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足鹿委員 そうしますと、大へんに食い違いがあるように思うのでありますが、ただいまの御言明は、非常に重要な御言明だと思って、一応承っておきます。
そこで、
徳安長官にもおいでを願ってただいままで申し上げたのでありますが、地主補償問題に対する田中大蔵
大臣、池田総理の
答弁は、一転、二転、三転、四転しているのです。今
大臣の
お話によりますと、必ずしも金でなくてもいいということも、現に口に
出しておいでになった。蔵相は六日には、所得制限の問題や、金でやるか物でやるかいろいろな
考え方を
考えているので、未定であると言っている。またあるときには、生計を十分に営んでおる余力のある者までは報償の
対象にしないと言っている。かというと、池田総理は一方において、報償については何らかの方法をやらねばならぬと言っている。その間にあってあなたは、
新聞では、いつも陳情団に囲まれていろいろと御
答弁になっておるのでありますが、そこでこの際、農林、官房長官あわせて、私どものこれに対するところの
一つの基本的な問題を提起して、御
答弁願いたい。
私どもの理解は、
農地法を厳守していくということは、今までの論議で明らかになった。そこで、それが
農地法の対価に不満である、その方法に不満であるということについては、
最高裁の判決によって明らかに裁断が下っている。にもかかわらず、この運動を熾烈にやっていくということは、いわゆる旧地主の
農地補償要求は、
農地法そのものへの挑戦なんであります。そういう理解の仕方をしなければ、この問題は解決つきません。そういう性格を持っておると思うのです。現に地主運動に二つの流れのあることは、農林当局は御存じでありましょう。同じ地主運動といっても、全国的に補償を
対象とした
一つの大きな流れと、その中には、香川や石川やその他におきますように、要するに小作地の取り上げを、
農地法を無視して強行していく、要するにこれに対しては、農林省は、
農地法違反だとしてこれを処断している。従って、表向きでは
農地法に基づくために、
農地の取り上げ等は一応姿を消した格好でありますけれども、事実上におきましては、香川、徳島等においては、小作地の解消運動が促進されておる。これがために
自作農資金からの特別ワクが設けられ、融通されたのであります。しかしながら裏面においては、旧地主団体の指導によりまして、
農地法の制限緩和の
改正要求が根強く残っておることは、御案内の
通りであります。要するに三十五年地主調査会法が成立いたしましてから以来というものは、これに力を得まして、香川県では、小作人はあくまでも雇用人である、賃貸人ではない、だから元来地主の自作地として返還すべきものであるという新たな訴訟の提起を行なっておるのであります。こういう、いわゆる
一つの
農地法に対するところの挑戦が一方において行なわれ、一方においては補償を報償にすりかえておりましても、いずれにしろ実際的にはその対価に対して形を変えた対価を払うという形になるわけであります。特に農林省として、また官房長官としては、この国会には
政府として法案は出さないということをしばしば御言明になっておる立場から、いわゆるこの
農地補償の背景をなし、その中でこういう
農地法そのものを否認し、
農地法そのものを破壊しようという具体的な実力を伴った強い運動が起きておるが、これに対して
政府の態度というものがきわめて手ぬるい。香川県では、三十六年に入って
——わが党の
湯山議員も現地に調査に行かれました。その報告等を聞いておりますが、集団的な小作料の値上げが行なわれておる。農林省はこれは
農地法違反だと言って処断をしておりますが、跡を断ちません。要するに地主運動というものは、
農地補償の獲得と現行
農地法に対するいわゆる統制無視の動きでありまして、西日本に起きておるところの運動というものはそういう性格のものであります。これが一体となって
一つの
農地補償という形で
政府に迫ってきておるのであります。同時に、一面において、どのような名前であろうと血路が開かれるということになりますと、今度は
農地法そのものに穴をあけよう、正当に行なわれたこの
農地改革そのこと自体を否認しようという大きな流れと運動か国家権力に対してまっ正面から起きてくるということを
考えないで、これを調査に乗り出すなどということは軽率千万といわねばならぬ。現行
農地法を厳正に守るとしばしば言明しておきながら、一方においてただいま官房長官からは報償を前提としない調査であるという御言明でありましたが、しかし
新聞紙その他に伝えられておるところによりますと、報償実施を前提に
農地調査の具体案が固まったと伝えられておるのでありまして、ただいまの官房長官の御
答弁とはいささか違っております。そういう点からこの問題に対して
考えてみました場合においては、
農地法の全面
改正を一方に掲げ、一方には報償を掲げていく。そういうときに
農地担保金融が
農地法そのものの
改正を伴わずして
公庫法の
改正という形で出てくるということは、事実上において、大阪城でいえば外堀を埋めるという緩和
措置になりはしないか。要するに、地主運動に拍車を加える結果になりはしないか。ひいては、それはいわゆる対価の補償、こういうものに拍車を加えていく結果になりはしないかということを私どもは
考えざるを得ません。現に、旧地主の各種補償はひんぱんに
法律問題として提起されております。
土地返還の訴えは行政訴訟の四分の一、東京地裁で五十件あるといわれ、さらに最近の事例では、
農地転用からの訴えに対して、ある
程度の権利復活を認めた旧地主の勝訴判決が東京地裁でなされたと伝えられておる。また、昨年暮れには福島県で旧地主百四十七人が違憲訴訟を提起したとも伝えられておるのであります。こういうふうにまっ正面から
農地法に挑戦をし、そして
農地法の精神をくずそうとしておる。農林省は守る守ると言いながら、だんだんジリ貧状態に押されつつある。容易ならざる事態と私どもは解釈するときに、
農林大臣は先ほどの御
答弁で、反省しなければならぬ、反省してみることは悪いことではないではないかと言われた。そうしますと
農地法の精神に対しては疑義を持っておりますか。従来やったことに対して反省をするということは、何かその問題に対しては、全部とは言わないが一部にすっきりしない面もあったということをおっしゃいましたが、あなたがそういう
考え方で一体
農地法を守っていかれますか。今私が指摘したような、
農地法にまっ正面から挑戦していく者に対して、断固たる処置がとれるかとれないか。
農地補償問題の一環であるこの問題に対して、あなたは
農地法の厳正実施を当
委員会でしばしば言明された。
農地補償の背景をなし、
一つの大きな流れの一環である今秋が述べたいろいろな事例等に対して、あなたは断固としてそのようなものは
農地法に基づいて処理をする、こういう確固たる所信をこの機会に御表明にならない限り、この問題は非常に大きな問題だと思うのであります。いかがでありますか。