○松岡
政府委員 過日
提案理由の説明のありました
農林漁業金融公庫法の一部を改正する
法律案につきまして、補足して御説明いたします。
まず第一に、
公庫の
資本金に関する第四条の
規定の改正でございます。
公庫の三十八
年度における
貸付契約計画額は、新
制度分三百億円を含め総額八百七十億円で、前
年度に比べて百六十億円の増加でございます。この
貸付金の原資といたしましては、まず
政府からの出
資金でございますが、
一般会計からの出資十四億円、産業投資特別会計からの出資二百六億円、合計二百二十億円がございますほか、借入金といたしまして、
資金運用部
資金等の借り入れが合計三百六十六億円、
貸付回収金等が二百二十億円でございます。以上の通り、
一般会計及び産業投資特別会計からの出資が二百二十億円ございますので、
公庫法第四条第一項の
公庫の
資本金をそれだけ増額しようとするのが改正の第一点でございます。
次に、今回の改正の眼目である農林
漁業経営構造改善資金融通
制度の創設に関連する改正でございます。この新
制度の創設の
目的、
趣旨につきましては、過日御説明のありました通りでございます。
法律の上では、新しく第十八条に追加いたしました第三項に「農業若しくは
沿岸漁業の
構造改善の
計画的推進を図り、又は農業
経営の規模の拡大、農業
生産の選択的拡大若しくは林業
経営の
改善を
促進するため」に必要な一定の
資金につきましては、別表第二に定める特別に有利な
利率その他の
貸付条件で貸し付ける旨を
規定して、新
制度の
趣旨を表明しているのでございます。これに関連して若干御説明申し上げますと、まず、新
制度の大きなねらいは、
構造改善事業の
計画的推進をはかるため、これに必要な
長期低利の
資金を
公庫から円滑に融通することにあるのであります。御
承知の通り、
農業構造改善事業は、全国約三千百市町村を対象とし、一定の年次
計画により、本
年度から具体的な
事業の
実施段階に入ったのでございます。この
事業の円滑な
実施を
確保いたしますため、その中核をなします
補助事業につきましては、特に高率の
補助率を適用しているのでございますが、融資の面におきましても、必要な原資を
確保いたしますとともに、
関係農民の負担軽減のため、特に
長期低利の
条件をもって融通することとする必要があるのであります。しかしながら、
農業構造改善事業のうちの融資単独
事業等について
貸付を予定されている農業
近代化資金は、農協系統に保有されている農家
資金をその原資とする
関係からいたしまして、地域によりましては、単協等の
資金事情から、短期間に多額の投資を要するこれらの
資金の融通が円滑に行なわれがたい場合も予想されるのであります。このような事情を考慮いたしました結果、従来農業
近代化資金の融資対象とされておりました個人的
施設と、共同
施設である
経営近代化施設のうち農業者の協業
組織の設置するものについて、これを
公庫からの融資に振りかえることとし、その
貸付条件を個人的
施設の分を中心に大幅に緩和することとしたのであります。
沿岸漁業の
構造改善事業は、全国おおむね四十二
区域を対象として農業の場合と同様、一定の年次
計画に基づいて
実施しているのでございますが、別途今
国会に
提案されております
沿岸漁業等
振興法案に基づく国の
施策といたしまして、この
事業の円滑な
実施を
確保いたしますため、従来から
公庫が融通をしておりました
漁船、海面養殖
施設等の
沿岸漁業近代化資金の金利を大幅に引き下げて、
沿岸漁民の負担の軽減をはかったのであります。
〔
委員長退席、
足鹿委員長代理着
席〕
このほか、
沿岸漁業につきましては、
構造改善事業の先行的な
実施という
意味合いで
実施しております
沿岸漁船の
整備促進事業がございますが、この
事業における
漁船の建造等の
資金、並びに
沿岸漁業等
振興法案にも
規定しております
生産行程の協業化の
促進のために必要な
漁船の建造等の
資金、海面養殖
施設の造成
資金等は、いずれも従来から
公庫が融通をして参ったのでありますが、これらの
事業も広い
意味において
沿岸漁業の
構造改善のための
事業でありますから、
構造改善事業推進
資金とともに、新
制度資金といたしまして、金利の引き下げを行なっているのであります。
次に、新
制度の重要なねらいといたしまして、農業
経営の規模の拡大をうたっているのであります。これは、農業基本法において国は自立
経営の育成のために必要な
施策を講ずべきことを
規定されておりますが、今日、この
方向に沿って農業
経営の
改善をはかって参りますには、何と申しましても、
経営の基幹的
施設である
経営耕地の拡大が必要であると存じます。これにつきましては、御
承知の通り、かねて自作農維持創設
資金融通法に基づきまして、
公庫より農地及び採草放牧地の取得
資金を年五分、償還期間二十年以内の
貸付条件で融通して参っておるのであります。この
資金の融通は、もともと農地改革によって創設されました自作農の
経営の維持安定が主眼となっていたものでありますが、最近におきましては、その運用面におきまして、積極的に
経営の拡大
改善をはかるための前向きの金融という性格を強めて参りました。今後の農業の動向を考えますとき、このような
方向における農地等の取得金融を一層円滑にする必要があり、またこのことは、農業構造の
改善をはかるためにも肝要なことと存じまして、今回の新
制度に農地及び採草放牧地の取得
資金を加え、金利の引き下げと
償還期限の延長を行なおうとしているのであります。なお、従来農地等の取得
資金には、いわゆる未墾地の取得
資金が含まれておらず、
公庫資金としては、開拓パイロット
事業の場合に、農地の造成
資金に含めて融資が行なわれる場合があったのであります。ところが、最近におきましては、
農業構造改善事業等におきまして未墾地を取得して樹園地を造成するとか、家畜飼養のための草地として
利用するというような
事例が増加して参っておりますし、また果樹園
経営の拡大のため、未墾地を購入して自力開墾によりこれを果樹園とするというような農家もかなり見受けられるのでありまして、これらの場合の取得
資金が相当の額に達するということを聞いているのでございます。このような事情がございますので、新
制度におきましては、農地、採草放牧地の取得金融に、未墾地の取得
関係をもあわせまして、農業
経営の
改善のための土地取得
資金の融通を行なうことといたしたのでございます。
次に、農業
生産の選択的拡大を
促進することが、新
制度の
趣旨の
一つに掲げてあるのでございますが、畜産及び果樹農業に関する
施策の強化が要請されていることについては異論のないところかと存じます。果樹につきましては、すでに果樹農業
振興特別
措置法が制定されまして、将来における需要の伸長が見込まれる主要果樹について、果樹園
経営計画を作成し、
都道府県知事がこの
計画を適当であると認定いたしました場合には、
計画達成のために必要な果樹の植栽
資金を
公庫から年七分以内の
条件で貸し付ける旨を
規定していることは御
承知の通りであります。しかしながら、果樹は、植栽後成木になって収益が得られるようになるまでに相当の年月を要するのでありまして、その間の肥培管理等の育成に要する費用につきましても
長期低利の
資金の融通を要望する声がかねて強かったのであります。また、畜産につきましては、今後の畜産物需要の動向に照らして、特に
酪農及び肉用牛
経営の育成強化が緊急に要請されているのでありますが、これらの
経営の
改善合理化をはかり、
生産性の高い
経営を
確立するためには、現状の平均一、二頭程度の零細な飼養規模ではなかなか困難なものがあります。これをある程度の多頭飼育にまで持って参りまして、同時に飼料の自給率を高め、畜舎、サイロ等の
施設の
整備をはかる等の総合的な
施策が
計画的に行なわれる必要があるのでありますが、これには相当多額の
資本投下を要しますし、また、飼養規模拡大のための乳牛あるいは肉用牛の購入
資金と
施設の
整備に要する
資金とをセットにして貸し付け、これらを一括して
長期低利の
条件とする必要があるのであります。
以上申し述べました諸点にかんがみまして、果樹農業
振興特別
措置法に基づく果樹園
経営計画の達成に必要な
資金のうち、果樹の植栽
資金と育成
資金並びに乳牛または肉用牛の飼養規模を拡大しつつ、
生産性の高い合理的な
経営を
確立するのに必要なこれらの家畜の購入
資金及び畜舎等の
施設の
整備に要する
資金を新
制度資金として
公庫から融通することにいたしたのであります。
最後に、林業の
経営改善に必要な
資金につきましては、従来から
公庫が森林の取得に必要な
資金及び森林の管理に要する
資金を貸し付けて参ったのでございますが、今回、農業及び
沿岸漁業の
経営の拡大
改善をはかるのと同
趣旨におきまして、これを新
制度資金とし、金利、
償還期限等の
貸付条件を緩和することとしたのでございます。
以上、今回の新
制度創設の
趣旨をそれぞれの
資金に即して御説明申し上げたのでございます。
次に、本
法律案におきましては、新
制度によって新たに貸し付けることとなる
資金につきまして、
公庫に
貸付の業務能力を与えるため、
公庫の業務の範囲を拡大することといたしております。第十八条第一項の改正がそれでありまして、第一に、新しい第一号の二として農地または採草放牧地、これには農地または採草放牧地とするための土地、いわゆる未墾地を含むのでありますが、この取得に必要な
資金を加えております。このように、農地または採草放牧地の取得
資金の
貸付を、
公庫が本来の業務として行なうことと改めたことに関連いたしまして、現行の
公庫法第一条第二項に、これらの
資金を自作農維持創設
資金融通法に基づいて貸し付けることを
公庫の
目的とする旨を
規定しているのでございますが、この取得
資金の部分を削除するとともに、
法案の附則第三項におきまして、自作農維持創設
資金融通法の一部改正を行ないまして、
法律の題名を自作農維持
資金融通法に改め、同法第一条の
目的及び第二条第一項の
資金の
貸付を
規定しております条文から、農地及び採草放牧地の取得にかかる部分を削ることとしております。なお、改正後の第一号の二の
資金には、取得しようとする土地の農業上の
利用を増進するために
利用する必要がある土地、いわゆる付帯地をあわせて取得する場合の付帯地の取得
資金を含むこととされております。
第二、改正後の第一号の三の果樹
関係の
資金として、果樹の育成に必要な
資金を加えることとしております。この
資金は果樹農業
振興特別
措置法に基づく果樹園
経営計画に記載されたものに限って貸し付けることとなります。
第三に、果樹以外の永年性植物の植栽に必要な
資金を第一号の四として加えることにしております。これは
農業構造改善事業の
実施のために必要なものに限ることとしておりまして、その範囲については今後の
構造改善事業の
状況等を勘案して、主務
大臣が具体的に指定することになるのであります。
第四に、家畜の購入に必要な
資金を第一号の五として加えることにいたしております。この
資金は、乳牛または肉用牛につき飼養規模を拡大して合理的な
生産性の高い多頭飼育
経営を
確立するために、乳牛または肉用牛の購入
資金を畜舎その他の
施設の設置等に要する
資金とセットにして貸し付ける場合と、
農業構造改善事業の
実施のために必要な家畜の購入の場合とに限られるのであります。
なお、新たに第四号の三として「林業
経営の
改善のためにする森林の取得又は森林の保育その他の育林に要する
資金であって主務
大臣の指定するもの」を
規定しております。これは、現在の第四号の二に
規定しております林業
経営の
改善に必要な
資金であって主務
大臣の指定するものと
内容といたしましては変わらないこととする予定でありまして、この
資金を新
制度資金として取り扱う
関係から、やや
内容を具体的にいたしまして特掲したものであります。
次に、新
制度資金の
貸付条件でございますが、これは別表第二に掲げる通りでありまして、お手元にお配りしてある
資料によって後ほど御説明いたします。
本新
制度は、
昭和三十八
年度から発足させることといたしております。
また、果樹園
経営改善資金の
利率を法定いたしましたことに伴い、果樹農業
振興特別
措置法中の果樹の植栽
資金の
利率を
規定いたしました同法第五条第二項の
規定が不要となりますので、これを附則第四項において削除いたしておるのでございます。
次に、本
制度の創設の
目的を達成いたしますためには、新
制度資金の
貸付によって真に
経営構造が
改善され、
生産性の
向上と
所得の
増大が
確保されるよう、
政府はもちろんのこと、
都道府県、市町村による適切な
行政指導、なかんずく農業
改良普及員等による濃密な
経営指導が必要でございまして、別にお配りしております
制度要綱の第三には、特にこの
行政庁による
指導によって
制度の効率的な運営をはかるべきことを定めているのであります。
これに関連いたしまして、従来自作農維持創設
資金融通法におきましては、農業者が農地または採草放牧地の取得
資金を借り受ける場合には、農業
経営安定
計画を作成し、
都道府県知事が適当と認定した場合に限り貸し付けるものとされておりますが、今回の新
制度の創設に伴い、今後は
行政措置によりまして、従前とほぼ同様の
制度を設けて運営したい所存でございます。
最後に、
制度要綱の第四に定めております農地担保の活用の点でございます。今回の新
制度におきましては、一農業者
当たりの
貸付金額が従来よりも相当引き上げられ、また
償還期限も一そう
長期となっておりますので、これに関連をいたしまして、
資金融通の円滑化をはかるためには、農業者の有する
最大の資産である農地等の担保力を活用することが適当であると思うのであります。そのためには、
公庫が担保に徴しました農地等の評価額を現在よりも引き上げるとともに、その農地等が万一競落されるような事態に立ち至りました場合に、不当に低い価格で競落されることを避けるため、
公庫が競落人となって農地等を取得し得る道を農地法に基づく省令の改正によって開く必要があるのであります。もちろん
公庫は、従来から
貸付債権の保全のために物的担保のほか、人的保証でも差しつかえないこととしており、今回の
措置によって全面的に人的保証を農地等の物的担保に切りかえるわけではございません。人的保証と並んで農地等の担保力が十分に活用されるならば、一そう
資金融通が円滑になるわけでありまして、この
措置によりまして、
公庫資金の
貸付を受ける農業者の利益が増進されることになると思うのであります。
以上、本
法律案及びこれに関連する主要な問題についての補足説明を終わります。
次に、引続きまして
農業近代化資金助成法の一部を改正する
法律案につきまして、補足説明をいたします。
今回の改正の
趣旨は、
法律案の
提出理由の説明に尽きておりますので、繰り返し申し上げませんが、今回新たに追加いたします融資
機関として政令で定めるものとしては、目下
検討中でございますが、地方銀行等、農家の預貯金が相当な額に達し、農業向け設備
資金の貸し出しもかなり見られる金融
機関を定める所存でございます。
以上、簡単でございますが、補足説明を終わります。
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