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1963-02-01 第43回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月一日(金曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 山中 貞則君    理事 足鹿  覺君 理事 片島  港君    理事 東海林 稔君       安倍晋太郎君    伊藤  幟君       金子 岩三君    亀岡 高夫君       仮谷 忠男君    草野一郎平君       坂田 英一君    綱島 正興君       寺島隆太郎君    野原 正勝君       松本 一郎君    米山 恒治君       角屋堅次郎君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    野口 忠夫君       安井 吉典君    山田 長司君       湯山  勇君    玉置 一徳君  出席国務大臣         農 林 大 臣 重政 誠之君  出席政府委員         農林事務官         (大臣官房長) 林田悠紀夫君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         農 林 技 官         (農地局長)  任田 新治君         農林事務官         (農政局長)  齋藤  誠君         農林事務官         (畜産局長)  村田 豊三君         農林事務官         (蚕糸局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (園芸局長)  富谷 彰介君         農林事務官         (農林水産技術         会議事務局長) 坂村 吉正君         食糧庁長官   大澤  融君         林野庁長官   吉村 清英君         水産庁長官   庄野五一郎君  委員外出席者         文部事務官         (体育局学校給         食課長)    臼井 亨一君         自治事務官         (財政局財政課         長)      茨木  広君         自治事務官         (財政局理財課         長)      立田 清士君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 一月二十九日  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第三〇号)  農業近代化資金助成法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三一号) 同月三十日  漁港法の一部を改正する法律案内閣提出第三  六号) 同月三十一日  沿岸漁業等振興法案内閣提出第三七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求の件についてお諮りをいたします。  乳価問題について、来たる六日午前十時参考人出頭を求め、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  なお、参考人の選定につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  5. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に、農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。中澤茂一君。
  6. 中澤茂一

    中澤委員 冒頭に、大臣施政演説に対して若干御質問を申し上げたい。  今農村では価格政策というものが一番問題になっておる。要するに、構造改善とか、近代化とか、いろいろ政府は音頭をとっておるが、しかし、価格が不安定だということが御承知のように一番問題です。特に、選択的拡大といわれる畜産果樹価格というものが全く不安定である。これに対して、大臣のこの所信表明の中にも若干は触れられておりますが、具体的な施策というものが一つも見られない。そういう点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  7. 重政誠之

    重政国務大臣 その点は私も非常に重視をいたして、価格政策の拡充をいたしていきたい、こう考えておるのであります。  畜産につきましては、御承知通り、一応畜産振興事業団において、豚肉でありますとか乳製品でありますとかあるいは鶏卵でありますとか、それぞれ価格支持をいたす品目がきめられておりますから、これらの品目について拡充すべきものがあればさらに拡充して参りたい。  それからさらに資金につきましては、三十八年度予算においてごらんをいただいておりますように、これに対する出資金五億円、交付金十五億円で、二十億円を三十八年度にはこれに政府は金を出すことにしておりますが、これによって一つ運用をしていきたい、こう考えております。  それから果樹野菜につきましては、これは御承知通りなかなかむずかしいのでありまして、なかなか簡単に参りません。そこで、三十八年度はとりあえずリンゴについてやってみようというので、若干の予算を計上いたしまして、消費地に冷蔵庫を設けて、そして出荷が多いときには貯蔵する、こういうことで価格調整をはかろう、こう考えておるわけであります。その他、出荷につきましては、果樹につきましても野菜につきましても、出荷調整制度運用していこう、それから市場整備をやろう、こういうので、その方面に対しましても、三十八年度では予算を計上しておる、現在の段階はそういう段階になっておるわけであります。
  8. 中澤茂一

    中澤委員 そういう努力は多といたしますが、問題は、自由主義経済資本主義経済を前提とした場合、政策的には調整機関方式最高のものだと思う。もしそれ以上前進すれば、われわれの主張するような国家管理政策へ、たとえば今の米麦の食管統制のように、一つ国家管理政策へ入っていかないと困難だ。だから、そういう点においては、調整政策といろものが、自由主義経済資本主義経済の場合最高度政策である。それに対して、確かに畜産振興事業団にしても、かつての繭糸価格安定法にしろ、芽を出しておることは間違いありません。芽は出しておるが、一つもその中身がないところに問題がある。われわれ政策的に検討してみると、どうしても畜産物の総体的安定をはかるには、やはり生産総額の二割の買い上げ保管くぎづけ措置というものができないと、これはできないのじゃないかという計数上の数字が出ておるわけですね。そうすると、現在においてはどうしても二百億という最低限度買い入れ資金——これは最低限度です。その程度まで資金を国が見て、そうしてそれに見合う保管一切の施設、そういうものが完備されないと、畜産の場合などの安定は不可能であろうということは計数的に判断ができるわけです。だから、そういう点において、芽は吹いたのは認めますが、それが少しも内容が充実していない。十五億や二十億のお金ではどうにもならない。かつて繭値が大暴落したとき、百六十億という買い上げをやったわけです。あの当時大蔵大臣佐藤さんで、私は佐藤さんと数回非公式な話し合いをした。今の在庫数量からいって、いま五十億の買い上げをしてくれるならば、最低保障価格千四百円の維持はできるじゃないかという計数的な説明もいろいろ大蔵大臣に申し上げたが、最後の五十億を出し渋ったために、ついに千円まで大暴落したという過去の事実があるわけですね。だから、そういう点において、今後今のようなそういうなまぬるい中身のないことじゃなくて、もっと中身をどう入れるかということを大臣はどういうように考えておるか。芽の吹いたのはだれも認めるが、中身がない。中身をどうしてもらうか、これが問題だと思う。
  9. 重政誠之

    重政国務大臣 畜産振興事業団では、先ほど申しました通りに、政府は三十八年度は二十億、三十七年度は十五億出資並びに交付金を出すことになっておるわけでありますが、ただいまのお話買い上げ資金は、現在のところでは大体三十億を限度として運用するということになっております。御承知通り、昨年四月の豚の値下がりの際に、おおむね二百四十円で買い上げましたが、私はあれは成功したと思っておるわけであります。現在では三百円をこしておるというような状態でありますので、これは、ただ芽を出したとおっしゃるわけでありますが、私は、運用によっては、さらに資金が必要であれば五十億でも六十億でも事業団資金を供給して、その機能を十二分に発揮せしめたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  10. 中澤茂一

    中澤委員 あとでわが党並びに与党の委員諸君問題ごとに検討するでありましょうから、私は概略だけ触れておきたいと思うのですが、特に次に問題になるのは流通機構価格政策流通機構というものは全く一本になった問題なんですが、この流通機構の問題をどういうふうにする所存なのか。  大体おととしまでは、農産物が、生産者手取り消費者価格との差は大体三倍でおさまっていました。去年から高度成長政策のあおりで、これがだんだん開きが出てきております。まだ四倍まではいかないが、四倍近くなってきておる。たとえば五円で売ったリンゴが、おととしまでは消費者の口に十五円で入ったが、今では二十円近くなってきておる。ものによっては二十円をこしておるものがある。これはフランスでもおととし農民暴動が起きたのは、御承知のように流通機構矛盾農民が憤慨したわけですね。一番苦労してつくっておる農民が、五円のものがフランスでは最高八倍までいってしまった、そこで農民がこんなばかなことがあるか、おらの手取りが五円なのが、おらの売ったリンゴが町へ行って見れば四十円で売られている、こんなばかなことがあるか、というのが農民暴動の発端だったようですが、高度成長政策をとっていけばいくほど、格差というものが流通機構の面からまず芽を出してくる。現にその徴候は、おととしまで三倍のものがもう四倍あるいはものによれば四倍をこえたものが出てきた。おそらくこれはことし一年で四倍半なり五倍になってくると思うのです。そういう流通機構矛盾というものに対して根本的にメスを入れない限りは、これは小手先の芸をやったってとうてい不可能だと私は思うのです。しかもまだ全然流通市場というものが前近代というか、話にならない。河野さんが大臣のころ、芝浦の例のそでの下取引を何とかしよう、こういうことで河野さんもだいぶ意気込んで、われわれ農林委員会調査に行ったが、依然として芝浦市場そでの下取引がそのまま行なわれている。伝票は二重伝票になっている。そういうような矛盾大臣は一体どういうところから解決していくか。根本的にわれわれと考えの違うのは、流通機構というものを徹底的な管理政策までメスを入れなければだめだ、市場というものは管理政策まで手を入れなければだめだというのがわれわれの主張なわけです。今のような形のままで、はたしてこの流通機構矛盾というものを大臣は防げると思うのか。この格差がますます拡大していくことはもはや必然であります。それをどこで一体食いとめるお考えなのか。
  11. 重政誠之

    重政国務大臣 御説の通り流通機構の問題は非常に重要な問題であります。そこで今回もこの流通機構について改善を加えるという方針で、それぞれ予算も計上いたしておるわけであります。何と申しましても、これは中央卸売市場が中心になるわけでありますから、中央卸売市場市場としての能力を発揮せしめる。私が考えておりますのは、第一に卸売市場というのは公正な価格を決定する場であるということ、さらに大量の荷さばきをする場であるということ、こういうふうに私は考えておる。ところが、ただいまもお述べになりましたように、どうも公正な価格が決定せられておるかどうかということについて、これは相当の疑問があるのであります。これを改めますのには、市場構成機構考える必要がある。改善をする必要がある。四つも五つもあってやっておるというのでなしに、なるべくこれは単数に近いものでやっていきたい。さらにその設備考えなければならぬ。できるだけ機械設備をこれに導入していく。それからまたその場所の広さも関係すると私は思うのでありますが、これらについて順次改善していくつもりになっておるわけであります。さらに出荷方面につきましても、たとえば肉についていえば枝肉で送る、はなはだしきに至っては生体地方から芝浦へ送ってくるというようなことはなるべくやめて、屠場はやはり地方に設けて、ここで枝肉、さらに進んでは肉そのもの卸売市場に送らすという方法考えまして、できるだけ合理化して参りたい、こういうふうに考えております。
  12. 中澤茂一

    中澤委員 大臣と私がやっても、これはやはり基本的な考え方に相違があるから、すれ違いになってしまうわけです。しかし地方から生体で送ってくるというが、環衛法の問題があっていつも問題になるのですが、やはり地方も今購売力が高度成長で非常にふえておるんだから、むしろ地方簡易屠殺場をどんどん増設して、暴落のときは国の需給調整方式最高度に活用することと、いま一つはやはり地方簡易屠場——厚生省の所管の問題になるのですが、こういうもので簡易屠殺をさせて、どんどん地方消費をやっていくという態勢さえも今整っていない。この前の豚の暴落のときも、簡易屠殺農村なんかに直ちに屠殺還元しろ、そうすれば農民も非常に安い肉が食えるし、栄養上もいいじゃないかというが、例の環衛法がひっかかって、これはなかなかいかぬ、こういう問題があるが、そういう破天荒のことを大臣に望んでも無理だし、またそう簡単にできるものではないが、そういう暴落のときの態勢整備というものは、いつも先手先手を打っておく必要があるのではないか。どうも今までのやり方を見ておると、すべてが後手に回ってくるところに問題があると私は思う。だからもっと政治的に先手々々を打っていくならば、非常な暴落というものもある程度防げるのじゃないか、これは私の意見ですが、こういうふうに考えるのです。  そこで、ほかに乳価の問題とか当面したいろいろな問題が山積しておりますが、結局今の大臣の御答弁を聞いていても、これはやっても時間を空費するだけむだなことですから、最後に私は構造改善の問題について一つ聞きたいのですが、私ども党といたしまして全国地区を百何カ所にわたって、農林議員が全部分担を持って、現地へ行きまして調査をいたしました。私は北陸三県の担当で、北陸三県で七カ所を調査いたしました。村長さんとか、農協長さんとか、あるいは土地改良組合長酪農組合長開拓組合長、こういう方々に役場にお集まりを願って、どうなんですかということで御意見を承ったわけです。別に演説会をやってPRをやったわけでも何でもありません。その中で、この前の公聴会でも言われているように、異口同音に問題になるのは、一体責任はどこにあるんだろうという問題が言われているわけです。ある村の構造改善では土地改良区が責任だ、土地改良区が金々借りる、理事連判状をついて借りるんだ。ある村では農業協同組合責任なんだ、こういう村もある。ある村では自治体が責任なんだ、こういう村もある。一体責任というものはどこにあるのでしょうか。だれが一体これをやっておるのでしょうか。村がやっておるのでもなさそうだし、土地改良組合がやっているのでもなさそうだし、県でもなさそうだし、ちっとも責任所在が明確でない。ということは非常に問題が起きる可能性があるのです。私は七地区調査したうちで、おやりなさいと私がお勧めした地区が一カ所あります。それは福井県の三国町です。これはおやりなさいと私がお勧めしたのは花ラッキョウです。全国の八割の花ラッキョウ三国町の生産なんです。例の小さいびん詰のやつですね。それが今、調査現地へ行ってみますと、全部商人原料のまま買いたたきをされておるのです。そこで今度の問題が出たもので、ここは実は総合農協じゃなくして花ラッキョウ特殊農協でやっておるのですが、この商人に買いたたきされておる原料を二次加工やろう。三千万円かけて工場をつくる。そしてラッキョウびん詰までつくってやる。そしてほかに政府に出たもので返済計画というものはないし、ここも返済計画書はついていないでしょうが、組合の皆さんが完全な返済計画を立てる。一貫目二円ずつの農民負担を毎年やってくれれば、三千万円の工場を建てても大体五カ年、若干ずれても七カ年で返済できる、こういう返済計画まで拝見して、これは確かに農民のためになるのだから一つおやりなさい。あとの六地区というものは、私は去年の九月に調査に行ったのですが、まさに全く混乱ですね。それで村によると責任なすり合いです。こんなものは当然土地改良組合がやるべきだ、土地改良組合農協がやるべきだ、農協はこんなものは村長がかついで村長がやるべきだ、こういう責任なすり合い状態です。今はどうなっているかわかりませんが、去年の九月はそうでした。一体これは責任というものはどこにあるのでしょう。
  13. 重政誠之

    重政国務大臣 この構造改善事業を進めていく第一の条件は、その地区における指導的立場にある方が非常に熱心であるということ、ぜひ経営の近代化をやり生産性の向上をやらなければ日本の農業は置いてきぼりになってしまう。こういうことに十分の理解を持って非常に熱心におやりになる方が指導者であられる方にあるということ、同時にその地区構造改善をやろうという者がその趣旨に賛成して、これをやろうという非常な熱意のあるところから始めるというのが実は私の方針なんです。そこで責任ということを法律的に言えば、これはいろいろの言い方はあると思うのですが、しかしこれは構造改善をやるそこの人々がみんな責任があると思う。ただこれを推進しまとめていく上においてだれが指導的にやっていくかと言えば、これは町村である場合もあるでありましょう。あるいは農協組合長である場合もあるでありましょう。私はそういう形はいろいろあると思うのでありますが、原則的には今申しましたようなことでやっていきたい、こう私は考えておるのであります。それと同時に、いろいろつくったものが、借入金の方は長期にわたるし、ミカンをつくってもそのミカンの値段がどうなるだろうかとかいうような心配があると思う。これはごもっともな心配でありますから、私どもとしてはそういう心配がないようにやっていこうというので、御承知通りに特殊の金融制度も今回創設をしよう、あるいはまた先ほどのお話価格政策につきましても、市場改善政策につきましても、これは一連のものとしてあんまり心配なしに構造改善事業がやっていかれるような条件を完備していこう、こういうふうに考えて進めておるわけであります。
  14. 中澤茂一

    中澤委員 いや大臣現地意見を聞くと、責任ということを言うのは、少なくとも予算単価で言えば、構造改善の場合一億一千万円、パイロットの場合九千万円、パイロットの場合も四千五百万円の農民負担があるわけです。構造改善の場合も二千万円の制度金融融資をやっても、これは金利を大臣が考慮して下げたというだけで、二千万円の借金はしょうがない。それ以外に四千五百万円農民負担がある。一般構造改善の場合、合わせて六千五百万円の農家負債がふえることは間違いない。それが、価格政策がきちっとできていて、そうして間違いなくこれが返済できるという見通しは今のところ農業にないわけです。そこで万が一この金が返らなかった場合にはだれが一体それを払うのかという問題が具体的にどこででも議論される。そうすると農協も初め積極的に——内容がわからぬ、初めてみたが農協が逃げ出したというところがだいぶあるわけですが、結局これは制度金融で二千万来ても四千五百万円は村の協同組合の金を使わざるを得ない。協同組合の金は組合員の零細な預金だ。あの計画にはこれの償還計画というものがないのですから、もし返らなかった場合には、小さい農協なら四千五百万円で大体つぶれますよ。だからその場合の責任は一体だれが負うのかという問題です。その責任所在がはっきりしないと、あるいは政策的に国が裏打ちをしてやらぬと、これはやはり一番の間脳はその責任だから、村でも、もしもの場合があったときは県が何とかめんどうを見るのではないかというような御意見村長さんもありました。それは国がやるのだから、国が命令してやってくれているのだから国が責任を背負うのが当然じゃないかという御意見もありました。これは進めたあとでうまくいかなかったとき、具体的にそういう大きな負債を背負った農家の問題が必ず出てくると思うのです。その場合はやはり国が、はっきりと農業基本法から出た構造改善だから責任を負うという態勢でないといかぬのではないか。私は現地調査の結果そういう考え方を持ったのですが、いかがなものでしょうか。やはりこれは国が責任を負う必要があるのではないでしょうか。
  15. 重政誠之

    重政国務大臣 金を借りて払えなかった場合の心配を初めからするような計画は私はうまくないと思う。計画を立てる場合に、これは払うという考えで、しかも三分五厘の利子で——今どきそんなものはありはしないのだ。自分の持ち出しの金はほんとうにほとんどなくて、助成率だって、本日新聞紙上ごらんになりましたように、さらに府県で約二割のかさ上げをさそう、合計すれば七割になります。そうして残りの三割は低利の三分五厘の資金を持っていこうという、それで払えないような事業なら私は考えてもらいたい。今のような御意見でいけば何のことはない、全部政府なり県なりが持って、農家はただでやる、こういうことになる。県の土地改良だって何だってみんな負担して農家諸君はりっぱに払っているじゃないですか。土地改良だって地力を増大すればそれだけ増収があるわけだから払える筋のものです。それが何かの天災その他によってうまくないことがある。これはまた別に政府が救助の方法あるいは救済の方途を考えることは御承知通りなんです。初めからそういうような考えでいかれては困る。もうちょっと研究しておやりになったらいい、こう私は考える。
  16. 中澤茂一

    中澤委員 それは大臣の一人よがりというもので、具体的に例を申せば、私の調査したところでも一ぱいありますよ。生産力がどれだけ増大して、ではどれだけの省力化ができて、その省力化労働力を、どう販売して、どうすればどうなる、そういうことまで計算している町村もありますよ。しかし、一番問題は、それをやった、販売する場合に農産物価格が安定してないということ、そこに問題があるのですよ。それを安定させておいて、それで大臣が今のようなみえを切るなら、これは私は、ああなるほど、ごもっともでごわすと言いますがね。それは鶏が先か卵が先かの議論になるかもしれませんが、大体あの計画書を作成させるとき、ある程度の償還の概算ぐらいはあの計画書につけさせるべきではなかったかと私は思うのです。それはなかなか立ちにくいだろうけれども……。問題は、基本的に、さっき触れた価格対策がなっていないところに問題があるのです。だから、価格対策大臣がぴしっとやれば、私は大臣けっこうでごわす、けっこうでごわすと、うんとおほめもしますが、価格対策が、ちょっと北西増になると大暴落をしていく。鶏卵がことし大暴落になるという、鶏卵生産過剰という問題がもう出ているでしょう。豚がちょっとあれすればがたっと暴落する、またちょっと政府がてこ入れすればぐんと上がる。農民は決して高いものを望んでいるのではないのですよ。農民の切実な気持は、べらぼうに高くならぬでもいいのだ、ただわれわれは見通しのある農家経済を立てたいのだ。それには、べらぼうに安くなるのを一つ防いでもらわなければいけないのだ。そうしてべらぼうに高くなるのもある程度押えて、そして間に安定幅を持って、この間は政府責任を持って安定させるぞという政策が出るのなら、農民は別にそういう不安はないと私は思う。だから、そういう点において、大臣が今御答弁になった、そんなことはおかしいじゃないか、県も二割見てやるのだし、国も五割見てやる、それでできなければそんなものは考えたらいいじゃないかということは、私、大臣の答弁としてはちょっとどうかと思うのですがね。
  17. 重政誠之

    重政国務大臣 お話のように、価格政策を、幾らでも政府が全部全面的にそれを買い入れていくというなら、それははっきりしたことでありましょうが、それはなかなかそうは参らぬと私は思う。すべての農産物、農林畜産物政府が何でもかんでも全部買い入れていくのだ、それでは——これを買い入れるのは金さえあれば買い入れられるけれども、これを保存し、またこれを放出するというようなことは、これは大へんなことだと思うのです。そこで、現段階においては、畜産物については、先ほどお話ししたように、事業団をしてやらす。そうして現に豚をやってみたけれども、豚は私はあれで成功したと思っている。ああいう方式で私は今の鶏卵についても一つ進めていこう。これは改める点があれば、むろん、御意見を十分拝聴して改めるに私はやぶさかではないのです。一応ああいうものがあって運用いたしておりますが、あれを張化していけばそれでまずいけるのではないか、こう考えておるわけであります。  それから同時に、これはなかなかむずかしいことでありますけれども、私が何とかしてやりたいと思ってておりますことは、生産する方はもう勝手気ままに、全体の需給のことを考えずに自由にやられる。これもむろんけっこうでありますが、しかし大よそのめどをつけてやるということがやはり必要じゃないか。これをどういう方法で大よそのめどをつけてやるか。めどをつけてやってみても、農産物のことでありますから、これは天候によって支配されるし、いろいろな問題でなかなか思った通りいかないことは御承知通りでありますが、それにしても、もうちょっとめどをつけるような方法一つ講じたらどうか、こう私は考えておるわけであります。まだこれが一番良案であるというわけにはいきませんが、御承知の牛乳につきましてはああいう協議会を設けたりなどいたしまして、あれでも一応のめどが立つわけでありますから、とにかくそういう方面一つ研究して実行をしたらどうか、こういうふうに考えておるのです。
  18. 中澤茂一

    中澤委員 大臣、それはそういうふうにめどをつけるのを考えるのもいいが、要するに、構造改善というものは一体だれがやっておるのでしょうね。どうも私はわからないのです。村へ行って聞いてみても、今言う通り、村の中自体が、土地改良組合がやるのだという議論と、農協がやるのだという議論、自治体がやるのだという議論。県へ行けば県で、政府の命令でやっているのだと言う。これは国が責任を持って推進しておる政策じゃないのですか。どういうものなんですか。ちっともわけがわからないのです。極的に推進しておる、大臣の重点施策じゃないのですか。違うのですか。
  19. 重政誠之

    重政国務大臣 それはもちろんお話通り、国が推進しておるのです。ところが、借金の責任を持てと言われるから、私は今のようなことを言ったのであって、この事業は重要な政策として国が推進をしておるわけであります。
  20. 中澤茂一

    中澤委員 国が推進しているとすると、借金をさせないような政策をやるか、完全に償還できるような政策をやるか、もしその政策が進まないとすれば、どうしても借金が残ったという場合、国が背負うのが当然じゃないですか。理論的にどうでしょうね。国が推進している政策で、完全に償還できる裏打ち政策をやってやるのが一つ。もしそれがなかなかできないというなら、どうしても借金が返らなければ、国が推進している政策ならば、国の責任があるのじゃないですか。じゃ、国は推進している、てこ入れ政策はやらない、借金が残ったらお前ら勝手に首をくくって死ねというのじゃ、ちょっと話がうまくないのじゃないですか。
  21. 重政誠之

    重政国務大臣 国が推進しておるというけれども、何も強制してやっているわけではないのでありますから、その場合に、町村あるいは協同組合が主体となってやっておる場合に、農家とかそういうものが一つ責任がないのだという話は、これもおかしい話だと私は思うのです。国がやっておりますから、今回のように農林漁業金融公庫に政府は金を出して、それが貸付の大元締めになってやっておるわけです。その借金が返らぬ場合に国がしりをぬぐう、初めからそういうつもりでやるというようなことは、私に言わせれば計画が悪い。どこかに欠陥がある。これだけの助成なり援助を受けてやって、それでなおやれないというなら、それはやる計画が悪いと私は思う。現在の土地基盤整備においても、土地改良事業に対して政府は助成しておりますが、それよりはよほどこっちの方が手厚い助成になっておる。それで土地改良事業だってりっぱにみんな借金払っていっているじゃないですか。そういうふうに私は思います。
  22. 中澤茂一

    中澤委員 土地改良はりっぱに借金を払ってというのは、大臣、認識不足だ。今全国土地改良組合の八割が困って、土地改良再建整備法をつくってくれ、旧債のたな上げをやってくれという陳情を、われわれはもう数十回にわたって受けているのですよ。大臣土地改良だっておかしいと思うね。土地改良組合は、大臣、お調べになったり御意見をお聞きになったことがあるのですか。今土地改良組合全国の八割はお手あげですよ。農林省の農地局長が一番よく知っているはずですよ。だから、土地改良だってやっているじゃないか、それよりか金利も下げるし、めんどうも見るから、できないのはおかしいじゃないかというところに、基本的な農業政策に対する大臣のズレがあると僕は思うのですよ。そう言うと大臣に失礼かもしらぬが、やはり土地改良組合自体が動きがとれなくなっている。大臣がこれだけめんどうを見て、府県にも二割程度負担させるのだと言うけれども、どういう方法で府具に負担させるのですか。具体的にどういう方法で府県に二割負担させて——富裕具ならばいざ知らず、農業県なんというものは大体自治体財源の貧困県ですよ。工業県は税のとれるところはうんとありますが、そういう貧困県はどうして二割負担ができるのです。国が五割、府原が二割、東北や農業県へいって二割負担がどうしてできるのです。私はできないと思う。
  23. 重政誠之

    重政国務大臣 八割はだめの土地改良組合がある、こう言われるが、これはよく事務当局で調べてみますが、私はこういうふうに考えた。現に私の地方なんかそんな焦げついておるものは少ないですよ。あなた方はよほど甘いからそういうことを言うのだろうと思う。これはよく調べてみればわかりますが、償還期限はおくれても、大体農家は借金を払っておる、私はそう思っておる。それから今の二割のかさ上げの問題でありますが、これは地方交付金の中から、構造改善事業を行なっておるところにそれだけ特別の交付金として交付をしようというような趣旨でやろうということであります。二割と申しましたのも、これ全部が二割というわけではありませんが、基盤整備については二割のかさ上げをやろう、こういうことで自治省の方と大蔵省の方と最近話がついたわけであります。だから財源は国の方から交付しよう、こういうことです。
  24. 中澤茂一

    中澤委員 そうすれば大臣構造改善として一般交付税のワク外交付、こういう形で話がついたのですか。
  25. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 私から答弁させていただきます。  今回府県が基盤整備についてかさ上げをするための財源措置といたしまして二つの方法考えたわけでございます。まず三十八年度からの地方財政計画上におきまして、構造改善の土地基盤の予定額が約六十億ございます。従ってそれに見合う二割のかさ上げの補助ができますように、約十二億の資金額につきまして、これを各府県の地方交付税の中に特別にその分を織り込んで配付する。従って県におきましてはそれに見合って各市町村事業費に対しまして二割のかさ上げができるようにする、こういうことにいたしております。しかし三十七年度においては事業に着手することになっておりますので、三十七年度につきましてはすでに地方交付税については配付済みでございますから、そこで三十七年度につきましては一般交付税とは別に特別交付金という形で土地基盤整備に要する実績につきまして、これを各府県に配付するということにいたしたいと考えておるわけでございます。
  26. 中澤茂一

    中澤委員 大臣、なぜそういうことをやるのですか。それなら最初から国が七割でやったらいいじゃないですか。理由はどういうところにあるのですか。何も最初から五割にしないで——農民は、この前参考人を呼んでも八割に上げてくれないか、こち言っておるのですよ。それなら最初から、そういう自治省とか厄介なルートを通らずに、国が七割でぴしゃっとやったらどうですか。
  27. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 この点につまきしては、計画の指導にあたりまして当然都道府県というものが相当関与することになっております。法律的に言いますと、構造改善事業を基本法に基づいてやるということになっておりますが、基本法におきましても地方自治団体が一応国に準じていろいろ措置するというふうになっておるわけでございます。特にこの事業について府県の指導に期待するところが非常に多いという趣旨にかんがみまして、たとえば各町村計画はもちろん知事の承認にかけておりますほかに、事業予算配分におきましても、県がその村の事業計画を見まして、そうしてある程度の——平均四千五百万円という補助金でございますけれども、一〇%程度のものは県がその間に立ちまして調整をするというような措置をとることにいたしておるわけでございます。  そこで県がこれを推進するにあたりまして、土地基盤につきましてはすでにある程度自主財源でそういう調整措置をとっているところもございます。そこで、とっておるところととっていない県との間におきましては不公正があるというふうなことに対しては、町村からはこれを調整してもらいたいという具体的な要望もございます。そこでそういうことを勘案いたしまして、各自前でやれるところはやる、やれないところはやらないということにならないように、統一的なかさ上げができるようにという措置を今回とった次第でございます。
  28. 中澤茂一

    中澤委員 自主財源措置までとっている県があると言うのは、そういう県があるのですか。
  29. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 正確には覚えておりませんが、約十県くらいは、一割上げたとか、五%かさ上げしたということをやっておる県があります。
  30. 中澤茂一

    中澤委員 それは自主財源措置を県がやっておる、その辺にも問題があるのじゃないですか。要するに、この前安井君が大臣と若干議論をかわしたのですが、地方自治法第二条の問題があるわけですね。それは、こういうことは地方自治体がやるべきだという十六か十七の例外の列挙規定はありますね。しかし国がやって、大臣が推進する施策に地方自治体が自主財源措置をとるということは、明らかに地方自治法二条の安井君がこの前議論した問題の違反じゃないですか。その辺はどうなんです。
  31. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 この事業は、先ほど農林大臣から御答弁ございましたように、各町村におきまして自主的に計画を立てたものに対しまして、国が財政的に、金融的に、あるいは技術援助をいたそう、こういう建前でこの事業を進めておるわけでございます。従って本件につきましては、安井先生からも御質問がございましたが、自治省の法律見解も聞いて相談いたしました結果、それは当然自治体としてやる事業である、国がそれに対するいろいろの援助をやる、こういう仕組みでありますので、県が県単事業をいろいろ土地改良についてもやっておりますと同じような意味で、この面について地方自治団体、県も市町村も自主的に追加の措置をとるということについては何ら異議がない、こういうことでございます。
  32. 中澤茂一

    中澤委員 それは自治省とあなたとの法律見解はどうだったか知らぬが、しかし国が推進している事業には間違いないのでしょう。農業基本法から出た事業という御答弁がさっき大臣からあったのですよ。間違いなく国がやっている事業なら国の責任でやるべきであって、それは自治省の法律見解はどうか知らぬが、実際は国が次官通達でやっているのじゃないですか。違いますか。国が次官通達で県に流し、県が市町村役場に流す、そういう形で実際はやっているのじゃないですか。どうなんですか。
  33. 重政誠之

    重政国務大臣 私は常識論で言うておる。中澤さんは途中から法律論に切りかえられる。そこでそれが非常に混迷をするように私は思ったのですが、ちょうど言ってみれば、同じ土地改良事業でも国営でやっておるのは国が直接やっておるのです。ところがそうでない県営なりあるいは団体営でやっておるのは、それぞれの県が自分でもって主体になってやる、あるいは団体が主体になってやっておる。これに対して政府がその事業が適当であると考えた場合にそれ以上奨励金を出しておる、こういう二つの場合があるのですが、土地改良事業は常識的に言えば国が大いに推進をしております。こういうことになるわけです。でありますから、そこのところを一つ分けてお考えいただけば、今農政局長が言ったのは法律的に言っておるのであって、私は常識的に言っておるのでありますから、そういうふうに御了承願いたいと思います。
  34. 中澤茂一

    中澤委員 混迷しているのはそっちであって、こっちは一つも混迷していないんです。土地改良をやっているのは、大臣土地改良法という法律でやっておるんですよ。そこに問題があるんです。土地改良はこの次官通達一冊でやっておるのじゃないんですよ。だからわれわれはそこを問題にしておるんですよ。責任は一体どこにあるんだ。次官の責任でもなさそうだし、閣議了解事項をちゃんと命によって通達すると言ってこれをやっておるんです。土地改良法の問題とこれを混迷させちゃ第一いかぬですよ。土地改良法によって団体営は国がこれだけやってやる、町村営はこうしてやる、土地改良法という法律が厳存しておるんですよ。これには法律がないところに混迷があるんです。だから今大臣の言われる混迷というのはそちらが混迷しているので、こっちは一つも混迷していないんですよね。だからこういう通達一本でこれだけの国の農業の大政策をやろうということは、今度は大臣が常識論で申されたから私は常識論でお伺いしますが、常識的にいかがなものでございましょう。
  35. 重政誠之

    重政国務大臣 法律を要するものにつきましては法律を制定して参ります。が、この構造改善の全体の事業のうちには、法律を必要としない事項がたくさんあるわけです。予算でやっていけるものがたくさんあるわけでありますから、現在の段階ではこの法律を制定してやるという考えを私は持っておりません。法律を要する事項につきましては、これはそれぞれ法律を制定してやって参る、こういうつもりでおるわけであります。今責任問題を云々せられるが、私の常識からいけばそういうことは大して問題にならぬと思うのでございます。それから法律制定をすべきだという結論を出されることは、ちょっと私にはわからないのです。
  36. 中澤茂一

    中澤委員 それは大臣がみずから国会の審議権というものを放棄している答弁です。少なくとも構造改善のこれは今予算で審議されている問題ですね。当然国の支出であるから、予算審議はやっておるわけです。予算審議をやっておる中で、もちろん法律の規定によって支出するものもある。しかも今度土地改良法の大幅改正をやって、それによって基盤整備一つやっていこうという考え方政府は持っているようだが、しかし片方において予算は完全に国会の審議権の場において審議をされ、片方使う金の方は、これでもって勝手に使うのだ、これは大臣どうですか、行政長官としてでなく、国会議員として。そういうことをもしやるならば、もう日本の国会には法律は要らぬと思う。全部予算審議が終われば、各省次官通達でどんどんとこういう何百億という金を出せるんですからね。これは私はまさに大へんな悪例を開いていると思う。それはなるほどこの通達を読んでみると、完全に法律的にひっかからないように苦心惨たんをしてこれをつくっておりますよ。これはさすがにお役人さん頭がいいと思って私も感心しておるんですが、これはもう苦心惨たんした作ですよ。しからば一体指定地区の許可というのはだれがやっておるのですか。
  37. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 事務的なことでございますから私から御答弁申し上げます。  地区の指定は全部都道府県知事が指定することになっておりまして、農林大臣が指定にあたって協議を受けるということになっております。それから事業計画につきましても、同様に都道府県知事が承認をするということになっております。  なお、今この事業の中で土地基盤整備等の事業につきましては、それぞれ土地改良法に基づいて事業を進めるということになっておりまして、計画としてはいろいろの事業がこの中に入り込んでおりますけれども、土地基盤整備事業に該当する問題は土地改良法に基づいて事業を進める、それ以外の共同施設等の設置につきましては、たとえば農協がやりますものにおきましては農協が利用料等をきめて利用させるというようなことで、これは従来ともそのような助成方法をとっておるわけでございます。
  38. 中澤茂一

    中澤委員 大臣、今のは大臣に御答弁願いたかったのだが、これは私は非常に悪例だと思うのです。こういう国の施策としての基本的な施策を出しながら法律をつくらないで、そしてしかも長期十カ年にわたる、数千億にわたる補助金を総合助成として出そうとする、それに対して今後も毎年々々予算だけは予算委員会で審議されるが、これに対して法律がないから行政措置だけで、これが通達一本でやれるというのは、これは国会の審議権の問題から、大臣、常識的な判断を願いたいので、これは大へんな悪例を開いていると思うのです。私はやはり大臣が、お役人さんがいかに言おうともそれはいかぬ、やはり国会の審議権の立場からこれは立法化すべきであるという、大臣がそういう国民の負託にこたえた議員として国会の審議権尊重という立場から、私は政治家としてはそういう態度をとるべきではないか、こう考えるのですが、これは大臣の御所見をお伺いしたので、皆さんの御答弁をお聞きしたがったのじゃなかったのです。
  39. 重政誠之

    重政国務大臣 私は、先ほど申しました通り、立法措置によらなければならぬとは考えておらないのです。予算も、ただつかみで幾ら幾らということの御審議をわずらわしておるわけではないのでありまして、その内容は十分詳細に必要によって御説明もし、その基礎の上に立ってやっておるのでありますから、ただその執行は農林省において執行いたしますが、その執行いたしましたことについては、国会としてはその審査権を持っておられて、いろいろ御注意もいただくし、叱正もいただくことになっておるのでありますから、法律でなければならぬ事項については法律を制定しなければなりませんが、そうでない当然行政権によってやっていける分は法律をつくらなければならぬとは私は考えておらないのです。
  40. 中澤茂一

    中澤委員 これはどなたが御答弁になってもけっこうですが、これは基本法の条文から出たんですわね。そしてこの通達というものは、三十七年五月二十五日に農林事務次官通達で、全文は省くが、「以上命により通達する。」とこうなっておりますね。以上命により通達するところで仕事が始まっているのですね。それは間違いですか。この通達から仕事が始まっているんじゃないのですか。だから地方の村においては二転、三転、四転、五転して、まるで大混乱を起こしたのが事実です。基本的なこれがちっともきまらないもので、今度農林省が県庁に来たときにはこう言った、県の役人が村に行ってこう言った、そうだと思っていよいよ始めようと思ったら、その次に県の役人が来たときには話が変わっちゃった。それでこれは二転、三転、四転、五転しているのですね。そうしてようやく最後にこれが決定したのですね。そうすると命によりて通達する、これから仕事が始まったと私は判断しておるのですね。これがきまるまでは、地方は右往左往していたんですね。これがきまったところから具体的に仕事が始まったと思うのです。そうすると命によりて通達した以上は、これは国の施策であるということは間違いないでしょう。国の施策であるならば、当然これだけの膨大な農業構造改善という農村の体質改善をやられる事業に皆さんは一体どうして法律を必要としないという考え方なんですか。  それから先ほどあなたが言うた大臣と協議する、なるほどこの中には大臣と協議するとある。しかし農地事務局を通じて、こう前段に文句があるわけです。そうすると、大臣と協議するということは、大臣は認可も何にもしないが協議だけするということですか。あなたの方ではこれはよろしいという指定地区に対し、何らの責任ある判というものはついていないのですか。
  41. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 事務手続の関係につきましては、県の方からこういう計画について認可したいと思うがよろしいかという協議を受けまして、その協議に対しまして農林省から公文書でよろしい、こういう手続でやっておるわけでございます。
  42. 中澤茂一

    中澤委員 よろしいというのは認可ということとどう違うのですか。
  43. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 あくまでも認可の主体権は都道府県知事ということにいたしておりまして、いわばその認可をする前の事前行為として、いろいろ額の問題あるいは事業の対象になるべき種類の問題とかいったようなことをいろいろ検討いたしますので、事前の意味で協議ということをやっておるわけでございます。
  44. 中澤茂一

    中澤委員 どうも私頭が悪くて、認可ということとよろしいということ——よろしいということは認可と違うのですか。どうもその辺は私はお役人さんのように頭がよくないもんで……。よろしいということは認可というふうにしゃばの常識でとれぬでしょうかね。
  45. 重政誠之

    重政国務大臣 認可とか許可とかいいますと、それはむずかしい言葉で言えば行政処分になるわけでありますが、その行政処分は府県知事がやる。今の協議してよろしいというのは、行政処分をするまでの内輪の処理の行為であります。まあ言ってみれば台所でいろいろ相談をして、いよいよお客さんにお膳を出すときは、それが今の認可ということになる、それから協議をしておるというのは台所の話になる、こういうことだと御了承願えればいいと思います。
  46. 中澤茂一

    中澤委員 大臣、そういう詭弁を弄さぬ方がいいですよ。そうすると、さっき国の基本施策として大臣は推進しておるんだと御答弁になった。国の基本施策として推進しておるのにお台所の方の話だけで国は推進できるのですか。やはり正面切って今日はというごあいさつから始まらぬと国が推進しているといえないのじゃないですか。お台所の方でもってごちゃごちゃ協議している、これが国が推進しているんだ、これじゃお台所と本座敷が全然間違っているのじゃないですか。どうでしょう。
  47. 重政誠之

    重政国務大臣 これは事柄によりましては農林大臣が行政処分をやるという方がいい場合もあります。しかしこの場合は各府県の実情というものがそれぞれあるのでありますから、農林大臣全国の市町村をみんな一つ一つしさいにやって正面の前線に出ていってやるのがいいのか、あるいはその地方の実情をよく知っておる者を主体にして、主役は府県知事、わき役は農林大臣という方が実情に適するのではないか、こういう考えでそういうことになっておるのであろうと思うのであります。
  48. 中澤茂一

    中澤委員 それは大臣、それが責任の問題なんですよ。大臣は借金の問題が頭へ先にきちゃったからいかぬ。国が基本施策として推進しているのならそれは当然国の責任という問題じゃないのですか。大臣はこの近代化資金の問題についてもよく努力をされた、それは認めますよ。努力をされたが、国が基本施策として進めているから大臣はこの資金問題も努力をしたのでしょう。国が基本施策として進めているから、とにかくこれだけの資金獲得、三分五厘という日本において初めての低金利の一つのルートをつくった。というのは国の推進だからできておるのじゃないですか。どうなんですか。これじゃ議論をやってもちっとも——一体だれがやっているのだということが明確にならぬから議論が空転をしてしまうんです。だからこれははっきり国じゃないんですか。
  49. 重政誠之

    重政国務大臣 これは冒頭に申しました通りに、国の重要政策として推進をしておる。ただ法律的にいろいろの手続を言われれば、先ほど農政局長が答えたようなことが実態に合う、こういうのでやっておるのであって、これだけ膨大な予算を計上して国が金を出しておるのだから、国がやっておらぬと考えるそういう非常識な者は私はおらぬだろうと思うのです。(「それに合うような法的措置をすればいい」と呼ぶ者あり)形式的にそれに合うようにしたのがいいのか、今のように府県知事でやった方が実情に適するのか、これは実行上の効果をあげるためのやり方の問題であります。それは何も借金の支払いの責任にはこれは関係ないのですよ。
  50. 中澤茂一

    中澤委員 大臣が非常に努力して御自慢の種の一つは、この構造改善資金融通制度なるものです。なるほどこれは先ほど申したように三分五厘とか新しいルートの農業金融の金利体系のトップを設定したということは、私もその努力は認めます。努力は認めますが、一体、こんなちっぽけな資金と言っちゃ失礼ですが、この資金で日本の農業構造改善が初年度、次年度といえどもできるという考え方では、とうていこれは問題にならぬのじゃないか。御承知のように改善事業の推進資金として三十六億、それから果樹の育成資金として三十億、畜産経営拡大として三十億、ちょっと三十億と聞くといやに大きいようだけれども、これを計算上割ってみますと一県当たり六千六百万くらいにしかならぬのです。そうすると最高限度二百五十万貸すと、最高限度借りる者がもし一ぱいあったとすれば二十七人くらいしか借りられないんですね。グリーン・レポートにもあるように、大体六万五千戸の農家が今のところ専業経営農家として生産ベースに乗る約七十万基準農家ですね。その六万五千戸から考えてみても二十七戸にこの金をこれだけ出したって、しかも協業資金一千万でしょう。もしこの中から、一県当たり六千六百万ですから協業の一千万が六件出ればもうそれでパーですね。これでは大臣が御自慢になるほどの内容じゃないのじゃないですか。
  51. 重政誠之

    重政国務大臣 資金のワクの問題は、これは必要によって年々増額をしていくことができると私は思っております。これでやってみて、それでさらに必要なだけこれを増額をしていく、こういうつもりでおるわけであります。
  52. 中澤茂一

    中澤委員 これは大臣の答弁でなくてもいいですが、こういう助成要綱があるんですがね。助成要綱に「国は、毎年度予算の範囲内において、次に掲げる経費につき、その五割以内を補助するものとする。」こういうふうになっておって、以下助成要綱があるのですが、この助成要綱そのものが、法律じゃなくてできるのですか。今までいろいろ補助金というものはこういう形で流れていたことはわれわれも知っているが、こういう基本的な施策を推進するに、こういう助成要綱だけで金は幾らでも出せますかね。
  53. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ここにあります実施要綱は、この事業を進めるにあたりましてのいわば大綱的骨子をまとめて書いたものでございます。従って通常の補助金交付と同じように、かりに助成するということになりましても、助成する手続としては、通常の予算の交付と同じような手続をさらにこれに基づいてとるということになるわけであります。つまりこれは全体を、事業を進める場合にあたりまして国はどういう助成の態度をとっておるかということを、ここで明らかにしたものでございます。
  54. 中澤茂一

    中澤委員 これは国の事業並びに国の構造改善という特定な事務に関しての助成なのでしょうね、この助成というのは。
  55. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 そうです。
  56. 中澤茂一

    中澤委員 そうすると、伺いたいのですが、国の事務並びに構造改善という特定事務、こういう特定事務によって国がこういう助成をする場合は、法律によらなければできないはずなのですよ。それは財政法の十条にこういう規定があるのです。「国の特定の事務のために要する費用について、国以外の者にその全部又は一部を負担させるには、法律に基かなければならない。」と財政法十条に規定があるのですよ。そうすると構造改善という特定の事務を進めるために国が助成を行なう場合は当然——国以外のものが負担するのですからね、県なり市町村なりが特定事務を。その場合は財政法十条で、これは法律に基づかなければならないという規定がここにあるのです。どうなんですか。
  57. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 先ほど、この事業の自治団体としてどのような扱いをするかということについて御説明申し上げましたが、この事業を進めるにあたりましては、それぞれの自治団体が農林漁業振興という見地から構造改善事業を進めて参る、その事業に対しまして国が財政的援助をするという性質のものでございます。従って国のいろいろな事務を市町村あるいは府県にやらせるという仕事ではないということを、先ほど申し上げたのであります。そういう意味から言いますと、各種の特定地域の振興対策立法がございますが、それに対して国はいろいろの助成をやっております。性質から言えばそれと同じやり方のものでございます。
  58. 中澤茂一

    中澤委員 それはあなたのさっきの答弁に私は念を押したじゃないですか。構造改善という国の基本政策を進める特定の事務の助成並びに事業の助成じゃないですか。それはあなたはその通りと言ったでしょう。その通りなのでしょう。その通りとすれば、これは明らかに財政法十条違反じゃないですか。そこで現にこれに対する予算を、さっきあなたが言ったように組んでいる県があるのですよ。これも明らかに財政法十条違反をやっている。たとえばここに熊本県なんか、計画書作成のための助成として百八十万円をちゃんと予算編成しているのです。これは財政法十条によれば、国の特定の事務の場合は法律に基づかない助成はできないのですよ、財政法十条から言えば。これはあなたがそう逃げるだろうということは——この文章を読めばいかに逃げるかという苦労だけをしていることは明らかなのです。たとえばここに大臣が認可すると書いてあると、すぐ財政法十条にひっかかってくるからうまくないぞというので、ここに協議と書いてあるのだ。そういうごまかしをやったってどこかでボロは出るのですよ。さっき言ったように、明らかに国の構造改善という基本施策の特定事務じゃないですか。財政法十条違反だから、大臣どうですか、法律をつくりましよう、法律を。
  59. 重政誠之

    重政国務大臣 どうも財政法には私は弱いので、そういう御疑問がありますれば十分検討をいたします。検討いたしましてまたお答えをいたしたいと思います。
  60. 中澤茂一

    中澤委員 どうしても財政法十条違反じゃないですか。
  61. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 構造改善事業そのものの推進にあたりましては、法に基づく国の施策でございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、その事業自身が国の事務ではなくて、市町村構造改善事業に対して、国が財政的あるいは金融的あるいは技術的な援助を与えて推進しようという性質のものでございますので、何ら今の財政法には抵触しないと考えております。
  62. 中澤茂一

    中澤委員 それなら、さっきのあなたの前言を取り消さなければだめだ。僕は念を突いたじゃないですか。念を突いたら、あなた、立ってさっと頭を下げたじゃないですか。国の基本施策によるところの構造改善という事業であり、これに対する特定の事務を現にさしているんじゃないですか。あなた、そういうからくりのごまかしはやめましょうや。現にさしておるじゃないですか。県にしろ町村にしろ、あれだけの膨大な計画書——四日ばかり、三県を回ったら、カバンに入りゃしない。小包で送らなければならぬ。膨大な計画書をみな村の金を出してやっておるじゃないですか。出足からあなた方の考え方はおかしいと思うのですよ。これは大臣考え方——さっき言ったように、こういう大事業は立法化すべきである。しかも十カ年という長期継続事業でしょう。この十カ年という長期継続事業で日本の農業の体質改善を根本的にやろう、三千カ町村以上のものをやろうという膨大な計画を、何らの法律も持たずに、そうして今度通達一本で、今後十年間これは生きてくるでしょう。そういうことは一体社会の常識として許すでしょうか。もし、大臣の言うように、そういうことを許すとすれば、国会で法律なんか、何にもやらぬでもいい。全部、予算さえ通ったら次官通達、次官通達で、もう法律は要りませんよ、これでやれるなら。しかしこれは少し常識を逸脱しているのです、補助制度としては。だからこれはどうしても立法措置にすべきである。それがやはり国会の審議権からいっても——しかも末端にあれだけ紛糾問題が今発生しておるんだから、そうすればこの法律事項に基づいて政令ぐらいを国会に出していただいて、政令ぐらいまでみんなで検討して、これならいいだろうという形でやるべきじゃないか。まさにこれは権道を行っておるのだし、国会の審議権からいっても、これは大臣自身審議権を放棄していることなんだ。私は法律をつくる意思はありません——そこで大臣は、法律をつくるとめんどうくさいから、みんなで知恵をしぼり合おうということで、こういうことになったのかもしれぬですがね、これはしかし遺憾だと思う。権道だと思うのです。どうです、大臣、もうこの国会じゃ間に合わないが、あと十カ年続くのですよ、考えてみたらどうですか、法律問題は。
  63. 重政誠之

    重政国務大臣 予算さえ通れば何でも行政権でやれるとは考えておらないのです。やはり国民の権利義務に関連をいたしますものは法律によらなければならない。しかし予算で御審議を願って成立したもので、国民の権利義務に直接関係をしないものは、これは必ずしも法律によらなければならぬということになってないと私は心得ております。従って、この構造改善事業の中にも、法律によらなければならぬものもありましょう。そういうものは、それぞれ法律をつくるなり、あるいは従来の法律によってやっておるわけであります。現在のところでは、どうしてもこれは法律でやらなければならぬというふうには、私は考えておらないわけであります。
  64. 中澤茂一

    中澤委員 しかし、この補助対策要綱を見ても、大体土地基盤整備の補助分は土地改良というもので今後改正してやっていくからいいが、他の補助のいろいろな種類、こういうものをずっと見てごらんなさいよ。ほとんど法律なしでやるんですよ。その金額は膨大なものですよ。あとのこまかいものは全部法律なしでやっていくのですよ。それは常識を逸脱していやせんですか。土地改良以外法律の規定でくれる補助というものは一体何があるでしょうか。ほとんど、共同施設にしろ、あらゆる分野のものにしろ、みんな法律なしで、ただこの通達一本で現に予算をどんどん出してやろうというのは、どう考えてもおかしいですよ。
  65. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 法律をつくるべきではないかという御議論が前国会の当委員会におきましてございましたので、われわれも内部におきましていろいろの角度から検討いたしたわけでございます。その際、御質問になりました法律をつくるべきであるという根拠といたしまして、一つ計画主体あるいは実施主体を法律で明定すべきではないか。それからいま一つは、経費徴収については法律的根拠があるべきではなかろうかというのが、たしか主要な論点であったかと思います。そこで、まず前の計画主体の方につきましては、先ほど来申し上げておりますように、これは市町村ということにいたしておりまして、自治団体が当然そういうことについての能力があるという自治省の見解もあり、またこの種の農業関係の特殊立法にもそのようになっておるわけでございます。  それから経費負担の徴収の関係につきましては、大体一番問題になるのは土地基盤整備の関係でございますが、これは土地改良法の適用を受けるわけでございますので、従って事業の実施にあたりましては、その手続に基づいてやるというふうな考え方をとっておるわけでございます。従って残る問題は、今先生が御指摘になりました近代化施設等についての助成でございます。これは農林省のいろいろの助成につきましては、必ずしも法律によらずして助成をやっておるわけでございますが、それぞれ事業の実施主体というのは、土地改良であれば土地改良、あるいは農協の施設である場合には農協、あるいは町村みずからが事業主体になっている場合もございますけれども、それぞれ組合なりの内部の規定に基づいて事業費を徴収するとか、あるいは負担をとるとかいうような措置をきめておるわけでございます。また、ものによりましては、その施設の中においても他の特殊立法に基づいて実施すべきものもございまして、たとえば酪振法であるとか、あるいは果樹農業振興特別措置法であるとか、そういったような法律に基づいて卒業を進めるものもその中には包含されておるわけであります。いわば一つの目標ごとに、総合的な組み合わせで事業を一定地域についてやらせるというところにねらいがあるわけでございますから、必ずしもすべてにわたって法律を要する必要はない、あらためて法律的な規定を設ける必要はなかろう、こういう意見町村の方からありまして、むしろ法律によらずして、しばらくの間は運用の面において非常に弾力的な形をとった方が実情に合うので、法律的なぎくしゃくしたことでない方がむしろしばらくの間はいいんじゃないかというような町村の御要望もあるわけでございます。そういうようなことも考えまして、十年にわたる計画でございますから、特に基本法に基づく施策として閣議決定もやり、一応十年間にわたってやるということを明らかにすれば、執行面におきましては必ずしも法律を要しないではなかろうか。こういう検討をいたしたわけでございます。
  66. 中澤茂一

    中澤委員 この財政法十条違反の問題といい、そういう議論を敷衍していけば非常に危険ですよ。それならば、積寒法初め西南暖地、湿田単作、あんなものは十億や十五億の金を出すのに法律をつくっておりますが、あんなものに法律は要らないですよ、そういう議論を敷衍していけば。特殊立法が五つも六つもあるでしょう。それもせいぜい十億か十五億です。今なんかほとんど予算がついていやしない。ああいうものを延長に延長を重ねてやるというのは国会の審議権の立法の問題だと思う。それに数十倍、長期にわたれば数百倍に回るという国民の税金を使う問題だ。そういう危険な理論では承知できませんよ。基本的にあなた方の頭の構造改善を先にやってもらわなければならぬ。どうせ皆さんは頭がいいんだから、国会議員なんて頭が悪い、おれはみんな適当にごまかせばやれるものだ、みなごまかされると思っておるか知らぬが、しかし国会の審議権は、三権分立の建前からわれわれとしては国会議員として断じて守らなければならぬと思う。そういう審議権の立場から考えるならば、そういう理論の敷衍をやっていけば、もう一切の法律は不要論になります。それなら直ちに特殊立法の西南暖地だ、積寒だ、海岸砂地地帯の立法だ、ああいうものはみな廃止したらいいでしょう、そういう理論でいくならば。そんな理論は大体おかしいですよ。そういう理論を大臣が許しておくところに問題があると思うのです。やはり国会議員として審議権はどこまでもわれわれは守らなければならぬ、こういう立場でものを考えないといかぬ。大臣は台所の方の問題ばかり考えて常識論を——私も常識のない人間じゃない、常識は持っておりますから常識論は考えますが、常識論と国会議員としての審議権という問題は、やはり画然と区別しなければならぬと思うのです。国会の審議権という問題。これだけの長期の、十年にわたる農業の基本施策が、法律もつくらずだらだらと通達でやって、しかもその助成の多くが、まるで何の基礎もない助成。そうしてさっき齋藤さんは、町村の方じゃ法律なんかない方がいいと言ったというが、そんなことは町村じゃ言っていませんよ。私はあなた方なんかより町村構造改善地区調査はしていますよ。むしろ一番言うのは、あなた方のテクニックの点数制問題なのですよ。この点数制というのは一体何ですか。これはみんな農民が怒っておるのです。これは一体何をいっているんだというのです。専業農家換算一戸当たり二十二点、水田一ヘクタール当たり三十二点、普通畑二十六点、果樹園八十八点、桑園その他の樹園地三十一点、大家畜換算一頭当たり五点、第一種兼業農家が〇・八戸、第二種が〇・三戸、大家畜換算は、牛と馬は一頭につき一頭、豚が〇・二頭、めん羊が〇・一頭、ヤギが〇・一頭、鶏が一羽につき〇・〇一頭なんて、一体これは何ですか。しかもこの点数に基づいて指定地域内の農家が一九六〇年の農業センサスによって評点化し、合計したものの平方根の数値を求め、この平方根の数値が三百四十五点にならなければならぬ、これは一体何だ。これを農民が言っているんだ。何ですか。法律をつくっちゃいかないなんて農民は言っていない。これは何のことだと言っているんですよ。これが一つの基準、補助の対象の基点となったりする、そういうばかなことを農民は怒っているのですよ。むしろこういうばかなことをするから、農民は法律をつくって政令できちっと明確にしてもらえば明らかだ、また読んでも、官報さえ見ればわかる。お役人さんが書いたから鶏は一羽につき〇・〇一頭、ヤギは〇・一頭なんて言っておるのですが、これを何のことか説明して下さい。
  67. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 今の評点は、それだけ取り上げますと非常にむずかしく響きますけれども、簡単なことでございまして、要するにその地方におきます戸数と面積と人の配分に応じて補助金の配分をしたいという基準を示したものにすぎないわけでございます。これは町村の方から、今後計画を立てる場合に、大きな町村も小さな町村も全部四千五百万円というようなことでは困る、そういう要望がございまして、戸数なり面積においてやはり事業費は考えてもらいたい、こういう強い要望があったことが第一点であります。  それからいま一つ計画を立てるといたしましても、町村の負担能力に応じましては、膨大な計画も立てれば、あるいはどの程度に立ててよろしいかという目安がなければ計画の立てようもないということで、目安を示す意味で今申し上げたような基準を設けたわけでございます。  基準の内容としましては、今申し上げましたように、戸数につきまして考え、それから面積について考える。ただ戸数につきましては非常に兼業地帯の多いところもあれば、専業地帯もありますので、農業構造改善といえば、やはり専業農家を重点に置いて考えるといたしますならば、専業農家の戸数に換算して戸数を出していきたい。それから面積につきましてはいろいろ農用地の面積を出すわけでございますけれども、客観的な資料としてございませんので、一九六〇年のセンサスによるということにいたしたわけでございます。  なお、家畜については詳細ないろいろな換算がございますが、草地についての面積把握が実は同時的なものとしてないわけでございます。それでやむを得ず家畜を代用して飼料面積、草地面積というものを出そうということにいたしたわけでございまして、考え方といたしましては、冒頭に申し上げましたように人口の増加、つまり戸数の増減、面積の増減を考慮して配分しよう、こういう考えでございます。
  68. 中澤茂一

    中澤委員 その考え方農民考え方と離れているんだよ。あなた方、役所の内部で金とひまのある人間が何か一つここでむずかしいことを考えようといって考えたことで、農民は平方根って何だか知らぬよ。大根のことだと思っているよ。そういうことはひまと金のあるあなた方の考えたことなんだよ。農民はそんなことを一つ考えてやしない。平方根で、私があるところでこういうふうな基準で算定するのだと言うと、平方根ってどんな大根だというような話をしているんですよ。そんなとぼけた考え方を持っているから日本の農政は少しも進まないんですよ、大臣が悪いのじゃない。河野建設大臣が建設省に行けばあれだけ成果が上がるが、農林省では一つも成果が上がりゃしない。それはあなた方があまり頭の中でごちゃごちゃやっているからだ。やはり大臣に、断をもってこうやりましょうという態度であなた方が補佐しないから——大臣は昔農林省のお役人で詳しかったかもしらぬけれども、このごろはだいぶ詳しくない。だから何でも常識論でいってしまう。それならば推進する責任は、大臣がどうきめてもおれたちが持っていこうという一つ考え方で、もっと農民の中に入りなさい。農村に入りなさい。農民意見を聞いてみなさい。こんなものを農民に説明しても、何ですかと言う。そういうことで一切の基準をきめてから、政令で明らかにして、規則は皆さんが御自由に適当に実態をよく把握しておつくりになればいいので、法律と政令はやはりつくるべきである。それを私はどこまでも主張する。主張は変えませんよ。これは十年続くのですから、十年やりますよ。法律をつくるまでやりますよ。大臣として、審議権の問題とからんで慎重に考えてもらわないといかぬのです。これは行政庁ではなくて、国会議員の審議権という立場で考えてもらわなければ困るんですよ。こういうことは大臣知らぬでしょう、この平方根だの大根だのということは。こういうことをやっておるんですよ。  そこで、もう時間もきましたし、あとまた専門的に同僚の諸君が質問しますから、私は最後に申し上げたいのは、今の農村というものは非常に窮迫に陥っている。しかもあのグリーン・レポートにあるような状況が——あれは私ざっと通読してみたが、非常に率直で、実態を把握したよくできているレポートだと思う。ところがプランの方は、これは何が何だかわからない。当然グリーン・レポートを予想して政府の施策としてグリーン・プランはどういくのだということになると、のれんに腕押しという形で、どこが力点か、どこが何だかわからない。今までそういう重態にある農業は、今もう危篤状態に入っていると思う。盲腸でいえばすぐ手術しなければいけない、それで病院まで行った。ところが重政病院というのは施設が古くて、なかなかいい器械もそろってない。そこで重政病院では、これはどうしたものだ、うちの病院では手術できそうもないがということであたふたあたふたしている、たとえで言えば、私はそういう感じを受けている。これは失敬かもしれないが、率直な感じを申し上げるのです。そこで、これは大臣責任ばかりでなくて、やはり農林省全体として、この古ぼけた病院をすぐ、いかなる急患が来ても間に合うぞという体制に近代化し、頭の構造改善をやって、そしていつでも即応できる体制をつくり上げるということで、私は大臣にばかり言うのじゃない、皆さん全員の御責任ではないかと思う。そういう点においては大いに一つ心してもらいたいと思う。こういう状態でいけば農民はどうにもならない。これは下手な事態、たとえば食管の面が自由化されて、かつての富山県に起こったようなあの暴動が起きた場合、私は日本中に農民暴動が起きないという保証はないという事態まで農民が追い詰められておるということをよく認識してもらいたい。そこで重政大臣に申し上げることは、かつて大東亜戦争のとき、山本五十六大将が死の前に非常に断という字を書かれております。私もある知己を通じて一枚色紙をもらったが、断という字を書かれておる。そこで山本大将はああいうことで戦死されたが、私は農林大臣にとっても断だと思う。いずれ乳価の問題はあとで同僚の諸君がやるが、ある場合は断を下さなければだめです。とにかくおれの昔の部下がおれを補佐してくれるのだからおれはいいのだろうと思っていては、今の農業政策の推進はできません。大臣は、断の一字をもってすべてを決裁していって下さい。そうするならばわれわれも大いに御協力申し上げるということをもって質問の最後といたします。(拍手)
  69. 長谷川四郎

    長谷川委員長 午後一時から再開することとし、この際休憩をいたします。    午後零時八分休憩      ————◇—————    午後一時二分開議
  70. 長谷川四郎

    長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について質疑を続行いたします。安井吉典君。
  71. 安井吉典

    ○安井委員 中澤委員に引き続きまして、農林大臣の施政についての御方針の発表に対しまして、質問を続けたいと思うわけでございますが、私、あと乳価問題を初め畜産の問題については湯山委員から質問がございますし、その他ずいぶんお尋ねしたい点はたくさんあるわけでございますが、時間も十分でないと思いますので、そのうちから特にこの際大臣の御見解を伺っておきたい数点につきまして、質問をいたしたいと思うわけであります。  その中でまず初めに食管制度の問題につきましてお尋ねをいたしたいわけでございますが、この大臣の御説明の中に、「最近における食糧需給事情その他経済事情の推移にかんがみ、食糧管理制度について検討を進める所存であります。」こういうふうに記載がございますが、米穀管理制度懇談会というようなことで、昨年も農林大臣は、いろいろ公的なものでなかったかもしれませんけれども、諮問をいたしまして検討を進められていたというふうに伺うわけでありますが、その上に重ねて特にこのようなお考え方をここでお示しになっておりますその理由につきまして、一つお伺いをいたしたいと思います。
  72. 重政誠之

    重政国務大臣 御承知通りに、私就任以来、前大臣が設けられておりました懇談会を引き続いてお願いして、御検討を願ったわけであります。そうしてその結論が先般出たわけでありますが、その答申と申しますか、報告と申しますか、その内容が三本になって出てきた。三つの意見が出てきたわけであります。そこで私もいろいろ考えたのでありますが、これはさらにその答申を参考として、食管制度について御検討を願う公的な一つの機関を設けて、そこで慎重に御検討を願いたい、こういうふうに考えまして、実は予算も計上をいたしておるような次第であります。
  73. 安井吉典

    ○安井委員 米穀管理制度懇談会、別名松村懇談会ということで、食管制度に関する各界のりっぱな権威者を網羅しておる懇談会だというふうに私どもは伺っておりました。社会党からはだれも入っておりませんでしたけれども、とにかくそういうふうに伺っておりました。その懇談会が一応ああいうふうな結論をお出しになったけれども、あれが結局農政の上には何にもならなかったから、今度何か公的な機関でやろうというふうな御意向だというふうに今のお話の中から伺えるわけであります。そういたしますと、大臣は、この間のやつじゃ物足りなくて、もっと何か自分の気持にぴったりしたやつを出してもらいたいという期待を持っておられるようでございますが、それはどういうことなんですか。その期待は、どういうふうに改善したいというようなお考えですか。
  74. 重政誠之

    重政国務大臣 いや、私は、特に私の考えとぴったりした御答申を得たいとも何とも思っておらないのです。そういう目的を持っておるわけでもないのでありますが、松村懇談会というものが今のお話のようにどうもうまくなかったというふうな感じは私は持っておらないのです。まことに御苦労をなさったわけで、まことにありがたく感じておるわけでありますが、何さま意見が三つ出てきておりますので、私といたしましては、どれを根拠にして考えたらいいかということについて、どうも踏み切りがたいところがありますから、公的機関でもう一度一つ御検討を願って、それから何とかしなければならぬものは何とかしなければならぬ、こういうふうに非常に慎重にかまえておるわけであります。
  75. 安井吉典

    ○安井委員 三本建で出てきたから困るということですが、今度やりましたら必ず一本になって出てきますか。またそんなような格好で出てくるんじゃないでしょうか。出てきたらどうします。
  76. 重政誠之

    重政国務大臣 私の念願といたしましては、なるべく統一した御答申を得たい、そう思っておるのであります。今からそれが三本になって出たり、二本になって出たりした場合にどうするというのは考えておりません。一本で調査会としての御意見を承りたい、こういうふうに思っております。
  77. 安井吉典

    ○安井委員 いずれこれについての法案が出てくるのではないかと思うわけでございますが、その段階でさらにいろいろお聞きをいたしたいと思うわけであります。いずれにいたしましても、食糧管理制度の問題については、米の需給の見通しというようなことが一つの大きな焦点で、その他ずいぶん問題が一ぱいあるわけです。特にこういうふうな調査会を農林大臣の発意で設けられるということは、農村などではこれは米の統制撤廃のための一つの布石を今の農林大臣はしつつあるのだというふうな見方も行なわれているわけであります。米の国民経済全体に対する影響、特に米作農民にとっては食管制度は生命的なものであるわけです。日本の農政の中の価格支持制度、いろいろありますが、どれもこれも——あとでも触れますが、ろくなものはなくて、ただ一つ、今のこれだけが残されたとりでだというふうに私ども見ているわけであります。それだけに、この扱いはあくまでも慎重でなくてはいけないし、私どもは、今の仕組みを改悪するというようなことでは絶対に容認することはできないと思うわけです。この扱いの問題につきましては特に慎重な御配慮が必要であるということを私は申し上げておきたいわけであります。  そこで、先ほど中澤委員が、農業構造改善事業につきまして、大臣農政局長と質疑応答がございまして、私も聞いていたわけでございます。農業構造改善事業の問題については、もうすでに幾度もこの委員会あるいは地方行政委員会等で私も取り上げており、政府の御見解も伺っていたわけでございますが、特に今度の都道府県の上置きの問題が出て参りまして、中澤委員が指摘されましたようないろいろな問題をさらに深刻化しているような気がしているわけであります。農林大臣一つお尋ねをいたしたいのは、地方交付税で二割に見合う分を交付するという運びに御決定になったわけでありますが、その決定をされた知事は、その県における農業構造改善事業に対して二割の上置きをしなければならないという義務があるのですか、これを伺います。
  78. 重政誠之

    重政国務大臣 法律的に義務があるかないかという御質問でありますれば、どうも法律的には義務があるとは言えないと思うのであります。しかしながら、特にその方面にこういうわけで出す、二割のかさ上げをする分を見てそれだけこっちへ交付するのだといえば、私は、知事がそれだけのことをやるであろうと思っておるわけでありまして、それをほかの方に使うということになれば、われわれの方でも心配して文句を言える立場になると思うのであります。
  79. 安井吉典

    ○安井委員 常識論かと思ったら、大臣、法律論でお答えになったわけであります。法律的には、知事は、その上置きを指定地域に対してしてもしなくてもいいわけですね、その点をはっきり確かめておきます。
  80. 重政誠之

    重政国務大臣 法律的に言えば、あるいはそういうことになろうかと思います。しかし、地方交付税の交付はいろいろの事項が中にあって計算をせられておるわけであります。知事としては、そういうことを明らかにして自治省大臣からも通達が行くわけでありますから、ほかの方へ使うということはおそらくないと私は思います。
  81. 安井吉典

    ○安井委員 それは地方交付税を御存じないからです。地方交付税の中には財源をひもつきで交付をしてはならないとはっきり書いてあります。そういうふうな考え方でいつもおられるものですから、法律なんかどうでもいいというお考え方が出てくると私は思うのです。農政局長、その点どうですか。
  82. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 先生すでに御存じの通り地方交付税の配付につきましては、事柄の性質上当然ひもつきという性質のものではございませんことは、今御指摘の通りでございます。ただ、地方といたしまして、いろいろ国の施策を実施するに伴いまして、いろいろの負担がかかる、その財源措置を一般的に地方交付税で見る、その際には一応いろいろの内容というものがあって交付税の算定ということも考えられておるわけでございますので、県といたしまして、今大臣からお話がございましたように、補助率のかさ上げに必要な財源措置を講じておけば、地方においてやろうとする場合にはできる、こういうことでございます。
  83. 安井吉典

    ○安井委員 つまり、先ほどの中澤さんとの議論は、法律がなければ農林大臣は知事に命令なんということはできないわけですよ。選挙のときには、中央直結だというようなことで、知事選挙では演説をされるのかもしれませんけれども、実質的にはできないわけです。だから、これはあくまで法律措置がなければ今農林省が期待をされておるような措置はできないわけです。この点だけ明らかにしておきたいと私は思うわけであります。この前のこの委員会での質疑の中でも、自治省の行政局長は、今のようなこういう仕組みは、違法的な結果にならないように何とかかんとか避けてはいるが、好ましくないことだということをはっきり言っております。ただ、それを農林省の方ではずるずるべったりにやっている、それだけのことです。あくまでこれは行政措置としては誤りだということだけは明らかにしておかなくてはいけないと私は思うわけです。だから、二割をやったから知事にどうしてもやらなければいかぬということは言えないので、ただ政府は期待をすることはできます。それだけです。その点を一つ明らかにしておく必要があると思うわけです。  次に、農林大臣の農政に対する基本的なかまえの問題につきまして一つお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、先ほど中澤委員は日本農業の危機を強調されたわけであります。ところが、この間の本会議における私どもの党の成田書記長の質問に対して、池田総理大臣は、昨年労働者や農民はちっとも困っていなくて、困っていたのは大企業だけだという発言をされております。農林大臣、今の中澤さんの発言と池田総理大臣の言葉と、これはだいぶ隔たりがあるように私は思うのでありますが、農林大臣が池田内閣の閣僚として農政に臨むその立場を一つ伺いたいわけでありますが、池田総理のあのような言い方にどういうふうな印象をお受けになりましたか、それを一つ伺いたいと思います。
  84. 重政誠之

    重政国務大臣 農家の所得も、昨年度は相当に上昇をいたしておりますことは事実であります。ただ、これが他の産業と比較をして、他の産業の伸びに遜色がないように伸びておるかどうか。他の産業の所得の伸びより農家の方が伸びておるかといえばそうとは参らぬ。そこに、格差を縮めなければならぬという今の立場からいけば、これは一そうの努力を必要とするということになると思うのであります。
  85. 安井吉典

    ○安井委員 池田総理のあの言葉は、農業の方が他産業よりもずっと進んでいる、困っていないというふうなことをはっきり言われておるものですから、私は特に今農林大臣に伺ったわけでありますが、今のいわゆる高度成長政策と農政との関係でありますが、今のようなこういう進み方で農業がこのままでいってもずっとよくなっていく、日本の農政の問題は解決していく、そういうふうにお考えですか。
  86. 重政誠之

    重政国務大臣 現状のままでじっとしておったのでは、私は農業は取り残されていくと思うのであります。そこで、まあ、午前中中澤さんのいろいろの御訓辞もあったようでありますが、これでも重政病院としては全力をあげてやっておるわけであります。だんだんにいいお医者さんもこれから一つお願いをして、さらにさらに適切な手術をするなり、施設をするなりしてやって参りたい、こう考えております。
  87. 安井吉典

    ○安井委員 重政病院の方も外科の医長、内科の医長、耳鼻科の医長と、一応ずっと皆さんりっぱなお医者さんではないかと私は思うわけです。そういう力をお持ちだと思うのです。しかしながら、今池田内閣が示しているような経済成長政策が、そういう仕組みが続く限り、つまり、その根本的な問題が解決しない限り、重政病院はなかなか根本的な解決はできないのではないか、私はそういうふうに思うわけです。大体高度経済成長政策で、この農業白書によりましても、レポートによりましても、これとこれを別にして、農業も歩調を合わせていかなくてはならない、あるいはまた貿易自由化がどうしてもやむを得ないものなんだから、それに足並みをそろえていかなくてはならない、こういうものが基調になって今つづられていると思うわけです。しかしながら、実際のところは今の高度成長政策農業に対して刺激を与えてきている。それで農業も幾らか前進をしておるということは私も否定するわけではありませんけれども、しかし、むしろ逆に、たとえば重化学工業重点で、そういうようなために、国の財政資金がそちらへ取られてしまって、農業改善するための投資というものが少なくされている。私は、農業の方が高度成長政策の被害を受けておるのではないか、そういうふうな感じを受けます。特に農林予算の昨年度とことしとの比率を見比べてみても、むしろ下がっているようだし、どの面からも私はむしろ被害を受けておるのではないかというふうな感じを受けます。あるいはまた、あのレポートでも、農業生産性はほんのわずかでありますけれども上がっております。しかし、その上がり方は、昨年よりもむしろ鈍くなっているわけでありますが、ほんのわずかばかり上がった。それも高度成長政策による物価や賃金の値上げでむしろ相殺をされてしまっておる。ここでもやはり農業は被害者の立場になっておるのではないか。あるいはまた貿易の自由化の問題も、これは国際的な要請であるに違いありませんけれども、高度経済成長政策とこれは無縁なものでは決してありません。今の経済政策の中から貿易自由化というような方向も導き出されてきておるわけでありますから、そういうことの中で農業はまた一つの大きな不安をしょい込んでおる。こういうことからすれば高度経済成長政策に乗っかってさえいれば農業はよくなるのだ、こういうような理解の仕方は私は誤りだと思うのですが、いかがでしょう。
  88. 重政誠之

    重政国務大臣 それは安井さんの御説の通りと私も思います。その間に処してやるべきことを急速に農業の方もその体制を整えて体質の改善をして参らなければならぬ、こう考えております。
  89. 安井吉典

    ○安井委員 さっき中澤委員がしっかりやれという激励を農林大臣にしていたようでありますが、やはり今の経済成長政策あるいは自由化政策、それにただ単に追随していくようなことでは、私は農政はよくならないと思うわけです。むしろ、そういったような基本的な考え方に抵抗するというかまえの中から初めて農政がよくなるという道が、農民のしあわせが実現されるのだ、そういうふうに思うわけであります。今、大臣もそういうような御趣旨の御発言がありましたから、これはこれでやめますけれども、やはり農政の基本的なかまえというものは、私はそういうことでなくてはならないと思うわけで、その点を特にお願いを申し上げておくわけです。  次に農業課税の問題について一、二お尋ねをしたいと思います。予約減税の関係は昭和三十七年産米の予約減税はいたしませんということを実は大臣ここでおっしゃったわけです。その後大臣の御答弁もだんだんやわらいで参りまして今日に至っているわけで、まあやるんだというふうな御決意を伺っていたような気もするわけでありますが、社会党も、当時の政府側の考え方、特に農林大臣までがそういうふうなお考え方のものですから、すでに予約減税についての法案を提出いたしているわけでございます。政府最後的な結論は現在どうなっているか、それを一つお聞かせ願いたいと思います。
  90. 重政誠之

    重政国務大臣 本日の閣議で予約減税は従前通りやるということを決定いたしました。
  91. 安井吉典

    ○安井委員 次に税の問題で、現在農村では一番話題の種になっております問題に固定資産の評価がえの問題があります。自治省では、三十九年度から固定資産税の基礎になります固定資産の評価がえをやることで、現在全国の各市町村で作業を進めさせているわけであります。特に農地の評価が、現在の収益還元価格方式から売買実例価格方式に今度変わるという点において、農民の側から強い不満が、現在各地で起きております。そういうことになりますと、現在全国の評価は、平均価格で水田は三万七千二百一円くらい、畑は一万三千七百五十六円ぐらい、こういうような価格が、売買実例価格ということになりますと、水田は三万七千円のものが二十三万七千百円ぐらいに、これは約六・四倍くらいになります。畑の方は一万三千七百五十六円が十六万九千三百円と十二・四倍くらいにならざるを得ないわけであります。もっとも、その後私どももいろいろ主張をいたしまして、平均収益の限界収益に対する比率を勘案するというようなことで、この数字が幾らかゆるめるという方向にいっているということも知っているわけでございます。それにいたしましても、現在の水田の評価が三倍も四倍も五倍も上がり、畑の評価が六倍も七倍も上がる、こういった実態があって、これが基礎になって昭和三十九年度から固定資産税が課税されるわけであります。結論が出てしまったらおそいと思いますので、現在の段階農家の経済やあるいは農地の価格等に農林省が特に関心をお持ちになっていただかなくてはならないと思うわけでありますが、この問題につきましてどういうふうなお考えを持っておられるか、一つ伺いたいと思います。
  92. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 今先生の御指摘になりましたように、三十九年度から農地の固定資産額としての評価を改定するということに審議会の答申が相なっておるわけでございます。従来の収益還元価格から売買実例価格に原則として読みかえる。ただしその場合におきましては、売買価格だけによるということによっては、不当に農家の負担から見て高くなる。また売買価格自身が必ずしも農家の経営収益ということを反映してないというような趣旨にかんがみまして、これを一定の収益を取り入れて修正をするというふうなことで評価をすべきではないかという答申になっておるわけでございます。そこで農林省といたしましては、売買実例価格並びに今の修正の方法等につきまして十分検討して、自治省と協議の上、措置するということにしたいということで現在に至っておるわけでござ  います。
  93. 安井吉典

    ○安井委員 これは直接は自治省の問題ですから、きょうのところは私は問題提起ということにして、農林大臣、これは大へんな問題になると思いますので、一つ十分に御検討をいただきたいと思うわけでございます。つまり時価方式になればこういうふうに上がってしまうわけで、農地そのものの収益と無関係に税金を払わなければならない、こういうふうな仕組みになるということもおかしいし、それからまた、農地の方は時価方式になりますが、会社や工場のあの償却資産の方は、現在でも時価方式になっているということで、今度は評価がえが全然なされないわけです。ということになりますと、大きな工場や鉱山やそういうふうなところの税金が安くなって、農民の税金だけが高くなる、こういうふうな妙な結果にならないとも限りません。今の段階では、評価の問題はそういうふうな進み方をしておりますが、税率についてはまだ決定がなされていないので、税制調査会等におきましても、これからなお検討が行なわれるものだと思いますが、その税率がどうきまるかによって、農民の税金が大きな変動をするのかどうかということがきまってくるわけでありますし、それからもう一つは、この評価はそのまま今度は相続税や贈与税にも使われます。農民の場合には、土地の相続あるいは子供に対する生前贈与、こういうような問題が非常に大きな関心事でありますので、そういうふうな地方税だけではなしに、国税の面にも大きな影響があるわけです。もっとも評価が上がれば自創資金だとかあるいは農林漁業金融公庫資金を借りる場合の担保力はあるいは上がってくるかもしれません。しかしながらそういうふうな評価が上がったことが、今度は小作料といったような問題にも影響を持ってきかねないし、非常に重大な問題だと思いますので、これは自治省の問題だというふうな片づけ方をなさらずに、ぜひ農林省の中で御検討をいただきたいということをお願いしておきます。  次に開拓の問題につきまして若干お尋ねをいたしますが、昨年も私この委員会でお尋ねをしたことがございましたが、新しい開拓営農振興計画、こういうふうなものの立案がすでに進んで、これからいよいよ実施の段階に入るというような時期ではないかと思います。日本の戦後開拓というものが非常にジグザグなコースをとりながら現在に至って、それに現在の段階における決着をつけようという重大な段階に今きていると思うわけです。たしか一類、二類、三類と開拓農家を分けて、一類農家は既存農家と同じ扱いにし、三類農家はもう切り捨ててしまって、二類農家だけ開拓政策の対象にしていく、こういうふうな重大な段階だと思うわけです。ところが農林大臣の施政方針説明その他の中には、こういうような重大な問題にあまりお触れになっていないようであります。私は読み違えているのかもしれませんけれども、そういうふうな感じがするわけであります。この今の段階における営農振興計画をどう進めるかということが非常に重大な問題だということについて、大臣は御理解をなさっているのかどうか、その方向についてどうお考えになっているか、それを一つ伺います。
  94. 重政誠之

    重政国務大臣 これはむろん重要なことであることは私もよく承知をいたしております。
  95. 安井吉典

    ○安井委員 それではどうされますか。
  96. 任田新治

    任田政府委員 三十二年から五カ年間にわたりまして営農振興臨時措置法によりまして振興をはかって参ったわけでありますが、五年経過いたしました結果、営農に精進いたしまして、今後さらに伸びようという方々につきましてははっきりした方向も出ていないわけであります。また、さらにこの第一次の振興対策によりまして、すでに卒業生と申しますか、そのような程度にまで上がりまして、近傍の農家とほとんど水準が同じくなってきたというようなものに対しましては、これでひとまずがまんをしていただいて、ただいま申し上げましたような段階で、もうあと一押しという方々に対しては、今度第二次の振興対策の対象にいたしまして、極力卒業生になるようにお計らいいたしたいというふうに考えておるわけであります。また一方、この家族構成あるいは周辺の状況また御本人の意欲というような問題につきまして、どうにも今後立ち直るということはなかなか困難であるというような場合も想定されますので、そのような方方については別途新しい道として離農を考えて、新しい方向に道を見出す、何も農業一本でいこうということでないというふうに考えまして、離農の促進もはかり、また別途社会的な補償の、見舞の対象にもしていただくというような考え方で第二次の振興をはかりたいというふうに考えております。
  97. 安井吉典

    ○安井委員 その内容についてはさらに別に詳しくお尋ねをしたいと思いますが、ただ私、大臣は、重要な問題だと思っておりますというだけで、あまり中身について御理解がなかったようです。それが一つ残念です。やはりこれは開拓農政の一つの転換期における重要問題ですから、言葉の上だけじゃなしに、大臣の御意向を一つ十分に反映していただかなくてはならないと思うわけです。  こまかな問題はやめますが、ただ旧債の整理の問題です。一類農家にしても、いわゆる既存並みに扱われる、あるいはまた今後開拓農家として処理される、あるいはまた離農が促進される、その行き方に対して私どもはそれでいいとは申しませんけれども、しかしながら旧債の整理の問題が何といいましてもどの分類をされました開拓農家の人たちにも一番重大な問題だと私は思うわけです。その重荷に耐えかねているというのが実際の姿じゃないでしょうか。その問題について適切な御方策をお持ちですか。
  98. 重政誠之

    重政国務大臣 それは償還年限の延長と申しますか、それから利子を、今五分五厘になっておるのを五分にする、それで五厘利子を軽減しよう、年限も九年のものを二十一年にするというふうに、償還年限と利率について改善を加えてやっていくように考えております。
  99. 安井吉典

    ○安井委員 大臣、どうもあまり大胆な御発言ではないようで、もう少し自信をお持ちなら大きな声で言われるのでしょうけれども、やはりこの旧債の処理については、石炭の問題で本会議で御答弁されたように、これは思い切った御措置がなくてはならないと思います。全額それこそ国で持つくらいの思い切った措置がなければ私は開拓のこの問題の解決はできないと思うわけです。その点さらに御検討を願うこととして、この問題については後日に譲りたいと思います。  次に、農産物価格対策の問題についてお尋ねいたしたいと思うわけでありますが、先ほども中澤委員が触れられましたように、構造改善と言ったって、価格政策がりっぱにできていなければ底抜けではないかというふうな御発言があった通りであります。特に私はいつも言うことなんですけれども、去年の大豆だとか菜種だとか、あるいはバレイショ澱粉、カンショ澱粉だとかいうふうな問題を振り返ってみますと、総合的な政府価格政策というものをお持ちになっていないという点に問題があると思います。あとで乳価の問題が出て参りますが、畜産物についても全く同様であります。一方において選択的拡大だとか、成長作物だとか、大へん体のいいことは言われておりますが、しかしそれと価格政策との間の有機的な関連がないと思うわけです。一例をあげますと、去年の大豆や菜種の問題についても、私どもはパリティの計算その他で十分に今の生産費や所得を償うような基準価格政府は打ち出すべきだというように主張をいたしました。ところが物価がどんどん上がっているにもかかわらず、今まで通りの基準価格の三千二百円というような不当な押え方をされていたわけであります。ところが最近になりまして、その後の情勢は国際価格がどんどん上がってきて、植物性の油脂の世界的な伸び方、そういうようなものが国内産にも反映をいたしまして、どんどん上がってきているという実情があります。国内産価格でも一俵当たりにして三千四百円くらいかその辺までいっておるのではないでしょうか。ですから、そういうようなことで基準価格はどんどん押えてしまった。しかしながら実勢価格はどんどん上がって、もう交付金は要らないというような姿になってきているようであります。それなら交付金考え方というものにそのまま合うではないかというふうに長官はお答えになりそうな顔をしておりますけれども、しかしこれはやはり基準価格というものを不当に押えたという結果からきているのではないかと思う。だからことしの予算はたしか二十五億円くらいあったと思うのですが、これはもうだいぶ余すことになるのではないでしょうか。あるいはまた明年度の交付金予算につきましても、十億円くらい減らしておられるようであります。ですから、こういうところからすれば、今度のレポートの中にも、農産物価格が上がったので、農家の所得がふえたんだというような表現があります。しかしながら農産物価格が上がるように農林省が施策をして上がったというのではなしに、農林省は下げよう下げようとした。農家の所得を下げるということに一生懸命になって基準価格を押えた。しかしながら需給関係で上がってしまったんだということになっているのではないでしょうか。所得がふえたのを何もかも農政の手柄のように言われるけれども、実は農政の方は反対の作業をやっていたということになるのではないでしょうか。その点いかがですか。
  100. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 御指摘のように、最近大豆等の値段が、国際価格が上がりまして、菜種等は基準価格以上に取引がされて、交付金の必要がないというようなこともあるいは予想されるのではないかと思いますけれども、あの交付金の法律の趣旨は、しばしば私申し上げますように、菜種、大豆の自由化に際して、競合いたします国内の菜種ですとか大立の生産農家が自由化以前に保障されておった手取り水準、これが自由化の影響によってひどく変化のないように維持をしていこう、しかしその間にいつまでもそういう交付金を続けるということじゃなくて、むしろその間に生産性を大いに上げて国際的に太刀打ちのできるものになるという努力を期待しながらやっておる制度でございまして、先ほど御指摘がありましたような農家生産費等を全部常に補償したもので基準価格をきめなければならぬという趣旨のものではないのであります。あくまでも基準年次、自由化前の手取り水準というようなことを基準にして考えなければいけないというふうに思っております。
  101. 安井吉典

    ○安井委員 十億円予算が減ったのはどういう事情ですか。
  102. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 予算が減りましたのは、三十七年度の予算には繰越明許費がついておりまして、三十七年産の大豆についての予算が来年度に支払われるということになりますので、そういうことになるわけであります。
  103. 安井吉典

    ○安井委員 政府が基準価格をお上げになれば予算はまた足りなくなるわけですね。基準価格を上げないというお考えに出ているわけですか。
  104. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 予算単価といたしましては今後のいろいろな事情が織り込まれてきめられるわけで、今から的確なものを予想するというより、むしろ今までの基準価格を基準にして考えるということだと思います。交付金の対象になる数量は、従来もそうでありましたが、かなり余裕のある数字が組んでございます。基準価格を上げなければならないというような事態になりましても十分だと思いますけれど、必要があれば補正予算あるいは予備費というようなことも考えられないことはないと思います。今の組んでおります予算で十分こなし得るということであります。
  105. 安井吉典

    ○安井委員 もう一つの例はバレイショあるいはカンショの澱粉の問題です。大臣も御承知のように秋はほんとうに大騒ぎで、あなたも大へんだったと思います。そういうことで結論は農民の強い要求を押えて、昨年とほとんど変わらないところで押えてしまった。ところがその後においてバ澱もカン澱もすごい値上がりを示しているわけです。産地でバレイショ澱粉でも千四百八十円から千五百円くらい、カン澱でも二千二百三十円から五十円くらいにまでいっているように聞きます。あの当時は需要量、供給量、その両方からはじき出してこれよりしようがないんだというふうに言われていたわけでありますが、ここでも大きくそれらの見通しの誤りがあったのではないかというふうな感じを私は受けるわけであります。とにかく私は、まあきょうは一つの例としてこの二つの問題を申し上げているわけでありますが、一体政府農産物価格に対する考え方というものは全くでたらめで、その場限りのものであって、こういうようなものでは今後農業構造改善だとかなんとかいったって少しも期待ができないのではないか、そういう感じを受けるわけであります。農産物価格安定についての法律も、今の段階ではただイモ安定法です。ほかのものはみんなはずれてしまったといった感じを受けます。だからこの際農安法を徹底的に考え直す段階にきているのではないか、その点いかがですか。
  106. 重政誠之

    重政国務大臣 これは安井さんもよく御承知通りに、現在の農産物価格維持安定の方法は必ずしも一本でやっておりません。米を初めとし、麦、これは食管法によってやっており、カンショ、バレイショは慶安法によってやっておる、あるいは大豆、菜種は今の補給金を補給する建前においてこれは別途の方式でやっておるというふうになっておるわけです。私はよく皆さん方から御要求、御意見を承っておりますと、いやしくも農産物というものはみんな生産費補償方式でやらなければいかぬというお説を相当に拝聴するのでありますが、これでは日本の農業というのは鎖国農業になってしまうと思っておるわけでありまして、それはとうてい私としては賛成できないと思っておるのであります。しからば米についてなぜそういう方式をとったかといえば、申すまでもなく米はわが農業の中心の作物であって、農家経済はこれを中心にして組立てられておるという点を重視いたしましてそういうことになっておると私は思うのであります。でありますから、もちろん農安法の検討もけっこうであります。検討すべきものは検討してよりいいものにしなければならぬと思いますが、ただ農産物の値段を最低を維持する、維持価格を上へ持っていけばいいんだという考え方は私は了承できない、こういうふうに考えておるわけであります。
  107. 安井吉典

    ○安井委員 そこはだいぶ議論が分かれるところでありますが、また次に譲りたいと思います。ただ大豆なたね交付金法や農安法では、経済事情の変動によって基準価格の改定をすることができることになっているわけでありますが、当時告示をされました時期と現在とではだいぶ情勢が変わってきておるように思います。あれを再検討して告示をし直すというお考えはありませんか、いかがですか。
  108. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 大豆、菜種の基準価格のきめ方につきましては、当時考えましたことと現在の事情と特に変化はないと思います。あのままの価格でやっていきたい、こう思っております。  バレイショ、カンショ、あるいはそれからできます澱粉の農安法できめられます基準価格は、正常な状態でどの程度の価格として農安法の制度によって支持されるべきかというきめ方をするものでございますので、実際の需給状態から価格が高くなっておるという場合に特にこの基準価格を直すという必要はなかろうと思います。いつかもお話しいたしましたように、需給状態が非常に強いというときはむしろ農安法での基準価格というようなものはきめなくてもいいんじゃないかという考え方もあり得るのではないかということを申し上げましたが、まさにことしはそういう状態で、基準価格をきめましても、それによって改良して価格支持をしなければならないような状態ではないと思います。そういう意味の基準価格でございますので、ここで変更するということは必要なかろうと思います。
  109. 安井吉典

    ○安井委員 時間がありませんので次の問題に移りますが、価格保障といいますか、価格安定といいますか、そういうようなものに対しての農林省の考え方農民の所得を増してやるのだとか——一体増すためにやるのか、あるいはまた市場価格、つまり原料を使う産業を保護するためにやるのか、とにかくすべての畜産物あるいは農産物価格の問題に対する態度というものが全くでたらめで、統制がない、そういうようなことで一つ一つ品目ごとにいつも大騒ぎをしなければいけない、こういうふうな実態が今日まだあると思うわけであります。農安法の再検討もしないでもありませんがというような、あまり気のないような農林大臣お話でありますが、私はやはり農安法だけではなしに、農産物価格の全体の体系について、構造改善というような言い方を一方でなすっている以上、徹底的な取り組みを農林省はなさるべきだ、そういうことを一つ希望しておきます。  次に、甘味資源の問題について若干お尋ねをいたして終わりたいと思いますが、砂糖の自由化の問題はいつからおやりになるお考えですか。
  110. 重政誠之

    重政国務大臣 砂糖の自由化は、やみくもに自由化をしようとは私は一つ考えておらないわけであります。貿易の自由化というのは世界の大勢であり、今の国際事情を考えてみますと、少なくとも両三年のうちには、好むと好まざるとによらず砂糖は自由化をやらなければならぬ運命に置かれておる、こう私は判断をいたしております。従って少なくともここ三年や五年のうちには、それぞれの企業はそれぞれの企業として、これが完全に独立ができるという方向に持っていかなければならない。それからまた、この原料を提供する農民側といたしましても、その価格等が安定をして、そうして非常に悪い影響をこうむらぬような態勢をここに整えておかなければならぬ。そういうような考えからいたしまして、どういう施策をやったらいいかということを検討いたしまして、それらの施策を実行するということがはっきりめどがついて、その準備もできて、これならよろしいというところでこの自由化はやりたい、こういうふうに考えております。
  111. 安井吉典

    ○安井委員 私は何か間もなく自由化をおやりになるのではないかというふうな印象を新聞から受けておりましたが、両三年間というふうな前置きがございましたのと、それからそれに対する対策が整わなければできないのだということ、その二つの点をお答えの中から知るわけでございますが、それでよろしいわけですね。
  112. 重政誠之

    重政国務大臣 両三年と申しましたのは、何らの対策を講じなくても、両三年後には砂糖の自由化をやらされる段階になるだろうということを申したわけであります。今回の砂糖の自由化は、これは私の考えでありますが、今申しましたような段取りをいたしまして、その準備ができましたら、できるだけすみやかにいたしたい、こういうふうに私は考えておるのでありますが、これは同時にまた重要な問題でありますので、政府・与党の方の意見も十分に拝聴いたさなければならぬと考えております。政府・与党十分に検討いたしまして、実行に移りたい、こう考えております。
  113. 安井吉典

    ○安井委員 その自由化を農林大臣にやらせる人はだれなんですか。
  114. 重政誠之

    重政国務大臣 これは農林大臣の権限でありますから、私がやるわけでありますが、私が今申しましたのは、国際情勢から考えてそういう段階になるだろうということをつけ加えて申し上げたわけであります。
  115. 安井吉典

    ○安井委員 ごもっともですが、どうも最初に言われた言葉の方が本音みたいな気もするわけでありますが……。
  116. 重政誠之

    重政国務大臣 そうじゃないです。
  117. 安井吉典

    ○安井委員 そこで、四月から自由化をするというふうな新聞報道があって、今そのためのいろいろな法制措置を急いでいるという報道も同時にあります。先ほどの御答弁からいえば、そういうふうな対策が整わなければ自由化はしない、そうとっていいわけですね。たとえば今のその法制措置が四月までにできなければ、自由化も当然延びていく、そう理解していいわけですね。
  118. 重政誠之

    重政国務大臣 その通りであります。私は手ぶらでやろうということはいまだかつて言ったこともなし、また予算も成立しない、法律も通らないのに、四月からやろうなどということは一ぺんも言ったことはないです。
  119. 安井吉典

    ○安井委員 それでは一番初めに言われた両三年というふうな前置きの方が、ただいまの御答弁から受けた印象では当たっているような気がするわけでありますが、一応のめどとしてどれくらいにお考えですか。
  120. 重政誠之

    重政国務大臣 今国会で法律案なり予算案等が成立をいたしますれば、その施行並びにその準備等がありますから、おそらく早くても六、七月でなければこれは実際上できないことになるのじゃないか。あるいは九月になるかもわかりませんが、四、五月にできぬということは明らかなんであります。
  121. 安井吉典

    ○安井委員 今いろいろ立法の成案を急がれているそうでありますが、本国会に提出されるのはいつごろのお見込みですか。
  122. 重政誠之

    重政国務大臣 私のところではもうすでに成案は得ておるわけであります。でありますが、先ほど申します通り与党側と共同してさらに検討する必要があると考えますので、今それをやっておるわけでありますから、政府・与党意見が一致いたしますれば、できるだけ早く提案をいたしたい、こう考えております。
  123. 安井吉典

    ○安井委員 政府・与党でだいぶ意見が違うようにも聞いているわけでありますが、その法律案内容についてはさらに後日に譲ることにいたしまして、砂糖政策というのは、結局消費者にはできるだけ安く、しかしそれに関連する製糖その他の甘味産業あるいはまた原料生産農家の経営を安定させなくてはいけない、そういう二面性をやはり持っていると思うわけです。そういうために財源措置が当然必要で、だから財政資金一つのプールを政府に持つということが必要ではないかと思うわけでありますが、輸入粗糖の買い入れも、それを製糖業者に売り渡しをするのも、政府責任を負って特別会計の中でやる、こういうような考え方はどうですか。
  124. 重政誠之

    重政国務大臣 これはいろいろその方式はあろうと思いますが、現在私ども考えておりますのは、粗糖を政府が買い入れるというようなことは考えておりません。ビート糖とかあるいはブドウ糖とかあるいは国内産のカンショ糖というようなものが一定の基準を割った場合には政府がそれらのものを買い入れる、そして価格を維持して原料を提供する農家を安定せしめる、こういう考え方でいっておるわけであります。これを中心に考えておるわけであります。それで外国産の原料糖の輸入につきましては、これの輸入によりまして農家なりあるいは内地産のものを原料とした企業に大きな影響が直接に当たらないように考えておるわけであります。同時にまた、製糖業者に対しても急激にその影響が及んでその企業が成り立たないようにならないように調節をする、こういう考えを持ってやっておるわけであります。
  125. 安井吉典

    ○安井委員 砂糖消費税と関税との操作の問題はどういうふうにお考えですか。
  126. 重政誠之

    重政国務大臣 これは砂糖消費税を関税に振りかえるのがよろしい。振りかえますと、内地産原料の糖業というものは、振りかえただけ余裕ができるわけでありますから、もちろん消費税を関税に振りかえて消費税はやめる、消費税を全部撤廃するわけでありますから、内地産のものについてはそれだけ余裕が出る。だから内地産原料の値上げもできる、それからまた企業の経営も楽になる、こういうのでそういうことを考えておったのでありますが、御承知通り現在は、三セントあまりしておる外産の原糖が五セント以上もしておるような事情でありますから、現在直ちにこれをやる必要はない、こう言われればその通りであります。従って、もしも原糖の値段が下がった場合には、この問題をさらに実行に移す、こういうふうな考え方政府としてはおるわけであります。
  127. 安井吉典

    ○安井委員 農林省では関税割当の仕組みを導入したいという考え方に対して、関税率審議会が反対をしていて、なかなか実現をしないであろうといったような新聞の報道もありますが、どうですか。
  128. 重政誠之

    重政国務大臣 私はこれは関税率審議会に了承をしてもらえると思っております。現在日本でこの割当関税制度をとっておるものは、十六でありますか、十七でありますか、あるわけでありまして、これは何も新しい問題でも何でもないのでありまして、これは私は了承を得ることはできると考えております。
  129. 安井吉典

    ○安井委員 それでは、この問題はいずれもう少し先に進んでからさらにお伺いをいたすことにいたしますが、なお、さらに当面のいろいろな問題について、若干砂糖の問題ですが、伺いたいのです。  今、甘味資源の全体的な問題と徹底的に取り組もうというかまえを政府は見せておられるわけでありますが、さきにおきめになっております甘味資源の生産、消費等の計画は、今の段階では少し古くなっているというふうな印象も受けるわけでありますけれども政府は今度全体的な計画のし変えをなさるわけですか、それを一つ伺っておきます。
  130. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 今、ある意味でオフィシャルなものとしては、三十四年に将来の需要の見通しもし、国内のてん菜あるいはまたカンシャ糖、ブドウ糖というようなものの生産がどういうふうになるか、そうして自給率はどうなるかというものがあるわけです。それによりますと、四十三年を基本にしまして、需要量が百五十二万トン、国内生産量はその約半分の七十五万トンになる。輸入は、ですから七十七万トンというような見通しを立てておりましたが、その需要の見通しは昭和四十三年に至らず、今日その程度の需要になっておりますので、当然これは再検討してかからなければならぬ。そういう国内のビート糖あるいはカンシャ糖、ブドウ糖がどうなるか、また需要がどうなるかというようなことも含めて、先ほど大臣から言われた問題と一緒に検討する、こういうことでございます。
  131. 安井吉典

    ○安井委員 北海道の原料ビートの問題につきまして、昭和三十七年度に集荷区域を決定されております。それから三十九年予定の新設四工場の関係で、増産担当区域も同時にきめられているわけであります。しかし、その内容は、たとえば飛び地になっていたり、一地区が三つに分割されていたり、そういうようなことで、地元でもだいぶ不平や不満が多いわけであります。今の食糧庁長官お話によりますと、計画そのものも変更されるというようなお話でありますが、これらの問題、集荷区域の問題等についても根本的な考え方を改められるお気持があるわけですか、その点お伺いいたします。
  132. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 北海道のてん菜の集荷区域については、去年いろいろ問題があって、道知事がおきめになられ、それを農林大臣も承認をするというような形をとっておるわけです。従いまして、たとえば、二工場を新しく建設したというような問題もございますが、当時予想しておりました三十七年の生産見込みは、実際の収量に比べると、多少多目であったというような結果になっております。しかし、これだけを見て集荷区域をいきなり変えるというようなことではなかろうと思います。ことし三十八年の事情を見て、さらに三十九年の事情を見るというようなことで、道知事がこれは集荷区域をきめた方がいいだろうというふうな御検討をなさり、そういうふうな御意見があれば、私どももまた相談をして、この方がいいのだということになれば、そういうふうにいたしたいということでございますが、今のところ、直ちにどうこうするというような必要はなかろうかと思います。
  133. 安井吉典

    ○安井委員 今直ちに変更するお気持はないというようなことでございますが、今後工場新設というふうな新しい問題が次に控えております。製糖コストの引き下げをするというような考え方に出れば、今の原料生産数量では工場の新増設というものは非常にむずかしいということが当然いえると思います。今でも多過ぎるくらいで、たとえば去年できた本別の日糖の工場などは原料がないというふうな事態さえあります。しかし、他面考えますと、昭和三十九年度に四工場をつくるというようなことを河野前農林大臣それから北海道の町村知事両方の相談でできたのか、あるいは農林大臣が押しつけたのか知りませんけれども、とにかく四工場をつくるというふうな政治的な責任があるわけであります。つまり初めのコスト・ダウンの道と、そういう政治責任の道と、この二つの重大な問題が今農林大臣の前途に横たわっているということだと思うのですが、農林大臣はどういうふうにおさばきになるお気持ですか。
  134. 重政誠之

    重政国務大臣 そういうこともあって、私としては全力をあげてこの問題の解決に当たりたい。何といたしましても、今安井さんのお述べのように、原料をふやすことが第一であると私は考えておる。そこで今回の三十八年度予算におきましても、従来からもあったそうでありますが、どうも土地改良にいたしましても、ビートを増産するための土地改良に使われておらぬうらみがある。だからそういうものは、もう今度はっきり、ビート増産のための土地改良というのはビート増産のために使うようにする。その他労力の不足とかいうようなこともありますし、そういうものに対しての対処の方法考え、あるいは品種の問題とか、いろいろな生産を上げるという方面に第一に全力を注がなければならぬ、こう考えておるわけであります。そういたしまして、ただいまお話しのように、三十九年度以降四工場を設置することができるように持っていきたい。これは三十九年に四工場をやるということではなかったように私は聞いておるのでありますが、三十九年度以降においてさらに四工場をつくろう、こういうことを、何といいますか、これは許可したわけでもない、まあ、そう方針をきめたのであろうと思うのでありますが、その方針を、なるべくこれは実行をいたしたい、こう考えておるのであります。同時に、これはまだ言っていいかどうかわかりませんが、率直に私の考えを申しますれば、現在の段階において、仰せのごとく九工場ある。そうして本別の日糖工場のごときは五万トン前後しかビートが原料として工場に入らないというような状態、こういう状態でほうっておいたのでは、企業者も困るだろうが、同時にビートをつくっておる農民が困る。でありますから、これらを何とか一つ合理化して、九つも十も、何も別々に張り合ってやる必要はないじゃないか。かと言って、そういうものは一つにまとめるというのも無理でありましょう。それぞれ話を聞けば、系列があったり、ああいうものはいろいろなめんどうな問題があるようでありますから、それはそれにして、そういうものも生かしつつ、何ぼか一つ合理化して合理的にやっていけば、工場もこれで採算がよくなり、従ってビートも、無理をして安く買わないで、適正な値段で工場も買うことができる、こういうふうになると思うのであります。そういう方向にぜひ一つ持っていきたい、こう考えております。
  135. 安井吉典

    ○安井委員 私は、どちらの道かという、二つを、アイザー・オアという形でお聞きしたのですが、答弁が長くて何だか中身がぼけてしまって、むずかしい問題になると、いろいろ言葉のあやでごまかそうとされるのかもしれませんが、これはやはり重大な政治問題に発展するおそれもあると思います。その点、今の御答弁ではどうもはっきりしないわけでありますが、三十九年度以降において可能になるように努力をする、そういうことととってよろしゅうございますか。
  136. 重政誠之

    重政国務大臣 そういうふうに私は聞いておるのであります。三十九年度以降において四つの工場を新設したい、こういうふうな話じゃないかと思うのです。そこで私としては、できるだけそれが可能になりますように努力を今いたしておるわけであります。
  137. 安井吉典

    ○安井委員 時間がだいぶたちますので、最後に、大臣もとにかく増産をすることだということに力点を置いたお話がございますので、その観点から一つ原料ビートの価格の問題を伺って終わりたいと思いますが、いつごろ御決定になるおつもりですか。
  138. 重政誠之

    重政国務大臣 これはできるだけ早急にやりたいとは思っておるのでありますが、法律の施行期限の関係もあったりいたしますので、今直ちにこれをやるというわけにはどうもいかないような事情にありますから、おそらく四月ごろになるのじゃないかと今のところは思いますが……。
  139. 安井吉典

    ○安井委員 農民の要求は七千六十円というふうに生産費所得補償方式で算定して、ぜひこういうふうな価格にしてもらいたいというような要求が政府にもきていると思うのでありますが、それについてどうお考えですか。
  140. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 てん菜の価格を幾らにするかということは、去年もいろいろ御論議があったことですが、私どももきめるとすればどのくらいにということでいろいろ研究はしておりますけれども、今にわかに幾らが適当かというようなことは、ちょっと申し上げかねると思うのです。
  141. 安井吉典

    ○安井委員 大臣はこの砂糖の問題に異常な熱意を示されて、この増産だけはぜひともやるのだということで、しかもそのためには生産諸対策についても力を入れるし、それからまた価格についても相当張り込んでくれるのだろうというふうな印象を農民は持っております。現在の段階で、若干生産諸対策についての予算はふえているようです。しかし、残る問題はやはり価格の問題だということになるわけであります。そこで、先ほどの御答弁では、四月ごろになるのだろうというお話でありますが、ビートの作付は北海道では三十五年までは非常に激しい上昇を示してきたわけでありますが、それ以来は全く停滞をしております。三十七年は八カ年計画の第三年度に当たるわけでありますが、目標が五万三千十ヘクタールであるのに、実績は四万四千三百九十四ヘクタールですか、この程度にとどまっているわけですし、三十八年の目標は五万八千二百四十ヘクタールですから、三十七年に比べますと一万三千八百四十六ヘクタールも増産しなければいけない、大へんなことになっているわけです。三十七年度の価格は、告示の価格と、例の甘味資源振興資金管理会からの金と、それに会社からの資金と合わせまして、六千十五円ぐらいで最後的にきまったことになっているわけでありますが、しかしそれがきまったのは、三十七年は十月になってからです。収穫が終わってからきまったわけです。しかもその中身において、製糖会社側と内応についての解釈の違いがあって、もうずっとごたごたが続いてきているわけです。去年も私ちょうど現地におりまして実際に見たのですが、あれくらいの額でも、券先に決定になっておればまだもう少し伸びがあったのではないか、そういうふうな印象を受けております。もちろん農民は六千七百円ぐらいの要求をしていたわけですから、あれではきわめて不満は不満でも、幾らか私は伸びたのではないかというふうな気がいたします。ですから、告示の時期というものがきわめて重要だと思います。ビートは輪作体系の中でなかなか扱いにくい作物だし、特に労力不足の現在では、ペーパーポットの普及という問題もありますけれども、そういう意味ではなかなか入りにくい、喜ばれない作物であるわけです。ですから率直に農民の反応を期待する道は、やはり今日の段階では、ビートの価格農民の要求する線に近いところに早くおきめになることだ。つまり高く、そして早くおきめになることだ、私はそういうふうに考えるわけであります。どうでしょう、その時期をもっと早めたり、さらにまたその内容についても、御検討の内容において昨年などのようなことがないように、もっと農民の期待に沿えるような形で決定をしたいというような御意向はございませんか。今お聞きすることはできませんか。
  142. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 御承知のように今あります法律がこの三月に期限が切れるわけでございます。従いまして、この法律に基づいて価格をきめるというわけにいかないと思います。そこで新しい制度のもとでやるということになりますと、新しい法律が通ってということになりますので、一般的に申しまして、できるだけ早い時期に最も適正な価格をきめるということが望ましいことでございます。そういう事情がございますので、二月、三月にきめるということにはなかなかいかないのじゃないかというふうに——大臣が言われたのもそういう意味だと思いますが、一般的な気持としては、早い機会に最も適正な価格をきめたいという気持は、それは安井先生のおっしゃる通りでございます。
  143. 安井吉典

    ○安井委員 新法ができなければ、というふうにおっしゃるわけですが、現行法でもできるのじゃないですか。また新法にそれをそのまま送り込むというようなことができるのじゃないですか。
  144. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 そういう扱いはちょっといたしかねると思います。
  145. 安井吉典

    ○安井委員 しかし、今の法律に現に根拠があるわけですから、できないわけはないと思いますね。
  146. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 今の法律で申しますと、その年に買うてん菜糖、しかしそれはこれ以上の値段で買ったてん菜からつくったものでなければならぬというような仕組みになっておるわけです。ところが今の法律では、てん菜糖を買いますのは、附則にもございますように、三十七年産のてん菜からつくった砂糖なら四月、五月以降になっても買い得るわけですけれども、三十八年産からできた砂糖は買えるということになっていないわけですから、そういうものを買うということになっていないのに、それのベースになる価格をここできめるということはできないし、また無意味なことになるわけであります。
  147. 安井吉典

    ○安井委員 いずれにいたしましても農民が作付をしなければ、もう甘味資源がどうのこうの、自由化がどうのこうの、工場の問題がどうのこうのと言ったところで、それですべてが終わりなわけです。とにかく春の作付が行なわれる前に、現在すでに種子の準備や肥料の準備等を始めている段階です。そういう重大な時期にきているということをお考えいただきまして、農民の期待に沿うような方向でぜひ御処理を願いたいと思います。  これで終わります。
  148. 長谷川四郎

    長谷川委員長 湯山勇君。
  149. 湯山勇

    ○湯山委員 最初に、農林大臣の農政と取り組まれるお心がまえについて伺いたいと思います。  農林大臣は当然生産農民から信頼されるということが一つ大前提でなければならないと思いますが、大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  150. 重政誠之

    重政国務大臣 過日も私の考えを当委員会において冒頭に述べました通りに、日本の農業というものは、国際的にもまた国内的にも相当重大な時期に際会をいたしております。そこでいろいろ困難な問題が山積をいたしておるのでありますが、根本は、生産性を向上せしめ、経営を近代化して、農業の体質を改善いたしまして、農家の所得をふやしていく、こういう方向にぜひ持っていかなければならぬ、こう考えております。
  151. 湯山勇

    ○湯山委員 そういう今おっしゃったような施策を進めていかれる前提として、大臣に対する生酢農民の信頼ですね。重政農林大臣が言うならば信頼できる、重政農林大臣ならばついていける、こういう農民の信頼を得るということが前提にならなければ、今おっしゃったような施策を進めていかれるにしても、それは結局できないということになるのじゃないですか、こういうことをまず伺いたいと思います。
  152. 重政誠之

    重政国務大臣 農民諸君から信頼をしていただくということは、これはぜひ必要なことであり、またぜひそういう心持でやらなければならぬと私も考えております。
  153. 湯山勇

    ○湯山委員 そういう点から見まして、重政農林大臣のおやりになったことあるいはおっしゃったことの中には、私どもは、農民から信頼されないのじゃないかというような心配の点が幾つかございます。こういう際でございますから、その点を指摘しておきたいと思います。  それは今の構造改善事業につきましても、これはいいことだからやろうということでございますが、実際は前の大臣のときに発案になりまして、これでいけるのだということでございましたが、やりかかってみるといろいろ障害がある。そこで融資にいたしましてもあるいは補助にいたしましても、今のかさ上げ、こういうようなこともだんだん当初お考えになったことは条件がよくなっています。これはいいことだとは思いますけれども、しかしいいことだという反面に、この事業に対する政府の自信のなさを示しておると思う。そこでやがて腰砕けになるのじゃないか、大臣がかわればもっといい条件が出てくるのじゃないか、こういうことも、これは実際に当初立案されるときの綿密な周到な御計画、確信がない、信頼感がない、そういうところから出てくるものではないかと思います。  それから、大へん失礼ですけれども、この際申させていただきたいのは、大臣はかつて食管制度消費者米価に触れられたときに、生産農民が供出をして逆に配給を受ければ、一升について四円のもうけになる、こういう事実あり得ないことを仮定の事実としておっしゃって、これは相当新聞もそのことを書きました。そういうことからぬれぎぬを農民にかけたということもあったと思います。できないことをあたかもできるかのごとくおっしゃった、そういうこともありましたし、それからうまい米という表現、うまいことおっしゃったわけでありますけれども、これもそういう表現を閣僚のどなたかがした場合には、農林大臣としては、農民がみなわかっていることですから、それはうまい米というのは間違いで、見ばのいい米だ、現在はうまい米ということは間違っておるのだ、そうじゃないのだというようなことは、農林大臣もおっしゃるべきだと思いますけれども、これも大臣としては否定もなさらないでうやむやにやってこられた。さらに消費者米価についても、一二・四%の値上げということでございましたが、質の低下、三等米以下の質の低下ということ、これは金額に換算できるわけでございますから、それを換算すれば、一二・四%よりももっと値上げになっているはずで、これは昨日も予算委員会で御議論になったそうですから省きますが、とにかくも一二・四%、ああいう御説明になったような根拠による数字だとすれば、それ以上の実質的な値上げになっておる。これも事実じゃないかと思います。さらに家計に与える影響にいたしましても、あの消費者米価値上げという発表があった直後、やみ米がずいぶん値上がりしたことは大臣承知通りで、これが相当消費者の家計を圧迫していた、これも事実でございましたし、それから今の予約減税はいい方に間違ったのですからいいようなものですけれども、それにしても責任者である農林大臣がおっしゃったことがこういうふうに変わっていく。こういう問題を一一申し上げるのは失礼ですけれども、ともかくもこういうようなものが重なってくると、重政農政に対する不信感というものが農民一般の間にできてくることはいなめない事実だと思います。  そこで今後でございますけれども、そういうことのないように、大臣がほんとうに農民の立場をよくお考えになって、責任を持って発言をされて、そうしてそのことについては信頼できるような行動をとっていただく、こういうことを最初にお願い申し上げたいと思うわけですが、それについて御所見を伺いたいと思います。
  154. 重政誠之

    重政国務大臣 いろいろおしかりを受けたわけでありますが、いい方へ変わっていくことについてもおしかりを受けたので、これは私にはよくわからないわけであります。  さらに、農政を執行いたしますのは農林大臣でありますが、方針をきめ、また予算をとり、あるいは法律をつくるということは農林大臣一人の力ではできないわけです。これは皆さん方に御検討を願って、皆さん方の御協力を得なければできないわけでありますから、それがすべて農林大臣に対する農民諸君の信頼感に影響するということになったのでは、これはだれがやったってしようのない話でありまして、その辺のところは農民諸君は十分に理解をしてくれておると私は思っております。
  155. 湯山勇

    ○湯山委員 信頼されてないようなことだけ申し上げたので、予約減税の問題は確かにおっしゃるような点があると思います。しかしながら、それならそういう見通しに立って、これは大勢はこうだけれども、自分としてはこういう努力をするのだという見通しが甘かったと思います。あるいはあきらめ過ぎたので、そういう点の批判はまた別に受けるべきだと思うのですが、これはそういうことですからもうやめることにいたしまして、ともかくも農林大臣に対してはそういうベテランですから信頼したいという気持もあると思います。しかし、やってこられたことについては必ずしも期待通りでなかった、そういう失望感があることは間違いないことなんで、今後はぜひ信頼にこたえるようなやり方をやっていただきたい、こういうお願いを前提として、当面問題になっております乳価の問題、これなどは農林大臣農民の信頼にこたえるためにまっ先に率先してやっていただく、こういう問題だと思いますので、時間の関係もございますから、最初項目別に大ざっぱにお尋ねをして、それからあと残った時間で各項目別にお尋ねをしていきたいと思いますので、簡潔にお答えいただきたいと思うのです。  第一は、今乳業者の方で一方的に値下げの通告をいたしております。それについては政府買い上げの措置もとっておられるようですけれども、ともかくもこの値下げ問題について、農林大臣としてそれを撤回させる、そういうことをさせないための御努力をなさる御意向がおありになるかどうか、これをまずお伺いいたしたいと思います。
  156. 重政誠之

    重政国務大臣 御承知通りに、乳価については、政府責任を持っておる値段というのはさまっておるわけであります。今値下げと言われておるのは、奨励金について今まで五円出しておったものを、こういう状態だから四円しか出せないというので、一円奨励金を出さないということでありまして、法律できまった方法によりまして支持価格をきめて、その支持価格を割るようなことがあると、農林大臣としては全責任を負ってやらなければならぬ問題でありますが、奨励金のことでありますから、値下げと一口に言われますけれども、それは私は性格が違うものと思うのであります。しかし実質的にはどこまでが支持価格で、どれだけが奨励金ということは、はっきり区別のつかない農家諸君もおられることは、私はわかっております。でありますから、相なるべくは総計の手取りが減らないようにできるだけの努力をいたさなければならぬと思っておるのであります。そこで先般、御承知通りに乳製品を、事業団をして買い上げさせることをきめたのであります。これ以上はもう奨励金を減らさないということにいたしまして、値下げの傾向、今言った意味における奨励金を減らす傾向をここで食いとめた、こういうふうに一つ御了解を願いたいと思います。
  157. 湯山勇

    ○湯山委員 これ以上というのは、現在の値下げを発表した額という意味でございますか。それともそれ以前のものをさしておられるのか。
  158. 重政誠之

    重政国務大臣 これから先のことを言っておるわけであります。今まで発表したのがどうなっておるかわかりませんが、一円、平均すれば二円方奨励金を下げておるのだろうと思うのですが、それ以上は下げないようにやらす、こういうふうに思っております。
  159. 湯山勇

    ○湯山委員 その問題はあとでお尋ねいたします。  それから次に、今の乳製品価格の基本的な態度ですけれども生産費所得補償方式は、米の場合は別として、あとはとらないということでございましたが、畜産物価格安定法によって再生産を確保するという条文が、原料乳及び指定食肉についてはついております。これは食管法の米の買い上げと同じような表現にになっておるわけですが、そういうことは大臣は御存じでしょうか。
  160. 村田豊三

    ○村田政府委員 ちょっと法律の条文に関連する御質問でもございますので……。  ただいま湯山先生御指摘になりました事項は、畜産物価格安定等に関する法律の第三条第四項に、確かに御指摘のような規定がございまして、ただいま大臣からもお答えのありました指定乳製品の安定価格につきましては、この法律の定める規定に従いまして、昨年価格審議会の議を経まして、安定価格の決定を見たわけであります。もとより、ただいま御指摘のございましたように、生乳、原料乳につきまして生産費所得補償方式を採用しておらないことは御承知通りでありまするけれども、ただし生乳の過去における長年にわたる生産実績等を考慮いたしまして、過去の平均価格をもとにいたしまして、それに一定の生産費の伸び率でありますとか、あるいは牛乳並びに乳製品の消費の伸びを勘案いたしまして、ある程度供給を促進するという形の計数等をかけまして、非常に技術的になりまして恐縮でありまするが、牛乳の再生産を確保していこうという趣旨で、ただいまの一升五十二円という安定価格がきめられておるような次第であります。
  161. 湯山勇

    ○湯山委員 これも議論がありますけれどもあと回しにいたします。  今各種の物価が値上がりしております。今のような趣旨で安定基準価格をきめる場合には、当然上がらなければならない条件ばかりで、引き下げる条件はないと思いますけれども、それについて大臣はどうお考えでしょうか。
  162. 重政誠之

    重政国務大臣 これは常識的に申しますれば物価指数が上がるのでありますから、その面におきましてはそれは値上げの要素になると思うのであります。しかしこれはいろいろこまかい計算があるようでありますから、あるいは値下がりになる要素もあるかもしれぬと思います。これは具体的な問題でありますから、常識的に考えればその点は一応値上げの要素であろうと思います。
  163. 湯山勇

    ○湯山委員 常識的じゃなくて、大臣は経済閣僚であるし、特に農林大臣ですからすぐおわかりになると思うのです。今日生産費がどうなっているか、飼料なんか値上げになったでございましょう。あるいは値上げの計画がおありになるわけでしょう。そういうことから見ていって、下がる条件というのは一つもなくて、今の生産費の面から見ていけば上がること以外にないじゃないですか。——簡単に願います。
  164. 村田豊三

    ○村田政府委員 簡単にお答えいたしますが、ただいま御指摘のありました政府の払い下げますえさにつきましても、基本価格といいますか、織り込み価格というか、支持価格でございますが、それをただいままだ上げておりません。  それから、もう一点御指摘のございましたえさの価格が上がっていやしないかという御指摘でございますが、これはものによって上がっておるものもございます。ものによっては下がっております。主として上がっておりますのはふすまを初めとする糟糠類関係のえさでございます。下がっておりますものはコウリャン、トウモロコシ等を初めとする穀類飼料でございまして、はなはだ大ざっぱに申し上げて恐縮でございますけれども、平均的、一般的に申し上げますると、大体持ち合って、前年に比べて上がっておらないということが言えると思います。
  165. 湯山勇

    ○湯山委員 それにしても諸物価とのつり合いですね。そういう点から言えば上がる要素があるということは、これは大臣お認めになると思いますが、これもあとに譲ります。  それから自由化の問題ですが、今お話のありました畜産物は非常に大きく影響を受けるわけですが、畜産物の自由化については、大臣の先般の施政演説でも早急にやれないというような御表現がありましたが、これはその通りでございますか。
  166. 重政誠之

    重政国務大臣 これはその通り考えております。ことに酪農製品につきましてはにわかにやれない、これは根本的に日本の酪農業の体質の改善をやらなければならないと私は考えております。
  167. 湯山勇

    ○湯山委員 それから調整工場をおつくりになるのかならないのか、すでに予算要求は大蔵省も認めて出ておると思います。これはおつくりになるのかならないのか、これもはっきり一つ御答弁願います。   〔「大臣方々」と呼ぶ者あり〕
  168. 村田豊三

    ○村田政府委員 非常に具体的、専門的なことでございますので、失礼でございますが私からお答えいたします。  調整工場という概念は、おっしゃる方によりまして非常にいろいろな御意見があるようでございます。私ども一般的に申しまして、調整工場と申しますのは、牛乳の不需要期、いわゆる冬場でございますが、不需要期はどうしても牛乳の消費が減りますので余ってくる。現在はそれを学校給食に回したりなどしておるわけでございますが、そういう不需要期に余って参りまする牛乳を安く買いたたかれるのでは困るから、生産地において生産者あるいは関係者等が集まりまして工場をつくっていくという計画を描いておるわけであります。先般御説明のございました畜産振興事業団の補助なり出資なりの金額の中に、来年度予算として一応織り込まれております。これをつくっていくかどうかという御質問でございまするが、できるだけこれはつくるように私ども努力をして参りたいと思います。どういうところにどういう規模の調整工場をつくっていったらよろしいか、いろいろ今後検討して参る問題があろうかと思います。いずれ予算が通過いたしましたならば、具体的にこれらの措置についてはなにして参りたいと考えております。
  169. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣から御答弁願います、ああいう説明では了承できませんから。
  170. 重政誠之

    重政国務大臣 実は調整工場という言葉を私はよく知らなかったのです。
  171. 湯山勇

    ○湯山委員 予算要求している。
  172. 重政誠之

    重政国務大臣 予算にはおそらくそうあったでありましょうが、忘れておったのです。事柄は承知しております。これはつくっていきます。
  173. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで、元へ返りますが、まず第一点は、今回の値下げの問題ですけれども、その責任はどこにあると大臣考えになりますか。諸物価は上がっておるし、それからえさについては横ばいだとしても、上げる条件が整っておる。そういう中で業者の方が一方的に値下げを通告してそれを実施しようとしておる、その原因は一体どこにあって、だれに責任があるのか。
  174. 重政誠之

    重政国務大臣 その責任はだれというわけにいかぬのじゃないかと私は思うのです。昨年の夏場に、天候の関係で、普通の夏のように好天が続かなかったために牛乳の消費が伸びなかったのであろうと私は思うのです。これは酒についても、ビールは消費が少なくなって酒が多くなったという現象が起こりましたが、やはり天候のかげんだと私は思うのです。そこで需給が、生乳の供給量が非常に多くなって、乳業会社の方でも製品が売れない、手持ちが多くなって、それで原料乳も十分に買わぬというようなことで、そういうようなことも原因になりまして、需給のバランスが合わなくなったためにそういうことになったのじゃないかと私は思うのです。
  175. 湯山勇

    ○湯山委員 夏場伸びなかったということも若干あるかと思いますけれども、そうでなくて、政府自体が需給の見通しを誤っておった、それもお考えにならなければならないのじゃないでしょうか。粉乳の輸入とかバターの輸入、それから学校給食での生乳の給食を停止した、こういった一連の政府見通しの誤り、それに伴う施策の誤り——誤りと言うのは酷かもしれませんけれども、当を得なかった、これはお認めにならなければならないと思うのですが、いかがでしょう。
  176. 重政誠之

    重政国務大臣 仰せの通りに、学校給食は御承知通りに続けてやるということにいたしたわけてありますが、それでもなおどうも需給のバランスが合わないということでありまして、その見通しがどうも誤っておるではないかというおしかりですが、これは政府委員から……。
  177. 村田豊三

    ○村田政府委員 補足させていただきます。  三十七年度の乳製品の需給見通しを立てます際に予見をいたしました事柄と、当時需給の中に織り込んでおりました数字とその後の需給の変動がありましたことは、率直に認めざるを得ないと思います。その原因は、先ほど来御指摘のありました通り、昨年の夏場の消費が、天候等の理由で特に生乳の消費の伸び率が非常に落ちた、前年に比べてわずかに七%足らずしか伸びなかったということ、従ってできた乳を腐らすわけには参りません。生乳の生産はきわめて順調に伸びて参っております。一月から十二月までの全体の伸び率は、非常に順調な伸び率を示しております。特にこの冬場が異常な伸びを示しております。そういう状況で、当初需給推算で考えておりましたような生乳の消費の伸び率並びに乳製品の製造の伸び率というものに非常な狂いが生じて参りました。乳製品の生産が非常に多くなったということが言えるのじゃないかと存じます。
  178. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで、この場合、そういう政府の方にも考えなければならない点がある。それから乳業者の方にもそういう点があると思います。ただそのしわ寄せを零細な酪農民だけにこういう形で一方的に負わせていく、そういう政治が一体政治の姿勢としてあり得るものがどうなのか。私が最初に大臣農民から信頼されるような行政をやっていただきたいと前提として申し上げたのはそういう点なんです。  そこで、一体二十億の買い上げの場合に、どういう条件をおつけになりましたか。これだけのものを買い上げる、従って、この際値下げを発表しておるその分は値下げしないでくれとか、そういった指導なりあるいは条件をつけて買い上げられたのか。ただ無条件に在庫を緩和する、そういう意味で買い上げたのか。この点いかがですか。
  179. 重政誠之

    重政国務大臣 これ以上はもう下げないという、条件といえばむろん条件でありますが、これは行政指導としまして、これ以上はもう下げない、今下げた分については、一つできるだけ早い機会に復活をしてもらいたい、こういう話し合いをいたしたわけであります。
  180. 湯山勇

    ○湯山委員 それについての確約はできたわけでございますか。向こうの返答はどういう返答ですか。
  181. 村田豊三

    ○村田政府委員 二十億の買い入れをきめます際に——もっともその前に昨年の暮れに値下げを通告いたしておりましたものにつきまして、極力早く正常な事態に戻すように協力を要請したことはもとよりでございますけれども、これにつきましては、昨年のあの事情からとうてい協力が得られなかったわけです。むしろ昨年のあの事態では、このまま放置いたしますならば、一月以降の乳製品の不需要期を迎えまして、さらに安定帯価格を大幅に乳製品が下回るおそれもあり、またそういうことでございますならば、二次、三次の乳価の引き下げという問題も予測を許さないという事態がございまして、政府といたしまして、二十億の買い上げに踏み切ったわけでございます。その際に、われわれといたしましては、メーカーに向かいまして、政府はメーカーの希望に応じて相当大量のものを買い入れる用意がある、従って、それについては今後の引き下げは絶対にないように協力を期待するということを申し入れまして、その約束を得ておるような次第でございます。従って、この措置によりまして、おそらくこれ以上の乳製品の値下がりはあり得ないと私どもは信じておりますし、乳製品が適当な価格を今後維持し、回復をして参りますならば、できるだけ早く、昨年の募れに乳価の引き下げを通告しておりますものも、もとの姿に戻し得るように努力を勧奨いたしておるような次第でございます。
  182. 湯山勇

    ○湯山委員 二次、三次の引き下げというのは、どのメーカーから出た案なのでございますか。
  183. 村田豊三

    ○村田政府委員 あの当時、昨年の暮れの生乳の生産の状況、それの市乳の消費の状況、並びにそれから起こります乳製品の加工並びに滞貨の状況というふうなことから見通しますと、当時乳製品メーカーといたしましては、とてもこのままではやっていけない、第二次の引き下げをしたいという要望がございますことは、直接間接に私どもの耳にも入っておったような次第であります。
  184. 湯山勇

    ○湯山委員 二十億での買い入れの量は、何トンになるわけですか。
  185. 村田豊三

    ○村田政府委員 最終的な確定がまだ出ておりません。と申しますのは、メーカーの希望に応じて買い入れる。従って品目だけはきまっております。脱脂練乳と全脂練乳と脱脂粉乳の三種類でございますが、これはメーカーの希望に応じて希望量を買い入れるという制度の建前になっておりますので、ただいまその希望量の聴取をしている次第です。ただ二十億で大体予定される数量といたしましては、これはものによって違います。脱脂粉乳なり練乳なりの数量のウエートによって違って参りまするけれども、大体一万トン内外のものになるのではないか、かように考えております。
  186. 湯山勇

    ○湯山委員 消費の拡大について、今のような業者からの買い入れということじゃなくて、学校給食等へもっと回せば粉乳が回る余地があると思うのです。昨年学校給食に回った国産粉乳の量は大体どれだけありますか。
  187. 村田豊三

    ○村田政府委員 昨年第二学期分といたしまして、十一月、十二月分が六万石でございます。ただいま実施いたしておりまする第三学期分が約十万石、合計十六万石でございます。
  188. 湯山勇

    ○湯山委員 この十六万石で、当初事業団買い上げの額として大体九億円というのを見ましたですね。そうするとこれだけやったとしてもこれは五億五千万くらいじゃございませんか。あとまだそういう幅が三億、四億近い金額があるはずです。そういうことをほうっておいたことと、もう一つこれについて申し上げたいのは、脱脂粉乳なんです。国内産の脱脂粉乳は昨年メーカーの方からも出ないで、文部省がずいぶん要求したけれども国内産はわずかに六十五トンしか出ていない。そうしてあとずいぶん大量のものが全部外国のもので入っていますが、こういう粉乳は買おうと思っても出ないのだというような文部省の意見ですが、間違いですか。
  189. 村田豊三

    ○村田政府委員 学校給食への事業団予算が余っているのではないかというお説でございますが、三十六年度に予定いたしておりました牛乳の学校給食に対して事業団が助成いたすべく予定いたしておりました金額は、十六万石に対して六億でありまして、予定通りに使用をただいま実施中であります。  なお、脱脂粉乳を学校給食にという御指摘でございまするが、ただいま御承知のように脱脂粉乳の学校給食は輸入ものの脱脂粉乳で実施をいたしております。これは国内産の脱脂粉乳が数量がきわめて少ないのでございます。御承知のように脱脂粉乳はバターをつくりましたあとのもので、脱脂したものを粉乳に加工するわけでございますので、わが国はまだまだバターの生産も少のうございまするし、従って量的に脱脂粉乳の生産がきわめてわずかで、そのために価格も、国内産の価格は相当高い、輸入品の方がはるかに安いということで、これは学校給食の父兄負担の関係等もございまして、現在は文部省で一元的に輸入粉乳で実施をいたしておりまするけれども、ただ学校給食の制度の建前からは、国産の脱脂粉乳ももとより使用できるように制度上の建前はなっております。過去におきましては、実際には学校給食として国内の脱脂粉乳がそこまで回る余裕がほとんどなかったという実情でございます。
  190. 湯山勇

    ○湯山委員 今の局長の御答弁には矛盾があると思います。それは、今の御答弁で、国内産の脱脂粉乳の生産が非常に少ない、つまり需要をまかない切れない、需要が非常に大きいのだ、そこで学校給食に回す余地はないという。一方においては脱脂粉乳の在庫が多くなってメーカーに対して買い上げをしてやらなければならない。これは局長の御答弁自体矛盾があるのじゃないかと思うのですが、どうなんですか。
  191. 村田豊三

    ○村田政府委員 私の説明が十分でなかったかと存じまするが、脱脂粉乳の国内の生産量は非常に少量でございます。しかし、御指摘のように、脱脂粉乳を学校給食に回して回せなくはないのでございますけれども、国産の脱脂粉乳は非常に割高でございます。そのために実行上の面で、父兄負担等の関係もございまして、実行上の面で財政負担その他の見地から、いろいろな支障がまだあるということがその一つであります。  それから、ただいま御指摘になりました、現在すでに脱脂粉乳を事業団で買い入れている事態、この事態はどうか、まさにこの小旗は異例の事態でございます。少ない国産の脱脂粉乳を、さらに事業団で買わなければならないということは、これは異常な事態であると私ども承知します。
  192. 湯山勇

    ○湯山委員 その異常な事態というものの内容は、なおよく分折を要すると思いますけれども、その余裕がございませんから、あと回しにいたしますが、そこで、新しく小中全児童生徒に給食を行なうということが決定されまして、政府予算要求にも入っております。これは結局、今の国内産の脱脂粉乳なり、国内産のなま乳には影響のないものだ、こういうことになると思いますが、これはどうなんでしょうか。
  193. 村田豊三

    ○村田政府委員 今度文部省で計画しておられまする小中学校への相当大幅な学校給食に対する助成の計画でございますが、これに対しましては、もちろん大部分は輸入脱脂粉乳で実行されるものだと承知をいたしておりまするけれども、先般来私どもも文部省なり大蔵省なり、関係の省とも折衝いたしまして、特に昨今は、御承知のような畜産振興事業団でも、国内の脱脂粉乳を買わなければならないような事態でございますから、国産の脱脂粉乳も極力この中に織り込んでいくという基本的な了解をいただきまして、ただいまその具体的な実行については、関係省で打ち合わせ中でございます。
  194. 湯山勇

    ○湯山委員 それはおざなりな御答弁じゃないでしょうか。と申しますのは、百グラムについて四円という単価が見込まれているわけです。それで、国内炭を使えばどんなにしてもそれの七、八倍、つまりキログラム当たりにして、輸入したものであれば五十六円七十銭、それから国内産であれば三百円、どうしても一キロ当たり二百四十円ばかりの補給をしなければ使えないのですから、それは今おっしゃったのは、ただ形式的におっしゃったので、実際問題としては使えない、それが現状じゃないでしょうか。
  195. 村田豊三

    ○村田政府委員 さような御懸念の起こりますことも当然かと思いまするけれども、ただ安い輸入の脱脂粉乳が、非常な大量のものが入って参りまして、その中に国産として、この学校給食制度に回し得る脱脂粉乳は、ただいま手持ちとしては非常にわずかなものでございます。従って安い大量のものに——それはもちろん国産は高うございますけれども、これをある程度入れて全体を薄めて、父兄負担としてはそれほど大きな額にならないようにするにはどうしたらいいかということで、ただいま文部省なり大蔵省と折衝している最中でございます。
  196. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣にお尋ねいたします。今のように、業者の方は一方的に値下げを通告してくる、政府の方は、それについて業者を規制するとか、あるいは指導するとか、そういうことについての強力な手は打たれていない。それから、それなら将来消費の拡大について、従来学校給食、学校給食ということはずいぶん言われました。今、山中さんから何かお話があったかもしれませんけれども、ともかくもそれも静めて使うという程度で、これも影響はありません。そうすると、一体酪農振興、酪農振興と言っておきながら、これから先の酪農はどうなっていくのか。もはや、今の質疑の中からでも、非常に暗い見通ししか出て参りません。それならば一つほんとうに構造改善と取り組んで、選択的拡大の中で酪農振興をやっていこうというならば、先ほどのお話じゃありませんけれども、農林大臣、ここらでほんとうに断をやらなければならない、そういう段階ではないかと思います。そこで、そのためには当然の帰結として、価格保障ということがなければならない。その価格保障についての大臣のお考えが、この問題に関する限り、私は非常に薄弱だと思います。それは、たとえば五十二円を割ったらとか何んとか言うけれども、五十二円というのは、法律でいえばどの価格に当たるわけですか。どの価格が五十二円を割ったならば、大臣がさっき言われたように、それはほうっておけない、乗り出してやるのだと言われた五十二円というのは、何の価格でしょう。
  197. 重政誠之

    重政国務大臣 それは生産者の販売価格であろうと思いますが、これは、審議会の議を経て公にせられている価格であります。  それから、日本の酪農業というものが相当むずかしい問題に逢着しているという御意見、私もそう思っております。これは、酪農業農業経営の明るい面だとかなんとか今まで言われてきているけれども、これは根本的に掘り下げて、一体日本の粉乳が、豪州の粉乳の五倍も六倍もするというような値段でなければいかぬというのをこのままにほうっておいて、日本の酪農業というものは今後振興するかということを考えてみると、私のようなしろうとは、第一にすぐ頭に浮かぶものは、要するにえさの問題です。だんだん高くなっていくこの販売飼料、勝人飼料といいますか、そういうものを年々大量に入れて経営をやっていくというような姿は、これはよほど考えなければいけない。であるから、少なくとも七割というものは、牧草によって飼料をまかなわなければいかぬ、酪農業においては少なくともそうでなければならぬと私は思っておるのでありまして、この方向に向かって、私は国有林を開放することが必要であれば、断固としてやるつもりでおるのです。しかし、これは勝手にやるわけにはいかぬ。一応の法律もあり、規則もあるのでありますから、それらの運用をできるだけそういう方向に持っていきまして、日本の酪農業の基礎を確立しなければ、これは将来のために実に憂うべきことであると思っております。
  198. 湯山勇

    ○湯山委員 その点は全く同感でございますが、その前にお尋ねしたのは、一体五十二円という価格はどういう価格か。と申しますのは、さっき大臣の御答弁の中に、奨励金が動くというようなことは、これはまた別問題だというお言葉があって、それは別問題だけれども手取りの中に入るのだからというので、大臣は明らかに、基本になる乳価というものと、奨励金だとかあるいは飼料調整費だとかそういうものと別ワクにして、基本乳価が五十二円という意味の御答弁がございましたから、それは、そういうふうに基本乳価が五十二円という価格安定法では建前になっておるのだという御理解なのか、そうではないのか、これをお尋ねしているわけです。
  199. 重政誠之

    重政国務大臣 基本乳価と言っていいのかどうか知りませんが、要するに生廃者が乳業会社の工場で渡す値段、その五十二円、こういうことになっておるのじゃないですか。
  200. 湯山勇

    ○湯山委員 法律の解釈でございますから、そういうふうに言われたのでは、こっちは何とも言えないので、安定基準価格として五十二円というのを御決定になったのは政府なんです。その五十二円というのは、奨励金とかなんとかの集団の協力のなんだとか、こういう不安定なものじゃなくて、基本的にこれを下回ってはならないというものが五十二円じゃないかということを一つ大臣から明確にしていただきたい。
  201. 重政誠之

    重政国務大臣 本曲私が今申し上げました、生産者の乳業会社の工場渡しの値段が五十二円、こういうことになっておるわけであります。
  202. 湯山勇

    ○湯山委員 工場渡しというものの内容は基本乳価と奨励金、いろいろなものがあるわけです。つまり五十二円という中にいろいろなものを含んでいるものもあるし、五十二円の外にくっついているものもあるし、いろいろあるわけです。そこで政府で言う五十二円というのは不安定要素を除いた基本乳価が五十二円、こういうことでないと困ると思うのですが、大臣もそういうお考えだろうと思うのですけれども、どうなんでしょうか。
  203. 村田豊三

    ○村田政府委員 法律上五十二円というものを定めまして、告示で規定をいたしておるわけでございます。その規定字句をそのままに読んでみますと、原料乳の安定基準価格は、原料乳の生産者が原料乳を乳業者に販売する場合の工場渡し価格であるということに相なっております。今御指摘の基本乳価とか、あるいは奨励金のついた乳価とかいうお言葉は、おそらくそれぞれの生産者団体と乳業工場との間で乳価の価格の取りきめをしております際の取りきめの内容にそれが出ておるものかと存じます。
  204. 湯山勇

    ○湯山委員 それでは、農林省の態度としては、そういうものも含めて五十二円ということですか。
  205. 村田豊三

    ○村田政府委員 取りきめの内容がどのようになっておりますか、これは個々の契約の内容を見なければ判断がつけにくうございますが、いずれにいたしましても、端的に申し上げれば工場生産者が受け取る価格、これが畜産物価格安定等に関する法律で規定しております乳価である、基準価格である、かように理解いたします。
  206. 湯山勇

    ○湯山委員 個々のケースについて調べてみなければわからないということは、現実に五十二円を割っているという場合もあるということをお認めになっての発言でしょうか。
  207. 村田豊三

    ○村田政府委員 全然それに関係のない、乳価の現況に関係のない解釈の上から申し上げておるつもりでございます。
  208. 湯山勇

    ○湯山委員 奨励金というのはその範疇に入るでしょうか。それからまた飼料の調整費というのは、これはその範疇に入りますか。あるいはまたたとえば集約酪農の協力費なんというものは、ここにやらないで、そこに協力した別な要素になると思うのですが、それは必ずしも集約酪農に協力して集荷のあるところへやらなくてはならないという、そういうことではなくて別な意味の協力、そういう協力費、つまりそれだけ会社側の方は利潤が上がっている。それのお返しだということになれば、今局長の言った範疇に入らないと思うのですけれども……。
  209. 村田豊三

    ○村田政府委員 ここでわれわれが法律的に理解いたしております乳価というものと、そういうただいま御指摘のありましたような契約の内容とがどういう関係づけになっておるのか、その契約の実態によって解釈はおのずからまた変わってくるのじゃないかと思います。いずれにいたしましても、私ども、ここで法律が告示で規定しておりますものは、生産者が乳業者の工場に運びまして、その工場で渡しますときの受け取り価格五十二円というふうに理解をいたしております。
  210. 湯山勇

    ○湯山委員 これは運び方、集め方、いろいろ方法がございまして非常にまちまちだと思います。そこで、今の局長のお話からいえば、何しても五十二円手取りがあればいいのだというように、そういう解釈が今まで通用してきておる。しかし中に入っていけば五十二円を切っておるものも相当あるのではないかと、今附いてみましてそういう感じがするわけですけれども、そういうケースは全然ない。しさいに検討していって、それ以下になっているケースは絶対にないという保証はございますか。
  211. 村田豊三

    ○村田政府委員 事実の確認についての御指摘でございますが、私どもこの乳価の問題は、昨年募れ以来起こりました際に、各県を通じてただいま問題にいたしました基準価格といいますか、五十二円を割っておる事実があるかないか再三調査をいたし、県から情報の聴取もいたしたのでございますが、ただいままで私ども承知いたしております範囲では、五十二円を判った事例はございません。
  212. 湯山勇

    ○湯山委員 今の奨励金とか、何とか調整費とか、何とか協力費、こういう非常に複雑な項目を設けて、どの段階ででも切り落とせるような体制で業者の方はとにかくつじつまはそれに合うようにしておると思います。それはもう少し調査してもらわないと、今のお言葉もまた信頼しかねますので、さらに調査を願いたいと思います。そこでそうなりますと、今度はいよいよ五十二円という価格のきめ方が問題になってくるわけで、この点についてお尋ねをして、あとはまたあとに譲りたいと思いますが、少し念入りにお尋ねいたしたいと思います。  原料乳については、価格のきめ方が他の乳製品とは違っておる。条件が違う。原料乳及び指定食肉については他の指定乳製品とは価格のきめ方が違っておる。こういうことを大臣は御存じでございましょうか。
  213. 重政誠之

    重政国務大臣 私はどうもそういうことの詳細は率直にいってよくつまびらかにしておりません。
  214. 湯山勇

    ○湯山委員 それではもう一つお尋ねします。これも大臣御存じなければ御存じないとおっしゃっていただいてけっこうです。指定食肉と原料乳については再生産を確保することを旨としてきめる。その価格の名前は、呼び名は安定標準価格となっています。一方指定乳製品については安定下位価格、こうなっているわけです。そうするとその安定下位価格の方には再生産を確保するという条文はございません。従って指定食肉と原料乳については安定基準価格で、しかもそれは再生産を確保する価格をきめなければならない。法律の通り申します。他の一般の指定乳製品については、これはそういう条件はございません。経済事情や生産肝情を加味してきめるのだ、こういうことですから安定下位価格、安定基準価格、一方は再生産を確保する、一方はそういう条文がない。こういう違いがあるわけですから、原料乳、指定食肉に対する支持価格とそれから他の乳製品とはその価格に法律の建前から差があるべきだ、こうならざるを得ないわけでありますが、大臣はそれについてはどういう御見解をお持ちでございましょうか。
  215. 重政誠之

    重政国務大臣 私もそのきめ方についての詳細を一々検討しておるわけではございませんが、ただいま湯山さんのお話を承りまして私はこういう気がするわけです。乳製品の方は、それが生産費を割った値段であろうと何であろうと、需給のバランス及び国際の乳製品価格等も参酌せられて、これは買ってよろしいのだ、ところが生乳とかあるいぼ食肉というようなものは、それではいけない。この生産に要する投資といいますか、生産費といいますか、そういうものを十分に考えて、市場値段は需給との関係で安くなっても、やはりこれはその値段では——適正なそういう値段で買い上げなければいかぬ、こういう意味ではないかと思うのですが、大ざっぱで相済みませんが……。
  216. 湯山勇

    ○湯山委員 大体大臣の御理解は、私もそう認めざるを得ないと思います。ところが、実際はそれが行なわれていないのです。現在の農民が非常に困っているのは、実際には今の原料価格では引き合わない、再生産ができない——これは大臣もお聞きになっておられると思います。それではとても再生産の意欲が起こらない、そういう価格になっております。そこで農林省自身も試算されて、これは七十一円三十四銭、大体これくらいならば再生産は確保できる価格じゃないかという試算をされておる。これはどういう機関でどうやられたか、私それはつまびらかにしませんけれども、とにかく農林省自体から七十一円三十四銭という数字が出たことだけは間違いないと思うわけです。そう見ますと、それと五十二円というのではあまりにも開き過ぎるわけだし、この辺は、ずいぶんこれを議論しましたけれども、今の安定基準価格というものについての認識が、今までの大臣は、重政農林大臣ほどはっきり御認識がなかったためにもやもやしておりました。しかし今度は大臣もはっきりそういうふうにおっしゃるわけですから、当然再生産を確保するという条件を満たす価格にされなければならないと思うわけですが、今の七十一円三十四銭、それとの関連において、これは局長の方から御答弁願いたいと思います。
  217. 重政誠之

    重政国務大臣 それは私が答えます。  基本的と申しますか、考えは私が先ほど申し上げたようなことで、これは御賛成を湯山先生から得たわけでありますが、七十一円という試算があったかどうかということは、私は実は承知しておりませんが、ただここで常識的に考えられますことは、八頭とか十頭とかというようないわゆる多頭飼育でやっておるものの生産費と、一頭とか二頭とかというようなわずかな乳牛でやっておるものの生産費、さらにはえさの状況において、ほとんど牧草を食わす、草を食わすえさと購入飼料との割合が、私がただいま申し上げましたような草の飼料が七割で、購入飼料が三割でやっておるところもあろうし、あるいは半々にやっておるところもあろうし、あるいはそれが逆になって、購入飼料七割でやっておるところもあるだろうし、そういうことによって私はみな生産費が違うだろうと思うのであります。そこで一体どこを基準にとってそれをやるかということが問題じゃないかと思うのです。これは私は実施に当たらずに、今そういう御質問にあって私がすぐ判断したところで申し上げておるわけなのです。
  218. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣のおっしゃるような条件ございます。しかしおそらく大臣考えと逆だと思いますのは、今一頭、二頭飼っている人はどうにかやっていけるのです、それは自給飼料が多いから。ところが政府が奨励しておる多頭飼育になると購入飼料が多くなりますから、それは全然生産が引き合わない。だからむしろ今傾向としては、たくさん飼っている人は減しています。先般乳価で騒いだ四国の方の問題でも、わずかに六十円九十三銭七厘が六十二円六銭ほど、これだけの引き上げがあったのですけれども、そこの地域なんか五頭以上というのはだんだん減っていって、一、二頭の、自給飼料で間に合うところだけがどうにかやっていっている。こういう状態で、これは大臣、逆にむしろ大臣の言われたような意味からいえば重大な事態が起こりつつある、こういうふうに御了解願わないといけないわけです。そうやってくると、とても今の五十二円というような価格じゃやっていけない。一、二頭、ただ朝夕の手間で、それから自分の家の食べ残りで飼うという以外はできないんだ。そういうことですから、何としてもここで強力な価格支持も当然——法律がこうなっておるんですから、それに見合うような価格を今後きめていく、今のような御精神できめていく、こういうことでなければならないと思うわけですけれども、これは今の大臣の御答弁に対して意見を申し上げたわけです。  そこで七十一円の問題は局長の方から一つ……。
  219. 村田豊三

    ○村田政府委員 七十一円という数字が出ましたのは、昨年の春の価格審議会におきまして、委員の方から、農林省がただいまやっております生産調査の資料を出せという御要望がございました。その生産調査は現在統計調査部が実施をいたしておるのでございますが、その数字によりますと、非常に生産費に幅がございます。同じ牛乳の生産費でありながら、最も安いものが十円、高いものは七十円をこえるというふうな、非常な、何といいますかバラエティがあるということで、こまかいことは省略さしていただきますが、いずれにいたしましても、農林省は生産費主義をとらなかったのでございます。その生産費の資料を提出いたしました際に、さらに委員の方から、その生産費でとっております労賃の評価を、いわゆる生産費所得補償方式、都市均衡労賃に換算をしてみたならばどういう数値になるか、出してみよ、こういう要望がありまして、参考資料として出したものがございます。それが七十一円でございます。  なお、つけ加えて申し上げますならば、価格審議会におきましては、ただいま決定をいたしております一升五十二円というもので決定いたしましたけれども、審議会にはいろいろな案がございましたことをつけ加えて申し上げておきます。
  220. 湯山勇

    ○湯山委員 最後にお尋ねいたしますが、農林省の方で、この法律の条文の通り、再生産を確保することを旨として計算すればどれくらいになりますか。
  221. 村田豊三

    ○村田政府委員 いろいろ論議があると思いますが、率直に申し上げまして、いろいろな計算方式等にもよると思いますが、少なくとも三十七年度の生乳価格につきましては、畜産物価格安定等に関する法律で告示をいたしております一升五十二円でも再生産を確保しておるというふうに理解をいたしております。
  222. 湯山勇

    ○湯山委員 それは全く了解できない数字で、農林省の方からお出しになった資料で審議会の方で計算すればこうなったということですから、今の御答弁は、おそらくずいぶん政治的な配慮のある御答弁だと思いますから、ただ承るだけにしておきます。しかし、それでは決してこの法律の趣旨に合っていないということの指摘は、この際確信を持っていたしておきます。  大臣の方へは、お願いですけれども、きょう時間の関係もございまして、もっと申し上げたい点あるいはお尋ねしたい点ありましたけれども、これで終わることにいたしますが、一つ大臣、もう先ほどの御答弁でおわかりの通りだと思います。せっかくの構造改善の中心になる酪農がこういう状態でございますから、一つ十分御留意を願って、安心して農家がやれるように早急に対策を講じていただきたいと思います。
  223. 長谷川四郎

  224. 足鹿覺

    足鹿委員 私は、午前中から同僚委員によってなされました大臣を主とする質問について、総括的に若干の質疑を行ないたいと思います。  農基法の実施三年目を迎えまして、今国会に提案をされました農林省関係予算は二千三百五十四億円であります。当初の要求額は三千二百六十六億円であったと承知いたしておりますので、要求額に対して七二・一%という、総体予算に比べてかつて見ざる率の低い額といわなければならぬと思います。農基法に関連する法案も逐次整備されつつあるように見受けます。率直に言って、中身については追って検討いたしますが、三分五厘の長期低利構造改善資金制度の創設等は、大臣の労を多とするものであります。しかしながら、私どもが農基法審議の際に指摘をいたしましたように、欧米各国の農基法に見るがごとく、予算確保の規定が明確を欠いておる。このことが先ほど述べたような、かつて見ざる総額予算との対比における農林予算の比率の低下という遺憾な結果をもたらしたのではないか。やりたいことはたくさんあっても、農基法は成立をしても、なかなか思うように予算がつかない、こういうことにあるのでありまして、農基法についてはいろいろ議論はありますが、やはり今後は予算確保の問題が関連して裏づけなされなければ、きわめて意味をなさない事態を招来するのではないかということを指摘しておきたいと思うのであります。  そこで、農基法を中心としてこれが実施に移されました。午前中からも中澤委員から、きわめて適切な質疑が行なわれて、御答弁がございましたが、農業構造改善事業の点につきましても、十年計画のいわばパイロット、はちょっと違いますが、二年ないしは三年目を迎えるわけです。そこで聞くところによりますと、農林省は四百地区を当初要求をして、これを三百地区に削減を受けて、そのまま予算には三百地区として計上されたと聞いておりますが、午前中からの質疑の経緯を見ましても、最も政府が力を入れておられる農業構造改善事業の第三年度目を迎えて、四百地区を要求して、これを三百地区に削られて、そのまま引き下がるというような態度について、農林大臣はいかように考えておるのでありますか。この調子でいきますならば、これは途中で立ちぐされるのではないか、やってみたけれども、様子がよくなければやめるのではないかというような不安も一部に出てくることも、またやむを得ないのではないかと案ずるものであります。いずれにいたしましても、最も計画的であらねばならないこのような事業が、四百要求して三百にとどまるというような事態は、一体どこに原因があるのか。この構造改善事業についての責任の所存は、午前中、中澤委員との間において行なわれましたが、私どもはやはり農林省と大蔵省がこのように見解を異にしておるということに、日本農政の大きな亀裂があると思うのです。農政全般についての責任はもちろん農林大臣が負われるだろうと思うのですが、事実は、その陰にあって農政に対して非常に大きな責任を持っておるのは大蔵省であるとでも言いたい気がするわけであります。その点について、一番大きな問題であります構造改善地区が、四百が三百に削られた、将来の計画に支障ありやいなや、この点について大臣の確たる御所見を承っておきたい。
  225. 重政誠之

    重政国務大臣 私はそういうことを言われはしないかと思って慎重に考えておったところが、足鹿さんが第一発にそういうことを言われたわけであります。私は、計画が年々四百の調査をやって四百実施をするというのを初年度からやっておることが問題じゃないかと思うのです。率直に私が申しますと、初めのうちはどうしてもこの趣旨が徹底しない。また、これは農林省の方でもそうであります。また、ことに農村においてはそうであります。そういう関係上、実際に実行ができるのをオーバーして看板だけ掲げていくのがいいか。そうでなしに地道に、初めから三百程度しかできぬのなら三百、来年は四百、その次は五百というようにしり上がりにいくのが大体実情に適しておるものではないか、こういうふうに私は判断をして、三百ということにきめたわけでありますが、それをきめる際に、やっぱり今仰せのようなことを実は心配をした。心配をしたのでありますが、しかしこれで差しつかえない、これでいける、こういうふうに考えましたので、三百ということにいたしたわけでありまして、これはもちろん予算折衝におきましては、農林大臣が四百ということを強硬に突っぱれば、大蔵省は文句は言わなかったであろう、こういうふうに私は思っておるのです。
  226. 足鹿覺

    足鹿委員 少なくとも現内閣なり前農林大臣河野さんが、パイロットに発足して、選挙を前にしてこの事業に思わず深入りをした。今になって引けない。そこで午前中から指摘されるような問題を含みながらスタートしてしまった。それをあなたがしりをぬぐっておられる。非常に濃い仲でありますから、けっこうです。ぜひぬぐわなければならぬと思いますが、いずれにいたしましても、農林省の大臣初め、大臣を補佐する首脳部の最近の腰が抜けたといいますか、あまりにも意気地がないといいますか、とにかく三千二百六十六億円がたった七二%しか通らなくても引き下がる、またその中の中心の構造改善というようなものも、四分の一削られ、二割五分削られてもそれで引き下がる。そういうところに私は、非常に農民が今日困っておるこの際において、農政不信の念を抱き、前途に不安を抱く結果になろうかと思うのでありまして、閣議決定の権威は今やいずこにもない、こう言いたいのであります。もっと農林省は農林省なりに腹を据えて大筋を生かす、あまりこまかい行政にあれこれ言うよりも、問題の大筋をつかんで、それだけは死守する、私はそういう態度をもって予算に対処されることを望んだのであります。まことに残念に思いますが、これは私が質問をする一つの前提ともいうような気持でありますから、以下具体的にお尋ねをいたします。  そこで、昭和三十七年度から行なわれる構造改善事業の指定市町村について計画の認定は一応終わったようですね。ごく最近の締め切りで、実価地域の、一般とパイロットにおいての土地基盤整備並びに近代化施設に関して、地域別関係農家戸数、これはもちろん事業別でありますが、地元の事業別負担額の一覧表を、ここに資料があれば、あとで口頭でよろしいから御報告を願いたいし、なければ早急に資料をお示し願いたい。と申しますのは、私は二つの大きな問題をかかえておると思うのです。それは、根本的には先ほど指摘したような問題もありますが、私どもが昨年来現地調査をした経験から見ますと、どうも今度のあるいは今までの構造改善指定地域というものは、平場地帯あるいはそれに準ずる地帯に中心が置かれて、奥地山村等については素通りの傾向があるのではないか、こういう印象を受けておるのであります。われわれが全国を歩いていろいろと結果を持ち寄って打ち合わせをいたしました結果、そういう事実が出ておるのでありますが、それらの傾向を私は知りたい。もし私が指摘したことと違っておりますならば御訂正願いたいと思います。そういう点において、この構造改善を真に必要とする地域は、平場ももちろん必要でありましょうが、どちらかというと、負担能力のない、そして僻地にあって生涯を農林業によらなければ生計を維持することのできない宿命にある地域こそ取り上げて、これに必要な条件を備えさせて構造改善を行なっていく必要があると思うのであります。構造改善の意義は、そういった農村の立地条件をもっと考えた基本的な立場に立って考え、前期五カ年、後期五カ年というふうにもっと特徴を生かした構造改善計画というものがなされていいと思うのでありますが、この点について、大臣の政治家としての御所信があれば承りたいと思います。
  227. 重政誠之

    重政国務大臣 まことにごもっともでございます。ごもっともでございますが、この構造改善は日本農業全体についての体質改善と私は考えておるわけであります。従って、農業の主要地帯というものはすみやかにやらなければいかぬものだ、こういうふうにも私は考えておるわけであります。ただいま足鹿さんのお述べになりましたこともまことにごもっともである、地域差と申しますか、そういうもののあるところでの農業というものに対して十分なる理解と同情を持っていかなければいかぬという御説はごもっともである。その点重視していかなければなりません。しかし、今回の構造改善というのは農業全体の体質改善ということが重大なねらいであることもぜひ御了承をお願いいたしておかなければならぬと思うわけであります。  御要求の資料につきましては十分に検討いたしまして、そうして山場の方が手薄だということでありますれば、御趣旨にのっとりまして、できるだけその面もやるようにいたしたい、こういうふうに考えます。
  228. 足鹿覺

    足鹿委員 私は全体を考えればこそ今言ったような意見を持っているのでありまして、その点はあなたと考え方を異にしているわけではないと思うのです。都市周辺の工業地帯化していくであろうものは指定地域から除外をして出発をしておられるのでありますから、やはりその中で一番後進性の強い、そして今まで政策の日の目にあわない地域農民というものに総合的な構造改善の重点が置かれてもよいではないか。構造改善事業の性格というものをもっと二カ年間の計画に即応して判断をされて、大臣として今後の方針を定められる必要があるのではないかと指摘したのでありまして、この点は御了解を願っておきたいと思う。  そこで、午前中からも、また、ただいま湯山委員からも指摘されましたこの構造改善事業の中心、つまり基盤整備について、また基幹作物の選択的拡大及び近代化施設についてでありますが、十二月十日前後の指定地域において基幹作物の大体の重点がどういうところにあるであろうかということを大ざっぱに調べてみたのです。もちろん、酪農といっても、その他にも基幹作物を置いているものもあります。が、それらを含めまして、一般地域においては大体四六%くらい酪農を取り入れているようであります。あと果樹とか工芸作物とか水稲とかいろいろなものもありますが、一番中心をなしておるものは酪農であるように思います。ついで畜産物であります。その酪農について、スタート早々から乳価の値下げというような問題で紛争を巻き起こしていることはまことに遺憾に思います。かりに四〇%、全体のトータルはわかりませんが、資料をいただいたらまたおっつけお尋ねいたしますが、中でどの程度牛がふえるか。そうしますと、子牛を入れたとしても、一年六カ月すればもう受胎し子供を産みます。そうすれば乳になって出る。どんなにおそくても二年たてば乳を出すと見なければならぬ。そういたしますと、その子がまた大きくなるというふうに、また次々と指定をされていくということになりますと、もう現状においても——あなた方は一三%の牛乳の生産増が一五%になったといって乳業資本の一方的な値下げについて少し公平を欠く——乳製品の買い上げと並行して当然行政介入をされて公平な行政をやらなければならないにもかかわらず、今までの応答によってはその目的が達成されない、こういう事態になっておる。しかも、今私が指摘したように、基幹作物の中心は酪農だ——一体二年先になれば何ぼの乳が増産され、それに対応する需要の見通しはどういうふうになるかということを考えたときに、今でも一三%が一五%に生産がふえたことによってもうこういう事態を巻き起こしている。いわんや二年先のことを考えた場合にははだえにアワを生ずるような思いをいたします。そういう見地からも大臣はいたずらに事務局のその考え方のみではなしに、高所に立ってそうして今私が述べたような事態をも考えられて、現に起きておるこの酪農をめぐる、乳価をめぐる問題については生産の安定、取引の正常化という見地に立って一つの施策の柱をきめていかれなければ、この構造改善問題に端を発する酪農問題はみすみす行き詰まるのではないか、こういう印象を私は強く持つのでありますが、先ほど要求いたしました資料に基づいて追ってまたこまかく御検討願いたいし、私も検討いたしますが、この点について前向きの、今まで御答弁になった点で非常にしつこいようでありますが、どうも私は納得がいきませんので、この点構造改善の今後の基幹作物の動向というものがそういう方向にあり、これをやめられるならともかくも、これをあくまでも正常に伸ばしていかれようとするならば、価格問題ではありません。現に起きておるのですから、これに対するところの国務大臣としての公正にして妥当な生産の安定と取引の正常化に対する基本構想をこの際明らかにしてもらいたい。
  229. 重政誠之

    重政国務大臣 実は今お述べになりました点は私も非常に重視をいたしておるのであります。やはり生産の伸びの方が消費の伸びよりも著しく伸びていくという形は、よほど調整をしていかなければならぬ、こういうふうに私は考えておるのであります。価格問題もむろん重要であります。価格問題もむろん重要でありますが、今のような生産の伸びと消費の伸びとの関連をよく見きわめつつこれはやっていかなければならぬ、こういうふうに私は考えておるのでありまして、ただいまお述べをいただきました点は私も一つ十分検討をいたして、その方針を立てていきたい、こう考えております。
  230. 足鹿覺

    足鹿委員 あとで酪農の問題は一括してもう一ぺんお尋ねいたしますので、もう少し構造改善の問題について一、二点お尋ねをいたしますが、昨日またはきょうの新聞によりますと、また本日の大臣の御答弁によりますと、都道府県による二割のかさ上げ問題が本ぎまりになったようであります。また市町村における起債の問題も話し合いが自治省との間についたようであります。幸い自治省もおいでになっておるようでありますので、この際大事な問題でありますので、この委員会を通じて明らかにしてもらいたいのですが、要するに農業行政関係に新しく交付基準を追加するということだろうと思うんですね。その中の一つ構造改善が指定されるということになると思う。そのための三十八年度からの分は、一般交付金、三十七年度は特別交付金、こういうことになっている。これはあくまでも都道府県の自主性によるものであり、午前中も指摘があったように、もうすでにかさ上げを実質的に解決した都道府県も若干ある。またしようとしておったところもあった。四十六都道府県が一斉にこれを行なわしめる用意があるか、またそれ以上何も二割に限定しなくても、十一月十五日、本委員会が自民、社会、民社三党の共同決議案を可決しており、その趣旨にも三割ということは書いてございますし、なかなか困難なことだろうとは思いますが、都道府県によってはそれ以上三割でやりたいという都道府県が出た場合にはこれはどうなるのでありますか。二割しか交付基準としては見ないのでありますか。要するに交付基準の改正の内容、その要領というものをこの際明らかにしていただき、それに基づいて、もし三割も三割五分もかさ上げをして本気でやるのだというところに対する取り扱いについては、農林大臣としていかように取り計らわれますか、この点を明らかにしていただきたい。関連して自治省からも、あともう一点ありますから、御答弁願いたい。
  231. 重政誠之

    重政国務大臣 かさ上げを各府県でやっていただいておるところもあるわけでありますが、県によってやったりやらなかったりするということはどうもうまくないので、少なくとも二割程度のかさ上げは各府県ともできるように、そのためにその財源を心配しよう、こういうのが今回のやり方であります。それを府県によりまして二割以上やろう、こういわれるところがあれば、それはいかぬというわけにはいかないと思う。私は、少なくとも二割はやっていただきたい、こういうことの趣旨であろうと思うのです。
  232. 茨木広

    ○茨木説明員 お答え申し上げます。  今大臣からお答えがありましたように、一応交付税の計算の中に織り込むわけでございますから、従って、追って地方交付税法の一部改正案という形で御相談申し上げる際に、農業行政費の中にこれが織り込まれてくるわけであります。交付税の性格からいきまして、交付税法二条にありますように、一応ひもつきではないということになっております。従って県の方において出します際に、やはり県の判断がここに入ってくるわけであります。具体的には、御指摘がありましたように、相当高いものを出しておる県もあります。あるいは範囲もそれぞれ違っているところもあります。一応こちらの方の財源の入れ方の考え方といたしましては、構造改善事業のうち、永久的な効力のあります土地基盤整備事業に対しまして二割分を補助上げすることができるような意味で入れます、とこういうことにはしてあります。しかし交付税の性格がそうでありますから、それより高く出す場合もありましょうし、あるいは範囲をずっと変えて出す場合もありましょうし、この辺のところは県の判断が入ってくると思います。また御指導といたしましては、それぞれこういうふうに入っておるからその方向で善処してもらいたい、こういうことはやはり私の方からも、もちろん農林省の方からもあると思いますけれども、いたすつもりであります。
  233. 足鹿覺

    足鹿委員 それはひもつきではありませんから、もっと熱意を持ってやるところは二割のかさ上げをもっと上にしても別に差しつかえはない、しかし指導はするけれども、やらないところには強制力はないというふうに聞き取れたのですが、それでは二割のかさ上げの精神にもとると思うのです。前者の場合はすでに実績があるのですからよろしいとして、今まで単独県費で一割五分ないし二割のかさ上げをしたところがあるのですからね。そういうところは、今までやっておって今度国がめんどうを見てくれる、もっと元気を出そうというので、その上にかさ上げをしようということになる。そういうものに対する弾力的な取り扱いというものは意義があるわけですから、当然これに対してそう認めていかなければならない。ところが一方、ひもつきではないから出さなくてもいいというようなこともないでしょうが、法律的にはそうなんですね。しかしそういうことをやる都道府県知事もないと思いますけれども、その保証はどうするのですか。自治省と農林省が共同の指導をして、それに従わないというような場合にはどうしますか。
  234. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 これは事実問題でございますけれども、この事業を進めるにあたりまして、われわれも担当官の意見も聞きましたのですが、ぜひともこういうふうな事業推進のために県としても持ちたい、ひいては国からの財源措置も講じてもらいたいという要望も考慮いたしまして、今回このような措置をとったわけでございます。過日この結果につきまして、大体こういうふうなことで来年度は対処したいということを、新部長会議におきましても指示いたしたわけでございますが、各県の意向としましては、事業遂行のためにこのような措置がとれるならば、当然そういうことに向かってやりたい、こういう大方の空気が多かったように思います。
  235. 足鹿覺

    足鹿委員 私は先ほど奥地山村の地域と申しましたが、現地を見ていって、まだ徳川時代と同じような岩の間を上がっていくような通路で、その丘の上へ上がって水田を耕しておるというようなところがたくさんある。農道をやりたいといっても経費がかさんでやれない、負担能力がないというので、みすみす投げておるようなところもあるのです。そういうようなところは、都道府県が特に政策的に重点を入れて、二割のかさ上げのほかに、住民の負担能力の限界を考えてもっと考えるというようなことは、私はあっていいと思うのです。そういうことに対しては弾力的な方法をもって対処されますか。今これからのことですから、いいことに対しては対処されるかどうかということ、それから大体今の齋藤局長の御答弁によって趣旨を逸脱するようなことはない、このために善処する、こういう御所信のほどを承っておきたいと思うのです。
  236. 重政誠之

    重政国務大臣 これはもう今足鹿さんがお述べになりました通りに、私としては善処して参りたい、こう考えております。
  237. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは市町村の起債の問題について、これも農林大臣と自治省に伺っておきたいと思いますが、十一月十五日の決議にうたってあるわけであります。これをお取り上げになって御解決になったことに対しては敬意を表するものでありますが、さてその内容はどういうものかということを、これは新聞で見るわけでありますので、この際明らかにしてもらいたい。「市町村事業主体となり、この事業の一環として実施するもののうち、起債が適当と認められる事業(適債事業)については、一般起債のうち一般単独事業として起債を認める。」ということですね。いま一つは「三十八年度から全国町村の基準財政需要額の算定方式を改正して農業行政費を拡充、農道、土地改良事業などについては普通交付税を交付するというものである。」こういうふうに伝えておるわけであります。そこで、私がここで伺っておきたいのは、それに間違いないか、また敷衍されるならば、文書によってその内容をここに明らかにしていただきたいと思いますが、区画整理などの基盤整備事業の補助残、これの融資が三十八億の三分五厘で間に合わない場合は、市町村公債を出してまかなうということもありましょうし、それは問題ないとして、共同選果場などの近代化施設導入事業については、どのような取り扱いになるのでありますか。その適用の対象事業というものをこの際明らかにして、遺憾なきを期していただきたいと思いますが、適債事業の範囲、その具体的事例、そういうものをこの際明らかにしていただきたい。
  238. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 今お読みになりました中の、前段の方でございますが、実は昨日新聞発表いたしまして、起債については「農業構造改善事業において市町村事業主体となって実施する適債事業に対しては、あらたに一般単独事業債の枠内において、起債の対象とする。」こういうことを発表いたしたわけでございます。そこで今御質問の要点は、適債事業とはいかなる範囲をいうのであるか、こういうことでございます。構造改善事業の中には、今お話になりましたように、基盤整備事業があり、あるいは近代化施設事業があるわけでございます。そこでおおむねこれらの事業の主体になるものは、土地改良区とかあるいは農協とかいうものがあろうと思いますが、今までの例でありますと一割ないし二割くらいが市町村事業主体となって行なっておるものもあるわけでございます。そこで市町村事業主体になっておるものは、おおむね公共内色彩の強い事業をやっておるようでございまして、選果場のようなものは農協が経済団体として行なっておるわけでございます。そこで市町村事業主体となるもので、かつ公共的な色彩の強い事業、たとえば今お話になりましたような農道設置といったような事業は、比較的公共性の強いものだとわれわれ考えております。そこで具体的に町村の方から、これは起債の事業としてやりたいという事業がありました際に、今申し上げましたような公共的色彩のあるものを対象にしていきたい。個々のケースにつきましては、なお自治省と個別に今後相談してみたい、かように思っておるのが現段階でございます。
  239. 足鹿覺

    足鹿委員 去年の十一月十五日の決議に至るまでのあの三日間にわたる論議を通じても、大臣もお聞き願ったし、齋藤さんには特にお聞き願ったのですが、十四の決議事項の中にも、公共的性格の問題についての今後のやり方、たとえば下は選果場であっても、上なりその付属の二階なり、あるいは付属の建物が、村の一つの公共的なレジャーセンター、あるいは文化センターあるいは農業その他のセンター的な色彩を持った施設になるといった場合には、これは農協がやるけれども、市町村も協力してやっておるし、そういうふうに一がいにこれは農協が行なう経済事業であるから公共性に乏しいとか、従って適債性がない、あるいは薄い、こういう判断を一がいにとって、ただ単に自治省とそういう弾力のない取り扱いをされるということは、今後適地に適当な創意工夫によって起こされるであろう構造改善の、農業近代化の施策に対して全きを得ない、こういううらみが出てくると思いますので、こういう点については農林大臣において、齋藤君が今言われたような趣旨をもっとよく検討されて、あなたが実際に公共事業の性格を持つものはこれとこれとこれだというふうにきちんと範囲をきめないで、もっと地方住民の要求する、そしてそれがある意味において公共的性格を持つことが若干希薄な面があっても、それらの点は今私が述べたような事例等をよく勘案して、地方の住民の求めておるものにこたえてやる、そういう態度をもって対処されるかどうか。自治省においてもこういう取り扱いについては反対であるか賛成であるか、積極的にそういう線に沿って今後の具体的な内容をきめるかどうか、これを大臣と自治省当局から承っておきたい。
  240. 重政誠之

    重政国務大臣 できるだけ一つ御趣旨に沿って検討いたしてみたいと思います。
  241. 立田清士

    ○立田説明員 ただいま農林大臣からお話がございましたことで尽きていると思いますが、三十八年度の農業構造改善事業に対する地方債の取り扱いについては現在いろいろ検討中でございますので、農林省当局とも御相談して検討していきたいと思います。
  242. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの御言明を一応了といたしまして、さらによく御検討を願いたいと思います。  次に私は、日本の農業構造改善事業、日本農業の体質改善と切り離すことのできない重大な問題で、しかも本年度の予算対策あるいは政府の施策の中で最も手薄く、欠けておるのではないかという一点を指摘してお尋ねしたい。  それは、農業技術等に対する総合対策いかんということであります。一応政府の講じようという施策、並びに過日の農林大臣の本委員会における施政演説及び補足説明には一応盛られております。ただ農業改良助長法の一部を改正し、普及員の任用の問題あるいはその処遇の問題、その機動力の問題等が法的あるいは行政的措置として考えられておるにすぎない。しかし農業年次報告が指摘しておりますように、農業労力の老齢化あるいは婦人化、そして若い者の離農の率というものは著しくふえていく一方であります。そういう中にあって試験研究、農業教育制度、技術者の養成、研修普及の制度、経営担当者またはたらんとする者の養成制度及びその運営について、現在農林大臣が本国会に提案をされておる程度の改良助長法の一部改正のごとき、きわめて枝葉末節な問題をもってこの日本農業の体質を改善し、構造を根本的に切りかえていくというにはおこがましいと私は思うのであります。問題は、どのような制度をつくりましても、最終的にはその農民当事者であり、またその第一線の指導の任に当たる人々の熱意と素質とその能力に帰することは論を待ちません。従って、これに対するところの問題はきわめて重大であるにもかかわらず、われわれのしばしばなる要請に従ってようよう播種から脱穀、収穫調製に至るまでの一貫作業の機械化を目途として機械研究所が発足した程度である、まことに見劣りがいたします。この国会においても、これらの問題は専門的にわたりますために、われわれもきわめて取り組みにくい性格のものである、そして問題がじみである、専門的であるために、十分堀り下げた検討が従来なされておらない。政府もまた、これに対するところの権威ある根本体系を確立して終戦後のあの混乱の中に制定された現在の、今私が指摘したような一連の試験研究、農業教育制度、技術者の養成、研修普及制度等に対する再検討及び最近の農業基本法が実施をされ、他産業との所得格差の拡大に基づく離農による農業経営者の老齢化、婦人化に対する青壮年の教育または再教育制度について、これは文教制度の問題とも関連をして根本的な対策を必要とするのではないか。これは一朝一夕にしてできることではありません。従って、これは最もすみやかに手をつけて、そして一つ制度を運営する人材が、あるいはその指導を受ける農民が車を合わせて進まなかったならば、構造改善農業近代化も空転すると私は思うのでありますが、この点について、農林大臣は農林畑を長いこと歩いておられますからお気づきになっておらないはずはなかろうと思う。この問題に対する所信と、それから近時農協合併促進法が成立をして以来、中央の意向とは別個に、都道府県、市町村の勧奨、指導によって農協合併が促進されつつある。これに対して地方農民の声は、いいことはわかっておる、合併したいのだ、しかし、合併して具体的に自分たちに何の利益をもたらすかということを聞かれるのであります。私も協同組合長の看板を掲げておるものでありますが、過般合併のためにしばしば会合を開いたところ、組合長、合併によってどういう具体的な利益が保証されますか、これであります。金利が下がりますか、購買マージンが下がりますか、販売が有利になりますか、営農の専門的普及について自分たちがほんとうに打ち込んで相談できるような人材を雇ってくれますか、問題はこういうことであります。農民が一番期待しておるのは、その最後の、自分たちが親身になって打ちあけて、相談に乗ってくれるようなそういう専門的知識を身につけ、農村に対するところの熱情を持つ専門指導員をいかにして持ってくるかということであります。ところがいわゆる新しい大学制度によって、旧制の高等農林学校あるいは高等農業学校が大学に切りわかることによって、私の経験によれば、むしろ指導者は素質が後退しておるのではないか、昔の高等農林当時の方がもっと内容もよく、指導能力もあるような人材が養成されたのではないか。いわゆる地方大学の農学部などというものは、今あるというのは名ばかりで、内容はきわめて見劣りが他の部局に比べてあるのではないか。しかも激烈な競争を起こして高専の争奪が行なわれた、また普通工業高校の設立が各地で実施されつつある。高校全入の一環としてけっこうでありますが、どこに農業高校の内容を充実し、ほんとうの農業の経営者たらんとする者を目標にした教育が行なわれておりますか。そういう点を考えますと、私どもが今農協合併等によって求めておる、農民が求めておる、組合員が切実に求めておる人材に対する欲求は満たされない現状ではないか。これに対して、文部当局その他と一体どのような対策を講ぜられんとしておるのでありますか。これはまた堀り下げて改良助長法の際に私はしかと承りたいと思っておりますが、大臣施政演説でありますから、私はこの点がきわめて手薄いと思います。特に農協合併との関係において、この際大臣の所信を明らかにしていただきたい。
  243. 重政誠之

    重政国務大臣 まことに重大な問題を御指摘になったわけであります。実は私もその点に通じておらぬわけではございません。特に当委員会の冒頭において私が述べましたことも、今お述べになりましたように、青壮年の諸君農家諸君自身が農業に対して希望を持てるように実地の教育をすることが必要である、こういうふうに考えてああいうことを申し上げたわけでございまして、これも予算が多ければ多いほどいいというわけのものではないのでありますが、必要なだけの予算は計上して御協賛を得ることになっております。さらに農業普及員の再教育の問題、この資質の向上を進めるということが、私は今お述べになりましたように焦眉の急であると考えまして、これらについても三十八年度においては若干の予算を計上いたしておるわけであります。これと相並んで特に重要なることは、これもお述べになりました非常に多くの人材を擁しておりますところの農事試験場の総動員であります。これを構造改善に心から協力をせしめて、農業の体質を改善するという方向にどうしても持っていかなければならない。しかも優秀な人材がたくさんおるのでありますから、これらを動員することによって、日本農業の体質改善には相当のいい結果をもたらす、これをどうしてもやりたい、私はこういうふうに考えてその方面も実は手をつけておるわけであります。これは後刻事務局長から、現段階において意図してそれぞれ具体的にやっておりますことを、一つお聞き取りを願っておきたいと思うのであります。  協同組合合併促進についてのお話でありますが、これはもうごもっともなことであります。しかし何分にも小さい地域でわずかな人数で協同組合を運営していくということは、もはや私はできぬことであろうと思うのであります。そこでやはり一定の、広範囲でしかも相当の組合員を擁した組合でい、ことが経費の点におきましてもいいのである、こういうふうに私自身も考えておるようなわけであります。さらに、それで有能な指導者組合が雇えるようになれば、これは非常にけっこうなことであります。これは地方々々またその組合々々の経済事情その他によって、そうもいかぬ場合もあろうと思うのでありますが、理想といたしましては、そういう方向にやはり持っていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  244. 足鹿覺

    足鹿委員 私は一例を申し上げておきますが、現在の普及員の問題です。これは私どものような山陰の僻陬の地でありますから、全国には通用しないかもしれないが、冬になりますと、その諸君の詰所にはストーブがない。他の会社なり商店、パチンコ屋にまで冷房、暖房がつくときに、いかに農民の第一線の指導者とはいいながら、たくストーブがない。そこで町村諸君が寄って、三、四千円ずつ金を集めてそうして石炭代を寄付する、そういった実情であります。この人たちは今度鳥取県の場合は普及事務所の整理統合を行ないまして、従来の数をだいぶん減して、一つのところにまとめていくような方向をとっておるようでありますが、しかし一カ所にまとまれば存在の意義を失いますから、やはり一定の受け持ち地域というものがなければならぬ。ところがそういう体たらくである。オートバイを与えて機動力を発揮させるということももちろん必要であり、再教育も必要でありますが、現在のそういう姿を見て、だれが農業指導者なる熱意を持つ者がありますか。私はこういう事例を見て、実際政府構造改善だ、農業近代化だ、いろいろ太鼓だけはたたきますけれども、ほんとうの地についた政策というものが行なわれておらぬ。特に従来の振興予算の中で、技術関係の占める地位というものはきめわて低かった。非常にこの人々には政治性がない、きわめてまじめでじみだ、そういうためにこういうことになっておると思うのであります。これはどこにも通ずることではないかとも思うのでありますが、その一例だけは耳にとどめておいていただいて、そして今後どのような総合対策を確立されるにいたしましても、現在におる人々がそういう状態であってはほんとうに次の農村指導者たらんとする人が続出することはきわめて少ないと思います。いわんや地位の安定しない農業協同組合が大合併をいたしましても、人材は求められませんし、地位はよくならない。従って合併の目的というものもおざなりに終わってしまう。私は大局に立って合併すべきであるという立場をとっておるものでありますけれども、そういう点から考えてみても、いかにも地についておらない。農林省は今度機構改革をされた。振興局が農政局になったって、園芸局を設置されたって、第一線に働いておる人々、また第一線の農民が今のような状態であっては、機構改革を幾らやってもだめであります。そういう点を、これ以上は申し上げませんが、しかとお考えになりまして、農協合併に伴う専門技術員の配置、人材の養成、配置という点についてもあわせて、来たるべき改良助長法の審議に際しては、一応の政府部内における未定稿でもよろしい、一つの所信をこの委員会に提示をせられたいと思います。それをお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。無理でございましょうか。
  245. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お話通り、改良普及員が末端において十分活動することに対して、必ずしも職務内容に応じたような処遇がなかったという点も十分配慮いたしまして、今回の予算にいたしましても、改良普及員に対する職務手当という道を開いたわけであります。また施設の拡充、運営費の増額等につきましても、不充分ではありますけれども一応の措置をとったわけでございます。いずれ改良助長法の審議に際しまして、必要な資料を出したいと考えております。
  246. 足鹿覺

    足鹿委員 これは助長法の審議の際に、専門的にわたりますからさらに掘り下げて申し上げます。  そこで、時間もだいぶなくなって参りましたので、先ほど留保しておりました酪農についての対策でありますが、これは恒久的な対策は短時間では論じられません。従って当面する問題について当委員会は近く参考人等を招致して検討することになっておりますが、その際大臣の御都合等もあろうかと思いますので、一応先ほど述べた点について、安定した生産と公正な取引制度を確定することについては責任を持ってやる、こういう御確言でありましたが、その御確言をもう一ぺん再確認すると同時に、その構想はどうあるべきかという点についてお考えがあれば、この際承っておきたいと思うのであります。と申しますのは、今度の乳価紛争は非常に長期的な様相を示しておると思う。われわれも牛乳生産というものが非常に他の農産物と異なった性格を持つものであり、その季節性が著しいということは認めるものであります。しかもなまものであります。でありますから、これは業者もほんとうに公正な取引制度を確立していかなければ、巨費を投じて施設を興しても、農民が納得しなくて牛乳を売らなければ、これはもう問題になりません。いわんや貿易自由化によってあるいは外貨の割当制度は事実上において解消し、肉類あるいは乳製品あるいは半製品等は続々入ってくる趨勢にある。でありますから共倒れであります。過般の本会議の席上において池田総理は、大企業は困っておるが、労働者や農民はさほど困っておらぬというような意味の答弁をなさいましたが、私は現在の企業家、乳製品メーカーの困り方と酪農農民の困り方というものについては、おのずから限界があると思うのです。これは昨日のある新聞の投資相談室というところに書いてある記事でありますが、有名なメーカーに対する投資をどうかということを聞いておるのであります。公開の新聞紙上においてこういっております。「前期より二割程度の減益はさけられまい。」これは去年の事例からいっておる。しかし、「一割二分配当は維持しよう。なお飲用牛乳の積極的な増強をはかっており、育児用ドライミルクも増産を計画している。三十七年度は二十七億円の設備投資をなしたが、ことしもこの程度投資は続け、事業としては三割前後の成長はみられる。」いいですか、成長株だと言っておるのですよ。ところが事態を見ますと、その牛乳の持つ季節性に便乗すると言うと語弊がありますが、これを逆用いたしまして、冬は消費が伸びないのに、しかも乳量がふえる、夏は消費がふえるのに乳量は比較的ふえない、この逆な関係を利用して、一斉に乳価の植下げを行なわんとした。私どもは非常に遺憾に思っている。そしてこれは農業農民団体が業界にかつて見ざる反古を求め、今後の日本酪農の方向について案ずるのあまり、みずからの力によって交渉を開始したことは御存じの通りであります。整然たる行動をやった。その結果、さきの臨時国会においては、残念ながら石炭中心でありましたので、われわれは審議する機会を失った。大臣にもしばしば御臨席を願い、参考人の招致もきめ、そしてこの問題と取り組もうというときに、国会がああいう不正常化になったために、残念ながら見送った。しかし事態はその後一向解決しておらない。おらないままに、一月から三月にわたっては二十億の滞貨乳製品の買い上げが発表され、しかも各社別にその内容を私どもは仄聞いたしております。だとするならば私はこの際、大臣にもしばしば申し入れを行ないましたが、お互い同士でやることをどうにもしようがないじゃないかとおっしゃいますが、しかしそれは私は違うと思う。滞貨乳製品の買い上げという行政介入がすでに行なわれておる。なぜ乳価については行政介入して悪いのでありますか。それは私は大臣のお言葉とも思えないのであります。局長や事務官僚の言を信じて、この問題に対してあなたが政治的判断を誤られるならば、容易ならぬ事態を招来すると思います。私どもは、この問題については決して紛争の激化することを好みません。事態を円満に収拾し、そして将来において生産取引の正常な姿というものをこの際確立していくことを、われわれは期待しておる。従って今までのような御答弁ではなしに、今申しましたような正常な取引制度とは一体どういうものであるか。五十二円は基準価格であってあとは奨励金だ、奨励金を削ったら政府は何とも言いようがないじゃないかというようなことは、これは大臣、その場限りの御答弁としては通るかもしれませんが、少なくとも日本の農政を担当せられる最高責任者の言としては、酪農民はこれを聞いて何と言っておりますか。農民は総合乳価と受け取っておるのであります。別にこれは奨励金だ、これは基本乳価だという観念ではやっておりません。でありますから、この季節的な特殊な性格を持つものに対して、滞貨乳製品の買い上げが行なわれた以上は、乳価の一斉値下げについても、独禁法に抵触する疑いもあると思います。しかしそれは別の問題といたしましても、この際、先ほどあなたが私に確約されました安定した乳製品、そして公正な取引制度というものを打ち立てられる一つの試金石として、この事態を円満に収拾妥結をせしめられる熱意と御所信を明らかにしていただきたい。あなた方の態度によっては、私どもは今後この問題については断じて引きません。日本における新しい農民の一番期待したこの問題に対しては、現在畜産局が示しておるような、どちらを向いてものを言っておるのか、農民の方を向いてものを言っておるのか、メーカーに気がねしておるような中途半端な態度は絶対に許しません。この問題はわれわれは全力をあげて、いかような困難があってもやりますよ。しかしことさらにわれわれは紛争を好むものではない。そういう良識の上に立って、先般来の臨時国会でしばしばこれを国会で取り上げることを期待した。大臣の善処もしばしば公式、非公式に要望いたした。でありますからこの点についてはしっかりとした態度をこの際明らかにしていただきたい。前向きのあなたの誠意のある態度を、全国の酪農民にこの委員会を通じて明らかにしていただきたいと思います。
  247. 重政誠之

    重政国務大臣 お話はよくわかりました。私も五十二円を維持すればそれでいいのだということを申し上げておるわけではありません。有権的に農林省がやり得るのはおのずから限度があります、こういうことを言うておるわけであります。乳製品の購入につきましては、先ほど申しましたように、これ以上の値下げはさせないということは一応約束をとっております。そうしてできるだけ早い機会に、今まで奨励金を減した分をもとに返すように、こういうことは言っておるわけでありますが、さらに一つよく今のお話の点につきましては具体的に検討をいたしまして善処をいたします。
  248. 足鹿覺

    足鹿委員 湯山委員なり中澤委員の質問についても、しばしば農林大臣は第二次、第三次の値下げ云々ということをおっしゃいますが、先ほども村田局長はそういうことをおっしゃった。買い上げはそれを未然に防止したのだ、こういうことであります。私は今さら責任論をここでひっくり返して、持ち出して、あえて論議するだけやぼではありません。しかし一三%の牛乳の伸びが一五%になるということは、政府が奨励しておるのでありますから、これは喜ぶべきことなんです。あなた方の奨励の成果が上がったことなんです。そうでしょう。また法枠作目に酪農が大きく取り上げられて農民が将来を期待しておるということも、あなた方が太鼓判を押しておればこそでありませんか。にもかかわらず昨年の三月に、いわゆる需要期において品がすれの起きることを考え、粉乳三千トン、バター四百トンの緊急輸入をあなた方は業界要請等を勘案されてやられた、それがそのまま滞貨しておるのであります。先ほど湯山委員が指摘された通りであります。従ってその処分をされることも、学校給食との関係において当然早急に解決されなければならないことであり、三月の学校給食の再開等についても次々と手を打たれておるということは認めないではございません。しかし実際問題としては、そのものが潜在供給力となって市場を圧迫しておる、これはいなめないと思います。要するに需給の見通しというものを政府も十分でなかった、極端に言うならば誤った、それが滞貨として昨年の異常な夏の天候に支配された。しかも私どもが旅行しても、大臣もお気づきでありましょうが、夏には口あたりのいいコーヒー牛乳や色のついたジュースをまぜたものやら、ああいうものの冷たいものを飲んだ方が口あたりがいいから、ややもすれば嗜好はその方に流れていく。白い本来の牛乳はあまり飲めません。口あたりのいいものに流れていく。しかし牛乳の含有率は二〇%か三〇%にすぎないといわれている。しかも利益率、収益率は非常に高い。競ってメーカーはそういうものに重点を置いてやっていく。そのことが回り回って循環をして牛乳そのものの消費不振という結果をもたらしたこともいなめない事実であろうと思う。私は、業界の諸君が利潤はなくてもいいとは言いません。企業である以上利潤はあってよろしいと思う。先ほども新聞記事を引用して言いましたように、一割二分の配当がちゃんと第三者から見ても確約をされ、しかも三十八年度においては新しい施設も行ない得る有望株だといっておる。こういう事態は、酪農民が今日やれるかやれないか、せっかく買った牛を屠場に連れていって売るか売らないかという状態と雲泥の差ではありませんか。これと同一の比重においてものを判断するなどということを畜産局が考えておられるならばさたの限り、酪農振興などということは言ってもらいたくない。何のかんばせがあって畜産局長畜産局長の名をほしいままにしておられますか。今日まで出世街道をたんたんとしてお歩みになったあなたが、この問題に対していかような措置をとって酪農民の期待にこたえられるかこたえられないかということは、あなたの立身出世とは別個な問題でありましょう。しかしあなたがこの事態を見送り、いたずらに酪農民の苦境と一割二分の利益率を上げるものとを同一のはかりではかっていくような畜産政策を事務当局として考え、これを大臣に進言をされて恥じないようなことがありますならば、われわれはあなたの立身出世とは別に強い決意をもって対処したいと思う。この点について農林大臣に、私は、あらためて善処するというお言葉でありますからこれ以上は申し上げませんが、あなたも国務を担当され、長い間農林省の各部局を掌握してこられました。このような事態というものの価値判断を誤っていずこに日本の酪農政策ありやと言いたい。もっと前向きの、ほんとうにこの事態を円満に収拾するためにすみやかに対策を講じられ、その内容については大臣の判断によって、私どもの言うことが間違いであるならば、別な機会ででも駁論を聞きましょう。私どもの言っていることに率直に耳を傾けられて、それがほんとうに一つの方向であるとお考えになりますならば、所管大臣としての政治的裁断によって事態を処理してもらいたい。つまり具体的に言いますならば、第二次値下げ、第三次値下げの問題は別として——さようなことは私どもはうわさには仄聞をしておりますけれども、まだ何ら具体的なものとして現われたものではありません。従って利益が多いか少ないかというメーカーと違って、生きるか死ぬかという、借金をして牛を買い、畜舎をつくり、しかも近くえさ代も上がるというようなこの前途暗たんたる酪農民に対して、あなたが誠意を傾けた御言明をこの際され、それを具体的に実行されることを業界に向かってもじゅんじゅんとして説得をされて、まずこの事態を収拾をする。面目にこだわらず事態を収拾する。そういうことについていま一応御善処を願いたい。確たる御所信を御発表願いたい。このことをお願い申し上げます。
  249. 長谷川四郎

    長谷川委員長 大臣の御答弁といっても、善処するより仕方がないと思います。ただいまお聞きの通りであって、いかに深刻であるかということは、委員長の私としても非常に深くこれを憂慮しております。どうかこれに対しては御善処を願いたいと思います。
  250. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは、大体重大な問題はその通りでありますので、委員長からも御助言がありますし、先ほどの御言明を拝承しましたので、しばらく様子を見させていただき、早急に御善処をいただきたいと思います。  最後に、これは他の同僚委員によって尽きておると思いますが、一点だけ、宅地確保の対策が審議会の答申によって出たそうでありますが、農林省はこれをどういうふうに検討しておるか。たとえば、宅地とは人間の住む家だけのことをいうのか、工場用地も含むのか、その付帯設備も含むのか、こういうことによって農地法の精神が土地区画整理法によって全くじゅうりんされたと同じような結果が起きないために、農林省はこの宅地確保の法案が準備される中にあって、農地法との調整また農地所有者、換言すれば農民の利益を不当に制限をされたり侵害をされないための手配はいかようにしておられますか。このことを一点お尋ねをしておきたい。大臣としてのお考えがあれば一つ承っておきたいと思います。  それから、ついででありますので、安井委員からもお尋ねがありました食管制度改革の新調査会の問題であります。これはやるのだということだそうでありますが、おやりになることは大臣の御意図でありますし、われわれと考え方を異にしておる面も多いと思いますが、私はこの前も指摘をいたしました。去年の八月末の政府の手持ち米は八十万千八百三十九トンである。この中から政府が主食用、工業用に売り出したものが五十三万三千二百二十二トンである。差引八−九月におけるところの政府の純手持ち米は二十六万八千六百十七トンであり、新米の食い込み五万六千九百三十八トンと、政府はわれわれに去年の暮れ説明をいたしました。このような逼迫した食糧事情があっても、何ら世の中は騒々しくなかった。つまり言いかえるならば、私どもの地域にもある港町には五日分ぐらいしか米がなかった時代がある。去年の同期と比べて、長官、どういう状態でありますか。なぜこのような事態が起きたか。これは十二月一日から消費者米価の値上げが行なわれることを仄聞をし、一部の配給業者が買いだめをした傾向は見のがせないと思うのですが、それにしてみても、米そのものの需要が増大をしたことをわれわれは見のがすことはできないと思う。米の需要は減退どころか、増大しておる。食管制度の改正の趣旨というものは、食管制度のあり方というものについては、需給の見通しとの関係なしに、いたずらにこれをいじくり回すことは、機構をいじくらんがための施策といわざるを得ない。必要のないところにある特定の意図をもってやるというがごときことが許されてはならぬと思います。そういう意味から本年の予算にしてみましても、消費者米価の値上げによって百七十億は、政府は負担を免れておる。その免れたものは、一般の農林予算に具体的にどう使われておりますか。総体予算において占める農林予算の地位は、冒頭に述べましたが、その比例の多きことばかりを私どもは期待するものではありません。問題はその中身でありますが、いずれにいたしましても、両々相待つことは必要でありますが、少なくとも消費者に転嫁された百七十億の繰り入れ減というものは、一般農業政策にどのように生かされておりますか。そういうものにひもをつけてこれとこれにいくのだなんということはできぬでありましょうが、少なくとも一国の農林大臣としては、そういう点もお考えがあってしかるべきであろうと思う。要するに、私の言いたいのは、現在は、米の需要は、近き将来においては大きな変化はないのではないか、この事態を続けていくのではないか。従ってそういう需給の見通しに立つ限りにおいては、食管制度を改変することのために、何を好んで調査会を設けられるか。私が冒頭指摘したように、ちょうど空気や水のように、国民の生活の中にしみ込み、全く消化され、同化されておる姿になっているのが今日の食糧制度ではありませんか。それをさらに一部の御用学者や、一部の評論家の言に迷ってこれを改変するがごときは、そのための意図でありますならば、私どもは農林大臣の反省を求めたい。少なくとも、この食管制度改革の新調査会の意図は何であるか。要するに、当初は低米価による収奪的性格を持っておったものが、時代の推移とともに支持価格的な性格を、生産費所得補償方式の採用によって顕著に現わしてきた、そして国庫の負担が増額をした、そういう面からのみ事態をとらえて、赤字でない赤字の幻影におびえて、この問題を処理するがごときことがあってはならぬと私は思うものであります。そういう点について、所見の相違は相違として、われわれが今日まで食管制度と取り組んできたということについては、きわめて真剣な態度で取り組んできたと思う。先ほどの安井委員の質問には、今国会に提案をするのだ、こういう御趣旨であったそうであります。私はちょっと昼食のために退出しておりましたので、御言明を聞きそこねましたが、あらためて、私が今述べたような立場から、この問題に対して、この制度調査会の企図は何か、特に専任調査官や企画官を置いて独自の事務局を置くというがごときことは、これは農政審議会にも事務局はないではありませんか。かかし法案とあだ名をとった農政審議会に、グリーン・レポートもグリーン・プランも相談もしません、そして短時間でもってうのみにさせる。日本の農業基本施策の最高権威とみずからいう審議会をそのように軽視をし、政府が意図するこういう問題については独自の事務局を置くに至っては、われわれは納得がいきません。審議会も数ありますが、ほとんど空名をほしいままにしておる傾向が強いのであります。その意図は何か、一体何を目標にしておやりになるのか。私が今述べたような功罪を考え、若干の矛盾があれば、その矛盾は、性格を変えない範囲において、もし間違った点があるならば、これは識者の意見をよく聞き、改葬することにはわれわれはやぶさかではございませんが、本質をたがえるような意図を持つこの調査会を設置されることに対しては承服できません。この点について農林大臣の御所信を承っておきたいと思います。
  251. 任田新治

    任田政府委員 先ほど足鹿先生のおっしゃいました転用の問題でございますが、御承知通り、宅地といいますか住宅問題が非常にやかましいことでもございますし、特に大都会に対して人口が集中して参るということになっておりまして、この点で、われわれといたしましても、これが農地の転用にいくわけでありますので、非常に苦慮いたしておるわけでございます。しかしながら、先ほどのお話の問題ですが、工場用地の問題と宅地の問題とはおのずから別個に考えておるわけなのであります。宅地につきましては、土地そのものの上に住宅が建つ、しかも計画的であり、しかも相当の人口の収容力を持った計画であればこれはやむを得ないというふうに考えております。しかしながら、工場につきましてはこれは個々の問題でございまして、その内容なり将来の国民経済の上にどのように寄与するかということを考えながら、そのつど検討いたしておるわけであります。今度の宅地制度の問題につきましては、基本的には、関係の各省が集まりまして、どのような計画的な宅地の建設をやるかということにつきまして、それぞれの各省の立場から今後協議をいたしまして、その地区々々の総合的な考え方から検討していかなければならぬものだと考えております。
  252. 重政誠之

    重政国務大臣 ただいまいろいろお話しになりました第一点は予算の問題、予算が、どうも総体の伸びが農林予算は少ないというのでおしかりを受けたわけでありますが、ただいまは金が多いばかりが能じゃない、その内容が問題だという御意見を拝聴いたしまして、これはまことにわが意を得たわけであります。食管に一般会計から繰入れられておりましたのは、これは大ざっぱなことでありますが、昭和三十七年度におきましてはおそらく七百億前後のものであろうと思うのです。ところが三十八年度におきましては五百億前後のものになりますから、そこでざっと二百億というものが食管に繰り入れる額が減るわけです。それと、それから災害予算というものが百数十億であったと思いますが、とにかく減る。三百億少々よけいのものを生めて、そうして昨年つまり昭和三十七年の予算額より若干伸びておるのでありますから、実質はそういうような三百億前後のものは、これは政策予算に振り当ててある、こういうふうに御了承をいただきたいと思うのであります。  それから、第二の食糧管理制度についての調査会を何か意図を持ってやっておるのではないかというふうな、少し勘ぐっておられるのではないかと思うのですが、勘ぐられておるとすれば、私の不徳のいたすところでありますが、私はこういうふうに考えておる。御承知通りに松村懇談会であれだけ長い間検討をせられまして、そうしてその結論は三本建の御答申を得たのです。それは、委員諸公の大部分は何とかこの制度改善をしなければならぬということは、これはもう最大公約数であったと私は思うのであります。ところが、改善するについては、あるいは配給部面だけをしたらいいじゃないかという意見の方もあれば、あるいはその他の統制の部分に手を加えなければいかぬという御意見もある、いろいろの御意見がある。そこで私はその答申を得て善処をいたしたいと考えておったのでありますが、ただいま足鹿さんも声を大にしてこの点を力説しておられるほど、これはきわめて重大な問題でありますから、私も簡単に処理をするわけに参りません。そこで正式の調査会をつくって、前の松村懇談会の御答申も参考にしてもらって、そしていろいろお述べになりました需給の状態、その他のいろいろな状態も十分に検討をしていただいて、しかる後に一つ意見をまとめて御答申を得たい。これはおそらく私がやっておる間には答申は出てこぬのではないかと思うのでありますが、しかしこれは農林大臣がかわるからかわらぬからという問題ではない、農村にとってもきわめて重大な問題である。事食糧に関することであり、しかもわが国の農業経営の本質に触れる問題でありますからきわめて重大でありますので、十分一つ委員諸公に御検討を願って、そうしてその結論を得て農林大臣が処理をせられたらよかろう、こういうふうに考えて、この調査会をつくったらどうかというふうに考えておるわけでありますから、あまり勘ぐって曲がってお考えをいただかないように、大体私は正直者でありますから、額面通り一つ考えをいただきたいと思います。
  253. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの御答弁は、私がだいぶ根性が曲がっておるようにおっしゃいますが、私はそういう勘ぐった言い方ではなしに、従来の経過から見まして、そういう世論がある。また一方においては、御用学者と言うと語弊がありますが、御用学者、御用評論家とおぼしき人々が盛んにぶつ、書く、そういうしり馬に乗ってはいけない、そういう気持を持ってこの制度をほんとうに国民のものとして堅持し、悪い点はこれを改善していく、そしてほんとうの国民のものとしてこれを定着させていく、それを憂慮したための発言でありまして、別にあなたの人格を、何もおやりになることを勘ぐって、邪推で申し上げておるのではない。河野構想に端を発し、今日までの経過を見て、憂慮するのあまり申し上げておるということを御了承願っておきたい。先ほど申し上げたのは、言葉じりをとらえるわけではありませんが、量と質は両方必要であるということです、予算の問題は。  それから大澤さん、あなたはにこにこしておられるが、さっき言った資料をこの次の機会までに出していただきたい。すなわち昨年同期と今までの八、九月の端境期における政府手持ち米の推移と比較表をお知らせを願いたい。  それから、これも食管問題等について重大な関連のあるものでありますが、需給の見通しの問題、これを資料で一ついただきましょう。特に私は十二月一日の消費者米価の値上げを予想して、どうも一部には買い集めがあったのではないかというふうに、これは推定でありますが、そうでなければあのような逼迫した事態というものが起きるはずはないじゃないかという気もしておりますが、今までの比較をしてみないと独断できません。  なお、任田農地局長の御答弁はきわめて事務的である。その御趣旨はわかりますが、これは土地区画整理法が従来の農地法の精神をいかにじゅうりんしたか、これは出れば、所管が当委員会ではありません、従って委員をかわっていきましても、まことに困るのです。案外簡単に片づけられる。これは特にあなたの私淑しておられる河野前農林大臣みずからの御着想でありますから、あなたと河野さんとの間にあってよく話し合いをなさることは易々たることであろうと思いますので、私はさっき指摘したような事態が起こらないように、事前によく御調整をわずらわしておきたい。御善処をお願いいたします。  最後に、せっかく臼井学校給食課長が文部省からおいでになっておりますので、これは予算委員会等で大臣に聞くのがあたりまえだと思いますが、農林大臣にもあわせてお聞き取りを願いたい。  学校給食用の脱脂粉乳の購入費の補助が三十四億千四百八十八万円ときまった。粉乳の量は、八万五千三百七十二トン、これは内地の生乳に換算をいたしますと、驚くなかれ三百万石分であります。政策としては、安くて量のある外国の脱脂粉乳を入れるということは、そのこと自体はわかります。自体はわかりますが、結果としては、内地における生産量の四分の一にも匹敵するような生乳換算の脱脂粉乳を入れてくること自体が、あなた方はどこの国の子供に脱脂粉乳——ミルクさえ飲ませればいいというお考えかもしれませんが、しかし結果としては、アメリカのだぶついた乳製品の救済になり、アメリカの農民の酪農振興に通ずる。なぜあなた方としてはもっと——この前もこの委員会へ体育局長がおいでになって、そして当時の農林大臣河野さんにも私は質疑をし、他の委員からも聞いておる。なぜもっとこの学校給食というものを内地の、先ほどからお聞きのように、酪農は伸びつつある、そして需要不振だ、こういう観点から値下げ問題で紛争が起きておる。そういう中にあっても、学校給食というものは事務的なものではありません。もっと政策的な、そして国産品愛用のレッテルをまともに実行する中身を私どもは期待したい。安くて量さえあればいいのだ、それだけでは——これは日本の文部省でありますから、日本人のかわいいわれわれの子供にわれわれがつくった乳や乳製品を飲ましたり食わしたりするという建前に立って事態を検討されたかどうか、農林省とはこの問題についてどのような打ち合わせをされ、将来この傾向をどの方向へ持っていこうとしておられるか。今までもっとも間違った点もあった。残ったものを学校給食に回すごみ捨て場のようなやり方をしておった。これは畜産局も責任がありますよ。確かに何か学校の子供に残りものを食わす、飲ますというような印象を与えるようなことは、私どもの未来を背負う子供たちに申しわけないと思う。もっと制度的に、恒常的にやらなければならぬと思う。畜産局長にもお聞き及び願いたいのですが、あなたも外国へおいでになったでしょう。日本は酒やビールを一升びんや四合びんで飲ますが、一リットルびん、二リットルびんで牛乳を飲ませますか、そんなことやっていないでしょう。透明びんの一合びんでなければ飲んではいけないという法律をつくって、そして何ぼ言ってもこれを直さない。しょうゆびんと同じびんで牛乳を学校で配ってもいいのだし、一斗カンで熱気消毒をしたものを学校に冷蔵庫さえあれば安く飲ませる、都会で十円牛乳が一合びんに入れて可能なんです。工夫と創意と努力があればもっとその問題は解決がつくのです。それをやろうとしない。何でも安いもの、何でもアメリカさんのものさえ入れればいいように思う、そういうことは私は人つくりをされる文部省としてあるまじき態度ではないかと思うのです。事がことし大きく前進しようという段階にありますので、課長さんに大へん言いたいことを言ったようでありますが、こういう議論があったということについて、あなたの当該の問題については、元気のいい文部大臣に御報告願いたいし、御答弁を願うと同時に、この問題について、学校給食を、国産乳製品や国産の生乳をどう制度的に恒常化していくかということについて、農林大臣の御所信を明らかにしていただきまして、私の質疑を終わりたいと思います。
  254. 重政誠之

    重政国務大臣 まことにごもっともなことであります。学校給食には優先的に内地産の酪農民のつくった牛乳を原料とした内地産の粉乳を使ってもらうということにぜひやらなければならぬ、こう考えております。
  255. 臼井亨一

    ○臼井説明員 前からたびたび国産品愛用という線で制度的によく考えろというお話をいただきまして、文部省といたしましては、まことになまぬるいことではございますけれども、とにかくなま牛乳のほかに、国内産の小麦もあります、またブドウ糖もあります、また水産カン詰もございます。そういう農産物すべて……。(「長い説明は要らない、要領よく言えばいいのだ」と呼ぶ者あり)それで脱脂粉乳につきましては、先ほど畜産局長が御答弁になりましたように、文部省といたしましてもこれを飲むことにつきまして十分考えなければいけない。ただ値段が五、六倍いたします。高うございますので、その点をどういうふうに処理していただけますか、そういう点につきましてなお検討中でございますけれども価格の問題がある程度解決いたしますれば、できるだけ国産品を使いたい、そういうふうに考えますし、またわれわれとしても打ち合わせ検討中でございます。
  256. 中澤茂一

    中澤委員 大澤さん、資料の要求をいたします。  どうもこの問題、初めて八月の在庫量と八月の配給量、そして九月末のものを出していただいたら二十七万トン、十五日分しか政府の手持ちがないのだが——あなたはこうやるけれどもこういう資料を出している。それはいい、どうせあとで議論するから……。  そこで今までの大体九月末の端境期の在庫数量、三十年以降、大体どのくらいあったか。ただし新米を除く、古米で食ってきたのが、九月末で何トンあるか。  それから消費が非常に増大しているのだが、この傾向はどういうところから出ておるか。それは場合によれば消費地帯の分布図、たとえばずっと増大した特殊な地帯があればそういう地帯、そういうものを一つ資料として出してもらいたい。
  257. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 承知いたしました。
  258. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次会は来たる五日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十三分散会