○平井(廸)
政府委員 現在の
法律のたてまえとして、どういうことが考えられるかという点でございますが、現在の
国家公務員共済組合法を例にとりますと、九十九条というので費用
負担の原則というのを定めているわけでございます。その場合に、その第一項の二号におきまして、「長期給付に要する費用については、その費用の予想額と長期給付に係る次項の掛金及び
負担金の額並びにその予定運用収入の額の合計額とが、将来にわたって
財政の均衡を保つことができるように、かつ、毎
事業年度の同項の掛金及び
負担金の額が平準的になるように定める。」こういうような書き方になっております。これを簡単に申しますならば、長期給付の一時金なり、あるいは退職
年金として払われるであろうということが推定されておる額を長期的に計算しまして、それに必要なものを掛金、
負担金でまかなっていく、なるべく掛金、
負担金の率が同じ率でいくようにという計算をするように、こう書いてあるわけでございます。そこで、長期給付に要する費用とは何かという議論になるわけでございまして、現在までの保険計算によりますと、長期給付に要する費用というのは、そういった
スライド制の——
スライドといいますか、
ベースアップを可能ならしめるような
考え方でできてはおらないということは事実でございます。そういう前提で計算いたしました場合に、先ほど御説明申し上げたように、千分の九十九という財源率がはじかれてくるわけでございます。そこで、現在の
法律のたてまえからいえば、先生の御指摘になりましたような、将来に向かってある程度
ベースアップが行なわれるような財源計算はできないかという問題になってくるわけでございますが、これは保険計算の専門家に私
どもいま依頼いたしまして、そういうことが可能であるかどうかということも、検討いたしてもらっておるわけでございます。ただ、
現実の問題といたしましては、たとえば、将来に向かって国民所得の伸び率をどう考えるか、あるいは
物価の変動率をどう考えるか、さらには両者を反映しての
公務員の
ベースアップ率をどう考えるか、非常に未知数の多い問題でございますので、直ちに保険計算上利用できるような計算率というのができるかできないか、なかなかむずかしい問題であるようでございます。ただ、われわれとしては、少なくとも動的に考えまして、
ベースアップもなし、それから
物価変動もなし、所得水準の変動もないというような
考え方は、むしろ社会保険の
現実から見て実際的ではなかろうという感じを持っているものでございますから、そういった点の検討もいたしておるわけでございます。
ただ、それでは、先ほど
お話がありましたように、現在の制度としては何も考えていないのかという議論になるわけでございますが、一方ではそういう検討を行ないながら、一方では社会保険全体を通じての、いま
お話のありましたような裁定済みの
年金についての
ベースアップ問題というのを制度としてどうするかという問題を、別途検討いたしております。すでに先生御承知と思いますが、昨年の夏に社会保障制度審議会の
年金等に関する答申並びに勧告が出まして、その中において、少なくとも最低保障部分については
スライド制をとるべきだという御主張をされております。そういった御主張を受けて、ただいま厚生
年金につきまして、
スライド制の可否ということも論議されておるわけでございます。私
ども、
公務員の
共済組合制度というものは、一方では
公務員制度でございますが、一方では社会保険体系の一環をなしているわけでございますので、そういった厚生
年金における検討等もにらみ合わせながら、われわれとしても制度的にそういうものがつくられるかどうか、つくられるとすればどういう形でつくられるべきかということを、鋭意検討いたしておる次第でございます。