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1963-06-14 第43回国会 衆議院 内閣委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月十四日(金曜日)    午前十一時七分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 伊能繁次郎君 理事 岡崎 英城君    理事 藤原 節夫君 理事 宮澤 胤勇者    理事 石橋 政嗣君 理事 石山 權作君    理事 山内  広君       内海 安吉君    小笠 公韶君       草野一郎平君    纐纈 彌三君       笹本 一雄君    辻  寛一君       保科善四郎君    前田 正男君       緒方 孝男君    田口 誠治君       受田 新吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中垣 國男君  出席政府委員         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君         法務事務官         (入国管理局         長)      小川清四郎君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁警備局         外事課長)   土田 国保君         検     事         (大臣官房人事         課長)     神谷 尚男君         検     事         (大臣官房経理         部営繕課長)  住吉 君彦君         検     事         (刑事局刑事課         長)      羽山 忠弘君         法務事務官         (矯正局保安課         長)      須田 寿雄君         大蔵事務官         (管財局国有財         産第一課長)  宮川 国生君         専  門  員 加藤 重喜君     ――――――――――――― 六月十四日  委員西村関一辞任につき、その補欠として勝  間田清一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員勝間田清一辞任につき、その補欠として  西村関一君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務省設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第四〇号)      ――――◇―――――
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  法務省設置法等の一部を改正する法律案を議題として質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田口誠治君。
  3. 田口誠治

    田口(誠)委員 法務省設置法の改正に関連して法務省当局に対して一言ただして、内容的なものに入っていきたいと思います。  それで、さきの地方統一選挙において、東京都、千葉というところにおいて非常に悪質な違反が出ておるということについては、もういまごろお尋ねするまでもないことで、今日まで多くの委員国会審議の中でこれを大きく取り上げ、明確にされておるところであります。そこで、その内容を見ますると、特に東京都の知事選の場合には、従来選挙のときにありました違反行為の供応、買収というようなものでなくて、それもありまするが、新しくにせ証紙を偽造して、法定外選挙ポスターに貼付をし、これを都内に張りめぐらした、さらには、泡沫候補を立候補させてはがきを買収をし、これを利用して特定候補の当選のために努力をした、こういうようなきわめて内容が悪らつで、しかもこれが計画的になされており、また指導されておる。御案内のとおり、首謀者といわれておるのが、自民党組織部実力者といわれておる松崎氏を初めとして、組織的なこうした計画がなされておるという点については、法治国である日本国民としては非常に遺憾な点でもあるし、これは単に日本国民ばかりでなく、全世界に対しても重大な恥を犯し大きな汚点を残したということについては、この点は国民もまた当局も、政府も認めておるところであって、私も非常に遺憾に思っておるような次第です。  そこで、私は法務大臣にお伺いいたしたいと思いまするが、今日までの国会における審議の中で、法務大臣でも自治大臣でも、この問題はきわめて遺憾であるから、いかなるところからの圧力にも屈するというようなことばなく、正しく調査をして厳正公平な結論を出したいという意味答弁が今日までなされてきておるわけです。このことにつきましては、私は最も当然な心がまえであり、答弁であったと思うのでございまするが、この点については国民も大きく期待をして、そうして徹底的に調査を進めて、公平な結論を出してもらいたいという要望国民の中にはみなぎっておるわけなんです。そういう段階において、このたび疑念国民に抱かせることが一つできたわけです。そのことは、政府与党実力者であり、また大もの国務大臣秘弁官をつとめていた根本米太郎氏が六月の八日に突然逮捕をされた。こういう奇々怪々なことがあるわけなんでございまするが、私が特にこのことが奇々怪々であるということを申し上げるのは、八日の日に逮捕された前日の六月の七日に本人は総理府に辞職願いを出して辞職をしておる、こういう事実があるわけです。  それで、この点は、国民検察当局のどんな圧力にも屈せず公平に厳正にこれを調べ上げて結論を出したいという今日までの気持ちと、あるいは口外に出されておる、言質に大きく信頼をしておったのですけれども、少なくとも国務大臣の秘書をつとめておった人が逮捕されて、しかも逮捕される前日に辞職願いを出したというこのことは、これはこの逮捕するまでに地検特別捜査本部、あるいは政府とが始終経過連絡し合うということなくしてはできない、やはり捜査内容に入る不必要なことまで連絡をし合って、そうしてこういうような辞職処置を前もってとらして逮捕したのではないか、こういうことを国民は非常に疑念を持って見ておるわけなんです。したがって、この点から、今日まで法務大臣がりっぱに答弁されておることが、この事実において国民に大きな疑惑を生じておるのだから、この点についてひとつできる限りこまかく説明をしていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  4. 中垣國男

    中垣国務大臣 お答えいたします。  政府は、かねて統一地方選挙につきましては、民主政治の基盤を築くものであるという見地に立ちまして、自由かつ公正な立場選挙が行なわれるような啓蒙運動を展開してまいりまして、特にかつてない予備費まで支出いたしまして運動を推進してまいったのでありますが、それにもかかわりませず、このたびの東京都知事選挙並び千葉県知事選挙等におきまして御指摘のような悪質な事犯が発生しましたことは、まことに遺憾に存じます。まことに残念に思っております。  ただいまお尋ねになりました、川島国務大臣の元秘書官でありました根本君が逮捕される際に、捜査本部政府と何らかの連絡があったのではないかという御疑念を持っておられるようでありますが、なるほどそういうお疑いを持たれるような条件が整っておるようでありますが、これは全くの偶然の一致であります。それで、彼は八日に逮捕になったのでありますけれども、官房長官の手元で辞表を受理したというのは七日になっておるようであります。根本君は五月の二十日の日に調査を受けまして以来、このことが国会の、たとえば参議院の予算委員会、衆議院の予算委員会等でも川島国務大臣並びに私等に質問が出まして、川島さんはそのときにこういうことを言っておられます。ちょっと川島さんの言われたのを速記録で読みますと、根本君は、五月の二十月、検察庁の取り調べを受け、そのことが新聞にも報道されたため、私に迷惑をかけたからという理由で、去る七日辞表を提出したと答弁されておるのであります。ところが、その八日の日に逮捕になりましたので、そういう日にちの順序からいいますと、あるいは半前に根本君は逮捕を察知したのではないかというふうにお疑いを持たれたと思うのでありますが、これらのことが外部に漏れるはずは絶対にありません。私は、法務大臣といたしまして、もちろん国会でこれほどの輪講がかわされ、議員各位に関心の持たれておる問題でありますから、私も実は内容について、つとめて詳細に知ろうと、そういう意欲を持っておりますけれども、法務大臣といえどもなかなかそういう捜査の途中におきましては、よほどのことがなければ知る機会がないのでありまして、定期的に検察庁から一定の報告を受け取っておりますが、この根本君の逮捕につきましては、私も全然これを知らなかったのでございまして、これはまことに偶然の一致であるということを信じていただきたいと思います。  これらの捜査につきましては、たびたび申し上げましたけれども、ほんとうに不偏不党、厳正公平な立場に立ちまして、十分徹底的な調査をして国民の前に真相を明らかにしたい、こういう考え方は終始一貫変わりないのでございまして、私は、いまだだれからもこの問題について私に圧力をかけた人がありませんし、またこれらの問題について手心を加えよといったような、そういう陳情をしてきた人はありません。このような悪質な犯罪に対しましては、できるだけ捜査を徹底的にやりまして、真相を明らかにする。これが私に課せられた責任であると思っておるのでございまして、ただいまのような半前に何らかの形で政府捜査当局とが連絡を持っておったのではないかということは、誤解でございますから、どうか以上のような理由をもちまして、ひとつ御了承をいただきたいと存じます。
  5. 田口誠治

    田口(誠)委員 地検特別捜査本部政府とは、こういう事件進捗状況というものは連絡をし合っているのでしょう。
  6. 中垣國男

    中垣国務大臣 そういうことは絶対にございません。もしそういう必要がありますれば、法務大臣を通しまして、政府報告する事項があればするわけでございますが、それを、たとえば地検特捜部長あるいは次席検事検事正等が、直接政府連絡をとるというようなことは断じてございません。そういう組織にはなっておらないのでございまして、私に詳報が参りますときには、検事総長の名前で法務大臣に提出されます。そして政府報告する必要があれば、私の手もとから報告をするのでありますが、いままでの事例といたしまして、選挙違反等につきまして、事前政府法務大臣が詳細を報告するというようなことはございません。また、そのようなことを閣議におきましても一ぺんも行なったことはございません。
  7. 田口誠治

    田口(誠)委員 政府という表現でお伺いをいたしたので、御答弁がちょっと私の聞こうとすることとはずれたように思いますが、いずれにいたしましても、こういう大きな問題を捜査する捜査本部としては、直接総体的に関係を持っておられる法務大臣には、進捗状況というようなものは始終報告をしたり、そのときに法務大臣意見等も出されると思うんですが、そういうことはあるでしょう。
  8. 中垣國男

    中垣国務大臣 お答えいたします。  御承知のとおりに、たとえば国会期間中に議員調査捜査する必要がある場合には、当然捜査本部から私に対しましてそれらの詳細な経過報告がありまして、そして法務大臣はその旨を国会議長に伝える必要があります。その他のことにつきましては、たとえ現職の大臣、政務次官でありましょうとも、特別に総理大臣に対して法務大臣がそういう報告をする義務はございません。好意的に、大臣等捜査調査する必要がある場合に事前に打ち合わせをすることはあり得るかもしれませんが、ただいままでのところそういうことはまだ起きておりません。でありますから、今後の問題は、私もしろうとでありまして経験したことがありませんが、これは常識的に見まして、国務大臣等捜査調査逮捕等につきまして、時の総理大臣に何ら一言のあいさつもせずに、法務大臣考え方だけで行なうということは、これはあり得ないと思います。しかしながら、このたびの悪質事犯に対しましては、いまだ政府が全体として検討する段階には参っておりませんので、私もまだその必要がないと思いまして、今日に至るまで一ぺんも詳細の報告をいたしたことはございません。といいますのは、捜査が済みまして起訴された者につきまして、ほとんど新聞その他が詳細に伝えておりますし、現に身柄を拘束して捜査中のものにつきましては、これからいろいろ展開する、だろうと思うのでありますが、私も実はその内容等につきまして確たるものを知っていないわけであります。
  9. 田口誠治

    田口(誠)委員 御答弁範囲内では徐々にわかっていっておりますが、そうしますると、大臣国会審議の中で、一番最初に私が申し上げましたように、非常に遺憾な事件である、これはだれから圧力を受けるというようなことがあっても排除をして、厳正・公平に結論を出していきたい、こういう答弁がなされておる限り、やはり捜査本部に対しても、大臣としてそうした意思表示は当然なさっておると思うのです。進捗状況を逐一報告を受ける受けないということについては、いま大臣のお話しのような経過になっておるかもわかりませんけれども、やはり法務大臣として直接捜査本部に対して指導されるという面はあろうと思いまするし、そういうような時期に、そういうような機会をねらって、実はこういうことがありますがということは、話のついでに出る場合があるわけなんですが、そうしたことから、こういう問題がどうもくさいのではないか、こういうように国民は思っておるのでございまするから、その点をもう少し明確にしていただきたいと思います。
  10. 中垣國男

    中垣国務大臣 御承知のとおりに、検察行政につきましては、私といたしましては検事総長を信頼いたしまして、これに一切をゆだねておるわけでございます。私は、まだ今日に至るまで、この選挙事犯捜査が開始されましてから検事正次席検事特捜部長等に一ぺんもお会いしたことさえございません。たとえば法務大臣室においてとか、あるいはパーティその他の席におきましてもそうでありますが、一ぺんも実は会ったことさえございません。ただ、そういう問題の連絡等はどういうふうに行なわれるかといいますと、特捜部の人手が非常に足りないということで、捜査本部を拡大する必要が先般起きまして、検事増員いたし、検察事務官増員をいたしたことがあります。そういう折衝は法務大臣の権限の中にありますのが、そういう場合には、検察庁から刑事局長にそういうことを申し入れてまいりまして、刑事局長から私に、捜査本部から検事増員検察事務官増員についての御了承をいただきたいという申し入れがありますから、それは余裕のある限りつとめて増員をして、そうしてつとめて早く真相を明らかにするほうがいいということで賛成をいたしました。そういう事案が一つだけあります。その他のことにつきましては、まことにふしぎに思われるかもしれませんが、いまだに特捜部長、あるいは東京地検検事正から事件詳報が書類にして参ったということは一ぺんもございません。しかしながら、国会質問が行なわれますそのたびに、私は詳細がわかりませんので、田口先生からこういう質問が行なわれると思うから、この問題はどうなっておるかということは、私は刑事局長を通しまして検察庁から聞いておるということでございますので、国民疑惑を持たれるような、そういうことは私の行動範囲の中にないわけでございます。  それから最後に御指摘いただきましたように、この問題につきましては、圧力等は今後ともないと思いますけれども、厳正公平な態度で、終始一貫徹底的な捜査をいたしまして、国民の前に真相を明らかにすることは私の任務でありますから、必ず行ないます。
  11. 田口誠治

    田口(誠)委員 検察当局に対して圧力をかけるとか、また、検察当局自主性を失わせるというようなことは今の憲法下においてはあまりなされてはならないし、またなされてもおらないと思いますけれども、やはり大臣逮捕等の場合には、ただいま御答弁のありましたように、法務大臣のほうへ話がある。法務大臣がそれを許可するかしないかということについても、検討をされて結論を出される。このことについては、吉田内閣のときに非常に遺憾な結果を生んで、日本民主政治、あるいはそうした捜査の上において大きな汚点を残しておるわけなんですが、こういうことが、その当時はございましたが、今度の問題については、国民が非常に還憾に思っており、また、法務大臣も、この点についてはただいま御答弁のありましたように、検事の補充もして、なるべく早く公平に結論を出したいという手配がされておるようでありますけれども、先ほど私が質問を申しました、八日に逮捕した、七日に辞表を出しておるというこのことは、直接法務大臣検事総長なり、そうした関係者に会ったことばないということでありますけれども、この点の疑惑国民の中からすっきりぬぐい去るということは、今後の結論の出し方いかんによって結論が出されると思うのです。したがって、いま答弁のありましたような範囲内においての考え方において、これをなるべく敏速に、公平に、厳正結論を出していくということになれば、それが国民の期待しておるところであって、絶対にこの結論の出るまでは、どんなところからの要望圧力がありましてもこれははねのけて、そうして一片の疑惑国民に残さないようにしてもらわなければ、将来の日本選挙に悪い影響を及ぼすと思いますので、この機会にしっかりとした態度で公平な結論を出してもらいたい、この点を私は強く要望申し上げておきます。ただいま法務大臣としての答弁がありましたし、法務大臣としての今日までの経緯というのはわかりましたけれども、何といっても八日に逮捕されて七日に辞職をしているということは、少なくとも国務大臣秘書官逮捕するということになりますと、相当にネタがかたまっておらなければなかなかそういう行動には出ないと思うのです。そういうようなきわに立ったときの対策というのは、従来の経過からいきますと、国民疑惑を生じておるようなことがどこかにあったのじゃないかということで、私はいまだに頭の中ですっきりしないわけでございますが、きょうはほかの方もお見えになりませんし、法務大臣を相手としての質問でございますから、これ以上質問を突っ込んでいきましても、これは他の方に出席をしていただくという方法よりないと思いますので、この議案を審議する範囲内においての質問では、その点を強く要望しておきたいと思います。  それから、似たようなことでございますが、御案内のように、昨日善枝さん事件石川勾留延期と決定になったわけですが、新聞等で見ますと、その他の事件関係をしておる面はややかたまりつつあるようでございますけれども、しかし、この点についても、明確に起訴するかどうかという点については――起訴するかどうかということよりも、裁判の結果どうなるかということについての自信がないように新聞等でも響いてあるわけであります。それから善枝さんの恐喝未遂についても、今日まで二十一日間一生懸命に捜査を進めて尋問をいたしておりますけれども、何らこれがきめ手というようなものがないようでございます。そうなりますと、当然こういう誘拐魔とか、誘拐したあげく殺害したというような極悪犯人は徹底的に調べて、こういう人にはそれ相当の必要な処刑をすることは好ましいと思いますけれども、万が一間違っておった場合にどうなるかといえば、昨日私のほうの緒方先生から九州の実例をとって申し上げ、また石田老人のあの最終的な結論からも言及をされたわけですが、実際に無実であるということになりますと、非常にこれはおかしなことになると思うのです。この点についても、これは直接こまかいことを法務大臣にお聞きしてもお答えできない面があろうと思いますけれども、一応関連もいたしておりますので、またちょうど昨日勾留延期を決定しておりますので、どういうような経過になっておるかということを一応聞かせていただきまして、その後またお伺いいたしたいと思います。
  12. 中垣國男

    中垣国務大臣 お答えいたします。  中田善枝さん殺し容疑者であります石川一雄の処分につきまして、私はまだ検察庁から何らの詳細な報告を受け取ってはおりませんけれども、新聞で見た程度資料で想像いたしますのに、六月十三日に浦和地検石川一雄窃盗森林窃盗、傷害、暴行及び横領等事件につきまして罪状を明らかにして起訴したようであります。なお慎重を期する意味におきまして、証拠その他を集めるのに非常に慎重な態度で、中田善枝さん殺しとは無関係に、先ほど述べた罪状勾留が延期されるということになったのではなかろうかと思いますが、詳細につきましては刑事課長が来ておるようでありますから、もし御必要があれば、刑事課長からお答えさせます。
  13. 田口誠治

    田口(誠)委員 刑事課長がお見えになっておれば、課長さんのほうからお伺いいたしたいと思いますが、その前提として私お伺いしておきたいと思います。昨日の処置は、あくまでも中田善枝さん事件に関するものでなくして、その他の幾つかの事犯があがっておりますので、その必要から昨日の処置をとられたのかどうかということと、そしてもしそうだとすれば、弁護士あほうからこの際保釈をしてもらいたいという保釈願いも出ておるようでございますが、まだこの中田事件以外の事件で昨日のような処置をとらなければならない必要があるのかどうかということ、それから今度の処置期間内に善枝さんの事件が並行して捜査されると思いますが、何ら裏づけになるものがないような場合には、弁護士からも出ておりますような保釈ということが当然考えられることだろうと私は思うので、こういうことも加えて御説明いただきたいと思います。
  14. 羽山忠弘

    羽山説明員 狭山事件につきましては、本日午前中に正式な報告がまいることになっておりまして、まだそれが届いておりません。昨晩九時でありましたか、電話をかけまして、次席検事から聞きましたことは、ただいま大臣が述べられました、大体新聞に出ておる程度と同じでございます。  それから今後の捜査の見通し、保釈になるかどうか、これらの点につきましても、ただいまお答えを申し上げるような資料を持ち合わせておらないので、御了承いただきたいのでございます。
  15. 田口誠治

    田口(誠)委員 いまの段階では、昨日の経過というものが届いておらないから、これ以上の答弁ができないということでありますので、答弁できないという方にどれだけ質問を申し上げてもむだでありますから、この点については申し上げませんが、もしこの法案がきょう採決というようなことにならなかった場合、そしてまた幾日か質問日にちが残されるということになりますれば、きょうの午後にはそういう昨日の経過というのが課長さんのところまで必ず届くと思うから、そういう機会に譲りたいと思いますが、きょうはこれ以上申し上げても何ともなりませんので、これ以上突っんだ質問はしまいと思います。  ただ、そこで一つだけお聞きして次に移りたいと思いますことは、これは新聞等もずいぶんこまかい面について書いておりますが、日本の科学的な捜査、これが先進国より、だいぶんおくれておるというようなことを聞いておるわけなんです。それで、この点につきましては、特に民主憲法ができてから、人間の人権を尊重した中において捜査をする現段階においては、科学的な捜査というのは最も必要だと思うわけなんです。それで、これが新聞に書かれておるように、実際に日本先進国と比べておくれておるということになりますれば、どれだけ金がかかっても、そうした必要なものは準備しておかなければなりませんし、また捜査方法も、そういう面で十分に勉強を切りかえてやってもらわなくてはならぬと思うのですが、この点につきましては、大臣課長、どういうようにお考えになりますか。現況を報告願い、今後のお考え方を承りたい。
  16. 中垣國男

    中垣国務大臣 政府におきましては、最近閣議等でもよくこれらの問題が話題になっておるわけでありますが、当面刑事警察強化の問題、検事検察強化問題等が一応取り上げられておるわけであります。御指摘のように、捜査科学性をもう少し持たせる、機動力強化をはかる、それから人員の問題、給与をはじめとする待遇の問題、いろいろな面から強化するために施策を行なわなければならないと思うのでありますが、私がこの際申し上げたいことは、やはり法務大臣といたしましては、警察の黒星の追及よりも、鼓舞激励いたしまして、要は犯人を一日も早く逮捕いたしまして、それをそれぞれ罰することが大事なわけでありますから、法務大臣という立場からいきますと、当面の問題としては、そういうことに力を入れざるを得ません。しかし、池田内閣国務大臣の一人といたしまして、御指摘のように刑事警察検事検察強化ということは、予算の面その他から考えまして、十分これを措置することが必要ではなかろうかと考えております。
  17. 羽山忠弘

    羽山説明員 大臣がお答えになりましたので、あまり私が申し上げることもないのでございますが、科学捜査の能力を向上させるべきことは、御指摘のとおりだと思います。それで、検察庁におきましても、また警察におきましても、従来相当の予算を計上いたしまして、いろいろそのような施設なり設備なり人員等を持っておるわけでございますが、問題は、このたびのような凶悪犯がのべつ起こるわけではございませんで、一年に一回か何年に一回か、突如としてあまり起こらないようなところに起きる、そういうようなときにどういうふうに対処していくかというような体制を研究するということも一つの大きな問題ではないかと考えておる次第でございます。
  18. 田口誠治

    田口(誠)委員 こういう事件を取り扱っておれば、件数の問題が頭にくるかと思いますけれども、こういう誘拐犯というような事件は、たとえ一件起こりましても、たとえ一人殺されても、全国のおかあさんやおとうさんたちは非常に恐怖心におちいって、それから以降というものは、子供が学校から帰るのがちょっとおそくても、夕方外へ飛び出ていくのにも、どこへいくのか、どうしておそくなったのか、誘拐魔が来るぞということで、一時は全国じゅうたいへんな問題だったのですよ。だから、こういう事件が一年に一件とか二件くらいしかないだろう、そういうような考え方でこういう問題に精力を打ち込んでおってもらっては、私はいつまでたっても国民の希望しておるようなことは解消できないと思うわけです。そして、特に科学捜査の面については、ただいまの課長の御回答のことばじりからいきましても、日本先進国に比べましてもまだまだ未熟であって、それに対する予算等も相当に要るであろうと思うのです。したがって、いま国民はどんなに予算が要っても、そういう点は完ぺきを期して国民の安全を保ってもらいたいということが、何より国民要望であるわけなんです。食うか食えないかということも大切だが、それより先に、これは国民としては必死な問題なんですよ。そういう問題でありますから、私はこれ以上質問申し上げても、あまりきょうは具体的にお話はいただけぬようでございますので、もう申し上げませんけれども、ただいま申しましたように、将来に備えて、ただいまの認識のような、私がいま受け取ったような認識で将来もいかれては、これは国民の期待に反することになりますので、もう一度この点について答弁をいただいて、次に移りたいと思います。
  19. 羽山忠弘

    羽山説明員 非常にことばを簡単に申し上げましたので、あるいは表現が正確でなかったかもしれませんが、私が申し上げましたのは、たとえば科学捜査の装備等を幾らつくりましても、これを運用いたしまして、事件が起きましたときに確実に犯人を検挙するというような経験者、すなわちその道の練達な人を得ませんとどうにもならぬわけでございます。そこで、そういう練達の人、そういう経験者をどういうふうにつくり、そうして事件が起きた場合に、それをどういうふうにすみやかにその場所に使うようにするかというようなところにも一つ大きな問題があるように考えられる、こういうように申し上げたわけでございます。
  20. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 関連して。さいぜん来埼玉県の問題がいろいろ質疑されておるようでありますが、まだこれはお手元に御報告がなくて、午後御報告があるというようなお話でありましたが、昨夜のラジオ、テレビ等で、浦和の検事正並びに警察署長が公に所見を発表いたしておりますが、その発表をお聞きになったかどうか。お聞きになったら、どういうことを言われたかということをちょっと伺っておきたい。
  21. 中垣國男

    中垣国務大臣 お答えいたします。  先ほど田口さんのお尋ねにお答えをいたしましたことは、やはり新聞、ラジオ等によりまして検事正並びに捜査主任、警察署長等の発言しましたことを考慮に入れて、それをお答えしたのでありますが、それによりまして若干の内容に触れまして、たとえば起訴事実、事件の名称等を加えて申し上げたのも、検察庁からは何の詳細な報告を受けておりませんけれども、私が想像をしましたところということを前提として答えさせていただいた次第であります。
  22. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 私がこのことを伺いましたゆえんは、昨日の検事正並びに警察署長のテレビ発表、新聞発表は、文書で書いてあって、それを読んでおられる。それを聞きますと、これは率直に申し上げますが、石川それがしがすでに検察庁並びに警察の頭では犯人だと頭からきめてかかっているような発表でした。私自身も刑事事件の経験者です。私は、ああいう発表は、検察庁が真実を探究して社会公共お秩序を守る、国民の安全を守るという趣旨からいくと、非常に行き過ぎた発表だ。黒白を明らかにするという発表であればいいのですけれども、そうでありません。石川の証拠が足らないから、それを裏づけするためにとりあえずこういう起訴をするのだ、こういうように、頭から石川が真犯人であるかのごとききめ方をしておる発表は、検察庁並びに警察の発表としては適当でない。大臣、この点についての御所見はどうです。
  23. 中垣國男

    中垣国務大臣 検察庁検事調査というものは、御指摘のとおりに、どこまでも真実を追求することが眼点でございまして、いたずらに犯人らしく、またはまぎらわしいものを真の犯人らしく取り扱い、公表するというようなことは適当ではないと存じます。この事件につきましては、二、三の証拠というようなものを、不確定、不確実なものでありながら何らかのものを持っておる。そういうことが現場における係官のかような声明になったのではないかと思いまして、法務大臣といたしましてそれらの声明を支持するものではございませんけれども、現場における実感というものからああいうような内容の発言になったのではなかろうか。ただし、伊能先生が御指摘くださいましたように、検事捜査調査というものはどこまでも真実を追求する、そうしていたずらに仮定の犯人というものをば描いて、それを犯人らしく取り扱うような言動というものは避けたいものだ、こういうふうに法務大臣としては考えておるところでございます。
  24. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 ただいまの法務大臣のお話で、私どもは心から了解もし、賛意を表するものであります。ともかく昨日の警察署長並びに検事正の声明を卒然として皆さんがお聞きになってごらんなさい。そうしたら、石川が真犯人であるが、証拠が足らないからというような感じにしか受け取れない。これは、やはりあくまでも真実を探究して、社会公共の福祉と安全を守って黒白を明らかにするのだという態度で声明があって私はしかるべきだと思う。ところが、決してそういう声明ではないのです。あれは公の声明としては私は行き過ぎだ、かように考えますので、特に質問をした次第ですが、大臣の御答弁了承いたしました。
  25. 田口誠治

    田口(誠)委員 それで、課長のほうから再答弁がございましたが、いま伊能先生からの質問にもありましたように、科学的な捜査方法日本の場合は未熟であるということから、つきましたことは、石川の場合でも、筆跡とゴムぐつのあとということだけであります。これが何かあやしいということなのです。筆跡の場合は、これは科学捜査であやしいと思って、犯人だと思ってきめつけてみた場合には、はっきりとそれはこうだという結論を出せぬ場合があるでしょうけれども、筆跡の鑑定は、日本の場合でも、これは違っておるかどうかということは大体見当がつくものなんですよ。だから、なおそれがつかないということなら、筆跡を鑑定することに対しても、日本にはまだまだ未熟さがあるのじゃないか。それには何か教育のしかたもあろうし、設備のしかたもあろうし、いろいろ予算的な面もあろうから、予算も十分にとって遺憾のないようにやってもらいたいということです。そういうことなんですよ。だから、科学的な捜査という面が先進国よりだいぶおくれているということなんです。こういうおくれておる現状において捜査をされる場合には、現憲法下においては当然とるまじき行為を検察当局としてもやらなければならないということに必然的になってくるから、私は、そういうことは絶対に好ましくないことであるから、この際の捜査方法について十分に検討をしてもらい、必要な科学的な準備をする必要があれば、どれだけ金がかかっても準備をしてもらわなければいかぬし、そうして、教育をする面につきましても、これは一案は政府のほうで立てておるようでありますけれども、そういう点に十分に気を配ってやってもらわなければならないと思うのです。ただいま伊能先生のお話のとおり、国民はそのとおりに受け取っておるのです。特に長い者は、石田老人のようにあの長い間一生を獄屋で送って、無罪の判決を受けたとて、受けたときにはからだは何ともならないということになって、一生を棒に振らなければならないということになるのです。こういうことを現在日本国民は知っておるから、今度の石川の問題でも、とらまったときはやれやれ犯人がとらまった、これはまあよかったという気持ちになったのですが、捜査の過程において自信がない、しかもその証拠になるものが筆跡とゴムぐつの型だけだということになりますと、そういうことで長いこと留置をしておいて取り調べを受ける、また逮捕されたそのことが、石川にとっては一生名誉挽回ができないような状態に追い込まれるわけでありますから、こういう問題は、問題が問題だけに慎重を期してやらなければならないし、そしてまた、結果によってはこれは大きな検察当局の黒星ということにも相なるわけです。検察当局の黒星ということになれば、何とか無理をしても起訴をしなければならないというので、相当日にちをかけ、不必要な留置をしておいて捜査をしなければならないということが故意的に出てくるのではないか、こういうことが考えられますので、私は、特にこの問題について国民が関心を持っておるのだから、その点を強く要望もし、いままでお伺いをいたしておったようなわけでございます。したがって、今ここにおいでになっておる政府側の皆さん方には、これ以上の具体的なことを質問申し上げても今日のこの場ではいかないと思いまするが、先ほど伊能先生からお話しになりましたように、昨日のラジオを聞いておりましても、もうけさこの内閣委員会に法務省が出てこられるときには、私が質問の通告をしておりましたから、その準備は当然なければなりませんし、を読み上げて報告をしたということなら、当然そのものは整えておられると思ったのです。整えておらなければ、車で行って直接にとってくるか、また車を走らせて手元に受け取っておるか、そういう誠意万端を整えて皆さん方がここにおいでになっておるのではないか、こういうように私は考えてけさ質問に入ったわけでございまするが、午後でなければわからないというような準備の不十分な点については、きわめて遺憾でございまするので、この点につきましては、私は質問を保留しておきます。  次に移ります。きのう西村先生から青少年の非行、刑法犯の問題についていろいろお訴えになり、法務大臣からお答えになったのですが、今年出された児童白書を見まして私がびっくりいたしましたことは、出生率というのは、戦後昭和三十年くらいを基準においてみましても、そんなにふえておりませんけれども、青少年の事犯件数というものは、昭和三十年を一〇〇といたしまして、三十六年には数字がやや倍になっております。そうして、特にこういう事犯を犯す年齢別に見ましても、これは相当具体的に手を打っていただかなければならない内容のものが数字の上に、児童白書の中に明確に厚生省が打ち出しておるわけなんです。したがって、昨日の答弁はやや抽象的でございましたが、具体的な数字を申し上げますと、一口に言えば、三十年から三十六年にかけては、数字を見ますると倍になっておるのだ、こういう現況において、昨日のような抽象的な答弁だけでは私は納得いきませんので、来年度はこれに対してどういうような方法をとるのか、必要な予算は獲得するのか、こういう具体的な面についてもやはりお答えをいただいておかなければならないし、私は、答弁が不十分でありますれば、来年度のことについて要望をしたいと思いますので、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  26. 中垣國男

    中垣国務大臣 お答えいたします。非行青少年問題につきましては、総合的な施策をもちましてこれらの対策を進めていかなければならないわけでありますが、法務大臣といたしましては、目下少年法等の検討をいたしております。この少年法を検討いたすようになりました理由というのは、御指摘のように、毎年毎年非行青少年の犯罪検挙数というものは非常に伸びて、上昇しつつある現状でありまして、まことに憂慮にたえないところであります。しかも非常に悪質化しつつある。なおまた年齢がだんだん低年のほうに犯罪が移行しつつあるという点等から考えてみまして、はたしていまの少年法というものが実態に即するかどうかという点を検討する必要がありまして、対処しておるわけであります。  それから御承知のとおりに、法務大臣の所管しますそういう非行少年ということになりますと、第一に犯罪少年でございまして、すでに犯罪を犯して検挙された者、それらの者が少年院、少年刑務所等におります。それから、これから犯罪を犯すおそれのある者、そういう虞犯少年等につきましては、少年鑑別所等でいろいろテストしましたり、いろいろなことをやっておるわけでありますが、こういうことをやっていきます上に、現在の教官、指導的立場につく職員でありますが、そういう者、あるいは施設はどうであるか、それから予算はどうであるかというような問題等につきましても検討をいたしておるわけでありますが、結論的なことはまだ申し上げられませんけれども、相当思い切った措置を三十九年度においてとらなければならないことになるだろう、かように実は考えております。  非行青少年の問題は、非行の発生の原因と申しますか、そういうこと等からまず始まるわけでありますが、これは各省に非常に関係が深いのでありまして、たとえば文部省、厚生省、労働省というふうに非常に各省のそういう主管問題等もございますので、私はそれらを代表してお答えするということは差し控えますけれども、いろいろもう少しおとな自体の問題といたしましても、いわゆる社会人という、むしろ少年問題よりも成人のほうに対しましても、この非行青少年問題というものは検討をすることが必要ではなかろうか。もちろん、これは社会であるとか、あるいは文化、教育、経済というような面からも考えなければならないでしょうけれども、そういう社会的背景であるとか、また家庭の環境であるとかという問題、それから家庭教育、学校教育、社会教育等の問題、まことに多々あるだろうと思います。私は、法務大臣としましては、三十九年度の予算にすでに犯罪少年、虞犯少年として指摘された者、それに対する対策をどうするかという具体的な問題につきまして、必要があれば少年法の改正も提案しなければならないと思っておりますし、また教官の質の問題、これはやはり待遇等の問題も入ると思うのでありますが、そういう問題、それから少年院や刑務所等における施設の問題、懲罰主義から教化主義への重点の置き方と申しますか、そういうことに伴う施設の充実の問題、こういうことにつきまして、必要なものは思い切った予算の計上が必要である、かように考えておる次第であります。
  27. 田口誠治

    田口(誠)委員 いま大臣からのお話で、大体私どもの希望しておることに対して熱意に燃えておられるということはわかりましたけれども、成人のほうが多い云々ということでございましたが、あの青少年白書の中に盛られておる数字というのは学生が一番多いのです。それから有職の者が一〇〇に対して一四九になる、学生の場合は二二四、こういう数字になっておりますし、それから無職の少年は、これはずいぶん多いかと思えば一〇五という数字なんです。これはわりあいに少ないのです。しかも家庭の状況からいきますと、中流家庭が一番多いということです。それで、ほんとうの数字で申し上げますと、これは三十六年度の数字が出ておったと思いますが、非常に貧乏な家庭は、指数を一〇〇としまして七五、その次が一五三、中流が二一一、上流が一九三というふうに、中流、上流というところの家庭に相当多いわけなんです。この点は、政治の面からよほど手を打っていかなければならない問題だろうと思います。これは、幾つかの隘路があろうかと思うのです。私も、直接こういう方面が議題にかかっておるのでないから、具体的な私の考え方というようなものは申し上げませんけれども、そういうような数字からながめまして、私自体も幾つかの隘路に対する意見は持っておりますが、せっかく法務大臣がそうした熱意に燃えておられますれば、そういう数字の面も十分に見ていただいて、そうして年々増加をしていく、三十年から三十六年までの間に倍にもなるというようなことでは、日本の政治の貧困が他の国からますます笑われものになろうと思いますので、そういう点について十分に御配慮をしていただくようにお願いしておきたいと思います。この点につきましては、おそらくあとから受田委員から関連の質問があろうと思いますので、私はこの範囲内で終わります。  それからあともう一つだけお伺いをいたしたいと思いますが、岐阜市の鷹見町というところに鷹見拘置所の支所がございます。これは岐阜市のそれこそ全くどまん中であって、そして特に岐阜の市役所、県庁に近いところでございますから、これは、岐阜市の者だけでなしに、県内の人たちがやはりそこを通過するわけなんです。ここに拘置所があるわけなんですが、私は拘置所の位置としては、まず岐阜市の発展からいきましても、その他の面からいきましても、これは非常に位置としてはいいところではない。何とかこれは位置を変えてもらわなければならないと思いますので、まずその点についてのお答えをいただきたいのと、それから、私は最近あまり地元においてぶらぶらしておりませんから、ごく最近のことは知りませんけれども、私がまだ岐阜市内でうろうろしておりましたときには、そこに拘置されておる容疑者検察当局へ行って取り調べを受けるときに、車で運ぶのでなしに、道路を手錠をはめて連れていっておる姿を見て、これは今日の憲法下においては少しひど過ぎるんじゃないか、かわいそうじゃないかと思った。おそらくその人たちの中には、岐阜市の人もおるでしょうし、そして岐阜県の人が多いと思うのですが、岐阜県全体から集まってくるところにそういう拘置所があって、そうして、そういうことがなされておったわけなんです。私は、ごく最近のことは知りませんが、相当前まではあったのです。ところが、これも人の話を聞いたことでありますから、私は国会で追及するという言質までにはならぬと思いますけれども、ちょうどこのごろ日雇いの労務者の人たちが失対法の反対で来ておりましたので、私は、このごろ岐阜市にあまりいないからわからぬが、鷹見の拘置所から検察当局へいろいろ取り調べに連れていくような場合、裁判所へ連れていくような場合に、車でなしに、走行で連行していっておったが、最近も一そうかと、こういうふうに言ったら、私の聞いた人は、最近もそうだ、こういうことを言っておるのです。このことは、聞いた話だから私は確実にいまもありますということは言い得ませんけれども、そういうふうな状態なんです。だから、そういうようなことはおそらく注意をしていただけば将来なくなると思いますけれども、ああいう岐阜の中心地に、しかも官庁、市役所、県庁、それから警察はいいとしても、そうした周囲に関係の役所のあるところにこういうものを置くということは好ましくないと思いまするので、私は一日も早くこれはどこかへ移してもらわなくてはならぬと思うのですが、この点も入れてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  28. 中垣國男

    中垣国務大臣 岐阜県の岐阜刑務所鷹見拘置支所と言われましたね。その移転の問題につきましては、昭和三十五年ごろから法務省といたしましてはその移転の予算につきまして準備を進めておったのでありますが、不幸にいたしまして三十八年度の予算にはいまだ計上ができておりません。事務当局は、三十九年度にもこれを要求をするつもりでおるようであります。たしかあの建物は一ぺん戦災にあいまして、その後復旧して、非常に弱体化されておると聞いております。また収容人員等も最近になりまして非常にふえつつあるということも聞いておりますので、御要望のように、一日も早く移転をいたしまして、もう少し施設も充実していきたい、こういうふうに考えております。  それから拘置所から検察庁まで行く間、手錠をかけて道路を歩く、そういう状態をまだ続けておるということでありますが、ほんとうにこれは一日も早く改善したいと思います。聞くところによりますと、ただいま聞いたのでありますが、護送車があそこにはないそうでありまして、乗用車等もまだ予算の関係で配置されていないそうであります。そういうこともできるだけ改善いたしまして、市内の目抜きのところをば、そういう収監されておる者が手錠をかけられたままぞろぞろ引き連れられていくような、そういう非文明的なことは一日も早く取り除かなければならない、私はさように考えております。このことにつきましては、私も勉強がまだ足りませんので、一応十分事情を聴取いたしまして善処したい、かように考えております。
  29. 田口誠治

    田口(誠)委員 わかりました。それで、位置を変えてもらう、移転してもらうというこについては、ひとつ最大の努力をしていただきたいということと、それから護送車は、ただいま御答弁のありましたようにございません。それから乗用車もないということになれば、私は今日あるまじきことだから、実際にあるときめつけた質問はしなかったのですが、護送車もない乗用車もないということになりますれば、必然的にこれは歩道を連行していくよりしかたがないということになりますね。これはもう明年度は、――明年度までかからなくとも、何とか早くこの善処方をお願いしたいと思います。もちろん検察庁の乗用車も必要ですし、護送車は当然必要でございまするから、その点の御配慮をいただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  30. 永山忠則

    永山委員長 山内君。
  31. 山内広

    ○山内委員 最初に、ただいま田口委員の最後に出されました問題に関連してお伺いしておきたいと思います。  田口委員は岐阜の刑務所についてお話がありましたけれども、聞いておりますうちに、ああいうケースは全国的な問題でないか、古いときはいなかの比較的目立たないところに建てたけれども、市街地がどんどん周囲に結集されて、そこが不適当な場所になったということは全国的なケースだと思うのです。そこで、法務省としては、いま大臣のおっしゃったような、そういう市街地において人に目立つようなことを解消したいというのは、何も岐阜ばかりでないので、全国的なそういうケースをどういうふうにして将来解消するか、このことについての年次計画でもお立てになっておれば、この際お示しを願いたい。
  32. 中垣國男

    中垣国務大臣 お答えいたします。  刑務所の移転問題につきましては、ただいま先生が御指摘なさいましたとおりに、建設当初は中心部でないと思われておったところが、今日ではほんとうに市街の中心地になっておるというようなところが、私が聞き及びましたところによりますとまだ全国的には三十カ所くらいあると聞いております。いままでに国庫債務負担行為等によりまして、たとえば福岡、名古屋のようなもの、その他におきましても移転を完了もしくは移転の実施中のところ等もございます。最近、昭和三十八年度になりましてから御審議をいただきました予算の中には、法務省といたしましては初めてのことでございますが、国費で敷地を買いまして、その国庫債務負担行為によらない直接国費でこれを移転するというケースを初めて試みているわけでございまして、たとえば徳山の刑務所、新潟の刑務所等がそれに該当いたします。年次計画というものは、別にただいまのところ固まったものはございませんが、私の方針といたしまして、これは刑務所に限らず法務省の地方庁、地方の建物は、登記所を初めといたしまして、非常に目立つほど古い建物が多いのでございまして、こういう法務省関係の営繕を全部年次計画を立てまして、そうして五年とか六年間で完了できるような、そういうことを立案をしてほしい、でき次第閣議了承を得ておきたい、こういうことを事務当局には命じてございますが、私大臣に就任しまして間もないことでありますので、それらの詰めたものはまだできておりません。いま作業中でございます。
  33. 山内広

    ○山内委員 三十数カ所のそういう不適当になった場所があるというお話なので、なお、私この際希望申し上げておきたいと思いますけれども、市街地の相当地価の高いところに刑務所などが相当広大な土地を持っておりますから、こういう財源を見返りとして安いところへ移転するということは、それほど国の費用の負担にならない。それはいろいろありましょうけれども、そういうことを考えますと、これは、法務省の方針の出しよう一つでもって早いうちに解消できる問題である。そう考えますがゆえに、ぜひこれは全国的なケースをお調べの上に、すみやかにこの問題を年次計画でもって解消するような方針を打ち立てていただきたい、こういうふうに希望いたします。  それでは、各委員からいろいろ当面の法務省の所管される行政について御質問がありましたが、私は、ただいま御提案になっております法務省設置法等の一部を改正する法律案内容について、いささか深くお尋ねしておきたいと思います。  まず最初にお聞きしたいのは、三百十名の増員計画が提案されておりますが、この内容を検討いたしますと、一番大きなものは登記事務の増加に対処するための二百名の増員であります。そこで、登記事務が一体どういう現況にあるのか、二百名も多数の増員を必要とするゆえんをもう少し詳しく具体的に御説明いただきたいと思います。
  34. 中垣國男

    中垣国務大臣 最近におきまして、登記所はほとんど全国的に登記事務官の不足を訴えてきておる状態でございます。登記事務が非常にふえました理由といたしましては、土地改良、あるいは国土計画による道路、交通網等の拡大、そういうようなこと、並びに経済の繁栄に伴いまして、会社、工場等の地方進出等がかなり登記事務をば増加させておる原因になっておるようでございます。二百名増員いたしましたのは、千名ぐらい足らないという強い要望が局長会議を開きましたときに行なわれたのでありますけれども、機械化するということ等を少し取り入れたならば、若干そういう人手不足は緩和するのではなかろうかということで、もうすでに予算は通過さしていただきましたけれども、この三十八年の予算の中には、謄写機であるとか、リコピーのような登記事務の機械化のための予算等も計上いたしまして、近くこれを実施する予定でございますが、これを実施しました結果、非常に効率的である、能率的であるということを確認をいたしますならば、将来の人員の増加というものは若干これで調整ができるのではないかと思いますけれども、現実の問題といたしましては、登記所の事務職員は日曜、祭日以外におきましては、土曜日もほとんど六時、七時まで事務をとっておるという状態でございまして、私どもが地方の行政を査察に参りますと、ほんとうに登記事務所の職員は労働が過重である、こういう考えに立ちまして、二百名の増員の予算その他を計上いたし、また設置法の一部改正の御審議をお願いしておるわけでございます。
  35. 山内広

    ○山内委員 こういう世の中になりまして、いろいろ登記事務が繁忙をきわめているということは、私どもも判断がつきますし、実情もよく承知しておって、同情はしているわけですけれども、また一面、登記事務に関連をして好ましからざる行為を行なっているところも最近の実例としてあげられております。もちろん御承知と思いますけれども、長野県で起きた事件ですが、法務局の出張所の所長が登記事務でもって便宜を与えたということで、新聞には九回と書いてありますが、供応を受け、現金ももらっております。それからバイクも一台買わせている、こういうことで、本人はいま起訴されている模様でありますので、真相は明らかになると思いますけれでも、片方ではこれだけ登記事務が繁忙をきわめ、増員を必要とするというときに、こういう所長がみずからそういう業務上の問題を引き起しているということは、非常に残念なことだと思うわけです。これについて、法務省としてはこういう問題を起こさないようにどういう取り締まり方法をお考えになっているか、明らかにしていただきたいと思います。
  36. 中垣國男

    中垣国務大臣 法務省の登記事務職員に対する監査、監督の問題でありますが、これにつきましては、本省はこれを民事局が主管いたしておりますし、出先としましては、出先に法務局というものがございまして、管区法務局と各府県別に置かれている法務局というたてまえになっておるのでありますが、その登記所というものは、出張所、支所等を含めて、その法務局の監督下に置かれておりまして、定期的に監督をいたしております。  御指摘のような事件が出たことは、まことに遺憾に存じます。こういう事件が出たということは、監督が不行き届きであったという点もあったと思うのでありますが、大体出張所というものが一人庁、二人庁というものが非常に多いのでありまして、職員がたった一人である、それも、一人おりましても、やはり所長でございますが、そういうことのために、若干そういう不正事件の発覚と申しますか、そういうことができにくい状態に置かれているということ等にも原因があろうかと思うのであります。法務省としましては、そのような問題が発生しないように、法務局長会議等においても、大臣訓示の中にもさようなことを取り入れまして、警告も発し、また今後の査察の強化等も指示している、そういう現状でございます。
  37. 山内広

    ○山内委員 その問題は、自粛しておられるようでありますから、これ以上お尋ねしません。  次に、入国管理事務所の出張所を四カ所増設される御提案になっているわけであります。ところが、これは四カ所とも、地域を見ますと太平洋岸に面したところであり、しかも、扱う業務量をいただいた資料によって判断すると、私もその必要性は認めますが、しかし、最近の新聞を見ますと、いろいろ日本海沿岸にももうこういう取り締まりと申しますか、出張所の設置を必要とするような事件も起きておるわけでありまして、今後こういう出張所あるいは管理事務所というものをどういうふうにお考えになっておるのか、これで現状維持を守って、定員をふやさないで仕事をやっていかれる方針か、またこういうことが続々強化されていくということになりますと、私たちも基本的な点で考えてみなければならぬ問題が出てくると思いますので、その点についてお伺いいたします。
  38. 小川清四郎

    ○小川政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、最近、特に日本海沿岸全域と申しましては少し言い過までありますが、相当広範な地域にわたりまして密入国者の検挙されておる例が多いのであります。したがいまして、私どもといたしましては、全国的に問題を把握いたしまして、各港出張所の新設をいたします場合にもいろいろと地方の実情を参酌いたしまして、毎年相当数の出張所の増設をお願い申し上げておる次第でございますが、最近におきまして、特にただいま申し述べましたような事態に対処いたしますために、来年度は秋田並びに直江津両港につきまして新設をお認め願いたいというふうに考えておる次第でございます。
  39. 山内広

    ○山内委員 もう一点入国の事務に関係してお伺いしておきたいのですが、それは、入国の許可をとるときに一カ月、二カ月という非常に長い手続上の時間がかかる、それに法務省の係官が特別に早い処置をして、便宜を与えて、いろいろな金品やそういうものを巻き上げた、そういうことに関連しまして、法務省の係官がいわゆるやみドル事件逮捕されておる事件があるわけであります。新聞はこれをスワン・プロ事件と報道しておりますけれども、一体こういう事実があるのかどうか。はなはだけしからぬことだと思うのです。特に最近は、きのうかお話のありましたとおり、非常に外国との交流がひんぱんになってきておる。文化の交流その他いろいろなことがあるときに、おひざ元の係官がこういうことで逮捕を受けたということは、私ははなはだ残念に思うわけですが、こういうやみドルとか、あるいはそういう手続の問題に関係して事件が起こり得る余地が法務省の中にまだあるのかどうか、大臣はどういうふうにこの現状をおつかみになっておるか、お聞きしたいと思います。
  40. 小川清四郎

    ○小川政府委員 事実につきまして、まず私から御説明申し上げたいと存じます。  これは、私どもの入国管理局の入国審査課に属しておりますところの一事務官が、昨年春ごろ、ただいま御指摘のございました、また新聞にもちょっと出ましたような関係で、実はイタリア人のファッション・グループの入国審査につきまして便宜な取り扱いをしたということで、収賄容疑で逮捕された事件でございます。当人は昭和三十八年、本年の四月一日に起訴されておりまして、同日付で休職の発令になっておる次第でございます。もちろんこの問題につきましては、私どもも十分に監督の責任を痛感して、非常に遺憾なことだと存じておりますので、局長以下、職責処分につきましては、厳重な御処罰をいただきたいと思って上申手続をいたしておる次第であります。  また一面、この問題につきましては、われわれといたしましても、日常事務の扱いの面におきまして、ただいま山内先生から御指摘のありましたように、何か指導の面その他において欠くるところがあるのではなかろうかという点を特に反省をいたしまして、そういった外国人の入国審査に関連して、そういう金品授受、供応その他の不正な事実を排除するためにはどういう事務的な欠陥を是正したらよいか等のことにつきまして十分検討いたしております。今後はそういうことのないように私どもも厳重に事務的にも監督いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  41. 山内広

    ○山内委員 この御提案の中にも、羽田の入国管理事務所が非常に業務が多くなったということで、五十名の増員をいま提案されておるわけです。資料によりましても、確かに羽田の出入国の取り扱い件数が多くなっておりますから、私このことを別に多いとか少ないとか言っておるのではない。そういう取り締まりの強化、あるいは麻薬の密輸とか、あるいはそういう日本に出入りする人の税関とかの取り締まりを一ぺん強化しないと、同じおひざ元でそういうことが起こる。このことがたいして大きな問題でないにせよ、そういう取り締まりをかさに着た犯罪というものは私は密入国でものをからだにしまって、時計を持ち出したとか万年筆を持ってきたとかいうよりも、これは精神的に非常に憎むべきだと思う。こういうものを取り締まらないで、出入りする人たちの取り締まりを強化していく、特にいま原因を考えて事務的な措置をしたいとおっしゃっておりますけれども、この手続に一カ月も一カ月半もかかると新聞にも書いておるとおり、手続が非常に繁雑で、しかも申請をしてから何カ月もほうっておく、そのこと自体からこういう問題が出てくるわけです。もっとすみやかに、簡易に、もういま世界じゅうどこに行こうとこの地球上は自由に歩けるような体制に持っていかないといけないのに、密入国が多いとか税関の関係とかいうので取り締まりを強化し、こういうこと非常に日数をかけておる、そこに不心得な者がそういう立場を利用して犯罪を犯す、原因があると私は思う。こういうことで、もっと事務的に早くあげる、そういう意味増員でないと、せっかくこっちが増員を認めてもあまり意味のないことになってしまう。この点も私希望を申し上げておきます。  その次に、御提案になっております設置法の中で、これは昨年の三十七年法律第五十四号の一部改正でありますが、この附則の中にありました「「一年」を「二年」に改める。」というわずか字句としては簡単な御提案であります。けれども、問題はこの中に非常にたくさん含まれておるわけです。昨年御提案になりましたときは、いまの川崎収容所が環境的にもよろしくないので、横浜に移転する、そういうことで、そのときの御説明では、昨年の十一月までに横浜の収容所はりっぱに完成して移せるのだということで、一カ年の時限立法としてこれは承認を得たものであります。なぜ昨年の十一月までに完成できないで、いまもう一年の延長を提案しなければならなくなったか、その経過等について御説明をいただきたいと思います。
  42. 小川清四郎

    ○小川政府委員 川崎の収容所を横浜に移転いたします問題につきましては、昨年の当内閣委員会におきまして、私の前任者でございますところの前局長が、移転を必要とする理由並びにその後の経緯につきまして一応御説明を申し上げておるのでございますが、その後の経緯もございますので、たいへん重複するようでございますが、繰り返して簡単な御説明をいたしたいと存じます。
  43. 山内広

    ○山内委員 それは簡単でなくて、重複してけっこうだと思います。大臣もおかわりになった、あなたもかわられた、それから大蔵省の関係の方々もほとんどかわっておるわけです。これは非常に問題がありますので、私も大体承知はしておりますけれども、これからの質問を簡潔にやっていくために、むしろ詳しくお聞きしたほうがいいと思います。
  44. 小川清四郎

    ○小川政府委員 それでは、重複する部分もあるかもしれませんが、私から一応の理由から経緯にわたりまして御説明をいたしたいと存じます。  現在までございました川崎の入国者収容所は、昭和三十一年に開設をされました。その当時は環境、施設とも収容目的に適合しておった次第でございますが、その後周辺にいわゆる石油化学工場が続々と建設をされまして、それらの工場群から排出をいたしますところの悪臭、刺激性ガスまたは騒音等がひどくなりまして、被収容者、これはもちろん外国人のうちで、旧川崎におりました者は大体欧米人並びに中国人でございます。朝鮮人につきましては、別に九州の大村に収容所がございまして、大体そこへ収容されておるわけでございます。そういった被収容者に与えます影響もはなはだしくなってまいりましたので、これらのいわゆる公害につきまして、数回にわたって川崎市の衛生部等々に調査を依頼いたしたのでございますが、なかなかこれらの公害を完全に排除することは不可能という回答を得た次第でございます。そこで、どうしてもこの収容所の環境を改善する余地が乏しいというふうなことに結論がなりました結果、所在地をそのままにしておくわけにはまいりませんので、新たな適所を探しまして、そちらのほうへ移転することを決意せざるを得なくなった次第でございます。  そこで、適当な移転先はなかなかむずかしいのでございますが、やはり入国者収容所のたてまえからいたしまして、適所を探すことがむずかしいという条件が数々ございます。特に、一般的に申しまして、刑務所等と同様な性格を持つ拘禁所というふうに考えられておりますことと、従来のいろいろな経験と申しますか、被収容者の騒擾事件というふうなものもございまして、一般的にこれをすなおに受け入れてくださる地域というものは非常に少なかったわけでございます。しかも、この被収容者の中には船員でございますとか、その他港との関係もございますし、また在外公館との連絡もございますので、いろいろな点で適当なかわり地を探すということに困難を来たしておった次第でございます。  ところで、昭和三十五年の六月ごろでございますが、かねて新収容所あっせんを依頼しておきました神奈川県の当局から、横浜市内本牧の地区に約六千坪の土地がございます。そのほかにも提供された土地はございましたが、調査の上で、この本牧地区の六千坪の土地が一番適当であるというふうな結論に到達したわけでございます。また一方におきまして、旧川崎収容所に隣接しておる川崎化成工業という会社がございますが、これは可塑剤、塗料その他合成繊維の原料を製造している会社でございます。この川崎化成におきまして、自己の工場拡張の必要等から、もしもこの収容所が移転した場合には、その敷地、建物等を譲り受けたいというかねがねの申し出もございまして、わが方におきまして、この会社の内容も十分取り調べた結果、随契の相手方として適格と認められましたので、新しい入国者収容所の建設を、いわゆる建築交換と申しますか、庁舎等特別取得費によります建築交換の方式によって入手したいというふうに考えたわけでございます。  その内容は、川崎化成におきまして、ただいま申し述べました本牧の土地約六千坪をまず取得いたしまして、これは国土計画興業という会社の所有になっておった土地でございます。その土地六千坪を取得いたしました上に、その地上に新しい収容所の施設、この収容所の施設は、収容所庁舎と、それからそれに付属いたします宿舎の設備双方を含めた意味でございまして、入国警備官等々もいわば二十四時間勤務でございますので、従来とも収容所のすぐそばに職員の宿舎を持っておる次第でございます。この庁舎、宿舎を合わせました新収容所施設を建設いたしまして、国は川崎化成からその土地、施設を譲り受ける一方、同社に対しまして、現在の川崎入国者収容所の敷地並びに施設を譲り渡す、これがいわゆる建築交換の方式でございます。  ただ、この建築交換の具体的な実施計画を立てます場合に、予算等の関係もございまして、これを二段階に分けたのでございます。まず第一契約といたしましては土地交換契約を行なう、そうしまして、川崎化成の取得いたしました本牧の土地と、われわれの川崎入国者収容所の敷地の一部を交換する土地交換の契約をいたしました。大体私どものほうの敷地のうちの四千坪は、将来の拡張予定地としておりまして、直ちに使用する必要がなかった部分でございます。それと大体価格においても見合う坪数でございまして、まず土地交換を行なった上で、第二次契約といたしまして、先ほど申し上げましたような建築交換の契約をいたすというふうな考えを持った次第でございます。このように、契約を二回に分けて行なうこととした理由でございますが、これは、もちろんただいま申し述べましたような予算等の関係もございますが、大体本牧の土地そのものが、周辺が住宅地として開発をされておりまして、そのために、近い将来に地価の大幅な高騰が予想されておったわけでございます。もちろん、この土地は、横浜市が本牧・根岸風致地区として指定をしております地区でもございますし、いろいろな関係でこれを早急に確保する必要に迫られておった次第でございます。先ほど申し述べましたように、川崎の土地の一部分も直ちに使用する計画もございませんので、まずほぼ見合う土地交換を第一次として計画いたしまして、そのような措置をとった次第でございます。  ところが、非常に不幸な結果になりましたのは、いよいよ新しい施設の設計もほぼ完了いたしまして、契約の締結を待って工事を実施しようという運びに至りました段階におきまして、昭和三十六年の十月ごろでございますが、にわかに地元民による設置反対運動が起こったのでございます。この地元民の反対運動につきましては、実はこの風致地区に指定してございます地域の建築許可の申請を出さなければなりませんので、その申請書を横浜市のほうへ提出したのが、ちょうど昭和三十六年の十月の初めてございます。その申請に対しまして、地元民の反対運動が起こってきたわけでございます。これは、昔、川崎に移転する前に、横浜の山下町に横浜収容所というものがあったのでございますが、これがたいへん粗末な建物でございまして、もちろんこれを改造いたしましたのが昭和二十六年でございますから、とうていりっぱな建物ができなかったわけでございます。そこで、そういった建物に収容せられました被収容者の騒擾事件というものがございまして、それを記憶しておる人々がおそらくこの反対陳情に立ったのではなかろうかと推察される次第もございます。いずれにいたしましても、こういった陳情がございまして、その陳情に対しましていろいろと折衝をいたしたのでございます。もちろん収容所の性質その他につきまして、十分納得のいく説明を加えまして、また急速に解決をはかりますことによってかえってまた反対を助長するというふうなおそれがあることも考え合わせまして、実はたいへん時間がかかったのでございますが、翌昭和三十七年の二月に、横浜市におきまして関係者、すなわち法務省側、横浜市側、県会、市会その他地元の代表者が参集いたしまして、この新しい収容所設置について地元側の付帯条件を考慮する、この付帯条件と申しますのは、関係代表者間で風致地区の管理委員会を設けて、そこで収容所の建物あるいはその周囲の風致地区にふさわしい美化施設というふうなものについていろいろと相談をするという管理委員会でございます。それで、ようよう円満な解決を見ましたのが昨年の二月でございます。このために約四カ月足らずの時間が結果から見ますとここで空費されたということに相なった次第でございます。この反対陳情に対する措置を終わりましたのが、ただいま申し上げましたように二月の半ばでございますが、そこへ持ってまいりまして、まずくいくときはさらにまずくなるものでございますが、肝心な川崎化成の会社のほうで、当時設備資金の引き締めの金融政策が強化されましたために、最初計画をしておりました工場増設に対してたいへん打撃をこうむらざるを得なかったのでございます。それのみでございませんで、川崎化成のただいま申し述べました主要製品でございますところの無水フタル酸の値段が暴落をいたしました。その当時の数字は省かしていただきますが、そういうふうな金融引き締めにより資金難におちいりましたと同時に、製品価格の暴落によりまして、経営がたいへん困難になった次第でございます。  そこで、同社といたしましては、第一次契約に引き続きまして第二次建築交換契約をやる手はずをちゃんときめておりまして、相当に準備をして、誠意をもってこの計画を遂行するためにあらゆる努力をしたということは、われわれとしても十分認められたのでございます。たとえばその一例といたしましては、この本牧の土地に、土砂くずれを防ぎますために、擁壁と申しますか、土どめの工事なども第二次契約に入る前に実施をしているというふうな点から考えましても、当時川崎化成に誠意がなかったというふうには考えられないと思うのでございます。  そこで、金融引き締めその他の理由により会社経営が困難ということだけで最初の約束をキャンセルされるということになりますと、われわれとしても非常な困難におちいりますので、何とか金融の道をつけて、見通しを立てた上で第二次契約をしてもらいたいというふうに鋭意折衝を続けたのでございますが、それに対しましても、一応は努力をしてみるということで、ただ最初の予定よりか数カ月以上おくれておりますので、その間土地の値上がり等の事情もございまして、川崎の収容所の残りの土地と庁舎の再評価をお願いいたしたのでございます。第一次土地交換のときの価額は坪当たり大体二万円余でございましたのが、再評価をお願いいたしましたときには、四万円以上の評価が出てまいりました。おそらく会社側といたしましても、この値段ではとてもお引き受けするわけにはいかないという事情に相なったかと存ずるのでございますが、はなはだ不幸にもそういった理由が重なりまして、昨年の秋に、正式に第二次契約については御辞退申し上げるという申し入れが参ったわけでございます。そのころになりましてまた新しい建築交換の相手方を見つけますことは、これまたすこぶる難事であります。その主とする理由は、やはりこれだけの建物を建築いたしますためには、最小限度七カ月を要するということでございましたのでわれわれといたしましてもやむを得ず一年延ばすと申しますか、建築交換の方式を放棄いたしまして、新たに国の予算で新築をするという方針に切りかえざるを得なかった次第でございます。そのために、とにかく附則の一年を二年に延ばさしていただきたいという法律の改正案を提出いたした次第でございます。
  45. 山内広

    ○山内委員 ただいま局長より経過についての詳細な御説明があったわけですが、しかし、これは前任者の方とかわっておりますから、別に前のことをたてにとって申し上げるわけではないけれども、非常にじょうずな経過報告でありまして、それだけお聞きするとそう思うわけですが、前の事情を知っている私の立場からすれば、非常に無理のある御説明だと思うわけです。  まず大蔵省の方に第一点をお伺いしたいと思いますけれども、昨年の十一月完成するという約束ができなくなった理由を、地元の反対運動のために四カ月ほど空白にした、こういう理由に御説明がありましたけれども、実は昨年この問題の解決をして以後、この内閣委員会において私はその点をお聞きしたところが、もう問題は解決したから、十一月にはできますという御回答があったわけです。しかし、その後いま御説明のあった相手方の川崎化成でもって契約をキャンセルをしたということで、問題は運動が起こってそれによって妨げられたのではなくして、この川崎化成の都合であなた方が期待しておった第二次の契約ができなかったということが大きな障害になったと私は思うのです。  そこでお伺いしたいのは、第一回目のいろいろな話し合いで移転のきまったときに、なぜ第一次と第二次と考え方を分けなければならなかったか。その点についてはいま抽象的な御説明はあったわけですけれども、このときの契約の不完全がこういう問題を起こし、国にも非常な損害を与えておるわけです。そういうことで、値上がりの問題もあるために急いで第一次契約だけをやってしまったというお話でありますけれども、これもちょっとおかしい話で、当時二万円くらいの評価が第二回目の評価をしたところがもう四万円になった、こういうお話ですが、第一次契約のときには、四千九十五坪ばかりの川崎の土地を一億五十二万八千二百幾らでもって評価されておる。そうしますと、これはちょっとここで計算できませんけれども、坪二万五千円くらいでしょう。そうしますと、再評価したときに四万に評価されたものをすでに二万五千でもって売ったということになれば、これだけでも坪一万五千円の損害を国に与えたということになるわけです。その辺はどういうお考えに立つのか、もう一ぺん御回答いただきたい。
  46. 宮川国生

    ○宮川説明員 御説明申し上げます。ただいま詳しい評価の資料を持っておりませんが、その当時二万六千円で評価いたしました。そして横浜のほうの土地を何がしかに評価いたしまして交換したわけでございます。ただいま先生おっしゃいましたように、その後四万円に上がっているのに二万六千円で早々と交換をしたことはたいへん損しているじゃないかというふうな御質問だと思います。ただし土地の場合は、川崎の場合ももちろん上がります。それから横浜の土地も上昇するわけでございます。この率が、たとえば二万六千円と四万円という率以上に横浜のほうが上がっているかどうか、ただいま私ちょっと資料を持ちませんので御説明しかねますけれども、そのときの推定と申しますか、予測ではおそらく横浜のほうの土地の値上がりのほうがより多く値上がりをするのじゃないか、したがっていまここで交換を早くしておったほうが国にとっては有利じゃないか、こういう見解のもとに分けまして、最初に土地の交換だけをした、こういうふうに相なっております。
  47. 山内広

    ○山内委員 この問題は、初めから建築交換に目的があったわけです。ですから、主要目的である川崎の収容所の環境が悪いから、いいところの横浜にでき上がって、これが交換がスムーズにいけば、かりに土地の値段がどうあろうと、これは目的のいいところにいったんだし、かえって坪単価の問題よりも、行政の目的からいけば、交換してしまったほうがこういう問題であなた方が突っつかれることがないわけです。ところが相手方がキャンセルした。そこの関係が、なぜキャンセルされたのか。相手方の会社は、品物が安くなって、しかも設備資金が引き締めにあった。これは池田さんの金融政策の引き締めの犠牲になっておるわけです。それで法務大臣がこういう苦境に入らざるを得なくなってしまった。まあ極端に言えばそういうところもある。そういうことは別といたしまして、この第一次契約を結ぶときに第二次契約まで結ばなかった。それは単なる値段があるから急ぐ、そうして第一次だけやった、ここが私はふに落ちない点なんです。これは、かりに価格がいまおっしゃったようなことが予想されるにしても、もうそのときは去年の三月ですから、政府の設備資金の投資というものを締めてくる政策もわかっておる、貿易の自由化でもって、この用水フタル酸の値段が下がるということも見通しがついておる。そういう相手方の会社と取引を結ぶときに一緒に契約しなかったということ、そうしてすでに事態がどんどん進んだというところにこういうミスがあったと私は判断するわけです。なぜ第二次契約をこのときに結ばなかったのか、こうして国に損害を与えている責任もそこにあると私は思う。後ほどもう少し詳しく聞きたいと思まいすけれども、もう一ぺん第一次契約、第二次契約を分離した理由を御説明いただきたい。
  48. 宮川国生

    ○宮川説明員 建築交換は、これは各省、この場合でしたら法務省の御計画を大蔵省が承認するという立場でございますけれども、ただいまお話がございました、なぜ第二次契約をそのときに一緒にやらなかったか、こういう御質問でございます。建築交換の手続といいますのは非常に複雑でございまして、まず計画の承認というものをしまして、その次には、国有財産法の規定に基づきまして、取得の協議というものが各省からまた大蔵省のほうに回ります。その次は用途廃止という手続がございます。その次は売り払い及び購入契約と申しますか、交換契約、こういうようないろいろな段階を経なければいけませんので、非常に手続の面で時間を食うということが予想されます。そういう予想がされましたので、せめて土地だけでも早くしたほうが有利ではないかということでやったわけであります。その土地の交換をした当時は、当然川崎化成というものはりっぱな会社で、大体そういう契約といいますか、話し合いを破棄するというような会社ではないという見通しのもとにこの計画は立てられたようでございまして、大蔵省もそうだろうということで承認したわけでございますが、その点、会社の選定というものに対して非常に不明であったと言われますればそのとおりでございます。
  49. 山内広

    ○山内委員 前回のこの委員会での御説明では、行政財産のままでは処分ができないために、普通財産に、すなわち大蔵省に所管を移して、そしてこれは国有財産法の二十七条でしたかの規定によって、従来どおり法務省が管理をするということで普通財産に移した、このことの事情は前の御説明のとおりでよろしいのですか、その点を確認しておきます。
  50. 宮川国生

    ○宮川説明員 一般的に申し上げますと、行政財産のままでこれを交換に出したり売り払いにするということは、行政財産としての性格から申しまして当然十八条で禁止してあります。したがって、土地を交換したり処分するときは、当然行政財産の用途を廃止するということになります。用途を廃止すると普通財産ということになります。普通財産は、国有財産法の六条の規定によりまして、大蔵大臣が、これを管理し、または処分するということになっておりまして、これは各省でそれぞればらばらに処分されるよりも大蔵大臣のほうで統一的に処分したほうがよりベターであろう、こういう趣旨から出ておるわけでございますが、それかと申しましても、この六条を受けまして八条というものがありまして、八条では、その六条のうらはらになっている規定でございますが、行政財産の用途を廃止すれば各省各庁の長は大蔵大臣にこれを引き継がなければならぬという引き継ぎの規定でございます。したがって、用途の廃止をしたときには大蔵大臣に引き継ぎ、大蔵大臣が処分するということになりますが、すべての場合に大蔵大臣が処分するということも適当ではないということで、ただし書きの規定がございまして、ただし政令で定める特別会計あるいは引き継ぐことを適当としないものとして政令で定めたもの、これは大蔵大臣に引き継がないで、各省各庁の普通財産という姿で処分をしてもいい、こういうことになるわけでございます。この引き継ぐことを適当としないものとして政令で定めるものというのが、国有財産法施行令の五条でございまして、この中には、交換に供するため用途廃止をするもの、それから使用にたえない建物で取りこわしの目的で用途を廃止するもの、技術上その他の関係から著しく不適当と認められるもの、こういうふうなことが施行令で規定してございます。したがって、本筋から申しますれば、普通の土地土地交換の場合には一たん法務省で用途廃止をされまして、普通財産にされて、それを大蔵大臣に引き継いで、大蔵省で交換をしまして、そして交換して取得したものをまた法務省に所管がえをする、こういうのが本来の筋かもしれませんけれども、その点は、こういった交換のために用途を廃止するときはこの手続を省略する、こういう意味におきまして、これは法務省自身のほうで交換をしていただく、こういうふうになっております。
  51. 山内広

    ○山内委員 前の御説明と大差がないわけです。そこで、私は国有財産法をちょっとあたってみましたが、いま御説明のあったような措置であることは法的にも私理解ができるわけです。ただ行政財産のままで処分ができない、交換できない、そいつを普通財産に切りかえなければならぬという立法のたてまえからいきまして、これを使っておる各省各庁がまちまちな処分をしてはいけないということで、大蔵省が今度はどうしてもこの財産の処分というものに目を光らせなければならぬわけです。ところが、今度の場合はまだ使っておるのですから、八条によって政令の定める交換の目的があるのですから、そういう措置をされたことについては異議はないけれども、この普通財産に直したというこの目的は、私は遂げていないと思うのです。その一つは、第一次に川崎化成と契約を結んだときのこちらのほうの、甲の側は川崎の収容所の所長さんがおやりになっている。一体これは違法な契約じゃないのではないですか。あなたのほうの大蔵省に所管がえした普通財産を、使用しておる行政財産の使用者であった所長が相手方と契約を結ぶというのは、これはどういうことですか。当然普通財産であれば関東財務局なり局長が相手方となって契約を結ばなかったらおかしい。私は法律の専門家でもありません、会計事務にはしろうとですからわかりませんけれども、常識判断として、そういうばかげたことを許すのであったら普通財産に直す意味が何もないと思う。その点についてはどうですか。
  52. 宮川国生

    ○宮川説明員 先ほどの説明がちょっと不十分だったかもしれませんが、いまおっしゃいました普通財産に落とすというのは、法務省所管の普通財産に落とすということでございます。したがって、法務省所管の普通財産である川崎の収容所ということで、所管しております川崎収容所長さんというのが契約をされたわけであります。したがって、先ほど私が申し上げました引き継ぐことは不必要だというのは、大蔵大臣に引き継がなくて、各省各庁で普通財産として交換されてよろしゅうございますという規定が八条ないし施行令六条にある、こういう御説明を申し上げたのでございます。
  53. 山内広

    ○山内委員 いまの御説明でそれはよろしいのですか。それではもう一点お尋ねいたしますが、そういう使用目的を変えた場合には会計検査院に報告する義務を負わせているわけです。これは会計検査院は報告されておりますか。
  54. 住吉君彦

    ○住吉説明員 いたしております。法務省のほうから会計検査院のほうへ報告いたしております。
  55. 山内広

    ○山内委員 報告しておるという御回答であれば、それを掘り下げて聞くわけにもいかぬのですが、この前の委員会のときは、これは国有財産中央審議会か地方審議会かわかりませんけれども、どちらの審議も得ないという御回答でした。これは、いまもって全然審議会におかけにならぬのですか。
  56. 宮川国生

    ○宮川説明員 審議会へかけますのは、これもちょっとめんどうくさいのでありますけれども、本件の上地土地交換の場合と、もう一つ建築交換、これは問題が二つに分かれると思います。土地土地交換の場合には、審議会にいまもってまだかけておりません。と申しますのは、従来国有財産地方審議会にかけるべき議題と申しますのは、関東財務局がみずから所掌しております普通財産の所管の部局長としてかける場合、もう一つは、総轄大臣という立場でかける場合、二つございます。その場合、土地土地交換の場合は後者のほうの総轄大臣という立場でかけるわけでございます。つまり法務省のほうで交換をしたいということで大蔵省に協議があります。その協議がいいか悪いか、こういう点で審議会は判断する立場にあるわけでございます。そういう点につきまして、いままでは関東財務局自身が所管しております大蔵省の普通財産、こういろた処分というものに重点を置いていました結果、したがってそういった総轄権に関することは、よほど重要なものでない限りはかけていないという慣例になっておりましたので、それで土地土地交換の場合、国有財産地方審議会には従来はかけてないというのが例でございます。しかしながら、もう国有財産の普通財産の処分ということがだいぶ進みましたので、今後はそういった総轄権といった面の仕事というものが大事な仕事になってくると思いますので、各財務局には、総轄権に関する重要事項は審議会にかけろという抽象的な注意は出ておるのでございますけれども、これは各財務局の実情に応じてかけたりかけなかったりしております。この点、重要な財産については今後かけるようにいたしたいと思っております。
  57. 山内広

    ○山内委員 あなたの前任者の方も、こういう財産は将来は審議会にかけるというお話があったわけです。そこで、私繰り返して申し上げますけれども、大蔵省の普通財産であれば当然審議会にかけて、こういうものは財務局長がいろいろ慎重を期してやる。ところが、法務省の普通財産だからそういうものはかけなくてもいいのだ、こういう法解釈でもってかけない。そうしますと、こういう営利を目的とする会社との契約をこの行政財産を所管しておる所長がみずから契約し、今度は第二次の契約ということになれば、これは幸いにしてか不幸かわかりませんが、キャンセルされたけれども、これまた所長が本牧の新しいものと交換する、こういうことになったら、国有財産の正しい処分というものは実際できなくなってしまう。こういうわがままができないように普通財産にしろ、行政財産のままでは処分ができないという法律がつくられているのでしょう。だから、そういう点では、大蔵省のこの問題についての考え方は非常に甘いが、将来は直すという誠意ある御答弁ですから、私は了解はしますけれども一、こういう点については、はなはだ遺憾な処置をしたと思うわけです。  そうしますと、今度はいよいよ本牧の土地は川崎のほうと交換したのですから、もう国の財産としてこれは登記は済んでおるのですか。
  58. 住吉君彦

    ○住吉説明員 登記は済んでおります。
  59. 山内広

    ○山内委員 そこで、この第二次契約がそのとおり行なわれて、本牧に新しい建物ができれば、川崎と完全に交換になるわけです。ところが、これができないために、新たに三十八年度予算として新築の予算を一億五千二百万円ほど組んで、これはもう予算が通過しておりますから、建築にかかっておるわけです。そうしますと、第二次契約に予定していた建物と残りの土地、これは一体将来どういうふうに処分されるお考えなのか。川崎化成はもう買ってくれないのですから、これはどういうふうに使用しようとする考えか、その点をひとつ伺いたい。
  60. 宮川国生

    ○宮川説明員 お答えいたします、川崎の第二次分は、現在すでに大蔵省の普通財産になっておりまして、そうして現在法務省にお貸ししている、こういう立場にございます。したがって、今度横浜に法務省の収容所ができますと、そちらに移転される。そうなりますと、あとはどこにも貸していない、いわゆる未利用の大蔵省の普通財産、こういうことになります。  大蔵省のそういった未利用の普通財産、こういう土地をどう処分するかという一般的なことを申し上げますと、現在非常に土地が少なくなっているときでございますので、これは公共用とかあるいは公用、公益事業、こういったことにまず第一に充てる。それから土地柄その他でそういうことに当てられないときには、重要産業とか、そういうところからもし申請があれば払い下げるということになっておりますが、現在のところ、川崎の土地をどういうふうに処理するかということは、現在まだ法務省でお使いになっておりますので、具体的な御返事はいたしかねます。
  61. 山内広

    ○山内委員 今の御回答の中にもちょっと私不審なお話があるわけです。先ほどは、これは普通財産には直したけれども、法務省の普通財産だ。ところが、いまは大蔵省の普通財産として管理する。その辺の取り扱いが一貫していないようですが、どうですか。
  62. 宮川国生

    ○宮川説明員 先ほど申しましたのは、第一次の土地土地交換のことを申し上げたのです。第二次の土地の分、これはどうなるかと申しますと、建築交換の方式でやるわけですが、建築交換の方式は、実は先ほど、法務省のほうで売り渡しの契約をするのではないかと先生おっしゃいましたが、そうではございませんので、建築交換の場合には、売りと買いという形式をとっております。なぜそういう形式をとるかと申しますと、従来交換というのは、予算上はちっともあらわれてこないわけです。したがって、あまりにも金額が大きなもの、そういったものを予算上全然あらわさずにやってしまうということは、国会の予算審議権というものとの関係はどうだろうかということで、金額の大きいものにつきましては、実質は交換でございますけれども、予算上、買うほうは庁舎等特別取得費という名目で予算に計上します。それから渡すほうは売るほうというわけで、庁舎等特別売り払い代金ということで、両建ての形で予算上載っております。したがって実質は交換でございますが、形式的には売りと買い、こういうかっこうで処理しておるわけであります。売りと買いということになりますと、渡す財産は売りでございますから、売るのは交換でございませんで、したがって大蔵省が統一的にやる、こういうことで、大蔵省の普通財産として売るわけであります。そういう前提のもとに、現在もうすでに普通財産にしてしまっておる、こういうことでございます。
  63. 山内広

    ○山内委員 それは課長さん、非常に答弁に困っての苦しい御発言だと思うのです。第一次に交換したのは法務省の普通財産だ。ところがこれは法務省が必要なところじゃないのです。不用だから本牧との土地の交換ができるので、法務省としては現在残っている第二次分が必要なんです。これは法務省の財産として残すべきなんです。ですから、直接使ってないところを普通財産にして、それから建築交換をやろうというのがほんとうの気持ちなんでしょう。ところが契約を所長が相手方になってやってしまったので、それは法務省の所管だと言わざるを得なくなって、そういう回答が出たと思うのです。そうしますと、これは国有財産の台帳にはどういうふうに載るのですか、担当の方に御説明いただきたい。
  64. 住吉君彦

    ○住吉説明員 今大蔵省の方から御説明がございましたように、第一次の土地土地交換の土地は、私のほうの国有財産台帳に載っかっております。それで第二次の取得費による建築交換、この関係は大蔵省のほうの台帳に載るわけであります。
  65. 山内広

    ○山内委員 この問題は、私もしろうとで、あまり突っつくとかえってしろうとにものを教えるのでお困りになるのかもしれませんが、しかし疑問はたくさん残っておりますけれども、現実に局長から御説明のあったとおり、これはもうすでに移らなければならぬことになっており、工事もどんどん進められておることですから、私はあえて手続上の問題でもってこの仕事ができなくなるような追究はいたさないつもりであります。しかも国の財産を処分するにあたっての大蔵省のたてまえについては、今後改めたいという方針もみずから出されておりますので、その点については大体了解したいと思うわけです。  ところで、去年のうちにもうすでに横浜に収容所ができるというたてまえで一カ年の時限立法をしまして、これは三月三十一日で終わっておりますから、現実には川崎の収容所というものはなくなることになっておるのです。これは一年以内の政令で指定する日をもってなくなるわけです。その手続の片一方、国会には一カ年間の延長もお願いしておる。ところがそれがまだこうして審議の過程にあるということで、これはどういう措置をされたのか、その点についての御説明をいただきたい。
  66. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますが、御承知のように、昨年の法務省設置法の一部を改正する法律によりまして、川崎の入国者収容所は同法の公布の日、すなわち昨年の三月三十一日から一年以内に横浜に移転ということになっておったわけでございます。ところが、これにつきましては、今回御提案申し上げております法律案によりまして、その期限をさらに一年延長をお願いいたしたわけであります。それが国会における御審議の過程におきまして、その最終期限である本年の三月三十日が到来いたしたわけです。そこで、到来いたすこととなる直前におきまして、この問題をいかにすべきかということを政府部門で問題にいたしまして、法政局等ともその解釈について協議をいたしましたが、政府部内におきましては、かような立法につきまして期限が到来する場合には、その施行期日を定める政令を出すといなとにかかわらず、その期限の終わりをもって施行されたことになるという解釈が最も法律を尊重するゆえんであるという結論に到達いたしました。そこで、そういうことになりますれば、その期限のくる直前に政府としては政令を出して横浜に正式に移転すべきである、こういう結論のもとに、本年の政令六十八号をもちまして、法務省設置法の一部を改正する法律中法務省設置法別表十の改正規定の施行期日を定める政令というものを公布いたしたわけであります。その結果、川崎入国者収容所というものはなくなり、横浜入国者収容所となったわけであります。現実の移転の実行につきましては、現在横浜市内にございます横浜入国管理事務所に川崎入国者収容所の事務を移しまして、その庁舎におきまして両者の事務をとるということになるわけでございますが、収容する室等につきましての施設設置がこれに伴いませんので、その収容室につきましては、従前の川崎の入国者収容所の位置に置くという意味におきまして、法務大臣の告示をもちまして、これを横浜入国者収容所川崎収容室として設置することになって現在に及んでおるわけでございます。
  67. 山内広

    ○山内委員 まあやむを得ないこととして、苦労されたことはよくわかります。これよりほか手がなかったと思います。  そこで、ちょっとこれはさかのぼってお伺いしますが、契約担当官というものが発令されることになっていますが、法務省ではどなたが契約担当官になっておりますか。
  68. 住吉君彦

    ○住吉説明員 施設費につきましては、私が契約担当官になっております。そのほか物品その他たくさんございますが、場合によれば経理部長ということもございます。
  69. 山内広

    ○山内委員 この川崎の小黒所長さんはどうなっておるのですか。
  70. 住吉君彦

    ○住吉説明員 一次交換の場合の所長の身分でございますか、国有財産の管理者ということでございましょうか。
  71. 山内広

    ○山内委員 管理者としてはよくわかるのです。管理者としての所長が契約の相手方になるということは常識判断ですけれども、この種の財産処分の公正を期して、つとめてこういう人が相手方になってはいかぬということで、普通財産に直してみたり、あるいは契約担当官というものを指定してやらしたり、いろいろあるわけです。ぼくはこの場合にあまり所長がおやりになったということはふさわしくないという考え方からお聞きしておるわけです。
  72. 住吉君彦

    ○住吉説明員 その当時は、予算決算及び会計令の改正前でございまして、契約担当官という名称ができましたのは、先般の予決令の改正後でございます。それで、先生おっしゃるとおりに、できるだけ契約担当盲あるいは支出官、その会計官吏のチェック・アンド・バランスを考えて、官職を別にするという意味で、現在は契約担当官にはなっておりません。
  73. 山内広

    ○山内委員 今度本牧にできます建物は、川崎化成がみずからつくってこちらに渡せば問題ばあまりないと思いますけれども、今度は直営で建設されておるわけです。ここは、先ほど局長のお話がありましたとおり風致地区であって、地元の反対も非常に強かったのが、了解を遂げたということで、この施設の完ぺきを期するためには、予算面においてもかなりめんどうを見てやらないと、また地元の反対運動が再燃するおそれがあると思うのです。川崎の収容所は、三十一年にああいうだだっ広い埋め立て地につくられて以来、木一本植えてない全く荒涼たるありさまであって、かりにそれが収容所であろうとも、もう少しあの辺に木でも植えて環境をよくすれば、こういう問題はあるいは起きなかったかもしれない、ガスの問題やそういうことは別としても。そういう点で、私は川崎の収容所はあまり適当な管理をしておらなかったという考え方を持っておるわけです。そこで、今度の横浜の収容所は思い切って環境を整備し、快適な措置をしないと、今度また地元民に親切にしてもらえない。特に職員もあそこにおることですし、子供もたくさんおられると思うのですが、そういうたてまえからいって大蔵省や大臣をはじめ局長、りっぱな環境の中に建てるのですから、きらわれないような施設を考えるべきだ。それには、既定の建物だけの予算の中からそういうものを捻出しようとすると非常に無理がかかると思うのです。そういう点について大蔵省はどういうふうにお考えになっておりますか。あるいは大臣のほうのお考えでもいいですが。
  74. 宮川国生

    ○宮川説明員 今回お建てになりますのは一般の営繕費でございますが、国有財産の私のほうの問題と別でございますので、私ちょっと答弁しかねます。
  75. 山内広

    ○山内委員 やはりいまの問題は、無理をして地元に引き受けてもらって、そしてある程度の条件を入れているのですから、これは政策的なものもあると思うのです。大臣のお考えをちょっとお聞きします。
  76. 中垣國男

    中垣国務大臣 この種の建物並びに敷地内における環境というようなものは、御指摘のとおりにできるだけりっぱなものにする必要があると思います。特に先ほど御意見の中にもありましたとおりに、植木などを植えるとかいうことも必要だと思いますが、この問題につきましては、私もあまりよく知っておりませんので、事情を聴取いたしまして、御要望に沿えるように努力をいたしたいと思います。
  77. 山内広

    ○山内委員 実は、あまり喜ばれないのを無理に横浜に持っていくものですから、私きのう横浜の市長さんに電話をかけまして、地元の、反対運動もあったことだが、今後どういうふうに協力してもらえるのか、また地元の市長が協力しなければこれはうまくいかないのです。そういう意味で市長の意見もお聞きしました。市長は、非常に協力的に、前は反対もあったけれども、引き受けた以上はやりたい。そのかわりもう少し法務省のほうでも思い切ってやって、あとから住民から苦情の起きないような措置を講じてほしいんだ、そういう当然な願いを言っておられるわけです。この声にこたえるためにも、特にこの新築の営繕費のほかにもっと環境整備の予算を組みませんと、あそこは、なるほど行ってみますと非常に環境のいいところだ。これは職員にも子供にもきらわれないように、あそこの人たちが快適に住めるような環境にするためには思い切った設備をつくるべきだ、こういうふうに考えますので、特に大臣はこの点で御配慮をいただきたい。だいぶ時間もたっておりますので、私の質問はこれで終わります。
  78. 永山忠則

    永山委員長 受田君。
  79. 受田新吉

    ○受田委員 今度出された法案に直接関係する問題ではありませんけれども、鹿児島入国管理事務所の名瀬港の出張所の次に、大島郡を入れておられるわけでございますが、こうした出張所を和泊に置かれた事情はどういうところにありますか。
  80. 小川清四郎

    ○小川政府委員 和泊港に新らしく出張所を設けました一番大きな理由は、当港におきましては、特に沖繩との出入国も多うございます。また出入港の船舶につきましても、毎年内外船合わせまして百隻をこえておるような事情でございまして、従来におきましては、同港の出入国業務は名瀬港の出張所から常時職員一名を出張させて処理をしておるのでございますけれども、その出張所との距離的な関係、並びに和泊港におきまする最近の業務量等にかんがみまして、今回新たに出張所を置きたいというふうに考えましてお願いを申し上げた次第でございます。
  81. 受田新吉

    ○受田委員 沖繩との交通がひんぱんになったということでございますが、それについてちょっとお尋ねしたいのです。沖繩の住民は日本人ですね。日本人たる沖繩人が入国管理事務の上で、あるいは向こうから送出する事務の上において日本人らしくない取り扱いを受けておらないかどうかをお答え願います。
  82. 小川清四郎

    ○小川政府委員 お答えを申し上げます。  入国管理令関係におきましては、全然日本人と同様な扱いをしておりまして、出入国管理令の六十条、六十一条につきましても、これを沖繩におります日本人に対しても適用いたすことになっておる次第でございまして、出入国管理令上特別な扱いはいたしておらないのでございます。
  83. 受田新吉

    ○受田委員 入ってくるときの検査その他は、日本人が国内を旅行すると全然同じ形になっておるということですか。
  84. 小川清四郎

    ○小川政府委員 たとえば沖繩住民が内地に渡航いたします場合に旅券関係はどうなっておるかということを御説明いたしまして、一例といたしたいと存じますが、米国の民政府といたしましては、日本に対しまして日本渡航証明書というものを発給しており、この発給を受けなければ不法出域と申しますか、不法出国的な処罰をされますので、日本に渡航します場合には、日本旅券は必要といたしませんけれども、民政府から渡航証明書の発給をすることになっております。また内地以外の外国に行きます場合には、この民政府の発給いたします身分証明書でもって旅券にかわるものとして扱われておるのでございます。もちろんただいま申し上げましたように、沖繩住民の内地への渡航につきましては、日本人が帰国する場合と同様の扱いをしておりますので、この証明書を持ってまいりましたときは、入国港におきまして、入国審査官がこれに所定の証印をいたすことになっております。しかし、万一この証明書を所持しない場合におきましても、これは日本人の扱いをしておりますので、入管令としての処罰は受けないことになっておる次第でございます。
  85. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、日本人たる沖繩住民が日本へ密入国しても処罰をしない、こういうことですね。
  86. 小川清四郎

    ○小川政府委員 そのとおりでございます。
  87. 受田新吉

    ○受田委員 先般、沖繩の未成年者だったのですが、密入国をして、保護者がいないというので追い返した事実がありましたが、この取り扱いの実態を御説明願いたいと思います。
  88. 小川清四郎

    ○小川政府委員 私、ただいまのところ、その件につきまして詳細を承知しておらないのでございますが、もしそういう事実がございましたならば、よく取り調べまして適切な処置をいたしたいと存じます。
  89. 受田新吉

    ○受田委員 私、国務大臣たる法務大臣に、ひとつ国策決定の責任者としてお答え願いたいと思います。  沖繩の住民で学を志して、この三月に日本の大学に入学を志さんとしたのが、ついに琉球高等弁務官の承認が得られないというので、日本へ留学はできない。これは留学ではないのです、日本へ当然の日本人として入学するのですから。そういう事件が二件起こっていると私は聞いております。こういうことは傍観をしていいものかどうか。日本人が日本の大学に入学しようとするのに制約を受ける必要はないのでございますが、なぜこれを拒否されたか、これに対する取り扱いはどうされておるか。これは、やはり入国に関係した国務大臣としての御答弁だと思うのですがね。
  90. 中垣國男

    中垣国務大臣 局長から答弁いたさせます。
  91. 小川清四郎

    ○小川政府委員 ただいまの御指摘のような問題につきましては、私ども入管局といたしましては、ただいま申し上げましたように、日本人として扱っておるのでございますが、入学その他の関係におきまして、特別な事情からそういう問題が発生してくる場合があるいはあるかもしれないという懸念もございますので、実情をよく調査いたしまして対処をいたしたいと存じます。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 これは、中垣法務大臣、たいへんな大事な問題なんです。日本国内であれば、どのような貧乏な家庭の子供でも学問の自由が許されておる。ところが、同じ日本人でありながら、沖繩の子弟には、同じ母国の大学に入ることさえも学問の自由が許されていないというような取り扱いは、外交交渉の上においても厳たる態度で、あなたもやはり外交交渉には国務大臣として当然参画されるわけでございますので、ひとつ重大な決意を持って、施政権の一部がこの点からでも実現できるように、学問の自由の一面だけでも幕を払いのけて青空を見ることができるように御努力をしてもらわなければいかぬと思います。よろしゅうございますね、大臣
  93. 中垣國男

    中垣国務大臣 先ほど具体的に指摘されました問題につきましては、実情をよく存じませんので、確たる答えはできないのでありますが、先ほど局長が答弁いたしましたように、沖繩に住んでおる人々が日本へ来る場合に、それは純粋の日本人としての取り扱いをしておるので、処罰行為等はない、こういうことを申し上げまして、無制限に日本に入ってくることを認めておるわけであります。しかしながら、御承知のとおり、沖繩の施政権というものは米軍にあるわけでありますから、そういう米国政府の都合によりまして、沖繩の出入国の管理、そのいうことについての問題があろうかと思います。先ほど入管局長のお答えは、日本政府から見た沖繩人の出入国に対する答えであったろうと思います。  なおまた、そういう沖繩の人々が日本に来て学問をしたいということについて、日本といたしまして、それを司法的な立場におきまして拒否したかどうかということは、私はそういうことはなかったのじゃないかと思います。ただいまのあなたの御指摘は、あったようでありますから、十分調査してみたいと思います。  それから、閣僚の一人として、そういうことは、たとえ施政権の一部でもこの際日本側に取り返していくべきじゃないかということでございますが、それらのことにつきましては、外交問題等とのかね合いもありますので、ここでお答え申し上げることは差し控えますけれども、御趣旨はよくわかりますので、善処いたしたいと思います。
  94. 山内広

    ○山内委員 関連して。きょうで質疑が終結されるそうでありますので、いまの受田さんのとは直接には関係ありませんけれども、収容所に収容された人の処遇の問題で一点聞いておきたいと思います。  今度は環境がよくなるわけですが、中に入っている人の食費の問題です。私も実は数字をつかんでおるのですけれども、これは、中国人に対しては一日七十六円八十六銭、欧米人については百三十四円という数字を聞いておりますが、間違いありませんか。
  95. 小川清四郎

    ○小川政府委員 入国者収容所の食費につきましては、前々から欧米人と東洋人との間に差別待遇があるということで、たびたび両院におきましても御質疑を受けておるわけでございます。私どもといたしましても、欧米人と東洋人との食生活の相違と申しますか、そういう点につきまして、これを全然無視するわけにはまいりませんので、一応の差別をしております。ただいま御指摘の金額のとおりでございます。しかし、これは私どもの考えといたしましては、むしろ東洋人に対する食費のほうを値上げをいたしまして、一般欧米人並みにいたしたいということで、毎年食費の増額につきまして予算上のお願いをしてまいっておりまして、ようやく七十七円余に上がりました次第でございますので、御了承をいただきたいと存じます。もちろん将来におきましても、この努力は続けてまいりたいと存じます。  それからもう一つ申し上げたい点は、刑務所の食費との比較におきましては、いささか数字もございますが、収容所のほうが性格上、いわゆる船待ち場所というふうにもなっておりますし、待遇をよくしてあるのでございます。単価が、カロリー計算にすれば、被収容者処遇規則に適合するようにはなっておりますけれども、これはもちろん収容者の数によりまして、やはりいろいろとそのときの状況が変わってまいるということはあろうと存じますが、一応七十七円余で現在のところはやっておる次第でございます。
  96. 山内広

    ○山内委員 欧米人と中国人の差のあることも問題であります。ちょっと半分に近いのですから、無理だと思いますが、特に一日七十六円八十六銭、どういう算術計算で出したのかわかりませんけれども、これで一体カロリーはどのくらいになっておるのですか。
  97. 小川清四郎

    ○小川政府委員 ただいま手元にございます表にはカロリー計算がちょっとあらわれておらないのでござまいますが、主食と副食と分けまして、一人当たりの給与量を定めておるようでございます。この内容によりまして、被収容者処遇規則で定めております三千カロリー程度のものはとれるように栄養士のほうで勘案しておることでございますから、おそらく間違いはないのではないかと存じております。
  98. 山内広

    ○山内委員 この調理人の中には、正式な免状をとった栄養士を入れてあるのですか。わかりました。  関連は終わります。
  99. 受田新吉

    ○受田委員 入国管理に関係してさらに伺いますが、日本人たる沖繩人が、南米ペルーに約五万に近い移住者があるわけです。その人々が母国へ帰るのに、ペルー在住の沖繩人が沖繩へ帰るのに、日本を通っていく場合に、二重の入国手続を必要としておる。同じ国へ帰るのに、日本へ来る手続と沖繩へ帰る手続と、二重に要る、こういう複雑なやり方をしないで、一本の旅券で帰れるようにしてほしいということを、ペルー在住の日本人たる沖繩人が強く訴えてきておるわけです。ペルーには、まだあそこで国籍を獲得していない日本人たる沖繩人がたくさんあるということですからね。その人が沖繩へ帰るのに、こんなにややこしい手続をしなければならないのはたいへんだという不満感を持っておるのでございますが、これに対するお取り扱いを簡略にする外交交渉なり、あるいは国内的な取り扱いができるものかどうか。
  100. 小川清四郎

    ○小川政府委員 南米に移民いたしました沖繩県民が沖繩に帰国する場合の手続でございますが、大体総理府の特別地域連絡局の所管に属することのように伺っておりますので、私のほうのお答えがあるいは間違っておることをおそれますけれども、お答え申し上げます。  ただいま申しましたように、沖繩県民が南米に移住しております。これは、沖繩にございます米国民政府の発給の先ほど申しました身分証明書でございますが、これを所持しております場合には、その証明書のみで沖繩に帰ることができるのでございます。しかしながら、終戦前に日本旅券を持って移住しておる沖繩県民もたくさんあり得ると思うのでございますが、その人たちは、この身分証明書を持っておらない場合があると思います。その場合には、もよりの米国の公館を通じまして、米国民政府の発給いたしますミリタリー・パー・ミットと申しておりますが、そういう許可証を取りつける必要があるというふうに聞いております。それで、万一日本の旅券を以前から持っておりました者が内地に立ち寄るというふうな場合には、日本の旅券法によりまして失効をいたしますので、あらためて総理府の特別地域連絡局から移民証明書を受けまして、その証明書にアメリカ民政府の入域許可をとらなければならないというふうなたいへんめんどうな手続になっておる次第でございます。実情を申し上げました。  この問題につきましては、私どもが聞いておりますところによりますと、外務省のほうでもいろいろ外交折衝によって、こういう不便な取り扱いをなるべくしないで済むようにやっておられると仄聞はしております。
  101. 受田新吉

    ○受田委員 このまことに不便な取り扱いは、日本人として認めない形になっておるわけです。こういう点にも、日本政府日本人であることをはっきり主張し、また沖繩人も日本人であることを強く自信を持っておる段階で、手続を二重にもとらなければならぬような、他国人のような旅行手続ということを一刻も早くとらざるように、大臣、やはり入国関係の事務でございますから、あなたが外務大臣とよく相談されて、米政府からはっきりと約束をおとりになるということが必要だと思うのです。いろいろな問題がころがっていますね。ひとつ大臣の信念のほどを吐露していただきたいと思います。
  102. 中垣國男

    中垣国務大臣 沖繩の人たちに対しまして、受田先生が言われるような感情というものは、おそらく何人も内地の人々は持っていると思います。しかしながら、施政権をアメリカが持っておるという現実も無視することができない状態であります。できるだけそういう摩擦がない限り、いま言われたような問題等につきましては、日本政府みずからが積極的に努力する問題だと思っておりますので、外務大臣ともよく話し合いの上で、御要望に沿えるような努力をいたしてまいりたいと思います。
  103. 受田新吉

    ○受田委員 大臣だけに一、二問お尋ねします。  この少年鑑別所の所在地の変更のところがあるわけですが、少年鑑別所に関係して、この間からの質疑応答で少年犯罪が累増しておることが答弁に出ておるわけです。特に年齢構成の上から、少年法に規定してある満二十歳という年齢が問題で、二十歳に近い十九歳、十八歳というところの犯罪が非常に多いということ、これは青少年白書を読んでみましてもはっきり数字が出ておるのです。つまり東京都におきましても、地方もそうですが、大体満十八歳になれば公務員となる資格がある。そういう計算で給与法もきまっておる。そういう意味から、満十八歳に達すれば、常人の認識をもって誤った判断があった場合、あるいは誤った行為があった場合に、これに厳重なる処罰をするという考え方も成り立つのではないかと思うのです。したがって、少年法が二十歳までは少年の取り扱いをしておるので少々極悪の犯罪を犯しても大丈夫だというようなことではないか。十九歳程度、二十歳直前の年齢というものは、常人のおとなとしての意識と行動をする年齢層でございますが、そういうものを少年法の寛大な規定で、殺人事件を起こしても死刑になることはないと、安心して殺人をする、こういうことになる危険もあると思うのでございます。この少年犯罰の趨勢というものをながめると、だんだん犯罪年齢が低下しておる。小学生や中学生も犯罪を犯しておる。こういうことに対して、そうした少年法の改正の意図というようなものをお持ちになっておらないかどうか、御答弁願いたい。
  104. 中垣國男

    中垣国務大臣 少年犯罪につきましては、触法少年並びに虞犯少年を含めまして、法務省といたしましても、御指摘のように統計等によりまして重大な関心を持っておるわけでありますが、特に十六、七歳から十九歳までのその三、四年の開きというものは、人間の肉体的、精神的構造の上から見ましても、一年か二年の開きがたいへんな開きがあるわけでございまして、そういう点を考慮に入れますと、犯罪を犯した少年の管理というものは、非常に法務省といたしましてもむずかしいわけであります。特に最近の少年犯罪の悪質化と申しますか、非常に残虐な犯罪等が数多く出てまいっておりますし、戦前でありますと想像もできなかったような強姦であるとか輪姦であるというような、その称の犯罪も少年犯罪の中に統計的には相当にあらわれてまいっておるのでありますから、これを検察行政、刑平行政の中で推し進めていく上に、少年の年齢ということ等がいろいろ問題になってくるわけであります。そういう問題を含めまして、少年法をいま法務省で検討いたしておりますが、御指摘のように少年の年齢というもの、特に犯罪少年の年齢というものが現行法で適当であるというふうには実は考えておりません。だからといって、直ちに改正をするということを言明することもどうかと思いますので、十分調査を重ねまして、検討の上で法務省としましては最後的な結論を出していきたい、こういう考え方でやっております。
  105. 受田新吉

    ○受田委員 少年法に規定する年齢が適当であると思ってない、しかし別途検討をしていきたい、こういうことでございます。現実に児童福祉法にしても、あるいは労働基準法にしても、大体十八歳というところまでを保護の対象にしておるわけです。二十歳までを保護の対象にしておるというようなものは、これは恩給法やその他の扶助料を出すときの年齢ぐらいなもので、あとはもう満十八歳をもって一応おとな並みに取り扱っておるのが一本のあらゆる社会立法の通念になっておるわけです。したがって、それまでは保護を受ける、しかし、それからは少年としての保護を受けてないという社会立法を考えたときに、十九歳-二十歳という年齢のところが一つの間隙になっておるわけですね。これがいわゆる死角になっておるわけです。その年齢層の犯罪が一番多いということがはっきりこの数字に出ておる。これは別に読み上げるまでもなく、御存じのとおりです。一番問題の十八から二十歳までの間ですね。もう意識的に少年法の寛大な処置を前提にした犯罪すら行なっておる者がいると思うのです。だから、十八歳をもって精神的にも肉体的にも一応の成熟時点とした国内の各種の立法措置を思うときに、民法第三条の二十歳という年齢にも一つの問題があると思うのです。その面では、民法の改正ということも私は必要になってくるのじゃないかと思うのです。これだけ文明が進歩している。ソ連などはもう十八歳をもってはっきりと成年齢としておるはずです。そういうことを思うと、日本の成年齢の取り扱い、少年法の年齢の取り扱いというものは適当でないといういまの大臣のお等えの裏づけとして何らかの検討を加える、これが必要であろうと思うのです。これに関係して、私はそういう処罰の取り扱いをいま申し上げたのですが、これは犯罪防止、予防のためにも必要である、意識して、法律がこうなっておるということを周知徹底させることによってはっきりするわけですから。ただ問題は、せっかく自民党の長期政権でこの豊かな国家ができておるといいながら、いまの犯罪少年、虞犯少年にしましても触法少年にしましても、こういう特殊な事情のものも含めて考えられることは、社会環境というものが不幸な家庭をつくっておる。両親がいないとか、二号さんを持っておるおとうさんがおるとか、あるいは非常に貧困で窮迫した家庭であるとか、どこかに暗い社会の一面がひそんでいて、そこから犯罪というものが、経済的にも家庭的にもまともでないところから発生するというこの実情は、これまた私は社会通念になっておると思うのです。まずそういう貧困をなくすること、教育によって社会を明るくすること、そういうような少年犯罪の原因を防除する幾つかの施策が要ると思うのでございますが、残念ながら日本の実情は、そうした私たちの願いとはなはだかけ離れた現実でございます。一部に豊かな人が繁栄をし、他方に働けども働けども暮らしの楽にならざる大衆がおる。きょうも日雇い労務の皆さんが盛んに陳情しておられる。この食うことが十分できなくて、二百円か三百円の安い賃金で暮らしておる家庭の子供さんたちはそこにひがみも持ちますよ。ここに政治の貧困から犯罪が発生しておるということを中垣国務大臣はとくと考えていただかなければならぬと思うのです。したがって、社会環境をよくし、貧困から救い、社会的な不遇から救うところの努力をして、累増する少年犯罪を防止するという基本的な国策を打ち立てなければならぬと思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  106. 中垣國男

    中垣国務大臣 お答えいたします。  第二次大戦後の各国の少年犯罪等の傾向を見ますと、大体日本と同じように、数字的には非常に増加しておるようであります。これらの原因というものは、長期にわたる戦争によりまして、家庭並びに社会、親子関係というようなものに非常に大きな悪い変化、影響等があった、そういうこと等も今日の少年犯罪を生んでおる大きな原因ではなかろうかと思います。また日本におきましても、少年犯罪が激増しつつある今日、国としましても非常に重大な問題でありますので、当然のことといたしまして、政府はこれらに対しましての総合的な施策を生み出さなければならない必要があるわけであります。人づく懇談会等におきましても、非行少年問題は幾たびか話題にもなっております。そういう話題の中から重要な二、三のものを拾い上げて申し上げますと、第一に家庭の環境、社会の環境、そういったようなものが一体どういう影響を与えておるかということ、次には家庭教育、学校教育、社会教育、こういう段階的な教育の面を通じてのそういう何らかの影響、それから、結論的には道義が支配するようなそういう社会の建設、こういったことが議論にはなっておるのでありますけれども、いまここで国民に問うような基本的なものはまだ確立されておりません。法務省といたしましては、一般的な少年対策等は別にいたしまして、非行少年、特に触法少年、虞犯少年、これらに対しましての発生の原因であるとか、それからそれの矯正並びに管理の問題、それから出所後の彼らに対する処遇の問題、そういうこと等につきまして突き詰めたものを結論を出したいと考えております。五月の二十四日でありましたか、全国の少年係検事会同をいたしまして、非常に時間をかけてこれらの問題も討議したのでありますが、それらの資料ももとにいたしまして、法務省といたしましては、法務省独自の非行少年対策を打ち立てたいと考えておるところでございます。  それから国務大臣としての私に対するお尋ねでありますが、受田先生も知っておられますとおりに、いまの少年問題に対する関係省としましては文部省、厚生省、労働省、自治省等各省にまたがっておる関係もございますので、私が内閣を代表する立場で申し上げるのは差し控えさせていただきますが、真剣に池田内閣の重要課題の一つといたしまして、人づくり政策の一環の中にこれらの問題を取り上げておるという次第でございます。
  107. 受田新吉

    ○受田委員 大臣、あなたはかつて厚生政務次官もやられ、こうした厚生行政にもたんのうでいらっしゃる、そういう実績を持っておられる。しかも、こういう犯罪防止の責任者としては、国務大臣の中であなたが主任国務大臣です。したがって、青少年の犯罪というのは、文教政策とタイアップする問題でございますけれども、少なくとも池田内閣の人づくり政策の中に、この前途ある青少年をむしばむこういう社会環境の悪を追放することと、特に貧乏追放という国策をりっぱに遂行していただいて、明るい社会環境によって子供を育て上げるという児童憲章のあの宣言そのままの社会をつくって、前途ある子供を守ろうじゃありませんか。この間の事件を見てごらんなさい。中田事件、あるいは橋から恋人を川へ落として殺した青年の事件、みんな不幸な家庭環境です。貧乏と戦っております。まことにみじめな貧乏人であるということが犯罪人の実態調査で明らかである。まれに最近中流家庭にこれが波及しておりますけれども、犯罪者の巣くつはそういう貧困と社会環境の悪さです。これを取り除いて、同じ人間として生まれて同じ太陽のもとにすくすくと伸びる、こういう政治を人づくりの基本方針として、青少年問題協議会が中央にもあり地方にもありして、国家予算も思い切ってとって、子供たちにも娯楽においてもスポーツにおいても道を開いてやる。基本的な青少年をしあわせにする国策を進めてもらって、一部の人が繁栄するようなわがままをがちんと押えて、経済の二重構造、所得格差を拡大するという政策をお取りやめになることを御注文しておきます。よろしゅうございますね。――ではおしまいに、大臣、あなたも法務委員会へお呼び出しを受けておるそうでありますが、法務省の行政機構の根っこの法案をいま審査しておる段階でございますから、法務委員会にも法務省がどうなるかという重大な法案だからがまんしてくれということで、ひとつもう一、二分ほどがまんしていただきたい。この法務省の大事なお仕事の一つである最高裁判所の裁判官の任命について、法務大臣は裁判所長官及び裁判官についてどういう権能を持っておられるのか、御答弁願いたいのです。
  108. 中垣國男

    中垣国務大臣 最高裁判所の裁判官は、御承知のとおりに内閣が任命をいたしまして、天皇がこれを認証するという形でできるわけであります。これに対して実は何らの権能も法務大臣としてはございません。ただし国務大臣といたしまして、内閣の一員でございますので、この内閣の任命につきましては当然意見を申し上げることができるわけであります。法的な根拠等はございませんけれども、従来の慣例によりまして、裁判官の候補者の名簿を内閣に提出するというようなことは、法務大臣国務大臣という立場におきまして、内閣にそれらの名簿を提出した。これは裁判所設置法によります最高裁判所の開設当初からこれらのことが行なわれてまいったわけでございまして、ただいま権限があるかという受田さんのお尋ねでありますが、そういう法的な法務大臣の裁判官選任に対する権限等は、特別に制度としてはないわけでございます。
  109. 受田新吉

    ○受田委員 従来最高裁判所長官の任命及び裁判官の任命にあたって、法務大臣がおぜん立てをしておるという印象を国民は受けておるわけです。ところがいま何ら権限がない、名簿を内閣に提出する事務だけをしておる、こういうことでございました。その提出する名簿の作成はだれがやるわけでございますか。
  110. 中垣國男

    中垣国務大臣 この名簿につきましては、最高裁判所の裁判官は十五名が定員になっております。この選出の方法といたしまして、当時、設置法の論議が行なわれましたときに、最高裁判所の裁判官は十五名、うち五角ば弁護士の出身の者でこれを当てるべきである、五名は学識経験者の中で行ない、あとの五名はいわゆる高等裁判所以下の裁判官、判事によってこれを当てるべきであるという、いわゆる五、五、五、そういうものがありまして、これは国会等におきましてもたびたび法務大臣は呼び出されまして、この五、五、五の比率を尊重をせい、尊重いたしますというようなことをもう何回も何回も繰り返し、そのつどやってきておるわけでありますが、こういうたてまえに基づきまして、定年退職をする方が弁護士であった場合には、その後任を弁護士から選ぶ。その推薦のしかたでありますが、弁護士会に内閣に提出する候補者の推薦を御依頼申し上げます。履歴書が出てまいります。法務大臣といたしましては、国務大臣という立場におきまして、前科のあるなし、禁錮以上の刑があるかどうかといったような、そういうこと等をよく調査いたしまして、私のほうでいろいろその書類をつくりまして内閣にお届けをする、こういうことになっております。これは裁判官の後任の場合、学識経験者の後任の場合、いずれも同じでございます。
  111. 受田新吉

    ○受田委員 最高裁判所長官、これは特に重大な人事でございますが、この場合も同様ですか、それは特別な配慮がされておりますか、最高裁判所長官の場合には、あなたはあっせんの労はおとりにならないで、総理みずからが骨を折るという形になっておるかどうか。
  112. 中垣國男

    中垣国務大臣 最高裁判所の長官の任命につきましては、これも同じく内閣が任命いたしまして、天皇がこれを認証するということでありますが、さてその長官の候補者等につきましては、総理から、もし国務大臣である法務大臣に、そういう特定の人の名前を指名をいたしまして、こういう者についての経歴その他の調査表を出せということであれど出すということになりましょうけれども、元来御承知のとおり、長官はすでに任命された裁判官の中から大体選ばれるのでありますから、ほとんど内閣総理大臣が適当な人を選びまして、内閣にその特定の人の名前を諮問をしまして、異議がなければそのまま手続を終えてきまっていく、こういうことになろうかと考えております。
  113. 受田新吉

    ○受田委員 御協力を申し上げて質問終わらせていただきます。お疲れさまでした。
  114. 永山忠則

    永山委員 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  次会は来たる十八日十時理事会、十時半委員会を開会することととして、本日はこれにて散会いたします。    午後二時二十六分散会