそれは実際に損害を受けた人に差し上げるということでしょう。そうじゃないですか。国内的にも損失補償の問題は今態度をきめておらぬ、しかし韓国からはとる建前でおるというのはおかしいじゃないですか、どうでしょう。私は今聞いておるのは、損失補償の建前で今やっておるのだ、しかしそれが実際にはどういう形で国内の損失補償を片づけるか、それは聞いてないのですよ。片づけ方は損害補償をやるんだ、損失補償をやるという建前でおらなくてはおかしいではないかということを言っておるのです。損害賠償の請求権があるということは、そういううらはらの問題がなくては成立しないではありませんか、どうです。実際に損害があるから、損害を受けた国民があるから、その国民にかわって国が交渉しておるんでしょう。だから当然損失補償をやる。やらなくちゃならぬから、韓国に対してその損害賠償を請求しておるのでしょう、どうでしょう。
  66. 庄野五一郎

    庄野政府委員 先ほど申しました通りでございますが、われわれといたしましては、不当拿捕によります損等賠償は韓国側に十分主張するということには変わりはございません。これを国がいかに処理するかということにつきましては、韓国問題の損害賠償請求の処理の仕方によって、また考えなくちゃならぬ問題かと存じますが、ただいま韓国に損害賠償請求権ありということは、直ちに国内法上国がその損害賠償をしなくちゃならぬという論理には、私は相ならぬかと存じております。
  67. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 国の外交交渉がまずいから、今まで片づいておらぬのでしょう。李ライン問題は平和条約とは関係ないから、当初から強力な交渉を行なって、もしそれについて紛争処理のめどがつかないならば国連に訴える手当はあるんです。それをやらなかった、これは国の責任です。だから解決していない。国の責任だから、当然国民の一部が損害を受けておるならば、それを補償するのがあたりまえではありませんか。損害を受けた国民の個人々々にかわって国が外交交渉をやっておるのでしょう、そうではないでしょうか、どうでしょう。
  68. 庄野五一郎

    庄野政府委員 過去におきます交渉経過等につきましては、われわれといたしましては最善の努力を払った次第でございます。なお御質問にもありましたように、国連に提訴の手続等もあるわけでありますが、これは国連のただいまの手続がやはり相手方の承諾が要る。そういうような点で国連提訴ということも再々提案した次第でございますが、相手方の同意が得られないということで、そういう手続も相ならなかった次第でございます。なお損害賠償請求権は、今後とも韓国に向かってはわれわれといたしましては主張して参るつもりでございます。
  69. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さっぱり法的にもあるいは実際問題にも論理が一貫しないわけですが、時間がありませんから、それは一つ懸案にしておきますけれども、ただいま行なわれております漁業交渉のうち、漁業の専管水域と申しますか、日本側考えは、一九六〇年のあの海洋法国際会議で出されたアメリカカナダ案と申しますか、六海里は領海、六海里から十二海里までは一応の調整水域だ、そういうことで今やられておるのでしょうか、日本側の主張……。
  70. 庄野五一郎

    庄野政府委員 ただいま予備交渉中の事案でございますので、こちら側の主張を明確に申し上げる段階には至っておりませんが、われわれの基本的な考えといたしましては、先ほど角屋先生からも再々御指摘がありましたように、公海におきます漁業自由の原則、こういう建前をとっております。それは今御指摘になりましたように、ジュネーブにおける海洋法会議におきまして委員会で採択され、総会においては成立は見ませんでしたけれども、公海自由の原則を主眼にいたしました。大体領海は六海里以内において各国が考える線、それから距岸十二海里以内を漁業の専管区域として認める、こういった考えを骨子にいたしまして、日韓交渉に当たっておる次第でございます。
  71. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 問題を追及すればたくさんあるわけでございますけれども、時間もございませんから、いずれ機会がございましたらまた質問さしていただきたいと思います。  この際、資料要求をいたしたいと思います。一九四七年から現在までの拿捕漁船の数、それから抑留船員の数、そのうち帰されたもの——船も人も含めて出していただきたい。その資料が一つ。  それから一番新しい資料で、李ライン水域で操業をしております日本漁船の数、従業員、漁獲高。  それから三番目に、日本漁船の拿捕に伴う損害の水産庁の見積もり。それは船体、船具、あるいは漁具と分けて。  それから期待利益と申しますか、予見可能性のあった利益の分、分けて資料をつくっていただきたいと思います。
  72. 庄野五一郎

    庄野政府委員 資料御要求の第一点の一九四七年以降現在に至るまでの拿捕漁船数、抑留船員数、それから釈放あるいは返還されました船員数、漁船数、これはできるだけ早く提出いたしたいと思います。  それから第二点の季ライン水域における操業船、船員数、漁獲高、これは正確なものはまだ十分把握できないかと思いますが、推定等を交えて、できるだけのものを提出いたしたいと思います。  それから第三点の拿捕に伴う日本漁船の損害の水産庁の見積もり、こういうふうに先生御要求でございますが、これについては非常に資料等が不備でございまして、これは大日本水産会等で取りまとめたものがございますので、大体そろっておりますから、その点で一つ御了承願いたいと思います。水産庁の資料ということには相ならぬかと思いますが、まだそこまで十分の積算が進んでおりませんので、一応の資料といたしまして、大日本水産会で取りまとめておるものを提出さしていただきます。
  73. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっと今の点で。国は損害賠償の請求権を留保してその請求はずっとやっていくんだとおっしゃ、いますけれども、国が自信を持った資料なしに何の請求をなさっていらっしゃいますか。何の請求をなさっておりますか。やる気があるのですか。ただ請求権はあるんだぞ、あるんだぞと言っているだけですか。あなたはさっき一九四七年以来ずっと拿捕問題が起こっていると言ったら、毎年誠意を持って交渉をやってきた、国連にも提訴するようにやったけれども、相手が応じないとおっしゃっておりますが、政府の損害の資料なしに何を請求しているのですか、それをはっきりしてもらいたい。
  74. 庄野五一郎

    庄野政府委員 損害賠償の額でございますが、これはいろいろ船体なり漁具なり、あるいは当時漁獲されておりました水産物なり、そういう点の見積もり等におきましていろいろ問題もあるわけでございまして、十分まだわれわれとしまして的確なものの把握はできておりません。ただいま、先ほど申しましたように、損害賠償請求権はとりあえず拿捕されましたものの即時釈放ということを要求いたしておるわけでございますが、その際にこの損害賠償請求権はいずれやりますということで申し出をそのつどやっておるわけでございます。十分な資料の調達ができていないことはまことに残念でございますが、できるだけのものを出したいと思っております。
  75. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 言葉を返すようですが、私に対する資料はまあいいとして、いずれやるといういずれというのはいつですか、何の資料なしに、そういうふうだから今の日韓交渉はなっておらぬというのです、わが党は。やる気がないのです。この漁業問題はさっきも言いましたように、平和条約に基づく問題とは関係ない。関係なくやるべきだ。たまたま平和条約に基づく日韓交渉が行なわれているから実際問題としてはこの機会をはずさずにやる。今私は第二分科会で大卒外相に質問いたしました。拿捕漁船の損害賠償の問題の解決も、池田総理が言う一括解決の中に含むかどうかということを私が聞いた。そうしたら含みますという。大平さんは、この日韓交渉の解決は花咲くころ大体行なわれるだろう——もう花はすぐ咲きます。こがらしのころか、雪の降るころになるか知らぬが、見込みはない。しかしこの問題は続けなければならぬですよ。政府としては一括解決の中に含めておるのですから、当然請求権の内容です。この損害の内容について政府側の資料が今もってないということはおかしい。あるけれども発表できないのか、ないのか、それを明確にして下さい。
  76. 庄野五一郎

    庄野政府委員 日韓関係漁業問題につきましては、今回の請求権の問題とも一括処理ということで進んでおります。なお漁業問題につきましてはこの請求権の問題が起こるずっと前から、李ライン宣言以来、この李ラインの撤廃方の交渉は継続して進めておりますが、その成果が上がらないというのはまことに残念に存じます。なお損害賠償金額については、積算の方法にいろいろ問題がございまして、まだ発表に至らないということでございます。われわれといたしましては参考として大水で積算されましたものを提出さしていただきたい、こういうことでございます。
  77. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長もお聞きになっていらっしゃると思うのですが、今の答弁はおかしいと思いますよ。今の答弁だと、あるけれども出せないというふうに解釈していいですか。いろいろ積算のしようによっては答えが違ってくるから、どれをとっていいかわからない。せんだっての平和条約の四条に基づく請求権と同じような答弁にあなたは変えてきましたが、どうなんでしょう。基礎はあるけれども今発表されないのか、日本政府としてこれでいこうという数字が出ていないのか、実にあいまいだと思うのです。もう一度明確にお答えをいただきたい。
  78. 庄野五一郎

    庄野政府委員 もちろん拿捕されておるのでございますから、拿捕漁船の規模なりトン数なり、そういうものは基礎データとしてはあるわけでございます。それをいかに金額に換算するかという点につきましてはいろいろ問題もありましょうし、われわれといたしましても確たる積算をいたしたところまでまだ参っていないわけでございまして、発表する段階に至っておりません。
  79. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今の御答弁だと、まだやっていないというのですか。やっておるけれども、どの数字をコンクリートするかわからないというのか、あるいは全然やっていないから、大日本水産会の資料を政府としては一応めどにしてやっておるというのか。今の答弁を聞きますと、どれがほんとうか全然わからないのです。花咲くころ一括解決と言っておりますが、もう花が咲きますよ。どうでしょう、はっきりして下さい。今のは全然はっきりしない。
  80. 庄野五一郎

    庄野政府委員 先ほど申しましたように、拿捕の中にもいろいろ態様がございます。これは李ライン侵犯の問題もありましょうし、あるいは李ラインを通過したものもございましょうし、あるいはものによりましては領海侵犯の類もあろうかと存じますが、いろいろ態様があるわけでございます。それから漁船なり漁夫なり水産物の水揚げ等につきましても、資料のあるものとないものがございます。船体等ははっきりしておりますが、水産物等につきましては十分な資料等がまたととのわない点もございます。そういう点もございまして、政府としては大水のものを一応参考にして考えておる次第でございます。
  81. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういうように御答弁になるのは、いろいろ懸案事項の中で、特にこの拿捕漁船に対する損害賠償の請求権は、経済協力とか例の平和条約四条に基づく請求権にからめてこれを解決するというふうに持っていきたいのでしょう。だから、数字も出さないでいいと思っていらっしゃるのじゃないですか。まじめに損害賠償しようというなら、今やっているのだから、数は出ていなければならないのです。大よその金額は出ていなければならぬのです。  それでは聞きますけれども、損害賠償請求権の問題を今度の漁業交渉の中で解決をする、しからばその請求権の基礎になる、国としての責任ある数字はいつ水産庁としてつくられますか。全然めどが立たないからつくらない予定ですか。
  82. 庄野五一郎

    庄野政府委員 水産庁といたしましては、拿捕漁船の損害賠償の請求というのは、ただいまのところ漁業関係交渉において解決したい、こういうふうに考えております。
  83. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 数字を出してやられるかどうかというのを聞いておるのですよ。数字はこの際出さなくて、とにかくどんぶり勘定でほかの問題と一緒にやるというのか、あるいは数字を出して請求権問題はやる——水産庁が出さなければ出す官庁はないでしょう。数字を出してやられるのかどうか。
  84. 庄野五一郎

    庄野政府委員 日韓漁業交渉段階は、現在のところ李ライン問題に集中いたしております。それからそれに伴います過去に起こりました拿捕問題の解決、こういうことに相なろうかと存じます。現在はまだその損害賠償請求の段階までは交渉は入っておりません。李ラインの問題で昨年から集中して交渉いたしておるわけでございますが、そういう段階になりますれば、もちろんわれわれとしては数字を提示してやらなくちゃならぬかと存じます。
  85. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今の御答弁では全然、拿捕漁船についての損害賠償をまじめにやるという気はないじゃないですか。そのときは出さなければならぬと思いますというぐらいで、どこに熱意がありますか。今の長官の御答弁は、今の池田政府日韓交渉の内容をまざまざと象徴しておる姿だと私は思うのです。政府政府ですから、水産庁長官も大へんお困まりでしょうけれども、それじゃ私は困ると思うのです。これは平和条約とは関係ない問題ですよ。水産庁本来の仕事として外務省と一緒にやらなければならぬ問題です。それが今のような態度では大へん困ると思うのですが、言いにくい点もあるかもしれませんけれども、いずれ追及する機会を持ってまたやりたいと思います。
  86. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 次会は明二十七日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することといたし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時七分散会